令和3(ワ)4658 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年7月10日 大阪地方裁判所
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判決文本文20,939 文字)

令和5年7月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(ワ)第4658号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年5月11日判決 原告P1 原告株式会社フジタ 原告ら訴訟代理人弁護士田上洋平 同冨田信雄 被告ブルージー・プロ株式会社 被告P2 被告P3被告ら訴訟代理人弁護士中谷彩同早川光俊 同井垣敏生同溝上哲也同高須賀彦人 主文 1 被告らは、原告P1に対し、連帯して5万0328円及びこれに対する平成2 6年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告P1の被告らに対するその余の主位的請求をいずれも棄却する。 3 被告ブルージー・プロ株式会社は、原告P1に対し、396万2573円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(第6項の債権と不真正連帯)。 4 原告P1の被告ブルージー・プロ株式会社に対するその余の予備的請求並びに 被告P2及び被告P3に対する予備的請求をいずれも棄却する。 5 原告株式会社フジタの主位的請求をいずれも棄却する。 6 被告ブルージー・プロ株式会社は、原告株式会社フジタに対し、396万2573円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(第3項の債権と不真正連帯)。 7 原告株式会社フジタの被告ブルージー・プロ株式会社に対するその余の予備的請求並びに被告P2及び被告P3に対する予備的請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は、原告らと被告ブルージー・プロ株式会社の間においては、原告らに生 ブルージー・プロ株式会社に対するその余の予備的請求並びに被告P2及び被告P3に対する予備的請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は、原告らと被告ブルージー・プロ株式会社の間においては、原告らに生じた費用の5分の1を被告ブルージー・プロ株式会社の負担とし、その余は各自の負担とし、原告P1と被告P2及び被告P3との間においては、原告P1 に生じた費用と同被告らに生じた費用の合計の100分の1を同被告らの負担とし、その余は原告P1の負担とし、原告株式会社フジタと被告P2及び被告P3との間においては、全部原告株式会社フジタの負担とする。 9 この判決は、第1項、第3項及び第6項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告P1に対し、連帯して1000万円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告株式会社フジタに対し、連帯して5000万円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 訴訟物(1) 主位的請求ア原告P1の被告P2及び被告P3に対する後記本件育成者権侵害の不法行為(民法709条)に基づく損害2407万1292円のうちの1000万円(一部請求)及びこれに対する原告P1主張の被告らの行為の後日であ る平成26年11月1日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下明示しない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(被告P2と被告P3は共同不法行為。被告ブルージー・プロ株式会社(以下「被告会社」という。)に対しては民法709条又は会社法350条に基づく同額の請求。) イ原告株式会 損害金の支払請求(被告P2と被告P3は共同不法行為。被告ブルージー・プロ株式会社(以下「被告会社」という。)に対しては民法709条又は会社法350条に基づく同額の請求。) イ原告株式会社フジタ(以下「原告会社」という。)の被告P2及び被告P3に対する後記本件育成者権についての独占的通常利用権の侵害の不法行為(民法709条)に基づく損害2億0335万2185円のうちの5000万円(一部請求)及びこれに対する前記アと同様の遅延損害金の支払請求(各被告の責任原因はアと同じ) (2) 予備的請求ア原告P1の被告らに対する利用料相当額の利得2188万3292円のうちの1000万円(一部請求)の不当利得返還請求及びこれに対する法定利息請求イ原告会社の被告らに対する利用料相当額の利得1億0941万6461 円のうちの5000万円(一部請求)の不当利得返還請求及びこれに対する法定利息請求 2 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告ら 原告会社は、緑化事業に関する商品の企画、製造、販売並びに輸出入及び メンテナンス業務等を目的とする株式会社である。 原告P1は、品種登録第15866号に係る品種(以下「本件品種」といい、本件品種に係る育成者権を「本件育成者権」という。また、本件品種の出願を「本件出願」という。)の育成者権者である。 イ被告ら 被告会社は、緑化事業の設計、施工、維持管理及びコンサルタント等を目的とする株式会社である。 被告P2は、被告会社の代表取締役である。 被告P3は、被告会社から委託を受けて同被告が屋上緑化工事等で使用する植物の育成等を行っている者である。 (2) 本件育成者権の内容及び本 被告P2は、被告会社の代表取締役である。 被告P3は、被告会社から委託を受けて同被告が屋上緑化工事等で使用する植物の育成等を行っている者である。 (2) 本件育成者権の内容及び本件出願(乙23、弁論の全趣旨)ア本件育成者権の出願番号等は、次のとおりである。 出願番号第16646号出願年月日平成16年2月10日出願者原告P1 品種登録の番号第15866号登録年月日平成19年12月17日農林水産植物の種類Phedimuskamtschaticus (Fisch.)’tHart (和名:エゾノキリンソウ種)登録品種の名称トットリフジタ1号 品種育成をした者の氏名P4育成者権者原告P1イ本件出願の経過P4(原告P1の夫であり、原告会社代表者の父である。)は、平成16年2月10日、出願者を原告P1とし、農林水産大臣に対し、農林水産植物の 種類について「ベンケイソウ科(キリンソウ)」、学名「SedumKamtschaticum Fischer」、出願品種の名称「常緑キリンソウフジタ1号」育成者「P4」、対照品種と区別される特性として、対照品種名「カランコエ」、区別される特性「常緑であること」、出願品種の育成の経過として、母親「新潟県柏崎市<以下略>に自生の野生種」、父親「不明」、「平成6年7月新潟県柏崎市でキリンソウ苗を採取、当捕場で栽培し自然交雑により平成8年11月採種し同時に 播種した。(120粒)」等と記載し、所要の特性表等を添付した品種登録願を提出して、本件品種を出願した(本件出願)。 (3) 原告会社の独占的通常利用権原告会社は、本件育成者権につき、平成19 種した。(120粒)」等と記載し、所要の特性表等を添付した品種登録願を提出して、本件品種を出願した(本件出願)。 (3) 原告会社の独占的通常利用権原告会社は、本件育成者権につき、平成19年12月17日、原告P1から独占的通常利用権の許諾を受けた(甲2)。 (4) 被告らの行為被告P2は、被告会社の代表取締役として、平成20年4月頃から現在に至るまで、トレー式屋上緑化システム「みずいらず」(以下「被告製品1」という。)及びトレー式屋上緑化システム「みずいらずスーパー」(以下「被告製品2」といい、被告製品1、同2を総称して「被告製品」という。)の各製品を販 売している。 被告製品には、別紙被告種苗目録記載1の種苗(以下「被告種苗1」という。)ないし当該種苗を用いられることにより得られた収穫物が利用されたことがあった(時期及び数量は争いがある。)。 被告P3は、被告P2が代表する被告会社の委託に基づき、少なくとも平成 25年5月9日までの間、自ら又は第三者をして被告種苗1ないし別紙被告種苗目録記載2の種苗(以下「被告種苗2」という。)を生産するとともに、被告製品を生産し、被告会社へ納入していた。 (5) 前訴(甲3ないし5)ア被告会社は、原告P1に対し、被告製品1に用いられた被告種苗1及び被 告種苗2のうち、特に被告種苗2を使用した被告製品1を被告会社が南海辰 村建設株式会社に販売した行為(以下「前訴対象行為」という。)につき、原告P1が本件育成者権を侵害した不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないこと(以下この請求を「前訴請求」という。)等の確認を求め、大阪地方裁判所に債務不存在確認請求訴訟を提起した(当庁平成26年(ワ)第12573号)。 前訴受訴裁判所は 償請求権を有しないこと(以下この請求を「前訴請求」という。)等の確認を求め、大阪地方裁判所に債務不存在確認請求訴訟を提起した(当庁平成26年(ワ)第12573号)。 前訴受訴裁判所は、被告会社の前訴請求を棄却する旨の判決をした。 イ被告会社は、これを不服として控訴をした(大阪高等裁判所平成30年(ネ)第1670号)。大阪高等裁判所は、令和元年9月5日に口頭弁論を終結し、同年12月19日、前訴請求に係る控訴を棄却する旨の判決をした。 ウイの判決は、令和2年10月6日確定した。 (6) 刑事事件(乙29、43、弁論の全趣旨)ア被告会社、被告P2及び被告P3は、平成27年2月15日、公訴事実の要旨を次のとおりとする種苗法違反被告事件につき鳥取地方裁判所に起訴され、平成30年1月24日、いずれも有罪判決を受けた。 「被告P2及び被告P3は、共謀の上、被告会社の業務に関して育成者権 者の承諾なく平成24年8月下旬頃から平成25年2月6日頃までの間、兵庫県南あわじ市所在の第三者の畑で、情を知らない同第三者にトットリフジタ1号約8000株を育成させて生産した上、同月6日頃、被告会社が南海辰村建設株式会社から請け負った阪神高速道路大和川線の三宅西入口・出口料金所新築その他工事に伴う屋根工事に関し、前記第三者の畑から前記生産 に係るトットリフジタ1号約1812株をトレイに植え込んだ被告製品1453トレイ(設置工費込み代金127万9720円)を、工事現場に発送し、同月8日頃にこれを同所に到達させて南海辰村建設株式会社に譲渡し、もって育成者権を侵害した。」イ被告会社及び被告P2がアの有罪判決に控訴したところ、広島高等裁判所 松江支部は、平成30年11月9日、原判決を破棄し、事件を鳥取地方裁判 社に譲渡し、もって育成者権を侵害した。」イ被告会社及び被告P2がアの有罪判決に控訴したところ、広島高等裁判所 松江支部は、平成30年11月9日、原判決を破棄し、事件を鳥取地方裁判 所に差し戻した。 ウ鳥取地方裁判所は、令和4年3月4日、関係証拠の評価を踏まえ、本件品種がその品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と特性の全部又は一部によって明確に区別されることには合理的な疑いが残るとして、アの公訴事実について無罪とする判決をした。同判決は、令 和4年3月19日確定した。 第3 本件において審理すべき争点について 1 前訴の既判力前訴により、被告会社が、原告P1に対し、基準時である令和元年9月5日において、前訴対象行為につき本件育成者権侵害の不法行為に基づく損害賠償義務 を負うことが既判力をもって確定しているから、当裁判所はこれに拘束される。 2 審理の蒸し返しとなる争点1のほか、前訴において当事者が攻撃防御を尽くし、前訴裁判所が実質的な判断を示した理由中の判断については、当裁判所がこれを重ねて審理することが不当な蒸し返しに当たるものとして、訴訟上の信義則に照らし許されないと解され るから、そのような観点から本件における当事者の主張を検討する。 (1) 前訴の攻撃防御の構造及び判断前訴の前訴請求に係る争点は、①被告種苗2がトットリフジタ1号又はそれと特性により明確に区別されない品種かどうか(前訴争点2)、②本件育成者権に係る品種登録に次の無効・取消理由があることにより原告P1の権利行使 が権利濫用となるか原始的瑕疵1・育成者性の欠如(前訴争点3-1)。 原始的瑕疵2・区別性の欠如(前訴争点3-2)原始的瑕疵3・未譲渡性(新規性 により原告P1の権利行使 が権利濫用となるか原始的瑕疵1・育成者性の欠如(前訴争点3-1)。 原始的瑕疵2・区別性の欠如(前訴争点3-2)原始的瑕疵3・未譲渡性(新規性)の欠如(前訴争点3-3)原始的瑕疵4・品種登録における特性審査の瑕疵(前訴争点3-6)。 後発的瑕疵1・均一性ないし安定性の喪失(前訴争点3-4) 後発的瑕疵2・均一性の喪失(前訴争点3-5)であった(争点の番号は前訴控訴審判決による。前訴争点3-6は控訴審において追加主張されたもの。)。 前訴の控訴審は、各争点につき、要旨次のような審理判断(引用された第一審の判断を含む。以下同じ。)をした(甲3、4)。 ア前訴争点2について平成24年8月頃にされた被告種苗2の株分けの経緯から、被告種苗2は全て被告種苗1が使用された疑いもあるが、他方で、被告種苗2の株分けの時点で、被告P3の農場ですでに相当数のタケシマキリンソウが栽培されていたことから更に検討するに、鳥取大学乾燥地研究センター教授が、鳥取警 察署からの鑑定嘱託に応じて実施したDNA鑑定(平成26年1月頃の嘱託によるものと、平成27年1月頃の嘱託によるものの2件の鑑定がある。)につき、鑑定の具体的手順や鑑定資料の入手方法等の妥当性、相当性について評価を加えた上で、前記被告P3のタケシマキリンソウは被告種苗2とDNA型において異なる反面、被告種苗2は本件品種とDNA型が明確に区別 されないことから、被告種苗2は、全て被告種苗1が使用された。 これに加え、独立行政法人種苗管理センター(当時の組織。現在、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構に統合されているが、統合の前後を通じ、以後「種苗管理センター」ということが された。 これに加え、独立行政法人種苗管理センター(当時の組織。現在、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構に統合されているが、統合の前後を通じ、以後「種苗管理センター」ということがある。)が鳥取警察署から平成25年8月頃にされた鑑定嘱託に応じて実施された比較栽培試験鑑定 についても、その鑑定試料や手法の相当性等につき評価をし、本件品種(挿し木してから一冬を越えたもの)と被告種苗2は明確な区別性が認められないとした結論は誤りとはいえず、前記の認定は妨げられない。 イ前訴争点3-1、同3-2、同3-3についてタケシマキリンソウが冬季の茎の伸長程度が強いという本件品種の最も 重要な特性を備えているかは明らかでなく、明確区別性を欠くと認めること は困難で、前訴で証拠提出されたDNA鑑定の結果からも、タケシマキリンソウと本件品種のDNA情報が同一であると認めることができず、特性において明確に区別できない品種であると認められない(前訴争点3-2)。桐蔭横浜大学准教授(当時)が第三者に譲渡したものが本件品種に係る種苗であるとも認められない(前訴争点3-3)。そして、同准教授やP4の供述の 内容から、同准教授が育成者であるとは認められず、育成者性欠如の原始的瑕疵があるということもできない(前訴争点3-1)。 ウ前訴争点3-4、同3-5本件品種が越冬を経たものとそうでないものとで特性に差異があるという前記アの比較栽培試験鑑定の結果から、本件品種が均一性、安定性を欠く に至っていたということはできない(前訴争点3-4)。また、同比較栽培試験鑑定によると、各株について形質ごとの平均値から1階級値以上異なった株があることについては、審査基準や同比較栽培試験鑑定の限界をふまえた上で、これによっ ない(前訴争点3-4)。また、同比較栽培試験鑑定によると、各株について形質ごとの平均値から1階級値以上異なった株があることについては、審査基準や同比較栽培試験鑑定の限界をふまえた上で、これによって均一性の喪失の有無を最終的に判定することはできず、これによる均一性の喪失も認められない(前訴争点3-5)。 エ前訴争点3-6本件品種の登録に際し、本件品種が含まれるタケシマキリンソウ種を対象としない審査基準に基づき、対照品種にタケシマキリンソウ種を選定せずに特性審査が行われたことが重大な瑕疵に当たるとの主張につき、タケシマキリンソウ種とエゾノキリンソウ種は比較的最近まで同じものと考えられて おりその分類は容易ではないことや、審査基準の策定に当たりどの程度の範囲の種を対象植物とするかが決まっているわけではないことなどから、これが明白且つ重大な瑕疵であって登録処分を無効とするものではない。 (2) 当裁判所で審理すべき範囲ア被告らは、本件において、前訴控訴審判断は誤りであることを前提に、本 件品種の育成者は前記准教授であって、P4は育成者でないとの冒認出願に よる無効、本件出願に対し適法・適正な審査がされなかったことをいう無審査による無効、明確区別性欠如による無効を理由とする権利濫用の抗弁を主張している。 しかし、これらの主張は前訴争点3-1、同3-6、同3-2と同一であるところ、前記1の既判力に抵触するとともに、同2のとおり前訴において 実質的に攻撃防御が尽くされた上でされた判断を不当に蒸し返すものというほかはなく、本件において、既判力ないし訴訟上の信義則に照らし、これらの主張につき当裁判所が審理を重ねることはしない。前訴対象行為以外の行為についても同様である。 このことは、被告ら のというほかはなく、本件において、既判力ないし訴訟上の信義則に照らし、これらの主張につき当裁判所が審理を重ねることはしない。前訴対象行為以外の行為についても同様である。 このことは、被告らが、明確区別性欠如につき提出した証拠(種苗管理セ ンターが平成30年6月から実施した栽培試験の結果(乙31の6)をもとに農林水産省が作成したキリンソウ属の審査基準(乙46))についても同様である。すなわち、被告らは、同証拠を前訴争点3-2(ないし同3-6)の主張に係る証拠として提出しているにすぎないところ、証拠は、基準時後に発見されたものであっても既判力により遮断されるのは当然のことであ るし(再審事由にも当たらない。)、同様の趣旨は、信義則上主張が許されなくなる攻撃防御方法にも該当するというべきである(なお付言すると、上記証拠を検討しても、前訴の判断を左右するに足りないものというべきである。)。 イ前訴の当事者は、被告会社と原告P1であって、被告P2及び被告P3並 びに原告会社は、直接の当事者ではない。 しかし、被告P2は、前訴当時から被告会社の代表者であって、前記アの信義則上の制限に服するのが相当である。 被告P3にあっては、前訴に関与したものではないから、前訴の既判力ないし信義則上の制限に直接服するものではないが、同被告は、前記前提事実 記載のとおり、被告会社から委託を受けて情を知ったうえで被告種苗1、同 2の生産をしていた者であって、かつ、本件において、前訴で実質的に争われた争点について、被告会社及び被告P2の主張に依拠しており、これとは別の固有の主張をしていない。このような事情を考慮すると、被告P3が前記の争点について争い得るとすることも、紛争の不当な蒸し返しとして許されないと解する 社及び被告P2の主張に依拠しており、これとは別の固有の主張をしていない。このような事情を考慮すると、被告P3が前記の争点について争い得るとすることも、紛争の不当な蒸し返しとして許されないと解するのが相当である。 ウなお、原告P1が、被告会社に対して、本件品種がタケシマキリンソウ種であっても育成者権を侵害し損害賠償請求ができると主張するのであれば、訴訟上の信義則に反し許されないとの被告らの主張については、原告P1はそのような主張をしているとは解されず、前提を欠き採用することができない。 3 1及び2を踏まえた本件における争点(1) 被告らが被告種苗1を使用した被告製品を販売した数量(争点1・請求原因)(2) 原告P1の被った損害ないし利得の額(争点2・請求原因)(3) 原告会社の被った損害ないし利得の額(争点3・請求原因)(4) 消滅時効が成立するか(争点4・不法行為に基づく請求の抗弁) 第4 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告らが被告種苗1を使用した被告製品を販売した数量)について【原告らの主張】(1) 前訴対象行為に係る1812株を含め、被告P2は、平成23年6月から平成26年10月末日までの間に、別紙被告売上数量一覧表記載のとおり、被告 種苗1を50万7733株譲渡している(甲6)。 当該被告種苗1は、被告P3が被告P2の委託に基づき、直接または第三者に委託して生産したものである。 仮に、上記数量に誤りがあるとしても、被告会社における、被告種苗1の譲渡数量は別紙乙80添付の「P3及び下請け農家のキリンソウ取扱状況につい て」(訂正後のもの)のとおり、46万5765株を下らない(乙2、乙80。 以下、乙80として引用する。)。 (2) 被告らの主張 の「P3及び下請け農家のキリンソウ取扱状況につい て」(訂正後のもの)のとおり、46万5765株を下らない(乙2、乙80。 以下、乙80として引用する。)。 (2) 被告らの主張について被告らの主張は否認する。 ア被告会社がタケシマキリンソウを入手したのは、平成26年3月頃のことであり(甲16)、平成23年のことではない。 イ被告種苗2が使用されたのは平成25年2月のことであり(前訴対象行為)、平成24年6月からの出荷分にはタケシマキリンソウが使われていたとの主張とは矛盾する。 【被告らの主張】(1) 被告P2は、平成23年頃から被告種苗1の生産を始めたが、これ以前から 平成23年11月までは、断続的に原告会社から本件品種に係る種苗の製品(カット苗、プラグ苗、ポット苗)を購入しており、その購入数は13万3900株である。 この在庫数の変化は乙80添付の表のとおりであって、平成23年6月24日段階でマイナスになっており、この出荷分に被告種苗1が使用されている可 能性は否定できない。 (2) 被告らは、平成23年9月頃からタケシマキリンソウのサンプルを入手するなどしてこれを増殖させ、平成24年9月以降に受注した出荷分については、タケシマキリンソウのみで被告製品を製作していた。 したがって、被告種苗1が被告製品に使用されたのは、平成23年6月24 日から平成24年5月31日までに出荷された分(10万8036株)から、平成23年6月24日時点での残株数4039株と上記期間中に新たに購入した2万株を差し引き、被告P3が平成25年5月11日に廃棄した2128株を加算した8万6125株である。 2 争点2(原告P1の被った損害ないし利得の額)について 【原告P1の主張 購入した2万株を差し引き、被告P3が平成25年5月11日に廃棄した2128株を加算した8万6125株である。 2 争点2(原告P1の被った損害ないし利得の額)について 【原告P1の主張】 (1) 不法行為に基づく損害賠償(種苗法34条3項に基づく損害主張)ア被告P2は、別紙「被告製品の販売額計算書」記載のとおり、被告会社において、被告種苗1を1株当たり平均862円で販売していた(甲7)。本件品種の利用に対して受けるべき利用料率は、販売価格の5パーセントを下らない。 よって、原告P1の被った損害額は、862円に出荷数50万7733株を乗じ、これに利用料率を乗じた2188万3292円である。 イ弁護士費用原告P1は本訴の提起追行を弁護士に委任したところ、これに要する費用は218万8000円を下らない。 ウよって、被告らは、合計2407万1292円及びこれに対する遅延損害金の支払義務を負う。 (2) 不当利得返還請求被告らは、何らの利用料を支払うことなく本件品種に係る種苗を生産等してきたのであり、被告らは、法律上の原因なく利用料相当額の利得を得て、原告 P1は同額の損失を被った。同利得の額は、(1)アと同じである。 (3) まとめよって、原告P1は、(1)ウ又は(2)の金額の一部請求として、請求記載の金額の支払を求める。 【被告らの主張】 (1) 被告会社が行っていた事業は被告製品を屋上等に設置する工事の請負であり、単純に被告製品を販売していたわけではない。被告会社が請負業務を行うためには、施工費、金物代金等の様々な費用が必要となる。更に、被告製品を作成するにはトレイや土、育苗の費用を要する。 原告会社は、本件品種に係る種苗をカット苗(葉身と 。被告会社が請負業務を行うためには、施工費、金物代金等の様々な費用が必要となる。更に、被告製品を作成するにはトレイや土、育苗の費用を要する。 原告会社は、本件品種に係る種苗をカット苗(葉身と葉柄)15円、プラグ 苗(カット苗を発根させ土に植えたもの)80円、ポット苗(プラグ苗を生育 して製品として利用できる状態のもの)140円で販売していたところ、被告会社が購入していたのはほとんどカット苗である。よって、原告会社の販売金額を基準とした原告P1の利用料相当額は、前記のとおり15円を基準として、1株当たり0.75円と考えられる。 (2) 前訴対象行為における被告製品の原価に占める割合、被告製品における被告 種苗1の1株当たりの金額の割合(被告製品の1平方メートル当たりの単価を参照して算出)を考慮した被告種苗1の1株の販売金額(32円)に利用料率を乗じた利用料相当額は1.6円となるが、原告P1は、原告会社に独占的通常利用権の許諾をしていたから、実際に受領していた前記(1)の原告会社の利用料相当額が損害の基準となるべきである。 3 争点3(原告会社の被った損害ないし利得の額)について【原告会社の主張】(1) 不法行為に基づく損害賠償(種苗法34条1項に基づく損害主張)ア原告会社は、本件育成者権の独占的通常利用権者であるから、被告らの侵害行為は、同利用権を侵害する。原告会社は、被告製品と競合する製品であ る、「FTMバック」(以下「原告製品」という。)を生産、販売している(甲8)。原告製品を販売することによる本件品種に係る種苗1株当たりの利益の額は331円である。 原告会社は21棟のビニールハウスを有し、平成21年には被告会社に対し7万3900株を納入していることから、原告会社が平成23 とによる本件品種に係る種苗1株当たりの利益の額は331円である。 原告会社は21棟のビニールハウスを有し、平成21年には被告会社に対し7万3900株を納入していることから、原告会社が平成23年6月から 平成26年10月末日までの間に本件品種の種苗を50万7733株生産することは容易であり、利用の能力を超えるものではない。 よって、原告会社が被った損害額は、331円に出荷数50万7733株を乗じた1億6805万9623円と推定される。 イ弁護士費用 被告らの侵害行為と相当因果関係のある原告会社の弁護士費用相当の損 害額は、1680万6000円を下らない。 ウ消費税相当額アとイの合計1億8486万5623円に対する消費税相当額は1848万6562円である。なお、判決確定日の税率が適用される。 エよって、被告らは、合計2億0335万2185円及びこれに対する遅延 損害金の支払義務を負う。 (2) 不当利得返還請求ア独占的通常利用権者には、債権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が認められると解されており、また債権侵害の場合にも不当利得返還請求の行使が可能と解されている。したがって、独占的通常利用権者である 原告会社も不当利得返還請求をすることができる。なお、原告会社の本件育成者権についての独占的通常利用権は、再利用許諾の権限も含まれている。 イ本件育成者権の利用に対して原告会社が受けるべき利用料率は、種苗の生産が、医薬品の製造と同じく利益率が高く、品種に対する育成者権の経済的価値が高いことから、25パーセントを下らない。 よって被告種苗1の1株当たり販売単価862円に50万7733株を乗じ、利用料相当率を乗じた、1億0941万6461円が、被告ら の経済的価値が高いことから、25パーセントを下らない。 よって被告種苗1の1株当たり販売単価862円に50万7733株を乗じ、利用料相当率を乗じた、1億0941万6461円が、被告らの利得額となり、原告会社はこの返還を求めることができる。 【被告らの主張】(1) 原告会社の主張に対する反論(不法行為関係) ア前記のとおり、原告会社は本件品種に係る種苗をカット苗15円で販売していたものであって、ポット苗と同程度に育成されるにせよ、331円もの利益を計上できることはあり得ない。原告製品は特許の実施品でもあり、その実施料も考慮すべきである。 原告会社においては、本件品種に係る種苗をそのまま譲渡していたのであ るから、当該譲渡価格を基準として利益を算出すべきであり、1株当たり利 益の額は15円を上回ることはあり得ず、利益率を66.7パーセントと高く見積もっても、10円程度である。 イ原告製品は、被告製品の1.5倍の価格であるうえ、原告製品に使用される緑化植物の数は原告製品が1平方メートル当たり24株に過ぎないのに対し被告製品のそれは36株であって、価格及び被覆率において被告製品が 優れており、市場における競合性はないか、あっても低いと解される。 (2) 独占的通常利用権者は不当利得返還請求できないこと原告会社は、本件育成者権につき、原告P1から独占的通常利用権の許諾を受けたにすぎないものであって、同原告との関係は債権関係にすぎず法による排他的権利を有していないから、被告らに対し、直接に権利主張をすることが できない。 また、特許権等の侵害による不当利得返還請求権は、実施料相当額のみが認められるとされるところ、本件において原告P1は、本件育成者権の利用に対して同原告が 利主張をすることが できない。 また、特許権等の侵害による不当利得返還請求権は、実施料相当額のみが認められるとされるところ、本件において原告P1は、本件育成者権の利用に対して同原告が受けるべき利用料の不当利得返還請求を予備的に請求しているから、本件育成者権についての利用料は、この請求によって評価され尽くして いる。 4 争点4(消滅時効が成立するか)について【被告らの主張】(1) 原告らは、平成27年11月16日には、被告P2が供述者である鳥取地方検察庁検察官作成の供述調書(甲6。以下「甲6調書」という。)を入手してお り、遅くとも同日、被告種苗1の育成等による損害及び加害者を知った。 平成30年11月16日は経過した。 (2) 被告らは、本件口頭弁論期日において消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 【原告らの主張】 民法724条にいう「損害を知った時」とは、加害行為が不法行為であること を知る必要があるところ、本件において、原告ら(特に原告会社)において被告らにおける被告種苗1の増殖行為が不法行為を構成することを知ったのは前訴判決の確定した令和2年10月6日である。なお、加害者から具体的な抗弁事由が予想される場合は、抗弁事由の不存在を認識したことも要すると解される。 第5 判断 1 判断の大要当裁判所は、争点1については、26万3368株が被告種苗1であり、被告らは、これらの出荷について不法行為責任を負うと考えるが、争点4において判断するとおり、前訴既判力の及ぶ部分を除く不法行為に基づく損害賠償請求権は時効により消滅したと考える。 その上で、争点3の原告会社の不当利得返還請求権につき、これを肯定する余地があるが、具体的に被告らが誰にどのよう 部分を除く不法行為に基づく損害賠償請求権は時効により消滅したと考える。 その上で、争点3の原告会社の不当利得返還請求権につき、これを肯定する余地があるが、具体的に被告らが誰にどのような返還義務を負うか(争点2、3)は、本件においては育成者権者である原告P1も不当利得返還請求を行うことから、これとの相関において定まるものと考える。また、この検討と整合的な被告らの不法行為に基づく原告P1に対する損害額(前訴既判力の対象となる請求権 等の内容)を算定する。 以下、上記の判断順序に沿って詳述する。 2 争点1(被告らが被告種苗1を使用した被告製品を販売した数量)について(1) 証拠(甲3、4、6、16、乙1、17、22、44。枝番のあるものは枝番を含み、認定に沿わない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によると、次の事実 を認めることができる。 ア平成20年4月ころ、原告会社は、取引先であった商社を介して、被告会社に本件品種に係る種苗の販売を始め、同年6月23日付けで、被告会社、前記商社との間で、増殖を行わない、施工現場にて生育した麒麟草をカットした補植のみ認める、当麒麟草を親とし品種改良等を行わない等の「常緑麒 麟草に関する種苗登録禁止条項を厳守する」旨が記載された覚書を交わした。 イ被告会社は、アの覚書に従って、原告会社から前記商社を介して本件品種に係る種苗を仕入れていたが、被告P3に指示して、平成23年5月頃から、覚書に反する態様で被告種苗1を育成するようになった。 ウ平成23年11月2日に原告会社から被告会社に本件品種に係る種苗が納品された後は、覚書に基づく取引がされることはなかった。 エ被告P3は、被告P2の指示を受け、平成24年2月頃から公知のタケシマキリンソウ種の増 原告会社から被告会社に本件品種に係る種苗が納品された後は、覚書に基づく取引がされることはなかった。 エ被告P3は、被告P2の指示を受け、平成24年2月頃から公知のタケシマキリンソウ種の増殖を始め、被告会社において、同種苗をどのように被告製品に使うか等の検討がされるようになった。 オ平成25年4月頃、原告会社代表者は、同業者から、被告P3が本件品種に係る種苗を無断で増殖している旨を聞き、同月23日に、同業者の協力を 得て、被告P3の農場を訪問し、原告会社代表者の知見において、本件品種に係る種苗が増殖されている実態を見分するとともに、上記同業者が被告P3に話を聞いた。 その際、被告P3は、前記商社から買ったものを挿し木にして増やしている、常緑キリンソウと言ったら種苗法違反になる、タケシマキリンソウと言 って売っている、被告P2はこのことを知っているとの趣旨の発言をした。 同年5月、被告会社は、被告P3に、被告種苗1を使用した被告製品を廃棄するよう指示した。 これ以降も、被告会社は、被告製品に用いる公知のタケシマキリンソウ種を入手し、被告P3以外の下請先で育成をすすめ、平成26年4月には、被 告製品に被告種苗1が用いられることがなくなった。 カ鳥取県警察において、被告P3方への原告会社からの本件品種に係る種苗の入荷状況及び被告P3から出荷されたキリンソウの総数につき捜査がされ、それらを対比した結果は、当初「P3及び下請け農家のキリンソウ取扱い状況について」(甲6調書の添付書面)として把握されていたが、後にこれ を訂正する捜査報告書(乙80)が作成された。 同報告書によると、平成26年3月末時点で、出荷数は、入荷数を26万3368株上回る状態であった。 (2) (1)を 後にこれ を訂正する捜査報告書(乙80)が作成された。 同報告書によると、平成26年3月末時点で、出荷数は、入荷数を26万3368株上回る状態であった。 (2) (1)を総合すると、本件において、被告製品に用いられた被告種苗1の株数は、前訴対象行為に係る被告種苗2である1812株を含め、26万3368株であると認められる。 原告らは、甲6調書を根拠に、被告種苗1の株数は50万7733株であると主張するが、前記認定のとおり、被告会社は、公知のタケシマキリンソウ種の採用を検討し、平成26年4月には被告種苗1を使用することはなかったものと認められるから、これを採用することができない。 被告らは、公知のタケシマキリンソウ種への切替は平成24年9月頃であっ たとの主張をするところ、確かに、被告会社が公知のタケシマキリンソウ種の採用の検討を始めたのは平成24年2月頃であって、平成25年5月の原告会社代表者の被告P3の農場への訪問以降は、出荷された被告製品中に被告種苗1が使用されていないものが混在する可能性も考えられるが、なお抽象的な可能性にとどまり客観的な証拠はなく、公知のタケシマキリンソウ種への切替が 平成26年4月以前に行われたことが的確に立証されたものとは言えないものと判断する。 よって、前記数量に反する原告ら及び被告らの主張は、採用しない。 3 争点4(消滅時効が成立するか)について(1) 認定事実 原告会社代表者は、平成25年4月頃、被告P3の農場に赴き、被告種苗1が原告らの許諾なく増殖されていると考え、同年5月頃、鳥取県警察に相談するなどした。このことから、前提事実(6)記載の刑事事件に係る捜査が行われ、平成27年2月8日、甲6調書が作成された。原告らは、同年 告らの許諾なく増殖されていると考え、同年5月頃、鳥取県警察に相談するなどした。このことから、前提事実(6)記載の刑事事件に係る捜査が行われ、平成27年2月8日、甲6調書が作成された。原告らは、同年11月16日までに甲6調書の写しを入手した(弁論の全趣旨)。同供述調書には、被告P2 が、被告P3に対し、平成23年5月頃、被告種苗1を違法に増殖するよう指 示したことが記載されており、同調書に添付の「P3及び下請け農家のキリンソウ取扱い状況について」には、納品数と出荷数の差が50万7733株であることが記載されていた。 また、①原告P1は、平成26年11月11日には、被告会社に対し、無断で被告種苗1を増殖していることを前提に、生産中止、在庫数及び取引の具体 的内容を照会する通知を発し(乙74)、②同年12月26日には、被告会社は、前訴請求を含む前訴を提起し、その頃訴状が原告P1に送達された(乙65、弁論の全趣旨)。 (2) 検討ア原告P1及び原告会社の当時の代表者(P4、本件品種の育成者)は夫婦 関係にあり、原告P1と原告会社は、独占的通常利用権の設定者と利用権者の関係にあって、本件品種に係る種苗に係る事業そのものや、被告らの無断増殖行為の問題には、一体として対処していたと考えられることから、原告らの損害及び加害者の認識について差があるとは考えられない。これを前提とすると、原告らは、甲6調書に接するまでに、被告らが原告らの承諾なく 被告種苗1の増殖をしていること(不法行為該当性は自明である。)につき疑念を持っており、警察の捜査により、その範囲が甲6調書によっておおむね判明したものであるから、原告らは、遅くとも同調書を入手した時点(遅くとも平成27年11月16日)で、不法行為に基づく損害賠償請求訴 を持っており、警察の捜査により、その範囲が甲6調書によっておおむね判明したものであるから、原告らは、遅くとも同調書を入手した時点(遅くとも平成27年11月16日)で、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起できる程度に、損害及び加害者を知ったものというべきである。 イ原告らは、損害及び被害者を知ったのは前訴が確定したときであると主張するが、権利行使に関し抗弁がないことの確証を得ないと時効が起算されないとするのは時効制度の趣旨に沿わないものであって、かかる見解は取り得ない。 原告らの主張を、前訴に応訴したことによる中断(民法147条1号)を いうものと解したとしても、前訴は、前訴対象行為に限定された不法行為に 基づく損害賠償請求権の不存在確認訴訟であることが明示されているのであって、それ以外の被告らの行為に係る損害賠償請求権の時効の進行に対し何らかの法的効果を持つとは考えられない(仮に何らかの効果があり得るとしてもせいぜい催告の効果にとどまる。)から、前訴対象行為以外の行為に係る請求権の消滅時効に関する再抗弁にもならないと解される。 (3) 結論被告らの消滅時効の抗弁は理由があり、前訴既判力の及ぶ前訴対象行為以外の被告らの行為に係る原告らの損害賠償請求権は、消滅した。 4 争点2(原告P1の被った損害ないし利得の額)及び争点3(原告会社の被った損害ないし利得の額)について (1) 独占的通常利用権者が不当利得返還請求できるかについて原告会社は、本件育成者権の独占的通常利用権者であり、専用利用権者ではないものの、本件育成者権を独占的に利用して利益を上げることができる点において専用利用権者と実質的に異なることはないから、当該利益の得喪については民法703条の「利益」及び「損失」に 用利用権者ではないものの、本件育成者権を独占的に利用して利益を上げることができる点において専用利用権者と実質的に異なることはないから、当該利益の得喪については民法703条の「利益」及び「損失」に該当する場合があると解するのが 相当である。とりわけ、本件育成者権については、再通常利用権(サブライセンス)の設定をすることができる(原告P1と原告会社間の設定契約においては、この点は明示されていない(甲2)が、原告らがこのように主張する以上、別異に解する理由はない。)とされていることにも照らすと、原告会社のかかる利用権設定機会の喪失に対応する被告らの利得を観念し得る。排他的独占権 を持つ育成者権者ではなく、独占的通常利用権者であることのみをもって不当利得返還請求が否定される理由はなく、これと異なる被告らの見解は、採用することができない。 もっとも、独占的通常利用権者から利用権の設定を受けた者(サブライセンシー)は、重ねて育成者権者から利用権の設定を受けることはないし、再通常 利用権の設定によって再通常利用権者が通常利用権者に支払う利用料は、通常 利用権者が育成者権者に支払うべき利用料を含んでいるのが通常であると考えられるから、本件において原告らがそれぞれ不当利得返還請求をしているのは、結局のところ被告らが返還すべき総体としての被告らの利用料相当の利得の原告間における分配の問題に帰着するものというべきであり、本件育成権者である原告P1と原告会社の各不当利得返還請求権がいずれも成立するよう な場合の各請求の関係は、いわゆる「不真正連帯債権」の関係に立つものと解される。 (2) 相当利用料率等について本件において、本件品種の利用料率について、原告P1が5パーセントの利用料率を主張し、原告会社がこれを いわゆる「不真正連帯債権」の関係に立つものと解される。 (2) 相当利用料率等について本件において、本件品種の利用料率について、原告P1が5パーセントの利用料率を主張し、原告会社がこれを超える25パーセントの利用料率を主張し ていること、原告P1が本件育成者権の権利者となっているのは、育成者であったP4のある種の情誼によるもの(乙20)であって、本件育成者権の対象品種を利用しているのは専ら原告会社であり、仮に被告らが利用権の設定を受けるとすればその相手方は原告会社となると想定されることから、原告会社が利用許諾するとすれば想定される料率を乗じる対象及び相当利用料率を検討 する。 ア被告製品の概要(ただし、被告種苗1が使用されたもの)被告製品1は、50センチメートル四方のトレイにメキシコマンネングサを4株、被告種苗1を5株植えたものであり、このトレイを建物の屋上等に必要数を並べて配置することにより、屋上緑化の用に供されるものであり、 被告製品2は、同じトレイに被告種苗1を5株又は9株植えたものである(甲3、7、乙67)。 被告が扱う製品には、同じトレイにメキシコマンネングサのみを植えた「てまいらず」というものもあるが、メキシコマンネングサは、冬には枯れるのに対し、本件品種に係る種苗は常緑性である(甲1、8、乙67)。 イ一般に、知的財産権の利用許諾において、利用料率の算定方法につき、基 準の明確性や利用権者の開示する情報の性質等から、製品の販売金額を基礎に、所定の料率を乗じる方法が取られることが相応に存することは公知の事実に属し、上記被告製品の性質や、本件品種に係る種苗の用いられ方等を勘案すると、本件においてもこのような方法によって利用料率を算定することが相当である。これと られることが相応に存することは公知の事実に属し、上記被告製品の性質や、本件品種に係る種苗の用いられ方等を勘案すると、本件においてもこのような方法によって利用料率を算定することが相当である。これと異なる被告らの主張は、採用しない。 なお、被告製品の設置には工事が必要であり、そのための外注費は被告製品の販売金額そのものではないと解されるから、売上から同費用を除いた部分を販売金額と把握すべきである。他方、販売金額に設置に要する物品等が含まれる(乙67)としても、それらは被告製品を構成するものであるから、販売金額から控除することはしない。もっとも、利用料率の設定においてか かる事情を考慮することはできると解する。 これによると、1株当たりの被告製品の販売金額は、外注費込みの1株当たり販売金額である862円(甲7。なお、前記のとおり、「みずいらずスーパー」(被告製品2)には、被告種苗1を5株又は9株使用されているが、甲7においては、一律に5株として計算されており、その意味で控えめな算定 となっている。)に外注工事費を除く割合58.6パーセント(乙69)を乗じた505円と認められる。 ウ製品の販売金額を基礎とする相当な利用料率については、本件品種に係る種苗の特性、販売金額を料率算定の基礎としたこと、前記アのとおりの被告製品における本件品種に係る種苗の用いられ方(前記イのとおり、設置には 別途物品が必要である。)、種苗の育成等を含む生産工程に要する費用、自然環境の影響による生育不良等の危険等も勘案すると、利用料率については、これを3パーセントと推認するのが相当である。なお、原告会社はこれを25パーセントと主張するが、そのような取引が成立する蓋然性について的確な立証はなく、これを採用することはできない。また、仮 ては、これを3パーセントと推認するのが相当である。なお、原告会社はこれを25パーセントと主張するが、そのような取引が成立する蓋然性について的確な立証はなく、これを採用することはできない。また、仮に原告P1が利用 権を設定するとしても、原告会社が設定するとすれば想定される上記料率を 超えることはないと考えられるから、これも採用の限りでない。もっとも、不当利得返還請求と異なり、原告P1が種苗法34条3項の適用を求める不法行為に基づく損害賠償請求においては、利用に対し受けるべき金銭を算定するに当たり用いるべき利用料相当額は、令和元年法律第3号による特許法の改正の趣旨を参酌し、これを5パーセントとするのが相当である。 (3) 原告らの具体的な損害・損失額ア原告P1の損害賠償請求(主位的請求)前訴対象行為である1812株に、単価505円と相当利用料率5パーセントを乗じた4万5753円及びこれに弁護士費用4575円を加えた5万0328円を、種苗法34条3項により推定される損害と認め、被告らは、 連帯してこれを賠償する義務を負う(なお、前訴対象行為に関し、被告P3も共同不法行為者として責任を負うことについては、甲3、4、乙1及び弁論の全趣旨によりこれを認める。)。 イ原告らの不当利得返還請求(予備的請求)前記2(2)の26万3368株からアの1812株を除いた26万155 6株に、単価505円と相当利用料率3パーセントを乗じた396万2573円を利得と認め、これを上限として、被告会社が不真正連帯債権として原告らの請求に応じて支払うべきものと判断する。 他方、侵害行為は被告会社として行われ、その利得も被告会社に帰属しているのであって、代表者である被告P2に利得が帰属するとの事情は認めら として原告らの請求に応じて支払うべきものと判断する。 他方、侵害行為は被告会社として行われ、その利得も被告会社に帰属しているのであって、代表者である被告P2に利得が帰属するとの事情は認めら れないから、被告P2に対する請求は理由がない。また、本件において、被告P3は被告会社の下請けとして関与したものであるところ、原告らは、被告会社の出荷行為に基づく利得のみを主張し、被告P3に固有の利得や、それと被告会社の利得との関係は何ら主張していないから、被告P3に対する請求も理由がない。 ウなお、本件において、原告P1は5パーセントの、原告会社は25パーセ ントの利用料率に基づく不当利得返還請求するものであるが、前記のとおり、本件において、相当な利用料率は相対的に低廉な料率を主張する原告P1の主張を下回るものであるから、認容されるべき返還請求権の全額について不真正連帯債権関係に立つものと解される。 第6 結論 以上の次第で、原告P1の主位的請求は主文第1項の、予備的請求は第3項の限度で理由があり、その余はいずれも理由がなく、原告会社の主位的請求は全部理由がなく、予備的請求は主文第6項の限度で理由があり、その余はいずれも理由がない。なお、仮執行の免脱宣言は相当でないのでこれを付さない。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 島田美喜子 裁判官 島田美喜子 裁判官 阿波野右起 (別紙)被告種苗目録 1 原告P1の許諾なく生産されたトットリフジタ1号の種苗 2 被告会社が南海辰村建設株式会社から請け負った阪神高速道路大和川線三宅西出入口料金所新築その他工事に伴う屋根工事に関し、平成25年2月8日頃、工事 現場に納入され、南海辰村建設株式会社に譲渡された約1812株の常緑性の種苗 (以下別紙省略)

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