【DRY-RUN】主 文 検察官及び被告人A1、同A2の本件各控訴を棄却する。 原判決中被告人A3、同A4、同A5、同A6、同A7に対する部分を 破棄する。 被告人A3を懲役二年に、
主文検察官及び被告人A1、同A2の本件各控訴を棄却する。 原判決中被告人A3、同A4、同A5、同A6、同A7に対する部分を破棄する。 被告人A3を懲役二年に、被告人A4、同A5、同A6、同A7を各懲役一年に処する。 原審における未決勾留日数中被告人A3、同A4、同A5に対してはいずれも百三十日を、被告人A6、同A7に対してはいずれも百日を、右各本刑に算入する。 被告人A3、同A4、同A5、同A6、同A7に対し、いずれもこの裁判確定の日から五年間右各刑の執行を猶予する。 (訴訟費用の負担省略) 理由本件各控訴の趣意は、東京高等検察庁検事吉岡述直提出の東京地方検察庁検事正代理検事田中万一作成名義、被告人A3、同A4、同A5、同A1、同A6、同A7、同A2の弁護人福田力之助、同守屋典郎、同青柳盛雄、同柴田睦夫共同作成名義の第一、第二、右弁護人青柳盛雄、同福田力之助、同守屋典郎共同作成名義、被告人A3、同A4、同A5、同A1、同A6、同A7、同A2各作成名義の各控訴趣意書記載のとおりであつて、右検察官の控訴趣意に対する答弁は、被告人A8作成名義の抗弁書と題する書面、及び被告人A9作成名義の昭和三十年十月十五日附、同年同月十八日附各控訴趣意書に対する被告人抗弁書と題する二通の書面にそれぞれ記載してあるとおりであるから、これらをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。 検察官の控訴趣意について。 被告人A10、同A8、同A9の三名に対する本件各公訴事実の要旨は、被告人らは、いずれも昭和二十七年五月三十日午後七時十分ごろ、東京都板橋区ab丁目c番地B1株式会社寮庭に開かれた破防法粉砕けつき大会と称する会合に約三百名と共に参加し、右大会において、「 要旨は、被告人らは、いずれも昭和二十七年五月三十日午後七時十分ごろ、東京都板橋区ab丁目c番地B1株式会社寮庭に開かれた破防法粉砕けつき大会と称する会合に約三百名と共に参加し、右大会において、「警官の武装解除」その他のスローガンを決議した後、同日午後七時三十分ごろ、一部指導者の「行動に移れ」という号令に従つて、同所から無許可集団示威行進に移り、手に手に薪棒、石、ナツト等を所持し、スクラムを組み、労働歌を唱つて行進し、同日午後七時四十分ごろ、同区a十丁目四十一番地板橋警察署岩之坂上巡査派出所前に至つた。その際、被告人らは、他の参加者と共謀の上、そのころから同日午後八時十分ごろまでの間にわたり、同派出所前に一列横隊に整列し同所を警備していた板橋警察署勤務巡査部長C1ら十一名の警察職員に対し、包囲態勢を執つて多衆の威力を示し、かつ口々に、「今度こそはきさまらをやつつけるぞ。」「D1の犬め。」「殺してやるぞ。」「武装を解除しろ。」「武器を捨てろ。」等と怒号して、前記警察職員の身体に危害を加える如き気勢を示して脅迫した上、更に、同人らに石、薪棒、硫酸ビン等を投げつけて、前記C1部長らの右公務の執行を妨害し、かつ、右暴行に因り、同人らに対し全治一週間ないし十日間を要する頭部挫創等の傷害を負わしめたものである。というにあるところ、原判決が、これを認めるに足る犯罪の証明が十分でないとして、刑事訴訟法第三百三十六条に則り、いずれも無罪の言渡をしていることは、所論のとおりである。しかるに、所論は、右各公訴事実は、原裁判所で取り調べた証拠によつていずれもその証明が十分であるから、原判決は、事実を誤認したものであつて、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨主張するにより、審究するに、原審で取り調べた関係証拠を総合するときは、右被告人三名に対する各 が十分であるから、原判決は、事実を誤認したものであつて、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨主張するにより、審究するに、原審で取り調べた関係証拠を総合するときは、右被告人三名に対する各公訴事実中、同被告人らが、いずれも昭和二十七年五月三十日午後七時十分ごろ、東京都板橋区ab丁目c番地所在B1株式会社寮庭において開催された破防法粉砕総けつき大会と称する会合に約三百名と共に参加したこと、同大会において、「警察官の武装解除」その他のスローガンを掲げた宣言文が朗読されたこと、右大会終了後、一部指導者の「これより直ちに行動に移る。」旨の指示号令により、四列縦隊の隊形をもつて、スクラムを組み、労働歌をうたいながら、同所から同区a十丁目四十一番地所在板橋警察署岩之坂上巡査派出所方面に向つて無許可集団示威行進を開始し、(以下この集団をデモ隊と称する。)ある者は、会場出口附近において、あらかじめ用意された薪棒の交付を受けてこれを携え、ある者は、途中路上の石を拾つて所持し、ある者は、既に鉄棒様の物を準備携行するなど、それぞれ武器を携えて同日午後七時四十分ごろ、前記岩之坂上巡査派出所前にさしかかつたこと、その際、右のような不穏な状勢から、同巡査派出所がこれらデモ隊員らによつて襲撃される危険を感じ、板橋警察署から、右派出所警備の任務を帯びて派遣され、同派出所前に一列横隊に並んで警備していた巡査部長C1外十名の警察官に対し、右デモ隊員らが、包囲隊形をとりつつ、デモ隊員中の多数の者らが、「武器を棄てろ。」「D1の犬め。」「税金泥棒。」「こんどこそやつつけるぞ。」などと口々に怒号し、同時に右警察官及び派出所に向つて、石塊、薪棒、硫酸ビン等を投げつけて、前示C1巡査部長ら十一名の警察官の公務の執行を妨害し、かつ、その暴行により、同人らに対し、全治一週間 。」などと口々に怒号し、同時に右警察官及び派出所に向つて、石塊、薪棒、硫酸ビン等を投げつけて、前示C1巡査部長ら十一名の警察官の公務の執行を妨害し、かつ、その暴行により、同人らに対し、全治一週間ないし十日を要する傷害を与えた事実は、これを肯認することができるのであるが、その際、前示被告人三名が、果して右デモ隊員ら多数<要旨>の暴行脅迫者と共謀してこれに加担したものであるかどうかの点について考察するに、本件においては、あら</要旨>かじめ事前において、その首謀者ないし暴行脅迫者らの間に、前掲岩之坂上巡査派出所襲撃についてのいわゆる共同謀議が行われたと認むべき証拠は、記録上みあたらないところであつて、従つて、起訴状記載の公訴事実においても、デモ隊が右派出所前に到達した際において、始めて、暴行脅迫者ら間に共謀が行われたことになつているのであるが、デモ隊が右派出所前に到達した当時においては、いわゆる共同謀議をやつている余裕もなかつたような情勢にあつたことが記録上うかがわれるのであるから、被告人らが右派出所前における共謀に加つたと認められるためには、同人らが、ただ、右デモ行進に参加して派出所前に行き、前示暴行脅迫の行われた際その場におつたというだけでは足りないのであつて、必ずや、右派出所前における同被告人らの個別的、具体的行動中に、他の暴行脅迫者らと互に相呼応し相協力して、警備警察官の公務の執行を妨害する意図の下に、同警察官に対し暴行脅迫を加えようとする意思の発現を認めるに足るものがなければならぬものといわなければならない。このような見地に立つて、左に右各被告人毎に所論の主張について検討する。 一、被告人A8について。 所論の主張する同被告人がE1E2作業所の元工員で、本件の直前、同作業所を懲戒免職となつたものであること、同被告人が、昭和 に右各被告人毎に所論の主張について検討する。 一、被告人A8について。 所論の主張する同被告人がE1E2作業所の元工員で、本件の直前、同作業所を懲戒免職となつたものであること、同被告人が、昭和二十七年五月三十日午後七時十分ごろ、前掲破防法粉砕総けつき大会に出席した際、その演壇に立ち、「愛労のF1、F2を倒せ。」という趣旨の演説をした事実は、いずれも所論列挙の証拠によつてこれを認め得られない訳ではないが、このような事実があつたからとて、これをもつて、直ちに派出所前における共謀に加担した証拠とすることはできない。 次に、同被告人が、右派出所前において、前示暴行脅迫の行われた際、薪を持つたままデモ隊中におり、警察官が拳銃を発射した後、始めて同所から逃走し、B2小学校附近まで逃げたところで右薪を棄てたものであるとの所論主張の事実もまた、所論の挙示する証拠によつて認め得られるところであつて、所論は、本件集会及びデモ行進が無届のものであり、同被告人が新聞記事によつて、当日五、三〇紀念日のため、警察も警戒態勢に入つていたことは知つており、前掲大会中「人民広場では警官隊がバリケードをきづいている。」という情報を聞き、デモ行進が途中で警官隊から弾圧された時に、警官に殴られるような事態が起れば、これに反抗するため使用する意図の下に、デモ行進に移つた直後、他人より薪をもらい受け、これを携行していたものであるから、仮りに、被告人において、初めから積極的に警備警察官を襲撃する意図はなかつたとしても、少くとも、デモ行進中、警察官から無届行進の廉により解散を命ぜられ、これに反抗するデモ隊と警察官との間に衝突が起きた場合には、同被告人自身薪を揮つて警察官に立ち向い、その公務の執行を妨害しようとする意図の下に行動していたことを推認し得べく、しかも、現に同被告人は、 れに反抗するデモ隊と警察官との間に衝突が起きた場合には、同被告人自身薪を揮つて警察官に立ち向い、その公務の執行を妨害しようとする意図の下に行動していたことを推認し得べく、しかも、現に同被告人は、派出所前で、他の共犯者らが警察官に向い、「武装を解け。」と脅迫したり、投石しているのを聞いたり見たりしておりながら、敢えて積極的に仲間の犯行を阻止したり、あるいは、消極的に薪を棄て、またはその場から逃げ出すようなことをしなかつたばかりか、かえつて、反対に薪を持つたまま現場にい残り、大衆の威力を示して、他の者と共に警察官を脅迫していた程であるから、これらの事実からするも、同被告人に対しては、A3らに加勢して、警察官の公務の執行を妨害しようとする意図のあつたことを十分に認めることができるのであつて、このことは、被告人A9、同A10についても同様であり、同人らは、竹の棒又は石を持つてデモ隊に参加し、派出所前に行つて、警官隊から発砲されるまでその場にい残つて、他のデモ隊員と意思を通じ、大衆の威力を示して警官隊を脅迫していたのであるから、A3らの所為につき公務執行妨害、傷害罪の成立が認め得られる以上、被告人A8、同A9、同A10についても、同罪の成立を認め得るものといわなければならない旨主張するのであるが、なるほど、前示B1株式会社寮庭に開かれた集会、及びこれに引続き行われた集団示威行進が無届のものであつて、被告人A8(被告人A9、同A10も同様)らか、当日五、三〇紀念日のため、警察においても警戒態勢に入つていたことを知つており、デモ行進に移つた直後、他人より薪をもらい受け、デモ行進中警察官から無届行進の廉により解散を命ぜられ、デモ隊と警察官との間に衝突が起きた場合に、これを揮つてその警察官に立ち向い、その公務の執行を妨害しようとする意図の下に右薪を携 をもらい受け、デモ行進中警察官から無届行進の廉により解散を命ぜられ、デモ隊と警察官との間に衝突が起きた場合に、これを揮つてその警察官に立ち向い、その公務の執行を妨害しようとする意図の下に右薪を携帯していたものであることは、記録上これをうかがい得られない訳ではないけれども、原判決挙示の証拠に徴するときは、本件暴行脅迫が開示されたときの情況は、全く右とことなり、警察官側においては、デモ行進に対し、無届行進の廉により解散を命じたこともなく、いささかも干渉がましい言動に出なかつたにもかかわらず、突如として、デモ隊員らによつて包囲隊形がとられ、デモ隊員中の多数の者から暴行脅迫が行われるに至つたものであることが認め得られるのであるから、たとえ、被告人A8が他人より薪棒をもらい受けて携えていた意図が、右所論のとおりであつたとしても、その予期した場合と異る事態が発生したものであるから、単に、所論のような同人が右暴行脅迫の行われた当時、薪を携帯したままその場にいて、積極的に他人の犯行を阻止したり、消極的に薪を棄ててその場から逃げ出すようなことをしなかつたとの一事によつて、同被告人が他の暴行脅迫者らと互に相呼応し相協力して、デモ隊に対しなんらの干渉もしなかつた警備警察官の公務の執行を妨害する意図の下に同警察官に対し暴行脅迫を加えようとする意思の発現があつたものと認めることは、いささか無理であるといわなければならない。ところが所論は、この点の証拠として、特に、証人G1の原審公廷における証言及び同人の検察官に対する供述調書を援用し、これによれば、被告人A8が特に顕著に暴行脅迫の実行者の一人であるか、少くとも、他の暴行脅迫者と意思を通じ、相協力して行動した者であることが情況上明らかである旨主張するのであるが、なるほど、右G1の検察官に対する供述調書中所論の援 著に暴行脅迫の実行者の一人であるか、少くとも、他の暴行脅迫者と意思を通じ、相協力して行動した者であることが情況上明らかである旨主張するのであるが、なるほど、右G1の検察官に対する供述調書中所論の援用する部分の供述記載によれば、同被告人の派出所前における行動に多分の疑惑の存することは、否定できないけれども、しかし、これによつてもなお、右派出所前における同被告人の個別的、具体的行動を十分明らかにし得ないのであるから、同被告人が右派出所前において他の暴行脅迫者らと共謀してこれに加担したとの本件公訴事実については、結局、これを確認すべき犯罪の証明がないことに帰するものといわなければならない。 二、被告人A10について。 所論の主張する同被告人が、昭和二十七年五月三十日当時顔面に絆創膏を貼り、友人H1と共に、上野駅前で、被告人A9及びI高校生らと落ち合い、共に前示集会並びにデモ行進に参加するため、B3の会場に至り、これら行事に参加した事実、被告人A10が、上野駅前に落ち合つた際、既に、警察官と衝突することのあるべきを予想し、その所持品を同駅附近の知人方に預け、かつ、救護用として指頭消毒器等を携帯した事実、デモ隊が集団行進を開始した際、同被告人が武装しろという声を聞くと共に、皆が薪を手にしているのを見て、同被告人も行進中周囲の者に対し、「石を拾つてくれ。」と依頼し、G2が二、三個の石を路上から拾つて渡したところ、同被告人がこれを携えて前示派出所前に至つた事実、並びに同被告人が、派出所前における暴行脅迫等の終了した後、J1薬局で、脱脂綿を買い求め、かつ、負傷者の手当看護をした事実等は、いずれも所論の挙げている証拠によつてこれを肯認することができるけれども、これらの事実のみによつては、直ちに前記派出所前における同被告人の共謀の点までをも推認する つ、負傷者の手当看護をした事実等は、いずれも所論の挙げている証拠によつてこれを肯認することができるけれども、これらの事実のみによつては、直ちに前記派出所前における同被告人の共謀の点までをも推認することはできないものといわなければならない。所論は、同被告人が、右派出所前において、他の集団的暴行脅迫を敢行したデモ隊員らと協同して暴行脅迫行為をなした事実の証拠として、G2の検察官に対する昭和二十七年六月十七日附、同年七月二十三日附各供述調書、証人G2の原審公廷における証言等を援用しているのであつて、これらの証拠によると、同被告人が、派出所前において、他のデモ隊員らと共に、「税金泥棒」等の悪口雑言を警察官らに浴せていたような疑が存するのであるし、また、所論は、前示のような同被告人が上野駅前集合時において、既に、警察官との衝突を予期して、所持品を預け、救護用具を用意して来たこと、行進途中において石塊を携行したこと、暴行終了後、J1薬局内において、負傷者の手当看護をしたこと等の諸事実を総合すれば、同被告人にも、前示派出所前における共謀に加担した事実が認められる旨主張するのであるが、しかし、同被告人においても、本件デモ行進が無届のものであることを知つていたため、警察官から解散を命ぜられるような場合があるかも知れぬと考え、所持品を他に預けたり、行進の途中で石塊を拾うような行動に出たものと認め得られる点については、前述の被告人A8の場合と同様であることが、記録上窺われるのであつて、従つて、被告人A10が、右石塊を持つたまま、右派出所前で暴行脅迫の行われた当時その場にいただけの事実によつては、未だ、共謀の事実を認定しがたいこともまた、前示被告人A8の場合と同様であるし、J1薬局方において負傷者の手当看護をした点についても、デモ行進の仲間のうちに負傷者が の場にいただけの事実によつては、未だ、共謀の事実を認定しがたいこともまた、前示被告人A8の場合と同様であるし、J1薬局方において負傷者の手当看護をした点についても、デモ行進の仲間のうちに負傷者が出たような場合に、仲間の一人として、これが手当看護をしてやることは、当然であると考えられるのであるから、これあるがために、暴行脅迫についても当然共謀があつたものと速断することはできないものというべく、従つて共謀の点については、結局、右派出所前における同被告人の個別的、具体的行動によりこれを認定するの外はないと考えられるところ、単に、前示のような同被告人が石塊を携行して派出所前に行き、警備警察官らに対し、「税金泥棒。」等の悪口を口走つたことの疑のみによつて、同被告人が他の集団暴行脅迫者らと互に相呼応し、相協力して警備警察官の公務の執行を妨害する意図の下に同警察官らに対し暴行脅迫を加えようとする意思の発現があつたものと認定することは、困難であるといわなければならない。してみれば、同被告人が他の暴行脅迫者らと共謀してこれに加担した旨の本件公訴事実については、結局、これを確認するに足りる犯罪の証明が十分でないといわなければならない。 三、被告人A9について。 所論の主張する同被告人が、K1青年団K2班に所属し、一時同班のキヤツプをしたことがあつたが、同人が、昭和二十七年五月三十日、上野駅前で、同じK1青のH2やH1らと落ち合つた際、警察官との衝突を予期し、いずれも所持品を他に預けた上、前記集会並びにデモ行進に参加した事実、次いで、同被告人が前示デモ隊に加わり、B1寮庭の会場から出発した際、路傍の竹の捧を抜いて携帯し、岩之坂上巡査派出所前に行き、同所において、デモ隊員中の多数の者が、同派出所警備の警察官に対して暴行脅迫の挙に出た際、その場にいた事実 わり、B1寮庭の会場から出発した際、路傍の竹の捧を抜いて携帯し、岩之坂上巡査派出所前に行き、同所において、デモ隊員中の多数の者が、同派出所警備の警察官に対して暴行脅迫の挙に出た際、その場にいた事実は、いずれも所論の挙示する証拠によつてこれを認めるに十分であるけれども、単に、これだけの事実によつては、未だ同被告人が右派出所前において、他の暴行脅迫者らと共謀して前示暴行脅迫に加担したものと認めがたいことは、既に被告人A8、同A10について説示したところと同様であつて、他に右共謀の点を確認するに足りる証拠は、記録上これを発見することができないのであるから、被告人A9に対する本件公訴事実もまた、結局これを認めるに足りる犯罪の証明がないものといわなければならない。 以上の次第であつて、被告人A8、同A10、同A9に対する本件各公訴事実は、原審で取り調べた証拠によつては、いずれもこれを確認することができないのであるから、原判決が、これを認めるに足りる犯罪の証明が十分でないとの理由により、同被告人ら三名に対し無罪の言渡をしたことは、相当であつて、記録を精査し、当審における事実取調の結果をも総合して、検討考察してみても、原審の認定を覆すに足りるものを発見することができないから、検察官の論旨はすべてその理由がない。 (その余の判決理由は省略する。)(裁判長判事中西要一判事山田要治判事石井謹吾)
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