平成29年11月28日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第12671号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年9月15日判決 原告東洋スチール株式会社 同訴訟代理人弁護士山下 綾同補佐人弁理士山下賢二 被告株式会社スーパーツール 同訴訟代理人弁護士田上洋平同冨田信雄主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を譲渡し,引渡し,譲渡若しくは引渡し のために展示し,輸入し又は電気通信回線を通じて提供してはならない。 2 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,657万8640円及びこれに対する平成29年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,別紙原告商品目録記載の商品(以下「原告商品」という。)を製造販売する原告が,同商品の形態が周知の商品等表示であることを前提に,被告による別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)の販売行為等が不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たると主張して,被告に対し,不正競争防止法3条1項に基づき被告商品の譲渡等の差止め,同条2項に基づき被告商品の廃棄を求めるとと もに,同法4条に基づき 競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たると主張して,被告に対し,不正競争防止法3条1項に基づき被告商品の譲渡等の差止め,同条2項に基づき被告商品の廃棄を求めるとと もに,同法4条に基づき,不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 判断の基礎となるべき事実(当事者間に争いがないか,各項末尾記載の証拠により容易に認められる事実) (1) 当事者等ア原告は,工具箱やキャビネットの製造及び販売等を目的とする株式会社である。 原告は,国内の金属製工具箱市場において半分以上のシェアを有しており,トラスコ中山株式会社(以下「トラスコ」という。),TONE株式会社(以下「TONE」という。)等にOEM商品を提供している(甲49の1)。 イ被告は,機械用,車両用,建設用,造船用,その他各種作業用工具の製造,販売を目的とする株式会社である。被告は,以前,原告に対して原告商品以外のOEM商品の製造を委託していたことがあったが,その関係は平成22年に終了した。 (2) 原告商品ア原告が昭和54年以降,製造販売している原告商品の形態は,別紙原告商品目 録添付の原告商品の図面,原告商品の写真1,2のとおりである。 イ原告商品は,平成13年まではトラスコを総代理店として,本体の正面部分,側面部分及び天板部分に「TOYO」の文字を刻印した原告商品として販売されていた。平成14年以降も,原告の直販サイト等では,従来どおり「TOYO」の標章を刻印した原告商品として販売しているが,トラスコを通じての販売は,トラスコのプ ライベートブランド商品として上記「TOYO」の代わりに「TR 告の直販サイト等では,従来どおり「TOYO」の標章を刻印した原告商品として販売しているが,トラスコを通じての販売は,トラスコのプ ライベートブランド商品として上記「TOYO」の代わりに「TRUSCO」の刻印 をしたトラスコ商品として販売されるようになった(別紙商品目録3)。ただし,トラスコのプライベートブランド商品として販売される原告商品も,本体天板部分に付されたラベルには,小さな文字であるが,「製造元東洋スチール株式会社」と記載され,梱包箱には,より目立つ態様で,原告が製造元である旨の記載がされている(甲2,甲4,甲38,甲39,甲45,甲46)。 (3) 被告の行為被告は,平成25年頃以降,被告商品を台湾から輸入し,単品又は「プロ用デラックス工具セット12.7sq.(両開きタイプ)品番S7000SD」の一部として販売していた。 被告商品の形態は,別紙被告商品目録添付の被告商品の図面,被告商品の写真1, 2のとおりであり,天板部分に「SUPAERTOOL」との標章が付されている。 3 争点及び当事者の主張(1) 原告商品の形態の商品等表示性(原告の主張)原告商品の形態は,特別顕著性があり周知となっているから,出所表示として機能 しており商品等表示性がある。 ア特別顕著性原告商品の形態は,原告の前代表者が創作したもので,別紙原告商品目録添付の原告商品の図面,原告商品の写真1,2のとおりであり,以下の3点を特徴とする。これらは同種商品と識別し得る原告商品独自の特徴である(文中の(A)ないし(D), (1)ないし(5)は,別紙原告商品目録添付の原告商品の図面記載のそれである。)。 Ⅰ 直方体形状の下段大箱(A)と,その下段大箱(A)の上面開口幅を半分ずつ閉塞する一対の中段小 (D), (1)ないし(5)は,別紙原告商品目録添付の原告商品の図面記載のそれである。)。 Ⅰ 直方体形状の下段大箱(A)と,その下段大箱(A)の上面開口幅を半分ずつ閉塞する一対の中段小箱(B),(B)と,その中段小箱(B),(B)の上面開口を閉塞する一対の上段小箱(C),(C)と,その上段小箱の上面開口を閉塞する一対の天蓋(D),(D)とから成る3段の積み重ね形態であること(以下「原告主張特徴Ⅰ」と いう。)。 Ⅱ 上記3段積み重ねの工具箱は,その長手方向の両端部(左右両側面)に並列設置された平行リンク機構を介して,幅方向(前後方向)へ移動することにより開閉するようになっていること。 しかも,その平行リンク機構は下段大箱(A)と中段小箱(B),(B)とを枢支連結する内側位置の短いリンクピース(1),(1)と,その中段小箱(B),(B)と上 段小箱(C),(C)とを枢支連結する外側位置の短いリンクピース(2),(2)と,その短いリンクピース(1),(1)同士,(2),(2)同士の内外相互間(中央)に位置して,下段大箱(A)と中段小箱(B),(B)と上段小箱(C),(C)とを枢支連結する長いリンクピース(3),(3)とから成り,その長いリンクピース(3),(3)の上端部同士が水平の長い把手(4),(4)によって連結一本化されており,その把 手(4),(4)だけを長いリンクピース(3),(3)と別個独立して起伏操作することができないようになっていること(以下「原告主張特徴Ⅱ」という。)。 Ⅲ 上記工具箱の天蓋(D),(D)は,上段小箱(C),(C)における長手方向の両端部(左右両側面)に枢着されているほか,短い開閉リンク(5),(5)を介して上記長いリンクピース(3),(3)の中途部と枢支連結されて 蓋(D),(D)は,上段小箱(C),(C)における長手方向の両端部(左右両側面)に枢着されているほか,短い開閉リンク(5),(5)を介して上記長いリンクピース(3),(3)の中途部と枢支連結されている。そのため,把手 (4),(4)による工具箱の開閉動作に応じて,その上段小箱(C),(C)の天蓋(D),(D)も自ずと追従して開閉することになること(以下「原告主張特徴Ⅲ」という。)。 イ原告商品の形態の周知性原告は,昭和44年の設立当時から,デザイン性に特徴のある豊富な種類の工具箱を主力商品として製造販売しており,原告製の工具箱は,全国のホームセンターや雑 貨店での店頭販売,アマゾンサイトでの通信販売のほか,トラスコの発行する製造業者向けのプロツール販売の総合カタログ冊子であるオレンジブック(以下「オレンジブック」という。)に掲載されて同社の運営するe-コマースサイト「オレンジブック.Com」でも販売されている。原告商品は,原告製の工具箱の中でも大型で収納力のあるもので,「プロ用」の工具箱として販売されており,工具を使用する技術者を 主な需要者として想定している。 原告商品は,実用新案登録がなされて広く公開されている上,昭和54年の販売開始当初から前記の形態の特徴が変更されておらず,30年以上の長期にわたり販売継続されてきた。その間,類似の形態を有する商品は,原告と原告のOEM関係先以外の者により販売されたことはない。したがって,前記の商品の形態は,遅くとも平成25年には原告商品の独自の形態として需要者に広く認識されており,需要者におい て当該商品の形態は商品の出所を表示するものとして周知されている。 なお,被告主張に係るTONEが販売する工具箱(以下「TONE工具箱」という。)は,原告商 広く認識されており,需要者におい て当該商品の形態は商品の出所を表示するものとして周知されている。 なお,被告主張に係るTONEが販売する工具箱(以下「TONE工具箱」という。)は,原告商品とは明らかに異なる形態の商品であり,単に原告商品に機能を付加した商品ではない。3段積み重ねの工具箱において中央部の長いリンクピースが把手との連続一本物であり,その長いリンクピースの中途部に天蓋の短い開閉リンクが2枚重 合状態に枢支連結されている点は,TONE工具箱のみならず,それ以外の工具箱にもない原告商品独自の形態の特徴である。 ウ被告の主張について(ア) 被告は,原告主張特徴ⅠないしⅢを個別に取り出して,技術的機能にのみ由来する形態であるとの主張をする。 しかし,商品の形態は技術的機能のみによって決定されるものではなく,材質・強度・耐久性・意匠性・利便性・安全性・製造法(加工法)等も含めた総合的見地から決定される。原告商品の形態上の特徴として挙げた3点は,当該総合的見地から当該組合せが採用されたものであり,その有機的な組合せの全体として特徴がある。 仮に個別の特徴を取り上げても,各特徴はいずれも被告が主張するような技術的機 能にのみ由来する形態ではない。 原告主張特徴Ⅰにつき,被告は,原告商品の積み重ね形態が,工具箱の収納量と小型化の両立の効果を実現するために必然的に採用される形態であると主張するが,工具箱の収納量と小型化の両立は積み重ね形態を採用しなければ実現できないものではない。一般に工具箱は様々な形態のものが販売されており,原告製の工具箱だけで も多品種存在するが,いずれの形態も収納量と小型化を両立するため工夫を凝らした もので,原告商品の採用する積み重ね形態は工夫の一つである。 のが販売されており,原告製の工具箱だけで も多品種存在するが,いずれの形態も収納量と小型化を両立するため工夫を凝らした もので,原告商品の採用する積み重ね形態は工夫の一つである。 原告主張特徴Ⅱの「幅方向へ移動することにより開閉」する平行リンク機構について,被告は工具箱の内容物の「一覧及び取り出しできるようにするという技術的機能にのみ由来する形態」と主張するが,工具箱内の全ての工具を一覧・取り出しできるようにするためにはリンク機構を採用することが不可避となるわけではない。 原告主張特徴Ⅲの工具箱の開閉動作に応じてその天蓋も併せて開閉可能となる構成も,工具箱の内容物の一覧性を実現するために採用されたものであるが,この一覧性の実現は天蓋と上段小箱を連結したリンク機能のみに由来するものではない。原告主張特徴Ⅲは,把手の動作によって工具箱全体を開閉させるものであり,把手を立てると工具箱全体が閉じ,把手を幅方向へ倒すことによって工具箱全体が開く効果を有 する。他方,TONE工具箱のように,把手だけを中央位置の長いリンクピースと別個独立して起伏的に回動操作することができる構成の商品では,工具箱を閉じた状態で把手を倒すことができ,また,把手を倒した状態でも把手を幅方向に動かすことによって工具箱全体を開閉させることができる。したがって,原告商品の構成を採用しなければ把手の動作により工具箱の開閉ができず,工具箱の内容物を一覧できないと いうわけではない。 (イ) 以上のとおり,工具箱の収納量と小型化の両立や,工具箱の内容物の一覧性・取り出し容易性の機能・効果を実現するために原告商品の構成を採用することが不可避となるわけではなく,他の構成によることも可能である。すなわち,一概に「リンク機構」といっても,これを適用した 一覧性・取り出し容易性の機能・効果を実現するために原告商品の構成を採用することが不可避となるわけではなく,他の構成によることも可能である。すなわち,一概に「リンク機構」といっても,これを適用した商品の具体的な形態は様々であり,原告商品の 形態を採用しなくても,その工具箱の内容物を円滑に一覧及び取り出しできるようにすることは十分可能であり,選択肢はいくつもある。 (ウ) 原告商品は30年以上にわたって当該構成を変更することなく販売継続されてきたものであり,販売期間中,全ての特徴点を模倣する商品は被告商品が現れるまで流通していなかったのであるから,原告商品の独自の形態として長期間にわたり原 告が排他的に使用してきたという実態がある。 被告の挙げた他社製の工具箱は原告商品の形態と異なっており,把手が可倒式ではなく,かつ把手を使用して工具箱全体を一挙に開閉する形態の工具箱は,原告商品しか存在しない。したがって,これらの工具箱が存在することをもって原告商品の形態がありふれているということはできない。 原告商品の形態は,実公昭57-46140号実用新案公報(甲3の1)掲載によ り,原告独自のものとして広く公開され,社会に周知されたもので,他社が当該形態につき独占的な権利を取得することはできない。そして,当該形態の商品は,昭和54年から被告商品の販売開始時期までの間,原告とそのOEM関係のない者によって販売されたことはなく,原告が長期間にわたって販売活動してきたという事実は,原告商品の形態が原告によって排他的に使用されてきたことを示すものである。 (エ) 商品に標章が付されていても,そのことのみによって直ちに商品の形状の特別顕著性(自他商品識別力)が否定されることにはならない。文字標章が付されていてもなお商 とを示すものである。 (エ) 商品に標章が付されていても,そのことのみによって直ちに商品の形状の特別顕著性(自他商品識別力)が否定されることにはならない。文字標章が付されていてもなお商品の形態が独立して特別顕著性を有するかどうかを判断すべきである。 原告商品と被告商品は,いずれも両開きの形態の工具箱であり,いずれの商品も,カタログやインターネット上の販売ページにおいて,箱を閉じた状態と開いた状態の 写真を掲載しているところ,開いた状態ではいずれの商品もこれに付された標章部分は見えず,閉じた状態の商品写真も標章部分を強調するものではない。宣伝文句も,原告商品は「自動開閉式(ワンタッチ開閉)」,「両開き開閉式です」,被告商品は「両開き開閉式です」,「ワイドに開くので工具の出し入れが容易です」,「両開き部の稼働は,広く開きますので工具の出し入れに便利です」と,両開きの形態であることの利 点を強調する内容で,標章部分を識別の決め手とするような宣伝はされていない。こうした販売活動の実態からすれば,平面的な標章部分が商品の特別顕著性(自他商品識別力)に与える影響は乏しいというべきである。 (被告の主張)ア特別顕著性について 原告の主張する原告商品の形態は,その技術的機能ないし効果にのみ由来する形態 であるため,不正競争防止法第2条1項1号にいう「商品等表示」には該当し得ず,被告商品の販売が不正競争行為に該当するという原告の主張には理由がない。 原告は商品の形態の決定要素が技術的機能にのみではないと主張するが,その主張のうち,意匠性を除く「材質・強度・耐久性・利便性・安全性・製造法(加工法)」はいずれも技術的機能を意味するにほかならず,当を得ないものである。 また,技術的機能に基づく形態 るが,その主張のうち,意匠性を除く「材質・強度・耐久性・利便性・安全性・製造法(加工法)」はいずれも技術的機能を意味するにほかならず,当を得ないものである。 また,技術的機能に基づく形態(特徴部分)を組み合わせても,結局,当該形態(特徴部分)は技術的機能に基づく形態にすぎず,組み合わせにより一部の技術的機能が失われるなどの特段の事情がない限りは,組み合わせや総合考慮により商品等表示性が認められる余地はない。 (ア) 原告主張特徴Ⅰについて 原告は,「工具箱の収納量と小型化の両立は積み重ね形態を採用しなければ実現できないものではない」と主張する。 しかしながら,収納量と小型化を両立しつつ,開放時にその内容物の視認性(一覧性)を向上させるためには,必然的に積み重ね形態が採用せざるを得ない。原告の提出の証拠(甲20ないし24)を検討しても,収納量と小型化を両立しつつ,開放時 にその内容物の視認性(一覧性)を向上させるための形態として,他の形態は存在せず,原告の主張は理由がない。 (イ) 原告主張特徴Ⅱについて原告は,「工具箱内の全ての工具を一覧・取出しできるようにするためにはリンク機構を採用することが不可避となるわけではない」と主張する。 しかしながら,商品等表示性の主張立証責任は原告にあるにもかかわらず,原告はその他どのような方法で,積み重ね形態を採用した工具箱について,リンク機構を採用することなく,その内容物を円滑に一覧及び取り出しできるようになるかについて,具体的な主張を一切行っていない。 原告主張特徴Ⅱの形態を採用せずして,積み重ね形態を採用した工具箱について, その内容物を円滑に一覧及び取り出しできるようにすることは不可能である。 (ウ) 原告主張特徴Ⅲについて原 張特徴Ⅱの形態を採用せずして,積み重ね形態を採用した工具箱について, その内容物を円滑に一覧及び取り出しできるようにすることは不可能である。 (ウ) 原告主張特徴Ⅲについて原告は,原告主張特徴Ⅲの構成は,「工具箱の内容物の一覧性を実現するために採用されたものであるが,この一覧性の実現は天蓋と上段小箱を連結したリンク機能のみに由来するものではな」く,「把手の動作によって工具箱全体を開閉させるものであり,把手を立てると工具箱全体が閉じ,把手を幅方向へ倒すことによって工具箱全 体が開く効果を有するものである」と主張する。 しかしながら,原告主張特徴Ⅲは「工具箱の開閉動作に応じて,その上段小箱の天蓋も自ずと開閉」することであり,天蓋も含んだ工具箱全体の開閉は,天蓋と上段小箱を連結したリンク機能によって実現されるものである。 原告は,上記のとおり,「把手の動作によって工具箱全体を開閉させるものであり, 把手を立てると工具箱全体が閉じ,把手を幅方向へ倒すことによって工具箱全体が開く」点を原告商品の特徴であるかのように主張しているが,この主張は,工具箱の把手をリンクピースと独立して起伏的に回転操作可能としない構成を取った原告商品における,工具箱の開き方を説明しているにすぎず,原告主張特徴Ⅲに関する主張になっていない。原告が主張する,原告商品とTONE工具箱の相違も,工具箱の把手 だけを,リンクピースと独立して起伏的に回転操作可能とする構造を選択したか否かに基づくものにすぎず,その形態は同一ないしは極めて酷似している。 原告商品が選択した天蓋と上段小箱を連結したリンク機能は,上段小箱の内容物を,円滑に一覧及び取出しできるようにするための形態であり,商品等表示とはなり得ない。 上記のとおり,原告主張特徴 原告商品が選択した天蓋と上段小箱を連結したリンク機能は,上段小箱の内容物を,円滑に一覧及び取出しできるようにするための形態であり,商品等表示とはなり得ない。 上記のとおり,原告主張特徴ⅠないしⅢはいずれも技術的な機能ないしは効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来するものであり,「商品等表示」に該当し得ない。 実開昭54-121397号公報(甲31)は,3段積み重ねの工具箱で,平行リンク機構を具備するものであるが,その内容物を円滑に一覧及び取り出しできる機 能・効果を実現するために採用した具体的な形態は原告商品と同一である。 意匠登録第1107471号公報(甲33)及びその実施品(甲34)についても,内容物を円滑に一覧及び取り出しできる機能・効果を実現するために下段大箱と中段小箱とを枢支連結する内側位置のリンクピース(黄色)と,下段大箱と中段小箱と上段小箱とを枢支連結する長いリンクピース(赤色)からなっており,原告商品の形態が技術的機能及び効用に由来する必然的な形態であることを補強する証拠である。 実開昭54-148996号公報(甲32),株式会社リングスター製の工具箱(甲35),HAZET社製の工具箱(甲36),実用新案登録第3031290号公報(甲37)は,技術的機能及び効用において,原告商品と相違することから,その形態が相違するものである。 TONE工具箱,FACOM製の工具箱,被告の販売する品番S465BFの工具 箱も,把手を起こした状態の形態は原告の主張する形態ⅠないしⅢと同一又は極めて酷似するのであり,原告商品の形態に特別顕著性が認められないことは自明である。 イ周知性について原告商品の形態は,原告の商品として周知性を有するものではない。同一 ないしⅢと同一又は極めて酷似するのであり,原告商品の形態に特別顕著性が認められないことは自明である。 イ周知性について原告商品の形態は,原告の商品として周知性を有するものではない。同一の形態を有する商品はトラスコからもOEM販売がなされている。OEM商品は,需要者には OEM先(トラスコやTONE)の出所にかかる商品と認識されるものである。そして,当該製品には「TRUSCO」との商標が付されており,原告の商品とは認識できない。僅かに,ラベルに総販売元としてトラスコが記載されるとともに,並列に原告の名称が記載されているが,当該記載をもって原告の商品等表示と認識するとは考えられない。 そして,需要者はカタログやインターネット等で工具箱を購入することも少なくないのであり,かかるカタログやインターネットから,例えば別紙商品目録3の商品の写真中,平面図拡大(ラベル部)に認められる「製造元東洋スチール株式会社」との表示を認識することは不可能である。 原告が主張する原告商品の平成15年ないし平成25年の売上げは,トラスコのプ ライベートブランドとして販売されているOEM商品による売上げであるから,原告 商品の周知性を基礎づける主張とはなり得ない。 グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞対象は原告製工具箱品番Y-350であり,原告商品ではない。したがって,原告商品においてトラスコによる周知性の獲得を(そもそも商品等表示性を有し得ないが),原告による周知性として転用・利用できることの証拠とはなり得ない。 原告の主張する原告商品の宣伝広告費は,●(省略)●低額である。その他の年度を含めても,原告商品のみの宣伝広告費ではなく,数多存在する原告の製造販売にかかる商品の宣伝広告費であり,やはり低額 原告の主張する原告商品の宣伝広告費は,●(省略)●低額である。その他の年度を含めても,原告商品のみの宣伝広告費ではなく,数多存在する原告の製造販売にかかる商品の宣伝広告費であり,やはり低額にすぎない。 そして原告の主張するとおり,オレンジブックへの原告商品の掲載も,平成14年以降は全てトラスコへのOEM商品として掲載されているのであり,平成14年以降 のオレンジブックは,原告商品の形態の周知性立証の証拠たり得ない。また,平成13年以前においても,オレンジブックにおける掲載は,9万2000アイテム中の1アイテムにすぎず,特別の宣伝広告がなされているとは認められず,原告商品の形態の周知性を基礎づけるものではない。 原告がスチール製の工具箱メーカーとして一定の地位を築いていることと,原告商 品の形態が商品等表示性を有していることは無関係であり,さらに,当該形態が原告の商品等表示として周知であることとも無関係である。 (2) 原告商品と被告商品の類似性(原告の主張)被告商品の形態は,別紙被告商品目録添付の被告商品の図面,被告商品の写真1, 2のとおりであり,以下のとおり原告商品と前記の3点の特徴が共通しており,原告商品の形態に類似する(文中の(a)ないし(d),(10)ないし(50)は,別紙被告商品目録添付の被告商品の図面記載のそれである。)。 ⅰ 直方体形状の下段大箱(a)と,その下段大箱(a)の上面開口幅を半分ずつ閉塞する一対の中段小箱(b),(b)と,その中段小箱(b),(b)の上面開口を閉 塞する一対の上段小箱(c),(c)と,その上段小箱の上面開口を閉塞する一対の天 蓋(d),(d)とから成る3段の積み重ね形態である。 ⅱ 上記3段積み重ねの工具箱は,その長手方向の両端部(左 一対の上段小箱(c),(c)と,その上段小箱の上面開口を閉塞する一対の天 蓋(d),(d)とから成る3段の積み重ね形態である。 ⅱ 上記3段積み重ねの工具箱は,その長手方向の両端部(左右両側面)に並列設置された平行リンク機構を介して,幅方向(前後方向)へ移動することにより開閉するようになっている。 しかも,その平行リンク機構は下段大箱(a)と中段小箱(b),(b)とを枢支連 結する内側位置の短いリンクピース(10),(10)と,その中段小箱(b),(b)と上段小箱(c),(c)とを枢支連結する外側位置の短いリンクピース(20),(20)と,その短いリンクピース(10),(10)同士,(20),(20)同士の内外相互間(中央)に位置して,下段大箱(a)と中段小箱(b),(b)と上段小箱(c),(c)とを枢支連結する長いリンクピース(30),(30)とから成り,その長いリンクピース(30),(30) の上端部同士が水平の長い把手(40),(40)によって連結一本化されており,その把手(40),(40)だけを長いリンクピース(30),(30)と別個独立して起伏操作することができないようになっている。 ⅲ 上記工具箱の天蓋(d),(d)は,上段小箱(c),(c)における長手方向の両端部(左右両側面)に枢着されているほか,短い開閉リンク(50),(50)を介して 上記長いリンクピース(30),(30)の中途部と枢支連結されている。そのため,把手(40),(40)による工具箱の開閉動作に応じて,その上段小箱(c),(c)の天蓋(d),(d)も自ずと追従して開閉することになる。 (被告の主張)不正競争防止法2条1項1号に定める不正競争行為が成立するには,商品等 表示性を有する部分において類似していることが 天蓋(d),(d)も自ずと追従して開閉することになる。 (被告の主張)不正競争防止法2条1項1号に定める不正競争行為が成立するには,商品等 表示性を有する部分において類似していることが必要であるが,原告商品と被告商品との間には,商品等表示性を有する部分において類似性は存在しない。 原告商品の形態は,技術的機能のみに基づくものであることから,商品等表示には該当せず,商品等表示に該当する部分は原告商品に付された商標の部分であるが,被告商品には,原告商品に付された商標とは全く異なる商標(商標 登録第4775327号)が付されているから,当該商品等表示において原告 商品と被告商品が全く類似しない。 仮に,原告商品の形態に商品等表示性を有する部分があるとしても,当該部分はせいぜい正面に設けられた,下段大箱においては縦4個×横15個の,中段小箱及び上段小箱においてはそれぞれ縦1個×横15個の横方向を長辺とする長方形からなる凸部を有する点ぐらいであるところ,当該形態は被告商品にはみ られないことから,やはり原告商品と被告商品は商品等表示において全く類似しない。 (3) 誤認混同のおそれ(原告の主張)原告商品の形態は原告の周知の商品表示としての機能を有しており,被告商品の形 態は原告商品の形態と類似するものであるから,共通の需要者である工具を使用する技術者において,被告商品と原告商品との混同を生じるおそれがある。 原告は,両開きの形態の金属製工具箱に限っても,遅くとも昭和50年代からGTシリーズ(3段)3種,GLシリーズ(2段)4種,STシリーズ(2段)2種の少なくとも合計9種類の工具箱を常時展開してきた。また,TONEとはOEM関係が あり,TONE工具箱は原告が製造元となっているOEM商品で GLシリーズ(2段)4種,STシリーズ(2段)2種の少なくとも合計9種類の工具箱を常時展開してきた。また,TONEとはOEM関係が あり,TONE工具箱は原告が製造元となっているOEM商品である。原告は金属製工具箱の国内販売市場のシェアの半分以上を占めており,工具箱の業界においては原告の方が周知されている。 したがって,両開きの形態の金属製工具箱で原告商品と同じ3点の特徴を有するものが流通すれば,需要者において当該工具箱が原告の商品であるか原告とOEM関係 のある商品であるとの誤認・混同を生じさせるおそれがある。 (被告の主張)不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為が成立するには,他人の商品と混同を生じさせるおそれがある行為が必要であるところ,原告商品には原告の商標が,被告商品には被告の商標が目立つように付されていることから,需要者において原告商品 と被告商品に混同を生ずるおそれはない。 なお,被告は資本金18億9864万3000円(平成28年3月15日現在)を有するJASDAQ上場企業であり,被告商品に付した商標は単に登録されているのみならず,長年にわたる被告の宣伝広告の結果,周知性を有するものである。 (4) 原告が受けた損害額(原告の主張) ア被告は原告とかつてOEM取引関係にあった会社であり,被告商品の販売開始時において,原告商品の形態が周知商品表示であることを知っていたから,被告は,被告の行為が不正競争行為に当たり,これにより原告の原告商品の販売に係る営業上の利益を侵害することを知っていたか,少なくとも知らなかったことにつき過失があったというべきである。 イ被告は,平成27年11月までの間に被告商品を単品では希望小売価格1万1600円で577個,工具セット( を知っていたか,少なくとも知らなかったことにつき過失があったというべきである。 イ被告は,平成27年11月までの間に被告商品を単品では希望小売価格1万1600円で577個,工具セット(セット価格5万4000円)の一部としては1080個販売した。 被告はその後被告商品を1万3340円に値上げして販売を継続しており,平成27年12月から本件訴訟提起の日である平成28年12月27日までの間に,単品及 びセット商品の合計として少なくとも800個販売した。セット商品についてもケース部分の単価は単品での小売価格と同額として,その売上額は,少なくとも下記(ア),(イ)の合計2989万3200円に上る。 (ア) 平成27年11月までの売上額1万1600円×(577+1080)個=1922万1200円 (イ) 平成27年12月から平成28年12月までの間の売上額1万3340円×800個=1067万2000円被告商品の利益率は20パーセントを下らないと考えられるから,被告は,被告商品の販売により少なくとも597万8640円の利益を得ている。 被告が被告商品の販売により得た利益額597万8640円は,不正競争防止法5 条2項により原告の損害額と推定される。 ウ弁護士費用原告は,被告に対し前記不正競争行為を中止するよう警告し,被告が一旦は被告商品の販売を中止する意向を示したことから協議による解決を図っていたが,被告の交渉中の態度が二転三転し,被告商品の販売も継続しているため,原告は協議による解決を断念し,本件訴訟を提起せざるを得なくなった。被告の不正競争行為と相当因果 関係のある弁護士費用額は少なくとも60万円を下らない。 エしたがって,原告が受けた損害額は,合計657万86 解決を断念し,本件訴訟を提起せざるを得なくなった。被告の不正競争行為と相当因果 関係のある弁護士費用額は少なくとも60万円を下らない。 エしたがって,原告が受けた損害額は,合計657万8640円である。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 商品の形態は,商標等とは異なり,本来的には商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではないが,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的 に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして広く知られるようになっている(周知性)場合には,商品の形態自体が特定の出所を表示するものとして,「商品等表示」性を有するに至るものと解される。 なお,商品の形態の特別顕著性は,商品の機能・効用に由来するからといって直ち に否定されるべきではないが,機能・効用の発揮のために選択される商品形態の要素は,その性質上,出所表示にはなりにくいものと考えられるから,商品の形態に特別顕著性があるといえるためには,その商品の形態が機能・効用に資するだけにとどまらないといえる感覚に訴える独自の意匠的特徴を有し,需要者等が一見して特定の営業主体の商品であることを理解することができる程度の識別力を備えていることが 必要というべきである。 (2) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告製の金属製工具箱について原告商品を含む金属製工具箱は,他社製造販売に係る 必要というべきである。 (2) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告製の金属製工具箱について原告商品を含む金属製工具箱は,他社製造販売に係る製品を含み,工場等の作業現場で用いられる工具ないし部品を収容する箱であり,その需要者は,主にそのような作業現場で稼働する技術者である。 原告製造販売に係る金属製工具箱には,昭和54年当時から,山形の蓋の付いたもの,山形の蓋が両開きになる工具箱のほか,トランク型の工具箱,原告商品と同様のリンクを介して水平方向横開きになる2段積み重ねの構造の工具箱等,用途や必要な収容量に併せて各種の形態のものが販売されている。そのうち原告商品は,原告製品のなかでも最も大型の商品であるが,同じ両開きの形態の金属製工具箱としては,遅 くとも昭和50年代から3段積み重ねの工具箱であるGTシリーズを3種,2段積み重ねの工具箱であるGLシリーズを4種,STシリーズを2種の,原告商品を含み少なくとも合計9種類の工具箱が販売されている。なお,原告商品の販売開始時である昭和54年の原告の商品カタログでは,原告商品は「プロ用」と説明され,他の2段積み重ねの工具箱は「ホーム用」にも用いられ得ることが説明されていた。また,工 具箱の開閉と同時に蓋も連動して開閉する方式は,原告販売に係る工具箱では,遅くとも昭和60年頃からの2段積み重ねの工具箱においても採用されている(甲1,甲2,甲20ないし24)。 イ 3段積み重ねの平行リンク機構を備えた金属製工具箱について現在,原告商品及び被告商品以外の3段積み重ねで平行リンク機構を備えた金属製 工具箱として,以下のようなものがある。 (ア) TONE工具箱(乙4)TONEは,遅くとも平成22年9月以降,原告にOE 商品及び被告商品以外の3段積み重ねで平行リンク機構を備えた金属製 工具箱として,以下のようなものがある。 (ア) TONE工具箱(乙4)TONEは,遅くとも平成22年9月以降,原告にOEMで製造させている別紙商品目録1記載の工具箱を販売している。同工具箱は,原告商品同様の下段と中段に連結したリンク,下段,中段及び上段を連結するリンク,中段と上段を連結するリンク により,工具箱全体を水平方向横開きにする機構が備わっていて,原告主張特徴Ⅰな いしⅢを備えているが,原告商品では下段,中段及び上段を連結するリンクがそのまま把手部分を構成するのに対し,同リンク部分と把手部分が別部材とされ,把手部分が可倒式となる点で構造が異なっている。なお,同工具箱を原告のOEM商品と認識できる客観的手掛かりはなく,また一般の需要者がそのことを認識している様子はうかがえない。 (イ) FACOM社製の工具箱(甲26,乙2の2)FACOM社製造に係る別紙商品目録2記載の工具箱は,原告商品同様の下段と中段に連結したリンク,下段,中段及び上段を連結するリンク,中段と上段を連結するリンクにより,工具箱全体を水平方向横開きにする機構が備わっていて,原告主張特徴Ⅰ,Ⅱを備えている。しかし,同工具箱には,原告商品の(5)に相当するリンク がないため,上段の蓋は工具箱を開く動作とは別に,手で開く必要がある。 (ウ) 京都機械工具株式会社製の工具箱(甲34)京都機械工具株式会社が販売している「両開きメタルケース」は,平成12年6月30日アイリスオーヤマ株式会社出願に係る意匠(意匠登録第1107471号公報。 甲33)とほぼ同じ意匠を有する工具箱である。閉じた状態では蓋が両開きするトラ ンクのような形態を有しているが,その内部に原告商 オーヤマ株式会社出願に係る意匠(意匠登録第1107471号公報。 甲33)とほぼ同じ意匠を有する工具箱である。閉じた状態では蓋が両開きするトラ ンクのような形態を有しているが,その内部に原告商品同様のリンク機構を有する3段積み重ねの工具箱が内蔵されており,トランク様の蓋を両開きする動作により,内蔵した3段積み重ねの工具箱が水平方向に横開きに開く構造となっている。なお,蓋を開くリンクは,原告商品のリンクの(5)とは異なり,下段,中段及び上段を連結するリンクの中段付近で連結されている。 (エ) 株式会社リングスター製の工具箱(甲35,乙7)株式会社リングスターが販売している3段積み重ねの工具箱「ハイクオリティボックス」は,平行リンク機構により水平方向に横開きするものである。下段,中段及び上段の動きを規制するリンク機構は原告商品と同じである。上段の蓋は,中央で分割する両開き型ではなく,全面を1枚で覆う蓋であって片開きとなり,箱の開閉操作と は別に開く操作を必要とする。 (オ) HAZET社製の工具箱(甲36)ドイツのHAZET社製造に係る「HAZET3段式ツールボックス」は,大きな門字型をなす把手の1本だけが,その山型の支持脚となるリンクピースを介して,下段,中段及び上段を連結するリンクの下端部に枢着されており,その工具箱の把手は常に固定状態とされている。下段,中段及び上段の動きを規制するリンク機構は原告 商品と同じである。 ウ 3段積み重ねの工具箱の考案について水平方向横開きとなるリンク機構を用いた3段積み重ねの工具箱に関連して,以下のような考案が公知となっている。 (ア) 実開昭54-121397号公報(甲31) 外山工業株式会社出願に係る同考案に示された3段積み重ねの工具箱は,原告 積み重ねの工具箱に関連して,以下のような考案が公知となっている。 (ア) 実開昭54-121397号公報(甲31) 外山工業株式会社出願に係る同考案に示された3段積み重ねの工具箱は,原告商品同様の平行リンク機構を具備するものであり,下段,中段及び上段を一つの動作で水平方向に平行移動させて開くことができるものである。なお,原告商品のようにリンクが把手と一体に形成されているものではなく,また上段の蓋を連動して開閉するリンクが設けられているわけではない。 (イ) 実開昭54-148996号公報(甲32)上記公報に示された3段積み重ねの工具箱は,上記(ア)の工具箱に用いられたリンク機構とほぼ同じリンク機構が用いられているが,下段,中段及び上段を連結するリンクはなく,必ずしも一つの動作で下段,中段及び上段を水平方向に平行移動させて開くことにはならないものであり,中段及び上段ともに水平方向横開きに全開できる とともに,各段を任意の位置に保つ状態で開くこともできるようになっている。 (ウ) 実公昭57-46140実用新案公報(甲3の1)原告が昭和55年4月24日に出願した工具箱についての考案に係る上記公報には,実施例として原告商品と同構造の平行リンク機構を備えた工具箱が図示されている。先願となる上記(ア)の考案とは,下段,中段及び上段を連結するリンクがそのまま 把手部分となることと,そのリンクが工具箱の蓋を開閉するリンクと連結し,蓋の開 閉も連動することで異なっているが,その技術的特徴は同公報に触れられるところはなく,出願された同公報記載の考案の要点は,中段及び上段の箱体の幅方向内側の下部を湾曲形成することで,開閉時の中段及び上段の箱体の動きをスムーズにしようとするものであって,原告主張特徴ⅠないしⅢは なく,出願された同公報記載の考案の要点は,中段及び上段の箱体の幅方向内側の下部を湾曲形成することで,開閉時の中段及び上段の箱体の動きをスムーズにしようとするものであって,原告主張特徴ⅠないしⅢは関係しない。なお,「考案の詳細な説明」中には,「また,前記実施例では大箱体4の上方に小箱体5,6を2段備えている が,上部小箱体6が無い1段式のものであってもよく,また小箱体を3段以上備えてもよい。」(4欄28行目から31行目)との記載がある。 エ原告商品の売上げ,広告宣伝について(ア) 原告商品の売上げ及び販売の推移は別紙GT-470売上推移各欄記載のとおりであり,販売開始以来,増減はあるものの●(省略)●円程度の売上を計上して おり,販売個数が明らかになっている平成18年以降は,毎年●(省略)●の販売個数で推移している。 (イ) 原告における原告商品を含む原告製品に係る昭和60年ないし平成25年の年別広告宣伝費の推移は別紙広告宣伝費推移のとおりであ●(省略)●る。 (ウ) 原告商品は,平成13年までは,トラスコの発行する総合カタログ冊子(オレ ンジブック)において原告の商号である「TOYO」ブランドの商品として掲載されていたが,「TRUSCO」ブランド商品として販売されるようになった平成14年以降は,トラスコのプライベートブランド商品として掲載されるようになっている(甲38,甲39,甲45,甲46)。 トラスコの発行する総合カタログ冊子であるオレンジブックは,全国の工場に配布 される冊子であり,平成14年発行に係るものでも掲載商品数が9万2000点を超え,平成28年に至っては,総ページ数は1万2000ページ以上,掲載アイテム数は27万8000点,掲載メーカー総数1388社である。毎年約60社,2万ないし3万ア でも掲載商品数が9万2000点を超え,平成28年に至っては,総ページ数は1万2000ページ以上,掲載アイテム数は27万8000点,掲載メーカー総数1388社である。毎年約60社,2万ないし3万アイテムを新規掲載し,発行部数は,少なくとも年25万部に及んでおり,被告商品販売開始後は,被告商品も掲載されていた(甲38,甲42)。 オその他の原告製造に係る製品について (ア) 原告製の金属製工具箱である「山型ツールボックス」(品番Y-350)は,平成21年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞している。同賞受賞に当たり事業主体とされたのは原告であったが,受賞企業は,原告及びトラスコとされた(甲43,44)。なお,同商品も金属製工具箱であるが,一段の箱と山型の天蓋からなる小型の工具箱であり,リンク機構を用いた多段構造になっている原告商品とは 形態の異なるものである(甲43)。 (イ) 原告は,近時,金属製工具箱の技術をいかしてアルミ合金のビジネスケースを開発,販売したり,一般消費者向けに企画されたおしゃれな塗装が施されている小型の金属製工具箱をOEM商品として供給し,無印良品,フェリシモ及び&NUT(アンドナット)のブランドで販売されたりしている。それらの商品の紹介の中では,原 告が金属製工具箱の分野で6ないし7割のシェアを占める企業であること,原告が工具箱の分野において老舗で有名であることなどが触れられている(甲49ないし54(枝番号があるものは,枝番号を含む。))。 (3) 検討ア原告は,原告商品の形態の特徴として,原告主張特徴ⅠないしⅢを挙げ,これ により原告商品の形態が特別顕著であるとともに周知になっていて,原告商品は商品等表示性を有するに至っている旨主張するが,以下に検討する 品の形態の特徴として,原告主張特徴ⅠないしⅢを挙げ,これ により原告商品の形態が特別顕著であるとともに周知になっていて,原告商品は商品等表示性を有するに至っている旨主張するが,以下に検討するとおり,原告主張特徴ⅠないしⅢをもって原告商品の形態に特別顕著性があるとはいえず,またその商品の形態ゆえに原告商品が周知になっているとも認められないから,原告商品の形態が商品等表示性を有するとは認められない。 イすなわち,原告は,まず原告商品の形態の特徴として,原告主張特徴Ⅰを挙げるが,同主張に係る特徴は,要するに,原告商品が一対の天蓋と下段を一つの箱とし,これに左右に展開する小箱を2段積み重ねて3段に積み重ねた形態であることをいうものにすぎない。しかし,そのような形態の商品は,現在では,複数存在しているし,原告商品の販売開始とされる昭和54年当時であっても,原告においては2段積 み重ねの同種工具箱をより多品種販売し,これを一般需要者向けにも販売している様 子がうかがえ,さらにその当時,原告以外の者により,3段積み重ねの工具箱の構造についての実用新案の出願が複数されているところからすると(上記(2)ア,ウ),2段積み重ねの工具箱をさらに3段積み重ねにすることに構造上の技術的課題があったとしても,それだけでは機能・効用に資するだけにとどまらない感覚に訴える意匠的特徴があるとはいえず,これをもって原告商品の形態に特別顕著な特徴があるとは 認められない。 また原告主張特徴Ⅱ及びⅢは,工具箱を水平方向に横開きすることを可能にする把手部分及びリンク機構の構成という原告商品の形態の機能的特徴にとどまらず,これにより実現される工具箱の蓋及び各箱の連動した開閉時の動きという原告商品の機能や効用そのものも特徴としていうものと解 る把手部分及びリンク機構の構成という原告商品の形態の機能的特徴にとどまらず,これにより実現される工具箱の蓋及び各箱の連動した開閉時の動きという原告商品の機能や効用そのものも特徴としていうものと解されるが,原告商品の販売当初から,原 告においては,2段積み重ねでリンク機構を用いて水平方向に横開きする工具箱を多品種販売していたし,これを1段多くして3段積み重ねとした工具箱に平行リンク機構を用いて水平方向に横開きにする工具箱は,上記(2)イのとおり,現在においては,多種類が販売されている。特に,被告商品により先に販売されていたTONE工具箱は,把手部分が可倒式である以外は原告商品と構成が同じであって,原告主張特徴Ⅰ ないしⅢを備えるものである。それ以外の3段積み重ねでリンク機構を用いて横開きする工具箱も,①把手部分の開閉操作により工具箱全体を連動した動きで開閉することができるが,蓋は別操作により開閉するもの(FACOM社の工具箱),②蓋を開閉させるリンクの構造が一部異なるが,原告商品同様の3段積み重ねの工具箱が格納状態でトランクのような外観となるようされたもの(京都機械工具株式会社製の工具 箱),③蓋を連動させるリンクがないほかは,原告商品と同様のリンク機構を備え,蓋については全面を1枚で覆う手で開く片開きの蓋となるもの(株式会社リングスター製の工具箱),④把手は箱の開閉操作に関係しない門字型をなす1本の部材であり,箱の開閉を規制するリンク機構は,蓋を連動させるリンクがない以外,原告商品と同じもの(HAZET社製の工具箱)というものであって,それぞれ工具箱の小箱部分 がリンク機構を介して水平方向横開きに連動して開閉操作できるという基本的機能・ 効用は原告商品と同じであるが,把手部分やリンク機構の構成を原告商 のであって,それぞれ工具箱の小箱部分 がリンク機構を介して水平方向横開きに連動して開閉操作できるという基本的機能・ 効用は原告商品と同じであるが,把手部分やリンク機構の構成を原告商品と異なる構成にすることにより,把手部分の用い方や工具箱の開閉のさせ方などの点で原告商品と少しずつ異なる機能・効用を実現し,もって市場に複数ある3段積み重ねの工具箱のなかでの,それぞれの商品の特徴としているものと認められる。 そうすると,原告主張特徴Ⅱ及びⅢは,商品の形態だけにとどまらない要素をもい う点をさておいても,結局,3段積み重ねの工具箱においてリンク機構を用いる場合に考えられ得る設計上の選択のうち,一つの類型の特徴にいうにすぎないものということができ,そのことは,この種の工具箱を購入する需要者であれば容易に理解することができ,またこれら需要者は製品の機能や効用を重視して,その用途目的に合わせた製品を選択すると考えられるから,これらの特徴をもって原告商品の形態に機 能・効用に資するだけにとどまらない感覚に訴える独自の意匠的特徴があるとはいえない。 したがって,原告主張特徴Ⅱ及びⅢをもって,原告商品の形態に特別顕著性があるということはできない。 そして,原告主張特徴Ⅰが特別顕著なものといえないことは上述のとおりであり, さらに原告主張特徴Ⅱ及びⅢにかかわる上記判断は,結局,3段積み重ねの工具箱という同Ⅰの形態的特徴を前提にしているものであるから,原告主張特徴ⅠないしⅢはこれを総合考慮しても,原告商品の形態が同種商品にない特別顕著なものであるということはできないことに変わりはなく,そのほか原告商品の形態に特別顕著性を肯定し得る形態的特徴はうかがえない。 ウなお,昭和54年に販売が開始された原告商品(平成14年 著なものであるということはできないことに変わりはなく,そのほか原告商品の形態に特別顕著性を肯定し得る形態的特徴はうかがえない。 ウなお,昭和54年に販売が開始された原告商品(平成14年以降はトラスコ製品としての販売)は,平成22年9月にTONE工具箱(上記(2)イ(ア))が販売されるまで同種機構を持つ3段積み重ねの工具箱が存在しない中で販売され,被告商品が販売されるようになった当時でも,同種機構を持つ3段積み重ねの工具箱は原告商品及びTONE工具箱だけであったというのであるから,原告商品の形態は長期間,原 告によって独占されて販売されていたということができる。 しかし,仮に原告商品の形態に弱いながらも顕著性を肯定できるとしても,その売上個数は,金属製工具箱の市場において半分以上のシェアを占める原告においてすら,●(省略)●にすぎず(別紙GT-470売上推移に販売個数の記載のない年度についても,売上の変動から同程度と認められる。),またこの間に原告商品について特別な宣伝広告がされた事実は認められず,単に横開きできる各種ある複数段を積み重ね の工具箱の一つとして,総合カタログであるオレンジブックに掲載されていたという程度にとどまるというのであるから,原告が金属製工具箱のメーカーとして需要者間で広く知られていることを考慮しても,被告商品が市場で販売されるようになった平成25年当時も,それ以降も,需要者の間で原告商品の形態が広く知られ,その形態から特定の営業主体の商品であると識別されるなどの出所表示機能を有するに至っ ていたものとはおよそ認められない。 (4) したがって,原告商品の形態には特別顕著性も周知性も認められないから,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に該当するとはいえず,その旨の原告の主 ていたものとはおよそ認められない。 (4) したがって,原告商品の形態には特別顕著性も周知性も認められないから,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に該当するとはいえず,その旨の原告の主張は採用できないというべきである。 3 以上によれば,原告の請求は,その余の判断に及ぶまでもなく,いずれも理由 がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官野上誠一 裁判官大川潤子
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