令和7(行ケ)3 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月12日 福岡高等裁判所 那覇支部
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判決文本文20,908 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 令和7年7月20日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の沖縄県選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和7年7月20日に行われた参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について、沖縄県選挙区(以下「本件選挙区」という。)の選 挙人である原告が、公職選挙法14条1項及び別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反して無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件選挙区における選挙が無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(争いのない事実、当裁判所に顕著な事実並びに後掲証拠及び弁論 の全趣旨により認められる事実)⑴ 本件選挙は、令和7年7月20日、平成30年法律第75号による改正(以下、改正後の公職選挙法及び改正それ自体を「平成30年改正法、平成30年改正」のように年号のみで表記する。)後の公職選挙法14条1項及び別表第3の議員定数配分規定(以下「本件定数配分規定」という。)の下 で行われた3回目の通常選挙(以下、参議院議員通常選挙を単に「通常選挙」といい、行われた通常選挙を「令和7年選挙」のように年号のみで表記する。)である。 ⑵ 原告は、本件選挙区の選挙人である。 ⑶ 総務省発表令和6年9月登録日現在における選挙人名簿登録者数に基づき、 本件定数配分規定の下での選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較 差を比較すると、その選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神奈川県選挙区では3.10(以下、較差に関する数値は、全て概数であ の下での選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較 差を比較すると、その選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神奈川県選挙区では3.10(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)、沖縄県選挙区では1.89となる。 また、本件選挙当日の選挙人数に基づき、上記較差を比較すると、議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合、最多の神奈川県 選挙区では3.13、沖縄県選挙区では1.91となる(乙1)。 3 争点本件定数配分規定が憲法に違反して無効であるか否か 4 争点に関する当事者の主張の要点(原告の主張) ⑴ア本件定数配分規定に基づいて行われた本件選挙の選挙区間の有権者数最大較差は3.13倍であり、福井県選挙区との間で較差が3倍以上となった3選挙区の有権者数は2120万7678人(総務省発表令和6年9月登録日現在における都道府県別有権者数に基づく人数)に上る。 憲法47条、56条2項、1条、前文第1段落第1文及び第2文は、人 口比例選挙を要求しているのであるから、これに違反する本件定数配分規定は憲法98条1項により無効であり、よって、本件定数配分規定に基づいて行われた本件選挙の本件選挙区における選挙は無効である。 イ本訴訟の決定的争点は、国会が憲法47条に基づいて選挙区割規定の立法を行うに当たり、広範な裁量権を有するものと認められるか否かであ るところ、憲法前文第1段落第2文が「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」とした趣旨を踏まえれば、この点について国会に広範な裁量が認められるものではない。 ⑵ その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」とした趣旨を踏まえれば、この点について国会に広範な裁量が認められるものではない。 ⑵ 参議院議員選挙の定数配分規定の合憲性について、従前の最高裁判決は、 ①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否か、②上記の状態に至っている場合に、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否かといった判断枠組みを採用しているが、上記①が肯定され れば当該定数配分規定は憲法98条1項により当然に無効となるのであるから、このような判断枠組みを採ることはできない。 ⑶ 本件選挙は、平成30年改正法による本件定数配分規定の下で行われた3回目の選挙であるところ、同規定の下で行われた令和元年の選挙の最大較差は3.00倍、令和4年の選挙の最大較差は3.03倍、本件選挙の最大較 差は3.13倍であり、較差は徐々に拡大している。 令和5年大法廷判決において、較差の更なる是正を図ること等が喫緊の課題であると判示されたにもかかわらず、国会はこれを無視して本件選挙までに具体的な較差是正の措置を講ずることを怠り、むしろ較差を拡大させているのであるから、同判決の判示するところに照らしても本件定数配分規定は 違憲である。 (被告の主張)⑴ 原告の主張はいずれも争う。 ⑵ 国会の定めた定数配分規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは、参議院の独自性のほか、国会が正当に考慮することができる 他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地か 定めた定数配分規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは、参議院の独自性のほか、国会が正当に考慮することができる 他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあり、かつ、当該選挙までの期間内にこれを是正する措置を講じなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られるものと解すべきである。 以上の判断枠組みは、昭和58年大法廷判決以降の通常選挙に係る大法廷 判決において、繰り返し採用されてきたところである。 ⑶ア参議院の選挙区選出議員選挙において、都道府県を選挙区割りの基本単位とすることは、国会による裁量権の行使として合理性がある上、選挙区間の投票価値の不均衡についても、平成27年改正により、平成24年及び平成26年各大法廷判決において指摘された違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、その後の平成30年改正により、 不均衡は更に改善された。そして、平成28年、令和元年及び令和4年各選挙時に係る各最高裁判決(平成29年、令和2年及び令和5年各大法廷判決)においても、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にはなかった旨判断された。 本件選挙時においても、最大較差は3.13倍にとどまるなど、上記の 選挙時と比較して投票価値の不均衡に有意な拡大傾向があるとも認められず、過去の5倍前後の較差に戻る傾向もない。 その上、較差の更なる是正を試みるとしても、平成27年改正で導入された合区による弊害が継続して生じており、選挙制度の更なる見直しには、慎重な検討を要し、改革に向けた各会派の意見を集約して成案を得 ることは極めて困難な状況にある中、国会は、改革の検討を継続 れた合区による弊害が継続して生じており、選挙制度の更なる見直しには、慎重な検討を要し、改革に向けた各会派の意見を集約して成案を得 ることは極めて困難な状況にある中、国会は、改革の検討を継続する方針を示し、過去にあったような大きな較差を生じさせることのないよう配慮している。 こうした事情を総合考慮すれば、本件選挙における本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性 に照らして看過し得ない程度に至ったとはいえないから、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとは認められない。 イ仮に、本件定数配分規定が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったと評価されるとしても、本件選挙は、令和2年及び令和5年各大法廷判決により合憲と判断された本件定数配分規定に基づいて行われ、 本件選挙時の最大較差(1対3.13)も、平成21年大法廷判決まで の累次の最高裁判決の事案において合憲とされた最大較差を大幅に下回り、令和2年及び令和5年各大法廷判決により合憲と判断されたそれぞれの選挙の最大較差と大きく異なるものとはいえないから、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあるとは考え難い状況であった。 したがって、国会において、本件選挙までの間に、本件定数配分規定に基づく選挙区間における投票価値の不均衡が前記状態にまで至ったことを認識し得たとはいえないし、仮に、いずれかの時点において認識し得たとしても、国会が較差の更なる是正のために採るべき立法措置の検討等に相応に長期の期間を要することはやむを得ないというべきであり、国会が令 和4年選挙後すぐに参議院の選挙制度の在り方等について調査・検討を開始し、これを本件選挙に めに採るべき立法措置の検討等に相応に長期の期間を要することはやむを得ないというべきであり、国会が令 和4年選挙後すぐに参議院の選挙制度の在り方等について調査・検討を開始し、これを本件選挙に至るまで継続してきたという経緯からすれば、国会における較差の是正に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当なものでなかったとは認められない。 よって、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかっ たことが国会の裁量権の限界を超えるものということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、当裁判所に顕著な事実並びに証拠(甲9のほか、後掲のもの〔枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出され るものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議 員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていること(46条)に応じて、各選挙区においてその選出議員の半数が改選されることとなるよう、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。 昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員 選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加 定数を配分した。 昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員 選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年改正まで、上記定数配分規定に変更はなかった。なお、昭和57年改正により、参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区 分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたものである。 その後、平成12年改正により、参議院議員の総定数が242人とされ、比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。 ⑵ 参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の最 大較差(以下、各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この人口の最大較差をいう。)は、2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年選挙当時、選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この選挙人数の最大較差をいう。)が6.59倍に達した後、平成6年改正 における7選挙区の定数を8増8減とする措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減とする措置及び平成18年改正における4選挙区の定数を4増4減とする措置の前後を通じて、平成7年から19年までに行われた各通常選挙当時の選挙区間の最大 較差は5倍前後で推移した。 最高裁は、定数配分規定の合憲性に関し、平成4年選挙につい する措置の前後を通じて、平成7年から19年までに行われた各通常選挙当時の選挙区間の最大 較差は5倍前後で推移した。 最高裁は、定数配分規定の合憲性に関し、平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙については、上記の不平等状態に至っていたとはいえない旨判示し た(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で行われた平成19年選挙のいずれについても、最高裁は、結 論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁、最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1 520頁)。もっとも、上記平成18年大法廷判決においては、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、上記平成21年大法廷判決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見 直しが必要となる旨の指摘がそ 決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見 直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 ⑶ 平成22年7月11日、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において行われた通常選挙につき、最高裁(平成23年(行ツ)第51号同24年1 0月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁)は、結論において選 挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、長年にわたる制度及び社会状況の変化として、参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度が同質的なものとなってきているとともに、急速に変化する社会情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでにも増して大きくなってきていること、衆議院について は、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人口の較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていること等を挙げた上で、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間 にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著し くなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし、上記通常選挙当時の選挙区 間の最大較差が示す投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 ⑷ 上記平成24年大法廷判決の後、平成24年改正法が成立し、同年11月26日に施行された。同法は、選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減とすることを内容とするものであった。 ⑸ 平成25年7月21日、平成24年改正法による改正後の定数配分規定の下での平成25年選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4. 77倍であった。 最高裁(平成26年(行ツ)第155号、第156号同年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁)は、結論において平成25年選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、平成24年大法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部 の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、同法による上記措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示 較差については改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、同法による上記措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるな どの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 ⑹ 上記平成26年大法廷判決の後、平成27年改正法が成立し、同年11月5日に施行された。平成27年改正の結果、平成22年10月実施の国勢調 査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった。平成27年改正法は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われ る通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。 ⑺ 平成27年改正後の定数配分規定の下での平成28年選挙が行われた。同 選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった。 最高裁(平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁)は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間 年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁)は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするもの であり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年大法廷判決等の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則において前記⑹のとおり規定され、今後における較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示 されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑻ 平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3 県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった。 なお、平成25年選挙においては、無効投票率が全国平均を上回っていたのは、上記4県のうち高知県のみであった。 全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の 著しい低下等の様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を行った。また、全国都道府県議会議長会や全国市長会等においても、合区の早急な解消に向けた決議等が行われた。 平成29年2月、参議院 弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を行った。また、全国都道府県議会議長会や全国市長会等においても、合区の早急な解消に向けた決議等が行われた。 平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査を行う 「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。同委員会は、参議院選挙制 度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又は選挙区の単位を都道府県に代えてより広域の ものとすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかしながら、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがある状況であっ た。 平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分するとともに、比例代表選出議員の定数を4人増員し、政党等が優先的に当選人となる べき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。 その後、協議が行われるなどしたものの、各会派間に意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律 に当選人となる べき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。 その後、協議が行われるなどしたものの、各会派間に意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の 選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてより広域の選挙区による選挙を導入することを内容とする法律案等が提出された。同年7月11日、上記特別委員会において、上記の自由民主党の提案内容に沿った公職選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ 引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。 上記法律案どおりの平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。同改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった。 ⑼ 令和元年7月21日、本件定数配分規定の下での初めての通常選挙(令和元年選挙)が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍で あった。 最高裁(令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁)は、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進 めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正法に ていくために必要となる方策等について議論し、取組を進 めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正法につき、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を3倍程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、事柄の性 質上慎重な考慮を要することに鑑み、その実現は漸進的にならざるを得ない面があることからすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないなどとして、令和元年選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑽ 令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県の投票率もそれぞれ過去最低となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった。令和元年選挙の後も、全国知事会等において、合区の解消を求める決議等が行われた。 令和3年5月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会(以下「令和 3年協議会」という。)が改めて設置され、参議院の組織及び運営の改革に関する検討項目の一つとして、較差の是正を含む選挙制度改革についての議論がされた。合区については、何らかの形で解消することを目指す意見が多かったものの、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持するか、選挙区の単位を都道府県に代えてより広域のものとするか、議員の総 定数を増やすか等の点について意見の隔たりがあ 意見が多かったものの、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持するか、選挙区の単位を都道府県に代えてより広域のものとするか、議員の総 定数を増やすか等の点について意見の隔たりがあり、最終的に、参議院選挙制度改革の具体的な方向性についての各会派の意見が一致するには至らず、令和4年6月8日付けで、論点に関する議論を整理した報告書を取りまとめて参議院議長に提出し、令和4年選挙後、選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について、速やかに協議を開始し、更に議論を継続することが確認 された。 これに加え、令和4年5月及び同年6月に開かれた参議院憲法審査会においても、合区問題を中心として選挙制度に関する意見交換等が行われたが、その議論の状況も、上記と同様であった。(乙24、25)⑾ 令和4年7月10日、本件定数配分規定の下での2回目の令和4年選挙が 行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.03倍であった。 最高裁(令和5年(行ツ)第54号同年10月18日大法廷判決・民集77巻7号1654頁)は、令和4年選挙までの間、令和3年協議会等において、参議院議員の選挙制度の改革につき、各会派の間で一定の議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないの はもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難いとしながらも、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍程度まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから令和4年選挙までの約7年 間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持 年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから令和4年選挙までの約7年 間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持 され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移しており、有意な拡大傾向にあるともいえないことを指摘し、立法府が較差の更なる是正に向けた取組を進めていくには様々な制約が想定されるとして、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要す ることが見込まれるとした。そして、そのような状況の下で、立法府が、参議院議員の選挙制度の改革に向けた議論を継続する中で、較差の拡大の防止等にも配慮して4県2合区を含む本件定数配分規定を維持したという経緯に鑑みれば、立法府が、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくための具体的な方策を新たに講ずるに至らなかったこと を考慮しても、令和4年選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡が、憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできないとして、令和4年選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。その上で、国民の利害や意見を公正かつ効 果的に国政に反映させる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等を考慮すると、較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきであるとして、立法府においては、現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含め、較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるよう を図ること等は喫緊の課題というべきであるとして、立法府においては、現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含め、較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるような立法的措置を講じてい くことが求められると付言した。 ⑿ 令和4年選挙において、合区の対象となった鳥取県での投票率は、令和元年選挙時を更に下回って過去最低を更新し、また、徳島県での投票率は、令和元年選挙時より上昇したものの、なお全国最低であった。合区の対象となった4県での無効投票率は、いずれも全国平均を上回った。 前記⑽の令和3年協議会の報告書において、令和4年選挙後、選挙制度の 在り方や参議院の組織及び運営について、速やかに協議を開始し、更に議論を継続するとされていたことから、参議院は、令和4年選挙後の同年11月11日、令和3年協議会に引き続いて上記各事項の調査・検討のため、再び参議院改革協議会(以下「令和4年協議会」という。)を設置し、そして、令和4年協議会は、同年12月16日、選挙制度の調査・検討のため、同協 議会の下に、各会派の代表からなる選挙制度に関する専門委員会(以下「令和4年専門委員会」という。)を設置した。 令和4年専門委員会は、令和5年2月から令和6年6月までの間、16回にわたって開催され、その中で、委員間での協議に先立ち、選挙制度の在り方等について、元最高裁判所裁判官、憲法学者、政治学者、鳥取県及び高知 県の各知事等からの意見聴取も実施された。その後、各会派から、選挙制度の在り方やその改革に関する具体的な論点・方向性についての意見表明がされ、これを踏まえて委員間で意見交換が行われたが、現行の選挙制度については、投票率の低下等の弊害がある合区を解消すべきとの意見が大勢であっ やその改革に関する具体的な論点・方向性についての意見表明がされ、これを踏まえて委員間で意見交換が行われたが、現行の選挙制度については、投票率の低下等の弊害がある合区を解消すべきとの意見が大勢であったものの、具体的な選挙制度の枠組みについては、都道府県単位の選挙区選 出議員選挙及び比例代表選出議員選挙を維持すべきとの意見とブロック制を導入すべきとの意見に分かれて意見の集約が困難な状態となり、令和6年6月7日、令和4年専門委員会は、上記の状況を含むこれまでの協議の結果を記載した報告書を作成し、令和4年協議会の座長に提出した。 令和4年協議会は、これを受け、同月14日、令和4年専門委員会の委員 長から専門委員会における協議経過について報告を聴取した後、上記報告書の内容を踏まえて、令和7年5月14日及び同月30日の2回にわたって参議院の在り方について意見交換を行い、同年6月6日には、各会派の協議員による意見表明を行った。そして、令和4年協議会は、同月18日に座長が取りまとめた報告書を承認し、同日、座長が、同報告書を参議院議長に提出 した(令和4年協議会は、令和4年11月から令和7年6月にかけて16回 開催された。)。同報告書では、具体的な選挙制度の枠組みについて、「現時点では意見の集約が困難である。」と記載され、今後の協議の進め方について、「令和10年通常選挙に向けて、本年の通常選挙後、新たな会派構成の下でも協議の場を速やかに設けていただき、工程案を共有しつつ、具体的な参議院改革について結論を出し、選挙制度改革の方向性を見いだすべく協議 が引き継いでいかれることを切望する。」と記載された。 以上に加え、令和4年選挙後には、参議院憲法審査会において、令和4年12月7日、令和5年4月26日、同年 方向性を見いだすべく協議 が引き継いでいかれることを切望する。」と記載された。 以上に加え、令和4年選挙後には、参議院憲法審査会において、令和4年12月7日、令和5年4月26日、同年5月17日、同年6月7日及び同年11月15日に、参議院の在り方並びに一票の較差及び合区が主たる議題として取り上げられ、鳥取県及び島根県の各県知事並びに徳島県及び高知県の 各副知事からの意見聴取等も実施されるなど、継続的に調査・検討が行われたが、同審査会においても、参議院議員の具体的な選挙制度の枠組みに関しては、各会派によって意見が分かれる状況であった。(乙26、27)⒀ 令和7年7月20日、本件定数配分規定の下での3回目の通常選挙として、本件選挙(令和7年選挙)が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は 3.13倍、選挙区間の較差が3倍以上となった選挙区は宮城県選挙区、東京都選挙区及び神奈川県選挙区の3選挙区、当該3選挙区の選挙人数の合計は約2117万人であり、全有権者数約1億0359万人のうち約20%を占めた(乙1)。 本件選挙における全国の投票率は約58.51%、無効投票率(選挙区) は約2.41%であった。そのうち合区対象県の投票率は、徳島県が全国で最も低い約50.48%、鳥取県が全国で7番目に低い約55.04%、高知県が約56.89%にとどまり、島根県のみが約59.57%で全国平均を上回った。また、合区対象県の無効投票率(選挙区)は、徳島県が全国で最も高い約4.52%、鳥取県が全国で3番目に高い約4.16%、島根県 が約2.76%に上り、高知県のみが約2.07%で全国平均を下回った。 (乙2) 2 争点(本件定数配分規定が憲法に違反して無効であるか否か)⑴ 憲法は、選挙権 、島根県 が約2.76%に上り、高知県のみが約2.07%で全国平均を下回った。 (乙2) 2 争点(本件定数配分規定が憲法に違反して無効であるか否か)⑴ 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。他方、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映さ せるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであって、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有 するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところ にあると解される。前記1⑴においてみた参議院議員の選挙制度の仕組みは、このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の 参議院議員選挙法及び昭和25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的 ては都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の 参議院議員選挙法及び昭和25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続し ているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権 の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である(令和5年大法廷判決等)。 ⑵ 以上を踏まえ、まず、本件選挙当時、本件定数配分規定の下で投票価値の著しい不平等状態が生じていたか否かについて検討する。 ア憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、 参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、 国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そして、いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委 ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異な の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委 ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住 民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的 な裁量を超えるものとは解されない。 イ参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度は、選出方法等に係るこれまでの変遷を経て同質的なものとなってきているところ、衆議院議員選挙については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにする旨の区割りの基準が定められ、少なくとも長期間にわたり2倍以上の較差が放置されること はないような措置が講じられている(衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条、4条参照)。また、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に、国政の運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。 そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員 定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議 運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。 そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員 定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い。本件定数配分規定の下で行われた令和元年選挙、令和4年選挙及び本件選挙において、選挙区間の最大較差がいずれも3倍程度で推移している状況に鑑みると、立法府においては、今後も不断に 人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているというべきである。 この観点からみると、本件定数配分規定の下で初めて行われた令和元年選挙から令和4年選挙までの間、前記1⑽のとおり、令和3年協議会等 において、参議院議員の選挙制度の改革につき、各会派の間で一定の議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い状況にあった。 その後の令和4年選挙から本件選挙までの間についてみても、前記1⑿ のとおり、改めて設置された令和4年協議会等において再び一定の議論 がされたものの、意見の集約が困難であるとされ、協議会の報告書では令和10年選挙に向けて協議が引き継いでいかれることが切望されるなどとして議論が先送りされるにとどまり、意見の集約や是正策の具体化に様々な制約を伴うのは事柄の性質上やむを得ず、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれるにせよ、較差の更なる 是正のための法改正の見通しが立つに至っていないの 正策の具体化に様々な制約を伴うのは事柄の性質上やむを得ず、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれるにせよ、較差の更なる 是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた実質的な検討が進展しているとはおよそいい難い状況が継続していた。 そして、この間、前記1⑼、⑾、⒀のとおり、平成30年改正後の本件定数配分規定の下で行われた選挙の選挙区間の最大較差は、令和元年選 挙では3.00倍であったのが、令和4年選挙では3.03倍、本件選挙では3.13倍となっており、いずれも3倍以上となっているばかりか、徐々に拡大している状況にあり、本件選挙においては、選挙区間の較差が3倍以上となった3選挙区の選挙人数の合計は全有権者数の約20%を占める状況にある。 ウそうすると、令和5年大法廷判決が説示したところの、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差が3倍程度まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態がひとまず解消されたところ、本件定数配分規定の下で合区は維持され、選挙区間の最大 較差は3倍程度で推移しており、有意な拡大傾向にあるとまではいい難いこと、立法府が較差の更なる是正に向けた取組を進めていくには、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要すると見込まれることといった諸要素を 最大限考慮しても、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映さ せる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等に照ら 込まれることといった諸要素を 最大限考慮しても、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映さ せる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等に照らせば、本件選挙当時、本件定数配分規定の下での投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものというべきである。 ⑶ 次に、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が相当期間継続してい るにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えるか否かについて検討する。 アこの検討に当たっては、憲法の規定する三権分立制度の下における司法権と立法権の関係に照らし、単に期間の長短のみならず、是正のために採るべき措置の内容、そのために検討を要する事項、実際に必要となる 手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して、国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべきものと解される(平成26年大法廷判決等)。 イ本件選挙についてこれをみると、本件選挙は、令和元年選挙及び令和4 年選挙と同様、本件定数配分規定の下で行われたものであるところ、前記1⑼、⑾のとおり、本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡について、令和2年及び令和5年各大法廷判決は、令和元年及び令和4年各選挙について、投票価値の不均衡の是正に向けた国会の姿勢に対する評価等を踏まえつつ、結論として、当該選挙の時点で違憲の問題が 生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと判断した。 そして、前記1⑺、⑻、⑽、⑿、⒀のとおり平成27年改正において導入され、当時の投票価値の不均衡の是正に大きく貢献 題が 生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと判断した。 そして、前記1⑺、⑻、⑽、⑿、⒀のとおり平成27年改正において導入され、当時の投票価値の不均衡の是正に大きく貢献した合区について、その対象県で投票率の低下や無効投票率の増加が見られ、合区による弊害が生じているとして全国知事会等からその解消を求める意見が多く出され ている状況にあるなど、較差の是正にあたって検討を要する種々の事情が あること、前記1⑾のとおり、令和5年大法廷判決は、立法府が較差の更なる是正に向けた取組を進めていくには、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要すると見込まれると説示したうえで、較差の更なる是正を図ることが喫緊の 課題であるというべきであると付言したところ、同判決から本件選挙までの経過期間は約1年9か月にとどまること、具体的な検討の進展が見られないとはいえ、前記1⑽、⑿のとおり、国会においても、参議院改革協議会等を設置するなどして投票価値の不均衡の是正に向けて引き続き議論を重ねている状況にあること等を踏まえれば、国会が、本件選挙が施行され る前に本件定数配分規定を改正するなどの是正の措置を講じなかったことが、投票価値の著しい不平等状態が相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じなかったものとして、国会の裁量権の限界を超えるとまでいうことはできない。 ⑷ これに対し、原告は、憲法47条、56条2項、1条、前文第1段落第1 文及び第2文を根拠として、本件定数配分規定は人口比例選挙に反して無効であること、憲法前文第1段落第2文を根拠として、選挙区割規定の立法を は、憲法47条、56条2項、1条、前文第1段落第1 文及び第2文を根拠として、本件定数配分規定は人口比例選挙に反して無効であること、憲法前文第1段落第2文を根拠として、選挙区割規定の立法を行うに当たり、国会に広範な裁量は認められていないなどと主張するが、以上に説示したところと異なる主張はいずれも採用することができない。 また、被告は、本件選挙は違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい 不平等状態に至っていたとはいえないなどと主張するが、その限度において採用することができない。 第4 結論以上によれば、本件選挙当時、本件定数配分規定の下での投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったといえるが、そのよ うな状態につき本件選挙が施行される前に是正の措置を講じなかったことが国 会の裁量権の限界を超えるということはできないから、本件定数配分規定が憲法に違反すると認めることはできない。 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部 裁判長裁判官菊地浩明 裁判官小西圭一 裁判官小林裕敬

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