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主文 原判決を破棄する。本件を東京高等裁判所に差し戻す。理由 上告会社代表者平井庄壱の上告理由第一点ないし第三点について。原判決の確定した事実に即し、論旨第一点ないし第三点を顧みつゝ考察するに、本件の重要な争点で、特に詮議を必要とする事柄は、次の二点に帰着するものと考える。すなわち、第一に原判決は、訴外D建設工業株式会社に対し金二五万円の手形債権を有していた上告人は、執行保全のため東京地方裁判所に対し、右会社が被上告人に対して有していた金一、〇〇〇万円の請負工事代金の内二五万円について仮差押申請をしたところ、同裁判所は右申請を認容し、昭和三二年六月二二日右申請どおりの仮差押決定をなし、該決定は六月二九日(土曜日)午後一二時五分被上告人に送達済となつたこと、これよりさき、被上告人は前記請負代金中右六月二二日までの出来高に相当する金四〇万円を右訴外会社の代表者Eに株式会社F銀行G支店宛持参人払式小切手で、同日午前一一時頃より前に支払い、右Eは同日右銀行の営業時間内すなわち土曜日であるから正午までの間に右小切手を該銀行に呈示してこれを現金化した旨判示する。そこで、被上告人が訴外会社の代表者Eに交付したという右小切手による支払が果して有効であるかどうかという点が、本件においてまず詮議さるべき重要な争点なのである。云うまでもなく、被上告人の右小切手による支払が有効な弁済でなければ、被上告人はこれを以て上告人に対抗できない筋合であるから、原審としてはこの点を十分審議詮索して然るべき筈だつたのである。然るに原判文を見るに、原審は、前示小切手を右訴外会社の代表者Eに交付したと判示するだけで、それ以上に何らの説明をもしていないのである。右にいわゆる代表者という言葉がいつたい、会社の代表取締役の る。然るに原判文を見るに、原審は、前示小切手を右訴外会社の代表者Eに交付したと判示するだけで、それ以上に何らの説明をもしていないのである。 から、原審としてはこの点を十分審議詮索して然るべき筈だつたのである。然るに原判文を見るに、原審は、前示小切手を右訴外会社の代表者Eに交付したと判示するだけで、それ以上に何らの説明をもしていないのである。右にいわゆる代表者という言葉がいつたい、会社の代表取締役の る。然るに原判文を見るに、原審は、前示小切手を右訴外会社の代表者Eに交付したと判示するだけで、それ以上に何らの説明をもしていないのである。右にいわゆる代表者という言葉がいつたい、会社の代表取締役の意味なのか、或はまた単なる- 1 -民法上の代理人の意味なのか、その文言だけでは不明確である。右Eは、当時右訴外会社の代表取締役の資格など有していなかつたかも知れないし、また同人が単なる民法上の代理人だという意味と受取つても、その権限を証する証跡(例えば委任状の如きもの)は、原判文上は認めるに由がないのである。それでは、Eに対する前示小切手の交付により、原判文のようにしかく簡単に有効な弁済があつたものとは認められないではなかろうか。Eが代理権限のない自称代理人であつても場合によつてはいいであろう。すなわち、その弁済受領について相手方たる被上告人に民法第一〇九条或は第一一〇条の要件だに具備していれば、前示小切手の交付は有効なる弁済として上告人に対抗できるのであろうし、またEに何らの代理権もないが、いわゆる債権の準占有者と認められるような場合には、次第によつては、右弁済が有効とされることもなきにしもあらずであるが、そのような関係については裁判所からは釈明もされず、また被上告人側からも何等主張もされていないのである。以上を要するに、前示小切手の交付を以て上告人に対抗できる有効な弁済があつたものと判断したことについて、原判決には審理不尽、理由不備の欠点あるものと認めざるを得ないのであつて、論旨第一点ないし第三点は結局理由あるに帰するものと云わなければならない。次に、第二に重要な問題として詮議を要する点は、原判示の合意解約及びこれに関連する事柄であると考える。原判決によれば、右訴外会社は被上告人に対し工事代金四七六万五、〇〇〇円で判示工事を請負つ い。次に、第二に重要な問題として詮議を要する点は、原判示の合意解約及びこれに関連する事柄であると考える。原判決によれば、右訴外会社は被上告人に対し工事代金四七六万五、〇〇〇円で判示工事を請負つたものの、工事資金難に陥り、自ら解約を申入れ、昭和三二年六月三〇日被上告人と合意の上判示請負契約を解除したというのである。 決によれば、右訴外会社は被上告人に対し工事代金四七六万五、〇〇〇円で判示工事を請負つ い。次に、第二に重要な問題として詮議を要する点は、原判示の合意解約及びこれに関連する事柄であると考える。原判決によれば、右訴外会社は被上告人に対し工事代金四七六万五、〇〇〇円で判示工事を請負つたものの、工事資金難に陥り、自ら解約を申入れ、昭和三二年六月三〇日被上告人と合意の上判示請負契約を解除したというのである。このように請負人の都合によつて請負契約を合意解約し、請負人が工事から手を引く場合には、当時総額五〇〇万円にも達せんとする工事であるから、双方立会の上出来高を検分し、かくして出来高調書等を作成して清算をするのが取引の通常のかたちであろうと考えられるのであるが、原判決によればそうした- 2 -事跡のあつたことはいささかも認められていないのである。しかのみならず、右合意解約の日の前日の同年六月二九日、しかも土曜日の午前中に、両者は同日までの出来高を金四〇万円と割出し、被上告人から前示Eに前示金額四〇万円の小切手を交付して一切の清算を完了したというのである。このような事態の推移が取引の常態として素直に肯定できることであろうか。当裁判所としては、他に特段な事情の説明がない限り、容易に納得のできない筋合であると考えるのである。次に原判決は、乙第三号証の一について種々説明しているから、この点について論議を進めることとする。右書証を見るに、証と題し、一金五拾万円也但H鋼材店支払約手分として第二回取下金の内依り、右正に領収致しました云々とあつて、その日附を昭和三二年七月一日(すなわち前示認定にかかる合意解約の日の翌日である。)とし、D建設工業株式会社代表者Iから、B電気KK殿となつており、右書面をその文言どおり受取れば、右は前示のように、本件請負契約が解除となつたという日以後において右訴外会社は被上告人に対し金五〇万円の工事代金債権を有し 会社代表者Iから、B電気KK殿となつており、右書面をその文言どおり受取れば、右は前示のように、本件請負契約が解除となつたという日以後において右訴外会社は被上告人に対し金五〇万円の工事代金債権を有し、これを受取つたところの受取証と認めざるを得ないのであり、このことは、乙第三号証の三の文面と対照すれば、ますます以てしかく断ぜざるを得ないものと思念されるのである。 人に対し金五〇万円の工事代金債権を有し 会社代表者Iから、B電気KK殿となつており、右書面をその文言どおり受取れば、右は前示のように、本件請負契約が解除となつたという日以後において右訴外会社は被上告人に対し金五〇万円の工事代金債権を有し、これを受取つたところの受取証と認めざるを得ないのであり、このことは、乙第三号証の三の文面と対照すれば、ますます以てしかく断ぜざるを得ないものと思念されるのである。原判決は、この点に関し、右乙三号証の一は訴外会社及び下請業者との話合のもとに被上告人が直接訴外H鋼材株式会社から買付けた資材の代金の受取証であるが、右訴外会社が買取人となつたが如く形式的に作成されたものに過ぎないのだという。しかし、金五〇万円にも上る大金の受取証を右資材の売渡人でもない上告人から徴するなどということは、われわれを特に納得されるに足る証拠に基づく説明のない限りたやすく首肯させ得るところの筋合ではない。これによつて考察すれば、原判決認定のような合意解約が成立し且つ一切清算を終了し、被上告人はもはやD建設工業株式会社に対し工事代金として支払うべき何ものもなかつたなどということは、俄に首肯し能わざるところと云わなければならない。なお、附言するが、被- 3 -上告人の前示小切手の交付による弁済が有効で被上告人はこれを以て上告人に対抗できるものとしても、D建設工業株式会社が被上告人に対し前示のように金五〇万円の工事残代金債権を有していたものとすれば、前掲仮差押決定はこの残代金債権に対し金二五万円の限度において効力を有すべき筋合であるから、被上告人は上告人に対しこれが支払義務を免れないものと云わなければならない。原判決は、上叙の点について深く思いを運らした形跡がなく、だだ漫然上叙の如く判示して上告人の請求を排斥したのは、審理不尽、理由不備の誹あるを免れないものであつて、論旨 ものと云わなければならない。原判決は、上叙の点について深く思いを運らした形跡がなく、だだ漫然上叙の如く判示して上告人の請求を排斥したのは、審理不尽、理由不備の誹あるを免れないものであつて、論旨第一点ないし第三点は、上叙の点においても、結局理由あるに帰するものと認めざるを得ない。よつて、原判決は爾余の論点について審究するまでもなくこれを破棄差戻をなし、更に原審をして慎重審理を尽さしめるのを相当と認め、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。 らした形跡がなく、だだ漫然上叙の如く判示して上告人の請求を排斥したのは、審理不尽、理由不備の誹あるを免れないものであつて、論旨第一点ないし第三点は、上叙の点においても、結局理由あるに帰するものと認めざるを得ない。よつて、原判決は爾余の論点について審究するまでもなくこれを破棄差戻をなし、更に原審をして慎重審理を尽さしめるのを相当と認め、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官下飯坂潤夫裁判官入江俊郎裁判官斎藤朔郎裁判官高木常七は退官につき署名押印することができない。裁判長裁判官下飯坂潤夫- 4 -
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