- 1 -令和3年10月28日判決言渡令和元年(行ウ)第187号処分取消請求事件主文 1 本件訴えのうち次の部分をいずれも却下する。 ⑴ 主位的請求のうち,原告が平成▲年▲月▲日付けでした農地法18条1 項に基づく農地の賃貸借の解除又は解約申入れの許可申請に対する許可処分の義務付けを求める部分⑵ 予備的請求のうち,原告が平成▲年▲月▲日付けでした農地法18条1項に基づく農地の賃貸借の解除又は解約申入れの許可申請に対し,別紙物件目録記載1の土地につき340万円,同目録記載2の土地につき180 万円の離作料を支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める部分 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求⑴ 大阪府知事が原告に対して令和▲年▲月▲日付けでした,別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れにつき賃借人に対し適正な離作料を支払うことを条件とする許可処分(大阪府指令農整第18号)を取り消す。 ⑵ 大阪府知事は,原告に対し,原告が平成▲年▲月▲日付けでした農地法18条1項に基づく別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れの許可処分の申請につき,同農地の賃貸借契約の解除の許可処分をせよ。 又は, ⑶ 大阪府知事が原告に対して令和▲年▲月▲日付けでした,別紙物件目録記- 2 -載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れにつき賃借人に対し適正な離作料を支払うことを条件とする許可処分(大阪府指令農整第18号)のうち,適正な離作料を支払うことを条件とする部分を取り消す。 (上記⑴・⑵と上記⑶は選択的併合) 2 予備的請求 ⑴ 正な離作料を支払うことを条件とする許可処分(大阪府指令農整第18号)のうち,適正な離作料を支払うことを条件とする部分を取り消す。 (上記⑴・⑵と上記⑶は選択的併合) 2 予備的請求 ⑴ 大阪府知事が原告に対して令和▲年▲月▲日付けでした,別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れにつき賃借人に対し適正な離作料を支払うことを条件とする許可処分(大阪府指令農整第18号)を取り消す。 ⑵ 大阪府知事は,原告に対し,原告が平成▲年▲月▲日付けでした農地法1 8条1項に基づく別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れの許可処分の申請につき,同目録記載1の土地につき340万円,同目録記載2の土地につき180万円の離作料を支払うことを条件とする許可処分をせよ。 又は, ⑶ 大阪府知事が原告に対して令和▲年▲月▲日付けでした,別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れにつき賃借人に対し適正な離作料を支払うことを条件とする許可処分(大阪府指令農整第18号)のうち,適正な離作料を支払うことを条件とする部分を取り消す。 ⑷ 大阪府知事は,原告に対し,原告が平成▲年▲月▲日付けでした農地法1 8条1項に基づく別紙物件目録記載1及び2の農地の賃貸借契約の解除又は解約申入れの許可処分の申請につき,同目録記載1の土地につき340万円,同目録記載2の土地につき180万円の離作料を支払うことを条件とする許可処分をせよ。 (上記⑴・⑵と上記⑶・⑷は選択的併合) 第2 事案の概要- 3 -原告は,大阪府知事に対し,農地法18条1項に基づき,主位的に同条2項1号に該当するとして,予備的に同項2号又は6号に該当するとして,別紙物件目録記載1及び2の農地(以下,別紙 の概要- 3 -原告は,大阪府知事に対し,農地法18条1項に基づき,主位的に同条2項1号に該当するとして,予備的に同項2号又は6号に該当するとして,別紙物件目録記載1及び2の農地(以下,別紙物件目録記載1の農地を「本件農地⑴」といい,同目録記載2の農地を「本件農地⑵」といい,これらを併せて「本件各農地」という。)の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)の解除又は解約申入 れに係る許可申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,大阪府知事から,「賃借人に対し,適正な離作料を支払うこと」を条件として本件賃貸借契約の解除又は解約申入れを許可する処分(以下「本件処分」といい,本件処分に付された上記条件を「本件条件」という。)を受けた。 本件は,原告が,本件賃貸借契約の賃借人が「信義に反した行為」をしており, 農地法18条2項1号に該当する事由があるにもかかわらず,同号に該当する事由がないとされた上で,同項6号に該当するとして許可がされ,その際に本件条件が付されたことが,大阪府知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるものであるなどと主張して,被告を相手に,①主位的請求として,本件処分の取消し及び本件申請に対する許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の 取消しを求め,②予備的請求として,本件処分の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める事案である。 1 関係法令の定め等⑴ 農地法の定めア 1条(目的)農地法1条は,同法は,国内 の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める事案である。 1 関係法令の定め等⑴ 農地法の定めア 1条(目的)農地法1条は,同法は,国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり,かつ,地域における貴重な 資源であることに鑑み,耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている- 4 -重要な役割も踏まえつつ,農地を農地以外のものにすることを規制するとともに,農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し,及び農地の利用関係を調整し,並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより,耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り,もって国民に対する食料の安 定供給の確保に資することを目的とする旨定める。 イ 2条の2(農地について権利を有する者の責務)農地法2条の2は,農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない旨定める。 ウ 18条(農地の賃貸借の解約等の制限)農地法18条1項本文は,農地の賃貸借の当事者は,政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ,賃貸借の解除をし,解約の申入れをし,合意による解約をし,又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない旨定める。 農地法18条2項柱書きは,同条1項の許可は,同条2項各号に掲げる場合でなければしてはならない旨定める。その上で,同項1号は,賃借人が信義に反した行為をした場合を,同項2号は,その農地又は採草放牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とす 各号に掲げる場合でなければしてはならない旨定める。その上で,同項1号は,賃借人が信義に反した行為をした場合を,同項2号は,その農地又は採草放牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とする場合を,同項6号は,その他正当の事由がある場合をそれぞれ掲げる。 農地法18条4項は,同条1項の許可は,条件を付けてすることができる旨定める。 ⑵ 「農地法関係事務に係る処理基準について」(平成12年6月1日12構改B第404号。以下「本件処理基準」という。乙5)農林水産事務次官通知である本件処理基準は,農地法18条2項1号,2 号及び6号に関し,次のとおり定める(なお,農地法及び農地法施行令に基- 5 -づく事務は地方公共団体が処理することとされているところ,本件処理基準は,当該事務について地方自治法245条の9第1項,3項に基づく処理基準を定めたものである。)。 ア農地法18条2項1号の判断基準農地法18条2項1号の「信義に反した行為」とは,特段の事情がない のに通常賃貸人と賃借人の関係を持続することが客観的にみて不能とされるような信義誠実の原則に反した行為をいうものとする。例えば,賃借人の借賃の滞納,無断転用,田畑転換等の用法違反,無断転貸,不耕作,賃貸人に対する不法行為等の行為が想定される。 イ農地法18条2項2号の判断基準 農地法18条2項2号に該当するかは,例えば,具体的な転用計画があり,転用許可が見込まれ,かつ,賃借人の経営及び生計状況や離作条件等からみて賃貸借契約を終了させることが相当と認められるか等の事情により判断するものとする。 ウ農地法18条2項6号の判断基準 農地法18条2項6号の「その他正当の事由がある場合」とは,賃借人の離農等により賃貸 させることが相当と認められるか等の事情により判断するものとする。 ウ農地法18条2項6号の判断基準 農地法18条2項6号の「その他正当の事由がある場合」とは,賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合とする。これらの判断に当たっては,個別具体的な事案ごとに様々な状況を勘案し,総合的に判断する必要があるが,同法2条の2の責務規定が設けられていることを踏まえれば,賃借人が農地を適正かつ効率的に 利用していない場合は,同法18条2項1号に該当しない場合であっても,同項6号に該当することがあり得る。 このため,賃貸借の解約等を認めることが農地等の適正かつ効率的な利用につながると考えられる場合には積極的に許可を行うべきである。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実)- 6 -⑴ 当事者等ア原告側(本件各農地の所有者側)原告は,本件各農地を所有する者である(甲1,2)。 A(昭和▲年生まれ。以下「A」という。)は,原告の夫である。Aは,昭和▲年に原告と婚姻後,大阪府警察に勤務する傍らで畑作作業に従事し ていたが(大阪府警察には平成▲年まで勤務していた。),稲作作業に従事したことはない(甲30,62,証人A)。 B(以下「B」という。)は,原告の母であるが,平成▲年に死亡した。 イ C側(本件各農地の賃借人側)C(昭和▲年生まれ。以下「C」という。)は,本件各農地を原告から賃 借している者である。Cは,稲作・畑作作業に従事してきた(甲28,32)。 D(以下「D」という。)は,Cの父であるが,平成▲年に死亡した(甲32)。 ⑵ 本件賃貸借契約の締 ら賃 借している者である。Cは,稲作・畑作作業に従事してきた(甲28,32)。 D(以下「D」という。)は,Cの父であるが,平成▲年に死亡した(甲32)。 ⑵ 本件賃貸借契約の締結等 ア B・D間の本件賃貸借契約の締結(昭和20年頃)Bは,別紙物件目録記載3の土地(本件各農地を含む土地)を所有していたところ,昭和20年頃,Dに対し,同土地において農作物を耕作することを許諾し,同土地の賃貸借契約(本件賃貸借契約)を締結した。その後,Dは,別紙物件目録記載3の土地において稲作をしていた。 イ本件道路の敷設等(昭和29年頃以降)別紙物件目録記載3の土地は,昭和▲年▲月▲日,本件各農地及び同目録記載4の土地に分筆された。同目録記載4の土地は,当時のE郡F町に売却されて道路敷(道路幅約9m)となった。また,本件農地⑴は同目録記載4の土地の南側に,本件農地⑵は同目録記載4の土地の北側にそれぞ れ所在することになった(甲5,8,26,48。以下,別紙物件目録記載- 7 -4の土地を「本件道路」という。)。 Dは,上記の分筆後も,引き続き,本件各農地において稲作を行っていた(甲32,弁論の全趣旨)。 ウ Dの死亡とCの相続(平成2年)Dは,平成▲年▲月▲日に死亡し,同人の子であるCが本件各農地の借 主の地位を相続により承継した。そして,Cは,引き続き,本件各農地において稲作を行っていたが,本件道路が舗装された後は本件農地⑵への取水が困難になったために本件農地⑵については稲作から畑作に切り替えた(甲32,弁論の全趣旨)。 エ Bの死亡と原告の相続(平成20年) Bは,平成▲年▲月▲日に死亡し,Bの子である原告が本件各農地の所有権を相続により取得した。 ⑶ 本件各 り替えた(甲32,弁論の全趣旨)。 エ Bの死亡と原告の相続(平成20年) Bは,平成▲年▲月▲日に死亡し,Bの子である原告が本件各農地の所有権を相続により取得した。 ⑶ 本件各農地の周辺の状況等本件各農地は,南海電鉄高野線のG駅の南側約100mの位置に所在する。 本件各農地を含む周辺土地は,第1種住宅地域である。本件各農地の周辺の 状況等は,別紙航空写真(平成30年頃撮影)のとおりである(甲4,6,8)。 ア本件南北水路本件道路を挟んで,その南側に隣接して本件農地⑴が,その北側に隣接して本件農地⑵が,それぞれ位置する。本件農地⑴の東側に隣接して,南 北方向の水路が存在する(以下,この水路を「本件南北水路」という。)。 本件南北水路において,水は南から北に向かって流れる。 イ本件東西側溝,本件線路側溝他方,本件道路と本件農地⑵との境界付近には,東西方向の側溝が存在する(以下,この側溝を「本件東西側溝」という。)。本件東西側溝におい て,水は東から西に向かって流れる。 - 8 -本件東西側溝は,その東端において,南北方向の側溝(南海電鉄高野線の線路沿いにあるもの)と交わっている(以下,この側溝を「本件線路側溝」という。)。本件線路側溝において,水は南から北に向かって流れる(以上につき,甲36,64の1~45,68の1~7,乙6,弁論の全趣旨)。 ウ本件南北水路と本件東西側溝との関係,本件会所本件南北水路を北方向に流れる水は,本件道路の下に敷設されたパイプ管を通って,本件農地⑵の南東角付近にあるコンクリート製会所(1辺約数十㎝の長方形の形状で東西幅が南北幅よりも少し長いもの。以下「本件会所」という。)の南側面の下部付近に達する。 本件東西側溝は,本件会所の上部付近を 角付近にあるコンクリート製会所(1辺約数十㎝の長方形の形状で東西幅が南北幅よりも少し長いもの。以下「本件会所」という。)の南側面の下部付近に達する。 本件東西側溝は,本件会所の上部付近を東西に走っている(このため,本件会所の東西側面の天端は,南側面の天端よりも低いが,南側面の上記パイプ管の位置よりは高い。)。 本件会所の北側面の上部付近には,本件農地⑵の取水口がある。 したがって,本件農地⑵の取水に際しては,本件会所の東側面及び西側 面に沿ってそれぞれ地面と垂直方向にせき板を設置すること等により本件南北水路を流れる水から取水することが可能であり,本件会所の東西側面の天端に沿って地面と平行方向にせき板を設置すると同時に本件会所の西側面に沿って地面と垂直方向にせき板を設置すること等により本件東西側溝を流れる水から取水することが可能である(以上につき,甲34,36, 64の1~45,68の1~7,乙6,弁論の全趣旨)。 ⑷ 生産緑地地区に関する都市計画の案に対するCの不同意等ア宅地並み課税昭和46年の地方税法の改正により,農地の課税標準となるべき価格を当該農地と状況が類似する宅地の課税標準とされる価格に比準する価格に よって定めた上で,農地に対して課する固定資産税等の特例を適用せず,- 9 -上記課税標準となるべき価格に基づき算出した金額を課税標準として課税を行う措置が定められた(以下,この措置に係る課税を「宅地並み課税」という。)。その後,平成3年の地方税法の改正により,平成4年度以降,市街化区域内の農地から生産緑地地区の区域内の農地等を除いたもの(以下「市街化区域農地」という。)のうち,いわゆる3大都市圏の特定市に所 在する全ての市街化区域農地について,宅地並み課税がされるようになっ の農地から生産緑地地区の区域内の農地等を除いたもの(以下「市街化区域農地」という。)のうち,いわゆる3大都市圏の特定市に所 在する全ての市街化区域農地について,宅地並み課税がされるようになった(弁論の全趣旨)。 イ本件生産緑地希望申出,Cの不同意(平成4年)Bは,平成4年3月31日,大阪狭山市長に対し,都市計画に本件各農地を生産緑地地区として定めることを希望する旨の申出(以下「本件生産 緑地希望申出」という。)をした。しかし,生産緑地地区に関する都市計画の案については当該生産緑地地区内における農地の賃借人の同意を得る必要があったところ,本件各農地の賃借人であるCが,生産緑地については最低30年間農地として管理しなければならなくなり,その間に離作料を得ることができなくなることは好ましくないと考えていたことから,これ に同意しなかったため,Bは本件生産緑地希望申出を取り下げることとなった(甲17,28,30,32,62,証人A)。 ⑸ Cによる本件各農地の使用状況等ア本件農地⑴の一部を工事用道路として使用させたこと(平成26年)Cは,平成26年5月頃,事前に原告の承諾を得ることなく,H株式会 社(本店・藤井寺市。以下「H」という。)に対し,本件農地⑴の一部を工事用道路として使用させ,Hは,本件農地⑴の一部に鉄板を置くなどして本件農地⑴を工事用道路として使用していた。原告は,本件農地⑴の一部が工事用道路として使用されていることを事後的に認識し,Hの担当者と協議した上で,同月9日,Hから使用料として100万円を受領して,上 記の使用を追認した(甲18~20,乙2)。 - 10 -イ本件農地⑵に小石の混じった土を入れたこと(平成27年)Cは,平成27年6月又は7月頃 00万円を受領して,上 記の使用を追認した(甲18~20,乙2)。 - 10 -イ本件農地⑵に小石の混じった土を入れたこと(平成27年)Cは,平成27年6月又は7月頃,原告に無断で本件農地⑵に小石の混じった土を入れた。原告は,遅くとも平成27年12月末頃までに,これを認識した(甲28,32,62,乙2,証人A)。 ウ本件農地⑵で耕作を行わなかったこと(平成29年) Cは,平成29年,本件農地⑵において耕作を行わなかった。Cは,平成30年6月,本件農地⑵に水を引いて稲作を始めようとしたが,本件農地⑵には小石の混じった土が入り保水力が低下していたため,本件農地⑵に水をためることができなかった。他方,Cは,この頃も,本件農地⑴では稲作を行っていた(甲28,32,37,38,49,50,乙2)。 ⑹ 本件各農地における「逆ざや現象」の発生本件各農地は市街化区域内に所在するところ,平成30年度における本件農地⑴の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の合計は13万1731円であり,本件農地⑵の固定資産税等の合計は6万1616円であった。他方,Cが平成5年から現在までB又は原告に対して支払 っている本件各農地の賃料は,年額3万8000円であり,本件各農地については,本件処分がされた令和元年の時点において,固定資産税等の額が賃料の額を上回る「逆ざや現象」が生じていた。なお,本件各農地の固定資産税等の合計額と本件各農地の賃料との差額は,平成4年~平成16年は年24万円~31万円程度であり,平成17年~平成30年は年13万円~19 万円程度であった(甲6,11の2,26,52,62)。 ⑺ 本件申請・本件処分ア本件申請(平成30年)原告 円~31万円程度であり,平成17年~平成30年は年13万円~19 万円程度であった(甲6,11の2,26,52,62)。 ⑺ 本件申請・本件処分ア本件申請(平成30年)原告は,平成▲年▲月▲日付け(同月13日受付)で,大阪府知事に対し,本件各農地につき,主位的に農地法18条2項1号に該当するとして, 予備的に同項2号又は6号に該当するとして,本件賃貸借契約の解除又は- 11 -解約申入れに係る許可申請(本件申請)をした。また,原告は,本件申請の際,離作料の支払が必要となる場合には本件各農地について合計520万円(本件各農地の平均収穫量の買取価格の40年分に相当する金額であり,本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円)の離作料を支払う旨の意向を示した(甲52)。 イ本件処分(令和元年)大阪府知事は,令和▲年▲月▲日,本件申請について,「賃借人に対し,適正な離作料を支払うこと」との条件(本件条件)を付した上で「その他正当の事由」(農地法18条2項6号)が認められるとして,本件賃貸借契約の解除又は解約申入れを許可する処分(本件処分)をした(甲53)。 ⑻ 本件訴えの提起原告は,令和▲年▲月▲日,本件訴えを提起した。 ⑼ 水田整備の一般的知見水田整備の一般的な知見は,次のとおりである(乙7,弁論の全趣旨)。 ア水田整備のうち整地工事の概要 水田整備のうち整地工事(計画した水田区画の本体を造成するための工事)の手順は,主に,①表土のはぎ取り作業,②心土(水田の下層を成す土壌)部分の基盤切り盛り作業・基盤整地作業,③表土の戻し作業・整地作業,から成る。 イ基盤切り盛り作業の際の留意点 上記②の心 のはぎ取り作業,②心土(水田の下層を成す土壌)部分の基盤切り盛り作業・基盤整地作業,③表土の戻し作業・整地作業,から成る。 イ基盤切り盛り作業の際の留意点 上記②の心土部分の基盤切り盛り作業は,水田の透水性や地耐力等に影響するため,十分に留意して施工する必要がある。その際の留意点としては,転圧等により不等沈下対策や透水性抑制措置をとること,盛土の沈下を見込んであらかじめ基盤の計画標高よりも高く「余盛り」をしておくことも検討すること,最適含水比に近づけること,心土中の石礫は基盤を強 化する効果もあるため基盤面以下に深く埋め込むようにすること等が挙げ- 12 -られる。 3 争点⑴ Cの行為の農地法18条2項1号該当性⑵ 本件申請について適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号に該当すると判断したことの適法性 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(Cの行為の農地法18条2項1号該当性)について(被告の主張)次のア~オの事情に照らせば,賃借人であるCが原告にとって賃貸借契約を継続することが不相当とされるような著しい背信行為をしたとはいえない から,Cの行為は,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に該当するとはいえない。 ア Cの不同意が「信義に反した行為」であるとはいえないことCはBの本件生産緑地希望申出に係る都市計画の案に同意をしなかったが,賃借人であるCに同意をすべき信義則上の義務があるということはで きないから(最高裁平成8年(オ)第232号同13年3月28日大法廷判決・民集55巻2号611頁〔以下「最高裁平成13年判決」という。〕),Cが同意をしなかったことが「信義に反した行為」であるとは きないから(最高裁平成8年(オ)第232号同13年3月28日大法廷判決・民集55巻2号611頁〔以下「最高裁平成13年判決」という。〕),Cが同意をしなかったことが「信義に反した行為」であるとはいえない。 イ工事用道路としての使用許諾が「信義に反した行為」であるとはいえないこと Cは平成26年5月頃に原告に無断で本件農地⑴の一部をHに使用させたが,原告は,遅くとも同月9日には使用料を受領してHによる上記使用を追認している。加えて,工事用道路の設置は本件農地⑴の一部に限られ,かつ,工事が完了するまでの一時的な措置にすぎず,工事完了後は本件農地⑴が原状に復旧されて,田として正常に利用できる状態になっていたこ とも踏まえれば,上記行為が「信義に反した行為」であるとはいえない。 - 13 -ウ小石の混じった土を入れたことが「信義に反した行為」であるとはいえないことCは本件農地⑵に小石の混じった土を入れたが,これは,本件農地⑵の土の高さや性質を整え,田として利用するために行ったものであり,本件賃貸借契約の目的に沿うものである。また,Cは,本件農地⑵を田として 利用するに当たっては,本件南北水路ではなく,より高い位置にある本件東西側溝から水を引くことを考えていた旨述べており,土を入れることで本件農地⑵の高さが高くなったとしても,本件東西側溝から取水することは十分に可能であるから,土の高さが高くなると水を引くことができなくなるというわけではない。したがって,Cが本件農地⑵に土を入れたのは 耕作を行う上で必要性があったからである(なお,田として使用するために整地する際には,時間の経過とともに盛土部分が沈下することが多いことを踏まえ,予め土を余分に盛っておく「余盛り」をすることも通常検討され得るものであ があったからである(なお,田として使用するために整地する際には,時間の経過とともに盛土部分が沈下することが多いことを踏まえ,予め土を余分に盛っておく「余盛り」をすることも通常検討され得るものである。)。 原告は,小石の混じった土を入れれば本件農地⑵を田として利用するこ とができなくなる旨主張するが,Cは,田の表面の土壌(作土)として小石の混じった土を入れようとしたのではなく,作土の下に敷く心土として小石の混じった土を入れたものであって,心土中の石礫には基盤を強化する効果があるとされていることからすれば,Cが小石の混じった土を入れたことは,田の整地として合理的な行動である(なお,Cはその上から作 土に適した土を入れようとしていたものの,原告や原告の夫であるAにそれ以上土を入れるのを止められたために,十分な整地ができなかったにすぎない。)。 以上に加え,小石の混じった土を入れたとしても,容易に原状に復することができなくなるわけではないことを踏まえれば,Cが小石の混じった 土を入れたことが,「信義に反した行為」であるとはいえない。 - 14 -エ耕作を放棄しているとはいえないこと原告は,Cが耕作を放棄している旨主張するが,次のとおり,Cが耕作を放棄しているとはいえない。 Cは,「本件農地⑵を放置しているわけではなく,小石の混じっていない土を入れればいつでも農作物を植えることができるように,雑草を取っ て畝を作るなど適切に管理している」旨述べており,実際に,平成30年には,不十分な状態ではあるものの本件農地⑵にも稲を植えていた。また,それ以前の平成28年にも本件農地⑵においてキュウリの栽培をしていた。これらの事情を踏まえれば,Cが本件農地⑵の耕作を放棄したということはできない。 なお, ⑵にも稲を植えていた。また,それ以前の平成28年にも本件農地⑵においてキュウリの栽培をしていた。これらの事情を踏まえれば,Cが本件農地⑵の耕作を放棄したということはできない。 なお,Cは令和元年も本件農地⑵において耕作していないが,休耕しているにすぎない。そもそも,本件農地⑵について平成28年頃から休耕しているのは,Cが本件農地⑵に土を入れようとしていたのを原告が止めたために,土地の改良が進まなかったことによるものであって,Cが耕作を放棄したものではない。 オ無断転貸をしたものとはいえないこと原告は,Cが本件各農地を無断転貸している可能性がある旨主張するが,Cは,本件各農地における農作業の一部を第三者に委託したにすぎず,無断転貸をしたものではないから,これをもって「信義に反した行為」であるとはいえない。 (原告の主張)次のア~オの事情に照らせば,賃借人であるCが原告にとって賃貸借契約を継続することが不相当とされるような著しい背信行為をしたといえるから,Cの行為は,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に該当する。 ア Cの不同意が「信義に反した行為」であること- 15 -Bは,大阪狭山市長に対し,本件各農地につき本件生産緑地希望申出をしたものの,賃借人であるCがこの都市計画の案に同意しなかったため,同申出を取り下げざるを得なかった。これにより,Bは,本件各農地に対する宅地並み課税が適用された後においても,固定資産税等の減額を受けることができなかった。また,本件各農地の賃貸目的は農地の耕作である から,本件生産緑地希望申出に係る都市計画の案に同意しないということは,本件賃貸借契約の趣旨に反するものである。したがって,C ることができなかった。また,本件各農地の賃貸目的は農地の耕作である から,本件生産緑地希望申出に係る都市計画の案に同意しないということは,本件賃貸借契約の趣旨に反するものである。したがって,Cの上記の不同意は,「信義に反した行為」である。 イ工事用道路としての使用許諾が「信義に反した行為」であることCは,平成26年5月頃,Cが所有する土地を宅地開発して売却するた めに,Hに対し,本件農地⑴の一部を,原告に無断で工事用道路として使用させていた。このような行為は,原告に対する著しい背信行為であって,「信義に反した行為」である(なお,原告は,Hから事後的に使用料の支払を受けたが,これによって上記行為が背信行為に当たらないということはできない。)。 ウ小石の混じった土を入れたことが「信義に反した行為」であることCは,平成27年6月又は7月頃,原告に無断で本件農地⑵に小石の混じった土を入れた。これにより,本件農地⑵は耕作をすることができない状況となったのであるから,少なくとも本件農地⑵については原告に対する重大な背信行為があったというべきである。また,本件農地⑵について の重大な背信行為があることは,本件農地⑴についての原告とCとの間の関係においても,重大な背信行為に当たるというべきである。したがって,Cの上記の行為は,「信義に反した行為」である。 エ耕作を放棄していることが「信義に反した行為」であることCは,少なくとも平成28年及び平成29年については,本件農地⑵に おいて耕作を行わなかったし,平成30年には,本件農地⑵に形式的には- 16 -稲を植えていたものの,全く保水がされていないなど適正な耕作がされておらず,耕作が放棄されているのと同様の状況であった。さらに,Cは,本件処 し,平成30年には,本件農地⑵に形式的には- 16 -稲を植えていたものの,全く保水がされていないなど適正な耕作がされておらず,耕作が放棄されているのと同様の状況であった。さらに,Cは,本件処分がされた令和▲年▲月▲日においても,本件農地⑵で耕作をしておらず,耕作をする意思もなかった(なお,本件処分後の令和2年においても本件農地⑵で耕作はされていない。)。 そうすると,Cは,耕作を放棄しており,耕作の意思もないというべきである。これは,本件賃貸借契約の目的からすれば,「信義に反した行為」である。 オ無断転貸をしたことが「信義に反した行為」であること平成30年6月,本件各農地に水が引かれて稲作が始められたが,Cは 高齢であったこと等からすれば,Cやその親族において稲作を行っていたものではなく,Cは,本件各農地を第三者に耕作させていたとみられる。 そうすると,Cが本件各農地を無断転貸している可能性が高いというべきであり,このことは,「信義に反した行為」である。 ⑵ 争点⑵(本件申請について適正な離作料の支払を条件とすることで農地法 18条2項6号に該当すると判断したことの適法性)について(被告の主張)次のア,イのとおり,大阪府知事が本件申請について適正な離作料の支払を「条件」とすることで農地法18条2項6号に該当すると判断したことは,適法である。 ア離作料の支払を条件としたことについて(ア) 本件処分がされた当時,適正な離作料の支払を条件として本件賃貸借契約を解消することが相当であるとみられる事情が認められた。具体的には,①本件各農地が市街化区域内にある農地であり,「逆ざや現象」が生じていること,②本件農地⑵については,耕作が放棄されていると までは認められ 相当であるとみられる事情が認められた。具体的には,①本件各農地が市街化区域内にある農地であり,「逆ざや現象」が生じていること,②本件農地⑵については,耕作が放棄されていると までは認められないものの,本件処分時点においては十分な耕作が行わ- 17 -れているとはいえず,Cに改善の意思がみられなかったこと,③Cは,営農の意思はあるものの,条件次第では本件賃貸借契約を解消したいという意向を示していたこと,④原告も本件申請において本件賃貸借契約の解約に当たり離作料の支払が必要である場合には合計520万円の離作料を支払う意思があることを明示し,離作料として少なくとも上記金 額が支払われることがほぼ確実な状況にあったこと等の事情があった。 また,最高裁平成13年判決においても,「逆ざや現象」による不利益を解消する手段として,具体的事案に応じた適正な離作料の支払を条件とした知事の許可を得て,解約を申し入れることができるものと解される旨判示されていた。 したがって,大阪府知事が,農地法18条4項に基づき,賃借人に対し適正な離作料を支払うことという「条件」(その性質は,行政行為における附款のうち,負担に当たる。)を付した上で,同条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に該当すると判断したことは,適切である。 (イ) これに対し,原告は,Cが年金生活者であり,細々と耕作を続けているにすぎないから離作料の支払を条件とすることは相当でない旨主張する。しかし,Cが耕作者であることに変わりはなく,耕作者の地位の安定という農地法の趣旨を踏まえれば,離作料の支払を条件とすることには十分な理由があるというべきである。また,本件農地⑵については, 平成30年には不十分な状態ではあるものの稲が植えられて田として利用さ 地法の趣旨を踏まえれば,離作料の支払を条件とすることには十分な理由があるというべきである。また,本件農地⑵については, 平成30年には不十分な状態ではあるものの稲が植えられて田として利用されていたのであり,耕作をすることができない状況であったとは認められない。したがって,本件農地⑵についても,耕作者の地位の安定という農地法の趣旨がなお妥当するというべきである。 イ本件条件において離作料の具体的な金額を明示しなかったことについて (ア) 大阪府知事は,適正な離作料の算定については,原告とCとの間で合- 18 -意を形成することを期待して,離作料の具体的な金額を明示しない形で解約申入れ等を許可したのであって,行政の第一次的な判断を尊重するという観点からすれば,このような大阪府知事の判断も尊重されるべきである。 本件条件の内容は,原告が本件賃貸借契約の解約を申し入れることが できる一方で,Cに対して適正な離作料を支払わなければならないという負担があるというものにすぎず,原告がCに対して本件処分を踏まえて本件賃貸借契約の解約を申し入れた場合,適正な離作料について合意が成立するか否かにかかわらず,Cには,1年後には本件各農地を明け渡さなければならない義務が生ずることになる(民法617条1項1 号)。他方で,本件条件により,原告は適正な離作料を支払わなければならないという負担を負うことになるのであるから,大阪府知事において,原告とCが本件条件を前提に離作料についての合意を形成することを期待して,金額を明示しない離作料の支払を条件とすることも,合理的な判断である。 (イ) これに対し,原告は,離作料の具体的な金額が明示されない場合には不都合が生ずる旨主張する。しかし,具体的な不都合を主張しているとはい 支払を条件とすることも,合理的な判断である。 (イ) これに対し,原告は,離作料の具体的な金額が明示されない場合には不都合が生ずる旨主張する。しかし,具体的な不都合を主張しているとはいえないし,離作料の具体的な金額を明示すべきである旨を定めた通達等もない。そもそも,離作料は,農地法等の特別法に定めがあるものではなく,地域の慣行を背景として支払われているものにすぎず,離作 料の支払義務は,賃貸人と賃借人との間の合意に基づいて発生するものであるから,賃貸借契約を解除した後に離作料の金額をめぐる訴訟が提起されたとしても,賃貸人にとって想定をはるかに超える額の離作料の支払を命じられるなどの事態は想定できず,離作料の具体的な金額を明示しないことによる不都合があるとはいえない。 また,原告は,離作料について,借地借家法6条等に定められた立退- 19 -料(財産上の給付)等と同様に解すべきである旨主張するが,離作料と立退料(財産上の給付)とは支払の法的根拠や賃借人の手続保障等の点において大きく異なるから,原告の同主張は理由がない。 (原告の主張)次のア,イのとおり,大阪府知事が本件申請について適正な離作料の支払 を「条件」とすることで農地法18条2項6号に該当すると判断したことは,違法である。 したがって,本件処分には違法な「条件」が付されているから,本件処分全体が違法となり取り消されるべきであるか,又は本件条件のみが取り消されるべきである。また,仮に,離作料の支払を「条件」として本件賃貸借の解 約を許可する場合であっても,具体的な離作料の金額(原告が本件申請において申し出た金額の合計520万円)を明示した「条件」を付するべきであるから,本件処分又は本件条件は取り消されるべきで 解 約を許可する場合であっても,具体的な離作料の金額(原告が本件申請において申し出た金額の合計520万円)を明示した「条件」を付するべきであるから,本件処分又は本件条件は取り消されるべきである。 ア離作料の支払を条件としたことについて本件が農地法18条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に 該当するとしても,離作料の支払が「条件」(同条4項)とされるべきではない。 農地法18条は,耕作者の地位の安定と農業生産の増大という農地法の目的(同法1条)を踏まえて,農地の賃貸借契約の解除等には都道府県知事の許可を要するものとしているところ,Cは,年金生活者であり,離作 料目的で細々と耕作を続けているにすぎないのであるから,Cの耕作者としての地位を安定させる必要はないし,離作料の支払により農業生産の増大が図られることもないから,農地法の上記趣旨は妥当しない。特に,本件農地⑵については,Cが小石の混じった土を入れたことにより,耕作をすることができない状況になっており,本件処分時点においても耕作され ておらず,Cには耕作する意思がないから,上記趣旨は妥当しないという- 20 -べきである。 また,賃貸借契約の解除に伴い離作料が支払われている事例も,比較的少数にとどまるものである。 上記各事情を踏まえれば,本件処分において離作料の支払が条件とされるべきではない。 イ本件条件において離作料の具体的な金額を明示しなかったことについて仮に,本件処分において離作料の支払を条件とすることが許されるとしても,適正な離作料を支払うことという程度の抽象的な条件では足りず,許可に際しては離作料の具体的な金額を明示する必要があるから,本件処分は違法である。その理由は,次のとおりである。 されるとしても,適正な離作料を支払うことという程度の抽象的な条件では足りず,許可に際しては離作料の具体的な金額を明示する必要があるから,本件処分は違法である。その理由は,次のとおりである。 (ア) 農地法18条4項により離作料の支払を「条件」として,同条2項6号の要件を満たすと判断することが許されるのは,賃貸借契約の解除事由を認定する事情が不足すると判断された場合に,これを補完する要素として離作料が考慮され,全体として解除についての「正当の事由がある」と判断されるからである(このような考えは,借地借家法6条等に おける立退料〔財産上の給付〕の考え方とも整合するものである。)。そのような離作料の位置付けを踏まえれば,その具体的な金額が決定的に重要となるのであるから,具体的な金額を明示しない離作料の支払を「条件」とすることは違法である。 この点に関し,具体的な金額を明示しないまま適正な離作料の支払を 条件とする許可がされた場合,賃貸人と賃借人との間で離作料の合意ができなければ,訴訟において離作料の額が決められることとなり,賃貸人が予期しなかった高額の離作料の支払を命じられるリスクがあるから(しかも,この時点では,本件賃貸借契約が既に解除されており,取り返しがつかない。),不合理である。 (イ) また,行政は,司法と異なり,農地面積当たりの平均収穫量,収益,- 21 -離作料等に関する情報や専門的知見を有しているはずであるから,これらを踏まえて離作料の具体的な金額を定める職責を有しているというべきであって,離作料の具体的な金額を定める作業を放棄して司法に委ねることは,行政が第一次的に判断するという職責を放棄するものであるから,許されないというべきである。 第3 当裁判所の判断 べきであって,離作料の具体的な金額を定める作業を放棄して司法に委ねることは,行政が第一次的に判断するという職責を放棄するものであるから,許されないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ Cが本件農地⑵に小石の混じった土を入れた経緯(平成27年) ア平成27年頃当時のAの立場Aは,平成27年頃,本件各農地について,原告の意向を踏まえながら,賃借人であるCとの間の交渉・協議等を行っていた(甲62,証人A)。 イ平成27年1月頃のCの申入れ,Aの拒否Cは,平成27年1月頃,Aに対し,「本件農地⑵の土が減ってしまっ ており,本件農地⑵を田として利用するために新たに土を入れたい。」旨申し入れた。しかし,Aは,本件農地⑵を田として利用するために土を入れる必要はないと考え,また,土を入れることで整地がされている土地であると評価され,その結果として本件農地⑵の評価額が上がってしまい,将来的に本件農地⑵の所有権が相続によって移転した場合に支払うべき 相続税が高くなることが懸念されると考え,上記の申入れを拒否した(甲62,証人A)。 ウ小石の混じった土を入れたことCは,平成27年6月又は7月頃,原告に無断で,本件農地⑵に小石の混じった土を入れた。具体的には,Cは,工事業者に依頼して,本件農地 ⑵にトラック1台分の土を入れてもらったが,その土の中に大きさ10㎝- 22 -程度の小石(個数等の詳細は明らかではない。)が混じっていた。工事業者は,その際,Cに対し,従来の土と新たに入れた土とが重なると地盤沈下するので間に小石を入れる旨説明していた(甲32,35,36,64の46~48,乙 詳細は明らかではない。)が混じっていた。工事業者は,その際,Cに対し,従来の土と新たに入れた土とが重なると地盤沈下するので間に小石を入れる旨説明していた(甲32,35,36,64の46~48,乙2)。 エ Aの抗議等 Aは,遅くとも平成27年12月末頃までに,小石の混じった土が本件農地⑵に入れられたことを確認し,Cに対し,小石の混じった土を入れたことについて抗議した。これに対し,Cは,Aに対し,本件農地⑵の土が少し流れてしまっていたために土を入れたものである旨回答した。 また,Cは,本件農地⑵に耕作土を入れたいと考えていたことから,上 記の抗議を受けた後,Aに対し,改めて,本件農地⑵に更に土を入れたい旨を申し入れた。しかし,Aは,Cが入れようとしている土がどのような土であるかなどを確認することなく,上記の申入れを拒否した。その主な理由は,本件農地⑵に土を入れた場合には,将来的に本件農地⑵の所有権が相続により移転したときに相続税が高くなる可能性があるからである というものであった(以上につき,甲28,32,62,乙2,証人A)。 ⑵ 本件農地⑵の近年の耕作状況(平成27年頃以降)ア平成26年頃までCは,少なくとも平成26年頃まで,本件農地⑵において畑作をしていた(甲32,64,証人A)。 イ平成28年Cは,平成28年には,本件農地⑵の一部の区画において野菜を植えるなどしていたほかは,本件農地⑵において畑作や稲作をしていなかった(甲32,34,62,証人A)。 ウ平成29年 Cは,平成29年には,本件農地⑵において畑作や稲作をしていなかっ- 23 -たが,畑地を整え,畝を作るなどしていた(前記前提事実⑸ウ,甲32,35,62,証人A)。 エ平成30 Cは,平成29年には,本件農地⑵において畑作や稲作をしていなかっ- 23 -たが,畑地を整え,畝を作るなどしていた(前記前提事実⑸ウ,甲32,35,62,証人A)。 エ平成30年Cは,平成30年には本件農地⑵に稲を植えていたが,前記前提事実⑸ウのとおり,水をためることができなかった(甲37,38,62,証人 A)。 ⑶ 原告・C間の協議等(平成28年以降)ア農事調停原告は,平成▲年▲月▲日,大阪地方裁判所堺支部に対し,Cを相手方として,農事調停を申し立てた。上記農事調停の調停期日は,2回実施さ れた。上記農事調停において,Cは,本件各農地を売却した上で,その代金を原告とCとで2分の1ずつに分けるべきである旨主張したのに対し,原告においてはCの上記の主張を受け入れることはできない旨主張したため,上記農事調停は,不成立により終了した(なお,Aは,Cの主張ではCの取得額が5000万円程度になると認識している。)(甲62,乙1, 2,証人A,弁論の全趣旨)。 イ大阪地方裁判所堺支部の民事訴訟原告は,上記農事調停が終了した後である平成▲年▲月▲日,大阪地方裁判所堺支部に対し,Cを被告として,本件各農地のCの占有が賃貸借契約ではなく使用貸借契約に基づくものであると主張して,使用貸借契約の 終了を理由として本件各農地の明渡し等を求める訴訟を提起した。同裁判所は,平成▲年▲月▲日,本件各農地の使用関係が賃貸借契約によるものである旨認定した上で,原告の請求を棄却する旨の判決をし,同判決はその後確定した。上記訴訟において提出されたCの平成▲年▲月▲日付け陳述書においては,Cは,本件農地⑵を放置しているわけではなく,石の混 じっていない土を入れれば,いつでも農作 をし,同判決はその後確定した。上記訴訟において提出されたCの平成▲年▲月▲日付け陳述書においては,Cは,本件農地⑵を放置しているわけではなく,石の混 じっていない土を入れれば,いつでも農作物を植えることができるように,- 24 -雑草を取って畝を作っている旨の記載があった。なお,原告は,上記訴訟における和解協議において,上記訴訟を担当する裁判官に対し,本件各農地の年間収益の40年~50年分の金額(Aは,この金額が500万円程度であると認識している。)であれば,離作料を支払う意向がある旨伝えたことがあった(甲26,28,52,62,証人A,弁論の全趣旨)。 ウ本件賃貸借契約の解除申入れ(ア) Cは,平成30年頃,当時の代理人である弁護士を通じて,原告に対し,本件各農地の評価額又はその売却代金につき原告が6割を取得し,Cがその余の4割を取得することとして本件賃貸借契約を解除することを申し入れたが,原告はこれに応じなかった(甲28,62,乙1,2, 証人A)。 (イ) Cは,平成31年3月頃,原告に対し,第三者を通じて,上記(ア)と同様の申入れをしたが,原告はこれに応じなかった(甲62,証人A)。 (ウ) Cは,上記(イ)の後,原告に対し,本件各農地における畑作や稲作をやめたいとして,上記(ア)及び上記(イ)と同様の申入れをしたが,原告は これに応じなかった(甲62,証人A)。 ⑷ 原告が本件申請において提出した申請書・資料の内容等(平成30年)ア許可申請書の記載原告が本件申請において提出した許可申請書には,前記前提事実⑷イのCの不同意や同⑸のCの各行為がそれぞれ信義に反する旨の記載や,Cに は耕作の意思がないと考えている旨の記載,本件各農地について「逆ざや現象」が生じ 提出した許可申請書には,前記前提事実⑷イのCの不同意や同⑸のCの各行為がそれぞれ信義に反する旨の記載や,Cに は耕作の意思がないと考えている旨の記載,本件各農地について「逆ざや現象」が生じている旨の記載等のほか,離作料の支払に関し,本件賃貸借契約の解約に当たり離作料の支払が必要である場合には,本件農地⑴については340万円,本件農地⑵については180万円の離作料の支払を申し入れる旨の記載があった(甲52)。 イ聞き取り調査における原告の回答- 25 -原告は,令和▲年▲月▲日に行われた被告担当者からの聞き取り調査において,上記許可申請書に記載された離作料の金額の根拠となる資料の有無について尋ねられた際に,原告としてはCの行為が「信義に反した行為」に当たるため離作料の支払をせずに本件賃貸借契約を解約することが妥当であると考えているものの,裁判になった場合のことも考えて離作料につ いても記載したものであり,参考とした資料は特にない旨回答した(乙1)。 ウ本件申請における提出資料原告が本件申請において提出した資料等においては,大阪狭山市に建設される建物の入居者等の駐車場として本件農地⑵を賃貸することを承諾する旨の平成▲年▲月▲日付け承諾書(甲21)が含まれていた。原告は, 上記聞き取り調査の際,被告担当者に対し,上記承諾書が本件農地⑵の転用計画に関するものである旨説明した(乙1)。 ⑸ 聞き取り調査におけるCの回答(令和元年)被告担当者は,令和▲年▲月▲日,Cに対し,本件申請に関する聞き取り調査を行った。上記聞き取り調査におけるCの回答の要旨は,次のア~ウの とおりである(乙2)。 ア工事用道路としての使用許諾について平成26年5月頃 申請に関する聞き取り調査を行った。上記聞き取り調査におけるCの回答の要旨は,次のア~ウの とおりである(乙2)。 ア工事用道路としての使用許諾について平成26年5月頃に本件農地⑴の一部をHに工事用道路として使用させたことについて,原告に事前に伝えなかったのは自らの落ち度であるが,Hに対して原告から了解を得るように伝えていたにもかかわらず,Hの担 当者が原告から了解を得なかったものである。 本件農地⑴の一部を工事用道路として使用させたことにより,使用させた部分だけ稲の育ちが悪いなどの影響が生じているといったことはない。 上記工事用道路は平成26年6月には撤去され,使用期間は2か月程度であったため,本件農地⑴については,同年も含め,1年も休耕せずに耕 作している。 - 26 -イ小石の混じった土を入れたことについて本件農地⑵に小石の混じった土を入れた経緯について,本件農地⑵ではそれまで畑作をしていたが,稲作をすることにすれば畑作より手間がかからなくなるので,稲作をやりたいと考えていた。 本件農地⑵については,水路の位置が低く,水をためるのに時間がかか ることから,稲作を断念していたが,工事業者から,「土を入れれば上の水路(本件東西側溝)から水が取れるので土を入れてあげましょう。」などと言われたため,その説明を信じて土を入れさせたところ,原告から勝手に土を入れてもらっては困ると言われ,トラック1台分の土を入れたところで止められた。その土は,上に耕作土を入れる予定であったため,小 石の混じったものであった。 (小石の混じった土を入れると水がたまらなくなり,田にはならないのではないかという趣旨の被告担当者の質問に対し,)水をた 土を入れる予定であったため,小 石の混じったものであった。 (小石の混じった土を入れると水がたまらなくなり,田にはならないのではないかという趣旨の被告担当者の質問に対し,)水をためるための水路は2つあり,それまで使用していた位置が低い方の水路(本件南北水路)は水をためるのに時間がかかり,位置が高い方の水路(本件東西側溝)か ら水を入れる方が水をためやすい。高い方の水路(本件東西側溝)と田との高低差があったため,本件農地⑵に土を入れようと考えたが,途中で原告に土を入れるのを止められたため,本件農地⑵は,稲作をするのに必要な土の高さには達していない。本件農地⑵を無理に田にしようとは考えていない。 なお,本件農地⑵の耕作状況に関し,平成28年及び平成29年は耕作せず,平成30年には耕作を再開したものの,平成31年(令和元年)は耕作していない。 ウその他について年金収入により生計を立てている。本件農地⑴における稲作に関し,1 反当たり1万円程度を支払って田植えや稲刈り等の作業を第三者に委託し- 27 -ている。植付け以降の作業は,Cとその親族で行っている。 今後の意向について,本件各農地が所在する地域では,農地の賃貸借契約を解消する際に賃借人に金銭が支払われなかった事例は聞いたことがなく,農地を売却したときの代金の4割又は5割を賃借人が取得し,その余を賃貸人が取得することが通例となっており,原告がそのような割合によ り計算した金額を支払うのであれば,本件各農地を明け渡す意向がある。 原告が本件各農地を活用したい気持ちも分かるので,話合いには応じるつもりである。 2 争点⑴(Cの行為の農地法18条2項1号該当性)について⑴ 判断枠組み 農地法18 原告が本件各農地を活用したい気持ちも分かるので,話合いには応じるつもりである。 2 争点⑴(Cの行為の農地法18条2項1号該当性)について⑴ 判断枠組み 農地法18条は,農地等についての賃借権を保護し,賃借人の地位の安定を図るため,民法の原則を修正し,当該賃貸借の当事者は都道府県知事の許可を受けなければ解約の申入れ等をしてはならないものとした上で,都道府県知事が上記許可をすることができる場合を一定の事由がある場合に限る旨定める。このような農地法18条の趣旨や,農地等についての賃貸借契約が 当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることを踏まえれば,「賃借人が信義に反した行為をした場合」(同条2項1号)とは,賃借人が,賃貸借契約関係を継続することが客観的に不可能といえるような背信的な行為をした場合をいうものと解される。 ⑵ 検討 上記の見地に立って,Cの行為が農地法18条2項1号に該当するか否かについて,以下検討する。 ア本件生産緑地希望申出に係る都市計画の案に対する不同意について(ア) 原告は,本件賃貸借契約の目的は農地の耕作であり,本件生産緑地希望申出に係る都市計画の案に同意しないことは賃貸目的に反するもので あるから,Cによる不同意は「信義に反した行為」である旨主張する。 - 28 -(イ) しかし,農地の所有者が当該農地について都市計画に生産緑地地区として定められることを希望している場合に,賃借人にこれに同意すべき義務があると解すべき規定はない。また,生産緑地地区の区域内の農地が賃貸されているときは,当該農地について使用収益権を有する賃借人がこれを農地として管理する義務を負い(生産緑地法7条1項),生 産緑地に と解すべき規定はない。また,生産緑地地区の区域内の農地が賃貸されているときは,当該農地について使用収益権を有する賃借人がこれを農地として管理する義務を負い(生産緑地法7条1項),生 産緑地における農業経営を原則として30年間継続することが予定されている(同法10条1項参照)ことを踏まえると,上記同意をするかどうかは賃借人各自の生活設計にわたる事柄というべきであって,賃借人の意向が尊重されるべきものであるから,賃借人に同意をすべき信義則上の義務があるということもできない(最高裁平成13年判決参照)。 そして,本件において,Cが上記同意をしなかったことが「信義に反した行為」であると認めるに足りるその他の事情も認められない。 (ウ) したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ平成26年5月頃に本件農地⑴をHに使用させたことについて(ア) 原告は,Cが平成26年5月頃に本件農地⑴の一部を工事用道路と してHに使用させたことが「信義に反した行為」である旨主張する。 (イ) そこで検討すると,Cが本件農地⑴の一部をHに使用させるに当たり,原告の事前の同意を得ていなかったこと(前記前提事実⑸ア)等,原告の主張に沿う事実も認められる。 しかし,原告の事前の同意を得ていなかったとしても,原告は,Cが 本件農地⑴の一部をHに使用させていることを知った後に,Hの担当者と協議した上で,使用料として100万円を受領し,最終的には上記使用を追認したというのであるから(前記前提事実⑸ア),原告がCから事前の同意を得ていなかったことについて,殊更に背信性が大きい事情としてみることは困難である。 これに加え,上記工事用道路として使用させたのは,本件農地⑴の一- がCから事前の同意を得ていなかったことについて,殊更に背信性が大きい事情としてみることは困難である。 これに加え,上記工事用道路として使用させたのは,本件農地⑴の一- 29 -部にとどまるものであり,これによって平成26年以降の本件農地⑴の耕作が困難になったなどの事情もうかがわれない(なお,証人Aも,本件農地⑴に鉄板を入れて工事用道路として使用させたことによって,一時的には土が固くなる等の弊害が生ずるものの,原状回復が不可能になるものではない旨述べるところである。)ことを踏まえれば,本件農地 ⑴の一部をHに使用させた行為が,「信義に反した行為」であるとはいえない。 なお,原告は,Cが自身の所有する土地を宅地開発して売却する目的で本件農地⑴の一部をHに使用させた旨主張するが,仮に,Cがそのような目的を有していたとしても,そのことによって特に背信性が高い行 為に当たるということはできないから,この点に関する原告の主張は理由がない。 (ウ) したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ本件農地⑵に小石の混じった土を入れたことについて(ア) 原告は,Cが本件農地⑵に小石の混じった土を入れたことが「信義に 反した行為」である旨主張する。 (イ) そこで検討すると,小石の混じった土を入れることにより直ちに本件農地⑵に水路から水を引くのが容易になるとはみられず,かえって,保水力の低下により水がたまりにくくなったり,耕作が困難になったりするおそれも考えられるから,Cの上記行為は,本件農地⑵の農地とし ての効用を低下させ,原告・C間の信頼関係を一定程度損ねるものであるとも解される。 しかし,Cは,本件申請に関する被告担当者からの聞き取り調査において,畑とし は,本件農地⑵の農地とし ての効用を低下させ,原告・C間の信頼関係を一定程度損ねるものであるとも解される。 しかし,Cは,本件申請に関する被告担当者からの聞き取り調査において,畑として利用していた本件農地⑵について,高い位置にある水路から水を引くことで田として利用するために土を入れた旨回答していた ところである(上記認定事実⑸イ)。 - 30 -そして,一般に,水田整備のうち整地工事の手順は,主に,①表土のはぎ取り作業,②心土部分の基盤切り盛り作業・基盤整地作業,③表土の戻し作業・整地作業,から成るところ(前記前提事実⑼),本件農地⑵については,②が行われたが,③は行われていない(上記認定事実⑴)。 また,一般に,心土部分の基盤切り盛り作業においては,盛土の沈下を 見込んであらかじめ基盤の計画標高よりも高く「余盛り」をしておくことがあり,また,心土中の石礫は基盤を強化する効果もあるとされているところ(前記前提事実⑼),上記認定事実⑴のとおり,Cは,平成27年1月頃に,Aに対して土を入れたい旨述べたほか,上記の小石の混じった土を入れた後も,Aに対して土を入れたい旨申し入れていたのであ るから(上記認定事実⑴),小石の混じった土を入れた後に更に小石の混じっていない土を入れる予定であったものと認められる(この点は原告が本件申請において提出したCの平成▲年▲月▲日付け陳述書〔上記認定事実⑶イの訴訟において提出されたもの〕の内容とも整合するものである。)。 そうすると,Cの上記の回答内容は,水田整備の一般的知見や,これに沿うCの行動とも整合するものであるから,Cが小石の混じった土を入れたのは,本件農地⑵において耕作を行うという本件賃貸借契約の目的に沿った行動であることを推認させるものであるというこ 知見や,これに沿うCの行動とも整合するものであるから,Cが小石の混じった土を入れたのは,本件農地⑵において耕作を行うという本件賃貸借契約の目的に沿った行動であることを推認させるものであるということができる。 他方,Cが耕作以外の目的をもって小石の混じった土を入れたことをうかがわせる事情は見当たらない。 (ウ) また,本件農地⑵の賃貸人である原告の意向を受けてCとの交渉等をしていたAは,本件農地⑵に更に土を入れたい旨のCの申入れに対し,Cが入れようとしている土が農業に適した土であるのかなど,土を 入れることが本件農地⑵の農地としての利用に資するものであるかど- 31 -うかといった事情を確認することなく,本件農地⑵に土を入れる必要がないとして,本件農地⑵に土を入れることを承諾しなかったというのである(上記認定事実⑴エ)。これに加えて,AがCの上記申入れを承諾しなかった主な理由が,本件農地⑵に土を入れた場合には,将来的に本件農地⑵の所有権が相続により移転したときに相続税が高くなる可能 性があるというものであったこと(上記認定事実⑴エ)をも踏まえれば,原告において,本件農地⑵に土を入れることの適否を判断する上で,本件賃貸借契約の目的である農地としての利用とは直接関係しない事情を重視していたことがうかがわれる。 (エ) 以上に加え,本件賃貸借契約が本件各農地を農地として利用させる ことを目的とするものであり,本件農地⑵の利用方法を畑から田に変更することも本件賃貸借契約の目的に沿うものであることや,Cが本件各農地において営んでいた農業によって主に生計を立てているわけではない一方で(上記認定事実⑸ウ),原告においても本件各農地の返還を受けた場合にこれらを引き続き農地として利用する意思を有していたわけ 地において営んでいた農業によって主に生計を立てているわけではない一方で(上記認定事実⑸ウ),原告においても本件各農地の返還を受けた場合にこれらを引き続き農地として利用する意思を有していたわけ ではない(上記認定事実⑷ウ)という本件賃貸借契約の当事者双方の事情をも踏まえれば,Cが原告に無断で本件農地⑵に小石の混じった土を入れた行為は,原告・C間の信頼関係を一定程度損なうものではあるものの,本件賃貸借契約を継続することが客観的に不可能といえるような背信的な行為をしたものであるとまでいうことは困難である。 (オ) 原告は,水は高い方から低い方へ流れるものであり,土を入れて土地を高くすれば水を引くことができるようになるとはいえず,Cの回答内容は全く不合理である旨主張する。この点に関し,本件農地⑵の周辺の状況等(前記前提事実⑶)に照らし,Cが具体的に本件東西側溝からどのようにして本件農地⑵に水を引くつもりであったかについてはその回 答内容を踏まえても必ずしも明らかではなく(例えば,本件線路側溝か- 32 -ら取水することが現実的に可能であるのかなどの疑問が残る。),Cの回答内容に疑問を差し挟む余地がないわけではない。しかし,Cの回答内容は,工事業者から,「本件農地⑵に土を入れれば本件東西側溝から水を引くことができるから土を入れてあげる。」などと言われたため,その説明を信じて土を入れさせたというものにすぎず(上記認定事実⑸ イ),C自身が本件農地⑵の効用を低下させるなどの不当な目的をもって小石の混じった土を入れたものとは認められない。そうすると,実際には(客観的には),本件農地⑵に土を入れても本件東西側溝から本件農地⑵に水を引くことが困難であったとしても,そのことをもってCが農業以外の不当な目的をもって本件農地⑵に られない。そうすると,実際には(客観的には),本件農地⑵に土を入れても本件東西側溝から本件農地⑵に水を引くことが困難であったとしても,そのことをもってCが農業以外の不当な目的をもって本件農地⑵に土を入れたということはで きず,上記の行為が「信義に反した行為」であるとはいえない。 原告は,Cが入れた土に,一定の大きさの石が混じっていることも主張するが,上記(イ)~(エ)で指摘した事情に照らし,このことをもって本件賃貸借契約を継続することが客観的に不可能といえるような背信的な行為に当たるということはできない。 (カ) したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ Cが耕作を十分にしていないことについて(ア) 原告は,Cが耕作を放棄しており,耕作の意思もないとして,これが「信義に反した行為」である旨主張する。 (イ) そこで検討すると,Cは,平成29年に,本件農地⑵において耕作を 行っておらず,平成28年,平成30年以降も本件農地⑵において十分な耕作をしていないこと(前記前提事実⑸ウ)等,原告の主張に沿う事実も認められる。 しかし,Cは,平成28年にも,少なくとも本件農地⑵の一部の区画においては野菜を植えるなどしていた(上記認定事実⑵イ)ほか,平成 30年には,結果的に十分な稲作ができなかったとしても実際に稲を植- 33 -えるなどしていたのである(上記認定事実⑵エ)から,平成28年以降,本件農地⑵において全く耕作をしていないとまでは認め難い。 また,本件で証拠として提出された写真等から認められる平成29年の本件農地⑵の客観的状態(上記認定事実⑵ウ)や,同年に本件農地⑵の雑草を取って畝を作っていた旨のCの陳述内容(上記認定事実⑶イ) からは,Cは 拠として提出された写真等から認められる平成29年の本件農地⑵の客観的状態(上記認定事実⑵ウ)や,同年に本件農地⑵の雑草を取って畝を作っていた旨のCの陳述内容(上記認定事実⑶イ) からは,Cは,同年,本件農地⑵の耕作に向けて整備することが可能な状態を保っていたことがうかがわれる。 これらの事情に加え,Cが少なくとも平成27年頃まで20年以上の長年にわたって本件各農地を耕作していたこと(前記前提事実⑵ウ)等に照らせば,平成28年以降,Cが本件農地⑵を農地として十分に活用 して耕作をしているとまではいい難い状況が継続していること(前記前提事実⑸ウ)や,C自身も場合によっては本件各農地を原告に明け渡す旨述べていたこと(上記認定事実⑸ウ)を考慮してもなお,Cの上記の耕作状況等が,農地の使用収益に関する善管注意義務や用法遵守義務に著しく反するものであるとはいえない。 そうすると,原告の主張する上記の事実をもって,本件賃貸借契約を継続することが客観的にみて不可能といえるような背信的行為に当たるということは困難である。 (ウ) したがって,原告の上記主張は採用することができない。 オ第三者に耕作させているとの主張について (ア) 原告は,Cが本件各農地を第三者に耕作させている旨主張する。 (イ) そこで検討すると,Cにおいても,被告担当者からの聞き取り調査に対し,田植えや稲刈り等の一部の作業を第三者に委託して行わせている旨述べているところである(上記認定事実⑸ウ)。 しかし,稲の植え付け以降の作業についてはCとその親族で行ってい る旨のCの供述も踏まえると,第三者への作業の委託は,飽くまでCが- 34 -自ら行うべき作業の一部について,Cの補助者として作業を行う の植え付け以降の作業についてはCとその親族で行ってい る旨のCの供述も踏まえると,第三者への作業の委託は,飽くまでCが- 34 -自ら行うべき作業の一部について,Cの補助者として作業を行うことを第三者に依頼したものにすぎず,これが無断転貸に当たるなどということは困難である。 そうすると,上記のような一部の作業の委託は,「信義に反した行為」であるとはいえない。 (ウ) したがって,原告の上記主張は採用することができない。 カ小括以上によれば,原告が主張する上記ア~オの各事情は,それぞれ本件賃貸借契約を継続することが客観的にみて不可能といえるような背信的行為に当たるということはできない。また,他に,そのような背信的行為に当 たるといえるような事情は認められない。 ⑶ 争点⑴のまとめしたがって,Cの各行為は,「賃借人が信義に反した行為をした場合」(農地法18条2項1号)に該当するとはいえない。 3 争点⑵(本件申請について適正な離作料の支払を条件とすることで農地法1 8条2項6号に該当すると判断したことの適法性)について⑴ 離作料の支払を条件としたことについてア農地法18条2項6号は,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることについて都道府県知事が許可することができる場合として,「その他正当の事由がある場合」を掲げているところ,これは,賃借人の離農等 により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合をいうものと解される。そして,同法1条及び2条の2の各規定の内容に照らせば,同法18条2項6号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かは,当該事案における諸般の事情を総合考慮して,農地の賃貸借 して,同法1条及び2条の2の各規定の内容に照らせば,同法18条2項6号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かは,当該事案における諸般の事情を総合考慮して,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることを認めることが 当該農地の適正かつ効率的な利用につながるといえるか否か等という観点- 35 -から判断すべきである。 イこの点に関し,原告は,本件処分に関し,そもそも離作料の支払を条件とすることなく許可をすることが相当な事情があるとして,離作料の支払を条件としたことが違法である旨主張する。 ウそこで,以下検討する。 (ア) 原告においては,本件各農地の具体的な転用計画が進行していたとまではいえないものの,本件賃貸借契約が解除された場合には本件各農地を農地として利用する意思はなく,本件農地⑵については駐車場として第三者に賃貸する予定であったことから,本件各農地の賃貸借契約を解除し,明渡しを求めたいとの意向を強く有していたものと認められる (前記前提事実⑺ア,上記認定事実⑶,⑷)。 また,Cにおいても,少なくとも本件処分時点において本件農地⑵については十分な耕作をしておらず,原告から一定の金額を支払う旨の申出とともに本件各農地の賃貸借契約の解除を求められた場合にはこれを拒否するものではない旨の意向を示していたことが認められる(前記前 提事実⑸ウ,上記認定事実⑵,⑸,上記2⑵)。 さらに,本件各農地については,固定資産税等の額が賃料の額を上回る「逆ざや現象」が長年にわたって生じており,本件賃貸借契約を継続した場合には,原告に引き続き金銭的負担が生ずると予測されること(前記前提事実⑹),Cは主に年金により生計を維持しており,本件賃貸借 契約の終了により生ずる生 生じており,本件賃貸借契約を継続した場合には,原告に引き続き金銭的負担が生ずると予測されること(前記前提事実⑹),Cは主に年金により生計を維持しており,本件賃貸借 契約の終了により生ずる生活上の不利益が大きいとはいい難いこと(上記認定事実⑸ウ)も認められる。 以上のような本件賃貸借契約の当事者双方の生活状況や本件賃貸借契約の解除による経済的な影響に加えて,本件各農地の周辺の状況(前記前提事実⑶)等に照らせば,原告が本件賃貸借契約の解約の申入れ等を することを認めることが本件各農地の適正かつ効率的な利用につながる- 36 -といえるか否か等という観点からみても,本件賃貸借契約を将来に向かって終了させることが適当であったといえる。 (イ) 他方で,本件賃貸借契約が昭和20年頃に締結されたものであること(前記前提事実⑵ア)に加え,Cが,本件農地⑴については本件処分時点においても耕作を継続していたこと(前記前提事実⑸),本件農地 ⑵についても,十分な耕作が行われていたとまではいい難いものの,農地として利用することができるように一定の整備を続けていたとうかがわれること(上記認定事実⑵,上記2⑵),少なくとも20年以上の長年にわたって本件各農地の耕作を続けていたこと(前記前提事実⑵ウ)等の事情も認められる。これらの事情に照らせば,本件各農地の賃貸借 を終了させるに際して,Cに対して一定の金銭的補償をすることも合理的であるといえるような事情があったといえる。 (ウ) 以上のような本件事案における諸般の事情を総合考慮すれば,本件については,本件賃貸借契約を終了させるに際して,Cに対する金銭的補償を全くすることなく無条件に解除することを認めるのではなく,一 定の金銭的補償をすることで,農地の賃貸借を終了させるこ 本件については,本件賃貸借契約を終了させるに際して,Cに対する金銭的補償を全くすることなく無条件に解除することを認めるのではなく,一 定の金銭的補償をすることで,農地の賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合に当たる。そうすると,大阪府知事が,本件処分において,「その他正当の事由がある場合」(農地法18条2項6号)に該当すると判断したことや,適正な離作料の支払を条件として同号に該当すると判断したことは,合理的なものと認められる。 エしたがって,適正な離作料の支払を条件とすることで,農地法18条2項6号に該当すると判断した大阪府知事の判断に違法はない。 ⑵ 離作料の具体的な金額を明示しなかったことが,農地法18条4項に照らして違法か否かについてア農地法18条4項は,都道府県知事が同条1項の許可をするに当たって, 条件を付けてすることができる旨定め,どのような場合にどのような条件- 37 -を付けるかについて何ら規定していないところ,これは,同項の許可をするに当たり,どのような条件が適切であるかについては,個別的事情により異なることから,同項の許可に付ける条件の内容について,各申請に係る個別的事情を踏まえた都道府県知事の裁量的判断に委ねる趣旨と解される。 そして,離作料は,農地の賃貸借契約が解約申入れ等により終了することによって賃借人が被る農業経営及び生計上の不利益を緩和する趣旨で,賃貸人が賃借人に対して支払うものである。したがって,都道府県知事が農地の賃貸借契約の解約申入れ等を許可する条件として,離作料の金額を明示してその支払を命ずる場合には,その金額は農地の賃貸借の終了によ って賃借人が被る農業経営及び生計上の不利益を回復するに足りるものであれば 解約申入れ等を許可する条件として,離作料の金額を明示してその支払を命ずる場合には,その金額は農地の賃貸借の終了によ って賃借人が被る農業経営及び生計上の不利益を回復するに足りるものであれば,具体的な金額の算定は都道府県知事の裁量に委ねられていると解すべきである。もっとも,本件条件は,離作料の金額を明示することなくその支払を命じているから,このような条件を付けることが都道府県知事に付された裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たり違法といえるか否か を検討する。 イこの点に関し,原告は,本件許可において離作料の金額が重要な要素であることや,離作料の具体的な金額が明示されないまま許可がされた場合に,原告と賃借人であるCとの間において離作料の金額に関する訴訟等の紛争が発生し,原告が予期しない高額の離作料の支払を命じられるリスク 等がある旨主張する。 ウしかし,賃貸人と賃借人との間における離作料の支払義務(私法上の支払義務)は,農地法18条1項の許可によって直接生ずるものではなく,賃貸人と賃借人との間の合意によって生ずるものである(この点において,裁判所が,借地又は借家の明渡請求訴訟において,「正当の事由」を補完 する事情として立退料の支払が相当であると判断して,立退料の支払との- 38 -引換給付判決をする場合とは異なる〔借地借家法6条,28条,民事執行法31条1項参照〕。)。そうすると,農地法18条1項の許可に付けられた条件において具体的な金額が明示されているか否かは,離作料の支払義務の有無・内容を左右するものではない。したがって,同項の許可において具体的な金額を明示せずに離作料の支払を条件とすることが,直ちに都 道府県知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。 な のではない。したがって,同項の許可において具体的な金額を明示せずに離作料の支払を条件とすることが,直ちに都 道府県知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。 なお,農地法18条1項の許可に付けられた条件において離作料の具体的な金額が示されていれば,賃貸人と賃借人が離作料の金額について合意を形成する過程において,行政により一定の金額を相当とする旨の判断が 示されたということから当該金額が一応の基準として扱われ,上記合意の形成に資することは想定されるものの,具体的な金額を明示することによる上記の影響は,飽くまで合意の形成可能性に関する事実上のものにとどまるというべきである。また,離作料については,当該農地の所在する地域の慣行等によってその金額の実情等が異なることがあり得るものである から,その具体的な金額については,当該地域の慣行等を踏まえた賃貸人・賃借人間の交渉の結果として形成される合意に委ねることが適切である場合も想定されるのであるし,離作料の具体的な金額を明示した条件を付けた場合に,かえって,同金額を基準とすべきであると主張する者と,同金額が当該地域の実情に反しており全く根拠を欠くと主張する者との間で 大きな対立を生じさせ,合意の形成が困難となる場合も想定され得るところである。 エそこで,更に進んで,本件における具体的事情を踏まえて,本件条件を付けたことが大阪府知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるか否かを検討する。 本件条件は,本件処分という行政処分に付された附款であり,本件条件- 39 -を付したことによって生ずる効果は,原告が,Cに対して適正な離作料を支払うという行政上の義務を負うというものにすぎない。そうすると,本件条件は,原告とCとの間に私法上 であり,本件条件- 39 -を付したことによって生ずる効果は,原告が,Cに対して適正な離作料を支払うという行政上の義務を負うというものにすぎない。そうすると,本件条件は,原告とCとの間に私法上の権利義務関係を生じさせるものではないから,原告がCに対して本件処分を踏まえて本件賃貸借契約の解約申入れをした場合,原告のCに対する離作料の支払の有無にかかわらず,民 法617条1項1号により,解約の申入れの日から1年を経過することによって本件賃貸借契約は終了するものと解される。したがって,本件条件に離作料の具体的な金額が明示されていないことによって原告に特段の不利益が生ずるということはできない。 また,本件においては,本件処分がされるよりも前から,本件賃貸借契 約を終了させる場合に原告がCに対して一定の金銭を支払う必要があるか否かや,支払う必要がある場合のその金額の算定方法に関し,原告とCとの間に争いが生じていたことがうかがわれることからすれば,大阪府知事が離作料の支払という条件を付ける場合にその具体的な金額を併せて明示することが上記の紛争の早期解決のためには望ましかったとの見方もあり 得なくもない。しかし,本件各農地の明渡しに際して一定の離作料の授受が必要であることについて原告・C間に共通認識はあったものの,離作料の額について原告・C間の考え方や希望額の隔たりは大きく,本件申請に先行する農事調停,民事訴訟等においても離作料の額について合意に達することはなく,その原因として本件各農地や地域の慣行等の個別的な特殊 性やこれを背景とする原告・C間の長年にわたる深刻な対立がうかがわれたというのであって(前記前提事実⑷,⑺,上記認定事実⑶~⑸),このような事情の下では,大阪府知事が条件において離作料の具体的な金額を明示 を背景とする原告・C間の長年にわたる深刻な対立がうかがわれたというのであって(前記前提事実⑷,⑺,上記認定事実⑶~⑸),このような事情の下では,大阪府知事が条件において離作料の具体的な金額を明示することが上記の紛争の早期解決にかえって支障となる可能性があるなどと考えることにも相応の理由があるということができる。 以上の各事情を踏まえれば,大阪府知事において,原告とCとの間の合- 40 -意形成に期待して,適正な離作料の支払を条件とするにとどめ,離作料の具体的な金額を示さなかったことが,不合理であるということはできない。 そうすると,離作料の具体的な金額を示さない本件条件を付けたことが,大阪府知事に委ねられた裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。 オしたがって,離作料の具体的な金額を明示しなかったことが,農地法18条4項に照らして違法であるとはいえない。 ⑶ 争点⑵のまとめしたがって,大阪府知事が,本件申請について適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号に該当すると判断したことは,適法であ る。 4 まとめ⑴ 以上によれば,具体的な金額を明示することなく適正な離作料を支払うことを条件として,農地法18条2項6号に該当するとして同条1項の許可をした本件処分は,適法である。 したがって,原告の主位的請求のうち本件処分の取消しを求める部分(前記第1の1⑴)及び本件条件の取消しを求める部分(前記第1の1⑶)は理由がなく,また,原告の予備的請求のうち本件処分の取消しを求める部分(前記第1の2⑴)及び本件条件の取消しを求める部分(前記第1の2⑶)はいずれも理由がない。 ⑵ また,本件訴えのうち,本件賃貸借契約の解除の許可処分の義務付けを求 取消しを求める部分(前記第1の2⑴)及び本件条件の取消しを求める部分(前記第1の2⑶)はいずれも理由がない。 ⑵ また,本件訴えのうち,本件賃貸借契約の解除の許可処分の義務付けを求める部分(前記第1の1⑵)及び本件農地⑴について340万円,本件農地⑵について180万円の離作料を支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める部分(前記第1の2⑵及び⑷)は,いずれも行政事件訴訟法3条6項2号のいわゆる申請型の義務付けの訴えであると解されるところ,上記 2及び3で判示したとおり,本件処分(本件条件も含む。)は適法であって,- 41 -本件処分が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるものとは認められないから,同法37条の3第1項2号の要件を満たしておらず,不適法な訴えとして却下を免れない。 第4 結論よって,本件訴えのうち,本件賃貸借契約の解除の許可処分の義務付けを求め る部分及び本件農地⑴について340万円,本件農地⑵について180万円の離作料を支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める部分はいずれも不適法であるからこれらを却下し,原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地 修 裁判官太田章子 裁判官関 尭熙(別紙省略)
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