令和3(行ウ)48 所得税更正処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文41,318 文字)

- 1 - 令和4年12月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(行ウ)第48号所得税更正処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求A税務署長が令和2年2月28日付けで原告に対してした▲年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分を取り消す。 第2 事案の概要 本件は、▲年11月から▲年12月まで第B期司法修習生であった原告が、▲年中に最高裁判所から支給を受けた基本給付金合計155万7000円(以下「本件給付金」という。)を雑所得の総収入金額に算入して同年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告をした後、本件給付金は所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」に該当し 非課税所得であるなどとして更正の請求をしたところ、A税務署長が、原告に対し、更正をすべき理由がない旨の通知処分をするとともに、原告が最高裁判所から無利息で貸与を受けた修習専念資金に係る▲年中の利息相当額合計1万1286円(以下「本件利息相当額」という。)を経済的利益として雑所得の総収入金額に算入すべきであるなどとして、令和2年2月28日付けで増額更正 処分(以下「本件更正処分」という。)をしたため、原告が、被告を相手に、本件更正処分の全部の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 所得税法の定めア 9条1項15号 所得税法9条1項柱書きは、同項各号に掲げる所得については、所得税- 2 - を課さない旨定め、同項15号は、「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するもの(中略)を 所得税法9条1項柱書きは、同項各号に掲げる所得については、所得税- 2 - を課さない旨定め、同項15号は、「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するもの(中略)を除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」を掲げる(以下、上記の「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するもの(中略)を除く。)」を「所得税法上の学資金」という。)。 なお、本件では、本件給付金や本件利息相当額が「学資に充てるため給付される金品」に該当するか否かが争われており、所得税法上の学資金から除外される「給与その他対価の性質を有するもの」に該当しないことについては、当事者間に争いがない。 イ 37条1項 所得税法37条1項は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以 外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨定める。 (2) 裁判所法の定めア 67条(ア) 裁判所法67条1項は、司法修習生は、少なくとも一年間修習をした 後試験に合格したときは、司法修習生の修習を終える旨定める(以下、この試験を「二回試験」という。)。 (イ) 裁判所法67条2項は、司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない旨定める(以下、この義務を「修習専念義務」という。)。 イ 67条 判所法67条2項は、司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない旨定める(以下、この義務を「修習専念義務」という。)。 イ 67条の2- 3 - (ア) 裁判所法67条の2第1項は、司法修習生には、その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、修習給付金を支給する旨定める。 (イ) 裁判所法67条の2第2項は、修習給付金の種類は、基本給付金、住居給付金及び移転給付金とする旨定める。 (ウ) 裁判所法67条の2第3項は、基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であって、その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とする旨定める。 ウ 67条の3第1項 裁判所法67条の3第1項は、最高裁判所は、司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう。以下同じ。)を貸与するものとする旨定める。 (3) 司法修習生に関する規則(昭和23年最高裁判所規則第15号。以下「司法修習生規則」という。)の定めア 2条司法修習生規則2条は、司法修習生は、最高裁判所の許可を受けなければ、公務員となり、又は他の職業に就き、若しくは財産上の利益を目的と する業務を行うことができない旨定める。 イ 4条司法修習生規則4条は、司法修習生の修習については、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理 しくは財産上の利益を目的と する業務を行うことができない旨定める。 イ 4条司法修習生規則4条は、司法修習生の修習については、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身に付け、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない旨定 める。 - 4 - (4) 司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(平成29年最高裁判所規則第3号。以下「修習給付金規則」という。)の定めア 1条修習給付金規則1条は、基本給付金及び住居給付金は、給付期間ごとに支給する旨定める。なお、一の給付期間は、原則として1か月である。 イ 2条1項修習給付金規則2条1項本文は、基本給付金の額は、一の給付期間につき13万5000円とする旨定める。 (5) 司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(平成21年最高裁判所規則第10号。以下「修習専念資金規則」という。)の定め 修習専念資金規則3条1項は、修習専念資金の額は、一貸与単位期間につき10万円とする旨定める。なお、一貸与単位期間は、原則として1か月である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 原告原告は、▲年11月27日から▲年12月12日までの間、第B期司法修習生であった者であり、現在、C弁護士会に登録している弁護士である。なお、原告は、本件訴え提起後、α市内から原告肩書記載の住所地に転居し、D税務署長は、本件更正処分時の納税地を所轄する税務署長であったA税務 署長から、その事務を承継した。(甲3の1、20、39)(2) 司法修習生ア司法修習 の住所地に転居し、D税務署長は、本件更正処分時の納税地を所轄する税務署長であったA税務 署長から、その事務を承継した。(甲3の1、20、39)(2) 司法修習生ア司法修習は、全国各地の裁判所、検察庁、弁護士会での実務修習と、埼玉県和光市の司法研修所での集合修習に分けられる。実務修習では、裁判官、検察官及び弁護士による個別的指導の下で、実際の事件の処理を体験 的に学び、集合修習では、司法研修所教官による講義や起案、講評など、- 5 - 体系的、汎用的な実務教育を受けるものとされる。(甲71、73)イ司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所が命ずることとされ(裁判所法66条)、少なくとも1年間の修習をした後、試験に合格すると司法修習を終え(同法67条1項)、裁判官、検察官又は弁護士になる資格を得ることになる(甲71)。 (3) 原告に支給された基本給付金等ア原告は、▲年中に、最高裁判所から、裁判所法67条の2第2項に規定する基本給付金として、別紙1記載のとおり、合計155万7000円(本件給付金)の支給を受けた(甲22、24)。 イ原告は、▲年▲月▲日から▲年▲月▲日までの間に、最高裁判所から、 裁判所法67条の3に規定する修習専念資金として、別紙1記載のとおり、無利息で合計130万円の貸与を受けた。(甲23、24、乙4)。 ウ原告は、▲年▲月から▲年▲月までの間に、別紙2記載のとおり、合計7万4060円の交通費(以下「本件交通費」という。)を支出した。 原告は、▲年▲月から▲年▲月までの間に、別紙2記載のとおり、書籍 代として合計4万2375円(以下「本件書籍代」という。)を支出したほか、衣服購入費等として27万1 を支出した。 原告は、▲年▲月から▲年▲月までの間に、別紙2記載のとおり、書籍 代として合計4万2375円(以下「本件書籍代」という。)を支出したほか、衣服購入費等として27万1959円を支出した(以下、別紙2記載の支出合計38万8394円を「本件費用」という。)。(以上につき、甲21、25~30、38)(4) ▲年分の所得税等の課税の経緯等 ア確定申告原告は、▲年2月21日、▲年中に支給を受けた本件給付金(155万7000円)を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入し、本件交通費(7万4060円)を雑所得の金額の計算上必要経費に算入して、別紙3の「確定申告」欄のとおり記載した▲年分の所得税等の確定申告書をA税務署長 に提出した。 - 6 - イ更正の請求原告は、▲年3月19日、A税務署長に対し、▲年分の所得税等について、本件給付金は、所得税法9条1項15号に規定する学資金に該当し、非課税所得であるから、雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきでなかったとして、更正の請求をした(別紙3の「更正の請求」欄参照。甲 3の3)。 また、原告は、上記更正の請求において、仮に本件給付金が学資金に該当せず非課税所得とならないとしても、原告が支出した本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき旨を予備的に主張した(甲1)。 ウ更正をすべき理由がない旨の通知処分 A税務署長は、▲年12月20日付けで、上記イの更正の請求に対し、本件給付金は、所得税法上の学資金とは認められないから、非課税所得には該当せず、また、本件費用は、本件給付金に係る所得を生ずべき業務について生じた費用とは認められないから、原告の雑所得の総収入 し、本件給付金は、所得税法上の学資金とは認められないから、非課税所得には該当せず、また、本件費用は、本件給付金に係る所得を生ずべき業務について生じた費用とは認められないから、原告の雑所得の総収入金額から控除すべき必要経費の額はないとして、更正をすべき理由がない旨の通知 処分をした(別紙3の「通知処分(原処分①)」欄参照。甲1)。 エ更正をすべき理由がない旨の通知処分に対する審査請求原告は、令和2年2月18日、国税不服審判所長に対し、上記ウの通知処分を不服として審査請求をした(別紙3の「審査請求」欄参照。乙2)。 オ本件更正処分 A税務署長は、令和2年2月28日付けで、原告の▲年分の所得税等について、雑所得の金額の計算上、本件交通費を必要経費に算入することはできず、また、原告が無利息で貸与を受けた修習専念資金に係る▲年中の利息相当額合計1万1286円(本件利息相当額)は、経済的利益として雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとして、本件更正処 分をした(別紙3の「更正処分(原処分②)」欄参照)。 - 7 - なお、本件利息相当額は、原告が無利息で貸与を受けた修習専念資金の各月の貸与金額に年1.6%の利率(365日の日割計算)を乗じて得られる▲年中の利息相当額である(租税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合による利率による評価。別紙1の「利息相当額欄」参照)。(以上につき、甲2) カ本件更正処分に対する審査請求原告は、令和2年3月6日、国税不服審判所長に対し、本件更正処分を不服として審査請求をした(別紙3の「審査請求」欄参照。甲39、乙3)。 キ国税不服審判所長の裁決国税不服審判所長は、令和3年3月24日 、国税不服審判所長に対し、本件更正処分を不服として審査請求をした(別紙3の「審査請求」欄参照。甲39、乙3)。 キ国税不服審判所長の裁決国税不服審判所長は、令和3年3月24日付けで、上記エ及びカの各審 査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲39)。 (5) 本件訴えの提起原告は、令和3年5月11日、本件訴えを提起した。 3 税額等の計算に関する当事者の主張原告の▲年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額に関する被告の主 張は、別紙4記載のとおりである。その計算の根拠となる金額及び計算方法については、後記4の争点に関する部分を除き、当事者間に争いがない。 4 争点(1) 本件給付金が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点1)(2) 本件利息相当額が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点2) (3) 本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か(争点3)(4) 本件給付金を非課税所得と認めないことや本件費用を必要経費と認めないことが憲法14条1項に反するか否か(争点4) 5 争点に関する当事者の主張(1) 本件給付金が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点1)について (被告の主張)- 8 - ア所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」の意義等(ア) 所得税法9条1項15号が「学資に充てるため給付される金品」について所得税を課さない旨規定している趣旨は、学術奨励という政策的考慮に基づくものである。そして、一般に、「学資」とは、「学問の修業に 要する費用。学費。」(広辞苑〔第七版〕520頁)、「学問を修めるための費用。学費。」(大辞泉〔第一版〕47 励という政策的考慮に基づくものである。そして、一般に、「学資」とは、「学問の修業に 要する費用。学費。」(広辞苑〔第七版〕520頁)、「学問を修めるための費用。学費。」(大辞泉〔第一版〕471頁)をいい、「学費」とは、「勉学に要する費用。学資。」(広辞苑〔第七版〕525頁)、「学校で教育を受けるためにかかる経費。授業料・教科書代など。学資。」(大辞泉〔第一版〕475頁)をいう。 したがって、所得税法9条1項15号の趣旨は、学校等の教育機関において学術等の教育・指導を受けるために必要な費用(学費)を当該教育・指導を受ける者が負担する場合において、その費用(学費)に充てるための資金として他者から給付される金品については非課税とし、税負担があることによって実質的に減額されることなくその全額を学費 に充てることを可能にすることにより、学費に不足を来すことを防ぎ、もって学術等の習得を目指す者がその習得に励むことができるようにすることにある。 (イ) このような所得税法9条1項15号の趣旨から、同号の「学資に充てるため給付される金品」とは、学校等の教育機関において学術等の教育・ 指導を受けるために必要な費用(学費)に充てるために給付される金品をいう。 そして、ある金品が法令に基づいて支給されるものである場合に、当該金品が所得税法上の学資金に該当するか否かは、当該根拠法令の制定趣旨、文言、支給の対象者、金額、限定された使途の有無及び内容等を 総合的に考慮して、当該金品を支給する趣旨・目的が、学校等の教育機- 9 - 関において学術等の教育・指導を受けるために必要な費用(学費)に充てることにあるか否かを客観的に判断すべきである。そして、上記(ア)の所得税法9条1項15号の趣旨に照 校等の教育機- 9 - 関において学術等の教育・指導を受けるために必要な費用(学費)に充てることにあるか否かを客観的に判断すべきである。そして、上記(ア)の所得税法9条1項15号の趣旨に照らせば、支給の対象者が学費のうちで最も基本的な費用である当該教育機関が提供する教育・指導の対価(授業料、入学金等)の負担を負うかどうかが当該金品を支給する趣旨・ 目的を判断するに当たって最も重要な考慮要素となるといえる。 イ基本給付金の趣旨・目的(ア) 司法修習の位置付け司法修習は、司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり、必須の臨床教育課程として実施されるものであ って、国が司法修習生に対してこのような職業訓練課程・臨床教育課程を提供するものである。そのような司法修習において、司法修習生は、修習期間中、修習専念義務(裁判所法67条2項)を負い、最高裁判所の許可を受けなければ、公務員となり、又は他の職業に就き、若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことができない(司法修習生規則 2条)。 (イ) 修習給付金導入の経緯・趣旨修習給付金の導入目的は、司法修習生が修習専念義務を負うという特殊な地位を有しており、自ら稼働して収入を得ることで生活費を捻出することができないところ、司法修習中の経済的負担を軽減することによ り法曹人材確保の充実・強化を図ることにあった。 (ウ) 支給の対象者司法修習生は、修習専念義務を負う一方で、国が司法修習生に司法修習の課程を提供することに対する対価を国に対して負担することはない。 (エ) 支給の金額及び使途- 10 - 基本給付金については、「司法修習生がその修習期間中の生活を維持するた を提供することに対する対価を国に対して負担することはない。 (エ) 支給の金額及び使途- 10 - 基本給付金については、「司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用」とされている(裁判所法67条の2第3項)。そして、基本給付金の額が13万5000円とされたのは、日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケートの結果(以下「本件アンケート結果」という。)のほ か、法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由、貸与制との連続性、類似の給付・貸付制度との均衡等を総合考慮した上で決定されたものである。そして、司法修習生が基本給付金をいかなる費用に充てるかは自由であり、その全部又は一部を学習費等に充てることが求められているわけではない。 (オ) 小括上記(ア)ないし(エ)のとおり、基本給付金は、司法修習生が修習専念義務を負う(裁判所法67条2項、司法修習生規則2条)という特殊な地位を有しており、自ら稼働して収入を得ることによって生活費を捻出することができないことから、司法修習に係る経済的負担を軽減すること により法曹人材確保の充実・強化を図るために導入されたものであり、司法修習において、その過程の提供を受けるための対価を何ら負担しない司法修習生を支給対象者として、前記修習給付金制度の導入理由や司法修習生の生活費用等を総合考慮して決定された金額が支給されるものであって、その使途は限定されておらず、全部又は一部を学習費等に 充てることが求められているわけではない。 以上の事情を総合的に考慮すれば、基本給付金は、修習専念義務を負うため自ら稼働して収入を得ることができない司法修習生の生活を維持するた 学習費等に 充てることが求められているわけではない。 以上の事情を総合的に考慮すれば、基本給付金は、修習専念義務を負うため自ら稼働して収入を得ることができない司法修習生の生活を維持するための費用に充てることを念頭において支給される資金であると認められる。 ウ基本給付金は所得税法上の学資金に当たらないこと- 11 - 前記イのとおり、基本給付金は、司法修習生の生活を維持するための費用に充てることを念頭において支給される資金であり、司法修習における教育・指導を受けるために必要な費用に充てるための資金として支給されるものではないから、基本給付金は、所得税法上の学資金には該当せず、非課税所得とはならない。 (原告の主張)ア基本給付金は修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で司法修習生に支給される金員であること基本給付金は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用をいい(裁判所法67条の2第3項)、修習給付金に関する政府の 制度設計等を踏まえて、月額13万5000円とされている(修習給付金規則2条1項)。そして、基本給付金の月額は、日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケート(本件アンケート結果)において、修習期間中につき、生活実費が月額約9.4万円であり、学資金が月額約4万円であり、合計の支出が月額約13.5万円であったという司法修習 生の生活実態等の事情を総合考慮するなどして決定されたものである。このように、基本給付金は、修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で司法修習生に支給される金員であるといえる。 イ 「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれること 、修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で司法修習生に支給される金員であるといえる。 イ 「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれること 国税庁は、所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」とは、一般に、学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので、かつ、その目的に使用されるものをいうと解釈している。つまり、国税庁は、学術又は技芸を習得するために直接必要な費用だけが学資金であると解釈しているわけではない。 そして、独立行政法人日本学生支援機構法(以下「支援機構法」という。)- 12 - 17条の2第1項に基づく給付型奨学金(以下「学資支給金」という。)や法科大学院の給付奨学金等(G法科大学院の奨学給付金など。以下「大学院奨学金等」という。)は、「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費を支給するものであり、かつ、所得税法上の学資金として非課税所得であるとされている(又はそのように解される)から、これらの 類似の制度とのバランスからすれば、「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は所得税法上の学資金に含まれるというべきである。 基本給付金と学資支給金の類似性についてみると、学資支給金の導入目的は、経済的負担の軽減により一定の政策目的を実現するという点で、基本給付金の導入目的と類似するものであるし、学資支給金が賄うことを想 定している生活費の内容は、基本給付金が賄うことを想定している生活費(生活実費及び学資金)と類似している。また、G法科大学院、H法科大学院、I法科大学院、J法科大学院の奨学金等(大学院奨学金等)は、いずれも所得税法上の学資金に該当するものと解されるとこ いる生活費(生活実費及び学資金)と類似している。また、G法科大学院、H法科大学院、I法科大学院、J法科大学院の奨学金等(大学院奨学金等)は、いずれも所得税法上の学資金に該当するものと解されるところ、受験勉強に専念するための生活費等もその使途として想定されている。 ウ司法修習は「学術又は技芸の習得」に当たること職業訓練は学校教育との重複を避ける必要がある(職業能力開発促進法3条の2第2項)のに対し、司法修習は、法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであって(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条3号)、法科大学院教育との重複を避ける必要があるとは されていない。そして、法科大学院においては、法曹としての技能及び責任そのほかの法律実務に関する基礎的な分野の科目として法律実務基礎科目(専門職大学院設置基準20条の3第1項2号)が用意され、職業訓練としての要素を有しているし、他方、司法修習生は、品位を辱める行状、修習の態度の著しい不良その他これらに準ずる事由がある場合、退学・停 学に対応する罷免又は修習の停止を受けることとなるなど(裁判所法68- 13 - 条2項、司法修習生規則17条2項)、司法修習生の身分は学生に類似するところがある。 そうすると、司法修習は、学生に類似するところがある司法修習生に対し、職業訓練としての要素を有しつつも「学術又は技芸の習得」に該当する法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであるから、「学術又 は技芸の習得」に当たるといえる。 エ仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても、それだけでは基本給付金が所得税法上の学資金に当たらないとはいえないこと金融庁は、貸金業の規制等に関する法律施行令の一 エ仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても、それだけでは基本給付金が所得税法上の学資金に当たらないとはいえないこと金融庁は、貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令 (平成19年政令第329号)附則20条2項2号イに定める「学生」に、航空大学校や海技大学校のような特別の法律に基づいて設立された法人において人材養成のための教育訓練を受けている者も含まれ、学資金の範疇には、幼稚園や保育園の児童又は幼児の保育料等も含まれると解釈している。また、東京都認証保育所の保育料助成金は、その名称からすれば「学 術又は技芸」を習得するための資金ではないにもかかわらず、所得税法上の学資金として非課税所得の扱いを受けている(甲32の1)。これらからすると、仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらないとしても、それだけでは、基本給付金が所得税法上の学資金に当たらないことにはならない。 オ基本給付金には課税所得となるべき担税力がないこと等(ア) 所得税法における各種所得の計算方法は、個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解されるから、担税力のないものが課税所得となることはないといえる。 司法研修所がある埼玉県において、平成29年10月1日改定の最低 賃金である時給871円で1週間当たり40時間(法定労働時間)働い- 14 - た場合、1か月の収入は14万9314円となるところ(甲9、74)基本給付金の額(月額13万5000円)は、これを下回る。また、基本給付金の13万5000円という金額は、住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費等を参考に設定された金額であり、租税公課の支払を考慮した金額 5000円)は、これを下回る。また、基本給付金の13万5000円という金額は、住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費等を参考に設定された金額であり、租税公課の支払を考慮した金額とはなっていない。そして、司法修習生 は兼業を禁止され(司法修習生規則2条)、住居費を除けば、生活費に使える収入は基本給付金だけである。これらの点に照らせば、基本給付金には課税所得となるべき担税力がないというべきである。 (イ) 3万5000円の住居給付金を合わせた月額17万円という修習給付金の金額規模は、所得税法9条1項15号の「扶養義務者相互間におい て扶養義務を履行するため給付される金品」と比べて特に大きいわけではないし、医学生等に対する修学等資金の債務免除益(E養成医師制度を利用してF医科大学に進学した場合、6年間で合計4480万円、うち生活費相当額は780万円である。)が所得税法上の学資金として非課税所得となることからして、基本給付金の金額規模等を理由として所 得税法上の学資金から除外される理由はない。なお、医学生の場合、非課税所得としての生活費は月額10万円まで認められるが、司法修習生が医学生よりも厳しい義務を負うことからすると、月額13万5000円の基本給付金を非課税とすることは、医学生との公平を欠くものではない。他の社会人との公平性や、司法修習生の経済的負担が一段と増え たことなどに照らしても、基本給付金の金額は、非課税所得としての生活費の金額規模として社会通念上妥当なものである。また、基本給付金には所得制限がないが、これには合理的な理由があり、所得制限がないことを理由として所得税法上の学資金該当性が否定されるものではない。 カ司法修習生について学費負担がないことは基本給付金の所得税法上の がないが、これには合理的な理由があり、所得制限がないことを理由として所得税法上の学資金該当性が否定されるものではない。 カ司法修習生について学費負担がないことは基本給付金の所得税法上の- 15 - 学資金該当性を否定する事情とはならないこと文部科学省は、国会審議において、学資給付金というのは、使途の限定なく、学生が学業に専念するために必要な学生生活費を賄うものであるという趣旨の説明をしている。したがって、学資給付金は授業料等の減免と一体のものとして実施されているとはいえ、「学業に専念するために必要な 学生生活費を賄うための費用」である点で学費負担を当然の前提としているとまではいえないから、学費負担が存在することが所得税法上の学資金に該当するための不可欠の理由とされているわけではない。 また、日本国政府は、社会権規約13条2項(c)が定める国際水準(高等教育は、全ての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、 能力に応じ、全ての者に対して均等に機会が与えられるものとすること)を漸進的に達成するための行動義務を負っており、学費負担を高等教育の不可欠の条件としないことが上記の国際水準である。そして、司法修習は上記高等教育に含まれるから、基本給付金の支給対象となる司法修習生に学費負担がないことは、基本給付金の学資金該当性を否定する事情とはな らない。 (2) 本件利息相当額が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点2)について(被告の主張)ア修習専念資金は、基本給付金と同様に、司法修習生が修習専念義務を負 うという特殊な地位を有しており、自ら稼働して収入を得ることで生活費を捻出することができないところ、司法修習に係る経済的負担を軽減することにより法曹人 と同様に、司法修習生が修習専念義務を負 うという特殊な地位を有しており、自ら稼働して収入を得ることで生活費を捻出することができないところ、司法修習に係る経済的負担を軽減することにより法曹人材確保の充実・強化を図るために導入されたものであり、国が司法修習の課程を提供する対価を何ら負担しない司法修習生を支給対象者として支給されるものである。そして、修習専念資金の額は、一貸与 単位期間につき10万円とされているところ、この金額は、学習費等に当- 16 - てることを想定して定められたものではないし、司法修習生が修習専念資金をいかなる費用に充てるかは自由であり、その全部又は一部を学習費等に充てることが求められているわけではない。 以上の事情を総合的に考慮すれば、修習専念資金は、基本給付金と同様に、修習専念義務を負うため自ら稼働して収入を得ることができない司法 修習生の生活を維持するための費用に充てることを念頭に置いて無利息で貸与される資金であると認められ、司法修習における教育・指導を受けるための資金として貸与されるものであるとは認められない。 イそうすると、無利息で貸与される修習専念資金は、「学資に充てるため」に給付されるものとはいえず、修習専念資金に係る利息相当額も、所得税 法上の学資金に該当しない。 したがって、本件利息相当額は、所得税法上の学資金に該当せず、非課税所得とはならない。 (原告の主張)ア修習専念資金は、司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われ ない費用を補填する趣旨を有する金員であるから、基本給付金と同様、「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費である。そうすると、修習専念資金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に い費用を補填する趣旨を有する金員であるから、基本給付金と同様、「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費である。そうすると、修習専念資金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に基因する、通常の利率により計算した利息の額に相当する利益としての本件利息相当額は、所得税法上の学資金に当たる。 イ本件利息相当額は、その金額(1万1286円)が本件給付金の額(155万7000円)に対して僅少で、両者の金額規模は全く異なることや、給付型奨学金である学資給付金の返還を定める支援機構法17条の3と類似の規定が存在すること(修習専念資金規則8条2項1号、6条2号。甲51)に照らせば、本件給付金が所得税法上の学資金に該当しない場合で あっても、本件利息相当額は学資金に該当する。 - 17 - また、奨学金の返済に充てるための給付は、その奨学金が学資に充てられており、かつ、その給付される金品がその奨学金の返済に充てられる限りにおいては、給与課税を潜脱する目的で給付されるものを除き、非課税の学資金となる。そして、修習専念資金の想定使途としては、本件利息相当額を上回る規模の奨学金の返済(毎月約0.6万円)が含まれているか ら、本件利息相当額は所得税法上の学資金に当たるというべきである。 (3) 本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か(争点3)について(被告の主張)ア司法修習生は、修習期間中、修習専念義務を負い(裁判所法67条2項)、 最高裁判所の許可を受けなければ、公務員となり、又は他の職業に就き、若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことができない(司法修習生規則2条)。他方、司法修習生は、基本給付金の支払者である最高裁判所に対して一定の職務を遂行す 公務員となり、又は他の職業に就き、若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことができない(司法修習生規則2条)。他方、司法修習生は、基本給付金の支払者である最高裁判所に対して一定の職務を遂行すべき義務を負うわけではなく、基本給付金は、労務の提供の対価として支払われるものではない。基本給付金は、飽くま でも修習期間中の生活を維持するために必要な費用を賄うものとして支給されるものである。 そして、基本給付金は、罷免されて司法修習生としての身分を有しない期間や修習の停止を命じられている期間を含む給付期間については、当該給付期間の現日数を基礎として、日割計算して支給されるが、それ以外の 期間については、司法修習生が司法修習生の身分を有している限り支給されるものであり、支給の要件として、用意されている授業やカリキュラムに出席することが定められているものでもなく、成績によって金額が変わるものでもない。 イそうすると、司法修習は、所得税法37条1項にいう「所得を生ずべき 業務」に該当しないから、本件費用は、同項にいう「総収入金額を得るた- 18 - め直接に要した費用」(個別対応の費用)に該当しないのはもちろん、同項にいう「所得を生ずべき業務について生じた費用」(一般対応の費用)にも該当しない。したがって、本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 (原告の主張) ア基本給付金に必要経費が観念されること(ア) 司法修習生は、修習専念義務を負い(裁判所法67条2項)、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身に付け、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生規則4条)。そして、成績不良等の司法 、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身に付け、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生規則4条)。そして、成績不良等の司法修習生た るに適しない非行に当たる事由がある場合、司法修習生を罷免されたり、修習の停止を命じられたりすることとなる(裁判所法68条2項、司法修習生規則17条、18条)。司法修習生の罷免理由や司法修習生のどのような行為が非違行為に該当するかについては、公にされておらず、司法修習生の立場が安定しているとはいえない。 裁判所法上、司法修習生の法的地位は、平成16年の裁判所法改正により給費制から貸与制に移行しても何ら変更されていない。そして、給費制時代の司法修習生には給与所得控除という形で必要経費が認められていたこととのバランスからすると、法曹人材確保の強化を図るために導入された現在の司法修習生についても当然に必要経費が認められ る。 (イ) 給与所得者は、給与収入を得るために種々の出費をするところ、家事費又は家事関連費に含まれないものについては必要経費といわざるを得ないのであって、例えば、通常一般的な通勤費及び裁判官等の書籍費は必要経費に該当すると解されているところ、このことは修習専念義務 を負っている司法修習生についても等しく妥当する。 - 19 - また、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為について必要経費が一切存在しないことは、そもそも想定できない。 (ウ) したがって、司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は、当然に存在 一切存在しないことは、そもそも想定できない。 (ウ) したがって、司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は、当然に存在 する。 イ本件費用上記アに加え、次の(ア)ないし(ウ)の各事情を考慮すれば、本件費用の合計38万8394円は、所得税法37条1項の「所得を生ずべき業務について生じた費用」として、必要経費とされるべきである。 また、少なくとも、次の(ア)及び(イ)の本件交通費及び本件書籍代の支出は、修習中に要する生活費の内容として考慮されている(甲66の1)から、必要経費に該当する。 (ア) 司法修習生にとって、修習課程で用意されているカリキュラム(裁判所、検察庁及び弁護修習先の法律事務所並びに選択型実務修習)への出 席は修習専念義務の中核をなし、正当な理由がないため承認を得られない欠席は規律違反として非違行為とされる。また、司法修習生は、司法修習を終了するために二回試験を受験する必要がある。そうすると、裁判所を始めとする実務修習(選択型実務修習を含む。)の実施場所や、二回試験に出席するための本件交通費は、基本給付金を得るため直接に要 した費用である。 (イ) 司法修習生は、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身に付け、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならないとされ(司法修習生規則4条)、原告も、法律書を購入し、これを熟読することで法律に関する理論と実務を身に 付ける必要があった。そうすると、本件書籍代は、基本給付金を生ずべ- 20 - き業務の遂行上必要な費用である。 (ウ) 実務法曹及び法科大学院同窓生との勉 る理論と実務を身に 付ける必要があった。そうすると、本件書籍代は、基本給付金を生ずべ- 20 - き業務の遂行上必要な費用である。 (ウ) 実務法曹及び法科大学院同窓生との勉強会を含む交流、並びに社会人としての司法修習生にふさわしい服装を心掛けること通じて、弁護士にふさわしい品位と能力を備える必要があった。そのため、名刺代、交際費及び衣服購入費等は、基本給付金を生ずべき業務の遂行上必要な費用 である。 (4) 本件給付金を非課税所得と認めないことや本件費用を必要経費と認めないことが憲法14条1項に反するか否か(争点4)について(被告の主張)ア職業訓練受講給付金が非課税とされるのに基本給付金が非課税とされな いのは合理的理由のない差別である旨の主張について司法修習は、職業訓練受講給付金の支給要件に当たるものではなく、基本給付金が職業訓練期間中の生活を支援するための給付であるとする原告の主張の根拠は明らかでない。他方、職業訓練受講給付金及び基本給付金は、いずれも所得税法上の学資金に該当しない以上、学資金としての性格 の強弱を論ずる原告の主張も根拠を欠くことが明らかである。 そもそも、ある所得を非課税とするか否かについては、立法府の広範な専門技術的・政策的裁量に委ねられているところ、職業訓練受講給付金(月額10万円)は、特定求職者の最低生活を保障するものであり、本人の収入のほか、世帯全体の収入や資産などが支給要件とされるのに対し(職業 訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則11条1項)、基本給付金(月額13万5000円)は、個々の司法修習生の経済状況にかかわりなく一律に支給されるものであって、両者は趣旨目的や支給対象を異にする別の制度といえるか に関する法律施行規則11条1項)、基本給付金(月額13万5000円)は、個々の司法修習生の経済状況にかかわりなく一律に支給されるものであって、両者は趣旨目的や支給対象を異にする別の制度といえるから、異なる制度との比較をもって、基本給付金を非課税所得とする立法上の措置を講じられなかったことが憲 法14条1項に反するということはできない。 - 21 - イ農業次世代人材投資資金(準備型)については研修に要した費用が必要経費とされるのに基本給付金については必要経費の控除を一切認めないのは合理的理由のない差別である旨の主張について農業次世代人材投資資金(準備型)について、交通費や授業料など研修に要した費用を雑所得の計算上必要経費として控除することができる(甲 19の2)のは、就農希望者が所定の研修を受けることが交付要件の1つとされていることから(甲19の1)、当該研修が「所得を生ずべき業務」に該当し、当該研修に要した費用が一般対応の費用として雑所得の計算上必要経費に算入されるためである。これに対し、基本給付金は、司法修習生としての身分を保有することに基因して支給を受けるものであるから、 司法修習が「所得を生ずべき業務」に該当しないのであり、農業次世代人材投資資金(準備型)との課税上の取扱いの差異は制度の違いによるものにすぎず、合理的理由のない差別に当たるものではない。 (原告の主張)ア職業訓練受講給付金が非課税とされるのに基本給付金が非課税とされな いのは合理的理由のない差別である旨の主張職業訓練受講給付金は、雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し、訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であって(甲14)、租税その他の公課を課されない非 職業訓練受講給付金は、雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し、訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であって(甲14)、租税その他の公課を課されない非課税所得である(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法 律10条)。これに対し、司法修習は、司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり、高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として、実際の法律実務活動の中で実施されるものである。そのため、職業訓練受講給付金及び基本給付金は、職業訓練期間中の生活を支援するという給付 目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通している。加えて、- 22 - 司法修習生の場合、その修習期間中、修習専念義務を負い(裁判所法67条2項)、原則として兼業を禁じられ(司法修習生規則2条)、破産手続開始決定を受けたことが罷免事由とされていること(同規則17条1項4号)から、修習期間中の生活支援の必要性は職業訓練受講生の場合よりも大きい。 職業訓練受講給付金は、支給対象が学校教育との重複を避けるべきとされている職業訓練の受講生であり、想定使途が生活実費だけであるから、学資金としての性格は基本給付金より弱い。他方、基本給付金は、生活支援にとどまらず、法曹人材確保の強化を図るために導入された制度であるから、非課税とする許容性は大きい。そうすると、職業訓練受講給付金が 非課税所得であるにもかかわらず、司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について、司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは合理的理由のない差別であって、憲法14条1項に反 法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について、司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは合理的理由のない差別であって、憲法14条1項に反する。 イ農業次世代人材投資資金(準備型)については研修に要した費用が必要 経費とされるのに基本給付金については必要経費の控除を一切認めないのは合理的理由のない差別である旨の主張農業次世代人材投資資金(かつての青年就農給付金)は、生活費を支給する国の他の事業と重複受給できない点で生活費に充てることが予定されている。農業次世代人材投資資金(準備型)の場合、道府県の農業大学校 等の研修機関等における研修の対価として支給されるわけではないし、交付要件を充足するためには研修機関等でおおむね1年以上研修する必要がある。そして、自らの意思で農業者となるべき就農前の研修を選択したことに伴う交通費や授業料など研修に要した費用は必要経費とされている。 司法修習生においても自ら負担する必要経費が存在するのであり、基本 給付金について必要経費の控除を一切認めないことは、必要経費の概算控- 23 - 除が認められている給与所得者及び必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者(特に、農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者)との関係において合理的理由のない差別であるから、憲法14条1項に反する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。 (1) 給費制(給与)から給付制(基本給付金等)に至る制度改正の経緯等ア司法修習制度と給費制司法修習制度は、昭和22年の裁判所法制定当初から存し(同法66条 以下 (1) 給費制(給与)から給付制(基本給付金等)に至る制度改正の経緯等ア司法修習制度と給費制司法修習制度は、昭和22年の裁判所法制定当初から存し(同法66条 以下)、法曹資格は、原則として、司法試験の合格後に司法修習を経なければ取得できないものとされた。 司法修習生に対しては、司法修習制度の開始当初から、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受けるものとされていたが(平成16年法律第163号による改正前の裁判所法67条2項)、このことは、司法修習生の勤 務形態が国の事務に従事する職員に類似し又はこれに準ずる形式ないし実態があるからではなく、司法修習生をして司法修習に専念させるための配慮ないしはその修習が秘密事項に関することがあるための配慮にすぎないものと解されていた(最高裁昭和42年4月28日第二小法廷判決・民集21巻3号752頁参照)。(以上につき、甲50、67、73)。 イ給費制から貸与制への移行司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において、平成22年頃には司法試験の合格者数を3000人程度とすることを目指すとされたことを前提に、①新たな法曹養成制度の整備に当たり、司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があり、②公務員ではなく 公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であ- 24 - ること等を考慮すれば、給費制の維持について国民の理解を得るのは困難であるなどとされ、裁判所法の一部を改正する法律(平成16年法律第163号)により、給費制を廃止し、国が修習資金を無利息で貸与する制度(貸与制)が導入された。もっとも、その当初の施行時期は平成18年11月1日であったが、その後、施行時期が平成23年11月1 律第163号)により、給費制を廃止し、国が修習資金を無利息で貸与する制度(貸与制)が導入された。もっとも、その当初の施行時期は平成18年11月1日であったが、その後、施行時期が平成23年11月1日まで繰り 下げられ、貸与制は新第65期司法修習生から実施されることとなった。 (甲67、106)ウ貸与制から給付制への移行貸与制導入後、法曹志望者数の減少が進み、「法曹養成制度改革の推進について」(平成25年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定)において、 司法試験の年間合格者数3000人の目標は、現実性を欠くものとして事実上撤回された。加えて、法務省が日弁連と最高裁判所の協力の下で平成28年3月に実施した法曹の所得調査では、弁護士の所得が平成22年の調査時に比べ明らかに減少しており、特に貸与制導入以降の若手弁護士については、所得の低い層が拡大し、貸与制を基本とするに当たり前提とさ れた弁護士の経済状況についても大きな変化が認められ、貸与制をそのまま維持すれば、返済に窮する弁護士が出てくるおそれもあり、その安定的な運用に支障を来すおそれがあるとされた。(甲67、106)これを受けて、内閣は、法曹志望者を確保することが喫緊の課題であるとし、「経済財政運営と改革の基本方針2016」(平成28年6月2日閣 議決定)や「未来への投資を実現する経済対策」(同年8月2日閣議決定)において、「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化等…を推進する」こととした。そして、法務省は、同省及び文科省が実施したアンケート結果や本件アンケート結果において、法学部生や司法修習生からの回答として、貸与制の下での経済的不安を指摘する回答が目立 ったことから、最高裁判所及び日弁連と共に対 び文科省が実施したアンケート結果や本件アンケート結果において、法学部生や司法修習生からの回答として、貸与制の下での経済的不安を指摘する回答が目立 ったことから、最高裁判所及び日弁連と共に対応を検討し、貸与制を前提- 25 - として制度の連続性や整合性を維持しつつ、新たな制度を導入することとし、同年12月19日、平成29年度以降に採用予定の司法修習生に対する新たな経済的支援策として、司法修習の期間中の生活を維持するために必要な費用として定められる額を支給する給付制度を新設することを発表した。(甲69、106、乙7) その後、基本給付金、住居給付金及び移転給付金等の修習給付金制度、修習専念資金制度等の創設を内容とする裁判所法の一部を改正する法律(平成29年法律第23号)が成立し、平成29年11月1日から施行され、給付制(基本給付金等の支給)は第71期司法修習生から実施されることとなった。 (2) 修習給付金及び修習専念資金の各金額の決定経緯等について(甲5、6、69、107)平成29年11月の裁判所法の改正に関し、同法を所管する法務省大臣官房司法法制部が同年1月に作成した「裁判所法の一部を改正する法律案【説明資料】」と題する資料(甲5。以下「法務省説明資料」という。)には、修 習給付金及び修習専念資金の金額について、要旨以下のとおり記載されている。 ア修習給付金の額について(法務省説明資料1頁1)修習給付金は、①基本給付、②住居給付及び③移転給付から構成されており、その金額の概要は、以下のとおりである。 ① 基本給付司法修習生に一律月額13.5万円② 住居給付修習期間中に住居費を要する司法修習生に月額3.5万円③ 移転給付旅費法の移転料 金額の概要は、以下のとおりである。 ① 基本給付司法修習生に一律月額13.5万円② 住居給付修習期間中に住居費を要する司法修習生に月額3.5万円③ 移転給付旅費法の移転料基準に準拠イ基本給付金の額について(法務省説明資料1頁1(1))(ア) 日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した「修習実施アンケート」 (本件アンケート結果)によれば、以下のとおり、修習期間中に生活実- 26 - 費及び学資金として月額おおむね13.5万円の支出がされている。 a 生活実費(合計約9.4万円)食費約4.0万円、交通費約0.9万円、情報通信費約0.9万円、水道光熱費約1.0万円、就職活動費約1.1万円、諸雑費(医療費・衣服費等)約1.5万円 ※ アンケートに回答した全ての司法修習生の平均値。なお、食費及び水道光熱費については、回答中75%を占める住居費支出のある司法修習生の平均値b 学資金(合計約4万円)学習費約1.0万円、書籍代約0.8万円、OA機器購入費約1. 2万円、勉強会参加費約1.0万円※ 学習費についてはアンケートに回答した司法修習生の平均値。勉強会参加費は、本件アンケート結果の交際費(2.7万円)のうち、業務時間外に庁舎や会議室等で行う弁護士等との勉強会の参加費用として日弁連が推計した金額。書籍代及びOA機器購入費は、法曹 に必要な能力の習得に資する関連書籍・判例集等やパソコン本体・周辺機器等の初期投資費用を月割で按分した金額として、日弁連が推計した金額(イ) 基本給付金の額については、上記(ア)のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか、法曹人材確保の充実・ 強化の 按分した金額として、日弁連が推計した金額(イ) 基本給付金の額については、上記(ア)のような生活実費及び学習費等に関する司法修習生の生活実態(注1)のほか、法曹人材確保の充実・ 強化の推進等といった修習給付金制度の導入理由(注2)、貸与制との連続性(注3)、類似の給付貸付制度(別紙省略)との均衡等を総合考慮した上で決定されたものである。 (注1)このほか、一般的な生活実態としては、総務省統計局が公表している平成27年度の「家計調査」によれば、単身世帯(全国の全 世帯対象。ただし、学生の単身世帯等を除く。)の消費支出は合計約- 27 - 16.0万円(内訳略)となっている。 (注2)法曹人材確保の観点から、日弁連は、司法修習生に対する給付額として、大学院卒者の平均給与額と同水準を要望していたところ、厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば、大学院卒者の平均給与額は23万1400円(男女計・初任給)である。 (注3)現行貸与制では、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として、月額23万円(基本額)が司法修習生の希望者に貸与されている。修習給付金(基本給付額)と貸与額(基本額)を併せた額は23.5万円となる予定である。 ウ住居給付金及び移転給付金の額について(法務省説明資料2頁1(2)(3)) (ア) 住居給付金の額については、生活保護制度における住宅扶助額の全国平均(平成27年の単身世帯につき3万4542円)等を参考に設定している。 (イ) 修習に伴う住所又は居所の移転につき、国家公務員等の旅費に関する法律が規定する移転料に準拠して支払われる(注4略)。 エ修習専念資金の額について(法務省説明資料2頁2)(ア) 修習専念資金について 居所の移転につき、国家公務員等の旅費に関する法律が規定する移転料に準拠して支払われる(注4略)。 エ修習専念資金の額について(法務省説明資料2頁2)(ア) 修習専念資金については、「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として司法修習生の希望者に貸与することを予定しており、その額については月額原則10万円程度を想定している。 これは、司法修習生の修習実態等に鑑みたものであり、司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用としては、本件アンケート結果及び平成27年度の「家計調査」(総務省統計局)等によれば、以下のとおり、おおむね10万円程度が想定される。 (内訳)合計10.2万円 社会保険料約1.6万円、所得税・住民税等約0.5万円、勉強会- 28 - 参加費を除く交際費約1.7万円、奨学金返済費用約0.6万円、教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし、書籍費を除く。)約1.5万円、理美容・嗜好品等約1.4万円、自動車等関係費約0.7万円、仕送り金約0.3万円、家具家電・衣服購入費等約1.9万円※ 社会保険料は、平成28年度の国民年金保険料月額。所得税・住 民税等は、修習給付金の金額水準に基づく所得税の試算値。(以下略)(イ) なお、現行貸与制では、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金として、月額23万円(基本額)が希望者に貸与されている。貸与制度は、修習給付金の創設に伴い、貸与額等を見直した上で併存することになるが、新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や 生活実態に変更が生ずるわけではないから、現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められ 伴い、貸与額等を見直した上で併存することになるが、新制度の創設に伴って司法修習生の経済状況や 生活実態に変更が生ずるわけではないから、現行貸与制下の貸与額そのものは引き続き相当性が認められる(注5略)。現行貸与制下の貸与基本額である23万円から修習給付金の基本額(基本給付金)13.5万円を控除した金額とほぼ一致する10万円を修習専念資金の額とすることは、このような観点からも合理的といえる。 (3) 学資金に係る国税庁の解釈等ア国税庁は、そのHP(質疑応答事例・外国の研究機関等に派遣される日本人研究員に対いて支給される奨学金)において、「学資金とは、一般に、学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので、かつ、その目的に使用されるものをいいます。」としている(甲4)。 イ国税庁が令和2年3月に取りまとめた「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(令和3年12月27日更新)の「問9-3 学生に対して大学等から助成金が支給された場合の取扱い」には、①学費を賄うために支給された支援金については、所得税法上の学資金に該当するため非課税と なる(ただし、その支援金の使途が特に限定されていない場合は下記②と- 29 - 同様の取扱いとなる。)が、②生活費を賄うために支給された支援金については、一時所得となる(所得税法上の学資金には該当しない。)としている(乙10)。 ウ 「給付型奨学金を非課税とすることについて」と題する文書(平成30年11月16日)によれば、「現行の給付型奨学金の扱い」に関し、「〇 所 得税法上の『学資金』には、学費や教材費のみならず修学のために追加的に必要となる費用 ことについて」と題する文書(平成30年11月16日)によれば、「現行の給付型奨学金の扱い」に関し、「〇 所 得税法上の『学資金』には、学費や教材費のみならず修学のために追加的に必要となる費用(下宿費等)も含まれる。」とされ、「新制度の扱い」に関し、「〇 2020年度から実施される新制度において、給付型奨学金は授業料減免と一体となって実施されるものであり、修学費、課外活動費、通学費、食費(自宅外生に限って自宅生分を超える額を措置。)、住居・光 熱費(自宅外生に限る。)、保健衛生費、通信費を含むその他日常費、授業料以外の学校納付金(私立学校生に限る。)及び受験料を計上し、措置することとしている。」「〇 これらの費用は、修学をするうえで追加的に必要となるものであり、所得税法上の『学資金』に該当し、個別法(支援機構法)に非課税措置の規程を置かなくとも、所得税法上非課税となるもので ある。」とされ、これらについての国税庁の回答は、「貴見のとおり取り扱って差し支えない。」とされている(甲31の4)。 (4) 基本給付金の学資金該当性に係る司法研修所の説明等司法研修所が司法修習生向けに作成した「修習給付金案内」と題する冊子には、「所得税等の取扱い」(27頁)として、「修習給付金のうち基本給付金 及び住居給付金は、所得税法上の雑所得に該当するため、確定申告の対象となります。」、「必要経費として控除することができる経費はありません。」との記載がある(甲3の2)。 2 本件給付金が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点1)について(1) 所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」の意義等 ア所得税法9条1項15号は、「学資に充てるため給付される金品」につい- 30 - ては所 ついて(1) 所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」の意義等 ア所得税法9条1項15号は、「学資に充てるため給付される金品」につい- 30 - ては所得税を課さない旨定めるところ、その趣旨は、学術奨励という政策的考慮にあるものと解される(乙5)。そして、「学資」の意義については、所得税法に定義規定が置かれていないことから、上記の趣旨を踏まえつつ、その言葉の通常の意味に基づいて解釈すべきである。 そして、一般に、「学資」とは、「学問の修業に要する費用。学費」とか、 「学問を修めるための費用。特に、学校で勉強するための費用。学費」を意味するものとされており、「学資」と同義語である「学費」とは、「学校で教育を受けるためにかかる経費。授業料・教科書代など。学資。」とか、「勉学に要する費用。学資。」とされている(乙6、8、9)。これらの一般的な意味を踏まえると、「学資に充てるため給付される金品」とは、学校 等の教育機関において学術等の教育・指導を受けるために必要な費用(学費)に充てるために給付される金員をいうものと解される(なお、認定事実(3)アのとおり、国税庁は、学資金とは、一般に、「学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので、かつ、その目的に使用されるもの」をいうとしているが、これは上記と同様の趣旨をいう ものと解される。)。 イそして、給付された金品が所得税法上の学資金に該当するかどうかは、当該給付の趣旨の解釈として、当該金品がその対象者の学資に充てるため給付されたものか否かによって判断すべきものである。 そうすると、ある法令に基づいて給付される金品が所得税法上の学資金 に該当するか否かについても、当該給付の趣旨の解釈として、当該金品 るため給付されたものか否かによって判断すべきものである。 そうすると、ある法令に基づいて給付される金品が所得税法上の学資金 に該当するか否かについても、当該給付の趣旨の解釈として、当該金品がその対象者の学資に充てるために給付されたものといえるか否かによって判断すべきであり、その判断に当たっては、当該給付の根拠規定の文言や趣旨目的等を基礎として、「学資」の通常の意味内容を踏まえつつ、社会通念に照らして客観的に判断すべきものと解される。 (2) 基本給付金の給付の趣旨- 31 - ア基本給付金の根拠規定の文言等基本給付金の額について定める裁判所法67条の2第3項は、「基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であって、その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とする。」と規定 しているところ、その文言によれば、基本給付金とは、「司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用」に充てるために支給されるものであって、学資(学費)に充てるために支給されるものとはされていない。また、裁判所法、修習給付金規則その他関係法令を参照しても、基本給付金につき、学費(学費)に充てるために支給されるものであるこ とを裏付けるような規定は見当たらない。 また、司法修習は、司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり、必須の臨床教育課程として実施されるものであるが、司法修習生は、このような司法修習(職業訓練課程・臨床教育課程)における教育・指導を受ける対価を負担するものとはされていない。 すなわち、司法修習生は、その立場上、「学資」や「学費」という言葉の中核的な意味に係る費用 法修習(職業訓練課程・臨床教育課程)における教育・指導を受ける対価を負担するものとはされていない。 すなわち、司法修習生は、その立場上、「学資」や「学費」という言葉の中核的な意味に係る費用(授業料、入学金等の学納金)について、これを負担することがない。 さらに、基本給付金は、個々の司法修習生の経済的事情(学費負担の困難の程度等)にかかわらず、司法修習生という地位に基づいて、一律に一 定の金額(月額13万5000円)が支給されるものであり、その制度上、司法修習生が基本給付金をいかなる費用に充てるかは全く自由であり、その一部又は全部を、「学資」や「学費」という言葉に含まれ得る学習費や書籍代等に充てることが求められているものでもない。 イ基本給付金の制度が導入された目的等 基本給付金が導入された経緯(認定事実(1))をみると、平成14年の司- 32 - 法制度改革推進計画により、平成22年頃には司法試験の合格者数を3000人程度とすることを目指すとされたことを前提に、平成16年の裁判所法改正(平成23年11月施行)により、給費制を廃止して貸与制が導入されたが、その後、司法試験合格者数の年間3000人目標が事実上撤回され、法曹志望者が大幅に減少するなど、貸与制移行後の大きな状況の 変化があったため、法曹志望者を確保することが喫緊の課題であるとされ、司法修習生に対する新たな経済的支援策として、修習給付金(基本給付金)等の制度が新設されたことが認められる。 このような経緯によれば、貸与制に代えて基本給付金の制度が導入された主たる目的は、貸与制移行後に法曹志望者が大幅に減少したことなどの 状況の変化を踏まえて、返済の必要のない修習給付金(基本給付金)の制度を導入することにより、司法修習中の経済的負 が導入された主たる目的は、貸与制移行後に法曹志望者が大幅に減少したことなどの 状況の変化を踏まえて、返済の必要のない修習給付金(基本給付金)の制度を導入することにより、司法修習中の経済的負担を軽減し、司法試験受験者数の低下に歯止めをかけ、法曹人材確保の充実・強化を図ることにあったものと認められる。 すなわち、基本給付金の制度は、経済的な事情により学資(学費)を負 担することが困難な司法修習生への支援を目的として導入されたものではなく、司法修習中の経済的負担を軽減し、法曹人材確保の充実・強化を図るという政策的な目的に基づいて導入されたものといえる。 ウ基本給付金の金額の決定に際しての考慮事情等基本給付金の金額については、裁判所法67条の2第3項の文言のとお り、「司法修習生が…その修習に専念しなければならないことその他の司法修習生の置かれている状況を勘案して」最高裁判所が定めるものとされている。 認定事実(2)によれば、基本給付金の金額の検討過程においては、本件アンケート結果からうかがわれる生活実費及び学習費等に関する司法修習生 の生活実態のほか、法曹人材確保の充実・強化の推進等といった修習給付- 33 - 金制度の導入理由、貸与制との連続性、類似の給付貸付制度との均衡等を総合考慮した上で、一の給付期間につき13万5000円と定められたこと(修習給付金規則2条1項)が認められる。そして、その決定の際には、第68期司法修習生において月額おおむね13.5万円(生活実費約9. 4万円、学資金約4.0万円)の支出がされていた旨の本件アンケート結 果のほか、総務省統計局が公表している平成27年度の家計調査(単身世帯の消費支出合計約16.0万円)、厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」の大学院卒者の 出がされていた旨の本件アンケート結 果のほか、総務省統計局が公表している平成27年度の家計調査(単身世帯の消費支出合計約16.0万円)、厚労省「平成28年賃金構造基本統計調査」の大学院卒者の平均給与額(男女計・初任給23万1400円)、貸与制の下における貸与基本額(月額23万円)も併せて考慮されたことがうかがわれる。 このような基本給付金の金額の決定に際しての考慮事情や基礎資料等を見ると、本件アンケート結果において学資金約4.0万円の費用が一部考慮されているものの、全体としては、司法修習生の学資(学費)としてどの程度の費用が必要かという観点ではなく、修習専念義務を負い生活費を稼ぐことのできない司法修習生がその生活を維持するためにどの程度の 費用が必要かという観点から、実際の司法修習生の生活実態等(本件アンケート結果)を基礎として、その他の一般的な統計資料や政策的な要請等も踏まえつつ、基本給付金の具体的な金額が決定されたものといえる。 エ小括上記アないしウによれば、基本給付金は、その規定の文言上、「司法修習 生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用」に充てるために支給するものとされていること(上記ア)、司法修習生は、司法修習における教育・指導の対価(授業料等)を負担することがなく、その経済的事情にかかわらず一律に一定額の基本給付金の支給を受け、これをいかなる費用に充てるかは全く自由であること(同ア)、基本給付金の制度は、経済的 な事情により学資(学費)を負担することが困難な司法修習生の支援を目- 34 - 的として導入されたものではなく、法曹人材確保の充実・強化を図るという政策的な目的に基づいて導入されたものであること(上記イ)、基本給付金の金額は、司法修習生の学 習生の支援を目- 34 - 的として導入されたものではなく、法曹人材確保の充実・強化を図るという政策的な目的に基づいて導入されたものであること(上記イ)、基本給付金の金額は、司法修習生の学資(学費)としてどの程度の費用が必要かという観点ではなく、司法修習生がその生活を維持するためにどの程度の費用が必要かという観点から、政策的な要請等も踏まえて決定されたもので あること(上記ウ)などの事情を指摘することができる。 これらの事情を総合すると、基本給付金は、法曹人材確保の充実・強化を図るという政策的な目的に基づき、修習専念義務を負い生活費を稼ぐことのできない司法修習生の生活費全般に充てるため、使途を限定せずに支給されるものであって、学資(司法修習における教育・指導を受けるため に必要な費用)に充てるために支給されるものとはいえないから、所得税法上の学資金には当たらないというべきである。 なお、司法研修所は、司法修習生向けに作成した「修習給付金案内」において、基本給付金は所得税法上の雑所得に該当し、確定申告の対象となる旨を周知しているところ(認定事実(4))、この内容は、基本給付金が所 得税法上の学資金には該当しない旨の上記解釈と同様の理解に基づくものと解される。 (3) 原告の主張(学資支給金との整合性等)についてアこれに対し、原告は、所得税法上の学資金には、学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費も含まれると主張し、その根拠として、 所得税法上の学資金として非課税所得とされる学資支給金や同じく非課税所得になると解される大学院奨学金等は、学業に専念する目的で使用される生活費を支給するものとされていることを指摘する(前記第2の5(1)(原告の主張)ア)。 イ確かに、支援機構法1 く非課税所得になると解される大学院奨学金等は、学業に専念する目的で使用される生活費を支給するものとされていることを指摘する(前記第2の5(1)(原告の主張)ア)。 イ確かに、支援機構法17条の2第1項に基づく給付型奨学金である学資 支給金について、国税庁は、食費、住居・光熱費等、保健衛生費及び通信- 35 - 費を含むその他日常費も使途として想定しており、それらは修学をする上で追加的に必要となる費用であるとして、全体として所得税法上の学資金に該当するものと解していることが認められる(認定事実(3)ウ)。 しかし、学資支給金が所得税法上の学資金に該当する旨の国税庁の上記解釈が、所得税法9条1項15号の解釈として正しいものであるかどうか は定かでなく、学資支給金が所得税法上の学資金として非課税とされていることは、基本給付金に係る上記判断を直ちに左右するものではない。 また、学資支給金に係る国税庁の解釈が正当であると仮定しても、学資支給金に係る支援機構法17条の2第1項は、「学資の支給」との見出しの下で、同法13条1項1号に規定する学資として支給する資金(学資支給 金)は、大学等における就学の支援に関する法律2条3項に規定する確認大学等に在学する優れた学生等であって経済的理由により修学に困難があるもののうち、文部科学省令で定める基準及び方法に従い、特に優れた者であって経済的理由により極めて修学に困難があるものと認定された者に対して支給するものとする旨規定している。このように、学資支給金につ いては、その根拠規定において、「学資として支給する資金」であることが文言上明確にされている。また、学資支給金は、司法修習生に一律に一定額が支給される基本給付金とは異なり、「経済的理由により極めて修学に困 の根拠規定において、「学資として支給する資金」であることが文言上明確にされている。また、学資支給金は、司法修習生に一律に一定額が支給される基本給付金とは異なり、「経済的理由により極めて修学に困難がある」と認定された者に対して支給されるものであり、修学のため追加的に必要となる費用(食費、住居費等)についても一定の支援を行わな ければ、学資を負担して学業を継続することが類型的に困難な者に対する支援ということができる。これらの事情に照らせば、学資支給金は、基本給付金とはその給付の趣旨を明らかに異にしており、修学をする上で追加的に必要となる費用を含めて、学資に充てるため給付されるという解釈も十分あり得ると考えられる。 なお、「学資」やその同義語である「学費」という言葉の理解として、授- 36 - 業料や入学金等の学納金はその中核的な部分であり、これを含まない学生等の生活費を「学資」や「学費」という言葉で表現することは一般的ではないように思われる。しかるところ、学資支給金の給付については、基本的に、授業料等減免と一体となって実施されるものであり(大学等における就学の支援に関する法律8条1項、大学等における就学の支援に関する 法律施行規則9条2項。乙11〔11頁〕)、減免されないその余の学納金も学資支給金の使途として想定されるなど、その支援の対象として授業料や入学金等の学納金を含むものと解されるが、基本給付金については、司法修習生はそもそも司法修習における教育・指導の対価を負担しないのであるから、授業料や入学金等の学納金(学資・学費の中核的な部分)を含 まない生活費全般を支援の対象とするものというほかはなく、これを「学資」や「学費」という言葉で表現することは、その一般的な意味に照らして無理があるというべきであ 資・学費の中核的な部分)を含 まない生活費全般を支援の対象とするものというほかはなく、これを「学資」や「学費」という言葉で表現することは、その一般的な意味に照らして無理があるというべきである。 ウまた、大学院奨学金等については、原告が具体例として掲げるG法科大学院の奨学給付金、H法科大学院の給付奨学金、I法科大学院の支援金及 びJ法科大学院の奨学金(甲7、57~59)のいずれについても、そもそも所得税法上の学資金に該当するか否か定かではない上、仮に該当するものであるとしても、それぞれの大学院奨学金等の給付の目的やその要件等に照らして、当該給付の趣旨の解釈として「学資に充てるため給付される金品」(所得税法上の学資金)に該当すると判断されたにすぎず、これを もって基本給付金に係る上記判断が左右されるものとはいえない。 (4) その余の原告の主張についてア原告は、上記主張のほかに、①司法修習は「学術又は技芸の習得」に当たるし、仮に当たらないとしてもそれだけでは所得税法上の学資金に当たらないとはいえない(例えば、東京都認証保育所の保育料助成金は、学術 又は技芸を習得するための資金ではないのに所得税法上の学資金として扱- 37 - われている。)、②基本給付金には課税所得となるべき担税力がないし、その金額規模からしても所得税法上の学資金該当性を否定される理由はない、③司法修習生について授業料等の負担がないことは基本給付金の学資金該当性を否定する事情とはならない(司法修習は国際的に無償化が求められている高等教育に当たる)などと主張する。 イしかし、①の点については、基本給付金が所得税法上の学資金に該当しないと解されるのは、司法修習が「学術又は技芸の習得」に該当しないことを理由とす る高等教育に当たる)などと主張する。 イしかし、①の点については、基本給付金が所得税法上の学資金に該当しないと解されるのは、司法修習が「学術又は技芸の習得」に該当しないことを理由とするものではないから、当該主張は基本給付金の所得税法上の学資金該当性に係る上記判断を左右するものではない。なお、「保育」とは、「養護及び教育を行うことをいう。」とされているから(子ども・子育て支 援法7条3項、児童福祉法6条の3第7項)、上記の保育料助成金は、保育所において幼児が教育を受けるために必要な費用に充てるため給付される金品(学費)として、所得税法上の学資金に該当するものと解し得る。 また、②の点については、所得税法上の学資金該当性につき実質的な担税力の有無や程度がそのメルクマールとなるものではなく、基本給付金の 金額が埼玉県の最低賃金で週40時間稼働した場合の収入よりも少ないからといって、基本給付金が所得税法上の学資金に該当することになるものではない。また、基本給付金が所得税法上の学資金に該当しないと解されるのは、その金額規模によるものではないから、基本給付金の金額規模に係る主張は、基本給付金の所得税法上の学資金該当性に係る上記判断を左 右するものではない。 さらに、上記③の点については、これまでに説示したとおり、給付対象者が教育・指導を受ける対価(学資・学費の中核的な部分)の負担を負うかどうかという点は、「学資」や「学費」の一般的な意味内容に照らし、所得税法上の学資金該当性に係る重要な考慮要素となるというべきであるし、 学資給付金が、基本的に授業料等の免除と一体として行われることなど、- 38 - 授業料等の学納金の支援の趣旨を含むものと解されることは、既に説示したとおりである。ま うべきであるし、 学資給付金が、基本的に授業料等の免除と一体として行われることなど、- 38 - 授業料等の学納金の支援の趣旨を含むものと解されることは、既に説示したとおりである。また、司法修習が国際的に無償化が求められている高等教育に当たるとしても、これにより基本給付金の給付の趣旨が変わるものではなく、所得税法上の学資金に該当しない旨の上記判断が左右されるものとはいえない。 原告は、そのほかにも、基本給付金の所得税法上の学資金該当性を裏付けるべく様々な観点から主張するが(例えば、文化功労者年金との取扱いとの整合性、修習給付金案内の記載の信頼性、非課税の取扱いに向けた最高裁判所の協議の懈怠など)、いずれの主張についても、基本給付金は所得税法上の学資金に該当しない旨の上記判断を左右するものとはいえない。 原告の主張はいずれも採用することができない。 (5) 小括(争点1のまとめ)したがって、基本給付金は所得税法上の学資金に当たらないから、原告に支給された基本給付金(本件給付金)についても、所得税法上の学資金に該当しない。 3 本件利息相当額が所得税法上の学資金に該当するか否か(争点2)について(1) 修習専念資金の貸与の趣旨ア修習専念資金について定める裁判所法67条の3第1項は、「最高裁判所は、司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習専念資金(司 法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう。…)を貸与するものとする。」と規定している。このように、修習専念資金は、「司法修習生がその修習に専念することを確保するため するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう。…)を貸与するものとする。」と規定している。このように、修習専念資金は、「司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なもの」として貸与されるものであるから、修習期間中 の生活を維持するために必要な費用に充てるため支給される基本給付金- 39 - 等の支給を受けてもなお不足する費用を賄うものとして貸与されるものということができ、基本給付金等とその趣旨を共通にするものということができる。また、裁判所法、修習専念資金規則その他関係法令を参照しても、修習専念資金につき、学資(学費)に充てるために支給されるものであることを裏付けるような規定は見当たらない。 イまた、前記2(2)アのとおり、司法修習生は司法修習における教育・指導を受ける対価を負担するものとはされていないし、司法修習生において、無利息で貸与を受けた修習専念資金をいかなる費用に充てるかは全く自由である。さらに、修習専念資金の額の決定過程における考慮事情や基礎資料等をみても、修習専念資金につき、「学資」や「学費」に含まれ得る学習 費や書籍費等に充てることが想定されていたことはうかがわれない(認定事実(2)エ)。 ウ上記のとおり、修習専念資金は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用に充てるため支給される基本給付金等とその趣旨を共通にするものであり、学資(司法修習における教育・指導を受け るために必要な費用)に充てるため貸与されるものとはいえない。そうすると、司法修習生が無利息で修習専念資金の貸与を受けたことによって生じる利息相当額の経済的利益も、学資(司法修習における教育・指導を受けるために必 用)に充てるため貸与されるものとはいえない。そうすると、司法修習生が無利息で修習専念資金の貸与を受けたことによって生じる利息相当額の経済的利益も、学資(司法修習における教育・指導を受けるために必要な費用)に充てるためのものとはいえない。 したがって、無利息で修習専念資金の貸与を受けたことによって生ずる 利息相当額の経済的利益は、所得税法上の学資金には当たらないというべきである。 (2) 原告の主張についてこれに対し、原告は、仮に基本給付金が所得税法上の学資金に該当しないとしても、①修習専念資金の利息相当額は基本給付金とは金額規模が異なる こと、②司法修習生が罷免された場合、貸与を受けた修習専念資金の全部を- 40 - 直ちに返還しなければならないとされており(修習専念資金規則8条)、所得税法上の学資金とされる学資支給金の返還に関する定め(支援機構法17条の3)と類似する規定があること、③奨学金の返済に充てるための給付は一定の範囲で非課税の学資金となるが(甲116)、修習専念義務の想定使途として奨学金の返済が含まれていることを理由として、修習専念資金の利息相 当額は、基本給付金とは異なり、所得税法上の学資金に該当する旨主張する。 しかし、基本給付金や修習専念資金の利息相当額が所得税法上の学資金に当たらないのは、その金額規模を理由とするものではないから、原告の上記①の主張は上記判断を左右するものではない。また、支援機構法17条の3は、返済義務のない学資支給金について一定の事由が生じた場合に、支給を 受けた学資支給金の全部又は一部を返還させるものであって、修習専念資金に係る期限の利益の喪失の定め(修習専念資金規則8条)と類似する規定ではないから、原告の上記②の主張は採用することができな 受けた学資支給金の全部又は一部を返還させるものであって、修習専念資金に係る期限の利益の喪失の定め(修習専念資金規則8条)と類似する規定ではないから、原告の上記②の主張は採用することができない。また、司法修習生において、無利息で貸与を受けた修習専念資金をいかなる費用に充てるかは自由であるから、奨学金の返済に直接充てられた給付の場面(甲116) とは異なるというべきであり、原告の上記③の主張は採用することができない。 (3) 小括したがって、無利息で貸与される修習専念資金の利息相当額は所得税法上の学資金に当たらないから、原告に支給された修習専念資金に係る▲年中の 利息相当額(本件利息相当額)についても、所得税法上の学資金に該当しない。 4 本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か(争点3)について(1) 所得税法37条1項の定め 所得税法37条1項は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又- 41 - は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、①これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用(個別対応の費用)の額及び②その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(一般対応の費用)の額とする旨規定する。 (2) 検討司法修習生は、修習専念義務を負うものの、基本給付金の支払者である最高裁判所に対して一定の職務を遂行すべき義務を負うわけではない(認定事実(1)イ参照)。基本給付金は、司法修習生の労務の提供の対価ではなく、修習専念義務を負い生活費を稼ぐことのできない司法修習生に対する政策的な 経済的支援として支給 を負うわけではない(認定事実(1)イ参照)。基本給付金は、司法修習生の労務の提供の対価ではなく、修習専念義務を負い生活費を稼ぐことのできない司法修習生に対する政策的な 経済的支援として支給されるものである(上記2(2)ア、イ参照)。 そして、基本給付金は、司法修習生という地位に基づいて、一律に一定の金額(月額13万5000円)が支給されるものであり、支給の要件として、用意されている授業やカリキュラムに出席することが定められているものではなく、その成績によって金額が変わるものでもない(上記2(2)ア、ウ参照)。 上記基本給付金の性格や支給要件等に照らせば、司法修習生に一律に一定額が支給される基本給付金については、そもそも①所得税法37条1項の「総収入金額を得るため直接に要した費用」(個別対応の費用)を観念することができないし、司法修習は「所得を生ずべき業務」には該当しないというべきであるから、②同項の「所得を生ずべき業務について生じた費用」(一般対応 の費用)を観念することもできず、したがって、基本給付金につき必要経費として控除することができる経費は存在しないというべきである。 なお、司法研修所は、司法修習生向けに作成した「修習給付金案内」において、基本給付金につき必要経費として控除することができる経費はない旨を周知しているところ(認定事実(4))、この内容は、上記の解釈と同様の理 解に基づくものと解される。 - 42 - (3) 原告の主張についてこれに対し、原告は、①司法修習生の罷免理由や非違行為に該当する行為は公にされておらず、司法修習生の立場は安定していないから、その立場を維持するための必要経費を認める必要がある、②給費制の下では給与所得控除として必要経費が 修習生の罷免理由や非違行為に該当する行為は公にされておらず、司法修習生の立場は安定していないから、その立場を維持するための必要経費を認める必要がある、②給費制の下では給与所得控除として必要経費が認められていたこととのバランスから、基本給付金につ いても必要経費を認める必要がある、③営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為について必要経費が一切存在しないことはそもそも想定できないなどと主張する。 しかし、上記①の点については、前述のとおり、司法修習は「所得を生ず べき業務」には該当せず、ましてや司法修習生の身分(立場)を維持すること(罷免されたり修習の停止を命じられたりしないようにすること)は「業務」ですらないというべきであるから、司法修習生の立場が安定しているか否か等にかかわらず、司法修習生の立場を維持するための必要経費を観念することはできない。 また、上記②の点については、かつての給費制における司法修習生に対する給与に給与所得控除が認められていたのは、給与として支給されていたことから一般の給与所得と同様に取り扱われていたものにすぎないのであって、基本給付金につき給与所得控除が認められる余地はないし、給費制(給与)とのバランスから必要経費を認めるべきものともいえない。 さらに、上記③の点については、「営利」とは、財産上の利益の獲得を図ることをいうところ、司法修習生は、法曹資格を得るために国から無償で提供される司法修習に従事するのであって、基本給付金の支給を受けるために司法修習に従事するものではないから、司法修習は「営利を目的とする」ものには当たらない。原告の上記③の主張は採用することができない。 なお、 あって、基本給付金の支給を受けるために司法修習に従事するものではないから、司法修習は「営利を目的とする」ものには当たらない。原告の上記③の主張は採用することができない。 なお、原告は、移転給付金(裁判所法67条の2第5項)や旅費が課税対- 43 - 象とはならないのは、移転費用と交通費等が必要経費とされているからであり、基本給付金についても必要経費が観念できる旨主張するが、移転給付金等は、費用弁償として支払われるため、経費と収入が一致するものとして課税対象とならないのであって、基本給付金とはその趣旨を異にするものであるから、上記主張は基本給付金につき必要経費を観念し得ない旨の上記判断 を左右するものではない。 また、原告は、少なくとも本件交通費と本件書籍代については必要経費に該当するなどと主張するが、司法修習が「所得を生ずべき業務」に該当しないことなどこれまでに述べたところに照らし、当該主張は採用することができない。その他、本件費用が雑所得の計算上必要経費に該当する旨の原告の 主張は、いずれも採用することができない。 (4) 小括以上によれば、基本給付金につき必要経費として控除することができる経費は存在しないというべきであるから、原告が▲年中に支出した本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 5 本件給付金を非課税所得と認めないことや本件費用を必要経費と認めないことが憲法14条1項に反するか否か(争点4)について(1) 本件給付金を非課税所得と認めないことと憲法14条1項(職業訓練受講給付金が非課税とされていることとの関係)原告は、職業訓練受講給付金と基本給付金は職業訓練期間中の生活を支援 するという給付目的達成のために必 いことと憲法14条1項(職業訓練受講給付金が非課税とされていることとの関係)原告は、職業訓練受講給付金と基本給付金は職業訓練期間中の生活を支援 するという給付目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通しているなどとした上、職業訓練受講給付金が非課税所得(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条)とされているのに、基本給付金が非課税所得とされないのは合理的な理由のない差別であって憲法14条1項に違反する旨主張する。 しかし、職業訓練受講給付金(月額10万円)は、特定求職者の最低生活- 44 - を保障するものであり、本人の収入のほか、世帯全体の収入や資産等が支給要件とされているのに対し(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則11条1項)、基本給付金は、個々の司法修習生の経済的事情にかかわりなく一律に一定額が支払われるものであって、両者は制度趣旨や支給対象を異にする別の制度であるから、基本給付金につき非課税 所得にする旨の立法上の措置が講じられなかったからといって、合理的な理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するとはいえない。原告の上記主張は採用することができない。 (2) 本件費用を必要経費と認めないことと憲法14条1項(農業次世代人材投資資金(準備型)において必要経費の控除が認められていることとの関係) 原告は、基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは、必要経費の概算控除が認められている給与所得者及び必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者(特に、農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者)との関係において合理的理由のない差別であるから、憲法14条1項に反する旨主張する。 しかし、農業次 実額控除が認められている他の雑所得者(特に、農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者)との関係において合理的理由のない差別であるから、憲法14条1項に反する旨主張する。 しかし、農業次世代人材投資資金(準備型)について、交通費や授業料など研修に要した費用を雑所得の計算上必要経費として控除することができる(甲19の2)のは、就農希望者が所定の研修を受けることが交付要件の1つとされていることから(甲19の1)、当該研修が「所得を生ずべき業務」に該当し、当該研修に要した費用が、一般対応の費用として雑所得の計算上 必要経費に算入されるためであると解される。 これに対し、基本給付金は、司法修習生の地位に基づいて一律に一定額が支給されるものであって、司法修習を受けることが「所得を生ずべき業務」に当たらないことはこれまでに説示したとおりであるから、農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者やその他の雑所得者との課税上の取扱いの差異 は、研修の受講等が「所得を生ずべき業務」に該当するかどうかという同一- 45 - 要件の解釈適用の違いに由来するものであって、これをもって合理的理由のない差別に当たるとはいえない。なお、給与所得者の給与所得控除との違いについても、給与所得か雑所得かという所得区分の違いに由来するものであって、これをもって合理的理由のない差別に当たるとはいえない。原告の上記主張は採用することができない。 6 まとめ上記2及び3のとおり、本件給付金及び本件利息相当額は、いずれも所得税法上の学資金に該当せず、非課税所得とはならない。また、上記4のとおり、本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 上記によれば、原告の▲年分の総所得金額は、別紙4のとおり、156万 に該当せず、非課税所得とはならない。また、上記4のとおり、本件費用を雑所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 上記によれば、原告の▲年分の総所得金額は、別紙4のとおり、156万8 286円(本件給付金155万7000円及び本件利息相当額1万1286円の合計額)であり、同年分の必要経費は0円である。そうすると、原告の同年分の所得税等に係る納付すべき税額は,別紙4記載のとおりであると認められる。 そして、本件更正処分における「納付すべき税額」は、別紙3の▲年分の「更 正処分(原処分②)」欄の「納付すべき税額」欄記載のとおりであり,上記で認定した原告の同年分の所得税等に係る納付すべき税額と同額であるから、本件更正処分は適法である。 第4 結論よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとお り判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地 淳 - 46 - 裁判官新宮智之 裁判官太田章子 (別紙1ないし同3省略) - 47 - (別紙4)本件更正処分の根拠及び適法性 1 総所得金額 156万8286円上記金額は、雑所得の金額であり、雑所得の総収入金額と同額である。 (1) 雑所得の総収入金額 156万8286円 上記金額は次のア及びイの合計額であり、いずれも非課税所得には該当せず(第3の2、3参照)、また、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、 156万8286円 上記金額は次のア及びイの合計額であり、いずれも非課税所得には該当せず(第3の2、3参照)、また、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得であるから、雑所得となる(所得税法35条1項)。 ア本件給付金 155万7000円 上記金額は、原告が最高裁判所から裁判所法67条の2第2項に規定する基本給付金として▲年中に支払を受けた金額である。 イ本件利息相当額 1万1286円無利息で金銭の貸付けを受けた者は、通常の金銭消費貸借取引であれば支払う必要のある利息の支払を免れ、利息相当額の経済的利益を得たことにな るところ、原告は無利息で裁判所法67条の3に規定する修習専念資金の貸与を受けているから(第3の3参照)、その利息相当額を所得税法36条にいう経済的利益として総収入金額に算入すべきである。 上記金額は、原告の▲年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき利息相当額を、租税特別措置法(令和2年法律第8号による改正前のもの) 93条2項に規定する特例基準割合(年1.6%)による利率により評価したものであり、その内容は別紙1の「本件利息相当額」欄記載のとおりである。 (2) 雑所得の必要経費 0円原告の▲年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額があるとは 認められない(第3の4参照)。 - 48 - 2 所得控除の額 38万円上記金額は、所得税法86条1項(平成30年法律第7号による改 とは 認められない(第3の4参照)。 - 48 - 2 所得控除の額 38万円上記金額は、所得税法86条1項(平成30年法律第7号による改正前のもの)に規定する基礎控除の額である。 3 課税される所得金額 118万8000円上記金額は、上記1の総所得金額から上記2の所得控除の額を控除した後の金 額(ただし、国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 4 課税される所得金額に対する課税 5万9400円上記金額は、上記3の課税される所得金額に、所得税法89条1項の規定を適用して算出した金額である。 5 復興特別所得税の額 1247円上記金額は、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(以下「復興財源確保法」という。)13条の規定により、上記4の税額に100分の2.1を乗じた金額である。 6 納付すべき税額 6万0600円 上記金額は、上記4及び5の各金額の合計額(ただし、復興財源確保法24条2項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 (以上)

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