平成31(ワ)647

裁判年月日・裁判所
令和3年8月26日 東京地方裁判所
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判決文本文75,120 文字)

令和3年8月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第647号債務不存在確認請求事件口頭弁論終結日令和3年5月13日判決 原告 AppleJapan合同会社 同訴訟代理人弁護士北原潤一 同米山朋宏同梶並彰一郎 被告ファーストフェイスカンパニーリミテッド 同訴訟代理人弁護士城山康文同後藤未来 同訴訟代理人弁理士金山賢教 主文 1 被告が,原告に対し,原告による別紙物件目録1ないし7記載の各製品の譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,特許第6353363号の特許権に 基づく損害賠償請求権を有しないことを確認する。 2 被告が,原告に対し,原告による別紙物件目録1ないし12記載の各製品の譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,特許第6386646号の特許権に基づく損害賠償請求権を有しないことを確認する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,原告が,原告による別紙物件目録記載の各製品(以下, ないことを確認する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,原告が,原告による別紙物件目録記載の各製品(以下,同目録記載順に 「原告製品1」などといい,全てを併せて「原告製品」という。)の譲渡等は,被告が有する特許権(特許第6353363号(以下「本件特許権1」という。)及び特許第6386646号(以下「本件特許権2」といい,本件特許権1と併せて「本件各特許権」といい,これらに係る特許を「本件特許1」,「本件特許2」及び「本件各特許」という。)を侵害するものではない旨主張し,被告に対し,不法行為(民 法709条)に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同じ)。)(1) 当事者ア原告は,米国の会社であるアップルインコーポレーテッド(以下「米国アッ プル社」という。)の子会社であり,米国アップル社のコンピュータ,携帯通信機器等の輸入,販売等を業とする合同会社である。 イ被告は,大韓民国の会社であり,情報通信関連ソフトウェアの開発,有線及び無線コンテンツの開発,供給等を主たる事業とする会社である。 (2) 本件各特許権 ア本件特許権1 (ア) 被告は,次のとおりの特許権を有する。 特許番号 6353363号発明の名称移動通信端末機の活性化時に,特定動作が行われるようにするための方法,及び移動通信端末機出願日平成24年10月17日 優先日平成23年10月19日優先権主張国韓国登録日平成30年6月15日(イ) 本件特許1に係る特許請求 するための方法,及び移動通信端末機出願日平成24年10月17日 優先日平成23年10月19日優先権主張国韓国登録日平成30年6月15日(イ) 本件特許1に係る特許請求の範囲は,10の請求項から成り,請求項1及び請求項4の記載は次のとおりである(以下,上記特許請求の範囲に係る発明のうち, 請求項1に係る発明を「本件発明1-1」といい,請求項4に係る発明を「本件発明1-2」といい,これらを併せて「本件発明1」という)。また,その明細書(図面を含む。)を「本件明細書1」といい,その該当部分の記載を【0001】などと表すこととする(以下同じ)。)。 (請求項1)(本件発明1-1) 「ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部とを備えた移動通信端末機であって,前記移動通信端末機は,前記移動通信端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために,前記非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付ける活性化ボタンを備え,前記非活性状態とは,前記移動通信端末機が通信可能な状態で,かつ,前記ディスプレイ部がオフの状態と定義し,前記活性 状態とは,前記移動通信端末機が通信可能で,かつ,前記ディスプレイ部がオンの状態であると定義され,前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力により行われ,前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記 ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,前記使用者識別機能による認 証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとと ,前記 ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,前記使用者識別機能による認 証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,前記ディスプレイ部にメッセージを表示するよう構成されることを特徴とする移動通信端末機。」(請求項4)(本件発明1-2)「前記活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較 して前記指紋認識を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の移動通信端末機。」(ウ) 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い,「構成要件1-1A」などという。)。 (請求項1)(本件発明1-1) 1-1A ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部とを備えた移動通信端末機であって,1-1B 前記移動通信端末機は,前記移動通信端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために,前記非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付ける活性化ボタンを備え, 1-1C 前記非活性状態とは,前記移動通信端末機が通信可能な状態で,かつ,前記ディスプレイ部がオフの状態と定義し,前記活性状態とは,前記移動通信端末機が通信可能で,かつ,前記ディスプレイ部がオンの状態であると定義され,1-1D 前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力によ り行われ,1-1E 前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,1-1F 前 E 前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,1-1F 前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と 認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,前記デ ィスプレイ部にメッセージを表示するよう1-1G 構成されることを特徴とする移動通信端末機。 (請求項4)(本件発明1-2)1-2A 前記活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して前記指紋認識を行うことを特徴とする 1-2B 請求項1~3のいずれか1項に記載の移動通信端末機。 イ本件特許権2(ア) 被告は,次のとおりの特許権を有する。 特許番号 6386646号発明の名称移動通信端末機の活性化時に,特定動作が行われるようにするため の方法,システム及び移動通信端末機出願日平成29年9月22日優先日平成23年10月19日優先権主張国韓国登録日平成30年8月17日 (イ) 本件特許権2に係る特許請求の範囲は,9の請求項から成り,請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項7及び請求項8の記載は次のとおりである(以下,上記特許請求の範囲に係る発明のうち,上記請求項ごとに「本件発明2-1」などとい,これらを併せて「本件発明2」という。)。また,その明細書(図面を含む。)を「本件明細書2」という。)。 (請求項1)(本件発明2-1)「使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーンディスプレイ部と,外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示がオフである非活性 件発明2-1)「使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーンディスプレイ部と,外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボ タンと,前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に 基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1の操作を,前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するための制御部と,を含む移動通信端末装置であって,前 記各動作は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,移動通信端末装置。」(請求項2)(本件発明2-2)「前記第1の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り 替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と,前記第1動作の実行をする,請求項1に記載の移動通信端末装置。」(請求項3)(本件発明2-3)「前記第2の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示し, 前記第2動作の実行をする,請求項1又は2に記載の移動通信端末装置。」(請求項4)(本件発明2-4)「前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別され , 前記第2動作の実行をする,請求項1又は2に記載の移動通信端末装置。」(請求項4)(本件発明2-4)「前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し,前記使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には前記ロック状態を維持する機能である,請求項1~3 のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。」(請求項7)(本件発明2-5)「前記使用者識別機能は,指紋認識を利用した機能である,請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。」(請求項8)(本件発明2-6) 「前記使用者識別機能は,顔認識を利用した機能である,請求項1~5のいずれ か一項に記載の移動通信端末装置。」(ウ) 本件発明2-1~2-6を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い,「構成要件2-1A」などという。)。 (請求項1)(本件発明2-1)2-1A 使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスク リーンディスプレイ部と,2-1B 外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボタンと, 2-1C 前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作 使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操 作をすることなく,実行するための制御部と,2-1D を含む移動通信端末装置であって,2-1E 前記各動作は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,2-1F 移動通信端末装置。 (請求項2)(本件発明2-2)2-2A 前記第1の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と,前記第1動作の実行をする,2-2B 請求項1に記載の移動通信端末装置。 (請求項3)(本件発明2-3) 2-3A 前記第2の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示し,前記第2動作の実行をする,2-3B 請求項1又は2に記載の移動通信端末装置。 (請求項4)(本件発明2-4) 2-4A 前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し,前記使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には前記ロック状態を維持する機能である,2-4B 請求項1~3のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 (請求項7)(本件発明2-5) 2-5A 前記使用者識別機能は,指紋認識を利用した機能である,2-5B 請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 の移動通信端末装置。 (請求項7)(本件発明2-5) 2-5A 前記使用者識別機能は,指紋認識を利用した機能である,2-5B 請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 (請求項8)(本件発明2-6)2-6A 前記使用者識別機能は,顔認識を利用した機能である,2-6B 請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 (3) 原告の行為原告は,遅くとも本件特許権1の登録日である平成30年6月15日以降,原告製品1~7の輸入及び販売を行っており,また,遅くとも本件特許権2の登録日である同年8月17日以降,原告製品8~12の輸入及び販売を行っている。 (4) 原告製品の構成 原告製品の構成は,別紙原告製品1~12記載のとおりである。 原告製品1ないし4は構成要件1-1B,1-1D,2-1B及び2-1Cを除いた本件発明1,2の各構成要件を充足していること,原告製品5ないし7は構成要件1-1D及び2-1Cを除いた本件発明1,2の各構成要件を充足していること,原告製品8ないし12は構成要件2-1Cを除いた本件発明2の各構成要件を 充足していることは争いがない。 (5) 原告の無効主張に係る公然実施発明等ア公然実施発明1公然実施発明1は,iOS4.2又は4.3を搭載したiPhone4である。 iPhone4の発売は,平成22年(2010年)6月24日であるところ,発売当時,iPhone4に搭載されていたオペレーションシステムはiOS4.0 であったが,同年11月22日にiOS4.2が,平成23年(2011年)3月9日にはiOS4.3が,それぞれ利用可能となった。そのため,各利用可能日以降は,既に販売されていたiPhone4においてもiOS4.2又は4.3をイ 日にiOS4.2が,平成23年(2011年)3月9日にはiOS4.3が,それぞれ利用可能となった。そのため,各利用可能日以降は,既に販売されていたiPhone4においてもiOS4.2又は4.3をインストールして利用できるようになっており,本件各特許の優先日(以下「本件優先日」という。)より前に公然実施されていたものである。 公然実施発明1の構成は,次のとおりである。 「ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部を備えたスマートフォンであって,前記スマートフォンには,スリープ状態とスリープ解除状態とがあり,スリープ状態は,スマートフォンが通信可能な状態で,かつ,ディスプレイがオフの状態を意味し,スリープ解除状態とは,スマートフォンが通信可能で,かつ,ディスプレイがオン の状態を意味し,さらに,前記スマートフォンは,ホームボタンを備え,スリープ状態にあるときに,ホームボタンを押すと,ディスプレイがオンとなり,スリープ状態からスリープ解除状態へ切り替えるとともに,ロック画面が表示され,加えて,前記スマートフォンには,パスコードを入力することによる使用者識別機能として,スリープ状態においてホームボタン(あるいは,スリープ/スリープ解除のオン/ オフボタン)を押して,ロック画面においてスライダをドラッグした後,4桁のパスコードを入力したときに,認証を行う構成が備えられ,パスコードを入力することによる使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されれば,ロックが解除されて,ホーム画面が表示される一方で,認証されなければ,前記スマートフォンのロック状態を維持するとともに,ディスプレイに「パスコードが違 いますもう一度試してください」というメッセージ(エラーメッセージ)を表示 する構成が備えられ,また,前記 マートフォンのロック状態を維持するとともに,ディスプレイに「パスコードが違 いますもう一度試してください」というメッセージ(エラーメッセージ)を表示 する構成が備えられ,また,前記スマートフォンはホームボタンに複数の機能を備えている,スマートフォン。」イ公然実施発明2公然実施発明2は,公然実施発明1と同様,iOS4.2又は4.3を搭載したiPhone4であり,本件優先日より前である平成22年11月22日にiOS 4.2が,平成23年3月9日にiOS4.3が利用可能となっていた。 公然実施発明2の構成は,次のとおりである。 「使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーンディスプレイと,外部装置と通信可能な状態であるがタッチスクリーンディスプレイがオフであるスリープ状態からタッチスクリーンディスプレイの表示をオンにし てロック画面が表示されたスリープ解除状態に切り替えるためのホームボタンと,スリープ状態において,使用者がホームボタンを押すと,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプレイにロック画面を表示する一方で,使用者がホームボタンを長い時間継続して押した場合には,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプ レイにロック画面が表示され,ハンズフリー機能を,追加の操作をすることなく,実行する制御部と,を備え,加えて,パスコードを入力することによる使用者識別機能として,スリープ状態においてホームボタン(あるいは,スリープ/スリープ解除のオン/オフボタン)を押して,ロック画面においてスライダをドラッグした後, 4桁のパスコードを入力したときに,認証を行う構成を備え,パスコードを 入力することによる使 スリープ/スリープ解除のオン/オフボタン)を押して,ロック画面においてスライダをドラッグした後, 4桁のパスコードを入力したときに,認証を行う構成を備え,パスコードを 入力することによる使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されれば,ロックが解除されて,ホーム画面が表示される一方で,認証されなければ,前記スマートフォンのロック状態を維持するとともに,ディスプレイに「パスコードが違いますもう一度試してください」というメッセージ(エラーメッセージ)を表示する構成を備えたスマートフォン。」 ウ甲5 本件特許の優先日前の公知文献として,平成22年12月24日に公開された特願2010-525891(甲5。以下「甲5文献」といい,甲5文献に記載された発明を「甲5発明」という。なお,甲5文献に記載された特許請求の範囲については,平成22年5月18日にその補正がされているものの,当事者は補正前の甲5発明に基づいて主張立証をしているため,当裁判所も補正前の甲5発明を認定の 基礎とすることとする。)がある。 甲5文献の【要約】の【解決手段】には,次のとおりの記載がある。 「本発明は,デバイスリソースへのアクセスを制限するための内蔵認証システムを備えた電子デバイスに関する。認証システムは,ユーザの生体情報を検出する1または複数のセンサを備えてよい。センサは,生体情報を提供するためのステップ を実行するようユーザに要求することなく,ユーザがデバイスを操作した時に,センサが適切な生体情報を検出できるように,デバイスに配置されてよい(例えば,デバイス筐体の別個の部分に指紋センサを設けるのではなく,入力メカニズム内に指紋センサを組み込む)。一部の実施形態において,認証システムは,ユーザを認証するために視 バイスに配置されてよい(例えば,デバイス筐体の別個の部分に指紋センサを設けるのではなく,入力メカニズム内に指紋センサを組み込む)。一部の実施形態において,認証システムは,ユーザを認証するために視覚的または時間的な入力パターンを検出するよう動作してよい。認 証に応答して,ユーザは,制限されたファイル,アプリケーション(例えば,ユーザが購入したアプリケーション),または,設定(例えば,連絡先または保存したゲームプロファイルなどのアプリケーション設定)にアクセスできるようになる。」エ甲24本件特許の優先日前の公知文献として,平成20年12月18日に公開された特 許出願公開番号特開2008-306560(甲24。以下「甲24文献」といい,甲24文献に記載された発明を「甲24発明」という。)がある。 甲24文献の【要約】の【課題】には,「本発明は,持ち主の手から離れてしまった場合であっても,持ち主のプライバシーやセキュリティが保護される携帯電話機を提供することを目的とする。」との記載があり,【解決手段】として,以下のとお りの記載がある。 「カメラによって入力された画像を用いてユーザ認証を行う携帯電話機であって,ユーザ認証のための画像情報及び暗証番号情報を記憶する記憶手段と,ロック状態において,カメラによって入力された画像,及び記憶された画像情報を用いてユーザ認証を行う画像認証手段(S105乃至S113)と,カメラによって入力された画像によってユーザ認証を行うための画面が表示されているときに,入力された 文字列,及び記憶された暗証番号情報を用いてユーザ認証を行う暗証番号認証手段(S125)と,画像認証手段または暗証番号認証手段によりユーザ認証に成功した場合,ロック状態を解除するロック解除手段(S117 列,及び記憶された暗証番号情報を用いてユーザ認証を行う暗証番号認証手段(S125)と,画像認証手段または暗証番号認証手段によりユーザ認証に成功した場合,ロック状態を解除するロック解除手段(S117)と,を備えた。」(6) 本件各特許に係る無効審判請求及び訂正請求ア原告は,本件平成31年1月30日,本件発明1,2に係る特許について特 許無効審判を請求した(本件発明1につき無効2019-800006号,本件発明2につき無効2019-800007号。以下,前者の無効審判請求を「本件無効審判請求1」といい,後者の無効審判請求を「本件無効審判請求2」といい,本件無効審判請求1と併せて「本件各無効審判請求」という。)。 イ被告は,令和2年5月20日,本件各無効審判請求において,本件発明1, 2について,特許請求の範囲を訂正することを請求した(甲36,37)。本件発明1に係る訂正請求による訂正事項(以下,訂正に係る請求項ごとに「本件訂正事項1-1」などという。)の内容は次のとおりである(下線部は訂正箇所である。以下同じ。)。 (ア) 本件訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1につき,「ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部とを備えた移動通信端末機であって,前記移動通信端末機は,前記移動通信端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために,前記非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付ける活性化ボタンを備え,前記非活性状態とは,前記移動通信端末機 が通信可能な状態で,かつ,前記ディスプレイ部がオフの状態と定義し,前記活性 状態とは,前記移動通信端末機が通信可能で,かつ,前記ディスプレイ部がオンの状態であると定義され,前記非活性状態にあるときに使用者による前記操作入力を スプレイ部がオフの状態と定義し,前記活性 状態とは,前記移動通信端末機が通信可能で,かつ,前記ディスプレイ部がオンの状態であると定義され,前記非活性状態にあるときに使用者による前記操作入力を受け付けると,前記ディスプレイ部にロック画面が表示された前記活性状態へ切り替え,前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態への前記切り替えのた めの前記操作入力により行われ,前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,前記ディスプレイ部にメッセージを表 示するように構成されることを特徴とする移動通信端末機。」と訂正する(請求項1を引用する請求項4も同様に訂正する。)。 (イ) 本件訂正事項1-2特許請求の範囲の請求項4につき,「前記ロック画面には,現在の時間を表示することができ, 前記活性化ボタン により得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して前記指紋認識を行うこと,を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の移動通信端末機。」ウ上記イの訂正後の本件発明1-1(以下「本件訂正発明1-1」という。)及び本件発明1-2(以下「本件訂正発明1-2」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 (請求項1)1-1A’ ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部とを備えた移動通信端末機であって,1-1B’ 前記移動通信端末機は,前記移動通信端末機の非活性状態 次のとおりである。 (請求項1)1-1A’ ディスプレイ部と,メモリ手段と通信部とを備えた移動通信端末機であって,1-1B’ 前記移動通信端末機は,前記移動通信端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために,前記非活性状態にあるときに使 用者による操作入力を受け付ける活性化ボタンを備え, 1-1C①’ 前記非活性状態とは,前記移動通信端末機が通信可能な状態で,かつ,前記ディスプレイ部がオフの状態と定義し,前記活性状態とは,前記移動通信端末機が通信可能で,かつ,前記ディスプレイ部がオンの状態であると定義され,1-1C②’ 前記非活性状態にあるときに使用者による前記操作入力を受け付けると,前記ディスプレイ部にロック画面が表示された前記活性状態へ切り替え, 1-1D’ 前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力により行われ,1-1E’ 前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記ディス プレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,1-1F’ 前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,前記ディスプレイ部にメッセージを表示する1-1G’よう構成されることを特徴とする移動通信端末機。 (請求項4)1-2A①’ 前記ロック画面には,現在の時間を表示することができ,1-2A②’ 前記活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して前記指紋認識を行うことを (請求項4)1-2A①’ 前記ロック画面には,現在の時間を表示することができ,1-2A②’ 前記活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して前記指紋認識を行うことを特徴とする1-2B 請求項1~3のいずれか1項に記載の移動通信端末機。 エ本件発明2に係る訂正請求(以下「本件訂正請求2」といい,これによる訂正を請求項ごとに「本件訂正事項2-1」などという。)の内容は次のとおりである。 (ア) 本件訂正事項2-1特許請求の範囲の請求項1につき,「使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーンデ ィスプレイ部と,外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディス プレイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボタンと,前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い 時間係属してなされた第2の操作であった場合いは前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく実行するための制御部と,を含む移動通信端末装置であって,前記各動作は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,移動通信端末装置。」と訂正する。(請求項1を引用する請 求項2ないし8も同様に訂正する。)(イ) 本件訂正事項2-2特許の範囲の請求項2につき,「前記第1の操作がなされた場合には,前記非活 端末装置。」と訂正する。(請求項1を引用する請 求項2ないし8も同様に訂正する。)(イ) 本件訂正事項2-2特許の範囲の請求項2につき,「前記第1の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と, 前記第1動作の実行をし,前記ロック画面には,現在の時間を表示することができる,請求項1に記載の移動通信端末装置。」と訂正する(請求項2を引用する請求項3ないし8も同様に訂正する。)。 (ウ) 本件訂正事項2-3特許の範囲の請求項4につき, 「前記制御部は,前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が前記第1の操作であった場合には前記第1動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行し, 前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記 非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに, 前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた前記第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる前記第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行し, 前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し,前記使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別さ れた場合には前記ロック状態を維持する機能である,請求項1~3のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。」と訂正する(請求項4を引用する請求項5ないし8も同様に訂正する。 た使用者でないと識別さ れた場合には前記ロック状態を維持する機能である,請求項1~3のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。」と訂正する(請求項4を引用する請求項5ないし8も同様に訂正する。)。 (エ) 本件訂正事項2-4特許の範囲の請求項7につき, 「前記使用者識別機能は,指紋認識を利用した機能であり,前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記ディスプレイ部にメッセージを表示するよう構成される,請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。」と訂正する。 オ上記エの訂正後の本件発明2-1ないし2-6(以下「本件訂正発明2-1」 などとという。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 (請求項1)2-1A’ 使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーンディスプレイ部と,2-1B’ 外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディス プレイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボタンと,2-1C’ 前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切 り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を, 前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するための制御部と,2-1D’ を含む移動通信端末装置であって,2-1E’ 前記各動作は,カメ た場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するための制御部と,2-1D’ を含む移動通信端末装置であって,2-1E’ 前記各動作は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別 機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,2-1F’ 移動通信端末装置。 (請求項2)2-2A①’ 前記第1の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活 性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と,前記第1動作の実行し,2-2A②’ 前記ロック画面には,現在の時間を表示することができる,2-2B 請求項1に記載の移動通信端末装置。 (請求項3) 2-3A’ 前記第2の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示し,前記第2動作の実行をする,2-3B’ 請求項1又は2に記載の移動通信端末装置。 (請求項4) 2-4A①’ 前記制御部は,前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が前記第1の操作であった場合には前記第1動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行し, 2-4A②’ 前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者 の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた前記第2の操作であ 操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた前記第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる前記第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行し, 2-4A③’前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し,前記使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には前記ロック状態を維持する機能である,2-4B’ 請求項1~3のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 (請求項7) 2-5A①’ 前記使用者識別機能は,指紋認識を利用した機能であり,2-5A②’ 前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記ディスプレイ部にメッセージを表示するよう構成される,2-5B 請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 (請求項8)2-6A’ 前記使用者識別機能は,顔認識を利用した機能である,2-6B’ 請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。 カ本件各無効審判請求に係る審決特許庁は,令和2年12月24日,本件無効審判請求1につき,本件訂正請求1 を認めた上で,本件発明1の請求項1及び4について無効とする審決をし(甲36),本件無効審判請求2につき,本件訂正請求2を認めた上で,本件発明2の請求項1ないし4,7及び8に記載された発明についての特許を無効とする審決をした(甲37)。 2 争点 (1) 原告製品が本件発明1,2の技術的範囲に属するか否か(争点1) ア原告製品1ないし4のホームボタン れた発明についての特許を無効とする審決をした(甲37)。 2 争点 (1) 原告製品が本件発明1,2の技術的範囲に属するか否か(争点1) ア原告製品1ないし4のホームボタンは,本件1,2発明に係る「活性化ボタン」に該当するか(構成要件1-1B及び2-1Bの充足性)(争点1-1)イ原告製品1ないし7は,活性化ボタンに対する操作により,「指紋認証による使用者識別機能」が行われているといえるか(構成要件1-1D及び2-1Cの充足性)(争点1-2) ウ原告製品8ないし12は,「活性化ボタン」に対する操作のみにより,「顔認識による使用者識別機能」が行われているといえるか(構成要件2-1C充足性)(争点1-3)(2) 本件各特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)ア無効理由1(公然実施発明1及び甲5発明に基づく進歩性の欠如)の有無(争 点2-1)イ無効理由2(公然実施発明2及び甲5発明に基づく進歩性の欠如)の有無(争点2-2)ウ無効理由3(公然実施発明2及び甲24発明に基づく進歩性の欠如)の有無(争点2-3) エ無効理由4(サポート要件違反)の有無(争点2-4)(3) 本件発明についての訂正の対抗主張の成否(争点3)ア訂正要件の具備(争点3-1)イ無効理由1の解消の有無(争点3-2)ウ無効理由2の解消の有無(争点3-3) エ無効理由3の解消の有無(争点3-4) 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点1-1(構成要件1-1B及び2-1Bの充足性)〔被告の主張〕原告製品1~7は,外部装置と通信可能な状態であるがMulti-Touch ディスプレイの表示がオフであるスリープ状態から,外部装置と通信可能な状態で, -1Bの充足性)〔被告の主張〕原告製品1~7は,外部装置と通信可能な状態であるがMulti-Touch ディスプレイの表示がオフであるスリープ状態から,外部装置と通信可能な状態で, かつ,Multi-Touchディスプレイの表示がオンであるスリープ解除状態に切り替えるための使用者による操作を受け付けるホームボタンを備えており(構成1b~5b),構成1b~5bの「スリープ状態」,「スリープ解除状態」及び「ホームボタン」は,それぞれ構成要件1-1B及び構成要件2-1Bの「非活性状態」,「活性状態」及び「活性化ボタン」に相当する。 原告は,「活性化ボタン」について,高さ位置が小さく変位するとか全体としてへこむことが必要であるとして,原告製品1~4のホームボタンはそのようなものではないとして,構成要件1-1B及び構成要件2-1Bを充足しない旨主張する。 しかし,本件各特許の特許請求の範囲や明細書の記載を見ても,「活性化ボタン」について,原告が主張するような高さ位置が小さく変化するとか全体としてへこむと いった限定を示唆する記載は一切なく,構成要件1-1B及び構成要件2-1Bの「活性化ボタン」に上記の点を必須の要件とするものではない。そして,原告製品1~4のホームボタンも,原告が公表するユーザーガイドにおいて「ホームボタンを押します。」と記載されているとおり,使用者が押すという操作を加えるものであって,「活性化ボタン」に当たる。 〔原告の主張〕原告製品1~4のホームボタンは,構成要件1-1B及び構成要件2-1Bの「活性化ボタン」に当たらない。 すなわち,「ボタン」とは,「足又は手を用いて押し込み操作をする操縦装置」を意味する(甲18。JIS工業用語大辞典【第5版】)のであるから,ある物がボタ ン 「活性化ボタン」に当たらない。 すなわち,「ボタン」とは,「足又は手を用いて押し込み操作をする操縦装置」を意味する(甲18。JIS工業用語大辞典【第5版】)のであるから,ある物がボタ ンであるというためには,その物自体が,全体として,「押し込まれること」,すなわち,「高さ方向の位置が小さく変位すること」が可能である必要があるから,原告製品1~4のホームボタンが構成要件1-1B及び構成要件2-1Bの「活性化ボタン」に該当するといえるためには,ホームボタンを押したときに,これが全体として,押し込まれること,すなわち,高さ位置が小さく変位することやへこむこと が可能である必要がある。 これを原告製品1~4についてみるに,そのホームボタンは,タップティックエンジン(TapticEngine)を採用した,感圧式のセンサーになっており,押しこむボタンではなく,物理的には一切動かない板である。タップティックエンジンを採用することにより,あたかもボタンを押してへこんだような振動を指に伝えているだけでへこんでいるわけではない。 したがって,原告製品1~4のホームボタンは,指で押したときに,全体としてへこまず,高さ位置が変位することはないから,構成要件1-1B及び構成要件2-1Bの「活性化ボタン」に該当しない。 (2) 争点1-2(構成要件1-1D及び2-1Cの充足性)〔被告の主張〕 原告製品1~7は,スリープ状態からスリープ解除状態へ切り替えるためのホームボタンに対する操作によって,使用者による追加の操作なしに,TouchIDを利用した指紋認証による使用者識別機能を実行するためのA10 Fusionチップを備えており(構成1d~5d),構成要件1-1D及び構成要件2-1Cを満たす。 仮に,原告が uchIDを利用した指紋認証による使用者識別機能を実行するためのA10 Fusionチップを備えており(構成1d~5d),構成要件1-1D及び構成要件2-1Cを満たす。 仮に,原告が主張するように,原告製品1~7において,使用者識別機能がホームボタンを押すのではなく,指を置く(タッチ)により行われるものであるとしても,タッチなるものは,端末側での認識の問題に過ぎず,使用者にとってホームボタンを押すという操作以外の何らかの追加の操作が要されるわけではなく,ホームボタンを押すという操作により使用者識別による認証が行われることには変わりが ない。 したがって,原告製品1~7は,いずれにしても構成要件1-1D及び構成要件2-1Cを充足する。 〔原告の主張〕原告製品1~7は,構成要件1-1D及び構成要件2-1Cを充足しない。 構成要件1-1Dは,「前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用 者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力により行われ,」と規定しており,「指紋認識による使用者識別機能」が行われる態様について,活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する「操作入力」により,「指紋認識による使用者識別機能」が行われることが必要であると解される。また,構成要件2-1Cは,「前記非活性状態の際になされた前記活性ボタン に対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,…前記使用者の操作以外の操作をすることなく,実行する」と規定しており,「第1動作」は,「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作」のみにより行われることが予定されていると解さ 記使用者の操作以外の操作をすることなく,実行する」と規定しており,「第1動作」は,「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作」のみにより行われることが予定されていると解され,構成要件2-1Cを充足するには, 活性状態への切り替えのための「活性化ボタンに対する使用者の操作」が必要である。 原告製品1~7には,非活性状態に該当するスリープ状態から活性状態に該当するスリープ解除状態への切り替えのためのホームボタンが備わっているところ,これが「活性化ボタン」であるとすれば,これをプレスすることが,構成要件1-1 Dにおける活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する「操作入力」,構成要件2-1Cにおける「活性化ボタンに対する使用者の操作」に該当する。 ところが,原告製品1~7に搭載されているTouchIDにおいては,ホームボタンをプレスせずに,サイドボタンをプレスする,あるいは手前に傾けるといった方法により,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面を表 示した後,ホームボタンにタッチする(指を置く)ことにより,ロック状態の解除・維持という「指紋認識による使用者識別機能」が可能であって,ロック状態の解除・維持という「指紋認識による使用者識別機能」のために,ホームボタンをプレスする必要はない。加えて,ホームボタンをスタイラスペン(当該ペンには,登録された指紋を有しない。)でプレスすることによっても,スリープ状態からスリープ解除 状態に切り替えてロック画面を表示させることができるが,この場合には,指紋認 識による使用者識別に失敗したときにロック画面に表示されるはずのエラー表示,すなわち,ロック画面下部中央における「もう一度試して下さい」との表示や画面上部中央における鍵の図 場合には,指紋認 識による使用者識別に失敗したときにロック画面に表示されるはずのエラー表示,すなわち,ロック画面下部中央における「もう一度試して下さい」との表示や画面上部中央における鍵の図形の左右への振動がみられることはない。これらからすると,上記プレスによって「指紋認識による使用者識別機能」が行われていないことは明らかである。 したがって,原告製品1~7は,構成要件1-1D及び構成要件2-1Cを充足しない。 (3) 争点1-3(構成要件2-1Cの充足性)〔被告の主張〕原告製品8~12は,「スリープ状態」の際にされたサイドボタンに対する使用者 の操作,すなわち,第1操作に基づいて「スリープ状態」から「スリープ解除状態」に切り替えるとともに,FaceID(顔認識)を利用した使用者識別機能を,使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するためのA12 Bionicチップを備えている(構成8c~12c)。 また,原告製品8~12の上記A12 Bionicチップは,「スリープ状態」 の際にされたサイドボタンに対する使用者の操作に基づいて「スリープ状態」から「スリープ解除状態」に切り替えるとともに,当該使用者の操作が第1操作より長い時間継続してされた操作,すなわち,第2操作である場合には,Siriによるハンズフリー機能を当該使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するためのチップである(構成8~12c)。 そして,構成8c~12cの「第1操作」及び「第2操作」は,それぞれ構成要件2-1Cの「第1の操作」及び「第2の操作」に該当する。また,構成8c~12cの「FaceID(顔認識)を利用した使用者識別機能」,「Siriによるハンズフリー機能」及び「A12 Bionicチップ」は,そ 「第1の操作」及び「第2の操作」に該当する。また,構成8c~12cの「FaceID(顔認識)を利用した使用者識別機能」,「Siriによるハンズフリー機能」及び「A12 Bionicチップ」は,それぞれ構成要件2-1Cの「第1動作」「第2動作」及び「制御部」に該当する。 以上より,原告製品8~12は,構成要件2-1Cを満たす。 〔原告の主張〕構成要件2-1Cの充足には,活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する使用者の操作により,第1動作が行われることが必要と解される。 原告製品8~12のサイドボタン・トップボタンが「活性化ボタン」であるとすれば,これをプレスすることが,構成要件2-1Cにおける,活性状態への切り替 えのための活性化ボタンに対する使用者の操作に該当する。 ところが,原告製品8~12に搭載されているFaceIDにおいては,サイドボタン・トップボタンをプレスせずに,ディスプレイを指やスタイラスペンでタップする,あるいは,端末を手前に傾けるといった方法によっても,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面を表示した後,原告製品8~12に使 用者が顔を向けることにより(あるいは,原告製品8~12を使用者の顔に向けることにより),ロック状態の解除・維持という「第1動作」(顔認識による使用者識別機能)が行われる。そうすると,FaceIDにおいては,サイドボタン・トップボタンを指でプレスすることによりスリープ状態が解除され,ロック画面が表示されるとともに,顔認識による使用者識別機能が行われる場合においても,それ以 外の方法によりロック画面が表示される場合と同様,ロック画面が表示された状態で原告製品8~12に使用者が顔を向ける(あるいは,原告製品8~12を使用者の顔に向ける)とい 合においても,それ以 外の方法によりロック画面が表示される場合と同様,ロック画面が表示された状態で原告製品8~12に使用者が顔を向ける(あるいは,原告製品8~12を使用者の顔に向ける)という操作により,第1動作である顔認識による使用者識別機能が行われている可能性があり,顔認識による使用者識別機能は,サイドボタンやトップボタンのプレスによって実行されているものではない。 また,仮に,原告製品8~12においては,スリープ状態を解除するための操作であるサイドボタン・トップボタンに対するプレスにより「第1動作」が行われると仮定したとしても,かかるプレスに加えて,使用者が原告製品8~12に顔を向けるという追加の操作が必要である。 以上より,原告製品8~12においては,活性状態への切り替えのための「前記 非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作」により,「第1 動作」(顔認識による使用者識別機能)が行われるとは認められない。 したがって,原告製品8~12は,構成要件2-1Cを充足しない。 (4) 争点2-1(公然実施発明1及び甲5発明に基づく進歩性の欠如の有無)〔原告の主張〕本件発明1は,公然実施発明1に甲5発明を適用することによって,本件優先日 (平成23年10月19日)当時の当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に想到することができたものであるから,次のとおり,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。 ア本件発明1-1の進歩性の欠如 (ア) 本件発明1-1と公然実施発明との相違点本件発明1-1は,次の点で,公然実施発明1の構成と相違する(以下,この相違点を「相違点1-1」 る。 ア本件発明1-1の進歩性の欠如 (ア) 本件発明1-1と公然実施発明との相違点本件発明1-1は,次の点で,公然実施発明1の構成と相違する(以下,この相違点を「相違点1-1」という。)。 「1-1D 前記使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力に より行われ,1-1E 前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果に関わらず,前記ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え,1-1F 前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と 認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,前記ディスプレイ部にメッセージを表示する1-1G よう構成されることを特徴とする移動通信端末機。」である点。 (イ) 相違点1-1の検討相違点1-1は,公然実施発明1に甲5発明を適用することによって,当業者が 容易に想到できるものである。甲5発明においては,指紋認識による使用者識別機 能,当該使用者識別機能による認証の結果にかかわらずディスプレイをオンにする構成及び当該認証に失敗した場合にメッセージが表示される構成(相違点1-1)が開示されているところ,公然実施発明1と甲5発明とは,課題が同様であり,両者を組み合わせる動機付けがあったといえるからである。 すなわち,甲5発明においては,パスコードによる使用者識別機能を念頭に置き, パスコードが知られると許可されていない人物によるユーザの個人情報へのアクセス防止が図られないなどの課題を踏まえ上で,デバイスを起動する時に,ボタンに備えられたセンサを用いて,ユーザ に置き, パスコードが知られると許可されていない人物によるユーザの個人情報へのアクセス防止が図られないなどの課題を踏まえ上で,デバイスを起動する時に,ボタンに備えられたセンサを用いて,ユーザの皮膚の特徴(指紋を含む。)を検出する構成を開示している。これに対し,公然実施発明1においては,そのホームボタンに複数の機能が備えられており,そのパスコードによる使用者識別機能につき,より安全 かつ利便性の高い識別機能を追加することが,本件優先日当時の当業者にとって当然に要求される課題であったといえる。このような公然実施発明1に,同様の課題を有する甲5発明を組み合わせ,相違点1-1に係る構成を想到することは,当業者にとって容易であったといえる。 したがって,本件発明1-1は進歩性を欠くものであって,無効である。 イ本件発明1-2の進歩性の欠如(ア) 相違点本件発明1-2は,本件発明1-1の従属項であり,公然実施発明1と対比すると,相違点1-1のほかに,次の点で,公然実施発明1と相違する(以下,上記の相違点を「相違点1-2」という。)。 「1-2A 前記活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して前記指紋認識を行う」である点。 (イ) 相違点1-2の検討甲5発明においては,ホームボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報とを比較して指紋認識を行う構成が開示されていることから,公然実施発 明1に,同様の課題を有する甲5発明を組み合わせ,相違点1-2に係る構成を想 到することは,当業者にとって容易であったといえる。 したがって,本件発明1-2は進歩性を欠くものであって,無効である。 〔被告の主張〕ア本件発明1-1の進歩性次に照らせば,相違点1-1に関し, ことは,当業者にとって容易であったといえる。 したがって,本件発明1-2は進歩性を欠くものであって,無効である。 〔被告の主張〕ア本件発明1-1の進歩性次に照らせば,相違点1-1に関し,公然実施発明1に甲5文献を組み合わせる ことにより,当業者が,両者の相違点を容易に想到することができたとはいえない。 (ア) 当業者において,公然実施発明1に甲5発明を組み合わせる動機付けがあったとはいえない。すなわち,公然実施発明1は,パスコードの入力という使用者識別機能こそ有するものの,指紋などを利用した内蔵認証システムを有するものではなく,甲5発明が対象とする技術と,技術思想が共通するとはいえない。また, 公然実施発明1は,ホームボタンに対する操作入力及びスライダのドラッグ操作を経てから使用者識別機能を実行するものであり,スライダを表示するロック画面を表示することで,意図せずタッチスクリーンと接触することにより生じ得る使用者識別機能の誤作動を防いだ認証を実現する目的のものであって,甲5発明における課題であるシームレスな認証が要求されているものではない。このように,公然実 施発明1と甲5発明とは,目的・課題や技術思想が共通しておらず,そもそも両者の組合せの動機付けは認められない。 (イ) また,仮に公然実施発明1と甲5発明を組み合わせることができたとしても,次の①ないし③のとおり,甲5発明においては,相違点1-1の構成について開示されていないものであって,両者を組み合わせても,せいぜい,公然実施発明 1における,ホームボタンにおける操作入力,スライダに対するドラッグの操作入力という2段階の操作を経た後の「パスコードによる使用者識別機能の実行」に代えて,指紋認識による使用者識別機能が行われるという構成,あるいは,ホーム における操作入力,スライダに対するドラッグの操作入力という2段階の操作を経た後の「パスコードによる使用者識別機能の実行」に代えて,指紋認識による使用者識別機能が行われるという構成,あるいは,ホームボタンに対する操作入力により,ロック画面を表示させずに指紋認証による使用者識別機能を実行するという構成となるにすぎず,甲5発明を組み合わせて相違点1- 1を埋めることはできない。 ① 相違点1-1は,指紋認証による使用者識別機能が,非活性状態から活性状態に切り替えるための操作入力により,かつ,使用者による追加操作なしに行われるという点を含むものであるが,このことは,甲5発明において開示されていない。 ② 相違点1-1は,「前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記移動通信端末機のロック状態を維持するととも に,前記ディスプレイ部にメッセージを表示」するという点を含むものであるが,甲5発明において,認証を実行して失敗したことに応じて行われる表示としては開示されておらず,上記の点は甲5発明において開示されていない。 ③ 相違点1-1は,「前記活性化ボタンにおいて前記非活性状態にあるときに前記操作入力を受け付けると,前記使用者識別機能による認証の結果にかかわらず, 前記ディスプレイ部をオンにし前記活性状態へ切り替え」るという点を含むものであるが,甲5文献においては,ディスプレイがオンであるのはそもそも認証を行う前からであって,(甲5文献【0032】参照),認証を行う前にディスプレイが非活性である状態から認証を行った後に,ディスプレイが活性の状態に切り替わることは,開示されていない。 イ本件発明1-2の進歩性本件発明1-2は,本件発明1-1に従属するものであるところ, 性である状態から認証を行った後に,ディスプレイが活性の状態に切り替わることは,開示されていない。 イ本件発明1-2の進歩性本件発明1-2は,本件発明1-1に従属するものであるところ,前記のとおり,本件発明1-1には進歩性が認められるから,本件発明1-2も進歩性を有する。 (5) 争点2-2(公然実施発明2及び甲5発明に基づく進歩性の欠如)〔原告の主張〕 本件発明2は,公然実施発明2に甲5発明を適用することによって,本件優先日当時の当業者が容易に想到することができたものであるから,次のとおり,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。 ア本件発明2-1の進歩性の欠如 (ア) 相違点 本件発明2-1は,次の点で,公然実施発明2の構成と相違する(以下,この相違点を「相違点2-1」という。)「2-1C 前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,前記使用者の操作が前記第1 の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するための制御部と,2-1D を含む移動通信端末装置であって,2-1E 前記各動作は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機 能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,2-1F 移動通信端末装置。」である点。 (イ) 相違点2-1の検討相違点2-1は,公然実施発明2に甲5発明を適用することに 報伝送機能,ハンズフリー機能,または広告表示機能のいずれかを含む,2-1F 移動通信端末装置。」である点。 (イ) 相違点2-1の検討相違点2-1は,公然実施発明2に甲5発明を適用することによって,当業者が容易に想到できるものである。甲5発明における携帯電話は,ユーザの認証を指紋 の特徴に基づいて行い,ユーザが許可されているか,許可されていないかを判定する機能を備えており,同機能は,本件発明2-1の「指紋認識による使用者識別機能」に該当する。そして,甲5文献には,甲5発明の「携帯電話」は,「ユーザをシームレスに認証しうる」と記載され,「検出した識別情報を,デバイスのライブラリに格納されている識別情報と比較することによって,ユーザを認証してよい」と記 載されている(【0004】)。これらのことからすると,甲5発明は,ユーザがホームボタンを押下したことを受信した時,ユーザによる追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が行われる構成を開示しているといえる。そして,公然実施発明2と甲5発明とは,課題が同様であり,両者を組み合わせる動機付けがあったといえるから,公然実施発明2の「パスコードを入力することによる使用者識別機 能」に代えて,または,これに加えて,「ユーザがホームボタンを押下したことを受 信した時,ユーザによる追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能」が行われる構成を採用して,使用者の操作が第1の操作であった場合,当該使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するように構成することは,本件優先日当時において,当業者が容易に想到し得るものである。 イ本件発明2-2の進歩性の欠如 本件発明2-2は,本件発明2-1の従属項であり,相違点2-1と同様の相違点(以下「相違点2-2」という 当時において,当業者が容易に想到し得るものである。 イ本件発明2-2の進歩性の欠如 本件発明2-2は,本件発明2-1の従属項であり,相違点2-1と同様の相違点(以下「相違点2-2」という。)があるところ,相違点2-1で述べたのと同様,相違点2-2に係る構成も,本件優先日において,当業者が容易に想到し得るものである。 ウ本件発明2-3の進歩性の欠如 本件発明2-3は,本件発明2-1の従属項であり,相違点2-1と同様の相違点(以下「相違点2-3」という。)があるところ,相違点2-1で述べたのと同様,相違点2-3に係る構成も,本件優先日において,当業者が容易に想到し得るものである。 エ本件発明2-4の進歩性の欠如 (ア) 相違点本件発明2-4は,本件発明2-1の従属項であり,公然実施発明2と対比すると,相違点2-1のほかに,次の点で公然実施発明2と相違する(以下,この相違点を「相違点2-4」という。)。 「2-4A 前記使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者 であると識別された場合にはロック状態を解除し,前記使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には前記ロック状態を維持する機能である,」との点。 (イ) 相違点2-4の検討甲5発明においては,指紋認証による使用者識別機能が開示されており,当該使 用者識別機能は,ホームボタンにより得た使用者の指紋情報と,あらかじめ登録さ れた使用者の指紋情報とを比較して,当該使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合(認証に成功した場合)にはロック状態を解除し,あらかじめ登録された使用者でないと識別された場合(認証に失敗した場合)にはロック状態を維持する構成が開示されていることから,公然実施発明2 別された場合(認証に成功した場合)にはロック状態を解除し,あらかじめ登録された使用者でないと識別された場合(認証に失敗した場合)にはロック状態を維持する構成が開示されていることから,公然実施発明2に,同様の課題を有する甲5発明を組み合わせ,相違点2-4を想到することは,当業者にとって容易 であったといえる。 したがって,本件発明2-4は,進歩性を欠くものであって,無効である。 オ本件発明2-5の進歩性の欠如(ア) 相違点本件発明2-5は,本件発明2-1の従属項であり,公然実施発明2との相違は, 本件発明2-1の「使用者識別機能」を「指紋認識を利用した機能である使用者識別機能」に置き換えた点以外は,相違点2-1と同様である(以下,この相違点を「相違点2-5」という。)(イ) 相違点2-5の検討とおり,相違点2-1については,使用者識別機能として,指紋認識 による使用者識別機能が念頭に置かれているため,相違点2-5にかかる構成は,相違点2-1について述べた理由と同様の理由により,本件優先日当時の当業者が,公然実施発明2及び甲5発明に基づき容易に想到し得たものである。 カ本件発明2-6の進歩性の欠如(ア) 相違点 本件発明2-6は,本件発明2-1の従属項であり,公然実施発明2との相違は,本件発明2-1の「使用者識別機能」を「顔認識を利用した機能である使用者識別機能」に置き換えた点以外は,相違点2-1と同様である(以下,上記相違点を「相違点2-6」という。)。 (イ) 相違点2-6の検討 甲5発明には,使用者による追加の操作なしに実行される第1の動作である使用 者識別機能として,顔認識による使用者識別機能が開示されている。また,公然実施発明2は,使用者がホームボタンを長い時 甲5発明には,使用者による追加の操作なしに実行される第1の動作である使用 者識別機能として,顔認識による使用者識別機能が開示されている。また,公然実施発明2は,使用者がホームボタンを長い時間継続して押した場合には,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプレイにロック画面が表示され,ハンズフリー機能を追加の操作をすることなく実行する構成を備えている。 したがって,相違点2-6に係る構成は,本件優先日当時の当業者が,公然実施発明2及び甲5発明に基づき容易に想到し得たものである。 〔被告の主張〕ア本件発明2-1の進歩性次に照らせば,相違点2-1に関し,公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる ことにより,当業者が,両者の相違点を容易に想到することができたとはいえない。 (ア) 相違点1-1と同様に,公然実施発明2と甲5発明が対象とする技術や技術思想や,両者の目的・課題が共通しないことからして,当業者において,公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがあったとはいえない。 (イ) 仮に,公然実施発明2と甲5発明とを組み合わせることができたとしても, 次の①及び②のとおり,甲5発明においては,相違点2-1の構成について開示されていないから,両者を組み合わせても,せいぜい,公然実施発明2における,ホームボタンにおける操作入力,スライダに対するドラッグの操作入力という2段階の操作を経た後の「パスコードによる使用者識別機能の実行」に代えて,指紋認識による使用者識別機能が行われるという構成となるにすぎず,甲5発明を組み合わ せて相違点2-1を埋めることはできない。 ① 相違点2-1は,指紋情報を提供するための追加の操作を実行するようにユーザに要求することなく,ユーザが う構成となるにすぎず,甲5発明を組み合わ せて相違点2-1を埋めることはできない。 ① 相違点2-1は,指紋情報を提供するための追加の操作を実行するようにユーザに要求することなく,ユーザがホームボタンを操作(押下)した時に,指紋情報を検出し,指紋認識による使用者識別機能が行われる構成を含むものであるが,このことは,甲5発明において開示されていない。 ② 相違点2-1は,タッチスクリーンディスプレイ部を非活性状態から活性状 態に切り替えるための使用者の操作(第1の操作又は第2の操作)に応じて,当該使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,使用者識別機能を含む動作(第1動作又は第2動作)を実行し,かかる使用者識別機能が実行された場合にはその結果にかかわらず,タッチスクリーンディスプレイ部は非活性状態から活性状態に切り替わるという構成や,前記使用者の操作が第1の操作であるか,第2の操作であ るかに応じて異なる動作を実行するという構成を含むものであるが,これらのことは,甲5発明において開示されていない。 イ本件発明2-2の進歩性本件発明2-2は,第1の操作がされた場合には,非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と,第 1動作の実行をするとの構成を備えるのに対し,公然実施発明2は,そのような構成を備えない点において,相違点2-1とは異なる独自の相違点がある。 そして,相違点2-1と同様,公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機はないし,甲5発明において開示されているロック画面は,ロック画面上のスライダのドラッグという追加操作が行われた後,パスコード入力により初めて認証が行わ れる構成であって,本件発明2-2における非活性状態の際になされた活性 されているロック画面は,ロック画面上のスライダのドラッグという追加操作が行われた後,パスコード入力により初めて認証が行わ れる構成であって,本件発明2-2における非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,前記非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,ロック画面の表示と第1動作が行われる構成とは全く異なっており,相違点2-2に係る構成が,甲5発明において開示されているとはいえない。 ウ本件発明2-3の進歩性 本件発明2-2は,第2の操作がされた場合には,非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示と,第2動作の実行をするとの構成を備えるのに対し,公然実施発明2は,そのような構成を備えない点において,相違点2-1とは異なる独自の相違点がある。 そして,公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがないこと,公然実 施発明2と甲5発明を組み合わせたとしても,相違点2-3に係る構成に想到する ことができないことは,相違点2-1と同様である。 エ本件発明2-4の進歩性公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがないこと,公然実施発明2と甲5発明を組み合わせたとしても,相違点2-4に係る構成に想到することができないことは,相違点2-1と同様である。 オ本件発明2-5の進歩性公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがないこと,公然実施発明2と甲5発明を組み合わせたとしても,相違点2-5に係る構成に想到することができないことは,相違点2-1と同様である。 カ本件発明2-6の進歩性 公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがないこと,公然実施発明2と甲5発明を組み合わせたとしても,相違点2-6に ことは,相違点2-1と同様である。 カ本件発明2-6の進歩性 公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる動機付けがないこと,公然実施発明2と甲5発明を組み合わせたとしても,相違点2-6に係る構成に想到することができないことは,相違点2-1と同様である。 (6) 争点2-3(公然実施発明2と甲24発明に基づく進歩性の欠如)〔原告の主張〕 本件発明2-1,2-4及び2-6は,公然実施発明2に甲24発明を適用することによって,本件優先日当時の当業者が容易に想到することができたものであるから,次のとおり,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。 ア本件発明2-1の進歩性の欠如 甲24発明においては,カメラによって入力された画像を用いてユーザ認証を行う携帯電話機であることが開示されているところ,甲24文献には,顔認証が,第三者の不正使用を防ぐためのロックを解除する方法として,ユーザによりあらかじめ設定された暗証番号を鍵としてロックを解除する方法よりも,セキュリティが高く,かつ,スムーズに解除できる方法として位置付けられている。前記暗証番号を 鍵としてロックを解除する方法は,まさに公然実施発明2のパスコードによる認証 方法であるから,公然実施発明2に甲24発明を適用する動機付けがある。 そして,甲24発明は,使用者識別・認証のためのセンサを配置した認証システムを備える携帯電話機であり,顔情報を提供するための追加の操作を実行するようにユーザに要求することなく,ユーザが携帯電話機のスリープ状態を解除した場合に,顔情報を検出し,検出した顔情報を携帯電話機に記憶されている顔情報と比較 することによって,ユーザを認証する構成が開示されているか することなく,ユーザが携帯電話機のスリープ状態を解除した場合に,顔情報を検出し,検出した顔情報を携帯電話機に記憶されている顔情報と比較 することによって,ユーザを認証する構成が開示されているから,公然実施発明2に甲24発明を組み合わせれば,相違点2-1に係る構成を得ることができる。 イ本件発明2-4の進歩性の欠如公然実施発明2に組み合わせる動機付けのある甲24発明においては,上記アの顔認証による認証の結果,認証に成功した場合には,ロック状態が解除され,認証 に失敗した場合にはロック状態が維持される構成が開示されているから,相違点2-4に係る構成を得ることができる。 ウ本件発明2-6の進歩性の欠如本件発明2-6と公然実施発明2との相違点2-6は,相違点2-1にかかる構成のうち「使用者識別機能」を「顔認識を利用した機能である使用者識別機能」に 限定したものであるところ,前記アにおいて述べたとおり,相違点2-1に係る構成は,公然実施発明2及び甲24発明に基づいて得ることができるのであるから,相違点2-6も同様といえる。 〔被告の主張〕ア本件発明2-1の進歩性 (ア) 甲24発明は,単に顔認証技術のみが開示されているのではなく,顔認証に失敗し,認証方法を暗証番号認証に切り替えた場合にセキュリティ低下の問題点を指摘した上で,暗証番号入力を促す情報や操作者により入力された文字列を一切表示せず,暗証番号認証が行われていることが持ち主にしかわからないようにするという上記問題点の解決手段を開示している。かかる解決手段は,テンキーを備え る携帯電話であれば可能であるが,スマートフォンである公然実施発明2において は,暗証番号を入力させるためにはディスプレイに暗証番号を入力するためのインターフェー 段は,テンキーを備え る携帯電話であれば可能であるが,スマートフォンである公然実施発明2において は,暗証番号を入力させるためにはディスプレイに暗証番号を入力するためのインターフェース等を表示する必要があり,第三者が暗証番号を入力していると認識し得るような表示を一切することなく,暗証番号の入力を行うことは不可能である。 したがって,公然実施発明2に甲24発明を組み合わせる動機付けはない。 (イ) また,仮に,公然実施発明2と甲24発明とを組み合わせることができた としても,公然実施発明2には識別機能の実行の前に,ロック画面上に表示されたスライダをドラッグする操作を行う点に,誤作動防止等の意義があり,これを排除することは公然実施発明2の機能を損なうこととなるからすると,せいぜい,公然実施発明2のパスコードの入力に代えて,甲24発明の認証画面を用いて顔情報を検出し,顔認証が行われるという構成にすぎず,相違点2-1に係る構成を想到し 得ない。 イ本件発明2-4の進歩性本件発明2-4は,本件発明2-1に従属するところ,本件発明2-1の構成は,公然実施発明2と甲24発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから,相違点2-4に係る構成も,公然実施発明2と甲24発明 に基づいて想到することができない。 ウ本件発明2-6の進歩性本件発明2-6は,本件発明2-1に従属するところ,本件発明2-1の構成は,公然実施発明2と甲24発明に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから,相違点2-6に係る構成も,公然実施発明2と甲24発明 に基づいて想到することができない。 (7) 争点2-4(無効理由4(サポート要件違反)の有無)〔原告の主張〕アロッ であるから,相違点2-6に係る構成も,公然実施発明2と甲24発明 に基づいて想到することができない。 (7) 争点2-4(無効理由4(サポート要件違反)の有無)〔原告の主張〕アロック画面の表示に係る構成本件発明2の構成要件2-1Cにおける「前記活性状態」とは,構成要件2-1 Bの「前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示 された活性状態」をいうものであるから,構成要件2-1Cの構成は,活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,ロック画面を表示するとともに,当該動作が第1の操作であった場合には第1動作を,第2の操作であった場合には第2動作を実行する構成である。ところが,本件明細書2には,「第1動作」及び「第2動作」を実行するときにロック画面を表示することについて何ら開示されていない。 したがって,本件発明2-1は,サポート要件に違反する。また,本件発明2-2ないし2-6は,本件発明2-1を引用するものであるから,これらも全てサポート要件に違反する。よって,本件発明2-1ないし2-6は,いずれも特許法36条6項1号に違反し,これらの発明に係る本件特許2は,同法123条1項4号により無効にすべきものである。 イ 「使用者の操作以外の追加の操作をすることなく」の構成構成要件2-1Cの構成は,活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,ロック画面を表示するとともに,当該操作が第1の操作であった場合には第1動作を,第2の操作であった場合には第2動作を,「前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく」実行する構成である。 ところで,被告は,甲5発明において開示されているロック画面の図には,スライダが図示されていることから,認証を行うためにはスライダのドラッグとい の操作をすることなく」実行する構成である。 ところで,被告は,甲5発明において開示されているロック画面の図には,スライダが図示されていることから,認証を行うためにはスライダのドラッグという追加の操作が必要である,すなわち,ロック画面にスライダが表示されていれば,使用者識別機能による認証を行うために,必ずスライダのドラッグという追加の操作が必要であると主張する。しかるところ,本件明細書2には,ロック画面に相当す るものとして,図1,図2,図7及び図8があり,これらの図のいずれにも,「スライダ」が図示されていることからすると,これらのロック画面において使用者識別機能による認証を行うためには,必ずスライダのドラッグという追加操作を要することになる。 そうすると,本件明細書2には,使用者識別機能を,「前記使用者の操作以外の操 作をすることなく」実行する構成は開示されていないこととなり,本件発明2-1 は,サポート要件に違反し,本件発明2-1に従属する本件発明2-2ないし本件発明2-6も,同様に,サポート要件違反となる。 〔被告の主張〕アロック画面の表示に係る構成本件明細書2には,非活性状態の際に使用者が活性化ボタンを押すと活性状態に 切り替わり,切り替わった活性状態としてロック画面が表示されること,移動通信端末機が活性状態に切り替わるとともに,所定の動作が行われ,その動作として使用者識別機能があること,移動通信端末機が活性状態に切り替わるとともに,所定の動作が行われ,その動作としてハンズフリー機能もあることが記載されている(【0024】,【0029】,【0030】,【0048】,【0065】)。加えて,本件 発明2における動作1,動作2を,活性状態への切り替え時に行うことができる動作から任意に 記載されている(【0024】,【0029】,【0030】,【0048】,【0065】)。加えて,本件 発明2における動作1,動作2を,活性状態への切り替え時に行うことができる動作から任意に選択できること(【0035】)及び実施形態が互いに排他的なものではないこと(【0020】)との各記載を踏まえれば,ディスプレイを活性状態に切り替えるために活性化ボタンを押すと,ディスプレイが活性状態に切り替わり,ロック画面が表示され,かつ,第1動作として使用者識別機能,第2動作としてハン ズフリー機能が実行される構成が開示されているといえ,本件発明2にサポート要件違反はない。 イ 「使用者の操作以外の追加の操作をすることなく」の構成被告は,原告が引用する甲5文献のどこにも,本件明細書2に記載されている非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,非活性状 態から活性状態に切り替えるという構成は開示されておらず,そのような技術思想も読み取れないことから,甲5発明における認証は,スライダのドラッグという追加操作を要する構成であると主張しているのであって,ロック画面にスライダが表示されていれば,使用者識別機能による認証を行うために,必ずスライダのドラッグという追加の操作が必要であることを本件発明2との関係においても主張してい るものではない。 そもそも,本件明細書2には,単に移動通信端末機が活性状態に切り替わるのではなく,所定の動作を行う旨の記載(【0030】)や,活性化ボタンを押すことで行われる動作の実施例として使用者識別機能やハンズフリー機能がある旨の記載がある(【0035】,【0048】,【0065】)。これらの記載からすれば,当業者は,使用者の活性化ボタンに対する操作以外の追加の操作を 施例として使用者識別機能やハンズフリー機能がある旨の記載がある(【0035】,【0048】,【0065】)。これらの記載からすれば,当業者は,使用者の活性化ボタンに対する操作以外の追加の操作をすることなく,使用者識別 機能が実行される構成が開示されていると理解することができ,本件発明2にサポート要件違反はない。 (8) 争点3-1(訂正要件の具備)〔被告の主張〕次のとおり,本件訂正事項1-1,1-2に係る訂正により,無効理由1は解消 されるものである。 ア本件発明1(ア) 訂正の目的本件訂正事項1-1は,本件発明1に,新たに,「移動通信端末機が非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付けると,ディスプレイ部にロック画面が 表示された活性状態へ切り替える」との構成を追加で規定するものであり,また,本件発明1-2は,「前記活性状態」について「前記ロック画面が表示された前記活性状態」と特定するものであり,いずれも,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(特許法134条の2第1項ただし書第1号)。 (イ) 新規事項の追加はないこと 本件明細書1における移動通信端末機の構成には,本件発明1に係る移動通信端末機の外観として,図1の構成を備えることが説明されており,当該図1は,移動通信端末機が,非活性状態の際に,活性化ボタンを押すことで,ディスプレイ部にロック画面が表示された活性状態に切り替える機能を有するものである旨の説明が記載されている(【0025】,【0029】)。また,本件明細書1には,移動通信端 末機においては,活性化ボタンを押すことにより,単に非活性状態から,活性状態 に切り替える機能だけではなく,所定の動作として,顔面認識方法,指紋認識方法などを用いた使用者 ,移動通信端 末機においては,活性化ボタンを押すことにより,単に非活性状態から,活性状態 に切り替える機能だけではなく,所定の動作として,顔面認識方法,指紋認識方法などを用いた使用者認証プロセスを実行することができ,かつ,非活性状態からロック画面が表示された活性状態への切り替えが,他の実施形態と互いに排他的なものではなく,両者の実施形態を併せて実現できることも記載されている(【0030】,【0011】,【0035】,【0048】,【0056】,【0020】)。 このような本件明細書1の各記載からすると,活性化ボタンを介する各動作態様について,ロック画面の表示を適用し得るものと理解されるところ,活性化ボタンを介する動作の一態様である使用者識別機能についても,ロック画面の表示が適用できるものと理解できる。したがって,本件訂正事項1-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,特許法1 34条の2第9項で準用する同法126条5項が禁止する新規事項の追加には当たらない。 また,本件明細書1には,上記の各記載に加え,「具体的には,端末機には,ディスプレイがオフの状態の非活性化状態からディスプレイがオン状態の活性化状態に切り替えるボタンが備えられているのが一般的であるが,現在多くの使用者はこの ような活性化切り替えボタンを意識的又は無意識的に数回押す動作を行う。通常的な端末機では,活性化切り替えボタンが押された際,使用者が設定した背景画面に,現在時間などの非常に簡単な情報だけが表示されるのが一般的であった」との記載がある(【0005】)。かかる記載からすれば,非活性状態から活性状態に切り替える際,ロック画面に現在の時間を表示することができることを,当業者であれば理 示されるのが一般的であった」との記載がある(【0005】)。かかる記載からすれば,非活性状態から活性状態に切り替える際,ロック画面に現在の時間を表示することができることを,当業者であれば理 解できるものであり,本件訂正事項1-2も,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項の追加には当たらない。 (ウ) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと本件訂正事項1-1及び本件訂正事項1-2は,いずれも,本件発明1を本件明 細書1に記載した事項により限定するものであり,発明のカテゴリーを変更するも のではなく,かつ,訂正前の発明の対象や目的を変更するものでもなく,実質上,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (エ) 独立特許要件本件発明1に係る請求項1及び4は,本件無効審判請求1の対象とされているため,本件訂正事項1-1及び1-2に関し,特許法134条の2第9項で読み替え て準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 また,本件発明1に係る請求項2,3及び9は,請求項1を準用するものであり,訂正後の請求項1は,進歩性を有するものであるから,訂正後の請求項2,3及び9は,訂正後の請求項1と同様,進歩性を有し,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項に適合する。 イ本件発明2(ア) 訂正の目的本件訂正事項2-1は,「前記活性状態」を「前記ロック画面が表示された前記活性状態」と更に特定し,本件訂正事項2-2は,「ロック画面」を「前記ロック画面には,現在の時間を表示することができる」との構成要件を追加し,本件訂正事項 2-3は,請求項1において規定された「制御部」について,「前記非活性 事項2-2は,「ロック画面」を「前記ロック画面には,現在の時間を表示することができる」との構成要件を追加し,本件訂正事項 2-3は,請求項1において規定された「制御部」について,「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が前記第1の操作であった場合には前記第1動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行し,」との構成要件を追加するものであり,本件訂正 事項2-4は,請求項7につき,「前記使用者識別機能による認証の結果,前記使用者が正当な使用者と認証されなければ,前記ディスプレイ部にメッセージを表示するよう構成される」との構成要件を追加するものである。これらの訂正は,いずれも,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ) 新規事項の追加はないこと 本件明細書2にも,上記ア(イ)において指摘した本件明細書1と同様の記載があ り,当業者であれば,非活性化状態の際に活性化ボタンを押すことで,ロック画面が表示された活性状態に切り替えるとともに,所定の動作が行われることを理解することができ,本件訂正事項2-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえる。 また,本件明細書2には,上記ア(イ)において指摘した本件明細書1と同様の記載 (【0005】)があり,かかる記載から,当業者であれば,非活性状態から活性状態に切り替える際,本件訂正事項2-2の内容である,ロック画面に現在の時間を表示することができることを理解できる。また,本件明細書2の全体の記載からすれば,当業者であれば,本件訂正事項2-3により訂正する「制御部」の内容が 事項2-2の内容である,ロック画面に現在の時間を表示することができることを理解できる。また,本件明細書2の全体の記載からすれば,当業者であれば,本件訂正事項2-3により訂正する「制御部」の内容が本件明細書2に記載されていると理解することができる。加えて,本件訂正事項2 -4は,本件明細書2の「使用者識別部423により本当な使用者であると認証されると,移動通信端末機100のロック状態が解除されてすべての機能を使用することができる状態となり,本当な使用者であると認証されないと,警告メッセージ表示とともにロック状態が持続される。」との記載(【0053】)に基づくものである。 これらからすれば,本件訂正事項2-1~本件訂正事項2-4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 (ウ) 実質上特許請求の範囲を追加し,又は変更するものではないこと本件訂正事項2-1~2-4は,いずれも,本件発明2を本件明細書2に記載した事項により限定するものであり,発明のカテゴリーを変更するものではなく,か つ,訂正前の発明の対象や目的を変更するものでもなく,実質上,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (エ) 独立特許要件本件発明2の請求項1ないし4,7及び8は本件無効審判請求2の対象とされているので,これらの請求項に関わる本件訂正2に関して,特許法134条の2第9 項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。また,請 求項5及び6は,請求項1を準用するものであり,訂正後の請求項1は,進歩性を有するものであるから,訂正後の請求項5及び6は,訂正後の請求項1と同様に,進歩性を有し,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項 準用するものであり,訂正後の請求項1は,進歩性を有するものであるから,訂正後の請求項5及び6は,訂正後の請求項1と同様に,進歩性を有し,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項に適合する。 〔原告の主張〕 ア本件発明1(ア) 新規事項の追加に当たること本件訂正事項1-2は,本件特許1の請求項4において,請求項1の「ロック画面」について,現在の時間を表示することができるロック画面であるとの構成を加えるものであるが,本件明細書1の発明の詳細な説明のどこにも,「ロック画面」に おいて「現在の時間」を表示することについての記載はないし,図面にも「現在の時間」を表示した「ロック画面」の記載はない。被告が引用する本件明細書の【0005】は,従来技術である「通常的な端末」に関する記載であって,ロック画面やその解除も含め,端末機のセキュリティに関する事柄を意識した記載になっておらず,上記記載から,本件訂正1-2によって追加されたロック画面には現在の時 間を表示することができるとの構成が開示されているとはいえず,本件訂正1-2は,新規事項を追加するものである。 (イ) 訂正の道連れ的な不認容本件特許1において,訂正前の請求項2~4及び9は,請求項1を引用するものであるから,これらは,「一群の請求項」である。特許庁の「訂正の請求単位の考え 方」によれば,「一群の請求項」についてされた訂正請求の一部が認められない場合,当該「一群の請求項」についてされた別の訂正請求も一体的に認められないことになる。 そうすると,本件訂正事項1-2に係る訂正請求は,前記(ア)のとおり,認められないことから,これと「一群の請求項」の関係にある請求項1~3及び9について された訂正請求についても,一体的に認め そうすると,本件訂正事項1-2に係る訂正請求は,前記(ア)のとおり,認められないことから,これと「一群の請求項」の関係にある請求項1~3及び9について された訂正請求についても,一体的に認められない。 イ本件発明2(ア) 新規事項の追加に当たること本件訂正事項2-2は,本件特許2の請求項2において,「ロック画面」について,現在の時間を表示することができるロック画面であるとの構成を加えるものであるが,本件明細書2の発明の詳細な説明のどこにも,「ロック画面」において「現在の 時間」を表示することについての記載はないし,図面にも「現在の時間」を表示した「ロック画面」の記載はない。被告が引用する本件明細書2の【0005】は,従来技術である「通常的な端末」に関する記載であって,ロック画面やその解除も含め,端末機のセキュリティに関する事柄を意識した記載になっておらず,上記記載から,本件訂正事項2-2によって追加されたロック画面には現在の時間を表示 することができるとの構成が開示されているとはいえず,本件訂正事項2-2は,新規事項を追加するものである。 (イ) 訂正の道連れ的な不認容本件特許2において,訂正前の請求項2~8は,請求項1を引用するものであるから,これらは,「一群の請求項」である。そして,本件訂正2-2に係る訂正請求 は,前記(ア)のとおり,認められないことから,前記「特許庁の請求単位の考え方」に従えば,これと「一群の請求項」の関係にある請求項1,3~8についてされた本件訂正事項2-1,2-3及び2-4についても,一体的に認められない。 (9) 争点3-2(無効理由1の解消の有無)〔被告の主張〕 ア本件訂正発明1-1本件訂正事項1-1による訂正後の本件発明1-1(以下「本件 -4についても,一体的に認められない。 (9) 争点3-2(無効理由1の解消の有無)〔被告の主張〕 ア本件訂正発明1-1本件訂正事項1-1による訂正後の本件発明1-1(以下「本件訂正発明1-1」という。)と公然実施発明1とでは,上記(4)において指摘した点に加え,次の点が相違する。すなわち,本件訂正発明1-1は,前記非活性状態にあるときに使用者による前記操作入力(非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操 作)を受け付けると,前記ディスプレイ部にロック画面が表示された前記活性状態 へ切り替え,当該操作以外の使用者による追加の操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態からロック画面が表示された前記活性状態への切り替えのための前記操作入力により行われるとの構成を備えるのに対し,公然実施発明1はそのような構成を備えない点である。 そして,甲5発明には,スライダが表示されるロック画面の構成が開示されてい るが,ロックを解除したりするに際し,スライダに対する操作入力を要求する構成のみが開示されており,ロック画面を表示しつつ,スライダをドラッグする操作入力なしにロックを解除したり,認証を実行するような構成は一切開示されておらず,公然実施発明1に甲5発明を組み合わせて得られるのは,せいぜい,ディスプレイが活性化された後のスライダが表示されたロック画面において,スライダに対する 操作入力がされることによってはじめて認証が実行される構成であり,上記相違点に想到することはなく,本件訂正発明1-1は進歩性を有する。 イ本件訂正発明1-2本件訂正事項1-2による訂正後の本件発明1-2(以下「本件訂正発明1-2」という。)は,本件発明1-1の従属項であるところ,上記アのとおり,本件訂正発 は進歩性を有する。 イ本件訂正発明1-2本件訂正事項1-2による訂正後の本件発明1-2(以下「本件訂正発明1-2」という。)は,本件発明1-1の従属項であるところ,上記アのとおり,本件訂正発 明1-1は進歩性を有するから,本件訂正発明1-2も進歩性を有する。 〔原告の主張〕否認する。 被告は,公然実施発明1に組み合わせる甲5発明に開示されている構成は,スライダのドラッグを操作することで指紋認証を行うものであると主張するが,原告が 公然実施発明2に組み合わせる甲5発明の構成は,ホームボタンの背後にセンサを配置し,ユーザが当該ホームボタンを押下した時に,ユーザからの明示的な入力を要求することなく,指紋による認証を行う構成である。そして,原告が主張する上記構成は甲5発明において開示されているし,公然実施発明1と甲5発明の組合せは,スライダのドラッグ操作後のパスコード認証を排除するものではなく,指紋認 証と両立し得るものであり,公然実施発明1に甲5発明を組み合わせた場合におい て,パスコード認証とともにスライダのドラッグ操作を残しても,残さなくてもよいものである。したがって,公然実施発明1に甲5発明を組み合わせる場合には,スライダのドラッグ操作が排除されることになるとの被告の上記主張は,その前提が誤っているし,公然実施発明1と甲5発明を組み合わせることにより,本件発明1と公然実施発明1との間の各相違点が埋められることは,前記(4)において主張 したとおりであって,結局,本件訂正発明1-1及び1-2の進歩性は認められない。 (10) 争点3-3(無効理由2の解消の有無)〔被告の主張〕次のとおり,本件訂正事項2-1,2-2,2-3,2-4に係る訂正により, 無効理由2は解消されるものであ られない。 (10) 争点3-3(無効理由2の解消の有無)〔被告の主張〕次のとおり,本件訂正事項2-1,2-2,2-3,2-4に係る訂正により, 無効理由2は解消されるものである。 ア本件訂正発明2-1本件訂正事項2-1による訂正後の本件発明2-1(以下「本件訂正発明2-1」という。)と公然実施発明2とでは,上記(5)において指摘した点に加え,次の点が相違する。すなわち,本件訂正発明2-1は,前記非活性状態にあるときに使用者 による前記操作入力(非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操作)を受け付けると,前記ディスプレイ部にロック画面が表示された前記活性状態へ切り替えるとともに,使用者識別機能が,当該操作以外の使用者による追加の操作なしに,行われるとの構成を備えるのに対し,公然実施発明2はそのような構成を備えない点である。 そして,公然実施発明2においても,甲5発明のいずれにおいても,スライダを表示するロック画面で,スライダをドラッグする操作入力が行われてはじめて認証が開始される構成しか開示されておらず,ロック画面を表示しつつ,スライダをドラッグする操作入力なしにロックを解除したり,認証を実行するような構成は開示されていない。したがって,本件訂正発明2-1は進歩性を有する。 イ本件訂正発明2-2 本件訂正事項2-2による訂正後の本件発明2-2(以下「本件訂正発明2-2」という。)は,非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,現在の時間を表示することができるロック画面が表示されることと,第1の動作の実行が行われるのに対し,公然実施発明2はそのような構成を備えない点で相違する。 そして, 状態に切り替えるとともに,現在の時間を表示することができるロック画面が表示されることと,第1の動作の実行が行われるのに対し,公然実施発明2はそのような構成を備えない点で相違する。 そして,そもそも,公然実施発明2及び甲5発明には,ロック画面を表示しつつ,スライダをドラッグする操作入力なしにロックを解除したり,認証を実行するような構成は開示されていないのであるから,本件訂正発明2-2も,本件訂正発明2-1と同様,進歩性を有する。 ウ本件訂正発明2-4 本件訂正事項2-3による訂正後の本件発明2-4(以下「本件訂正発明2-4」という。)と公然実施発明2とでは,本件訂正発明2-2と同様,非活性状態の際になされた活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて,非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,現在の時間を表示することができるロック画面が表示されることと,第1の動作の実行が行われるのに対し,公然実施発明2はそのような構 成を備えない点で相違するところ,公然実施発明2及び甲5発明に開示された構成からして,上記相違点を想到することができるとはいえず,本件訂正発明2-4も,進歩性を有する。 エ本件訂正発明2-5本件訂正事項2-4による訂正後の本件発明2-5(以下「本件訂正発明2-5」 という。)は,使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されなければ,ディスプレイ部にメッセージを表示する構成を有しているが,公然実施発明2はかかる構成を有しない点で相違する。そして,甲5発明には,ユーザがホームボタンを押下したことを受信した時に,使用者識別機能が行われることも,ユーザによる追加の操作なしに使用者識別機能が行われることも開示されておらず, 公然実施発明2に甲5発明を組み合わせたとして ボタンを押下したことを受信した時に,使用者識別機能が行われることも,ユーザによる追加の操作なしに使用者識別機能が行われることも開示されておらず, 公然実施発明2に甲5発明を組み合わせたとしても,上記相違点を想到することは できず,本件訂正発明2-5は,進歩性を有する。 〔原告の主張〕否認する。 被告は,甲5発明に開示されている構成として,スライダのドラッグを操作することで指紋認証を行うものであると主張するが,原告が公然実施発明2に組み合わ せる甲5発明の構成は,ホームボタンの背後にセンサを配置し,ユーザが当該ホームボタンを押下した時に,ユーザからの明示的な入力を要求することなく,指紋による認証を行う構成であり,かかる構成は開示されており,しかも,スライダのドラッグ操作と指紋認証とは両立するものである。したがって,公然実施発明2に甲5発明を組み合わせる場合には,スライダのドラッグ操作が排除されることになる との被告の上記主張は,その前提が誤っているし,公然実施発明2と甲5発明を組み合わせることにより,本件発明2と公然実施発明2との間の各相違点が埋められることは,前記(5)において主張したとおりであって,結局,本件訂正発明2-1~本件訂正発明2-6(以下,これらを併せて「本件訂正発明2」という。)の進歩性は認められない。 (11) 争点3-4(無効理由3の解消の有無)〔被告の主張〕本件訂正発明2と公然実施発明2との相違点は,前記(10)で指摘したのと同様である。そして,公然実施発明2に甲24発明を組み合わせたとしても,かかる相違点を想到することはできない。すなわち,甲24発明が開示している構成は,顔認 証に失敗した後に行われる暗証番号認証に際し,暗証番号認証に関する表示を一切行わない構成 わせたとしても,かかる相違点を想到することはできない。すなわち,甲24発明が開示している構成は,顔認 証に失敗した後に行われる暗証番号認証に際し,暗証番号認証に関する表示を一切行わない構成であって,ハードウェアによるキーを必須の前提としており,そのような構成を有しないスマートフォンに係る公然実施発明2に組み合わせる動機はないし,公然実施発明2にはスライダを表示するロック画面において,ロックを解除したりするに際してスライダをドラッグする操作入力を要求する構成しか開示され ておらず,これに甲24発明を組み合わせたとしても,せいぜい,ディスプレイが 活性化された後のスライダが表示されたロック画面において,スライダに対する操作入力がなされることによってはじめて認証が実行される構成であり,本件訂正発明2の構成に想到することはできない。したがって,本件訂正発明2は,進歩性を有するから,無効理由3についても解消されるものではない。 〔原告の主張〕 否認する。 公然実施発明2に甲24発明を組み合わせる動機付けがあること,甲24発明には携帯電話機の電源が起動された場合や,スリープ状態が解除された場合等に,ロック状態を解除するように指示されたものとするとの構成が開示されていることからすると,本件訂正発明2についても,公然実施発明2に甲24発明を組み合わせ ることにより,容易に想到することができたといえる。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-1(構成要件1-1B及び2-1Bの充足性)について(1) 本件発明1-1に係る構成要件1-1Bは,「前記移動通信端末機は,前記移動端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために, 前記非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付ける活性化ボタン 件1-1Bは,「前記移動通信端末機は,前記移動端末機の非活性状態から前記移動通信端末機の活性状態への切り替えのために, 前記非活性状態にあるときに使用者による操作入力を受け付ける活性化ボタンを備え」ているとの記載であり,本件発明2-1に係る構成要件2-1Bは「外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボタン」との記載である。 一方,原告が公表しているユーザガイド(乙1)及び技術仕様書(乙2)によれば,原告製品1~4は,ホームボタンを備えており,ホームボタンには指紋認証センサーであるTouchIDが組み込まれていること,原告製品を使用していない間は,電力を節約するために自動的にディスプレイがオフとなり,セキュリティのためにロックされるスリープ状態になり,TouchIDに登録した指を使っ てホームボタンを押すことにより,ロックが解除されることが認められる。ここで, スリープ状態とは,外部装置と通信可能な状態であるが,ディスプレイの表示がオフである状態のことをいい,スリープ状態を解除するとは,外部装置と通信可能な状態で,かつ,ディスプレイの表示がオンである状態のことをいうものである。そして,原告製品1~4は,登録している指でホームボタンを押す操作によって,ロックが解除されるのであるから,当該ホームボタンは,ロック解除の前提となるス リープ解除状態に切り替えられる構成をも有するものと認められる。 そうすると,原告製品1~4のスリープ状態及びスリープ解除状態とは,構成要件1-1B及び2-1Bの非活性状態及び活性状態とそれぞれ同義であるといえるところ, られる構成をも有するものと認められる。 そうすると,原告製品1~4のスリープ状態及びスリープ解除状態とは,構成要件1-1B及び2-1Bの非活性状態及び活性状態とそれぞれ同義であるといえるところ,原告製品1~4は,非活性状態から活性状態への切り替えのために,使用者による操作入力を受け付けるボタンを備えているといえる。 (2) 原告は,構成要件1-1B及び2-1Bの「ボタン」に該当するためには,これが全体として押し込まれて物理的に高さ位置が小さく変化することを必須の要件とするところ,原告製品1~4のホームボタンは,感圧式のセンサーであり,押し込んで操作するものではなく,物理的に高さ位置が変化することはないから,構成要件1-1B及び2-1Bの「活性化ボタン」に該当しないと主張する。 しかしながら,本件明細書1には,「活性化ボタン」につき,高さ方向の位置が変化することや,へこむことというような限定を示唆する記載は認められず,原告の上記主張は採用できない。また,原告が使用者に向けて公表しているユーザガイドには,ロックを解除する前の動作として,ホームボタンを押す旨の説明がされていること(乙1)からすると,原告製品1~4のスリープ状態を解除するための動作 として,ホームボタンを押し込んで操作するものであることが明らかである。 (3) 以上によれば,原告製品1~4のホームボタンは,構成要件1-1B及び2-1Bの「活性化ボタン」に該当するから,原告製品1~4は,構成要件1-1B及び2-1Bを充足すると認められる。 2 争点1-2(構成要件1-1D及び2-1Cの充足性) (1) 本件発明1に係る構成要件1-1Dは「前記使用者による追加の操作なし に,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への 要件1-1D及び2-1Cの充足性) (1) 本件発明1に係る構成要件1-1Dは「前記使用者による追加の操作なし に,指紋認識による使用者識別機能が,前記非活性状態から前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力により行われ」ること,本件発明2-1に係る構成要件2-1Cは「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,前記使用者の操作が前記第 1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行するための制御部」を有する旨を記載しており,「第1動作」又は「第2動作」は,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能又は広告表示機能のいずれかを含む動作 のことをいうとされている(構成要件2-1E参照)。 一方,原告が公表しているユーザガイド(乙1)及び技術仕様書(乙2の1~7)には,原告製品1~7は,指紋認証センサーとしてTouchIDが組み込まれたホームボタンを備えており,ロックを解除するための操作として,TouchIDで登録した指を使ってホームボタンを押す旨の説明がされている。これらからす ると,原告製品1~7は,ホームボタンを指で押すことにより,TouchIDが働き,登録した指紋と指紋認証センサーが認識した指紋とを照合して,ロックを解除する機能を備えており,かかるロック解除のためのホームボタンを押すという操作により,スリープ状態からスリープ解除状態となり,併せて,ロックが解除される構成を有することが 紋とを照合して,ロックを解除する機能を備えており,かかるロック解除のためのホームボタンを押すという操作により,スリープ状態からスリープ解除状態となり,併せて,ロックが解除される構成を有することが認められるが,ロック解除のためにホームボタンを押すと いう操作以外の操作を要するとは認められない。 そうすると,原告製品1~7は,スリープ状態からスリープ解除状態への切り替えのための操作入力であるホームボタンを押すという操作以外の追加操作なしに,指紋認識による使用者識別機能が実行されるものであるといえ,構成要件1-1Dを満たし,同時に,原告製品1~7に係る上記操作により,かつ,上記操作以外の 追加の操作を要することなく,第1操作又は第2操作に応じて,使用者識別機能を 含む各動作を実行するものであるから,構成要件2-1Cも満たすといえる。 そして,原告製品1~4は,スリープ状態の際に,指紋認証センサーを組み込んだホームボタンを登録した指で押すことにより,ロック状態が解除されるというものであるが,ロック状態を解除する場合には,その前提として,スリープ状態が解除されることを当然に予定しているものといえ,ホームボタンを登録している指で 押すという操作により,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるものであることも認められる。 (2) 原告は,原告製品1~7は,ホームボタンを押さずに,サイドボタンを押す,又は端末を手前に傾けるといった動作により,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面を表示した後に,ホームボタンに指をタッチする(指を置 く)ことにより,ロック状態の解除又は維持という指紋認識による使用者識別機能が可能となるため,指紋認識による使用者識別機能の実行のために,ホームボタンを押す必要はないし,ホ ッチする(指を置 く)ことにより,ロック状態の解除又は維持という指紋認識による使用者識別機能が可能となるため,指紋認識による使用者識別機能の実行のために,ホームボタンを押す必要はないし,ホームボタンのプレスによりスリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面が表示される場合であっても,プレスに伴うが,それとは異なるタッチという操作により使用者識別機能が実行されている旨主張する。 確かに,原告製品1~7に係るユーザガイド(乙1の1・2)や技術仕様(乙2の1~7)によれば,原告製品1~7は,サイドボタンを押したり,端末を手前に傾ける動作を行うことによっても,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えることができること,スリープ解除状態でロック画面が表示され,TouchIDで登録した指でホームボタンを押すことによりロックが解除される構成を有する ことが認められる。 しかしながら,サイドボタンを押したり端末を傾けるといった動作とは別に,ホームボタンを指で押す操作によって,指紋認識による使用者識別機能が実行されることが認められるところ,指紋認識による使用者識別機能の実行の前提として,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えられることを当然に含むものといえる のは前記説示のとおりであり,ホームボタンを押すという操作以外の操作でスリー プ状態からスリープ解除状態に切り替えられることは,構成要件の充足を否定する理由とはならない。また,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるためのホームボタンに対する操作が,原告が主張するタッチする(指を置く)ことによるものであったとしても,指紋認識による使用者識別機能の実行のために,ホームボタンの操作とは別の操作を要するものではないことに変わりはなく,原告の上記主 告が主張するタッチする(指を置く)ことによるものであったとしても,指紋認識による使用者識別機能の実行のために,ホームボタンの操作とは別の操作を要するものではないことに変わりはなく,原告の上記主 張は採用できない。 また,原告は,ホームボタンをスタイラスペンで押すことによっても,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面を表示させることができるが,この場合には,指紋認識による使用者識別に失敗した時に表示されるエラー表示が表示されないことを理由に,ホームボタンを押すという操作によっては指紋認識に よる使用者識別機能が実行されていないと主張する。かかる主張は,ホームボタンを押してスリープ状態を解除してロック画面を表示させる動作と指紋認識による使用者識別機能の実行とが別の操作によって行われることを前提とするものと解されるが,原告製品1~7においてホームボタンを指で押すことによる操作がされた場合には,かかる操作によって,スリープ状態が解除されてロック画面が表示され, かつ,指紋認識による使用者識別機能が実行されることが認められ,スリープ解除状態への切替えと指紋認識による使用者識別機能の実行が別の操作で行われているものではないのであるから,原告の主張は理由がないものといえる。 (3) 以上によれば,原告製品1~7は,構成要件1-1D及び2-1Cを充足すると認められる。 3 争点1-3(構成要件2-1Cの充足性)(1) 本件発明2-1に係る構成要件2-1Cは,前記2(1)のとおり,非活性状態の際における活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて活性化状態に切り替えるとともに,使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,使用者の操作が第2操作であった場合には第1動作とは異なる第2動作を,使用者の追加の に対する使用者の操作に基づいて活性化状態に切り替えるとともに,使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を,使用者の操作が第2操作であった場合には第1動作とは異なる第2動作を,使用者の追加の 操作をすることなく実行する制御部を有することが記載されている。 一方,原告が公表しているユーザガイド(乙1)及び原告製品8~12に係る技術仕様書(乙2の8~12)によれば,原告製品8~12は,カメラによる顔認識を行うFaceIDを備えており,ロックを解除するための操作として,サイドボタン又はスリープ解除ボタン(トップボタン)を押し,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替えるとともに,FaceIDによる顔認識による使用者識別 機能が実行されることが認められる。そして,顔認識による使用者識別機能の実行に,上記のサイドボタン又はトップボタンに対する使用者の操作以外の操作を要するものとは認められない。 そうすると,原告製品8~12は,スリープ状態からスリープ解除状態への切り替えのためのサイドボタン又はトップボタンを押すという操作以外の追加操作なし に,第1動作である顔認識による使用者識別機能を実行するというものであり,構成要件2-1Cを満たすといえる。 (2) 原告は,原告製品8~12は,ディスプレイを指やスタイラスペンでタップするか,端末を手前に傾ける方法によってもスリープ状態からスリープ解除状態に切り替えてロック画面を表示した後,使用者が端末に顔を向けるという動作又は端 末を使用者の顔に向けるという操作によって,第1動作である顔認識による使用者識別機能が実行されているのであるから,サイドボタン又はトップボタンを押すという操作によって顔認識による使用者識別機能が実行されているわけではない上,サイドボタン又は 1動作である顔認識による使用者識別機能が実行されているのであるから,サイドボタン又はトップボタンを押すという操作によって顔認識による使用者識別機能が実行されているわけではない上,サイドボタン又はトップボタンを押すことによって第1動作がされるとしても,顔認識による識別機能を実行するには,使用者が端末に顔を向けるか端末を使用者に 向けるという追加の操作を要する旨主張する。 原告の上記主張は,結局のところ,顔認識による使用者識別機能を実行するには,サイドボタン又はトップボタンを押すという操作以外の操作として,端末に顔を向けるとか端末を顔に向けることを要することをいうものと解される。しかしながら,原告製品8~12において,サイドボタン又はトップボタンを押すことによる操作 がされた場合には,かかる操作によって,スリープ状態が解除されてロック画面が 表示され,かつ,顔認識による使用者識別機能が実行されることが認められることに加え,そもそも,使用者が原告製品8~12を使用する際に,顔認識による使用者識別機能を実行する場合には,端末を向いて操作するのが通常であるといえることからすると,顔認識による使用者識別機能の実行のために,端末に顔を向ける,あるいは,端末を顔に向けるという追加の操作が必要となるものと評価することは できないといえ,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,原告製品8~12は,構成要件2-1Cを充足すると認められる。 4 争点2-1(無効理由1(公然実施発明1及び甲5発明に基づく進歩性の欠如)の有無) (1) 本件発明1-1の要旨本件発明1-1の要旨は,本件明細書1の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定される,前記第2の1前提事実の(2)ア(イ)記載のとおりである。 )の有無) (1) 本件発明1-1の要旨本件発明1-1の要旨は,本件明細書1の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定される,前記第2の1前提事実の(2)ア(イ)記載のとおりである。 (2) 公然実施発明1の構成ア原告は,被告による本件各特許の出願日前において,iOS4.2又はiO S4.3を搭載したスマートフォンを販売していたものであるところ,同スマートフォンに係る発明は,日本国内において公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)に当たり,その構成は,前記第2の1前提事実の2(5)ア記載のとおりである(公然実施発明1)。かかる公然実施発明1については,証拠(甲10,13~16)によれば,次のとおりの事項が認められる。 (ア) 公然実施発明1は,スマートフォンの概要として,ディスプレイとホームボタンを備え,電話をかけたり,電話を受けたり,インターネットに接続することが可能な通信部を備え,また,計算機の計算結果やメールその他のデータを保存するメモリ手段を備えている。 (イ) 公然実施発明1には,スリープ状態とスリープ解除状態とがあり,その説明 として,ユーザーズガイド(甲10)には,「iPhoneをあまり使用していない ときは,ロックしてディスプレイをオフにすることでバッテリーを節約できます。 iPhoneがロックされているときは,画面に触れても操作できません。その場合でも,電話に出たり,テキストメッセージやアップデートを受信したりできます。」との記載がある。また,公然実施発明1は,「iPhoneのロックを解除する」場合の操作として,「ホームボタン,またはスリープ/スリープ解除のオン/オフボタ ンを押して,スライダをドラッグ」することとされている。そして,スライダをドラッグする操作は, ロックを解除する」場合の操作として,「ホームボタン,またはスリープ/スリープ解除のオン/オフボタ ンを押して,スライダをドラッグ」することとされている。そして,スライダをドラッグする操作は,ロック画面として挙げられる以下の図1の画面に表示されるスライダをドラッグするというものである。 図1(ウ) 公然実施発明1は,パスコードを入力することにより,ロックを解除する設 定とすることが可能であり,その場合には,スリープ状態においてホームボタン又はスリープ/スリープ解除のオン/オフボタンを押すと,スリープから復帰してロックを解除できるようになり,スライダをドラッグした後,4桁のパスコードを入力してロックを解除することができる。 正しい4桁のパスコードが入力されると,ロックが解除され,ホーム画面が表示 されるが,誤ったパスコードが入力されると,ロック状態は維持され,ディスプレイに「パスコードが違います。もう一度試してください。」とのメッセージが表示される。 他方,4桁のパスコードが設定されていない場合,スライダをドラッグすると,ホーム画面が表示される。 (エ) 公然実施発明1は,ホームボタンに複数の機能を備えており,ホームボタンを比較的長く押すことにより,ロック画面を表示し,音声コントロール機能が起動する。これに対して,ホームボタンを短く押すと,音声コントロール機能は起動せ ず,ロック画面が表示される。 イ上記によれば,公然実施発明1は,ディスプレイ部,メモリ手段,通信部,ホームボタンを備えたスマートフォンであって,通信可能な状態ではあるが,ディスプレイ部がオフの状態である非活性状態のときに,当該ホームボタンを押下すると,通信可能な状態で,かつ,ディスプレイ部がオンの状態である活性状態に切り あって,通信可能な状態ではあるが,ディスプレイ部がオフの状態である非活性状態のときに,当該ホームボタンを押下すると,通信可能な状態で,かつ,ディスプレイ部がオンの状態である活性状態に切り 替わるとともに,スライダを備えたロック画面が表示され,スライダをドラッグすると,パスコード入力による認証が行われ,誤ったパスコードを入力するとエラーメッセージが表示されるという構成のものであると認められる。そして,スライダを備えたロック画面の表示は,パスコードによる認証の設定がされている場合も,されていない場合も,ホームボタンの押下により,スリープ状態からスリープ解除 状態に切り替わったときに表示されるものである。そうすると,ロック画面においてスライダをドラッグするという操作入力は,タッチパネル入力による誤作動防止(パスコードによる認証の設定がされている場合は,パスコードやホーム画面の誤作動防止であり,パスコードによる認証の設定がされていない場合であっても,ホーム画面の誤作動防止)の意義があるものというべきである。 (3) 本件発明1-1と公然実施発明1との対比本件発明1-1と公然実施発明1の一致点及び相違点は,次のとおりに認定される。 ア一致点ディスプレイ部,メモリ手段及び通信部に加え,通信可能な状態ではあるが,デ ィスプレイ部がオフの状態である非活性状態から,通信可能な状態で,かつ,ディ スプレイ部がオンの状態である活性状態への切り替えのための操作入力を受け付ける活性化ボタンを備えた移動通信端末機である点。 イ相違点本件発明1-1は,非活性状態から活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する操作入力以外の追加の操作なく,指紋認識による使用者識別機能が実行さ れ,かかる使用者識別機能による イ相違点本件発明1-1は,非活性状態から活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する操作入力以外の追加の操作なく,指紋認識による使用者識別機能が実行さ れ,かかる使用者識別機能による認証の結果にかかわらず,ディスプレイ部をオンにして活性状態へ切り替え,認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されない場合には,移動通信端末機のロック状態を維持し,ディスプレイ部に認証がされなかった旨のメッセージを表示する構成を有するのに対し,公然実施発明1は,そのような構成を備えていない点(以下,この相違点を「相違点1」という。)。 (4) 相違点1に係る構成の容易想到性ア甲5文献には,次の内容の記載がある。 (ア) 技術分野「本発明は,内蔵認証システムを備えた電子デバイスに関する。」(【0001】)(イ) 背景技術 「電子デバイス,特に携帯型電子デバイスは,個人情報を格納するために用いられる。例えば,ユーザは,ユーザが用いる連絡先,電子メール,カレンダー情報,文書,及び,その他の情報を格納するために,携帯電話,PDA,スマートフォン,または,その他の電子デバイスを用いてよい。…許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセスし閲覧することを防ぐ方法の1つとして,デバイス機能を有効 にする前に,または,デバイスリソースにアクセスする前に,パスワードまたはパスコードの提供を電子デバイスのユーザに要求する方法が挙げられる。…」(【0002】)「…ユーザがデバイスをオンにする,ロック解除する,または,起動する時に,デバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するように,生体認証および他の認 証メカニズムを実装した電子デバイスを提供する…」(【0003】) (ウ) 発明の概要「電子デバイスの デバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するように,生体認証および他の認 証メカニズムを実装した電子デバイスを提供する…」(【0003】) (ウ) 発明の概要「電子デバイスのユーザを認証するための方法,電子デバイス,および,コンピュータ読み取り可能な媒体が提供されている。一部の実施形態において,電子デバイスは,ユーザをシームレスに認証しうる。…電子デバイスは,検出した識別情報を,デバイスのライブラリに格納されている識別情報と比較することによって,ユ ーザを認証してよい。…」(【0004】)(エ) 発明を実施するための形態「認証システム112は,デバイス100のユーザを特定する入力を受信または検出する任意の適切なシステムまたはセンサを備えていてよい。例えば,認証システム112は,皮膚のパターンを検知するメカニズム,ユーザの顔のパターン, 眼の特徴(例えば,網膜),または,静脈パターンに基づいてユーザを特定するための光学システム,または,任意の他のユーザ特有の生体特徴または属性を検出するための任意の他のセンサを備えてよい。…」(【0024】)「一部の実施形態において,ユーザは,電子デバイスをロック解除する前に(例えば,デバイスの任意のリソースにアクセスする前に),認証を要求されてよい。 図4は,本発明の一実施形態に従って,ユーザがデバイスリソースにアクセスする前に,ユーザに認証を指示するためのディスプレイスクリーンの一例を示す概略図である。ディスプレイスクリーン400は,ディスプレイのロックを解除するためのオプション410を備えてよい。例えば,オプション410は,スクリーンの一部を横切って(横断して)ドラッグされるスライダを備えてよい。…」(【00 31】)「ディスプレイスクリーン4 めのオプション410を備えてよい。例えば,オプション410は,スクリーンの一部を横切って(横断して)ドラッグされるスライダを備えてよい。…」(【00 31】)「ディスプレイスクリーン400は,デバイスリソースにアクセスする前に,認証を受けるようユーザに指示する通知420を含んでよい(例えば,情報およびアプリケーションを起動するホームスクリーン)。通知420は,例えば,ポップアップ,オーバーレイ,新たなディスプレイスクリーン,または,ユーザに指 示を提供するための任意の他の適切なタイプのディスプレイなど,任意の適切な タイプの通知を含みうる。…」(【0032】)「…例えば,電子デバイスは,ユーザの指紋…を検出する認証システムを備えてよい。…」(【0039】)「センサは,電子デバイス内の任意の適切な位置に配置されてよい。…センサは,ユーザが電子デバイスを操作する時または操作し始める時に,ユーザの皮膚の適切 な部分を検出するよう動作できるように配置されてよい。…」【0045】「センサ720は,電子デバイスにおいてユーザが押下しうる任意のボタンまたはその他の物理的入力の中,近傍,または,裏側に配置されてもよい。例えば,センサ720は,携帯型メディアプレーヤまたは携帯電話のホームボタン(例えば,図8Bのボタン812)の背後に配置されてよい。…」(【0050】) 【図8B】「図15は,本発明の一実施形態に従って,ユーザを認証するための方法の一例を示すフローチャートである。処理1500は工程1502で始まる。工程1504で,電子デバイスは,デバイスのユーザを特定してよい。例えば,電子デバイスは,ユーザに関連づけられたユーザ名またはパスワードを受信してよい。別の例と して,電子デバイスは,認証シス 程1504で,電子デバイスは,デバイスのユーザを特定してよい。例えば,電子デバイスは,ユーザに関連づけられたユーザ名またはパスワードを受信してよい。別の例と して,電子デバイスは,認証システムを用いて認証情報を受信し,受信した認証シ ステムからユーザを特定してもよい。電子デバイスは,例えば,ユーザがデバイスを操作する時に認証情報をシームレスに取得できるように認証システムのセンサを配置することによって,ユーザからの明示的な入力を要求することなく,認証情報を自動的に受信しうる。…」(【0078】)【図15】 「工程1506で,電子デバイスは,制限されたリソースへのアクセス要求が受信されたか否かを判定してよい。例えば,電子デバイスは,ユーザが,特定のユーザに関連づけられたデータ(例えば,連絡先リストまたは他の個人情報)にアクセスするための命令を提供したか否かを判定してよい。別の例として,電子デバイスは,ユーザが,制限されたアプリケーション(例えば,管理者などの特定の階層の ユーザに制限されたアプリケーション,または,特定のユーザが購入したアプリケーション)にアクセスするための命令を提供したか否かを判定してもよい。制限されたリソースにアクセスするための命令を受信していないと,電子デバイスが判定した場合,処理1500は,工程1506に戻って,ユーザから受ける入力を監視し続けてよい。」(【0079】) 「一方,工程1506で,制限されたリソースにアクセスするための命令を受信したと,電子デバイスが判定した場合,処理1500は,工程1508に進んでよい。工程1508で,電子デバイスは,特定されたユーザがリソースへのアクセスを許可されているか否かを判定してよい。例えば,電子デバイスは,ユーザが,制限された 処理1500は,工程1508に進んでよい。工程1508で,電子デバイスは,特定されたユーザがリソースへのアクセスを許可されているか否かを判定してよい。例えば,電子デバイスは,ユーザが,制限されたリソースにアクセスするのに適切な認証情報を提供したか否かを判定して よい。電子デバイスは,例えば,通常の使用中に認証情報を取得できるように,デバイスに認証センサを内蔵することによって,ユーザの知るところなく,適切な認証情報を取得してよい。特定されたユーザが許可されていないと,電子デバイスが判定した場合,処理1500は,工程1510に進んでよい。工程1510で,電子デバイスは,認証を行うようユーザに指示してよい。…」(【0080】) イ甲5文献の上記各記載からすると,甲5発明の内容として,ユーザが「デバイスをオンにする,ロック解除する,または,起動する」等の操作をするときに,ユーザが明示的に認証に係る操作を行うことなく認証処理が行われる生体認証その他の認証メカニズムを実装した電子デバイスという構成の発明が記載されていることが認められ,その生体認証が指紋認証であるときは,ホームボタンの背後に 配置した指紋検出センサによって,ホームボタンの押下により「デバイスをオンにする,ロック解除する,または,起動する」等の操作をする際に行うなど,認証情報をシームレスに取得できる位置にセンサを配置して行い,認証に成功するとホーム画面を表示するが,認証に失敗するとオン状態のディスプレイ画面にエラーメッセージを表示するというものであることが認められる(以下,甲5発明のうち,上 記で認定した発明を「甲5-1発明」という。)。 ウそこで,以上の説示を前提として,以下,公然実施発明1への甲5-1発明の組合せの可否について検討する。 まず,公然 ,甲5発明のうち,上 記で認定した発明を「甲5-1発明」という。)。 ウそこで,以上の説示を前提として,以下,公然実施発明1への甲5-1発明の組合せの可否について検討する。 まず,公然実施発明1は,スリープ状態とスリープ解除状態とを有し,スリープ状態からスリープ解除状態とする際の操作及びその際にロック画面が表示されるス マートフォンというものであり,他方,甲5-1発明の技術分野は,生体情報を利 用した電子デバイスの内蔵認証システムに関するものである。そうすると,両発明の技術分野については関連性が存するものというべきである。 また,公然実施発明1は,スリープ状態において,ホームボタンを押すことにより,デバイス機能を有効にするときに,起動して認証を行うというものであるから,ホームボタンの押下によりスリープ状態からスリープ解除状態に切り替わった ときに,パスコード認証によりユーザを識別するという機能を有するものである。 この点,公然実施発明1においては,ホームボタンの押下の後,パスコード認証の前に,ロック画面においてスライダをドラッグするという操作入力という構成があるが,この構成については,タッチパネル入力による誤作動防止(パスコードによる認証の設定がされている場合は,パスコードやホーム画面の誤作動防止であり, パスコードによる認証の設定がされていない場合であっても,ホーム画面の誤作動防止)という,ユーザ識別とは別の技術的意義があるといえるところ,パスコード認証という構成は,これとは別の,ユーザ識別のための構成として把握することができるものであって,上記スライダをドラッグするという構成とは可分な別個の構成であるというべきである。そして,甲5-1発明における「ユーザがデバイスを オンにする,ロックを解除す 握することができるものであって,上記スライダをドラッグするという構成とは可分な別個の構成であるというべきである。そして,甲5-1発明における「ユーザがデバイスを オンにする,ロックを解除する,または,起動する」ことは,デバイスの機能を有効にすることであるといえ,また,デバイス機能を有効にする前に,生体情報の提供をユーザに対して要求する認証方法という構成のものである。そうすると,公然実施発明1と甲5-1発明とは,デバイスの機能を有効にするときに,ユーザ識別のための認証動作を行う点に関して,その作用機能が共通するものと認められる。 以上によれば,公然実施発明1と甲5-1発明においては,技術分野の関連性及び作用機能の共通性が認められるものであって,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)において,両者を組み合わせる動機付けがあるものと認められるものであり,その他,本件全証拠をみても,両者の組合せを阻害する事情を認めるに足りる主張立証はない。そうすると,公然実施発明1のデバ イスの機能を有効にするときのユーザ認証として,甲5-1発明におけるデバイス の機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するためのホームボタンの背後に配置した指紋を検出するセンサによって指紋認証を行う構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到できたことである。また,公然実施発明1はパスコードの入力による認証に関して,誤ったパスコードが入力されると,ロック状態が維持され,ディスプレイに認証を行うよう求めるメッセージが表示さ れる構成を有するし,甲5-1発明も,特定されたユーザが許可されていないと判断した場合,認証を行うようユーザに指示する構成を有し(甲5文献【0080】),かかる指示がディスプレ セージが表示さ れる構成を有するし,甲5-1発明も,特定されたユーザが許可されていないと判断した場合,認証を行うようユーザに指示する構成を有し(甲5文献【0080】),かかる指示がディスプレイ部に表示することによってなされること,及びユーザ認証のための操作が行われると,認証結果にかかわらずディスプレイがオンにされることは,当該技術の性質・内容に照らし,周知慣用技術といえる。そして,公然実 施発明1は,使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されなければロック状態を維持するものであるところ,公然実施発明1に甲5-1発明を組み合わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する理由は,本件全証拠をみても見当たらない。 以上からすると,当業者は,相違点1に係る構成を容易に想到することができた ものといえ,本件発明1-1を容易に発明することができたものと認められる。 エ被告の主張について(ア) 被告は,公然実施発明1は,パスコードの入力という使用者識別機能を有するものの,指紋等の生体情報による内蔵認証システムを有するものではなく,これを有する甲5発明とは技術の点における共通性がない旨主張する。 しかし,前記認定のとおり,両発明においては,いずれも,デバイスの機能を有効にするときにユーザ識別のための認証動作を行う点で共通しているのであって,パスコードの入力による認証方法と指紋等の生体情報による認証方法というように認証に用いる情報の内容は異なるものの,両発明の技術分野に相違があるとは認められない。 そうすると,被告の上記主張は,採用することができない。 (イ) また,被告は,公然実施発明1は,ホームボタンに対する操作入力及びスライダのドラッグ操作を経てから使用者識別機能を実行するも そうすると,被告の上記主張は,採用することができない。 (イ) また,被告は,公然実施発明1は,ホームボタンに対する操作入力及びスライダのドラッグ操作を経てから使用者識別機能を実行するものであるところ,これは,デバイス機能を有効とする前あるいはデバイスリソースへのアクセスの前のシームレスな認証という甲5発明の課題と共通しないから,公然実施発明1に甲5発明を組み合わせる動機付けがないと主張する。 しかしながら,前記説示のとおり,公然実施発明1に係るパスコード認証という構成については,ユーザ識別のための構成として,上記のスライダをドラッグするという構成とは可分な別個の構成として把握することができるというべきである。 そうすると,公然実施発明1におけるパスコードによる認証という構成と,甲5-1発明におけるシームレスな認証処理という構成とは,ユーザにおいて許可されて いない人が個人情報にアクセスして閲覧することを防ぐ方法の一つとしての認証方法を備えている点で共通するものであり,両発明において,デバイス機能を有効にするときのユーザ認証の動作に関して,その作用機能が共通するものと認められることに変わりはない。すなわち,ユーザによる誤作動の防止と,スリープ状態においてホームボタンを押してユーザ識別を実行するための動作とは,その性質内容に 照らし,互いに別個のものということができ,公然実施発明1がユーザによる誤作動防止の意義を有するからといって,これに甲5-1発明を組み合わせることができないことになるとはいえない。 そうすると,被告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) さらに,被告は,本件発明1-1は,① 指紋認証による使用者識別機能が, 非活性状態から活性状態に切り替えるための操作入力により,かつ,使用者 告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) さらに,被告は,本件発明1-1は,① 指紋認証による使用者識別機能が, 非活性状態から活性状態に切り替えるための操作入力により,かつ,使用者による追加操作なしに行われる,② 使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されなければ,移動通信端末機のロック状態を維持するとともに,ディスプレイ部にメッセージを表示する,③ 活性化ボタンにおいて非活性状態にあるときに操作入力を受け付けると,使用者識別機能による認証の結果にかかわらず, ディスプレイ部をオンにして活性状態に切り替えるという構成を有するが,公然実 施発明1にはこれらのいずれも有していないという相違点があるところ,甲5発明には,上記①ないし③に係る構成が開示されていないため,両者を組み合わせても,上記相違点を埋めることはできないと主張する。 しかし,被告主張の上記①については,上記ウで説示したとおり,公然実施発明1のデバイスの機能を有効にするときにユーザ認証として,甲5-1発明における デバイスの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するための構成を,公然実施発明1のスライダを備えたロック画面を残したまま組み合わせることは当業者が容易に想到できたことである。 また,公然実施発明1は,パスコードを入力することによる使用者識別機能による認証の結果,認証されなければロックを維持するものといえるところ,公然実施 発明1に甲5-1発明を組み合わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する理由が認められないこと,ユーザ認証がされなかった場合には,ディスプレイに認証を行うよう求める旨のメッセージが表示されること,及びユーザ認証のための操作が行われると,認証結果にかかわらずディス する理由が認められないこと,ユーザ認証がされなかった場合には,ディスプレイに認証を行うよう求める旨のメッセージが表示されること,及びユーザ認証のための操作が行われると,認証結果にかかわらずディスプレイがオンになることは周知慣用技術といえることは,前記説示のとおりである。そうすると,被告主張の上記②及 び③について,実質的な相違点ということはできないというべきである。 以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。 オ小括上記によれば,本件発明1―1は,当業者が公然実施発明1に甲5-1発明を組み合わせることにより,容易に想到することができたものといえ(特許法29条2 項),本件発明1-1は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである(同法123条1項2号)。 (5) 本件発明1-2本件発明1-2(その発明の要旨は,前記第2の1前提事実の(2)ア(イ)記載のとおり)は,本件発明1-1に従属するものであるところ,公然実施発明1と対比す ると,本件発明1-2は,相違点1のほかに,非活性状態にある移動通信端末機を 活性状態に切り替えるたるめの操作入力を受け付ける活性化ボタンにより得た指紋と,既に保存された使用者の指紋情報と比較して指紋認識を行うものであるのに対し,公然実施発明1はそのような構成を備えない点で相違する(以下,かかる相違点を「相違点2」という。)。 しかるに,前記甲5文献の記載によれば,甲5-1発明は,センサによって検出 されたユーザの指紋の特徴に基づいて,ユーザを認証するプロセッサを有しており,ライブラリに格納された指紋の特徴と検出したユーザの指紋の特徴とを比較することにより,ユーザが適切な認証情報を提供したか否かを判定し,特定されたユーザが許可されていないと判定した場 サを有しており,ライブラリに格納された指紋の特徴と検出したユーザの指紋の特徴とを比較することにより,ユーザが適切な認証情報を提供したか否かを判定し,特定されたユーザが許可されていないと判定した場合,認証を行うように指示をする構成を有するものである。 以上によれば,本件発明1―2における相違点2の構成は,当業者が公然実施発明1に甲5-1発明を組み合わせることにより,容易に想到することができたものといえ(特許法29条2項),本件発明1-2は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである(同法123条1項2号)。 5 争点2-2(無効理由2(公然実施発明2及び甲5発明に基づく進歩性の欠 如)の有無)(1) 本件発明2-1の要旨本件発明2-1の要旨は,本件明細書の特許請求の範囲の請求項4の記載により特定される,前記第2の1前提事実の(2)イ(イ)記載のとおりである。 (2) 公然実施発明2の構成 前記4(2)のとおり,iOS4.2又はiOS4.3を搭載したスマートフォンに係る発明は,日本国内において公然実施をされた発明に当たり,その構成は,前記前提事実(第2の1(5)イ)のとおりである。 そして,証拠(甲10,13~15)によれば,公然実施発明2は,公然実施発明1の構成に加え,スリープ状態においてホームボタンを長押しすると,スリープ 状態からスリープ解除状態に切り替わり,ディスプレイにロック画面が表示された 後,口頭での指示によりiPhoneを操作することが可能となるハンズフリー機能である音声コントロール機能が起動し,その画面が表示されるものであることが認められる。 (3) 本件発明2-1ア本件発明2-1と公然実施発明2の一致点及び相違点は,次のとおりに認定 される。 ( ントロール機能が起動し,その画面が表示されるものであることが認められる。 (3) 本件発明2-1ア本件発明2-1と公然実施発明2の一致点及び相違点は,次のとおりに認定 される。 (ア) 一致点使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うディスプレイ部,メモリ部及び通信部に加え,非活性状態から活性化状態に切り替えるためのボタンを有し,非活性状態の際にされた活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて非活性 状態に切り替えるとともに,使用者の活性化ボタンに対する操作が活性化ボタンに対して長い間継続してされた場合(第2の操作)には,カメラ活性化機能,健康情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能又は広告表示機能のいずれかを,使用者の操作以外の追加の操作をすることなく実行する点。 (イ) 相違点 本件発明2-1は,使用者の活性化ボタンに対する操作が第1の操作であった場合には,第1動作を前記操作以外の追加の操作をすることなく実行するものであって,第1動作は,カメラ活性化機能,情報伝送機能,使用者識別機能,位置情報伝送機能,ハンズフリー機能又は広告表示機能に係る動作のいずれかであって,かつ,第2動作である上記各機能に係る動作のいずれかとは異なる動作であるという構成 を有するのに対し,公然実施発明2は,第2の操作ではない第1の操作に対応する第1動作に関し,パスコードを入力することによる使用者識別機能を実行する構成を備えているものの,当該使用者識別機能は,前記使用者の操作以外の追加操作をすることなく実行されるものではない点(以下,この相違点を「相違点3」という。)。 イそこで,以下,公然実施発明2への甲5-1発明の組合せの可否について検 討する。 まず,公然実施 ことなく実行されるものではない点(以下,この相違点を「相違点3」という。)。 イそこで,以下,公然実施発明2への甲5-1発明の組合せの可否について検 討する。 まず,公然実施発明2は,スリープ状態とスリープ解除状態とを有し,スリープ状態からスリープ解除状態とする際の操作,その操作によりパスコード入力による使用者識別機能を備えるスマートフォンというものであり,他方,甲5-1発明の技術分野は,前記認定したとおり,生体情報を利用した電子デバイスの内蔵認証システムに関するものである。そうすると,両発明の技術分野については関連性が存 するものというべきである。 また,公然実施発明2は,公然実施発明1と同様,スリープ状態においてホームボタンを押すことにより,デバイス機能を有効にする前又はデバイスリソースにアクセスする前に,起動して認証を行う作用機能を有するものである。他方,甲5-1発明は,デバイス機能を有効にする前あるいはデバイスリソースにアクセスする 前に,生体情報の提供をユーザに対して要求する認証方法という構成のものである。 そうすると,両発明は,デバイスの機能を有効にするときにユーザ認証を行う動作に関して,その作用機能が共通するものと認められる。 以上によれば,公然実施発明2と甲5-1発明においては,技術分野の関連性及び作用機能の共通性が認められるものであって,当業者において,両者を組み合わ せる動機付けがあるものと認められるものであり,その他,本件全証拠をみても,両者の組合せを阻害する事情を認めるに足りる主張立証はない。そうすると,公然実施発明2と甲5-1発明を組み合わせることができ,これにより,当業者は,相違点3に係る構成を容易に想到することができたものといえ,本件発明2-1を容易に発明すること 張立証はない。そうすると,公然実施発明2と甲5-1発明を組み合わせることができ,これにより,当業者は,相違点3に係る構成を容易に想到することができたものといえ,本件発明2-1を容易に発明することができたものと認められる。 ウ被告の主張について(ア) 被告は,公然実施発明2は指紋等の生体情報による内蔵認証システムを有するものではなく,これを有する甲5-1発明と技術が共通しない旨主張する。 しかし,公然実施発明1において説示したとおり,公然実施発明2と甲5-1発明は,いずれも,デバイスの機能を有効にするときにユーザ認証を行う動作に関す る技術である点で共通しており,両発明の技術分野に相違があるとは認められず, 被告の上記主張は採用することができない。 (イ) また,被告は,公然実施発明2のスライダのドラッグ操作を経てから使用者識別機能を実行することは,デバイス機能を有効とする前あるいはデバイスリソースへのアクセスの前のシームレスな認証という甲5-1発明の課題と共通しないとして公然実施発明2と甲5-1発明との組合せの動機付けの存在を否定する。 しかしながら,公然実施発明2がスライダのドラッグ操作を含むユーザの操作による誤作動の防止機能を有していることは,公然実施発明2と甲5-1発明とを組み合わせる動機付けを否定するものではないし,前記説示のとおり,両発明がデバイスの機能を有効にするときのユーザ認証を行う動作に関して,その作用機能が共通するものと認められる。 そうすると,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに,被告は,相違点3を容易に想到することができない根拠として,①甲5-1発明は,指紋情報を提供するための追加の操作を実行するようにユーザに要求することなく,ユーザがホーム きない。 (ウ) さらに,被告は,相違点3を容易に想到することができない根拠として,①甲5-1発明は,指紋情報を提供するための追加の操作を実行するようにユーザに要求することなく,ユーザがホームボタンを操作(押下)した時に,指紋情報を検出し,指紋認識による使用者識別機能が行われる構成を有していない,② 甲5- 1発明は,タッチスクリーンディスプレイ部を非活性状態から活性状態に切り替えるための使用者の操作(第1の操作又は第2の操作)に応じて,当該使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,使用者識別機能を含む動作(第1動作又は第2動作)を実行し,かかる使用者識別機能が実行された場合にはその結果にかかわらず,タッチスクリーンディスプレイ部は非活性状態から活性状態に切り替わるとい う構成や,前記使用者の操作が第1の操作であるか,第2の操作であるかに応じて異なる動作を実行するという構成を有していないことを挙げる。 a しかしながら,上記①の点については,前記4(2)イのとおり,甲5-1発明は,ホームボタンを押すという操作入力によりデバイス機能を有効にするときにユーザを識別するための認証動作を行うものであるところ,その認証方法として,デ バイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するためのホームボタンの背後に配置 した指紋を検出するセンサによって指紋認証を行う構成,すなわち,ホームボタンの押下以外の追加の操作をすることなく指紋認証を行う構成を有しているものであるから,甲5-1発明が上記構成を有していないという上記指摘は当たらない。そして,これを,デバイスの機能を有効にするときにユーザー認証を行う点で共通する公然実施発明2に組み合わせ,公然実施発明2のスリープ解除状態となったとき に,パスコード入力による認証方法に代え そして,これを,デバイスの機能を有効にするときにユーザー認証を行う点で共通する公然実施発明2に組み合わせ,公然実施発明2のスリープ解除状態となったとき に,パスコード入力による認証方法に代えて,甲5-1発明の有するデバイスの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証するための構成を用いることにより,当業者は,相違点3を容易に想到することができるといえる。 以上によれば,被告の上記①の主張は採用することができない。 b また,上記②については,甲5-1発明は,前記説示のとおり,ユーザが許可された者でないと判定した場合には,ディスプレイ上に認証を行うように指示する旨のメッセージを表示する構成を有していること,及びユーザ認証のための操作が行われると,認証結果にかかわらずディスプレイがオンになることは周知慣用技術であるといえる。加えて,公然実施発明2は,ホームボタンに対する操作が第1 の操作である場合には,スライダをドラッグしてパスコードを入力するという追加の操作は要するが,上記操作が第2の操作である場合には,かかる操作による使用者識別機能の実行につき,ハンズフリー機能を実行する構成が備えられており,これによれば,第1の操作と第2の操作に応じて異なる動作を実行するという構成を有しているものといえる。そして,このような公然実施発明2に,上記の甲5-1 発明を組み合わせることによって,被告が指摘する構成について当業者は容易に想到することができるというべきである。 以上によれば,被告の上記②の主張は採用することができない。 エ小括以上によれば,本件発明2―1における相違点3の構成は,当業者が公然実施発 明2に甲5-1発明を組み合わせることにより,容易に想到することができたもの と ことができない。 エ小括以上によれば,本件発明2―1における相違点3の構成は,当業者が公然実施発 明2に甲5-1発明を組み合わせることにより,容易に想到することができたもの といえ(特許法29条2項),本件発明2-1は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである(同法123条1項2号)。 (4) 本件発明2-2本件発明2-2は,「前記第1の操作がなされた場合には,前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロ ック画面の表示と,前記第1動作の実行をする」(構成要件2-2A),「請求項1に記載の移動通信端末装置」(構成要件2-2B)であるところ,構成要件2-2Bは,本件発明2-1の構成と同一である。また,本件発明2-1の構成要件2-1Cが「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,前記使用者の 操作が第1の操作であった場合には第1動作を,」「実行する」というものであり,構成要件2-1Bによれば,「前記活性状態」は,タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態を意味するから,構成要件2-2Aは構成要件2-1Cと同一といえる。 そうすると,本件発明2-1と公然実施発明2との対比において認められる相違 点3以外に,本件発明2-2と公然実施発明2との相違点は存しないといえる。 そして,前記(3)において説示したとおり,相違点3は,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせることにより容易に想到することができるといえる。そうすると,本件発明2-2は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである(同法123条1項2号)。 実施発明2に甲5-1発明を組み合わせることにより容易に想到することができるといえる。そうすると,本件発明2-2は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである(同法123条1項2号)。 (5) 本件発明2-3本件発明2-3の構成要件は,第2の操作がなされた場合には,非活性状態から活性状態に切り替えるとともに,タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表示をし,第2動作の実行をすること(2-3A)及び請求項1又は2に記載の移動通信端末装置(2-3B)であるところ,構成要件2-3Bは本件発明2-1 及び2-2の構成と同一である。また,本件発明2-3の構成要件2-3Aは,本 件発明2-1の構成要件2-1Cが「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記活性状態に切り替えるとともに,」「前記使用者の操作が第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動作を,前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく,実行する」という ものであり,構成要件1-2Bによれば,「前記活性状態」は,タッチスクリーンディスプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態を意味するから,前記(4)と同様,構成要件2-3Aは構成要件2-1Cと同一といえる。 そうすると,本件発明2-1と公然実施発明2との対比において認められる相違点3以外に,本件発明2-3と公然実施発明2との相違点は存しないといえる。 そして,前記において説示したとおり,相違点3は,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせることにより容易に想到することができるといえ,本件発明2-3は,特許無効審判により無効にされるべ そして,前記において説示したとおり,相違点3は,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせることにより容易に想到することができるといえ,本件発明2-3は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 (6) 本件発明2-4ア本件発明2-4と公然実施発明2とを対比すると,本件発明2-4は,非活 性状態から活性状態への切り替えのための活性化ボタンに対する操作入力以外の追加の操作なく,使用者識別機能を実行し,使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し,使用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には,ロック状態を維持する構成を有するのに対し,公然実施発明2は,そのような構成を備えていない点で相違することが認められる (以下,この相違点を「相違点4」という。)。 イところで,前記4(4)イにおいて認定したとおり,甲5-1発明は,ユーザが「デバイス機能をオンにする,ロック解除する,または,起動する」等の操作をする際に,ユーザが明示的に認証に係る操作をすることなく認証を行うための生体認証その他の認証メカニズムを実装し,指紋認証による場合には,ホームボタンの背 後に配置された指紋検出センサにより認証情報をシームレスに取得し,認証に成功 するとホーム画面を表示し,認証に失敗するとオン状態のディスプレイにエラーメッセージを表示する構成を有するものである。 そして,公然実施発明2は,ロック画面におけるスライダのドラッグ操作を行い,かつ,使用者が正当な使用者と認証されれば,ロックが解除され,認証されなければロックを維持するものといえるところ,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合 わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する理由は,本件全証拠を 者と認証されれば,ロックが解除され,認証されなければロックを維持するものといえるところ,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合 わせる際に,かかる構成をあえて排除又は変更する理由は,本件全証拠をみても見当たらない。 ここで,本件発明2-4の「使用者識別機能」によって「ロック状態を解除」することに関して,「使用者識別機能は,前記使用者があらかじめ登録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除」するものであること,及び,本件 明細書2の「使用者識別部423により本当の使用者であると認証されると,移動通信端末機100のロック状態が解除されてすべての機能を使用することができる状態となり,本当な使用者であると認証されないと,警告メッセージ表示とともにロック状態が持続される。」(【0053】)との記載からすると,本件発明2-4の「ロック状態を解除」の技術的意義には,認証を行うことなくデバイスの機能 を使用することができる状態にすることを含むものと理解することができる。 一方,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせたものにおいて,シームレスにユーザの認証が行われると,それ以降は,スライダを備えたロック画面が表示されているか否かにかかわらず,認証を行うことなくデバイスの機能を使用することができる状態になることは明らかである。 そうすると,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせたものは,シームレスにユーザの認証が行われると,「ロック状態を解除」するものといえる。 ウ以上によれば,本件発明2-4に係る相違点4は,公然実施発明2のデバイスの機能を有効にするときのユーザ認証に関し,甲5-1発明のデバイスの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザ認証をするためのホーム ボタンの背後に配 公然実施発明2のデバイスの機能を有効にするときのユーザ認証に関し,甲5-1発明のデバイスの機能を有効にするときにデバイスが迅速かつシームレスにユーザ認証をするためのホーム ボタンの背後に配置した指紋を検出するセンサによって指紋認証を行う構成を組み 合わせることにより,当業者において,容易に想到することができるといえ,本件発明2-4は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 (7) 本件発明2-5ア本件発明2-5の構成要件は,使用者識別機能が指紋認識を利用した機能であること(2-5A)と,請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置 (2-5B)であるところ,構成要件2-5Bは本件発明2-1の構成と同一である。また,構成要件2-5Aは,本件発明2-1における「使用者識別機能」を「指紋認識を利用した使用者識別機能」との構成にしたものである。 そうすると,本件発明2-5と公然実施発明2とを対比すると,その相違点は,「使用者識別機能」を「指紋認識を利用した使用者識別機能」とする部分以外にお いて相違点3と同様といえる(以下,この相違点を「相違点5」という。)。 イところで,甲5-1発明は,シームレスなユーザの認証方法として,ユーザに対してその生体情報を要求するという構成であり,生体情報として,指紋を含むものであることが認められる。また,公然実施発明2に甲5-1発明を組み合わせ動機付けが存することも前記において説示したとおりである。 そうすると,本件発明2-5に係る相違点5は,公然実施発明2と甲5-1発明とを組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができるといえ,本件発明2-5は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 (8) 本件発明2 施発明2と甲5-1発明とを組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができるといえ,本件発明2-5は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 (8) 本件発明2-6ア本件発明2-6の構成要件は,使用者識別機能が顔認識を利用した機能であ ること(2-6A)と,請求項1~5のいずれか一項に記載の移動通信端末装置(2-6B)であるところ,構成要件2-6Bは,本件発明2-1の構成と同一である。 また,構成要件2-6Aは,本件発明2-1における「使用者識別機能」を「顔認識を利用した使用者識別機能」との構成にしたものである。 そうすると,本件発明2-6と公然実施発明2とを対比すると,その相違点は, 「使用者識別機能」を「顔認識を利用した使用者識別機能」とする部分以外におい て相違点3と同様といえる(以下,この相違点を「相違点6」という。)。 イところで,甲5発明は,デバイス機能を有効とする前あるいはデバイスリソースへのアクセスの前のシームレスなユーザの認証方法として,ユーザに対してその生体情報を要求するという構成であり,甲5文献には,ユーザが,電子デバイスに組み込まれたセンサから識別情報を入力する時に当該情報を検出すること(【0 004】),当該センサは,ユーザが電子デバイスリソースに対して閲覧又はアクセスを行うためにディスプレイの方を向いた時に,ユーザの顔の特徴を検出し得る位置に配置すること(【0058】),取得されてライブラリに格納された生体情報は,ユーザが認証を試みる時に取り出され,ユーザによって提供された生体情報と比較し,提供された生体認証情報がライブラリに格納された情報と適合する場合, 電子デバイスは,制限されたリソースへのアクセスを提供してよいこと(【006 ,ユーザによって提供された生体情報と比較し,提供された生体認証情報がライブラリに格納された情報と適合する場合, 電子デバイスは,制限されたリソースへのアクセスを提供してよいこと(【0065】),電子デバイスは,ユーザがデバイスを操作する時に認証情報をシームレスに取得できるように認証システムのセンサを配置することによって,ユーザからの明示的な入力を要求することなく,認証情報を自動的に受信し得ること(【0078】)といった記載がある。そして,甲5文献の特許請求の範囲の請求項15には, 「ユーザをシームレスに認証するための電子デバイスであって,ユーザから入力を受信する入力メカニズムと,前記入力が受信される時に,前記ユーザの識別特徴を検出する検知素子と,前記検出された識別特徴に基づいて,前記ユーザを認証するプロセッサと,を備える,電子デバイス。」との記載もある。 これらの甲5文献の記載によれば,甲5発明の内容として,顔の特徴を利用した 電子デバイスの内蔵認証システムという構成をも有するものであり,ユーザの顔の特徴を利用した生体認証のためのセンサを有し,デバイスの機能を有効にするときに,電子デバイスに備えられた検知素子(センサ)によって顔の特徴を検出し,検出した顔情報をライブラリに格納された許可されているユーザの顔の特徴と比較して使用者識別機能を実行するという構成を有することが認められる(以下,甲5発 明のうち,上記認定した発明を「甲5-2発明」という。)。 そして,公然実施発明2に甲5-2発明を組み合わせる動機付けが存在することも,公然実施発明2と甲5-1発明との組合せの動機付けにおいて説示したのと同様である。 そうすると,かかる構成を有する甲5-2発明を公然実施発明2に組み合わせることにより,当業者 が存在することも,公然実施発明2と甲5-1発明との組合せの動機付けにおいて説示したのと同様である。 そうすると,かかる構成を有する甲5-2発明を公然実施発明2に組み合わせることにより,当業者は,相違点6を容易に想到することができるといえ,本件発明 2-6は,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 (9) 小括被告は,無効理由2が存しない旨るる主張するが,そのいずれを慎重に検討しても,その主張内容及び相違点2-1についての前記説示に照らし,採用することができない。 以上によれば,本件発明2は,当業者が公然実施発明2に甲5-1発明あるいは甲5-2発明を組み合わせることにより,容易に想到することができたものといえ(特許法29条2項),その他の無効理由を判断するまでもなく,特許無効審判により無効にされるべきものというべきである。 6 争点3-2(無効理由1の解消の有無) 本件事案に鑑み,以下,本件訂正により,無効理由1,2が解消されるかどうかを検討する。まず,本件訂正事項1-1,1-2によって,無効理由1が解消されるかを検討する。 (1) 訂正の概要ア本件訂正事項1-1は,本件発明1-1の構成要件1-1Cに,「前記非活 性状態にあるときに使用者による前記操作入力を受け付けると,前記ディスプレイ部にロック画面が表示された前記活性状態へ切り替え」との事項を追加し,加えて「指紋認識による使用者識別機能が,前記活性状態への前記切り替えのための前記操作入力により行われ」の「前記活性状態」を,「ロック画面が表示された前記活性状態」とし,併せて本件発明1の請求項1を引用する請求項2ないし4及び9も 同様の訂正をするものである。 イ本件訂正事項1-2は,本件発明1- 」を,「ロック画面が表示された前記活性状態」とし,併せて本件発明1の請求項1を引用する請求項2ないし4及び9も 同様の訂正をするものである。 イ本件訂正事項1-2は,本件発明1-1の構成要件1-2Aに「前記ロック画面には,現在の時間を表示することができ」との事項を追加するものである。 (2) 無効理由1の解消の有無ア本件訂正事項1-1は,移動通信端末機が非活性状態にあるときに,活性状態に切り替えるための使用者による操作を受け付けると,活性状態になるところ, その際には,ディスプレイ部にロック画面が表示される点を特定するものである。 しかしながら,本件訂正発明1-1を公然実施発明1と対比してみたとしても,前記4(2)イのとおり,公然実施発明1はホームボタンを押下すると,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替わるとともに,スライダを備えたロック画面が表示される構成を有しているから,ディスプレイ部にロック画面が表示される点について 公然実施発明1との間に相違点は生じないこととなる。 そうすると,本件訂正事項1-1に係る訂正によっても,無効理由1を解消することはできないといわなければならない。 イ本件訂正事項1-2は,活性状態に切り替わった際にディスプレイ部に表示されるロック画面に,現在の時間を表示することができるとの事項を追加するもの である。 しかしながら,本件訂正発明1-2を公然実施発明1とを対比してみたとしても,公然実施発明1はホームボタンを押下すると,スリープ状態からスリープ解除状態に切り替わるとともに,ロック画面をディスプレイに表示する構成を有するものであり,前記4(2)ア(イ)図1にあるように,このロック画面に,現在の時間を表示す ることができるようにするとの事項も,公然実 わるとともに,ロック画面をディスプレイに表示する構成を有するものであり,前記4(2)ア(イ)図1にあるように,このロック画面に,現在の時間を表示す ることができるようにするとの事項も,公然実施発明1の一態様といえるものであると認められる。そうすると,ロック画面に現在の時間を表示する構成は,公然実施発明1と相違するものではなく,結局,本件訂正事項1-2に係る訂正によっても,無効理由1を解消することはできないといわなければならない。 (3) よって,本件訂正によって無効理由1が解消されるものとする原告の主張 は,理由がない。 7 争点3-3(無効理由2の解消の有無)(1) 本件訂正事項2-1,2-2に係る訂正による無効理由2の解消の有無ア訂正の概要本件訂正事項2-1は,本件発明2-1の構成要件2-1Cの活性状態をロック画面が表示されたものに限定するものであり,本件訂正事項2-2は,本件発明2 -2の構成要件2-2Aに,「前記ロック画面には,現在の時間を表示することができる」と追加するものである。 イ本件訂正事項2-1,2-2に係る訂正による無効理由2の解消の有無しかしながら,本件訂正発明2-1及び本件訂正発明2-2と公然実施発明2とを対比してみたとしても,前記5(2)で認定した公然実施発明2の構成からすれば, スリープ状態からスリープ解除状態においてロック画面が表示される点,同画面に現在の時間を表示することができる点について,相違するものではない。 以上によれば,本件訂正事項2-1,2-2に係る訂正によっても,無効理由2を解消することはできないといわなければならない。 (2) 本件訂正事項2-3に係る訂正による無効理由2の解消の有無 ア訂正事項の概要本件訂正事項2-3は,本件 によっても,無効理由2を解消することはできないといわなければならない。 (2) 本件訂正事項2-3に係る訂正による無効理由2の解消の有無 ア訂正事項の概要本件訂正事項2-3は,本件発明2-4の構成要件2-4Aに,本件発明2-1の構成要件2-1Cに規定された「制御部」について,同構成要件に規定されている第1操作による第1動作,第2操作による第2動作をそれぞれ分けて規定するように訂正し,併せて,本件訂正事項2-1と同様に,活性状態に切り替わった際の ディスプレイ部にロック画面が表示されることを付加するものである。 イ無効理由の解消の有無しかしながら,本件訂正事項2-3に係る上記訂正は,訂正前から規定されていた第1操作による第1動作,第2操作による第2動作を単にそれぞれ分けて規定するようにしたものにすぎず,これによって,実質的に相違する点が生ずるものでは ない上,前記説示のとおり,公然実施発明2においても,スリープ状態からスリー プ解除状態に切り替え,ロック画面をディスプレイに表示する構成を有するといえ,公然実施発明2と相違するものではないといえる。 以上によれば,本件訂正事項2-3に係る訂正によっても,無効理由2を解消することはできないといわなければならない。 (3) 本件訂正事項2-4に係る訂正による無効理由2の解消の有無 ア訂正事項の概要本件訂正事項2-4は,本件発明2-5の構成要件2-5Aに,使用者識別機能による認証の結果,使用者が正当な使用者と認証されなければ,ディスプレイ部にメッセージを表示する構成を付加するものである。 イ無効理由の解消の有無 本件訂正事項2-4に係る訂正によって,使用者識別機能の実行をした結果,指紋認識によって認証がされなかった場合には,その旨 ジを表示する構成を付加するものである。 イ無効理由の解消の有無 本件訂正事項2-4に係る訂正によって,使用者識別機能の実行をした結果,指紋認識によって認証がされなかった場合には,その旨をディスプレイ部に表示するという構成が新たに相違する事項として生ずることになる。 しかしながら,公然実施発明2も,パスコードの入力による認証に関して,誤ったパスコードが入力されると,ロック状態が維持され,ディスプレイに認証を行う よう求めるメッセージが表示される構成を有するし,甲5-1発明も,特定されたユーザが許可されていないと判断した場合,認証を行うようユーザに指示する構成を有し(甲5【0080】),かかる指示が,ディスプレイ部に表示することによってなされることは,当該技術の性質・内容に照らし,周知慣用技術であるといえる。 そうすると,甲5-1発明を公然実施発明2に組み合わせることによって,本件訂正事項2-4によって,相違するに至った上記事項についても,当業者において容易に想到することができるものといえる。 以上によれば,本件訂正事項2-4に係る訂正によっても,無効理由2を解消することはできないといわなければならない。 (4) 小括 以上によれば,本件訂正事項2-1~2-4に係る各訂正によっても,無効理由2を解消することはできないといわなければならないから,本件訂正によって無効理由2が解消されるものとする被告の主張は,理由がない。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとして,主文 のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官小口五大 裁判官鈴木 主文 のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官小口五大 裁判官鈴木美智子 (別紙原告製品1~12省略)

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