H16.11.24東京地方裁判所平成12年(ワ)第21770号損害賠償請求事件 主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して,金2260万3889円並びに内金200万円に対する平成9年10月19日から及び内金1937万5630円に対する平成16年3月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して,金2149万3872円並びに内金200万円に対する平成9年10月19日から及び内金1853万5630円に対する平成16年3月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの,その余を被告らの負担とする。 5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して,金6048万8023円及びこれに対する平成9年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して,金5873万4822円及びこれに対する平成9年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1(1) Eは,平成9年10月19日,被告会社が主催するダイビングツアーに参加し,被告会社の従業員である被告Cの引率によるスキューバダイビング中,海面に浮上しようとした際,船舶のスクリューに巻き込まれて死亡した(以下「本件事故」という。)。 (2) 本件は,Eの相続人である原告らが,被告Cに対しては,不法行為に基づき,また,被告会社に対しては,被告Cの使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行に基づき,損害賠償金(原告Aは6048万8 (2) 本件は,Eの相続人である原告らが,被告Cに対しては,不法行為に基づき,また,被告会社に対しては,被告Cの使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行に基づき,損害賠償金(原告Aは6048万8023円,原告Bは5873万4822円)及びこれらに対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠等により容易に認定できる事実については,末尾に証拠等を記載した。)(1)ア原告Aは,Eの夫(昭和61年6月27日婚姻)であり,原告Bは,原告AとEの長女(平成元年10月5日生)である。 イ原告らは,Eの死亡により,これを各2分の1の割合で相続した(甲第8,第10号証,弁論の全趣旨)。 (2)ア被告会社は,民間のダイビング指導団体が発行する講習修了認定証(以下「Cカード」といい,この取得者は「オープンウォーターダイバー」と呼ばれている。)の取得などを目的としてダイビングの技術講習をするRダイビングスクールを運営する株式会社であり,ダイビングツアーも主催していた。 イ被告C(本件事故当時の姓は「Z」であったが,その後,改姓した。)は,被告会社の従業員であり,ダイビング指導団体であるNASDS(NationalAssociationofScubaDivingSchools)が認定するインストラクター(ダイビング講習やCカードの発行ができる指導員)の資格を取得していた(甲第44号証,乙第5号証,第11号証の3,弁論の全趣旨)。 (3) スキューバダイビングに関する技能は,ダイビング歴を表すタンク使用本数がその力量を推量する重要な指標とされており,上級者用の講習を受けるためには,少なくとも30本以上のダイビング歴を必 (3) スキューバダイビングに関する技能は,ダイビング歴を表すタンク使用本数がその力量を推量する重要な指標とされており,上級者用の講習を受けるためには,少なくとも30本以上のダイビング歴を必要とする。Eは,被告会社のダイビング技術講習を受講し,平成8年12月ころ,Cカードの交付を受け,本件事故当時,約20本程度のダイビング歴を有していた(乙第11号証の1ないし3,被告Cの本人尋問の結果,弁論の全趣旨)。 (4) 静岡県賀茂郡a町のb西側のc付近(以下「本件現場」という。)は,「g」と呼ばれるダイビングスポットとして知られており,いわゆるボートダイビング(ダイバーを船舶で潜水ポイントまで送迎して実施されるダイビングをいい,これに使用する船舶は「ダイビングボート」と呼ばれている。)が盛んであった(甲第3号証の1ないし3,丙第1,第6号証,弁論の全趣旨)。 (5) Eは,被告会社が主催するダイビングツアー(以下「本件ツアー」という。)に参加を申し込み,所定の参加料を支払い,被告会社との間で,本件ツアーの参加契約を締結した(以下「本件契約」という。)。 (6) 本件ツアーに参加したEは,平成9年10月19日,本件現場において,次のような経緯で発生した事故(本件事故)により死亡した(甲第18号証,第21号証の1,2,第22ないし第36号証,第43ないし第45号証,第46号証の1ないし3,第47号証の1,2,第48号証,第49号証の1ないし7)。 ア被告Cは,同じ被告会社の従業員であるF及びGとともに,Eを含むツアー参加者10人を引率して,被告会社がチャーターしたH所有の遊漁船○イに乗船して本件現場に赴き,同日午前9時45分ころからダイビングを始めた。 イ本件事故の前後に本件現場付近にいた船舶は,○イのほか,I操船のダ 率して,被告会社がチャーターしたH所有の遊漁船○イに乗船して本件現場に赴き,同日午前9時45分ころからダイビングを始めた。 イ本件事故の前後に本件現場付近にいた船舶は,○イのほか,I操船のダイビングボートである遊漁船○ロ号(16.55トン。喫水は,船首部0.7メートル,船体中央部0.73メートル,船尾部1.34メートル。)だけであった。 ウツアー参加者のうちE,J及びk(一括して,以下「Eら」という。)らを含む5人は,被告C及びFが引率するグループに入っていたが,ダイビング中は,被告Cが,Eらを引率し,Fが,他の2人を引率していた(以下,被告CとEらのグループを「Cグループ」と,Fと他のツアー参加者のグループを「Fグループ」ともいう。)。 このダイビングに際しては,バディシステム(単独ではなく,バディ(仲間)とともに潜水し,相互の安全に責任をもつ方法)が取られ,EはJと,被告Cはkとそれぞれバディを組んでいた。 エ(ア) 被告Cは,Eらを引率して,周辺海域をダイビングした後,同日午前10時15分ころ,ダイビングを開始した付近に戻り,水深16.8メートル付近から水深14.6メートル付近まで浮上して,一旦停止した。そこで,被告Cは,頭を上げて海面を目視したうえで,Eらに浮上再開を合図した。 (イ) 被告CとEらは,浮上の再開に際し,気泡を放出(ダイビング中の継続的な気泡の放出とは異なり,浮上に際し,海上の船舶等への合図として意図的にする大量の気泡の放出)したが,被告Cは,フロート(海中で空気を注入して膨張させる風船状の浮袋で,浮上の合図とするもの)を携行しておらず,これを使用した海上への合図はされなかった。 オ被告C,E及びkは,海面に浮上しようとした際,○ロ号の船底に衝突し,さらに,Eは,○ロ号 船状の浮袋で,浮上の合図とするもの)を携行しておらず,これを使用した海上への合図はされなかった。 オ被告C,E及びkは,海面に浮上しようとした際,○ロ号の船底に衝突し,さらに,Eは,○ロ号のスクリューの回転に巻き込まれて頭蓋骨骨折による脳挫傷等の傷害により死亡し,また,kも,左肩甲骨骨折,頭部及び右殿部挫創による全治約3か月の傷害を負った。 (7)ア Hは,被告会社との契約に基づき,○イをダイビングボートとして,b周辺の潜水ポイントへダイバーを送迎し,ダイビング中は,海上で待機して,見張り役を務めていた。 イ本件事故の直前,Hは,本件現場に接近してきた○ロ号を目撃し,Iに対し,本件現場付近でダイバーがダイビング中であることを無線で伝えていた。 (8) d簡易裁判所は,平成13年12月27日,Hに対し,潜水したダイバーの安全を監視中,○ロ号の前方4ないし5メートルの海上に,Eらが放出した気泡を認め,間もなく浮上予定であり,Iが,これに気付かないまま○ロ号の航行を開始すれば,Eらと接触するおそれがあることを知り得たのに,無線等により航行を開始しないようIに警告しなかった業務上の過失により本件事故を発生させたとして,業務上過失致死傷罪により罰金30万円に処するとの略式命令を発令し,同命令は,確定した(甲第51号証,弁論の全趣旨)。 (9)ア原告らは,被告らのほか,I及びHも被告として,本件訴訟を提起していたが,Iは,平成13年2月14日,死亡し,その相続人も相続を放棄したので,平成14年1月30日,Iに対する訴えを取り下げた。 イ原告らとHは,被告らを利害関係人として,平成16年3月3日の本件第16回弁論準備手続期日において,次の内容により和解した。 (ア) Hは,原告らに対し,本件事故に関する和解金と 。 イ原告らとHは,被告らを利害関係人として,平成16年3月3日の本件第16回弁論準備手続期日において,次の内容により和解した。 (ア) Hは,原告らに対し,本件事故に関する和解金として1000万円(原告らの連帯債権)の支払義務のあることを認め,これを平成16年4月2日限り支払う。 (イ) Hが(ア)の金員を支払ったときは,原告らは,被告らに対し,本件事故に起因した原告らの損害が,Hの支払った限度で填補されたことを認める。 (ウ) 原告ら,H及び被告らは,この和解が,(イ)を除き,原告らの本件事故に係る被告らに対する各損害賠償請求権の存否及び内容に何らの影響を生じさせないことを相互に確認する。 ウ Hは,原告らに対し,平成16年3月23日,イ(ア)の和解金1000万円を支払い,原告らは,この和解金を500万円ずつ取得した。 (10) 海上保安庁警備救難部救難課作成の「ダイビング・サービス提供者に係る安全対策」と題する小冊子(昭和63年8月作成)では,スクール,ガイド,ツアー,ボートダイビング,体験ダイビング,潜水器材の貸出し等のダイビングサービスを提供している者は,船舶等との衝突を避けるため,指導員又はガイド・ダイバーが,参加者に対し,浮上時には水深3メートル程度で一旦浮上を止め,水中音に注意を払うとともに,水面上を注視するよう十分指導するなどの安全対策を講ずることを求めている(甲第17号証の2)。 また,財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会編著「レジャー・スキューバ・ダイビング(改訂版)」(平成6年10月8日発行)も,同様の安全対策を挙げているほか,次のような記述をしている(甲第4号証)。 アバディの位置を常に把握できる状態で潜水を行うのが,バディ潜水の鉄則であり,安全な潜水を行う基本で 年10月8日発行)も,同様の安全対策を挙げているほか,次のような記述をしている(甲第4号証)。 アバディの位置を常に把握できる状態で潜水を行うのが,バディ潜水の鉄則であり,安全な潜水を行う基本である。 イダイバーが浮上時に安全確認を怠り,船舶のスクリューに巻き込まれる事故が相当数発生している。船舶のエンジン音は,相当深く潜行しているダイバーでもかなり明確に聞き取れるので,浮上途中にエンジン音が聞こえたら,まず一旦浮上を止め,その音が遠のいた後に浮上すれば,比較的安全に船舶との衝突の危険を避けることができる。 (11) 本件事故後,b周辺のダイビングボートの船主で組織するbダイビング組合は,ダイバーとの衝突を防止するためにダイビングボートの関係者が取るべき措置をまとめた「安全対策マニュアル」を作成した(甲第15号証)。それによると,ダイビングの実施前に,浮上の際は,水深5メートルの位置で安全のために停止し,先にフロートを海面に上げて,海面の安全を確認するよう説明し,そのため,ダイバーのグループリーダー及びアシスタントは,約10メートルのロープの付いたフロートを必ず携帯するとされている。 (12) 被告らは,本件事故後,ダイバーが浮上する際は,水深約15メートルの位置から,頭を前後左右に動かして,海上を目視したうえ,気泡の放出による合図をしてから,指導員又はガイドを先頭に浮上を開始し,水深5メートル付近で,指導員又はガイドが,フロートを上げるとともに,再度頭を前後左右に動かして海上を目視したうえ浮上を再開するか,エントリー(海に入ること)の際に使用するアンカーブイ(錨つき浮標)をそのままにしておき,アンカーブイを伝わりながら浮上する方法を取るようになった。また,ダイビングボートの見張りに対しては,フロートに他の船舶を絶対近づかせないよう 用するアンカーブイ(錨つき浮標)をそのままにしておき,アンカーブイを伝わりながら浮上する方法を取るようになった。また,ダイビングボートの見張りに対しては,フロートに他の船舶を絶対近づかせないよう指示を徹底するようになった(甲第47号証の1)。 3 争点(1) 被告Cの不法行為責任の有無(2) 被告会社の責任の有無ア使用者責任イ債務不履行責任(安全配慮義務違反)(3) 原告らの損害(4) 過失相殺 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(被告Cの不法行為責任の有無)についてア原告らの主張(ア) スキューバダイビングは,潜在的な危険を伴い,一つ間違えれば,直ちに生命身体に危険が生ずる可能性の高いスポーツであるところ,被告会社は,参加者から参加料を得て,これを引率するダイビングツアーを主催し,被告Cは,その従業員として,本件ツアーにおいてもEらを引率していた。 (イ) Eが取得していたオープンウォーターダイバーの資格は,講義及び数回の実習により付与される初級者の資格にすぎず,また,Eは,指導員(インストラクター)が同行するダイビングの経験しかなく,その知識や技術は,未熟な初心者の域にとどまっていたから,指導員の指示や援助がなければ,安全にダイビングをする技能を有していなかった。 (ウ) 被告Cは,本件ツアーの指導員として,参加者を引率していたのであるから,参加者のダイビング中の安全を確保すべき義務を負っていた。仮に,被告Cが,ガイド(案内役)にすぎなかったとしても,潜在的に危険を伴うダイビングの引率者であり,他方,Eの技能は高くなかったのであるから,ダイビング中の安全を確保する義務に違いはないというべきである。 (エ) 被告Cは,本件事故のよう ても,潜在的に危険を伴うダイビングの引率者であり,他方,Eの技能は高くなかったのであるから,ダイビング中の安全を確保する義務に違いはないというべきである。 (エ) 被告Cは,本件事故のようにダイバーが船舶のスクリューに巻き込まれる危険を回避し,その安全を確保するための次のような義務があった。 a 浮上予定の海面に,フロートを浮上させて,船舶にダイバーの浮上を認識させる。 b 浮上予定の海面周辺の船舶の有無を,目視やスクリュー音,エンジン音により十分に確認したうえで,参加者を浮上させ,浮上中も,常に接近する船舶の有無を確認する。 c 技能が未熟な参加者を海中に待機させ,自らが先行して浮上し,海上の安全を確認する。 (オ) 被告Cの過失a 被告Cは,海上の船舶に対して,気泡の放出による合図をしただけで,他にダイバーの存在を確実に知らせるためのフロート等による注意喚起の方法を取らず,○ロ号が浮上予定の海面に進入するという結果を招いた。 b 被告Cは,水深14.6メートル付近まで浮上した際,船舶のスクリュー音を耳にして,近くに船舶がいることを認識していたにもかかわらず,浮上予定の海面周辺の船舶の有無や動静に十分な注意を払わず,頭を上げて海面を目視しただけで,頭を前後左右に動かして広い範囲を確認しないまま,漫然とEらを浮上させた。 c 被告Cは,Jへ再度の浮上を合図した際,E及びkの動静を十分に把握せず,その後も,浮上予定の海面周辺の船舶の有無や動静について十分に注意しなかった。 d 被告Cは,以上の過失により本件事故を発生させたのであるから,不法行為に基づく損害賠償責任がある。 イ被告らの主張(ア) 被告Cに過失があったとの原告らの主張は争う。 d 被告Cは,以上の過失により本件事故を発生させたのであるから,不法行為に基づく損害賠償責任がある。 イ被告らの主張(ア) 被告Cに過失があったとの原告らの主張は争う。 本件ツアーは,ダイビングの技術習得の目的ではなく,水中散歩(海底の美しい場所や海洋生物の見物等)を目的とするいわゆるファンダイビング(個人的な楽しみのためにするダイビング)であり,被告Cの役割も,指導員ではなく,ダイビング技能を有する者を対象としたファンダイビングのガイドにすぎなかった。 (イ) スキューバダイビングは,呼吸,行動や意思疎通に制約が必然的に伴なうスポーツであり,危難に陥った者を他人が救護することは困難な場合もあり,これは,技能を有する指導員又はガイドであっても同様であるから,ダイバーは,原則として自らその安全を確保すべき必要がある。 Eは,Cカードを取得したオープンウォーターダイバーであり,特別なダイビング(夜間,沈没船内部等の潜水)を除き,指導員が同行しなくても,自己の責任で日本国内はもちろん,海外でも自由に潜水することができる技能を有していた。本件ツアーの参加者は,自己の責任で潜水することができる資格を有していることが参加の要件とされており,自らその安全を確保できることを前提としていた。 (ウ) 本件事故発生の経緯a 被告Cは,Eらに浮上の合図をした後,Eとkに対し,浮上速度を減速調整するため,BCジャケット(浮力調整用の内部が浮袋状になっているボイヤンシー・コントロール・ジャケットの略称)から空気を抜くよう指示した。 しかし,両名ともうまく対処できない様子であったので,被告Cは,両名のインフレーター(BCジャケットの空気を抜く装置)を,k,Eの順に操作した。 b そのころ から空気を抜くよう指示した。 しかし,両名ともうまく対処できない様子であったので,被告Cは,両名のインフレーター(BCジャケットの空気を抜く装置)を,k,Eの順に操作した。 b そのころ,本件現場付近に接近中であった○ロ号のIは,同じダイビングボートの○イのHから,「もう上がる時間だよ。」と無線で連絡され,ダイバーの浮上が近いことを知りながら,その気泡に十分な注意を払わないまま,漫然と行足(スクリューを停止後,慣性で進行している状態)で,本件現場付近に進入した。 c 被告Cは,頭上4ないし5メートルの位置に○ロ号の船底があることに気付き,直ちに,Eとkを引っ張りながら,衝突を回避しようとしたが,間に合わず船底と接触した。その際,同人らの空気タンクが,○ロ号の船底に接触し,物音が発生した。さらに,被告Cは,空気タンクで船底を叩いて人がいることをIに知らせたうえ,Eらと○ロ号の横に移動し,海面に浮上しようとしたが,Iは,これに気付かず,○ロ号のスクリューを回転させたため,本件事故が発生した。 (エ) 被告Cは,頭を上げた目視によって,その位置から海面全体を十分に確認したうえで浮上を開始した。この時点では,海面に船影はなく,また,船舶のスクリュー音やエンジン音も聞こえなかった。海上では,ダイバーの放出した気泡に注意を払うことが期待できたから,先行して浮上するまでの必要はなく,むしろ,Eらと離れることによる危険も想定され,同時に浮上しようとした被告Cの行動には何らの問題もなかった。 また,本件事故当時の本件現場の透明度や透視度,○ロ号の進入速度等によれば,○ロ号の位置が視認可能になってから,被告Cらと衝突するまで長くとも37.2秒しかなかったと推測されるところ,海中ではダイバーの行動や意思疎通が制約され 透明度や透視度,○ロ号の進入速度等によれば,○ロ号の位置が視認可能になってから,被告Cらと衝突するまで長くとも37.2秒しかなかったと推測されるところ,海中ではダイバーの行動や意思疎通が制約されていること,Eらが混乱を来すおそれがあったことなどに照らすと,この時間内に,被告Cが,○ロ号との接触を回避する措置を取ることは不可能であった。 (オ) 被告Cは,浮上に先立ち気泡を放出し,海上の船舶に浮上を合図した。本件現場付近はダイビングスポットであり,海上には○イが待機して,Hが監視しており,ダイバーが放出する気泡への注意も期待できたから,さらに,フロートを使用するまでの必要はなかった。なお,フロートは,水深4ないし5メートルで使用するのが適当であるが,このとき,被告Cは,(ウ)aのとおり,kとEの浮上速度を調整していたから,フロートの使用は不可能であった。仮にフロートを使用していたとしても,Iの死角部分に浮上することもあり得るし,本件事故は,Iが海面を注視していなかったことにより発生していることに照らすと,Iがフロートに気付いたとは考えられず,被告Cが,本件事故を回避することは不可能であった。 (カ) 本件事故は,ダイバーが放出する気泡に注意を払わないまま,漫然と○ロ号を行足で本件現場に進入させ,さらに,被告Cらの空気タンクの接触による船底の音にも気付かず,スクリューを回転させたIの無謀な操船によるものであり,その責任も専らIにある。また,見張り役として海上を監視中であったHが,Iに警告を発するなど適切な措置を取らなかったことも,本件事故の一因となっている。仮に,被告Cに何らかの注意義務違反があったとしても,本件事故は,このようなIやHの重大な過失によるものであったから,被告Cの注意義務違反と本件事故との間には相当因果関 本件事故の一因となっている。仮に,被告Cに何らかの注意義務違反があったとしても,本件事故は,このようなIやHの重大な過失によるものであったから,被告Cの注意義務違反と本件事故との間には相当因果関係がないというべきである。 (2) 争点(2)ア(被告会社の使用者責任)についてア原告らの主張(ア) 被告会社の従業員である被告Cは,被告会社の職務として,本件ツアーの参加者を引率中,(1)アで主張したとおり,その過失によって本件事故を発生させ,Eを死亡させた。 (イ) 被告会社は,被告Cの使用者として,本件事故に基づく原告らの損害を賠償する責任がある。 イ被告らの主張(1)イで主張したとおり,本件事故は,Iの無謀な操船や,Hの監視義務の懈怠によるものであり,被告Cには何らの過失も認められないから,被告会社にも使用者責任が発生する余地はない。 (3) 争点(2)イ(被告会社の債務不履行責任)についてア原告らの主張(ア) 被告会社は,潜在的な危険を伴うダイビングツアーを主催し,参加者から参加料を得て,参加者を引率するサービスを提供していた。他方,Eは,指導員が同行するダイビングの経験しかなく,その知識や技術は,未熟な初心者の域にとどまっていたから,指導員の指示や援助がなければ,安全にダイビングをする技能を有していなかった。 (イ) 被告会社は,初心者をも対象とした本件ツアーを主催していたのであり,指導員やガイドの適切な指示,援助がなければ,初心者であるEは,安全なダイビングをすることが困難であるばかりでなく,危難に即応した適切な措置を講ずることができなかったのであるから,信義則上,本件契約に付随する義務として,Eの安全に配慮すべき義務を負っていた。 (ウ) 被告 ることが困難であるばかりでなく,危難に即応した適切な措置を講ずることができなかったのであるから,信義則上,本件契約に付随する義務として,Eの安全に配慮すべき義務を負っていた。 (ウ) 被告会社の従業員である被告Cは,被告会社の履行補助者として,本件ツアーに参加したEらを引率していたところ,(1)アで主張したとおりの過失により,本件事故を発生させたから,被告会社には,本件契約に付随する安全配慮義務の不履行があったというべきである。 イ被告らの主張(ア) 本件ツアーは,ファンダイビングを目的とするものであり,被告Cの役割も,指導員ではなく,ガイドにすぎなかった。 (イ) スキューバダイビングにおいて,ダイバーは,自らその安全を確保すべき責任があるところ,Eは,Cカードを取得したオープンウォーターダイバーであり,特別なダイビングを除き,指導員が同行しなくても,自己の責任で日本国内はもちろん,海外でも自由に潜水できる技能を有していた。本件ツアーの参加者は,自己の責任で潜水できる資格を有していることが参加の要件とされており,自らその安全を確保できることを前提としていた。 (ウ) 以上のとおり,本件契約における被告会社の義務は,自らその安全を確保できる技能を有する参加者を,水中散歩や海洋生物を見て楽しめる場所に案内することにとどまるものであり,Eもダイビング中の安全を自ら確保できる技能を有していたことからすれば,被告会社には,Eの安全に配慮すべき義務はなかったというべきである。 (エ) 仮に,Eの安全に配慮する何らかの義務が被告会社にあったとしても,被告Cは,(1)イで主張したとおり,必要とされる安全確保のための注意義務を尽くしており,本件事故は,I及びHの重大な過失によって発生したのであり,被告Cが 何らかの義務が被告会社にあったとしても,被告Cは,(1)イで主張したとおり,必要とされる安全確保のための注意義務を尽くしており,本件事故は,I及びHの重大な過失によって発生したのであり,被告Cが本件事故の発生を回避することは不可能であったから,被告会社にも,安全配慮義務の不履行はないというべきである。 (4) 争点(3)(原告らの損害)についてア原告らの主張(ア) Eの損害a 逸失利益 6546万9645円Eは,Lの名でダンサーや振付師として活動し,プロダクション会社や,ダンス教室の運営によるレッスン料等の収入は,少なくとも合計729万4855円を下回るものではなかった。したがって,これをもとに,中間利息をライプニッツ係数(21年に相当する12.8211)により控除し,また,生活費として3割を控除して,Eの逸失利益を算定すると,6546万9645円となる。 b 慰謝料 2200万0000円本件事故によるEの重大な傷害や恐怖心等を考慮すると,その精神的な苦痛を慰謝するには,2200万円の支払が相当である。 (イ) 原告Aの損害葬儀費用 175万3200円Eが生前,ダンス教室を主催しており,多くの受講生と交流していたこと,本件事故が突然かつ衝撃的な事故として広く報道されたことから,その葬儀は,相応の規模となったのであり,実際の支出額全額について相当因果関係がある。 (ウ) 原告ら各自の損害a 慰謝料各1000万円原告らは,本件事故によるEの死亡により著しい精神的 相当因果関係がある。 (ウ) 原告ら各自の損害a 慰謝料各1000万円原告らは,本件事故によるEの死亡により著しい精神的苦痛を受け,また,被告らは,被害弁償の申出もせず,誠実に対応しなかった。この精神的苦痛を慰謝するには,原告らに対し各1000万円の支払が相当である。 b 弁護士費用各500万円(エ) 以上によれば,本件事故による原告らの損害は,原告Aが6048万8023円,原告Bが5873万4822円となる。 イ被告らの主張(ア) 損害に関する原告らの主張は争う。 (イ) Eは,振付師であり,確定申告も毎年していなかったことからすると,その収入は安定的なものではなく,逸失利益の算定に当たり,原告ら主張の年収額を基礎とするのは相当でない。 (ウ) Eは,生前,Yと名乗り,母子家庭と自ら称していたのであり,原告Aとは不仲で別居していた。したがって,逸失利益の算定に当たっては,生活費の控除率を4割とするのが相当であり,慰謝料の算定に当たっても,これを考慮すべきである。 (エ) 被告らは,法的責任がないから被害弁償を申し出ていないが,被告会社としては,Eの通夜や告別式にも出席し,現地においても,四十九日や年忌の法要を催しており,また,行方不明となっていたEの左腕を,海上保安庁の捜索打切り後に発見するなど,本件事故について誠実に対応している。 (オ) 原告Aは,本件事故に基づく傷害保険金1000万円を既に受領しており,慰謝料の算定に当たっては,500万円程度を減額すべきである。 (5) 争点(4)(過失相殺)についてア被告らの主張被告C 故に基づく傷害保険金1000万円を既に受領しており,慰謝料の算定に当たっては,500万円程度を減額すべきである。 (5) 争点(4)(過失相殺)についてア被告らの主張被告Cに何らかの過失があったとしても,Eもある程度のダイビング技能を有しており,海上の目視等により,単独で本件事故を回避することが可能であった。浮上の際に,目視等により海上の船舶の有無を確認し,自らその安全を確保すべき責任があることは,スキューバダイビングにおける基本的なルールであって,その遵守を他人に委ねることは許されない。したがって,原告らの損害の算定に当たっては,少なくとも8割の過失相殺をするのが相当である。 イ原告らの主張Eは,ダイビングの初心者にすぎず,引率者の指示や援助が不可欠であったところ,被告会社は,このような初心者でも安全であると宣伝して,本件ツアーを主催していた。本件事故は,(1)アのとおり,被告Cが浮上時の安全確保を怠った重大な過失によって発生したのであるから,本件事故に関し,Eに過失があったとするのは相当でない。 第3 争点に対する判断 1 前記第2の2の争いのない事実等(2)ないし(8)に加え,証拠(甲第4,第9,第11号証,第14ないし第16号証,第17号証の1ないし3,第19,第20号証,第21号証の1,2,第22ないし第38号証,第43ないし第45号証,第46号証の1ないし3,第47号証の1,2,第48号証,第49号証の1ないし7,乙第1,第2号証,第4ないし第6号証,第11号証の1,2,丙第1号証,第3号証の1,2,第4号証,第5号証の1,2,第6号証,証人kの証言,被告C及びHの各本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 本件現場付近は,ダイビングスポ 証の1,2,第4号証,第5号証の1,2,第6号証,証人kの証言,被告C及びHの各本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 本件現場付近は,ダイビングスポットとして知られていたものの,潮流の関係で,ダイビングに適する海域は必ずしも広くはなかった。そのため,風波,潮流の状態により,ダイバーやダイビングボートが集中しがちで,週末などには,ダイビングボートが3,4隻,ダイバーが約50人も集まることがあった。また,本件現場付近の周辺海域では,瀬渡船やプレジャーボートも航行することがあった。 (2) Hは,漁業を営む傍ら,昭和40年ころから,被告会社などダイビングツアー主催者の依頼を受けて,ダイバーの送迎を行うようになり,bダイビング組合に加入していた。 (3) Iは,ダイビングツアー主催者の依頼を受け,ダイバーを○ロ号でダイビングスポットに送迎するボートダイビングを業としており,bダイビング組合にも加入していた。 (4)ア被告会社が主催するロイズダイビングスクールでは,学科講習6回(1回3時間),プール練習最低5回(1回3時間),海洋実習4日間のカリキュラムで,NASDS発行のCカードを取得するコースを運営していた。 イ被告Cは,平成元年ころから被告会社に勤務し,本件ツアーに同行した被告会社の従業員の中では,最もダイビング歴が長く,引率者の中心的な役割を務めていた。また,被告Cは,b周辺において,約500本のダイビング歴があった。 ウ Fは,ダイビング団体であるCMASから,Gは,NASDSからそれぞれインストラクターの資格を認定されており,本件ツアーでは,被告Cのアシスタントの役割を務めていた。 (5)ア kは,平成9年3月ころからダイビングを始め,被告会社のダイビングス SDSからそれぞれインストラクターの資格を認定されており,本件ツアーでは,被告Cのアシスタントの役割を務めていた。 (5)ア kは,平成9年3月ころからダイビングを始め,被告会社のダイビングスクールで受講して,同年6月ころ,Cカードを取得し,本件事故当時までに十数本のダイビング歴を有していたが,技能が不十分なものであることを自覚し,ダイビングの際は,被告会社の従業員の指示に従っていた。 イ Jは,平成9年8月ころから,被告会社のダイビングスクールで受講して,同年9月22日,Cカードを取得し,本件ツアーは,オープンウォーターダイバーとなって初のダイビングであった。 (6)ア本件ツアーは,オープンウォーターダイバーを対象とするファンダイビングを目的とし,平成9年10月18日及び19日に,それぞれタンク2本分のダイビングを予定していた。 イ被告Cらは,平成9年10月19日の朝食後,Hが経営する民宿において,本件ツアーの参加者に対し,一般的な注意事項を伝達し,本件現場付近の状況,潜水時間,ダイバーのグループ分け,エントリー位置で浮上することなどが打ち合わされた。そして,参加者のうちダイビング歴が比較的長い5人をGが引率し,経験の乏しいEら5人を被告CとFが引率することとなった。 (7) 平成9年10月19日午前9時ころから午前11時ころまでの本件現場付近の気象状況は,晴れで,東北東の風(風速6メートル程度),波もあまりなく,潮流は緩やかであった。また,水中の透明度(上下方向の視認可能距離)は十数メートル,透視度(水平方向の視認可能距離)は8ないし10メートルで,いずれも良好であった。 (8)ア ○イは,平成9年10月19日午前9時45分ころから,本件現場付近で,ダイバーをエントリーさせた。 イ被告CとFは, 可能距離)は8ないし10メートルで,いずれも良好であった。 (8)ア ○イは,平成9年10月19日午前9時45分ころから,本件現場付近で,ダイバーをエントリーさせた。 イ被告CとFは,Gが引率するグループと分かれた後,多人数による混乱を防止するため,被告Cが引率するEらのグループとFが引率するグループに分かれたが,グループ間の距離が離れないよう行動していた。 (9) Hは,平成9年10月19日午前10時ころ,エントリーしたダイバーが2グループに分かれたことを,ダイバーの放出する気泡(ダイバーが海面下で放出した気泡は,海中から細かくなって,きのこ状に浮き出てくるので,船舶の航行,波等で生じた泡と区別することができる。)で確認し,エントリーの際に使用したブイを回収後,○イを北西方向に移動させて本件現場を離れ,船首の見張り台で気泡を監視していた。 (10) ○ロ号は,平成9年10月19日午前10時05分ころ,本件現場付近の海域に到着し,ダイバーがエントリーの準備をするため一旦停船した。その際,Iは,○イを見かけて,無線で○イのダイバーの状況を尋ねたところ,Hが「もうじき上がるよ。」と浮上が近いことを伝えた。これに対し,Iは「了解した。」と返事したが,それ以上に,ダイバーやグループの数,潜水場所等については具体的に質問せず,その後も,HとIの間で無線等での連絡はされなかった。 (11) その後,Iは,ダイバーをエントリーさせるために進もうとしていた海域2か所にダイバーの気泡を目撃した。そこで,Iは,その後約6分間,○ロ号を停船させていたが,その間,風の影響により○ロ号が南西方向に流されたこともあり,先刻目撃した気泡をいずれも見失ってしまった。しかし,Iは,進行予定の方向にダイバーの気泡が見当たらなかったことから,自船のダ ていたが,その間,風の影響により○ロ号が南西方向に流されたこともあり,先刻目撃した気泡をいずれも見失ってしまった。しかし,Iは,進行予定の方向にダイバーの気泡が見当たらなかったことから,自船のダイバーが準備を完了した後,本件現場の方向に向けて航行を再開した。 Iは,ロ号が本件現場に到達する数秒前に,左舷側の約38メートル先に気泡を認めた。そして,Iは,その直後,クラッチを中立にし,スクリューの回転を停止させるとともに,左に約90度旋回させ,さらに,クラッチを後進に入れて,本件現場付近で○ロ号を停船させた。 (12) ○ロ号がほぼ停船した後,Iの合図によりダイバーがエントリーし,この間,Iは,操舵室の右舷側ドア付近からその様子を見ていたが,○ロ号の右舷船首の横約5メートル付近と,船首方向約5メートル付近にあったCグループとFグループが放出している気泡に気付かなかった。 他方,Hは,○ロ号の周辺に出ていた上記気泡に気付いていたものの,Iも当然認識しているものと考え,Iに対して連絡,警告等の措置は取らなかった。その後,Hは,本件事故の発生まで,○ロ号及びIの動静を見ていたものの,○ロ号のダイバーのエントリーに気を取られているうちに,上記の気泡を見失ってしまった。 (13) 被告Cは,水深16.8メートル付近から浮上を開始する直前に,一旦近づき,その後,遠ざかっていくスクリュー音を耳にしたものの,その方角までは認識できなかった。そこで,被告Cは,Eらに合図して,水深14.6メートル付近まで一旦浮上した。また,被告Cから5ないし7メートル離れた位置でダイビング中であったFも,そのころ,海上を目視したが,船影は見当たらず,Cグループに続いて,浮上を開始した。 (14) 被告Cは,水深14.6メートル付近で,頭を上 し7メートル離れた位置でダイビング中であったFも,そのころ,海上を目視したが,船影は見当たらず,Cグループに続いて,浮上を開始した。 (14) 被告Cは,水深14.6メートル付近で,頭を上げて前方の海面を目視し,また,追従しているEらを確認する際に後ろを振り返りながら後方の海面を目視し,さらに,仰向け様に頭を上げて頭上の海面を目視したものの,頭を左右前後に振って,より広い範囲を目視することまではしなかった。 そして,被告Cは,海上の船舶に対する浮上の合図として,大量の気泡を放出し,その後,Eらに指を突き上げる合図をして,浮上を再開した。被告Cに追従して,Eとkも浮上を開始したが,Jは,浮上の合図に気付かなかった。そのため,被告Cは,Jの位置まで潜行して一緒に浮上し,Eとkに追いついた。 (15) Fグループは,Cグループに続いて浮上を開始したが,水深9ないし10メートル付近で一旦停止した。その際,Fは,○ロ号の船底を目撃し,また,そのスクリュー音を耳にした。 (16) 被告Cは,Eらより上方の位置で先導していたが,途中,kの浮上速度が速すぎると判断し,減速調整するためBCジャケットから空気を抜くようkに指示した。一方,Eも,被告Cを追い越すような速度で浮上しつつあり,被告Cは,Eにも同様に空気を抜くよう指示した。しかし,両名ともうまく対処できない様子であったので,被告Cは,まずkを引き寄せて,そのインフレーターを操作した。 (17) そのころ,Iは,エントリーが終了した自船のダイバーの緊急浮上に備えて,右舷船尾でハシゴを下ろせるように準備し,その後,右舷甲板から操舵室に戻った。Iは,右舷甲板を通る際,船首の約6メートル先にダイバーの気泡を認めたが,この気泡は,○ロ号が行足で前進していたため,次第に後方へ でハシゴを下ろせるように準備し,その後,右舷甲板から操舵室に戻った。Iは,右舷甲板を通る際,船首の約6メートル先にダイバーの気泡を認めたが,この気泡は,○ロ号が行足で前進していたため,次第に後方へ遠ざかっていった。 そして,Iは,他のダイバーの気泡の有無を十分に確認しないまま,スクリューを回転させても大丈夫と判断し,クラッチを前進にして,左旋回をしながら速度を上げようとした。 (18) 被告Cは,水深約4ないし5メートルの位置で,○ロ号の船底を発見し,Eらに上方への注意を喚起するとともに,直ちに,Eのインフレーターを操作し,Eとkの体を引っ張り,衝突を回避しようとしたが,結局間に合わず,右舷側船首近くの船底に接触した。前記(14)の被告Cらが浮上を再開してから○ロ号の船底に接触するまでに約5分間が経過していた。なお,それまで,被告Cは,○ロ号の接近によるエンジン音やスクリュー音等の気配を全く感じていなかった。 (19)ア被告Cは,Eとkが船底に衝突するのを回避するため,自ら逆立ちの姿勢になり,○ロ号の船底に足をつけ,両名を押し下げようとした。この際,被告CやEらの空気タンクと○ロ号の船底との接触音が発生した。さらに,被告Cは,船底部付近に人がいることを知らせようとして,空気タンクで船底を2回叩いたが,Iは,この音にも気付かなかった。 イその後,被告Cは,○ロ号の横に移動するため,Eとkの体をつかんで前に押し出そうとした。そのとき,Iが,○ロ号を旋回させながら,スクリューを回転させたことにより生じた強い水流のため,Eは船尾方向に流された。そして,○ロ号のスクリューが迫ってきたため,被告Cは,kを抱きかかえたまま,船底を蹴って離脱し,海面に浮上後,Iに対して停船するよう求めた。 (20) Iは,クラッチを前 は船尾方向に流された。そして,○ロ号のスクリューが迫ってきたため,被告Cは,kを抱きかかえたまま,船底を蹴って離脱し,海面に浮上後,Iに対して停船するよう求めた。 (20) Iは,クラッチを前進に入れて約10秒後,スクリュー付近から不審な物音と振動が伝わったことから,ダイバーをスクリューに巻き込んだことに気付き,直ぐにクラッチを中立にしたが,○ロ号は,しばらく行足で進行した後,停船した。 (21) その後,本件現場に駆けつけた船舶により,Eの遺体が発見され,さらに,平成9年10月24日ころ,付近の海上で,切断されたEの左腕部が発見された。 2 争点(1)(被告Cの不法行為責任)について(1) ツアー引率者としての責任アスキューバダイビングは,水中で空気を補給する装置を利用して遊泳等を行うスポーツであるが,水中では,地上に比べて,行動や意思の疎通,認識等に強い制約があり,何らかの事故が生じた場合,直ちに生命や身体の危険につながる虞れがあるということができる。したがって,ダイバーは,その危険性を自覚し,これに対処できるだけの技能を身に付けることが求められるのは当然であるが,他方,ダイビングツアーを主催する側は,一般のダイバーよりもさらにその危険性を認識しているべきであって,計画を立案し,参加者を募集するに当たっても,十分にその対応措置を検討しておく必要があるというべきである。また,一応の技量を身につけたダイバーが参加していたとしても,その技能や経験には当然ばらつきがあり,これに応じて,危険への対処能力が異なることからすれば,全てのダイバーが安全に参加できるよう配慮した計画の立案,実行が求められるというべきである。そして,被告Cは,本件ツアーの主催者である被告会社の従業員として,Eらツアー参加者を引率していたので ば,全てのダイバーが安全に参加できるよう配慮した計画の立案,実行が求められるというべきである。そして,被告Cは,本件ツアーの主催者である被告会社の従業員として,Eらツアー参加者を引率していたのであるから,これらの参加者が安全にダイビングをすることができるように配慮する義務を負っていたものと判断するのが相当である。 特に,前記第2の2の争いのない事実等(3)に加え,前記1(4),(5)で認定したとおり,Eを含むツアー参加者は,いずれもCカードを取得し,ダイビングの基本的な技能は身に付けていたものの,Eは,本件事故が発生する直前も,被告Cの助力を受けて浮上速度を調整していたことからも明らかなように,初級者に近い技能を有していたにすぎないと認めるのが相当である。そして,Eは,被告会社の講習を受けてCカードを取得しており,同人の経験が乏しいものであることは,被告会社や被告Cも十分認識していたものというべきである。他方,被告Cは,ダイビングについての技能経験を有する専門家として本件ツアーに同行し,その参加者からも指導や援助が期待されて,これを引率していたことも明らかである。 そうすると,被告Cは,技能の不十分な者が本件ツアーに参加していることを認識し,本件ツアーを主催する被告会社の従業員として,参加者を引率する立場にあったのであるから,ダイビング中に参加者の生命や身体へ危険が及ばないようその安全を確保する義務を負っていたものというべきである。 そして,このことは,被告Cの役割が指導員であったかガイドであったかによって異なるものではないと考えるのが相当である。 イこれに対し,被告らは,本件ツアーが,既にダイビングの技能を有しているオープンウォーターダイバーを対象としたファンダイビングを目的とするものであり,被告Cは,ガイド(案 と考えるのが相当である。 イこれに対し,被告らは,本件ツアーが,既にダイビングの技能を有しているオープンウォーターダイバーを対象としたファンダイビングを目的とするものであり,被告Cは,ガイド(案内役)にすぎないから,Eの安全を確保すべき義務を負わないと主張し,Fの供述調書(甲第44号証)及び被告C作成の陳述書(乙第4号証)中には,被告らは,ツアー参加者に対し,事前にダイビング中の安全を自らの責任で確保すべきものであることを説明し,参加者の了解を得ていたとの趣旨の記載部分がある。 しかしながら,本件ツアーが,既に一定のダイビング技能を有しているオープンウォーターダイバーを対象としたファンダイビングを目的とするものであり,被告Cが,そのガイドにすぎなかったとしても,前記のようなダイビングの危険性に照らすと,主催者である被告会社やその引率者であった被告Cが,参加者の安全を確保すべき義務を免れるものとはいえないと考えるべきであるし,また,参加者に対して被告らが主張するような説明をしていたとしても,それだけで直ちに,被告らが,参加者に対する安全を確保する義務を免れるものとはいえず,参加者の技能の程度は,被告Cの具体的な注意義務の内容程度を確定する際に考慮すべき事情にとどまると判断するのが相当であるから,被告らの主張を採用することはできない。 (2) そこで次に,被告Cの具体的な過失の有無について検討する。 ア前記第2の2の争いのない事実等に加え,前記1で認定した事実によれば,ダイバーが浮上する海域に船舶がいた場合,船舶との衝突やスクリューの回転に巻き込まれることによって,ダイバーの生命や身体に重大な危険が生ずるおそれがあること,本件現場付近は,ボートダイビングが盛んで,時にはダイビングボートが集中し,瀬渡船やプレジャーボートも近く 回転に巻き込まれることによって,ダイバーの生命や身体に重大な危険が生ずるおそれがあること,本件現場付近は,ボートダイビングが盛んで,時にはダイビングボートが集中し,瀬渡船やプレジャーボートも近くを航行することがあり,浮上予定の海面に船舶がいる可能性は相当高度であったこと,被告会社は,本件現場において,ボートダイビングのツアーを度々企画し,被告Cもこれにしばしば参加して,本件現場付近の状況を十分に認識していたことが明らかであり,これらを前提とすると,浮上しようとするダイバーは,海上の船舶に浮上を知らせる合図をすること,浮上開始前や浮上中に,目視やスクリュー音,エンジン音により船舶の接近の有無を確認することが不可欠であり,本件ツアーの引率者である被告Cは,これらの措置を率先して取る必要があったというべきである。 イそして,前記1で認定した事実によれば,被告Cは,水深14.6メートル付近で海上を目視し,船影がないことを確認してはいたものの,その位置から海面に到達するまでさらに約5分間程度の時間を要し,この間にも船舶が浮上予定の海域に接近する可能性を否定できなかったのであるから,その後も継続して海上の状況に注意する必要があったにもかかわらず,Eやkに対する浮上速度の調整に気を取られ,海上の目視が不十分になったものというべきであり,特に,安全に浮上するためには海上の船舶の有無や動静を水深3ないし5メートルのところで一旦停止して確認するのが相当と考えられる(前記第2の2の争いのない事実等(10)ないし(12)参照)ところ,本件においては,Eらだけでなく,被告C自身も十分に停止しておらず,この際,被告Cが,同行者全員を一旦停止させて,十分な目視をした上で浮上する行動を取っていれば,○ロ号の接近をより早く察知し,接触の危険を回避するため だけでなく,被告C自身も十分に停止しておらず,この際,被告Cが,同行者全員を一旦停止させて,十分な目視をした上で浮上する行動を取っていれば,○ロ号の接近をより早く察知し,接触の危険を回避するための措置を取り得た可能性があるというべきである。そして,このことは,被告Cが平成11年3月11日に,d海上保安部において,「水深5メートルのところで,一旦停止し,海面の安全を確認することさえ行っていれば,その位置で,○ロ号を発見することができたし,当然発見していれば,その位置から私たちは余裕をもって○ロ号を避けることができたので,事故は発生しなかったと思います。」と供述していることからも明らかというべきである(甲第47号証の1)。 また,ダイバーの気泡による合図だけに頼るよりも,フロートによる合図もする方が,海上の船舶にダイバーの浮上を確実に認識させられる可能性が高いことは明らかであるから,本件においても,被告Cがフロートによる海上への合図を試みていれば,Iがこれを認識し,スクリューを回転させることを回避できた蓋然性が高いものというべきであるところ,そもそも,被告Cは,フロートを携行しておらず,気泡による合図だけで足りるものと軽信していたのであって,ダイビングの初級者が参加しているツアーの引率者として十分な注意義務を尽くしていたとは到底認められないというべきである。 ウこの点について,被告らは,見張り役のHから被告Cらがダイビング中であることを告げられ,被告Cらも大量の気泡を放出していたにもかかわらず,Iがこれに十分な注意を払わなかったことが本件事故の原因であると主張する。 確かに,前記1で認定した事実によれば,Iは,Hから無線連絡を受けていながら,被告Cらが放出した気泡に十分な注意を払っておらず,そのことが本件事故の発生につな ことが本件事故の原因であると主張する。 確かに,前記1で認定した事実によれば,Iは,Hから無線連絡を受けていながら,被告Cらが放出した気泡に十分な注意を払っておらず,そのことが本件事故の発生につながったことは被告らの指摘するとおりであり,その意味で,Iに過失があったことは明らかである。また,見張り役として海上を監視中であったHが,Iに警告を発するなど適切な措置を取らなかったことも,本件事故の一因となっていることも被告らが指摘するとおりである。 しかしながら,ダイバーが放出した気泡を,自然現象と区別することは可能であるものの,フロートやブイ等と比較すると,海上では目立ちにくく確実性の点で劣っているうえ,本件現場に接近する船舶全部が万全の監視体制(複数又は専任の監視者の配置等)を敷いて,これを実行しているとは限らず,不注意,死角,気象状況等により,見張り役及び接近中の船舶が気泡を見逃したり,見失う危険があることは否定できないところである。また,前記1で認定した事実に加え,証拠(丙第6号証,H本人尋問の結果)によれば,被告らは,Hに対して,本件現場への他船の進入を禁止させる措置を徹底していなかったことが明らかであり,被告Cが,Hの監視だけに期待して,全幅の信頼を置ける状況にあったとは到底いうことができない。現に,証拠(乙第4,第5号証)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社では,海上にいる船舶が,ダイバーの浮上時刻をある程度予測できる見張りに従事中のダイビングボートであったとしても,事故の発生を回避するため,ダイビングボートの移動を待つか,離れた位置に浮上する方法を取っていたことが認められる。 以上の認定判断によれば,被告Cらが浮上の合図として気泡を放出していたことに加え,Iも,Hとの無線での交信を受けてダイバーからの気泡に注 れた位置に浮上する方法を取っていたことが認められる。 以上の認定判断によれば,被告Cらが浮上の合図として気泡を放出していたことに加え,Iも,Hとの無線での交信を受けてダイバーからの気泡に注意を払うべきであり,本件事故はIの無謀な操船が大きな原因となったこと,Hが見張り役として海上で監視していたことを考慮しても,本件において,被告Cが注意義務を尽くしており,被告Cにとって,本件事故は不可抗力によって発生したとまではいうことができないと判断するのが相当である。 エなお,Eは,一応のダイビング技能を有しており,海面の目視も不可能ではなかったと認められるものの,浮上中は,速度の調整に気を取られ,目視が疎かになりやすいと考えられるから,被告Cは,この点も考慮すべきであったうえ,Eの引率者であり,浮上中もEを先導していたのであるから,Eが一応の技能を有していたとしても,被告Cが,海上の安全を十分に確認すべき注意義務を免れるとすることはできない。 (3) 以上によれば,本件事故は,IやHの過失にとどまらず,被告Cの過失も相まって発生したものと判断するのが相当であるから,被告Cは,本件事故によりEが死亡したことについて,不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 3 争点(2)ア(被告会社の使用者責任)について被告会社の従業員である被告Cは,被告会社の職務として,本件ツアーに参加したEを引率中,2で認定判断したとおり,その過失によって本件事故を発生させ,Eを死亡させたのであるから,被告会社は,被告Cの使用者として,本件事故に基づく原告らの損害を賠償する責任があるというべきである。 4 争点(3)(原告らの損害)について(1) 逸失利益ア Eが,平成8年3月15日,e税務署に対して提出した平成7年度 事故に基づく原告らの損害を賠償する責任があるというべきである。 4 争点(3)(原告らの損害)について(1) 逸失利益ア Eが,平成8年3月15日,e税務署に対して提出した平成7年度分の所得税確定申告書(甲第6号証)には,次の記載がある。 (ア) 収入合計 268万5555円a プロダクション会社3社からの出演料合計263万5555円bf教育委員会主催のダンス教室講師報酬 5万0000円(イ) 経費 205万6600円(ウ) 所得金額((ア)と(イ)の差額) 62万8955円イところで,証拠(甲第1,第2,第6,第7,第10号証,原告Aの本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,Lの名でダンサーや振付師として,舞台公演やテレビ番組などの振付けを担当し,プロダクション会社から出演料を得るとともに,自己が運営するダンス教室の生徒からレッスン料を得ており,申告外の収入もあったことが認められることに照らすと,前記の所得額は,実際の所得をそのまま反映しているものとは考えられず,Eは,本件事故当時,これを超える収入を得ていたと考えるのが相当である。 しかしながら,本件全証拠によっても,本件事故当時のEの所得額を的確に認定することはできない。なお,甲第7号証には,Eがレッスン料として,平成8年10月から平成9年9月までに574万9300円の収入を得ていたとの記載もあるが,証拠(原告Aの本人尋問の結果)によれば,甲第7号証は,本件訴訟の提起後に作成されたものであり,Eが生前,ダンス教室を運営していた際に作成されたメモ,帳簿等ではないことが明らかであるから,この記載内 拠(原告Aの本人尋問の結果)によれば,甲第7号証は,本件訴訟の提起後に作成されたものであり,Eが生前,ダンス教室を運営していた際に作成されたメモ,帳簿等ではないことが明らかであるから,この記載内容を直ちに採用することはできない。 ウそこで検討するに,①Eは,ある程度の実績を有するダンサーや振付師であったこと,②Eは,平成7年度に少なくともプロダクション会社等から268万5555円の収入を得ていたこと,③Eは,プロダクション会社からの収入のほか,自ら運営するダンス教室の生徒からのレッスン料を得ていたことを総合すると,本件事故当時のEの年収は,同年齢の全女子労働者の平均賃金である367万2400円(平成9年の賃金センサス)を下回るものではないと推認するのが相当である。 エ次に,Eの生活費の控除率については,証拠(原告Aの本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,本件事故当時,原告らと生計をともにしていたことが認められるから,逸失利益の算定に当たっては,その3割を生活費として控除するのが相当である。 なお,被告らは,Eと原告Aとは不仲で別居中であったと主張する。確かに,証拠(甲第9号証,第43ないし第45号証,第46号証の1ないし3,第47号証の1,乙第4号証,丙第6号証)によれば,Eが,本件ツアー中,旧姓であるY姓を名乗っていたこと,母子家庭とか,夫と別れているなどと自ら発言していたことが認められるものの,他方,前記のとおり,Eは,仕事上でもY姓を使用していたのであるから,旧姓を使用していたことが,直ちに原告Aとの不仲を示すものとはいえないし,また,証拠(甲第10,第50号証,原告Aの本人尋問の結果)によれば,原告Aだけでなく,Eの実弟であるMも,夫婦仲は良好であったとしていることに照らすと,Eと原告Aとの 仲を示すものとはいえないし,また,証拠(甲第10,第50号証,原告Aの本人尋問の結果)によれば,原告Aだけでなく,Eの実弟であるMも,夫婦仲は良好であったとしていることに照らすと,Eと原告Aとの夫婦関係が損害賠償額の算定に影響を与えるほどの破綻状態にあったとは考えることができない。 そして,他に,被告らの上記主張を認めるに足りる証拠はない。 オ以上によれば,年収367万2400円から生活費として3割を控除した額に,Eの死亡時の年齢46歳から稼動可能期間である67歳までの21年間に対応するライプニッツ係数12.8211を乗じて中間利息を控除した3295万8945円をもって,Eの逸失利益と認めるのが相当であり,原告らは,その2分の1である1647万9472円(1円未満切捨て)ずつを相続したことになる。 (2) 葬儀費用証拠(甲第5号証の1ないし3,第10号証)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件事故によるEの死亡に伴い,夫として葬儀を執り行い,その費用として合計175万3200円の支払を余儀なくされたことが認められるところ,これらのうち120万円の支払は,E及び原告らの社会的地位その他諸般の事情に照らし,社会通念上相当な範囲内の葬儀費用と考えるべきであるから,本件事故と相当因果関係がある原告Aの損害とするのが相当である。 (3) Eの慰謝料本件事故の経緯態様とその結果,Eの家族状況その他本件訴訟に現れた事情を総合すると,Eの精神的苦痛を慰謝するには1500万円の支払が相当であり,原告らは,その2分の1である750万円ずつを相続したことになる。 (4) 原告ら各自の慰謝料証拠(原告Aの本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故により,原告Aはその妻を,原告Bはその母を突然失い,また,事故の態様も 続したことになる。 (4) 原告ら各自の慰謝料証拠(原告Aの本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故により,原告Aはその妻を,原告Bはその母を突然失い,また,事故の態様も極めて無惨なものであり,その精神的苦痛は甚大なものであることが認められるところ,これらの原告らの精神的苦痛を慰謝するためには,各250万円(合計500万円)の支払が相当である。 なお,被告らは,原告Aが,傷害保険金1000万円を受領したことにより,慰謝料額を500万円程度減額すべきであると主張するが,傷害保険金は,本件事故による損害賠償金とはその法的性質が異なるものであるから,被告らの主張を採用することはできない。 (5) 以上によれば,原告らの弁護士費用を除く損害額は,原告Aが2767万9472円,原告Bが2647万9472円(いずれも1円未満切捨て)となる。 5 争点(4)(過失相殺)について(1) 前記の認定判断によれば,Eは,初級者に準ずるものではあったものの,一応のダイビング技能を有していたこと,本件事故は,海上の目視が不十分であったことがその原因の一つとなっているのであり,Eも,被告Cの安全確認だけに全面的に依存するのではなく,自らその安全を確保するため,海上の目視を十分に行うべきであったというべきであるところ,Eの海上の目視が不十分であったこと,本件事故の直前,Eはインフレーターを操作していたため海中で十分に停止できないまま浮上したことなどの事情を考慮すると,本件事故の発生については,E自身にも過失があったものというべきであり,本件事故の発生の経緯その他の事情を総合考慮すると,Eの過失割合は3割と判断するのが相当である。 (2) 以上によれば,原告ら各自の損害額の算定に当たっては3割の過失相殺をするのが相当である あり,本件事故の発生の経緯その他の事情を総合考慮すると,Eの過失割合は3割と判断するのが相当である。 (2) 以上によれば,原告ら各自の損害額の算定に当たっては3割の過失相殺をするのが相当であるから,原告Aについては1937万5630円,原告Bについては1853万5630円が,弁護士費用を除く損害賠償額となる(いずれも1円未満切捨て)。 6 一部弁済,弁護士費用等(1) 前記第2の2の争いのない事実等(9)のとおり,原告らは,Hから,平成16年3月23日に和解金1000万円の支払を受け,原告らの損害にそれぞれ500万円ずつ充当している。ところで,原告らの損害賠償金に対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から平成16年3月23日(Hの和解金支払の日)までに発生した民法所定の年5分の割合による遅延損害金は,原告Aについては622万8259円,原告Bについては595万8242円(いずれも1円未満切り捨て)となり,これらの遅延損害金から原告らに支払われた和解金を控除した残額は,原告Aが122万8259円,原告Bが95万8242円となる。 (2) 前記のとおり,被告らに対し,原告Aは1937万5630円の,原告Bは1853万5630円の損害賠償金の支払を求め得るところ,弁論の全趣旨によれば,被告らが任意の支払に応じなかったので,原告らは,やむを得ず弁護士である本件原告ら訴訟代理人にその取立を委任し,本件訴訟を提起したのであり,原告らは,その報酬の支払を余儀なくされていることが明らかであるから,本件事案の内容,審理の経過,認容額その他本件訴訟に現れた諸般の事情を考慮すると,弁護士費用は,原告らそれぞれについて200万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害であると判断するのが相当である。 7 争点(2)イ(被告会社の債務不 本件訴訟に現れた諸般の事情を考慮すると,弁護士費用は,原告らそれぞれについて200万円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害であると判断するのが相当である。 7 争点(2)イ(被告会社の債務不履行責任)について被告会社の従業員である被告Cは,被告会社の履行補助者として,本件ツアーに参加したEを引率中,2で認定判断したとおり,その過失によって本件事故を発生させ,Eを死亡させたのであるから,被告会社には,本件契約に付随する安全配慮義務の不履行があるというべきであるものの,既に認定判断した不法行為に基づく損害賠償義務以上の損害賠償義務が肯定されるものではないことも明らかである。 したがって,原告らの被告会社に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は理由がなく,認容することができない。 8 結論以上によれば,原告Aの被告らに対する本訴請求は,不法行為に基づき,弁護士費用を除く損害賠償金1937万5630円,これに対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から平成16年3月23日(Hの和解金支払の日)までに生じた民法所定の年5分の割合による遅延損害金の残金122万8259円及び弁護士費用200万円の合計2260万3889円並びに内金200万円に対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から及び内金1937万5630円に対する平成16年3月24日(Hの和解金支払の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。 また,原告Bの被告らに対する本訴請求は,不法行為に基づき,弁護士費用を除く損害賠償金1853万5630円,これに対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から平成16年3月23日 る。 また,原告Bの被告らに対する本訴請求は,不法行為に基づき,弁護士費用を除く損害賠償金1853万5630円,これに対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から平成16年3月23日(Hの和解金支払の日)までに生じた民法所定の年5分の割合による遅延損害金の残金95万8242円及び弁護士費用200万円の合計2149万3872円並びに内金200万円に対する平成9年10月19日(本件事故の発生の日)から及び内金1853万5630円に対する平成16年3月24日(Hの和解金支払の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第50部裁判長裁判官奥田隆文裁判官金澤秀樹裁判官若松光晴
▼ クリックして全文を表示