平成13(ネ)90 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年2月27日 名古屋高等裁判所 金沢支部
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判決文本文11,126 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,金205万9072円及び内金192万4150円に対する平成11年8月1日から,内金13万4922円に対する平成13年9月5日から,それぞれ支払済みまで年6分の割合による各金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(控訴の趣旨)主文同旨(ただし,仮執行宣言は,主文第2項及び第3項につき求めた。) 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,割賦購入の斡旋等を業とする控訴人(原審原告)が,加盟店である被控訴人(原審被告)に対し,被控訴人が控訴人のオートローン(立替払契約)を利用して行った自動車の売買契約は不成立または無効であると主張して,「オートローン制度取扱に関する協定書」に基づいて,損害賠償金(違約金)の支払を求めている事案である。 原審において,控訴人は,オートローンの残債務に相当する192万4150円及びこれに対する平成11年8月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めたが,原判決は,控訴人の請求を棄却した。 そこで,これを不服とする控訴人が本件控訴に及んだ。控訴人は,当審における訴え変更の申立書により,原審で請求していた金額に販売促進費相当額である13万4922円を加算し,さらに,附帯請求についても商事法定利率年6分の割合による金員を求めて,請求の趣旨を拡張し,主文第2項のとおりの金員の支払を求めた。 2 前提となる事実(1 当額である13万4922円を加算し,さらに,附帯請求についても商事法定利率年6分の割合による金員を求めて,請求の趣旨を拡張し,主文第2項のとおりの金員の支払を求めた。 2 前提となる事実(1) 控訴人は,割賦購入の斡旋等を業とする株式会社である(当事者間に争いのない事実)。 (2) 被控訴人は,自動車及びその部品の買入,販売,修理加工業務等を業とする株式会社である(当事者間に争いのない事実)。 (3) 平成4年3月11日,被控訴人は,控訴人との間で,「オートローン制度取扱に関する協定書」(以下,「本件協定書」という。)を締結して,控訴人の加盟店となった(当事者間に争いのない事実,甲1号証)。 (4) 本件協定書の第8条には,次のような条項がある(甲1号証)。 「 乙(控訴人を指す。)は,次の各号の1つに該当する場合は,甲(被控訴人を指す。)に対する精算金(立替払金額または融資金額を指す。)・販売促進費の支払義務を免れることができる。なお,この場合において乙より既に当該精算金の支払がなされているときは,甲は,丙(オートローン契約を締結した顧客を指す。)が乙に対して支払うべき金員に見合う額を,販売促進費の支払がなされているときはその金額を加算して直ちに乙に支払うものとする。 ① 売買契約が成立していないとき,無効であるときまたは取消しうるとき。 ② 以下省略 」(5) 平成8年3月13日,控訴人は,同日付けのロータスニューオートローン契約書(甲2号証)に基づき,Aとの間で,後記(6)の売買契約を前提として,売買代金のうち370万円(頭金とされている525万6000円を控除した残金)を控訴人がAに代わって被控訴人に立替払をし,Aは同立替払金額に分割手数料74万8510円を加算した4 契約を前提として,売買代金のうち370万円(頭金とされている525万6000円を控除した残金)を控訴人がAに代わって被控訴人に立替払をし,Aは同立替払金額に分割手数料74万8510円を加算した444万8510円を次のとおり分割して控訴人に支払う旨の立替払契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結し,これと同時に,Bは,同日,Aの本件立替払契約上の債務につき連帯保証した(甲2号証,当事者間に争いのない事実)。 ア支払回数 60回イ支払期間平成8年4月から平成13年3月までウ支払日毎月27日エ分割支払金第1回目7万6610円,第2回目以降7万4100円(6) 平成8年3月13日付けのロータスニューオートローン契約書(甲2号証)には,被控訴人がAに対し,メルセデスベンツ600SEL(型式W140,93年式,以下「本件ベンツ」という。)を代金895万6000円(うち頭金525万6000円)で売却するとの売買契約(以下,この内容の売買契約を「本件売買契約」という。)についての記載がある(甲2号証,なお,本件売買契約が成立したか否かについては,後記のとおり争いがある。)。 (7) 平成8年3月18日,控訴人は,被控訴人に対し,本件売買契約に関する販売促進費として,13万4922円を支払った(甲7号証,原審における証人Cの証言)。 (8) Aは,(5)の分割金について,平成11年1月分までの分と2月分の一部(2450円)を支払ったが,その後支払をしておらず,未払の分割金は,合計で192万4150円となる(甲3号証,弁論の全趣旨)。 第3 当事者双方の主張 1 控訴人(請求原因)(1)(本件売買契約の不成立)ロータスニューオートローン契約書(甲2号証)には,本件ベンツの売買代金は895万600 弁論の全趣旨)。 第3 当事者双方の主張 1 控訴人(請求原因)(1)(本件売買契約の不成立)ロータスニューオートローン契約書(甲2号証)には,本件ベンツの売買代金は895万6000円であり,頭金は525万6000円の支払がなされている旨が記載されている。 しかしながら,被控訴人は,未だ頭金の支払を受けていないと主張するとともに,被控訴人代表者も,「頭金は受領していない。」と述べている。 また,本件ベンツは,株式会社ケー・エス・アール(以下「ケー・エス・アール」という。)からDに,Dから被控訴人にそれぞれ売却された後,被控訴人からAに売却された形をとっているが,ケー・エス・アールからDへの売買代金は360万円,Dから被控訴人への売買代金は367万7461円とされており,これらの価格と比較すると,895万6000円という売買代金は,不自然に高額に過ぎ,仮に被控訴人とAとの間で本件ベンツの売買契約が存在したとしても,代金額を895万6000円とする合意(頭金を525万6000円とする合意)は存在しない。その契約は,本件立替払契約の前提となっている売買契約(売買代金を895万6000円とし,頭金を525万6000円とする契約)とは明らかに異なる売買契約(売買代金370万円とし,頭金をゼロとする契約)である。 立替払契約締結の与信審査に際し,頭金の金額が大きければ大きいほど,その顧客は信用が高いと評価できるのであって,頭金の存在及びその金額の大小は,立替払契約締結の与信審査を行う控訴人にとって,極めて重要な意味を持つ。 したがって,被控訴人とAとの間で本件ベンツの売買契約が存在したとしても,それは,売買契約の重要な要素である代金額の著しく異なる契約であり,上記のような代金額の差は,売買契約の同一性を つ。 したがって,被控訴人とAとの間で本件ベンツの売買契約が存在したとしても,それは,売買契約の重要な要素である代金額の著しく異なる契約であり,上記のような代金額の差は,売買契約の同一性を喪失させるに十分な差異であるから,本件売買契約は不成立であるというべきである。 (2)(本件売買契約の無効)① 被控訴人とAとの間で締結された本件売買契約は,当事者がいずれも真実は本件ベンツを売買する意思がないにもかかわらず,控訴人のオートローンを利用することを目的として,その意思があるかのように仮装されたものにすぎず,通謀虚偽表示により無効である(民法94条1項)。その理由は次のとおりである。 ② 被控訴人代表者は,「頭金は受けとっていない。被控訴人としてはローンだけのつもりでいましたから,頭金をDが受け取り,手数料は被控訴人がもらう形でした。」「被控訴人としては,ローンを使うために名義を貸して,手数料が少し入ってくる感覚でした。」と述べ,本件売買契約が控訴人のローンを利用するためのみの通謀虚偽表示であることを認めている。また,Aの代理人を自称するDも,「被控訴人は,ローンを組むために名前を貸すだけで,それを目的として販売方法をとっただけです。」と述べ,本件売買契約が通謀虚偽表示であることを認めている。 ③ Aが真に本件ベンツを買い受けたのであれば,本件ベンツにつきAへの所有名義登録がなされるのが自然であるにもかかわらず,A名義の所有者登録はなされていない。このことは,本件売買契約が被控訴人とAとの通謀虚偽表示によるものであることを強く推認させる。 ④ 本件売買契約を証する書面は,ロータスニューオートローン契約書(甲2号証)しか存在しないが,同契約書は,被控訴人代表者がDから受領したときは既にほとんど完成した状 ることを強く推認させる。 ④ 本件売買契約を証する書面は,ロータスニューオートローン契約書(甲2号証)しか存在しないが,同契約書は,被控訴人代表者がDから受領したときは既にほとんど完成した状態であった。そして,本件ベンツの売買代金も,売主であるはずの被控訴人ではなく,ケイ・エス・アールの代表者であるBの指示で決定されている。さらに,本件ベンツは,被控訴人からAに直接,引渡しがなされてはいない。以上の事実からも,本件売買契約が通謀虚偽表示によるものであることは明らかである。 (3) よって,本件売買契約は不成立または無効であるから,控訴人は,被控訴人に対し,本件協定書の第8条に基づき,違約金として,Aが控訴人に支払うべき残債務金192万4150円と販売費促進費13万4922円との合計金205万9072円及び内金192万4150円に対する平成11年8月1日(訴状送達の日の翌日)から,内金13万4922円に対する平成13年9月5日(訴え変更の申立書の送達の日の翌日)から,それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 被控訴人(請求原因に対する認否及び反論)(1) 本件売買契約が不成立との主張は争う。 本件売買契約は,約定どおりの内容で成立している。 被控訴人は,売買契約の同一性を偽ってはいない。 控訴人は,契約書作成の段階で頭金の授受がない点を問題にしているが,頭金は,本来,契約書作成の段階ではなく,自動車の授受の段階で交付されればよいはずである。 そして,頭金525万6000円は,本来であれば,被控訴人がAから受けとって,それを仕入れ代金としてDに支払うべきであるが,本件では途中を省略して,DがAから受け取って,同時に被控訴人のDに対する仕入れ代金に充当される段 000円は,本来であれば,被控訴人がAから受けとって,それを仕入れ代金としてDに支払うべきであるが,本件では途中を省略して,DがAから受け取って,同時に被控訴人のDに対する仕入れ代金に充当される段取りが組まれていたものである。 被控訴人としては,この頭金の授受が実際になされると信じていたが,当初の予定に反して,Aが頭金の支払に応じなかったため,頭金不払の事態が生じたものである。 また,本件ベンツの販売代金(諸費用と消費税を除く金額)は,820万円であるが,オートガイド自動車価格月報によれば,本件ベンツと同型の自動車の平均販売価格は890万円とされており,これと比較しても控えめな金額であるから,控訴人が主張するように過大な金額であるとは到底いえない。 (2) 本件売買契約が通謀虚偽表示により無効であるとの主張は争う。 本件売買契約は,約定どおりの内容で有効に成立しており,車両の引渡しも現実に行われている。 第4 当裁判所の判断 1 本件ベンツの売買の経緯等について検討すると,証拠によれば,以下の各事実が認められる(末尾のかっこ内は,裏付けとなる証拠等を示す。)。 (1) ケイ・エス・アールは,自動車の販売及び修理を業とする株式会社であるが,平成7年終わりか平成8年初めころ,アローモータース株式会社から本件ベンツを購入した。 (甲14号証の1,2,原審における証人Bの証言)(2) 平成8年ころ,ケイ・エス・アールは,資金繰りに窮していた。他方,ケイ・エス・アールの代表者Bは,雑誌の出版等を業とする株式会社ユーピークリエーツ(以下「ユーピークリエーツ」という。)ないしその代表者Aに対し,従前から手形貸付けなどをして資金を貸し付けていた。なお,ユーピークリエーツも,平成8年初めころには,経営が悪化しており,平成8年1 (以下「ユーピークリエーツ」という。)ないしその代表者Aに対し,従前から手形貸付けなどをして資金を貸し付けていた。なお,ユーピークリエーツも,平成8年初めころには,経営が悪化しており,平成8年10月ころには手形不渡りを出して,事実上倒産した。 (原審における証人B,同Cの各証言,弁論の全趣旨)(3) Dは,カーサービス北陸という屋号で自動車の買取りや卸販売を行っていたが,平成8年3月ころ,ケイ・エス・アールの代表者Bから,「ケイ・エス・アールからAに本件ベンツをローンを組んで売りたいが,それには保証人を付ける必要がある。Bが保証人となる予定であるが,ケイ・エス・アールが利用しているローン会社(日本信販)では,売主の代表者のB自身が保証人となることはできない。 したがって,ケイ・エス・アールがAに本件ベンツを販売することはできないので,Dがケイ・エス・アールに代わってAに本件ベンツを販売してほしい。370万円でローンを組んでほしい。」との依頼を受けた。しかしながら,D(カーサービス北陸)は,ローンの取扱いをしていなかったため,Bに対し,その旨を伝えた。そこで,Bは,Dと協議して,ケイ・エス・アールが本件ベンツをDに売り,さらに,Dが本件ベンツを被控訴人に売ったことにして,被控訴人が控訴人のローンを利用して,本件ベンツをAに売却するという方法を計画した。そのように被控訴人を介在させることとしたのは,被控訴人においては,控訴人のローンを取り扱っており,従来から,Dは,自動車を購入する客がローンを組む必要がある場合,それを可能にするためにDから被控訴人に当該自動車を売却し,控訴人のローンを組んで被控訴人からDの客に対して当該自動車を売却するという方法をとっていたためである。 (乙6号証,7号証,原審における証人D及び同Bの各証言,弁論の全 訴人に当該自動車を売却し,控訴人のローンを組んで被控訴人からDの客に対して当該自動車を売却するという方法をとっていたためである。 (乙6号証,7号証,原審における証人D及び同Bの各証言,弁論の全趣旨)(4) その後,Dは,被控訴人代表者に対し,「Dの客であるAに対しローンを組んで,本件ベンツを売却したい。Dから被控訴人に本件ベンツを売却して,被控訴人が控訴人のローンを組んでAに本件ベンツを売却する方法をとってほしい。」と依頼し,被控訴人代表者もこれを了承した。 (乙6号証,7号証,原審における証人Dの証言及び被控訴人代表者尋問の結果)(5) そこで,被控訴人代表者は,Dに対し,ロータスニューオートローン契約書の用紙(未記入のもの)を交付し,Dは,同用紙をBに交付した。その後,Bは,370万円という金額のローンを組みたいので,本件ベンツの代金は820万円としたいとの希望をDに述べて,本件ベンツの販売支払条件について,①商品(車輌本体)代金と④現金価格計(①+②+③)の各欄に「8200000」,⑤諸費用の欄に「510000」,⑥消費税額合計の欄に「246000」,⑦現金価格合計(④+⑤+⑥)の欄に「8956000」,⑧現金(頭金)と⑩計(⑧+⑨)の各欄に「5256000」,⑪残金(⑦-⑩)の欄に「¥3700000」と,同用紙に金額を自ら記入した。そして,同用紙の契約者(本件立替払契約の契約当事者であり,本件ベンツの購入者)の欄にAが,連帯保証人(本件立替払契約に基づくAの債務についての連帯保証人)の欄にBがそれぞれ署名押印した。その後,Dは,被控訴人代表者に対し,本件ベンツの代金を820万円とし,ローンの金額は370万円にしてほしいとのBの希望を伝えた上で,ロータスニューオートローン契約書の用紙を返戻した。そして,被控訴人代表者にお 被控訴人代表者に対し,本件ベンツの代金を820万円とし,ローンの金額は370万円にしてほしいとのBの希望を伝えた上で,ロータスニューオートローン契約書の用紙を返戻した。そして,被控訴人代表者において,本件ベンツの販売支払条件について,⑫分割払手数料の欄に「748510」,⑬分割支払金合計(⑪+⑫)の欄に「4448510」と,同用紙に金額を記入して,本件ベンツに関するロータスニューオートローン契約書(甲2号証,以下「本件契約書」という。)が完成した。 (甲2号証,原審における証人D及び同Bの各証言及び被控訴人代表者尋問の結果)(6) 被控訴人は,本件契約書を控訴人に提出して,立替払契約の申し込みをした。控訴人の担当者は,A及び被控訴人に対して,電話でそれぞれ契約内容の確認(与信調査)をした。その際,被控訴人代表者は,「頭金は現金である」との趣旨の回答をした。その後,控訴人は,上記申し込みを了解して,本件立替払契約が成立した。 (甲2号証,8号証,乙7号証,原審における証人Cの証言及び被控訴人代表者尋問の結果,弁論の全趣旨)(7) 平成8年3月18日,本件立替払契約に基づいて,控訴人から被控訴人にローン金額370万円と販売促進費13万4922円の合計383万4922円が支払われた。翌3月19日,被控訴人は,Dに対し,本件ベンツの売買代金として376万7461円を支払い,その後,Dは,Bに対し,本件ベンツの売買代金として360万円を支払った。この結果,被控訴人は,383万4922円(ローン金額370万円と販売促進費13万4922円の合計)から,Dに対し支払った376万7461円を控除した差額である6万7461円(これは,販売促進費の13万4922円の2分の1に相当する金額である。)の利益を得,また,Dも,被控訴人から受け取った376 ,Dに対し支払った376万7461円を控除した差額である6万7461円(これは,販売促進費の13万4922円の2分の1に相当する金額である。)の利益を得,また,Dも,被控訴人から受け取った376万7461円から,Bに支払った360万円を控除した差額である16万7461円の利益を得た。 (甲7号証,乙1号証,6号証,7号証,原審における証人D,同B並びに同Cの各証言及び被控訴人代表者尋問の結果)(8) 本件売買契約においては,本件ベンツの売買代金(諸費用と消費税を含んだ金額)は895万6000円とされ,その頭金は525万6000円とされているが,実際には,Aが頭金525万6000円を支払ったことはなかった。 (原審における証人Bの証言及び被控訴人代表者尋問の結果,弁論の全趣旨)(9) Dは,本件売買契約及び本件立替払契約にあたって,被控訴人に対しA及びBを紹介したのであるが,Dとしても,本件売買契約につき,「被控訴人は,ローンを組むために名前を貸しただけである。」との認識を有していた。 (原審における証人Dの証言)(10) ケイ・エス・アール(代表者B)は,本件ベンツについて,平成8年4月8日,所有者をケイ・エス・アールとする移転登録手続をし,その後,本件ベンツを株式会社関西自動車(以下「関西自動車」という。)に売却した。そして,平成8年6月21日,本件ベンツについて,所有者を関西自動車とする移転登録がなされた。本件ベンツについては,Aの所有名義に移転登録がされることは一切なかった。 (甲14号証の1,2,原審における証人Bの証言)(11) なお,平成8年4月ころ,被控訴人は,控訴人から本件ベンツの自動車検査証の写しを提出するよう指示され,Dを介して,Bに対し,本件ベンツの名義変更を早く行うよう依頼した。これを受けたBは,本件ベン ) なお,平成8年4月ころ,被控訴人は,控訴人から本件ベンツの自動車検査証の写しを提出するよう指示され,Dを介して,Bに対し,本件ベンツの名義変更を早く行うよう依頼した。これを受けたBは,本件ベンツの自動車検査証(所有者がケイ・エス・アールとなっていたもの)を利用して,同検査証の所有者の氏名又は名称欄及び所有者の住所欄にそれぞれAの氏名と住所を印刷したものを貼り付けてこれを複写し,平成8年4月8日に本件ベンツの所有者がAに移転した旨の偽造の自動車検査証の写しを作成して,これをDを通じて被控訴人に提出した。そして,被控訴人は,これを控訴人に提出した。 (甲6号証,乙5号証ないし7号証,原審における証人D及び同Bの各証言及び被控訴人代表者尋問の結果,弁論の全趣旨) 2 以上の各事実が認められ,他に,上記認定を覆すに足る証拠はない。 ところで,被控訴人は,本件売買契約において,車両の引渡しも現実に行われている旨主張する。そして,原審において,証人Dは,「Dは,ケイ・エス・アールから本件ベンツの引渡しを受けて,2,3日本件ベンツに乗車した後,実際に,被控訴人の事務所に本件ベンツを持っていった。その後,契約書ができてから,Dは,本件ベンツを引き取って,Bに本件ベンツを引き渡した。」と証言し,被控訴人代表者も,「本件ベンツは,現実にDから引き渡しを受けて,被控訴人の駐車場に置いてあった。契約が成立してから,Dに本件ベンツを引き渡した。」と供述する。 しかし,実際に本件ベンツが被控訴人に納車され,その後,被控訴人がDに本件ベンツを引き渡したこと等を裏付けるに足る客観的な証拠はないから,証人Dの上記証言や被控訴人代表者の上記供述は直ちに信用できず,被控訴人の上記主張も採用できない。 3 以上によれば,本件においては,① 本件ベンツの所有者 を裏付けるに足る客観的な証拠はないから,証人Dの上記証言や被控訴人代表者の上記供述は直ちに信用できず,被控訴人の上記主張も採用できない。 3 以上によれば,本件においては,① 本件ベンツの所有者であり,もともとの売主とされるケイ・エス・アールの代表者であるBが,本件立替払契約に関して,A(本件ベンツの買主)の連帯保証人となっていること,② 本件ベンツの頭金とされる525万6000円については,実際に授受された形跡がないこと,③ 本件売買契約の当事者ではないBが,370万円という金額のローンを組みたいために,本件ベンツの代金を820万円と決定し,本件契約書にもその旨の金額を自ら記入しており,本件売買契約の売主である被控訴人は,代金や頭金の額の決定に全く関与していないこと,④ 本件ベンツは,本件売買契約の後に,ケイ・エス・アールから第三者(関西自動車)に対し売却されて,その旨の移転登録がなされ,結局のところ,本件売買契約の買主であるAの所有名義になっていないこと,⑤ 被控訴人代表者は,控訴人からの契約内容の確認(与信調査)に対して,頭金525万6000円を授受していないにもかかわらず,「頭金は現金である」との趣旨の回答をしていること等,通常の取引事例とは異なる極めて不自然な事実のあることが認められる。さらに,これらの事実に加えて,⑥ 平成8年ころ,ケイ・エス・アールは資金繰りに窮していたこと,⑦ ケイ・エス・アールの代表者Bは,ユーピークリエーツないしその代表者Aに対し,従前から手形貸付けなどをして資金を貸し付けていたこと,⑧ しかしながら,ユーピークリエーツも,平成8年初めころには,経営が悪化していたこと,等の諸事実を併せて総合すると,本件立替払契約(オートローン)は,ケイ・エス・アールの代表者Bが資金繰りに困って,資金を得るために仕 ーピークリエーツも,平成8年初めころには,経営が悪化していたこと,等の諸事実を併せて総合すると,本件立替払契約(オートローン)は,ケイ・エス・アールの代表者Bが資金繰りに困って,資金を得るために仕組んだものであると推認される。したがって,本件売買契約は,控訴人から資金を得る手段として,被控訴人とAとの間で形式上仕組まれたものであって,通謀虚偽表示により無効であると認められる。 このことは,被控訴人代表者自身,原審の尋問で,「被控訴人としては,ローンを使うために名義を貸して,手数料が少し入ってくる感覚でした。」と供述していることからも裏付けられるところである。 4 なお,証人D及び被控訴人代表者は,原審において,「Dが,Dの客に販売する際に,控訴人のローンを利用するにはどうしたらよいかとCに尋ねたところ,Cは,Dが被控訴人に対し自動車を売り,被控訴人の客として設定する形であれば,控訴人のローンを利用してよい旨の回答をしており,そのような販売方法を了解していた。」との趣旨の証言ないし供述をしている。 しかしながら,証拠(原審における証人Cの証言)によれば,Cは,平成8年3月か4月から,被控訴人の担当者になったことが認められるから,上記の証言ないし供述は直ちに採用できない。また,仮に,上記の証言ないし供述が真実であるとしても(あるいは,上記の証言ないし供述が,Cの前任の控訴人担当者がそのような了解をしていたとの趣旨であると理解するとしても),控訴人担当者が仮装の売買契約を許容していたと認めるのは困難であるから,いずれにしても,控訴人の本訴請求を妨げる事情になるものではない。 5 結論以上によれば,本件売買契約は無効(民法94条1項)であるから,その余の点につき判断するまでもなく,被控訴人は,控訴人に対し,本件協定書の第8 請求を妨げる事情になるものではない。 5 結論以上によれば,本件売買契約は無効(民法94条1項)であるから,その余の点につき判断するまでもなく,被控訴人は,控訴人に対し,本件協定書の第8条に基づき,違約金として,本件立替払契約上のAの残債務金192万4150円と販売促進費13万4922円との合計金205万9072円及び内金192万4150円に対する平成11年8月1日(訴状送達の日の翌日)から,内金13万4922円に対する平成13年9月5日(訴え変更の申立書の送達の日の翌日)から,それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当でないから,これを取り消した上で,控訴人の本訴請求を認容することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官源孝治裁判官榊原信次

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