平成15(行ウ)9 文書一部非開示処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年6月15日 鳥取地方裁判所
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判決文本文12,967 文字)

平成15年(行ウ)第9号文書一部非開示処分取消請求事件(口頭弁論終結日平成16年4月20日)判決 主文 1 被告が原告に対して平成15年6月5日付けでした「鳥取県警本部警務課,監察官室,警備第一課の平成14年4月及び5月の食糧費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書」のうち「本県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影」を開示しないとの処分を取り消す。 2 被告が原告に対して平成15年6月5日付けでした「鳥取県警本部警務課,監察官室,警備第一課の平成14年4月及び5月の出張旅費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書」のうち「本県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影」を開示しないとの処分を取り消す。 3 被告が原告に対して平成15年6月5日付けでした「鳥取県警本部捜査第一課の平成14年4月から平成15年2月までの出張旅費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書のうち,鳥取(県警本部)から米子に出張している部分のみ」のうち「本県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影」を開示しないとの処分を取り消す。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 1 前提となる事実(当事者間に争いがない。)(1) 原告は,地方自治体,地方公共団体等の不正ないし不当な行為を監視し,その是正を求めることを目的とする,鳥取県内に事務所を有する団体(権利能力なき社団)である。 被告は,鳥取県の制定した鳥取県情報公開条例(平成12年鳥取県条例第2号。以下「本件条例」という。)2条1項所定の実施機関である。 (2)本件条例は,県政に対する県民の知る権利を尊重し(1条),これを具体化するため,県民等開示請求権者が被告の保有する公文書の 第2号。以下「本件条例」という。)2条1項所定の実施機関である。 (2)本件条例は,県政に対する県民の知る権利を尊重し(1条),これを具体化するため,県民等開示請求権者が被告の保有する公文書の開示を請求する権利を保障し(5条),公文書は原則として開示しなければならないと規定する(9条1項)。 一方,本件条例は,個人の秘密その他の通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮を求め(3条2項),一定の個人に関する情報については不開示とし,一定の要件が認められる場合にのみ開示を認めている(9条2項)。 (3) 本件条例9条のうち本件に関係する規定は下記のとおりである。 記第9条実施機関は,公文書の開示請求があったときは,当該公文書を開示しなければならない。 2 実施機関は,開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報のいずれかが含まれている場合には,前項の規定にかかわらず,当該開示請求に係る公文書を開示しないものとする。 (2) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報ウ公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名(当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって 必要であると認められる情報ウ公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名(当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって,規則に定めるものを除く。)並びに当該職務遂行の内容エ公にすることが公益上必要であり,かつ,個人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる情報であって,規則で定めるもの(4) 本件条例9条2項2号ウを受け,鳥取県情報公開条例施行規則(平成12年鳥取県規則第8号。以下「本件規則」という。)6条1項に下記のとおり規定されているが,同項3号は,平成14年4月1日施行の改正によって加えられたものである。 記第6条条例第9条第2項第2号ウの規則で定める情報は,次のとおりとする。 (1) 給与,勤務成績その他の通常他人に知られないことが相当であると認められる情報(2)開示することにより,当該公務員等(条例第9条第2項第2号ウに規定する公務員等をいう。)に対する暴行,脅迫等を招く明白かつ差し迫った危険が予見される情報(3) 警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員の氏名(5) 原告は,被告に対し,平成15年4月28日,本件条例5条4項に基づき,① 鳥取県警本部警務課,監察官室及び警備第一課の平成14年4月及び同年5月の食糧費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書,② 鳥取県警本部警務課,監察官室及び警備第一課の平成14年4月及び同年5月の出張旅費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書,並びに③ 鳥取県警本部捜査第一課の平成14年4月から平成15年2月までの出張旅費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書のうち鳥取県警本部から米子に出張している部分について,情報 行為書及び支出仕訳書,並びに③ 鳥取県警本部捜査第一課の平成14年4月から平成15年2月までの出張旅費に関する支出負担行為書及び支出仕訳書のうち鳥取県警本部から米子に出張している部分について,情報開示請求を行った(以下「本件情報開示請求」という。また,上記①ないし③の文書を「本件各文書」という。)。 被告は,平成15年5月2日,決定期間延長の通知を行った後,同年6月5日,本件各文書のうち,鳥取県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影部分は,公にすることにより,当該警察職員の権利利益を不当に侵害するおそれがあり,本件条例9条2項2号ウ,本件規則6条1項3号に該当することを理由として,一部非開示とする決定を行った(以下「本件処分」という。)。 2 原告の請求原告は,本件条例5条4項に基づき,実施機関である被告に対し公文書(前記1(4)の①ないし③)の開示を請求したところ,被告が開示請求に係る文書のうち警部補及び同相当職以下の職にある警察職員の氏名及び印影部分を非開示とする旨の決定(本件処分)をしたことに対して,警部補及び同相当職以下の職にある警察職員の氏名を非開示情報と規定する本件規則6条1項3号は本件条例に反し無効であり,仮にそうでないとしても,これらの情報は本件条例所定の非開示情報には該当しないとして,本件処分の取消しを求めている。 3 争点(1) 本件規則6条1項3号の規定は,本件条例に反し無効か(2)本件処分において非開示とされた鳥取県警察職員の氏名及び印影は,当該公務員の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報(本件条例9条2項2号ウ)に該当するか第3 争点に関する当事者の主張 1 本件規則6条1項3号の規定は,本件条例に反し無効か(争点(1))(原告の主張)(1) 本件条例9条2項2号ウは ある情報(本件条例9条2項2号ウ)に該当するか第3 争点に関する当事者の主張 1 本件規則6条1項3号の規定は,本件条例に反し無効か(争点(1))(原告の主張)(1) 本件条例9条2項2号ウは,非開示事由としてどのような内容でも規則で定めることができるとしているのではなく,「当該公務員の権利利益を不当に侵害するおそれ」(以下「権利不当侵害のおそれ」ということがある。)がある情報に限定しているのであるから,条例の下位規範である本件規則で定める非開示事由も,かかる権利不当侵害のおそれが認められる情報でなければならない。 (2) 交通関係や市民が訪れる部署の警察職員は,勤務中に名札,識別証(これには識別番号が付されている。)を着用し,警察の剣道大会など各種大会において入賞した者に関しては,県警が実名や勤務地等をマスコミに発表し,これらは新聞紙面に記事として掲載されてきた。また,地域の駐在所は,駐在する警察官の氏名を明らかにして地域の人に定期的に便りを配布している。これらの事情によって,これまで権利不当侵害のおそれが発生したことはない。 したがって,本件規則をもって,警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員の氏名を非開示情報として具体的に指定し,一律に非開示とすることは許されない。 (3)なお,本件条例9条2項2号アは,慣行として公にされていた情報も当然に開示すべきものと規定しているが,鳥取県においては,平成11年3月までは,毎年定期異動の際,県警本部がすべての職員の氏名及び所属を各報道機関に発表しており,その内容は日本海新聞及び山陰中央新報の2紙に掲載されていた。よって,警察官の氏名及び所属は慣行として公にされていたものであり,本件規則6条1項3号の規定は,本件条例9条2項2号アとも整合しない。 (4) よって,本件規則6条1 央新報の2紙に掲載されていた。よって,警察官の氏名及び所属は慣行として公にされていたものであり,本件規則6条1項3号の規定は,本件条例9条2項2号アとも整合しない。 (4) よって,本件規則6条1項3号は本件条例に反し,無効である。 (被告の主張)(1) 本件条例9条2項2号ウは,「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって,規則に定めるもの」と規定しており,知事の裁量に基づく規則の制定を待ってはじめて当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報の内容が定まる構造になっている。それゆえ,上記規定の趣旨は,「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがあると知事が認め,規則で定めるもの」と解釈すべきであり,規則の具体的内容については,知事の広範な裁量に委ねられているというべきである。 本件条例は,3条1項において,「実施機関は,公文書の開示に当たっては,県民の公文書の開示を求める権利が十分に保障されるように,この条例を解釈し,運用するものとする。」と規定すると同時に,同条2項において,「実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たっては,個人の秘密その他の通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」と規定している。これは,本件条例が,情報の開示を原則としつつも,決して無制約ではなく,個人のプライバシーにも最大限の配慮をすべきことを明らかにしたものであり,知事に裁量権の逸脱,濫用が認められるか否かは,かかる条例の趣旨を踏まえて判断すべきである。 (2) 警察官は,犯行現場や警察規制の現場で直接に被疑者らと対峙し,逮捕や規制を直接かつ強制的に実現する者であり,その職務は,相手方個人や,過激派,暴力団等の組織から反発や反感を招きやすく,現実にも被害事 警察官は,犯行現場や警察規制の現場で直接に被疑者らと対峙し,逮捕や規制を直接かつ強制的に実現する者であり,その職務は,相手方個人や,過激派,暴力団等の組織から反発や反感を招きやすく,現実にも被害事例が存在している。よって,警察職員の氏名等を開示した場合,警察組織に対して敵意を持つ集団に属する者らによって,警察職員本人やその家族に危害が及ぶことが想定できる。警察職員の配置を含む警察業務に関する情報は,一般市民にとっては些細な情報であっても,犯罪の実行や仕返しを目論む者にとっては貴重な情報となることがある。実際にも,過激派組織が警察官について家族構成を含めた情報を収集し,データベース化した例や,刑務所を出所した者が地方自治体に自己の事件を担当した警察官の転勤先を執拗に尋ねた例がある。 このように,本件規則制定の目的は,上記危険に殊更晒されやすい警察職員及びその家族のプライバシー権を保護し,もって警察職員及びその家族の私生活上の平穏を守ろうとするものであり,目的の必要性及び合理性は明らかである。 本件規則6条1項3号は,非開示情報を警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員に限定しているが,これは,警部以上の者についても権利不当侵害のおそれは存在するものの,これらの者は幹部として勤務する立場にあり,組織的な説明責任を果たす立場にあること,警部補及び同相当職以下の者については警察組織に対して敵意を持つ者らに直接的に接する場面が多く,権利不当侵害のおそれが特に高いことなどを考慮して,警察職員のプライバシーと知る権利の調整を図り,警部補及び同相当職以下の者の氏名に限って非開示情報としたものである。 (3) したがって,本件規則6条1項3号の規定は,知事の規則制定における裁量権を逸脱,濫用するものではなく,何ら本件条例に反しない。 2 本件 職以下の者の氏名に限って非開示情報としたものである。 (3) したがって,本件規則6条1項3号の規定は,知事の規則制定における裁量権を逸脱,濫用するものではなく,何ら本件条例に反しない。 2 本件処分において非開示とされた鳥取県警察職員の氏名及び印影は,当該公務員の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報(本件条例9条2項2号ウ)に該当するか(争点(2))(原告の主張)仮に,本件規則6条1項3号が無効でなかったとしても,本件情報開示請求において開示を求めた情報のうち,鳥取県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影は,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報には該当しないから,本件処分は本件条例9条2項2号ウに反し違法であり,取り消されるべきである。 (被告の主張)別紙「他県の条例」記載のとおり,全国の都道府県の情報公開条例には,職務遂行に関わる限り,公務員の氏名を非開示情報から除外しながら,一定の公務員の氏名については,なお,非開示情報とし,非開示とする公務員の職の指定を規則に委任しているものがあり,本件条例9条2項2号ウもこれに該当する。したがって,本件条例9条2項2号ウの「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって,規則に定めるものを除く。」は「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがあるものと知事が認め,規則で定めるもの」と解すべきであり,これを受けて,本件規則6条1項3号は「警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員の氏名」と定めている。 本件処分は,本件規則6条1項3号の定める一義的な文言によってされた処分であるから,実施機関たる知事の判断(裁量)に違法の問題は生じず,本件処分が違法となり得るのは,本件規則6条1項3号が違法の場合に限られるというべき 6条1項3号の定める一義的な文言によってされた処分であるから,実施機関たる知事の判断(裁量)に違法の問題は生じず,本件処分が違法となり得るのは,本件規則6条1項3号が違法の場合に限られるというべきである。そして,前記1に主張したとおり,本件規則6条1項3号を違法とする余地はない。 よって,本件処分は適法である。 第4 当裁判所の判断 1 本件規則6条1項3号の規定が,本件条例に反し無効かという点について判断する。 (1)本件条例は,県政に対する県民の知る権利を尊重し(1条),これを具体化するため,県民等開示請求権者が被告の保有する公文書の開示を請求する権利を保障し(5条),公文書は原則として開示しなければならないと規定する(9条1項)。 一方,本件条例は,個人の秘密その他の通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮を求め(3条2項),一定の個人に関する情報については不開示とし,一定の要件が認められる場合にのみ開示を認めている(9条2項)。 そして,本件条例9条2項2号ウは,公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名並びに当該職務遂行の内容は,個人識別情報であっても,原則に立ち返って開示するものとし,ただ,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって規則に定めがあるものについては,例外的に非開示とする旨規定している。 すなわち,その文言上からは,本件条例9条2項2号ウにおいて,例外的に非開示とされる情報は,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれのある情報であることと,規則に定める情報であることの両要件を充足することが必要と解するのが相当である。 このような本件条例9条2項2号ウの構造に照らすと,当該公務員等 利利益を不当に侵害するおそれのある情報であることと,規則に定める情報であることの両要件を充足することが必要と解するのが相当である。 このような本件条例9条2項2号ウの構造に照らすと,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報のうち,知事が,いかなる情報を非開示情報として規則に定めるかについては,知事の定めた情報が,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれの全くない情報でもない限り,知事の広範な裁量に委ねられているといえる。 なお,被告は,本件条例9条2項2号ウの「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であって,規則に定めるものを除く。」は「当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがあるものと知事が認め,規則で定めるもの」と解するべきであると主張するが,文言上,被告の主張するように解することはできない。 (2) では,本件規則6条1項3号の規定は,本件条例に反するか。 本件条例9条2項2号ウを受けて,本件規則6条1項3号は「警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員の氏名」と定めている。 原告は,これまでにも警察職員の氏名が公にされてきたが,権利不当侵害のおそれが発生したことはなく,一律に非開示とすることは許されないから,本件規則6条1項3号は本件条例に反すると主張する。 しかし,警察職員の職務の中には,例えば,公安警備活動等のように,過激派,暴力団等の組織から反発や反感を招きやすいものがあり,警察職員の氏名等が開示された結果,これら警察に敵対的な組織に属する者らによって,氏名等を開示された警察職員が特定され,警察職員本人やその家族に危害が及ぶことも想定し得るものである。そうすると,一般の公務員と異なり,警察職員とりわけ相手方と直接接する機会の多い警部補及び同相当職以下の警察職員の氏名を特 員が特定され,警察職員本人やその家族に危害が及ぶことも想定し得るものである。そうすると,一般の公務員と異なり,警察職員とりわけ相手方と直接接する機会の多い警部補及び同相当職以下の警察職員の氏名を特に秘匿すべき場合があり得ることは否定できず,警部補及び同相当職以下の警察職員の氏名を非開示情報と規定することにも,一定の合理性が認められる(なお,本件規則6条1項2号には,当該情報を開示することにより,当該公務員等に対する暴行,脅迫等を招く明白かつ差し迫った危険が予見される情報を非開示の対象としており,同号によっても,ある程度の目的を達することはできるが,警察職員の氏名等の情報については,上述したような職務の特殊性から,上記2号に規定する明白かつ差し迫った危険が予見される事態に至るまでもなく,非開示の必要性を認め,規則に追加して制定したということになる。)。 また,前記(1)のとおり,本件条例9条2項2号ウにおいて例外的に非開示となる情報は,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であるとともに,知事が規則に定める情報であることが要件となっているので,規則に警部補及びこれに相当する職以下の職にある警察職員の氏名と定めただけで,これらの情報が一律に非開示とされるわけではない。 以上によれば,本件においては,知事の規則制定における裁量権を逸脱,濫用したと認めるに足りる特段の事情は認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 よって,本件規則6条1項3号の規定が,本件条例に反するとはいえない。 (3) なお,原告は,鳥取県においては,平成11年3月まで,すべての警察職員の氏名及び所属が慣行として公にされていたものであるから,本件規則6条1項3号の規定は,本件条例9条2項2号アと整合しない旨主張し,これを本件規則6条1項3号の規 成11年3月まで,すべての警察職員の氏名及び所属が慣行として公にされていたものであるから,本件規則6条1項3号の規定は,本件条例9条2項2号アと整合しない旨主張し,これを本件規則6条1項3号の規定が本件条例に反する根拠として主張する。しかし,本件条例9条2項2号アと同ウは異なる趣旨から別個の非開示事由を規定したものであり,仮にある情報が慣行として公にされていたとしても,当該情報が本件条例9条2項2号ウに定める個人情報に該当すると認められる場合には,当該情報はこれを根拠に非開示とされるべきであるから,原告の主張は理由がない。 2 本件処分において非開示とされた鳥取県警察職員の氏名及び印影が,権利不当侵害のおそれがある情報(本件条例9条2項2号ウ)に該当するかという点について判断する。 (1) 本件条例9条2項2号ウにおいて,ある情報が非開示情報に該当するというためには,当該情報に権利不当侵害のおそれが認められると共に,当該情報が知事の定める規則に該当する必要があることは前記1(1)に説示したとおりである。 そして,本件条例9条2項2号ウの規定によると,本件情報開示請求において,警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影を非開示とするためには,当該情報が本件規則6条1項3号に該当するだけでなく,警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影を開示することにより,当該警察職員の権利利益を不当に侵害するおそれが必要であり,そのためには,何らかの権利侵害が発生する抽象的可能性があるというだけでは足りず,たとえば,当該警察職員の所属する部署がその性質上他者からの攻撃に晒されやすいとか,あるいは,当該警察職員自身,現在や過去の職務内容などから,他者からの攻撃を受ける可能性があるなど,当該警察職員の現在の部署,これまでの経歴,その他,警察を 性質上他者からの攻撃に晒されやすいとか,あるいは,当該警察職員自身,現在や過去の職務内容などから,他者からの攻撃を受ける可能性があるなど,当該警察職員の現在の部署,これまでの経歴,その他,警察を取り巻く状況等諸般の事情にかんがみて,当該警察職員又はその家族に危害,嫌がらせ等何らかの不利益が及ぶ危険性を相当程度具体的に推認し得ることを要するというべきである。 しかし,本件において,被告は,過激派組織が警察官について家族構成を含めた情報を収集しデータベース化した例や,刑務所を出所した者が地方自治体に自己の事件を担当した警察官の転勤先を執拗に尋ねた例があると主張するものの,これが,いつ,警察職員のうちいかなる職にある者について発生した事件か,このような事件が今後も発生する可能性がどの程度あり得るのかなどについて,何ら具体的な主張立証をしていない。 そして,本件処分において,その氏名及び印影部分が非開示とされた警察職員は,鳥取県警本部警務課,監察官室,警備第一課,捜査第一課に所属する職員であるが,被告は,これらの部署において,被告が主張するような例のうちどのような危険が発生し得るかについて,何ら具体的な主張立証をしていない。また,これらの警察職員において,どのような危険が発生し得るかについての主張立証もない。 そうすると,警察に敵対的な組織に属する者らによって,氏名等を開示された警察職員が特定され,警察職員本人やその家族に危害が及ぶことなどの危険が一応想定し得るとしても,これは未だ抽象的可能性に止まっているといわざるを得ず,本件各文書中の警部補及び同相当職以下の警察職員の氏名及び印影部分を公にすることにより,当該警察職員の権利利益を不当に侵害するおそれがあるとはいえない。 (2) 被告は,本件処分は,本件条例9条2項2号ウ,本件規則6条 及び同相当職以下の警察職員の氏名及び印影部分を公にすることにより,当該警察職員の権利利益を不当に侵害するおそれがあるとはいえない。 (2) 被告は,本件処分は,本件条例9条2項2号ウ,本件規則6条1項3号の一義的な文言によってされた処分であり,実施機関たる知事の判断(裁量)に違法の問題は生じないと主張し,全国の都道府県の情報公開条例において,個人を識別できる情報であっても,職務遂行に関わる限り公務員の氏名は非開示情報から除外しながら,一定の公務員の氏名については,なお,非開示情報とし,非開示とする公務員の職の指定を規則に委任している条例があり,本件条例9条2項2号ウもこれに該当すると主張する。 たしかに,被告が,引用する条例には,非開示とする公務員を定めるのを規則に委ね,その結果,一定範囲の公務員の氏名等を一律に非開示とする条例が存する。しかし,それらの条例の規定は,別紙「他県の条例」記載のとおり,「当該公務員等の氏名に係る部分を公開することにより当該公務員等の権利利益を不当に害するおそれがある場合及び当該公務員等が規則で定める職にある場合にあっては,当該公務員等の氏名に係る部分を除く。」など,いずれも,規則に定める情報それ自体を独立した非開示事由とし,また,その多くは,権利不当侵害のおそれのある場合を別個の非開示事由としているのであるから,本件条例とその要件を同じくするとはいえない。本件条例は,当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報であることを前提とした上で,規則に定めるものに限り非開示とするのであって,被告が引用する条例に比べ,より厳しい要件のもとに非開示の例を規定していると解することができる。 (3) 以上によれば,本件文書中の鳥取県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影は,権利不当侵害 に比べ,より厳しい要件のもとに非開示の例を規定していると解することができる。 (3) 以上によれば,本件文書中の鳥取県警察職員のうち警部補及び同相当職以下の職にある者の氏名及び印影は,権利不当侵害のおそれがある情報(本件条例9条2項2号ウ)に該当するとは認められない。 3 以上によれば,被告がした本件処分はいずれも違法であって取消しを免れず,原告の被告に対する本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 鳥取地方裁判所民事部裁判長裁判官山田陽三裁判官神原浩裁判官山本和人は,差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三他県の条例 1 山形県(乙11の1)開示をすることにより当該公務員の権利を不当に侵害し,又は生活に不当に影響を与えるおそれがある場合の当該情報及びそのおそれがあるものとして規則で定める警察職員の氏名に関する情報を除く。 2 群馬県(乙16の1)当該公務員の氏名を公にすることにより,当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く。 3 長野県(乙22)当該公務員等の氏名に係る部分を公開することにより当該個人の権利利益を不当に害するおそれがある場合の当該氏名及び公安委員会規則で定める職にある警察職員の氏名を除く。 4 富山県(乙24)当該公務員が規則で定める職にある職員である場合その他公にすることにより当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合にあっては,氏名を除く。 5 福井県(乙26)当該公務員の職及び氏名に係る情報にあっては,公安委員会規則で定め ある場合その他公にすることにより当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合にあっては,氏名を除く。 5 福井県(乙26)当該公務員の職及び氏名に係る情報にあっては,公安委員会規則で定める職にある警察職員の氏名に係るものその他の公にすることにより当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがあるものを除く。 6 岐阜県(乙27)公開することにより,当該公務員等の権利利益が著しく害されるおそれがある場合の当該情報及び警察職員のうちそのおそれがあるものとして公安委員会規則で定める職員の氏名に関する情報を除く。 7 愛知県(乙28)当該公務員等の氏名に係る部分を公にすることにより当該個人の権利利益を不当に害するおそれがある場合及び当該公務員等が規則で定める職にある警察職員である場合にあっては,当該公務員等の氏名に係る部分を除く。 8 三重県(乙29)公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの又はそのおそれがあると知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名 9 島根県(乙36)当該公務員等の氏名に係る部分を公開することにより当該公務員等の権利利益を不当に害するおそれがある場合及び当該公務員等が規則で定める職にある場合にあっては,当該公務員等の氏名に係る部分を除く。 10 岡山県(乙37)当該公務員等が独立行政法人等の職員,公安委員会規則で定める職にある警察職員及び地方三公社の職員である場合にあっては,当該公務員等の氏名を除く。 11 山口県(乙39)当該公務員等が公安委員会規則で定める警察職員である場合にあってはその氏名,公開することにより,当該公務員等の権利が不当に侵害されるおそれがある場合にあってはその職又は氏名を除く。 12 香川県(乙41)公にする 委員会規則で定める警察職員である場合にあってはその氏名,公開することにより,当該公務員等の権利が不当に侵害されるおそれがある場合にあってはその職又は氏名を除く。 12 香川県(乙41)公にすることにより,当該個人の権利利益を不当に害するおそれがあるもの及びそのおそれがあるものとして実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く。 13 愛媛県(乙42)当該公務員の氏名に係る情報にあっては,公にすることにより,当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合又は当該公務員が,そのおそれがあるものとして公安委員会規則で定める職にある警察職員である場合の当該情報を除く。 14 高知県(乙43)当該公務員の氏名を公にすることにより,当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがあるものとして実施機関が定める公務員の氏名を除く。 15 福岡県(乙44)公安委員会規則で定める職にある警察職員の氏名を除く。 16 佐賀県(乙45)当該公務員等が公安委員会規則で定める職にある警察職員である場合にあっては,当該公務員等の氏名に係る部分を除く。 17 大分県(乙48)実施機関が定める警察職員の氏名を除く。 18 宮崎県(乙49)当該公務員が知事が別に定める職にある警察職員である場合にあっては,当該警察職員の氏名を除く。 19 沖縄県(乙51)公にすることにより,当該個人の権利利益を不当に害するおそれがあるもの又はそのおそれがあると知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名を除く。

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