平成13(ワ)19581 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年9月27日 東京地方裁判所
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判決文本文14,982 文字)

平成14年9月27日判決言渡平成13年(ワ)第19581号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,金4594万3629円及びこれに対する平成13年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを7分し,その5を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金7050万円及びこれに対する平成13年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,マンションを建設するために被告から土地を購入した原告が,土地の引渡し後に,地中から建物のコンクリート基礎やオイル類といった障害物が発見されたため,それらを撤去,処理する費用や,マンション建設の遅れを取り戻すための突貫工事費用等の負担を余儀なくされたとして,被告に対し,瑕疵担保責任特約に基づく損害賠償及び遅延損害金を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は,()内に証拠を示す。)(1) 当事者原告は,不動産,特にマンション建築用地を購入し,そこにマンションを建て,マンション販売業者へ一括して売却することを主たる業務とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 被告は,鉄鋼業等を営む株式会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 土地の売買被告は,原告に対し,平成12年9月7日,被告が所有していた別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)及びその地上建物を,代金3億3250万円で売った(争いがない。以下「本件売買契約」という 被告は,原告に対し,平成12年9月7日,被告が所有していた別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)及びその地上建物を,代金3億3250万円で売った(争いがない。以下「本件売買契約」という。)。その際,株式会社大和銀行(以下「大和銀行」という。)本店不動産部,同社東京不動産部及び株式会社アイワ興産が仲介人となって関与した(甲2)。 (3) 瑕疵担保責任に関する特約原告及び被告は,本件売買契約に際し,本件土地に廃棄物,地中障害物又は土壌汚染等の隠れた瑕疵がある場合に,本件土地の引渡し日以後6か月を経過したときは,原告は被告に対して担保責任の追及ができないものとする旨合意した(争いがない。以下「本件特約」という。)。 (4) 本件土地の引渡し被告は,原告に対し,平成12年10月6日,本件土地を引き渡した(争いがない)。 2 争点(1) 本件土地の瑕疵の有無(2) 制限期間経過前の通知の有無(3) 損害及び因果関係 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件土地の瑕疵の有無)について(原告の主張)本件土地には,本件売買契約当時,以下の隠れた瑕疵があった。 ア建物のコンクリート基礎イオイルタンクウオイルタンクからの配管エオイルによる土壌汚染なお,エのオイルによる土壌汚染については,確かに環境基本法の土壌汚染の程度には達していないが,雨が降り土が水を含むとかなりの悪臭が生じる程度に汚染されており,このような土壌を放置したままマンションを建築して分譲するとなれば,マンションの購入者にとっては快適な生活を営むことができなくなることが予想されるのであり,現に,産業廃棄物として処理せざるを得なかったのであるから,瑕疵が ままマンションを建築して分譲するとなれば,マンションの購入者にとっては快適な生活を営むことができなくなることが予想されるのであり,現に,産業廃棄物として処理せざるを得なかったのであるから,瑕疵が存在するというべきである。 (被告の主張)原告が主張するアないしウの構築物が発見されたこと,これらの構築物については,マンション建物の基礎の設置の障害となるから,それが隠れた瑕疵であるということは争わない。 これに対し,エについては,本件土地にオイル類が存在していたことは知らない。仮にオイル類が本件土地中に存在していたとしても,そのオイル類は環境基本法9条に基づく「土壌汚染にかかる環境基準について」(平成3年環境庁告示第46号)所定の環境基準値を全項目において下回っているのであるから,同条における「土壌汚染」に該当せず,したがって,原告は本件土地内のオイル類を処分しなければならない法的な義務を負っていない。原告がオイル類を処分したのは,マンション業者が販売しやすいように改良を行ったに過ぎず,本件土地が通常有すべき性状を欠いていたからではない。したがって,オイル類の存在によっても,本件土地が売買の目的物として,取引通念上,通常有すべき効用を欠く瑕疵があるとはいえない。 (2) 争点(2)(制限期間経過前の通知の有無)について(原告の主張)ア原告は,大和建設株式会社(以下「大和建設」という。)との間で,平成13年1月31日にマンション建築請負契約を締結し,大和建設は,同年3月6日に杭工事に着手した。すると,同年3月27日,本件土地の地中から地中梁等の地中障害物が発見された。 原告は,同年4月5日,本件売買契約を仲介していた大和銀行の東京不動産部に対して,地中障害物の存在をファクシミリで連絡し 月27日,本件土地の地中から地中梁等の地中障害物が発見された。 原告は,同年4月5日,本件売買契約を仲介していた大和銀行の東京不動産部に対して,地中障害物の存在をファクシミリで連絡し,被告への報告を依頼した。 大和銀行東京不動産部所属の宅地建物取引主任者Aは,原告からのファクシミリの内容について,直ちに被告東京支店支店長Bに電話で報告した。 また,Aは,同日,大和銀行本店不動産部課長C(以下「C」という。)に対しても,同様の報告を行ったところ,Cは,同日中に被告常務取締役Dに対してこの報告内容を電話で伝えた。 イ確かに,原告の被告に対するこれらの報告は,地中障害物が存在するとの事実についてのみ通知するものであったが,本件土地のマンション建築に支障のある地中障害物が存在するということと,瑕疵の範囲は本件土地のうちマンション建築に必要な範囲であるということについて明らかにしているものであるから,原告の通知は瑕疵の種類及びその大体の範囲を具体的に通知したものということができる。 そして,オイル汚染については,汚染土壌が発見されたのは同年4月12日以降ではあるが,同年4月5日に通知された「地中障害物」の中に当然に含まれている。 ウ以上によれば,原告は,被告に対し,担保責任追及の制限期間満了日である同年4月6日までに,本件土地に存するすべての瑕疵について通知して,担保責任を追及する意思を明確にしたというべきである。 (被告の主張)ア本件土地の地中から障害物が発見されたことは認めるが,AがBに対して,平成13年4月5日に障害物の存在を報告した事実については否認する。また,CがDに対して連絡してきたことは認めるが,「原告より,本件土地から地中障害物が発見された旨 ことは認めるが,AがBに対して,平成13年4月5日に障害物の存在を報告した事実については否認する。また,CがDに対して連絡してきたことは認めるが,「原告より,本件土地から地中障害物が発見された旨の連絡があった。」という趣旨の事実経過報告に過ぎず,瑕疵担保責任の追及を内容とするものではなかった。 したがって,原告が被告に対して制限期間内に瑕疵の存在を通知した事実はない。 イ瑕疵担保責任追及の前提となる瑕疵の通知の内容としては,およそ何らかの瑕疵が存することを抽象的に通知するのみでは足りず,瑕疵の種類及び大体の範囲を具体的に通知する必要がある。ところが,原告が被告に対して通知した瑕疵の内容は,「地中障害物の存在」に過ぎず,オイル類の存在の瑕疵については何ら通知されていない。 したがって,仮に原告が被告に対して地中障害物による瑕疵の存在を制限期間内に通知していたことが認められるとしても,オイル類に関しては,制限期間内に瑕疵の通知を行ったことはなかった。 (3) 争点(3)(損害及び因果関係)について(原告の主張)原告は,本件土地に地中障害物が存在したことによって,以下の損害を被った。 ア地中障害物の撤去費用及び工事停止費用 5050万円工事停止費用とは,地中障害の発生により,原告が作業を停止することを余儀なくされ,作業員や機械等を止めたことから発生した費用である。 イ突貫工事費用及び一般管理費 2000万円(ア) 突貫工事費用について原告は,ダイア建設株式会社(以下「ダイア建設」という。)に対し,平成13年2月16日,本件土地上にマンションを建築して,土地と建物を一括で売却する旨合意した。その際,原告及びダイア建設は,マン 原告は,ダイア建設株式会社(以下「ダイア建設」という。)に対し,平成13年2月16日,本件土地上にマンションを建築して,土地と建物を一括で売却する旨合意した。その際,原告及びダイア建設は,マンションの引渡し期日を平成14年3月末日と定め,引渡しが遅延した場合は,原告は,ダイア建設に対し,約定による遅延損害金を支払うこと,さらに,事前にマンションを購入した顧客からダイア建設が引渡し遅延を理由に契約解除された場合には,その損害も賠償することを約した。 ところが,本件土地から地中障害物が発見されたため,原告はこれを撤去する作業を余儀なくされ,平成13年6月22日の段階で予定よりも2か月もマンション建築工事が遅延してしまった。 そこで,原告は,ダイア建設との契約を予定どおり履行するため,大和建設に突貫工事を依頼し,その分の費用が新たに生じたのである。 そして,原告は,被告に対し,上記のダイア建設との関係を再三伝えており,被告はその事情を十分承知していた。 したがって,突貫工事費用は,本件土地の瑕疵との間で相当因果関係に立つ損害であるから,被告はこれを原告に賠償すべき責任を負う。 (イ) 一般管理費について一般管理費は,建設業界では注文者が請負人に対して支払うことが常識とされている費用であり,一般に総工費の1割ないし1割5分とされているものである。 (被告の主張)原告の主張はいずれも争う。 コンクリート塊等の構築物に関しては,本件土地の瑕疵に当たることは争わないが,その撤去費用は多く見積もっても222万3000円である。 また,仮にオイル類の存在が本件土地の瑕疵に当たるとしても,原告が主張するような損害は発生して 土地の瑕疵に当たることは争わないが,その撤去費用は多く見積もっても222万3000円である。 また,仮にオイル類の存在が本件土地の瑕疵に当たるとしても,原告が主張するような損害は発生していない。特に,工事停止費用及び突貫工事は,原告が調査をせずにマンション建設の工期を確定させてしまったことが原因であり,被告に転嫁できる費用ではなく,一般管理費に至っては,いかなる根拠によって発生したかさえも明らかでなく,かかる費用が損害に含まれるはずがない。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告は,昭和42年ころ,株式会社ニュージャパンパノラマから,本件土地を購入し,昭和43年ころ,本件土地上に2棟の建物を建築して,それぞれ非鉄金属の保管用倉庫と,事務所兼独身寮として使用していた。 原告は,本件土地上にマンションを建築して,これを売却することを計画し,平成12年9月7日,分譲用マンションを建設する目的で,被告から本件土地及びその地上建物を3億3250万円で購入し,同月25日に所有権移転登記を得た。なお,本件売買契約の契約書(甲2)の第1条には,上記目的が明記されており,被告もこれを了知していた。本件土地の引渡し時期については,契約書上,同年10月31日とされていたが,原告は,マンション建設と販売という事業の迅速な進展を図るため,早期の引渡しを希望し,結局,同年10月6日に被告から引渡しを受けた(甲1,2,15,乙2)。 (2) 原告は,平成12年9月から,マンション建設の準備作業に入り,同年12月11日,江東区から建築確認申請の認可を受けた。 また,原告は,同年12月ころ,ダイア建設から,本件土地及びその上に建設予定のマンションを一括して マンション建設の準備作業に入り,同年12月11日,江東区から建築確認申請の認可を受けた。 また,原告は,同年12月ころ,ダイア建設から,本件土地及びその上に建設予定のマンションを一括して売ってほしい旨の申込みを受け,平成13年2月16日,これを承諾して売買契約を締結した。その際,原告及びダイア建設は,マンションの引渡し期日を平成14年3月末日と定め,引渡しが遅延した場合は,原告は,ダイア建設に対し,約定による遅延損害金を支払うこと,さらに,事前にマンションを購入した顧客からダイア建設が引渡し遅延を理由に契約解除された場合には,原告はその損害も賠償することを約した(甲15,弁論の全趣旨)。 (3)ア原告は,平成13年1月下旬ころ,本件土地上にあった建物2棟の解体を終え,同月31日,大和建設にマンションの建設工事を発注した。その後,大和建設は諸官庁への手続を行い,準備工事期間を経て,同年3月6日から杭打ち工事を開始した(甲9,15)。 イ大和建設は,同月27日,本件土地の地中に,建物のコンクリート基礎が埋没していることを発見し,原告担当者Eにその事実を連絡した。このコンクリート基礎は,同月28日及び29日の2日間で撤去された。 Eは,連絡を受けた直後,大和銀行に対し,地中障害物が発生したことを電話で連絡したが,大和銀行東京不動産部の担当者Fは,Eに対して書面で連絡するよう要求した(甲9,15,弁論の全趣旨)。 ウそこで,Eは,工事開始後間もなくして本件土地から地中障害物が発見されたこと,地中障害物の全容解明は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容が確認でき次第,改めて資料及び見積書に写真を添付して説明することを記載した 解明は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容が確認でき次第,改めて資料及び見積書に写真を添付して説明することを記載した報告書を作成し,同年4月5日,これを原告代表者名義で大和銀行東京不動産部にファクシミリで送信した。Fは,上記報告書を確認し,Eと連絡をとって,被告への連絡は大和銀行側で行う旨を伝えた。 Fは,同日,直ちに大和銀行東京不動産部の宅地建物取引主任者であるAに対し,上記報告書をもって地中障害物の発見の事実を知らせた。Aは,すぐに上記報告書を大和銀行本店不動産部の課長であるCにファクシミリで送信し,地中障害物発見の事実を報告した(甲3,15,弁論の全趣旨)。 エ Cは,同日,即座に被告常務取締役兼営業本部長であるDに電話で連絡し,上記報告書の内容,すなわち,工事開始後間もなくして本件土地から地中障害物が発見されたこと,地中障害物の全容解明は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容が確認でき次第,原告から改めて資料及び見積書に写真を添付しての説明があることを話した。また,Cは,翌4月6日,大阪市にある被告本店を訪れ,Dに対し,改めて地中障害物が発見された事実を報告し,今後瑕疵担保責任の問題が発生する可能性について説明した(甲3,弁論の全趣旨)。 オ(ア) この点について,被告は,DがCから最初に受けた連絡は,「原告より,本件土地から地中障害物が発見された旨の連絡があった。」という事実経過報告に過ぎず,また,翌日Cと面談した際に受けた説明も,地中障害物の発見場所や形状の報告にとどまり,いずれも瑕疵の通知ではなかった旨主張し,証拠(乙3)中にはこれに沿う 絡があった。」という事実経過報告に過ぎず,また,翌日Cと面談した際に受けた説明も,地中障害物の発見場所や形状の報告にとどまり,いずれも瑕疵の通知ではなかった旨主張し,証拠(乙3)中にはこれに沿うDの供述記載部分も存在する。 しかしながら,前記イ及びウのとおり,EがFに対して最初に地中障害物の発見を電話で報告した際,FはEに書面にまとめるよう指示したことからすれば,大和銀行側は地中障害物の発見の事実を重大なこととして認識しており,だからこそEからファクシミリで報告書が送付されてきた後,大和銀行内部では担当者及び責任者間で迅速に連絡がとられたものと認められる。してみると,CがAから受けた連絡は,Eの作成した上記報告書を転送することによる正確なものであることがうかがわれ,したがって,CがDに対して行った報告も,上記報告書に沿った詳細なものであったと推認されるのである。また,Cが,地中障害物発見についての報告があった翌日に,急遽被告本店にまで出向いて,殊更にDと面談していることからすれば,その面談の内容は,単なる地中障害物の発見場所や形状の報告にとどまらず,今後原告から被告に対する瑕疵担保責任追及の可能性を示唆することをも含む,突っ込んだ協議であったと推認するのが相当である。 したがって,上記認定に反するDの供述記載部分は採用できない。 (イ) なお,原告は,同年4月5日,Aが被告東京支店支店長のBに対して地中障害物発見の事実を報告した旨主張し,証拠(甲7)中にはこれに沿う原告代表者の供述記載部分もあるが,これを裏付けるに足りる他の証拠はなく,かえって,前記Bは,Aからは連絡がなかった旨述べ(乙2),原告の主張を明確に否定していることからすれば,この点に関する原告代表者の供述記載部分は採用できない。 これを裏付けるに足りる他の証拠はなく,かえって,前記Bは,Aからは連絡がなかった旨述べ(乙2),原告の主張を明確に否定していることからすれば,この点に関する原告代表者の供述記載部分は採用できない。 (4)ア大和建設は,杭打ち工事を完了し,山留め工事を開始したところ,同年4月10日,本件土地からコンクリート塊等の障害物を発見したため,翌11日からこれを撤去する作業に入った。すると,同月12日,地中からオイル類を含んだ土が発見された。 大和建設は,障害物を撤去して,山留め工事も完了し,同年5月1日には根伐工事に入ったが,そのころ,本件土地からコンクリート製のオイルタンクの残骸が発見され,現場全体でオイル類により黒く汚染されて泥状になった土壌が見つかった。この汚染された土壌は,環境基本法16条1項(旧公害対策基本法9条)に基づく「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年8月23日環境庁告示第46号)に定められた環境基準に抵触するような量の有害物質を含有してはいなかったが,雨が降り水を含むと,強い悪臭を発した(甲5の1,8ないし11,15,乙1,弁論の全趣旨)。 イそこで,大和建設は,発見されたガラ等を搬出した後である同月14日から同年6月5日まで工事を中断し,汚染土壌は産業廃棄物扱いとなるため,これを廃棄するには高額の費用がかかることになるが,費用を誰が負担するかについて原告及び被告と協議した。原告は,大和建設に対し,大和建設の見積もった障害物の撤去及び土壌廃棄費用合計5200万円をとりあえず支払うことを確約したため,大和建設は,同年6月6日に根伐工事を再開した(甲4の1,5の2,15)。 ウところが,大和建設は,本件土地から,再び既存基礎や杭等を発見し,翌7日にはオイルタンクからの配管を見つけた。こ 大和建設は,同年6月6日に根伐工事を再開した(甲4の1,5の2,15)。 ウところが,大和建設は,本件土地から,再び既存基礎や杭等を発見し,翌7日にはオイルタンクからの配管を見つけた。この配管内には,多量のオイル類が含まれていた。大和建設は,これらの障害物を撤去して工事を進め,同月13日にマンションの建物部分の1次根伐工事を終了し,同月17日にマンションの立体駐車場部分の2次根伐工事を完了した。そして,同月18日,大和建設が建物部分の2次根伐工事を開始したところ,地中から再びオイル類を含有した土壌の層及び杭等を発見したので,これを撤去して工事を進めた(甲5の2,15,弁論の全趣旨)。 (5)ア以上のように,本件土地からコンクリート塊や汚染土壌が発見され,これを撤去する作業をしていたため,平成13年6月当時,本件土地上のマンション建設工事は,当初予定されていたよりも大幅に遅延していた。そこで,原告は,期限内にダイア建設にマンションを引き渡すことができるよう,大和建設に対し,工期の短縮を図る施策を検討するように指示し,その際に発生する費用の見積りを命じた。 大和建設は,原告に対し,必要となる費用について,工事停止費用として515万7000円,躯体逆打ち工法の導入による突貫工事費用として2451万9000円,一般管理費として196万1000円,消費税として158万1850円,合計3321万8850円と見積もった。なお,工事停止費用とは,地中障害の発生により,原告が作業を停止することを余儀なくされ,作業員や機械等を止めたことから発生した費用であり,一般管理費とは,建設業界において注文者が請負人に対して支払うことがある費用であり,一般に総工費の1割ないし1割5分とされているものである(甲4の2,15,弁論の全趣旨) ことから発生した費用であり,一般管理費とは,建設業界において注文者が請負人に対して支払うことがある費用であり,一般に総工費の1割ないし1割5分とされているものである(甲4の2,15,弁論の全趣旨)。 イ原告は,大和建設の見積りを承認し,大和建設に工事を行わせたが,その後,大和建設との間で交渉し,前記(4)イ記載の障害物撤去及び土壌廃棄費用と工事停止費用を合わせて5050万円に減額し,突貫工事費用及び一般管理費を合わせて2000万円に値引きして,費用を合計7050万円(消費税込み)とする旨の合意をした(甲14,15)。 ウ原告は,大和建設に対し,平成13年7月17日に1050万円を,平成14年1月31日に2000万円をそれぞれ支払った。 また,原告は,大和建設に対し,残金4000万円について,支払期日を平成14年9月29日とする約束手形を振り出した(甲15)。 2 争点に対する判断(1) 争点(1)(本件土地の瑕疵の有無)についてア前記争いのない事実等によれば,本件売買契約には,本件土地に廃棄物,地中障害物又は土壌汚染等の隠れた瑕疵がある場合に,本件土地の引渡し日以後6か月を経過したときは,原告は被告に対して担保責任の追及ができないものとする旨の特約(本件特約)が付されていたものである。そして,これを合理的に解釈すると,本件特約は,①商法526条1項前段の瑕疵担保責任における買主の検査・通知義務を踏まえつつ,②同条項後段が,売買目的物に直ちに発見できない瑕疵がある場合に,買主に対して,引渡し後6か月以内に瑕疵を発見することと,その後直ちに売主に通知することを要求している趣旨をさらに進めて,買主に土地の引渡し後6か月以内に瑕疵の発見及び通知の両方を行う義務を課して,通知期間を短縮するものであ 以内に瑕疵を発見することと,その後直ちに売主に通知することを要求している趣旨をさらに進めて,買主に土地の引渡し後6か月以内に瑕疵の発見及び通知の両方を行う義務を課して,通知期間を短縮するものであり,買主が上記期間内に発見・通知を怠った場合には,買主は売主に対し,もはや瑕疵担保責任を追及することができなくなることを内容とするものであると認めるのが相当である。 そうすると,本件土地に瑕疵があるか否かの判断は,商法526条が基礎とする民法570条の解釈に準ずるものと解される。 イ前記前提となる事実によれば,本件土地の地中には,杭などのほか,①建物の基礎やオイルタンク等のコンクリート塊,②オイルタンクからの配管,③オイル類によって汚染された土壌,以上の物が埋没していたが,本件売買契約当時,原告及び被告はこれらの埋没物が存在することを認識し得なかったことが認められる。そして,上記①及び②が,マンション建設の障害となり,瑕疵に当たることについて,被告は明らかに争わない。 ウそこで,上記③の汚染土壌が存在したことにより,本件土地に瑕疵があるといえるか否かについて検討する。 民法570条にいう「瑕疵」とは,売買の目的物が,その種類のものとして取引通念上通常有すべき性状を欠いていることをいう。そして,宅地の売買において,地中に土以外の異物が存在することが即土地の瑕疵に当たるとはいえないのは当然であるが,その土地上に建物を建築するについて支障となる質,量の異物が地中に存在するために,その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備,改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は,宅地として通常有すべき性状を備えないものとして,土地の瑕疵に当たるというべきである。 これを本件についてみるに,前 盤の整備,改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は,宅地として通常有すべき性状を備えないものとして,土地の瑕疵に当たるというべきである。 これを本件についてみるに,前記前提となる事実及び証拠(甲1,4の1,10)によれば,本件土地は,東京都江東区に所在する地積約800平方メートルの宅地であり,比較的大規模の建物を建築できるものであること,原告は,分譲用マンションを建設する目的で本件土地を購入したものであり,被告もこれを了解していたこと,オイル類によって汚染された土壌は,大和建設がマンション建築のための基礎工事(根伐工事)を行っている際に発見されたこと,汚染土壌は,量にして合計1200立方メートルにのぼり,その形状は黒色で部分的には泥状になっているところもあったこと,汚染土壌が雨等によって水分を含むと,強い悪臭が発生したこと,オイル類によって汚染されて悪臭を発するような土壌は,産業廃棄物に該当するため,これを処分するためには,通常の残土処分に比べてかなり高額の廃棄費用を負担しなければならないこと,以上の諸事実が認められる。 してみると,本件土地における土壌汚染は,マンション建設の基礎工事途中で発見される程度に浅い位置において,多量のオイル類を含有し,しかも,容易に悪臭を発生し得るような状態にあったというのであるから,本件土地に基礎を置き,多数の住民を迎え入れることになるマンションを建設することを妨げる程度に至っており,特別に費用をかけてでも処理する必要があるといわざるを得ない。したがって,本件土地は,取引通念上通常有すべき品質,性能を欠くというべきであり,上記③の土壌汚染は本件土地の瑕疵に当たると認めるのが相当である。 エこれに対し,被告は,本件土地の地中に存在したオイル類は,環境基本法 引通念上通常有すべき品質,性能を欠くというべきであり,上記③の土壌汚染は本件土地の瑕疵に当たると認めるのが相当である。 エこれに対し,被告は,本件土地の地中に存在したオイル類は,環境基本法に基づく環境基準値を全項目において下回っているのであるから,原告は本件土地内のオイル類を処分しなければならない法的な義務を負わず,したがって,本件土地に瑕疵があるとはいえないとし,原告が汚染土壌を処理したのは,単なる土地の改良にすぎない旨主張する。 しかしながら,売買目的物に関する瑕疵の有無の判断は,オイル類の処分をしなければならないかどうかという買主の法的義務の存否によって定められるのではなく,対象物が取引通念上通常有すべき性状を欠くか否かによって決定されるべきものであるところ,本件土地上にマンション建物を建築,販売するにあたって,その地中の比較的浅い部分に多量のオイル類が存在しているということは,買手に建物ひいては本件土地の安全性,快適性に対する疑念を生じさせ,購買意欲及び価格のマイナス要因となることは明らかである。したがって,本件土地には,取引通念上通常有すべき性状が欠けており,原告が本件土地の汚染土壌を処理したことは,本件土地の欠陥を補正するために当然必要な措置であるというべきであるから,被告の主張は採用できない。 オよって,争点(1)に関する原告の主張は理由がある。 (2) 争点(2)(制限期間経過前の通知の有無)についてア前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば,前記(1)で認定した各瑕疵は,被告が原告に対して本件土地を引き渡した平成12年10月6日当時,いずれも地中に埋没していたから,直ちに発見することができない瑕疵,すなわち,本件特約にいう「隠れた瑕疵」に該当すると認められる。 イ 告に対して本件土地を引き渡した平成12年10月6日当時,いずれも地中に埋没していたから,直ちに発見することができない瑕疵,すなわち,本件特約にいう「隠れた瑕疵」に該当すると認められる。 イそこで,原告が被告に対し,制限期間である平成13年4月6日の経過以前に瑕疵の存在についての通知を行ったか否かについて検討する。 商法の瑕疵担保責任規定における通知は,売主が発見された瑕疵に対して適切な処置,対応をとることを考慮する機会を与えるために要求されるものであるから,その通知の内容は,瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにするものであれば足りると解される(大審院大正11年4月1日判決民集1巻155頁参照)。 しかるに,前記前提となる事実によれば,原告担当者Eは,平成13年4月5日及び6日に,被告取締役のDに対し,大和銀行のCを使者として,工事開始後間もなくして本件土地から地中障害物が発見されたこと,地中障害物の全容解明は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容が確認でき次第,原告から改めて資料及び見積書に写真を添付しての説明があること,以上の事実を通知したことが認められる。 してみると,原告は被告に対し,制限期間経過前に,本件土地に地中障害物が存在したこと,その範囲は現段階では解明できていないが,建物建築の基礎工事に必要な範囲全体に及ぶ可能性もあることを通知しており,被告が瑕疵に対して臨機の処置をとるために必要な程度に,瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにする内容の通知を行ったと認めるのが相当である。 ウこれに対し,被告は,原告の通知はオイル類による土壌汚染の瑕疵の存在について一切触れていないから,この点に関する制限期間 体の範囲を明らかにする内容の通知を行ったと認めるのが相当である。 ウこれに対し,被告は,原告の通知はオイル類による土壌汚染の瑕疵の存在について一切触れていないから,この点に関する制限期間内の通知はなかったと主張する。 確かに,本件特約が,瑕疵について「廃棄物,地中障害物又は土壌汚染」と列挙していることからすれば,地中障害物と土壌汚染とは全く別異の瑕疵であり,地中障害物の存在について発見・通知したからといって,土壌汚染の存在を発見・通知したことにはならないと解する余地もないではない。 しかしながら,前記のとおり,本件特約は商法526条1項の規定を基本的に踏襲するものと認められるから,通知の有無の解釈適用は,前記のような形式的解釈ではなく商法の条項の解釈に従い,合理的,合目的的になされるべきである。 そうとすれば,コンクリート塊,配管及び汚染土壌は,マンション建築工事の障害となる地中埋没物である点に差異はないから,いずれも地中障害物の存在による瑕疵としてとらえられるところ,原告が最初にコンクリート塊を発見して,被告に対して地中障害物の存在を通知し,その全容解明にはなお時間がかかる旨を伝達した時点で,その後工事の進行中に発見される可能性のあるマンション建設にとっての地中障害物全体の存在について通知がなされたと認めるのが相当である。 したがって,土壌汚染についての通知はなかったとする被告の主張は直ちに採用できない。 エよって,争点(2)に関する原告の主張は理由がある。 (3) 争点(3)(損害及び因果関係)についてア前記前提となる事実によれば,大和建設は,原告に対し,本件地中障害物の処理等に関し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用として5200万円,工事停止費用として515万7 害及び因果関係)についてア前記前提となる事実によれば,大和建設は,原告に対し,本件地中障害物の処理等に関し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用として5200万円,工事停止費用として515万7000円,突貫工事費用として2451万9000円,一般管理費として196万1000円を見積もったこと,原告は,減額交渉の結果,大和建設に対し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用並びに工事停止費用として5050万円,突貫工事費用及び一般管理費として2000万円,合計7050万円を支払うことを約したこと,原告は大和建設に対し,現金合計3050万円を現実に支払い,残金4000万円についても約束手形を振り出したこと,以上の事実が認められる。 イところで,瑕疵担保責任における損害賠償の範囲は,買主が目的物に瑕疵がないと信じたことによって生じた損害,すなわち信頼利益に限られると解されるところ,本件において,土地の瑕疵を除去するため,地中障害物の撤去ないし廃棄に要した工事費用が信頼利益に含まれるのは明らかである。しかし,本件で原告が負担したその余の費用については,いずれも原告が本件土地上に建設するマンションの工事に関して必要とした費用であって,本件土地自体の問題ではないから,原告が本件土地に瑕疵がないと信じたことによって生じた損害とは解し得ない。 ウこれに対し,原告は,突貫工事費用について,被告は原告とダイア建設との関係を知っており,原告がマンション建設を急がなければならないことについて承知していたか,容易に了解可能だったのであるから,瑕疵との関係で相当因果関係にあり,信頼利益に含まれる旨主張する。 しかし,相当因果関係の判断の基礎となる事情は,売買契約の締結時点を基準に考慮すべきと解されるところ,前記前提となる事実及び弁論の全趣旨 因果関係にあり,信頼利益に含まれる旨主張する。 しかし,相当因果関係の判断の基礎となる事情は,売買契約の締結時点を基準に考慮すべきと解されるところ,前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件売買契約当時,本件土地の瑕疵の存在については善意無過失であったと認められるから,当時被告が本件土地の瑕疵から突貫工事費用が生じることを予見するのは不可能であり,突貫工事費用が信頼利益に含まれると認めることはできない。 エそして,弁論の全趣旨によれば,大和建設が,原告に対し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用並びに工事停止費用の当初見積額合計5715万7000円を,合計で5050万円に減額したのは,減額分665万7000円を,上記2費目に按分で割り付けるとの趣旨であったと推察されるから,減額後の障害物の撤去及び土壌廃棄費用は,4594万3629円(算式:5200万円-(665万7000円×5200万円/5715万7000円))と認めるのが相当である。 オよって,争点(3)に関する原告の主張は,損害を障害物の撤去及び土壌廃棄費用4594万3629円とする限度で理由がある。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,金4594万3629円及びこれに対する平成13年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部裁判長裁判官小磯武男 裁判官坂口公一裁判官大谷太 裁判官 坂口公一 裁判官 大谷太 物件目録 所在 東京都江東区ab丁目地番c番d 地目 宅地 地積 793.38平方メートル

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