平成21(行コ)249 不当労働行為救済命令一部取消請求控訴事件(通称 ネスレ日本救済命令取消)

裁判年月日・裁判所
平成21年12月24日 東京高等裁判所
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判決文本文24,557 文字)

- 1 -主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む)は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 中央労働委員会が,平成17年(不再)第59号,第60号不当労働行為再審査申立事件について,平成20年6月4日付けでした命令の主文I項の1及びⅡ項の部分を取り消す。 (3) 訴訟費用は,補助参加によるものも含めて,1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人及び被控訴人補助参加人主文同旨第2 事案の概要等 1 東京都労働委員会(以下「都労委」という。)は,被控訴人補助参加人が控訴人ほか2社を被申立人として申し立てた不当労働行為救済申立事件(都労委平成15年(不)第15号事件。以下「本件初審事件」という。)について,控訴人に対する申立の一部を認容し,その余の被申立人2社に対する申立をいずれも却下する旨の命令(以下「本件初審命令」という。)をした。 被控訴人補助参加人及び控訴人は,それぞれ,中央労働委員会(以下「中労 - 2 -委」という。)に対し,本件初審命令について再審査を申し立て(中労委平成17年(不再)第59号,60号事件。以下「本件再審査事件」という。),中労委は,本件再審査事件について,平成20年6月4日付けで,①被控訴人補助参加人の再審査申立については,○ⅰ控訴人が,被控訴人補助参加人からの平成15年1月6日付け団体交渉申入れにおける団体交渉議題のうち,控訴人の東京支店(以下,単に「東京支店」という。)に係る組織再編に関する事項について,同申入れから平成16年1月26日までの間,控訴人の提案する団体交渉の方式に固執して,被控訴人補助参加人との団体交渉に実質的に応じなかったことは,労働組合 う。)に係る組織再編に関する事項について,同申入れから平成16年1月26日までの間,控訴人の提案する団体交渉の方式に固執して,被控訴人補助参加人との団体交渉に実質的に応じなかったことは,労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である,○ⅱ控訴人が,被控訴人補助参加人側交渉員の団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除をしない旨述べていたにもかかわらず,平成14年7月26日に実施された団体交渉の際における被控訴人補助参加人側交渉員の団体交渉開催場所への移動時間につき賃金を控除したことは,同条3号に該当する不当労働行為であるとして,本件初審命令の一部認容部分を別紙のIに記載のとおり変更し,②控訴人の再審査申立については,これを棄却する旨の命令をした(以下,同命令を「本件命令」という。)。 本件は,本件命令を不服とする控訴人が,本件命令のうち上記第1,1,(2)の部分(本件命令主文I項の1及びⅡ項の部分)の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を全部棄却する判決をした。 そこで,これを不服とする控訴人は,上記裁判を求めて控訴した。 2 本件の前提事実,争点及び「争点に関する当事者の主張」は,次項において当審における控訴人の主な主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」の - 3 -「第2 事案の概要等」の「2 前提事実」,「3 争点」及び「4 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の主な主張(1) 団体交渉議題の整理に関する原判決の基本的誤りと組合側の団体交渉申入れの問題点及び会社の団交応諾義務についてア原判決は,東京支部が,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外し,これを平成16年1月26日付け要望書(乙A24)で挙げた経緯を全く理解しておらず, の問題点及び会社の団交応諾義務についてア原判決は,東京支部が,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外し,これを平成16年1月26日付け要望書(乙A24)で挙げた経緯を全く理解しておらず,この点で基本的な誤りをおかしている。 東京支部が,会社の組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外し,単なる要望事項として整理したのは,そもそも東京都労働委員会における本件の初審事件の期日において,会社が,東京支部が組合本部及び他支部と団体交渉議題を整理しておらず,組織再編についても既に組合本部と交渉済みで東京支部に団体交渉権限はないので団体交渉に応じられる状況にないと主張したことに基づくものである。これにより,初審事件の第6回調査において東京支部が議題を整理する(団体交渉議題を東京支部のものに限定する)旨を会社に約束し,同支部はかかる合意を受けて乙A24の要望書で,会社の組織再編に関する議題を団体交渉議題から除外したのである(乙B156,乙B159-4頁)。すなわち,東京支部が乙A24の要望書を提出したのは,組織再編について会社に団交応諾義務がないとの会社の主張があり,これを受けた東京支部が団体交渉議題を整理して,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外したのであって,これは,組織再編に関する議題が組合本部との団体交渉議題であって東京支部の団体 - 4 -交渉議題ではないとする会社の主張に東京支部自身が同意したからに他ならない。 そうであるにもかかわらず,原判決が,会社の組織再編に関する事項を義務的団交事項であると判断したのは,乙A24の要望書の提出にいたった経過に反するものであり,初審事件の調査において東京支部が議題を整理した(組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外した)趣旨を全く理解しないものである。 イ議題及び日 の要望書の提出にいたった経過に反するものであり,初審事件の調査において東京支部が議題を整理した(組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外した)趣旨を全く理解しないものである。 イ議題及び日程を調整せずに団体交渉を要求している点につい て組合本部は東京支部を含む5支部の上位組織であり,組合本部と5支部は統一的意思の下に労働組合として活動すべきものである。従って,組合本部及び5支部がそれぞれ団体交渉権を有するとしても,組合内部において,組合本部と各支部との団体交渉権限の分配(団体交渉事項の整序)がなされ,それは使用者に対しても明らかにされなければならない。また,組合本部と各支部は地域的にも離れているため,団体交渉の日程等についても予め調整すべきである。然るに,組合側は,本部及び各支部の団体交渉権は相互に全く無関係に行使できるとの独自の見解に立っており,それぞれの団体交渉申入れは,内容の面では同一議題について重複交渉を強い,量の面では申入れの回数,議題の数が夥しく,日程も重複ないし近接していたのである(乙C2-47頁~49頁,乙B9,乙B16,乙B141-7頁)。 かかる状況のなか,会社は,組合本部及び各支部に対し,団体交渉の議 - 5 -題及び日程を整理・調整するよう繰り返し申し入れてきたのであるが,それでも組合側は,議題及び日程の整理・調整を意図的に行わなかったのである。この点は,初審事件及び静岡県地方労働委員会(当時)に係属した事件(静労委平成14年(不)第2号)における組合本部副委員長P1(当時)及びP2島田支部執行委員長(当時)の証言からも明らかである(乙B148,乙C3)。 ウ東京支部が団体交渉の議題及び日程を整理・調整しない以上,会社に団交応諾義務はない上記イで述べた通り,組合側は団体交渉の議題 委員長(当時)の証言からも明らかである(乙B148,乙C3)。 ウ東京支部が団体交渉の議題及び日程を整理・調整しない以上,会社に団交応諾義務はない上記イで述べた通り,組合側は団体交渉の議題及び日程を全く整理・調整しないまま,それぞれ好き勝手に会社に団体交渉を申し入れている。その結果,会社は,東京支部から,組合本部及び他支部の団体交渉議題と重複する議題について団体交渉を申し入れられていたし,また,東京支部が申し入れた時点で重複していない議題であっても,その後,当該議題について組合本部や他支部から団体交渉の申入れを受ける状況にさらされていたのである。 そもそも東京支部のような単位労働組合内における下部組織の団体交渉権は無限定ではなく,当該単位組合全体の中での交渉権の配分に従うこと,単位組合自身のなす団体交渉と抵触しないこと,規約や慣行上必要な本部の承認を得たり指令に従うなどの制約に服するものである(菅野和夫「労働法(第8版)」529頁,西谷敏「労働組合法(第2版)」290頁~291頁)。 そして,組合の本部と支部あるいは各支部間で団体交渉議題が重複して - 6 -いる場合,本来は組合内部において団体交渉権が調整・統一されるべきであり,かかる調整・統一がなされるまで会社が団体交渉を拒否しても不当労働行為にはならないと解すべきである。なぜなら,団体交渉権を有する上部団体と単位労働組合とがそれぞれ独自に,かつ同時に同一事項について団体交渉を申し入れたときは,使用者は自らの見解でいずれか一方に交渉権があると判断して他方の団体交渉を拒否することは組合自治の領域に介入することになるためできないが,二重交渉を避けるために交渉権限及び団交議題の調整・統一がなされるまでの間,団体交渉を使用者が一時的に拒否しても不当労働行為にならないと することは組合自治の領域に介入することになるためできないが,二重交渉を避けるために交渉権限及び団交議題の調整・統一がなされるまでの間,団体交渉を使用者が一時的に拒否しても不当労働行為にならないとされているところ(東大労働法研究会「注釈労働組合法上巻」287頁,外尾健一編「不当労働行為の法理」第7章「団体交渉権者」356頁,吾妻光俊編「註解労働組合法」184頁,中山和久ら著「注釈労働組合法・労働関係調整法」239頁),これは,本件のような組合本部と支部間ではなおさらである。この点については,荒木尚志「労働法」が,「単位組合には支部,分会といった下部組織があることが少なくない。これらの下部組織も一個の労働組合としての組織実体(独自の規約,組織,財政基盤)を備えていれば,当該下部組織限りの事項についてはそれ自身の団体交渉権を持つ」としつつ,「この場合,単位組合の団体交渉権との競合が生じ得るが,単位組合の組合規約や組合内の権限配分,慣行等によって整序されるべき問題である。同一事項について二重交渉となる場合には,全社的制度問題は単位組合で,当該事業場特有の問題は支部で扱うなど,交渉権限が調整されるまで使用者は団体交渉を拒否できると解される。」(501頁~502頁)と述べているところである。 - 7 -そうすると,東京支部を含む組合側の団体交渉申入れについては,組合本部と各支部間で団体交渉権限の調整・統一がなされるまでは,会社が団体交渉に応じる義務はなく(団体交渉を拒んでも正当な理由がある),上記申入れに対する会社の対応(連名方式)は,本来応諾義務のない交渉(任意の話し合い)であり,団交拒否の不当労働行為など成立し得ない。また,組合本部及び5支部は団体交渉希望日についても相互に全く調整していないので,同一日あるいは近接する日に設定 応諾義務のない交渉(任意の話し合い)であり,団交拒否の不当労働行為など成立し得ない。また,組合本部及び5支部は団体交渉希望日についても相互に全く調整していないので,同一日あるいは近接する日に設定されており,会社はそれぞれの団体交渉希望日に団体交渉を行うことは到底できないところである。 従って,東京支部が団体交渉の議題及び日程を整理・調整しない以上,会社は,東京支部を含む組合側の団体交渉申入れに応じる義務はなく,また,同申入れへの会社の対応が不当労働行為を構成することもないのである。 (2) 原判決が,東京支部との団体交渉における会社の対応を労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当すると判断した点の誤りについてア会社には,組織再編に関する東京支部からの団体交渉申入れに応じる義務はない(ア) 東京支部は,本件団体交渉当時,夥しい数の議題について会社に団体交渉を要求していた上,団体交渉を要求する議題及び日程は本部及び他支部と重複するなどしており,東京支部が本部及び他支部と団体交渉の議題及び日程について整理・調整等をしなかったことは明らかである(乙B8,乙B9,乙A15,乙A21,乙A25,乙A100,乙A103,乙B139)。かかる状況の下では,上記(1)ウで述べたとおり,会 - 8 -社は団体交渉応諾義務を負わないところである。即ち,会社の団体交渉義務が生じるには,まず,東京支部が組合本部及び他支部と議題及び日程を整理・調整することが先決問題である(なお,この先決問題は専ら組合内部で解決すべきものであるところ,それは単に組合内部で協議・調整すれば容易に解消される性格のものであって,何ら組合側に無理を強いるものではない。)。 然るに,原判決は,会社に団交応諾義務が生じるには,まずこの先決問題が解決されなければならな 内部で協議・調整すれば容易に解消される性格のものであって,何ら組合側に無理を強いるものではない。)。 然るに,原判決は,会社に団交応諾義務が生じるには,まずこの先決問題が解決されなければならないことを看過し,組織再編という特定の議題のみを取り出して会社の団交応諾義務を認めている点に根本的な誤りがある。 また,組合側が本部及び各支部で団体交渉議題を整理・調整していない以上,東京支店における組織再編の問題について,組合本部及び他支部が団体交渉の議題とすることは十分想定される事態であり,団体交渉申入れ事項のどれが支部固有の議題であるかは,第三者が要求内容を客観的にみて判断できる性格のものではなく,ひとえに組合側が会社に明示しなければならないものである。したがって,組合側がこれを行わない以上,支部固有の議題など想定できず,支部固有の議題として団体交渉義務があるか否かを第三者が事後的に判断すべきではないのであるから,原判決が,東京支店に係る組織再編に関する事項を東京支部独自の議題と判断したのは明らかな誤りである。 (イ) 東京支部には組織再編に関する団体交渉権限はない組織再編に関しては,既に平成13年1月22日に組合本部と会社と - 9 -の間で団体交渉が行われ(乙C2-54頁,乙B17,乙B18),平成13年2月20日の団体交渉においても,会社は,組合本部が要求した組織再編に伴う従業員の身分・地位・労働条件等の説明(乙B19)に応じ,会社側の団体交渉の責任者であるP3が,組織再編によっても従業員の身分,地位,労働条件等に一切変更はない旨回答している(乙B20,乙B149,乙B153-2頁)。 組合本部と各支部との団体交渉の権限分配は全く明らかではなく,会社には,原判決がいう「組合本部が被告補助参加人の団体交渉権限に制約を い旨回答している(乙B20,乙B149,乙B153-2頁)。 組合本部と各支部との団体交渉の権限分配は全く明らかではなく,会社には,原判決がいう「組合本部が被告補助参加人の団体交渉権限に制約を加えていた」かなど知る術はなく,全く関知し得ない事柄である。 組合側が,組織再編に関する団体交渉権限が本部又は各支部のいずれに帰属するのかを明らかにしていない状態では,組織再編に関する議題は従前どおり,組合本部に帰属すると考えるのが相当であるし,少なくとも,各支部は,同一議題(組織再編に関する議題)について,会社に法的強制力のある団体交渉要求はなし得ない,換言すれば,団体交渉応諾義務のない単なる協議・交渉の要求であれば兎も角,労働組合法上の団体交渉権は存しないと解すべきである。 従って,組織再編に関する団体交渉権限は,交渉権限の配分が組合側から明らかにされない限りは組合本部が有しており,東京支部は団体交渉権限を有しないのである。 (ウ) そもそも,通常,労働組合が団体交渉議題として交渉を要求していた事項を交渉議題から外す(単なる要望事項とする)などということは考えられない。特に,組織再編を巡っては,組合側が,会社に対し,執拗 - 10 -に説明を求め,団体交渉を要求していたのである。 かかる経緯をみれば,東京支部が,乙A24の要望書によって組織再編を要望事項として整理したのは,これが組合本部の団体交渉議題であって東京支部独自の議題ではなく,組織再編について当初から団体交渉権限がないことを自認したからこそ,初審事件の第6回調査で,議題の整理(議題を東京支部のものに限定する)を会社に約し,これを受けて,乙A24の要望書で,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外したと考えるべきあり,当然,会社も,同様の認識であったのである(乙B1 (議題を東京支部のものに限定する)を会社に約し,これを受けて,乙A24の要望書で,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外したと考えるべきあり,当然,会社も,同様の認識であったのである(乙B156,乙B159-4頁)。 (エ) 会社は,組織再編について,組合本部との団体交渉で既に説明済みであるし,加えて,会社は平成13年1月23日付けマネジメントニュースにより全従業員に対して,会社の組織再編に関して説明・周知を行い(乙B1),組織再編に関して従業員から照会等があった場合も,個別に説明・対応を行っていたのであって,実際上も,組合側から具体的な支障・問題についての申入れはなかったのである。 然るに東京支部を含む各支部は,会社が既に本部に説明した事項について,何ら具体的な支障・疑問がないにもかかわらず,執拗に会社に説明を要求していたのが実態であって,かかる要求には何ら「相応の理由」など存しない。 イ本件団体交渉における会社の対応は正当であり,これを不当労働行為とするのは不公平である(ア) 労働関係が流動的であること及び団体交渉における会社側の対応はあ - 11 -くまで組合側の団交要求に対してなされる受動的な性格のものであることからすれば,会社の行為が労働組合法上の不当労働行為を構成するか否かは,会社の行為のみを捉えて形式的に判断されるべきではなく,組合側の事情も考慮して相対的に判断されるべきであり,また問題となっている行為を会社が行うに至った経緯・理由等も十分考慮されなければならない(葦原運輸機工事件-大阪高判昭54・7・20労判325号13頁~19頁及び大阪地判昭53・3・3労判293号25頁~32頁参照)。 (イ) 初審事件の申立以前,会社と東京支部との間では,東京都労働委員会に都労委平成14年(不)第2号事件 労判325号13頁~19頁及び大阪地判昭53・3・3労判293号25頁~32頁参照)。 (イ) 初審事件の申立以前,会社と東京支部との間では,東京都労働委員会に都労委平成14年(不)第2号事件(以下「前事件」という。)及び前事件から移行した都労委平成14年(争)第104号(以下「あっせん事件」という。)が係属していたところ,会社は東京支部の要求する団体交渉に誠実に応じていたことから,平成14年11月15日,同委員会は,会社と東京支部との間で実施されていた団体交渉の推移を見守ることとし,実際にもその後,東京において団体交渉が実施されたことから,前事件及びあっせん事件は,実質上解決されていたのである(甲5-4頁以下)。しかし,東京支部は,平成15年2月13日に,突如として前事件及びあっせん事件を取り下げると同時に,驚くべきことに,自らボイコットした平成15年1月15日の団体交渉について「ネスレジャパンホールディング株式会社と・・・中略・・・1月6日付けで東京支部が開催を申し入れた団体交渉を正当な理由無しに開催を拒否した。」(乙124-3頁)などと明らかに事実に反する主張をして初審事件を申し - 12 -立てたのである(甲5-15頁)。つまり,東京支部は,前事件及びあっせん事件における紛争解決を反故にして初審事件の申立を行うために,会社に平成15年1月15日の団体交渉を申入れ,自らボイコットしたのである。 (ウ) 平成15年7月4日の団体交渉及び同年12月10日の団体交渉は,東京支部が,上記(イ)の経緯・理由でボイコットした後に申し入れた団体交渉である。そして,東京支部は,会社が団体交渉に応じていない外形を作出して初審事件を有利にすすめるため,会社が連名方式の方法を取らざるを得ないことを逆手にとって,次の通り,執拗に団体交渉 れた団体交渉である。そして,東京支部は,会社が団体交渉に応じていない外形を作出して初審事件を有利にすすめるため,会社が連名方式の方法を取らざるを得ないことを逆手にとって,次の通り,執拗に団体交渉の方式論にこだわったのである。 (エ) 平成15年7月4日の団体交渉において行われた団体交渉方式に関する労使間のやりとりの正確な事実経過は次の通りである。 同日の団体交渉においては,冒頭より,東京支部の方から,同日の団体交渉が支部団交であるか否かの確認要求があった。これに対し,会社は,連名方式で団体交渉を申し入れているが,これを支部団交として捉えるかどうかは組合の側で決めるよう繰り返し回答した。しかし,東京支部が,この団体交渉が支部団交か否かを執拗に確認しようとしたため,議題に入れずに団体交渉が終了したというのが正確な事実経過なのである。 即ち,会社が,団交交渉の位置づけは組合側で決めるように回答したのに対して,東京支部自身が団体交渉の位置づけを明らかにせず,団体交渉の入り口論に拘り,その結果,同日の団体交渉議題に関する協議が - 13 -できなくなったのであって,会社は組合からの回答要求を拒否したり,団体交渉を実質的に拒否する対応は何ら行っていないのである(乙A15,乙B153-6頁)。 (オ) 平成15年12月10日の団体交渉においても,上記(エ)と同様のやりとりがあり,東京支部が同日の団体交渉を支部団交であるか否かを執拗に問題とし続けたため,具体的な交渉に入ることができず,同日の団体交渉議題に入らないまま同交渉が終了したというのが正確な事実経過である。 即ち,会社は組合からの回答要求を拒否したり,団体交渉を実質的に拒否する対応は行っていないのであって(乙A23,乙B153-7頁),この点は,P1も認めている上(乙C3- 正確な事実経過である。 即ち,会社は組合からの回答要求を拒否したり,団体交渉を実質的に拒否する対応は行っていないのであって(乙A23,乙B153-7頁),この点は,P1も認めている上(乙C3-25頁),東京支部が議事録と称する文書にさえ,「会社は,議題に対する回答について,・・・(中略)・・・,求められるのであれば説明します。との対応を行った」(乙A23-2頁)と記載されていることからも明らかである。 (カ) 上記のとおり,東京支部の初審事件の申立自体,不当労働行為救済申立権を濫用するものであるし,かかる東京支部の初審事件の申立は,前事件及びあっせん事件における紛争解決を反故にするためになされたもので,前事件及びあっせん事件における労働委員会及び会社の信頼を明らかに裏切った行為である。 そして,初審事件の申立の口実とすべく会社に申し入れ,自らボイコットした平成15年1月15日の団体交渉を含む本件団体交渉において,東京支部が組織再編に関する実質的な議論を求めていたとは到底考えら - 14 -れないし,むしろ,その後の同年7月4日及び同年12月10日の団体交渉において東京支部が団体交渉の入り口論(団体交渉方式)に執拗に拘ったのは,敢えて組織再編に関する議論を行わず,初審事件の審理を有利に進めようとしたためであるとすら考えられるのである。 このような組合側の問題行動を看過し,本件団体交渉で組織再編に関する事項について交渉されなかったのを,会社が実質的に団体交渉を拒否したものであるなどとして,会社に不当労働行為の責任を課すのは組合側に偏った著しく不公平な判断であって,明らかな誤りである。 (3) 原判決が,平成14年7月26日の団体交渉における移動時間の賃金控除を労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると判断した点の 側に偏った著しく不公平な判断であって,明らかな誤りである。 (3) 原判決が,平成14年7月26日の団体交渉における移動時間の賃金控除を労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると判断した点の誤りについてアそもそも前事件及びあっせん事件は取り下げにより終了しており,取り下げられた事件の調査における会社の説明を別の事件で取り上げて不当労働行為の根拠とすること自体誤りというべきである。 イ会社は,団体交渉の移動時間に関する賃金保証の合意などしていない前事件の第5回調査に出席した会社側補佐人であるP3は,同調査において,東京支部の団体交渉に関して団体交渉出席のための移動時間の賃金保証をする(賃金カットを行わない)などという約束はしていない。 P3は,第5回調査で東京支部が同席しない中,公益委員から神戸における団体交渉で移動時間の賃金保証はどのようにしているかとの質問に対し,神戸では過去の運用で移動時間の賃金保証をしていると返答をしたにすぎず,その後に公益委員から東京で団体交渉をする場合に移動時間の賃 - 15 -金保証はどうするかとの質問に対しては,これは別途検討しなければならない旨返答し,公益委員もこれを了承したのである(乙C6-7頁~8頁)。 そして,P3は,前事件の第7回調査においても,第5回調査では賃金保証は検討する旨述べたのであって,約束まではしておらず,その後も賃金保証はしない旨を説明しており,その際,都労委や東京支部からは,第5回調書の記載の指摘はされていないのである(乙B153-5頁~6頁,乙C4-63頁~64頁,乙C6-9頁,~10頁)。このように,会社は東京における団体交渉で団体交渉出席のための移動時間の賃金保証をするとの約束はしておらず,前事件の第5回調書の記載は誤って記載されたものである。 ウ ,乙C6-9頁,~10頁)。このように,会社は東京における団体交渉で団体交渉出席のための移動時間の賃金保証をするとの約束はしておらず,前事件の第5回調書の記載は誤って記載されたものである。 ウ P3を含めて会社の者は,前事件及びあっせん事件の最終期日(平成14年11月15日)まで第5回調書を見ていないのであり,それまでの間,第5回調書について異議を出していないのは当然である。前事件及びあっせん事件の調書を入手した平成14年11月20日の時点では前事件及びあっせん事件は事実上終了し,まさか初審事件の申立がなされるとは想定していなかったため,第5回調査調書を入手後,その記載内容の確認をし,訂正の措置をとらなかったにすぎないのである(乙C6-15頁)。 エこのように,会社は,そもそも組合との間で団体交渉の移動時間に関する合意などしていないのであるから,平成14年7月26日の東京支部との団体交渉において,会社が団体交渉開催場所への移動時間分の賃金控除を行ったことは,何ら不当労働行為を構成するものではない。 4 当審における被控訴人及び補助参加人の主張 - 16 -(1) 当審における控訴人の主な主張(1)を争う。 被控訴人補助参加人組合が乙A24号証の要望書を提出するに際して,組織再編に関する議題が補助参加人組合の団体交渉議題ではないとする会社の主張に同組合自身が同意したか否かについては,原審被告(国)準備書面(3)で主張したとおり,補助参加人組合は,「東京都労委から「会社分社化の議題については組合で配慮して欲しい」との要望がなされ,同支部も支部団体交渉が開催されることが最優先議題と考え,支部団交が開催されるようになればその中で議題となり得るとの考えから(2004年)1月26付けで要望書を提出」(本件命令書43,44頁)と 同支部も支部団体交渉が開催されることが最優先議題と考え,支部団交が開催されるようになればその中で議題となり得るとの考えから(2004年)1月26付けで要望書を提出」(本件命令書43,44頁)という経緯がある。当該経緯からして,補助参加人組合は,控訴人会社が同組合との単独の団体交渉に容易に応じないという膠着した状況を打開するために,東京都労委の要望を尊重して交渉議題を整理したに過ぎないのであり,当該議題が支部団体交渉議題ではないとする控訴人会社の主張に同組合が同意したものではないことは明らかである。 控訴人会社は「東京支部を含む組合側の団体交渉申入れについては,組合本部と各支部間で団体交渉権限の調整・統一がなされるまでは,会社が団体交渉に応じる義務はなく(団体交渉を拒んでも正当な理由がある)」と主張するが,これは,ある労働組合が,当該組合の本部又は他の下部の労働組合と同一の団体交渉議題について,重複して交渉を申し入れた場合又は実質的にみてその虞がある場合についていえることである。本件において補助参加人組合が申し入れた団体交渉議題は,(2)で後述するとおり,いずれも同組合固有の問題(交渉議題)であって,本部組合あるいは他の支部労働組合の申し - 17 -入れた団体交渉議題とは重複しておらず,その虞もないことから,控訴人会社の主張は失当である。 (2) 当審における控訴人の主な主張(2)を争う。 控訴人会社は,組織再編に関して平成13年に本部組合と団体交渉を行っているから各支部労働組合には重ねて説明を求める理由はないし,「組織再編に関する団体交渉権限が本部又は各支部のいずれに帰属するのかを明らかにしていない状態では,組織再編に関する議題は従前どおり,組合本部に帰属すると考えるのが相当である」から,各支部労働組合には団体交渉 に関する団体交渉権限が本部又は各支部のいずれに帰属するのかを明らかにしていない状態では,組織再編に関する議題は従前どおり,組合本部に帰属すると考えるのが相当である」から,各支部労働組合には団体交渉を行う権限がない旨主張するが,本件団交申入議題IないしⅢは,「東京支店における施設管理修理,賃金決定,転勤・出向等の権限が会社及び関係2社らのどこにあるのかを明確にし,また,その根拠をも明らかにすること等,組織再編後東京支店においていくつかの企業名が使い分けられていることに関して,東京支店独自の問題として説明を求めるもの」(本件命令書39~41頁)であり,補助参加人組合に係る事項に限定した議題であることは申入書の文言(本件命令書23,24頁)自体からも明らかであるから,会社従業員全体にかかる身分問題等の説明を求めた本部組合との団交議題とは重複しないものである。このことのほかに,補助参加人組合は被控訴人会社に対し,同議題を含め再三にわたり同組合単独の団体交渉を申し入れており,少なくとも上記議題に関する交渉申入れに対し本部組合が「補助参加人組合には交渉権限がない」とした事実は認められないのであるから,控訴人会社は本部組合のみならず補助参加人組合にも交渉権限があることは了知しうる状況にあった。したがって支部労働組合である補助参加人組合に上記団体交渉議題につ - 18 -いて交渉権限がないとする会社の主張には理由がない。 控訴人会社は,本件命令及び原判決が,補助参加人組合が,①平成15年1月15日の団体交渉を,P3エンプロイリレーションマネジャーの所属・権限等が不明瞭であることを理由に出席を拒否したことや,②会社が提案する連名方式を拒み,本部団交・支部団交の別に拘泥して執拗に確認を求めたために具体的な交渉に入れなかったこと等を考慮せず,本件 属・権限等が不明瞭であることを理由に出席を拒否したことや,②会社が提案する連名方式を拒み,本部団交・支部団交の別に拘泥して執拗に確認を求めたために具体的な交渉に入れなかったこと等を考慮せず,本件団交の経過を「原告が連名方式による団体交渉を行うことに固執したため,実質的な交渉に入ることができなかったものと認められる」と評価したことを不公平な判断であると主張する。しかしながら,控訴人会社は,客観的にみて支部団交と位置づけられるべき同日の団体交渉を,支部団交として位置づけようとしなかったのであるから,同交渉における会社の対応を連名方式による団体交渉を行うことに固執したと原判決が評価したことに誤りはない。こうした控訴人会社の対応を従前の会社の対応の支部否認を再来させるものであると懸念して同組合が執拗に確認を求めたことには然るべき理由があるし,同組合が企業名義の使い分け問題について疑問を持ち説明を求めている状態にあって,P3マネジャーの所属や権限が会社等組織の中でどのように位置づけられているか同組合が疑問を持つのは当然のことである。 (3) 当審における控訴人の主な主張(3)を争う。 控訴理由書において控訴人が主張する事実経過は,「8月28日付け「抗議並びに要求書」で当該賃金控除について抗議するとともに,会社に対して文書謝罪及び控除賃金を返還するように要求した」ことや,それに対して会社が「9月10日付け「回答書」により」回答をしていること,これらの事情 - 19 -から「団体交渉開催場所への交渉員の移動時間についての賃金控除をめぐって,14年8月ないし9月には,会社・東京支部間で対立した状況となっていたこと」(いずれも命令書46,47頁)等,平成14年11月20日に会社が調書を入手するまでの背景事情が故意に省略されており正確とは到底 年8月ないし9月には,会社・東京支部間で対立した状況となっていたこと」(いずれも命令書46,47頁)等,平成14年11月20日に会社が調書を入手するまでの背景事情が故意に省略されており正確とは到底言い難いものである。これを論拠の一つとして原判決の判断を誤りであるとする被控訴人の主張は失当である。 5 補助参加人のみの反論平成8年2月の最高裁判決により支部団体交渉権の存在が確認された後,控訴人は各支部との間で3~4回の支部団体交渉を開催した。ところが,控訴人は,同年7月以降,支部所在地での支部団体交渉の開催を拒絶し続けていた。このため,最高裁判決から6年が経過した平成14年の時点で,参加人支部(東京)のほか島田支部,霞ヶ浦支部が,各都県の労働委員会に不当労働行為救済申立を行った。島田支部,霞ヶ浦支部,東京支部の上記の不当労働行為救済申立は,控訴人が控訴人の主張する団交開催方式に固執し,団体交渉関係の文書の名宛人を本部と5支部の連名とし,出席者数を名宛人の数(計6者)より少ない5人以内に限定し,団交開催場所を神戸または東京に限定し,最高裁判決で支部団交権の存在が確定している島田支部と霞ヶ浦支部とは支部団交を行わず,東京支部については都労委の斡旋で支部団交が開始されたものの形式的な団体交渉しか行われていないことについての救済を求めてなされた。これらの不当労働行為救済申立がなされる前の時点で,控訴人は,東京支部に対しても他の支部や本部に対しても「重複している議題を取りあえず除外して,重複していない議題について団体交渉をしましょ - 20 -う」という申出をしたことは一切ない(乙C7 P1証人尋問77項,78項)。また,控訴人が本部と支部で交渉議題を分けるように要求したことも全くない(前同80項)。日程の調整を求めたこともない。控 う」という申出をしたことは一切ない(乙C7 P1証人尋問77項,78項)。また,控訴人が本部と支部で交渉議題を分けるように要求したことも全くない(前同80項)。日程の調整を求めたこともない。控訴人が,組合側に対して,本部と支部で交渉議題や日程を整理するように最初に求めたのは,東京都地方労働委員会に不当労働行為救済申立がなされて以降の平成15年5月14日付申入書(乙B12,労乙12)が最初である(乙C7 P1証人尋問96~98項)。これらの救済申立がなされた後になって,控訴人は,控訴人が主張する団体交渉方式の正当性を主張するために,いわゆる後付の理屈として「本部と支部の交渉議題が整理されていない」「日程調整がなされていない」との主張を開始したのである。仮に,平成8年2月の最高裁判決以降平成14年の不当労働行為救済申立までの間に,控訴人が「組合の側で議題や日程を調整すれば各支部団交を開催する」との態度を示せば,組合の側がこれらの調整を行い,支部団交の開催がなされて,労使関係の正常化がなされたであろうことは,容易に推定される。控訴人は,控訴人主張の団体交渉方式でなければ支部団体交渉に一切応じないとの態度に固執し,「組合の側で議題や日程を調整すれば各支部団交を開催する」との態度を一切示さなかったのである。控訴人が控訴理由書で引用している労働法学者の論文等は,いずれも,使用者側が「組合の側で議題や日程を調整すれば団交を開催する」意思を有していることを自明の大前提として書かれたものである。しかし,本件事案においては,この大前提が全く異なる。P1証人は,中労委における証言の中で,本部支部の間で団体交渉議題の整理や日程調整を行っていなかったことを認める証言をしているが,この証言は,控訴人が控訴人主張の - 21 -団体交渉方式に固執し 人は,中労委における証言の中で,本部支部の間で団体交渉議題の整理や日程調整を行っていなかったことを認める証言をしているが,この証言は,控訴人が控訴人主張の - 21 -団体交渉方式に固執し「組合の側で議題の整理や日程調整をすれば各支部団交を開催する」との態度を全く示さない状況を前提にして(乙C7 P1証人尋問77項,78項),この状況下で本部支部の間で議題や日程の調整をしてみても無駄な努力に終わることは自明のことであることから,組合の側で議題の整理や日程調整を行わなかった旨を述べているものである。よって,組合の側で議題の整理や日程調整を行っていなかったことは,控訴人の本件団体交渉拒否を正当化する理由となり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,中労委が本件命令においてした,①本件団体交渉申入議題のうち東京支店に係る会社組織再編に関する事項について,平成15年1月6日付け団体交渉申入れから平成16年1月26日までの間,控訴人の提案する団体交渉の方式に固執して被控訴人補助参加人との単独の団体交渉に実質的に応じなかったことが労働組合法7条2号に該当する不当労働行為であるとした判断,②前事件(都労委平成14年(不)第2号事件)において,団体交渉開催場所への移動時間について控除しない旨述べたにもかかわらず,平成14年7月26日に実施された控訴人と被控訴人補助参加人との間の団体交渉が行われた際に団体交渉開催場所への移動時間について被控訴人補助参加人側交渉員の賃金を控除したことが同条3号に該当する不当労働行為であるとした判断は,いずれも相当であって,これに対する救済方法として,本件命令の主文I項1の内容の文書掲示を命じたこと及び控訴人の再審査申立を棄却したことはいずれも相当であると判断する。その理由は,次項において当審における 相当であって,これに対する救済方法として,本件命令の主文I項1の内容の文書掲示を命じたこと及び控訴人の再審査申立を棄却したことはいずれも相当であると判断する。その理由は,次項において当審における控訴人の主な主張につき判断を付加するほか,原判決の「事実及び理由」中 - 22 -の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主な主張に対する判断(1)ア控訴人は,第2,3,(1),アのとおり,東京支部が乙A24の要望書を提出したのは,組織再編について会社に団交応諾義務がないとの会社の主張があり,これを受けた東京支部が団体交渉議題を整理して,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外したのであって,これは,組織再編に関する議題が組合本部との団体交渉議題であって東京支部の団体交渉議題ではないとする会社の主張に東京支部自身が同意したからに他ならない,にもかかわらず,原判決が,会社の組織再編に関する事項を義務的団交事項であると判断したのは,乙A24の要望書の提出に至った経過に反するものであり,初審事件の調査において東京支部が議題を整理した(組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外した)趣旨を全く理解しないものである旨主張する。 しかしながら,前判示のとおり(原判決を引用),上記要望書の提出は,被控訴人補助参加人が,本件初審事件の平成15年12月15日開催の調査期日において,都労委から,被控訴人補助参加人が控訴人と支部団体交渉を開催することの障害となっている本件組織再編に関する議題の取扱いについて検討するよう言われたことを受けて行われたものであること,上記要望書の内容は,「東京都労働委員会の調査を踏まえ東京支部団体交渉議題とは区別し本要望書を提出します。」とした上で,別途,控訴人, ついて検討するよう言われたことを受けて行われたものであること,上記要望書の内容は,「東京都労働委員会の調査を踏まえ東京支部団体交渉議題とは区別し本要望書を提出します。」とした上で,別途,控訴人,新ネスレ日本及びネスレジャパンアドミニストレーション株式会社に対し,本件団体交渉申入議題IないしⅢと全く同じ内容の3項目の - 23 -質問事項を挙げ,これについて文書による回答を求めるものであることが認められる。上記要望書が以上認定の経過により提出されたこと及びその記載内容に照らすと,被控訴人補助参加人が上記要望書を提出した趣旨は,その提出以降,本件団体交渉申入議題IないしⅢを交渉議題から除外することを意味するのにとどまるものであり,それ以上に,本件団体交渉申入議題IないしⅢを支部の団体交渉議題ではないとの会社の主張に同意したものと解することはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 イ控訴人は,第2,3,(1),イ及びウのとおり,被控訴人補助参加人は議題及び日程を調整せずに団体交渉を要求しており,かような場合,控訴人が調整がなされるまで団体交渉を拒否しても不当労働行為にはならない旨主張する。 前判示のとおり(原判決を引用),引用にかかる原判決の前提事実(5)(6)によれば,本件団体交渉申入れと近接した時期に,組合島田支部や組合霞ヶ浦支部からも控訴人に対して団体交渉が申し入れられていたことが認められ,この事実関係からすると,控訴人が組合本部や組合5支部に対して議題や日程を調整,整理するよう求めたことには相応の理由があるということができる。しかし,本件団体交渉申入議題IないしⅢは,東京支店に係る事項に限定した議題であり,被控訴人補助参加人限りの交渉事項であると認められることは,引用にかかる原判決第3, 由があるということができる。しかし,本件団体交渉申入議題IないしⅢは,東京支店に係る事項に限定した議題であり,被控訴人補助参加人限りの交渉事項であると認められることは,引用にかかる原判決第3,1,(1)アで説示したとおりである。また,上記前提事実(6)によれば,組合島田支部及び組合霞ヶ浦支部からの各団体交渉の申入れにおける交 - 24 -渉議題は,それぞれの支部に係る事項を議題としたものであることが認められる。これに対し,本件全証拠によっても,組合本部及び被控訴人補助参加人以外の組合の各支部において,本件団体交渉申入議題IないしⅢと重複する東京支店に係る事項を交渉議題に含む団体交渉の申入れをしていたことは認められず,また,控訴人が同議題について重複して団体交渉を求められる可能性が具体的に存在していたことも認められない。 以上によれば,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものとして,採用することができない。 (2)ア控訴人は,第2,3,(2),ア,(ア)のとおり,原判決は,東京支部が組合本部及び他支部と議題・日程を整理・調整するという先決問題が解決されなければならないことを看過し,組織再編という特定の議題のみを取り出して控訴人の団交応諾義務を認めている点に根本的な誤りがあり,また,組合側が本部及び各支部で団体交渉議題を整理・調整しない限り,支部固有の議題であるかは,第三者には判断できないから,東京支店に係る組織再編に関する事項を東京支部独自の議題と判断したことも明らかな誤りであると主張する。 しかしながら,上記(1)イのとおり,本件団体交渉申入議題IないしⅢの内容は東京支店に係る事項に限定した議題であり,そのことは,申入議題の内容自体から容易に判断できることである。そして,上記のとおり,組合本部及び被控訴人補助参加人以 本件団体交渉申入議題IないしⅢの内容は東京支店に係る事項に限定した議題であり,そのことは,申入議題の内容自体から容易に判断できることである。そして,上記のとおり,組合本部及び被控訴人補助参加人以外の組合支部において,本件交渉申入議題IないしⅢと重複する東京支店に係る事項を交渉議題に含む - 25 -団体交渉の申入れをしていたことは認められず,また,控訴人が同議題について重複して団体交渉を求められる可能性が具体的に存在していたことも認められないのであるから,東京支部が組合本部及び他支部と議題を整理・調整するまでもなく,控訴人は,本件交渉申入議題IないしⅢについて,被控訴人補助参加人との団体交渉に応じる義務があるというべきであって,控訴人の上記主張は採用できない。 イ控訴人は,第2,3,(2),ア,(イ)のとおり,組織再編に関しては,既に平成13年1月22日に組合本部と会社との間で団体交渉が行われ,平成13年2月20日の団体交渉においても,会社は,組合本部が要求した組織再編に伴う従業員の身分・地位・労働条件等の説明に応じ,会社側の団体交渉の責任者であるP3が,組織再編によっても従業員の身分,地位,労働条件等に一切変更はない旨回答している,組織再編に関する団体交渉権限は,交渉権限の配分が組合側から明らかにされない限りは組合本部が有しており,東京支部は団体交渉権限を有しない旨主張する。 しかしながら,前判示のとおり(原判決を引用),支部のような単位労働組合の下部組織についても,当該支部限りの交渉事項に当たるものについては,組合本部の統制に服するものの,独自に団体交渉を行う権限があると解される。そして,本件団体交渉申入議題IないしⅢの内容は,引用にかかる原判決第3,1,(1)アで説示したとおり,被控訴人補助参加人の組合員 部の統制に服するものの,独自に団体交渉を行う権限があると解される。そして,本件団体交渉申入議題IないしⅢの内容は,引用にかかる原判決第3,1,(1)アで説示したとおり,被控訴人補助参加人の組合員の身分や組合員が従事する東京支店に関する法的関係を内容とする交渉議題である。そうすると,本件団体交渉申入議題Iないし - 26 -Ⅲは,東京支店に係る事項に限定した議題であり,被控訴人補助参加人限りの交渉事項であるということができる。他方,本件全証拠によっても,本件団体交渉申入れがされた平成15年当時,組合本部が控訴人に対し,本件組織再編に関する事項について団体交渉を申し入れていたことをうかがわせる事情は認められず,その当時,控訴人が,組合本部及び被控訴人補助参加人との関係において,当該事項について重複して団体交渉を求められる可能性が具体的に存在していたとはいえない。また,組合の各支部からの団体交渉の申入れに関して,組合本部が控訴人に対し,平成9年3月21日,それぞれの支部団交で誠意を持って回答するよう要求していたこと(当事者間に争いがない。)に照らして,組合本部が被控訴人補助参加人の団体交渉権限に制約を加えていたとは考え難く,本件全証拠によっても,そのような事実をうかがわせる事情は認められない。また,組合本部が被控訴人補助参加人との間で同補助参加人限りの交渉事項について交渉権限の配分を定めていた事実をうかがわせる事情も認められない。 よって,控訴人の上記主張は採用できない。 ウ控訴人は,第2,3,(2),ア,(ウ)のとおり,労働組合が団体交渉議題として交渉を要求していた事項を交渉議題から外す(単なる要望事項とする)などということは考えられず,特に,組織再編を巡って組合側が会社に対し,執拗に説明を求め,団体交渉を要求していた本件 体交渉議題として交渉を要求していた事項を交渉議題から外す(単なる要望事項とする)などということは考えられず,特に,組織再編を巡って組合側が会社に対し,執拗に説明を求め,団体交渉を要求していた本件の経緯をみれば,東京支部が,乙A24の要望書によって組織再編を要望事項として整理したのは,これが組合本部の団体交渉議題であって東京支部 - 27 -独自の議題ではなく,組織再編について当初から団体交渉権限がないことを自認したからであり,乙A24の要望書で,組織再編に関する事項を団体交渉議題から除外したと考えるべきである旨主張する。 しかしながら,上記(1)アで判示したとおり,被控訴人補助参加人が上記要望書を提出した趣旨は,その提出以降,本件団体交渉申入議題IないしⅢを交渉議題から除外することを意味するのにとどまるものであり,それ以上に,本件団体交渉申入議題IないしⅢを支部の団体交渉議題ではないとの会社の主張に同意したものと解することはできない。 よって,控訴人の上記主張は採用できない。 エ控訴人は,第2,3,(2),ア,(エ)のとおり,会社は,組織再編について,組合本部との団体交渉で既に説明済みであるし,加えて,会社は平成13年1月23日付けマネジメントニュースにより全従業員に対して,会社の組織再編に関して説明・周知を行い(乙B1),組織再編に関して従業員から照会等があった場合も,個別に説明・対応を行っていたのであって,実際上も,組合側から具体的な支障・問題についての申入れはなかったのである,然るに東京支部を含む各支部は,会社が既に本部に説明した事項について,何ら具体的な支障・疑問がないにもかかわらず,執拗に会社に説明を要求していたのが実態であって,かかる要求には何ら「相応の理由」など存しないと主張する。 しかしながら,前判示 に説明した事項について,何ら具体的な支障・疑問がないにもかかわらず,執拗に会社に説明を要求していたのが実態であって,かかる要求には何ら「相応の理由」など存しないと主張する。 しかしながら,前判示のとおり(原判決を引用),控訴人は,イントラネット上や本件組織再編後の平成13年1月22日に開催された組合本部との団体交渉において,本件組織再編に伴う控訴人及び新設会社の所 - 28 -管業務を説明し,従業員については,東京支店の従業員を含む旧ネスレ日本の従業員は引き続きネスレジャパンホールディング株式会社に在籍している旨の説明をしたこと,これに対し,本件組織再編後に被控訴人補助参加人の組合員である東京支店の従業員が交付を受けた給与関係書類のうち,基本給通知書はネスレジャパンアドミニストレーション株式会社名義で作成され,給与の支給明細書及び源泉徴収票はネスレ日本株式会社名義で作成されていたことが認められる。以上の状況は,被控訴人補助参加人の組合員である東京支店の従業員の労働条件に直接関係し,かつ,それを基礎付ける重要な書類が,在籍しているとの説明を受けていたネスレジャパンホールディング株式会社以外の会社名義で作成されていたというものであり,被控訴人補助参加人の組合員において使用者がだれであるかという基本的で重大な問題状況であるということができる。このような状況を前提として,被控訴人補助参加人が,その組合員の身分や組合員が従事する東京支店に関する法的関係について,控訴人に対し説明を求めることには相応の理由があるというべきである。 よって,控訴人の上記主張は採用できない。 オ控訴人は,第2,3,(2),イ,(ア)ないし(カ)のとおり,本件の経過からすれば,被控訴人補助参加人の本件初審事件の申立自体,前事件及びあっせん事件における紛争 人の上記主張は採用できない。 オ控訴人は,第2,3,(2),イ,(ア)ないし(カ)のとおり,本件の経過からすれば,被控訴人補助参加人の本件初審事件の申立自体,前事件及びあっせん事件における紛争解決を反故にするためになされたもので,前事件及びあっせん事件における労働委員会及び会社の信頼を裏切る行為であり,不当労働行為救済申立権を濫用するものである,そして,本件初審事件の申立の口実とすべく会社に申し入れ,自らボイコットした - 29 -平成15年1月15日の団体交渉を含む本件団体交渉において,東京支部が組織再編に関する実質的な議論を求めていたとは到底考えられないし,むしろ,その後の同年7月4日及び同年12月10日の団体交渉において東京支部が団体交渉の入り口論(団体交渉方式)に執拗にこだわったのは,敢えて組織再編に関する議論を行わず,本件初審事件の審理を有利に進めようとしたためであるとすら考えられるのであり,このような組合側の問題行動を看過し,本件団体交渉で組織再編に関する事項について交渉されなかったのを,会社が実質的に団体交渉を拒否したものであるなどとして,会社に不当労働行為の責任を課すのは組合側に偏った著しく不公平な判断であって,明らかな誤りである旨主張する。 しかしながら,引用にかかる原判決前提事実(4)ないし(7)によれば,被控訴人補助参加人は,平成14年1月8日,都労委に対し,控訴人を被申立人として,控訴人が,組合本部及び組合5支部からそれぞれされた団体交渉の申入れに対し,組合本部及び組合5支部を一括して団体交渉の相手方とする方式(連名方式)により,組合本部及び組合5支部の各議題を一括して神戸で団体交渉を行い,かつ,組合側交渉員は5名以内とする旨の回答を行ったことについて,被控訴人補助参加人の団体交渉権を事実上否定 る方式(連名方式)により,組合本部及び組合5支部の各議題を一括して神戸で団体交渉を行い,かつ,組合側交渉員は5名以内とする旨の回答を行ったことについて,被控訴人補助参加人の団体交渉権を事実上否定しているものであるとして,不当労働行為の救済申立(前事件)をしたこと,しかし,その後,被控訴人補助参加人による団体交渉申入れにかかる平成15年1月15日開催予定の団体交渉が控訴人と被控訴人補助参加人との意見の相違によって開催されなかったこと,この団体交渉で議題にする予定であったことについて説明等が得られな - 30 -かったことなどを踏まえ,被控訴人補助参加人は,平成15年2月13日に前事件の救済申立を取り下げ,新たに,被申立人及び救済内容の範囲を拡大すべく,同日都労委に対し,控訴人,新ネスレ日本及びネスレジャパンアドミニストレーション株式会社を被申立人として,控訴人が,①被控訴人補助参加人からの本件団体交渉申入れに対して,組合本部及び組合5支部を一括して団体交渉の相手方とし,日時と開催地は控訴人が指定し,出席者は双方5名以内とし,議題は組合本部及び組合5支部がそれぞれ提示した団体交渉の議題を一括して取り上げるという連名方式による団体交渉の申入れなどを行い,被控訴人補助参加人単独の団体交渉に応じなかったこと,②被控訴人補助参加人からの本件団体交渉申入れ等において本件組織再編に伴う東京支店における組織再編に関する事項の説明を求められたのに,これに応じず,会社名を使い分けて使用者をあいまいにしていること,③本件団体交渉申入れ等に係る団体交渉において東京支店の支店長らを出席させなかったことについて,それぞれ控訴人,新ネスレ日本及びネスレジャパンアドミニストレーション株式会社による労働組合法7条2号及び3号に該当する不当労働行為であるとし いて東京支店の支店長らを出席させなかったことについて,それぞれ控訴人,新ネスレ日本及びネスレジャパンアドミニストレーション株式会社による労働組合法7条2号及び3号に該当する不当労働行為であるとして,救済申立(本件初審事件)をしたことが認められる。そうすると,被控訴人補助参加人の本件初審事件の申立自体が不当労働行為救済申立権を濫用するものとまではいえないことが明らかである。 よって,控訴人の上記主張は採用できない。 (3) 控訴人は,第2,3,(3)アないしエのとおり,取り下げられた前事件及びあっせん事件の調査における会社の説明を別の事件で取り上げて不当労 - 31 -働行為の根拠とすることはできない,また,控訴人は,団体交渉の移動時間に関する賃金保証の合意をしていない旨主張する。 しかしながら,取り下げられた前事件等の手続の中であっても,控訴人と被控訴人補助参加人との間に団体交渉員の移動時間について賃金控除をしない合意が成立したのであれば,その合意は上記取下げの有無にかかわらず効力があるというべきである。さらに,前判示のとおり(原判決を引用),本件初審事件及び本件再審査事件において提出されたP3の陳述書(乙B153,159)並びに本件初審事件及び本件再審査事件におけるP3の証人尋問調書(乙C2,4,6)中には,控訴人は団体交渉の移動時間に関する賃金保証の合意をしていないとの上記主張と同旨の陳述及び供述部分があるが,証拠(乙A120,121,乙B154,159,乙C6)によれば,被控訴人補助参加人は,控訴人に対し,平成14年8月28日付け「抗議並びに要求書」と題する書面において,同年7月26日開催の控訴人と被控訴人補助参加人との団体交渉の際における被控訴人補助参加人側交渉員の団体交渉開催場所への移動時間につき控訴人が賃金控除 付け「抗議並びに要求書」と題する書面において,同年7月26日開催の控訴人と被控訴人補助参加人との団体交渉の際における被控訴人補助参加人側交渉員の団体交渉開催場所への移動時間につき控訴人が賃金控除をしたことについて,前事件の調査の席上,控訴人は移動時間について賃金保証の対象となることを確認し,その旨調査調書に記載されていることを取り上げて抗議していること,P3は,同年11月20日,前事件の第5回調査調書の写しを手に入れ,その記載内容を確認しているが,P3を含め控訴人側からは,同調書の記載が誤っている旨の指摘もその訂正の申出等もしていないことが認められる。これに加え,証拠(乙B154)によれば,前事件の第6回調査期日から前事件が取り下げられるまでの間に作成された調査調書及びあっせん調書には,控訴 - 32 -人から賃金保証に関する検討結果の報告や賃金保証はしない旨の発言等がされたことをうかがわせる記載は全くないことが認められる。以上の事実関係に照らすと,P3の上記陳述及び供述部分は信用することができない。 よって,控訴人の上記主張は採用できない。 3 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官房村精一 裁判官中野信也 裁判官滝澤雄次

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