主文 1 被告は,原告Aに対し,14万0739円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,2万5379円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,2万5379円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,2万5379円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 5 被告は,原告Eに対し,1万3843円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 6 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 8 この判決は,1項ないし5項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 主位的に求めた裁判ア被告は,原告らに対し,7669万7784円及びこれに対する昭和57年7月15日から完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 イ訴訟費用は被告の負担とする。 ウ仮執行宣言(2) 予備的に求めた裁判ア被告は,原告らに対し,913万7310円及び内164万2910円に対する昭和53年12月8日から,内749万4400円に対する昭和57年7月15日から,それぞれ完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 イ訴訟費用は被告の負担とする。 ウ仮執行宣言 2 被 月8日から,内749万4400円に対する昭和57年7月15日から,それぞれ完済まで年5分の割合による金銭を支払え。 イ訴訟費用は被告の負担とする。 ウ仮執行宣言 2 被告(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の骨子本件は,原告らにおいて,土地区画整理法に基づく藤沢都市計画α地区土地区画整理事業の施行者である被告の公権力の行使に当たる公務員である藤沢市長が,原告らの所有する宅地につき換地処分を行うについて,故意または過失により清算金の算定を誤り,これによって違法に損害を受けたなどと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めている事案である。 第3 基礎となる事実(以下の事実は,当事者間に争いがない事実であるか,記載した証拠ないし弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。) 1 当事者(1) 原告らは,後記2(3)の本件換地処分当時,別紙物件目録記載1(1)ないし(3)の土地(以下,それぞれの土地を「本件従前地①ないし③」といい,これらの土地を併せて「本件従前地」という。)の共有持分を有していた者である。その持分は,いずれの土地についても,原告Aが100分の61,原告B,原告C及び原告Dがそれぞれ100分の11,原告Eが100分の6であった。 〔甲3ないし5号証〕(2) 被告は,土地区画整理法に基づく土地区画整理事業である,藤沢都市計画α地区土地区画整理事業(以下「本件区画整理事業」という。)の施行者(同法3条3項,52条以下)である。 2 換地処分に関する経緯(1) 被告は,昭和32年12月12日,本件区画整理事業の施行区域を決定し,さらに,同事業の事業計 事業」という。)の施行者(同法3条3項,52条以下)である。 2 換地処分に関する経緯(1) 被告は,昭和32年12月12日,本件区画整理事業の施行区域を決定し,さらに,同事業の事業計画を定め,その設計の概要について,昭和35年2月19日,神奈川県知事の認可を受けた(土地区画整理法52条1項)〔乙21号証〕。 また,昭和34年3月27日,土地区画整理法52条1項,53条が規定する施行規程として,藤沢市の条例である「藤沢都市計画α地区土地区画整理事業に関する条例」(以下「本件区画整理事業条例」という。)が制定された〔乙3号証〕。 (2) 被告は,本件区画整理事業における土地評価の方法について,「藤沢都市計画α地区土地区画整理事業土地評価基準」(以下「本件土地評価基準」という。)及び「藤沢都市計画α地区土地区画整理事業土地評価基準細則」(以下「本件土地評価基準細則」という。)を定め,これらの基準に従って,施行区域内の各土地の評価を行った〔乙4,5号証〕。 (3) 被告は,昭和53年11月8日,原告らに対し,本件従前地の一部であって本件区画整理事業において保留地として定められた別紙物件目録記載3の土地(以下「本件保留地」という。)を,158万1000円で売却した。 そして,被告は,昭和57年7月15日付けで,原告らに対し,土地区画整理法103条1項の規定に基づき,本件従前地①について別紙物件目録記載2(1)の土地(以下「本件換地①」という。)を換地と定め,原告らに交付すべき清算金を2万9720円とし,本件従前地②について別紙物件目録記載2(2)の土地(以下「本件換地②」という。)を換地と定め,原告らに交付すべき清算金を10万1280円とし,本件従前地③について別紙物件目録記載2(3)の土地(以 本件従前地②について別紙物件目録記載2(2)の土地(以下「本件換地②」という。)を換地と定め,原告らに交付すべき清算金を10万1280円とし,本件従前地③について別紙物件目録記載2(3)の土地(以下「本件換地③」といい,本件換地①,②と併せて「本件換地」という。)を換地と定め,原告らから徴収すべき清算金を12万6520円とする各換地処分をした(以下「本件換地処分」という。この結果,原告らに対し差し引き交付すべき清算金の額は4480円となる。)。 3 審査請求の経緯(1) 原告らは,昭和57年7月29日,本件換地処分を不服として,神奈川県知事に対し,審査請求をした(以下「本件審査請求」という。)。 これに対し,神奈川県知事は,平成13年3月30日付けで,本件審査請求を棄却するとともに,本件換地処分が違法であることを宣言する裁決をした(以下「本件裁決」という。)。 〔甲2号証〕(2) 本件裁決は,本件換地処分における土地の評価の過程について,①本件区画整理事業の従前の宅地(以下「従前地」という。)の評価の際に,本件区画整理事業によって整備される都市計画道路の影響を受ける宅地に期待価を加算したことは合理性を欠き,その結果,原告らを含む期待価加算の対象とならなかった従前地の権利者を不利にした点,及び,②本件従前地の評価の際に,その隣接地を併せた評定指数から同隣接地の評定指数を控除する方法が採られているところ,その際,合理的な理由がないのに,同隣接地自体の評価の際の評定指数よりも大きな値の評定指数を控除した点に誤りがあるとした。 その上で,本件裁決は,本件換地処分は違法であるとしつつも,仮にこれを取り消すと,各権利者の従前地と換地に係る評定指数をすべて見直し,大多数の権利者について清算金に関する 誤りがあるとした。 その上で,本件裁決は,本件換地処分は違法であるとしつつも,仮にこれを取り消すと,各権利者の従前地と換地に係る評定指数をすべて見直し,大多数の権利者について清算金に関する処分のやり直しをして清算金の追徴,返戻又は交付をすることになり,他の権利者に多大な影響を及ぼすなど公の利益に著しい障害が生じるが,一方で原告らの損害は金銭賠償の方法によって十分補てん可能であるから,本件換地処分を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして,行政不服審判法40条6項の規定に基づき,いわゆる事情裁決をしたものであった。 〔甲2号証〕第4 争点本件の主たる争点は,① 本件換地処分中の清算金の算定に違法があるかどうか,② 公権力の行使に当たった公務員である藤沢市長に故意又は過失があるかどうか,③ 原告らの損害の有無及びその額,④ 原告らの損害賠償請求権が被告のした時効の援用によって消滅したかどうか,である。 第5 争点に関する当事者の主張 1 争点①(本件換地処分中の清算金の算定に違法があるかどうか)について<原告らの主張>(1) 従前地に期待価加算をした誤りについてア換地処分及び清算金の算定をするに当たって,従前地の評価は,あくまで事業開始時に実際に各土地が有していた状況から定められるべきものであって,将来の事情を考慮すべきではない。 しかし,被告は,従前地の評価の際に,本件従前地以外の宅地の一部について,都市計画道路の影響を受けるものとして期待価加算を行った結果,その対象となった従前地の評価及び換地処分が不当に有利となり,一方で期待価加算の対象とならなかった本件従前地は不当に不利に評価されること ,都市計画道路の影響を受けるものとして期待価加算を行った結果,その対象となった従前地の評価及び換地処分が不当に有利となり,一方で期待価加算の対象とならなかった本件従前地は不当に不利に評価されることとなったのであり,このような期待価加算は違法というべきである。 イこの点について,被告は,本件区画整理事業と期待価加算の対象となった都市計画道路とは別個のものであるから,期待価加算をすることは適法であると主張する。 しかし,上記都市計画道路の計画決定が本件区画整理事業決定の直前にされていることからも明らかなように,本件区画整理事業の根幹手法である減歩によって被告が道路用地を取得することが予定されていたのであって,上記都市計画道路の整備と本件区画整理事業とは一体のものというべきである。 (2) 本件従前地の評価の誤り被告は,本件従前地の評価に際して,本件従前地と本件前面隣接地(株式会社静岡銀行が所有する藤沢市β2345番9の土地。以下同じ。)とを併せて評価した評定指数から,本件前面隣接地の評定指数を差し引く方法をとっている。 しかし,その算定の過程には,以下のとおりの誤りがあり,その結果,本件従前地は不当に低く評価されることとなった。 ア被告が本件従前地の評価の基礎とした調整公図において,本件従前地が,その現況に比べ,著しく細長い地形の悪い土地にされた。 イ本件従前地の地積は公簿及び実測上1,174.94平方メートルであるのに,1,037.98平方メートルとして計算された。 ウ本件前面隣接地の地積は公簿及び実測上288.03平方メートルであるのに,被告がこれを373.73平方メートルと誤って算定したため,本件前面隣接地の評定指数が51,3 て計算された。 ウ本件前面隣接地の地積は公簿及び実測上288.03平方メートルであるのに,被告がこれを373.73平方メートルと誤って算定したため,本件前面隣接地の評定指数が51,317個と過大に評価され,これを差し引いて算出された本件従前地の評定指数が不当に低くなった。 また,本件前面隣接地自体の評価に際して,その地積は366.66平方メートル,評定指数は49,671個とされていたのに,本件従前地の評価の際に本件前面隣接地の評定指数を控除する際には,同一土地でありながら,上記のとおりこれよりも値の大きい地積及び評定指数が採用された。 <被告の主張>(1) 本件区画整理事業の清算金の算定方法本件区画整理事業では,清算金の算定について,比例清算方式を採用しているところ,この比例清算方式とは,従前地と換地のすべての宅地を評価して算出した評定指数をそれぞれ合計し,換地の総指数を従前地の総指数で除して比例率を定め,この率を従前地の評定指数(金額)に乗じたところと,これに対する換地の評定指数(金額)とを比較して,その差額を清算金とすることで,徴収金と交付金の総額を等しくする方式である。 (2) 従前地に係る期待価加算についてア被告は,本件区画整理事業の従前地の評価に際して,本件土地評価基準23条2号,本件土地評価基準細則3条2号の各規定に基づき,都市計画道路の影響を受ける土地について,一定の評定指数を加算する期待価加算を行った。これは,都市計画道路の計画決定がされた時点において,その影響下にある宅地には,将来の沿道利用等の期待性が生じ,その影響下にない宅地との間に価値的な差が存することから,この点を従前地の評価上「期待価」と呼んで,加算要因としたものである。 点において,その影響下にある宅地には,将来の沿道利用等の期待性が生じ,その影響下にない宅地との間に価値的な差が存することから,この点を従前地の評価上「期待価」と呼んで,加算要因としたものである。 イこれに対し,原告らは,上記期待価加算は違法であると主張し,本件裁決も,築造される都市計画道路によってもたらされる土地利用上の利益を享受できるのは整理後の土地であり従前地ではないから,上記期待価加算は合理性を欠くとした。 しかし,本件区画整理事業の施行区域の決定がされたのは昭和32年12月12日であるところ,すでに,同月7日,本件区画整理事業の施行区域内において,都市計画道路である藤沢鎌倉線,鵠沼奥田線及び藤沢駅鵠沼海岸線(以下,併せて「本件都市計画道路」という。)の計画決定がされ,その旨の公告がされていた。そして,このようにすでに計画決定されていた本件都市計画道路の拡幅,線形変更を伴う街路築造が,本件区画整理事業の施行の過程で実現されたという関係にある。 本件土地評価基準の期待価加算の定めは,本件都市計画道路が具体的に築造される以前に,都市計画道路の計画決定がされること自体によって,その時点から,当該道路の影響下にある宅地に土地利用上の可能性,利便性等の期待的価値がもたらされるとして,その評価上の加算要因としているのであって,このような理由の期待価加算には合理性があり適正なものということができる。 ウまた,本件裁決はこの期待価加算を「違法」としているが,期待価加算の問題は,照応の原則における,権利者間のいわゆる「横の関係」における平等性に係るものであるところ,この「横の関係」の平等については,法令上の明確な根拠はなく,行政処分の一般原則として求められるものであることから,その における,権利者間のいわゆる「横の関係」における平等性に係るものであるところ,この「横の関係」の平等については,法令上の明確な根拠はなく,行政処分の一般原則として求められるものであることから,その不平等は,「違法」というより「不当」というべきものである。そして,国家賠償法1条1項が規定する「違法」の概念には,単に裁量を誤ったにすぎないような「不当」の場合は含まれないと解すべきである。 (3) 本件従前地の評価についてア被告は,本件区画整理事業の従前地の評価に際し,境界の立入り調査による一筆ごとの実測図の作成が事実上不可能に近いことから,通常行われているように,現況図と公図を基に,宅地図(調整公図)を作成し,これを一律的に用いた。このような調整公図を用いたのは,土地区画整理事業における土地評価が,土地利用価値の増進の度合いを公平に按分することを目的にしたいわゆる相対評価を行うためのものだからである。 そして,被告は,この調整公図に基づき,本件前面隣接地の面積を373.73平方メートルと求積し,これに基づきその評定指数を51,317個と算出したものであって,その数値は適正なものである。 イそもそも,原告らは,本件前面隣接地分を「差し引く」ことにより,本件従前地が不当に低く評価されて損害が生じたと主張するが,本件においては,両土地を併せて評価した数値は存在せず,したがって,これからある数値を差し引くことにより,差引後の値が減少するという不利益が生じる関係にはない。 2 争点②(藤沢市長に故意又は過失があるかどうか)について<原告らの主張>本件換地処分において公権力の行使に当たった藤沢市長は,上記1のとおり,従前地についてすべきでない期待価加算をし,また,本件従前地 は過失があるかどうか)について<原告らの主張>本件換地処分において公権力の行使に当たった藤沢市長は,上記1のとおり,従前地についてすべきでない期待価加算をし,また,本件従前地の評価を誤るなどして,原告らに係る清算金の算定を誤ったのであるから,その職務を行うについて故意又は過失があることは明らかである。 <被告の主張>(1) 本件区画整理事業の従前地についての期待価加算は,本件区画整理事業条例,本件土地評価基準及び本件土地評価基準細則を遵守した結果であるところ,これらの規定の定立と執行は,藤沢市長の市長としての公共的施策実現のための識見と責任に基づく(条例にあっては市議会の議決を経ている。)もので,故意又は過失の問題を生じる余地はない。 また,確かに,本件裁決はこの期待価加算を「違法」としているが,本件区画整理事業の期待価加算は相当の根拠を有するものであって,長い年月が経た後にこれと異なる見解に立脚して「違法」との判断がされたからといって,公務員の行為に直ちに過失があるということにはならないというべきである。 (2) 本件従前地の評価については,前記のとおり,計算上の誤りは存在しない。 3 争点③(原告らの損害の有無及びその額)について<原告らの主張>(1) 主位的主張本件換地処分の結果,原告らは,本件従前地と本件換地の面積の差である,210.94平方メートルの宅地を失った。 原告らは,違法な本件換地処分の取消しによる原状回復として,本件従前地の返還を請求する権利を有するところであるが,本件裁決が事情裁決としたことを考慮して原状回復請求は行わず,違法な本件換地処分により失った上記210. 94平方メートルの宅地について,被告に 本件従前地の返還を請求する権利を有するところであるが,本件裁決が事情裁決としたことを考慮して原状回復請求は行わず,違法な本件換地処分により失った上記210. 94平方メートルの宅地について,被告に対し,時価相当の金銭賠償を請求するものである。原告らが失ったこの宅地面積相当分の時価は,1平方メートル当たり36万3600円を下らないから,原告らに生じた損害の額は,7669万7784円となる。 したがって,原告らは,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として,7669万7784円及びこれに対する本件換地処分の日である昭和57年7月15日から完済まで民法の定める年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 予備的主張上記主位的主張が認められないとしても,原告らは,違法な本件換地処分により以下のとおりの損害を受けた。 ア清算金の算定の誤りによる損害本件裁決において,本件換地処分において原告らに交付されるべきであった清算金は,被告が算定した4480円よりも23万0720円多い,23万5200円であるとされている。この清算金は,評定指数の単価を40円として算出されたものであるから,本件裁決において示された本件従前地と本件換地の評定指数の差は,5880個(23万5200÷40)であるといえる。 上記1の各違法事由について正しいところに従って評価し直すと,本件従前地と本件換地の評定指数の差は5880個を上回るが,原告らは,評定指数の算定の誤りによる損害を,本件従前地と本件換地の評定指数の差を5880個とすべきであったのに被告がこれを誤ったことによる,以下のものに限定して主張することとする。 (ア) 保留地の売買代金等 を,本件従前地と本件換地の評定指数の差を5880個とすべきであったのに被告がこれを誤ったことによる,以下のものに限定して主張することとする。 (ア) 保留地の売買代金等本件保留地は本件従前地の一部であったところ,被告は,本件保留地の評定指数を3160個と算定し,被告が算出した本件換地の本件従前地と比較した不足指数112個(4480÷40)では,本件保留地を原告らに換地として与えることはできないとして,原告らにその買い取りを求めたため,原告らは,これをやむを得ず買い受けた。 しかし,上記のとおり,本件換地は本件従前地に比べ評定指数が5880個不足していたのであるから,本来であれば,評定指数3160個の本件保留地は,換地として原告らに与えられるべきものであったのである。そうすると,原告らは,被告の違法行為により本件保留地を不当に買い取らされたものであり,その損害は,売買代金158万1000円,不動産取得税1万5810円,登録税4万5100円及び契約書印紙代1000円の合計164万2910円である。 (イ) 清算金の不足金額上記のとおり,本件換地は本件従前地に比べ評定指数が5880個不足しているところ,上記保留地の評定指数3160個を差し引いても,なお2720個不足している。 本件換地の時価は1平方メートル当たり36万3600円を下らず,また,本件換地の周辺土地の1平方メートル当たりの評定指数は180個であるので,評定指数の単価は2020円となる(36万3600÷180)。そうすると,清算金の不足額は,上記評定指数の不足数2720個に2020円を乗じた549万4400円となる。 また,本件保 の単価は2020円となる(36万3600÷180)。そうすると,清算金の不足額は,上記評定指数の不足数2720個に2020円を乗じた549万4400円となる。 また,本件保留地の売買に際して被告が採用した評定指数の単価500円を基礎とした場合には,清算金の不足金額は135万9000円となる。 なお,被告は,評定指数の単価は40円であるとするが,被告が本件保留地を売却するときにはその単価を500円として計算しておきながら,清算金の不足額の算定に当たって単価を40円とするのは,極めて不公平というべきである。 イ慰謝料原告らは,被告に対し,昭和42年10月30日に仮換地指定の通知がされたときから,本件換地処分の違法性,不当性を訴え続けてきたが,被告は,これを聞くことなく,時には恫喝まがいの対応に終始した。 被告の行為による原告らの精神的損害は甚大であり,これを200万円と評価するのが相当である。 ウ合計上記の各損害を合計すると,913万7310円となる。 したがって,原告らは,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として,913万7310円及び内164万2910円については本件保留地の売買代金の支払日である昭和53年12月8日から,内749万4400円については本件換地処分の日である昭和57年7月15日から,それぞれ完済まで民法の定める年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 <被告の主張>(1) 主位的主張について本件換地処分は,本件裁決によっても取り消されたわけではなく,したがって,原告らが原状回復として従前地の返還を請求する権利を有するとか, 告の主張>(1) 主位的主張について本件換地処分は,本件裁決によっても取り消されたわけではなく,したがって,原告らが原状回復として従前地の返還を請求する権利を有するとか,原告らが土地を失ったということにはならない。 また,本件換地の面積は本件従前地の面積に比して減少しており,いわゆる減歩の場合に当たるところ,土地区画整理事業において減歩について損失補償がされないのは,公共施設が改善され,宅地が整然と整理されることにより,かえって単位面積当たりの利用価値が増進するからであり,通常は減歩による損失が生じることはない。 したがって,原告らの主張するような損害が発生することはない。 (2) 予備的主張についてア清算金の算定の誤りによる損害の主張について(ア) 本件保留地の売買に関する主張について本件保留地は,昭和53年6月2日付け仮換地指定通知によって指定された原告らの仮換地の,北東隅に定められた,17平方メートルの土地である。 そして,本件保留地は,原告らから同月28日付けでその譲受承認申請書が提出されたことから,土地区画整理審議会による売買は妥当との答申を経て,同年11月8日,随意契約をもって原告らに売り渡された。 この際の売買代金は,本件区画整理事業条例6条の2に基づき,「評価員の意見を聞いて市長の定めた価格」であり,具体的には,土地区画整理評価員がした1平方メートル当たり9万円を妥当とする旨の答申を基に,市長において,「地価動向」における伸び率による修正を加えて1平方メートル当たりの価格を9万3000円とし,処分価格を158万1000円と定めたものである。原告らは,この代金額が,本件保留地の評定指 長において,「地価動向」における伸び率による修正を加えて1平方メートル当たりの価格を9万3000円とし,処分価格を158万1000円と定めたものである。原告らは,この代金額が,本件保留地の評定指数を3160個と算定し,指数1個当たり500円として算出されたと主張するが,そのような事実はない。 本件保留地の売買及びその代金額の決定は,上記のような経緯でされたものであって,原告らの主張のように,被告の違法行為により原告らが不当に買い取らされたということはない。 (イ) 清算金の不足の主張についてa 本件区画整理事業の土地の価格評価において用いられた評定指数の単価は,本件区画整理事業条例,本件土地評価基準及び本件土地評価基準細則の規定に基づいて決定された,40円である。 すなわち,被告は,昭和44年度を工事概成時と定め,地区全体の均衡が保たれるように地区内の30か所を抽出し,各地点別の昭和44年度の1平方メートル当たりの固定資産税評価額の合計額(28万0604円)を当該各地点における1平方メートル当たりの整理後路線価指数の合計個数(14,144個)で除して得た指数単価(19.84円)を基に,これに昭和56年度までの12年間の年6パーセントの複利計算による時点修正を加えて,換地処分時の指数単価を40円と決定したものである。 これに対し,原告らは,本件保留地の売買に際して被告が評定指数の単価を500円としたとして,この指数単価に基づく損害額の主張をするが,上記のように,本件保留地の代金額が指数単価500円を基礎に算出されたというような事実はないから,原告らの損害額の主張には,理由がない。 b なお,原告らは,本件裁 主張をするが,上記のように,本件保留地の代金額が指数単価500円を基礎に算出されたというような事実はないから,原告らの損害額の主張には,理由がない。 b なお,原告らは,本件裁決は本件換地の不足指数が5880個であると判断したものであると主張するが,本件裁決は,あくまで原告らに清算金として交付されるべき額を23万5200円と説示したものであって,不足指数を説示したとは解されない。 イ慰謝料の主張について原告らの主張のように,被告が原告らの訴えを聞くことなく,恫喝まがいの対応をしたというような事実はない。 4 争点④(消滅時効の援用の効力)について<被告の主張>原告らは,昭和57年7月29日付けで本件審査請求をしたほか,昭和59年8月31日には,被告に対し本件換地処分について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求訴訟を提起し,昭和60年11月22日にこれを取下げた。 このような経緯に照らせば,本訴において原告らが上記訴訟の際と同様に主張する,本件換地処分に係る国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権については,遅くとも,原告らが損害の発生及び加害者を知った日の翌日である昭和59年9月1日から起算して3年の期間の経過により短期消滅時効が完成しているから,被告はこれを援用する。 <原告らの主張>原告らは,本件裁決により本件換地清算金の算定に係る違法が認定されて,はじめて損害の発生を認識したものであるから,本件の損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,本件裁決のされた日である平成13年3月30日である。 したがって,本件の損害賠償請求権の消滅時効は完成していない。 第6 当裁判所の判断 1 争点①(本件換地処分中の清算金の算定に は,本件裁決のされた日である平成13年3月30日である。 したがって,本件の損害賠償請求権の消滅時効は完成していない。 第6 当裁判所の判断 1 争点①(本件換地処分中の清算金の算定に違法があるかどうか)について(1) 本件区画整理事業における土地の評価及び清算金の算定方法ア本件区画整理事業の施行規程である本件区画整理事業条例は,従前地及び換地の評定価格について,「その位置,地積,土質,水利,区画,利用状況,環境,固定資産税の課税標準等を考慮し,評価員の意見を聞いて定める。」とし(18条1項),清算金の算定については,「換地清算に関して,徴収又は交付すべき清算金額は,従前の宅地価格の総額に対する換地価格の総額の比を従前の宅地又は・・・宅地に存する権利の価格に乗じて得た額と,その宅地に対する換地又は権利について定められた権利の価額との差額とする。」と規定している(20条1項)〔乙3号証〕。 イそして,本件土地評価基準は,従前地及び換地の価格について,路線価式評価法により算定するものとし(3条),具体的には,各路線価指数を基準として求めた各筆及び画地の評定指数に,指数1個当たりの単価を乗じて算定するものとしている(6条)。さらに,本件土地評価基準8条以下及び本件土地評価基準細則は,この評定指数の計算等の具体的方法を規定している。 〔乙4,5号証〕(2) 期待価加算についてア期待価加算に関する規定本件土地評価基準23条柱書・2号は,従前地のうち,「都市計画道路の影響を受けるもの」については,「他のものと均衡を保つよう別に定める修正率をもって修正することができるものとする。」と規定し〔乙4号証〕,さらに,本件土地評 ・2号は,従前地のうち,「都市計画道路の影響を受けるもの」については,「他のものと均衡を保つよう別に定める修正率をもって修正することができるものとする。」と規定し〔乙4号証〕,さらに,本件土地評価基準細則3条2号は,上記の修正率について,「都市計画道路の影響をうける宅地に加算する指数は,都市計画道路をある延長で区分した整理後路線価(2個以上の路線価が含まれる場合は,その平均路線価)の10~15パーセントの指数に影響面積(道路下及び道路側線から外側に15メートルを限度とした範囲)を剰じて得た指数とするものとする。ただし,影響面積は近隣地との均衡が保つようその範囲内で調整することができる。」と規定している〔乙5号証〕。 イ本件区画整理事業における期待価加算(ア) 被告は,昭和32年12月7日,本件区画整理事業の施行区域内に該当する区域を通過する道路である,藤沢鎌倉線,鵠沼奥田線及び藤沢駅鵠沼海岸線(本件都市計画道路)の計画を含む都市計画を決定し,その旨の告示をした〔乙25ないし29号証〕。 (イ) 被告は,上記アの規定に基づき,本件区画整理事業の従前地の評定指数を算出する際に,一部の従前地について,本件都市計画道路の影響を受けるものとして,期待価指数を加算した。本件区画整理事業の従前地の総評定指数は120,134,259個であったところ,この期待価加算がされた従前地の評定指数は合計27,395,843個であり,そのうち,加算された期待価指数は2,934,091個であった。 〔甲2,19号証の60の18,弁論の全趣旨〕一方,本件従前地については,本件都市計画道路の影響による期待価加算はされなかった。 ウ本件における期待価加算の合理性の有無 証の60の18,弁論の全趣旨〕一方,本件従前地については,本件都市計画道路の影響による期待価加算はされなかった。 ウ本件における期待価加算の合理性の有無(ア) 上記のとおり,被告は,本件区画整理事業の従前地の評価において,本件都市計画道路の影響を受けるものについて,期待価指数を加算し,これによって,当該期待価指数に対応する金額を当該従前地の評価価格に加えたものである。 ところで,宅地の近隣において道路の開設あるいは拡幅が計画されているという事情は,当該宅地の利用状況ないし環境の一要素として,その客観的価値に影響を与えるものということができるから,土地区画整理事業における宅地の価格の評価に際しても,このような道路の計画の影響を評価価格に反映させること自体には合理性があるということができる。しかし,土地区画整理事業において,従前地及び換地の価格をそれぞれ算定するのは,当該事業の施行の前後におけるそれぞれの宅地の価格を評価することにより,換地処分における換地と従前地との照応を図りつつ,適正な清算金の額を算出するためであるから,専ら事業が施行された後の換地の価格に対して影響を与える事情を,従前地の評価において考慮することは,合理性を欠くものといわなければならない。 (イ) そこで,これを本件についてみると,本件区画整理事業は,本件都市計画道路の計画決定のわずか5日後に施行区域の決定がされたもので,また,いずれも被告の都市計画である「藤沢総合都市計画」の中に位置付けられていたものである〔乙28,32号証〕。そして,本件都市計画道路のうち,本件区画整理事業の施行区域内の部分は,本件区画整理事業の施行によって土地の区画等が整理され,宅地の減歩等により道路 置付けられていたものである〔乙28,32号証〕。そして,本件都市計画道路のうち,本件区画整理事業の施行区域内の部分は,本件区画整理事業の施行によって土地の区画等が整理され,宅地の減歩等により道路用地が確保されたことによって,開設ないし拡幅されたものであり,これら道路部分について用地買収・収用方式により建設工事を進めようとした形跡は窺われないのである〔乙21号証〕。 これらの事情からすれば,本件都市計画道路のうち,本件区画整理事業の施行区域内に所在する部分については,計画決定の当初から,本件区画整理事業の施行により,計画路線に適合するように宅地の区画を整理し,道路用地を生み出して,建設することを予定していたものであることは明らかというべきである。 そうすると,本件都市計画道路は,本件区画整理事業の施行によって初めて実現するものであって,開設ないし拡幅された道路の利用等の便益を享受することができるのは,従前地ではなく,専ら本件区画整理事業施行後の宅地としての換地であるというべきであるから,本件都市計画道路が計画されているということを従前地の評価において考慮し,その価格の加算要因とすることは,合理性を欠くものといわなければならない。 (ウ) この点について,被告は,本件都市計画道路の計画決定がされること自体によって,その時点から,その道路の影響下にある宅地に土地利用における利便性の向上等の期待的価値がもたらされるから,道路の計画の影響を従前地に対する評価上の加算要因とすることにも合理性がある旨を主張する。 しかし,上記のように,土地区画整理事業において従前地及び換地の価格をそれぞれ評価するのは,事業が施行される前の宅地の価値と,事業の施行によって公共施設が整備改善され,宅地の利用が しかし,上記のように,土地区画整理事業において従前地及び換地の価格をそれぞれ評価するのは,事業が施行される前の宅地の価値と,事業の施行によって公共施設が整備改善され,宅地の利用が増進した後の換地との照応を図りつつ,適正な清算金を算出するためであるから,当該事業を施行することによって初めて実現する便益の向上等を従前地の評価において考慮することは,およそ合理性を欠くものというほかない。 そうすると,本件区画整理事業の施行によって本件都市計画道路が開設,拡幅され,宅地の利用の増進が図られるということに対する期待を,従前地の評価上の加算要因とすることが,合理性を欠くものであることは明らかというべきである。 エ本件における期待価加算の違法性前記(1)アのとおり,本件区画整理事業において,徴収又は交付すべき清算金の額は,従前の宅地価格の総額に対する換地価格の総額の比を,従前の宅地の価格に乗じて得た金額と,その宅地に対する換地の価格との差額とされていた。そうすると,被告が従前地の一部について,上記のとおりの合理性を欠く期待価加算をしてその価格を評価したことにより,原告らを含む期待価加算の対象とならなかった従前地の所有者は,期待価加算の対象となった宅地の所有者に比べ,従前地の評価上,ひいては清算金の算定上,合理的な理由なく,相対的に不利な地位におかれたものということができる。 このように,清算金の算定に当たって,原告らを一部の従前地所有者と比べて合理的な理由なく不利に扱うこととなる以上,被告が本件区画整理事業の従前地の評価に当たって期待価加算をし,これに基づいて本件換地清算金を算定したことは違法というべきである。 (3) 本件従前地の評価について に扱うこととなる以上,被告が本件区画整理事業の従前地の評価に当たって期待価加算をし,これに基づいて本件換地清算金を算定したことは違法というべきである。 (3) 本件従前地の評価についてア従前地の評定指数の算出方法本件土地評価基準9条は,「従前の宅地及び換地の評価は,各筆又は画地ごとに1平方メートル当り指数にその地積を乗じて得た指数をもってするものとする。」とし,また,同10条1項本文は,この1平方メートル当たりの指数について,「画地を次の各号に分類して第12条から第17条までの規定により算出した指数を計算上用いた面積で除して算出するものとする。」としている(ここにいう各号の分類とは,①普通地,②角地,③正背路線地,④三・四方路線地,⑤袋地,⑥盲地の6種類を指し,第12条から第17条までの規定とは,これらの種類に分類された各土地についての指数の算出方法を定めた規定である。また,11条において,宅地の奥行逓減割合等が規定され,18条において,宅地の形状又は条件による逓減割合が規定されている。)〔甲4号証〕。 そして,被告は,本件区画整理事業における各従前地の1平方メートル当たりの評定指数を算出するに当たって,現況図及び公図を基に作成した図面である「調整公図」を一律に使用し,同図上で計算して得た面積を用いて,指数の算出を行った〔甲13,14,19,20,22号証,乙35号証〕。 イ本件従前地の評価の過程被告は,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数を算出するに当たって,本件従前地①ないし③を合併して評価の対象とし,本件従前地及び本件前面隣接地を併せた宅地の図上の評定指数の合計値から,本件前面隣接地の図上の評定指数を控除することによって,本件 算出するに当たって,本件従前地①ないし③を合併して評価の対象とし,本件従前地及び本件前面隣接地を併せた宅地の図上の評定指数の合計値から,本件前面隣接地の図上の評定指数を控除することによって,本件従前地の図上の評定指数を算出し,これを図上で求積した本件従前地の面積で除するという方法をとった〔甲14号証,乙33ないし35号証〕。 その過程において,本件前面隣接地は,図上面積が373.73平方メートル,図上の評定指数が51,317個であるとされた。そして,本件従前地は,図上面積が1,037.98平方メートル,図上の評定指数が130,251個,1平方メートル当たりの評定指数が125個であると算出された。 ウ本件前面隣接地の評価との比較ところで,被告は,本件前面隣接地それ自体の1平方メートル当たりの評定指数の算出過程においては,その図上面積が366.66平方メートルであるとし,さらに,その一部98.28平方メートル部分については,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数の算出の際には行わなかった不整形地を理由とする減算(本件土地評価基準18条)も加えた結果,その図上の評定指数が49,671個であるとしている〔甲22号証〕。 このように,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数を算出する過程において用いられた本件前面隣接地の図上の面積及び評定指数と,本件前面隣接地それ自体の1平方メートル当たりの評定指数を算出する過程において用いられた本件前面隣接地の図上の面積及び評定指数との間に差があるところ,同一の「調整公図」を用いていながら,このように,同一の土地の面積について異なる数値が用いられ,また,同一の土地の指数の逓減割合について異なる処理がされ,その結果として,値が異なる 差があるところ,同一の「調整公図」を用いていながら,このように,同一の土地の面積について異なる数値が用いられ,また,同一の土地の指数の逓減割合について異なる処理がされ,その結果として,値が異なる評定指数が用いられることについて,合理的な理由を見出すことは困難というべきである。 エ本件従前地の評価の違法性以上のとおり,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数の算出の過程において,本件前面隣接地それ自体に係る評価に用いられた値と異なる面積及び評定指数の数値を用いたことについては合理的な理由がないところ,本件の証拠関係上,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数の算出の過程において,本件前面隣接地それ自体の評価における面積及び評定指数の数値より大きい数値を採用することについての合理的な根拠は見出せない。 そうすると,本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数は,合理的な理由がないのに原告らに不利益な方法により算定されたものというべきであり,したがってまた,被告がした本件従前地の評価も,合理的な理由がないのに原告らに不利益な方法により行われたものといわざるを得ないから,被告がこれに基づいて本件換地清算金を算定したことは違法というべきである。 (4) 本件従前地の評価の違法に関するその余の原告らの主張について原告らは,上記(3)の点以外にも,被告の本件従前地の評価の過程には誤りがあると主張しているが,原告らは,本件において,評定指数の算定の誤りによる損害としては,本件従前地と本件換地の評定指数の差を5880個とすべきであったのに被告がこれを誤ったことによる損害に限定して主張しているところ,後記3(2)アのとおり,既に認定した違法事由によって,本件従前地と本件換地の評 と本件換地の評定指数の差を5880個とすべきであったのに被告がこれを誤ったことによる損害に限定して主張しているところ,後記3(2)アのとおり,既に認定した違法事由によって,本件従前地と本件換地の評定指数の差を5880個とすべきであったのに,被告がこれを違法に低く評価したことが認定できるので,本件請求の当否を判断するために,本件従前地の評価の過程についてのその余の誤りの主張について判断をする必要をみない。 そこで,以下,故意・過失に関する認定・判断に進むこととする。 2 争点②(藤沢市長に故意又は過失があるかどうか)について上記のとおり本件換地処分中の清算金の算定部分は違法であると認められるところ,上記1(2)及び(3)の違法事由は,いずれも,土地区画整理事業の性質に照らして不合理な宅地の評価方法を用いたことによるものであるから,本件区画整理事業の施行者である被告の代表者として本件換地処分の職務執行に当った藤沢市長には,過失があるというべきである。 この点について,被告は,藤沢市長が市長としてした本件土地評価基準等の基準の定立と執行には故意又は過失を生じる余地はない旨を主張するが,合理性を欠く基準等を定立してこれに基づく職務の執行として違法な換地処分をした以上,それが故意又は過失による職務行為となり得ることは当然である。また,被告は,期待価加算は相当の根拠を有するから,後に異なる見解に立脚して違法と判断されたからといって,それが直ちに過失に結びつくものではない旨を主張するが,上記1(2)のとおり,被告のした期待価加算に合理性がないことは明らかであって,それが過失を否定するに足りるような相当の根拠に基づくものであったということはできない。 3 争点③(原告らの損害の有無及びその額)について た期待価加算に合理性がないことは明らかであって,それが過失を否定するに足りるような相当の根拠に基づくものであったということはできない。 3 争点③(原告らの損害の有無及びその額)について(1) 主位的主張について原告らは,違法な本件換地処分により本件従前地と本件換地の面積の差に相当する宅地を失ったなどとして,この減少分に相当する宅地の時価を損害額として主張する。 しかし,原告らは,有効な本件換地処分に基づいて本件換地の所有権を取得したものであるところ,本件換地は本件区画整理事業の施行によって単位面積当たりの利用価値が増大した後のものであるから,これと本件区画整理事業の施行前の宅地である本件従前地の面積とを単純に比較して,その面積の減少分に相当する宅地の時価相当額が原告らの損害であるということができないことは明らかである。原告らが主張する本件換地処分の違法事由は本件換地処分の過程における本件従前地の評定指数の算定の誤りであるところ,これと相当因果関係のある損害は,このような誤りがなければ得られたであろう経済的利益を取得できなかったという損失,すなわち,下記(2)の損害であるというべきである。 したがって,原告らが主位的に主張する損害についての主張は,理由がない。 (2) 予備的主張についてア本件従前地と本件換地との評定指数の差について前記1(2)及び(3)の違法事由を是正するため,①本件都市計画道路の影響による期待価加算を行わずに本件区画整理事業の各従前地の評定指数の算定を行い,また,②本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数について,被告がその算定の過程で用いた本件前面隣接地の図上面積373.73平方メートル及び図上の評定指数51 業の各従前地の評定指数の算定を行い,また,②本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数について,被告がその算定の過程で用いた本件前面隣接地の図上面積373.73平方メートル及び図上の評定指数51,317個のうち,少なくとも本件前面隣接地それ自体の評価の際に用いた図上面積366.66平方メートル,図上の評定指数49,671個を超える数値部分についてはこれを用いる合理性がないから,後者の数値を用いて本件従前地の1平方メートル当たりの評定指数を算定をし直すと,本件従前地(ただし,従前地の総評定指数に対する換地の総評定指数の比(以下「比例率」という。)を乗じた後のもの。)と本件換地との評定指数の差は,5880個となるものと認められる〔甲19号証の60の18,弁論の全趣旨〕。 イ本件保留地の売買代金に関する損害の主張について(ア) 証拠〔乙6,9,12号証〕によれば,本件保留地の売買の経緯は,以下のとおりと認められる。 a 被告は,昭和53年6月2日付けで,原告らに対し,土地区画整理法98条1項,4項に基づき,本件従前地に対する仮換地を指定し(この仮換地は,本件換地と同一の宅地部分であった。),その旨の通知をした。そして,この仮換地の北東側に接する本件従前地の部分17平方メートルが,本件保留地として定められた。 b 原告らは,同年6月28日付けで,藤沢市長に対し,本件保留地の譲受承認申請書を提出した。これによれば,申請の理由は,本件「保留地は仮換地前の私所有宅地であり,かつ,仮換地指定後の宅地の東北角地に位置するため,万一,他人の所有となった時には,私の宅地の使用は著しく利用を害されることが明らかであるため譲受の申請をいたします。」とされていた。 c 本件 定後の宅地の東北角地に位置するため,万一,他人の所有となった時には,私の宅地の使用は著しく利用を害されることが明らかであるため譲受の申請をいたします。」とされていた。 c 本件区画整理事業の評価員は,同年2月7日付けで,被告に対し,本件保留地について,1平方メートル当たりの価額は9万円,全体の価額は153万円とすることが妥当と判断する旨の答申をした。また,本件区画整理事業の土地区画整理審議会は,同年9月27日,被告に対し,本件保留地は原告らに随意契約で処分することが妥当と判断する旨の答申をした。 これを受けて,藤沢市長は,本件区画整理事業条例6条の2の「保留地の処分価格は,評価員の意見を聞いて市長の定めた価格とする。」との規定に基づき,評価員の答申に係る上記評価額に答申以降の地価の上昇動向に対応した修正を加えて,本件保留地の1平方メートル当たりの価格を9万3000円,処分価格を158万1000円とすることを決めた。 d 同年11月8日,原告らと被告との間で,本件保留地の売買契約が締結され,同年12月8日,原告らに対する所有権移転登記手続がされた。 (イ) この点について,原告らは,前記第5,3<原告らの主張>(2)ア(ア)のとおり主張する。 しかし,もともと,土地区画整理事業における保留地は,事業の施行の費用に充てるために定められるものであり,制度的には,特定の従前地とこれに対する換地の評価額の均衡を図ることを目的とするものではなく,その位置,形状,地積等は施行者の合目的的な裁量によって定めることができる性質のものである。 また,本件において,被告が,原告らに対し,本件換地の本件従前地と比較した不足指数112個 形状,地積等は施行者の合目的的な裁量によって定めることができる性質のものである。 また,本件において,被告が,原告らに対し,本件換地の本件従前地と比較した不足指数112個では本件保留地を換地として与えることができないとして,その買取りを求めたとの事実を認めるに足りる証拠はなく,上記(ア)の事実経緯からすれば,本件保留地は,被告から原告らに対し,任意の売買契約の締結によって,当時における時価相当額により譲渡されたものということができるのである。 そうであるとすれば,本件従前地,本件換地及び本件保留地の位置,地積,形状等〔甲1,6号証〕よりすれば,本件において被告が本件従前地の評価を適正に行っていたとすれば,本件保留地部分も,本件換地と併せて原告らに対する換地とされた蓋然性があったこと自体は否定できないとしても,上記の土地区画整理事業における保留地の制度的位置付けや,本件保留地の売買が上記のとおり契約締結当時の時価相当額による任意のものであることに照らせば,本件保留地の売買代金等をもって,本件換地清算金の算定の誤りと相当因果関係のある原告らの損害と認めることは困難といわざるを得ない。 (ウ) したがって,本件保留地の売買代金等を本件換地清算金の算定の誤りによる損害であるとする原告らの主張は,理由がない。 ウ清算金の不足による損害について(ア) 前記のとおり,本件換地処分には本件従前地の評定指数の算定過程に誤りがあり,このため清算金の算定部分に違法があるところ,このような違法な算定がされなければ原告らが交付を受けるべきであった清算金の額と,本件換地処分により原告らが交付を受けた清算金の額との差額は,原告らが違法な本件換地処分によって受けた損害の額 ころ,このような違法な算定がされなければ原告らが交付を受けるべきであった清算金の額と,本件換地処分により原告らが交付を受けた清算金の額との差額は,原告らが違法な本件換地処分によって受けた損害の額ということができる。 そして,前記1(1)イのとおり,本件区画整理事業において,宅地の価格はその評定指数に指数単価を乗じて算定するものとされているから,原告らが交付を受けるべきであった清算金の額は,違法事由を是正して算出した本件従前地の評定指数(ただし,比例率を乗じた後のもの。)と本件換地の評定指数との差5880個(上記ア)に,評定指数の単価を乗じて算出されるものということができる。 (イ) 被告が本件区画整理事業で採用した評定指数の単価は,40円であるところ,これは,評価員の答申を踏まえて,工事概成時である昭和44年を基準時として,施行区域内から抽出した30地点における昭和44年度の1平方メートル当たりの固定資産税評価額の合計額(28万0604円)を,各地点における1平方メートル当たりの整理後路線価指数の合計個数(14,144個)で除して得た指数単価(19.84円)に,昭和44年から換地処分がされた昭和56年までの12年間について,年6パーセントの複利計算による時点修正を加えて,換地処分時における指数単価として算出されたものである〔乙24号証〕。 (ウ) 路線価式評価法によって清算金を算定するに当たっては,算定の基準となる時点を一律に決める必要があるところ,工事概成時に至れば,大部分の仮換地について使用収益が開始され,換地処分がされた場合と同様の宅地の使用収益の状態が生じるから,この時点を基準として清算金を算定することには合理性が認められる。そうすると,本件区画整理事業において,被告が ついて使用収益が開始され,換地処分がされた場合と同様の宅地の使用収益の状態が生じるから,この時点を基準として清算金を算定することには合理性が認められる。そうすると,本件区画整理事業において,被告が清算金の算定の基準時を工事概成時である昭和44年としたことには,合理性があるものということができる。なお,原告らについては,いったん昭和42年10月30日付けで仮換地指定がされたものの,昭和53年6月2日付けでこれが取り消されるとともに,同日付けで本件換地と同一の宅地部分について仮換地指定がされたという事情が認められるが〔乙7ないし9号証〕,当初に指定された仮換地とその後に指定された仮換地との間に大きな相違があるとは認められないから,このことが上記のような基準時の設定の合理性を失わせるものということはできない。 また,上記のように清算金の算定基準時を定めた場合,当該基準時から清算金の徴収ないし交付がされる換地処分時までの時の経過に対応した清算金の額の修正が必要であるところ,被告は,基準時から換地処分時までの期間について,年6パーセントの複利計算による時点修正を加えており,合理的な方法によるものということができる。 そうすると,被告が定めた評定指数の単価40円は,合理的なものといえるから,原告らが交付を受けるべきであった清算金の額は,違法事由を是正して算出した本件従前地の評定指数(ただし,比例率を乗じた後のもの。)と本件換地の評定指数との差5880個に,評定指数の単価40円を乗じた,23万5200円と認められる。そして,この額と,本件換地処分によって原告らに交付されることとされた清算金の額4480円との差額である23万0720円が,違法な本件換地清算金の算定によって原告らに生じた損害の額と認められ られる。そして,この額と,本件換地処分によって原告らに交付されることとされた清算金の額4480円との差額である23万0720円が,違法な本件換地清算金の算定によって原告らに生じた損害の額と認められる。 (エ) これに対し,原告らは,本件換地の現在の時価ないし本件保留地の売買価格に基づいて,評定指数の単価を2020円あるいは500円として損害を算定すべきであると主張するが,違法な換地清算金の算定によって原告らに生じた損害は,本件換地清算金の算定に違法事由がなければ交付されるべきであった清算金の額と本件換地処分により交付を受けた清算金の額との差額であるというべきであるから,本件換地処分の際に採用された宅地の評定指数の単価に違法性が認められない以上,原告らの主張を採用することができないことは明らかである(なお,原告らは,被告が本件保留地の売買の際に評定指数の単価を500円として売買価格の決定をした旨を主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。)。 エ慰謝料の主張について本件において,原告らが,上記ウ(ウ)に認定した違法な本件換地清算金の算定によって受けた財産的損害の賠償を得てもなお填補されないような特別の精神的損害を被ったものと認めるに足りる証拠はない。 4 争点④(消滅時効の援用の効力)について被告は,原告らが昭和57年7月29日に本件審査請求をしたことや,原告らが昭和59年8月31日に被告に対して損害賠償請求訴訟を提起し,その後取り下げたことを理由として,原告らが損害の発生及び加害者を知ったのは,遅くとも昭和59年8月31日である旨の主張をする。 しかし,本件換地処分中の清算金の算定部分に係る違法事由やこれによる損害は,本件裁決が,本件審査請求の審理 発生及び加害者を知ったのは,遅くとも昭和59年8月31日である旨の主張をする。 しかし,本件換地処分中の清算金の算定部分に係る違法事由やこれによる損害は,本件裁決が,本件審査請求の審理の過程において被告から提出された主張や資料等も審査した上で,従前の宅地の評価方法や本件従前地の評価方法に誤りがあることや正しい清算金の額を認定したこと〔甲19号証〕により,原告らにおいて賠償請求が可能な程度にその損害の発生を認識するに至ったものと認めるのが相当である。確かに,原告らは,昭和59年8月31日,被告に対して,本件換地処分の違法を理由とする損害賠償請求訴訟を提起しているが,その訴状においても,前記1(2)及び(3)で認定したような清算金の算定に係る違法事由の主張は明示的にされていなかったところであり,上記訴訟の提起時点で原告らが上記損害の発生を知っていたものと認めることはできないというべきである。 そうすると,原告らが違法な本件換地清算金の算定による損害の発生を知ったのは,本件裁決がされた平成13年3月30日以後のことというべきである。そして,原告らは,平成14年6月18日に本件訴訟を提起することによって被告に対して損害の賠償を請求をしたものであるから,原告らの本件損害賠償請求権が時効によって消滅したものということはできない。 5 各原告に生じた損害の額について前記3のとおり,違法な本件換地清算金の算定により原告らに生じた損害の額は,23万0720円であるところ,本件換地処分による清算金は本件従前地及び本件換地の持分割合に応じて各原告に分配されるべき性質のものであるから,各原告に生じた損害の額も,その持分割合に応じて算出することが相当である。 そうすると,各原告に生じた損害の額は,原告A(持分割 持分割合に応じて各原告に分配されるべき性質のものであるから,各原告に生じた損害の額も,その持分割合に応じて算出することが相当である。 そうすると,各原告に生じた損害の額は,原告A(持分割合100分の61)が14万0739円,原告B,原告C及び原告D(持分割合各100分の11)がそれぞれ2万5379円,原告E(持分割合100分の6)が1万3843円と認められる。 6 まとめしたがって,原告らの本件請求のうち,国家賠償法1条1項に基づいて,被告に対し,上記5記載の各金額の金銭及び本件換地処分の日である昭和57年7月15日から完済まで民法が定める年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は,理由がある。 第7 結論以上のとおり,原告らの本件請求のうち,前記第6,6記載の部分は理由があるからこれらを認容し,その余の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官川勝隆之裁判官菊池絵理裁判官貝阿彌亮
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