主文 1 被告は、原告Aに対し、20万円及びこれに対する平成14年8月27日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を、原告Bに対し5万円を、それぞれ支払え。 2 原告A及び原告Bのその余の請求並びに原告Cの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告Aに生じた費用の10分の9と被告に生じた費用の5分の3を原告Aの負担とし、原告Bに生じた費用の10分の9と被告に生じた費用の30分の7を原告Bの負担とし、原告Cに生じた費用の全部と被告に生じた費用の10分の1を原告Cの負担とし、その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、200万円及びこれに対する平成14年8月27日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Cに対し、30万円及びこれに対する平成14年8月27日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Bに対し、78万3235円及び内金48万3235円に対する平成14年8月27日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告が設置する高等学校の生徒であった原告Aが、同学校の教諭から暴行を受け負傷したことにより、原告らが精神的苦痛を受け、治療費、転校費用及び弁護士費用の支出を余儀なくされたと主張して、原告らが、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償及びこれ(弁護士費用を除く。)に対する民法所定の遅延損害金(起算点は不法行為の日以後の日である平成14年8月27日)を請求した事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。 以下、月日は平成13年のものである。)(1) 原告Aは、4月から、10月10日付け(弁論の全趣旨)で転校するまでの間、被告が設置するD いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。 以下、月日は平成13年のものである。)(1) 原告Aは、4月から、10月10日付け(弁論の全趣旨)で転校するまでの間、被告が設置するD高等学校(以下「本校」という。)の1年5組の生徒として在籍していた。 原告B及び同原告Cは、原告Aの両親である。 (2) 原告Aは、6月27日の第2校時が終了するころに遅刻して登校し、同じころに登校してきた同じクラスの女子生徒1名(以下「S」という。)とともに、職員室に遅刻届を提出してから、4階の1年5組の教室へ向かった(乙4の1・2、原告A本人)。 原告AとSは、教室にカバンを置いてから、体育館で第3校時に開かれる学年集会に出席するため、再び廊下に出たが、体育館に向かう前に用を足すべく、同日午前10時55分ころ(第2・第3校時の間の休憩時間終了前か後かには争いがある。)、2人でトイレに向かった(原告A本人)。 本校の音楽科教諭であるEは、その時、本校4階の男子トイレから音楽準備室へ戻るため廊下に出てきたところ、原告Aが、Sと並んだ状態で廊下をトイレの方へ歩いてくるのを認めた。 Eは、トイレに向かって歩いてくる原告A及びSに対し、「どうした」と声をかけたが、原告Aらは何ら返答をせず、Eの前を通り過ぎた(乙2、証人E、原告A本人)。 2 争点(1) Eが原告Aに対し暴行を加えたという不法行為が認められるか否か。 ア原告らの主張原告Aは、前提事実(2)の直後に、Eから突然後頭部を平手で強打された。 これは、Eの勤務中の不法行為であり、被告に損害賠償責任がある。 イ被告の主張Eは、前提事実(2)のような形で原告Aらを認めた際、既に休憩時間が終了しており、第3校時に行われていた1年生の学年集会に、原告Aらが既に遅れていることが明らかであっ 責任がある。 イ被告の主張Eは、前提事実(2)のような形で原告Aらを認めた際、既に休憩時間が終了しており、第3校時に行われていた1年生の学年集会に、原告Aらが既に遅れていることが明らかであったため、この点につき生活指導を行う必要を感じた。そこで、原告Aらに対し「どうした。」と声をかけたところ、原告Aらはこれを無視してEが立っている前を通り過ぎようとした。Eは、この点についても指導を要するものと考え、トイレから廊下の中心方向へ一歩踏み出した。しかし、原告Aらは、Eの直前を通りかかりながらもなお呼びかけに応答せず、原告Aの表情も素直さが窺われない険しいものであった。そのため、Eは思わず右手を自己の頭くらいの高さまで垂直に振り上げた後、自己のあごくらいの高さに位置した原告Aの頭頂部を軽く一打ちしながら、「声をかけられたら返事をしなさい」と指導した。 Eの行為は上記の程度のものであって、不法行為には該当しない。また、Eの行為は生活指導であって、その目的に照らしても、暴力や不法行為とまで評価されるべきものではない。 (2) 仮に上記(1)で不法行為が認められる場合、原告らの主張する損害が認められるか否か。 ア原告らの主張(ア) 原告Aは、Eの上記行為によって頸椎捻挫の傷害を受け、7月2日にあいの里整形外科で約7日間の通院を要するとの診断を受けた。 その後、7月4日、同月6日及び8月4日に同整形外科に通院し治療を受けたほか、8月10日に禎心会病院に、8月24日、同月28日、9月25日及び11月8日には手稲渓仁会病院にそれぞれ通院して治療を受けた。また、この間、頸椎捻挫の対応治療として、レディス整體クリニックで12日間(初診日7月6日、最終受診日10月6日)治療を受けた。 加えて、原告Aは、Eから暴力を受け負傷したことによる精神的衝撃が 。また、この間、頸椎捻挫の対応治療として、レディス整體クリニックで12日間(初診日7月6日、最終受診日10月6日)治療を受けた。 加えて、原告Aは、Eから暴力を受け負傷したことによる精神的衝撃が気持ちの上で大きな負担となり、本校に通学することができず悩むなど精神に異常をきたした。そのため、8月24日に手稲渓仁会病院で不安状態により約1か月間の通院治療を要するとの診断を受け、以後はその治療も受けた。 以上によって原告Aに生じた精神的苦痛に対する慰謝料としては、200万円が相当である。 (イ) 原告B及び同Cは、Eが勤務する本校へ原告Aを通学させることが困難であると考え、別の高校へ転校させざるを得なかった。また、原告Aが精神的に立ち直るため細心の気を配ったが、その間の心痛は大きなものであった。その精神的苦痛に対する慰謝料としては、各30万円が相当である。 また、原告Bは、原告Aの治療費及び通院費等として13万3235円を、原告Aが転校したことによる入学金として5万円を、それぞれ支出した。そのほか、本件訴訟を原告ら代理人に依頼するに際し、弁護士費用として30万円を支払う約束をしている。 イ被告の主張Eの行為によって、原告らが主張するような傷害が原告Aに発生したとは考えられない。また、原告ら主張の損害額も争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) Eが原告Aの頭部を平手で一打ちしたことは、その強度や態様はともかく、争いがない。そこで、Eの上記行為(以下「本件行為」という。)の態様が、原告らが主張するような強度のものであったか否かについて検討する。 (2) 本件行為の後、原告Aは学年集会に出席し、その終了後である正午ころ、保健室で診察を受けた(乙5の11、原告A本人)。その際に作成された「保健室からの連絡」と題する記録 否かについて検討する。 (2) 本件行為の後、原告Aは学年集会に出席し、その終了後である正午ころ、保健室で診察を受けた(乙5の11、原告A本人)。その際に作成された「保健室からの連絡」と題する記録(乙5の11)には、原告Aの愁訴として「音楽の人に頭をなぐられた」「1時間前」「あたまいたい」「はれてる」「ぐらぐらする」という原告Aの筆跡による記載があることが認められるほか、「はれてる」の記載部分から矢印で指し示されたところに、原告Aとは明らかに異なる筆跡によって「後頭部」と記載されている(乙5の11)。この点に照らすと、原告Aが保健室を利用した際、養護教諭が自ら原告Aの頭部を視診し、後頭部が腫れていることを確認したと認めることができる。また、原告Aはこの際アイスノンの貸与を受けて患部を冷却しており(乙5の11、原告A本人)、養護教諭が原告Aの患部の冷却を要するものと判断したことが認められる。そうすると、本件行為とは別の要因によって原告Aが後頭部を負傷したことを窺わせる事情は何ら認められない以上、上記の負傷は、Eの本件行為に起因するものと認めるほかない。 以上によれば、Eの本件行為は、原告Aの後頭部を平手で叩いたという態様であり、その強さも、冷却を要する腫れを生じさせるほどのものであったと認めるのが相当である。 これに対し、証人Eの証言中には、原告Aの頭頂部へ平手を垂直に下ろすような形で叩いたが、けがを負わせるほどの強さではなかった旨の供述部分もあるが、上記認定のとおり、原告Aには本件行為によって後頭部に腫れが生じていることに照らし、上記供述部分は採用することができない。 (3) 被告は、Eが本件行為に及んだのは、原告Aに対する生活指導の目的によると主張する。Eも、自身が原告A及びSの2人に対して「どうした」と声をかけたにもかかわらず、 分は採用することができない。 (3) 被告は、Eが本件行為に及んだのは、原告Aに対する生活指導の目的によると主張する。Eも、自身が原告A及びSの2人に対して「どうした」と声をかけたにもかかわらず、原告Aらがこれに返答することなく、Eの前を通り過ぎようとしたことから、教諭として指導の必要性を感じ、思わず原告Aの頭部を叩いた旨証言する。 ところで、学校内で、教諭から声をかけられながらこれを無視するという行動は、生徒の態度として問題があるというべきであり、教諭としては、たとえ自らがクラス担任として指導する生徒ではないとしても、そのような生徒に対して指導の必要を認めるのは何ら不合理なことではない。Eが本件行為に及んだことについて、他の動機を何ら窺うことができない以上、その目的は原告Aに対し指導をすることにあったと認めるのが相当である。 (4) 学校教育法11条は、教員に対し、教育上の必要に応じて、生徒に対し懲戒をすることを認める一方で、体罰についてはこれを禁止しているところ、本件行為は、上記(2)のとおり、原告Aの後頭部に腫れを生じさせるほどの生徒の身体に対する有形力の行使であるから、体罰に該当することは明らかである。本件行為が、上記(3)のとおり、Eの言葉に返答をしなかった原告Aに対する指導の目的で行われたことを考慮しても、その指導方法としては、例えば肩に手をかけたり、進路を塞いだりして原告Aらを停止させるなど、他に適切な方法は考えられ、現に可能だったのであって、本件行為をいきなり行わなければならないような状況にあったとはいえず、本件行為に及ぶ合理的な理由は何ら認められない。したがって、Eの本件行為は、懲戒として許容される範囲を超えた体罰と言わざるを得ず、不法行為との評価を免れない。 (5) Eは、本校教諭としての職務を行う際に本件行為に及 的な理由は何ら認められない。したがって、Eの本件行為は、懲戒として許容される範囲を超えた体罰と言わざるを得ず、不法行為との評価を免れない。 (5) Eは、本校教諭としての職務を行う際に本件行為に及んだのであるから、国家賠償法1条に基づき、被告には本件行為による損害を賠償する責任があるというべきである。 2 争点(2)について(1) 前記第2の1の前提事実及び後掲の各証拠によれば、以下の事実を認めることができる。 ア原告Aは、本件行為の後、体育館で行われていた1年生の学年集会に参加したほか、5時間目の体育には出席して見学し、6時間目にはEが担当する音楽の授業にも出席し、午後5時ころに帰宅したが、病院で受診することはなかった(乙2、証人E、原告A本人)。 イ本件行為の翌日である6月28日は、翌日から行われる宿泊研修の準備のため、原告Aら1年生の授業は午前中で終了したが、原告Aはこの日も病院で受診することはなかった(乙2、原告A本人)。 ウ本件行為の翌々日である6月29日から、本校1年生の宿泊研修が2泊3日の日程で実施され、原告Aはこれに参加したが、負傷に対処するための薬品等は持参しなかった。また、宿泊研修2日目の夜に貧血を起こし、担任教諭に自室まで運んでもらい、足を高くして寝るという措置を受けたが、それ以外に治療等は受けなかった(原告A本人)。 エ原告Aが宿泊研修から帰宅した7月1日の夕方、Eは本件行為について説明をすべく原告B宅を訪問した。その際、原告Cから、6月27日の時点で、原告Aの後頭部はぶよぶよに腫れ、ちょっと触るだけで飛び上がるほど痛かったこと、当時は内出血もあったであろうが現在は引いているなど、原告Aの症状について伝えられた(乙2、証人E、原告A本人)。 オ原告Aは、本件行為の5日後の7月2日、初めてあいの里整形外科 ほど痛かったこと、当時は内出血もあったであろうが現在は引いているなど、原告Aの症状について伝えられた(乙2、証人E、原告A本人)。 オ原告Aは、本件行為の5日後の7月2日、初めてあいの里整形外科で受診した。この際、原告Aは、叩かれた後頭部の腫れと痛みのほか、嘔吐、頭痛、頸部の痛みを訴え、頸椎捻挫で7日間の通院治療を要すると診断された(甲1、4の1・2)。 カ原告Aは、8月24日には手稲渓仁会病院で、頸椎捻挫により約4週間の加療を要するとの診断とともに、不安状態により今後約1か月の通院治療を要するとの診断を受けた(甲2の1・2)。 (2) 以上を前提に、本件行為による原告Aの負傷の程度について検討する。 ア前記1で説示したとおり、原告Aが本件行為によって後頭部に冷却を要する程度の腫れを生じた事実は認められる。しかし、本件行為当日の昼休みに保健室を利用した際に、養護教諭が病院受診を勧めたような形跡は何ら窺われず、アイスノンで冷却するという処置で足りると判断し、その処置をしたに過ぎないし、原告Aも、それ以上の処置を求めたという形跡はなく、その後の授業にも参加しているのである。実際、原告Aが本件行為後初めて病院で診察を受けたのは、本件行為から5日後であり、その間、機会がありながら病院で受診していないし、家庭内で手当てをしたと認めるに足りる証拠もない。 原告A本人は、病院で受診しなかった理由について、旅行があったので病院に行きたくなかったとか、我慢していたからなどと供述するが、受診を要する症状があって、これを早期に治して宿泊研修に参加したいのであれば、速やかに治療を受けようと考えるのが通常であるから、原告A本人の供述によって、病院で受診しなかったことについての合理的な説明がされているとは言い難い。 加えて、原告Aは、本件行為から病院 れば、速やかに治療を受けようと考えるのが通常であるから、原告A本人の供述によって、病院で受診しなかったことについての合理的な説明がされているとは言い難い。 加えて、原告Aは、本件行為から病院受診までの間に、2泊3日の宿泊研修にも参加しており、その間も、本件行為による異常を訴えたり、負傷部位の痛みに対処する措置を受けているわけでもない。他方、貧血の症状に対する措置は受けているのである。 以上のとおり、本件行為当日である6月27日から7月1日までの原告Aの行動に照らす限り、本件行為による負傷の程度は、病院への受診を必要とするほどのものであったとは認め難い。 イ原告Aは、7月2日に、あいの里整形外科で、頸椎捻挫により7日間の通院治療を要すると診断され、8月24日には、手稲渓仁会病院で、同じく頸椎捻挫により約4週間の加療を要すると診断されているが、甲4号証の1及び2、甲5号証の1によっても、これらの診断が、何らかの他覚的所見を伴うものであるとは認め難く、専ら原告A本人の愁訴に沿った診断であるといわざるをえない。 しかも、原告Aが頸部の痛みを訴えたのは、7月2日のあいの里整形外科受診時が初めてであり、それに先だつ宿泊研修を含めた相当期間中に、頸部の痛みなどを訴えた形跡は認められない。7月1日の原告らとEとの面談でも、原告Cは後頭部の腫れについて述べたのみで、頸部の痛みに言及したとは認められない。原告A本人も、後頭部の腫れについては明確に供述する一方で、頸部の痛みについては、その発現の時期について明確ではなく、本件行為当日の夜だったと思うという曖昧な供述をするにとどまっている。 したがって、7月2日になって初めて現れた頸部の痛みという原告Aの愁訴は、それ自体疑わしいものといわざるを得ない。 ウまた、原告Aは、8月24日に手稲渓 という曖昧な供述をするにとどまっている。 したがって、7月2日になって初めて現れた頸部の痛みという原告Aの愁訴は、それ自体疑わしいものといわざるを得ない。 ウまた、原告Aは、8月24日に手稲渓仁会病院で、不安状態により約1か月の通院治療を要するとの診断も受けている。 しかし、原告Aは、上記の受診の際に、4月くらいから友人関係での悩みがあったが、それについては元気になりつつあったことを訴えている(甲6の1)。この点からすると、解消の方向へ向かっていたとはいえ、本件行為以前にも、学校内で友人関係についての悩みを抱えていたことが認められる。また、原告Aは、本件行為以前から保健室を頻繁に利用し、その回数は、4月から6月までの3か月間に、本件行為当日を含め11回に及んでいる(乙5の1ないし11)。 その際の訴えも、だるさ、体の重さ、関節の痛み、気持ちの悪さ、吐き気など、精神的ストレスの影響を窺わせるものが多く、特に6月5日には、「帰りたい」「心の中が痛い」という訴えをしている(乙5の1ないし10)。加えて、原告Aは、4月以来、月経がほとんどこない生理不順が続いていた(甲6の2)。こうした点に照らすと、原告Aは、本件行為以前から、既に身体の不調につながるほど精神的に不安定な状態にあったと認めるのが相当である。 さらに、原告Aは、本件行為当日の6時間目にEが担当する音楽の授業を受講しており、その後の7月5日ころには、Eから個室で1対1で歌のレッスンを受けている(証人E)。この点からすると、仮に原告Aが8月24日に診断を受けたとおり不安状態に陥っていたとしても、それが主として本件行為によるものであるとは、直ちには認め難い。 そうすると、原告Aが不安状態に陥ったことと本件行為との間の相当因果関係を認めることは困難である。 (3) 以上を前提 たとしても、それが主として本件行為によるものであるとは、直ちには認め難い。 そうすると、原告Aが不安状態に陥ったことと本件行為との間の相当因果関係を認めることは困難である。 (3) 以上を前提に、原告らの被った損害について検討する。 ア上記認定のとおり、本件行為は、本校教諭であるEによる違法な体罰であり、それ自体、原告Aに相応の精神的苦痛をもたらしたと認めざるを得ない。 他方で、本件行為の態様は前記のようなものであるし、その傷害の程度も、通院治療を必要とするほどのものであったとまでは認められないし、また、本件行為の目的も原告Aに対する指導であったことなど、本件行為に関する一切の事情を斟酌すると、原告Aの被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金額としては、20万円が相当である。 イ原告B及びCは、固有の慰謝料として各30万円を請求するが、そもそも、不法行為により身体を害されたものの両親が、自己の固有の権利として慰謝料を請求することができるのは、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときに限られる(最三小判昭和33年8月5日民集12巻12号1901頁参照)ところ、原告Aの受けた被害が生命侵害と比肩すべきものとは認め難い。 のみならず、同原告らの請求の根拠は、要するに、原告Aを別の高校へ転校させるなど、その精神的な立ち直りのため大きな心痛を被ったという点にあると解されるところ、上記認定のとおり、本件行為以前から原告Aは精神的ストレスによって心身に苦しみを感じていたのであり、原告Aの転校や精神的立ち直りのために原告B及び同Cが心痛を受けたとしても、それと本件行為との間に相当因果関係を認めることは困難である。 したがって、いずれにせよ、原告B及び同Cの慰謝料請求は理由がない。 ウ原告Bは、原告Aの頸椎捻挫及び不安状 が心痛を受けたとしても、それと本件行為との間に相当因果関係を認めることは困難である。 したがって、いずれにせよ、原告B及び同Cの慰謝料請求は理由がない。 ウ原告Bは、原告Aの頸椎捻挫及び不安状態のための通院治療費を損害として請求しているが、上記認定のとおり、頸椎捻挫及び不安状態が本件行為により引き起こされたとは認められないことに照らすと、この請求は理由がない。 エ原告Bは、転校に要した費用を本件行為による損害として請求するが、上記イに述べたとおり、原告Aが転校を余儀なくされたことと本件行為との間には相当因果関係を認め難いのであるから、この請求も理由がない。 オ最後に、原告Bは、本件にかかる弁護士費用相当額を本件行為による損害として請求する。以上のアないしエで検討したとおり、本件請求においては、アの原告Aの慰謝料20万円の限りで理由があり、この慰謝料請求のために、原告Aの親権者である原告Bが弁護士費用を負担することは相当であるから、上記の慰謝料に対応する弁護士費用相当額は、本件行為と相当因果関係のある損害として認めることができる。本件訴訟の認容額、難易度その他の事情を斟酌すると、その額は5万円と認めるのが相当である。 3 以上によれば、原告らの請求は、主文1項の限度で理由があるから、その限りで認容し、その余はいずれも理由がないので棄却することとする。仮執行宣言は相当でないので付さない。 札幌地方裁判所民事第3部裁判長裁判官生野考司裁判官川口泰司裁判官別所卓郎
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