- 1 - 主文 被告人を懲役23年に処する。 未決勾留日数中500日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 Aと共謀の上、令和4年5月14日午前9時40分頃から同日午前9時48分頃までの間に、埼玉県朝霞市(住所省略)所在の株式会社B事務所兼作業場(鉄骨造スレート葺平屋建、床面積約122平方メートル)内において、C(当時43歳)に対し、殺意をもって、その頭部をバール(長さ約74.7センチメートル、重量約1.15キログラム)で複数回殴り、頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷等の傷害を負わせた上、同人が現にいる同事務所兼作業場に何らかの方法で火を放ち、その火を同事務所兼作業場の床、壁、天井等に燃え移らせ、よって、同事務所兼作業場の一部を焼損(焼損床面積約37平方メートル)するとともに、その頃、同事務所兼作業場において、同人を急性一酸化炭素中毒及び火焔暴露による火傷の競合により死亡させて殺害し、第2 Aが株式会社Bから請け負った工事に関し、支払を受けていない人工代があるかのように装って同社から金銭をだまし取ろうと考え、Aと共謀の上、同年6月3日、同県志木市(住所省略)株式会社D事務所において、Aが、前記株式会社B代表取締役Eに対し、内容虚偽の「請負工事未精算一式」などと記載した「御見積書」と題する書面及び架空の人工代を記載した同年2月分、同年3月分、同年4月分の内訳書等を提出した上、同社から支払を受けていない人工代がある旨申し向けて、人工代合計283万8000円の支払を請求し、同人に同請求が正当なものであると誤信させてその支払を受けようとしたが、同人がその支払に応じなかったため、その目的を遂げなかった。 (量刑の理由) - 2 -被告人は、個人で内装業を営み、共犯者から 当なものであると誤信させてその支払を受けようとしたが、同人がその支払に応じなかったため、その目的を遂げなかった。 (量刑の理由) - 2 -被告人は、個人で内装業を営み、共犯者から仕事を請け負い、令和3年11月頃からは、共犯者を介し、被害者の孫請けの形で仕事を請け負っていたが、共犯者から、令和4年2月頃からの報酬の支払いの遅れや減額が被害者のせいであると聞かされていたことや、被害者が施工の不具合の責任を被告人だけに負わせようとしていると感じたことなどから、被害者に不信感や不満を抱くようになっていた。そこに、共犯者から、被害者を殺して放火し、未払報酬名目で300万円ほどの架空請求を行い、被告人にうち3割を渡すといった計画を持ち掛けられ、被告人は、被害者に不信感や不満を抱いていたことも相まって100万円くらいもらえるなら被害者を殺しても構わないなどと考えるようになり、共犯者の首謀・主導で本件各犯行に及んだ。この点、弁護人は、被告人は犯行直前まで、本件各犯行につながる共犯者の言動は冗談だと考えており、計画性は相当低いなどと主張する。被告人は、共犯者から被害者殺害等の計画を話として聞いていたこと、その上で、殺人及び現住建造物等放火の犯行前日の被告人と共犯者との間のLINEメッセージでは、共犯者から「例のやつやっちゃいましょー」「諸事情で今日の夜終わり倉庫戻って確実に決めたい感じです」とのメッセージが送られ、被告人はこれを受けて「流れ了解しました」と返信しているが、このようなメッセージが殺人及び放火の犯行に向けたものであることを理解していたこと、その後、犯行当日明け方までの仕事の後、被告人と共犯者が行動を共にし、わざわざ現場から離れた場所に車を停めて被害者の様子を事前に確認するなどした上で、上記メッセージのとおり犯行に及んだこと いたこと、その後、犯行当日明け方までの仕事の後、被告人と共犯者が行動を共にし、わざわざ現場から離れた場所に車を停めて被害者の様子を事前に確認するなどした上で、上記メッセージのとおり犯行に及んだこと、被告人は共犯者から何か武器を持ってくるように言われ、すぐに殺傷能力のあるバールを選んで現場に持ち込み、話しかけて被害者に隙を作ると言っていた共犯者が、実際に被害者に話しかけるや、共犯者の指示を待たずに被害者の背後でバールを構え、共犯者の目配せで被害者に最初の一撃を加え、その後短時間で殺人及び現住建造物等放火の犯行に及んだこと、当初の計画どおり架空請求をしていることなどからすれば、被告人と共犯者との間では、事前に犯行の具体的な流れが共有されていたことは明らかであり、計画性が相当に低いなどとはいえない。 - 3 -殺人、現住建造物等放火の犯行態様は、共犯者が被害者の趣味の話をして隙を作り、無防備な状態にある被害者の背後から、被告人が、長さが約74.7センチメートルの金属製で重量が約1.15キログラムもあるバールを用いて、被害者の首の辺りを狙って3回殴り、気絶して倒れ込んだところを、さらに、共犯者が、同バールを用いて被害者の頭を複数回殴った上、事務所兼作業場に放火し、被害者が頭部から出血して意識を失った状態にあることを認識しながら同所出入口に鍵をかけて現場から立ち去り、被害者を焼死させたというものである。犯行は、強固で確定的な殺意に基づいた、危険かつ残忍なものである。被害者は、仕事仲間からこのような被害に遭わされるなどとは予想もできなかったはずであり、このような無残な最期を迎えざるを得なかった無念さは到底察することができない。殺人及び放火の被害結果は、誠に重大である。遺族らは、大切な家族を突然失ったばかりか、遺体の損傷が激しかった はずであり、このような無残な最期を迎えざるを得なかった無念さは到底察することができない。殺人及び放火の被害結果は、誠に重大である。遺族らは、大切な家族を突然失ったばかりか、遺体の損傷が激しかったことから対面して別れを告げることも叶わなかったのであり、その悲しみは計り知れず、処罰感情が強いのは当然である。被告人の被害者に対する不信感や不満は、他人に暴力を加える理由にすらならないものである上、被告人は、話合いや他の穏当な手段で不信感や不満を解消しようとする行動にも出ず、短絡的に共犯者に流され、結局は利欲的な動機から本件各犯行に及んだのであり、動機及び経緯に酌量すべき点は全くない。さらに、被告人と共犯者は、犯行直後に仕事仲間からの連絡により現場に戻ることになったが、その前に衣服を買って着替えたり、捜査機関からの事情聴取前に共犯者とのLINEメッセージを削除したり、口裏合わせをしたりし、被告人は当時の妻に犯行時に履いていた靴の処分をさせてもいるのであって、犯行後の事情も悪質である。本件犯行は、共犯者が首謀・主導したものであり、被告人が積極的に犯行を遂行したものではないものの、被告人は、凶器となるバールを選定して持ち込み、被害者を最初にバールで殴り気絶させるという行為に及んでいるのであり、被告人は不可欠で重要な役割を果たしたというべきである。 現住建造物等放火については、事務所兼作業場内には木材や紙類等の可燃物が多 - 4 -数置かれていた上、隣接した建物もあったことからすれば、犯行の危険性は明らかであり、周囲は空き地や駐車場であり延焼可能性は低いなどという弁護人の主張は採用できない。詐欺未遂についても、水増しした出面表を事前に作成するなど、被告人は必要な役割を担っている。 以上の犯情からすれば、被告人の刑事責任は極めて重大で 能性は低いなどという弁護人の主張は採用できない。詐欺未遂についても、水増しした出面表を事前に作成するなど、被告人は必要な役割を担っている。 以上の犯情からすれば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、相当長期の懲役刑に処することが必要である。 その上で、前科がない被告人が公訴事実を認め、反省の弁を述べていること、被告人の叔母が出廷し更生に協力する旨述べていることなどの事情も検討し、被告人を主文に掲げたとおりの刑に処することが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役24年)令和6年11月7日さいたま地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官金子大作 裁判官深澤純子 裁判官山本奈央
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