昭和49(ラ)634 鉄塔建替工事禁止仮処分申請却下決定に対する抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和50年4月24日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件抗告を棄却する。          理    由  抗告人ら代理人は「原決定を取消す。相手方らは原決定添付物件目録記載の鉄塔 (以下、本件鉄塔という)の建替工事を中止しなけ

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判決文本文7,611 文字)

主文 本件抗告を棄却する。 理由 抗告人ら代理人は「原決定を取消す。相手方らは原決定添付物件目録記載の鉄塔(以下、本件鉄塔という)の建替工事を中止しなければならず、これを続行してはならない。」との裁判を求め、その抗告理由として別紙のとおり述べた。 よつて按ずるに、当事者双方の提出した疏明資料によれば、本件の前提事実として、原決定の理由二に記載の事実(即ち同決定一枚目裏二行目から三枚目裏八行目までの事実)が一応認められるので、ここにこれを引用する。 そこで、右抗告理由につき順次判断する。 一、 原審の訴訟手続上における違法性及び不当性について抗告人らは、まず、本件仮処分申請は現在の都市化現象の下、大都市の周辺で人口が集中する地域に特別高圧架空電線路及び同鉄塔が建設されることによつて、市民が被る生活上の被害と危険性という社会的に重大な問題並びに電気設備等に関する専門的技術的な事項を争点として包含するものであるにもかかわらず、原審は、かかる事件につき一般的に裁判所が採用している慎重な審理方法を無視して、口頭弁論は勿論、ただ一度の審尋をもすることなく、単に書面審理のみによつて本件仮処分申請を却下したものであるから、違法不当であると主張するが、仮処分手続においては口頭弁論をするか否か及び口頭弁論をしない場合においても当事者を審尋するか否かはすべて裁判所の裁量に委ねられているところであるから(民事訴訟法第七五六条、第七四二条第一項、第一二五条)、仮に本件仮処分申請が抗告人ら主張の如く社会的に重大な問題点及び専門技術的な争点を包含するものであるとしても、原審が口頭弁論を開かなかつたことを捉えて、その審理手続が違法不当であるということはできない。のみならず、審尋とは口頭弁論のような対立構造をとらず無方 専門技術的な争点を包含するものであるとしても、原審が口頭弁論を開かなかつたことを捉えて、その審理手続が違法不当であるということはできない。のみならず、審尋とは口頭弁論のような対立構造をとらず無方式で関係人に対し個別的に書面又は口頭による陳述の機会を与えることをいうところ、本件記録によれば、原審はその審理の段階に応じて、当事者双方の代理人に対し個別的に準備書面及び疏明方法の提出等を促し、以て十分に主張と立証をつくす機会を与えたことが明らかであるから、原審は双方を審尋して慎重に本件仮処分申請の審理をしたものというべきである。抗告人らは、裁判所が当事者双方を同時に又は個別的に直接審問し、当事者に対し実質上口頭弁論又は口頭による事情説明をなさしめることを以て審尋であると解するかのようであるが、勿論審尋とはこのように狭く限定すべきものではないから、右のような方式の審尋をしなかつたからといつて原審の審理手続が違法不当であるということはできない。従つて、抗告人らの前記主張は採用しない。 次に抗告人らは、原審は抗告人らの主張する各事項を綜合的に判断せず、ことさら個別的に判断して本件仮処分申請を却下したものであるから、右判断方法はきわめて不適切であつて違法であると主張するが、原審の判断方法が右主張のようなきわめて不適切なものであるとは到底考えることができないから、抗告人らの右主張も採用しない。 二電気事業法違反の点について抗告人らは、相手方らが本件鉄塔の建替工事を施行しようとする地域は多摩ニュータウンの中心地であつて、高層住宅、各種商店、医療機関、銀行及び郵便局等が集中し、その住民及び建造物の数並びに交通量その他からみて、明らかに「市街地その他人家の密集する地域」に該当するものであるから、本件鉄塔の建替工事につき通商産業大臣がした本件認可(前 及び郵便局等が集中し、その住民及び建造物の数並びに交通量その他からみて、明らかに「市街地その他人家の密集する地域」に該当するものであるから、本件鉄塔の建替工事につき通商産業大臣がした本件認可(前記引用部分において認定した同大臣の相手方東京電力株式会社に対する昭和四八年五月三〇日付工事計画の認可)は電気事業法第四一条及び同法の規定を受けた「電気設備に関する技術基準を定める通商産業省令第六一号」第一一一条に違反し、右瑕疵は重大且つ客観的に明白なものであるから本件認可は無効であると主張する。そこで按ずるに、電気事業法によれば、電気事業者は電気事業の用に供する電気工作物の設置又は変更の工事であつて、通商産業省令で定めるものをしようとするときは、原則として、その工事の計画について通商産業大臣(以下、通産大臣という)の認可を受けなければならないが(同法第四一条第一項)、他方通産大臣も右認可の申請に対しては、該申請にかゝる工事計画が同条第三項の各号に適合していると認めるときは必ず右認可をしなければならないこととされており、右認可の要件の一つである同条第三項第二号には、その電気工作物が同法第四八条第一項の通商産業省令で定める技術基準に適合しないものでないことが定められ、更に右第四八条第一項の規定を受けた「電気設備に関する技術基準を定める通商産業省令第六一号」第一一一条第一項によれば、特別高圧架空電線路は、その電線がケーブルである場合を除き、市街地その他人家の密集する地域に施設してはならない(なお、この点については、但書による例外がある)こととされているので、以上を綜合すると、通産大臣は特別高圧架空電線路の鉄塔建替工事については、右工事を施行しようとする地域が市街地その他人家の密集する地域であるときは右工事計画の認可をすることができないものといわなけ 、以上を綜合すると、通産大臣は特別高圧架空電線路の鉄塔建替工事については、右工事を施行しようとする地域が市街地その他人家の密集する地域であるときは右工事計画の認可をすることができないものといわなければならない。ところが、前記省令第六一号第一一一条第一項にいわゆる「市街地その他人家の密集する地域」の定義については同省令に明確な規定がない。そこで次に、右地域とはいかなる地域をいうのか、その具体的な内容について考えてみると、右省令自体が電気事業法第四八条第二項により同項各号に掲げる要件(右各号は電気工作物による人体又は物件に対する危険及び電波障害、静電誘導等の公害発生の防止等を内容とするものである)を充足して制定することを義務づけられていること並びに同令第一一一条の立法趣旨が特別高圧架空電線路の市街地のような人家の密集する地域における人命その他に対する保安の確保及び右公害防止のための施設制限、特に右電線路が建設された当初原野であつたものが周辺の市街地化により人家の密集する地域になつた場合の保安上必要な右電線路の改修基準を示すものであることに鑑みれば、同令第一一一条第一項の法意は次のように解するのが相当である。即ち、特別高圧架空電線路は電圧が高く危険であるから、これを市街地のような人家の密集する地域に施設することは人命その他に対する保安上危険であるのみならず電波障害、静電誘導等の公害が発生するおそれもあるので、右電線路は、その電線がケーブルである場合を除き、原則として人家の密集する地域に施設してはならない(本文)。しかし、人家の密集する地域であつても、現在の電気設備に関する技術水準からみれば、使用電圧が一七万ボルト未満であつて且つ但書記載の方法によるときは、十分人命その他に対する保安の確保及び右公害発生を防止することが可能であるから、かゝる 、現在の電気設備に関する技術水準からみれば、使用電圧が一七万ボルト未満であつて且つ但書記載の方法によるときは、十分人命その他に対する保安の確保及び右公害発生を防止することが可能であるから、かゝる場合は例外として前記電線路を施設して妨げない(但書)。 従つて一七万ボルト以上の特別高圧架空電線路は、その電線がケーブルである場合を除き、人家の密集しない地域に限り、これを施設することができる。蓋し、右地域はもともと特別高圧架空電線路を施設しても人命その他に対する危険及び前記公害発生のおそれが殆どないものであるのみならず、仮に右危険等が存在しても十分これに対する保安確保及び公害防止の対策がとり<要旨>得るものであるからであるというにある。そうとすれば、一七万ボルト以上の特別高圧架空電線路(本件の場</要旨>合がまさにこれに当る)の絶対的な施設制限地域である「人家の密集する地域」であるか否かは当該地域における人家の状況、即ち人家の種類、住宅及び店舗等の数及びその配置、人家と高圧線との距離並びに建ぺい率その他諸般の事情からみて、現在の電気設備に関する技術上、右電線路につき人命その他に対する保安の確保及び前記公害防止の対策がとり得ない地域であるか否かによつてこれを決すべきものというべきである。そこで進んで、相手方らが本件鉄塔の建替工事を施行しようとする地域が右にいわゆる「人家の密集する地域」に該当するか否かについて検討すると、当事者双方の提出した疏明資料によれば、一応次の事実が認められる。即ち、本件鉄塔はいずれも新住宅市街地開発法に基く東京都及び日本住宅公団等によるいわゆる多摩ニュータウン計画によつて最初に建設されたa及びb住区(現在、戸数約六、五〇〇、人口約二三、〇〇〇)の中にあるが、附近は殆ど五階以上の高層住宅より成る集合住宅地区である。右地 団等によるいわゆる多摩ニュータウン計画によつて最初に建設されたa及びb住区(現在、戸数約六、五〇〇、人口約二三、〇〇〇)の中にあるが、附近は殆ど五階以上の高層住宅より成る集合住宅地区である。右地区には、以前から前記引用部分において認定した相手方東京電力所有にかゝる特別高圧架空電線路東京西線が通つているが、その一部が本件鉄塔三基を結ぶ右高圧線である。 ところで、多摩ニュータウン計画においては、最初から右東京西線の存在を前提として開発計画を樹立し、これを進めていたので、本件a及びb住区においても、特別高圧架空電線路による人命その他に対する保安の確保及び電波障害、静電誘導等の公害防止のため、鉄塔周辺の利用法、住宅及び店舗等の建造物の配置並びに鉄塔と建造物との距離その他について相当の配慮をめぐらし、その結果、次のような状況となつた。即ち、本件鉄塔三基の周辺はいずれも公園となり、又右各鉄塔を結ぶ高圧線の下にはいかなる建物も建築されず、該線下は殆んど全部遊歩道や児童遊園等となり、次に本件鉄塔及びこれを結ぶ高圧線の両側には多数の住宅(高層住宅)及び店舗等が配置されているが、右高圧線と住宅との距離は二〇米以内のものが七、八棟あるけれども、大部分の住宅は三〇米以上離れており、又鉄塔自体と住宅との距離も殆ど全部五〇米以上存在し、更に店舗等は本件一〇六四号鉄塔附近において高圧線を斜めに横切り、ほぼ一列に各種商店数十軒、スーパーマーケツト、各種医療機関、銀行及び郵便局等が存在するが、殆ど全部鉄塔及び高圧線から五〇米以上離れており、試みに本件鉄塔周辺において建物が最も多く且つ最も高圧線と近接している本件一〇六五号鉄塔附近において、右鉄塔をほぼ中心とし、高圧線の両側にそれぞれ五〇米、電線路の方向に五〇〇米を劃した五万平方米の長方形の区域(原決定末尾添付の図面に 多く且つ最も高圧線と近接している本件一〇六五号鉄塔附近において、右鉄塔をほぼ中心とし、高圧線の両側にそれぞれ五〇米、電線路の方向に五〇〇米を劃した五万平方米の長方形の区域(原決定末尾添付の図面に記載の区域と大体一致する)において右面積から同区域内の道路面積を差引いた部分に対する建造物で蔽われた面積の割合、即ち建ぺい率をとつてみると、これは約八・三パーセントである。なお、本件一〇六四号鉄塔の東側には多摩ニユータウン内の幹線道路と歩道橋が存在するが、右幹線道路には各種車輌の往来が激しく、又右歩道橋は前記店舗等の中央にあつて、右幹線道路と交差する重要なものであるため、附近住民の通勤、通学、買物等による交通量がすこぶる多い。以上認定の事実によれば、相手方らが本件鉄塔の建替工事を施行しようとする地域は、全体としてみると、大都市近郊の大規模な住宅団地であつて、近代的な新興市街地であるというべきであるが、いまだ現在の電気設備に関する技術水準からみて、一七万ボルト以上の特別高圧架空電線路につき人命その他に対する保安の確保及び前記公害防止の対策がとり得ない地域であるとはいえないもの、即ち前記省令第一一一条第一項にいわゆる一七万ボルト以上の右電線路の絶対的な施設制限地域である「人家の密集する地域」には当らないものと認めるのが相当である。そうとすれば、本件鉄塔の建替工事につき通産大臣がした本件認可は、住宅団地における良好な居住環境の確保という点からみると、必ずしも好ましいものとはいえないが、さりとていまだ違法無効とまでは勿論いえないものというべきである。従つて、抗告人らの前記主張は採用しない。 三地元協定違反の点及び鉄塔倒壊の危険性の点について右二点に関する抗告人らの主張は、当裁判所も原決定と同一の理由でこれを採用できないものと判断するので、同決定 抗告人らの前記主張は採用しない。 三地元協定違反の点及び鉄塔倒壊の危険性の点について右二点に関する抗告人らの主張は、当裁判所も原決定と同一の理由でこれを採用できないものと判断するので、同決定の右説示、即ち地元協定違反の点については同決定四枚目裏八行目から五枚目裏五行目までを、鉄塔倒壊の危険性の点については同決定五枚目裏一〇行目から八枚目裏七行目までを、それぞれここに引用する。 四風音、電波障害、静電誘導等の生活被害の点についてこの点に関する抗告人らの主張は、当裁判所も原決定と同一の理由でこれを採用できないものと判断するので、同決定の右説示、即ち同決定八枚目裏八行目から一二枚目表九行目までをここに引用する(但し、同決定一〇枚目裏七行目「……と思われること」の次に「(もつとも、本件鉄塔建替後は、前記引用部分において認定した如く、送電線の数が従来の一二本から三〇本に増加するので、それだけ音源の数がふえることになり、従つて風音の被害も増大するように思われるが、反面、鉄塔の高さが著しく高くなるので送電線の位置も従来より著しく高くなり、それだけ住宅は音源から遠ざかることになり、又本件疏明資料によれば、右建替後は電線が従来より著しく太くなるため風音の周波数はそれだけかなり低くなることが認められるので、結局以上を総合すると、送電線による風音の被害の程度は本件鉄塔建替の前後を通じ殆ど差異がないものと考えられること)」を挿入する)。 五代替処置の可能性の点についてこの点に関する抗告人らの主張は、要するに(一)抗告人らの居住する地域は公的計画により建設された市街地であるから、本件鉄塔による特別高圧架空電線路はすべからく東京の都心部におけると同様、設計を変更し地中線化して、右電線路による抗告人らの被害を防止すべきものである。(二)仮に右地中線 建設された市街地であるから、本件鉄塔による特別高圧架空電線路はすべからく東京の都心部におけると同様、設計を変更し地中線化して、右電線路による抗告人らの被害を防止すべきものである。(二)仮に右地中線化が送電容量が増大した場合、技術的に著しく困難であるとすれば、相手方らはすべからく右電線路の送電容量を減少させて技術的にこれが地中線化を可能にし、以て抗告人らの前記被害を防止すべきものである。(三)仮に以上の地中線化がいずれも不可能であるとしても、本件鉄塔による特別高圧架空電線路はこれを多摩ニュータウン内の他の場所に変更することが可能であるから、相手方らは右路線の変更により抗告人らの前記被害を防止すべきものである。というにある。そこで按ずるに、本件疏明資料によれば、送電線を地下ケーブル化することは、架空送電線の場合と異なり、送電中の発熱処理が困難であるため、送電容量の点において大きな制約があり、現在の我が国の技術を以ては、送電線の地下ケーブル化はせいぜい三〇万キロワットが限度であること。しかし、この程度の送電容量では本件鉄塔建替の目的であるひつ迫した東京西部地域における電力需要を充足することは到底不可能であること。仮に前記制約をかえりみず本件鉄塔建替後の送電容量三〇〇万キロワット(二七万五〇〇〇ボルトの架空線二四本)及び六万六〇〇〇ボルトの架空線六本を地中線化するとすれば、その技術上の低い信頼度及び事故復旧時の繁雑さを度外視しても、地下ケーブル線の数、該線を収容する洞道及び地中線と架空線の接続地点に設ける開閉所の大きさその他からみて莫大な工費と長年月の工期を要し、相手方東京電力はその負担にたえないものであるのみならず、早急に東京西部地域に対し安定した電力を供給するという公益上の使命も達成不可能になること。並びに多摩ニユータウン計画においては の工期を要し、相手方東京電力はその負担にたえないものであるのみならず、早急に東京西部地域に対し安定した電力を供給するという公益上の使命も達成不可能になること。並びに多摩ニユータウン計画においては前記のように最初から特別高圧架空電線路東京西線の存在を前提として開発計画が進められていた反面、相手方東京電力においても右東京西線の建替についてはニユータウンヘの影響を最少限にとどめるため、東京都や日本住宅公団等と協議のうえ全線にわたつて既設線ルートによることとしたので、本件送電線の路線変更は根本的に困難であるのみならず、現在においては東京西線の建替工事は本件鉄塔外一基を除き殆ど完了しているところから、右路線の変更は用地取得の至難性を考えるまでもなく到底不可能であることが一応認められる。そして以上の事実に前記引用部分において認定した本件鉄塔及び送電線により抗告人らが被る生活被害が社会生活上受忍の限度を著しく越える程度のものではないことを併せ考えれば、抗告人らの前記主張はいずれもこれを採用することができないものというの外ない。 その他本件においては、原決定を取消すべき事由は認められない。 よつて、以上と同旨で抗告人らの本件仮処分申請を却下した原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないから、民事訴訟法第四一四条、第三八四条第一項によりこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官杉山孝裁判官古川純一裁判官岩佐善己)

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