令和2年3月26日判決言渡令和元年(行コ)第274号退去強制令書発付処分取消等請求,訴えの追加的併合控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第193号,平成30年(行ウ)第409号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の概要は,2のとおり加除訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」(原判決3頁16行目から32頁13行目まで)(ただし,本件不適合認定,本件退命裁決,本件認定,本件判定及び本件裁決取消請 求に関する部分を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決4頁7行目末尾の次に改行して「 原審は,本件訴えのうち,本件不適合認定,本件退命裁決,本件認定,本件判定及び本件裁決の取消しを求める部分をいずれも不適法であるとして却下し,本件退去命令及び本件退令発付処分取消請求をいずれも理由があるとして認容した。これに対し,控訴人が敗訴 部分を不服として,控訴した。したがって,当審の審理判断の対象は,被控訴人の本件退去命令及び本件退令発付処分取消請求のみである。」を加える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人の本件退去命令及び本件退令発付処分取消請求はいずれも理由があるものと判断する。その理由は,2のとおり加除訂正し,3のと おり当審における新たな主張等に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及 び理由」の「第3 当裁判所の判断」1から3まで(原判決32頁15行目から52頁23行目まで)(ただし,本 おり当審における新たな主張等に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及 び理由」の「第3 当裁判所の判断」1から3まで(原判決32頁15行目から52頁23行目まで)(ただし,本件不適合認定,本件退命裁決,本件認定,本件判定及び本件裁決取消請求に関する部分を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決46頁2行目から3行目にかけての「「短期滞在」の在留資格に該当す ることについて」を「その申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく,「観光・・・その他これらに類似する活動」に該当することについて」に改める。 ア控訴人は,外国人の入国の許否については,国家の広範な裁量が認められるとした上で,被控訴人の過去の在留実績や口頭審理における特別審理 官への説明等の対応を踏まえると,特別審理官において,被控訴人が「観光」の意義を逸脱する活動,ないしは,表面的には「観光」の側面を有するように見えるものの,当該活動の全体を見れば,その活動が当該外国人に上陸及びそれに引き続く在留を認めてまで行わせる活動として,社会一般の理解,あるいは我が国の出入国在留管理政策や国民保護に照らして受 け入れ難いような「観光」を逸脱する行為に及ぶおそれを払しょくすることができないため,被控訴人には今回の滞在中に本邦で行おうとする活動についてより具体的かつ網羅的な立証をすることが必要であったにもかかわらず,これを行わなかったのであるから,本件不適合認定は,特別審理官の合理的な裁量権の範囲を逸脱するものではなく適法である旨主張する。 イしかしながら,入管法7条1項に列挙されている上陸条件は多岐にわたっており,そのすべての適合性の判断について,等しく特別審理官に広範な裁量権が付与されている 適法である旨主張する。 イしかしながら,入管法7条1項に列挙されている上陸条件は多岐にわたっており,そのすべての適合性の判断について,等しく特別審理官に広範な裁量権が付与されているということはできない。例えば,入管法7条1項4号は,外国人が同法5条1項各号のいずれにも該当しないことを上陸条件として定め,同項14号は,前各号に規定されている日本国の利益又 は安寧秩序を損なうおそれがあると認められる具体的な類型に該当しない 外国人であっても,「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」の上陸を拒否することができることを定めているところ,同号のように概括的に規定された上陸条件であってその判断基準も特に定められていないのであれば,その条件適合性の判断について,判断者に合理的な裁量権を付与したもの と解することができる。 ところで,被控訴人が入管法7条1項2号を除く各号に掲げる上陸条件には適合していたものと認められることは,先に引用した原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」2の(原判決45頁1行目から3行目まで)に記載のとおりであり,本件で争点になっているのは,被控訴 人の上陸申請に係る本邦において行おうとする活動が「本邦に短期間滞在して行う観光・・・その他これらに類似する活動」に該当するか否かである。そして,我が国を代表する国語辞典である広辞苑においても,上記に例示された活動のうち,「観光」とは「他の土地を視察すること。また,その風光などを見物すること。」を意味するとされており,その外延はかな り明確であって概括的なものではなく,その適合性を判断する特別審理官に広範な裁量権を付与したものであるとはいい難い。 ウ 光などを見物すること。」を意味するとされており,その外延はかな り明確であって概括的なものではなく,その適合性を判断する特別審理官に広範な裁量権を付与したものであるとはいい難い。 ウ上記で検討したところを前提として,控訴人が,被控訴人に「観光」の意義を逸脱する活動に及ぶおそれがあると認めるべき根拠として主張する事情について検討する。 控訴人は,改めて被控訴人が反捕鯨団体のシー・シェパードと関係を有していると主張する。 しかしながら,控訴人が当審において新たに提出した証拠(乙104)によっても,被控訴人がロンドンで開催された反イルカ漁デモにおいて,シー・シェパードの英国のリーダーらとともにメインスピーカーとして 演説したことが認められるにすぎず,これによって被控訴人がシー・シ ェパードと何らかの強い関係を有し,本邦において「観光」を超えた活動をするおそれがあると認めることはできない。 控訴人は,被控訴人が過去の来日時に入国目的を偽っていた可能性があると主張する。 しかしながら,証拠(乙82ないし84,98)によれば,平成18 年から平成19年にかけて,被控訴人が観光目的で来日した際に,商用目的で来日した映画「A」の監督であるB監督と日本での滞在時期が一部重なっていることが認められるものの,被控訴人がこの平成18年から平成19年の我が国の滞在期間中に「観光」という入国目的を逸脱する行動を取っていたことを示す証拠はない。また,証拠(乙82)によ れば,被控訴人が映画「A」のアドバイザーとして被控訴人の氏名が挙げられていることが認められるが,これによって被控訴人が過去の来日時に入国目的を偽っていたと認めることはできず,他に被控訴人が過去の来日時に 控訴人が映画「A」のアドバイザーとして被控訴人の氏名が挙げられていることが認められるが,これによって被控訴人が過去の来日時に入国目的を偽っていたと認めることはできず,他に被控訴人が過去の来日時に入国目的を偽っていたことを示す証拠は見出せない。したがって,この点から被控訴人が今回の在留中において「観光」の意義を逸 脱する活動に及ぶおそれがあると認めることはできない。 控訴人は,被控訴人の反イルカ漁活動が我が国の政策を否定し,非難するものであって,その態様も不穏当で著しく適切さを欠くものであり,α町の産業や地元住民の安寧平穏な生活を脅かすものであったと主張する。 しかしながら,まず,被控訴人が我が国のイルカ漁についての政策に反する考え方を有しているからといって,被控訴人の活動が直ちに「観光」に該当しないことにならないことはいうまでもないし,被控訴人がそのような考え方を有していることが,被控訴人が「観光」の意義を逸脱する活動等に及ぶおそれがあることの証左となるものでもないことも また言を俟たないところである。そして,被控訴人が,過去にα町にお いて有形力を用いてイルカ漁を妨害した事実や,α町の漁業関係者に対して暴力行為をした事実は認められないこと,及び被控訴人が,漁業関係者等への嫌がらせなどを行うこと自体を今回の本邦への入国の目的としていた疑いがあるというのは困難であることは,先に引用した原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」2ののエの(原判決 50頁11行目から51頁16行目まで)に記載のとおりである。 この点,控訴人は,改めて,被控訴人が,嫌がる漁業関係者をビデオカメラで執拗に撮影したなどと主張し,当審において,Cが撮影した映像(乙100)を提出する 行目まで)に記載のとおりである。 この点,控訴人は,改めて,被控訴人が,嫌がる漁業関係者をビデオカメラで執拗に撮影したなどと主張し,当審において,Cが撮影した映像(乙100)を提出する。しかしながら,この映像によっても,被控訴人が公道からα町漁業協同組合の施設等にビデオカメラを向けて撮影 していることが認められるにすぎず,この行為自体が直ちにα町の産業や地元住民の生活を脅かす行為であると認めることはできない。 また,控訴人は,その他にも,被控訴人が映画「A」の中などで,α町の漁業関係者等に対する中傷や事実を歪曲した内容の発言を多数行っているなどと主張するが,そうであるにしても,それらが被控訴人が今 回の我が国の在留中に「観光」の意義を逸脱する活動等に及ぶおそれを窺わせる事情となるものではない。 以上によれば,控訴人の主張する各事情は,いずれも,被控訴人が「観光」を逸脱する活動等に及ぶおそれがあることを客観的に推認させる事情であると認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。 控訴人は,被控訴人が本件口頭審理において本邦において行おうとする活動がイルカ漁ウォッチング等であると説明したことについて,被控訴人が実際に行おうとする活動は一般の観光客が行うイルカ漁ウォッチングとはその性質も態様も異なるものであるから,その説明は虚偽のものであり,本件不 適合認定は適法である旨主張する。 しかしながら,被控訴人は,本件口頭審理において,入国目的はイルカ漁ウォッチングと観光であり,活動内容として,今までと同様,イルカ漁をウォッチングして写真を撮ったりブログに掲載したりする活動が主であると説明した(先に引用した原判決「事実及び て,入国目的はイルカ漁ウォッチングと観光であり,活動内容として,今までと同様,イルカ漁をウォッチングして写真を撮ったりブログに掲載したりする活動が主であると説明した(先に引用した原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」2ののウの)のであって,一般の観光客が行うイルカ漁ウォッチングを する予定であると説明したものではないのであり,被控訴人が「一般の観光客が行うイルカ漁ウォッチング」と説明したことを前提として虚偽の説明をしたと主張することはその前提を欠くものであって,採用できない。 以上のとおりであって,控訴人の上記主張を採用することはできない。 4 よって,被控訴人の本件退去命令及び本件退令発付処分取消請求をいずれも 認容した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官定塚誠 裁判官野原利幸 裁判官一場康宏
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