平成23(行ケ)10286 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年5月28日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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- 1 -平成24年5月28日判決言渡平成23年(行ケ)第10286号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年4月23日判決 原告X 訴訟代理人弁理士今井孝弘 被告特許庁長官指定代理人本郷彰樋口信宏吉村博之田村正明 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判特許庁が不服2010-7464号事件について平成23年4月18日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要- 2 -本件は,特許の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,容易想到性である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成19年8月28日,発明の名称を「GPS探索装置」とする発明について,特許出願(特願2007-221433。平成6年5月18日(パリ条約による優先権主張1993年5月18日,イギリス国)に国際特許出願した特願平6-525189(原出願)の一部を平成16年11月30日に新たな特許出願(特願200 433。平成6年5月18日(パリ条約による優先権主張1993年5月18日,イギリス国)に国際特許出願した特願平6-525189(原出願)の一部を平成16年11月30日に新たな特許出願(特願2004-347193)とし,その一部を平成18年2月23日に新たな特許出願(特願2006-46591)とし,さらにその一部を平成19年8月28日に新たな特許出願としたもの。甲3)をしたが,平成20年4月8日付けで拒絶の理由が通知され,同年10月15日付けで手続補正書を提出したが,同年12月5日付けで再び拒絶の理由が通知され,平成21年6月9日付けで再び手続補正書を提出したが,同年11月25日付けで補正却下の決定及び拒絶査定を受け,これに対し,平成22年4月8日付けで,不服の審判(不服2010-7464号)を請求したが,平成22年8月24日付けで拒絶の理由が通知され(甲4),平成23年2月28日付けで本件手続補正書(甲5)を提出した。特許庁は,同年4月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年5月10日,原告に送達された。 2 本願発明の要旨本件手続補正書(甲5)の特許請求の範囲の請求項1に記載された本願発明の要旨は,以下のとおりである。 「無線伝送から興味がある情報を検索するポータブル装置であって,前記ポータブル装置の位置を検知する位置決定部と,少なくとも一つの無線伝送を受信する受信機であって,前記少なくとも一つの無線伝送は,ラジオまたはテレビジョンによるものであり,かつ,前記ポータブル装置の操作から独立しており,かつ,無線伝送された内容に対応し,場所に適合した- 3 -興味ある情報を含み,前記情報は異種の対象に関するものである受信機と,前記興味ある情報を選択する手段と,前記検知した 立しており,かつ,無線伝送された内容に対応し,場所に適合した- 3 -興味ある情報を含み,前記情報は異種の対象に関するものである受信機と,前記興味ある情報を選択する手段と,前記検知した位置に基づき,前記選択された興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する検索部と,前記検索された情報をユーザに提供する提供部と,を備えているポータブル装置。」 3 審決の理由の要点(1) 審決は,要するに「本願発明は,引用例1記載の引用発明,引用例2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。」と判断した。 (2) 上記判断に際し,審決が認定した引用例1(特開平4-294210号公報,甲1)記載の引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点,引用例2(特開昭63-94388号公報,甲2)記載の技術並びに相違点についての審決の判断は,以下のとおりである。 ア引用発明「現在位置周辺の有名店などを検索する携帯装置であって,ナビゲーション情報センタからナビゲーション情報を受信し,前記ナビゲーション情報の受信は,携帯電話機能によるものであり,かつ,その携帯電話機能を前記携帯装置から取外して構成しても良く,かつ,受信された前記ナビゲーション情報は利用者の現在位置周辺の有名店などの情報を含み,前記現在位置周辺の有名店などを利用者に表示する手段と,を備えている携帯装置。」イ本願発明と引用発明との対比(ア) 一致点「無線伝送から情報を検索するポータブル装置であって,少なくとも一つの無線伝送を受信する受信機であって,前記少なくとも一つの無- 4 -線伝送は,無線による情報の伝 (ア) 一致点「無線伝送から情報を検索するポータブル装置であって,少なくとも一つの無線伝送を受信する受信機であって,前記少なくとも一つの無- 4 -線伝送は,無線による情報の伝送手段によるものであり,かつ,前記ポータブル装置の操作から独立しており,かつ,無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み,前記情報は異種の対象に関するものである受信機と,情報をユーザに提供する提供部と,を備えているポータブル装置。」である点。 (イ) 相違点1無線による情報の伝送手段が,本願発明では,「ラジオまたはテレビジョン」であるのに対し,引用発明では,「携帯電話機能」であって,「ラジオまたはテレビジョン」でない点。 (ウ) 相違点2本願発明は,「ポータブル装置の位置を検知する位置決定部」を備えているのに対し,引用発明は,「ポータブル装置の位置を検知する位置決定部」を備えていない点。 (エ) 相違点3ポータブル装置が無線伝送から検索する情報が,本願発明では,「興味がある情報」または「興味ある情報」であるのに対し,引用発明では,「興味がある情報」または「興味ある情報」であるとは限らない点。 (オ) 相違点4本願発明は,「興味ある情報を選択する手段」及び「前記検知した位置に基づき,前記選択された興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する検索部」を備え,情報提供部は該検索部で検索された情報を提供するものであるのに対し,引用発明は,「興味ある情報を選択する手段」及び「前記検知した位置に基づき,前記選択された興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する検索手段」を備えておらず,情報提供部は該検索部で検索された情報を提供するもので 段」及び「前記検知した位置に基づき,前記選択された興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する検索手段」を備えておらず,情報提供部は該検索部で検索された情報を提供するものでない点。 ウ引用例2記載の技術- 5 -ホストコンピュータに利用者の個人情報を予め登録しておくことで,ホストコンピュータがその利用者に適する情報のみを一次選択して,利用者の端末機に伝送する技術。 エ相違点についての審決の判断(ア) 相違点1について本件出願時において,携帯電話機能,ラジオ,またはテレビジョンは無線による情報の伝送手段として周知の技術であった。このことは,本願の出願当初明細書の【0012】段落にも「電話,ラジオ若しくはテレビ放送などの所定の手段によって受信されるデータベース」と記載されていることからも明らかである。そして,引用発明においては,無線による情報の伝送手段として携帯電話機能,ラジオ,及びテレビジョンのいずれの手段を採用しても同じ作用効果が得られることは当業者に自明である。してみると,引用発明の無線による情報の伝送手段として周知の「携帯電話機能」を,同様に無線による情報の伝送手段として周知の「ラジオまたはテレビジョン」とすることに格別の困難性を認めることはできない。 よって,引用発明において,「携帯電話機能」を,「ラジオまたはテレビジョン」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点2について引用発明は,引用例1の【0003】段落に「このようなナビゲーション装置を携帯可能な形で利用することまではそもそも考慮されておらず,従って装置自体の大きさについては適宜小型化が図られているものの,携帯可能なまでには至っておらず,不満足なものであった。」と記載され 装置を携帯可能な形で利用することまではそもそも考慮されておらず,従って装置自体の大きさについては適宜小型化が図られているものの,携帯可能なまでには至っておらず,不満足なものであった。」と記載されていることから明らかなように,自身の位置測定を行うナビゲーション装置はすでに実用化されているものの,装置自体の大きさが大きく携帯可能なまでには至っていないという事情を考慮して,携帯装置に該ナビゲーション装置を備えないように構成しつつ,該携帯装置自身の位置情報を利用可能とした発明である。しかしながら,技術思想として,利用者が所持する装置において,ナビゲーション装置が有する機能を備えることが排除されるもの- 6 -ではなく,また,利用者が所持する装置に対して多機能化かつ小型化が常時指向される技術の流れであることを鑑みれば,引用発明の携帯装置がナビゲーション装置が有する機能を備えることに格別の技術的困難性を認めることはできない。 よって,引用発明において,携帯装置(ポータブル装置)に,ナビゲーション装置,すなわち「前記ポータブル装置の位置を検知する位置決定部」を備えることは,当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ) 相違点3について本願発明における「興味がある情報」または「興味ある情報」については,例えば「予めユーザによって設定されたユーザの興味に関する情報に基づいて,抽出された情報」などの限定が無く,単に「興味がある情報」または「興味ある情報」とのみ記載されているところ,引用発明の携帯装置が検索する情報においても,利用者にとって当然に「興味がある情報」を含むものであるから,上記相違点3は実質的な相違点とはいえない。 仮に,本願発明の「興味がある情報」または「興味ある情報」が,上記「予めユーザによって設定されたユーザの興味 に「興味がある情報」を含むものであるから,上記相違点3は実質的な相違点とはいえない。 仮に,本願発明の「興味がある情報」または「興味ある情報」が,上記「予めユーザによって設定されたユーザの興味に関する情報に基づいて,抽出された情報」であるとした場合について,本願発明が進歩性を有するかどうかを検討する。 引用発明において,ナビゲーション情報センタが各種のナビゲーション情報を作成して利用者の携帯装置に伝送する際に,引用例2記載の技術が有用であることは当業者にとって自明である。したがって,引用発明において,上記引用例2記載の技術を用いて,ナビゲーション情報センタに予め利用者(ユーザ)の個人情報(興味)を登録(設定)しておくことで,その利用者に適する情報(興味がある情報)のみを一時選択して,利用者の携帯装置に伝送する構成とすること,すなわちポータブル装置が検索する情報を「興味がある情報」または「興味ある情報」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (エ) 相違点4について引用発明において,ポータブル装置が「利用者の現在位置周辺の有名店などの情- 7 -報」を検索し,表示するに当たり,該ポータブル装置に表示された情報(例えば利用者の現在位置周辺の利用者の興味がある有名店の『店名』)の一つを利用者が選択したら,該一つの情報に関連づけられた詳細な情報(例えば上記有名店の『地図,住所,電話番号など』)を利用者の携帯装置に表示する構成とする程度のことは情報検索を行う利用者がとる行動として当事者が容易に想定し得る範囲内のことである。そして,該検索情報が興味ある情報であれば,関連する詳細な情報のさらなる表示はなお一層のことであり,それを何ら妨げるものではない。 したがって,引用発明において,引用例2記載の技術を用いて,「興 。そして,該検索情報が興味ある情報であれば,関連する詳細な情報のさらなる表示はなお一層のことであり,それを何ら妨げるものではない。 したがって,引用発明において,引用例2記載の技術を用いて,「興味ある情報を選択する手段」,及び「前記検知した位置に基づき,前記選択された興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する検索部」を備え,表示する手段(情報提供部)に該検索部で検索された情報を表示(提供)することは,当業者が容易に想到し得たことである。 (オ) 本願発明の作用効果について本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明,引用例2記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって,格別のものとはいえない。 第3 原告主張の審決取消事由審決には,①本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定の誤り,②本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,当業者が容易に想到し得たとの判断の誤り,③本願発明の開示に関する認定の誤りがあり,これらの誤りはいずれも審決の結論に影響するから,審決は取り消されるべきである。 1 取消理由1(一致点及び相違点の認定の誤り)審決は,引用発明の「受信されたナビゲーション情報」が本願発明の「無線伝送された内容」に相当する(5頁12~13行目),引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,携帯端末に受信されたナビゲーション情報(無線伝- 8 -送された内容)に含まれる,すなわち対応する情報であるといえる(5頁20~22行目)と認定して,「無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み」との点を本願発明と引用発明との間の一致点と認定した。 しかし,ナビゲーション情報に「含まれる」情報と,ナビゲーション情報に「対応する」情報とは 伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み」との点を本願発明と引用発明との間の一致点と認定した。 しかし,ナビゲーション情報に「含まれる」情報と,ナビゲーション情報に「対応する」情報とは,全く異なる情報であり,この認定には誤りがある。ナビゲーション情報に「含まれる」情報とは,ナビゲーション情報そのものであり,引用例1の段落【0014】においても,利用者の現在位置周辺の有名店などの情報がナビゲーション情報の一例として例示されている。 一般に,「対応する」とは,二つの物事が一定の関係にあることを意味するものであるところ,引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,ナビゲーション情報そのものであって,ナビゲーション情報に「対応する」情報が「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」であるとの解釈は日本語として意味をなさない。つまり,引用発明においては,ナビゲーション情報という情報と,「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」との別々の情報が存在している訳ではなく,「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」というナビゲーション情報が送信されるに過ぎない。 これに対し,本願発明においては,「ラジオで放送されたレストランの名前」が「無線伝送された内容」に相当するものであり,そのレストランの名前に対応して,「場所に適合した情報」であるところの「その位置に対応した当該レストランの情報」が提供されるものである。 以上のように,引用発明には,「無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み」という思想は全く開示されておらず,上記一致点を,本願発明と引用発明との間の一致点と認定したことには誤りがあり,本願発明と引用発明との間の相違点として,本願発明では「無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み」であるのに対し 一致点を,本願発明と引用発明との間の一致点と認定したことには誤りがあり,本願発明と引用発明との間の相違点として,本願発明では「無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み」であるのに対し,引用発明では「ナビゲーション情報」の一例としての「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」である点を挙げるべきであった。 - 9 -したがって,審決は誤った認定に基づいて判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。 2 取消理由2(相違点は当業者が容易に想到し得たとの判断の誤り)引用発明においては,利用者の位置に基づいて,「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」が,ナビゲーション情報として携帯電話で受信されることが開示されているに過ぎない。引用例1には,ナビゲーション情報とは異なる内容が携帯電話において受信され,それを聞いた利用者がその内容に関する情報を選択すると,その内容に対応した位置に関する情報が提供される,という技術的思想は,開示も示唆もされていない。 これに対し,本願発明においては,「無線伝送された内容」として,例えば「ラジオで放送されたレストランの名前」が挙げられ,そのレストランの名前に対応して,「場所に適合した情報」であるところの「その位置に対応した当該レストランの情報」が提供されるものである。このような技術的思想は,引用例1には開示も示唆もされておらず,引用例1と引用例2をどのように組み合わせたとしても得ることができないものである。 したがって,上記相違点は,当業者が容易に想到し得たとはいえない。 審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定において誤りがあるため,この相違点についての判断が全く行われておらず,容易性の判断においても誤りがある。 また,本願発明によってもたらされる効果は,イ 願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定において誤りがあるため,この相違点についての判断が全く行われておらず,容易性の判断においても誤りがある。 また,本願発明によってもたらされる効果は,インタラクティブなポータブル装置によって,ユーザーがその時に希望する情報のみを得ることができるという,引用発明,引用例2記載の技術からは当業者が容易には予測し得ない効果を奏するものであり,この点からも容易想到性の判断には誤りがあるといえる。 したがって,審決には容易想到性判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。 3 取消理由3(本願発明の開示に関する認定の誤り)- 10 -審決は,本願明細書(甲3)の段落【0012】及び【0048】を挙げ,これらの記載からは,ラジオなどの所定の手段によって「データベース」受信されること,ポータブル装置が該ポータブル装置の位置情報(GPSデータ)をキーとして上記データベースを検索すること,及び,検索されてユーザに提供された情報に対して,画像情報も提供できることが示されているのみであるから,「利用者の携帯装置に表示された情報(例えば利用者の現在位置周辺の利用者の興味がある有名店の「店名」)の一つを利用者が選択したら,該一つの情報に関連づけられた詳細な情報(例えば上記有名店の「地図,住所,電話番号など」)を利用者の携帯装置に表示する構成とする」こととその機能及び作用効果において格別相違するものではない,と認定した(9頁26行目~10頁11行目)。 その上で,原告が主張するような「インタラクティブなポータブル装置」,すなわち「ラジオを聞いたユーザが,何らかの方法でポータブル装置を用いて興味ある情報(そのラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と ブル装置」,すなわち「ラジオを聞いたユーザが,何らかの方法でポータブル装置を用いて興味ある情報(そのラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と前記興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索し,詳細な情報(その位置に対応した当該レストランの情報)を提供するポータブル装置」が記載されているとはいえず,また,出願当初の明細書のその他の箇所にもそれを示唆するような記述もない,と認定した(10頁11~18行目)。 しかし,この認定には誤りがある。本願明細書の段落【0012】及び【0013】には,情報がラジオまたはテレビ放送として受信されることが,段落【0015】には,GPSデータをキーとして,受信された放送データを含むデータベースをサーチすることが,段落【0016】及び【0017】には,装置がボイスコマンドによって操作可能であることが,段落【0032】には,装置が音声フレーズを再生し,ユーザの興味を喚起し,ユーザが所定の行動を選択することにより所定の情報の入手が行われることが,段落【0044】にも,装置が,音声コマンドによって制御可能であることが,段落【0051】及び【0052】には,装置が,ラジオやテレビ等の放送データを受信するとともに,ユーザが情報源にアクセスし,- 11 -サーチが行われることが,それぞれ明示されている。 以上を勘案すれば,「インタラクティブなポータブル装置」,すなわち「ラジオを聞いたユーザが,何らかの方法でポータブル装置を用いて興味ある情報(そのラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と前記興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索し,詳細な情報(その位置に対応した当該レストランの情報)を提供す たレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と前記興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索し,詳細な情報(その位置に対応した当該レストランの情報)を提供するポータブル装置」が記載されていることは明白である。したがって,上記の特徴は,出願当初の明細書に開示及び示唆されているということができる。 以上のように,審決は誤った認定に基づいて判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)に対して(1) 原告は,「本願発明においては,『ラジオで放送されたレストランの名前』が『無線伝送された内容』に相当するものであり,そのレストランの名前に対応して,『場所に適合した情報』であるところの『その位置に対応した当該レストランの情報』が提供されるものである。」と主張するが,この主張内容は,(2),(3)記載のとおり,特許請求の範囲(甲5),本願明細書及び図面(甲3)に記載された事項に基づくものではなく失当である。そして,(4)記載のとおり,引用例1に記載された事項に基づけば,審決における一致点の認定に誤りはない。 (2) 一般に,「対応」は,「①互いに向きあうこと。相対する関係にあること。 『━点』②両者の関係がつりあうこと。『国力に━しない軍備』③相手や状況に応じて事をすること。『情勢の変化に━する。』」(広辞苑第四版)を意味する文言であるところ,本件においては③の意味が妥当しないことは明らかであるとしても,①と②のどちらが妥当するのか,一義的に理解することはできない。 そこで,発明の詳細な説明を参照する。 - 12 -本願発明において,「無線伝送」は,「ラジオまたはテレビジョンによるもの」であるところ,本願明細書の【 か,一義的に理解することはできない。 そこで,発明の詳細な説明を参照する。 - 12 -本願発明において,「無線伝送」は,「ラジオまたはテレビジョンによるもの」であるところ,本願明細書の【発明の詳細な説明】の【課題を解決するための手段】の欄には,「電話,ラジオ若しくはテレビ放送などの所定の手段によって受信されるデータベース」(段落【0012】),「電話,ラジオ若しくはテレビ放送などの所定の手段によって受信されるデータベース」(段落【0013】)と記載されているから,「データベース」は「無線伝送された内容」である。 また,上記【課題を解決するための手段】の欄には,「ユーザが必要としている情報が,GPSにおける位置,速度,高度または時間をキーとして使用し,データベースにアクセスすることによって得られる」(段落【0009】),「ユーザの現在位置を中心とする所定半径内の,目印,ホテル,病院,店または製品等の,ユーザにとって興味のある特定の事項に関するデータベースの自動検索を開始することもできる」(段落【0011】)と記載されているから,「データベース」は「場所に適合した興味ある情報」を情報の一つとして含むものである。 そうすると,本願発明の「無線伝送された内容」は,「場所に適合した興味ある情報」を情報の一つとして含むものと理解できることから,本願発明の「無線伝送された内容」と「場所に適合した興味ある情報」は,このような多対1の包含関係において「相対する関係にある」と解釈できる。本願の【発明の詳細な説明】を参酌しても,「無線伝送された内容に対応し,場所に適合した興味ある情報」という記載はなく,「無線伝送された内容」と「場所に適合した興味ある情報」を「対応」という用語で具体的に説明または定義する記載もなく,上記解釈を明確に妨げる記載 対応し,場所に適合した興味ある情報」という記載はなく,「無線伝送された内容」と「場所に適合した興味ある情報」を「対応」という用語で具体的に説明または定義する記載もなく,上記解釈を明確に妨げる記載は存在しない。したがって,多対1の包含関係において,「無線伝送された内容」と「場所に適合した興味ある情報」は「相対する関係」にあるということは,換言すれば,「無線伝送された内容」が「場所に適合した興味ある情報」を含むという程度のことを意味する。 (3) 次に,原告が「無線伝送された内容」が「ラジオで放送されたレストランの名前」に相当することが記載されていると主張する根拠は,下記アないしウのと- 13 -おり出願当初の明細書及び図面,並びに本件手続補正書には記載も示唆もされていない。 ア 「無線伝送された内容」には一般的に様々な情報が含まれるものと解されるが,本願明細書の【発明の詳細な説明】の,段落【0012】,【0013】及び【0051】の記載によれば,「無線伝送された内容」は,少なくとも「データベース」を含むものであり,当該「データベース」から「検知した位置に基づいて,興味ある情報に関連付けられた一またはそれ以上の詳細な情報を検索する」ものであるといえる。 イ段落【0022】~【0023】には,「装置」は「ユーザの位置をモニタして,好適な音声を検索して再生するのに使用される基本的ロジック」を有していること,及び,「図3は,ある地図を示しており,この中で,大きなドットはGPSによって決定される位置を示し,各ドットで,特定の音声フレーズがデータベースまたはラジオ放送から選択されて再生される。」ことが記載されていることから,「無線伝送された内容」は,少なくとも位置がモニタされることによって検索または選択されることにより,ユ レーズがデータベースまたはラジオ放送から選択されて再生される。」ことが記載されていることから,「無線伝送された内容」は,少なくとも位置がモニタされることによって検索または選択されることにより,ユーザに対して,その場所に関連する情報を提供するものであるといえる。 上記ア及びイによると,「無線伝送された内容」である「データベース」は,一種の「ナビゲーション情報」であるといえる。 ウ原告は,「無線伝送された内容」が「ラジオで放送されたレストランの名前」に相当すると主張する。レストランに関する記載は,段落【0041】及び平成23年2月28日付手続補正書の請求項2,請求項7にそれぞれ認められる。 しかし,段落【0041】及び上記各請求項の記載内容は,「無線伝送された内容」が「ラジオで放送されたレストランの名前」であること,すなわち,音声放送そのものであること,を示す記載又は示唆とはいえない。 したがって,上記ア~ウによれば,本願発明における「無線伝送された内容」は,少なくとも「データベース」を含むものであり,該「データベース」がユーザに対- 14 -して提供されるナビゲーション等の情報を含むものであるといえるから,原告の「無線伝送された内容」は「ラジオで放送されたレストランの名前」に相当するとの主張は失当である。 (4) 引用発明の「ナビゲーション情報」は,「ナビゲーション情報センタ」から伝送される情報(受信される情報)であって,本願発明の「無線伝送された内容」に相当し,引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,携帯端末に受信されたナビゲーション情報(無線伝送された内容に含まれる),すなわち対応する情報であるといえる。理由は以下のとおりである。 ア引用発明の「携帯装置」は「無線による通信機能」を有し, 末に受信されたナビゲーション情報(無線伝送された内容に含まれる),すなわち対応する情報であるといえる。理由は以下のとおりである。 ア引用発明の「携帯装置」は「無線による通信機能」を有し,この「無線による通信機能」を介して「ナビゲーション情報センタ」から伝送された情報が「ナビゲーション情報」であることは,【特許請求の範囲】【請求項1】,図1及び段落【0015】の記載からも明らかであるから,引用発明の「ナビゲーション情報」は「無線伝送された」情報,すなわち,「無線伝送された内容」に相当する。 イまた,引用例1の段落【0014】の記載によれば,ナビゲーション情報は,本来の情報である利用者(ユーザ)の現在位置の情報はもちろんのこと,目的地までの最適ルートに関する情報,またその他にも現在位置周辺の有名店などのショッピングやレジャー等に関連した多目的の情報を,あくまで利用者(ユーザ)の現在位置に関してそれに対応する情報として展開可能であることが示されている。すなわち,ナビゲーション情報は,総じて内容的に利用者(ユーザ)の現在位置に関してそれに対応する情報を構成するものといえる。 そうすると,引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,携帯端末に受信されたナビゲーション情報の一つとしてそれに含まれるものであるから,上記のとおり,利用者(ユーザ)の現在位置に関してそれに対応する情報として構成されたものの一つといえる。一方,上記アのとおり,このナビゲーション情報は本願発明の「無線伝送された内容」ともいえるから,結局,「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,「無線伝送された内容」(携帯端末に受信された- 15 -ナビゲーション情報)であるところの,利用者(ユーザ)の現在位置に関してそれに対応する情報として構成され 在位置周辺の有名店などの情報」は,「無線伝送された内容」(携帯端末に受信された- 15 -ナビゲーション情報)であるところの,利用者(ユーザ)の現在位置に関してそれに対応する情報として構成されたものの一つであり,「無線伝送された内容」(携帯端末に受信されたナビゲーション情報)に対応する情報といえる。 したがって,引用発明における「ナビゲーション情報」は,本願発明の「無線伝送された内容」に相当するものであり,同様に引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,「無線伝送された内容」(携帯端末に受信されたナビゲーション情報)に含まれる情報であり,同時にそれに対応する情報でもあるといえることから,審決が「引用発明の『利用者の現在位置周辺の有名店などの情報』は,携帯端末に受信されたナビゲーション情報(無線伝送された内容)に含まれる,すなわち対応する情報であるといえる。」と認定した点に誤りはない。 また,「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,「場所に適合した情報」ともいえるから,原告の「引用発明には,『無線伝送された内容に対応し,場所に適合した情報を含み』という思想は全く開示されおらず」との主張は失当である。 (5) 以上のとおり,審決における一致点の認定に誤りはない。一致点の認定に誤りがない以上,相違点の認定にも誤りはない。したがって,原告が主張する取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点は当業者が容易に想到し得たとの判断の誤り)に対して審決の本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定に誤りがないこと,原告が主張する「『無線伝送された内容』として,例えば『ラジオで放送されたレストランの名前』が挙げられ,そのレストランの名前に対応して,『場所に適合した情報』であるところの『その位置に対応した当該レ 告が主張する「『無線伝送された内容』として,例えば『ラジオで放送されたレストランの名前』が挙げられ,そのレストランの名前に対応して,『場所に適合した情報』であるところの『その位置に対応した当該レストランの情報』が提供されるものである。」との技術的思想が,本願発明に記載された「無線伝送された内容に対応」するという記載に基づいたものではないことは取消事由1に対して述べたとおりである。 したがって,原告が主張する取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本願発明の開示に関する認定の誤り)に対して- 16 -原告は,本願明細書の段落【0012】,【0013】,【0015】~【0017】,【0032】,【0044】,【0051】~【0052】を勘案すれば,「『インタラクティブなポータブル装置』,すなわち『ラジオを聞いたユーザが,何らかの方法でポータブル装置を用いて興味ある情報(そのラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と前記興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索し,詳細な情報(その位置に対応した当該レストランの情報)を提供するポータブル装置』が記載されていることは明白である。」と主張する。 しかし,原告が主張する各段落のいずれにおいても,「ポータブル装置」が「ラジオを聞いたユーザが,その視聴の情報を元に興味ある情報(ラジオで放送されたレストランの名前)を選択する」ものであり,「ラジオを聞いたユーザが興味ある情報(ラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,ポータブル装置の位置情報と興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索する」ものであることを表す記載も示唆も存在しない。 また,それぞれの段落の記載を総合しても,同様に,「ポータブル装置」が「ラジオを 位置情報と興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索する」ものであることを表す記載も示唆も存在しない。 また,それぞれの段落の記載を総合しても,同様に,「ポータブル装置」が「ラジオを聞いたユーザが,その視聴の情報を元に興味ある情報(ラジオで放送されたレストランの名前)を選択する」ものであり,「ラジオを聞いたユーザが興味ある情報(ラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,ポータブル装置の位置情報と興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索する」ものであるとはいえない。 以上によれば,原告の,各段落に記載された内容によれば「『インタラクティブなポータブル装置』,すなわち『ラジオを聞いたユーザが,何らかの方法でポータル装置を用いて興味ある情報(そのラジオで放送されたレストランの名前)を選択し,該ポータブル装置が,該ポータブル装置の位置情報と前記興味ある情報との両方をキーとしてデータベースを検索し,詳細な情報(その位置に対応した当該レストランの情報)を提供するポータブル装置』が記載されていることは明白である。」- 17 -との主張,及び,上記の特徴は出願当初の明細書に開示及び示唆されているとの主張は失当である。 したがって,原告が主張する取消事由3は理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)について取消事由1は,「本願発明においては,例えば『ラジオで放送されたレストランの名前』が『無線伝送された内容』に相当するものであり,そのレストランの名前に対応して,『場所に適合した情報』であるところの『その位置に対応した当該レストランの情報』が提供されるものである。」との主張を根拠とするものである。 しかし,審決は,本願発明の「無線伝送された内容」及び「場所に適合した した情報』であるところの『その位置に対応した当該レストランの情報』が提供されるものである。」との主張を根拠とするものである。 しかし,審決は,本願発明の「無線伝送された内容」及び「場所に適合した情報」について,請求項1の「少なくとも一つの無線伝送を受信する」,「前記少なくとも一つの無線伝送は,ラジオまたはテレビジョンによるものであり」との記載,及び本願明細書【0012】の「基本装置は,GPSデータをキーとして使用し,装置内に格納されているデータベース若しくは所定の手段によってこれに取り付けられているデータベース,または電話,ラジオ若しくはテレビ放送などの所定の手段によって受信されるデータベースからディジタル音声を検索するポータブルオーディオ情報システムである。」との記載から,「無線伝送」は「電話,ラジオまたはテレビ放送などの無線による情報の伝送」を指し,「無線伝送された内容」は「電話,ラジオまたはテレビ放送などの無線による情報の伝送手段によって伝送されたデータベースなどの情報」を指すものと解することが相当であると認定判断した上,引用発明の「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,携帯端末に受信されたナビゲーション情報(無線伝送された内容)に含まれる,すなわち対応する情報であるといえるとし,該「利用者の現在位置周辺の有名店などの情報」は,場所に適合した情報であって,緯度・経度などの位置情報とは異種の対象に関するものであるとし,引用発明の「携帯装置」は,「少なくとも一つの無線伝送を受信する受- 18 -信機であって,前記少なくとも一つの無線伝送は,携帯電話機能によるものであり,かつ前記携帯装置の操作から独立しており,かつ,無線伝送された内容(受信されたナビゲーション情報)に対応し,場所に適合した情報(利用者の現在位置周辺の有名店 線伝送は,携帯電話機能によるものであり,かつ前記携帯装置の操作から独立しており,かつ,無線伝送された内容(受信されたナビゲーション情報)に対応し,場所に適合した情報(利用者の現在位置周辺の有名店などの情報)を含み,前記情報は異種の対象に関するものである受信機」を備えていると認定判断したものである。 この審決の認定判断は,本願発明の要旨及び本願明細書(甲3),そして引用例1(甲1)の記載に照らして是認することができ,審決がした本願発明と引用発明との間の一致点,相違点の認定に誤りがあるとは認められない。 原告の上記の主張は,本願発明の発明特定事項の一部について,請求項1の記載からも本願明細書の記載からもそのように限定して読み取ることのできない構成の解釈に基づくものであって,この主張を前提とする取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(容易想到性判断の誤り)について取消事由2も,「本願発明においては,『無線伝送された内容』として,例えば『ラジオで放送されたレストランの名前』が挙げられ,そのレストランの名前に対応して,『場所に適合した情報』であるところの『その位置に対応した当該レストランの情報』が提供される」との主張を前提とするところ,前記1で判示したとおり,この主張は請求項1の記載及び本願明細書の記載に基づくものとはいえないから,取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本願発明の開示に関する認定の誤り)について取消事由3は,原告が審判においてした主張について審決が念のため付加して説示した部分を論難するものにすぎず,一致点及び相違点の認定,容易想到性判断についての取消事由が理由ない以上,判断するまでもない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主 点の認定,容易想到性判断についての取消事由が理由ない以上,判断するまでもない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官池下朗 裁判官古谷健二郎

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