平成29年9月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年第1695号損害賠償請求事件(口頭弁論終結日平成28年8月23日)判決 主文 1 被告は,原告Aに対し,1134万9434円及びこれに対する平成26年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,209万5660円及びこれに対する平成26年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告C及び原告Dに対し,各5万5000円及びこれらに対する平成26年4月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを14分し,その1を被告の負担とし,その余は原告らの負担とする。 6 この判決は,1項ないし3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,1億4679万0003円及びこれに対する平成26年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,2968万8331円及びこれに対する平成26年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告C及び原告Dに対し,各515万円及びこれらに対する平成26年4月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,Eが運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と,Fが運転するパトカー(以下「被告車」という。)が衝突し,E及び原告車に同乗 していたGが死亡した交通事故(以下「本件事故」という。)に関して,Eの夫でGの父である原告A,Eの子である原告B並びに 転するパトカー(以下「被告車」という。)が衝突し,E及び原告車に同乗 していたGが死亡した交通事故(以下「本件事故」という。)に関して,Eの夫でGの父である原告A,Eの子である原告B並びにEの両親である原告C及び原告Dが,被告に対し,それぞれ,国家賠償法1条1項ないし自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条に基づき,損害賠償金(原告Aについては1億4679万0003円,原告Bについては2968万8331円,原告C及び原告Dについては各515万円)及びこれに対する本件事故日である平成26年4月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 判断の前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いのない事実並びに括弧内に摘示する証拠(書証は枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。 当事者等ア原告Aは,E(生年月日略)の夫であり,G(生年月日略)は,原告A及びEの長男,原告B(生年月日略)は,二男である。 原告CはEの父,原告DはEの母である。 イ F(生年月日略)は,平成14年に兵庫県巡査に任用された警察官である。Fは,平成15年にa警察署に配置され,平成19年にはb警察署の地域課交番勤務となり,事件事故の取扱いや巡回連絡を主に行った後,平成21年,巡査長に任用され,平成25年3月から本件事故当日に至るまで,c警察署のd駐在所に勤務し,事件事故の処理,学童保護立番や巡回連絡などの業務を行っていた。 (甲1ないし4,乙24)本件事故の発生ア日時平成26年4月13日午後0時25分ころイ場所兵庫県c市edf番地g(以下「本件事故現場」という。)。 本件事故現場 し4,乙24)本件事故の発生ア日時平成26年4月13日午後0時25分ころイ場所兵庫県c市edf番地g(以下「本件事故現場」という。)。 本件事故現場は,概ね南北に通じる道路(以下「南北道路」という。)と概ね東西に通じる道路(以下「東西道路」という。)が十字に交わる信号機により交通整理が行われている交差点(以下「本件交差点」という。)内である。 ウ原告車原告Aが所有し,Eが運転する普通乗用自動車(ナンバー略)で,本件事故時,助手席にはGが,後部座席には原告Bが,それぞれ同乗していた。 エ被告車兵庫県警察本部が所有し,Fが運転する普通乗用自動車(パトカー,ナンバー略)で,被告は,被告車の運行供用者(自賠法3条)である。なお,本件事故当時,被告車には,構造上の欠陥または機能の障害はなかった。 オ事故態様原告車と被告車が,出合い頭に衝突した。 (甲1,乙6,9,24) 本件事故現場付近の道路状況は,別紙図面のとおりである。南北道路及び東西道路はいずれも片側1車線の道路で,本件交差点には信号機が設置されている(以下,本件交差点に設置された東西道路を走行する車両の対面信号機を「東西信号機」といい,南北道路を走行する車両の対面信号機を「南北信号機」という。)。南北道路には時速50キロメートル,東西道路には時速40キロメートルの速度制限があるが,本件事故現場付近は人家のほとんどない非市街地で,本件交差点の四囲には農地が広がり,見通しは良い。 東西信号機は,Ⓐ青色表示が25秒間,Ⓑ黄色表示が4秒間,Ⓒ赤色表示が41秒間の70秒周期(ⒶⒷⒸ)の定周期式信号機で,南北信号機は,ⓐ青色表示が31秒間,ⓑ黄色表示が4秒間,ⓒ赤色表示が35秒間の70秒 機は,Ⓐ青色表示が25秒間,Ⓑ黄色表示が4秒間,Ⓒ赤色表示が41秒間の70秒周期(ⒶⒷⒸ)の定周期式信号機で,南北信号機は,ⓐ青色表示が31秒間,ⓑ黄色表示が4秒間,ⓒ赤色表示が35秒間の70秒周期(ⓐⓑⓒ)の定周期式信号機である。いずれの信号機も,一方が青色若しくは黄色表示の場合には他方が赤色表示となり,一方の黄色表示が終わってから3秒間は,他方も赤色表示となる(以下「全赤状態」という。)。 原告車は南北道路を南進し,被告車は東西道路を東進していたところ,本件事故現場において,原告車の右側面部と被告車の前部が衝突した。本件事故の衝撃により,原告車は左側に横転した後,横転したまま前方に滑って,原告車の前部と上部(天井部分)が本件交差点の南東角にある信号機の支柱に衝突した。原告車の損傷状況は,右側面凹損,左側面擦過,フロントガラス破損,ルーフ前部破損等大破で,自力走行不能である。被告車は,前部擦過凹損等小破の損傷であった。なお,本件事故当時の天候は晴れである。 (乙1ないし7) E及びGは,いずれも本件事故による脳挫傷に起因する外傷性ショックにより,Eは平成26年4月13日午後1時39分に,Gは同日午後1時43分に,それぞれ死亡した。 (甲5) 原告Aは,平成26年9月2日,H株式会社から,Eにかかる人身傷害保険金4615万9131円及びGにかかる人身傷害保険金4101万4274円の支払を受けた。 (甲11,12) 3 争点 事故態様及び責任原因 損害額 4 争点に対する当事者の主張 (事故態様及び責任原因)について(原告らの主張)ア原告車は,南北信号機が青色表示(遅くとも全赤状態)の時点で,本件交差点に進入しているから,被告車 対する当事者の主張 (事故態様及び責任原因)について(原告らの主張)ア原告車は,南北信号機が青色表示(遅くとも全赤状態)の時点で,本件交差点に進入しているから,被告車が,東西信号機の赤色表示を無視して本件交差点に進入したといえる。 イまた,信号表示の点は措いても,Fは,別紙図面㋑地点(以下,別紙図 面の各地点を「㋑地点」などという。)で原告車を確認した後,㋓地点で原告車を確認し,危険を感じたと説明し,さらに,㋒地点と本件交差点西詰停止線との間でも,原告車の走行状況を確認しているところ,原告車の走行状況(被告の主張によれば時速60キロメートル程度)を確認していたのであれば,本件事故現場付近の見通しが極めて良好であったのであるから,本件事故の発生を十分に予見できたはずであり,クラクションを鳴らしたり,急ブレーキをかけたり,急ハンドルを切ったりするという対応は可能で,それらの対応により本件事故を回避することも十分可能であったというべきである。 ウしたがって,Fには,自動車運転者として前後左右の状況を注視して走行すべき義務があるところ,東西信号機の表示を確認せずに,また,本件交差点に近づいてくる原告車の走行状況等を十分に確認せずに,漫然と本件交差点に進入した過失が認められる。 エ Fは,兵庫県警の警察官として警ら中に本件事故を起こしており,さらに,被告車の運行供用者は被告であるから,被告は,国家賠償法1条1項ないし自賠法3条に基づき,原告らに対する損害賠償義務を負う。 (被告の主張)ア原告らの主張については,否認し争う。 イ被告車は,東西信号機の青色表示に従い本件交差点に進入したが,本件事故が発生した。したがって,原告車が南北信号機の赤色表示を無視して本件交 )ア原告らの主張については,否認し争う。 イ被告車は,東西信号機の青色表示に従い本件交差点に進入したが,本件事故が発生した。したがって,原告車が南北信号機の赤色表示を無視して本件交差点に進入したことが明らかであり,本件事故は,Eが,南北信号機の赤色表示に従い,本件交差点に進入してはならない注意義務に違反したことにより発生したものというほかない。 ウ他方で,Fは,被告車を運転し,時速40キロメートル程度の速度で東西道路を東進しており,㋐´地点で,東西信号機が青色表示であることを確認し,㋑地点で,①地点を走行する原告車を認め,㋒地点で,Ⓐ地点に 停止車両を認めた。さらに,Fは,本件交差点西詰停止線の手前で,東西信号機が青色表示であることを確認し,歩行者用信号も青色点滅ではなく青色表示であることを確認した上で,本件交差点に進入し,㋓地点で,原告車が②地点でも停止することなく本件交差点に進入してきたことを認めて危険を感じ,直ちにブレーキ操作をしたものの,間に合わずに,本件事故が発生したものである。 信号機による交通整理が行われている交差点を通過する車両は,通常,互いが対面信号機の表示に従って行動するであろうことを信頼するもので,信号無視をする車両が存在することを想定して,交差点の手前で停止できるように減速し,左右の安全を確認しなければならない義務などはない。 原告車は,ごく普通に直進しており,信号無視をするような走行態様ではなかったので,Fにおいて,原告車が南北信号機の赤色表示に従い,本件交差点北詰停止線の手前で停止するであろうと予測することは自然であるから,原告車が信号無視をして本件交差点に進入することまで予測して,本件交差点の手前で減速しあるいは左右の安全を確認する注意義務まで負わないと 止線の手前で停止するであろうと予測することは自然であるから,原告車が信号無視をして本件交差点に進入することまで予測して,本件交差点の手前で減速しあるいは左右の安全を確認する注意義務まで負わないというべきであり,Fには過失は認められない。 エしたがって,被告は,原告らに対して,損害賠償義務を負わない。 (損害額)について(原告らの主張)ア Eの損害額 9675万3327円 葬儀費 150万0000円 逸失利益 5525万3327円Eは看護師であり,子どもも成長したので近く看護師として復職する予定であった。Eの看護師としての年収は493万2408円(平成22年分)であり,これを基礎収入として,生活費控除率30パーセント,就労可能年数33年として逸失利益が算定されるべきである。 (計算式)493万2408円×(1-0.3)×16.003(33年間に対応するライプニッツ係数) 慰謝料 4000万0000円イ Gの損害額 6722万5008円 葬儀費 150万0000円 逸失利益 3572万5008円基礎収入を529万6800円(賃金センサス平成24年男性・学歴計・全年齢)として,生活費控除率30パーセント,就労可能年数49年(死亡時5才)として逸失利益が計上されるべきである。 (計算式)529万6800円×(1-0.3)×9.6352(62年間に対応するライプニッツ係数-13年間に対応するライ 年(死亡時5才)として逸失利益が計上されるべきである。 (計算式)529万6800円×(1-0.3)×9.6352(62年間に対応するライプニッツ係数-13年間に対応するライプニッツ係数) 慰謝料 3000万0000円ウ原告ら固有の損害 原告A 500万0000円原告Aが,若き妻を失った悲しみは大きく,固有の慰謝料として500万円を請求する。 原告B 500万0000円原告Bが,幼くして母を失った悲しみは大きく,固有の慰謝料として500万円を請求する。 原告C及び原告D 各500万0000円原告C及び原告Dには,娘を本件事故によって失った絶望に近い悲しみがあり,固有の慰謝料として各500万円を請求する。 エ弁護士費用 原告A 200万0000円 原告B 50万0000円 原告C及原告D 各15万0000円オ請求額 原告A 1億4679万0003円Eの法定相続人は,原告A(法定相続分2分の1),G(法定相続分4分の1),原告B(法定相続分4分の1)の3名であり,Gの法定相続人は,原告Aのみである。 (計算式)9675万3327円×1/2+(6722万5008円+9675万3327円×1/4)+500万円+200万円 原告B みである。 (計算式)9675万3327円×1/2+(6722万5008円+9675万3327円×1/4)+500万円+200万円 原告B 2968万8331円(計算式)9675万3327円×1/4+500万円+50万円 原告C及び原告D 各515万0000円(計算式)各500万円+各15万円(被告の主張)すべて不知。 第3 当裁判所の判断 事故態様及び責任原因)について 判断の前提となる事実,証拠(甲7ないし10,乙2ないし7,10,13ないし24,証人I,証人J,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ただし,上記各証拠のうち,下記の認定に反する部分は採用しない。 ア Fは,平成26年4月13日(以下同日については日付を省略する。)午前2時までの夜間勤務を終えた後,d駐在所で仮眠を取り,午前8時か ら被告車を運転してd駐在所管内全域の警らに出かけた。一旦d駐在所に戻り,午前10時から,h方面で,5つに分けられた兵庫県c警察署の管轄区域の各ブロック内の駐在所・交番の警察官が交通取締りや防犯活動などを連携して行うブロック活動の一環として,交通取締りを実施し,午後0時過ぎに活動を終えた。そして,住民から相談を受けていた不審車両の調査結果の説明のためiへ出向いた後,d駐在所へ帰所するために,被告車を運転して,警らをしながら,東西道路を東進していた。Fは,パトカーを運転する際には交通事故や各種事件の未然防止のために赤色灯を作動させるよう指示されていたので,被告車の赤色灯を作動させて走行していたが,サイレンの吹鳴まではして 道路を東進していた。Fは,パトカーを運転する際には交通事故や各種事件の未然防止のために赤色灯を作動させるよう指示されていたので,被告車の赤色灯を作動させて走行していたが,サイレンの吹鳴まではしていなかった。 イ被告車は,時速約40キロメートルの速度で,東西道路を東進し,㋐地点に到達した。なお,東西道路においては,㋐地点から東には,北側(左方)に建物等がなく農地のみになるので,運転者は,東西道路の北側については,南北道路を含めてかなりの距離を見通すことができる。 Fは,被告車を運転し,東西道路をそのまま時速約40キロメートルで東進し,㋑地点において,時速50ないし60キロメートルで南北道路を南進する原告車を①地点に確認した後,㋒地点で,本件交差点南詰停止線付近(Ⓐ地点)に,先頭車であるI運転に係る普通貨物自動車(以下「I車」という。)が停車するかしないかの速度でいるのを見て,I車が停止しているものと認識した。さらに,Fは,㋒地点と本件交差点西詰停止線の間を走行しているときに,再度,速度を落とすことなく南進する原告車を見るとともに,東西信号機の青色表示と東西道路側の歩行者用信号機の青色表示を確認し,東西信号機が青色表示時に被告車を本件交差点に進入させた。 Fは,被告車が㋓地点で,減速することなく走行してくる原告車を②地点に確認し,衝突の危険を感じて被告車のブレーキをかけたが,間に合わ ず,㋔地点で原告車(③地点)に衝突し地点),本件事故が発生した。原告車は,時速50ないし60キロメートルで南北道路を南進し,南北信号機が赤色表示時に本件交差点に進入したものである。 本件事故は,東西信号機が青色表示になってから数秒のうちに,すなわち全赤状態が終了してから数秒のうちに発生している。 ウ各地点間の距 信号機が赤色表示時に本件交差点に進入したものである。 本件事故は,東西信号機が青色表示になってから数秒のうちに,すなわち全赤状態が終了してから数秒のうちに発生している。 ウ各地点間の距離は,東西道路について,㋐地点から㋑地点までが63. 6メートル,㋑地点から㋒地点までが11.0メートル,㋒地点から㋓地点までが33.7メートル,㋓地点から㋔地点までが11.9メートル,㋒地点から本件交差点西詰停止線までが約24.6メートル,本件交差点西詰停止線から地点(本件事故現場)までが約21メートルで,南北道路について,①地点から②地点までが62.6メートル,②地点から③地点までが18.1メートル,②地点から本件交差点北詰停止線までが約0. 6メートルである。 エ Iは,I車を運転して,制限速度である時速50キロメートル程度の速度で,南北道路を本件交差点に向けて北進し,本件交差点南詰停止線から約40メートル南側の地点で,南北信号機が青色表示から黄色表示に変わったのを見て,ブレーキを踏み始め,その後も,何度もブレーキを踏み,速度を落としながら,ごく低速で本件交差点南詰停止線手前付近(Ⓐ地点)まで到達した。その後,ドーンという音と同時に前方に目をやると,原告車が横転し,本件交差点の角にある信号機の支柱に衝突する様子を目撃した。 オ娘のバレーボールの試合会場へ急ぎ向かっていたJは,普通乗用自動車(以下「J車」という。)を運転して,I車と同程度の速度で,I車の後方を走行していた。 Jは,先頭車であるI車が本件交差点南詰停止線手前付近にいるのを見 て,J車をI車の後方に停車させたが,南北信号機の表示とI車が停止していることとの間に違和感は覚えなかった。 J車が停止した後,Jは,南北道路を南進し,本件交差点に進入してきた原告車を て,J車をI車の後方に停車させたが,南北信号機の表示とI車が停止していることとの間に違和感は覚えなかった。 J車が停止した後,Jは,南北道路を南進し,本件交差点に進入してきた原告車を認識し,原告車の右側面部に,東西道路を東進して本件交差点に進入してきた被告車の前部が衝突し,原告車が横転しながら,信号機の支柱に衝突した後,停止するのを目撃した。 原告らは,原告車が南北信号機の青色表示(遅くとも全赤状態)の時点で本件交差点に進入したと主張する。 しかし,原告車が南北信号機の青色表示の時点で本件交差点に進入したとの主張は,Iが南北信号機の青色表示が黄色表示に変わるのをみて減速を始めたことなどのI車の動きとは全く整合しない。また,Iが南北信号機の表示が青色表示から黄色表示に変わるのを見てから原告車が本件交差点に進入するまでの間には,I車が時速約50キロメートルから減速しながら本件交差点南詰停止線付近(Ⓐ地点)まで走行し,その後,I車に続いてJ車が停車するに足りる時間を要するのであり,I車の当初の速度,減速の方法や走行距離に照らすと,Iが南北信号機の表示が青色表示から黄色表示に変わるのを見てから原告車が本件交差点に進入するまでの時間が南北信号機の黄色表示及び全赤状態を合わせた7秒に満たないとは考え難いし,Jが,J車が停車した後に本件交差点に進入してくる原告車を目撃していることも併せ考えると,原告車が全赤状態で本件交差点に進入したとも認められない。 原告らは,被告車が東西信号機の赤色表示を無視して本件交差点に進入したと主張し,その根拠として,Iが本件事故は信号の変わり目の事故であった旨陳述あるいは供述していることを挙げる(平成28年8月22日付け準備書面など)。しかし,Iは,証人尋問等において,南北信号機が青 と主張し,その根拠として,Iが本件事故は信号の変わり目の事故であった旨陳述あるいは供述していることを挙げる(平成28年8月22日付け準備書面など)。しかし,Iは,証人尋問等において,南北信号機が青色表示から黄色表示に変わったのを見て本件交差点南詰停止線で停止しようとした ことは明確に述べるものの,その後は南北信号機の表示を確認していない。 そのことは,Iがドーンという音と同時に原告車が横転する様子を見たと述べ(調書5頁など),先頭車の運転者であるIが南北信号機を見ていれば当然目に入るはずである南進する本件事故前の原告車の動向について全く言及していないこととも符合する。また,Iは,本件事故の発生時期につき,I車が止まるか止まらないかぐらいのときにドーンという音が聞こえたと思うが,記憶ははっきりしないとも供述する(調書2,3,11頁)。そうすると,本件事故は信号の変わり目の事故であったとのIの供述等は,本件事故は,南北信号機が青色表示,黄色表示,そして赤色表示に変わっていく過程の中で発生したものであり,少なくとも南北信号機の赤色表示が長く続いている状態で発生したのではないとの趣旨で理解するのが相当である。 したがって,原告車が南北信号機の青色表示(遅くとも全赤状態)の時点で本件交差点に進入したとの原告らの主張は採用できない。 一方被告は,Fが,東へ40.9メートル進行した㋐´地点で,東西信号機が青色表示であることを確認し,本件交差点西詰停止線手前でも東西信号機の青色表示が継続していることを確認した上で,被告車を本件交差点に進入させたと主張し,Fもこれに沿う陳述ないし供述をする。 しかし,被告車が㋐´地点を走行していた時点で,東西信号機が既に青色表示であったとすると,被告車が㋐´地点から地点まで走行する間,東西信号 入させたと主張し,Fもこれに沿う陳述ないし供述をする。 しかし,被告車が㋐´地点を走行していた時点で,東西信号機が既に青色表示であったとすると,被告車が㋐´地点から地点まで走行する間,東西信号機の青色表示が継続していたことになるところ,㋐´地点から地点までの距離は79.3メートルであり(乙2,証人F〈調書3頁〉),被告車が時速約40キロメートルで走行していたことも踏まえると,その時間は7秒を超える(79.3メートル×3600秒÷40000メートル)。そうすると,原告車は全赤状態が終了してから7秒以上経ってから本件交差点に進入したことになり,また本件事故は,Iが,南北信号機が青色表示から黄色表示に変わったのを見て減速を始めてから14秒(3秒〈黄 色表示〉+4秒〈全赤状態〉+7秒)以上経ってから発生したことになるが,これは,I車及びJ車の走行状況やI及びJの認識する事実経過など(上記,オ)とは整合しない。 したがって,上記被告の主張のうち,Fが㋐´地点で東西信号機の青色表示を確認したとの部分は採用でき点西詰停止線の間で東西信号機の青色表示を確認したとの限度で認定できるにとどまる。 責任原因(自賠法3条に基づく損害賠償責任)についてア次に,被告車の運転者であるFが,自動車の運行に関して注意を怠らなかったといえるか否か,すなわち,本件事故について過失がないといえるか否かについて検討する。 イ本件事故は,信号機による交通整理の行われている交差点における直進車同士の出合い頭衝突事故であり,被告車の対面信号機である東西信号機は青色表示で,原告車の対面信号機である南北信号機は赤色表示である。 そして,自動車運転者は,通常,信号機の表示するところに従って自動車を運転すれば足り,特別な事情のないかぎり,赤信号を る東西信号機は青色表示で,原告車の対面信号機である南北信号機は赤色表示である。 そして,自動車運転者は,通常,信号機の表示するところに従って自動車を運転すれば足り,特別な事情のないかぎり,赤信号を無視して交差点に進入してくる車両のありうることまでも予想すべき注意義務がないものと解される(最高裁判所昭和43年12月24日第三小法廷判決・裁判集刑事169号905頁参照)。 ウ Fは,㋒地点と本件交差点西詰停止線の間で東西信号機が青色表示であることを確認し,その直前の㋒地点で,本件交差点南詰停止線付近(Ⓐ地点)にI車が停止していると認識しているから,本件交差点に向かって南北道路を走行する車両は,南北信号機の赤色表示に従った走行方法をとるのが自然であると認識し得たといえる。そして,Fは,原告車が時速50ないし60キロメートルから減速する様子もなく南北道路を南進しているのを,被告車が地点を越え本件交差点西詰停止線に達 するまでの間で再度確認しているのであり,Fが十分な経験を有する警察官であり(判断の前提となる事実の赤色灯を作動させて警ら中であったことを併せ考えると,対面信号機が赤色表示であるにもかかわらず,減速しないという走行方法をとる車両の運転者が,道路交通法等の法規に違反する可能性を認識し得るというべきである。 Fいるが,時速約40走行する間に,時速50ないし60キロメートルで走行する原告車が本件交差点に近づく距離は,それを上回ることとなる。そしてF,I車が停止していると認識した後,㋒地点と本件交差点西詰停止線の間で,東西信号機及び東西道路側の歩行者用信号機の青色表示を確認するとともに,再度,時速50ないし60キロメートルのまま走行する原告車を確認しているのであるから,二度目に原告車を確認した時点では,南北信号機 西信号機及び東西道路側の歩行者用信号機の青色表示を確認するとともに,再度,時速50ないし60キロメートルのまま走行する原告車を確認しているのであるから,二度目に原告車を確認した時点では,南北信号機が赤色表示である本件交差点に向けて直進する原告車の運転方法が自然ではなく,原告車の運転者が前方不注視等により,南北信号機の赤色表示に従わずに走行している可能性を認識し,そのまま本件交差点に進入する可能性を認識し得たといえる。 また,約21メートル,被告車の速度が時速約40キロメートルであったことに照らせば,Fが,二度目に原告車を確認した時点で,被告車を停止させるなどの措置を講じていれば,本件事故を回避することができたというべきである。この点については,F分に止まれる旨供述している(調書10頁)。 そうすると,Fに過失がないとまではいえず,被告車の運行供用者である被告について,自賠法3条ただし書きによる免責は認められない。よって,被告は,自賠法3条に基づき,Eらに生じた損害を賠償する責任を負 う(国家賠償法1条1項に基づく責任の有無については,必要がないので判断しない。)。 もっとも,Eが,原告車を運転して,南北信号機の赤色表示に従わずに本件交差点に進入した過失が極めて重大であることに照らすと,Eの過失として9割の過失相殺をするのが相当である。 損害額)について Eの損害額 722万2643円ア葬儀費 150万0000円判断の前提となる事実及び弁論の全趣旨により,葬儀費用として150万円を損害と認める。 イ逸失利益 4972万6438円証拠(甲6, 判断の前提となる事実及び弁論の全趣旨により,葬儀費用として150万円を損害と認める。 イ逸失利益 4972万6438円証拠(甲6,13ないし18,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,高校を卒業した後,兵庫県三田市にある国立の療養所の看護学校に入学し,同学校を卒業してから国立病院等で勤務した後,平成19年4月1日から平成23年4月8日までの間,K病院に看護師として勤務していたこと,平成22年の同病院における収入は493万2408円であったこと,Eは,G出産後はGを同病院の保育所に預けて夜勤も含めて看護師としての勤務を継続しており,原告B出産後は一旦同病院を退職し子育てに専念していたが,平成26年4月からは看護師として復職する準備をしていたことなどが認められる。 Eの看護師としての職歴やK病院を退職してからの期間が短いことに照らすと,Eが看護師として復職し,将来にわたり,少なくとも,平成22年におけるEの年収額の90パーセントに相当する年収を得られる蓋然性が認められるというべきである。そうすると,Eの逸失利益については,基礎収入を443万9167円(493万2408円×0.9〈小数点以下切捨て。以下同じ。〉)と認め,就労可能年数を67歳までの33年間 (対応するライプニッツ係数は16.0025),生活費控除率を30パーセントとして,上記金額を認めるのが相当である。 443万9167円×(1-0.3)×16.0025ウ慰謝料 2100万0000円本件事故の態様,Eの年齢や家族関係,その他本件に現れた一切の事情を考慮し,Eの死亡慰謝料として上記金額を認める。 エ小計 2100万0000円本件事故の態様,Eの年齢や家族関係,その他本件に現れた一切の事情を考慮し,Eの死亡慰謝料として上記金額を認める。 エ小計 7222万6438円オ過失相殺後 722万2643円7222万6438円×(1-0.9)カ,Eにかかる人身傷害保険金4615万9131円が支払われているところ,これは,まず,Eの過失部分6500万3795円(7222万6438円〈上記エ〉-722万2643円〈上記オ〉)に充当すべきであるから,賠償額から控除すべき給付等は認められない。 Gの損害額 473万2453円ア葬儀費 150万0000円判断の前提となる事実及び弁論の全趣旨により,葬儀費用として150万円を損害と認める。 イ逸失利益 2582万4531円 Gは死亡時5歳であったところ,Gの逸失利益は,平成26年における賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・男性・学歴計・全年齢の平均年収額である536万0400円を基礎収入として,就労可能年数を18歳から67歳までの49年間(対応するライプニッツ係数は,62年間に対応するライプニッツ係数から13年間に対応するライプニッツ係数を控除した9.6353),生活費控除率50パーセントとして,上記金額を認めるのが相当である。 536万0400円×(1-0.5)×9.6353ウ慰謝料 2000万0000円本件事故の態様,Gの のが相当である。 536万0400円×(1-0.5)×9.6353ウ慰謝料 2000万0000円本件事故の態様,Gの年齢や家族関係,その他本件に現れた一切の事情を考慮し,Gの死亡慰謝料として,上記金額を認める。 エ小計 4732万4531円オ過失相殺後 473万2453円4732万4531円×(1-0.9)カなお,Gにかかる人身傷害保険金4101万4274円が支払われているところ,これは,まず,E側であるGの過失部分4259万2078円(4732万4531円〈上記エ〉-473万2453円〈上記オ〉)に充当される結果,賠償額から控除すべき給付等は認められない。 原告ら固有の損害ア原告A 20万0000円 固有の慰謝料 200万0000円原告Aは,妻であるEを失ったことで精神的な損害を受けたというべきであるから,本件に現れた一切の事情を考慮して,固有の慰謝料として200万円を認める。 過失相殺後 20万0000円200万0000円×(1-0.9)イ原告B 10万0000円 固有の慰謝料 100万0000円原告Bは,母であるEを失ったことで精神的な損害を受けたというべきであるから,本件に現れた一切の事情を考慮して,固有の慰謝料として100万円を認める。 過失相殺後 10万 Eを失ったことで精神的な損害を受けたというべきであるから,本件に現れた一切の事情を考慮して,固有の慰謝料として100万円を認める。 過失相殺後 10万0000円 100万0000円×(1-0.9)ウ原告C及び原告D 各5万0000円 固有の慰謝料各50万0000円原告C及び原告Dは,娘であるEを失ったことで精神的な損害を受けたというべきであるから,本件に現れた一切の事情を考慮して,原告C及び原告Dの固有の慰謝料として各50万円を認める。 過失相殺後各5万0000円各50万0000円×(1-0.9) 認容額ア原告A 損害額合計 1034万9434円Eの法定相続人は,原告A(法定相続分2分の1),G(法定相続分4分の1),原告B(法定相続分4分の1)の3名で,Gの法定相続人は,原告Aのみである。原告Aは,法定相続分に従い,EとGをそれぞれ相続した。したがって,原告Aが相続したE及びGの各損害と原告Aの固有の損害の合計は上記金額となる。 722万2643円×1/2+(473万2453円+722万2643円×1/4)+20万円 弁護士費用 100万0000円本件事故と相当因果関係が認められる弁護士費用は,100万円と認めるのが相当である。 認容額 1134万9434円イ原告B 損害額合計 費用は,100万円と認めるのが相当である。 認容額 1134万9434円イ原告B 損害額合計 190万5660円原告Bは,法定相続分に従い,Eを相続した。したがって,原告Bが相続したEの損害と原告Bの固有の損害の合計は上記金額となる。 722万2643円×1/4+10万円 弁護士費用 19万0000円本件事故と相当因果関係が認められる弁護士費用は,19万円と認めるのが相当である。 認容額 209万5660円ウ原告C及び原告D 損害額合計各5万0000円 弁護士費用各5000円本件事故と相当因果関係が認められる弁護士費用は,各5000円と認めるのが相当である。 認容額各5万5000円 3 結論以上によれば,原告らの被告に対する各請求は,原告Aにつき1134万9434円,原告Bにつき209万5660円,原告C及び原告Dにつき各5万5000円並びにこれらに対する本件事故日である平成26年4月13日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官本多久美子 主文 よって,主文のとおり判決する。 理由 神戸地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官本多久美子 裁判官東根正憲 裁判官熊野祐介
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