令和3(わ)89 現住建造物等放火、非現住建造物等放火、詐欺、器物損壊、現住建造物等放火未遂、殺人未遂、殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月22日 青森地方裁判所
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判決文本文57,219 文字)

令和6年5月22日宣告現住建造物等放火、非現住建造物等放火、詐欺、器物損壊、現住建造物等放火未遂、殺人未遂、殺人被告事件(令和3年第89号、第107号、第121号、第132号、第148号、令和4年第3号、第24号、第107号) 主文 1 被告人を懲役30年に処する。 2 未決勾留日数中700日をその刑に算入する。 3 青森県警察七戸警察署で保管中の除雪機1台(令和5年領第26号符号18)及びエンジンキー1本(同号符号19)を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1 令和2年9月23日午後2時7分頃、青森県八戸市(住所省略)所在のC1漁港(a地区)の岸壁において、殺意をもって、D1(当時64歳)を助手席に同乗させた自動車を運転して走行させ、同人を同車両もろとも岸壁から海中に転落させたが、同人が同車両から自力で脱出し救助されたため、その目的を遂げなかった。 第2 令和2年12月23日午前8時55分頃から同日午前9時30分頃までの間に、青森県上北郡b町(住所省略)D2方南側敷地内において、前記D1に対し、殺意をもって、同人を雪面上にうつ伏せにさせた上、その背部に除雪機(重量約414kg。令和5年領第26号符号18)を乗り上げさせて、その胸腹部を圧迫し、よって、令和3年1月8日午前10時57分頃、同県八戸市(住所省略)C2病院において、同人を胸腹部圧迫による呼吸不全に起因する低酸素脳症により死亡させ殺害した。 第3 重機売買代金名目で現金をだまし取ろうと考え、令和3年2月2日頃から同 年3月24日頃までの間、青森県内又はその周辺において、D3(当時70歳)に対し、真実は、被告人がC3株式会社所有の油圧ショベル及び有限会社C4又は有限会社C5所有の油圧ショ 2日頃から同 年3月24日頃までの間、青森県内又はその周辺において、D3(当時70歳)に対し、真実は、被告人がC3株式会社所有の油圧ショベル及び有限会社C4又は有限会社C5所有の油圧ショベルの売却の仲介をしている事実も被告人がこれらを売却できる権限もなく、これらを前記D3に引き渡すつもりもないのに、これをあるように装い、ラインメッセージで、前記C3株式会社所有のC6製油圧ショベル(型式ZX200、製造番号1G6P101912)及び前記有限会社C4又は前記有限会社C5所有のC6製油圧ショベル(型式ZX160LC、製造番号HCM1F100V00005846)の画像を送信し、これを前記D3に閲覧させるとともに、電話で、「型式ZX200の油圧ショベルを買ってくれないか。」「持ち主は青森県のc町で船の解体をしている人で、買ってくれる人を探している。」「型式ZX160LCの油圧ショベルも買ってくれないか。型式ZX200の油圧ショベルと一緒に買ったら、安くしてくれる。」「2台で550万円。」「油圧ショベルの所有者が、ZX160LCはまだ引き渡せないので、550万円全額払ってもらうのは悪い、550万円の半分の275万円を払ってくれたらいいと言っている。」旨うそを言い、前記D3をして、被告人に275万円を交付すれば、前記C6製油圧ショベル(型式ZX200、製造番号1G6P101912)の引渡しを受けられるものと誤信させ、よって、同月25日午前8時頃、岩手県北上市(住所省略)C7ホテル1階ロビーにおいて、前記D3から、現金275万円の交付を受け、もって人を欺いて財物の交付を受けた。 第4 重機売買代金名目で現金をだまし取ろうと考え 1 令和3年3月16日頃、青森県内又はその周辺において、D4(当時52歳)に対し、真実は、被告人がC8製ホイ て人を欺いて財物の交付を受けた。 第4 重機売買代金名目で現金をだまし取ろうと考え 1 令和3年3月16日頃、青森県内又はその周辺において、D4(当時52歳)に対し、真実は、被告人がC8製ホイルローダ(型式WA100-5、車台番号74942)の売却の仲介をしている事実も被告人がこれを売却できる権限もなく、これを前記D4に引き渡すつもりもないのに、これらがあるように装い、ラインメッセージで、前記C8製ホイルローダの画像を送信し、前記D4 に閲覧させるとともに、電話で、「C8の機械あったよ。」「中古の重機を扱う業者が参加する展示会に仕入れに来てて、社長が探しているのがあった。価格は300万円。」「3月決算の関係で安くなっている。」「今、わぁに振り込んでくれれば押さえられる。他にも見てる人もいるし、早いほうが良い。」旨うそを言い、前記D4をして、被告人に300万円を交付すれば、前記C8製ホイルローダの引渡しを受けられるものと誤信させ、よって、同月17日、株式会社C9銀行C10支店に開設された前記D4名義の普通預金口座から、同県上北郡b町(住所省略)所在の株式会社C11銀行C12支店に開設された被告人名義の普通預金口座に300万円を振込入金させ 2 同月24日頃から同月25日頃までの間、青森県内又はその周辺において、前記D4に対し、真実は、被告人がC8製ミニ油圧ショベル(型式PC40MR-3、車台番号19739)及びC13製ダンプ(型式PDG-FK61F、車台番号FK61F-720403)の売却の仲介をしている事実も被告人がこれらを売却できる権限もなく、これらを前記D4に引き渡すつもりもないのに、これらがあるように装い、ラインメッセージで、前記C8製ミニ油圧ショベル及び前記C13製ダンプの画像を送信し、前記D4に閲覧させるとと 却できる権限もなく、これらを前記D4に引き渡すつもりもないのに、これらがあるように装い、ラインメッセージで、前記C8製ミニ油圧ショベル及び前記C13製ダンプの画像を送信し、前記D4に閲覧させるとともに、電話で、「バックホーも良いのあるんだけど、どう。」「ダンプも良いのあるよ。」「もし社長の知り合いで一緒に買う人いれば、ダンプ安くなるよ。」「セットで買うなら、230万円にしてくれることになった。ユンボの方は、165万円のままにすれば、社長のダンプは65万円になる。タイヤショベルを買った人がダンプも買ってくれるなら、ダンプの方の値段を安くすると言っていた。」「前と同じところに振り込んでくれ。」旨うそを言い、前記D4をして、被告人に230万円を交付すれば、前記C8製ミニ油圧ショベル及び前記C13製ダンプの引渡しを受けられるものと誤信させ、よって、同月25日、前記D4名義の普通預金口座から、前記被告人名義の普通預金口座に230万円を振込入金させ もって、それぞれ人を欺いて財物の交付を受けた。 第5 重機売買代金名目で現金をだまし取ろうと考え、令和3年4月15日午前8時23分頃から同日午前8時48分頃までの間、青森県内において、D5(当時62歳)に対し、真実は、被告人が株式会社C14所有の小型油圧ショベルの売却の仲介をしている事実も被告人がこれを売却できる権限もなく、これを前記D5に引き渡すつもりもないのに、これをあるように装い、メールで、前記株式会社C14所有のC15製小型油圧ショベル(型式PC30MR-3N1、機番41628)の画像を送信し、これを前記D5に閲覧させるとともに、電話で、「社長、ユンボ買わないか。」「128万円でどうだ。」「これ、東京のリース上がりだから、先にお金を払ってもらう必要があるんだ。」旨うそを言 画像を送信し、これを前記D5に閲覧させるとともに、電話で、「社長、ユンボ買わないか。」「128万円でどうだ。」「これ、東京のリース上がりだから、先にお金を払ってもらう必要があるんだ。」旨うそを言い、前記D5をして、被告人に128万円を交付すれば、前記C15製小型油圧ショベルの引渡しを受けられるものと誤信させ、よって、前記D5に、同日午前8時49分頃に現金60万円を、同月16日午前9時15分に現金68万円を、C16銀行C17支店に開設された前記D5名義の普通預金口座から、前記被告人名義の普通預金口座にそれぞれ振込入金させ、もって人を欺いて財物の交付を受けた。 第6 令和3年5月28日午前零時38分頃から同日午前零時55分頃までの間に、D6(当時62歳)が現に住居に使用し、かつ、同人が現にいる青森県八戸市(住所省略)所在の同人方居宅(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建、床面積合計約182.17㎡)に延焼し得ることを認識しながら、同人方居宅に隣接する同人所有の物置小屋(木造トタン張り平屋建、床面積約9.62㎡)に、何らかの方法により火を放ち、その火を同物置小屋の壁及び屋根等に燃え移らせて同物置小屋を全焼させて焼損するとともに、その火を前記D6方居宅に燃え移らせ、よって、同人方居宅を全焼させて焼損した。(八戸放火事件)第7 D7(当時72歳)が所有し、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない青森県三沢市(住所省略)の物置小屋(単管パイプ造(一部鉄骨)トタン 張り平屋建、床面積約155.68㎡)に放火しようと考え、令和3年5月29日午前6時13分頃から同日午前6時29分頃までの間に、同物置小屋内に、何らかの方法により火を放ち、その火を同物置小屋北側の壁等に燃え移らせ、よって、同物置小屋北側壁の胴縁及び柱を焼損(焼損面積約1.93㎡)し 3分頃から同日午前6時29分頃までの間に、同物置小屋内に、何らかの方法により火を放ち、その火を同物置小屋北側の壁等に燃え移らせ、よって、同物置小屋北側壁の胴縁及び柱を焼損(焼損面積約1.93㎡)した。 (三沢放火事件)第8 D8(当時79歳)ほか4名が現に住居に使用し、かつ、同人らが現にいる青森県南津軽郡d町(住所省略)の同人方居宅(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建、床面積合計約244.82㎡)に放火しようと考え、令和3年6月1日午後9時50分頃から同日午後11時10分頃までの間に、同人方風除室内に灯油を散布した上、柱に取り付けられた御札入れに、何らかの方法により火を放つとともに、同人方1階南西側和室のカーテンに、何らかの方法により火を放ち、その火を同所の縁側に燃え移らせ、よって、同人方の縁側床部分を焼損(焼損面積合計約0.38㎡)した。(d町放火事件)第9 D9等7名が現に住居に使用しているD10所有の青森県上北郡b町(住所省略)所在の共同住宅C18(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建、延床面積約231.86㎡)を放火しようと考え、令和3年6月2日午前5時30分頃から同日午前6時10分頃までの間に、同住宅7号壁面付近の地面に置かれた玄関マットに灯油を散布した上、何らかの方法により火を放ち、その火を同住宅外壁に燃え移らせて焼損しようとしたが、通報により駆けつけた消防隊員が消火するなどしたため、同外壁の一部等を焦がすにとどまり、その目的を遂げなかった。(b町放火未遂事件)第10 令和3年6月3日午前7時58分頃から同日午前8時17分頃までの間に、前記D6方敷地内において、物置小屋に掛けられた有限会社C19所有のブルーシート又はその周辺に置かれた何らかの可燃物に、何らかの方法により火を放ち、同ブルーシートの一部を焼損させ(損害額約5500円 前記D6方敷地内において、物置小屋に掛けられた有限会社C19所有のブルーシート又はその周辺に置かれた何らかの可燃物に、何らかの方法により火を放ち、同ブルーシートの一部を焼損させ(損害額約5500円相当)、もって他人の物を損壊した。(八戸器物損壊事件) (事実認定の補足説明)第1 判示第1の事実(殺人未遂)について 1 被告人が、判示の日時、C1漁港の岸壁(以下「本件岸壁」という。)において、助手席にD1を同乗させた被告人所有の自動車(C20。以下「本件車両」という。)を運転して走行させ、同車両もろとも本件岸壁から海中に転落したこと(以下「本件転落」という。)に争いはなく、この事実は関係証拠によっても認められる。 争点は、被告人の殺意の有無である。検察官は、被告人は本件車両を意図的に海中に転落させたものであり、殺意があったと主張する。これに対し、弁護人は、被告人は本件車両のブレーキの効きが悪く、誤って海中に転落したものであり、殺意はなかったと主張する。 当裁判所は、以下の事実関係から、被告人の殺意を認定したので、その理由を補足して説明する。 2 本件転落の態様等から、被告人が本件車両を意図的に海中に転落させたと推認できること⑴ 本件岸壁の状況及び本件転落の態様本件岸壁は、北東で海に面しており、その縁には海中への転落を防止するための車止めと、船をつなぐための係船柱が設置されている。本件岸壁の西側出入口から海に面する縁までの直線距離は約17mであり、本件岸壁には海に向かって左(北西)側に大きく開けたスペースがあり、本件車両の進行を妨げるような障害物はなかった。 そして、被告人は、令和2年9月23日(以下、第1では同日を「本件当日」という。)午後2時7分頃、本件車両を運転し、直線道路を北東方向に進行して時速約1 両の進行を妨げるような障害物はなかった。 そして、被告人は、令和2年9月23日(以下、第1では同日を「本件当日」という。)午後2時7分頃、本件車両を運転し、直線道路を北東方向に進行して時速約15ないし25kmで西側出入口から本件岸壁に進入した後、前方に停止中の自動車(C21)との衝突を回避するように左前方に進路を変え、そのまま海に向かいほぼ直進して車止めを真正面から乗り越え、海中 に転落した。なお、本件転落に至る走行経路上の路面には、本件車両のブレーキ痕は確認されていない。 ⑵ 本件車両の前輪ブレーキは正常に機能していたこと本件車両は、本件転落の翌日に海中から引き上げられたところ、右後輪ブレーキホースのマスターシリンダー側が破れ、サイドワイヤー(サイドブレーキ)に亀裂が入っていた。しかし、証人D11の公判供述等によれば、本件車両のブレーキ構造は、配管が独立して前輪と後輪の2系統に分かれており、右後輪ブレーキホースが破れたことにより、後輪ブレーキは機能しなくなっていたものの、前輪ブレーキの制動機能には影響がなかったと認められる。そして、本件車両については、令和元年10月18日の車両点検の際、ブレーキに異常はみられなかった上、後述するとおり、本件転落の直前に被告人が本件車両を係船柱に衝突させた際、直近の路面に本件車両の左右前輪のタイヤによって印象されたブレーキ痕が確認されていることなどを併せ考えると、本件転落時に本件車両の前輪ブレーキは正常に機能していたと認められる。 ⑶ 前輪ブレーキの制動力により車止めの手前で停止できたこと証人D12及び同D11の各公判供述によれば、本件車両は、前輪ブレーキの方が後輪ブレーキよりも制動力の比重が約2倍大きいと認められる。そして、本件車両と同種の車両を用いた警察官実施の制動実験の結果 証人D12及び同D11の各公判供述によれば、本件車両は、前輪ブレーキの方が後輪ブレーキよりも制動力の比重が約2倍大きいと認められる。そして、本件車両と同種の車両を用いた警察官実施の制動実験の結果によれば、ハサミを用い右後輪ブレーキホースを切断することにより、切断前と比較して、制動距離がおおむね1.6倍程度、最大で2.0倍程度まで延びたものの、ブレーキペダルを強く踏み込むことにより、時速約25kmの場合、約6.2ないし6.3m先で停止することができ、時速約15kmの場合、約3.7ないし4.0m先で停止することができた。そうすると、前述したとおり、本件岸壁の西側出入口から車止めまでは、直線距離で約17m離れていたことに照らすと、本件車両を運転して本件岸壁に進入した際、適切なタ イミングでブレーキペダルを強く踏み込むことにより、前輪ブレーキの制動力によって車止めの手前で停止することは十分可能であったと認められる。 これに対し、弁護人は、本件車両にべーパーロック現象が生じたため、ブレーキの効きが悪くなった可能性も否定できないと主張するが、証人D11の公判供述等によれば、本件車両の走行状況等に照らしてべーパーロック現象が生じていたとは考えられない。 ⑷ ハンドル操作により本件転落を回避できたこと本件転落以前に本件車両のハンドルについて走行、停止等に影響するような不具合が生じたことはない。また、本件当日の午前9時頃から同日午前11時頃までの間に、被告人の妹であるD13が、往復約1時間半程度、本件車両を運転した際も、ハンドル操作に違和感を抱いてはおらず、通常どおり走行できていたと認められる。したがって、本件転落時にその原因となるような不具合が本件車両のハンドルに存在した現実的な可能性は考え難い(なお、被告人も、公判で、本件当日に 抱いてはおらず、通常どおり走行できていたと認められる。したがって、本件転落時にその原因となるような不具合が本件車両のハンドルに存在した現実的な可能性は考え難い(なお、被告人も、公判で、本件当日に本件車両を運転した際、ハンドル操作に違和感を抱いたとは述べていない。)。そうすると、前述したとおり、本件車両を運転して本件岸壁に進入した際、その左(北西)側には大きく開けたスペースがあり、本件車両の進行を妨げるような障害物はなかったことに照らせば、ハンドルを左に切り、左前方に進路を変えた後、そのままハンドルを左に切り続けて左方に転回等することにより、本件転落を回避することは十分可能であったと認められる。 ⑸ 被告人の公判供述についてアこれに対し、被告人は、公判で、本件転落時の状況等について、次のとおり供述する。 すなわち、本件当日、本件車両のブレーキの効きが悪くて係船柱に衝突したが、本件岸壁や周辺の道路での試運転を続けるうちにブレーキの効きが悪いとは感じなくなった。しかし、本件岸壁に戻る際、前方に停止 中のC21の近くに本件車両を止めようと思い、ブレーキペダルを踏んだところ、またブレーキの効きが悪くなったと感じた。サイドブレーキを引こうと思ったが、焦っていたので手でつかむことができなかった。 ハンドルを右に切ったところ、C21にぶつかると思い、ハンドルを左に切ったが、間に合わず、海中に転落した。 イしかし、ブレーキの効きが悪くなったり良くなったりする状態を繰り返したなどと述べる点については、証人D11が、公判で、後輪ブレーキホースが破れた場合、ブレーキをかけるための油圧が弱まって後輪ブレーキは機能しなくなる旨述べており、ブレーキの構造上、その後油圧が強まって後輪ブレーキの機能が回復するとは認められないから、被告人供述の内 が破れた場合、ブレーキをかけるための油圧が弱まって後輪ブレーキは機能しなくなる旨述べており、ブレーキの構造上、その後油圧が強まって後輪ブレーキの機能が回復するとは認められないから、被告人供述の内容は不合理である。また、ブレーキペダルを踏んだが間に合わなかったとする点も、前述した関係証拠と整合していない。さらに、被告人がハンドルを左に切り、左前方に進路を変えてC21を避けたのに、海のある右方向に進行していることからすれば、一旦左に切ったハンドルを戻していると認められるところ、被告人は、その理由について分からないなどと述べ、納得し得るような説明をしていない。そして、ブレーキの効きが悪いと感じ、焦っていたのであれば、海中に転落する危険を回避するため、とっさにブレーキペダルを強く踏んだり、ハンドルを左に切り続けたりするなどの対処をするのが自然な行動であり、約16年の運転歴を有し、日常的に自動車を運転していた被告人が、焦りからそのようなハンドル及びブレーキの操作ができなかったとは考え難い。したがって、被告人の公判供述は信用できない。 ⑹ 以上のとおり、本件車両には本件転落の原因となる不具合はなく、本件車両の走行状況や本件岸壁の状況等に照らせば、被告人がハンドル及びブレーキを操作して本件転落を回避することは可能かつ容易であった。それにもかかわらず、ハンドル及びブレーキを適切に操作せず、極めて不自然な態様で 海中に転落している。これらのことからすれば、本件転落が事故とは考えにくく、被告人が本件車両を意図的に海中に転落させたことが強く推認される。 3 本件転落前の被告人の行動状況から、被告人が本件車両を意図的に海中に転落させたと推認できること⑴ 被告人が、本件転落直前に刃物様のもので右後輪ブレーキホースを切断し、本件転落を事故に見 。 3 本件転落前の被告人の行動状況から、被告人が本件車両を意図的に海中に転落させたと推認できること⑴ 被告人が、本件転落直前に刃物様のもので右後輪ブレーキホースを切断し、本件転落を事故に見せかけるための偽装工作をしたことア右後輪ブレーキホースの破損の原因証人D11は、公判で、本件車両の右後輪ブレーキホースは元々4層で構成された耐久性の高い部品であり、外側の外皮ゴムに経年劣化の痕跡も見当たらない上、破損位置は4層でそろっており、破断面も滑らかであって、破損箇所が地表近くではなくリア車軸よりも高い位置にあることなどからすれば、走行中に木や石等が当たって破損したとは通常考え難く、他方、破損箇所は人が手を伸ばせば容易に届く位置にあり、破断面は刃物で切断した形状に酷似している旨供述する。 また、証人D12は、公判で、右後輪ブレーキホースの破断面をみると、内側からの破裂とは考えられない上、外側の外皮ゴムにひび割れ等の損傷はなく、破断部分だけがきれいに刃物で切ったような形状となっており、切れ込みの向きも上から下に向かっていることなどからすれば、砂利道などの悪路を走行中に木や石等が当たって破損したとは考えられず、人が手を伸ばして刃物を用いて切断したと考えられる旨供述する。 両名の各供述は、右後輪ブレーキホース破損の原因について、経年劣化や走行中に木や石等に接触したことなどによるものではなく、刃物で切断した可能性が高いという点で一致している。両名のこれまでの職歴や調査・鑑定経験等に照らし、その専門性等に疑問はなく、客観的証拠に基づき結論を導いた判断の過程も合理的なものである。そして、両名が一致して供述する部分は、同種同型のブレーキホースを用いた警察官等 実施の損傷試験(引張試験、殴打試験及び切断試験)の結果とも整合してお いた判断の過程も合理的なものである。そして、両名が一致して供述する部分は、同種同型のブレーキホースを用いた警察官等 実施の損傷試験(引張試験、殴打試験及び切断試験)の結果とも整合しており、高い信用性を備えたものとみてよい。 以上によれば、何者かが、本件車両の右後輪ブレーキホースを刃物様のものを用いて切断したと認められ、この認定は、弁護人が指摘する、同ブレーキホース破損の原因は断言できないと述べる整備士の供述等を踏まえて検討しても動かない。 イ被告人が本件車両の右後輪ブレーキホースを切断したことまず、切断の時期についてみると、前述したとおり、本件当日の午前中にD13が本件車両を運転した際、ブレーキが効きづらいと感じたことはなかった。その後、被告人は、本件当日の正午頃、助手席にD1を乗せた本件車両を運転し、本件岸壁に向けて被告人の実家を出発し、知人のD14が、助手席にD13を乗せたC21を運転し、本件車両に同行しているところ、証人D14が、公判で、本件当日、被告人の実家を出発してから、同日午後1時頃に本件岸壁に最初に到着するまでの間、本件車両のブレーキに異常は感じなかった旨述べていることも併せ考えると、この時点で右後輪ブレーキホースが切断されていた現実的な可能性は考え難い(なお、被告人も、公判で、本件岸壁に着く頃までは、ブレーキに異常を感じなかった旨述べている。)。そうすると、右後輪ブレーキホースが切断されたのは、被告人が同日午後1時くらいに本件岸壁に最初に到着した頃から本件転落に至るまでの間であると認められる。 次に、切断の機会の有無についてみると、前記時間帯に本件車両の運転等をしていたのは専ら被告人であり、終始本件車両の近くにいたのであるから、被告人には右後輪ブレーキホースを切断する機会があったといえる 、切断の機会の有無についてみると、前記時間帯に本件車両の運転等をしていたのは専ら被告人であり、終始本件車両の近くにいたのであるから、被告人には右後輪ブレーキホースを切断する機会があったといえる。特に、被告人は、同日午後1時30分頃、本件車両を係船柱に衝突させた後、本件転落の少し前に、D14とD13を本件岸壁に残し、本件車両を運転して周辺の道路を走行させるなどして両名と別行動 をとっており、その機会に被告人が右後輪ブレーキホースを切断することは十分可能であったといえる。 これに対し、弁護人は、被告人が、助手席に乗っていたD1に気付かれないように本件車両の右後輪ブレーキホースを切断することは不可能であると主張する。しかし、前述した同種同型のブレーキホースを用いた切断試験によれば、カッターナイフやポケットナイフを用いた場合、完全に切断するまで終始、容易に刃体が入ったと認められ、刃物様のものを用いて本件車両の右後輪ブレーキホースを切断することはさほど困難ではないと考えられる。そうすると、被告人がD1に気付かれないようにブレーキの不具合を確認するふりをし、D1を助手席に残したまま降車するなどして、刃物様のものを用いて短時間のうちに右後輪ブレーキホースを切断することは可能といえる。 さらに、切断の動機の有無についてみると、後述するとおり、当時被告人とD1との間には仕事上のトラブルが生じていたところ、本件転落に関する捜査の進捗によっては、本件車両を運転していた被告人が意図的にD1を海中に転落させたと疑われる状況にあり、そのことは被告人も分かっていたはずである。そうすると、被告人には、本件転落を右後輪ブレーキホースの破損に起因する事故であると見せかけるため、同ブレーキホースを切断する動機があると考えて矛盾しない。他方、右後輪 人も分かっていたはずである。そうすると、被告人には、本件転落を右後輪ブレーキホースの破損に起因する事故であると見せかけるため、同ブレーキホースを切断する動機があると考えて矛盾しない。他方、右後輪ブレーキホースが切断された前記時間帯に本件車両に同乗していたD1のほか、被告人らに同行していたD14やD13には、右後輪ブレーキホースを切断する動機はないし(なお、弁護人も、弁論で、これら3名は同ブレーキホースを切断していないと考えるのが相当としている。)、その他切断の動機を肯定し得るような第三者の存在もうかがわれない。 加えて、本件転落の翌日、海中から引き上げられた本件車両は、C 22店に搬入され、社員用駐車場で保管されていたところ、被告人は、同日午後6時(営業終了時刻)から翌25日午前10時(営業開始時刻)までの間に、無断で本件車両を持ち出し、同日のうちに業者に持ち込み、本件車両は同年10月1日に解体され、破砕処理された。本件車両は、本件転落の原因を解明するための重要な証拠品であって、前記持ち出しの唐突かつ不自然な態様等に照らせば、被告人の行動は、その後の捜査の進展により、本件転落が事故ではないことが警察等に発覚するのを防ぐための証拠隠滅と考えるのが自然かつ合理的である。 この点、被告人は、公判で、本件車両をC22店に置いたままだと同店に迷惑がかかると思った、本件車両は目立つ車だったので、周囲に見られて被告人が海中に落ちたと言われるのが嫌だったなどと供述するが、本件転落の翌日ないし翌々日のうちに保管先の店舗の営業時間外に無断で本件車両を持ち去るなどした理由として、納得のいく説明であるとはいい難い。 以上のとおり、被告人は、右後輪ブレーキホースが人為的に切断された時間帯に終始本件車両の近くにいて、これを切断する機会が 件車両を持ち去るなどした理由として、納得のいく説明であるとはいい難い。 以上のとおり、被告人は、右後輪ブレーキホースが人為的に切断された時間帯に終始本件車両の近くにいて、これを切断する機会があった上、本件転落を事故に見せかけるという動機もあった。さらに、被告人は、本件車両を秘密裏に処分するという証拠隠滅と考えられる行動をとっている。そして、被告人以外に切断したことを具体的にうかがわせる人物も存在しない。そうすると、右後輪ブレーキホースを切断した人物としては、被告人しか考えられない。これに反する被告人の公判供述は採用できない。 ⑵ 被告人が、うそを言ってD1らを呼び出し、本件岸壁へ連れて行ったことア被告人とD1との関係性等被告人は、かねて中古車両や中古重機等の買取・販売業を営んでいた。一方、除雪業等を営む株式会社C23で勤務していたD1は、令和 2年1月頃、同年6月末をもって閉業することを決めたC23の社長から、同社所有の車両及び重機の売却を一任されていた。 被告人は、D1から同社所有の車両及び重機10台の売却を委ねられ、同年4月上旬から同年5月中旬にかけて、そのうち少なくとも7台を売却して代金合計約780万円を得たにもかかわらず、事業の資金繰りに窮していたことから、同売却代金(以下「本件売却代金」という。)を費消して着服した。 C23は、同年5月20日頃、同社所有のC24製ホイールローダ(以下「本件ホイールローダ」という。)を株式会社C25に代金240万円で売却する契約を締結した。他方、被告人は、同月22日頃、本件ホイールローダをC23に無断で他社へ売却し、同売却の代金255万円を費消するとともに、本件ホイールローダをC23の置場から持ち出し、他社へ引き渡した。 その後、被告人は、度々D1から本 、本件ホイールローダをC23に無断で他社へ売却し、同売却の代金255万円を費消するとともに、本件ホイールローダをC23の置場から持ち出し、他社へ引き渡した。 その後、被告人は、度々D1から本件ホイールローダの引渡し及び本件売却代金の支払を強く求められていた。しかし、被告人は、本件ホイールローダが既に海外の会社に転売され、C23に引き渡すことは不可能であり、本件売却代金を支払う目途も立っていない状況であったのに、D1に対し、本件ホイールローダの無断売却や本件売却代金の着服等の事実を伝えず、その発覚を防ぐために本件ホイールローダの引渡し等の約束をしては、その都度、種々のうそを言い、その引渡し等を先延ばしにしていた。 イ被告人が、うそを言ってD1らを呼び出すなどしたこと被告人は、令和2年9月頃、D1に対し、同月23日に本件ホイールローダを引き渡す旨の約束をしていたが、前述したとおり、その約束は実現不可能なものであった。しかし、被告人は、同日正午前頃、勤務中のD1に電話をかけ、本件ホイールローダを引き渡す旨を言い、被告 人の会社事務所として使用していた同人の実家にD1を呼び出した上、本件車両の助手席に乗せて、本件岸壁へ赴いた。 また、被告人は、同日午前11時頃、D14に対し、D1の知人から機械を買いに行く旨を言い、被告人に同行するよう求め、D13に対しても、青森県八戸市(以下「八戸市」という。)内への同行を求めたが、実際には、被告人が八戸市内でD1の知人から機械を買う予定はなかった。 以上のとおり、被告人は、本件当日、うそを言って勤務中のD1らを呼び出し、本件岸壁へ連れて行ったことが認められる。このような被告人の行動は極めて不自然であり、このことから、被告人にはD1を本件岸壁に連れて行く何らかの目的があり、 、うそを言って勤務中のD1らを呼び出し、本件岸壁へ連れて行ったことが認められる。このような被告人の行動は極めて不自然であり、このことから、被告人にはD1を本件岸壁に連れて行く何らかの目的があり、その目的を隠す意図があったと認められる。 ウ被告人の公判供述についてこれに対し、被告人は、公判で、D1らを本件岸壁まで連れて行った理由について、次のとおり供述する。 すなわち、本件ホイールローダを引き渡す約束をしていた日が近づき、D1と二人きりの場所で本当のことを話し、謝罪をしようと思った。被告人の実家にD1を呼ぶことも考えたが、客が来ると二人きりになれないと思った。そこで、八戸漁港に行くまでの車の中などで二人きりになったときに謝罪をしようと思った。場所を八戸漁港にしたのは、以前に本件ホイールローダを八戸の倉庫で保管しているという話をD1としたことがあったので、八戸漁港であれば来てくれると思ったからである。 被告人の仕事を手伝わせていたD13らを同行させたのは、従業員も来ると言えば、D1が被告人の話を信じて八戸漁港に来てくれると思ったためである。また、D14を呼び出す際、D1にした話と違う話をしたのは、本件ホイールローダの話をすれば、D1との間にもめ事があると 気付かれると思い、それが嫌だったからである。 しかし、D1に謝罪をするためであったなどとする点は、被告人が、本件当日以降もD1にうそをつき続け、結局、謝罪をしないまま本件ホイールローダの引渡し等を事実上免れたという被告人の挙動と相容れない内容である。また、謝罪をするのであれば、わざわざ遠方の八戸漁港まで行かなくてもできる。本件ホイールローダ等をめぐる本件当日までの経緯等に照らせば、被告人がうそをついていたことを告白しただけでもD1が怒る可能性は高いのに、更にう あれば、わざわざ遠方の八戸漁港まで行かなくてもできる。本件ホイールローダ等をめぐる本件当日までの経緯等に照らせば、被告人がうそをついていたことを告白しただけでもD1が怒る可能性は高いのに、更にうそを重ねてわざわざ勤務中のD1を呼び出し、八戸漁港まで連れ出して謝罪をすれば、D1を更に怒らせる事態になることは明らかであり、被告人の供述内容は不自然、不合理である。D1と二人きりになりたい、D14らにD1との間のもめ事を知られたくないというのに、D14らを同行させている点も整合していない。したがって、被告人の公判供述は信用できない。 ⑶ 被告人が、本件転落を事前に想定していたと考えて矛盾しない行動をとっていたことア被告人が本件車両を意図的に係船柱に衝突させるなどしたこと前述したとおり、被告人は、本件当日、本件転落前の午後1時30分頃、本件車両を運転し、直線道路を北東方向に進行して西側出入口から本件岸壁に進入した後、そのまま海に向かいほぼ直進して係船柱に真正面から衝突した。被告人が係船柱に衝突した時点で、少なくとも本件車両の前輪ブレーキは正常に機能していた上、前述した本件岸壁の状況等に照らせば、本件岸壁に進入し、左前方に停止中のC21の右側に止めようとした、係船柱に衝突した際の走行速度は時速約15kmであったという被告人供述を踏まえて検討しても、適切なタイミングでブレーキペダルを強く踏み込むことなどにより、係船柱の手前で停止することは可能であったと認められる。それにもかかわらず、被告人は、係船柱 に衝突する直前までブレーキを強く踏み込まず、その他有効な回避措置をとらず海に向かって係船柱に真正面から衝突しているのであって、不自然な態様であり、単なる事故とは考えにくい。加えて、被告人が本件車両を係船柱に衝突させた直後、D く踏み込まず、その他有効な回避措置をとらず海に向かって係船柱に真正面から衝突しているのであって、不自然な態様であり、単なる事故とは考えにくい。加えて、被告人が本件車両を係船柱に衝突させた直後、D14及びD13に対し、ブレーキが効かなかった旨告げていることも併せ考えると、被告人は、その後の本件転落を想定した上で、事前にブレーキの不具合を訴え、係船柱に衝突した場面をD14らに目撃させることによって、本件転落をブレーキの不具合による事故に見せかけるための偽装工作をしたと考えて矛盾しない。 これに対し、被告人は、公判で、ブレーキの効きが悪く、係船柱の手前で停止することができなかった旨供述するが、前述したとおり、関係証拠と整合していない。また、被告人は、係船柱衝突前の経緯について、本件岸壁に到着後、一旦C26漁港に寄り、本件岸壁に戻る際、ブレーキの効きが悪いと感じ、本件車両を道路に停止させ、その原因を調べたが分からなかった旨述べているが、被告人供述のとおりであれば、その後はより慎重に本件車両を停止させようとするのが通常の行動であって、係船柱に衝突する直前までブレーキを強く踏み込むなどの対処をしていないのは、不自然、不合理である。したがって、被告人の公判供述は信用できない。 イ被告人が自分の財布、携帯電話機及びスマートフォンを事前にD13に預けるなどしたこと被告人は、本件当日、一旦本件岸壁に到着した後、付近のコンビニエンスストアで買い物をした際、自分の財布をD13に渡して飲み物を買わせ、その後も本件転落に至るまで同財布をD13に預けたままにしていた。また、被告人は、本件当日、本件転落よりも前に、自分の携帯電話機をD13に預けたほか、自分のスマートフォンをD13らに告げ ることなくC21の後部座席に移動させていた。その まにしていた。また、被告人は、本件当日、本件転落よりも前に、自分の携帯電話機をD13に預けたほか、自分のスマートフォンをD13らに告げ ることなくC21の後部座席に移動させていた。その結果、本件転落によって、D1のスマートフォン等が水没したのに対し、被告人の財布、携帯電話機及びスマートフォンは水没を免れた。 この点、被告人は、自分の携帯電話機をD13に預け、スマートフォンをC21の後部座席に移動させた理由について、公判で、従業員から連絡がくるかもしれないので、D13に対応してもらおうと思った旨供述する。しかし、仕事の用件であればなおさら被告人が対応しなければ意味がないのであって、連絡がきた場合の対応を伝えることなくD13に携帯電話機を預けたり、黙ってスマートフォンをC21の後部座席に移動させたりしたというのは、不自然、不合理である。また、飲み物を買うだけのために財布ごと預けたというのも、いささか不自然である。 したがって、被告人の公判供述は信用できない。 これに対し、弁護人は、実際に従業員から被告人の携帯電話機に電話がかかってきており、被告人供述は裏付けられていると主張するが、D13は、聞かれた内容が分からず、被告人が戻ったら折り返すとだけ従業員に伝えるにとどまっており、前記判断が左右されるものではない。 以上によれば、被告人が、本件転落よりも前に、自分の携帯電話機等の貴重品をD13に預けるなどしたのは、その後の本件転落を想定した行動であると考えて矛盾しない。 4 本件転落について認定できる事実⑴ 以上のとおり、被告人については、D1を乗せた本件車両を意図的に海中に転落させたことを強く推認させる事実や一定程度推認させる事実が複数認められる。このような事実が同時に存在することは、本件転落が事故であるとしたなら 人については、D1を乗せた本件車両を意図的に海中に転落させたことを強く推認させる事実や一定程度推認させる事実が複数認められる。このような事実が同時に存在することは、本件転落が事故であるとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難といえるから、被告人が本件車両を意図的に海中に転落させたと認められる。 ⑵ これに対し、弁護人は、本件車両を意図的に海中に転落させ、自分の生命をも危険にさらすということは考え難いと主張する。しかし、被告人があらかじめ本件転落を想定していれば、それに応じた対処をするのは可能であると考えて行動したとしても格別不自然とはいえない。実際、D1が海中に転落後、しばらく海面に浮上せず、溺水による急性肺水腫となり、即日入院となったのに対し、被告人は、海中に転落後、速やかに本件車両から脱出して海面に浮上し、自力で本件岸壁上まで登り、その後、体調不良の訴えもなく、帰宅している。したがって、弁護人の主張は採用できない。 5 被告人の殺意について本件岸壁の縁から基準水面まで約2.5mの高さがあり、被告人は、このような本件岸壁の上から、D1を乗せた本件車両を意図的に海中に転落させたのであるから、人が死ぬ危険性が高い行為をそのような行為であるとわかって行ったといえる。そして、会社清算中という本件当時のC23の状況や、被告人とD1との関係性等からすると、被告人は、D1が死亡すればD1の追及から逃れて本件ホイールローダの引渡し等を先延ばしにして、無断売却等の不正の発覚を防ぐことができ、場合によってはその引渡し等を事実上免れることができると期待し得る状況にあったといえるから、このような本件転落に至る経緯や動機等に照らしても、前記のとおり考えて矛盾しない。したがって、被告人に殺意があった ってはその引渡し等を事実上免れることができると期待し得る状況にあったといえるから、このような本件転落に至る経緯や動機等に照らしても、前記のとおり考えて矛盾しない。したがって、被告人に殺意があったと認められる。 第2 判示第2の事実(殺人)について 1 判示の日時、被告人の実家であるD2方南側敷地(以下「本件敷地」という。)内において、雪面上にうつ伏せになったD1の背部に被告人所有の除雪機(以下「本件除雪機」という。)が乗り上げ、D1の胸腹部が圧迫され(以下「本件下敷き」という。)、これによる呼吸不全に起因する低酸素脳症により同人が死亡したことに争いはなく、この事実は関係証拠によっても認められる。 争点は、①D1は何者かにより死亡させられたのか、本件除雪機を使用中の事故により死亡したのか(以下「事件性」という。)、②D1を死亡させた犯人は被告人か否か(以下「犯人性」という。)、③被告人に殺意があったか否かである。 当裁判所は、以下の事実関係から、被告人が、判示のとおり、殺意をもって、D1を死亡させて殺害したと認定したので、その理由を補足して説明する。 2 争点①(事件性)について⑴ 本件下敷きの態様等から、D1が本件除雪機を使用中の事故とは考え難く、何者かの関与が推認されることア本件下敷きの態様等についてD1の発見状況等令和2年12月23日(以下、第2では同日を「本件当日」という。)午前9時30分頃、本件敷地の雪面上において、本件除雪機の下敷きになったD1が心肺停止の状態で発見された。本件除雪機は、うつ伏せになったD1の上半身に乗り上げ、エンジンを切った状態で停止しており、D1の両腕は体の側面に沿って下がった状態であった。本件除雪機の向きは、機体前部がD1の頭部方向を向いており、機体後部からD1の下 なったD1の上半身に乗り上げ、エンジンを切った状態で停止しており、D1の両腕は体の側面に沿って下がった状態であった。本件除雪機の向きは、機体前部がD1の頭部方向を向いており、機体後部からD1の下半身が出ていたが、D1の体に左右の傾きはほぼみられなかった。D1の発見時、本件除雪機後方の雪面上には複数箇所の血痕があり、付近には本件敷地内の小屋に収納されていたバール1本のほか、メガネレンズやマスク等が落ちていた。 本件除雪機の形状等本件除雪機は、全長1.95m、重量414.5kgである。機体前部には集雪口があり、オーガブレード(以下「オーガ」という。)と呼ばれるらせん状金属刃が取り付けられている。機体下部には左右2本のクローラー(キャタピラ)があり、車底部最後尾にはギアが収納された ギアケース(デフケース)と呼ばれる金属製部品が取り付けられている。 ギアケースの最も低い部分は地表高11cmである。 発見時のD1の身体及び着衣の状況救急搬送時、D1の頭頂部には口の長さが約10cmのポケット(受傷時に皮膚が頭蓋骨から剥がれて頭皮下に隙間ができ、袋状になったもの)があり、後頭部にも口の長さが約15cmのポケットがあった。遺体検視の結果、D1の頭頂部正中付近から右側頭部方向に長さ約6cmの縫合痕があり、後頭部にも長さ約9cmの縫合痕が認められた。頭頂部の縫合痕付近には右側頭部側から正中側に向かい徐々に深くなる陥没骨折があり、同陥没骨折から左側頭部方向にひび割れ様の骨折が延びていた。 また、D1のジャンパー背面には左背や左脇等の位置にかぎ裂きの破綻があり、左肩付近から左袖方向及び左背部付近から腰部方向へ裂けていた。このうちジャンパーの左脇破綻部には、最大長さ7cmというD1の前頭部の頭毛とほぼ同じ長さの毛髪様物が付着して 置にかぎ裂きの破綻があり、左肩付近から左袖方向及び左背部付近から腰部方向へ裂けていた。このうちジャンパーの左脇破綻部には、最大長さ7cmというD1の前頭部の頭毛とほぼ同じ長さの毛髪様物が付着していた。また、ジャンパー、作業着及び作業シャツを重ねてみると、それらの襟付近には、頭部側から下半身方向への生地の破綻、ほつれ及び黒色の着色が認められた。 D1の受傷機序等C27大学大学院医学研究科法医学教授のD15医師は、捜査段階において、次のとおり供述する。 頭頂部の陥没骨折の形状や頭皮にポケットが形成されていることを併せ考えると、稜角(とがった角)のある硬い鈍体が頭頂部に圧迫的に打撲し、少しずれるような力が加えられたと考えられる。ジャンパーや作業服等の破綻やほつれからは、作業服や作業シャツの背面を頭部側から足方向に引っ張られて、ジャンパー内側の背面左肩付近、襟、フード内、 背面腰部左側付近の順番に生地が破れていった状況が考えられる。このような着衣の状況に加え、D1がうつ伏せの体勢で本件除雪機の下敷きになっており、機体前部がD1の頭部方向に、機体後部が同人の足方向にあったという発見時の状況も併せ考えれば、本件除雪機が後退しながらD1の頭頂部から背面に乗り上げ、車底部の何かが着衣の背面に擦過しながら頭部方向から足方向へ進行したと推測される。本件除雪機の重量等を前提にすると、D1の死因である低酸素脳症は、胸腹部を圧迫されて呼吸運動ができなくなり、窒息状態となったことに続発したものである可能性が高い。 そこで、D15医師の前記供述の信用性についてみると、D15医師の学識経験等に照らし、その専門性に問題はない。D15医師は、救急搬送先の病院の診療記録や検視時の遺体の写真、発見時にD1が着用していた着衣の実物及び本件除雪機の写 信用性についてみると、D15医師の学識経験等に照らし、その専門性に問題はない。D15医師は、救急搬送先の病院の診療記録や検視時の遺体の写真、発見時にD1が着用していた着衣の実物及び本件除雪機の写真等の資料を確認した上で前記意見を述べており、その判断の前提とされた事実関係は前記認定の事実に沿うものであり、法医学の観点からこれらを評価したその供述内容は信用することができる。 本件下敷きの態様以上のとおり、D1の発見状況、本件除雪機の形状、D1の身体及び着衣の状況並びにこれらを踏まえたD15医師の供述等からすれば、本件除雪機が後退し、頭部を機体側に向けてうつ伏せになったD1の頭蓋骨を車底部で圧迫しながら頭部に乗り上げ、下半身へ向かって進行して、背中の上で停止するなどし、一定時間、D1の胸腹部を圧迫し続けたと認められる。 イ本件除雪機を使用中のD1が、何者かの関与なしに後進する本件除雪機の後方で頭部を機体側に向けてうつ伏せになるとは考え難いことD1が、後進中の本件除雪機の後方に自発的にうつ伏せになった可 能性は低いこと本件除雪機は、機体後部に操作パネルが設置されており、最後尾にはバーハンドルが取り付けられている。操作パネルの走行クラッチレバーを入れると本件除雪機が走行を開始し、オーガクラッチレバーを入れるとオーガが回転する。主変速レバーにより、進行方向を前進から後進に切り替えることができる。本件除雪機の操作者は、機体進行中、操作パネルの前に立ち、バーハンドルをつかみ、進行方向をコントロールしつつ、機体の動きに合わせて歩きながら操作するものとされている。このような操作方法からすると、本件除雪機を後進させる場合、操作者が使用中の機体後部の操作パネルから離れ、その後方に頭部を機体側に向けてうつ伏せになることは、後 歩きながら操作するものとされている。このような操作方法からすると、本件除雪機を後進させる場合、操作者が使用中の機体後部の操作パネルから離れ、その後方に頭部を機体側に向けてうつ伏せになることは、後進し続ける機体に頭部等が接触する可能性があるから、殊更このような危険な行為に及ぶことは通常考え難い。そして、本件当日、D1には、前述したような危険を冒して後進中の本件除雪機の後方に自発的にうつ伏せになる原因となる事情は見当たらない。 D1が、後進中の本件除雪機の後方に不注意により転倒してうつ伏せになった可能性は低いことa 前述した本件除雪機の操作方法からすると、本件除雪機を後進させる場合、操作者は、本件除雪機の動きに合わせて後ずさりしながら移動するため、誤って転倒するとすれば、足を本件除雪機側にして仰向けに倒れるのが自然であり、頭部を本件除雪機側にしてうつ伏せに倒れることは通常考え難い。 b これに対し、弁護人は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「nite」という。)が収集した家庭用除雪機死亡事故情報(平成11年度から令和2年度)によれば、乗り上げ、れき過死亡事故15件のうち死亡者の体勢が判明している事例が4件あり、そのうち2件は操作者がうつ伏せの状態で後進中の除雪機の下敷きになったもので あり、死亡者の体勢が不明の11件の中にも、除雪機がうつ伏せの状態の操作者に乗り上げた事例が含まれている可能性もあり、本件下敷きが事故である可能性は否定できないと主張する。 しかし、証人D16は、公判で、うつ伏せの体勢で下敷きになった事例については、進行する除雪機の周囲に壁があるような狭い場所で、当初、操作者が後方に転倒したものの、壁に跳ね返るなどしてうつ伏せになったものと推測される、他方、本件敷地内のD1が発見された場所は、周 については、進行する除雪機の周囲に壁があるような狭い場所で、当初、操作者が後方に転倒したものの、壁に跳ね返るなどしてうつ伏せになったものと推測される、他方、本件敷地内のD1が発見された場所は、周囲に障害物はなく開けた場所であり、除雪機進行中の操作者がうつ伏せに転倒し、除雪機の下敷きになるという事故を想定するのは困難である旨述べている。D16は、長年、自動車メーカーで家庭用除雪機の開発、設計に携わり、その構造等に精通している上、C28協議会の代表幹事も務め、各会員企業やniteが収集した除雪機事故事例を広く収集して同事故のリスク評価や改善の検討を行うなどの活動に従事しており、その専門性等に問題はない。D16は、本件除雪機の実物や、本件敷地の現場写真等の資料も確認した上で供述しており、前記供述の前提資料や判断の検討過程に問題はないことからすれば、D16の公判供述は基本的に信用できる。 したがって、弁護人の主張は採用できない。 c 以上によれば、仮にD1が本件敷地内で本件除雪機を使用することがあったとしても、後進中の本件除雪機の後方に不注意により転倒して、頭部を機体側に向けてうつ伏せになった現実的な可能性は低い。 D1が、後進中の本件除雪機の後方に疾患が原因となってうつ伏せに倒れた可能性は低いことD1の健康状態については、令和2年4月実施の健康診断の結果によれば、高血圧の治療中であり、血圧を下げる薬を服用中であったが、既往歴、自覚症状はいずれもなく、他覚症状も特に所見は認められなかっ た。また、D1の妻によれば、本件当日以前にD1が大きな病気をしたことはなく、健康に働き続け、突然意識もうろうとなったり、失神したりしたこともなかった上、本件当日も、D1は、午前7時頃に出勤する際、体調が悪そうな様子はなく、午前8時20分 D1が大きな病気をしたことはなく、健康に働き続け、突然意識もうろうとなったり、失神したりしたこともなかった上、本件当日も、D1は、午前7時頃に出勤する際、体調が悪そうな様子はなく、午前8時20分頃、妻と電話で話をした際も、普段と違う様子はなかったと認められる。そして、出勤したD1は、本件敷地に赴く直前、同僚とともに事務所敷地内の除雪作業に従事しているところ、その際も、D1の体調に異変があった様子は確認されていない。さらに、D15医師の供述によれば、救急搬送先の病院の診療記録等を見る限り、D1には死因となるような内因性疾患の記載はされていない。 以上によれば、仮にD1が本件敷地内で本件除雪機を使用することがあったとしても、後進中の本件除雪機の後方に、疾患が原因となって頭部を機体側に向けてうつ伏せに倒れた現実的な可能性は低い。 ウ D1が本件除雪機の後方にうつ伏せになった場合、後進する本件除雪機が自走する力のみでD1の頭部を乗り越えるなどして、上半身に乗り上げるとは考え難いこと前述したとおり、本件除雪機の車底部最後尾に取り付けられたギアケースの最も低い部分から地表までの高さ(最低地上高)は11cmであるのに対し、D1の頭蓋骨の大きさは前後幅約19.1cmであり、D1の頭部の方が約8cm大きい。加えて、本件除雪機の後進時の速度が、低速モードで秒速0.09m、高速モードでも秒速0.40mであり、人が普通に歩く速さ(秒速1.2m)と比較しても相当遅いことを考え合わせると、人の力が加わらず本件除雪機が後進する力のみで、うつ伏せになったD1の頭頂部を車底部で圧迫しながら頭部を乗り越え、上半身に乗り上げることは困難と考えられる。 除雪機乗り上げ実験 この点、本件除雪機及び人形(頭部の最大地上高約20ないし22c 頭頂部を車底部で圧迫しながら頭部を乗り越え、上半身に乗り上げることは困難と考えられる。 除雪機乗り上げ実験 この点、本件除雪機及び人形(頭部の最大地上高約20ないし22cm)を用いた警察官実施の除雪機乗り上げ実験において、本件除雪機が後進した際に車底部のギアケースに人形の頭頂部が接触する位置関係に人形を配置し、本件除雪機を人為的に持ち上げない場合の人形への乗り上げ状況等につき実験を行ったところ、①全19回のうち10回、本件除雪機は人形に乗り上げなかったこと、②残り9回のうち、2回は人形が右側に傾いた後、本件除雪機が人形右肩部から乗り上げ、7回は人形の両腕が開いていき、本件除雪機が人形の腕又は肩部から乗り上げるものであったが、人形の頭部から乗り上げることはなかったこと、③本件除雪機のギアケースと地面の間に人形の頭部が入り込むことはなかったことなどが認められる。そして、前述したとおり、発見時のD1の体に左右の傾きはほぼみられず、両腕は体の側面に沿って下がった状態であった上、周囲の地面はおおむね平坦であったことも考え合わせると、前記の除雪機乗り上げ実験の結果については、人の力が加わらず本件除雪機が後進する力のみで、うつ伏せになったD1の頭部又は頭部以外の部位を乗り越えて上半身に乗り上げた可能性は低いことを示すものとみるべきである。 これに対し、弁護人は、除雪機乗り上げ実験について、使用した人形の重さが不明であるものや、雪面ではなくブルーシート上で実施されたものが含まれており、前提条件が相当異なっているため、信用性が高いとはいえない旨主張する。しかし、警察官は積雪路面の摩擦状況に近付けるため、コンクリート敷の床面にブルーシートを敷いたものであり、また、弁護人が指摘する人形については、全19回の実験のう 用性が高いとはいえない旨主張する。しかし、警察官は積雪路面の摩擦状況に近付けるため、コンクリート敷の床面にブルーシートを敷いたものであり、また、弁護人が指摘する人形については、全19回の実験のうち5回の実験で使用されているところ、写真を見る限り、他の実験で使用された人形とおおむね同様のものが使用されていることがうかがわれ、実験の結果に重大な影響を及ぼすような差異があるとは考えられない。したが って、弁護人の指摘する点は、前記判断を左右しない。 証人D16の公判供述さらに、基本的に信用できる証人D16も、公判で、前述した本件除雪機の最低地上高やD1の頭蓋骨の大きさを前提にすれば、本件除雪機の構造上、後進中の機体が自走する力のみでD1の頭部を乗り越えることは、踏み台にするようなものがない限り不可能である旨供述しており、前述した除雪機乗り上げ実験の結果とよく整合している。 したがって、後進する本件除雪機が、頭部を機体側に向けてうつ伏せになったD1の頭部と接触しても、自走する力のみで同人の頭部を乗り越えるなどして、上半身に乗り上げる現実的な可能性は考え難い。 エ D1の発見時の体勢や現場の状況等から、何者かの関与が推認されること仮にD1が何らかの事情により本件除雪機の後方で頭部を機体側に向けてうつ伏せになることがあったとしても、意識が清明であれば、後進する本件除雪機に対し、体を回転させたり手で頭部を防御したりするなどの回避、防御行動をとるのが自然と考えられる。しかし、前述したとおり、発見時のD1の両腕は体の側面に沿って下がった状態で本件除雪機の下敷きになっており、体に左右の傾きもほぼみられず、前述したような回避、防御行動をとった形跡がうかがわれない。そして、前記イ、ウで検討したところに加え、本件除雪機後 沿って下がった状態で本件除雪機の下敷きになっており、体に左右の傾きもほぼみられず、前述したような回避、防御行動をとった形跡がうかがわれない。そして、前記イ、ウで検討したところに加え、本件除雪機後方の雪面上には複数箇所の血痕があり、付近には本件敷地内の小屋に収納されていたバール1本のほか、メガネレンズやマスク等が落ちていたという発見現場の状況等も考え合わせると(なお、被告人は、公判で、本件当日、前記バールを誰にも貸しておらず、D1やD13が前記バールを使用するという話もしていない旨述べている。)、何者かが、何らかの方法でD1を回避、防御行動が困難な状態にして雪面上にうつ伏せにさせたと合理的に推認できる。 そして、当裁判所が行った本件除雪機の検証の結果や、前述した本件除雪機乗り上げ実験の結果及びD16の公判供述等によれば、本件除雪機が後進中、オーガを上げた状態であれば、人一人の力で機体最後尾に取り付けられたバーハンドルを手でつかんで持ち上げ、本件除雪機の後方で頭部を機体側に向けてうつ伏せになったD1の頭部に、車底最後尾にあるギアケースを乗り上げさせることは可能であると認められる。 オ以上のとおり、何者かの関与なしにD1が、後進する本件除雪機の後方で頭部を機体側に向けてうつ伏せになる可能性や、後進する本件除雪機が自走する力のみで、うつ伏せになったD1の頭部を乗り越えるなどして上半身に乗り上げる可能性は低い。本件下敷きの態様等からすれば、D1が本件除雪機を使用中の事故とは考えにくく、何者かが本件除雪機を操作するなどしてD1が発見された状況を作り出したことが推認される。 ⑵ D1が本件敷地に赴いた経緯等からも、D1が本件除雪機を使用中の事故とは考え難いことア D1には本件敷地内で本件除雪機の操作を必要とする事情がなかったこ た状況を作り出したことが推認される。 ⑵ D1が本件敷地に赴いた経緯等からも、D1が本件除雪機を使用中の事故とは考え難いことア D1には本件敷地内で本件除雪機の操作を必要とする事情がなかったこと本件除雪機は、日頃、本件敷地内の小屋に保管され、主に被告人が同敷地内の除雪に使用しており、本件当日以前にD1が本件除雪機を借りて使用したことはなかった。本件当日、D1は、いつもどおり午前7時頃に勤務先のC23に出勤し、同僚とともに事務所敷地内の除雪を行うなどしており、その後、被告人と電話で話をし(なお、被告人は、公判で、本件当日の朝、D1が本件敷地に来る前に同人と電話で話をしたことは認めている。)、遅くとも同日午前8時45分頃までの間に、同僚に告げることなく突然事務所を出て本件敷地に赴いた。そして、前述したとおり、同日午前9時30分頃、本件敷地内でD1が本件除雪機の下敷きになっているのが発見された。 以上の事実経過等からすると、D1が、勤務中の前記時間帯に、被告人の実家の敷地内において、それまで一度も借りて使用したことのなかった被告人所有の本件除雪機を使用したというのは極めて不自然であり、D1が本件除雪機の操作を必要とする事情の存在もうかがわれない。 イ被告人の公判供述についてこれに対し、被告人は、公判で、D1が本件敷地に赴いた経緯等について、本件の前日、D1から電話で、本件当日にD1の兄が居住する実家の除雪に使用するため、本件除雪機を貸してほしいと頼まれ、これを了承しており、D1は、前日の電話でのやり取りを受け、本件当日の朝、被告人から本件除雪機を借りるために本件敷地に赴いた旨供述する。 しかし、捜査段階におけるD1の兄の供述によれば、D1の実家では、日頃、D1の兄が毎朝6時頃に起床し、トラクターを 、本件当日の朝、被告人から本件除雪機を借りるために本件敷地に赴いた旨供述する。 しかし、捜査段階におけるD1の兄の供述によれば、D1の実家では、日頃、D1の兄が毎朝6時頃に起床し、トラクターを使用して敷地内の除雪をしており、D1が朝から実家の除雪のために家庭用除雪機を借りてきたことはなく、D1の兄がD1に対して除雪に来てもらいたいと頼んだこともなかった事実、及び本件当日も、早朝にD1の兄が実家敷地内の除雪を終わらせており、D1から実家の除雪をしに行くなどの連絡も受けていなかった事実が認められる。また、D1の妻やC23の従業員の各供述によれば、本件当日以前にD1が出勤後に除雪のために帰宅したことはなかった上、本件当日の朝も、D1は、実家の除雪をすることや被告人から本件除雪機を借りることなどを、妻にも同僚の従業員にも告げていなかった事実が認められる。これらの事実からすれば、本件当日の朝、D1が実家の除雪をする必要はなく、その予定もなかったことは明らかであり、そのため被告人から本件除雪機を借りる予定もなかったと認められる。したがって、被告人の前記供述は、関係証拠と整合しておらず、その内容も不自然、不合理であり、信用することができない。 ウ以上のとおり、本件当日、D1が本件敷地内で本件除雪機の操作を必要とする事情はなかった。それにもかかわらず、勤務中に突然事務所を出て本件敷地に赴き、短時間のうちに本件除雪機の下敷きになったという不自然な経緯等からしても、本件下敷きが本件除雪機を使用中の事故であるとは考えにくい。 ⑶ 本件下敷きについて認定できる事実以上のとおり、本件下敷きの態様や、D1が本件敷地に赴いた経緯等からすれば、本件下敷きは、D1が本件除雪機を使用中の事故ではなく、何者かが、本件敷地内において、D1を雪面 きについて認定できる事実以上のとおり、本件下敷きの態様や、D1が本件敷地に赴いた経緯等からすれば、本件下敷きは、D1が本件除雪機を使用中の事故ではなく、何者かが、本件敷地内において、D1を雪面上にうつ伏せにさせた上、D1の背部に本件除雪機を乗り上げさせ、一定時間、その胸腹部を圧迫し、D1を死亡させたものと認められる(以下「本件犯行」という。)。 これに対し、弁護人は、本件下敷きが事故である可能性は否定できないとの主張に関連して、証人D16が、公判で、D1の発見時、本件除雪機の左側クローラーの後方に雪だまりができていたことを根拠に、本件除雪機が最終的に前進中に停止したことは間違いない旨述べている部分を捉えて、これは、前述した本件犯行の態様と矛盾する供述であると主張する。しかし、本件下敷きの態様についての前記認定は、例えば、何者かが本件除雪機を後進させてD1の頭部から本件除雪機を乗り上げ、下半身に向かって進行させつつ、さらに前進させ又はさせようとして最終的に同人の背中の上で停止するなどしたといった態様を否定するものではない。また、弁護人が指摘する証人D16の供述部分は、本件下敷きが事故であるとは考えられない理由等について述べられた部分であり、これにより前記認定が左右されるものではない。 3 争点②(犯人性)について⑴ 被告人には本件犯行に及ぶ機会があったと推認され、かつ、被告人以外の人物が犯行時間帯にD1と二人でいた可能性は低いこと ア捜査段階におけるD13や除雪隊員の各供述等の関係証拠によれば、D1の発見経過等として、次の事実が認められる。 すなわち、D1は、本件当日の朝、被告人と電話で話をした後、同日午前8時45分頃、被告人とともに本件敷地内の道路側に立っており、また、同日午前8時55分頃にも、被告人ととも 次の事実が認められる。 すなわち、D1は、本件当日の朝、被告人と電話で話をした後、同日午前8時45分頃、被告人とともに本件敷地内の道路側に立っており、また、同日午前8時55分頃にも、被告人とともに本件敷地内の道路側に立っており、その際、両名の近くには本件除雪機が置かれていた。その後、D13が、同日午前9時25分頃、被告人の実家を訪れた際、本件敷地内にD1の軽トラックが止まっていた。D13が実家の居室内にいると、本件敷地内の小屋の中に入っていく被告人の姿を目撃した。同日午前9時30分頃、被告人は、「D13、D1さんが、除雪機」旨大きな声で叫びながら、小屋の中から外へ出てきて、本件敷地前の道路を走り去った。その頃、被告人の叫び声を聞いて外へ出たD13が、本件敷地内で本件下敷きになった状態のD1を発見した。 したがって、D1は、本件当日の朝、被告人と電話で話をした後、同日午前8時45分頃までには本件敷地に赴き、その後、早ければ同日午前8時55分頃から、遅くとも同日午前9時30分頃までの間に、本件敷地内において、何者かによって本件犯行の被害に遭ったと認められる。 イそして、本件当時、被告人の実家には、同人の両親が二人で住んでいたが、本件犯行の時間帯、両名は仕事のため家を不在にしていた。加えて、本件当日の朝、被告人が本件敷地内でD1と一緒にいる場面を目撃された同日午前8時55分頃以降、同日午前9時30分頃に本件下敷きになった状態で発見されるまでの間に、被告人以外の人物がD1と二人で接触した形跡はうかがわれないことを併せ考えると、D1が本件犯行の被害に遭う前に最後に接触した人物は被告人であると推認され、その場所はまさに被害に遭った本件敷地内であり、さらに、本件下敷きにされたD1の存在を最初に認識した人物も被告人であると認められる。 被害に遭う前に最後に接触した人物は被告人であると推認され、その場所はまさに被害に遭った本件敷地内であり、さらに、本件下敷きにされたD1の存在を最初に認識した人物も被告人であると認められる。 以上の事実経過等からすれば、被告人には本件犯行の機会があったと推認され、かつ、被告人以外の人物が犯行時間帯に本件敷地内でD1と二人でいた現実的な可能性は考え難い。 ウ被告人の公判供述についてこれに対し、被告人は、公判で、本件犯行の時間帯、本件敷地内にはいなかったと弁解し、D1を発見した経緯、状況について、次のとおり供述する。 すなわち、前日の電話でのD1とのやり取りを受け、本件当日の朝、本件除雪機を本件敷地内の物置小屋から出し、D1に貸す準備をした。 妹に電話をかけ、D1の除雪の手伝いをするのでスコップを買ってくるよう頼んだ。D1に電話で、本件除雪機を貸す準備ができたと伝えると、D1が軽トラックに乗り、本件敷地にやって来た。D1に本件除雪機の操作方法の説明などをしていると、午前9時頃、D1は、「一度ちょっと出掛けてくる。」などと言って、行き先も告げず軽トラックに乗ってどこかへ行った。前日の電話で、D1から、同人の軽トラックは新車なので本件除雪機を乗せたくないと言われ、本件除雪機を被告人の軽トラックに乗せて同車両ごとD1に貸すことで話がついていたので、被告人の軽トラックの荷台に歩み板を掛けて本件除雪機を積み込んだ。その後、別の自動車(C29)に乗って、除雪の手伝いの準備をするためにD1の実家の積雪状況を確認しに行き、その後、被告人の実家に戻って来ると、本件敷地内にD1の軽トラックが止まっていた。本件敷地内の小屋に入り、本件除雪機用のガソリンを携行缶に移していたところ、外からエンジン音が聞こえ、窓越しに外を確認すると、D1 の実家に戻って来ると、本件敷地内にD1の軽トラックが止まっていた。本件敷地内の小屋に入り、本件除雪機用のガソリンを携行缶に移していたところ、外からエンジン音が聞こえ、窓越しに外を確認すると、D1が本件除雪機の下敷きになっている様子が見えた。小屋の外へ出て、下敷きになったD1のもとに駆け付け、D1を助けるために本件除雪機のエンジンを切り、機体を前後左右に揺さぶるなどしてD1の体から下ろそうとしたが、重 くて全く動かなかった。一旦小屋に戻り、ガソリンの給油を止めた後、妹と二人で本件除雪機を動かしてD1を助けようと考え、実家の中にいる妹に大声で叫んで伝えるとともに、助けを求めに実家の南側の方向に走って行ったが、人は見つからなかった。その後、実家に戻ってD1のもとに駆け付けたところ、消防隊長のD17がやって来た。 しかし、被告人の公判供述は、以下に述べるとおり、信用することができない。 a 被告人供述のうち、本件当日の朝、D1が実家の除雪をしようとして、被告人から本件除雪機を借りるために本件敷地に赴いたという供述部分が信用できないことは、既に述べたとおりである。そして、このような被告人の供述内容に照らすと、単なる勘違いや記憶違いとは考えられないから、被告人があえて虚偽の供述をしているといわざるを得ない。そうであるとすれば、これと密接に関連するその後のD1や被告人の行動状況等に関する被告人の供述部分、すなわち、D1に本件除雪機の操作方法の説明などをしていると、D1が本件敷地から一旦いなくなったとか、本件除雪機を被告人の軽トラックごとD1に貸す目的でその荷台に積み込んだとか、被告人が除雪の手伝いの準備をするためにD1の実家に積雪状況を確認しに行ったとか、小屋の中で本件除雪機をD1に貸す準備をしている際、外からエンジン音が聞 とD1に貸す目的でその荷台に積み込んだとか、被告人が除雪の手伝いの準備をするためにD1の実家に積雪状況を確認しに行ったとか、小屋の中で本件除雪機をD1に貸す準備をしている際、外からエンジン音が聞こえて窓越しに外を見ると、D1が本件除雪機の下敷きになっていたなどという供述部分の信用性にも重大な疑問の生ずることは明らかである。 b また、被告人供述を前提にすると、D1は、前日の電話で、本件除雪機を被告人の軽トラックに積載して同車両ごと被告人から借りるという話をしていたのに、本件当日の朝、予定どおり被告人の軽トラックの荷台に積載された本件除雪機をあえて地面に下ろして、本件敷地 内で操作したということになるが、D1がそのような行動に出ることを合理的に説明することは困難である。 c さらに、被告人の供述経過等についてみると、捜査段階におけるD1の長男の供述によれば、被告人は、D1を発見した経緯等について、本件当日、同人の長男に対し、「音がして、D13が見に行ったら、下敷きになってた」「D13が救急車を呼んだ後に、自分もその場に着いた」などと公判供述とは異なる話をしていた。また、D1を発見した時の状況についても、被告人は、本件当日、D1の長男に対し、「オーガに頭が挟まってた」「助けようとして、除雪機を持とうとした」「除雪機を前に走らせた」などと公判供述とは異なる話をしており、さらに、本件当日、警察官に対し、「D1を助けるため本件除雪機を動かそうとしているうちに機体が前に動き出した」「D1がそれに引きずられるように本件除雪機とともに移動したため、被告人が止めた」などとD1の長男にした話に沿う供述をしていたことがうかがわれる。このように、被告人は、D1を発見した経緯やその時の状況などという重要部分について、その説明を大きく変遷さ したため、被告人が止めた」などとD1の長男にした話に沿う供述をしていたことがうかがわれる。このように、被告人は、D1を発見した経緯やその時の状況などという重要部分について、その説明を大きく変遷させており、変遷させた理由に関する弁解も納得できるようなものではない。 エ以上のとおり、被告人供述を踏まえて検討しても、被告人には本件犯行に及ぶ機会があったとの前記判断は動かない。 ⑵ 被告人が、D1が本件除雪機の使用を必要としていると見せかけるための偽装工作をしたことア捜査段階におけるD13の供述によれば、被告人が、本件当日の午前8時過ぎ頃、電話で、D13に対し、「D1さんの実家の除雪するから長めのスコップを買ってきてほしい」と言って、スコップの購入を依頼した事実が認められる。また、証人D17の公判供述等によれば、本件当日の午前9時35分頃、119番通報を受けてD17が本件敷地内に臨場した際、 その場に居合わせた被告人が、D17に対し、「除雪機を貸す約束をしてた」「除雪機を貸すので、勝手に持って行っていいよと。それで朝来たらこうなってるのを発見した」と言った事実が認められる。さらに、D1の長男の供述によれば、被告人が、本件犯行後、D1の長男に対し、「(D1から)除雪機を借りたいと連絡があって、(D1に対し)自分はいないけど持って行っていいよと伝えていた」旨言った事実も認められる。 イしかし、前述したとおり、本件当日の朝、D1が被告人から本件除雪機を借りて実家の除雪をする予定はなかったから、被告人の前記発言はいずれも虚偽ということになる。そして、D1が本件当日の約3か月前にも被告人運転の自動車もろとも海中に転落していたという従前の経緯等も踏まえると、D1が本件敷地内において、日頃被告人が使用している本件除雪機の下敷きに とになる。そして、D1が本件当日の約3か月前にも被告人運転の自動車もろとも海中に転落していたという従前の経緯等も踏まえると、D1が本件敷地内において、日頃被告人が使用している本件除雪機の下敷きになって死亡したとなれば、被告人がD1を死亡させた犯人と疑われる可能性がある状況にあったといえ、そのことは被告人も分かっていたはずである。そうすると、被告人が前記虚偽の発言をしたのは、本件当日の朝、D1が本件除雪機の使用を必要としており、本件除雪機を借りるために本件敷地に赴いた際の事故と見せかけ、被告人がD1を死亡させた犯人と疑われることを回避するための偽装工作と考えるのが自然かつ合理的である。 ⑶ 被告人には本件犯行に及ぶ動機があり、かつ、被告人以外に本件犯行の動機を肯定し得るような人物の存在はうかがわれないことア前記第1(殺人未遂)で認定したとおり、被告人は、令和2年5月以降、D1から、被告人が着服した本件売却代金の支払や無断売却した本件ホイールローダの引渡しを度々強く求められたため、D1の追及から逃れて本件ホイールローダの引渡し等を先延ばしにし、場合によってはその引渡し等を事実上免れることを期待して、同年9月23日、事故を装って判示第1の犯行に及んだものの、D1は死亡しなかった。 イ関係証拠によれば、判示第1の犯行後の被告人とD1との関係性等として、次の事実が認められる。 引き続き、D1は、被告人に対し、本件売却代金の支払等を繰り返し求めたが、被告人は、本件売却代金を着服したこと等が発覚するのを防ぐために種々のうそを言い、その支払等を先延ばしにしていた。 D1は、遅くとも令和2年10月ないし11月頃までには、C23の社長から、「12月中には入金してくれないと清算できなくなる」「年を越さないように」などと指示さ 、その支払等を先延ばしにしていた。 D1は、遅くとも令和2年10月ないし11月頃までには、C23の社長から、「12月中には入金してくれないと清算できなくなる」「年を越さないように」などと指示され、被告人に対し、本件売却代金の支払等をより一層強く求めるようになったが、被告人は、その場しのぎのうそをつき続けた。 D1は、本件前日の同年12月22日、電話で、被告人に対し、怒った口調で、「いつもそうだもんな」「やるやるって言ってもやらないし」「約束守ったことない」「なして振込になっていないのか」「社長も警察に言うって言ってる」などと伝えると、被告人は、D1に対し、「それは困る」などと言った(なお、D1が被告人に電話で「社長も警察に言うって言ってる。」などと伝えたことや、それに対する被告人の応答については、C23従業員の捜査段階の供述(甲427)等に基づいて認定しているところ、同人の供述は具体的で自然な内容であり、記憶違い等をしている可能性は低い上、この点について殊更虚偽の供述をする理由も見当たらないから信用することができる。これに反する被告人の公判供述は採用できない。)。 ウ以上の事実関係によれば、被告人は、判示第1の殺人未遂の犯行に及んだ後も、D1から本件売却代金の支払要求等がなされたのに対し、不正の発覚を防ぐために種々のうそをついてしのいでいたところ、同年10月ないし11月頃以降、D1からより一層強くその支払等を求められ、厳しく叱責されるなどしたことにより、自分の仕事や生活を維持する上で、D1 をますます邪魔な存在と認識していたと推認できる。そして、本件当時のC23の状況や、被告人とD1との関係性等からすると、被告人は、D1が死亡すればD1の追及から逃れて自己の責任を事実上免れることができると期待し得る状況にあっ ていたと推認できる。そして、本件当時のC23の状況や、被告人とD1との関係性等からすると、被告人は、D1が死亡すればD1の追及から逃れて自己の責任を事実上免れることができると期待し得る状況にあったといえるから、被告人には本件犯行に及んでD1を死亡させる動機があると考えて矛盾しない。他方、被告人以外に本件犯行に及んでD1を死亡させることの動機を肯定し得るような第三者の存在はうかがわれない。 ⑷ 弁護人の主張これに対し、弁護人は、被告人の犯人性を否定すべき事情として、①被告人は、犯行時間帯にC29を運転して被告人の実家とD1の実家を往復しており、その後に本件犯行に及ぶような時間的余裕はない、②本件犯行はD13に見つかるリスクが高く、通行人に目撃されるリスクも高い行為であり、被告人がそのような無謀な行為にあえて及んだというのは極めて不合理である、③D1は、被告人の中学時代の同級生の父親であり、仕事の面でも本件以前までは被告人と良好な関係にあったから、被告人には本件犯行に及んでD1を死亡させる動機はない、④被告人は、D1が死亡した後も、C23の社長から本件売却代金の支払等の催促を受けているし、D1が死亡したことによって、C23の被告人に対する法的権利が消滅するわけでもないから、被告人は本件犯行によって利益を得る立場にはなかったなどと主張する。 しかし、①については、被告人が犯行時間帯に何らかの理由でC29を運転したことがあったとしても、その行き先や走行距離等の裏付けはなく不明であるし、本件犯行の態様等に照らせば、その間に本件犯行に及ぶことは可能といえる。②については、本件下敷きになった状態のD1が発見された地点は、本件敷地内の奥まった場所にある上、本件当時、道路に面してD1の軽トラックのほか、被告人の2トントラックや軽トラック等が 可能といえる。②については、本件下敷きになった状態のD1が発見された地点は、本件敷地内の奥まった場所にある上、本件当時、道路に面してD1の軽トラックのほか、被告人の2トントラックや軽トラック等が止められていたことなども併せ考えると、付近の道路を往来する通行人や、被告人の実家 を訪れるD13から見えにくい場所にあったと認められる。実際、D13は、被告人の叫び声を聞いて外の様子を確認するまで、本件下敷きになった状態のD1の存在に気付いていない。また、被告人は、前述したとおり、本件当日の午前8時過ぎ頃にD13にかけた電話で、偽装工作としてスコップの購入を依頼した上、D13の供述によれば、その際、被告人が「午前9時30分頃に出勤していい」と言った事実が認められ、被告人は、本件当日の朝、D13が実家に来る時刻をある程度予想していたと推認される。実際、D13はいつもの出勤時刻よりも遅い午前9時25分頃に被告人の実家を訪れている。これらの事実からすれば、被告人が犯行時間帯に本件犯行に及ぶことが、通行人やD13に見つかるリスクの高い無謀な行為とはいえず、そのことは被告人も分かっていたと思われる。③については、被告人は、弁護人が指摘する事情を前提に、判示第2とほぼ同様の動機から判示第1の殺人未遂の犯行に及んでいる上、被告人とD1との関係性等は更に悪化していたといえるから、弁護人の主張する事情は、前記判断を左右するものではない。④については、被告人は、D1が死亡した後、結局、本件売却代金の支払も本件ホイールローダの引渡しもせず、事実上その支払等を免れており、弁護人の主張は当たらない。 ⑸ 以上のとおり、被告人については、本件犯行の犯人であることを推認させる事実が複数認められる。このような事実が同時に存在することについては、被告人が犯人で れており、弁護人の主張は当たらない。 ⑸ 以上のとおり、被告人については、本件犯行の犯人であることを推認させる事実が複数認められる。このような事実が同時に存在することについては、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができないか、少なくとも説明が極めて困難な事実関係があるといえるから、被告人が本件犯行の犯人であると認められる。 4 争点③(被告人の殺意)について前述したとおり、本件除雪機は約414kgの重さがあり、被告人は、このような本件除雪機を雪面上にうつ伏せにさせたD1の背部に乗り上げさせ、一定時間、同人の胸腹部を圧迫し続けた。被告人は、本件除雪機の所有者として 日頃からこれを使用しており、その形状や動き等を十分に認識していたから、人が死ぬ危険性が高い行為をそのような行為であると分かって行ったといえる。 そして、前述したとおり、本件当時の被告人とD1との関係性等に照らせば、被告人は、D1が死亡すれば本件犯行によりD1の追及から逃れて自己の責任を事実上免れることができると期待し得る状況にあったといえるから、このような本件犯行に至る経緯や動機等に照らしても、前記のとおり考えて矛盾しない。したがって、被告人に殺意があったと認められる。 第3 判示第6(八戸放火事件)、第7(三沢放火事件)、第8(d町放火事件)、第9(b町放火未遂事件)及び第10(八戸器物損壊事件)の各事実について 1 ①八戸放火事件について、何者かが、判示のとおり、D6が所有する物置小屋(以下「本件物置小屋A」という。)に放火し、その火をD6方居宅(以下「D6方」という。)に燃え移らせ、D6方を全焼させて焼損する火災が発生したこと、②三沢放火事件について、何者かが、判示のとおり、D7が所有する物置小屋(以下「本件物置小屋B」という。)に放火 以下「D6方」という。)に燃え移らせ、D6方を全焼させて焼損する火災が発生したこと、②三沢放火事件について、何者かが、判示のとおり、D7が所有する物置小屋(以下「本件物置小屋B」という。)に放火し、その一部を焼損する火災が発生したこと、③d町放火事件について、何者かが、判示のとおり、D8方居宅(以下「D8方」という。)に放火し、その一部を焼損する火災が発生したこと、④b町放火未遂事件について、何者かが、判示のとおり、当時被告人の居室(5号室)があった共同住宅C18に放火し、同7号室(以下「本件7号室」という。)の外壁の一部等を焦がす火災が発生したこと、及び⑤八戸器物損壊事件について、何者かが、判示のとおり、本件物置小屋Aに掛けられた有限会社C19所有のブルーシート又はその周辺に置かれた何らかの可燃物に放火し、同ブルーシートの一部を焼損させたことに争いはなく、これらの事実は、関係証拠によっても認められる(なお、各事件の犯行日時については、後記2の各出火時刻に、後記3の被告人の行動状況等を併せ考慮して、判示のとおりそれぞれ認定した。また、d町放火事件について、訴因に記載された縁側床部分の焼損面積は、証拠上合計約0.38㎡と認められるから、判 示の限度で認定するにとどめた。)。 争点は、各犯行の犯人が被告人であるか(犯人性)である。 当裁判所は、以下の事実関係から、被告人が各犯行の犯人であると認め、判示の各犯罪事実を認定したので、その理由を補足して説明する。 2 はじめに、関係証拠によれば、各火災の出火原因等として、次の事実が認められる。 ⑴ 八戸放火事件についてア出火箇所D6方は本件物置小屋Aの北側に隣接しているところ、消防による火災調査の結果等によれば、D6方2階8畳洋室の床根太を見分したところ、北側 れる。 ⑴ 八戸放火事件についてア出火箇所D6方は本件物置小屋Aの北側に隣接しているところ、消防による火災調査の結果等によれば、D6方2階8畳洋室の床根太を見分したところ、北側が残存しているのに対し、南側は焼失しており、これは南側から北側に延焼した方向性を示していると考えられる。また、D6方の外壁に焼損が見られたのは南側のみで、外側からの熱で焼損したと考えられる。 さらに、火災当時、近隣住民が本件物置小屋Aの家側中央付近に炎を目撃して、119番通報をするなどした際、火はまだD6方に燃え移っていなかったと述べており、D6も、家の外へ出た際、本件物置小屋Aの中央付近から炎が上がっており、D6方に燃え移りそうな状況であったと述べている。そして、消防隊員が、火災現場に臨場した際、本件物置小屋Aが勢いよく燃えており、風向きが南西方向であって、D6方の南側や南東側から北東側に燃え広がった状況からして、本件物置小屋Aから出火したと見て矛盾はないと述べていることも併せ考えると、出火建物は本件物置小屋Aであり、同所からの延焼によりD6方が焼損したと認められる。 加えて、本件物置小屋Aの北側の柱④(甲492の資料9参照)のみが全体的に亀甲状に炭化し、焼け細りが見られ、更に室外側が丸みを帯びていることも考え合わせると、出火箇所は本件物置小屋Aの北側の柱④ 付近の屋外であると認められる。 イ出火時刻D6は、令和3年5月27日午後11時頃(以下、第3では令和3年の月日について月日のみで示す。)、D6方1階居間から2階寝室に行く際、本件物置小屋Aに火は点いていなかったと述べている。また、前記目撃者は、翌28日午前零時55分頃、窓の外から「シュー」という音が聞こえ、D6方と本件物置小屋Aの間の辺りが赤く光ってい 寝室に行く際、本件物置小屋Aに火は点いていなかったと述べている。また、前記目撃者は、翌28日午前零時55分頃、窓の外から「シュー」という音が聞こえ、D6方と本件物置小屋Aの間の辺りが赤く光っているのを目撃し、その後間もなく同日午前零時58分に119番通報しながら家の外に出た際、D6方と本件物置小屋Aの間から火が上がっているのを目撃していることも併せ考えると、出火時刻は、同月27日午後11時頃から同月28日午前零時55分頃までの間であると認められる。 ウ出火原因実況見分の結果、出火当時、本件物置小屋Aには電気配線は確認されず、火源となり得るものはリチウムイオン電池のみであったが、電気的異常はなく、出火するエネルギーもなかった。そして、火災当時、小雨が降っており、着火するには灯油等の助燃材が必要であると考察されていることや、当時D6方には同人が単身居住しており、D6がしばらく本件物置小屋Aの中に入っていなかったと述べていることに加え、本件物置小屋AはD6方敷地内にあり、前記時間帯にD6以外の第三者が本件物置小屋Aを通常使用するような場所でもないことなどを併せ考えると、自然発火や失火の現実的な可能性は低い。そして、D6方付近は夜間人通りが少なくて人目に付きにくく、第三者がD6方敷地内に容易に侵入できる状況にあったことや、前述した出火箇所の焼損状況等も併せ考えると、何者かが本件物置小屋Aの柱④付近屋外に何らかの方法により放火したものと認められる。 ⑵ 三沢放火事件について ア出火箇所消防による火災調査の結果等によれば、本件物置小屋B内の北側小上がり中央部の焼損程度が強く、同部分以外は焼け残りがみられる上、通報者が本件物置小屋B北側壁付近から炎と煙が出ている状況を目撃していることからすれば、出火箇所 等によれば、本件物置小屋B内の北側小上がり中央部の焼損程度が強く、同部分以外は焼け残りがみられる上、通報者が本件物置小屋B北側壁付近から炎と煙が出ている状況を目撃していることからすれば、出火箇所は本件物置小屋B内の北側小上がり中央部付近であると認められる。 イ出火時刻D18は、本件物置小屋Bが建てられている敷地の北側に隣接する土地を車両置場(以下「本件車両置場」という。)として利用していたところ、5月29日午前5時35分頃から同日午前5時45分頃までの間に、本件物置小屋Bの前を通りかかった際、異変はなく、煙も出ていなかったが、同日午前6時30分過ぎ頃、本件車両置場の前を通りかかった際、本件物置小屋Bから黒い煙が上がっていたと述べている。また、通行人が本件物置小屋Bから煙が出ているのを発見し、同日午前6時29分に119番通報していることも併せ考えると、出火時刻は、同日午前5時35分頃から同日午前6時29分頃までの間であると認められる。 ウ出火原因出火当時、本件物置小屋Bには電気は引かれておらず、出火原因となり得るストーブや機械器具類その他火源となるものは存在しなかった。そして、所有者のD7はたばこを吸わない上、本件物置小屋Bは四方を塀や壁で囲われた敷地内にあり、前記時間帯にD7以外の第三者が通常使用するような場所でもないことなどを併せ考えると、自然発火や失火の現実的な可能性は低く、何者かが本件物置小屋B内に何らかの方法により放火したと認められる。 ⑶ d町放火事件についてア出火箇所 消防による火災調査の結果等によれば、D8方1階の南西側和室(8畳寝室)の西側掃き出し窓に取り付けられたカーテンの焼損程度が大きく、直下の縁側に焼損したカーテンと考えられる布や残焼物が残っていた上、出火当時、同寝室で横に 等によれば、D8方1階の南西側和室(8畳寝室)の西側掃き出し窓に取り付けられたカーテンの焼損程度が大きく、直下の縁側に焼損したカーテンと考えられる布や残焼物が残っていた上、出火当時、同寝室で横になっていたD8が、西側掃き出し窓の方向に炎のような赤い光を目撃して火災に気付き、その後間もなくカーテンが燃えているのを目撃していることからすれば、出火箇所は1階8畳寝室のカーテン付近であると認められる。また、D8方風除室の床面には、元々同室西側の柱に取り付けられていた御札入れが一部焼損した状態で落ちており、同柱も一部焼損していることなどからすれば、御札入れ付近からも出火したと認められる。 イ出火時刻D8方に居住するD8の長男D4の交際女性は、6月1日午後10時30分頃、D8方1階浴室で入浴を終えて脱衣所を出た際、独特の焦げ臭さや灯油のような臭いがしたが、同日午後9時50分頃、入浴のために1階に降りてきた際、そのような臭いはしなかったと述べている。また、D4は、同日午後11時20分に119番通報しているところ、D8が、カーテンが燃えているのを目撃した時刻について、119番通報の約10分前であると述べていることも併せ考えると、出火時刻は、同日午後9時50分頃から同日午後11時10分頃までの間であると認められる。 ウ出火原因各出火箇所の周辺には、たばこの吸い殻等はなく、電気配線や灯油入りポリタンク等の出火の原因となり得るものも存在しなかった上、居住者の中に電子たばこ以外のたばこを吸う者もいないことなどからすれば、自然発火や失火の現実的な可能性は低い。そして、D8方敷地には門扉等の設備は設けられていなかった上、出火当時、1階8畳寝室の西側掃き出し窓も風除室も施錠されておらず、第三者がD8方敷地内に立ち入 り、出火箇所に赴く 性は低い。そして、D8方敷地には門扉等の設備は設けられていなかった上、出火当時、1階8畳寝室の西側掃き出し窓も風除室も施錠されておらず、第三者がD8方敷地内に立ち入 り、出火箇所に赴くことは可能であった。さらに、風除室にある柱周辺の床面が湿潤しており、油臭が強かったため、警察が同所から付着物を採取して油類付着の有無等について鑑定を行った結果、灯油と考えられる油類が検出されたことなども併せ考えると、何者かが風除室内に灯油を散布した上、柱に取り付けられた御札入れに何らかの方法により放火するとともに、1階8畳寝室のカーテンにも何らかの方法により放火したと認められる。 ⑷ b町放火未遂事件についてア出火箇所被告人の妻(当時)が火災の状況を撮影した写真をみると、C18の本件7号室南側1階壁面付近に置かれたエアコン室外機付近の地面から炎が上がっている様子が確認できる。そして、消防による火災調査の結果等によれば、本件7号室の室内の内壁及び天井に焼損はなく、エアコン室外機付近の外壁の焼損が著しいこと、1階窓下方から地面に進むにつれ焼損が著しく、焼きの方向は同室外機付近の地面から窓方向又は同室外機方向へ進んでいること、本件7号室の壁面付近の地面に置かれていた人工芝タイプの玄関マット(以下「本件玄関マット」という。)の大半が焼失しており、付近のアスファルトは焦げ、焼損が著しいことからすれば、出火箇所は本件玄関マット付近であると認められる。 イ出火時刻青森県警察本部刑事部科学捜査研究所の職員は、前述した火災状況の写真に写っている6月2日午前6時10分時点の火の勢いに加え、警察官実施の燃焼実験の結果からすると、本件玄関マット自体は長時間燃焼し続けるような物ではなく、出火から30分以上は経過していないと述べている。また、現場に 2日午前6時10分時点の火の勢いに加え、警察官実施の燃焼実験の結果からすると、本件玄関マット自体は長時間燃焼し続けるような物ではなく、出火から30分以上は経過していないと述べている。また、現場に臨場した消防隊員も、同日午前6時10分時点の燃え方からすると、40分以上継続して燃えていたとは考えられず、出 火時刻は同日午前5時30分頃以降であると考えられる旨述べている。 そうすると、出火時刻は、同日午前5時30分頃から同日午前6時10分頃までの間であると認められる。 ウ出火原因出火当時、本件7号室の居住者は不在にしており、エアコンを使用しておらず、エアコン室外機には通電していなかった上、同室外機の電源コードに短絡痕はなく、ブレーカーの安全装置も作動していなかったことからすれば、エアコン室外機自体及び同室外機の配線等から出火した可能性は排斥される。そして、本件玄関マットの残焼物に灯油と考えられる油類が付着していた上、本件玄関マットは、火災前日までC18の8号室の玄関前に置かれて使用されていたものであり、これが本件7号室のエアコン室外機付近の地面に移動しているのは不自然であること、加えて、出火箇所周辺にその他の火源となり得るものは存在しないことなども併せ考えると、何者かが、本件玄関マットを本件7号室の壁面付近の地面に置いてこれに灯油を散布した上、何らかの方法により放火したものと認められる。 ⑸ 八戸器物損壊事件についてア出火箇所消防による火災調査の結果等によれば、消防隊到着時、①本件物置小屋A東側道路沿い、②D6方南側東寄りの外壁付近の火災ごみ、及び③D6方東側南寄りの外壁に立て掛けられたコンパネ上部の3か所が燃えており、これら3か所の間に延焼の形跡はないことなどからすれば、別々の対象物から 沿い、②D6方南側東寄りの外壁付近の火災ごみ、及び③D6方東側南寄りの外壁に立て掛けられたコンパネ上部の3か所が燃えており、これら3か所の間に延焼の形跡はないことなどからすれば、別々の対象物からそれぞれ出火したと認められる。すなわち、①については、本件物置小屋Aを覆っていたブルーシートの東端部分が焼失しており、本件物置小屋Aと同ブルーシートを止めていた標識ロープが溶解、断線し、半貫の下部が炭化していることからすると、本件物置小屋A東側外 周部から出火したと認められる。②については、D6方南側東寄りの標識ロープが焼け切れ、内部にある断熱材の外壁側が焼失していることからすると、D6方南側東寄り外壁付近から出火したと認められる。③については、D6方東側南寄りの外壁にコンパネと網付きの木枠が立て掛けられていたところ、これらに焼けが見られることからすると、D6方東側南寄りの外周部から出火したと認められる。 イ出火時刻通行人が、6月3日午前7時48分頃、D6方の南側道路を通った際、煙には気付かなかったと述べている。また、別の通行人が、同日午前8時17分頃、D6方の南側道路を通りかかった際、前記ブルーシート等が燃えているのを目撃していることなども併せ考えると、①ないし③の各出火時刻は、いずれも同日午前7時48分頃から同日午前8時17分頃までの間であると認められる。 ウ出火原因各出火当時、いずれの出火箇所にも発火源となり得るものは見られなかった上、八戸放火事件の発生から6日が経過しており、同時間帯に3か所から出火していることや、焼きの状況からして再燃火災による出火の可能性は考えられず、加えて、火災現場の使用状況等に照らして失火の可能性も低い。そして、D6方付近は人目に付きにくく、第三者がD6 か所から出火していることや、焼きの状況からして再燃火災による出火の可能性は考えられず、加えて、火災現場の使用状況等に照らして失火の可能性も低い。そして、D6方付近は人目に付きにくく、第三者がD6方敷地内に容易に侵入できる状況にあったことや、D6方南側外周のタイヤ付近にある標識ロープから油臭が感じられ、北川式ガス採取器で計測した結果、灯油の反応が見られたことなども併せ考えると、何者かが、前述したとおり、本件物置小屋Aに掛けられた前記ブルーシート又はその周辺の可燃物に何らかの方法により放火したものと認められる。 3 次に、関係証拠によれば、各犯行時間帯における被告人の行動状況等として、次の事実が認められる。 ⑴ 八戸放火事件について前述したとおり、八戸放火事件は、5月27日午後11時頃から同月28日午前零時55分頃までの間に発生した。そして、同日午前零時58分頃、近隣住民により119番通報がされ、その後、同日午前1時7分頃に消防による放水が開始され、同日午前1時51分頃に火勢が鎮圧された。 一方、被告人が使用するスマートフォンのアプリケーションソフト「iシェアリング」(GPS座標と最新のGPS位置データを利用して、自身の位置情報等が記録、表示されるもの)に保存されていた位置情報等によれば、被告人は、5月27日午前7時29分頃、自動車を運転し、青森県上北郡b町(以下「b町」という。)内の自宅を出発し、八戸市内を経由して、同日午前10時5分頃、自宅周辺に戻っているところ、その間、同日午前8時30分頃から同日午前8時55分頃までの間、八戸市内のD6方付近を徘徊していたことが認められる。さらに、被告人は、同日午後8時12分頃、再び自動車を運転して自宅を出発し、八戸市内を経由して、翌28日午前2時15分頃、自宅周辺 分頃までの間、八戸市内のD6方付近を徘徊していたことが認められる。さらに、被告人は、同日午後8時12分頃、再び自動車を運転して自宅を出発し、八戸市内を経由して、翌28日午前2時15分頃、自宅周辺に戻っているところ、その間、同月27日午後9時7分頃から同日午後9時10分頃にかけて、また同日午後10時37分頃から同日午後10時47分頃にかけて、さらに翌28日午前零時38分頃から同日午前1時10分頃までの間、D6方付近をそれぞれ徘徊した後、最終的に同日午前1時11分頃には同所付近を離れたことが認められる。 ⑵ 三沢放火事件について前述したとおり、三沢放火事件は、5月29日午前5時35分頃から同日午前6時29分頃までの間に発生した。そして、同日午前6時29分頃、通行人が本件物置小屋Bから火煙が出ているのを発見して119番通報をし、その後、同日午前6時38分頃に消防による放水が開始され、同日午前6時47分頃に火勢が鎮圧された。 一方、被告人が使用するスマートフォンのiシェアリングに保存されてい た位置情報等によれば、被告人は、同日午前5時39分頃、自動車を運転し、b町内の自宅を出発し、同県三沢市(以下「三沢市」という。)内を経由して、同日午前7時12分頃、自宅周辺に戻っているところ、その間、同日午前6時13分頃から同日午前6時39分頃までの間、三沢市内の本件物置小屋B付近を徘徊した後、同日午前6時40分頃には同所付近を離れたことが認められる。 ⑶ d町放火事件について前述したとおり、d町放火事件は、6月1日午後9時50分頃から同日午後11時10分頃までの間に発生した。そして、D8が、同日午後11時10分頃、火災に気付き、その後、D4が家族らとともに玄関から家の外に出て、消火器で消火し、同日午後11時20分頃に119番通報 午後11時10分頃までの間に発生した。そして、D8が、同日午後11時10分頃、火災に気付き、その後、D4が家族らとともに玄関から家の外に出て、消火器で消火し、同日午後11時20分頃に119番通報をした。 一方、被告人が使用するスマートフォンのiシェアリングに保存されていた位置情報等によれば、被告人は、同日午後5時31分頃、自動車を運転し、b町内の自宅を出発し、青森県北津軽郡e 町内や同県南津軽郡d町内などを経由して、翌2日午前零時13分頃、自宅周辺に戻っているところ、その間、同月1日午後9時14分頃、D8方付近に到着し、その後D8方付近を徘徊した後、同日午後11時20分頃には同所付近を離れたことが認められる。 ⑷ b町放火未遂事件について前述したとおり、b町放火未遂事件は、6月2日午前5時30分頃から同日午前6時10分頃までの間に発生した。 一方、被告人が使用するスマートフォンのiシェアリングに保存されていた位置情報等によれば、被告人は、前述したとおり、D8方付近を徘徊した後、同日午前零時12分頃には自宅又はその付近に戻り、その頃から同日午後零時43分頃までの間、同所付近で滞在していたところ、同日午前6時10分頃、在宅していた妻(当時)に火災発生を知らせるなどしたことが認められる。 ⑸ 八戸器物損壊事件について前述したとおり、八戸器物損壊事件は、6月3日午前7時48分頃から同日午前8時17分頃までの間に発生した。そして、通行人が同日午前8時24分頃に119番通報をし、その後、同日午前8時31分頃に消防による放水が開始され、同日午前8時37分頃に鎮火された。 一方、被告人が使用するスマートフォンのiシェアリングに保存されていた位置情報等によれば、被告人は、同日午前6時53分頃、自動車を運転し 放水が開始され、同日午前8時37分頃に鎮火された。 一方、被告人が使用するスマートフォンのiシェアリングに保存されていた位置情報等によれば、被告人は、同日午前6時53分頃、自動車を運転し、b町内の自宅を出発し、同日午前7時58分頃、八戸市内のD6方付近に到着し、その後D6方付近を徘徊した後、同日午前8時37分頃に同所付近を離れたことが認められる。 4 さらに、関係証拠によれば、被告人と各事件の関係者との関係性や被告人の行動状況等として、次の事実が認められる。 ⑴ 中古車両や中古重機等の買取・販売業を営んでいた被告人は、事業の資金繰りに窮したことから、4月15日及び翌16日、本件以前に中古重機を売却したことがあるD6に対し、入手して引き渡せる見込みのない重機2台(以下「重機2台」という。)の購入を持ちかけ、購入代金等の一部として合計203万円をだまし取り、借金の返済等に費消した。その頃、被告人は、D6に対し、5月6日に重機2台を引き渡す旨のうその約束をした。その後、被告人は、同月上旬頃から同月下旬頃にかけて、度々D6から重機2台の引渡しを催促されるなどしたが、その都度、詐欺の発覚を防ぐために種々のうそを言い、その引渡しを先延ばしにしていた。そして、被告人は、D6に対し、同月28日に重機2台を引き渡す旨の約束をしてその場をしのいだが、その約束は実現不可能なものであった。 その後、前述したとおり、同月27日午後11時頃から同月28日午前零時55分頃までの間に、D6が居住する同人方が放火されるという八戸放火事件が発生した。家の外に避難したD6が、カーポートに止めていた自動車 の中にいたところ、同日午前7時34分頃、被告人から、電話で、「bの実家に雷が落ちて火事になった」「コンテナからバックホーを出すための引換 に避難したD6が、カーポートに止めていた自動車 の中にいたところ、同日午前7時34分頃、被告人から、電話で、「bの実家に雷が落ちて火事になった」「コンテナからバックホーを出すための引換券が燃えてしまったので、今日は納品できない」などと言われたので、D6方も火事になったことを伝えた(なお、被告人が述べた前記うその内容については、D6の捜査段階の供述等に基づいて認定しているところ、D6の供述は詳細かつ具体的で自然な内容であり、記憶違い等をしている可能性は低い上、この点について殊更虚偽の供述をする理由もないから信用することができる。これに反する被告人の公判供述は採用できない。)。 ⑵ また、事業の資金繰りに窮していた被告人は、判示第4の1及び2のとおり、3月16日頃から同月25日にかけて、かねて仕事上の付き合いがあり、D8方で居住していたD4に対し、入手して引き渡せる見込みのない重機3台(以下「重機3台」という。)の購入を持ちかけ、購入代金として合計530万円をだまし取り、借金の返済等に費消した。その頃、被告人は、D4に対し、遅くとも同年のゴールデンウィーク明けまでには重機3台を引き渡す旨のうその約束をした。その後、被告人は、4月下旬頃から5月下旬頃にかけて、度々D4から重機3台の引渡しを催促されるなどしたが、その都度、詐欺の発覚を防ぐために種々のうそを言い、その引渡しを先延ばしにしていた。そして、被告人は、5月27日又は同月29日、D4に対し、6月2日に重機3台を引き渡す旨の約束をしてその場をしのいだが、その約束は実現不可能なものであった。 ⑶ さらに、前述したとおり、D18は、D7が所有する本件物置小屋Bに隣接する土地を本件車両置場として利用していたところ、被告人は、かねてD18と仕事上の付き合いがあり、D18に売却した あった。 ⑶ さらに、前述したとおり、D18は、D7が所有する本件物置小屋Bに隣接する土地を本件車両置場として利用していたところ、被告人は、かねてD18と仕事上の付き合いがあり、D18に売却した中古車両等を本件車両置場に運んだことが複数回あった。被告人は、3月頃、D18に対し、重機等10台を売却して代金合計399万円を受領したにもかかわらず、事業の資金繰りに窮していたことから、そのうち7台(合計289万円相当、以下 「重機等7台」という。)をD18に無断で他社にも売却するなどした。被告人は、D18から重機等7台が納品されないことについて度々問合せを受けるなどしたため、重機等7台をD18に引き渡すことは不可能であったのに、D18に対し、前記無断売却の事実を伝えず、その発覚を防ぐために重機等7台の引渡しの約束をしては、その都度、種々のうそを言い、その引渡しを先延ばしにしていた。そして、被告人は、5月27日又は同月28日、D18から、重機等7台の現物を確認させてほしい旨言われたのに対し、栃木県の整備工場に保管してある旨うそを言い、同月29日午前8時頃に自動車を運転して本件車両置場にD18を迎えに行き、前記整備工場に重機等7台を確認しに行く旨の約束をしてその場をしのいだが、その約束は実現不可能なものであった。 ⑷ その後、前述したとおり、同日午前5時35分頃から同日午前6時29分頃までの間に、D18の使用する本件車両置場に隣接する本件物置小屋Bが放火されるという三沢放火事件が発生した。D18が、同日午前6時30分頃、本件物置小屋Bの前を通りかかった際、火災に気付き、本件車両置場内の本件物置小屋Bに近い場所に止めてあった自動車を移動させ、消火活動を見守っていたところ、同日午前6時44分頃、被告人から、電話で、「今から行くよ」な を通りかかった際、火災に気付き、本件車両置場内の本件物置小屋Bに近い場所に止めてあった自動車を移動させ、消火活動を見守っていたところ、同日午前6時44分頃、被告人から、電話で、「今から行くよ」などと言われたので、「置き場の隣で火事があったから、ちょっと待って」と伝えた。被告人は、D18が火災の対応に追われるなどして、D18との約束を守らないで済むようにするため、同日午前6時53分頃、発信者番号非通知でD18に電話をかけ、消防職員等になりすまし、「火事の調査に立ち会ってほしい」「午前9時30分頃から午前10時頃の間に到着するのでその場で待っていてほしい」などとうそを言った。D18は、同日午前10時過ぎ頃まで本件車両置場で待っていたが、誰も現れなかったことから、被告人に電話をかけ、「これから行ける」と伝えたところ、被告人は、「今日はもう行けない、別の用事がある」とうそを言い、D18の提案 を断った上、改めて6月2日に栃木県の整備工場に重機等7台を確認しに行く旨の実現不可能な約束をしてその場をしのいだ。その後、被告人は、5月31日午前11時54分頃、前同様の理由から、再び発信者番号非通知でD18に電話をかけ、消防職員等になりすまし、6月2日にもう一度行くので火事の調査に立ち会ってほしい旨うそを言ったが、D18に断られた。被告人は、5月31日午後零時12分頃、D18に再び電話をかけ、6月2日に栃木県の整備工場に行くことについて再度確認をするなどした。 ⑸ 被告人は、前述したとおり、D4から重機3台の引渡しを求められる中で、同月1日午前6時36分頃、D4に対し、電話で、同月2日の夕方頃に重機3台を引き渡す旨うそを言った。その後、同月1日午後9時50分頃から同日午後11時10分頃までの間に、D4が居住するD8方が放火されるというd 時36分頃、D4に対し、電話で、同月2日の夕方頃に重機3台を引き渡す旨うそを言った。その後、同月1日午後9時50分頃から同日午後11時10分頃までの間に、D4が居住するD8方が放火されるというd町放火事件が発生した。さらに、翌2日午前5時30分頃から同日午前6時10分頃までの間に、当時被告人が居住していたC18が放火されるというb町放火未遂事件も発生した。 ⑹ 被告人は、同日午前6時10分頃、「隣の隣、燃えてるぞ。」などと言って、寝ていた妻(当時)を起こして外に出て、駐車場に止めてあった自動車から手袋を持ち出し、出火箇所に近付いて手を伸ばすなどしたが、積極的な消火活動はしなかった。また、被告人は、同日午前6時11分頃、スマートフォンを使用して、大家に電話をかけるとともに、C18の他の居住者らに火災の発生を知らせるなどしたが、自ら119番通報はしなかった。 被告人は、消防による消火活動が行われている最中、D18との約束を守ることができない口実とするため、同日午前6時26分頃、スマートフォンを使用して、D18に火災の状況を撮影した写真を送信するとともに、同日午前6時28分頃、「自宅の隣で火事があった」と伝えた。そして、被告人は、D18から、火災の処理が終わった後に栃木県の整備工場に行くことを提案されたのに対し、「第一発見者だから警察に話を聞かれる」「また今度 にしよう」などと言い、D18の提案を断った。さらに、被告人は、D4との約束を守ることができない口実とするため、同日午前6時31分頃、D4にも電話をかけ、消防車等が集まっている様子を映しながら、「自分の家の隣の隣で火事があって、第一発見者になった」「警察の事情聴取で今日は納品できない。」などとうそを言った。被告人は、D4から、約束どおり同日中に重機3台を引き渡すよう求め 子を映しながら、「自分の家の隣の隣で火事があって、第一発見者になった」「警察の事情聴取で今日は納品できない。」などとうそを言った。被告人は、D4から、約束どおり同日中に重機3台を引き渡すよう求められたのに対し、「トラック借りたのもキャンセルしたから。」などとうそを言い、その引渡しを先延ばしにした。 ⑺ その一方、被告人は、5月31日から6月2日にかけて、D6から、電話で、「調べてみたが、bで火事は起きていない」「嘘ついてるんでしょ」などと言われ、重機2台の引渡しを繰り返し強く要求された。そして、被告人は、詐欺の発覚を防ぐため、同日午後6時28分頃、D6に対し、同月3日に重機2台を引き渡す旨の新たな約束をしてその場をしのいだが、その約束も実現不可能なものであった。その後、前述したとおり、同日午前7時48分頃から同日午前8時17分頃までの間に、D6方敷地内において、八戸放火事件で全焼した本件物置小屋Aに掛けられたブルーシート等が放火されるという八戸器物損壊事件が発生した。親族から火災発生の連絡を受けたD6が、同人方付近で警察官と話をしていたところ、同日午前9時8分頃、被告人から、電話で、「社長忙しいべ」「忙しいべ」「今日なら出せるんだけど」「午前10時頃に出せる」などと言われたので、「従業員に行かせるから行けるよ」などと言うと、被告人から、「社長(D6)じゃなきゃだめだ」と言われた。これに対し、D6が、同日午前9時15分頃、電話で、自ら重機2台を受け取りに行く旨答えると、被告人は、驚いたような口調で、「えっ、社長来れるの」「それじゃあ、事務員に引換券を持って、bから八戸まで来れるか聞いてみる」などとうそを言い、詐欺の発覚を防ぐために知人女性に事務員のふりをさせ、電話で、D6に対し、同月4日であれば対応できる旨うそを言わせて、その 務員に引換券を持って、bから八戸まで来れるか聞いてみる」などとうそを言い、詐欺の発覚を防ぐために知人女性に事務員のふりをさせ、電話で、D6に対し、同月4日であれば対応できる旨うそを言わせて、その引渡しを先延ばしにした。その後、被告人は、D6に 電話をかけ、同月7日に重機2台を引き渡す旨のうその約束をしたが、同月6日、d町放火事件の被疑事実により警察に逮捕された。 5 被告人の公判供述について⑴ 被告人は、公判で、各犯行時間帯に各犯行現場付近にいたことは認めつつ、各事件についていずれも放火していない旨弁解し、要旨、次のとおり供述する。 アすなわち、5月27日午前、D6に対する重機2台の引渡し期限を翌日に控え、D6に直接会って本当のことを話して謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発し、インターネットで検索したD6方の住所をスマートフォンのナビアプリケーションに目的地として入力するとともに、D6が普段乗っている白色のクラウンを目印にして、D6方周辺を走行して探し回ったが、D6方を見つけることができず、一旦帰宅した。その後、改めてD6に直接会って謝罪をしようと考え、同日夜、再び自動車を運転して自宅を出発し、同様にD6方周辺を走行して探し回ったが、結局、D6方を見つけることができなかった。帰宅途中に何か口実を作って引渡し期限を延ばすしかないと考え、同月28日の朝にD6に電話をかけてうそを重ねた。D6方で八戸放火事件の火災が発生したことは、そのときD6に告げられて初めて知った。 イ翌29日、重機等7台を他社に売却したことなどについてD18に本当のことを話して、謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発し、どうしたらいいか考えながら、待ち合わせ場所の本件車両置場付近を走行していたが、意を決して謝罪をす したことなどについてD18に本当のことを話して、謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発し、どうしたらいいか考えながら、待ち合わせ場所の本件車両置場付近を走行していたが、意を決して謝罪をするためにD18に電話をかけた際、D18から、隣の土地で三沢放火事件の火災が発生した旨告げられたので、気が変わり、それを口実にしてD18との約束をうやむやにしようと考え、D18に本当のことを話さず、うそを重ねて引渡し期限を先延ばしにした。 本件物置小屋Bで三沢放火事件の火災が発生したことは、そのときD18 に告げられて初めて知った。 ウ 6月1日、D4に対する重機3台の引渡し期限を翌日に控え、D4に直接会って本当のことを話して謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発した。どうしたらいいか考えながら、D8方付近を走行するなどしていたが、結局、踏ん切りがつかず、D8方を訪問しないまま帰宅の途に就いた。そのときD8方でd町放火事件の火災が発生していることは知らなかった。 エその後、6月2日未明にD8方付近からC18の自宅に戻り、どうしたらいいか朝まで考えていたが、覚悟を決めてD18とD4に謝罪をすることにした。頭の整理をするため家の外に出たところ、本件7号室のエアコン室外機付近でb町放火未遂事件の火災が発生しているのを発見して気が変わり、それを口実にしてD4との約束や新たにD18と交わした約束をうやむやにしようと考えた。そこで、両名にそれぞれ電話をかけ、うそを重ねて先延ばしにした。 オ翌3日朝、新たにD6と約束した重機2台の引渡し期限を迎え、D6に直接会って謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発し、前同様の方法でD6方周辺を走行して探し回ったが、D6方を見つけることができないまま、帰宅の途に就いた。そのときD6方敷地 を迎え、D6に直接会って謝罪をしようと考え、自動車を運転して自宅を出発し、前同様の方法でD6方周辺を走行して探し回ったが、D6方を見つけることができないまま、帰宅の途に就いた。そのときD6方敷地内で八戸器物損壊事件の火災が発生していることは知らなかった。帰宅途中にまたD6にうそをつくしかないと考え、D6に電話をかけ、引渡し期限を先延ばしにした。 ⑵ 被告人の公判供述の信用性アしかし、被告人供述のとおりであるとすれば、被告人が、各犯行時間帯に各犯行現場付近で、D6、D18及びD4にうそを言っていたことについて謝罪をしようなどと考えていた際、いずれもタイミング良く、うその発覚を免れる口実となり得るような各火災が、わずか7日の間で、偶然にも連続して5回発生したということになるが、そのような偶然が重なる可 能性は低く、不自然、不合理というほかない。 イまた、被告人供述を前提にすれば、①被告人は、5月27日から同月28日にかけて、D6に謝罪をしようとしていたのに、D6方を見つけることができないと分かるや、うそをつき続けようと気が変わり、同日の朝にD6に内容虚偽の電話をかけるなどする一方、②翌29日には、D18に謝罪をするために本件車両置場付近に赴き、しかし、三沢放火事件の発生を知るや、約束をうやむやにしようと突然気が変わり、同月31日にも自ら消防職員等になりすまして電話をかけるなどの偽装工作までしてうそをつき続けながら、③翌1日にはD4に謝罪をするためにD8方付近に赴き、しかし、結局謝罪をしないまま同月2日に帰宅し、その日のうちにD18及びD8に謝罪をしようと覚悟を決めたのに、b町放火未遂事件等の発生を知るや、またも両名との約束をうやむやにしようと突然気が変わり、うそをつき続け、他方、④翌3日にはD6に謝罪をするためにD D18及びD8に謝罪をしようと覚悟を決めたのに、b町放火未遂事件等の発生を知るや、またも両名との約束をうやむやにしようと突然気が変わり、うそをつき続け、他方、④翌3日にはD6に謝罪をするためにD6方付近に赴き、しかし、D6方を見つけることができないと分かるや、またもうそをつき続けようと気が変わり、結局、その後逮捕されるまでの間、3名に対し、自己の不正を告白することも謝罪をすることもないままうそをつき続け、重機等の引渡し等を先延ばしにしたということになる。しかしながら、このような被告人の行動が前後一貫していないことは明らかであり、謝罪をしようとしていた者の行動として、不自然、不合理である。 ウ個別にみても、D6やD4に謝罪をするためであったとする点は、被告人がD6やD4にうそをついていたことを告白しただけでも両名が怒る可能性は高いのに、事前に連絡もせず、夜遅く又は朝早くに突然D6方やD8方を訪問すれば、両名を更に怒らせる事態になることは明らかであり、被告人の供述内容は不自然、不合理である。また、3回にわたり、ナビアプリケーション等を使用してD6方を探したのにいずれも見つからなかったとする点や、D6に電話連絡するなどしてD6方の場所を尋ねることす らしていない点も不自然、不合理である。さらに、被告人供述によれば、6月3日にD6方付近を走行している際、全焼したD6方の前を通りかかり、同人方かもしれないと思ったとのことであるが、目印の白色のクラウンが止まっていなかったので自動車から降りて確認しなかったと述べる点や、怖くてD6に確認の電話をしなかったと述べる点も、謝罪をするためにD6方を探していた者の行動として不自然、不合理である。そして、D18に謝罪をするためであったとする点についても、事前に連絡もせず、栃木県の整備工場に 電話をしなかったと述べる点も、謝罪をするためにD6方を探していた者の行動として不自然、不合理である。そして、D18に謝罪をするためであったとする点についても、事前に連絡もせず、栃木県の整備工場に行く旨のうその約束をした期限の当日になって、早朝であるのに、待ち合わせ時刻よりも1時間以上も早く、突然電話をして謝罪をするなどというのは非常識であって、謝罪が容易に受け入れられるとは考え難く、被告人の供述内容は不自然、不合理である。 エしたがって、謝罪をするために各犯行現場付近にいたなどという被告人の公判供述は、全体として信用できない。 6 犯人性についての検討⑴ア以上の事実関係によれば、被告人は、D6からの度重なる催促を受け、詐欺の発覚を防ぐために、同人との間で、5月28日と6月3日に重機2台を引き渡すという実現不可能な約束をしたため、両日ともに重機2台を引き渡さなくても済む理由を必要とするような追い詰められた状況にあったと認められる。同様にD18との間でも、D18から度々問合せや催促を受け、無断売却等の発覚を防ぐため、5月29日と6月2日に栃木県の整備工場に行き、重機等7台を確認させる旨の実現不可能な約束をしていたことから、両日ともに前記工場に行かなくて済む理由を必要とするような追い詰められた状況にあったと認められる。さらにD4との間でも、被告人は、D4から重機3台の引渡しを強く求められ、詐欺の発覚を防ぐため、6月2日に重機3台を引き渡す旨の実現不可能な約束をしていたため、同日に重機3台を引き渡さなくて済む理由を必 要とするような追い詰められた状況にあったと認められる。そして、被告人やその約束相手の身近で火災が発生したとなれば、火災調査や捜査への協力等に時間がとられ、前述した約束の履行を先延ばしする口実になり得 するような追い詰められた状況にあったと認められる。そして、被告人やその約束相手の身近で火災が発生したとなれば、火災調査や捜査への協力等に時間がとられ、前述した約束の履行を先延ばしする口実になり得ることは容易に想像できるところであり、そのことは被告人も十分に分かっていたはずである。そうすると、被告人は、各犯行に及ぶ動機となり得る事情を有していたと考えて矛盾しない状況にあったと認められる。そして、被告人は、各事件の発生後、重機等の引渡し等を実際に先延ばしにしており、これらの事実は、それ自体被告人が各犯行の犯人であることを一定程度推認させるものといえる。 イこれに対し、弁護人は、被告人が、D6、D18及びD4に重機等を納品できる見込みがないという苦しい状況にあったからといって、それを動機として放火という重大な被害を生じさせる可能性のある危険な行為に及ぶことは考えられないし、特に被告人が自分や家族を危険にさらすことは明らかに釣り合わないから、前述した事情を被告人の各犯行の動機とすることには、大きな飛躍があると主張する。しかし、被告人が、自分の仕事や生活を維持するなどのため、何としても不正の発覚を防ぎたいという目先のことにとらわれるなどし、他人の被害や迷惑を顧みることなく短絡的に行動したという可能性も十分に考えられる。b町放火未遂事件についても、被告人が、自ら第一発見者となり、頃合いを見計らって周囲に火災の発生を告げるなどすれば、火災が延焼拡大する危険を回避することができるし、現に被告人はそのような行動をとっている。 また、弁護人は、八戸放火事件、d町放火事件及び八戸器物損壊事件については、被告人は、D6やD4に対し、約束の履行を先延ばしするに当たり、各事件に言及しておらず、各事件の発生によって利益を得ていないと主張する。しかし 放火事件、d町放火事件及び八戸器物損壊事件については、被告人は、D6やD4に対し、約束の履行を先延ばしするに当たり、各事件に言及しておらず、各事件の発生によって利益を得ていないと主張する。しかし、被告人が、各事件発生直後の電話で、両名に対し、自ら先延ばしの理由として各事件の話を持ち出せば、両名から放 火の犯人ではないかと強く疑われることになるから、両名に先んじて各事件について言及しなかったのは自然なことといえる。被告人が、両名と話をする中で、直接的には、実家の火災やb町放火未遂事件の発生を先延ばしの口実にしているからといって、これにより、被告人が各犯行に及ぶ動機となり得る事情を有していたと考えて矛盾しない状況にあったとの前記判断が左右されるものではない。したがって、弁護人の主張は採用できない。 ⑵ さらに、被告人は、各犯行時間帯に各犯行現場付近におり、それぞれ放火する機会が十分にあったと認められる。そして、八戸放火事件、三沢放火事件、d町放火事件及び八戸器物損壊事件については、説明がつかない何らかの目的で、各事件の発生と近接した日時に、わざわざ自宅から遠方の各犯行現場付近まで赴き、同所付近に相当時間とどまっていた上、各事件発生後、間もなく各犯行現場付近から離れるなどの不自然な行動をしている。また、b町放火未遂事件についても、被告人は、火災の発生を最初に認識した人物であるところ、出火箇所に近づき、わざわざ自動車まで手袋を取りに行き、火元の方に手を伸ばすなどの動作をする一方、さほど火の勢いが強くないのに、積極的な消火活動をしておらず、119番通報もしていないなどの不自然な行動をしており、これらの事実も、それ自体被告人が各犯行の犯人であることを一定程度推認させるものといえる。 ⑶ そして、以上のとおり、本件で併合審理されて ず、119番通報もしていないなどの不自然な行動をしており、これらの事実も、それ自体被告人が各犯行の犯人であることを一定程度推認させるものといえる。 ⑶ そして、以上のとおり、本件で併合審理されている5件の各放火等は、①いずれも被告人がうそを言って仕事上のトラブルが生じていた取引相手から、納品等を強く求められるなどして追い詰められた状況下において、いずれも不正の発覚を防ぐために実現不可能なうその約束をしていた期限の前日(d町放火事件)又は当日(八戸放火事件、三沢放火事件、b町放火未遂事件、八戸器物損壊事件)に、取引相手に関係する建物等(八戸放火事件、三沢放火事件、d町放火事件、八戸器物損壊事件)や被告人自身に関係する建物 (b町放火未遂事件)が放火されたというものである。そして、被告人は、各事件の発生後、いずれも納品等を実際に先延ばしにし、そのうち三沢放火事件及びb町放火未遂事件については、不正の発覚を免れるための手段として積極的に各事件の発生を利用しており、かつ、②いずれの犯行においても、被告人は、説明がつかない何らかの目的をもって犯行時間帯に犯行現場付近におり、犯行前後に不自然な行動をしている。前記①及び②の各事実は、基本的にそれぞれ別の証拠に基づき認定されたものであり、相互に別個独立したものであるところ、このような事実関係において、仮に、各犯行が被告人の関与なしに他の者によって犯されたとするならば、それは、①被告人以外の者が、偶然被告人がうそを言って仕事上のトラブルになっていた関係先等に対し、追い詰められた被告人がうその約束をしていた期限の前日又は当日に偶然タイミング良く放火し、それによって被告人が偶然にも恩恵を被る結果となり、かつ、②被告人以外の者が各犯行に及んでいる頃、被告人も偶然各犯行現場付近におり、犯行前後 をしていた期限の前日又は当日に偶然タイミング良く放火し、それによって被告人が偶然にも恩恵を被る結果となり、かつ、②被告人以外の者が各犯行に及んでいる頃、被告人も偶然各犯行現場付近におり、犯行前後に犯人と誤解されるような不自然な行動をしていたことになる。しかし、各事件をそれぞれ単独でみても、そのような偶然の事態が発生する可能性は、常識に照らしていずれも低いと考えられる。 しかも、本件では、5件の各放火等が、7日間という短期間のうちに、前述したように、いずれも被告人と強い結びつきがあり、かつ、被告人がいずれの犯行時間帯にも犯行現場付近におり、不自然な行動をしていたという状況下で連続的に犯されたものであるという点に特徴があり、それを踏まえて各事件を全体的にみれば、前述したような偶然が幾重にも重なるという極めて確率の低い事態が発生することはなおさら考えられない。 したがって、以上の各事実を総合的に評価すれば、被告人が各犯行の犯人であると認められる。 なお、以上の総合的認定の手法は、5件の各犯行に関する事実を相互に被告人と各犯人との同一性の間接事実として用いている側面を有するものであ るが、それは、各犯行が被告人の関与なしに行われたという偶然性を排除しようとするものであり、被告人に対して実証的根拠の乏しい人格的評価を加え、これをもとに各犯行の犯人が被告人であるという推論をするものではないから、許容されるものと解する。 7 被告人の現住建造物等放火の故意(八戸放火事件)について八戸放火事件について、被告人は、直接的には、本件物置小屋Aに放火しているところ、D6方が本件物置小屋Aから北西方向約1.2mの位置に隣接して建てられていたという現場の状況、当時風向きが南西方向であったという気象状況、被告人が人目につきにくい深夜の時 屋Aに放火しているところ、D6方が本件物置小屋Aから北西方向約1.2mの位置に隣接して建てられていたという現場の状況、当時風向きが南西方向であったという気象状況、被告人が人目につきにくい深夜の時間帯に、本件物置小屋Aの北側の柱付近の屋外に火を放ったという放火の状況、及び、いずれも木造という本件物置小屋AとD6方の各構造等に照らせば、本件物置小屋Aへの放火は、隣接したD6方に延焼する危険性が高い行為といえ、被告人はそのような行為であるとわかって行ったと認められる。そして、前述した被告人とD6との関係性及びそれを踏まえた被告人の犯行動機や、被告人がD6方への延焼を防ぐための措置や消火活動をした形跡もうかがわれないことなどの犯行前後の行動状況等に照らしても、前記のとおり考えて矛盾しない。したがって、被告人に現住建造物等放火の故意があったと認められる。 (量刑の理由) 1 本件は、⑴同一の被害者に対し、別個の機会に敢行した殺人未遂1件(判示第1)、殺人1件(判示第2)のほか、⑵現住建造物等放火2件(判示第6、第8)、非現住建造物等放火1件(判示第7)、現住建造物等放火未遂1件(判示第9)、器物損壊1件(判示第10)、及び⑶詐欺4件(判示第3ないし第5)から成る事案である。 2 量刑判断の中心となる⑴の殺人未遂、殺人についてみると、中古重機等の買取・販売業を営んでいた被告人は、取引先会社の担当者であったD1に、無断で売却した同社所有の重機の引渡しや使い込んだ別の重機等の売却代金の支払を強 く求められ、同人の追及から逃れるなどのため、殺意をもって、同人を自動車もろとも岸壁から転落させ、その3か月後に、うつ伏せにさせた同人の背部に除雪機を乗り上げさせるなどして殺害したというものである。いずれも事故に見せかけるための偽装工作をするな をもって、同人を自動車もろとも岸壁から転落させ、その3か月後に、うつ伏せにさせた同人の背部に除雪機を乗り上げさせるなどして殺害したというものである。いずれも事故に見せかけるための偽装工作をするなどした計画的な犯行であり、その態様も危険性の高い卑劣で悪質なものである。被告人が、別個の機会に、二度にわたりD1を狙い殺害を遂げていることも考えると、強い殺意を有していたと認められる。被告人は、事業資金等に窮して自ら不正を働き、その発覚を防ぐためにD1に対して種々のうそをつくなどの不誠実な対応をとり続けた挙げ句、同人の命を犠牲にしてまで保身を図ったなどというもので、その極めて身勝手な動機、経緯に酌量の余地はなく、人命軽視の態度は甚だしい。何ら落ち度のないD1の命を二度にわたって危険にさらし、遂にその命を奪った結果は重大である。D1は、被告人に翻弄された末、理不尽にも殺害されたのであり、とても無念であったと思われる。 遺族らが厳しい処罰感情を示しているのも当然である。 3 次に、⑵の現住建造物等放火、非現住建造物等放火、現住建造物等放火未遂、及び器物損壊についてみると、被告人は、重機等の売買代金名目で現金をだまし取るなどした取引相手3名から、重機等の引渡しなどを強く求められ、約束を守ることができない口実を作り、不正の発覚を免れるなどのため、別個の機会に、取引相手に関係する建物3棟及び建物1棟の周辺に置かれた可燃物並びに被告人に関係する建物1棟に、7日間で5回にわたり放火(器物損壊を含む。)したというものである。いずれも人目につきにくい深夜や早朝を狙うなどした巧妙な犯行である。特に、八戸放火事件については、D6方を全焼させた結果が重大である上、深夜という犯行時間帯のほか、住宅密集地という周辺状況等に照らせば、居住者であるD6の生命等を重大な危険に した巧妙な犯行である。特に、八戸放火事件については、D6方を全焼させた結果が重大である上、深夜という犯行時間帯のほか、住宅密集地という周辺状況等に照らせば、居住者であるD6の生命等を重大な危険にさらし、周囲の民家等への延焼も生じさせかねないものであったといえる。d町放火事件についても、深夜の時間帯に、5名の居住者が現にいる木造家屋に放火した行為は危険であり、火災の発見や消火活動が遅れていた場合、火がD8方全体に燃え広がる可能性も相応にあったと いえる。これら一連の放火等の動機、経緯も、前述した殺人等の場合と同様、自ら不正を働くなどして窮地に陥った挙げ句、他者の安全や財産を犠牲にしてまで保身を図るなどという極めて身勝手なもので、酌量の余地はない。被告人が八戸放火事件を起こしてD6方を全焼させたことを認識したにもかかわらず、なおも火を用いた4件の各犯行を繰り返していることも考えると、非常に卑劣で悪質というほかない。 4 さらに、⑶の詐欺についてみても、被告人は、約3か月足らずの間に4件の各犯行を職業的、常習的に繰り返しており、3名の被害者から詐取した被害額(合計933万円)も多額であり、犯情は悪い。 以上のような事情に照らすと、被告人の刑事責任は非常に重大であるといわざるを得ない。 5 加えて、被告人は、詐欺4件の事実は認めるものの、それ以外の各犯行については不合理な弁解に終始し、自身の罪と向き合う姿勢を示さず、反省の情をうかがうことはできない。そうすると、八戸放火事件について被告人の現住建造物等放火の故意は未必的なものであって、三沢放火事件とd町放火事件の焼損結果はわずかな範囲に限られており、b町放火未遂事件は未遂にとどまっていること、被告人が詐欺4件の被害者らに対する被害弁償の意向を示していること、前科前歴がない て、三沢放火事件とd町放火事件の焼損結果はわずかな範囲に限られており、b町放火未遂事件は未遂にとどまっていること、被告人が詐欺4件の被害者らに対する被害弁償の意向を示していること、前科前歴がないこと、実母が公判に出廷し、実父とともに被告人の更生に助力する旨述べていることなど、被告人のために酌むべき事情を考慮しても、被告人に対しては、検察官の求刑どおり、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑:懲役30年及び主文同旨の没収、弁護人の科刑意見:各詐欺罪のみが成立することを前提に執行猶予付き判決、被害者参加人弁護士の科刑意見:死刑)令和6年5月22日青森地方裁判所刑事部 裁判長裁判官藏本匡成 裁判官小澤光 裁判官大井俊哉

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