平成12(行コ)293 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成11年(行ウ)第124号)

裁判年月日・裁判所
平成13年3月28日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文7,505 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決中,被控訴人に関する部分を取り消す。 (2) 被控訴人は,東京都に対し,1000万円及びこれに対する平成10年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 なお,控訴人らは,本件控訴の趣旨として「原判決を取り消す。被控訴人は,東京都に対し,1000万円及びこれに対する平成10年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求めているから,原判決中,控訴人らの被控訴人に対する請求を棄却した部分を取り消し,被控訴人に対し,東京都に対する1000万円及びこれに対する平成10年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めているものと解される。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,東京都の住民である控訴人らが,東京都が社団法人東京都信用組合協会(以下「信組協会」という。)に対し,コスモ信用組合の経営破綻処理に係る補助金として20億円を交付したこと(以下「本件補助金」という。)について,同補助金の交付は地方自治法(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「法」という。)2条13号等に違反する違法な公金の支出であり,支出負担行為が法令又は予算に違反していないことを確認したうえでなければ支出をしてはならないとした法232条の4第2項に違反するものであるなどと主張して,前記補助金の支出がされた平成10年3月当時,東京都の出納長の職にあった被控訴人に対し,東京都に代位して,前記20億円のうち1000万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている事案である。 2 前提となる れた平成10年3月当時,東京都の出納長の職にあった被控訴人に対し,東京都に代位して,前記20億円のうち1000万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている事案である。 2 前提となる事実(当事者間に争いがない事実)(1) 控訴人らは東京都の住民である。 (2) 被控訴人は,平成10年3月当時,東京都出納長の職にあったものである。東京都出納長は,東京都の会計事務をつかさどり,支出負担行為に関する確認を行い,公金の支出又は支出を行う権限を法令上本来的に有する者である(法170条1項,2項)。 (3) 信組協会が,平成10年3月20日,東京都知事に対し,平成9年度東京都信用組合緊急特別対策補助金交付申請書を提出し,これに対し,東京都が,同月25日付けの東京都労働経済局長Aによる交付決定(以下「本件補助金交付決定」という。),同月26日付けの東京都労働経済局総務部計理課長Bによる支出命令(以下「本件補助金支出命令」という。)を経たうえで,同月30日に,信組協会に対し,コスモ信用組合の経営破綻処理に係る平成9年度の補助金(本件補助金)として20億円を交付した(なお,本件補助金交付決定は,東京都事案決定規程3条,4条1項本文・別表(4条関係)「八補助金等に関すること」により東京都労働経済局長Aが専決権者として行い,本件支払命令は,東京都会計事務規則6条1項1号,東京都組織規程27条(総務部・経理課の項)により,東京都労働経済局総務部計理課長Bが東京都知事から委任を受けて行った。)。 3 原判決は,(1)本件補助金交付決定及び本件補助金支出命令による本件補助金の支出(以下「本件補助金の支出」という。原判決が「本件補助金の支出」と述べているのもこの趣旨である。)は,支出権限を有する東京都出納長の決裁を経たものであり適法である,(2)本 令による本件補助金の支出(以下「本件補助金の支出」という。原判決が「本件補助金の支出」と述べているのもこの趣旨である。)は,支出権限を有する東京都出納長の決裁を経たものであり適法である,(2)本件補助金の支出は,その支出負担行為につき,法令又は予算に違反しておらず適法なものであるとして,控訴人らの被控訴人に対する請求を棄却した。 4 控訴人らは,原判決中,控訴人らの被控訴人に対する請求を棄却した部分に限り控訴し,この部分を取り消し,被控訴人に対し,東京都に対する1000万円及びこれに対する平成10年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めて本件控訴を提起した(なお,原審においては,本件訴えは,控訴人ら並びにC及びDも原告として,被控訴人並びに平成10年3月当時,東京都の副出納長及び出納長室出納課長の職にあったE及びFに対して提起され,原審によりE及びFに対する訴え却下の判決を受けたが,C及びDの両名は控訴を提起せず,また,控訴人ら両名は原審における被告Gに対する請求棄却部分に限定して控訴した。)。 5 控訴人らから被控訴人に対する本件請求についての争点は,(1) 本件補助金の支出が,支出権限を有する東京都出納長の決裁を経ないでされた違法なものであるかどうか(原審の争点2),(2) 本件補助金の支出が,その支出負担行為につき,法令又は予算に違反している点のあることを看過してされた違法なものであるかどうか(原審の争点3)にある。 6 前記1以外の本件の事案の概要,当事者間に争いのない事実及び当事者双方の主張の詳細は,原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」に記載のとおりである(ただし,7頁6行目末尾から7行目の「経理課長」を「計理課長」に,24頁5行目の「同日付け」を「平成8年3月5日付け」にそれぞれ改める。 「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」に記載のとおりである(ただし,7頁6行目末尾から7行目の「経理課長」を「計理課長」に,24頁5行目の「同日付け」を「平成8年3月5日付け」にそれぞれ改める。)。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人らの被控訴人に対する請求は理由がないと判断する。その理由は,次に付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第三当裁判所の判断」の「二争点2(本件補助金の支出が支出権限を有する東京都出納長の決裁を経ない違法なものであるかどうか)について」及び「三争点3(本件補助金の支出が法令又は予算に違反していることを看過してされた違法なものであるかどうか)について」に記載のとおりであるから(なお,原判決が本件補助金の支出と述べているのは,本件補助金交付決定及び本件補助金支出命令による本件補助金の支出の趣旨であることは,前記第2・3・(1)記載のとおりである。),これを引用する(ただし,46頁8行目の「行わないべき」を「行わないようにすべき」に,53頁11行目の「平成七年度一般会計予算説明書」を「平成七年度一般会計補正予算(第三号)説明書」に,57頁8行目の「経理課長」を「計理課長」にそれぞれ改め,64頁8行目の「からすれば」の前に「(甲第1号証)」を,70頁8行目の「平成8年度」の前に「右1(四)(2)のとおり」をそれぞれ加える。)。 2 本件補助金の支出が,その支出負担行為につき,法令又は予算に違反している点のあることを看過してされた違法なものであるかどうか(原審争点3)に関する控訴人らの主張について。 (1) 本件補助金の支出負担行為である本件補助金交付決定が予算の定めるところに従ったものであるかどうかについて。 控訴人らは,本件補助金の支出負担行為である本件補助金交付決定は予算の定めるところ (1) 本件補助金の支出負担行為である本件補助金交付決定が予算の定めるところに従ったものであるかどうかについて。 控訴人らは,本件補助金の支出負担行為である本件補助金交付決定は予算の定めるところに従ったものでない,と主張する。しかしながら,本件補助金が,平成9年度東京都一般会計予算において,支出科目について,「款」を「労働経済費」,「項」を「商工業振興費」,「目」を経営基盤整備費,「節」を負担金補助及び交付金とした予算科目から支出されたことは原判決の認定するとおりである。また,法2条3項13号,6項4号に照らせば,東京都が商工業振興の一環として経営基盤整備のために補助金等を交付することはその固有の事務であるというべきである。したがって,本件補助金の支出負担行為である本件補助金交付決定は予算の定めるところに従ったものであり,控訴人らの前記主張は採用することができない。 (2) 本件補助金の支出が法232条の2所定の「公益上必要がある場合」に当たらないのにされたとの主張について。 控訴人らは,本件補助金の支出が違法である根拠として,本件補助金交付決定は法232条の2所定の「公益上必要がある場合」に当たらないのに,この要件該当性につき吟味することなく,いわば東京都の自由裁量により本件補助金交付決定及びこれによる本件補助金の支出をしたことは裁量権の逸脱又は濫用がある違法がある,と主張しているように窺われる。しかしながら,原判決は原審の争点3の「(本件補助金の支出が法令又は予算に違反していることを看過してされた違法なものであるかどうか)について」の項において,まず本件補助金の支出が違法にされたものではないとの結論を導いているが,その過程においては,大略次のとおりの見地に立って逐次その同法上にいう要件該当性の有無を判断しているのであって,その において,まず本件補助金の支出が違法にされたものではないとの結論を導いているが,その過程においては,大略次のとおりの見地に立って逐次その同法上にいう要件該当性の有無を判断しているのであって,その結論及びその判断過程に控訴人らの指摘するような誤りはない。すなわち,原判決は,まず① 当該寄附金又は補助金の交付決定及びこれによる当該寄附金又は補助金の支出が,当該普通地方公共団体において法232条の2所定のその「公益上必要がある場合」に該当する場合に限り認められていることを前提としたうえ,次いで,② 当該普通地方公共団体にとって公益があるか,その必要があるか否かについての判定は,一義的になされ難いものであり,当該普通地方公共団体の高度の政策的判断によらざるを得ないことは否定することはできないとしても,法232条の2の「公益上必要がある場合」という要件具備の判断については,結局のところ,事柄の性質上,当該普通地方公共団体が置かれている社会的,経済的状況を前提として,寄附金又は補助金の交付を受ける相手方と当該普通地方公共団体との関係,寄附金又は補助金の交付が当該普通地方公共団体ないしその住民にもたらす利益,効果,その程度,交付される額がそれに見合うだけの利益をもたらすものかなど諸般の事情を総合的に勘案して決するのが相当であるとの見地を示し,この観点に立って,本件補助金の交付決定及び本件補助金の支出が法232条の2所定の「公益上必要がある場合」に当たるか否かについては,東京都が,預金者を保護することにより,地域の信用不安を回避し,都民や地域の中小企業者への影響を最小限にとどめることが東京都の公益に合致し,そのために財政支出が必要であるとの判断に基づき,平成7年8月28日,預金者の保護と信用秩序の維持の観点から,コスモ信用組合の経営破綻をペイオフに の影響を最小限にとどめることが東京都の公益に合致し,そのために財政支出が必要であるとの判断に基づき,平成7年8月28日,預金者の保護と信用秩序の維持の観点から,コスモ信用組合の経営破綻をペイオフによらずに処理するために,関係金融機関等関係者とその処理スキーム(以下「本件処理スキーム」という。)に係る合意をし,これに基づく資金援助を決定したことについては,その判断には,判断の要素として考慮すべき点に著しい過誤欠落があったとは認め難いし,その結論も首肯できるから,結局,本件補助金の支出に法令に違反する違法はないと断じるに至っている。 以上にみたとおり原判決は,本件補助金の交付決定の性質は全くの自由裁量であるといっているのではなく,当該要件としての「公益上必要」といった事柄の性質上,その具備の判断に当たっては裁量の幅に広い面があるとはいえ,あくまでそれは当該普通地方公共団体(本件の場合は東京都)の長の合理的な裁量によりその要件の具備を吟味し,結局,これがあるとみてされた本件補助金交付決定とそれによる本件補助金の支出には,前記公益性の要件が具備されていると判断し,もとよりそこには裁量権の逸脱又は濫用の違法はないと判断しているのである。 当裁判所は原判決の前記判断過程及びその結論を是認できるものと判断するものであり,ひっきょう,控訴人らの前記主張は,原判決を正解せず独自の主張をするものであり,採用することができない。 その他,控訴人らは,本件補助金交付決定及び本件補助金の支出について「公益上必要がある場合」に当たらないとしてるる主張するが,これらの主張はいずれも採用することができないことは,この点につき原判決が控訴人らの主張を排斥した理由として説示するとおりである。 なお,控訴人らは,本件補助金の支出負担行為である本件交付決定は法令又は予 張はいずれも採用することができないことは,この点につき原判決が控訴人らの主張を排斥した理由として説示するとおりである。 なお,控訴人らは,本件補助金の支出負担行為である本件交付決定は法令又は予算の定めるところに従ったものでなければならず,東京都の出納長である被控訴人は,本件交付決定が法令又は予算の定めるところに従ったものであることを確認したうえでなければ,本件支出をすることができないのに,これを確認しないで本件補助金を支出したと主張したにもかかわらず,原判決は,本件支出が法令又は予算に違反していることを看過してされたか否かを争点としている,と主張する。しかしながら,前記第2・3・(1)で述べたように,原判決は,本件補助金交付決定及び本件補助金支出命令による本件補助金の支出を本件補助金の支出と述べ,本件補助金の支出が,その支出負担行為につき,法令又は予算に違反している点のあることを看過してされた違法なものであるか否かを争点としたうえ,この争点について判断していることはその理由中で判示するところにより明らかである。 3 控訴人らのその他の主張について。 (1) 本件補助金の支出が,支出権限を有する東京都出納長である被控訴人の決裁を経ないでされた違法なものであるかどうか(原審争点2)に関する控訴人らの主張について。 控訴人らは,本件補助金支出命令書である甲4号証には被控訴人の決裁印が押印されておらず,本件補助金支出命令は出納長の決裁を欠いた違法なものであると主張し,甲4号証に被控訴人の押印がされていなかったことはその入手経過に照らしても明らかであるなどと主張する。しかしながら,乙2号証の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,原判決の認定するとおり,本件補助金支出命令書には被控訴人の押印がされていたが,印影が薄かったため,控訴人らが入手した甲 るなどと主張する。しかしながら,乙2号証の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,原判決の認定するとおり,本件補助金支出命令書には被控訴人の押印がされていたが,印影が薄かったため,控訴人らが入手した甲4号証にうまく謄写されなかったにすぎないと認められるのである。このような本件補助金支払命令書に東京都出納長である被控訴人の決裁印が押印されている以上,本件補助金支出命令は,東京都出納長の決裁を経た適法なものであるというべきであること,原判決の摘示するとおりである。控訴人らの前記主張は,失当というほかなく,もとより採用することができない。 (2) 本件処理スキームに係る合意の法的効力について。 控訴人らは,本件処理スキームに係る合意には法的効力はなく,また,本件処理スキームに係る合意が成立した当時の平成7年度においては,補助金が予算に計上されていないから,本件処理スキームを本件補助金の支出の根拠とすることはできない,と主張している。しかしながら,本件においては,原判決が認定するように,東京都は,本件処理スキームに係る合意をした後,平成7年都議会第3回定例会において,本件処理スキームに基づき東京都が負担する資金援助分として,平成7年度の補助金20億円,債務負担行為180億円(期間・平成8年度ないし平成16年度)とする平成7年度東京都一般会計補正予算(第3号)を提出し,同議案は,平成7年9月29日に付帯決議付きで可決されたのであり,その後,前記補助金交付要綱を制定し,信組協会との間で,同要綱に基づき,前記補助金交付協定を締結したうえ,平成7年度及び平成8年度における補助金の交付額をそれぞれ20億円とする旨の協定書を締結し,平成7年度及び平成8年度における補助金としてそれぞれ20億円を信組協会に対して交付したのであり,本件補助金の支出も,平成10年 年度における補助金の交付額をそれぞれ20億円とする旨の協定書を締結し,平成7年度及び平成8年度における補助金としてそれぞれ20億円を信組協会に対して交付したのであり,本件補助金の支出も,平成10年3月20日,信組協会から東京都知事に対し,平成9年度東京都信用組合緊急特別対策補助金交付申請書が提出され,これに対し,同月25日付けの本件補助金交付決定,同月26日付けの本件補助金支出命令を経たうえで,同月30日に,信組協会に対し,本件補助金として20億円を交付したと認められるのである。このように,東京都が関係金融機関等関係者との間でした合意である本件処理スキームに何ら法的効力がないとはいえず,また,所定の手続を経て本件処理スキームによる資金援助全体の具体化が実施されるのであるから,本件処理スキームが直接本件補助金の支出の根拠となるわけではない。したがって,控訴人らの前記主張は採用することができない。 4 以上によれば,原判決は相当であるから,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第12民事部裁判長裁判官伊藤瑩子裁判官秋武憲一裁判官小池一利

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