平成16年2月10日判決言渡平成13年(行ウ)第256号違法公金支出金返還(住民訴訟)請求事件判決 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、東京都に対し、金455万8200円及びこれに対する平成13年10月19日(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、東京都民である原告らが、東京都が平成12年9月3日に行った総合防災訓練である「ビッグレスキュ-東京2000」の(江戸川区)篠崎会場における訓練費(会場設備費等)455万8200円の支出が違法であるとして、東京都知事である被告個人に対し、地方自治法等の一部を改正する法律(平成14年法律第4号)による改正前の地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号前段に基づき、東京都に代位して同額の損害賠償を請求する住民訴訟である。 1 前提事実(認定した事実には証拠を掲げる。)(1) 当事者ア原告らは東京都民である。 イ被告は、平成11年4月以降、現在まで東京都知事の地位にある。 (2) 法令の定め等ア財務会計行為の権限(ア) 東京都知事の権限地方公共団体の長は、法149条2号に基づき、予算を調製し、予算を執行する権限を有する。 法153条1項は、地方公共団体の長が、その権限に属する事務の一部を当該地方公共団体の吏員に委任して処理させることができることを規定している。 (イ) 契約締結権限東京都は、局長等の補助機関が地方公共団体の長等に代わって の権限に属する事務の一部を当該地方公共団体の吏員に委任して処理させることができることを規定している。 (イ) 契約締結権限東京都は、局長等の補助機関が地方公共団体の長等に代わって案件を決裁する制度(いわゆる専決制度)を設けており、東京都事案決定規程及び同規程4条2項に基づく財務局事案決定実施細目No.1により、物品買入れその他の契約に関することで予定価格6000万円以上2億円未満の契約の締結については、財務局経理部長が決定する旨規定している(丙2、3)。 (ウ) 支出命令権限東京都会計事務規則6条1項1号は、局の予算事務を主管する課長又は担当課長に支出の命令に関する事務を委任する旨規定している。(丙4)(エ) 支出権限東京都における支出は、法170条の規定に基づき、東京都出納長がその権限を有している。 イ防災訓練(ア) 災害対策基本法8条2項17号は、国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、防災上必要な教育及び訓練の実施に努めなければならないと定める。 同法48条1項は、災害予防責任者(指定行政機関の長、地方公共団体の長など同法46条2項に定める者)は、法令又は防災計画の定めるところによりそれぞれ又は他の災害予防責任者と共同して防災訓練を行わなければならないと定め、同条4項は、災害予防責任者は、第1項の防災訓練を行おうとするときは、住民その他の関係のある公私の団体に協力を求めることができると規定する。 (イ) 自衛隊法83条1項は、都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を長官又はその指定する者に要請すること ) 自衛隊法83条1項は、都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を長官又はその指定する者に要請することができることを定めている。 そして、自衛隊の災害派遣に関する訓令(昭和55年防衛庁訓令第28号)9条は、指定部隊等の長又は大規模震災災害派遣実施部隊の長が、国、地方公共団体又は災害対策基本法2条5号に規定する指定公共機関その他の公共機関の行う災害救援訓練、水防訓練、防災研究会等に積極的に参加し、相互の能力の理解に努め、協同要領等に関し訓練を行うことを定めている。 (ウ) 災害対策基本法91条は、防災訓練の費用負担について、法律に定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとすることを定めている。 (3) 総合防災訓練「ビッグレスキュー東京2000」の内容(乙1、丙11)「ビッグレスキュー東京2000」は、正式名「平成12年度東京都総合防災訓練」であり、平成12年9月3日、篠崎会場を含む都内10か所の会場で実施された(以下「ビッグレスキュー東京2000」全体を本件全体訓練といい、このうち篠崎会場における訓練を「本件訓練」という。)。 本件全体訓練は、東京区部直下での大規模地震(マグニチュード7.2、震度6強)が訓練当日午前7時に発生し、東京区部を中心に広域的な被害が発生していることを想定したもので、都災害対策本部においては、対策本部の設置運営・審議に係る訓練を実施し、都内10か所の会場においては、応急対策活動にかかる訓練、すなわち、初動対応訓練、生活支援、体験 生していることを想定したもので、都災害対策本部においては、対策本部の設置運営・審議に係る訓練を実施し、都内10か所の会場においては、応急対策活動にかかる訓練、すなわち、初動対応訓練、生活支援、体験訓練、活動拠点設営訓練などを実施したものである。そのうち、篠崎会場は、活動拠点設営訓練の実施場所であり、救出、救護等の初動対応や住民への生活支援を迅速かつ効果的に行うために必要となる自衛隊の応援部隊の集結等の訓練を実施している。 本件全体訓練は、東京都が行った総合防災訓練であり、東京都、警視庁、東京消防庁のほか、各地の自主防災組織、電力、ガス、電話会社、交通機関、医療機関、ボランティア団体など多数の機関が参加して実施されたが、国の支援も受けており、内閣総理大臣が緊急災害対策本部長として訓練に参加したほか、内閣安全保障・危機管理室を中心に、警察庁、消防庁、海上保安庁、防衛庁、国土庁(当時)等が、都の訓練を支援し、また、警察庁、消防庁、海上保安庁に加え、陸・海・空の統合運用の自衛隊を含めた総合的な広域支援訓練が実施された。 (4) 篠崎会場における訓練内容(乙1)篠崎会場における訓練内容及び実施機関は以下のとおりである。 ①活動部隊集結訓練(部隊集結訓練)陸上自衛隊②活動拠点設置設営訓練(宿営地設置訓練)陸上自衛隊③被害状況調査訓練(視察)東京都④仮橋設置訓練(門橋(フェリー)等の運行訓練)陸上自衛隊⑤仮橋設置訓練(浮橋の架橋訓練)陸上自衛隊⑥負傷者救護訓練(災害医療訓練)陸上自衛隊⑦救援物資等輸送訓練(救援物資搬入集積訓練)陸上自衛隊及び航空自衛隊⑧救援物資等輸送訓練(救援物資輸送・ ⑥負傷者救護訓練(災害医療訓練)陸上自衛隊⑦救援物資等輸送訓練(救援物資搬入集積訓練)陸上自衛隊及び航空自衛隊⑧救援物資等輸送訓練(救援物資輸送・集積訓練)陸上自衛隊⑨活動部隊派遣訓練(被災地派遣訓練)警視庁及び陸上自衛隊⑩統制訓練(航空統制・活動指揮訓練)陸上自衛隊及び航空自衛隊⑪通信訓練陸上自衛隊(5) 本件全体訓練に係る経費ア東京都は、本件全体訓練の都内10会場全ての訓練実施のため、ティーエスピー太陽株式会社との間で以下の内容の委託契約(委託料総額1億7913万円)を締結した(丙5。以下「本件委託契約」という。)。 ①会場配置図等の作成②訓練実施計画の作成③訓練パンフレットの作成④広報・周知・参観実施計画の作成及び実施⑤会場の設営及び運営⑥訓練の放映及び記録⑦会場の警備⑧訓練終了後の会場整理、復旧⑨事前の打ち合わせ業務イ本件委託契約は、予定価格6000万円以上2億円未満の契約であるので、東京都財務局経理部長が契約締結の専決権限を有し、防災訓練事務の所管局である総務局の総務課長が支出命令について権限の委任を受けており、東京都出納長が支出権限を有している。 ウ本件委託契約にかかる委託料支出の経緯は以下のとおりである。 平成12年6月18日、平成12年度の防災訓練の実施について、東京都が「平成12年度東京都総合防災訓練実施要綱」を定め、その実施を決定した(丙7)。同年7月26日、東京都財務局経理部長が本件委託契約の決定を行った(丙8)。同日、同人が東京都知事の名で東京都とティーエスピー太陽株式 京都総合防災訓練実施要綱」を定め、その実施を決定した(丙7)。同年7月26日、東京都財務局経理部長が本件委託契約の決定を行った(丙8)。同日、同人が東京都知事の名で東京都とティーエスピー太陽株式会社との間で本件委託契約を締結した(丙5)。同年10月5日、東京都総務局総務部総務課長が本件委託契約に係る委託料1億7913万円の支出命令を発し、同月17日、東京都出納長がティーエスピー太陽株式会社に対し、上記委託料を支出した(丙9)。 (6) 篠崎会場における支出の内訳(丙5、12)本件委託契約の内、篠崎会場における費用は、会場設営に必要な資器材の調達及び会場の原状回復にかかる費用等であり、合計455万8200円である(以下「本件支出」という。)。その内訳は以下のとおりである。 ①パイプテント1張 1万円②パイプイス4脚 1200円③テーブル2台 2000円④テーブル用ビニールクロス2枚 1000円⑤仮設トイレ(男子用)2台 6万円⑥仮設トイレ(男女兼用)1台 3万5000円⑦仮設トイレ汲み取り費 2万4000円⑧手洗い2台 1万5000円⑨諸経費(仮設トイレの設営、撤去等) 20万円⑩立て看板30枚 21万円⑪会場修復費(ブルドーザーによる敷きならし) 400万円(7) 原告らは、平成13年8月3日、東京都監査委員に対し、本件支出が法2条13項などの条項に抵触する違法、不当な公金の支出であるとして、監査請求を行った(甲10)ところ、東京都監査委員会は、同月22日付けで、「請求人は、都が実施した平成12年度東京都総合防災訓練において篠崎会場で行われた訓練は、訓練内容も軍事的色彩が極めて強いことから違法・不当であるとして、本 、東京都監査委員会は、同月22日付けで、「請求人は、都が実施した平成12年度東京都総合防災訓練において篠崎会場で行われた訓練は、訓練内容も軍事的色彩が極めて強いことから違法・不当であるとして、本件訓練にかかわる経費の返還等を求めているものであるが、都が実施する防災訓練に自衛隊の協力を得ることは、災害対策基本法を根拠とするもので、請求人の主張は、防災訓練の実施に伴う都の行政施策上の判断に関し、請求人の主観的見解をいうものにすぎず、財務会計上の行為の違法性・不当性を具体的かつ客観的に示したものとは認められない」として、監査請求を却下(監査を実施しない)した(甲11)ので、原告らは、同年9月19日に本件訴訟を提起した。 2 原告の主張(1) 原因行為の違法性公金支出が違法となるのは、支出自体が法令に反する場合だけでなく、支出の原因となる行為が法令に反し、予算執行上、看過しがたい瑕疵がある場合を含むところ、本件支出は、その原因行為に以下のとおり違法がある。 ア本件全体訓練の違法性災害対策基本法は地方公共団体が災害対策においてなし得る内容について定めているが、本件全体訓練の如く、地方公共団体が自衛隊に対し、大規模な治安訓練、軍事演習の要素を強く含んだ訓練を実施させることは同法1条及び2条に反する。 篠崎会場の訓練は、自衛隊の参加人数が1350人で会場全体の98パーセントを占めており、警視庁、東京消防庁の参加人数はわずか17人であり、一般の参加者は全くいなかった。篠崎会場の訓練は、部隊結集訓練、活動拠点設営、仮橋等設置訓練、物資輸送・集積訓練、部隊派遣訓練など、軍事演習、治安訓練にも適用できる訓練がほとんどで、これまで防災訓練で行われてきた住民、ボランティア、自主防災組織や消防団が主体の初期消火、救 、仮橋等設置訓練、物資輸送・集積訓練、部隊派遣訓練など、軍事演習、治安訓練にも適用できる訓練がほとんどで、これまで防災訓練で行われてきた住民、ボランティア、自主防災組織や消防団が主体の初期消火、救出、非難、応急救護などの訓練とは全く異質な訓練であり、地方公共団体が主導して行う訓練の枠を大きく踏み外すものであった。 原告は、自衛隊の防災訓練への参加、自衛隊の災害出動自体を全面的に否定しているわけではない。自衛隊が地方公共団体の防災訓練に参加したり、地方公共団体の要請を受けて災害の救援に参加することは、防災関係法令で認められており、原告はそれを否定するつもりはない。また、原告は、本件全体訓練がすべて治安訓練であり、軍事演習だと主張するものではない。本件全体訓練は表面上は防災訓練の外観を呈しているが、その内実として治安訓練、軍事演習の要素も内包していたと主張するものである。原告は、本件全体訓練が、防災訓練から逸脱して、自衛隊の参加人員、支出予算を大幅に増加させ、参加部隊、装備、訓練内容について防災訓練から逸脱する治安訓練、軍事訓練の要素を組み込んだことの違法性を問題にしているのであって、被告は、通常行われている地方公共団体の防災訓練の枠を大きく超えて、防災訓練の場で治安訓練、軍事訓練を実施するという明白な違法性を作出したのである。防災訓練の場で、治安訓練、軍事訓練を行うことを認める法律はない。 イ本件全体訓練の主催者本件全体訓練は東京都が主催したような外観を呈しているが、実際は、自衛隊が、総合防災訓練の場を使って、独自の統合防災演習を主体的に行ったものである。自衛隊員は、関東圏のみならず北海道等遠隔地からも多数集結し、本件訓練の場で、防災に関係のない攻撃用の装備、攻撃型部隊も多数動員し、そのまま治安維持、戦 自の統合防災演習を主体的に行ったものである。自衛隊員は、関東圏のみならず北海道等遠隔地からも多数集結し、本件訓練の場で、防災に関係のない攻撃用の装備、攻撃型部隊も多数動員し、そのまま治安維持、戦争協力で応用できる形態で訓練を行ったのであり、法律で認められた範囲をはるかに超えている。訓練当日、東京区部、埼玉県南部、千葉県西部の空域は自衛隊の航空統制下に入り、派遣部隊、指揮系統、収集情報などの詳細は都庁にも都民にも知らされていなかった。 ウ篠崎会場の招待者篠崎会場に招待されたのは、本来防災訓練の主体となるべき消防関係者、警察関係者より、防衛庁、自衛隊関係者のほうがはるかに多い。また、外国大使館等からの招待者も、大使館付き武官や防衛担当大使館員が出席しており、軍事的な訓練だと認識されていたことが明白である。 エ被告の言辞被告は、本件訓練の会場において、本件訓練を自衛隊の軍事的デモンストレーションであることを示す発言をしたほか、他の機会においても、本件訓練が軍事演習であることを前提とし、戦争を挑発するような危険かつ異常な好戦主義的言辞を繰り返した。 (2) 財務会計行為の違法性ア過剰支出法2条13項は、地方公共団体の事務処理の原則について、地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと定めている。本件全体訓練のように、自衛隊による大規模な治安訓練、軍事演習の要素を強く含んだ総合防災訓練に過剰な支出をすることは、上記の条項に反する。東京都の財政は逼迫を極めており、本件全体訓練に過剰な支出する余裕はないはずである。被告が知事に就任するまでの東京都総合防災訓練の5年間の平均経費は1億2220万円 することは、上記の条項に反する。東京都の財政は逼迫を極めており、本件全体訓練に過剰な支出する余裕はないはずである。被告が知事に就任するまでの東京都総合防災訓練の5年間の平均経費は1億2220万円であったところ、本件全体訓練が行われた平成12年の経費は約3億円に増加しているが、その増加には必然性、正当性が全く認められず、むしろ、被告の違法な憲法認識、違法な訓練計画、違法な支出命令によって、しかも、過大、過剰な支出によって必要かつ最小の支出を求める地方自治法、地方財政法に違反した支出がなされたのである。 イ自衛隊の支出との比較東京都は本件全体訓練のために実に約3億円もの費用を支出したが、一方、自衛隊は本件全体訓練参加に当たり、その10分の1以下である2612万9000円しか支出していない。本件全体訓練の内容に照らせば、自衛隊の訓練のために都民の税金を使ったといってよく、地方公共団体の本来の行政事務から外れた目的のために過大な支出をしたものである。ことに篠崎会場のように、参加者のほとんどが自衛隊員で占められ、訓練内容の全てが自衛隊の活動である会場であれば、その費用は防衛庁がすべて負担するのが当然であるにもかかわらず、東京都は本件支出455万8200円の全額を負担している。その支出の内容は、テントなどの資器材への支出であるが、自衛隊の軍事的デモンストレーションを内外の関係者に披露するための施設として使われたもので、本来の東京都総合防災訓練の支出とはほど遠い違法性が極めて濃厚なものであった。 ウ支出の違法性地方財政法4条は、地方公共団体の予算の執行について、地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要かつ最小の限度を超えて支出してはならないと定めている。本件全体訓練のように、軍事訓練の要素を強く含ん 政法4条は、地方公共団体の予算の執行について、地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要かつ最小の限度を超えて支出してはならないと定めている。本件全体訓練のように、軍事訓練の要素を強く含んだ総合防災訓練に過剰な支出をすることは上記の条項に反する。 被告が構想し、実施した本件全体訓練は、明らかに防災訓練の域を逸脱した、自衛隊を主役とする治安訓練、軍事演習の性格が濃厚であり、特に篠崎会場で行われた本件訓練にその傾向が如実に表れ、明白な違法性を指摘することができ、憲法9条、憲法99条、地方自治法2条13項、地方財政法4条に違反する。 本件全体訓練は、名目的には東京都総合防災訓練であるが、篠崎会場で実施されたのは自衛隊統合防災演習であり、自衛隊は派遣を要請された機関ではなく、自主的に防災演習を行った機関であるから、災害対策法における実施の責めに任ずる者とは、防衛庁、自衛隊にほかならず、費用は防衛庁、自衛隊が負担すべきである。 (3) 被告の責任地方公共団体の支出負担行為については、その補助機関が執行した場合についても、法令上の根拠の有無にかかわらず、補助機関の責任がそのまま長の責任となると解すべきである。 ことに、本件全体訓練は、被告の確信犯的な憲法違反の思想信条を東京都知事という公権力の濫用を通じて押し通そうとしたもので、法制上も、道義的にも、許すべからざる行為であることは明白である。すなわち、本件は、戦争の行使と軍隊の存在を禁止した平和憲法を改悪しようという被告の意図から出たものであり、防災訓練の場に、自衛隊の軍事的デモンストレーションを持ち込むことによって、国民の自衛隊アレルギーを克服しようとするのみならず、自衛隊の軍隊としての市民権を獲得し、同時に治安訓練、軍事訓練を行おうとした、地方公 に、自衛隊の軍事的デモンストレーションを持ち込むことによって、国民の自衛隊アレルギーを克服しようとするのみならず、自衛隊の軍隊としての市民権を獲得し、同時に治安訓練、軍事訓練を行おうとした、地方公共団体の長としては極めて悪質な行為で明白な違法行為である。被告は、被告自身が主導する治安訓練、軍事訓練の要素を盛り込んだ訓練の大枠や多数の自衛隊員の参加、大幅な予算の増額を構想し、自衛隊の元最高幹部と現職自衛官に具体的な自衛隊の訓練内容を作成させたものであり、その直接の支出負担行為を東京都の補助機関が行ったとしても、その責任の大宗が被告にあることは明白である。 3 被告の主張(1) 本件全体訓練の合理性ア原告らは、本件全体訓練に参加した自衛隊員の数が極めて多いと指摘しているが、前年までの東京都総合防災訓練は1か所の会場で行われたのに対し、本件全体訓練においては、東京都下10か所の会場で防災訓練が実施されているのであるから、それに応じて自衛隊員の参加人数も多くなるのは当然のことである。 本件全体訓練において、例年より防災訓練を行う場所を増加させたことについても、現実に生じうる大規模な災害を想定した場合、総合的な災害救助、災害救援活動の訓練を行うことは極めて効果的であり、合理的である。 また、原告らは、篠崎会場における訓練を問題にしているが、篠崎会場は防災訓練の一会場にすぎず、かつ自衛隊の拠点設営訓練場所であったから、自衛隊員の参加人数が多いのは当然のことであり、篠崎会場のみを取り上げて非難するのは不適切である。 大地震等で災害が発生した場合、地方公共団体は自衛隊に出動を要請することになるのであり、そのような場合に備えて自衛隊と共同して防災訓練を実施することは必要かつ不可欠というべきであるが る。 大地震等で災害が発生した場合、地方公共団体は自衛隊に出動を要請することになるのであり、そのような場合に備えて自衛隊と共同して防災訓練を実施することは必要かつ不可欠というべきであるが、従来の防災訓練のように自衛隊員500名程度の参加人員では、実際に災害が起こった場合に動員されるであろう何万人にも上る自衛隊員の動きをシミュレートすることはスケールエフェクト(小さい規模で起こったことをそのまま拡大しても、実際に起こることと一致しないことを指す。)があって困難である。そこで、本件全体訓練においては、都市における防災訓練のフォーマットを作成することを目的として、阪神・淡路大震災の1日当たりの出動人員である2万人規模の動きをシミュレートし、フォーマットの作成に役立つようにするために、2万人のおよそ3分の1である約7100人程度の自衛隊員の参加を得て、実際に近い状態で訓練を実施し、自衛隊の動きを検証したものである。 イ原告らは、防災訓練に参加した自衛隊の装備から、防災訓練に名を借りた軍事演習であると主張している。しかし、原告らも認めているように、訓練に使用した装甲車には機関砲を装備していないし、自衛隊員は銃器を携帯していない。原告らは、防災訓練に参加した車両、艦船、装備の軍事的性格・機能をことさら強調し、その軍事訓練的性格を主張している。しかし、自衛隊という組織の性格上、その所有する車両、艦船、装備が軍事的機能を有することはやむを得ないところであり、その一事をもって防災訓練に名を借りた軍事訓練ということはできないのである。本件の訓練内容は、いずれも実際に災害が発生した場合に必要な内容の防災訓練である。 ウ原告らは、篠崎会場で行われた幹線道路の落橋を想定した門橋の運行及び浮橋の架橋を捉えて、防災訓練に名を借りた軍事演習 内容は、いずれも実際に災害が発生した場合に必要な内容の防災訓練である。 ウ原告らは、篠崎会場で行われた幹線道路の落橋を想定した門橋の運行及び浮橋の架橋を捉えて、防災訓練に名を借りた軍事演習であると主張している。しかし、大災害時に橋が壊れ、車両等の通行が不能になることは往々にしてみられることであり、橋が壊れ、車両等の通行が不能になれば救援物資の運搬、傷病者の搬送もできなくなる。そこで、このような事態を防止するために、仮設の橋を造り、物資の運搬、傷病者の搬送等を可能にすることは極めて重要なことである。防災訓練の一環として浮橋の設営の訓練を行うことは極めて自然なことであり、浮橋設営の訓練を捉えて、防災訓練に名を借りた軍事演習とみるのはあたらないというべきである。 エ原告らは、本件全体訓練の実施責任者は東京都ではなく、自衛隊が主体となって行った訓練であると主張するが、本件全体訓練における訓練内容、趣旨は東京都が決定したものであり、訓練の細部について自衛隊の裁量に委ねたものにすぎないから、主催者が東京都であることは明白である。なお、本件全体訓練の各会場には、東京都の職員が責任者として配置されていたことを付言する。 (2) 自衛隊の役割自衛隊は、自衛隊法によって、国の防衛のみならず、災害時には災害救助、災害救援のために出動する役割を負担している。 災害対策基本法は、内閣府に中央防災会議を置き、中央防災会議は防災基本計画を作成すべきものとし、都道府県には都道府県防災会議を置き、都道府県は都道府県地域防災計画を作成すべきものとしている。そして、都道府県防災計画は、防災基本計画に基づき作成されるのであるが、防災基本計画には自治体と自衛隊の共同連携した活動及び訓練がうたわれているのである。 災害対策基本法48条 のとしている。そして、都道府県防災計画は、防災基本計画に基づき作成されるのであるが、防災基本計画には自治体と自衛隊の共同連携した活動及び訓練がうたわれているのである。 災害対策基本法48条1項は、災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ又は他の災害予防責任者と共同して、防災訓練を行わなければならない旨規定しているところ、災害予防責任者とは、地方公共団体の長や指定行政機関の長等であり(同法47条1項)、また、指定行政機関の長には防衛庁長官が含まれる(同法2条3号イ)。したがって、都が自衛隊と共同して大地震に備えた防災訓練を行うことを義務付けた法令こそ存在しないが、上記のとおり、災害予防責任者による共同訓練が求められていることや、同法11条2項に基づいて国が作成した防災基本計画(平成13年1月中央防災会議決定)、同法14条2項に基づいて都が作成した東京都地域防災計画のいずれにおいても、都と自衛隊による共同訓練の実施が求められていることからすると、都と自衛隊が共同して防災訓練を行うことは、法令が予定し、かつ期待しているということができる。 4 参加人の主張(1) 予算執行における裁量法2条14項は、地方公共団体の事務を処理するに当たっては、最小の経費で最大の効果を上げるようにしなければならないことを定め、地方財政法4条1項は、経費はその目的を達成するために必要かつ最小の限度を超えて支出してはならないと定めている。 ところで、地方公共団体の予算の執行において、事務の目的に従った最大効果を達成するために何をもって必要かつ最小の限度というべきかは、当該事務の目的、当該経費の額のみならず、予算執行時における経済状態、国民の消費及び生活の水準等の諸事情の下において、社会通念に従って決定されるべき ために何をもって必要かつ最小の限度というべきかは、当該事務の目的、当該経費の額のみならず、予算執行時における経済状態、国民の消費及び生活の水準等の諸事情の下において、社会通念に従って決定されるべきものであるから、第一次的には、予算の執行権限を有する参加人の社会的、政策的又は経済的見地からする裁量に委ねられているものと解すべきである。 そうすると、本件訓練が上記各規定によって違法と評価されるためには、単に具体的な支出が当該事務の目的、効果との均衡を欠いているだけでは足りず、具体的な支出が当該事務の目的、効果と関連せず、又は社会通念に照らして目的、効果との均衡を著しく欠き、予算の施行権限を有する参加人に与えられた前記裁量を逸脱してされたものと認められることを要するものと解すべきである。 本件全体訓練のうち、篠崎会場に係る費用は、会場の設営に必要な資器材の調達のための費用であって、本件全体訓練における篠崎会場の設営に必要な資器材の調達の目的、効果と関連し、かつ社会通念に照らして目的、効果との均衡を有するものであり、その費用もそれぞれ相当なものであるから、本件支出が参加人に与えられた裁量を逸脱したということはできない。 (2) 本件全体訓練の費用負担災害対策基本法8条2項17号は、地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、防災上必要な教育及び訓練に関する事項を行わなければならないことを規定する。同法46条1項2号により、防災に関する訓練に関する事項は、災害予防の一つとされているところであり、同法91条は、災害予防に要する費用は、その実施の責めに任ずるものが負担するものと規定している。本件全体訓練は、参加人が災害対策基本法47条1項の災害予防責任者として、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止 、災害予防に要する費用は、その実施の責めに任ずるものが負担するものと規定している。本件全体訓練は、参加人が災害対策基本法47条1項の災害予防責任者として、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、東京都地域防災計画に基づいて防災上必要な訓練を実施したものである。 したがって、本来的に本件全体訓練に要する全ての費用を東京都が負担すべきところ、自衛隊との協議の上、自衛隊が本務として行う訓練に係る費用については自衛隊が負担することとしたものである。 すなわち、本件委託契約における篠崎会場分の委託費用は東京都が負担しているが、自衛隊の訓練に係る自衛隊員の人件費、旅費、昼食費及び訓練車両の燃料費については自衛隊に係る費用として自衛隊が負担している。この点は、本件全体訓練に参加した他の実施機関と何ら異なるものではない。 したがって、本件支出が参加人に認められた裁量を逸脱したものであるとは認められず、本件支出が法2条14項又は地方財政法4条1項に抵触する違法な支出となることはない。 (3) 本件訓練の主催者東京都は、自衛隊法83条1項に基づき、災害時における都民の生命及び財産の保護のため、自衛隊に対し災害派遣を要請することになる。自衛隊は災害応急対策活動において消防、警察と並ぶ主要機関であり、これらの防災機関と連携協力して応急対策にあたることとなる。被災者の迅速な救出、救助等を行うためには国内各地から集結する自衛隊の活動拠点の確保が必要であり、また、幹線道路の落橋を想定した人員物資の緊急通行路確保のためには仮橋設置が必要であるところ、篠崎会場における訓練は、こうした拠点設営及び仮橋設置の実際を検証するためのものである。よって、篠崎会場における訓練は、自衛隊の災害救援活動及び災害救助活動を把握、検証する趣旨 が必要であるところ、篠崎会場における訓練は、こうした拠点設営及び仮橋設置の実際を検証するためのものである。よって、篠崎会場における訓練は、自衛隊の災害救援活動及び災害救助活動を把握、検証する趣旨を含んだ東京都主催の防災訓練である。 本件全体訓練の目的は、東京都、区市町村、防災機関及び都民が一体となった総合的、有機的な訓練の実施を通じて①地域防災計画の習熟、②各機関相互の緊密な協力体制の確立、③地域住民の防災行動力、防災意識の向上を図ることにあり、単に各防災機関の訓練にとどまるものではないことは明白である。 (4) 原告らの主張に対する反論防災訓練実施の目的が、災害予防責任者の公私の団体への協力要請と、そのうち自衛隊にあっては指定部隊の長等の地方公共団体又は指定公共機関の災害救援訓練等への積極的な参加とが相俟って、防災関係機関相互の連絡協調体制の確立を図り、もって防災訓練の実施の効果を高めることにあることからすれば、防災訓練を実施し、防災関係機関相互の連絡協調体制の確立を図るのは災害予防責任者であり、自衛隊は、防災訓練に積極的に参加し、これに協力する関係にあるものである。 東京都総合防災訓練実施要領によれば、篠崎会場における訓練は活動拠点設営訓練であり、その内容が救出、救護等の初動対応や住民への生活支援を迅速かつ効果的に行うために必要となる自衛隊の応援部隊の集結等の訓練を実施することであることからすれば、自衛隊側の上記参加計画の主要演練項目が活動拠点への部隊進入及び活動拠点の構成要領、各部隊の協同要領及び関係機関との連携要領であることは、上記実施要領の篠崎会場における訓練の内容と何ら齟齬するものではない。そして、そもそも自衛隊の参加標目が「平成12年度自衛隊統合防災演習(実動演習)参加計画」であり、その目 との連携要領であることは、上記実施要領の篠崎会場における訓練の内容と何ら齟齬するものではない。そして、そもそも自衛隊の参加標目が「平成12年度自衛隊統合防災演習(実動演習)参加計画」であり、その目的が「東京都総合防災訓練に連携した自衛隊統合防災演習(実動訓練)に参加して、篠崎会場における部隊集結訓練を担当実施し、南関東地域における震災対処要領を演練する。」ことであることからすれば、自衛隊は、参加人の実施した本件全体訓練に防災機関の一員として参加したものであることは明らかである。 篠崎会場における訓練は活動拠点設営訓練であり、その内容が救出救護等の初動対応や住民への生活支援を迅速かつ効果的に行うために必要となる自衛隊の応援部隊の集結等の訓練を実施することであることからすれば、大多数の参加者が自衛隊員であることは当然である。そして、訓練内容が、自衛隊の応援部隊の集結等の訓練であるから、自衛隊にとっては訓練であることは相違ないが、あくまでも本件全体訓練の実施責任者は災害予防責任者である参加人であり、訓練内容が自衛隊の応援部隊の集結等の訓練であることをもって東京都の総合防災訓練ではないということができないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 監査請求について原告らは、平成13年8月3日、本件支出について、東京都監査委員会に監査請求を行ったが(甲10)、同委員会は、同月22日、原告らの監査請求を、財務会計上の行為の違法性、不当性を具体的かつ客観的に示していないとして却下(監査を実施しない)しているので(甲11)、本件請求が法242条の2第1項の要求する適法な監査請求を前置したものといえるのかどうか問題になる。 この点、証拠(甲10)によれば、原告らは、監査請求において本件支出を特定した上、その違法性について本件訴訟 2条の2第1項の要求する適法な監査請求を前置したものといえるのかどうか問題になる。 この点、証拠(甲10)によれば、原告らは、監査請求において本件支出を特定した上、その違法性について本件訴訟とほぼ同内容の主張を述べていることが認められるから、上記監査請求における違法性の主張内容が、監査委員において監査を実施することができないほどに抽象的にすぎるとも言い難く、また、被告及び参加人は本件訴訟が適法な監査請求を経ているか否かの点につき何ら主張していないことに照らし、本件訴訟においては、上記監査請求は適法になされたことを前提に検討を進めることとする。 2 法242条の2第1項4号にいう「当該職員」の該当性原告らの主張は、要するところ、篠崎会場における本件訓練は、形式的には防災訓練であるが、実質は自衛隊のための治安訓練であり、このような内容の訓練について東京都が費用を負担することは違法であり、これについて東京都知事である被告が東京都に対して損害賠償責任を負うべきとするものである。 ところで、前提事実記載のとおり、本件支出は、本件委託契約の締結(支出負担行為)、支出命令の発令及び支出という過程を経て行われているところ、原告らが地方公共団体の支出負担行為の権限行使はそのまま長の責任になるとして、この点を被告の責任原因として主張していること(原告ら準備書面(3)第1項)からすると、原告らは、以上の各財務会計行為のうち、支出負担行為である本件委託契約の締結を、本件訴訟の対象としているものと解される。そして、前提事実記載のとおり、本件委託契約の締結権限は、本来的には東京都知事である被告が有するものであるが、専決制度の採用により、東京都財務局経理部長が専決権限を有しており、実際に本件委託契約を締結したのも同部長である。このように、地方公共 締結権限は、本来的には東京都知事である被告が有するものであるが、専決制度の採用により、東京都財務局経理部長が専決権限を有しており、実際に本件委託契約を締結したのも同部長である。このように、地方公共団体の長がその権限に属する一定の範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても、長は、法令上、当該財務会計上の行為を行う権限を本来的に有するものとされている以上、当該財務会計上の行為が問題とされている当該代位請求住民訴訟において、同項4号にいう「当該職員」に該当すると解すべきであるが、この場合、財務会計上の行為は補助職員が自らの判断において行うものであり、地方公共団体の長はその指揮監督を行うのにとどまるものであるから、専決を任された補助職員が地方公共団体の長の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、地方公共団体の長は、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体に対し、補助職員がした財務会計上の違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最二小判平3・12・20民集45巻9号1455頁)。 この点、原告らは、地方公共団体の支出負担行為については、補助職員の責任がそのまま地方公共団体の長の責任となると主張するが、その主張は採用し得ない。 そうすると、原告らは、本件訓練の違法性を縷々主張し、本件委託契約についてはその違法性が承継される旨主張するものの、被告の責任については、専決権者である東京都財務局経理部長の責任が、そのまま被告の責任になると主張するのみであって、被告が負うべき指揮監督上の義 約についてはその違法性が承継される旨主張するものの、被告の責任については、専決権者である東京都財務局経理部長の責任が、そのまま被告の責任になると主張するのみであって、被告が負うべき指揮監督上の義務の内容や被告の故意又は過失の内容については具体的な主張、立証をしていないが、その主張を全体的にみれば、被告が指揮監督権限を行使して、違法な支出負担行為をさせた旨を主張するものと理解することも可能なので、その前提に立って原告らの主張するところの本件支出の原因行為の違法性及び本件支出自体の違法性について検討を加えることとする。 3 本件訓練の違法性に関する主張について(1) 災害対策基本法1条、48条及び46条の定めにより、各地方公共団体は住民の生命、身体、財産を守るため、積極的に防災訓練を行うことが要請されていると解されるところ、各地方公共団体の行う防災訓練は、当該地方公共団体の所在地、人口密度、地理的環境、建物の密集度、予想される災害の内容等によって必要とされる内容がそれぞれ当然に異なると考えられることから、どのような訓練内容を実施するかについては、当該地方公共団体が上記のような要素を十分検討した上で自主的に決定すべきものであって、各地方公共団体の幅広い裁量に委ねられているものということができる。 そうすると、地方公共団体が行った防災訓練の内容については、各地方公共団体の置かれた客観的状況に即した適切な内容であったかどうかという当不当の問題が生じることはあり得ても、訓練の実施自体が違法性を帯びるといい得るのは、訓練内容が防災目的と何ら関連性を有さない場合など、明らかに不合理な場合に限られるというべきである。 (2) そこで、本件訓練の内容について検討するに、本件訓練は、東京区部直下での大規模地震が訓練当日午前7時に発生し、 関連性を有さない場合など、明らかに不合理な場合に限られるというべきである。 (2) そこで、本件訓練の内容について検討するに、本件訓練は、東京区部直下での大規模地震が訓練当日午前7時に発生し、東京区部に広域的な被害が発生していることを想定し、都内10か所の会場で行われた本件全体訓練の一部であって、本件訓練においては、救出、救護等の初動対応や住民への生活支援を迅速かつ効果的に行うために必要となる自衛隊の応援部隊の集結等の訓練を実施している。その具体的な内容は前提事実(4)記載のとおりであるところ、本件全体訓練のように、大規模な地震が発生したことを想定した場合、自衛隊法83条に基づく自衛隊の災害派遣要請が必要となる事態となり、多数の自衛隊員が災害救助活動を行うことは十分に想定し得るのであり、そうした場合、自衛隊員が被災者の救出、救護等を迅速かつ効果的に行うための活動拠点を設営することには十分な合理性があるといえ、こうした活動拠点を設営した上で、自衛隊員が災害救助の活動部隊を派遣し、負傷者の救護や救援物資の輸送を行うための訓練を行うことにも十分な合理性が認められるというべきである。 この点、原告らは、本件訓練において行われた仮橋設置訓練をとらえて軍事演習の要素が強いとしているが、証拠(乙1、証人C)によれば、この訓練は、幹線道路の落橋を想定し、浮橋仮設までの間、活動部隊の水上輸送手段として重・軽門橋、渡河ボートを運航するという内容の「門橋(フェリー)等の運行訓練」と、幹線道路の落橋を想定し、避難路や緊急通行路を確保するため江戸川を横断して浮橋を架けるという内容の「浮橋の架橋訓練」であると認められるところ、東京のような大都市において大規模災害が発生した際には、幹線道路の落橋が起こることも十分予想されるから、こうした訓練も自衛隊が行 て浮橋を架けるという内容の「浮橋の架橋訓練」であると認められるところ、東京のような大都市において大規模災害が発生した際には、幹線道路の落橋が起こることも十分予想されるから、こうした訓練も自衛隊が行う救助活動の一環をなすものとして十分合理的な訓練内容であると認められるのであり、そうである以上、これをもって防災訓練に名を借りた軍事演習であるとはいえない。なお、原告らは、訓練に参加した自衛隊の装備に軍事目的のものが含まれていたことを問題にしているが、そもそも、自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるもの(自衛隊法3条)であるから、軍事的な目的に使用され得る装備を有していること自体は何ら不自然ではないし、大規模災害による緊急事態の際には、軍事的目的に利用し得るものも含め、あらゆる装備を利用して救護活動等を行おうとするのは当然の事柄である。 そして、本件訓練において自衛隊がこうした装備を使用して防災訓練と何ら関連性のない軍事演習を行ったことを認めるに足りる証拠はないから、自衛隊の装備内容から本件訓練が防災訓練として行われたことが否定されるものではないというべきである。 そうすると、本件訓練の内容は、いずれも防災訓練として合理性を有するものと認められるのであり、かつ、前提事実(2)イ記載のとおり、災害対策基本法等の法令においても、各地方公共団体と自衛隊が協力して防災訓練を行うことを前提とした規定を置いているところであるから、本件全体訓練の実施、ひいては本件訓練の実施が違法性を帯びるものとはいえないことは明らかである。 (3) また、原告らは、本件全体訓練には例年よりも多数の自衛隊員が参加しているところ、特に、本件訓練ではそ 練の実施、ひいては本件訓練の実施が違法性を帯びるものとはいえないことは明らかである。 (3) また、原告らは、本件全体訓練には例年よりも多数の自衛隊員が参加しているところ、特に、本件訓練ではそのほとんどの訓練内容を自衛隊において実施していることから、本件訓練は東京都主催の訓練とはいえず、自衛隊が独自に行った訓練でかつ治安維持の目的で行われた訓練であると主張している。そして、証拠(甲5、12、33、47、48、56ないし58)によれば、自衛隊は、本件全体訓練の日程に合わせて、東京都総合防災訓練に連携した自衛隊統合防災演習(実動訓練)を行ったことが認められる。 ところで、証拠(乙10、11、証人C)及び弁論の全趣旨によれば、自衛隊は、例年開催されている東京都主催の総合防災訓練に継続して参加しているところ、平成12年度に行われた本件全体訓練における自衛隊の参加も、例年どおり、東京都側が、他の機関と同様に、自衛隊側に参加を要請したことにより実現したもので、また、本件訓練における訓練内容は東京都側が大枠を考案し自衛隊に要請したことによって実施されたものであること、本件全体訓練に例年よりも多数の自衛隊員が参加したのは、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、大規模災害の際の救援活動等のため、自衛隊員が大量動員された場合を想定して、その動きを予めシミュレートしておく必要があると考えられたためであることが認められる。これらの事実と、本件訓練は都内10か所の会場で実施された本件全体訓練の一環としてその一会場で行われたものである(乙1)ことからすると、本件訓練は東京都が主催する本件全体訓練の一部として位置付けられるのであり、自衛隊は、東京都側の要請を受けて、本件全体訓練の枠内で、自衛隊の統合防災演習を実施したにすぎないものというべきである。そして、自 練は東京都が主催する本件全体訓練の一部として位置付けられるのであり、自衛隊は、東京都側の要請を受けて、本件全体訓練の枠内で、自衛隊の統合防災演習を実施したにすぎないものというべきである。そして、自衛隊が本件全体訓練に連携して行ったのもあくまで自衛隊としての防災目的の演習(自衛隊統合防災演習)であって、本件訓練における自衛隊の訓練内容は前提事実(4)のとおりであり、いずれも防災訓練として合理性を有することは前記のとおりであるから、これをもって治安維持目的の訓練が行われたとは認められない。また、本件訓練は、都内10か所の会場の中で、自衛隊の活動拠点設営訓練として実施されているのであるから、本件訓練会場において自衛隊員の参加人数が多数を占めることは当然のことであり、このことから、本件訓練が東京都の主催する本件全体訓練から除外されることにはならない。 (4) なお、原告らは、本件訓練を視察した各国の招待客に武官と思われる人物が含まれていたこと(丙13)や本件全体訓練についての被告のさまざまな言辞を問題にしているが、証拠(証人C)によれば、外国来賓の選定は各国に委ねられていたもので東京都側で選定したものではないことが認められる上、招待客の内容や被告の言辞如何によって本件全体訓練及び本件訓練の性質が変容するものではないから、いずれにしてもこのような主張は失当である。 4 不必要又は過剰な支出であるとの主張について(1) 原告らは、本件訓練は、実質的に自衛隊のための訓練であるから、これに対して東京都が費用を負担することは違法であると主張する。 しかしながら、本件訓練について東京都が支出したのは、前提事実(6)記載のとおり、会場設置費及び原状回復に要する費用であるところ(丙5)、これは、本件訓練に要した全ての費用ではなく、実際に訓練を しかしながら、本件訓練について東京都が支出したのは、前提事実(6)記載のとおり、会場設置費及び原状回復に要する費用であるところ(丙5)、これは、本件訓練に要した全ての費用ではなく、実際に訓練を行う自衛隊の人件費、燃料費等は自衛隊側で負担したもの(証人C)である。そして、本件全体訓練は東京都の主催する総合防災訓練であるから、東京都が災害対策基本法91条の実施責任者としてこれを行ったものであることは明らかであり(乙1)、本件全体訓練の一会場である篠崎会場で行われた本件訓練についても東京都の本件全体訓練の枠内として行われたことは既に判示したとおりである。そうすると、災害対策基本法91条は、防災訓練の費用負担について、原則として実施責任者が費用を負担することを定めており、本件訓練の実施責任者は東京都であるから、東京都において本件訓練の会場設置費、原状回復に要する費用等を負担することに何ら違法性は認められない。 なお、原告らは、本件支出に含まれているパイプイスやテントの費用について、自衛隊の軍事的デモンストレーションを招待客に披露するために使われたものであるから、東京都において負担すべき費用ではないと主張している。しかしながら、本件訓練が東京都の主催する本件全体訓練のうちの一つであることは既に判示したとおりであり、また、証拠(丙13)によれば、東京都は、本件訓練会場(篠崎会場)のみならず、本件全体訓練を行った東京都下10か所の各会場において多数の関係者を招待し、各訓練を視察させていることが認められる。そうすると、本件訓練会場を訪れた招待客も他の会場と同様、東京都が実施する本件全体訓練を視察したにものすぎず、招待客の視察に要する費用は、主催者である東京都において当然に負担すべき費用であるといえるから、こうした費用の支出を違法とすべき 他の会場と同様、東京都が実施する本件全体訓練を視察したにものすぎず、招待客の視察に要する費用は、主催者である東京都において当然に負担すべき費用であるといえるから、こうした費用の支出を違法とすべき理由はない。 (2) さらに、原告らは、本件全体訓練について、例年と比較して過剰な支出がなされており、法2条13項及び地方財政法4条に違反するとの指摘をしている。そして、証拠(甲2、証人C)によれば、東京都の行う総合防災訓練は、例年約1億円前後の予算を計上していたものであるが、本件全体訓練に対しては約3億円の予算が計上され、例年よりも多額の支出がなされたことが認められる。 ところで、本件全体訓練は、例年であれば1つの会場で行っていた東京都主催の総合防災訓練を拡大し、東京都下10か所の会場で実施したものであるから、例年よりも支出が増加したものと認められるところ(乙1、証人C)、このように例年よりも規模を拡大したのは、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の教訓から、東京都のような大都市において大規模震災が発生した場合にも対応できる防災訓練を行う必要があるという考えに基づくものであると認められ(乙11、証人C)、既に判示したとおり、防災訓練の内容は各地方公共団体の幅広い裁量に委ねられていることからすると、このような内容の訓練を行うこと自体が地方公共団体に与えられた幅広い裁量の範囲を逸脱しているということはできないし、また、既に述べたように、本件訓練の内容はこのような大規模な災害を想定した防災訓練として十分合理性を有するものであるから、本件訓練に要する費用の支出が防災目的と関連性のない不必要なものということはできない。 そして、本件支出は、本件訓練の会場設置費及び原状回復費であるから、これらの支出は本件訓練の実施責任者である東京都におい 費用の支出が防災目的と関連性のない不必要なものということはできない。 そして、本件支出は、本件訓練の会場設置費及び原状回復費であるから、これらの支出は本件訓練の実施責任者である東京都において負担すべき費用であると認められ、他に本件支出において防災訓練と何ら関連性のない不必要な支出がなされたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、本件支出が過剰であり、法2条13項、地方財政法4条に違反するとの原告らの主張も採用できない。 5 結論以上検討したとおりであって、原告らの請求はいずれにしても理由がないことが明らかであるから、これを棄却することとし、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条の規定を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官鶴岡稔彦裁判官新谷祐子裁判官加藤晴子
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