平成16(わ)228 大麻取締法違反,関税法違反,覚せい剤取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年11月24日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,036 文字)

主文 被告人を懲役3年8か月及び罰金70万円に処する。 未決勾留日数中120日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 ポリ袋入り大麻草2袋(平成16年押第50号の1及び2),チャック付ポリ袋入り大麻草1袋(同号の3)及びチャック付ポリ袋入り大麻樹脂1袋(同号の4)を没収する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 営利の目的で,みだりに,大麻を輸入しようと考え,AことBと共謀の上,大麻である大麻草約110.99グラム(平成16年押第50号の1及び2は鑑定残量)を布製CDケース内に隠匿して包装し,平成16年1月21日(アメリカ合衆国現地時間),これをアメリカ合衆国内から兵庫県篠山市a町b番地所在のC商店あてに国際スピード郵便として発送し,同月25日(同国現地時間),同国アンカレッジ国際空港において,D航空第19便に搭載させて同空港を出発させ,同日,大阪府泉南市cd番地所在のE空港203番駐機場に到着させ,情を知らない航空作業員をして,同機内から機外に搬出させて本邦内に持ち込み,もって,大麻を輸入するとともに,同日,同所所在の大阪国際郵便局に到着させ,同月26日,同郵便局内大阪税関大阪外郵出張所職員の検査を受けさせ,同月29日,日本郵政公社職員をして,前記C商店に配達させ,もって,関税定率法上の輸入禁制品である前記大麻草を輸入した。 第2 法定の除外事由がないのに,平成16年2月19日ころ,神戸市中央区e町f丁目g番h号所在のパチンコ店「F」のトイレ内において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤結 輸入した。 第2 法定の除外事由がないのに,平成16年2月19日ころ,神戸市中央区e町f丁目g番h号所在のパチンコ店「F」のトイレ内において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤結晶粉末約0.1グラムを水に溶かして自分の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用した。 第3 みだりに,平成16年2月20日午前2時18分ころ,神戸市中央区i通j丁目k番l号付近路上において,大麻を含有する樹脂状固形物32.647グラム(平成16年押第50号の4は鑑定残量)及び同乾燥植物細片5.4グラム(同号の3は鑑定残量)を所持した。 (証拠の標目)省略(補足説明) 1 総論弁護人は,判示第1の大麻の営利目的輸入罪(大麻取締法違反)及び禁制品輸入罪(関税法違反)について,①被告人は自己使用目的で大麻を輸入したのであって営利目的で輸入したものではなく,他人に譲渡する場合にも利益を得る意図はなかったのであるから,営利目的での輸入罪は成立しない,②大麻取締法上の大麻輸入罪においても,関税法上の禁制品輸入罪と同様に保税地域等税関の支配・管理が及んでいる地域を経由する場合には同地域外に搬出された時点において既遂に達すると解するべきであるところ,本件においては,いわゆるコントロールド・デリバリーが行われており,貨物が税関の実質的管理・支配内から搬出されたということはできないのであるから,大麻輸入罪及び禁制品輸入罪のいずれについても未遂にとどまると主張する。 2 大麻輸入罪の営利目的について被告人は,アメリカに住むBとの間で,20万円を支払えば,その代金分である4オンス(112グラム)の大麻のほか,代金後払分の8オンス(224グラム)の大麻を合わせた12オンス分を被告人の指定先にアメリカから郵送してもらう旨を約し,平成15年12月23 ,その代金分である4オンス(112グラム)の大麻のほか,代金後払分の8オンス(224グラム)の大麻を合わせた12オンス分を被告人の指定先にアメリカから郵送してもらう旨を約し,平成15年12月23日に手数料を含めて21万円を振り込んだところ,平成16年1月24日ころ,被告人が受領を依頼していたGのもとに4オンスほどの大麻が届けられ,翌25日にこれをGから受け取った。そして,これに続けて,同月29日に同様にして判示第1の大麻がGのもとに配送されたものである。 また,被告人は,かねてより複数の者らに対して相当量の大麻を有償で譲渡していたところ,被告人から大麻を購入していたHには1000円分上乗せして販売している旨を告げたことがあり,また,被告人が前記のとおり大量の輸入に係る大麻を受け取った後である平成16年2月には,IやJに対して1グラム当たり6000円台で20ないし30グラムの大麻を売り渡した。 さらに,被告人は,平成15年2月ころに仕事を辞めてからは蓄えや友人の会社の手伝いなどをして生活していたと述べるが,相当額の借金も抱えていたとする上,その蓄えについては多くを友人に貸しており,現時点においてすらその半額程を返してもらっているに過ぎないと言うのであって,平成15年10月ないしは11月以降は安定した居住先があったともいい難い状況であり,また,そのような中で大麻や覚せい剤を購入して使用するなどもしていたのであって,被告人の述べる生活を前提にすると必ずしも生活に余裕があるとはいえない状況であったものということができる。 このように,被告人は,かねてより大麻の有償譲渡を行い,これにより利益を得ていた様子がうかがわれる中で,必ずしも余裕があるとは言い難い生活状況であったにもかかわらず,相当額を拠出して個人で一時に使用することを主 被告人は,かねてより大麻の有償譲渡を行い,これにより利益を得ていた様子がうかがわれる中で,必ずしも余裕があるとは言い難い生活状況であったにもかかわらず,相当額を拠出して個人で一時に使用することを主目的とするにはいささか不自然な量の大麻をアメリカからの輸入という危険をおかしてまで入手し,あるいは入手しようとし,その後,その購入額と比較すると相当に高い額で他人に大麻を有償譲渡していたのであって,こうした事情に照らせば,被告人が自ら財産上の利益を得ることを目的として本件大麻を輸入したことを優に認めることができる。 これに対して被告人は,他人に大麻を譲渡するときには利益を上乗せしておらず,本件大麻も自ら使用するために輸入したものであり,前記のIやJに譲渡した大麻は,輸入したものとは別の100グラム60万円で購入したものである旨を供述するが,Iらに譲渡した大麻の入手元に関する供述は被告人の公判での弁解を踏まえて検討してもその変遷経過等からして信用できず,前記の事情に照らせば,利益を上乗せしていないとの供述も到底信じることはできない。 そして,その他証拠上うかがわれる種々の事情に照らしても,営利目的を裏付けこそすれ,これを否定するに足りるものはないのであるから,判示のとおり,被告人が営利の目的をもって本件大麻を輸入したものと認めた次第である(なお弁護人は,弁論において営利目的輸入への訴因変更が違法である旨も述べているが,被告人の公判供述等に照らし検討しても,当該訴因変更請求を違法としなければならないような事情まではうかがわれない。)。 3 大麻輸入罪(大麻取締法違反)が既遂に達しているか否かについて大麻取締法上の大麻輸入罪と関税法上の禁制品輸入罪は,同じ輸入に係る罪とはいえ,立法趣旨や規定の構造も異なり,必ずしも同様に解さなければ 輸入罪(大麻取締法違反)が既遂に達しているか否かについて大麻取締法上の大麻輸入罪と関税法上の禁制品輸入罪は,同じ輸入に係る罪とはいえ,立法趣旨や規定の構造も異なり,必ずしも同様に解さなければならないものではないところ,空港に着陸した航空機から大麻を取りおろすことにより本邦において大麻の濫用による保健衛生上の危害が発生する危険が生じているといえるのであるから,その段階において大麻輸入罪は既遂に達したと解するべきであり(最高裁昭和58年(あ)第1235号同58年12月21日第1小法廷判決・刑集37巻10号1878頁),判示第1の大麻輸入罪が既遂に達していることは明らかである。 4 禁制品輸入罪(関税法違反)は既遂に達しているか否かについて判示第1の大麻は,共犯者によりアメリカ合衆国から国際郵便によりC商店宛に発送され,E空港の大阪国際郵便局内大阪税関大阪外郵出張所で開披検査等により大麻であることが確認されたが,神戸税関と兵庫県警察により,いわゆるコントロールド・デリバリーを実施することとなり,尼崎郵便局から篠山郵便局を経て,篠山郵便局員によりC商店に配達されたものである。このような場合,神戸税関職員により大麻が発見された後も,共犯者の依頼に沿った郵便局員らの通常の業務の遂行行為によって本件大麻がC商店への配達に至り,本邦に引き取られたものであるから,最高裁平成8年(あ)第814号同9年10月30日第1小法廷決定・刑集51巻9号816頁に照らしても,本件禁制品輸入罪は既遂に達したと認めるのが相当である。 (適用法令)罰条第1の行為大麻の営利目的輸入 刑法60条,大麻取締法24条2項,1項禁制品輸入刑法60条,関税法109条1項(関税定率法21条1項1号)第2の行為 の行為大麻の営利目的輸入 刑法60条,大麻取締法24条2項,1項禁制品輸入刑法60条,関税法109条1項(関税定率法21条1項1号)第2の行為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条第3の行為大麻取締法24条の2第1項科刑上一罪の処理(第1の罪)刑法54条1項前段(観念的競合),10条(重い大麻の営利目的輸入の罪の刑で処断)刑種の選択第1につき情状により懲役刑及び罰金刑併合罪の処理刑法45条前段,懲役刑につき刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の罪の刑に加重)未決勾留日数算入刑法21条(懲役刑に算入)労役場留置刑法18条没収大麻取締法24条の5第1項本文(第1及び第3の大麻),関税法118条1項本文(第1の大麻)訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項本文(量刑事情)本件は,知人と共謀してのアメリカからの大麻の輸入,覚せい剤の自己使用及び大麻所持の各事案である。 大麻の輸入は,それまで大麻の密売等を行っていた被告人が,安くて良質な大麻をアメリカから仕入れて販売し,相応の利益を得ようと目論んだ上で,他の者に代金振込用の口座を開設させたり,大麻の受取人にさせたりし,できるだけ自らに捜査の手が及びにくいようにして敢行したものであって,身勝手で悪質な犯行であり,輸入した大麻の量も100グラム余りと少なからぬ量に上っている。 また,被告人は,20歳ころから大麻を,22歳ころから覚せい剤を使用するようになり,一時これを止めていた時期はあるものの,平成15年2月ころからは再び使用を開始する中で本件覚せい剤の使用や大麻の所持にも及んだというのであって,違法薬物に対する常習的な関与も顕著に認められる。 このように違 止めていた時期はあるものの,平成15年2月ころからは再び使用を開始する中で本件覚せい剤の使用や大麻の所持にも及んだというのであって,違法薬物に対する常習的な関与も顕著に認められる。 このように違法薬物に自らも染まるのみならず,これを拡散させようとした被告人の刑責は重いといわざるを得ないが,被告人は自ら使用するために本件輸入大麻を含む相当量の大麻を輸入しようとしたなどと不自然な弁解に終始している上,違法薬物にかかわる知人らが周囲に多数いる様子もうかがわれ,今後の再犯も強く懸念されるところである。 そこで,輸入された本件大麻は税関通過時に発見され,その後はいわゆるコントロールド・デリバリーが実施されたことにより全量押収されていること,被告人が当公判廷において反省の弁を述べていること,被告人には交通関係の罰金前科以外に前科がないこと,被告人の父親が当公判廷において今後は被告人を同居させて監督する旨を誓っていること,かつて被告人を雇用していた被告人の父親の友人が当公判廷において再度被告人を雇用して監督する旨を誓っていることなど,被告人のために酌むべき事情も考慮の上,主文のとおり量刑した。 平成16年11月24日神戸地方裁判所第1刑事部裁判官小倉哲浩

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