- 1 -平成26年4月23日判決言渡平成25年(行ケ)第10292号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年4月16日判決 原告パナソニック株式会社 訴訟代理人弁理士新居広守寺谷英作道坂伸一 被告特許庁長官指定代理人松川直樹服部秀男相崎裕恒堀内仁子 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた判決特許庁が不服2013-5822号事件について平成25年9月17日にした審決を取り消す。 - 2 - 第2 事案の概要本件は,特許出願拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。 争点は,補正について,目的要件充足の有無及び独立特許要件(進歩性)の有無,並びに審判手続における手続違背の有無である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成24年3月12日,発明の名称を「発光装置,バックライトユニット,液晶表示装置及び照明装置」とする発明につき,国際出願(特願2012-519648号,優先権主張日:平成23年4月20日,国際公開番号:WO2012/144126。甲8)をし,平成24年7月23日,特許請求の範囲を変更する補正をしたところ(甲1),拒絶理由通知を受けたため,更に同年11月12日付け手続補正書(甲4)により特許請求の範囲を変更する補正をしたが,平成25年1月11日,当該補正が却下され(甲5),同日付けで拒絶査定がなされた(甲 ,拒絶理由通知を受けたため,更に同年11月12日付け手続補正書(甲4)により特許請求の範囲を変更する補正をしたが,平成25年1月11日,当該補正が却下され(甲5),同日付けで拒絶査定がなされた(甲6)ので,同年4月1日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付け手続補正書(甲7。以下「本件補正書」という。)により,発明の名称を「光源,バックライトユニット,液晶表示装置及び照明装置」と補正した上,特許請求の範囲の変更を内容とする補正をした(以下「本件補正」という。)。 特許庁は,平成25年9月17日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年10月1日,原告に送達された。 2 本願発明の要旨(1) 本件補正後の請求項1(補正発明)補正発明は,本件補正書(甲7)に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源であって, - 3 -前記複数の発光装置の各々は,前記一の方向に長尺状をなす基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,前記複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有する光源。」(下線部が補正箇所。)(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明)補正前発明は,平成24年7月23日付けの手続補正書(甲1。以下,甲8の明細書と合わせて「本願明細書」とも 光源。」(下線部が補正箇所。)(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明)補正前発明は,平成24年7月23日付けの手続補正書(甲1。以下,甲8の明細書と合わせて「本願明細書」ともいう。)に記載された,以下のとおりのものである。 「【請求項1】長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,前記複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有する発光装置。」 - 4 - 3 審決の理由の要点(1) 本件補正について本件補正は,補正前の請求項1の「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」と補正して,補正後の請求項1とする補正事項(以下「本件補正事項」という。)を含むものである。 本件補正事項は,請求項1に係る発明を,「発光装置」から,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」を有する「光源」に補正するものであって,補正前の請求項1における,発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく,本件補正事項を含む本件補正は,特許法17条の2第5項に定める,請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。 したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 (2) 付言-補正発明の独立特 したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 (2) 付言-補正発明の独立特許要件についてア引用発明について引用例1(特開2007-288200号公報。甲11)には,以下の引用発明が記載されている。 「一の方向に長尺状をなす基材本体および前記基材本体にそれぞれ形成された正極導電トレースおよび負極導電トレースを有する基材ユニットと,前記基材本体に設けられ,前記基材本体の長手方向に沿って一直線状に配列される複数の発光ダイオードチップを有し,前記発光ダイオードチップ毎に正極端および負極端を有し,かつ,これらの前記発光ダイオードチップの前記正極端および前記負極端が,前記正極導電トレースおよび前記負極導電トレースに電気的に接続された発光ユニットと,前記基材ユニットおよび前記発光ユニットを覆うコロイドユニットとを含み, - 5 -前記正極導電トレース,前記負極導電トレースの導電により光線を発生する時に,該光線はコロイドユニットにガイドされ前記コロイドユニット上に連続的な発光領域を形成し,各前記発光ダイオードチップは青色発光ダイオードで,前記コロイドユニットは蛍光コロイドである発光ダイオードチップの封止構造を用いた光源。」イ補正発明と引用発明との一致点と相違点【一致点】「発光装置を有する光源であって,前記発光装置は,前記一の方向に長尺状をなす基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導 基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止する光源。」【相違点1】補正発明の「光源」は,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する」のに対して,引用発明の「光源」は,複数の「基材ユニット」を「一の方向に隣接して配置」したものであるか否か明らかではない点。 【相違点2】補正発明の「封止部材」は,「複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有する」のに対して,引用発明の「コロイドユニット」は,このようなものであるか否か明らかではない点。 ウ相違点についての判断引用発明の「光源」は,「本発明に係る構造設計は,様々な光源により適合でき, - 6 -例えば,バックライトや,飾りランプ棒,照明用ランプまたはスキャンナー光源などへ」適応するものであるところ,図2A及びBをみると,引用発明の「光源」の基材ユニット1の形状は,必要に応じて一の方向に隣接して配置することを妨げる形状ではないから,基材ユニット1は適応させる用途に応じて適宜一の方向に隣接して配置できるものであると認められる。 また,引用発明のコロイドユニットの端部の形状は明らかではないが,引用例2(実用新案登録第3167034号公報。甲12)には,「帯状の板体であるリードフレーム1の片面に複数の発光ダイオード3が配列されて接合され,パッケージ4のコロイドが発光ダイオード3上に充填されて透明構造体が複数の発光ダイオード3の配列方向に沿って直線状にリードフレーム ードフレーム1の片面に複数の発光ダイオード3が配列されて接合され,パッケージ4のコロイドが発光ダイオード3上に充填されて透明構造体が複数の発光ダイオード3の配列方向に沿って直線状にリードフレーム1の長手方向に形成され,かつ,リードフレーム1の長手方向の片側については透明構造体が端部まで形成され,当該パッケージ4の透明構造体の端部は,平面視及び側面視した場合,輪郭線は曲率を有する」構成(以下,この構成を「引用例2に記載の事項」という。)が記載されているから,引用発明のコロイドユニットの端部の形状を,引用例2に記載の事項に基づいて,平面視した場合に曲率を有するものとなすことに格別の困難性はない。 エよって,補正発明は,引用発明の「光源」の基材ユニット1を適宜の用途に応じて一の方向に隣接して配置し,引用発明のコロイドユニットの端部の形状を適宜の,例えば引用例2に記載の事項に基づいて平面視した場合に曲率を有するもの,となすことにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3) 補正前発明の進歩性についてア補正前発明と引用発明との一致点及び相違点【一致点】「長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と, - 7 -光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止する発光装置。」【相違点】 上記相違点2と同じ。 イ相違点についての判断補正前発明は,実質的に,補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。 そうすると,補正前発明の構成要件を 相違点】 上記相違点2と同じ。 イ相違点についての判断補正前発明は,実質的に,補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。 そうすると,補正前発明の構成要件をすべて含み,本件補正事項を付加した補正発明が,前記のとおり,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正前発明も,同様の理由により,引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(本件補正の目的要件の判断の誤り)(1) 本件補正は,特許法17条の2第5項2号の括弧書に規定された「36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」である請求項1の「発光装置」を,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」に限定するものであり,かつ,その補正前の「発光装置」とその補正後の「光源」とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから,特許請求の範囲の限定的減縮に当たる。したがって,本件補正を特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないとした審決の判断は誤りである。 ア 「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」と補正する点について(ア) 補正前の請求項26は,「【請求項26】前記発光装置を複数備え,複数の前記発光装置は,当該発光装置の基板同士を接触させて配置される請求項25に記載の照明装置。」とあり,補正後の請求項1の「一の方向に隣接して配置され - 8 -た複数の発光装置」と酷似する内容が記載されているから,本件補正は,特許請求の範囲全体としてみれば何ら新たな技術的事項を付け加えるものではない。 また,補正後の請求項1に酷似する補正前の請求項26は,既に審 光装置」と酷似する内容が記載されているから,本件補正は,特許請求の範囲全体としてみれば何ら新たな技術的事項を付け加えるものではない。 また,補正後の請求項1に酷似する補正前の請求項26は,既に審査済みであるから,審査のやり直しになることもなく,本件補正は,制度趣旨に何ら反するものではない。 (イ) 被告は,上記(ア)の原告の主張が,本件補正事項が特許法17条の2第5項2号に定める特許請求の範囲の減縮であるか否かとは関係がないと主張する。 しかし,特許法17条の2第5項2号には,「特許請求の範囲の減縮」と定められ,「請求項の減縮」とは定められていないことからすると,特許請求の範囲を補正するに際し,同号の規定は,特許請求の範囲全体をとらまえようとするものであり,特許請求の範囲における個別具体的な請求項の補正が,補正前の他の請求項との関係で補正を行うことを何ら排除するものではない。 むろん,同項の括弧書には,「第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」と定められており,個別具体的な請求項の補正には制限がかけられているが,これは,既に行った先行技術文献調査の結果を有効に活用して迅速に審査を行うために特許請求の範囲の補正に制限を加える趣旨であり,この括弧書の要件を満たす限り,個別具体的な請求項の補正が補正前の他の請求項との関係で補正を行うことを排除するものではない。 また,仮に,本件補正のように,補正前の請求項26の特徴を請求項1に組み込むような補正を認めたとしても,補正前の請求項26は既に審査済みであるので,審査のやり直 行うことを排除するものではない。 また,仮に,本件補正のように,補正前の請求項26の特徴を請求項1に組み込むような補正を認めたとしても,補正前の請求項26は既に審査済みであるので,審査のやり直しになることはなく,特許法17条の2第5項の制度趣旨に何ら反するものでないばかりか,当該補正により権利範囲が狭まる以上,第三者の監視の負担が大きくなるわけでもなく,誰も不利益を被らない。このような補正が一切認め - 9 -られないとすると,この補正による請求項で権利化を図るためだけに出願人はわざわざ分割出願をすることになるが,この場合,出願人(原告)側の費用や手間が増えるばかりか,特許庁(被告)側にとっても審査官の指定を含めた新たに審査を開始するための手間が増え,双方にとって時間的にも経済的にも無駄が発生し,公益的見地にもとる結果となる。 したがって,補正前の請求項26の特徴を請求項1に組み込むような補正は認められるべきである。 (ウ) 以上により,「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」に変更する補正は,特許請求の範囲を減縮する補正として認められるべきものである。 イ請求項1の末尾の「発光装置」を「光源」に補正する点補正前の請求項1末尾の「発光装置」を補正後の請求項1末尾の「光源」に変更する補正は,「一の方向に複数個隣接配置して用いる発光装置であって,」を追加する平成24年11月12日付け補正(甲4)が,用途を限定するものであって本願発明を構成する要件とはみなされない,との理由で却下されたことを受けて,補正前の請求項1に係る発明が「複数の発光装置」を明確に構成要件として含むように補正したものである。原告は,「複数の発光装置」を有する物が同じ名称の「発光装置」としたのでは,紛らわしいと考え,「 ,補正前の請求項1に係る発明が「複数の発光装置」を明確に構成要件として含むように補正したものである。原告は,「複数の発光装置」を有する物が同じ名称の「発光装置」としたのでは,紛らわしいと考え,「複数の発光装置」を有する物として,単に表現形式を変更する趣旨で,本願の出願の最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)の記載を用いて,「光源」という名称を用いたものである。 そして,当初明細書には,「複数の発光装置」と「光源」とが同義語的に記載されている。 以上のように,本件補正において請求項1の末尾の「発光装置」を「光源」に変更する補正は,単に表現形式を変更したものにすぎず,新たな技術的事項を付け加えるものではないので,特許請求の範囲を減縮する補正として認められるべきである。 - 10 -(2) また,仮に,本件補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでない場合であっても,当該補正は,特許法17条の2第5項4号に定める「明りようでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 原告は,最後の拒絶理由通知を受けて担当審査官と面接審査を行い,その結果を踏まえて,審査官の指摘に従う形で,平成24年11月12日付け補正を行ったところ,補正の却下の決定書(甲5)に記載されるように,請求項1についての補正事項は用途を限定するものであって本願発明を構成する要件とはみなされないとの理由により,当該補正が却下されるとともに拒絶査定がなされた。 そこで,原告は,審査官の指摘を一層明確にする補正を行うために,拒絶査定に対する不服の審判を請求すると同時に,補正の却下の決定に係る理由に示す事項について,本件補正を行った。 本件補正は,文言上,特許法17条の2第5項4号に記載される「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」に 審判を請求すると同時に,補正の却下の決定に係る理由に示す事項について,本件補正を行った。 本件補正は,文言上,特許法17条の2第5項4号に記載される「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」についてするものではないものの,実質的には,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものである。すなわち,本件補正は,補正の却下の決定により拒絶査定となった本件特許出願について,拒絶査定不服審判の請求を行うと同時に行ったものであることから,本件補正を行う前の特許請求の範囲における請求項に係る発明に対する実質的な拒絶理由は,補正の却下の決定の理由であり,実質的には,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」についてなしたものといえるのである。 そして,補正前の請求項1における「一の方向に複数個隣接配置して用いる発光装置であって,前記一の方向に長尺状をなす基板と,・・・」との記載を明瞭なものとすべく,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源であって,前記複数の発光装置の各々は,前記一の方向に長尺状をなす基板と,・・・」と補正したものであるから,本件補正は,補正の却下の決定に係る理由(拒絶理由通知)に示す事項について明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるので,同法17条の2第5項4号に規定される要件を満たす。 - 11 - 2 取消事由2(補正発明の進歩性判断の誤り)(1) 補正発明とその効果補正発明は,少なくとも,以下の(a),(b)及び(c)の構成を備える。 (a)複数の発光装置を有し,当該複数の発光装置は,基板の長手方向である一の方向に隣接して配置されていること(b)封止部材は,複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に基板の長手方 の発光装置は,基板の長手方向である一の方向に隣接して配置されていること(b)封止部材は,複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に基板の長手方向の両端縁まで形成されていること(c)封止部材は,光波長変換体を含むものであって,平面視した場合の端部の輪郭線が曲率を有するものであること補正発明が,以上の構成を有することにより,半導体発光素子が発する光は,封止部材内を導光して封止部材の両端部に存在する波長変換体で波長変換されて等方拡散したときに,封止部材の端部の輪郭線が曲率を有するので,隣接する2つの発光装置の各々の封止部材の端部から出射する光(波長変換光)を,平面視において斜め方向へと促すことができる。これにより,2つの発光装置の隣接部分(すなわち,封止部材の隣接部分)における光の輝度差を抑えることができることから,2つの発光装置の隣接部分で光が途切れてしまうことを抑制できる。 したがって,2つの発光装置間において,光が連続して見えるので,2つの発光装置の繋ぎ目を感じにくくさせることができるという格別の作用効果を奏する(段落【0105】,【図7】の(a))。 (2) 相違点1についての進歩性判断の誤り補正発明は,「一の方向に長尺状をなす基板」を有する発光装置を「一の方向に隣接して配置」するもの,すなわち,長尺状の基板をその長手方向に隣接して配置するものであって,基板の長手方向の両端縁まで形成された封止部材をその長手方向に連続して配置する構成のものである。このような配置は,適応させる用途に応じ - 12 -て適宜なし得るものではない。 また,引用例1及び2には,2つの発光装置を長手方向に隣接して配置することの開示や示唆もない。 (3) 相違点2について 応させる用途に応じ - 12 -て適宜なし得るものではない。 また,引用例1及び2には,2つの発光装置を長手方向に隣接して配置することの開示や示唆もない。 (3) 相違点2についての進歩性判断の誤りア引用例2の図15及び図16におけるパッケージ4は,補正発明における「封止部材」と異なり,「基板の長手方向の両端縁まで」形成されたものではない。 したがって,仮に,引用発明に引用例2に記載の発明を組み合わせたとしても補正発明にはならない。 イまた,引用例2の図15及び図16に開示される発光ダイオードモジュール構造では,リードフレーム1の長手方向の一方の端部に,ドライバIC2,抵抗5,電極接点11,12が実装されており,かつ,パッケージ4がリードフレーム1の幅方向の全部にわたって形成されている。したがって,引用例2の図15及び図16における発光ダイオードモジュール構造では,リードフレーム1の長手方向の両端縁までパッケージ4を形成することができない。つまり,引用例2には,リードフレーム1の長手方向の両端縁までパッケージ4を形成するという技術思想は存在しないし,そのような構成にすることも極めて困難である。 ウ審決は,補正発明の上記の繋ぎ目を感じにくくさせる効果について,「曲率を有する端部の光学的な性質から予測し得る程度のものであり」とするが,前記のとおり,補正発明の上記の繋ぎ目を感じにくくさせる効果は,2つの発光装置を長手方向に隣接して配置し,かつ,封止部材に光波長変換体が含まれていることで発揮する格別なものである。 これに対して,引用例2のパッケージ4には波長変換体が含まれていないので,引用例2では,補正発明の上記の格別な効果を発揮することもできなければ,予測することもできない。補正発明の効果は, ある。 これに対して,引用例2のパッケージ4には波長変換体が含まれていないので,引用例2では,補正発明の上記の格別な効果を発揮することもできなければ,予測することもできない。補正発明の効果は,格別顕著なものであるので,単に引用例2のパッケージ4のような透明部材を密着させただけでは得られる効果ではない。 したがって,補正発明の効果の観点からみても,相違点2については,引用例1 - 13 -及び引用例2に基づいて当業者が容易になし得るものではない。 (4) したがって,補正発明は,引用例1及び引用例2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消事由3(審判手続の手続違背)審判合議体は,本件補正を適法であると認めるのであれば,審判手続中の審尋(甲9)の前置報告書にて新たに示された引用例に対し,意見書提出の機会を付与すべく,拒絶理由を通知すべきであり,この機会を与えずに拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決(拒絶審決)に至った場合には,これを違法であるとして取り消されるべきである。 審尋における前置報告書には,本件補正が限定的減縮を目的としているとされる場合には,特許法29条2項により独立特許要件を欠く旨が記載されているところ,同報告書において示された5つの引用例のうち,主引例である「引用例1」(国際公開第2009/141982号)及び「引用例5」(登録実用新案第3161182号公報)の2つの引用例は,審尋において初めて提示されたものである。また,審尋に対しては,直接的に補正することができず,反論するには限度がある。 したがって,前置審査及び審判審理のいずれであっても,審判段階で本件補正を適法なものであるとして審査又は審理を進めるのであれば,審尋書において,拒絶査定の理由と異なる理 反論するには限度がある。 したがって,前置審査及び審判審理のいずれであっても,審判段階で本件補正を適法なものであるとして審査又は審理を進めるのであれば,審尋書において,拒絶査定の理由と異なる理由によって拒絶審決がなされる可能性があると示唆する以上,原告は初めて接する引用例で拒絶される可能性があると考えるのであるから,原告に対し,意見書を提出する機会及び補正書を提出する機会を与えるべきであった。 つまり,審尋書に記載された引用例1(国際公開第2009/141982号)等を根拠に拒絶審決をする場合はもちろんのこと,本審決のように引用例1及び引用例2(前記第2,3(2)に記載のもの)を根拠に拒絶審決する場合であっても,審査段階で示されなかった引用例を提示して拒絶する可能性を審尋にて原告に示す以上,審尋に対して誠実に対応した原告に対しては,意見書を提出する機会を与えるべき - 14 -であった。 しかるに,この機会を与えずに拒絶審決に至ったのであるから,審判手続には特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反する瑕疵があり,当該瑕疵は審決の結論に影響を及ぼす違法なものである。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対し(1) 原告の主張1(1)に対し本件補正は,補正前の請求項1の「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」と補正して,補正後の請求項1とする補正事項(本件補正事項)を含むものである。本件補正事項は,請求項1に係る発明を,「発光装置」から,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」を有する「光源」に補正するものであるから,補正前の請求項1における,発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。すなわち,上記本件補正事項は,特許法17条の2第5項2号に定める「 装置」を有する「光源」に補正するものであるから,補正前の請求項1における,発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。すなわち,上記本件補正事項は,特許法17条の2第5項2号に定める「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 原告の主張1(1)ア(ア)は,本件補正事項が同号に定める特許請求の範囲の減縮であるか否かとは関係がない。 (2) 原告の主張1(2)に対し本件補正事項が「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」について補正するものでないことは,原告も認めるところであり,また,本件補正前の請求項1において明瞭でない記載も見当たらないから,本件補正事項が特許法17条の2第5項4号に定める「明りようでない記載の釈明」に該当しないことは明らかである。 (3) したがって,本件補正を却下した審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2に対し審決において述べられたとおり,補正発明は,特許法29条2項の規定により特 - 15 -許を受けることができないものであるから,本件補正を却下した審決に誤りはない。 3 取消事由3に対し特許法50条及び159条によれば,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に,拒絶の理由の通知をするとともに,意見書を提出する機会を与えなければならないとされているところ,本件審決は,拒絶査定と同様の理由により補正発明は特許を受けることができないものと判断したのであるから,上記の規定に照らし,特許出願人(原告)に対し,改めて意見書を提出する機会を与える必要がないことは明らかである。 そして,特許法には,「審判手続中の審尋の前置報告書にて新たに示された引用例に対して意見書提出の機会を付与すべく拒絶理由を通知すべき」とする規定はない。 よって 必要がないことは明らかである。 そして,特許法には,「審判手続中の審尋の前置報告書にて新たに示された引用例に対して意見書提出の機会を付与すべく拒絶理由を通知すべき」とする規定はない。 よって,原告に対し,意見書を提出する機会を与えることなく審決に至った手続に何ら違法はない。 第5 当裁判所の判断 1 補正前発明について本願明細書(甲1,8)によれば,補正前発明につき,以下のことが認められる。 補正前発明は,発光装置,特に,半導体発光素子を用いた発光装置に関するものである(段落【0001】)。近年,高効率で省スペースな光源として,液晶テレビ等の液晶表示装置におけるバックライト光源,又は,照明装置における照明用光源等として広く利用されている発光ダイオードは,発光装置(発光モジュール)としてユニット化されており(段落【0002】,【0003】),従来,このような発光装置として,表面実装型(SMD:SurfaceMountDevice)の発光装置が提案されている(段落【0004】)。ところが,このSMD型の発光装置では,隣り合うSMD型発光ダイオード素子の間が非発光領域となるため,点灯時に外観上つぶつぶ感を与え,輝度ばらつきが発生するとともに,発光装置(モジュール)内において色 - 16 -度ばらつきが発生するという問題があった(段落【0008】)。 そこで,補正前発明は,このような問題を解決するためになされたものであり,つぶつぶ感を低減して輝度ばらつきを抑制するとともに,色度ばらつきを抑制することができる発光装置を提供することを目的とし(段落【0009】),長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封 供することを目的とし(段落【0009】),長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,前記複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有する発光装置とすることによって(段落【0010】,【0022】,【0027】,【0042】,【0100】,【0105】),隣り合う半導体発光素子間にも封止部材が存在するので,半導体発光素子から発した光の一部は,封止部材の線幅方向における空気層との界面において反射して封止部材内に進行し,封止部材の直線方向(基板の長手方向)への光を増加させることができ,その結果,隣り合う半導体発光素子間も発光領域とすることができるので,つぶつぶ感をなくし,輝度ばらつきを抑制することができるという効果を奏する(段落【0011】,【0037】【0068】,【0073】)。 また,補正前発明の発光装置は,封止部が基板の長手方向の両端縁まで形成され,封止部材を平面視した場合に,各封止部材の端部の輪郭線は曲率を有するように構成されているので,長尺方向に沿って互いに接するように複数配置すると,斜め方向の光出射を促すことができるので,発光装置の連結部分を見たときに,光が途切れてしまうことを抑制することができ,発光装置同士の繋ぎ目を感じにくくさせることができるという効果を奏するものである(段落【0090】,【0095】,【0100】,【0101】,【0104】,【0105】)。 なお,原告は,補正前発明が進歩性を欠くとした審判の判断(前記 ことができるという効果を奏するものである(段落【0090】,【0095】,【0100】,【0101】,【0104】,【0105】)。 なお,原告は,補正前発明が進歩性を欠くとした審判の判断(前記第2の3(3))を争うものではない。 - 17 - 2 取消事由1(本件補正の目的要件の判断の誤り)について(1) 特許法17条の2第5項2号は,には,以下の規定がある。 「第十七条の二 (省略) 5 前二項に規定するもののほか,第一項第一号,第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては,拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は,次に掲げる事項を目的とするものに限る。 (省略)二特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(省略)」この規定によれば,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正が認められるためには,特許請求の範囲の減縮であるにとどまらず,補正前の請求項と補正後の請求項を比較し,補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定であること,すなわち,限定的減縮であることと,補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることが必要とされる。 そこで,検討するに,本件補正は,補正前の請求項1(甲1)の末尾の「発光装置」を「光源」と補正するとともに,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源であって」を追加する補正をして,補正後の請求項1(甲7)とする補正事 前の請求項1(甲1)の末尾の「発光装置」を「光源」と補正するとともに,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源であって」を追加する補正をして,補正後の請求項1(甲7)とする補正事項を含むものであるから,補正前発明における「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」とするものである。 補正前発明における「発光装置」は,本願明細書に示されるように,長尺状の基板と,前記基板上に当該基板の長手方向に沿って一直線状に配列された複数の半導 - 18 -体発光素子と,光波長変換体を含み,前記複数の半導体発光素子を封止する封止部材と,を備え,前記封止部材は,前記複数の半導体発光素子を一括封止するとともに,前記複数の半導体発光素子の配列方向に沿って直線状に前記基板の長手方向の両端縁まで形成され,前記封止部材を平面視した場合,前記封止部材の端部の輪郭線は曲率を有するもの(請求項1,段落【0010】,【0022】,【0027】,【0042】,【0100】,【0105】)である。そして,実施例において,発光装置100につき,以下の図1が示され,さらに,「本発明1の第1の実施形態に係る発光装置を複数個並べる場合」(段落【0095】)として,「発光装置100A」と「発光装置100B」を隣接配置する,以下の図6が示されている。 【図1】 【図6】 これに対して,補正後の請求項1の「光源」は,「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」であり,補正前発明の「発光装置」を一の方向に隣接して複数配置するものである。 - 19 -そうすると,補正前の請求項1の「発光装置」を補正後の請求項1の「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する 「発光装置」を一の方向に隣接して複数配置するものである。 - 19 -そうすると,補正前の請求項1の「発光装置」を補正後の請求項1の「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」とすることは,特許請求の範囲を減縮することにはなるものの,補正前の「発光装置」を,より下位の発明の構成に限定するものではないから,本件補正は,補正前の請求項1における,発明を特定するために必要な事項を限定するものであるということはできない。 よって,本件補正に係る請求項1の補正事項は,特許法17条の2第5項2号にいう,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。 したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項2号の要件を満たしておらず,その他同項に定める要件に該当しないことは明らかであるから,本件補正を却下した審決に誤りはない。 (2) 原告の主張についてア原告は,特許法17条の2第5項2号は「特許請求の範囲の減縮」と定め,「請求項の減縮」とは定めていないのであるから,同号の規定は,特許請求の範囲を補正するに際し,特許請求の範囲全体をとらまえようとするものであり,特許請求の範囲における個別具体的な請求項の補正が補正前の他の請求項との関係で補正を行うことを何ら排除するものではないとし,補正前の請求項26には「前記発光装置を複数備え,複数の前記発光装置は,当該発光装置の基板同士を接触させて配置される請求項25に記載の照明装置。」との,本件補正の補正後の請求項1における「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置」の記載と酷似する内容が記載されているから,本件補正は限定的減縮に当たると主張する。 しかし,特許法17条の2第5項2号は,前記(1)のとおり,「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請 載と酷似する内容が記載されているから,本件補正は限定的減縮に当たると主張する。 しかし,特許法17条の2第5項2号は,前記(1)のとおり,「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定されており,補正前と補正後の「当該請求項」を比較することを前提としているのであって,発明特定事項の「限定」,あるいは, - 20 -産業上の利用分野及び解決課題の「同一」性は,特許請求の範囲に記載された当該請求項について,その補正の前後を比較して判断すべきものといえる。 そして,補正発明は,補正前の請求項26を補正するものでない以上,補正前の請求項26の記載事項は,補正の限定的減縮の判断に当たって比較すべき対象ではないことが明らかである。 よって,原告の上記主張は採用できない。 イ原告は,「複数の発光装置」を有する物が同じ名称の「発光装置」としたのでは紛らわしいと考え,「複数の発光装置」を有する物として,単に表現形式を変更する趣旨で,当初明細書の記載を用いて,「光源」という名称を用いたものにすぎないから,限定的減縮に当たると主張する。 しかし,本件補正は,単に補正前の請求項1末尾の「発光装置」を,補正後の請求項1末尾の「光源」と補正するにとどまるものではなく,補正前の「発光装置」を「一の方向に隣接して配置された複数の発光装置を有する光源」に補正するものであるから,1つの「発光装置」から複数の「発光装置」を備えるものに構成が変更されており,単に表現形式を変更したものにすぎないとはいえない。 したがっ た複数の発光装置を有する光源」に補正するものであるから,1つの「発光装置」から複数の「発光装置」を備えるものに構成が変更されており,単に表現形式を変更したものにすぎないとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 ウ原告は,仮に,本件補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでない場合であっても,当該補正は,特許法17条の2第5項4号に定める「明りようでない記載の釈明」を目的とするものに該当すると主張する。 しかし,本件補正事項は,前記に述べたとおりのものであり,「物の発明」におけるその「物」の構成自体を変更するものであって,明瞭でない記載を明瞭にしたものであるとはいえない。また,特許法17条の2第5項4号には,「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」と規定されているところ,本件補正が「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」について補正するものでないことは,原告も認めているところである。さらに,本件補正前の請求項1において,明瞭でない記載も見当たらず,本件補正が,特許法 - 21 -17条の2第5項4号に定める「明りようでない記載の釈明」に該当するとはいえない。 そうすると,本件補正は,特許法17条の2第5項4号に定める「明りようでない記載の釈明」を目的とするものに該当するとはいえず,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてなされたものでもないから,原告の主張は採用できない。 3 取消事由3(審判手続の手続違背)について原告は,審判合議体は,本件補正を適法であると認めるのであれば,審判手続中の審尋(甲9)の前置報告書にて新たに示された引用例に対して意見書提出の機会を付与すべく拒絶理由を通知すべきであり,この機会を与えず ,審判合議体は,本件補正を適法であると認めるのであれば,審判手続中の審尋(甲9)の前置報告書にて新たに示された引用例に対して意見書提出の機会を付与すべく拒絶理由を通知すべきであり,この機会を与えずに拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決(拒絶審決)に至った場合には,これを違法であるとして取り消されるべきであると主張する。 (1) しかし,本件において,審決は,本件補正を適法であると認めたものではなく,適法な補正の目的を欠くことを理由として,本件補正を却下したものである。 その上で,独立特許要件(進歩性)の判断は,念のために記載された「付言」としてなされたものにすぎないから,原告の主張はその前提を欠いている。 (2) 特許法50条は,「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,17条の2第1項1号又は3号に掲げる場合(同項1号に掲げる場合にあつては,拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において,53条1項の規定による却下の決定をするときは,この限りでない。」と規定し,同法159条2項は,「50条及び50条の2の規定は,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。」と規定している。 本件においては,平成24年9月21日付けの拒絶理由通知書(甲2)において,本件の引用例1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので - 22 -あるとする拒絶理由が通知され,これに基づいて拒絶査定がなされ(甲6),審決は,この拒絶査定と同じ引用文献である引用例1及び2に基づいて容易想到であるとして,補正発明は特許を受けることができないと判断してい る拒絶理由が通知され,これに基づいて拒絶査定がなされ(甲6),審決は,この拒絶査定と同じ引用文献である引用例1及び2に基づいて容易想到であるとして,補正発明は特許を受けることができないと判断している。 そうすると,「拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」(特許法159条)に該当するものでないから,原告に対して,改めて意見書を提出する機会を与える必要はないことは明らかである。しかも,このことは,審尋(甲9)の備考欄には,「この審尋は,拒絶理由の通知(同法159条において準用する同法50条)ではありません。したがって,この審尋の回答に際し,同法17条の2に規定する補正をすることはできません。なお,拒絶査定の理由と異なる拒絶理由があり,合議体が必要と判断した場合には,改めて拒絶理由が通知され,同法17条の2に規定する補正の機会が与えられます。」と記載されていたものである。 したがって,原告の主張は採用できない。 4 以上によれば,原告の主張する取消事由1及び3は,いずれも理由がなく,本件補正が適法であることを前提とする補正発明の進歩性が問題となる余地はないから,取消事由2について検討するまでもない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 23 - 裁判長裁判官清水 節 裁判官中村 恭 清水節 裁判官中村恭 裁判官中武由紀
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