令和1(ワ)11732

裁判年月日・裁判所
令和3年1月21日 東京地方裁判所
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判決文本文18,607 文字)

令和3年1月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 令和元年(ワ)第11732号損害賠償請求反訴事件口頭弁論終結日令和2年10月29日判決 反訴原告株式会社A(以下「原告会社」という。) 反訴原告B(以下「原告B」といい,原告会社と併せて「原告ら」という。)上記2名訴訟代理人弁護士間宮順同吉村悦章 反訴被告株式会社C(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士野村憲弘同小熊永吉同田中絋三同田中みどり同田中みちよ 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告ら各自に対し,金3934万4000円及びこれに対する令和元年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告らが,原告会社と被告との間でライセンス契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結したと主張して,主位的には本件ライセンス契約に る金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告らが,原告会社と被告との間でライセンス契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結したと主張して,主位的には本件ライセンス契約に基づくライセンス料3434万4000円(その内訳は,平成28年9月1日から平成30年11月15日までの期間につき月額120万円で計算した額及びこれに係る消費税相当額)及び弁護士費用500万円の合計3934万 4000円の支払を求め,予備的には,被告において,原告Bが取締役を退任した後の平成28年9月1日以降も,原告らの許諾なく無断で①被告ウェブサイトにおいて原告会社の登録商標と類似する標章を表示した行為は,原告会社の有する別紙本件登録商標目録記載1及び2の構成から成る商標に係る商標権を侵害し,②平成28年11月15日まで,原告Bを示す「D」を含む「株式 会社E」(旧商号)を商号として使用し続けた行為は原告Bの周知商品等表示又は著名表示を冒用する不正競争行為に当たる旨を主張して,①につき商標権侵害を内容とする不法行為を構成し,②につき不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号,2号違反を内容とする不法行為を構成するとして,被告に対し,原告ら各自に逸失利益3434万4000円及び弁護士費用500 万円の合計3934万4000円の損害賠償及びこれに対する反訴状送達の日(令和元年5月14日)の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお,本件の本訴は,被告が,平成30年12月29日付け書面で原告らから3934万4000円の支払を請求された旨を主張して,同支払債務の不存 在の確認を求める事案であったが,取下げにより終了した。 ,被告が,平成30年12月29日付け書面で原告らから3934万4000円の支払を請求された旨を主張して,同支払債務の不存 在の確認を求める事案であったが,取下げにより終了した。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 当事者ア原告会社は,昭和46年3月1日に設立された,建築設計監理,建築設計に関するコンサルタント等を業とする株式会社である。(甲24) 原告Bは,後記(3)のとおり著名な建築家であり,原告会社の代表取締役を務めているほか,平成23年9月1日から平成28年8月31日まで,被告の取締役を務めていた。 イ被告は,平成23年9月1日に設立された,建築設計監理,都市計画及びその他各種の計画管理等を業とする株式会社である。被告は,その設立 以降,平成30年11月16日に現在の商号に変更する旨の登記を了するまでの間,自らの商号として「株式会社E」(以下「被告旧商号」という。)を用いていた。 (2) 原告会社の有する商標権原告会社は,別紙本件登録商標目録記載1の構成から成る商標(以下「本 件登録商標1」という。)につき,指定商品又は指定役務を「建築物の施工監理」(第37類),「彫刻・絵画・版画などの工芸品・美術品の展示,彫刻・絵画・版画などの工芸品・美術品の展示に関する指導・助言・情報の提供,工芸・美術・デザインに関する展示会の企画・運営・開催」(第41類),「建築物の設計,建築物の設計に関する助言,都市開発・都市計画に関する研究・ 調査・企画・立案・助言,環境デザインに関する研究・調査・企画・立案・助言,立地計画に関する研究・調査・企画・立案・助言 物の設計,建築物の設計に関する助言,都市開発・都市計画に関する研究・ 調査・企画・立案・助言,環境デザインに関する研究・調査・企画・立案・助言,立地計画に関する研究・調査・企画・立案・助言,インテリアデザインの考案,インテリアデザインの考案に関する助言,彫刻・絵画・版画などの美術品に関するデザインの考案」(第42類)とする登録第5597794号(平成25年7月12日設定登録)の商標権を有し,同目録記載2の構成 から成る商標(以下「本件登録商標2」という。)につき,上記と同じものを 指定商品又は指定役務とする登録第5614670号(平成25年9月13日設定登録)の商標権を有している(以下,両商標を併せて「本件登録商標」といい,両商標権を併せて「本件商標権」という。)。 (3) 原告Bの著名性原告Bは,昭和40年代から今日に至るまで,建築家として日本のみなら ず世界的に極めて高い評価を得ている。このため,被告が設立された平成23年当時において,既に日本にとどまらず,世界的にも,建築の分野において「B」,「D」,「F」等の表示は,原告Bを示すものとして広く知られ,著名であった。 (4) 被告の行為 被告は,原告Bが被告の取締役を辞任した平成28年9月1日以降,①平成29年1月末頃まで,被告のウェブサイトにおいて,別紙被告標章目録記載1 及び2の各標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」といい,両標章を併せて「被告標章」ともいう。)を表示させ,②平成30年11月15日までの間,被告旧商号(株式会社E)の一部として,「D」の表示(以下「本件表 示」という。)を使用した。(甲3,乙8ないし14)(5) 被告から原告らに対する金銭支払の状況被告は,別紙支払状況一覧記 株式会社E)の一部として,「D」の表示(以下「本件表 示」という。)を使用した。(甲3,乙8ないし14)(5) 被告から原告らに対する金銭支払の状況被告は,別紙支払状況一覧記載のとおり,平成24年(2012年)8月16日から平成28年(2016年)12月30日までの間,原告会社又は原告Bに対し,合計5929万2000円を支払った(なお,平成24年6 月30日付けの相殺処理による756万円の支払については争いがある。)。 2 争点(1) 本件ライセンス契約の成否・内容(争点1)(2) 被告による商標権侵害の成否(争点2)ア本件登録商標と被告標章の類否及び役務の類否(争点2-1) イ本件登録商標に係る使用許諾の有無(争点2-2) ウ被告の主観的要件(争点2-3)(3) 被告による不正競争行為の存否(争点3)ア周知商品等表示混同惹起行為(不競法2条1項1号)又は著名表示冒用行為(不競法2条1項2号)の有無(争点3-1)イ本件表示に係る使用許諾の有無(争点3-2) ウ被告の主観的要件(争点3-3)(4) 被告による商標権侵害又は不正競争行為と相当因果関係を有する損害及びその額(争点4) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件ライセンス契約の成否・内容)について [原告らの主張]ア原告会社と被告は,遅くとも平成24年7月までに,原告会社が,被告に対し,本件登録商標及び「B」「株式会社A」等の標章の使用を許諾し,その対価として,被告が,原告会社に対し,ライセンス料月額120万円及びこれに係る消費税相当額を毎月末に支払う内容の本件ライセンス契 約を締結した。しか 「株式会社A」等の標章の使用を許諾し,その対価として,被告が,原告会社に対し,ライセンス料月額120万円及びこれに係る消費税相当額を毎月末に支払う内容の本件ライセンス契 約を締結した。しかして,平成28年9月1日から平成30年11月15日までのライセンス料(合計額3434万4000円)が支払われていない。 本件ライセンス契約の締結に係る経緯は後記イのとおりであり,また,後記ウのとおり,被告は,本件ライセンス契約に基づき,原告会社に対し て,平成24年7月分から平成28年8月分までのライセンス料を支払っている。 なお,被告は,本件ライセンス契約上,自らの義務の不履行によって原告会社に対し,訴訟費用又は損害賠償の負担(訴訟費用(上限なし)及び合理的範囲の弁護士費用を含む。)が発生しないようにし,かつ,損害を補 償するものとされている。 イ被告は,高齢・体調不良で従前と同様に建築設計業務を続けることが難しくなった原告Bの状況に鑑み,原告会社の取締役であったG(現在,被告の代表取締役。以下「G」ともいう。)及び原告会社の従業員であったH(現在,被告の代表取締役。以下「H」ともいう。)を中心として,原告B及び原告会社の監修のもと,原告Bのデザインした建築物の設計監理や都 市計画等に係る計画管理等を行う会社として設立された。 そして,この際,原告らは,被告がいずれは原告Bの知名度や知見に頼らなくても事業を営むことができるように,その手助けとして,原告会社と被告との間で,本件ライセンス契約を締結して,被告において,原告Bに関連する名称を使用して営業することを許可することとした。 本件ライセンス契約,及び被告が原告会社に対して設計業務のコンセプト及びデザイ ンス契約を締結して,被告において,原告Bに関連する名称を使用して営業することを許可することとした。 本件ライセンス契約,及び被告が原告会社に対して設計業務のコンセプト及びデザインに関するコンサルティングを委託する業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)については,原告会社と,関連する当事者の間で内容が検討され,平成24年9月29日時点において,本件ライセンス契約に係る契約書の英語版のドラフトと本件業務委託契約に係る契 約書のドラフトが存在した。そして,同年12月11日に,原告会社の取締役であるI(以下「I」という。)から被告のG及びHに対し,本件ライセンス契約及び本件業務委託契約に係る契約書の最新版のドラフトを送信して,付け加えるべきことの有無を問い合わせたところ,Gは本件ライセンス契約については概ね問題ないとして,追加のコメントをしなかった。 ウ原告会社は,本件ライセンス契約に基づき,被告に対し,平成24年7月以降,ライセンス料月額120万円及びこれに係る消費税相当額の支払を請求し,被告は,時折滞納しながらも,平成26年8月分まで合計3120万円及びこれに係る消費税相当額を支払った。 その後,被告は経営状況が厳しくなったなどとして,ライセンス料の支 払をしばしば滞らせ,支払時期の延期,ライセンス料の減額を求め,また, 税務署から指導を受けたとして,支払名目の変更等を原告会社に対して申し出るようになった。これを受けて,平成26年9月分から平成27年8月分までのライセンス料1440万円及びこれに係る消費税相当額115万2000円の合計1555万2000円について,原告会社は,「各プロジェクト監修料 5.89%として」とする名目で被告に対する請求書 を発行し, 料1440万円及びこれに係る消費税相当額115万2000円の合計1555万2000円について,原告会社は,「各プロジェクト監修料 5.89%として」とする名目で被告に対する請求書 を発行し,被告は,平成27年12月10日に上記金額を支払った。また,平成27年9月分から平成28年8月分までのライセンス料について,被告は,原告会社に対し,1か月120万円を90万円に減額して計算した1080万円を,平成28年8月31日に被告の取締役を辞任することとなった原告Bの退職金名目で支払うことを申し出,原告会社はこれを承諾 して,被告から,退職金名目とするために必要な源泉徴収後の850万2852円の支払を受けた。 なお,原告会社が,被告との間において,平成28年9月分以降のライセンス料について変更する合意,又は本件ライセンス契約を解約する旨の合意をしたことはない。 [被告の主張]ア否認する。原告会社と被告との間で,本件ライセンス契約が締結されたことはない。 被告の設立の経緯及び本件ライセンス契約の契約書のドラフトに係る経緯は後記イのとおりであり,また,前記第2の1(5)のとおり,被告から, 原告会社又は原告Bに対し金銭を支払ったが,これは,本件ライセンス契約に基づくライセンス料を支払う趣旨ではなく,運転資金等に困窮する原告らに対する「支援金」で,原告Bに対する「お小遣い」のような種類の金員(以下「本件支援金」という。)である。 イ被告は,平成22年頃より,原告会社の代表者である原告Bが高齢を理 由に建築設計業務の実務から離れたいと希望するようになり,この原告B の希望を実現するために,原告会社の人員を整理し,同社を事実上解体した上で,その業務と人員を引き継がせる が高齢を理 由に建築設計業務の実務から離れたいと希望するようになり,この原告B の希望を実現するために,原告会社の人員を整理し,同社を事実上解体した上で,その業務と人員を引き継がせることを企図して,原告Bの指示の下,平成23年9月1日に,原告Bと長年の間師弟関係にあったGが代表取締役,原告Bが取締役に就任する形で設立された。 そして,被告が原告会社の業務を引き継ぐにあたっての経済的関係とし ては,被告は,原告らから引き継いだ業務及び関連する業務等を行うことで得た業務報酬の中から都度,売り上げに応じた分配金を,原告らに対し,支払うことになっていた。 なお,本件ライセンス契約及び本件業務委託契約に係る契約書のドラフトの作成準備が行われていたことは認めるが,もともとは被告ではなく, 中国,スペイン及びイタリアに所在する「F」などの表記が含まれた商号を使用している各設計事務所と原告会社との間の契約として締結が予定されていたものであり,当初は英語でドラフトが作成され,中国語でも契約書が作成されることが予定されていたものである。当時,原告会社の経理を担当していた被告のHは,後記ウの本件支援金の支払につき,被告の 経理処理の上で税務署に対する説明のためにきちんとした裏付けが必要であると考え,一時期,上記各ドラフトを参考にして契約書を作成することを検討したが,本件ライセンス契約に係るドラフトで指定すべき原告会社の標章も確定しておらず,諸条件が被告の原告会社に対する支払の実態にもそぐわないことから,上記契約書の作成を断念し,結局において,契 約調印には至ってない。 ウ被告が原告らに金員を支払った経緯は次のとおりである。 即ち,上記のとおり,被告は原告らに対し,分配金を支払う 書の作成を断念し,結局において,契 約調印には至ってない。 ウ被告が原告らに金員を支払った経緯は次のとおりである。 即ち,上記のとおり,被告は原告らに対し,分配金を支払うこととなっていたが,設計建築業務における業務報酬という性質上,被告の売上金の収入時期及び金額が一定せず,分配金の支払時期及び金額も一定しないこ とになるところ,業務を被告に引き継いだ原告会社は独自の収入が激減し, 事務所の賃料(月額約105万円),Iの経営する法人に対するマネージメント料(月額約50万円),原告Bに対する給与(月額250万円)及び銀行への借入金返済(月額約120万円)等の支払に困難を来すようになった。被告のG及びHは,お世話になった原告Bらの資金困窮ぶりを見かねて,可能な範囲で原告会社に対して援助をしたいと考え,1年間の限定で 月額120万円の資金援助をすることとした。これらの本件支援金は,当初,「ライセンス料」という名目で支払われていたが,これは「支援金」や「お小遣い」では体裁も悪く,また,原告Bに対し失礼であろうと考えたこと,また,被告の経理処理の上で税務署に対する関係で,相応しい名目にする必要があったことから,そのようにしたにすぎない。 上記のとおり,本件支援金の支払期間として合意したのは1年間であったが,1年を経過しても,原告らの経済的状況は変わらず,被告に対し,金銭の支払請求を続けてきた。被告としては,いわば「弟子」の立場で「敬愛」していた師匠である原告Bらの金の無心に対し,無碍に支払を打ち切ることもできず,本件支援金の支払を継続したが,平成27年(2015 年)3月に,被告が,税務調査を受けた際に,税務署から「当事者間にライセンス契約等が存在しないこと,原告Bは被告の取締 ち切ることもできず,本件支援金の支払を継続したが,平成27年(2015 年)3月に,被告が,税務調査を受けた際に,税務署から「当事者間にライセンス契約等が存在しないこと,原告Bは被告の取締役であり,被告が他社(原告ら)に対して名称使用料を支払う理由も必要性も認められないこと,各プロジェクトの案件毎に原告Bに対して外注費として対価を支払っているのに,さらに対価を重ねることは正当性のない利益供与という認 定となること」等を理由として,被告設立後から原告Bに対して支払ってきた,ライセンス料名目での本件支援金の支払については,一切,被告の経費として算入することはできない旨の指摘を受け,過去3期分に遡り修正申告を行い,追加の法人税の納付を余儀なくされた。このため,被告は,本件支援金の支払名目を変更せざるを得なくなり,また,被告自体も常時 資金繰りが困難な状態にあったことから,同年12月10日に,とりあえ ず「監修料」という名目に変えて1555万2000円を支払うことをもって,原告らに対する本件支援金の支払を打ち切る旨を通告した。 しかしながら,原告らの請求が続いたため,被告が苦肉の策として,原告Bに対し,今後,月額30万円から60万円程度の取締役報酬を支払う旨の提案を行ったところ,原告らは,原告Bが被告の取締役を辞任するの で,取締役報酬ではなく退職金を支払ってほしい旨を求めてきたため,被告は,原告Bに対し退職金1080万円(税引き後850万2852円)を支払うこととし,この際に,被告は,原告らに対し,今後,本件支援金の支払をしない旨を通告した。 (2) 争点2-1(本件登録商標と被告標章の類否及び役務の類否)について [原告らの主張]ア本件登録商標1と被告標章1は,外観 件支援金の支払をしない旨を通告した。 (2) 争点2-1(本件登録商標と被告標章の類否及び役務の類否)について [原告らの主張]ア本件登録商標1と被告標章1は,外観,称呼及び観念が全く同一である。 また,被告標章1を使用する役務は,本件登録商標1の指定役務である「建築物の施工監理」及び「建築物の設計,建築物の設計に関する助言,都市開発・都市計画に関する研究・調査・企画・立案・助言」に含まれる。 イ本件登録商標2と被告標章2は,それぞれの要部である「F」及び「K」の外観,称呼及び観点が同一であるから,類似する。また,被告標章2を使用する役務は,本件登録商標2の指定役務である「建築物の施工監理」及び「建築物の設計,建築物の設計に関する助言,都市開発・都市計画に関する研究・調査・企画・立案・助言」に含まれる。 [被告の主張]原告らの上記主張は争う。 (3) 争点2-2(本件登録商標に係る使用許諾の有無)について[被告の主張]被告が,そのウェブサイトにおいて被告標章を表示していたことは,次の とおり,すべて原告Bが主導して企図したスキーム(以下「本件スキーム」 という。)の一環であり,原告Bの意思によるものであって,原告らの了解のもとに行われていたから,本件登録商標に係る原告会社の使用許諾が存したといえる。 すなわち,平成22年(2010年)頃,既に80歳間近になった原告Bは,「今後は,自由に,自分の好きなことだけを,法的責任なくやりたい」 と高齢を理由に建築設計業務の実務から離れたいと強く希望するようになり,原告会社を事実上解体した上で,原告会社が当時受注していた業務及びその後に派生する業務,並びに原告会社に帰属して りたい」 と高齢を理由に建築設計業務の実務から離れたいと強く希望するようになり,原告会社を事実上解体した上で,原告会社が当時受注していた業務及びその後に派生する業務,並びに原告会社に帰属していた従業員を新たに設立する被告に引き継がせ,被告から報酬分配金を得るという本件スキームを構築した。Gは,当時58歳であり,自身も建築設計業務の現場から退くこと を検討していたが,師匠である原告Bの要請を断り切れず,被告の代表取締役に就任することになった。 そして,本件スキームの目的を達成する上で,原告Bに関連する会社であるという外観を持たせ,原告らと緊密な営業上の関係にあることを表示するために,被告のウェブサイトにおいて,被告標章を表示したものである。 なお,上記ウェブサイトについては,原告Bが被告の取締役を辞任後も取締役として掲載されているので早く削除してほしい旨の依頼がIからなされたのに応じて修正作業を行った際に,何らかの不具合が生じたため,そのまま平成29年(2017年)2月頃にウェブサイトそのものを閉鎖したが,当時,被告標章の使用について,Iから指摘やクレームを受けたことはなか った。 [原告らの主張]被告の上記主張は争う。被告を設立し,被告を含む原告会社の新たな体制の全体を構想したのはGである。また,被告ウェブサイト上の表示について,原告Bは一切関知しておらず,原告会社においては,本件ライセンス契約に 基づくライセンス料が支払われる限りにおいて,被告ウェブサイト上で原告 B関連の商標等の表示を許諾していたに過ぎない。 (4) 争点2-3(被告の主観的要件)について[原告らの主張]被告は,本件登録商標と被告標章が同一又は類似し,被告標章を B関連の商標等の表示を許諾していたに過ぎない。 (4) 争点2-3(被告の主観的要件)について[原告らの主張]被告は,本件登録商標と被告標章が同一又は類似し,被告標章を使用する役務が本件登録商標の指定役務に含まれることを認識し,また,原告らに対 しライセンス料を支払わない限り,本件登録商標と同一又は類似の被告標章の使用を許諾しないことを十分に認識していたにもかかわらず,ライセンス料の支払を拒絶しながら,被告標章を被告のウェブサイトにおいて使用したのであるから,被告に故意があったことは明らかである。 [被告の主張] 原告らの上記主張は争う。 (5) 争点3-1(周知商品等表示混同惹起行為又は著名表示冒用行為の有無)について[原告らの主張]建築の分野において,本件表示(「D」)は原告Bを示す名称として著名で あるところ,被告がその旧商号において「D」の表示を使用していたことは,原告らと被告に緊密な営業上の関係があるかのような誤信を招くものであって,これらからすれば,上記は,不競法2条1号又は2号に違反する行為である。 [被告の主張] 原告らの上記主張は争う。表記を問わず,「B」という姓名での表示については原告Bを指すものとして広く知られていることは争わないが,その他の名称(「B」「D」「F」など)が,原告Bを指すものとして著名であるわけではない。 (6) 争点3-2(本件表示に係る使用許諾の有無)について [被告の主張] 被告が,被告旧商号において「D」の名称を使用していたことは,前記(3)の被告標章の使用と同様,すべて原告Bが主導して企図した本件スキームの一環であり,原告Bの意思によるも 主張] 被告が,被告旧商号において「D」の名称を使用していたことは,前記(3)の被告標章の使用と同様,すべて原告Bが主導して企図した本件スキームの一環であり,原告Bの意思によるものであって,原告らの了解のもとに行われていたから,本件表示に係る原告らの使用許諾が存したといえる。なお,被告旧商号については,当初は,原告Bの名前だけを入れたものも検討され る中で,原告Bが自ら選定したものである。 [原告らの主張]被告の上記主張は争う。被告を設立し,被告を含む原告会社の新たな体制の全体を構想したのはGである。また,被告旧商号を決定したのは,Gであり,原告Bが,原告会社の代表者として,本件ライセンス契約に基づくライ センス料の支払を条件に,被告旧商号の使用を容認したものであるにすぎない。 (7) 争点3-3(被告の主観的要件)について[原告らの主張]被告は,建築設計監理等の業界における原告Bの評価を十分に認識し,原 告らに対しライセンス料を支払わない限り,被告の商号の一部への本件表示の使用を許諾しないことを十分に認識していたにもかかわらず,ライセンス料の支払を拒絶しながら,本件表示を被告旧商号において使用したのであるから,被告に故意があったことは明らかである。 [被告の主張] 原告らの上記主張は争う。 (8) 争点4(被告による商標権侵害又は不正競争行為と相当因果関係を有する損害及びその額)について[原告らの主張]ア逸失利益 被告による商標権侵害又は不正競争行為により,原告らは少なくとも平 成28年9月1日から平成30年11月15日までの間,使用許諾料相当額である3180万円(1か月あたり12 被告による商標権侵害又は不正競争行為により,原告らは少なくとも平 成28年9月1日から平成30年11月15日までの間,使用許諾料相当額である3180万円(1か月あたり120万円とし,1か月に満たない日数は日割計算)及びこれに係る消費税相当額254万4000円の合計3434万4000円の損害を被った。 イ弁護士費用 原告らにおいては,訴訟代理人に対し,被告との交渉及び訴訟上の手続を委任したことにより,少なくとも500万円の弁護士費用の負担が生じた。 [被告の主張]原告らの上記主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の前提事実及び各末尾掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 被告設立の経緯等 ア原告Bは,昭和46年3月1日に設立された原告会社の代表取締役を務め,多数の建築設計監理等の業務に従事し,前記第2の1(3)のとおり,建築家として日本のみならず世界的に極めて高い評価を得てきたが,80歳を迎える平成22年(2010年)頃になると,今後はそのような多数の業務への従事を離れ,個人の立場で自分の好きな仕事だけをやっていきた い旨の希望を口にするようになった。そこで,かかる原告Bの希望に従い,関係者において,原告会社の従業員と業務を原告会社から切り離して別会社に引き継がせ,当該別会社が引き継いだ業務により報酬を得た場合に,当該報酬の一部を原告会社又は原告Bに対し分配金として支払うという大枠の枠組みによる原告会社の組織再編が企図された。(甲36) イその後,平成23年2月頃から同年7月頃にかけて,再編後の新体制に ついて検討され,原告会社の業務内容を「 いう大枠の枠組みによる原告会社の組織再編が企図された。(甲36) イその後,平成23年2月頃から同年7月頃にかけて,再編後の新体制に ついて検討され,原告会社の業務内容を「建築・都市デザインコンサル,執筆,講演会,展覧会」等とし,役員構成として,原告Bを代表取締役,Gを取締役,Iをアート担当の取締役とする一方,新たに設立する別会社の名称を「(株)J」とし,役員構成として,Gを代表取締役,原告Bを「取締役最高顧問」,Hを業務担当の執行役員とすることなどが話し合われた。 また,中国,イタリア及びスペインにおいて,従来から原告会社と提携関係にあり,原告会社の業務を行っていた各事務所については,原告会社の海外での業務を引き継ぐものと位置づけられ,それぞれの商号に原告Bを示す「B」「F」が入れられた。(甲4,甲36)ウそして,平成23年9月1日,商号を「株式会社E」(被告旧商号)とす る被告が設立され,上記の話合いに沿う形で,Gが代表取締役,原告Bが取締役に就任した。また,原告会社に在籍していた従業員26名のうち退職した12名を除く14名については被告に移籍した。なお,被告の設立時以降,平成25年(2013年)4月まで,被告の本店所在地は原告会社の本店所在地と同じ場所にあった。また,被告の履歴事項全部証明書の 目的欄の記載は,平成30年11月1日に変更されているが,変更前には,原告会社との共同事業,及び原告会社からの受託業務及び引継業務との記載もなされていた。(甲3,弁論の全趣旨)エその後,被告は,上記の枠組みに従い,原告会社から引き継いだ業務及びこれに関連する業務に従事し,業務報酬を得た場合には,原告会社に対 し,案件毎に報酬分配を行っている。また,前記第2の1(4)のとお ,被告は,上記の枠組みに従い,原告会社から引き継いだ業務及びこれに関連する業務に従事し,業務報酬を得た場合には,原告会社に対 し,案件毎に報酬分配を行っている。また,前記第2の1(4)のとおり,被告は,平成29年1月末頃まで,被告のウェブサイトにおいて,被告標章を表示させ,平成30年11月15日までの間,被告旧商号(株式会社E)において原告Bを示す表示である「D」を使用したところ,後記(3)のとおり,被告の原告らに対する金員支払を巡って両者の関係が悪化するまでの 間,被告によるウェブサイトの表示や被告旧商号について,原告らが異議 を述べたり,抗議をしたりしたことはなかった。(甲3,乙8ないし14,弁論の全趣旨)(2) 本件ライセンス契約の契約書のドラフトに係る経緯等ア原告会社は,海外にある提携先事務所から定期的に入金を得ることなどを企図し,当時原告会社に在籍していたHが窓口となって,弁護士に依頼 して,平成24年4月頃までに,英文でライセンス契約と業務委託契約に係る契約書のドラフトを準備していた。(甲4ないし7,甲36)イその後,後記(3)のとおり,平成24年7月頃以降,被告は,原告会社に対する「ライセンス料」名目での月額120万円の支払を開始していたところ,この支払名目の体裁を整えるために,上記アの英文契約書のドラフ トを日本語に翻訳して流用することを企図して,日本語で記載された原告会社と被告との間のライセンス契約及び業務委託契約に係る契約書のドラフトについて,同年12月頃まで検討を続けた。 (甲36,乙4ないし7)ウしかしながら,日本語で記載されたライセンス契約及び業務委託契約に係る契約書については,原告会社と被告との間において,最終的に調印に までは至ら 続けた。 (甲36,乙4ないし7)ウしかしながら,日本語で記載されたライセンス契約及び業務委託契約に係る契約書については,原告会社と被告との間において,最終的に調印に までは至らなかった。(甲36,弁論の全趣旨)(3) 被告から原告らに対する金員支払に係る事実経過ア原告会社は,上記枠組みにより業務を被告に引き継いだ後,事業収入減少等のため財務状態が悪化し,平成24年6月期の決算において赤字になることが懸念される状態に陥った。被告の代表取締役であるGは,原告会 社の上記窮状を知って,被告から原告会社に対し,1年間に限って一定の経済的な支援をすることとした。そして,Gは,その金額としては,当時賃借していた事務所家賃の原告会社負担額を念頭に,月額120万円及び消費税相当額とし,平成24年1月ないし6月分までは,被告の赤字決算を回避するため,被告の原告会社に対する債権と相殺処理することとし, 平成24年7月分以降についての金員を,原告会社に対し送金した。支払 名目については,被告の税務上の観点等から,当初は「ライセンス料」という名目にすることとした。(甲36,弁論の全趣旨)イその後,平成25年1月以降も,原告会社からの支払請求が継続し,被告は,従前の原告らとの関係から送金を継続した。しかし,平成27年3月に税務調査が入った際に,税務当局から,上記アの原告会社に対する金 員支払につき,「ライセンス料」という支払名目を基礎づけるライセンス契約などが存在しておらず,支払名目を認める法的根拠がないこと,原告Bが被告の取締役であることから被告が原告らに対して名称使用の対価を支払う正当性はなく,原告Bに対する利益供与に当たること,被告が原告会社に対し各プロジェクトで個別に外注費を支払っ がないこと,原告Bが被告の取締役であることから被告が原告らに対して名称使用の対価を支払う正当性はなく,原告Bに対する利益供与に当たること,被告が原告会社に対し各プロジェクトで個別に外注費を支払っていること等を理由 として,平成24年1月以降になされた,原告会社に対する「ライセンス料」名目での支払は事業上の必要経費とは認められない旨の指摘を受けた。 この結果,被告は,過去3年の法人税につき修正申告を行い,追加納付を余儀なくされた。(甲36)このため,被告は,原告会社に対し,従前の「ライセンス料」名目での 支払はできないこと,平成26年9月分からの平成27年8月までの12か月分については「監修料」名目での支払となり,それ以降の支払は「ご容赦頂きたい」旨を告げた上で,原告会社から上記12か月分の請求書の送付を受け,平成27年12月10日に1555万2000円を支払った。 なお,上記のとおり支払名目を変更することについて,原告らは特段の異 議を述べなかった。(甲36,弁論の全趣旨)ウしかし,平成28年3月になって,原告らから被告に対し,再度,ライセンス料の支払を求める旨の連絡が入り,以降,被告のGと原告会社のIとの間で,支払金額と支払名目について協議がなされ,最終的には,原告Bが平成28年8月31日付けで被告の取締役を辞任するのに伴う,原告 Bへの退職金の名目で,1080万円を支払うこととなった。被告は,こ れ以上の金員の支払は一切行わないと通告した上で,上記の1080万円を平成28年11月28日及び同年12月30日の2回に分けて支払った。(甲16,甲17,甲34ないし36) 2 争点1(本件ライセンス契約の成否・内容)について(1) 原告らは,①原告会社及び被告の関係者の間で協 及び同年12月30日の2回に分けて支払った。(甲16,甲17,甲34ないし36) 2 争点1(本件ライセンス契約の成否・内容)について(1) 原告らは,①原告会社及び被告の関係者の間で協議が重ねられた後,原告 会社の取締役であるIが送信した本件ライセンス契約の契約書のドラフトについて,被告の代表取締役であるGが何らの異議もコメントもしなかったこと,②現に,被告が,原告会社に対し,平成24年7月分から平成28年8月分まで,本件ライセンス契約に基づく金員の支払をしていることなどを指摘し,原告らが主張する内容の本件ライセンス契約が成立している旨主張す る。 しかしながら,①本件証拠上,原告会社と被告との間で本件ライセンス契約が成立したことを示す契約書が存するとは認められない。この点,原告会社と被告との間の本件ライセンス契約に係る契約書のドラフト作成に関する経緯については,上記1(2)のとおり認められ,同ドラフトの作成は,飽くま で,被告の原告会社に対する支払が開始された平成24年当時において,「ライセンス料」との支払名目の体裁を整えることについての検討の一環として行われていたものであるにすぎない。しかも,上記1(3)のとおり税務当局から「ライセンス料」名目は認められない旨の指摘を受けるなどして,結局,上記の支払名目の体裁を整えるとの検討自体も頓挫するに至ったといえ,同 契約書についても最終的に調印にまでは至らずに現在に至っているのである。 これらによれば,上記の契約書のドラフト作成の経緯をもって,本件登録商標その他の標章の対価として,ライセンス料月額120万円を支払うなどの当事者間の合意が成立したものと推認するに足りないものというべきである。 また,②被告から原告会社に対する金員の支払については,上 標その他の標章の対価として,ライセンス料月額120万円を支払うなどの当事者間の合意が成立したものと推認するに足りないものというべきである。 また,②被告から原告会社に対する金員の支払については,上記1(1)で認 定した被告設立の経緯のとおり,著名な建築家である原告Bの引退の意向を 踏まえて,被告が原告らから引き継いだ業務を遂行して得た報酬を原告らに分配するという大筋の枠組みが,原告らを含めた関係者において共通の了解事項とされ,これに基づき,被告の業務遂行により個別の案件毎に報酬が得られた場合は,被告から原告会社に対して分配金の支払がされていることが認められるから,これ以外の定期支払たる上記金員の支払は,被告の業務遂 行とは直接関連のない要素を帯びるものといわざるを得ない。しかして,前記説示のとおり,契約書のドラフト作成も中途で頓挫するなどしており,「ライセンス料」との支払名目も被告の税務上の観点から,月額120万円という額も家賃等を念頭に決められたものである。また,上記1(3)で認定した支払の経緯のとおり,支払名目は,ライセンス料の後に,監修料,退職金等と いうように変遷しているところ,原告ら側のIと被告側のG,Hとの電子メールでのやりとり等(甲13ないし17,34ないし35等)をみても,原告らからの金員支払の要請に対し,被告においてそれを踏まえて支払を検討し,ライセンス料以外での名目(監修料,退職金)での支払について提案を行い,原告らは,これに対して特段の異議を述べることはないまま,金員支 払を受けているものである。これらに加えて,本件のような額の金員であったとしても,著名な建築家である原告Bの引退の意向や上記枠組みを踏まえて,被告が原告らを支援する趣旨で支払うということが,不自然なものとは解されない ある。これらに加えて,本件のような額の金員であったとしても,著名な建築家である原告Bの引退の意向や上記枠組みを踏まえて,被告が原告らを支援する趣旨で支払うということが,不自然なものとは解されないことなども併せ考慮すれば,支払われた金員の実質が,当事者間の合意に基づくライセンス料であると認めることはできないというほかない。 以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。 (2) 上記(1)に説示したように,原告ら主張に係る各事実は,それぞれ原告会社と被告との間の本件ライセンス契約の成立を推認するに足りるものではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。被告から原告会社に対する金員の支払も,被告における被告標章の表示及び被告旧商号における本件表示の 使用も,前記説示の共通の了解事項に基づくものと認められ,その後の原告 らの諸対応も,これを裏付けるものといえる。原告らは,その他も縷々主張するが,同主張内容を踏まえて本件全証拠を精査しても,原告会社と被告との間の本件ライセンス契約の成立を的確に認めるに足りるものはない。 したがって,原告会社と被告との間の本件ライセンス契約の成立は認められないものというほかない。 3 争点2(被告による商標権侵害の成否)及び争点3(被告による不正競争行為の存否)について(1) 争点2及び争点3に関しては,事案に鑑み,まず争点2-2(本件登録商標に係る使用許諾の有無)及び争点3-2(本件表示にかかる使用許諾の有無)について判断する。 この点,前記説示のとおり,被告の設立においては,著名な建築家である原告Bの引退の意向を踏まえて,被告が原告らから引き継いだ業務を遂行して得た報酬を原告らに分配するという大筋の枠組みが,原告らを含めた関係者 記説示のとおり,被告の設立においては,著名な建築家である原告Bの引退の意向を踏まえて,被告が原告らから引き継いだ業務を遂行して得た報酬を原告らに分配するという大筋の枠組みが,原告らを含めた関係者において共通の了解事項とされ,これに基づき,被告の業務遂行により個別の案件毎に報酬が得られた場合は,被告から原告会社に対して分配金の支 払がされ,被告が業務を継続していることがうかがわれる。そうすると,このような被告の業務遂行等の過程において,被告が原告Bに関連する会社であることを取引先等に対し対外的に示してその業務を将来にわたり円滑に行うために,本件登録商標や本件表示を使用すること(被告旧商号に原告Bを示す「D」の表示を使用し,また,被告のウェブサイトにおいて本件登録商 標と同一又は類似の標章を表示することを含む。)は,当事者間において当然に予定され少なくとも黙示に合意されていたものといわなければならない。 そして,本件全証拠を慎重に検討しても,前記1(3)で摘示した金員支払の状況を背景として,原告らと被告との関係が悪化するに至るまで,原告らが,被告旧商号や被告標章の使用自体について,被告に対し,異議を述べた事実 も認められない。 以上によれば,仮に,被告標章の表示が本件登録商標の使用に当たり,また被告旧商号において本件表示が使用されていることを前提としたとしても,本件登録商標の使用及び本件表示の使用のいずれについても,原告らの許諾があったものというべきである。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告による商標権侵害及び不正競争行為のいずれも認められな い。 (2) これに対し,原告らは,①原告Bが被告の主張する本件スキームを主導した事実はなく,②被告のGにおいて,原告らの従前からの による商標権侵害及び不正競争行為のいずれも認められな い。 (2) これに対し,原告らは,①原告Bが被告の主張する本件スキームを主導した事実はなく,②被告のGにおいて,原告らの従前からの名声や実績を利用して新たな業務の獲得をしようと企図して,「D」の表示を含む被告旧商号を決定し,また,被告のウェブサイトにおいて,本件登録商標と同一又は類似 の被告標章を表示したものであり,③原告らは,本件ライセンス契約に基づくライセンス料の支払を前提条件としてこれを許容していたにすぎない旨を主張する。 しかしながら,上記①及び②については,前記1(1)で摘示した被告の設立の経緯からすれば,原告Bの引退の意向に沿う形で同人の関与の下,前記説 示の大枠の枠組みが構想され,実行されたというべきである。また,被告が,その枠組みに沿って設立され業務を遂行する以上,その設立以降将来にわたる業務全般にわたって本件登録商標及び本件表示等を使用できることが含意されていなければ意味がなく,原告らの意思が関与せずにGが独断で「D」の表示を含む被告旧商号を決定し,同様にGが独断で被告のウェブサイトに おいて,本件登録商標と同一又は類似の被告標章を表示したことを認めるに足りる証拠はない。また,③については,前記2のとおり,本件ライセンス契約の成立が認められない以上,その主張の前提を欠くものである。 そうすると,原告らの上記各主張は,採用することができない。原告らは,その他も縷々主張するが,同主張内容を踏まえて本件全証拠を精査しても, 本件登録商標及び本件表示に係る原告らの使用許諾を認めた上記結論を左右 するに足りるものはない。 4 結論以上のとおり,本件ライセンス契約の成立が認められない以上,原告らの被告 本件登録商標及び本件表示に係る原告らの使用許諾を認めた上記結論を左右 するに足りるものはない。 4 結論以上のとおり,本件ライセンス契約の成立が認められない以上,原告らの被告に対する本件ライセンス契約に基づくライセンス料支払請求は理由がない。 また,本件登録商標又は本件表示に係る使用許諾が認められ,被告の原告らに 対する商標権侵害又は不正競争行為のいずれも認められない以上,これらに基づく損害賠償請求も理由がない。 よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを全て棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官横山真通 裁判官奥俊彦 (別紙本件登録商標目録省略)(別紙被告標章目録省略)(別紙支払状況一覧省略)

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