主文 1 第1事件第1事件申立人らの申立てをいずれも却下する。 2 第2事件(1) 起業者国土交通大臣及び日本道路公団の一般国道468号新設工事〔一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」新設工事〕(東京都あきる野市α地内から同市β地内までの間、青梅市γ地内から同市δ地内までの間及び同市ε地内から同市ζ地内までの間)及びこれに伴う附帯事業並びに市道付替工事のための収用裁決申請事件について、東京都収用委員会がした別紙土地収用裁決一覧記載の裁決に基づき、相手方東京都知事が第2事件申立人らに対して行う明渡裁決の執行(代執行手続の続行)は、当庁平成14年(行ウ)第421号収用裁決取消請求事件の第一審判決言渡しの日から起算して15日後までの間、これを停止する。 (2) 第2事件申立人らのその余の申立てをいずれも却下する。 3 申立費用は、第1事件については第1事件申立人らの負担、第2事件については、第2事件申立人ら及び相手方東京都知事に生じた費用は同相手方の負担、その余を第2事件申立人らの負担とする。 理由 第1 当事者の申立て 1 申立ての趣旨(1) 第1事件(ア、イともに相手方は東京都収用委員会)ア主位的申立て起業者国土交通大臣及び日本道路公団の一般国道468号新設工事[一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」新設工事](東京都あきる野市α地内から同市β地内までの間、青梅市γ地内から同市δ地内までの間及び同市ε地内から同市ζ地内までの間)及びこれに伴う附帯事業並びに市道付替工事のための収用裁決申請事件について、平成14年9月30日第1事件相手方がなした別紙土地収用裁決一覧記載のうち、明渡裁決の効力は、当庁平成14年(行ウ)第421号収用裁 伴う附帯事業並びに市道付替工事のための収用裁決申請事件について、平成14年9月30日第1事件相手方がなした別紙土地収用裁決一覧記載のうち、明渡裁決の効力は、当庁平成14年(行ウ)第421号収用裁決取消請求事件の本案判決が確定するまでこれを停止する。 イ予備的申立て起業者国土交通大臣及び日本道路公団の一般国道468号新設工事[一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」新設工事](東京都あきる野市α地内から同市β地内までの間、青梅市γ地内から同市δ地内までの間及び同市ε地内から同市ζ地内までの間)及びこれに伴う附帯事業並びに市道付替工事のための収用裁決申請事件について、平成14年9月30日第1事件相手方がなした別紙土地収用裁決一覧記載のうち、明渡裁決の手続の続行は、当庁平成14年(行ウ)第421号収用裁決取消請求事件の本案判決が確定するまでこれを停止する。 (2) 第2事件(相手方は、東京都知事、国及び日本道路公団)起業者国土交通大臣及び日本道路公団の一般国道468号新設工事[一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」新設工事](東京都あきる野市α地内から同市β地内までの間、青梅市γ地内から同市δ地内までの間及び同市ε地内から同市ζ地内までの間)及びこれに伴う附帯事業並びに市道付替工事のための収用裁決申請事件について、平成14年9月30日東京都収用委員会がなした別紙土地収用裁決一覧記載のうち、第2事件相手方らが行う明渡裁決の手続の続行(代執行手続の続行)は、当庁平成14年(行ウ)第421号収用裁決取消請求事件の本案判決が確定するまでこれを停止する。 2 相手方らの意見本件申立てをいずれも却下する。 第2 前提となる事実本件記録によれば、以下のとおりの事実を一応認めることができる。 1 当事者等(1 するまでこれを停止する。 2 相手方らの意見本件申立てをいずれも却下する。 第2 前提となる事実本件記録によれば、以下のとおりの事実を一応認めることができる。 1 当事者等(1) 別紙第1申立人目録記載の申立人(第1及び第2事件申立人)らは、いずれも首都圏中央連絡自動車道(以下「圏央道」という。)新設工事に必要とされる別紙物件目録記載の土地(以下「本件各土地」という。)ないしはその地上建物の所有者又は共有持分権者であって、後記の権利取得裁決及び明渡裁決の各処分を受けた者である。 (2) 別紙第2申立人目録及び同第3申立人目録各記載の申立人(第1事件申立人)らは、いずれも圏央道新設工事に必要とされる別紙物件目録記載25及び26の各土地(以下「本件借地」という。)の借地権者(共有持分権者)であって、後記の権利取得裁決及び明渡裁決の各処分を受けた者である。 (3) 第1事件相手方(以下「相手方委員会」という。)は、土地収用法(以下「収用法」という。)51条に基づき設置された、収用法記載の権限を行う独立行政委員会である。 (4) 第2事件相手方兼参加人(第1事件相手方委員会及び第2事件相手方東京都知事に訴訟参加したもの)国(以下「相手方国」という。)及び同日本道路公団(以下「相手方公団」という。)は、いずれも後記の圏央道新設事業の起業者であり、収用法102条の2第2項に基づき、第2事件相手方東京都知事(以下「相手方知事」という。)に対して、代執行の請求をし得る権限を有する者であり、相手方知事は、同項に基づく相手方国及び同公団の請求により、行政代執行法に基づく代執行を行う権限を有する者である。 2 申立人らの土地の利用状況等(1) 申立人A第1、第2事件申立人A(以下、個々の申立人について記載する際は 団の請求により、行政代執行法に基づく代執行を行う権限を有する者である。 2 申立人らの土地の利用状況等(1) 申立人A第1、第2事件申立人A(以下、個々の申立人について記載する際は、すべての申立人について、第1事件と第2事件の別にかかわらず、単に「申立人A」などと記載する。)は、別紙物件目録記載1ないし8の各土地(以下、同目録各番号記載の土地を「本件土地1」などという。)を所有し、本件土地14ないし17の各土地についての共有持分(各2分の1)を有している。 申立人Aは、本件土地2、4、5、14及び16の各土地を私道として、本件土地3及び6ないし8の各土地を畑としてそれぞれ利用している。 なお、本件土地1は、土地改良事業が行われた農地であるものの、相手方委員会の現況調査の際には耕作は行われてはおらず、また、本件土地15及び17の各土地は未利用の雑種地の状態であった。 (2) 申立人B申立人Bは、本件土地9及び10の各土地についての共有持分(各2分の1)と本件土地11及び12の各土地についての共有持分(各10分の1)を有している。 申立人Bは、本件土地9及び10の各土地上に存する建物についての共有持分(各2分の1)を有し、同建物に居住している。また、本件土地11及び12の各土地を私道として利用している。 なお、申立人B以外の共有持分権者らは、土地収用について特段の異議を述べてはいない。 (3) 申立人C及び同D申立人Cは、本件土地13を所有し、本件土地14ないし17の各土地についての共有持分(各2分の1)を有している。また、申立人Cと同Dは、本件土地13に存する建物を共有(申立人Cが5分の2、同Dが5分の3)し、それぞれ同建物に居住している。 また、(1)記載のとおり 共有持分(各2分の1)を有している。また、申立人Cと同Dは、本件土地13に存する建物を共有(申立人Cが5分の2、同Dが5分の3)し、それぞれ同建物に居住している。 また、(1)記載のとおり、本件土地14及び16の各土地は私道として利用されているが、本件土地15及び17の各土地は、相手方委員会の現況調査の際には、未利用の雑種地の状態であった。 (4) 申立人E及び同F申立人Eは、本件土地18ないし26の各土地を所有し、本件土地27について、申立人Fとともに共有持分(各2分の1)を有している。 申立人Eは本件土地19ないし26の各土地上に存する複数の建物を所有し、申立人Fとともに同建物に居住していたが、平成15年7月25日以降、ネフローゼ症候群によりあきる野市所在の病院において入院加療を続けている。 本件土地27は、G(注 Gは,E,Fの姓である。)家代々の墓地として利用されてきた。 なお、本件土地18は、土地改良事業が行われた農地であるものの、相手方委員会の現況調査の際には耕作は行われてはいなかった。 (5) 別紙第2申立人目録及び同第3申立人目録各記載の申立人ら別紙第2申立人目録及び同第3申立人目録各記載の申立人らは、いずれも文化財保護法に基づく埋蔵文化財包蔵地である本件借地について、遺跡の調査及び保護保存を目的として、借地権の共有持分(別紙第2申立人目録記載の申立人らは各32分の1、別紙第3申立人目録記載の申立人らは各3200分の1)を有している者である。 3 事業の概要(1) 東京都あきる野市α地内から同市β地内までの区間、青梅市γ地内から同市δ地内までの区間及び同市ε地内から同市ζ地内までの区間についての、一般国道468号(一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」)を新設し 都あきる野市α地内から同市β地内までの区間、青梅市γ地内から同市δ地内までの区間及び同市ε地内から同市ζ地内までの区間についての、一般国道468号(一般有料道路「首都圏中央連絡自動車道」)を新設し、併せてその附帯工事並びに市道付替工事を行う事業(以下「本件事業」という。)については、平成12年1月19日に建設大臣(当時)による収用法20条に基づく事業認定(以下「本件事業認定」という。)の告示があった。 本件事業は、青梅インターチェンジから日の出インターチェンジを経てあきる野インターチェンジに至るまでの区間の圏央道建設及びその付帯工事並びに市道付替工事を行うものであるが、本件事業区間の圏央道路線のうち、青梅インターチェンジから日の出インターチェンジまでの区間(約8.7キロメートル)は、既に平成14年3月に供用が開始されている。 本件各土地は、いずれも上記本件事業区間のうち、東京都あきる野市α地内から同市β地内までの区間(以下「本件区間」という。)において圏央道建設予定地(主にあきる野インターチェンジ建設予定地)とされている土地である。 (2) 圏央道は、横浜市、厚木市、八王子市、青梅市、川越市、つくば市、成田市、木更津市等の都心から約40ないし60キロメートル圏に位置する都市を相互に連絡することにより、地域間の交流を拡大するとともに、東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道、東北自動車道、常磐自動車道、東関東自動車道水戸線などの放射状の幹線道路と接続することにより、都心への交通集中を緩和することなどを目的とした総延長約300キロメートルの環状の自動車専用道路である。圏央道は、昭和60年度に事業化され、昭和61年度に首都圏基本計画として策定され、また、平成元年3月13日に東京都知事により「首都圏中央連絡道路」として都市計 メートルの環状の自動車専用道路である。圏央道は、昭和60年度に事業化され、昭和61年度に首都圏基本計画として策定され、また、平成元年3月13日に東京都知事により「首都圏中央連絡道路」として都市計画決定(東京都告示第246号ないし249号)されている。 計画されている圏央道のうち、現在既に完成し、供用が開始されている区間は、上記青梅インターチェンジから日の出インターチェンジまでの区間を含む、埼玉県鶴ヶ島ジャンクションから日の出インターチェンジまでの約28.5キロメートルである。 4 明渡裁決に至る経緯(1) 本件事業の起業者である建設大臣(当時)及び日本道路公団(相手方国及び同公団。以下「起業者」ともいう。)は、平成12年10月31日、相手方委員会に対し、本件土地1ないし11及び13ないし15の各土地について、収用法39条1項及び47条の2第3項に基づき、収用の裁決の申請及び明渡裁決の申立て(以下「本件第1次申請」という。)をした。 また、起業者は、同年11月30日、相手方委員会に対し、本件土地18ないし21、25及び27について、前記各条項に基づき、収用の裁決の申請及び明渡裁決の申立て(以下「本件第2次申請」という。)をした。 (2) 相手方委員会は、平成12年11月10日以降、収用法42条1項及び47条の4第1項に基づき、上記各土地が所在する東京都あきる野市の市長に対し、裁決申請書及び明渡裁決申立書等を送付し、これとともに、上記各土地の所有者及び関係人(以下「土地所有者等」という。)に対し、裁決の申請があった旨の通知をした。 あきる野市長は、収用法42条2項及び47条の4第2項に基づき、本件第1次申請については平成12年11月16日、本件第2次申請については同年12月14日、それぞれ収用の裁決の申請及 をした。 あきる野市長は、収用法42条2項及び47条の4第2項に基づき、本件第1次申請については平成12年11月16日、本件第2次申請については同年12月14日、それぞれ収用の裁決の申請及び明渡裁決の申立てがあったこと等を公告し、公告の日から2週間、公衆の縦覧に供した。 (3) 相手方委員会は、平成12年12月4日、収用法45条の2に基づき、本件第1次申請について裁決手続の開始を決定し、その旨公告し、同月20日、東京法務局福生出張所に、裁決手続開始の登記を嘱託した。 また、相手方委員会は、平成13年1月11日、上記条項に基づき、本件第2次申請について裁決手続の開始を決定し、その旨公告し、同月31日及び同年2月7日、上記出張所に、裁決手続開始の登記を嘱託した。 (4) 相手方委員会は、本件第1次申請及び本件第2次申請(以下「本件申請」という。)にかかる審理を以下のとおり実施した。 ア相手方委員会は、本件申請にかかる審理を平成13年5月31日に行うことを決定し、同年4月26日以降、起業者、土地所有者等に対し、審理の期日及び場所を通知した(収用法46条2項)。 イ相手方委員会は、平成13年5月31日、同年8月2日、同年10月11日、同年11月26日、同年12月20日、平成14年1月31日、同年2月21日、同年3月25日(本件第1次申請のみ)、同年4月11日(本件第2次申請のみ)及び同年5月2日(本件第2次申請のみ)と審理を実施した。 ウまた、相手方委員会は、これに並行して、収用法65条1項3号に基づき、本件申請にかかる現地調査等を実施した。 (5) なお、上記審理の過程で、申立人Aは本件土地8、16(持分2分の1)及び17(持分2分の1)、同Bは本件土地12(持分10分の1)、同Cは本件土地16( 請にかかる現地調査等を実施した。 (5) なお、上記審理の過程で、申立人Aは本件土地8、16(持分2分の1)及び17(持分2分の1)、同Bは本件土地12(持分10分の1)、同Cは本件土地16(持分2分の1)及び17(持分2分の1)、同Eは本件土地22ないし24及び26について、それぞれ残地収用の請求をした。 (6) 相手方委員会は、平成14年9月30日、別紙権利取得裁決及び明渡裁決一覧表記載のとおり、それぞれ権利取得裁決及び明渡裁決(以下、明渡裁決を「本件明渡裁決」といい、権利取得裁決と併せて「本件裁決」という。)を行い、同年10月10日までに、申立人らに対し、裁決書正本を送達した。 5 本案事件申立人らは、平成12年12月15日、本件事業認定取消訴訟を提起し(当庁平成12年(行ウ)第349号)、さらに、平成14年11月11日、本件裁決取消訴訟を提起した(当庁平成14年(行ウ)第421号)。当裁判所は、両事件の弁論を併合して審理を進め、平成15年9月10日の第14回口頭弁論期日において人証調べを終了し、それ以降3回の口頭弁論期日を指定するとともに、その最終回である平成16年2月24日には弁論を終結することを予定しており、双方当事者もこれに同意している。 6 行政代執行手続の経緯起業者は、平成15年6月27日、相手方知事に対して、本件土地2ないし17、19ないし27について収用法102条の2第2項に定める代執行の請求を行ったところ、相手方知事は、これを受けて、申立人B、同C、同D及び同Aに対しては同年9月15日を期限とする戒告を行い、申立人E及びFに対しては同月24日を期限とする戒告を行った。 また、起業者は、当初、本件土地1及び18については代執行の請求を行っておらず、地権者から任意の明渡を受けたものとして 戒告を行い、申立人E及びFに対しては同月24日を期限とする戒告を行った。 また、起業者は、当初、本件土地1及び18については代執行の請求を行っておらず、地権者から任意の明渡を受けたものとして本件申立ての審理中に上記各土地について土地の造成工事等を進めたが、申立人らから強い抗議を受けたこともあって、いったん工事を中止し、平成15年9月11日、相手方知事に対し、本件土地1及び18についても同様に代執行の請求を行っている。 第3 当事者の主張の要点別紙「当事者の主張の要点」のとおり第4 当裁判所の判断 1 第1事件について(1) 主位的申立てについてア申立人らは、本件明渡裁決は、申立人らに対し、現実に明渡義務を課すものなのであるから、この義務から暫定的に解放して、仮の救済を図る必要がある旨主張し、相手方委員会は、申立人らが損害として主張している点は、すべて本件明渡裁決に係る強制執行を受けた場合に生ずる損害であって、明渡義務を負わされたことによって生ずる損害ではないのであるから、行政事件訴訟法25条2項ただし書に照らしても、執行停止は認められない旨主張するので、以下、検討する。 イ収用法上の権利取得裁決は、起業者において、その裁決に定められた時期において、権利を取得するという観念的な効力を有するにすぎないもの(収用法101条)であり、また、明渡裁決は、その裁決の相手方に、その裁決に定められた時期までに、裁決の対象たる物件の引渡義務等を課すにすぎないもの(収用法102条)であって、その義務が履行されず、現実の明渡しがない場合には、行政代執行法所定の代執行手続によらなければ明渡しの強制執行をすることはできない(収用法102条の2第2項)。 ウところで、行政事件訴訟法25条2項本文は「処分、処分の執行又は手 い場合には、行政代執行法所定の代執行手続によらなければ明渡しの強制執行をすることはできない(収用法102条の2第2項)。 ウところで、行政事件訴訟法25条2項本文は「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるときは、…処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止…をすることができる」旨規定するとともに、同項ただし書は「処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない」旨規定しているから、処分の効力の停止を求める執行停止の申立てがあっても、当該処分の執行又は当該処分に後続する一連の手続の続行の停止によってその目的を達成することができる場合には、当該処分の効力の停止をすることはできないものというべきである。 そして、明渡裁決は、土地等の明渡義務を負わせるものであるものの、この裁決があれば直ちに明渡しの強制執行が可能となるものではなく、強制執行のためには行政代執行法に基づく手続を行う必要があり(収用法102条の2)、行政代執行は明渡裁決によって課された引渡義務等を強制的に実現させることを目的とする公権力の行使としての執行行為であって、収用法は対象となる事業をすみやかに実行させることを原則としていることからすると(収用法29条参照)、起業者において本案判決がされるまでの間は代執行請求をしないとの態度を表明しているなどの特段の事情がない限りは、起業者の代執行請求の有無や代執行手続が既に開始されていると否とにかかわらず、先行行為たる明渡裁決の取消訴訟を本案として当該処分の執行行為たる代執行手続の執行停止を求めることが許されるものというべきである。 そして、執行停止の相手方適格は、通常の執行停止の場合には 先行行為たる明渡裁決の取消訴訟を本案として当該処分の執行行為たる代執行手続の執行停止を求めることが許されるものというべきである。 そして、執行停止の相手方適格は、通常の執行停止の場合には本案訴訟について被告適格を有する者となるが、処分の執行が、当該処分庁以外の行政庁によって行われるものである場合には、当該処分庁以外の行政庁が相手方となるものというべきである。 これを本件についてみるに、申立人らが損害として主張している点は、いずれも本件明渡裁決が執行された場合に生ずる損害であるから、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)の停止を求めれば十分であり、行政事件訴訟法25条2項ただし書により、本件明渡裁決自体の効力を停止することはできないものというべきである。 エこの点につき、申立人らは、代執行手続が請求されていない時点では、本件明渡裁決の手続の続行(代執行手続の続行)の停止を求めることはできないのに対して、代執行の請求後にはじめて手続の続行を停止することができると解すると、裁判所での審理期間を考えた場合、執行停止決定が出されるまでに代執行手続が終了してしまう可能性があるから本件明渡裁決の効力の停止が認められるべきである旨主張する。 しかし、前記のとおり、特段の事情がない限り、起業者による代執行請求の有無や代執行手続が既に開始されていると否とにかかわらず、代執行手続の停止を求め得るとの解釈を採る限りは、申立人らの危惧する事態は生じないのであって、その主張は前提を欠くものといわざるを得ない。 また、申立人らは、行政事件訴訟法25条2項ただし書は、実際に代執行手続が進行し、手続の続行の停止を求めることが可能である場合には、明渡裁決の効力の停止を求めることができないことを定めたものにすぎないから、本件明 は、行政事件訴訟法25条2項ただし書は、実際に代執行手続が進行し、手続の続行の停止を求めることが可能である場合には、明渡裁決の効力の停止を求めることができないことを定めたものにすぎないから、本件明渡裁決の効力の停止を求める執行停止の申立ても許されるべきである旨主張するが、同項ただし書をそのように限定的に解すべき理由はなく、申立人らの主張は失当である。 オよって、第1事件の主位的申立てには理由がない。 (2) 予備的申立てについて申立人らは、相手方委員会に対して、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)の停止を求めているが、明渡裁決に基づく代執行は、起業者の請求により都道府県知事が行うものであるから、明渡裁決の執行(代執行手続の続行)の停止の申立てについて、相手方適格を有する者は相手方知事であって、相手方委員会ではない。 よって、本件予備的申立ては不適法である。 2 第2事件について(1) 申立人らは、相手方委員会を被告とする本案訴訟(収用裁決取消請求事件)の提起に伴って、相手方知事に対する本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)の停止を求めているところ、かかる申立ても、相手方適格を充足した適法な申立てであるというべきである。 この点につき、相手方知事は、執行停止は、本案の原告の利益を保全するための制度であり、また、その消極的要件として、本案について理由がないとみえることが規定されていることからすると、これを本来防御すべき、又は、防御し得る者は、本案の被告処分庁でしかないから、執行停止申立事件における相手方適格を有する者は本案訴訟における被告処分庁でなければならない旨主張するが、行政事件訴訟法25条2項は、後行行為の主体が先行行為の主体と異なる場合の執行停止を排除する旨を定めてはおらず、停止 相手方適格を有する者は本案訴訟における被告処分庁でなければならない旨主張するが、行政事件訴訟法25条2項は、後行行為の主体が先行行為の主体と異なる場合の執行停止を排除する旨を定めてはおらず、停止の対象が当該行政処分の執行行為であったり、手続の続行行為であって、処分庁以外の行政庁が行うものである場合には、たとえ後行行為の行政庁が先行行為の行政庁と異なるとしても、先行行為の手続の続行を停止すべき必要性がある場合があり得るから、かかる執行停止の申立ても許容されるものというべきであって、この点に関する相手方知事の主張は失当である。 また、相手方知事は、行政事件訴訟法25条2項の「手続の続行の停止」とは、あくまで本案の対象である処分の効力の停止をいい、当該処分とは目的を異にする別個の処分や手続の執行停止は許されない旨主張するが、前記のとおり、代執行は、明渡裁決によって課された引渡義務等を強制的に実現させることを目的とする公権力の行使であって、これによって当初の処分の効果を完成させる性質を持つものであるから、同項にいう「処分の執行」に該当するのであり、相手方知事の主張は失当である。 (2) 他方で、申立人らは、行政代執行の手続は起業者の請求を待って初めてなし得るものであり、代執行の停止を求めるためには、相手方国及び同公団が代執行の請求をすることを停止する必要がある旨主張する。 本件においては、前記のとおり既に相手方国及び同公団による相手方知事に対する代執行の請求が行われているから、これについて停止を求める利益を欠くことは明らかであるが、念のためにその適法性について検討すると、行政処分の執行停止は、行政事件訴訟の提起によっては当該処分の執行(処分の効力、手続の続行を含む広義の執行)が当然には停止されない原則が採られている法制度にお 念のためにその適法性について検討すると、行政処分の執行停止は、行政事件訴訟の提起によっては当該処分の執行(処分の効力、手続の続行を含む広義の執行)が当然には停止されない原則が採られている法制度において、本案訴訟で処分の効力が確定されるまでの暫定的措置として、処分の執行(広義)を停止する制度であり、その対象は、取消訴訟で取消しを求められている処分の効力及び執行並びに当該処分の有効なことを前提として行われる後続処分であるというべきであって、起業者による代執行の請求は、代執行手続の開始の要因とはなっているものの、それ自体は明渡裁決に後続する処分とはいえないから、収用法3条1号に規定する事業を行う権利義務の主体である起業者にすぎない相手方国及び同公団に対しては、執行停止の申立てをすることは許されないものというべきである。 よって、相手方国及び同公団に対する申立は不適法である。 (3) そこで、次に、相手方知事に対し、本件明渡裁決の執行行為としての代執行手続の停止を求める部分について検討する。 ア行政処分における執行停止の考え方行政処分における執行の停止は、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる回復困難な損害を避けるため緊急の必要がある場合にすることができる(行政事件訴訟法25条2項)ものであるが、この「回復困難な損害」とは、昭和23年に制定された行政事件特例法における執行停止の要件である「償うことのできない損害」(同法10条)が厳格にすぎるとして、昭和37年に制定された現行の行政事件訴訟法において改正されたものであることを考慮すると、処分を受けることによって被る損害が金銭賠償不能あるいは原状回復不能のもの、若しくは著しい損害でなくても、社会通念上これを被ったときはその回復は容易でないとみられる程度のものであれば足りる すると、処分を受けることによって被る損害が金銭賠償不能あるいは原状回復不能のもの、若しくは著しい損害でなくても、社会通念上これを被ったときはその回復は容易でないとみられる程度のものであれば足りるとする趣旨であると解される。 また、執行停止の消極要件として、「執行停止は」これにより「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」にはすることができないこととされている(行政事件訴訟法25条3項)。この趣旨は、本案判決前の暫定的措置としてなされる執行停止をなすべきか否かについては、単に処分によって申立人の受けた損害のみならず、公共の福祉に及ぼす影響をも考慮してなされるべきことを明らかにしたものであるが、その影響が重大かどうかは絶対的な基準によるものではなく、処分の執行により原告が受ける損害との関係において、処分が違法なものである可能性があるにもかかわらず、原告の損害を看過してまでもなお公共の福祉に対する影響を重大としてこれを守るほどの必要があるかどうかという見地から相対的に判断すべきものである。 さらに、執行停止の消極要件として、「本案について理由がないとみえる」ことが規定されている(行政事件訴訟法25条3項)が、これは、本案について既に理由がなく、勝訴の見込みが認められないような場合にまで執行停止を行うことは執行停止制度の趣旨とするところではないという当然のことを述べた規定であり、これが消極要件の形で規定されていることからすれば、原告としては、この段階においては、本案の行政処分が違法であることまでも疎明する必要はないことを示したものであると解される。そうすると、本案について理由がないとされるのは、行政処分の取消事由が認められないことが明白な場合など例外的な場合に限られると解すべきである。 そこ とを示したものであると解される。そうすると、本案について理由がないとされるのは、行政処分の取消事由が認められないことが明白な場合など例外的な場合に限られると解すべきである。 そこで、本件においては、まず、本件裁決に基づく行政代執行の手続を停止することによって公共の福祉に及ぼす影響がどの程度のものかについて検討し、次に、申立人らに生じる損害の性質、程度について検討し、これらの相対的な比較を行った上で、停止を求める緊急の必要性の有無について検討し、最後に、本案について理由がないとみえるときに該当するかどうかについて検討を加えることとする。 イ公共の福祉に及ぼす影響(ア) 圏央道の建設状況と本件事業の必要性本件記録によれば、本件事業は圏央道建設の一環としてなされているものであるところ、圏央道は、平成元年3月13日、東京都知事により「首都圏中央連絡自動車道」として都市計画決定(東京都告示第246号ないし第249号)されてからこれまで約15年が経過しているが(丙32、35の2)、平成15年4月現在において、総延長300キロメートルのうち28.5キロメートル(埼玉県鶴ヶ島ジャンクションから日の出インターチェンジの間)について供用が開始されたものにすぎず(丙32、35の2)、おおむね今後10年以内に全面開通を目指すものとされていること(乙15、丙32、35の2)、本件事業については、当初平成12年度供用を目指していたが、土地収用が円滑に進まなかったことから、現在では平成15年度の全面供用を目指すものと変更されていること(甲56、丙35の2)、本件区間とつながる南側のあきる野インターチェンジから八王子ジャンクションに至るまでの区間においても用地取得が円滑に進んでいないこと(丙35の2)、本件区間の北側に いること(甲56、丙35の2)、本件区間とつながる南側のあきる野インターチェンジから八王子ジャンクションに至るまでの区間においても用地取得が円滑に進んでいないこと(丙35の2)、本件区間の北側につながる日の出インターチェンジは既に平成14年3月に供用が開始されている(丙32、35の2)から、本件区間付近の通行車両はこの日の出インターチェンジを利用することができ、現在実際にそのような利用がなされていること(甲61)、現在建設中のあきる野インターチェンジから八王子ジャンクションまでの区間内に建設予定の八王子北インターチェンジの建設予定地においてダイオキシン類を含む焼却灰による汚染が確認されたため、相手方国において平成14年2月に学識経験者からなる「首都圏中央連絡自動車道地盤改良に関する技術検討委員会」を設置し、同委員会の指導を仰ぎながら、汚染状況等の調査を行い、さらに、同委員会において示された処理方針に基づいて具体的な処理方法を検討中であること(甲53の1ないし7、丙29ないし31)、などの事実を一応認めることができる。 これらの事実に照らすと、圏央道の完成予定は今後10年以内という長期のものであるから、その一部である本件区間の工事の進行によって圏央道全体の工事完成にただちに影響を及ぼすということはできない。 また、本件区間付近に着目しても、あきる野インターチェンジから八王子ジャンクションに至るまでの建設工事は未だ完成しているわけではなく、かつ、八王子北インターチェンジの建設予定地において、ダイオキシン類を含む焼却灰の存在が確認され、これについては除去や浄化などの具体的処理が現段階では未だ行われていないことからすると、上記建設工事についてはいまだ完成時期も明確でないといわざるを得ない。 そうすると、本件 が確認され、これについては除去や浄化などの具体的処理が現段階では未だ行われていないことからすると、上記建設工事についてはいまだ完成時期も明確でないといわざるを得ない。 そうすると、本件区間の建設工事を速やかに進行させたからといって、直ちに本件区間以南の圏央道の開通が見込まれるということにはならないというべきである。 さらに、あきる野インターチェンジ建設予定地からわずか1.93キロメートルの距離に日の出インターチェンジが建設され、実際に供用が開始されており、これが利用可能であること、また、慢性的に渋滞している国道16号線については、あきる野インターチェンジからよりも日の出インターチェンジからの方が距離が短く(丙32の12ないし13頁の地図)、あきる野インターチェンジの開設が国道16号線の渋滞緩和に及ぼす影響は小さいと考えられること、あきる野インターチェンジに直結する国道411号線については、むしろ、あきる野インターチェンジを建設することによって渋滞がより進むことが想定されること(将来的には、国道411号線に代わりあきる野インターチェンジから国道16号線への新たなバイパスとして新滝山街道が建設される予定であるが、現在のところ総距離7キロメートルのところ、1.7キロメートルの部分開通にとどまっている。甲59の4頁)などからすれば、現段階においてあきる野インターチェンジを早急に建設しなければならない必要性は小さく、本件区間のみの完成を急ぐべき具体的必要性があるか否かは明らかでないといわざるを得ない。 (イ) 遺跡の発掘調査また、起業者は、埋蔵文化財包蔵地としての指定を受けている箇所について土木工事を実施する場合は、文化庁長官(文化財保護法施行令5条1項5号により都道府県の教育委員会)に対して届出を行 査また、起業者は、埋蔵文化財包蔵地としての指定を受けている箇所について土木工事を実施する場合は、文化庁長官(文化財保護法施行令5条1項5号により都道府県の教育委員会)に対して届出を行い、同委員会において、埋蔵文化財が包蔵されている可能性が高い場合に、その調査及び記録をすることなるが(文化財保護法57条の3参照)、本件記録によれば、本件各土地を含む周辺地は、埋蔵文化財包蔵地と指定され、これまでも、圏央道建設に供される本件各土地の周辺地については、既に試掘調査を経て東京都埋蔵文化財センターによる発掘調査が行われていることが認められる(丙22の1及び2、同22の1及び3)。 そうすると、仮に本件各土地についての代執行手続を続行したとしても、今後、本件各土地について、試掘調査を経た上で教育委員会において必要性がないと判断された部分を除き、本発掘調査を経ることになる可能性が高いというべきであるが(丙28)、本件区間においてこれまで遺跡の調査に要した期間を踏まえると(丙21の1及び2)、これらの調査手続には少なくとも数か月、仮に、数回に分けて調査が行われることとなった場合には1年を超える期間を要することが想定される。 以上のとおりであるから、起業者側が土地占有を取得したとしても、直ちに本件区間の建設工事を進行させ得るとは断定できない状況にあるというべきである。 その上、このような状況にかんがみると、代執行手続を進める以前に申立人らの協力を得て現時点で可能な範囲の遺跡の調査を完了させ、そののちに代執行手続を進めても工事の進行をそれほど遅延させるものではないし、遺跡調査が完了するまでの間には後記のとおり本案事件の第一審判決をなし得る可能性も十分にあることからすると、むしろ、そのような手順を採ることが無用 めても工事の進行をそれほど遅延させるものではないし、遺跡調査が完了するまでの間には後記のとおり本案事件の第一審判決をなし得る可能性も十分にあることからすると、むしろ、そのような手順を採ることが無用の混乱を避け得るものと考えられるのである。すなわち、現時点において申立人らの協力により遺跡調査を開始することができるならば、直ちに代執行手続を進行させなくても、建設工事の進行が遅延することがほとんどない点において、公共の福祉が害されることもほとんどなく、本案判決を踏まえて代執行の許否を決し得る点において、明渡裁決の適否が明らかでないままに申立人らに犠牲を強いる事態を避けられるのである。当裁判所は、このような認識の下に、本件審尋期日以前に当事者双方に対し、第一審判決まで代執行手続の進行を止め、その間に遺跡調査を行うことを提案し、申立人側からは十分に検討に値するとの反応を得たが、起業者らはこれを拒絶したものであり、起業者らの態度は、強制力を用いないでほぼ同様の結果が得られる可能性があるにもかかわらず、あえて強制力を用いて事態を解決しようとしているものと評さざるを得ない。 (ウ) 損失について相手方らは、本件区間の工事の遅れによる社会的経済的損失は、年間約40億円と推計され、この甚大な損失はすべて国民が負担しているにほかならないから、これ以上の遅延は到底許されるものではないと主張する。 しかし、相手方らの主張する損失は、本件区間が開通した場合に得られる利益を算定したものであるから、いわゆる得べかりし利益であってそもそも本件区間の開通の遅れによって現実の国家財政に発生する積極的な損害とはいえない。 また、その算定の対象は、コスト換算可能とされる走行時間短縮、走行経費減少及び交通事故減少にかかる便益のみであっ 間の開通の遅れによって現実の国家財政に発生する積極的な損害とはいえない。 また、その算定の対象は、コスト換算可能とされる走行時間短縮、走行経費減少及び交通事故減少にかかる便益のみであって、その算出に際しては、具体的に算定可能な事業費及び維持管理費などは考慮されているものの、その他の要素、例えば周辺環境に与える被害(後記のとおり、その発生は十分予想し得るものであるし、その発生が十分予想される場合には、たとえ他の効用が期待できるとしても事業の実施自体にも疑問が生じるというべきである。)などの点が考慮されているものではなく、かつ、いずれも本件区間が事業計画どおりに進行し、走行時間が短縮され、走行経費及び交通事故が減少するという将来の理想的な仮定の下に算出されたものであって(丙11、丙33)、その信憑性についてはさらに検討を要すると考えられることなどからすれば、公共の福祉に対する影響を考えるに当たり、このような値をそのまま取り入れることはできないというべきである。 そのほか、相手方らは、本件区間の北側である青梅インターチェンジから日の出インターチェンジまでの区間において圏央道が整備されたことによる効果についてさまざまな主張をし、これについて資料を提出しているが(丙6ないし10)、仮にこれらの事実が認められたとしても、これらは本件区間に直接かかわるものではなく、また、そもそも本件においては、本件区間の整備効果の有無ではなく、本件区間の建設工事の遅延が公共の福祉にどのような影響を与えるかについて争われていることからすれば、これらの事実が本件の審理においてさほどの関連性を有するとはいえないから、本件においてはこれらの事情を考慮する必然性を欠くものといわざるを得ない。また、相手方らは、圏央道沿線の市町村や地元住民からその早期供 実が本件の審理においてさほどの関連性を有するとはいえないから、本件においてはこれらの事情を考慮する必然性を欠くものといわざるを得ない。また、相手方らは、圏央道沿線の市町村や地元住民からその早期供用を求める要望等がされていると主張するが、これらの要望等は、本件事業が適法な事業認定に基づいて行われ、かつ、国家賠償法2条1項にいう瑕疵のない道路が建設されるものとの前提でされているものと理解できるのであり、後記のとおり、上記事業認定自体が違法なものであって建設される道路に瑕疵があるとの可能性が存する以上、本件においては、このことを前提として判断をすべきものであり、これと前提を異にする要望等の存在を考慮することはできない。 (エ) 本案の審理状況一方、本案訴訟は、既にこれまで14回の弁論期日を重ね、当事者双方において本件事業及び本件裁決の違法性について主張を述べ、これに沿う膨大な証拠を提出し、また、原告側が申請した原告本人4名の尋問も終了しており、今後、双方においてさらに必要な立証を補充し、最終的な主張を尽くした上で弁論が終結される予定となっており、今後3期日分の弁論期日も既に指定され、予定通り進行すれば平成16年2月24日の弁論期日において結審することとなっている。 そうすると、予定外の事態にならない限り約7か月後には本案の判決が言い渡されることが想定されるから、本案第一審判決の言渡しまで執行を停止したとしても、それによって代執行の手続が停止される期間は約7か月間程度であると見込まれるし、本件土地1及び18については、代執行請求がされたばかりの状態にあり、これらについて先行して手続が進められている他の土地と同様の経緯をたどるとすると、代執行自体に着手するまでにはなお3か月程度要することになるから、上記の執行停止 執行請求がされたばかりの状態にあり、これらについて先行して手続が進められている他の土地と同様の経緯をたどるとすると、代執行自体に着手するまでにはなお3か月程度要することになるから、上記の執行停止決定による工事全体の遅延はせいぜい4か月程度であると考えられる。 (オ) 結論以上のように、本件区間の工事の進行が圏央道全体の完成に直ちに影響を及ぼすものではなく、本件区間以南の工事についてはその完成時期が明確でない状況にあって、本件区間のみの完成を急ぐべき具体的必要性があるか否かは明らかでないこと(以上(ア))、本件区間の工事についても、代執行手続を採ったとしてもその後に行うべき遺跡調査の内容如何によっては、なお相当期間工事に着手できない可能性があり、むしろ申立人らの協力を得て遺跡調査を行えばあえて代執行手続を採らないでも工事完成の遅延を避ける余地があったこと(以上(イ))、相手方らが主張する工事遅延による損失等については、その信憑性を検討する必要などがあり、直ちに採用できないこと(以上(ウ))、及び本案事件の審理及び代執行手続の進行状況からして、代執行手続を本案第一審判決まで停止することによる工事の遅延は短ければ4か月程度長くても7か月程度であると認められること(以上(エ))からすると、本件裁決の執行としての代執行の手続が停止されることによって、公共の福祉に与える影響は軽微なものにとどまるというべきであって、その程度は、後記のように、建設される道路に瑕疵があって本件事業認定及び収用裁決が違法である可能性があるにもかかわらず、その可能性の有無を十分見極めないままに、あえて建設を強行することを正当化するものとは到底いえない。 ウ申立人らの受ける損害これに対し、代執行が行われるこ るにもかかわらず、その可能性の有無を十分見極めないままに、あえて建設を強行することを正当化するものとは到底いえない。 ウ申立人らの受ける損害これに対し、代執行が行われることによって申立人らが被る損害の性質、程度について検討する。 (ア) 本件記録によれば、申立人E、同F、同B、同C及び同D(同Aを除く申立人ら)は、本件各土地のうちの全部又は一部の上にそれぞれ建物等を所有(又は共有)し、これまで長年にわたってそれらにそれぞれ居住し、その余の土地を私道等として建物の敷地と一体として利用してきたことが認められる。 そうすると、前記申立人らは、代執行手続に基づき、これらの建物を引き渡し、これらが取り壊されることによって、財産的な損害を被ることはいうまでもないが、それ以上に、これまで慣れ親しんだ生活環境を失い、新たな場所への転居を余儀なくされ、生活環境が大幅に変化し、かつ、こうした変化に馴染むため相応の精神的、肉体的負担を強いられることになるといえる。 このように、住み慣れた生活環境からの転居によって、前記各申立人らが長年かけて形成してきたいわば居住の利益が失われるというべきであるところ、仮に、将来、本案判決において本件裁決が取り消され、前記各申立人らがその所有(又は共有)土地の返還を受け、かつ、取り壊された建物等についてはその評価額相当額の補償を受けたとしても、いったんは転居を余儀なくされたことによって新しい環境への順応を強いられるという精神的、肉体的損害は既に発生しているのであって、こうした損害は事後の金銭的補償によって容易に回復される性質のものではないし、また、いったん喪失した転居前の生活環境を金銭的補償を用いて完全に再現することも困難というべきであるから、結局のところ、前記のような居 は事後の金銭的補償によって容易に回復される性質のものではないし、また、いったん喪失した転居前の生活環境を金銭的補償を用いて完全に再現することも困難というべきであるから、結局のところ、前記のような居住の利益は、いったん転居を余儀なくされ、住居等の生活環境を取り壊されることによって容易に回復し難いものとなるというべきであり、前記申立人らが本件各土地上に長年居住していることを考慮すると、その損害の程度も決して小さいものではないというべきである。 なお、申立人Eについては、現在ネフローゼ症候群の治療のためあきる野市内の病院に入院中であるが、入院中であっても同人が本来の住居に生活の基盤を有することは否定できないから、同人の居住の利益が否定されるものではないし、むしろ、高齢で入院加療を行っている状況下で、新しい生活環境への順応を強いられることは著しく過酷であって、その精神的、肉体的損害は容易に回復し難いというべきである。 (イ) 相手方知事は、建物等が取り壊されることによって生じるのは所有権の喪失という財産的な損害にすぎず、財産的損害は原則として代替性があり、金銭的補償によってその回復が可能であると考えるべきであるから回復し難い損害に当たらないと主張する。 たしかに、従来は、住居の収用については財産権の喪失という点のみが取り上げられ、住居の喪失に伴って慣れ親しんだ環境を奪われ、それまでに築き上げた居住の利益を失うという不利益については、単なる主観的利益にすぎないとして軽視される傾向があったことは否定できない。 しかしながら、こうした居住の利益は、自己の居住する場所を自ら決定するという憲法上保障された居住の自由(憲法22条1項)に由来して発生するものであって、人格権の基盤をなす重要な利益であり、特に上記申立人らのよう こうした居住の利益は、自己の居住する場所を自ら決定するという憲法上保障された居住の自由(憲法22条1項)に由来して発生するものであって、人格権の基盤をなす重要な利益であり、特に上記申立人らのように一時的な仮住まいではなく、定住の意思をもって、いわば終の栖として居住している者の利益は、その立場に置かれた者には共通して極めて重要なものとなるのであって、単なる主観的利益として切り捨てることのできる性質のものではないし、また、財産的な損害と異なり、自己の生活に密着した個別的な利益であるがゆえに、いったん失ってしまうと容易に他のもので置き換えることができない非代替的な性質を有するというべきであって、これを単なる財産的損害にすぎないとする相手方知事の主張は失当である。 また、相手方知事は、転居に伴う心労等は受忍義務の範囲内に属するから回復し難い損害に当たらないと主張するが、受忍義務は適法な公用負担において補償の要否を決するための基準であって、執行停止において回復困難な損害かどうかを判断するための基準たり得ないから、このような主張は失当である。 (ウ) 申立人Aについては、代執行手続の対象となっている所有土地上には居住していないものであるが、これらに隣接した土地に建物を所有して長年居住し、同人所有の本件各土地を私道又は農地などとしてそれぞれ利用してきたところ、これらの土地は同人の居住建物と一体として同人の生活環境を形成しているものといえなくもないし、また、農地についてはこれが収用されて造成工事が行われることにより土壌の大幅な変質が予想されることから、これもまた回復が相当に困難な損害といえる。この点については、本件各土地のうち、E所有の農地である本件土地18についても同様である。 (エ) 結論申立人Aを除く申立 ることから、これもまた回復が相当に困難な損害といえる。この点については、本件各土地のうち、E所有の農地である本件土地18についても同様である。 (エ) 結論申立人Aを除く申立人らは、本件代執行が行われることにより居住の利益を奪われるところ、その利益は上記のとおり極めて重要なものであり、かつ、いったん奪われると回復することはほとんど不可能なものであるから、これらの申立人らは、この点のみをとらえても代執行により行政事件訴訟法25条2項にいう回復困難な損害が生ずると認められる。 また、本件代執行が行われることにより申立人Aが受ける損害並びに本件土地18(農地)に対して代執行が行われることにより申立人Eが受ける損害は、上記居住の利益を奪われることに比べると、かなり軽微なものといわざるを得ないが、前記のように、本件代執行が停止されることによって公共の福祉に及ぼす影響は軽微なものにとどまるということができるし、上記のように居住の利益を有している申立人らについて、その敷地及びこれと一体として利用されている土地に対する代執行手続については、執行停止の要件が備わっていて、その執行が停止されると、その余の土地についてのみ代執行を行ったとしても、工事全体の完成ひいては道路としての供用開始は全体として遅延せざるを得ず、あえてその余の土地についてのみ代執行を行う必要性はさらに希薄なものになるといわざるを得ない。そうであれば、居住の利益に直接関わる申立人ら所有の建物及びこれと一体として利用されている土地のみならず、直接居住の用に供していないその余の部分についても、本件においては、公共の福祉に与える影響との対比において、行政事件訴訟法25条2項にいう回復困難な損害が生じるものと認めることができるというべきである。 そし いその余の部分についても、本件においては、公共の福祉に与える影響との対比において、行政事件訴訟法25条2項にいう回復困難な損害が生じるものと認めることができるというべきである。 そして、本件各土地について、既に起業者による代執行請求が行われ、本件土地1及び18を除く各土地の所有者に対しては、期限を通知した戒告まで行われたことも前記のとおりであるから、現段階において、申立人らの回復困難な損害の発生を避けるため、相手方知事による代執行の手続を停止する緊急の必要性があると認められる。 エ 「本案について理由がないとみえるとき」の該当性さらに、本件申立が本案について理由がないとみえるときに該当するか否かについて検討する。 (ア) 相手方知事は、本件事業認定の違法性は本件裁決に承継されないとの理解を前提に、申立人らが主張する事情は本件事業認定の違法事由であって、本件裁決の違法事由には当たらないと主張するので、この点についてまず検討する。 (イ) 行政処分については、これに瑕疵があったとしても権限のある機関によって取り消されない限り有効とされ、先行行為の違法性は当然に後行行為に承継されることがないのが原則である。しかしながら、先行行為と後行行為が同一の目的を追求する手段と結果の関係をなし、これらが相結合して一つの効果を完成する一連の行為となっている場合には、違法性の承継が認められるというべきである。そして、収用法における事業認定と収用裁決は、土地収用という一個の目的に向けた一連の行為であるから、その主体は異なっていても(収用法17条、47条の2)、一個の目的に向けた一連の行為として違法性の承継を認め得る例外的な場合に該当するというべきであって、このように考えるのがこれまでの通説的見解に 、その主体は異なっていても(収用法17条、47条の2)、一個の目的に向けた一連の行為として違法性の承継を認め得る例外的な場合に該当するというべきであって、このように考えるのがこれまでの通説的見解に沿うものである。 なお、収用裁決を行う収用委員会は、事業認定の違法性を審査する権限を有していないが、被収用者の立場からみればこのことは行政庁相互間の権限分配の問題にすぎないし、一般に行政処分取消訴訟においては当該行政処分が客観的にみて違法か否かを審理判断すべきものであって、当該行政庁がそのような処分をしたことがやむを得ないものであったか否かは問題とならないのであるから、事業認定の違法が収用裁決に承継される以上、収用委員会がその点を審理し得たか否かにかかわらず、収用裁決取消訴訟においては、その前提となった事業認定の適否まで含めて審理されるべきである。このように解したとしても、収用委員会は、収用裁決取消訴訟に事業認定をした行政庁の参加を求め、その行政庁に事業認定の適法性を主張立証させ、又は本件のように収用裁決取消訴訟と事業認定取消訴訟とが併合審理されているときには、事業認定取消訴訟における被告行政庁の主張立証を援用することにより、自己の立場を十分に防御し得るのであり、収用委員会に難きを強いる結果をもたらすものではない。 したがって、違法性の承継を否定する相手方知事の主張は失当である。 (ウ) 上記のように後行処分に先行処分の違法が承継される場合、後行処分の取消訴訟における先行処分の違法の主張立証責任については、先行処分自体の取消訴訟におけるものと同様に分配すべきものであるところ、土地収用法に基づく事業認定取消訴訟においては、事業認定の適法性を被告行政庁において主張立証すべきものであるから、本案訴訟はもとより、本件に 取消訴訟におけるものと同様に分配すべきものであるところ、土地収用法に基づく事業認定取消訴訟においては、事業認定の適法性を被告行政庁において主張立証すべきものであるから、本案訴訟はもとより、本件においても、被告側において本件事業認定の適法性を主張立証すべきであり、その適法性に疑問が払拭できない限り、本件申立てについては、本案について理由がないとみえるときとの消極要件には該当しないと解すべきである。 しかし、相手方らは、本件ではもとより本案訴訟においても、通説的な見解に反して、収用裁決には事業認定の違法は承継されないとの独自の見解を前提としているため、事業認定の違法事由を具体的に主張立証しない。当裁判所は、平成15年3月11日に行われた進行協議期日において、上記のような考え方に基づき、相手方収用委員会に対し、併合審理されている事業認定取消訴訟における被告の主張立証を予備的にせよ援用する意思はないかと口頭で質したが、検討するというのみでいまだ明確な回答のない状態が続いており、共同訴訟人独立の原則からして、相手方委員会は、いまだ事業認定の違法性について具体的な主張立証をしていないものとして取り扱わざるを得ない。 他方、申立人らは、本件事業認定及び収用裁決には収用法20条3号及び4号違反の事由があると指摘しているのであるから、相手方収用委員会が事業認定において上記のような態度を継続する限り、何らの主張立証がないものとして敗訴を免れないというべきであり、本件については現時点においては本案に理由があることは明白であると考えられる。 (エ) 上記(ウ)によると、現時点において本案に理由があるか否かはもはやそれ以上は検討の必要がないとも考えられるが、相手方収用委員会が、今後、事業認定取消訴訟における被告行政庁 (エ) 上記(ウ)によると、現時点において本案に理由があるか否かはもはやそれ以上は検討の必要がないとも考えられるが、相手方収用委員会が、今後、事業認定取消訴訟における被告行政庁の主張立証を援用する可能性もないとはいえないので、念のため、本件事業認定及び本件収用裁決の適否についても検討することとする。 申立人らは、本件事業が、①道路公害を激化させて周辺住民の健康を害し、②自然環境や歴史的文化遺産を破壊するものである上、③隣接する日の出インターチェンジと僅か1.93キロメートルしか離れていない位置にあきる野インターチェンジを建設する必要はなく、事業の必要や公益性も認められないものであって、④本件事業計画の策定に当たって、適切なアセスメントも行われておらず、その結果、道路公害等を防止するために、地下構造による道路の建設をすべきかどうかも検討していないという、調査検討の面においても極めて杜撰なものであり、⑤更に、本件裁決の審理手続において、申立人らは、上記のような問題点を具体的に指摘したにもかかわらず、起業者は、これらの問題点の指摘に対して何ら回答をせず、相手方委員会においても、これらの問題点についてまともに審理検討をすることはなく、裁決書においても、申立人らの指摘に対して何ら答えていない、などの事情から、本件事業は収用法20条3号及び4号の要件を満たさず、違法であり、これに基づく本件裁決も違法である旨の主張をしている。本案の審理の結果、こうした申立人らの主張する事実が証拠によって認められた場合、建設予定の道路には国家賠償法2条1項にいう瑕疵が存することとなり、本件事業は土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものとはいえず、また、公益上の必要を欠くとして、収用法20条3号及び4号違反を理由に違法であると判断され、 賠償法2条1項にいう瑕疵が存することとなり、本件事業は土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものとはいえず、また、公益上の必要を欠くとして、収用法20条3号及び4号違反を理由に違法であると判断され、これを受けた本件裁決も違法とされる余地がないとはいえないから、申立人らの主張をもってただちに法律上理由がないものとはいえない。 さらに、申立人らは、本案において、大気汚染が健康に与える影響を論じた環境庁の報告書、東京都内の幹線道路沿いに居住する住民に気管支喘息有症率が高いことを論じた文献、現場付近の交通量を示した資料、東京都内における大気汚染の状況を示した白書、本件事業の建設予定地の状況を撮影した報告書、本件事業の建設予定地付近で井戸涸れが生じている旨の報道記事、本件事業が環境に与える影響を論じた学者の意見書、本件事業の代替案としての地下トンネルの建設可能性について論じた意見書などを提出し、また原告本人(4名)の尋問などを通じて立証活動を行ってきたもので、これらの証拠に照らすと、本案訴訟における被告側の証拠資料を合わせ検討しても、現時点においては、本件事業認定及び本件収用裁決の適法性についての疑問が払拭できたとは到底いえず、今後の弁論期日において当事者双方からの追加立証も予定されていることからすると、むしろ、申立人らの指摘する本件事業認定及び本件裁決の問題点は、今後の本案の審理において十分に解明かつ検討された上で、その違法性の有無が判断されるべき事柄であるといえる。 そうすると、本件申立が、審理が継続している現段階において直ちに「本案において理由がないとみえるとき」に該当すると認めることはできない。 (オ) したがって、本案訴訟は、被告が本件事業認定の適法事由の主張立証をしない限り、原告の勝訴に終わることが明らか 「本案において理由がないとみえるとき」に該当すると認めることはできない。 (オ) したがって、本案訴訟は、被告が本件事業認定の適法事由の主張立証をしない限り、原告の勝訴に終わることが明らかであるし、たとえ被告が改めて上記の主張立証をしたとしても、現時点における本案の証拠資料を前提とする限り、本件事業認定及び本件収用裁決の適法性についての疑問が必ず払拭できるとも認められず、「本案において理由がないとみえるとき」との消極要件が存在するとは認め難い。 (4) 結論(3)において検討したところによれば、第2事件に係る申立てには理由があると認められるから、行政事件訴訟法25条2項の規定に基づき、本案判決が出るまでの間(本案判決の検討に要する期間を考慮して判決言渡の日から15日後までの間)については、相手方知事が本件明渡裁決に基づいて行う代執行の手続の続行を停止すべきである。 3 以上のとおりであるから、第1事件については、いずれも不適法な申立であるから却下することとし、第2事件については、申立人らの相手方知事に対する執行停止の申立てを本案判決の言渡し後15日後までの間に限って認容し、その余の申立て及び相手方国、同公団に対する申立てを却下することとして主文のとおり決定する。 平成15年10月3日東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官新谷祐子裁判官加藤晴子・別紙当事者の主張の要点第1 本件各執行停止の申立ての適否(処分の効力の停止と手続の続行の停止との関係について) 1 第1事件(1) 主位的申立て 加藤晴子・別紙当事者の主張の要点第1 本件各執行停止の申立ての適否(処分の効力の停止と手続の続行の停止との関係について) 1 第1事件(1) 主位的申立てア申立人ら申立人らは、本件明渡裁決によって直ちに本件各土地についての明渡執行を受けるものではなく、明渡執行を実施するためには、行政代執行法に基づく手続が必要になることは事実である。しかしながら、本件明渡裁決は、申立人らに対し、現実に明渡義務を課すものなのであるから、この義務から暫定的に解放して、仮の救済を図る必要がある場合が存するものというべきである。 また、行政代執行手続が請求されていない時点では、本件明渡裁決の手続の続行(代執行手続の続行)の停止を求めることはできないのに対して、代執行の請求後にはじめて手続の続行を停止することができると解すると、裁判所での審理期間を考えた場合、執行停止決定が出されるまでに代執行手続が終了してしまう可能性がある。 さらに、行政事件訴訟法25条2項ただし書は、行政代執行手続が実際に進められており、手続の続行の停止を求めることが可能である場合には、明渡裁決の効力の停止を求めることができないことを定めたものにすぎないと解すべきである。 よって、本件明渡裁決の効力の停止を求める執行停止の申立ても許されるものというべきである。 イ相手方委員会本件明渡裁決は、申立人らに本件各土地の明渡義務を負わせるものであるものの、この裁決があれば直ちに明渡しの強制執行が可能となるものではなく、強制執行のためには行政代執行法に基づく手続を行う必要がある(収用法102条の2)。そして、本件において申立人らが損害として主張している点は、すべて本件明渡裁決に係る強制執行を受 なるものではなく、強制執行のためには行政代執行法に基づく手続を行う必要がある(収用法102条の2)。そして、本件において申立人らが損害として主張している点は、すべて本件明渡裁決に係る強制執行を受けた場合に生ずる損害であって、明渡義務を負わされたことによって生ずる損害ではないのであるから、行政代執行手続が開始された場合に、その執行停止を求めれば十分であり、本件明渡裁決によって回復し難い損害を避けるための緊急の必要が生じているということはできない。 また、執行停止は必要最小限度にとどめるべきものであるところ、行政代執行は明渡裁決によって課された引渡義務等を強制的に実現させることを目的とする公権力の行使であるから、両者は一連の手続をなし、明渡裁決の取消訴訟を本案として代執行手続の執行停止を求めることが許されると考えられるから、明渡裁決の効力の停止を求めることは、不必要に停止範囲を拡大する点で、行政事件訴訟法25条2項ただし書に反して許されない。 (2) 予備的申立てア申立人ら行政代執行手続が請求される前にも手続の続行の停止が求められるとした場合には、主位的申立ての趣旨が否定される可能性があり、その場合に備えて、手続の続行の停止の申立てを予備的に行う。 イ相手方委員会明渡裁決に基づく行政代執行は、起業者の請求により都道府県知事が行うものであるから、明渡裁決の手続の続行(行政代執行手続)の停止の申立てについて、相手方適格を有する者は東京都知事であって、相手方委員会ではないから、本件予備的申立ては不適法である。 2 第2事件(1) 申立人ら行政事件訴訟法25条2項は続行処分の執行停止を求め得ることを前提としており、後行行為が先行行為と相手方が異なる場合の執行停止を排除する旨を定 である。 2 第2事件(1) 申立人ら行政事件訴訟法25条2項は続行処分の執行停止を求め得ることを前提としており、後行行為が先行行為と相手方が異なる場合の執行停止を排除する旨を定めてはいない。よって、相手方が異なるが故に執行停止が求められないとする理由はない。そして、代執行の基礎には明渡裁決があるのであって、両者が先行行為と後行行為の関係に立つことは明らかである。 仮にこれを認めないとすると、戒告等の取消訴訟を本案とした執行停止を求めざるを得なくなるところ、違法性の承継が認められないとされた場合には、当該取消訴訟においては裁決の違法を主張することができなくなり、かかる執行停止は常に本案について理由がないとして却下を免れないこととなって不合理である。 また、行政代執行の手続は起業者の請求を待って初めて行えるものであり、代執行の停止を求めるためには、相手方国及び同公団が代執行の請求をすることを停止する必要がある。法文上も、行政庁の処分以外の執行停止を排除するものとはされてはいないから、起業者による代執行の請求も、本件明渡裁決の手続の続行に含まれるものというべきである。 (2) 相手方知事執行停止は、本案訴訟による終局的な解決までの間の法的状態の暫定的な安全を保持し、訴訟の結果の価値を失わせないことを目的とするものであり、よって、処分の取消しの訴えが適法に係属していることを要件としているのであって、本案の原告の利益を保全するための制度である。また、その消極的要件として、本案について理由がないとみえることが規定されていることからすると、これを本来防御すべき、又は、防御し得る者は、本案の被告処分庁でしかないから、執行停止申立事件における相手方適格を有する者は本案訴訟における被告処分庁でなければならない 定されていることからすると、これを本来防御すべき、又は、防御し得る者は、本案の被告処分庁でしかないから、執行停止申立事件における相手方適格を有する者は本案訴訟における被告処分庁でなければならない。 また、行政事件訴訟法25条2項の「手続の続行の停止」とは、処分の有効を前提としてその法律関係を進展させる他の行為が行われる場合において、その基礎となる処分の効力を奪って行為の後続、法律関係の発展を差し止めることを指すものであり、取消しの訴えの対象となっている処分の効力の一面の停止ともいえるものであって、その実質は本案の対象である処分の効力の停止でしかないものというべきである。 そして、執行停止申立てはその本案訴訟の対象たる処分について行われるべきものであり、執行停止の対象となるべき範囲は、当該処分とは目的を異にする別個の処分や手続を含めることはできない。 本件においては、明渡裁決と行政代執行とは、明渡義務を課する行為とこれを任意に履行しない者に対する起業者の代執行請求に基づく行政上の強制執行という全く目的を異にする別個の独立した行為であるから、これを明渡裁決の執行停止制度における手続の続行行為として位置付けることはできない。 したがって、本件申立ては不適法である。 (3) 相手方国及び同公団行政処分の執行停止は、行政事件訴訟の提起によっては当該処分の執行(処分の効力、手続の続行を含む広義の執行)が当然には停止されない原則が採られている法制度において、本案訴訟で処分の効力が確定されるまでの暫定的措置として、処分の執行を停止する制度であり、その対象は、取消訴訟で取消しを求められている処分の効力及び執行並びに当該処分の有効なことを前提として行われる後続処分に限られ、また、その場合の相手方適格は、 して、処分の執行を停止する制度であり、その対象は、取消訴訟で取消しを求められている処分の効力及び執行並びに当該処分の有効なことを前提として行われる後続処分に限られ、また、その場合の相手方適格は、行政庁に限られるというべきである。 しかるに、相手方国及び同公団はいずれも起業者として収用法3条1号に規定する事業を行う権利義務の主体であり、行政処分としての行政代執行を行う者ではなく、行政事件訴訟法にいう行政庁には当たらないから、かかる申立ては不適法であるというべきである。 第2 回復困難な損害を避けるための緊急の必要性の有無について 1 申立人ら申立人らには、本件明渡裁決の効力、又は、その手続の続行(代執行手続の続行)によって、次のとおり回復困難な損害を受けるおそれがあり、それを避けるためには本件明渡裁決の効力、又は、その手続の続行(代執行手続の続行)を停止する緊急の必要性がある。 (1) 申立人E及び同Fについて申立人E及び同Fは、本件土地19ないし26の各土地上に存する建物に居住し、本件土地18において農業を営み、また、本件土地27にある墓地において先祖を供養してきた。これらの土地は、G家が十数代にわたって守り続けてきた土地であり、申立人Eらの上記各土地に対する愛着は、測り知れないものがある。 また、申立人Eは、80歳の高齢であって、脳梗塞後遺症、高血圧症、慢性脳循環不全症、めまい症の疾病に罹患し、現在ネフローゼ症候群により入院加療中である。申立人Fも、高血圧症、横隔膜弛緩症の疾病に罹患している上、物に掴まらなければ歩行ができないので車椅子を使用しており、上記各疾病により、近隣の病院で通院治療を受け、医師からは遠方に出ることは危険が高いとして禁止されている状態にある。両名とも、近親者や親しい関係にある近隣住民 歩行ができないので車椅子を使用しており、上記各疾病により、近隣の病院で通院治療を受け、医師からは遠方に出ることは危険が高いとして禁止されている状態にある。両名とも、近親者や親しい関係にある近隣住民らの手助けを受けながら生活をしているのである。 本件明渡裁決又はその続行手続に基づき、上記各土地が収用され、申立人E及び同Fの住居や庭、農地、墓地が破壊されてしまえば、それを復元することは極めて困難になることは明らかである。更に、申立人Eらにとって、上記各土地を奪われ、別の土地への移転を強制されれば、重大な精神的打撃を受けるばかりではなく、転居によって生活環境が変わり、近隣住民らの手助け等を容易に受けることができなくなり、その結果、健康を著しく害するおそれも高いのであって、これらによって生じる損害は、回復困難なものであるといわなければならない。 また、申立人E所有の各土地上には、6世紀ないし7世紀ころの古墳である西龍ヶ崎古墳や西龍ヶ崎遺跡、江戸時代の古民家、古井戸、内墓などといった貴重な文化遺産が存在し、本件明渡裁決又はその続行手続に基づき上記各土地が収用され、これらの文化遺産が破壊されてしまった場合には、回復困難な損害が生ずることになるものというべきである。 (2) 申立人C及び同Dについて申立人C及び同Dは、本件土地13に存する建物に居住してきたものであるが、H家(注 HはC及びDの姓である。)も、江戸時代から長年に渡ってη地域に居住してきた家系であり、本件明渡裁決又はその続行手続に基づいて土地が収用されてしまうことになれば、代々受け継いできた土地や建物を奪われ、また、近隣住民との関係も奪われることとなり、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (3) 申立人Bについて申立人Bは、昭和48年以 れば、代々受け継いできた土地や建物を奪われ、また、近隣住民との関係も奪われることとなり、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (3) 申立人Bについて申立人Bは、昭和48年以降、本件土地9及び10の各土地上に存する建物に居住し、η地域に密着した生活を送ってきたものであり、定年後の人生もη地域で送ろうと考えてきた。本件明渡裁決又はその続行手続に基づいて上記各土地が収用されてしまうことになれば、生活の基盤であった土地や建物を奪われた上、これまで築き上げてきた近隣住民との関係をも奪われることになり、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (4) 申立人Aについて申立人Aの家系も、代々η地域で農業を営んできたものであり、同人も学業を終えるまでは農業を手伝い、現在は就職しているものの、退職後は、代々受け継いできた畑において農業に従事することを計画していた。本件明渡裁決又はその続行手続に基づいて土地が収用されてしまうことになれば、今後農業を営むことができなくなり、人生設計が大きく狂わされ、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (5) 別紙第2申立人目録及び同第3申立人目録各記載の申立人らについて別紙第2申立人目録及び同第3申立人目録各記載の申立人らは本件借地について借地権の共有持分権を有しており、同土地上にある西龍ヶ崎古墳等の文化遺産を研究対象とし、あるいは学習の材料とするなどといった形で利用する権利を有しているところ、本件明渡裁決又はその続行手続に基づいて上記各土地が収用され、文化遺産が破壊されてしまうことになれば、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (6) 相手方国及び同公団による違法な自力執行についてまた、起業者は、本件土地1及び18については当初代執 が破壊されてしまうことになれば、回復困難な損害を受けるものというべきである。 (6) 相手方国及び同公団による違法な自力執行についてまた、起業者は、本件土地1及び18については当初代執行の請求を行っていなかったにもかかわらず、地権者からの任意の明渡があったなどとして、本件の審理中に突然上記各土地に無断で立ち入り、造成工事を開始してしまった。代執行手続を経ない自力執行は法律の規定に基づかないものであって明らかに適正手続に違反する上、そもそも地権者が本件裁決を争っていることが明白であるにもかかわらず、無断で本件裁決の対象となった土地に立ち入り、その造成工事を始めるなどということは信義にもとるものであり、決して許されるものではない。起業者がこのような悪質な行動をとっていることからすれば、これ以上の暴挙を許さないためにも早急に代執行の手続を停止する必要性があるというべきである。 2 相手方ら申立人ら主張の損害は、いずれも回復困難な損害に当たるものではない。 すなわち、本件明渡裁決又はその続行手続は、本件各土地や土地上に存する建物についての所有権や借地権等の喪失という財産的な損害を生じさせるものであるところ、このような財産的損害は、原則として代替性があり、金銭的補償によってその回復が可能なのであるから、特段の事情がない限り、回復し難い損害には当たらないというべきである。 申立人らは、長年住み続けてきた土地等に対する愛着や、文化遺産の存在、転居によって生じるおそれがある健康被害等を理由に回復し難い損害が生じると主張する。しかしながら、土地等に対する愛着は、主観的なものであって、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)を停止してまで救済しなければならない利益には当たらず、文化遺産については、それが真に保護に値するものなの しながら、土地等に対する愛着は、主観的なものであって、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)を停止してまで救済しなければならない利益には当たらず、文化遺産については、それが真に保護に値するものなのであれば、文化財保護法による保護が与えられることになり、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)によって直ちに破壊されるものではない。更に、申立人E及び同Fの病状等が、転居に耐えられない状況にあるということはできない上、近隣への転居も可能であることからすれば、近隣住民とのこれまでの付き合いが破壊されるということもできないのであり、また、転居に伴う心労等は受忍義務の範囲内に属するものというべきであるから、同申立人らについて回復し難い損害が生じるということもできず、結局、申立人らの主張はすべて失当というべきである。 3 相手方知事行政代執行の手続は、起業者の請求、戒告、代執行令書による通知という事前手続が必要であり、戒告及び通知は代執行が行われることを予め相手方に通知し、義務の履行を督促する機能を持ち、代執行についての予測可能性を与えるものである。 よって、執行停止は、将来、代執行手続の一部である戒告等がなされた時点まで待つべきであり、また、待ったとしても、申立人らには代執行の執行停止を求める時間的余裕は十分にあるものというべきであるから、申立人らには、回復し難い損害を避けるための緊急の必要性は存しない。 第3 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれの有無について 1 申立人ら(1) 圏央道建設計画の破綻圏央道は、計画が策定されてから既に18年が経過しているにもかかわらず、総延長約300キロメートルのうち28.5キロメートルが完成したにすぎず、全線開通の見通しは全く立っていない。そして、本件区間は、日の出インターチェンジ から既に18年が経過しているにもかかわらず、総延長約300キロメートルのうち28.5キロメートルが完成したにすぎず、全線開通の見通しは全く立っていない。そして、本件区間は、日の出インターチェンジからあきる野インターチェンジまでの僅か1.93キロメートルに過ぎない。このような事情を考慮すれば、本件明渡裁決の執行(代執行手続の続行)が停止され、本件区間の道路建設工事が中断されることになったとしても、圏央道建設事業全体に与える影響は極めて僅かであるといえる上、本件区間が開通するかどうかによって、既に開通している部分の利便性に特段の変化が生じるものでもない。 また、平成14年1月には、圏央道北八王子インターチェンジ予定地付近の焼却灰からダイオキシンが発見され、その処理が問題となっているほか、同あきる野インターチェンジから八王子ジャンクションまでの区間においては、道路建設工事に基因する井戸涸れが多数発生するなどの問題も生じており、その対応措置を講じるために建設工事が中断している状況にあり、これらの事情からすれば、あきる野インターチェンジより南側の圏央道建設工事が完成するまでには長い年月を要することは明らかなのであって、このような事情に照らしてみても、執行停止によって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれはないものというべきである。 (2) 本件事業を進行させることによる損害更に言えば、本件区間に係る圏央道建設工事が完成すれば、あきる野インターチェンジ付近の交通量が増大し、国道411号線(滝山街道)の生活道路に深刻な渋滞を生じさせることになる上、大気汚染や騒音等の道路公害を激化させ、沿線住民の身体や生命に危険をもたらすことになることからすれば、圏央道建設工事が促進されることの方が公共の福祉に重大な影響を及ぼすのであり、執行停止によって建 大気汚染や騒音等の道路公害を激化させ、沿線住民の身体や生命に危険をもたらすことになることからすれば、圏央道建設工事が促進されることの方が公共の福祉に重大な影響を及ぼすのであり、執行停止によって建設工事をストップさせることこそが公共の福祉にかなうものというべきである。 (3) 圏央道の建設効果相手方らは、圏央道が、都心を通過する交通を分散することによって都心の渋滞を回避する効果があるなどというが、通過交通はわずか5パーセントにすぎず、むしろ道路建設が新たにもたらす誘発交通によって渋滞を招く可能性がある。 圏央道が未完成であるために首都圏の交通網が打撃を受けているといった事実もなく、地元住民の生活への影響等もない。 (4) 本件区間の建設効果また、相手方は、本件区間が開通することによって国道16号線の渋滞緩和効果があると主張するが、国道16号線はあきる野インターチェンジから離れているから、圏央道に入るためには青梅インターチェンジ又は日の出インターチェンジを利用することになるのであってあきる野インターチェンジを利用する必然性はない。また、あきる野インターチェンジと国道16号線のバイパスである新滝山街道は現在未完成であるから、この完成前に国道411号線(滝山街道)とあきる野インターチェンジとを結んでもかえって国道411号線の交通混雑をいっそう助長する結果になるし、他の既設道路を利用しても日の出インターチェンジに容易にアクセスできることからすれば、そもそもあきる野インターチェンジ建設の必要性もないのである。わずか1.93キロメートルの間に2つものインターチェンジを作る合理性はない。 さらに、このようなインターチェンジをここ数年という短期間で開通させるだけの必要性もない。 (5) 遺跡保存の必要性さら トルの間に2つものインターチェンジを作る合理性はない。 さらに、このようなインターチェンジをここ数年という短期間で開通させるだけの必要性もない。 (5) 遺跡保存の必要性さらに、起業者側は、土地収用手続を完了した上、本件各土地に存在する古墳など文化財を調査し、これを保存する作業を行うとしている。これには関係専門家による現地調査と保存作業が必要となり、それ自体で年単位の期間を要する作業となる。この一事を考えただけでも、起業者側の予定している時期に本件事業を完了することができないことは明らかである。 (6) 損失についての反論また、相手方らは、本件区間の完成の遅れによって年間約40億円の損失が発生すると主張するが、1年間で約40億円という数字の積算の根拠は検証のできない不確かなものにすぎない。すなわち、移動時間の短縮を単純に効果があると考えてよいのか、仮に、移動時間が短縮されるとしても、それに対応して支払われる交通費、道路建設費用、用地取得費及び維持費など、これらを含めて検討されているのか疑問がある。さらには、健康被害や大気汚染、騒音対策などの損失が考慮されているか疑問があり、こうした起業者側に都合のよい仮定に基づく一方的な数字を前提に公共の福祉に対する影響を論じることは間違っている。 相手方らは、申立人らが圏央道建設工事を遅延させ、損失を発生させているかのような主張をするが、圏央道建設工事遅延の真の原因は、自然環境を犠牲にして大規模な道路建設を強行しようとしたそもそもの計画に無理があったことにあり、申立人らは、申立人らの権利を守るため法に則った手続を進めているにすぎないから、こうした批判は当たらない。 (7) 結論よって、本件執行停止によって、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ らは、申立人らの権利を守るため法に則った手続を進めているにすぎないから、こうした批判は当たらない。 (7) 結論よって、本件執行停止によって、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれはないものというべきである。 2 相手方ら(1) 圏央道建設の意義について圏央道の整備については、内閣に設置された都市再生本部において、平成13年8月28日、都市再生プロジェクトとして、事業中である圏央道西側区間の積極的な整備が決定されており、経済構造改革の一環として政府をあげた取り組みを進めているところである。圏央道の整備促進については、地域住民、関係自治体、議会及び議員から早期供用の意見・要望がされている。 (2) 本件事業の意義について本件事業に係る事業計画は、八王子ジャンクションから青梅インターチェンジまでの区間の圏央道を開通させることを目的とするものであるところ、この計画は、八王子市と青梅市との間の幹線道路である一般国道16号等に生じている慢性的な交通混雑等を解消させることを目的としたものである。 また、あきる野インターチェンジは、あきる野市及び八王子市北部方面等から発生する交通に対応することを目的として計画され、同インターチェンジ部における出入交通を適切に分散させるために必要な施設であって、この機能は、日の出インターチェンジによっては代用することができないものである。さらに、日の出インターチェンジからあきる野インターチェンジまでの区間は、圏央道が未供用であるため、本来圏央道を利用するはずの交通が、周辺道路に流れ込む事態になっており、圏央道の一日も早い供用が必要である。 さらに、これまでに青梅インターチェンジから日の出インターチェンジまでの区間の圏央道が開通したことにより、既に圏央道全体の 路に流れ込む事態になっており、圏央道の一日も早い供用が必要である。 さらに、これまでに青梅インターチェンジから日の出インターチェンジまでの区間の圏央道が開通したことにより、既に圏央道全体の交通量が増加し、かつ、慢性的に渋滞している国道16号線の交通量が減少するという効果が現れている上、同区間付近の生活道路の交通量が減少しており、周辺道路の移動時間短縮が図られたことによりコスト換算すると年間100億円の効果が生まれている。また、国道16号線、411号線の交通量が減少したことによって周辺地域における大気汚染が緩和させるという効果も生じている。一方、日の出インターチェンジからあきる野インターチェンジの間の事業遅延による社会経済的損失は、コスト換算可能な走行時間短縮や走行経費減少、交通事故減少にかかわる損失だけでも年間約40億円と推計されるところ、本件事業区間は当初目指していた平成12年度の供用開始から既に3年も遅延しているから、当初の計画よりも約100億円以上に及ぶ損失が発生していることになる。この甚大な損失はすべて国民が負担しているにほかならず、これ以上の遅延は到底許されるものではない。 (3) 公共の福祉に対する影響以上のとおり、そもそも圏央道全体の建設が公共の福祉に適うものである上、本件事業のみを取り上げても、それ自体で独自の価値を有しているのであり、その建設工事が遅延することによって発生する損失は莫大であるから、代執行手続が停止されることにより公共の福祉に重大な影響を及ぼすことは明らかである。 また、圏央道の建設事業そのものも、それぞれの区間が計画どおりに開通していくことによって進展していくものなのであるから、その一部である本件事業が中断されることは、圏央道建設事業全体の遅れをもたらすこととなり、公共の福 業そのものも、それぞれの区間が計画どおりに開通していくことによって進展していくものなのであるから、その一部である本件事業が中断されることは、圏央道建設事業全体の遅れをもたらすこととなり、公共の福祉に重大な影響を及ぼすものであるというべきである。 (4) 文化財の調査申立人らは、本件各土地の遺跡の調査は、年単位の期間を要する作業であり、このことを考えただけでも予定時期に本件事業が完成することは不可能であると主張する。 しかし、文化財の調査については、本発掘調査の前に試掘調査を行い、東京都教育委員会において本発掘調査の必要性について判断することとされているところ、まず、本件土地9ないし11については、東京都教育委員会から、試掘調査の結果、本発掘調査を実施する必要がなく、工事の実施について差し支えないとの通知を受けているから、これらの各土地について今後遺跡の調査保存のために期間を要するということはない。 本件土地19ないし27については、盛土ではなく、橋脚構造の圏央道が建設される予定であるから、基本的に橋脚を設置するなどの掘削工事を伴う範囲の土地についてのみ調査を行えば足りるものであって、事業用地内の全てについて調査を要するものではない。 そのうち、本件土地25及び26については、橋脚の設置位置が変更されたことに伴い、申立人らが古墳や古民家が存在すると主張する箇所については橋脚が設置されないこととなった。したがって、本件土地25及び26についても調査はほとんど必要とされない。 本件土地2ないし8、13ないし17、19ないし24及び27についても、教育委員会において、試掘調査の結果いかんによっては本発掘調査は必要ないと判断することも十分に考えられ、当然に本発掘調査が必要とされるわけではない。 17、19ないし24及び27についても、教育委員会において、試掘調査の結果いかんによっては本発掘調査は必要ないと判断することも十分に考えられ、当然に本発掘調査が必要とされるわけではない。 これまでの周辺の試掘調査の結果からすれば、本件土地2、13ないし17については、試掘調査を経て本発掘調査を行う可能性が高いと考えられるが、そうであっても、本発掘調査は、試掘調査完了後直ちに着手され、短期間で完了するものであり、年単位の期間を要するものではない。 (5) ダイオキシンについての対策申立人らは、八王子北インターチェンジの建設予定地において大量のダイオキシンが確認され、その処理方針すら明確にされず1年数か月以上の期間が経過しているなどと主張しているが、この点については、相手方国は、平成14年2月22日に学識経験者からなる「首都圏中央連絡自動車道地盤改良に関する技術検討委員会」を設置し、同委員会の指導を仰ぎながら、同インターチェンジの建設予定地において確認されたダイオキシン類を含む焼却灰の汚染状況等の詳細な調査を進め、「首都圏中央連絡自動車道(仮称)八王子北IC建設予定地におけるダイオキシン類の調査結果について」をとりまとめた上、上記委員会において示された処理方針に基づき、具体的な処理方法を策定し、現在関係機関と調整を図っているところであり、今後速やかな処理を行う予定である。 第4 本案について理由がないとみえるかどうかについて 1 申立人ら(1) 本件事業は、①道路公害を激化させて周辺住民の健康を害し、②自然環境や歴史的文化遺産を破壊するものである上、③隣接する日の出インターチェンジと僅か1.93キロメートルしか離れていない位置にあきる野インターチェンジを建設する必要はなく、事業の必要や公益性も認められないものであ 化遺産を破壊するものである上、③隣接する日の出インターチェンジと僅か1.93キロメートルしか離れていない位置にあきる野インターチェンジを建設する必要はなく、事業の必要や公益性も認められないものである。また、④本件事業計画の策定に当たって、適切なアセスメントも行われておらず、その結果、道路公害等を防止するために、地下構造による道路の建設をすべきかどうかも検討していないという、調査検討の面においても極めて杜撰なものであった。⑤更に、本件裁決の審理手続において、申立人らは、上記のような問題点を具体的に指摘したにもかかわらず、起業者は、これらの問題点の指摘に対して何ら回答をせず、相手方委員会においても、これらの問題点についてまともに審理検討をすることはなく、裁決書においても、申立人らの指摘に対して何ら答えていない。 (2) これらの事情に照らしてみれば、本件事業認定には、重大かつ明白な瑕疵があり、また、本件裁決にも重大な手続的瑕疵(審理手続の瑕疵及び理由不備の瑕疵)があるものというべきであるから、既に本案の取消事由が存在することは明らかであり、本案について理由がないとみえるとはいえないことは明らかである。 また、本案事件についての主張立証責任は相手方が負担すべきであるが、相手方はこの点についての主張立証をしていない。 2 相手方ら(1) 収用委員会は、収用裁決の申請が、①申請に係る事業が収用法26条1項の規定によって告示された事業と異なるとき、②申請に係る事業計画が収用法18条2項1号の規定によって事業認定申請書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき、③その他収用法の規定に違反するときに当たらない限り、収用の裁決をしなければならないものであるところ(収用法47条、47条の2)、申立人らは、これら①ないし③に該 記載された計画と著しく異なるとき、③その他収用法の規定に違反するときに当たらない限り、収用の裁決をしなければならないものであるところ(収用法47条、47条の2)、申立人らは、これら①ないし③に該当する事由については何ら具体的な主張や疎明をしていない。 申立人らは、本件事業認定に重大な瑕疵があるから本件裁決も違法であると主張しているが、具体的な違法事由として主張している点(申立人らの主張①ないし④)は、いずれも根拠のない主張であって失当であるばかりでなく、仮にこれらの瑕疵が存在するとしても、それは、せいぜい本件事業認定の違法事由に当たるものにすぎないから、本件裁決の違法事由に当たるものではない。 更に、申立人らは、審理手続上の瑕疵や理由不備の瑕疵があるとも主張しているが、審理手続上の瑕疵はなく、また、本件裁決に係る裁決書にも、本件事業認定に重大かつ明白な瑕疵はなく、無効とはいえない旨を記載しており、これで理由の記載としては十分というべきである。 (2) 以上のように考えていくと、本件裁決に違法がないことは明らかというべきであるから、本件は、本案について理由がないとみえるときに当たるというべきである。 以上
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