平成29年6月8日判決言渡 平成28年(行ケ)第10147号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成29年3月2日判決 原告 カゴメ株式会社 訴訟代理人弁護士 飯村敏明 岩坪哲 速見禎祥 弁理士 宮下洋明 補佐人 田村茂夫 松本岳 塚副成 石井僚一 被告 株式会社伊藤園 訴訟代理人弁護士 遠山友寛 中村勝彦 中野亮介 呉竹辰 弁理士 内藤和彦 北谷賢次 補佐人 村山和人 叶英樹 主文 1 特許庁が無効2015-800008号事件について平成28年5月19日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 英樹 - 2 -主文 1 特許庁が無効2015-800008号事件について平成28年5月19日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 事案の概要本件は,特許に対する無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,①訂正要件適合性判断の当否,②実施可能要件適合性判断の当否,③サポート要件違反適合性判断の当否,及び,④公然実施による新規性喪失に関する認定判断の当否である。 1 特許庁における手続の経緯被告は,名称を「トマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法」とする発明について,平成23年4月20日(以下,「本件出願日」という。),特許出願をし,平成25年2月1日,その特許権の設定登録(特許第5189667号)を受けた(以下,「本件特許」という。甲1)。 原告が,平成27年1月9日に本件特許の無効審判請求(無効2015-800008号)をした(甲55)ところ,被告は,平成28年1月5日,訂正請求をした(甲53。以下,「本件訂正」という。)。特許庁は,平成28年5月19日,「特許第5189667号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1-7],[8-10],11について訂正することを認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同審決謄本は,同月27日,原告に送達された。 2 本件発明の要旨本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11記載の発明(それぞれ, - 3 -本件発明1,本件発明2などといい,まとめて本件発明ということがある。)の要旨は,以下のとおりである(下線は訂正部分を意味する。)。 「【請求項1】 11記載の発明(それぞれ, - 3 -本件発明1,本件発明2などといい,まとめて本件発明ということがある。)の要旨は,以下のとおりである(下線は訂正部分を意味する。)。 「【請求項1】糖度が9.4~10.0であり,糖酸比が19.0~30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36~0.42重量%であることを特徴とする,トマト含有飲料。 【請求項2】粘度が350~1000cPである,請求項1に記載のトマト含有飲料。 【請求項3】トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0~5.0重量%である,請求項1又は2に記載のトマト含有飲料。 【請求項4】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とを含有する,請求項1~3のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。 【請求項5】重曹(C)を含有する,請求項1~4のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。 【請求項6】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを含有する,請求項1~5のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。 【請求項7】pHが4.4~4.8である,請求項1~6のいずれか一項に記載のトマト含有飲料。 【請求項8】 - 4 -少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4~10.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36~0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の製造方法。 【請求項9】少なくとも重曹(C)を配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整す びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の製造方法。 【請求項9】少なくとも重曹(C)を配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,請求項8に記載のトマト含有飲料の製造方法。 【請求項10】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,請求項8又は9に記載のトマト含有飲料の製造方法。 【請求項11】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4~10.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36~0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の酸味抑制方法。 3 審決の理由の要旨(1) 訂正請求ア本件訂正による,具体的な訂正事項は以下のとおりである。 (訂正事項1)請求項1~7からなる一群の請求項に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求 - 5 -項1について次のとおり訂正する。 「【請求項1】糖度が9.4~10.0であり,糖酸比が19.0~30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36~0.42重量%であることを特徴とする,トマト含有飲料。」(訂正事項2)請求項8~10からなる一群の請求項に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項8について次のとおり訂正する。 「【請求項8】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4~10.0及 求項に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項8について次のとおり訂正する。 「【請求項8】少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4~10.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36~0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とするトマト含有飲料の製造方法。」(訂正事項3)請求項11に係る訂正であって,特許請求の範囲の請求項11について次のとおり訂正する。 「【請求項11】 少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより,糖度が9.4~10.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36~0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の酸味抑制方法。」イ訂正の適否 - 6 -訂正事項1~3は,糖度について「7.0~13.0」並びにグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計(以下,「グルタミン酸等含有量」という。)について「0.25~0.60重量%」とあったものを,それぞれ糖度について「9. 4~10.0」並びにグルタミン酸等含有量の合計について「0.36~0.42重量%」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 また,本件特許の設定登録時の明細書(本件訂正後も同じ。以下,本件訂正前後を区別せず,「本件明細書」という。)の表1には,実施例1~3の各ト ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 また,本件特許の設定登録時の明細書(本件訂正後も同じ。以下,本件訂正前後を区別せず,「本件明細書」という。)の表1には,実施例1~3の各トマト含有飲料について,糖度(Brix)値並びにグルタミン酸等含有量の合計値について,それぞれ,「9.4」及び「0.42」,「10.0」及び「0.37」,並びに「9.5」及び「0.36」が記載されているから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条9項で準用する同法126条5項,6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1~7,8~10 ,11について本件訂正を認める。 (2) 原告の主張した無効理由の要旨ア無効理由1(実施可能要件)本件特許は,その発明の詳細な説明の記載が,①課題と数値規定との実質的関係が理解困難である点,及び,②実施例1~3以外の実施形態が再現困難である点において,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず,請求項1~11に係る発明についての特許は同法123条1項4号に該当し,無効とすべきである。 イ無効理由2(サポート要件違反)本件特許は,本件発明1~11が,①特許請求の範囲が規定する物性値の範囲ま - 7 -での拡張ないし一般化が困難である点,及び,②特許請求の範囲が規定する原材料及び配合までの拡張ないし一般化が困難である点において,発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法3 - 7 -での拡張ないし一般化が困難である点,及び,②特許請求の範囲が規定する原材料及び配合までの拡張ないし一般化が困難である点において,発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしておらず,同法123条1項4号に該当し,無効とすべきである。 ウ無効理由3(公然実施による新規性喪失)本件発明1及び3は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされた「CelebDeTOMATO(セレブ・デ・トマト)トマトジュースあいこ(大)」(以下,「製品1」という。)又は「SWEETRUBY(カゴメ株式会社製造,キャップ表示11.2.10)」(以下,「製品2」という。)に係る発明(以下,それぞれ,「公用発明1」,「公用発明2」という。)であるから,特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。 エ無効理由4(刊行物公知による新規性喪失等)本件発明1~4,7,8及び11は,その特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物(特開2006-187233号公報。甲19)に記載された発明(以下,「甲19発明」という。)であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。 また,予備的主張として,本件発明1~4,7,8及び11は,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,同法29条2項により特許を受けることができず,その特許は同法123条1項2号により無効とすべきである。 オ無効理由5(進歩性欠如)本件発明5,6,9及び10は,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易 り特許を受けることができず,その特許は同法123条1項2号により無効とすべきである。 オ無効理由5(進歩性欠如)本件発明5,6,9及び10は,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきで - 8 -ある。 (3) 審決の判断ア無効理由1(実施可能要件)について(ア) 請求人(原告)は,本件発明の詳細な説明には,本件発明が解決しようとする課題として,トマト含有飲料において,主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,と記載されている(【0008】)が,その解決手段である数値限定「糖度が7.0~13.0であり,糖酸比が19.0~30.0であり」(【0042】)及び「グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0. 25 ~0.60重量%である」(【0043】)との実質的関係が,①本件明細書の【0088】に記載されている「やや弱い」の評点が「1点」及び「-1点」であること,②風味の合計点の算出方法が不明であり,合計点の技術上の意味も不明であること,及び,③本件明細書の【0090】の【表1】において,物性値及び風味評価のカラムに「未実施」「未測定」の記載があることにより不明であるから,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の,当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則24条の2)との規定に反する,と主張する。 しかし,①1点に「やや弱い」とあるのは,「やや強い」の誤記であること,②酸味のマイナス数値 事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則24条の2)との規定に反する,と主張する。 しかし,①1点に「やや弱い」とあるのは,「やや強い」の誤記であること,②酸味のマイナス数値は甘味及び濃厚の評価合計に加え,酸味のプラス数値は甘味及び濃厚の評価合計から減じて評価の合計点を求めるのが合理的であるところ,それを前提として評価の合計を計算すると,【表1】中の数値と整合すること,③本件発明1~11の数値規定内の「トマト含有飲料」である,実施例1,2及び3のものにおいて,酸味が抑制され(マイナスの評価),甘み及び濃厚が増して(プラスの評価),合計が2.5~3.9で総合評価が「○」とされ,上記数値規定外の比較例1,2,参考例3,7~10において合計が記載され総合評価が「×」とされていることからみて,比較例や参考例において,未測定,未実施の項目があるとしても,本件発 - 9 -明の課題と数値限定との関係が理解できないとはいえないことからすると,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則24条の2)との規定に反するということはできない。 (イ) 請求人(原告)は,本件発明1~11の糖度が7.0~13.0であり,糖酸比が19.0~30.0であり,グルタミン酸等含有量が,0.25~0.60重量%であるトマト含有飲料に含まれる下位概念たる「トマト含有飲料」は,実施例1~3の配合により調製されたもの以外にも多岐にわたり得るので,実施例1~3以外の実施形態は再現困難であると主張する。 しかし,本件発明の発明の詳細な説明の【0044】,【0060】及び【0061】 3の配合により調製されたもの以外にも多岐にわたり得るので,実施例1~3以外の実施形態は再現困難であると主張する。 しかし,本件発明の発明の詳細な説明の【0044】,【0060】及び【0061】には,本件発明を実施する際の配合手法が記載され,同じく【0067】~【0069】には,具体的な実施例1~3が示され,そして,実施例1~3で得られている,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の合計を参考にすれば,製造過程において用いるトマトペースト及び透明濃縮トマト汁の濃度や配合を調整し,同じく【0058】にあるように,酸味料,アミノ酸を適宜加えたり,あるいは,加水することにより,本件発明の範囲のものとすることが,当業者にとって過度な試行錯誤を課しているともいえない。 そうすると,請求人(原告)が主張するように,ことさら本件発明の発明特定事項ではない限定を付した下位概念に相当する発明を想定して,当該発明を得るために過度な試行錯誤を避けることができないからといって,本件発明が実施することができないとはいえないので,この点についても,請求人(原告)の主張は採用できない。 (ウ) 以上のとおりであるから,本件特許は,その発明の詳細な説明の記載が,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしているので,本件発明1~11についての特許は同法123条1項4号に該当しない。 - 10 -イ無効理由2(サポート要件違反)請求人(原告)は,特許請求の範囲が規定する物性値の範囲までの拡張ないし一般化することは困難であると主張するので,以下に検討する。 発明の詳細な説明には,「糖度が9.4~10.0であり,糖酸比が19.0 ~30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36~0.42重量%である」本件発明1~ 討する。 発明の詳細な説明には,「糖度が9.4~10.0であり,糖酸比が19.0 ~30.0であり,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.36~0.42重量%である」本件発明1~7,及び「糖度が9.4~10.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,並びに,グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.36~0.42重量%となるように,前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整する」本件発明8~11の物性値の組合せについて,官能評価が良好とされた実験データが,実施例1~3について示されている。 そして,糖度の酸度に対する比率である糖酸比について,糖度が甘みに寄与し,酸度が酸味に寄与することから,糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解でき,糖度を「9.4~10.0」の範囲に,及びグルタミン酸等含有量を「0.36~0.42重量%」の範囲にしたもので,糖酸比を「19.0~30.0」としても,本件発明の課題である「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」を提供できることは,当業者なら想定し得るものといえる。 また,請求人(原告)が主張するように,トマト含有飲料の「濃厚な味わい」には,糖度及び糖酸比以外に,温度や粘度等の多岐にわたる条件が寄与するとしても,糖度及び糖酸比がトマト含有飲料の味わいに大きく影響することは明らかであり,温度や粘度等の多岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ本件発明の課題を解決できないというものでもないので,温度や粘度等の多岐にわたる条件を,発明特定事項としなければならない理由はない であり,温度や粘度等の多岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ本件発明の課題を解決できないというものでもないので,温度や粘度等の多岐にわたる条件を,発明特定事項としなければならない理由はない。 以上のとおりであるから,本件発明で特定される「糖度が9.4~10.0」, - 11 -「糖酸比が19.0~30.0」及び「グルタミン酸等含有量が,0.36~0. 42重量%」は,実施例1~3により裏付けられたものであり,発明の詳細な説明において,本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものということはできない。 したがって,本件特許は,本件発明1~11が発明の詳細な説明に記載したものであって,特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしているので,同法123条1項4号に該当せず,無効とすることはできない。 ウ無効理由3(公然実施による新規性喪失)(ア) 製品1に基づく無効理由3についてa 製品1は,本件特許出願前に公然と譲渡されていたものと認められる。 「製品1」は,以下の事項を備えているものと認められる。 「糖度が9.4であり,糖酸比が26.7であり,グルタミン酸等含有量が,0. 249重量%である,トマトジュース。」(公用発明1)b 対比・判断(本件発明1について)公用発明1の「糖度が9.4であり」,「糖酸比が26.7であり」及び「トマトジュース」は,それぞれ本件発明1の「糖度が9.4~10.0であり」,「糖酸比が19.0~30.0であり」及び「トマト含有飲料」に相当する。 しかし,公用発明1の「グルタミン酸等含有量が0.249重量%である」ことについては,本件発明1の「グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%である あり」及び「トマト含有飲料」に相当する。 しかし,公用発明1の「グルタミン酸等含有量が0.249重量%である」ことについては,本件発明1の「グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%である」と対比する上で,有効数字を2桁として揃えると,上記公用発明1の特定は「グルタミン酸等含有量が少なくとも0.25重量%である」となるが,これは,本件発明1の「グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%である」ことと相違する(相違点1)。 よって,両者は,同一の発明ではない。 - 12 -(本件発明3について)本件発明3が引用する本件発明1について上記で検討した事項に加えて,公用発明1の「トマトジュース」は,トマト以外の野菜汁及び果汁を加えていないことは明らかであるから,公用発明1の「トマトジュース」は,本件発明3の「トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0~5.0重量%である」に相当する。 しかし,両者は相違点1を有し,同一の発明ではない。 c したがって,本件発明1及び3は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされた公用発明1ではなく,特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものではないから,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 (イ) 製品2に基づく無効理由3についてa 製品2は,本件出願日前に公然実施されていたものと認められる。 「製品2」は,以下の事項を備えているものと認められる。 「糖度が11.0であり,糖酸比が18.97であり,グルタミン酸等含有量が,0.546重量%~0.573重量%である,原材料がトマトで品名がトマトピューレである飲用を目的として製造されたジュース。」(公用発明2)b 対比・判断(本件発明1について)公用 有量が,0.546重量%~0.573重量%である,原材料がトマトで品名がトマトピューレである飲用を目的として製造されたジュース。」(公用発明2)b 対比・判断(本件発明1について)公用発明2の「原材料がトマトで品名がトマトピューレである飲用を目的として製造されたジュース」は,本件発明1の「トマト含有飲料」に相当する。 また,公用発明2の「糖酸比が18.97であり」については,本件発明1の 「糖酸比が19.0~30.0であり」と対比する上で,有効数字を3桁として揃えると,上記公用発明2の特定は「糖酸比が19.0であり」となるので,本件発明1の「糖酸比が19.0~30.0であり」に相当する。 しかし,公用発明2の「糖度が11.0であり」及び「グルタミン酸等含有量が,0.546重量%~0.573重量%である」ことは,本件発明1の「糖度が9. - 13 -4~10.0であり」及び「グルタミン酸等含有量が,0.36~0.42重量%である」ことと相違する(相違点2)。 よって,両者は,同一の発明ではない。 (本件発明3について)公用発明2の「原材料がトマトで品名がトマトピューレである飲用を目的として製造されたジュース」は,トマト以外の野菜汁及び果汁を加えていないから,本件発明3の「トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0~5.0重量%である」に相当する。 しかし,両者は,相違点2を有している。 よって,両者は,同一の発明ではない。 c したがって,本件発明1及び3は,その特許出願前に日本国内において公然実施をされた公用発明2ではなく,特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものでないから,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 エ無効理由4(刊行物公 公用発明2ではなく,特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものでないから,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 エ無効理由4(刊行物公知による新規性喪失等)(ア) 甲19発明「市販の生のトマト(桃太郎 T-93 新潟産)を用い,エステラーゼで処理し,屈折糖度(Bx)8.21°であり,グルタミン酸等含有量が328.9(mg/100g)含まれ,屈折糖度(Bx)8.41°であり,グルタミン酸等含有量が336.7(mg/100g)含まれ,屈折糖度(Bx)8.47°であり,グルタミン酸等の含有量が330.4(mg/100g)含まれ,又は,屈折糖度(Bx)8.98°であり,グルタミン酸等含有量が338.8(mg/100g)含まれ,ジュース,野菜飲料に食品で通常用いられる任意成分と共に配合される,香気物質である有機酸が遊離して香気成分が増加した,酵素処理トマト分離液。」(イ) 本件発明1と甲19発明との対比・判断(一致点) - 14 -「トマト含有飲料」である点。 (相違点3) 甲19発明の「屈折糖度(Bx)」が「8.21°」,「8.41°」,「8. 47°」又は「8.98°」であるのに対し,本件発明1の「糖度が9.4~10. 0」である点。 (相違点4)甲19発明が,「グルタミン酸等含有量が」「0.3289重量%」,「0.3367重量%」,「0.3304重量%」,又は「0.3388重量%」含まれることになるのに対し,本件発明1の「グルタミン酸等含有量が,0.36~0.42重量%である」点。 (相違点5)本件発明1は,「糖酸比が19.0~30.0であ」るのに対して,甲19発明は,そのように特定されていない点。 よって,両者は,同 有量が,0.36~0.42重量%である」点。 (相違点5)本件発明1は,「糖酸比が19.0~30.0であ」るのに対して,甲19発明は,そのように特定されていない点。 よって,両者は,同一の発明ではない。 (ウ) 相違点5について請求人(原告)は,本件出願日当時の技術常識として,国内品種のトマト果実の酸度は,0.40程度であると主張し,一般にトマト含有飲料の原材料に用いられる桃太郎トマトの酸度も,0.30から0.40程度であると主張している。 しかし,甲19発明のトマト処理液は,桃太郎T-93新潟産を水洗浄した後,40分間蒸煮した後,40℃まで冷却,ミキサーにて粉砕し,加熱トマトホモジネート1195gを得た後,このホモジネートを90℃達温殺菌後,40℃まで冷却し,ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)0.01gを加え,40℃で16時間静置して反応させ,90℃達温殺菌後,35℃まで冷却し,40メッシュ金網にて固形物を除いて得たものである。そうすると,仮にトマト果実の酸度が,0.40程度であったとしても,40分の煮沸,90℃殺菌,エステラーゼを加えた酵素処理を含む上記処理を経たトマト処理液の酸度も0.40程度であるということは - 15 -できない。 甲20によると,酸度は栽培種で0.3~0.6%程度と幅があり,甲48には,「桃太郎 T-93」の酸度が0.61とも記載されているから,甲19発明に用いられているトマトの酸度が必ずしも0.30~0.40程度であるとはいえない。 また,甲19発明の酸度を0.30~0.40程度に調整する動機付けもない。 そうすると,甲19発明のトマト分離液の酸度を0.3~0.4として,甲19発明の屈折糖度(Bx)8.21°~8.98°を除して,糖酸比が19.0~30.0であるとする に調整する動機付けもない。 そうすると,甲19発明のトマト分離液の酸度を0.3~0.4として,甲19発明の屈折糖度(Bx)8.21°~8.98°を除して,糖酸比が19.0~30.0であるとすることはできず,上記相違点5の本件発明1に係る構成を当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって,本件発明1は,甲19発明とはいえないから,特許法29条1項3号に該当せず,また,予備的主張としてされた,本件発明1が甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるともいえないから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 (エ) 本件発明2~4,7,8及び11について本件発明2~4及び7は,本件請求項1を引用し,本件発明1にさらに限定を付加するものであるので,本件発明2~4及び7についても,本件発明1と同様に,甲19発明とはいえないから,特許法29条1項3号に該当せず,また,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるともいえないから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものでもない本件発明8及び11は,「トマト含有飲料の製造方法」及び「トマト含有飲料の酸味抑制方法」についての発明であるが,上記相違点3,4及び5は,本件発明8及び11と甲19発明との相違点でもあるから,本件発明8及び11は,いずれも本件発明1と同様に,甲19発明とはいえず,特許法29条1項3号に該当しないし,また,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるともいえないから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 - 16 -(オ) 小括したがって,本件発明1~4,7,8,及び11は,甲19発明でないから,特許法29条 いから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 - 16 -(オ) 小括したがって,本件発明1~4,7,8,及び11は,甲19発明でないから,特許法29条1項3号に該当しないので,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 また,本件発明1~4,7,8,及び11は,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものでなく,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものでもないから,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 オ無効理由5(進歩性欠如)本件発明5及び6は,本件請求項1を引用し,本件発明1にさらに限定を付加するものであるので,本件発明5及び6についても,本件発明1と同様に,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではない。 本件発明9及び10は,本件請求項8を引用し,本件発明8にさらに限定を付加するものであるので,本件発明9及び10についても,本件発明8と同様に,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものではない。 したがって,本件発明5,6,9及び10は,甲19発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものでないから,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものではないので,その特許は同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(訂正要件適合性判断の誤り)(1) 本件訂正後の数値範囲の組合せが本件明細書に記載された事項 条1項2号に該当せず,無効とすることはできない。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(訂正要件適合性判断の誤り)(1) 本件訂正後の数値範囲の組合せが本件明細書に記載された事項ではなく,本件明細書の記載から自明でもないこと本件訂正の根拠となった実施例1~3の記載を見て,本件訂正後の本件発明の数 - 17 -値範囲において本件発明の効果があるとは読み取れないし,酸度の数値範囲は0. 31%~0.53%と広く,実施例1~3と同様の風味が実現されているとは考え難い。 単に本件明細書に記載されている数値範囲内で減縮すれば必ず,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内となるものではなく,訂正後の数値範囲に関する技術的事項が明細書等に記載されている必要がある(「特許・実用新案審査ハンドブック」の事例29参照)。本件明細書には,本件訂正後の数値範囲の組合せはどこにも記載されておらず,記載されているのと同然であるともいえないから,本件訂正は新規な技術的事項を導入するものである。 (2) 実施例を各構成要素に分解した上で,各要素の最大値及び最小値の範囲を設定することは,明細書の記載のない新たな事項の創出に他ならないこと本件訂正は,実施例1~3から,発明の要旨の3変数のうち,糖度及びグルタミン酸等含有量につき,最大値と最小値を採用して数値限定の上下限としたものであるが,それらの実施例に記載された数値を任意に組み合わせて上下限としたものであって,新規な技術事項を導入するものである。 (3) 本件訂正後の糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量の数値範囲の組合せが本件発明の効果を奏さないことが本件明細書の記載から明らかなこと本件訂正後は,糖度が10.0で糖酸比が19.0の場合には酸度0.526とな の糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量の数値範囲の組合せが本件発明の効果を奏さないことが本件明細書の記載から明らかなこと本件訂正後は,糖度が10.0で糖酸比が19.0の場合には酸度0.526となるが,このようなトマト含有飲料においてトマトの甘みによりトマトの酸味が隠ぺいされ得ることは,本件明細書の記載から明らかではない。本件訂正は,訂正根拠となる実施例1~3の酸度を大きく逸脱する範囲を権利範囲として設定するものであり,実施例1~3の記載に依拠したものではなく,新規事項の加入である。 2 取消事由2(実施可能要件適合性判断の誤り)(1) 特許法施行規則24条の2違反に関する判断の誤り審決は,本件特許は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を - 18 -理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない(特許法施行規則24条の2)との規定に反するということはできない,と判断した。 しかし,本件発明が解決しようとする課題がどのようなものか,本件明細書の記載から当業者は理解することができない。 本件発明の課題は,「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料・・・を提供することにある」。しかし,「フルーツトマト」の定義は明確ではなく,本件明細書においても特定されていない。また,「甘み」「酸味」「濃厚」は,それぞれどのような風味を指すのか,理解することができない。さらに,本件出願日前から,本件訂正後の発明には該当しない「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」製品1が市場に流通しており,これを含まない「濃厚な味わいでフルーツトマトのような から,本件訂正後の発明には該当しない「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」製品1が市場に流通しており,これを含まない「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」とはどのような風味を指すのか,理解することができない。 (2) 再現困難性に関する認定及び判断の誤り審決は,ことさら本件発明の発明特定事項ではない限定を付した下位概念に相当する発明を想定して,当該発明を得るために過度な試行錯誤を避けることができないからといって,本件発明を実施することができないとすることはできない,と判断した。 しかし,本件特許については,請求項に上位概念の発明が記載されており,発明の詳細な説明にその上位概念に含まれる一部の下位概念についての実施の形態のみが実施可能に記載されている。すなわち,本件特許の発明特定事項は,糖度9.4~10.0,糖酸比19.0~30.0,かつ,グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%という原材料を問わないトマト含有飲料という上位概念であるのに対して,実施例1~3に記載されているのは,脱酸トマト汁X,脱酸トマト汁Y,又は重曹が配合されたトマト含有飲料という一部の下位概念にすぎない。 そして,他の下位概念である,青果トマトから搾汁しただけのフレッシュトマト - 19 -ジュースや,トマトペーストを所定の割合で加水しただけの濃縮還元トマトジュースを実施するためには,仮にグルタミン酸やアスパラギン酸は後から添加するとしても,「糖度9.4~10.0」かつ「糖酸比19.0~30.0」の青果トマト,「糖度9.4~10.0」かつ「糖酸比19.0~30.0」のトマトペーストが必要となるが,このような青果トマトやトマトペーストが存在することは被告において何ら 酸比19.0~30.0」の青果トマト,「糖度9.4~10.0」かつ「糖酸比19.0~30.0」のトマトペーストが必要となるが,このような青果トマトやトマトペーストが存在することは被告において何ら立証されていない。 また,審決は,酸味料,アミノ酸を適宜加えたり,あるいは,加水することにより,本件発明の範囲のものとすることが,当業者にとって過度な試行錯誤を課しているともいえない,と判断した。しかし,「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」官能に影響を与えないようにグルタミン酸及びアスパラギン酸のみを所望の量調整する方法は,本件明細書には開示されていない。 当業者は,実施例1~3以外の実施の形態については,原材料の配合量が示されていないから,糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量をその都度測定した上で,風味評価の官能試験を実施しなければならず,過度の試行錯誤が要求される。 (3) グルタミン酸等の経時劣化性の看過アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)が経時変化することは,本件出願日当時,技術常識であった。 本件明細書には,グルタミン酸等含有量を経時変化させない方法や,上記経時変化を適切に予想する方法が開示されていないから,当業者は,流通時にグルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%であるトマト含有飲料をどのようにして製造し,実施すればよいのか理解できない。 (4) 本件明細書の官能評価について本件明細書の官能評価(【0090】【表1】)は,食品や飲料の官能評価において必要な考慮要素を欠いており,何らの定義のない「酸味」「甘み」「濃厚」という風味評価をしているものである。また,上記官能評価においては,総合評価の基準が - 20 -全く理解できない。 3 取消事由3(サポー ており,何らの定義のない「酸味」「甘み」「濃厚」という風味評価をしているものである。また,上記官能評価においては,総合評価の基準が - 20 -全く理解できない。 3 取消事由3(サポート要件適合性判断の誤り)(1) 拡張又は一般化の判断の誤り審決は,糖酸比について,糖度が甘みに寄与し,酸度が酸味に寄与することから,糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解でき,糖度を9.4~10.0の範囲に,及びグルタミン酸等含有量を0.36~0.42重量%の範囲にしたもので,糖酸比を19.0~30.0としても,本件発明の課題である「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」を提供できることは,当業者なら想定し得るものといえる,と判断した。 しかし,人間の味覚は糖の持つ甘味に対しては寛大で,糖含有量の高いほど嗜好度も高まるが,酸味に対してはきわめて厳格であり,ある濃度を限界にして,それ以上になると急激に嗜好度が減退するような傾向を持っている(甲2の1)。したがって,酸含有量の変化は味覚に対して強い影響を与えるものであり,酸含有量が広範囲であっても,官能試験も経ずに同様の味覚が実現できると当業者が理解することはできない。また,酸含有量が同一ならば糖酸度を高めると酸味は減少するから,酸含有量が一定の幅で変化し得るとした場合,糖酸比が高くとも同時に酸度が高ければ嗜好度は急激に減退する(=酸味を強く感じる)のであり,審決が判断するように「糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる」との関係は当然に成立するものではない。 また,そもそも,「概略の傾向」が理解できる する(=酸味を強く感じる)のであり,審決が判断するように「糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる」との関係は当然に成立するものではない。 また,そもそも,「概略の傾向」が理解できるだけで,従来存在するトマト含有飲料とは異なることが前提である「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」の課題を解決することができる数値範囲がどの程度であるかを当業者が理解できるとする根拠はない。実施例1の糖度とグルタミン酸等含有量を据え置いた状態で糖酸比を本件発明1の数 - 21 -値範囲内である19.0としたトマト含有飲料(以下,「想定例」という。)の評点は,概ね酸味「-0.2」,甘み「0.8」,濃厚「1.0」で合計「2.0」点となり,比較例1,2や参考例7と同程度か,それ未満となる。 実施例1~3のみでは,本件発明の数値限定により所望の効果が得られると理解することはできない。 (2) 発明特定事項の欠落に関する認定及び判断の誤りア一般に,トマト含有飲料中には,本件明細書【0090】【表1】で測定されたpH,Brix(糖度),酸度,糖酸比,酸度/総アミノ酸,粘度,総アミノ酸量,グルタミン酸量,アスパラギン酸量,クエン酸量というスペック以外にも,様々な成分,性状によって呈味が左右されることは本件出願日当時における技術常識であった。例えば,含有される成分としては塩分やリコピン,各種ビタミン類,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム,カリウム等の各種栄養素,フルフラール等の各種香気成分などが挙げられる。そして,これらの各種成分がトマト含有飲料の風味に影響を与えることは当業者にとって周知の技術常識である。 そうすると,仮に実施例1~3のトマト含有飲料が「濃厚な味わいでフルーツト 分などが挙げられる。そして,これらの各種成分がトマト含有飲料の風味に影響を与えることは当業者にとって周知の技術常識である。 そうすると,仮に実施例1~3のトマト含有飲料が「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」効果があるとしても,そのような効果が本件発明1の発明特定事項である糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量という三つのパラメータのみによって得られることは,本件明細書を見ても当業者は理解できない。 したがって,技術常識に照らしても,本件明細書の記載に照らしても,当業者は,「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」効果を奏するために,糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量だけを特定すれば足り,他の項目を特定しなくても当該効果を実現できると理解することはできない。 イ粘度(ア) 本件発明1,3~11においては,粘度の規定が存在しないから,例えば,本件発明1は,あらゆる粘度のトマト含有飲料を発明の要旨に含むこととな - 22 -る。 しかし,粘度が高すぎれば呑み辛くなり,飲用に堪えないことは,自明であり,糖度,糖酸比,グルタミン酸等含有量を本件発明の範囲内とほぼ同一にしても,粘度を違えると,官能評価結果は,粘度の違いによりバラつきを示した(甲58 試験1)。グルタミン酸等含有量が限定されたことによって粘度調整が不要になるとも理解できない。 (イ) 本件発明2は,粘度について350~1000cPとの特定がある。 しかし,実施例1~3の粘度は,405cP,388cP,543cPであり,粘度が350~1000cPの範囲において「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」との効果を奏することは何ら確認されていない。したがっ cP,543cPであり,粘度が350~1000cPの範囲において「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」との効果を奏することは何ら確認されていない。したがって,本件発明2は粘度を特定しているものの,その数値範囲は明細書に記載された範囲を大きく逸脱しており,当業者は,粘度が350~1000cPの範囲において課題解決されると認識できない。 また,比較例1は粘度1800cPで「粘度過多」として総合評価が「××」とされている。しかし,上記粘度1800cPは,12rpmに回転数を落として測定されたものである。一方,実施例1~3の粘度は回転数60rpmの粘度計で測定されたものである。トマト含有飲料のような非ニュートン流体は回転数を変えると粘度の数値が変化することが知られており,回転数を低くすると,同じトマト含有飲料でも粘度は変化する(甲63)。比較例1の粘度は回転数を60rpmで適切に試験すれば,1800cPより低くなり,350~1000cPの範囲に含まれる可能性もある。このような点からも,当業者は,粘度が350~1000cPの範囲において課題解決されると認識できない。 (3) 酸味の逸脱本件明細書【0041】の記載によると,ある糖度が隠ぺいしうる酸度の範囲は決まっていることが本件発明の前提である。そして,それを確認したのが実施例1~3である。 - 23 -ところが,実施例1~3によって隠ぺいされている酸度は0.344~0.448に留まっている。これに対し,本件発明1は0.313~0.526の酸度を有するトマト含有飲料が発明の要旨に含まれることになるが,このようなトマト含有飲料の酸味がトマト自身の甘味によって隠ぺいされるかは,実施例1~3を含め,本件明細書上一切確認されておらず,示唆もな を有するトマト含有飲料が発明の要旨に含まれることになるが,このようなトマト含有飲料の酸味がトマト自身の甘味によって隠ぺいされるかは,実施例1~3を含め,本件明細書上一切確認されておらず,示唆もない。したがって,本件発明1は「風味(酸味)」の評価に影響を及ぼし,発明の詳細な説明にサポートされていない酸味を含むトマト含有飲料まで拡張化されることになる。 (4) グルタミン酸等含有量の課題解決手段としての意義の不存在グルタミン酸等含有量が「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された」との課題を実現するために,どのような技術的意義があるのかは不明である。後記4(2)ア(イ)の甲58の試験2で示すとおり,グルタミン酸等含有量を本件発明の数値範囲(0.36~0.42重量%)内外で変化させたが,風味が異なるものとは認められなかった。このことは,グルタミン酸等含有量の要件が本件発明の課題解決に何ら寄与しておらず,その要件の存在により課題が解決できることを当業者が認識できないことを表している。 4 取消事由4(公然実施による新規性喪失に関する認定及び判断の誤り)(1) 公用発明1との相違点1の認定の誤り本件発明は,グルタミン酸等含有量が0.36~0.42質量%であり,公用発明1は,グルタミン酸等含有量が少なくとも0.25質量%であるから,両者は一部で重複していることを,審決は看過している。グルタミン酸等含有量の経時変化を考慮すると,製造直後の製品1のグルタミン酸等含有量は本件発明の同含有量の範囲内において一致した可能性がある。 (2) 公用発明1が実質同一発明であることの看過アグルタミン酸等含有量が0.36~0.42であることの技術的意義の不存在(ア) 本件明細書【0043】にお 致した可能性がある。 (2) 公用発明1が実質同一発明であることの看過アグルタミン酸等含有量が0.36~0.42であることの技術的意義の不存在(ア) 本件明細書【0043】においては,「アミノ酸含有量が高いと,ト - 24 -マト含有飲料の旨味(コク)が増す傾向にある。」と記載されているが,そもそも,本件明細書においては「甘み」「酸味」「濃厚」しか評価されておらず,「旨味(コク)」は評価の対象外とされている。さらに,同段落の記載によると,グルタミン酸等含有量が少ないほど,トマトの酸味が抑制され,かつ,トマト本来の甘みが際立つと理解される。 しかし,本件発明におけるグルタミン酸等含有量の下限値(0.36重量%)の根拠となる実施例3は,酸味の評点が実施例1(最も良好)と実施例2(最も不良)の中間値であり,本件明細書の酸味抑制という課題解決との技術的因果関係がない。 また,「甘み」については,糖度が同一(9.4)である実施例1と比較例2において,グルタミン酸等含有量がより低い比較例2の方が「甘み」の評価が悪く(0. 3),グルタミン酸等含有量がより高い実施例1の方が「甘み」の評価が良い(0. 8)など,本件明細書【0043】の記載に反する効果が証明されている。 本件明細書【0043】の「旨味(コク)」をあえて「濃厚」という評価項目を指すと理解するならば,「旨味(コク)」が最も高いはずの実施例1(合計0.42重量%)が最も評価が低く(濃厚1.0),「旨味(コク)」が最も低いはずの実施例3(合計0.36重量%)が最も評価が高い(濃厚1.8)という逆転現象を起こしており,「濃厚な味わい」という課題との技術的因果関係も見いだせない。 本件明細書からは,グルタミン酸等含有量が,0.36~0.42重量%であることの技術的意義を一 厚1.8)という逆転現象を起こしており,「濃厚な味わい」という課題との技術的因果関係も見いだせない。 本件明細書からは,グルタミン酸等含有量が,0.36~0.42重量%であることの技術的意義を一切見出すことができない上に,【0043】で述べられている内容と官能試験結果(【0090】)自体に矛盾が生じている。 (イ) 甲58の試験2において,グルタミン酸等含有量以外の数値範囲をほぼ同一のものに揃えた上で,グルタミン酸等含有量を,0.33,0.36,0. 41,0.42,0.43,0.45(各重量%)という6種類のサンプルを準備し,パネラーが違いを識別できるか実験したが,パネラーは何ら違いを識別できなかった。とりわけ,0.33重量%のものと0.45重量%のものも識別できなかったから,公用発明1(0.25重量%)と本件発明(0.36重量%)に,風味 - 25 -向上・酸味抑制という課題解決の上での差異がないといえる。したがって,トマト含有飲料の「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘味があり酸味が抑制された」課題に対し,グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%という数値範囲は何ら寄与していない。 イグルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%というトマト含有飲料は,本件出願日前から周知のものとなっており(甲19,66~72),本件発明1は,公用発明1のグルタミン酸等含有量を上記周知事項に置換・転換したにすぎないから,公用発明1と実質同一発明というべきである。 ウ発明の課題・本質からみた新規性の不存在本件発明が課題とする「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つ酸味が抑制された」風味のトマト含有飲料は,すでに公用発明1において本件出願日前から具現化していたのであって,本件発明は公用発明1と全く同一であ る「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つ酸味が抑制された」風味のトマト含有飲料は,すでに公用発明1において本件出願日前から具現化していたのであって,本件発明は公用発明1と全く同一である。したがって,本件発明の課題という特許出願の根本から考えて,本件発明には何らの新規性もない。本件発明のグルタミン酸等含有量は人為的な区切りにすぎない。 需要者が「フルーツトマトらしい」と感じる風味にグルタミン酸等含有量が0. 36~0.42重量%であることが何ら寄与していないことは,甲58の試験3(公用発明1が「フルーツトマトらしさ」について1位であった試験)でも確認されている。 (3) 公用発明2が実質同一発明であることの看過グルタミン酸等含有量は経時劣化する。 製品2の製造年月日は2010(平成22)年5月17日であることから,賞味期限(製造年月日から1年)である2011(平成23)年5月17日までは流通におかれていたと解するのが妥当である。累乗近似を用いた12か月相当の逆算値は0.501%であり,訂正後の請求項1における上限(0.42%)との差は微差に過ぎない。当該上限値に格別の技術的意義はないから,公用発明2と本件発明は,実質的に同一発明と認定されるべきであった。 - 26 -糖度の差も微差であり,実質同一の範囲とされるべきであった。 5 取消事由5(刊行物に基づく進歩性欠如の判断の誤り)(1) 審決は,本件発明1は,糖酸比が19.0~30.0であるのに対して,甲19発明は,そのように特定されていない点で相違する(相違点5)とした上で,相違点5について,①仮にトマト果実の酸度が0.40程度であったとしても,40分の煮沸,90℃殺菌,エステラーゼを加えた酵素処理を含む上記処理を経たトマト処理液の酸度も0.4 相違点5)とした上で,相違点5について,①仮にトマト果実の酸度が0.40程度であったとしても,40分の煮沸,90℃殺菌,エステラーゼを加えた酵素処理を含む上記処理を経たトマト処理液の酸度も0.40程度であるということはできない,②甲20によると,酸度は栽培種で0.3~0.6%と幅があり,乙3には,「桃太郎 T-93」の酸度が0.61とも記載されているから,甲19発明に用いられているトマトの酸度が必ずしも0.30~0.40程度であるとはいえない,③甲19発明の酸度を0. 30~0.40程度に調整する動機付けもない,として,甲19発明に基づく想到容易性を否定した。 (2) 新規性と進歩性の議論の混同審決の上記判断①,②は,甲19に酸度0.40,すなわち,本件発明の要旨事項の範囲内である「糖酸比20.5~22.4」が開示されているか否かを検討しているものである。審決は,新規性喪失の判断と進歩性欠如の判断を混同している。 (3) 想到容易性0.3~0.4の酸度のトマトが一般的に存在し,この事実が出願時技術水準を構築していた(甲20~26)。したがって,当該酸度を選択し,甲19発明の糖度(8.98)に当てはめ,糖酸比を19.0~30.0とすることは,単なる技術常識の適用であり,本件発明の糖酸比の下限19.0に何らの技術的意義もないから,甲19発明を相違点5のような構成とすることは,当業者にとって容易想到である。 なお,高糖度トマトの要素という普遍的課題(甲6,53,57)に基づき糖度を9.4とすることは,設計事項の域を出るものではなく,容易に推考することができる。 - 27 -(4) 審決の矛盾審決は,糖酸比を高くすれば,酸味に対して甘みが強くなるから,糖酸比を19. 0~30.0とすることで,「濃厚な味わいでフルーツトマ 考することができる。 - 27 -(4) 審決の矛盾審決は,糖酸比を高くすれば,酸味に対して甘みが強くなるから,糖酸比を19. 0~30.0とすることで,「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」を当業者は容易に想定できたと判断している。しかし,この判断と甲19発明の相違点5の判断において,甲19発明の糖酸比を本件発明の範囲にする動機付けがないとすることとは,矛盾している。 第4 被告の主張 1 取消事由1に対し(1) 本件訂正は,特許請求の範囲に記載された数値を限定するものであるから,特許請求の範囲を減縮するものであることは明らかである。 (2) 原告は,①本件訂正後の数値範囲で実施例と同様の効果を奏するとの記載がないこと,②本件訂正後の数値範囲による酸度が広範囲であること,及び,③本件訂正後の数値範囲の組合せが,本件明細書に記載された事項ではなく,その記載から自明でもないため,本件訂正が,新たな技術事項を導入するものである,と主張する。 しかし,①及び②は,特許法上の訂正要件とは何ら関係のない主張である。また,③原告がその根拠とする「特許・実用新案審査ハンドブック」の事例29は,訂正後の特許請求の範囲に記載された数値範囲の上限値と下限値がいずれも出願当初の明細書等に一切記載されていない事案に関するものであり,実施例に訂正後の数値範囲の上限値及び下限値が出願当初の明細書に記載されている本件とは関係がない。 (3) 原告は,本件訂正後の特許請求の範囲に記載された各数値範囲の上限値及び下限値の組合せの具体例が本件明細書に記載されていないから,本件訂正が新規事項の追加に当たる,と主張する。 しかし,上記主張は,特許訂正要件との関係において, 囲に記載された各数値範囲の上限値及び下限値の組合せの具体例が本件明細書に記載されていないから,本件訂正が新規事項の追加に当たる,と主張する。 しかし,上記主張は,特許訂正要件との関係において,いかなる論拠に基づくものか,明らかにされていない。 - 28 -(4) 原告は,本件明細書の記載に照らしても,本件訂正後の数値範囲の組合せが本件発明の効果を奏さない,と主張する。 しかし,上記主張は,訂正要件にかかる特許法134条の2第1項のいずれの文言とも関連するものではなく,失当である。 2 取消事由2に対し(1) 「特許法施行規則24条の2違反に関する判断の誤り」についてア原告は,本件発明の課題として記載される風味につき,①「フルーツトマト」「甘味」「酸味」とは何かが理解できず,②本件明細書に記載された風味の評価方法等があいまいであるから,上記課題が当業者において理解できない,と主張する。 しかし,①一般的な「フルーツトマト」の認識(乙6~11,14)から,当業者においては,その意義は十分認識可能な程度に明確である。しかも,「フルーツトマト」そのものではなく,「フルーツトマトのような甘み」である。「甘味」「酸味」は味覚の基本味の一つであるから,「フルーツトマトのような甘味」「トマトの酸味」及びこれが「抑制された」味も,当業者において,容易に認識可能である。 また,②本件明細書記載の風味の評価方法の技術的意味は明確であるし,「濃厚」の用語はトマトの味を表現するものとして一般的に用いられている(乙10,11,13~16)から,当業者においては,あえて定義するまでもなく,認識可能な程度の技術常識となっていたといえる。 イ原告は,本件発明の課題として記載される風味を善解すれば,製品1の風味がこれに含 ~16)から,当業者においては,あえて定義するまでもなく,認識可能な程度の技術常識となっていたといえる。 イ原告は,本件発明の課題として記載される風味を善解すれば,製品1の風味がこれに含まれるのは当然であるが,公用発明1の各数値が本件発明の数値範囲外であり,より本件発明の課題の理解を困難にする旨主張する。 しかし,特許法施行規則24条の2の規定は明細書中の発明の詳細な説明の記載に関する規定であるから,当該規定に対する違反の有無は,端的に明細書の記載からのみ判断されるものである。したがって,原告が主張するような公用発明1の本件発明の構成要件に対する充足性は,特許法施行規則24条の2違反該当性の議論 - 29 -と何ら関係がない。 (2) 「再現困難性に関する認定及び判断の誤り」についてア本件発明は,「糖度,糖酸比,並びにグルタミン酸等含有量が各数値範囲に限定されたことを特徴とするトマト含有飲料」であり,原材料については,本件特許の請求項には記載がないから,上位概念において共通するものとして総括される性質のものではない。 また,本件発明について,審査基準記載の「発明の詳細な説明にその上位概念に含まれる「一部の下位概念」についての実施の形態のみが実施可能に記載されている」と判断するためには,構成要件を充足する下位概念に,発明の詳細な説明の記載からは実施可能でないものが存在していることが必要であるが,原告はそのような下位概念を具体的に示していない。 イ原告は,本件明細書記載の実施例以外の形態について,原材料の配合が示されておらず,配合したものについて各要素の数値をその都度測定し,さらに風味評価をしなければならず,過度の試行錯誤を要求する旨主張する。 しかし,特許請求の範囲において,数値範囲はそれぞれ明確に記載され ておらず,配合したものについて各要素の数値をその都度測定し,さらに風味評価をしなければならず,過度の試行錯誤を要求する旨主張する。 しかし,特許請求の範囲において,数値範囲はそれぞれ明確に記載されているのであるから,本件明細書における本件発明実施のための配合方法等の記載及びトマト含有飲料の製造販売を業として行う当業者における技術常識を踏まえると,本件発明の実施たるトマト含有飲料の製造において,当てずっぽうの配合などが行われることはなく,過度の試行錯誤を要求するものではない。仮に,配合後の調製品の風味評価を行うとしても,風味評価自体は,当業者が一般的に用いる手法の下で官能試験を行うものであり,当業者にとって特段試行錯誤を要する内容ではない。 (3) 「グルタミン酸等の経時劣化性の看過」について経時変化する成分等が含まれる発明に関して,明細書の記載中にそのような経時変化の下でも当該成分の濃度等が維持される方法の開示が必要であることや,実施例において当該発明の実施品の流通時の数値範囲の記載が要求されることなどが特許要件であることについては,特許法上の規定及び審査基準等からは一切認められ - 30 -ない。 また,トマト含有飲料中に含まれるグルタミン酸等が経時劣化するといった現象が,出願時の技術常識になっていたとの事実は存在しない。 3 取消事由3に対し(1) 「拡張又は一般化の判断の誤り」についてア原告は,糖酸比が高くとも,酸度が高ければ嗜好度が急激に減退するとして,審決が,本件発明の数値範囲内において,糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解できる,と認定した点は誤りである旨主張する。 しかし,原告が示した,甲2の1に記載された図1.2.6及び,当該図と図 的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解できる,と認定した点は誤りである旨主張する。 しかし,原告が示した,甲2の1に記載された図1.2.6及び,当該図と図1. 2.4を合成した図(以下,「原告合成図」という。)は,横軸及び縦軸に数値の記載がなく,各軸が何を示しているかは不明であり,原告合成図が何を示しているのか全く不明であるし,本件発明に当てはまるものではない。 また,原告が引用する甲2の1の「人間の味覚は酸味に対し極めて厳格であり,ある濃度を限界にして,それ以上になると急激に嗜好度が減退するような傾向も持っている。」との記載については,トマト汁に特化したものでなく,また,トマト汁全般に該当するものではないため,本件発明のトマト含有飲料に当てはまるものではない。 さらに,原告は,審決の「糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘味が強くなる」との認定が,「酸含有量が同一ならば」という前提があって初めて成り立つ,と主張する。しかし,糖酸比は糖度の酸度に対する比率であることから,糖度が甘みに寄与し,酸度が酸味に寄与することから,糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化する,との審決の説明は,糖酸比のようなパラメータ同士の比率を示した値の論理的な性質そのものの説明であり,原告が主張するような「酸含有量が同一ならば」との前提は不要である。 イ原告は,審決が本件発明の数値範囲のうち,実施例に記載のない範囲に - 31 -つき,概略の傾向が理解できる,と認定した点について,原告独自の論理を用いて「想定例」なる事例を創出し,特許請求の範囲において課題が解決できない,と主張する。 原告は実施例と比較例の官能評価の結果から,想定例の酸味評価を「-0.2」と想定してい ,原告独自の論理を用いて「想定例」なる事例を創出し,特許請求の範囲において課題が解決できない,と主張する。 原告は実施例と比較例の官能評価の結果から,想定例の酸味評価を「-0.2」と想定しているところ,その理由は想定例の糖酸比が「実施例2(22.3)比較例1(17.6)のほぼ中間(19.0)である」からとのことである。しかし,なぜ糖酸比が実施例2と比較例1の中間という理由だけで,糖度の違いなどを十分考慮せずに,想定例の酸味を想定できるのか,十分な説明がされておらず,到底理解できるものではない。 ウ本件明細書においては,実施例1~3として,本件発明の数値範囲に対応した具体的な実施例の記載がされている。当該記載に加え,本件出願日当時の当業者の技術常識を踏まえると,実施例1~3の数値,並びに比較例1及び2の数値に鑑み,本件発明の数値範囲内であれば本件明細書に記載された発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例が記載されているため,本件発明の数値範囲内については発明の詳細な説明において開示された内容を拡張又は一般化できることは明らかである。 (2) 「発明特定事項の欠落に関する認定及び判断の誤り」についてア原告は,トマト含有飲料の一般論として,塩分,リコピン,各種ビタミン類,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム,カリウム等の各種栄養素,フラフラール等の各種香気成分なども呈味を作用しうるため,本件明細書を読んでも,三つのパラメータのみによって効果が得られることは,当業者には理解できない旨主張する。 しかし,本件発明はトマト含有飲料が本件明細書記載の風味を有するとの効果を奏するためには,所定の数値範囲の糖度等が重要であることを見いだしたものであり,当該効果を達成するために,他の要因の関与がないことを述べたものではな ト含有飲料が本件明細書記載の風味を有するとの効果を奏するためには,所定の数値範囲の糖度等が重要であることを見いだしたものであり,当該効果を達成するために,他の要因の関与がないことを述べたものではない。 また,トマト含有飲料を含めた食品分野の特許実務においては,温度や粘度等の多 - 32 -岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ特許発明の課題を解決できないというものでもないので,温度や粘度等の多岐にわたる条件を,発明特定事項としなければならない理由はない。 イ原告は,特許請求の範囲において粘度が特定されていない本件発明1,3~11について,原告が自ら行った実験結果(甲58 試験1)に基づく主張をする。 しかし,原告が甲58の試験1において用いた粘度の調整方法である遠心分離は,粘度調整に用いられるものではなく,遠心分離の方法により調製された検体は,当業者が想定するような一般的なトマト含有飲料からはかけ離れたものであり,粘度の違いのみによる官能評価の変化を評価する対象としては,極めて不適切な組成となっている。 ウ原告は,本件発明1はあらゆる粘度のトマト含有飲料を発明の要旨を含むと主張するが,特許請求の範囲の解釈については,当然に当業者の技術常識も考慮すべきであり,本件発明が一定の風味を有するトマト含有飲料を得ようとするものであることからすれば,その粘度については,当業者の技術常識として,一般的にトマト含有飲料として成立し得る範囲内のものであることは当然であって,原告が主張するような「あらゆる粘度」のものを含むものではない。 エ原告は,本件発明2について,本件明細書記載の実施例の粘度が,それぞれ405cp,388cp,543cpであるから,特許請求の範囲に記載された350~1000cpの範囲において効果を奏するかは確 エ原告は,本件発明2について,本件明細書記載の実施例の粘度が,それぞれ405cp,388cp,543cpであるから,特許請求の範囲に記載された350~1000cpの範囲において効果を奏するかは確認されていないと主張する。 上記主張自体,発明特定事項とは何ら関係ないものであるが,サポート要件に関し,請求項は,発明の詳細な説明に記載された一又は複数の具体例に対して拡張又は一般化した記載とすることは認められている。本件発明2の記載についても,請求項に係る発明が,発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内であることから,上記のような「拡張又は - 33 -一般化」が認められることは明らかである。 オ原告は,比較例1の粘度を12rpmに回転数を落として測定しているから,回転数を60rpmで測定すれば,350~1000cpの範囲に含まれる可能性があると主張する。 しかし,1800cpといった高粘度の物質については,粘度測定の精度を考慮して通常の測定条件(回転数60rpm)よりも回転数を下げた低速回転(12rpm)で測定することは,当業者の技術常識である。これに対し,甲63の検体は,通常12rpmで測定されるものではない。 (3) 「酸度の逸脱」について原告は,実施例1~3において隠ぺいされている酸度は0.344~0.448にとどまっているが,本件発明1は0.313~0.526の酸度まで含んでおり,本件明細書にはその範囲まで一切の開示,示唆がないと主張する。 この主張は,原告が「拡張又は一般化の判断の誤り」と題して,糖酸比や糖度についてした主張につき,糖酸比が糖度と酸度の比率であることから各々の酸度を算出したうえで当該酸度に着目してされた実質的に同内容の主張であり,これ 「拡張又は一般化の判断の誤り」と題して,糖酸比や糖度についてした主張につき,糖酸比が糖度と酸度の比率であることから各々の酸度を算出したうえで当該酸度に着目してされた実質的に同内容の主張であり,これに対する被告の主張は,前記(1)ウのとおりである。 (4) 「グルタミン酸等含有量が課題解決手段としての意義の不存在」について原告は,甲58の試験2において,グルタミン酸等含有量を本件発明の数値範囲内で変化させても風味が異なるものと認められなかったとして,グルタミン酸等含有量の要件が本件発明の課題解決に何ら寄与しておらず,該要件の存在により課題が解決できることを当業者が認識できない,と主張する。 しかし,サポート要件は,請求項の記載に関し「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」として,請求項の記載と明細書の記載について規定している。他方,甲58の試験2の結果を根拠とする原告の上記主張内容は,本件発明の請求項及び本件明細書の記載事項とは何ら関係のない内容であり,サポート要件とは何ら関係のない主張である。 - 34 -甲58の試験2については,試験内で実施した各比較に用いる検体間のグルタミン酸等含有量以外の各パラメータ(糖度,糖酸比)の数値が完全に一致している訳ではないので,グルタミン酸等含有量の変化のみを評価することが可能な実験精度に達していない。したがって,甲58の試験2の結果は,グルタミン酸等含有量の要件の意義を説明する根拠とはなり得ない。 4 取消事由4に対し(1) 「公用発明1との相違点1の認定の誤り」についてア原告は,審決が,グルタミン酸等含有量が少なくとも0.25重量%であると認定していることから,相違点1に鑑みても,本件発明と公用発明1はその一部において重複する旨主張する。 の誤り」についてア原告は,審決が,グルタミン酸等含有量が少なくとも0.25重量%であると認定していることから,相違点1に鑑みても,本件発明と公用発明1はその一部において重複する旨主張する。 しかし,審決は,少なくとも0.25重量%である旨認定したのみであって,両者は一部で重複しているとするのは原告の独自の推論にすぎず,これを立証する証拠は何ら提出されていない。 イまた,原告は,グルタミン酸等含有量が経時劣化することを前提として,製品1は製造直後であれば本件発明の範囲内に含まれた可能性があると主張する。 しかし,本件明細書において,「グルタミン酸等含有量が製造時に0.36~0. 42重量%であるものであれば技術的範囲に含む」と解される根拠はない。また,グルタミン酸等含有量が0.36重量%を下回る製品については,本件発明に含まれるものではないから,本件発明とは何ら関係のない主張である。 なお,原告のこれらの主張は,トマト含有飲料のグルタミン酸等含有量が経時劣化することを前提としているが,乙19に示す試験結果からそのような現象の存在は認められず,当業者の技術常識でもない。 (2) 「公用発明1が実質同一発明であることの看過」についてア 「グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%であることの技術的意義の不存在」について原告は,本件発明におけるグルタミン酸等含有量の数値範囲には技術的意義が存 - 35 -在しないと主張する。しかし,原告の当該主張と公然実施による新規性喪失がいかなる関係にあるのか,その論旨は不明である。 また,本件明細書は本件発明の実施形態のトマト含有飲料のグルタミン酸等含有量が特許請求の範囲に記載したような数値範囲に収まる程度であれば,本件発明が解決する課題との関係で望ましい含有量であることを表 また,本件明細書は本件発明の実施形態のトマト含有飲料のグルタミン酸等含有量が特許請求の範囲に記載したような数値範囲に収まる程度であれば,本件発明が解決する課題との関係で望ましい含有量であることを表しているのみであり,当該数値の範囲外はもとより,当該数値の範囲内におけるグルタミン酸等含有量が,旨味(コク),甘み,酸味と比例するとも反比例するとも述べていない。 さらに,取消理由3での主張と同様に,甲58の試験2を根拠とした原告の主張についても,当該試験結果をもって,グルタミン酸等含有量の数値範囲に技術的意義は存在しないことが立証できるものではない。 イ 「周知・慣用技術」及び「実質的同一発明」に係る主張ついて原告は,周知慣用技術においては,トマトジュースにグルタミン酸等が含まれており,またその含有量の数値は,グルタミン酸等含有量の数値限定が技術的意義を有しないことからすると,本件発明の数値範囲と実質的に同一であるから,これを公用発明1のグルタミン酸等含有量(相違点1)と置き換えることで,新規性は否定される旨主張する。 しかし,原告の上記主張の前提となるグルタミン酸等含有量の数値範囲に技術的意義がないことについては何ら立証されていない。また,どのような論理で甲19及び甲66記載のグルタミン酸等含有量「0.33重量%」及び「0.35重量%」の数値が本件発明の数値範囲である「0.36~0.42重量%」と実質的に同一として当該数値範囲に含まれるものであり,また,本件発明の出願後の技術である甲70~72記載の技術をもって公用発明1と本件発明が実質的同一といえるのかに関しては何ら合理的な説明はない。 ウ 「発明の課題・本質からみた新規性」に係る主張について原告は,①本件発明の課題という根本から考えて,本件発明には新規性がない,②審決が公用 一といえるのかに関しては何ら合理的な説明はない。 ウ 「発明の課題・本質からみた新規性」に係る主張について原告は,①本件発明の課題という根本から考えて,本件発明には新規性がない,②審決が公用発明1との間で認定した相違点1は人為的な区切りでしかない,③公 - 36 -用発明1は原告が実施した実験において「フルーツトマトらしさ」について1位の評価であったことからグルタミン酸等含有量には技術的意義がない,と主張する。 しかし,新規性の判断において,発明の課題・本質は何ら関係がない。本件発明は,請求項記載の数値範囲を有するトマト含有飲料を提供するものであり,公用発明1のような,請求の範囲に含まれない「フルーツトマトを原料としたトマトジュース」や,「フルーツトマトらしさ」に関する試験結果(甲58 試験3)とは何ら関係がなく,上記の原告の主張①~③は,いずれも理由がない。 (3) 「公用発明2が実質同一発明であることの看過」について原告は,公用発明2が,本件発明と実質的に同一であると主張する。 しかし,公用発明2は,グルタミン酸等含有量及び糖度が本件発明の数値範囲外である。また,製品2の製造時グルタミン酸等含有量を,原告の主張どおりに計算しても,なお本件発明の数値範囲外にある。したがって,公用発明2は,本件発明と同一ではない。 5 取消事由5に対し(1) 「新規性と進歩性の議論の混同」について原告は,審決の判断①~③のうち,判断①及び②に鑑みると,審決は進歩性の判断と新規性の判断を混同している旨主張する。 しかし,審決の判断①及び②については,甲19発明は,本件発明との間では糖酸比の数値範囲が未特定という相違点5を有するところ,当該相違点が容易想到といえるかの判断の前提として,原告による「一般的にトマト含有飲料の原材料に び②については,甲19発明は,本件発明との間では糖酸比の数値範囲が未特定という相違点5を有するところ,当該相違点が容易想到といえるかの判断の前提として,原告による「一般的にトマト含有飲料の原材料に用いられるトマトである「桃太郎 T-93」の酸度が0.3~0.4%である。」との主張の当否を判断しているにすぎない。これは,審決の判断②がトマト含有飲料ではなく,本件発明の構成要件を充足し得ないトマトの酸度を認定していることからも明らかである。その上で,審決は判断③のとおり,相違点5につき,容易想到性の判断の前提として,動機付けの有無を判断しているのであるから,審決の判断①~③は新規性と進歩性を混同した判断ではない。 - 37 -(2) 「想到容易性」について原告は,酸度が0.3~0.4のトマトは一般的に存在しており,これを甲19発明の糖度に当てはめ,本件発明の糖酸比を得ることは容易推考事項であると主張する。 しかし,原告は,どのような理由,動機付けにより,当業者が,市場に一部存在するトマトの酸度0.3~0.4を甲19発明の糖度に当てはめる着想を得るのか,何ら説明はしていない。 また,原告は,高糖度トマトの要望という普遍的課題から糖度9.4を得ることは容易推考であると主張するが,どのような論理で糖酸比と糖度について,本件発明の数値範囲とする着想を得ることが容易といえるのか,原告において何ら述べられていない。 (3) 「審決の矛盾」について原告は,審決の判断に矛盾があると主張する。 しかし,審決における①糖酸比を高くすれば相対的に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解でき,糖度を「9.4~10. 0」の範囲に,及びグルタミン酸等含有量を「0.36~0.42重量%」の範囲にしたもので,糖酸 に酸味に対して甘みが強くなる方向に飲料の味が変化するという概略の傾向は理解でき,糖度を「9.4~10. 0」の範囲に,及びグルタミン酸等含有量を「0.36~0.42重量%」の範囲にしたもので,糖酸比を「19.0~30.0」としても,本件発明の課題である「主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料」を提供できることは,当業者なら想定し得る,との判断は,本件明細書における糖酸比に関する記載及び実施例1~3を前提として,当業者が,実施例の記載等から,本件発明に記載された数値範囲まで,拡張又は一般化することが可能か否かを判断するものである一方,②甲19発明との相違点5に対する動機付け(容易想到性)を否定した判断は,糖酸比の特定に関し何らの開示がされていない場合における糖酸比を19.0~30.0の範囲に特定することの動機付けの有無を判断しているのであるから,①と②において判断されている内容はそれぞれ全く異なる - 38 -ものであり,審決の判断は矛盾するものではない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(訂正要件適合性判断の誤り)について(1) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載について本件明細書には,次の記載がある(甲45)。 【技術分野】【0001】本発明は,トマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法に関する。 【背景技術】【0002】JAS規格で指定されたトマトジュース・・・は,トマト本来の風味が再現されていることから,古今東西,年齢や性別を問わず,多くの人に愛飲されている。しかしながら,JAS規格で指定されたトマトジュースは,食物繊維などの水不溶性固形分が多く含まれているので本 来の風味が再現されていることから,古今東西,年齢や性別を問わず,多くの人に愛飲されている。しかしながら,JAS規格で指定されたトマトジュースは,食物繊維などの水不溶性固形分が多く含まれているので本来的に粘度が高く,そのため,比較的に飲み難いという欠点があり,さらには近年の消費者の嗜好性の変化も相まって,市場が徐々に縮小している実情がある。 【0003】一方,主原料となるトマトジュースに果汁やにんじん汁等の野菜汁を配合した,種々のトマトミックス飲料が開発されている。この種のトマトミックス飲料においては,果汁や野菜汁の配合によって低粘度化され得るとともに,トマトの酸味が果汁の甘み等によって隠蔽され得るため,飲み易さが向上される傾向にある。しかしながら,この種のトマトミックス飲料は,むしろ果汁飲料或いは野菜汁飲料に近いものであり,それ故,トマト飲料として消費者への訴求力に欠けるものであった。 【0004】他方,果汁や野菜汁を配合せずに飲み易さを向上させるために,トマト含有飲料の粘度を小さくすることが検討されており,例えば,特許文献1には,予め粘度を250~3000mPa・sの範囲に調整した原料トマトジュースに,植物組織崩壊酵素を添加し,103~1061/sの剪断速度範囲で処理することを特徴とする,低粘度トマトジュースの製造方法が記載されている。 【先行技術文献】【特許文献】【特許文献1】特開2009-011287号公報 - 39 -【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】上記特許文献1においては,水不溶性固形分が可溶化されるとともに低粘度化が促進され,その結果,喉越しが改善されたトマトジュースが得られると記載されている。しかしながら,かかる特許文献1の手法では,・・・処理が煩雑で簡便なものではなく,また,熱 溶化されるとともに低粘度化が促進され,その結果,喉越しが改善されたトマトジュースが得られると記載されている。しかしながら,かかる特許文献1の手法では,・・・処理が煩雑で簡便なものではなく,また,熱処理に伴って風味劣化や加熱臭等が生じ得るという問題があった。 【0007】また,上記特許文献1の低粘度トマトジュースは,低粘度化により喉越しが改善されたものになると記載されているものの,トマトの風味,特に甘みと酸味の調整についての記載は一切なく,そのため,JAS規格で指定されたトマトジュースと同様に,トマトの酸味が苦手な者にとって飲み易いものであるとは言い難い。 【0008】本発明は,かかる実情に鑑みてなされたものであり,その目的は,主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0009】本発明者らは,鋭意研究を重ねた結果,トマト含有飲料の糖度及び糖酸比を従来のトマト含有飲料から逸脱した特定範囲に調整することにより,上記課題が解決されることを見出し,本発明を完成するに至った。 【0010】すなわち,本発明は,以下(1)~(24)を提供する。 (1)糖度が7.0~13.0であり,糖酸比が19.0~30.0であることを特徴とする,トマト含有飲料。 【0011】(2)グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25~0.60重量%である,上記(1)に記載のトマト含有飲料。 - 40 -【0018】(9)糖度が7.0~13.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,前記糖度及び前記糖酸比を調整 0.60重量%である,上記(1)に記載のトマト含有飲料。 - 40 -【0018】(9)糖度が7.0~13.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の製造方法。 【0022】(13)グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計を,0.25~0.60重量%に調整する,上記(9)~(12)のいずれか一項に記載のトマト含有飲料の製造方法。 【0026】(17)糖度が7.0~13.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,前記糖度及び前記糖酸比を調整することを特徴とする,トマト含有飲料の酸味抑制方法。 【0030】(21)グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計を,0.25~0.60重量%に調整する,上記(17)~(20)のいずれか一項に記載のトマト含有飲料の酸味抑制方法。 【発明の効果】【0034】本発明によれば,主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料及びその製造方法が実現される。 また,本発明の他の態様によれば,トマト含有飲料の酸味が効果的に抑制される。 【0035】そして,本発明のうちトマト以外の野菜汁及び/又は果汁を実質的に含まない態様によれば,粘度が高く飲み難い上記従来のトマト飲料,酸味が強く飲み難い上記従来のトマト飲料,果汁飲料或いは野菜汁飲料に近い上記従来のトマトミックス飲料,及び,粘度が低く酸味が強い上記特許文献1に記載のトマト飲料,のいずれとも異なるトマト含有飲料,すなわち濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立ち,酸味が抑制されており,さらには飲料形態としておいしく飲める純粋なトマト含有飲料という新たな市 に記載のトマト飲料,のいずれとも異なるトマト含有飲料,すなわち濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立ち,酸味が抑制されており,さらには飲料形態としておいしく飲める純粋なトマト含有飲料という新たな市場カテゴリーが創設されるので,近年の消費者の嗜好性の多様化に沿うことができる。 【発明を実施するための形態】【0036】以下,本発明の実施の形態について説明する。なお,以下の実施の形態は,本発明を説明するための例示であり,本発明 - 41 -はその実施の形態のみに限定されるものではない。 【0037】本実施形態のトマト含有飲料は,主原料としてトマト果実由来物を含有する飲料であって,糖度が7.0~13.0であり,糖酸比が19.0~30. 0であることを特徴とする。 【0038】ここで,本明細書において,トマト果実由来物とは,トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし,皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁,及び,これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる),JAS規格で指定されたトマトジュース,トマトピューレ,トマトペースト及び濃縮トマト等を包含する概念である。これらは,さらに他の成分(例えば,少量の食塩や香辛料,食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト果実由来物の性状は,特に限定されず,例えば,液状,ゲル状,ペースト状(擬固体状),半固体状,固体状のいずれであってもよい。なお,主原料とは,トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。 【0039】また,本明細書においては,糖度とは,Brix値を意味する。ここで,Brix値とは,溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は,市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。 Brix値を意味する。ここで,Brix値とは,溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は,市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。 【0040】さらに,本明細書において,糖酸比とは,糖度/酸度を意味する。 ここで,糖度は上述した通りであり,また,酸度は,0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される,クエン酸換算での濃度(%)を意味する。 【0041】本発明者らが上記構成のトマト含有飲料を作製したところ,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,格別に飲み易いトマト含有飲料が,再現性よく簡便に実現されることが判明した。かかる効果が奏される作用機構の詳細は,未だ明らかではないものの,例えば,以下のとおり推定される。 - 42 -すなわち,トマト含有飲料の酸味を目立たなくさせるには,高濃度のトマト搾汁(濃縮トマト)を使用する等して,単に糖度(Brix)を上げればよいと考えられる。しかしながら,この場合,粘度が非常に高くなり,飲用に適さないものとなってしまう。そのため,上述したように,従来技術では,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあるトマト含有飲料は,粘度が高く飲み難い高Brixトマト飲料,或いは,トマト以外の果汁或いは野菜汁が配合されたトマトミックス飲料(上記従来の果汁飲料或いは野菜汁飲料に近いトマトミックス飲料)としてのみ実現されていたものと考えられる。これに対し,本実施形態のトマト含有飲料においては,糖度とともに糖酸比を特定範囲に調整しており,そのため,かかる糖度及び糖酸比の調整の際に著しい高粘度化を抑制し得る。しかも,糖酸比の調整により,謂わばトマト自身の甘みによってトマトの酸 においては,糖度とともに糖酸比を特定範囲に調整しており,そのため,かかる糖度及び糖酸比の調整の際に著しい高粘度化を抑制し得る。しかも,糖酸比の調整により,謂わばトマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽され得るので,得られるトマト含有飲料の酸味が抑制され,トマト本来の甘みが際立ち,飲み易さが高められる。 これらの作用が相まった結果,上記構成のトマト含有飲料においては,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマトの酸味が抑制されたものと考えられる。但し,作用は,これらに限定されない。 【0042】本実施形態のトマト含有飲料は,糖度が7.0~13.0であり,且つ,糖酸比が19.0~30.0であることが必要とされる。糖度が7.0未満であり糖酸比が30.0を超えるものは,比較的に低粘度なものとなる傾向にあり,味がぼやけすぎてしまい,飲み難いものとなる。また,糖度が7.0未満であり糖酸比が19.0未満のものは,比較的に低粘度なものとなる傾向にあるが,甘みが乏しく酸味も強いので,飲み難いものとなる。他方,糖度が13.0を超えており糖酸比が30.0を超えるものは,甘みは強いものとなる傾向にあるが,比較的に高粘度となり味がぼやけすぎてしまい,飲み難いものとなる。また,糖度が13. 0を超えており糖酸比が19.0未満のものは,甘みは強いものとなる傾向にあるが,比較的に高粘度となり酸味も強いので,飲み難いものとなる。トマトの甘み,酸味,及び濃厚な味わいのバランスをより一層高める観点から,糖度が9.0~1 - 43 -3.0であり,且つ,糖酸比が19.0~30.0であることが好ましい。 【0043】本実施形態のトマト含有飲料は,アミノ酸を含んでいてもよい。アミノ酸含有量が高いと,トマト含有飲料の旨味(コク)が増す傾向にある。この場 比が19.0~30.0であることが好ましい。 【0043】本実施形態のトマト含有飲料は,アミノ酸を含んでいてもよい。アミノ酸含有量が高いと,トマト含有飲料の旨味(コク)が増す傾向にある。この場合,よりグルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が,0.25~0.60重量%(g/100g)であることが好ましい。グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計がこの程度の低含有量であることにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘みがより一層際立つ傾向にある。 【0044】本実施形態のトマト含有飲料は,トマト果実由来物として,トマトペースト(A)及び透明トマト汁(B)を含むことが好ましい。トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とを含ませることにより,上述した糖度及び糖酸比の関係を満たすトマト含有飲料が再現性よく簡易に得ることができる。 【0052】本実施形態のトマト含有飲料は,pH調整剤を含むことが好ましい。 pH調整剤の配合により,トマト含有飲料のpHが酸性側にふれることによる酸味の増強が抑制され,トマト含有飲料の飲み易さが向上する傾向にある。かかるpH調整剤としては,重曹(C)が好ましい。pH調整剤として重曹(C)を採用することにより,上述したpH調整機能に加えて,さらにトマトのエグ味(青臭さ,生臭さ等)が緩和されてトマト含有飲料の飲み易さが向上する傾向にある。 【0054】また,本実施形態のトマト含有飲料は,脱酸トマト汁(D)を含有することが好ましい。ここで,脱酸トマト汁(D)とは,上述した透明トマト汁を脱酸処理したもの及びその濃縮物を意味する。また,脱酸処理とは,透明トマト汁に含まれ得るクエン酸等のヒドロキシ酸を除去或いは低減する処理を意味する。ヒドロキシ酸はトマト含 は,上述した透明トマト汁を脱酸処理したもの及びその濃縮物を意味する。また,脱酸処理とは,透明トマト汁に含まれ得るクエン酸等のヒドロキシ酸を除去或いは低減する処理を意味する。ヒドロキシ酸はトマト含有飲料中において酸味成分として機能し得るので,ヒドロキシ酸が除去或いは低減された脱酸トマト汁(D)が含まれていることにより,トマト含有飲料の総量に対する酸味成分の含有割合が低くなり,その結果,トマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘みがより一層際立つ傾向にある。なお,脱酸トマ - 44 -ト汁(D)は,1種のみを単独で,或いは2種以上を組み合わせて,用いることができる。 【0056】上述した本実施形態のトマト含有飲料は,粘度が350~1000cP,より好ましくは350~600cPに調整されていることが好ましい。この程度の低粘度であることにより,飲み易さが高められる傾向にある。 【0057】本実施形態のトマト含有飲料は,pHが4.4~4.8,より好ましくは4.5~4.6に調整されていることが好ましい。この範囲にある本実施形態のトマト含有飲料は,殊に,濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立ち,飲料形態としておいしく飲めるものとなる。なお,pHが高すぎるものは衛生上の観点から強い殺菌処理が必要となる傾向にあるので,生産性及び経済性の観点から好ましくなく,この殺菌処理にともない焦げや加熱臭や焼け臭が強くなる傾向にもあるので,これらの観点からも,本実施形態のトマト含有飲料のpHは4.4~4.8の範囲内に調整されていることが好ましい。 【0058】なお,上述した本実施形態のトマト含有飲料は,上記の成分(A)~(D)以外に,当業界で公知の他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては,例えば,食塩,上述したトマトペースト(A)や透明トマト汁 お,上述した本実施形態のトマト含有飲料は,上記の成分(A)~(D)以外に,当業界で公知の他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては,例えば,食塩,上述したトマトペースト(A)や透明トマト汁(B)や脱酸トマト汁(D)以外のトマト搾汁又は濃縮トマト(例えば,JAS規格のトマトジュース,JAS規格のトマトピューレ等),トマト以外の野菜汁及び果汁,果実パルプ等が挙げられる。また,JAS規格により許容されている成分としては,例えば,ビタミン類,亜鉛,カルシウム,鉄,銅,マグネシウムなどのミネラル類などの強化剤あるいはその塩,砂糖,はちみつ,天然香料等が挙げられる。その他,JAS規格外の添加物ではあるが,クエン酸やクエン酸Naなどの酸味料やアミノ酸類,pH調整剤,酸化防止剤,酵素,ペクチン等の安定剤,砂糖以外の糖類,天然色素や合成色素等の着色料,天然香料や合成香料等の香料,二酸化炭素等が挙げられる。このように添加可能な他成分については,例えば,『食品表示マニュアル』(食品表示研究会編集,中央法規出版,平成元年2月改訂)にも記載されている。これ - 45 -らは,1種のみを単独で,或いは2種以上を組み合わせて,用いることができる。 【0059】トマト本来の風味が損なわれるのを抑制してトマト本来の風味をより一層際立たせる観点から,上述した本実施形態のトマト含有飲料は,トマト以外の野菜汁及び/又は果汁を実質的に含まないことが好ましい。・・・トマト以外の野菜汁及び/又は果汁を実質的に含まないものは,濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立ち,飲料形態としておいしく飲める純粋なトマト含有飲料という新たないう市場カテゴリーに属するものとなり,消費者への訴求力に優れたものとなる。 【0060】さて,本実施形態のトマト含有飲料は,糖度が7.0~13 としておいしく飲める純粋なトマト含有飲料という新たないう市場カテゴリーに属するものとなり,消費者への訴求力に優れたものとなる。 【0060】さて,本実施形態のトマト含有飲料は,糖度が7.0~13.0及び糖酸比が19.0~30.0となるように,糖度及び糖酸比を調整することにより得ることができる。糖度及び糖酸比の調整方法は,特に限定されず,任意の手法を採用することができる。例えば,主原料として使用するトマト果実由来物の種類・配合量を適宜調整することによって行うことができる。また,上述した他の成分を配合することによっても調整することができ,このように他の成分を使用する場合には,その他の成分の種類・配合量を適宜調整すればよい。各成分の配合方法は,使用する成分の種類や性状及び配合割合等に応じて適宜設定することができ,特に限定されない。得られるトマト含有飲料のpHや粘度は,使用する各成分の種類や性状及び配合割合によって調整することができる。 【0061】本実施形態のトマト含有飲料を再現性よく簡易に作製する観点から,糖度及び糖酸比の調整は,(I)トマトペースト(A)及び透明トマト汁(B)の配合,(II)重曹(C)の配合,(III)トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)の配合,のいずれかで或いはこれらを組み合わせて行うことが好ましい。 【実施例】【0067】(実施例1)まず,市販のトマトペースト(Brix:28,酸度:1.60,pH:4.10,Brix4.5調整時の粘度:108cP)と,市販の透明濃縮トマト汁(Clear Tomato Concentrate 60°Brix,LYCOR - 46 -ED社製,Brix:60,酸度:3.64,pH:4.15)とを準備した。 次に,上記の透明濃縮トマト汁 Tomato Concentrate 60°Brix,LYCOR - 46 -ED社製,Brix:60,酸度:3.64,pH:4.15)とを準備した。 次に,上記の透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元して,透明トマト汁(Brix:14.6,酸度:0.86,pH:4.2,Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備した。次いで,強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製,PA316)をタンクに充填し,これに3%NaOH水溶液を通液した後,イオン交換水,3%NaHCO3水溶液,イオン交換水を順次通液して,重炭酸置換を行った。そして,得られた透明トマト汁を重炭酸置換した陰イオン交換樹脂に上向流方式で複数回通液した後,100メッシュのフィルターで濾過することにより,脱酸トマト汁X(Brix:12.4,酸度:0.21,pH:6.0)を調製した。 そして,上記のトマトペースト及び脱酸トマト汁Xを表1に記載の通りの重量割合(なお,表1において,トマトペースト,透明トマト汁,脱酸トマト汁X及び脱酸トマト汁Yの配合量は,いずれもトマトストレートBrix4.5換算値である。)で配合し,目開き0.5~1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去することにより,実施例1のトマト含有飲料を作製した。 得られた実施例1のトマト含有飲料を,加熱殺菌し,その後冷却し,紙パックへ封入し,実施例1の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0068】(実施例2)まず,実施例1で使用した透明濃縮トマト汁をBrix:19.8に希釈還元した透明トマト汁(Brix:19.8,酸度:1.18,pH:4.2,Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を80℃まで加温した後,炭酸カルシウムを前記透明トマト汁の総量に対して固形分換算で 元した透明トマト汁(Brix:19.8,酸度:1.18,pH:4.2,Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を80℃まで加温した後,炭酸カルシウムを前記透明トマト汁の総量に対して固形分換算で0.95重量%配合し,得られた調合物を60分間攪拌して,発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後,遠心分離し,市販の珪藻土を用いて濾過し,さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去して,脱酸トマト汁Y(Brix:14.8,酸度:0.24,pH:5.4)を調製した。 - 47 -次に,実施例1で用いた脱酸トマト汁Xの代わりに上記の透明トマト汁及び脱酸トマト汁Yを用い,これらをトマトペーストとともに表1に記載の通りの重量割合で配合し,さらに重曹を温水に溶解した溶液を,重曹の固形分換算で1.8g/L配合すること以外は,実施例1と同様に処理して,実施例2のトマト含有飲料および実施例2の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0069】(実施例3)脱酸トマト汁Yの配合を省略し,透明トマト汁及び重曹の配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は,実施例2と同様に処理して,実施例3のトマト含有飲料および実施例3の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0070】(比較例1)透明トマト汁及び重曹の配合を省略し,トマトペーストの配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は,実施例3と同様に処理して,比較例1のトマト含有飲料および比較例1のPET容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0071】(比較例2)重曹の配合を省略し,透明トマト汁の配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は,実施例3と同様に処理して,比較例2のトマト含有飲料および比較例2のPET容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0072】(参 を省略し,透明トマト汁の配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は,実施例3と同様に処理して,比較例2のトマト含有飲料および比較例2のPET容器詰トマト含有飲料を作製した。 【0072】(参考例1)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET小(トマト100%:JAS規格に指定された食塩添加トマトジュース)を用いた。 【0073】(参考例2)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩添加トマトジュース)を用いた。 【0074】(参考例3)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。 - 48 -【0075】(参考例4)リファレンスとして,市販のトマトジュース紙(トマト100%:JAS規格に指定された食塩添加トマトジュース)を用いた。 【0076】(参考例5)リファレンスとして,市販の国産トマトジュース缶中(トマト100%:JAS規格に指定された食塩添加トマトジュース)を用いた。 【0077】(参考例6)リファレンスとして,市販の国産トマトジュース缶小(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。 【0078】(参考例7)リファレンスとして,市販のトマトミックスジュース紙(トマト50%,果汁50%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトミックスジュース)を用いた。 【0079】(参考例8)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。 【0080】(参考例9)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET大(トマト100% トマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。 【0080】(参考例9)リファレンスとして,市販のトマトジュースPET大(トマト100%,トマトペーストの希釈還元物:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。 【0081】(参考例10)リファレンスとして,市販の青果トマト(中)を破砕して搾汁し或いは裏ごしし,皮や種子等を除去して得られたトマト搾汁を用いた。 【0082】なお,各種測定方法及び評価方法は,以下の通りである。 【0083】<Brix>光学屈折率計(アタゴ社製,Digital Refractometers,RX5000α-Bev)を用いて,Brixを測定した。 - 49 -【0084】<酸度>自動滴定装置(平沼産業株式会社製,COM-1750)を用い,0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を使用した電位差滴定法に基づいて,クエン酸換算で算出した。 【0085】<粘度>TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて,回転数60rpm及び30秒の条件下で,粘度を測定した(表中の数値は,3回の平均値である)。なお,比較例1については,粘度が高すぎるため回転数を12rpmに落として測定した。 また,透明トマト汁については,粘性が低すぎるため,ローターを特殊ローターL/Adpに変更して測定した。 【0086】<クエン酸>CAPI-3300(大塚電子株式会社製)を用いて,キャピラリー電気泳動法に基づいてクエン酸の含有量(重量%(g/100g))を求めた。 サンプル調整法:サンプルを適量はかりとり,蒸留水に懸濁後,フィルターろ過して分析に供した。 キャピラリー電気泳動測定条件: 酸の含有量(重量%(g/100g))を求めた。 サンプル調整法:サンプルを適量はかりとり,蒸留水に懸濁後,フィルターろ過して分析に供した。 キャピラリー電気泳動測定条件:キャピラリーサイズ:75μm×800mm注入方法:落差法(ΔH=25mm 90sec)電圧 :-15kv(定電圧)温度 :25℃検出波長:265nm泳動液 :20mMキノリン酸 0.25mM TTAB-2 (pH6.0)【0087】<アミノ酸>Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて,HPLC法(蛍光検出)に基づいてアミノ酸の含有量(重量%(g/100g))を求めた。 - 50 -サンプル調整法:サンプルを適量はかりとり,蒸留水に懸濁後,フィルターろ過して分析に供した。 HPLC測定条件:カラム :XBridgeShieldRP18 3.0×100mm温度 :40℃注入量 :5μL移動相A:50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)移動相B:アセトニトリル検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器検出波長:励起335nm エミッション450nm【0088】<風味>トマト含有飲料の風味の評価試験は,12人のパネラーに委託して行い,各風味の強度を以下に示す基準で7段階評価したものである。ここで,表中の数値は,12人のパネラーの評価の平均値である。 3点:非常に強い2点:かなり強い1点:やや弱い(判決注:「やや強い」の誤記であると認める。)0点:感じない又は ,12人のパネラーの評価の平均値である。 3点:非常に強い2点:かなり強い1点:やや弱い(判決注:「やや強い」の誤記であると認める。)0点:感じない又はどちらでもない-1点:やや弱い-2点:かなり弱い-3点:非常に弱い【0089】表1に,実施例1~3,比較例1及び2,並びに参考例1~10のトマト含有飲料の配合組成を示す。また,これら飲料の特性並びに評価結果を,表1に併せて示す。 - 51 -【0090】【表1】 【0091】なお,上述したとおり,本発明は,上記実施形態及び実施例に限定 - 52 -されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。 【産業上の利用可能性】【0092】以上説明した通り,本発明によれば,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された,飲料形態としておいしく飲める純粋なトマト含有飲料という新たな市場カテゴリーが創設され,近年の消費者の嗜好性の多様化に沿うことができるので,食品産業,特に飲料産業において広く且つ有効に利用可能である。 (2) 本件訂正の当否について本件訂正による,訂正事項1~3は,前記第2,3(1)のとおり,糖度について「7. 0~13.0」とあったものを「9.4~10.0」とし,また,グルタミン酸等含有量について「0.25~0.60重量%」とあったものを「0.36~0.42重量%」とするものであって,各訂正後の数値範囲は訂正前の数値範囲を狭めるものである。したがって,訂正事項1~3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないものと認められる。 また,本件明細書の発明の詳細 狭めるものである。したがって,訂正事項1~3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないものと認められる。 また,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記(1)のとおり,その【表1】(【0090】)に,本件発明に対応するトマト含有飲料についての実施例1~3が記載されており,それらの実施例には,Brix値が,「9.4」のもの,及び「10.0」のもの,並びに総アミノ酸が「0.36重量%」のもの,及び「0.42重量%」のものが記載されている。そして,「Brix値」が「糖度」を意味することは本件明細書の発明の詳細な説明【0037】の記載から明らかである。また,「総アミノ酸」については,本件明細書の発明の詳細な説明に定義や説明が記載されてはいないものの,【表1】の記載から,「総アミノ酸」が,「グルタミン酸」及「アスパラギン酸」の含有量の合計値を小数点以下第三位で四捨五入したものであり,「総アミノ酸」が「グルタミン酸等含有量」を意味することは,明らかである。そうすると,本件訂正後の数値範囲の下限及び上限を特定する,糖度の「9.4」及び「10. - 53 -0」という数値,並びにグルタミン酸等含有量の「0.36重量%」及び「0.42重量%」という数値は,本件明細書の発明の詳細な説明に,本件発明に対応するトマト含有飲料についての実施例において具体的に示されたものであり,本件訂正後の数値範囲は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内のものであるといえる。したがって,訂正事項1~3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 以上から,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条9項で準用する に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 以上から,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条9項で準用する同法126条5項,6項の規定に適合するというべきものである。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件訂正の根拠となった実施例1~3の記載を見て,本件訂正後の本件発明の数値範囲において本件発明の効果があるとは読み取れないし,酸度の数値範囲は0.31%~0.63%と広く,実施例1~3と同様の風味が実現されているとは考え難い,と主張する。 しかし,原告が主張する上記事項は,特許請求の範囲の記載要件(特許法36条6項)において問題とされるべきものであって,前記(2)の判断を左右するものではない。 イ原告は,本件明細書には,本件訂正後の数値範囲の組合せはどこにも記載されておらず,記載されているのと同然ということはできず,また,本件訂正は,実施例を各構成要素に分解した上で,各要素の最大値及び最小値の範囲を設定するものであると主張する。 しかし,本件訂正後の糖度及びグルタミン酸等含有量の数値範囲の最小値及び最大値は,前記(2)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に,本件発明に対応するトマト含有飲料についての実施例において具体的に示されたものであるから,本件訂正後の数値範囲は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内のものであるというべきであって,本件訂正は新規な技術的事項を導入するものとはい - 54 -えない。 ウ原告は,本件訂正後の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲の組合せが,本件発明の効果を奏さないことが本件明細書の記載から明らかであると主張する。 しかし,原告が主張する上 ウ原告は,本件訂正後の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲の組合せが,本件発明の効果を奏さないことが本件明細書の記載から明らかであると主張する。 しかし,原告が主張する上記事項は,特許請求の範囲の記載要件(特許法36条6項)において問題とされるべきものであって,前記(2)の判断を左右するものではない。 (4) 小括したがって,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条9項で準用する同法126条5項,6項の規定に適合するというべきものである。取消事由1は,理由がない。 2 取消事由3(サポート要件適合性判断の誤り)について(1) 原告は,本件発明に係る特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号のいわゆる明細書のサポート要件に適合しないものであると主張するところ,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高裁平成17年11月11日判決,平成17年(行ケ)第10042号,判例時報1911号48頁参照)。 以下,上記の観点に立って,本件について検討することとする。 (2) 本件明細書の特許請求の範囲の記載について本件発明1に係る本件請求項1には,糖度,糖酸比及びグルタミン 48頁参照)。 以下,上記の観点に立って,本件について検討することとする。 (2) 本件明細書の特許請求の範囲の記載について本件発明1に係る本件請求項1には,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を - 55 -一定の数値範囲としたことを特徴とするトマト含有飲料が記載されており,本件発明2~7に係る特許請求の範囲の請求項2~7は,いずれも請求項1を引用するものである。 本件発明8に係る本件請求項8には,少なくともトマトペーストと透明トマト汁を配合することにより,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を一定の数値範囲となるように,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を調整することを特徴とするトマト含有飲料が記載されており,本件発明9及び10に係る特許請求の範囲の請求項9及び10は,いずれも請求項8を引用するものである。 本件発明11に係る本件請求項11には,少なくともトマトペーストと透明トマト汁を配合することにより,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を一定の数値範囲となるように,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を調整することを特徴とするトマト含有飲料の酸味抑制方法が記載されている。 本件請求項1,8及び11に記載された糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲は,いずれも,糖度が9.4~10.0,糖酸比が19.0~30.0,グルタミン酸等含有量が0.36~0.42重量%である。 (3) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載について前記1(1)に認定の本件明細書の記載によると,本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の内容が記載されているものと認められる。 従来のJAS規格で指定されたトマトジュースは粘度が高くて飲み難く,低粘度化しトマトの酸味を隠ぺいすべく果汁や野菜汁を配合した飲料はトマト飲料として は,以下の内容が記載されているものと認められる。 従来のJAS規格で指定されたトマトジュースは粘度が高くて飲み難く,低粘度化しトマトの酸味を隠ぺいすべく果汁や野菜汁を配合した飲料はトマト飲料として消費者への訴求力に欠け,のど越しが改善された低粘度トマトジュースもトマトの酸味が苦手な者にとって飲み易いものではないという問題があったところ(【0002】~【0004】【0006】【0007】),従来技術におけるこのような課題の存在にかんがみ,主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法を - 56 -提供することを目的として(【0008】),特許請求の範囲の本件請求項1,8及び11に記載された糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲を含むトマト含有飲料及びその製造方法並びにトマト含有飲料の酸味抑制方法を見いだした(【0009】~【0011】,【0018】【0022】【0026】【0030】)。 そして,この効果が奏される作用機構の詳細は,未だ明らかではないものの,糖度及び糖酸比を規定することにより,著しい高粘度化を抑制し得,しかも,糖酸比の調整により,トマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽され得るので,得られるトマト含有飲料の酸味が抑制され,トマト本来の甘みが際立ち,飲み易さが高められ,これらの作用が相まった結果,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマトの酸味が抑制されたものになると推定される(【0041】)。 また,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘 の酸味が抑制されたものになると推定される(【0041】)。 また,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘味がより一層際立つ傾向となる(【0043】)。 本件発明の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲内にあるトマト含有飲料である実施例1~3が,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量のいずれか又は全てが本件発明の数値範囲内にはない比較例1及び2と比較して,本件発明の課題を解決することを示す風味評価試験は,①作成したトマト含有飲料の糖度及び酸度を測定した上で糖酸比を算出し,さらに,グルタミン酸等含有量及び粘度を測定し,②12人のパネラーが,各トマト含有飲料の風味を「酸味」「甘み」及び「濃厚」につき「非常に強い」「かなり強い」「やや強い」「感じない又はどちらでもない」「やや弱い」「かなり弱い」「非常に弱い」の7段階で評価し,③「酸味」「甘み」「濃厚」の各風味につき12人のパネラーの評点の平均値を算出し,④各風味ごとの平均値を,酸味についてはプラスマイナスを逆にした上で合計し,⑤合計値が2.5,3.2,3.9であった実施例1~3は良好な結果が出たと判定し,合計値が2. 2,2.0であった比較例1及び2は良好な結果が出なかったと判定した(【0083】~【0090】,【表1】)。 - 57 -(4) 発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との対比ア特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきことは,前記(1)で説示したとおりである。そして,前記(2)のとおり,本件発明 の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきことは,前記(1)で説示したとおりである。そして,前記(2)のとおり,本件発明は,特性値を表す三つの技術的な変数により示される範囲をもって特定した物を構成要件とするものであり,いわゆるパラメータ発明に関するものであるところ,このような発明において,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するためには,発明の詳細な説明は,その変数が示す範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該変数が示す範囲内であれば,所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である(知財高裁平成17年11月11日判決,平成17年(行ケ)第10042号,判例時報1911号48頁参照)。 イそこで,本件明細書の記載が,本件発明1,8及び11との関係で,上記の点を充足することにより,明細書のサポート要件に適合するといえるか否かについて検討する。 (ア) 前記(3)で検討したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制された,新規なトマト含有飲料及びその製造方法,並びに,トマト含有飲料の酸味抑制方法を提供するための手段として,本件発明1,8及び11に記載された糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の数値範囲,すなわち,糖度について「9.4~10. 0」,糖酸比について「19.0~30.0」,及びグルタミン酸等含有量について「0.36~0.42重量%」とすることを採用した びグルタミン酸等含有量の数値範囲,すなわち,糖度について「9.4~10. 0」,糖酸比について「19.0~30.0」,及びグルタミン酸等含有量について「0.36~0.42重量%」とすることを採用したことが記載されている。 そして,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された具体例というべき実施例1 - 58 -~3,比較例1及び2並びに参考例1~10(【0088】~【0090】,【表1】)には,各実施例,比較例及び参考例のトマト含有飲料のpH,Brix,酸度,糖酸比,酸度/総アミノ酸,粘度,総アミノ酸量,グルタミン酸量,アスパラギン酸量,及びクエン酸量という成分及び物性の全て又は一部を測定したこと,及び該トマト含有飲料の「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験をしたことが記載されている。 (イ) 一般に,飲食品の風味には,甘味,酸味以外に,塩味,苦味,うま味,辛味,渋味,こく,香り等,様々な要素が関与し,粘性(粘度)などの物理的な感覚も風味に影響を及ぼすといえる(甲3,4,62)から,飲食品の風味は,飲食品中における上記要素に影響を及ぼす様々な成分及び飲食品の物性によって左右されることが本件出願日当時の技術常識であるといえる。また,トマト含有飲料中には,様々な成分が含有されていることも本件出願日当時の技術常識であるといえる(甲25の193頁の表-5-196参照)から,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験で測定された成分及び物性以外の成分及び物性も,本件発明のトマト含有飲料の風味に影響を及ぼすと当業者は考えるのが通常ということができる。したがって,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験をするに当たり,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を変化させて,これら三つの要素の数値範囲と風味と えるのが通常ということができる。したがって,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」という風味の評価試験をするに当たり,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量を変化させて,これら三つの要素の数値範囲と風味との関連を測定するに当たっては,少なくとも,①「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,これら三つの要素のみである場合や,影響を与える要素はあるが,その条件をそろえる必要がない場合には,そのことを技術的に説明した上で上記三要素を変化させて風味評価試験をするか,②「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与える要素は上記三つ以外にも存在し,その条件をそろえる必要がないとはいえない場合には,当該他の要素を一定にした上で上記三要素の含有量を変化させて風味評価試験をするという方法がとられるべきである。 前記(3)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,糖度及び糖酸比を規定す - 59 -ることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みを有しつつも,トマトの酸味が抑制されたものになるが,この効果が奏される作用機構の詳細は未だ明らかではなく,グルタミン酸等含有量を規定することにより,トマト含有飲料の旨味(コク)を過度に損なうことなくトマトの酸味が抑制されて,トマト本来の甘味がより一層際立つ傾向となることが記載されているものの,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるのが,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量のみであることは記載されていない。また,実施例に対して,比較例及び参考例が,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量以外の成分や物性の条件をそろえたものとして記載されておらず,それらの各種成分や各種物性が,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるものではないことや,影響を与え ルタミン酸等含有量以外の成分や物性の条件をそろえたものとして記載されておらず,それらの各種成分や各種物性が,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えるものではないことや,影響を与えるがその条件をそろえる必要がないことが記載されているわけでもない。そうすると,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたとの風味を得るために,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量の範囲を特定すれば足り,他の成分及び物性の特定は要しないことを,当業者が理解できるとはいえず,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味評価試験の結果から,直ちに,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量について規定される範囲と,得られる効果というべき,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味との関係の技術的な意味を,当業者が理解できるとはいえない。 (ウ) また,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された風味の評価試験の方法は,前記(3)のとおりであるところ,評価の基準となる0点である「感じない又はどちらでもない」については,基準となるトマトジュースを示すことによって揃えるとしても,「甘み」,「酸味」又は「濃厚」という風味を1点上げるにはどの程度その風味が強くなればよいのかをパネラー間で共通にするなどの手順が踏まれたことや,各パネラーの個別の評点が記載されていない。したがって,少しの風味変化で加点又は減点の幅を大きくとらえるパネラーや,大きな風味変化でも加点又は減点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず,各飲料の風味の - 60 -評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したものととらえることも困難である。また,「甘み」,「酸味」及び「 存在する可能性が否定できず,各飲料の風味の - 60 -評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したものととらえることも困難である。また,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」は異なる風味であるから,各風味の変化と加点又は減点の幅を等しくとらえるためには何らかの評価基準が示される必要があるものと考えられるところ,そのような手順が踏まれたことも記載されていない。そうすると,「甘み」,「酸味」及び「濃厚」の各風味が本件発明の課題を解決するために奏功する程度を等しくとらえて,各風味についての全パネラーの評点の平均を単純に足し合わせて総合評価する,前記(3)の風味を評価する際の方法が合理的であったと当業者が推認することもできないといえる。 以上述べたところからすると,この風味の評価試験からでは,実施例1~3のトマト含有飲料が,実際に,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られたことを当業者が理解できるとはいえない。 (エ) なお,糖度とグルタミン酸等含有量を,本件明細書の発明の詳細な説明【0090】【表1】に記載されている実施例1と同じく,「9.4」,「0.42」とした上,糖酸比を本件特許請求の範囲の下限値である「19.0」とした場合,酸度は「約0.49」となるから,酸味の評価が実施例1(酸度は約0.34)よりも下がる可能性が高い。仮に酸味の評価が「-0.6」となれば,甘み「0.8」,濃厚「1.0」(実施例1の評価)であるので,合計の評点は「2.4」となり,酸味の評価が「-0.5」となれば,合計の評点は「2.3」となり,酸味の評価が「-0.4」となれば,合計の評点は「2.2」となるところ,これらが総合評価において本件発明の効果を有するとされるものかどうかは 評価が「-0.5」となれば,合計の評点は「2.3」となり,酸味の評価が「-0.4」となれば,合計の評点は「2.2」となるところ,これらが総合評価において本件発明の効果を有するとされるものかどうかは明らかでない(本件明細書の発明の詳細な説明【0090】【表1】に記載されている参考例1は「2.4」でも総合評価で「×」とされている。)。 (オ) したがって,本件出願日当時の技術常識を考慮しても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量が本件発明の数値範囲にあることにより,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり - 61 -かつトマトの酸味が抑制されたという風味が得られることが裏付けられていることを当業者が理解できるとはいえないから,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1,8及び11の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできない。 (5) 被告の主張についてア被告は,上記判断に対して,以下の(ア)~(ウ)を主張する。 (ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,実施例1~3として,本件発明の数値範囲に対応した具体的な実施例の記載がされており,これらの記載に加え,本件出願日当時の技術常識を踏まえると,実施例1~3の数値,並びに比較例1及び2の数値に鑑み,本件発明の数値範囲内であれば本件明細書の発明の詳細な説明に記載された本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例が記載されているため,本件発明の数値範囲内については発明の詳細な説明において開示された内容を拡張又は一般化できることは明らかである。 (イ) 本件発明は,トマト含有飲料が本件明細書の発明の詳細な説明に記載の風味を有するとの効果を奏するためには,所定の数値範囲の糖度,糖酸比及 内容を拡張又は一般化できることは明らかである。 (イ) 本件発明は,トマト含有飲料が本件明細書の発明の詳細な説明に記載の風味を有するとの効果を奏するためには,所定の数値範囲の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量が重要であることを見いだしたものであり,当該効果を達成するために,他の要因の関与がないことを述べたものではなく,また,食品分野の特許実務においては,温度や粘度等の多岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ特許発明の課題を解決できないというものでもないので,温度や粘度等の多岐にわたる条件を,本件発明の発明特定事項としなければならない理由はない。 (ウ) 特許請求の範囲の解釈に当たっては技術常識も考慮すべきであり,本件発明が一定の風味を有するトマト含有飲料を得ようとするものであることからすれば,その粘度については,当業者の技術常識として,一般的にトマト含有飲料として成立し得る範囲内のものであることは当然であって,あらゆる粘度を含むものではない。 イ前記(ア)について前記(ア)の主張を採用することができないことは,前記(4)で判示したとおりであ - 62 -る。 ウ前記(イ)について本件発明が,本件発明の効果を奏するためには,所定の数値範囲の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量が重要であることを見いだしたものであることを理解するためには,少なくとも,前記(4)で判示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に,風味評価試験において取り上げた「甘み」「酸味」「濃厚」の風味に見るべき影響を与える他の成分や物性の有無について理解できる記載があることが必要である。また,食品分野の特許実務においては,多岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ特許発明の課題を解決できないわけではない場合がある 他の成分や物性の有無について理解できる記載があることが必要である。また,食品分野の特許実務においては,多岐にわたる条件の全てを個別に特定しなければ特許発明の課題を解決できないわけではない場合があるとしても,本件発明の発明特定事項である所定の数値範囲の糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量において本件発明の効果が奏されるというためには,少なくとも,前記(4)で判示したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に,評価した風味である「甘み」「酸味」「濃厚」に見るべき影響を与える成分及び物性が無いこと,又は,そういった成分及び物性があっても,風味評価試験において条件をそろえる必要がないことについて理解できる記載があるか,そういった成分及び物性の値を一定にした上で風味評価試験をしたことを記載することが必要である。 しかし,上記のような記載がないことは,前記(4)で判示したとおりである。 エ前記(ウ)について本件発明はトマト含有飲料に係るものであるから,通常,その粘度は,一般的にトマト含有飲料として成立し得る範囲内のものであり,あらゆる粘度を含むものではないといえる。そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,「本実施形態のトマト含有飲料は,粘度が350~1000cP,より好ましくは350~600cPに調整されていることが好ましい。」(【0056】)と記載されており,本件発明のトマト含有飲料の取り得る粘度の範囲を当業者が理解することもできるといえる。 しかし,前記(4)で判示したとおり,粘度も風味に影響を及ぼすといえるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明のトマト含有飲料の取り得る粘度の - 63 -範囲内で,粘度が「甘み」「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えないことや風味評価試験において条件をそろえる必要が 詳細な説明には,本件発明のトマト含有飲料の取り得る粘度の - 63 -範囲内で,粘度が「甘み」「酸味」及び「濃厚」の風味に見るべき影響を与えないことや風味評価試験において条件をそろえる必要がないことは記載されておらず,また,粘度を一定にした風味評価試験も記載されていない。 したがって,粘度が一般的にトマト含有飲料として成立し得る範囲内のものであることを前提としても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,糖度,糖酸比及びグルタミン酸等含有量についての規定される範囲と,得られる効果というべき,濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがありかつトマトの酸味が抑制されたという風味との関係の技術的な意味を,当業者が理解できるとはいえない。 (6) 本件発明2~7,9及び10についてア本件発明2~7に係る本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2~7は,いずれも請求項1を引用するものであるところ,本件発明1の「トマト含有飲料」において,本件発明2は「粘度が350~1000cPである」ことが,本件発明3は「トマト以外の野菜汁及び果汁の総含有量が0.0~5.0重量%である」ことが,本件発明4は「少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とを含有する」ことが,本件発明5は「重曹(C)を含有する」ことが,本件発明6は「少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを含有する」ことが,及び本件発明7は「pHが4.4~4.8である」ことがさらに特定されている。 本件発明2~7は,上記のとおり,請求項1を引用するものであるから,前記(4)で判示したところからすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件発明2~7のトマト含有飲料により,本件発明の効果が得られるとは理解できない。 したがって,本件明細 のであるから,前記(4)で判示したところからすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件発明2~7のトマト含有飲料により,本件発明の効果が得られるとは理解できない。 したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2~7の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできないというべきである。 イ本件発明9及び10に係る本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9及び10は,いずれも請求項8を引用するものであるところ,本件発明8の「トマト含有飲料の製造方法」において,本件発明9は「少なくとも重曹(C)を配合するこ - 64 -とにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整すること」が,本件発明10は「少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)と脱酸トマト汁(D)とを配合することにより,前記糖度及び前記糖酸比を調整すること」がさらに特定されている。 本件発明9及び10は,上記のとおり,請求項8を引用するものであるから,前記(4)で判示したところからすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載から,本件発明9及び10で製造するトマト含有飲料が本件発明の効果を奏するとは理解できない。 したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項9及び10の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできないというべきである。 (7) 小括よって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1~11の記載が,明細書のサポート要件に適合するということはできない。 第6 結論以上の次第で,原告の請求には理由があるから,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官森義之 として、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 森義之 裁判官 片岡早苗 裁判官 古庄研
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