○ 主文原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。○ 事実第一当事者の申立て(原告)「被告江東東税務署長が昭和四三年五月二九日付で原告の昭和四一年一〇月一日から昭和四二年九月三〇日までの事業年度の法人税についてした更正処分のうち被告東京国税局長の審査裁決によつて維持された部分を取り消す。被告東京国税局長が原告の前記更正処分に対する審査請求につき昭和四四年八月二六日付でした裁決のうち右処分を維持した部分を取り消す。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決(被告ら)主文と同旨の判決第二原告主張の請求原因原告は、昭和四一年一〇月一日から昭和四二年九月三〇日までの事業年度の法人税につき、所得金額欠損一七四万〇、一一一円、道府県民税等三、〇〇〇円、課税標準欠損一七三万七、一一一円、税額零と確定申告したところ、被告江東東税務署長は、昭和四三年五月二九日付で、原告の申告には代表取締役Aに対する仮払金一六九万七、九三四円の計上もれと未収金一三万四、三四〇円の計上もれがあり、また、計上に係る未払金三九万九、六七〇円および支払利息一六万〇、七七五円は否認するとして、これら金員と道府県民税等三、〇〇〇円との合計二三九万五、七一九円に前記欠損一七四万〇、一一一円を加わえた金額から事業税認定損三万三、一五〇円を控除した六二万二、四五八円をもつて課税標準、税額を一七万四、一〇〇円と各更正した。そして、被告東京国税局長も、原告の右更正処分に対する審査請求について、原処分庁の処分理由がすべて失当であることを認めながら、あらためて、原処分庁がAに対する仮払金と認めた前記一六九万七、九三四円は同人に対す不当利得返還請求権であるが、原告がこれを益金に計上しなかつたのであるから、Aに対する寄付金として処理するのが相当であるとして、その損金 がAに対する仮払金と認めた前記一六九万七、九三四円は同人に対す不当利得返還請求権であるが、原告がこれを益金に計上しなかつたのであるから、Aに対する寄付金として処理するのが相当であるとして、その損金不算入額を一六八万七、九三四円と算定したうえで、これを益金に計上し、昭和四四年八月二六日付で、原告の本件係争事業年度における法人税は、課税標準欠損四万九、一七七円、税額零が正当であるとして、右の限度において本件更正処分を維持し、その余の部分を取り消す旨の裁決をした。 不当利得返還請求権であるが、原告がこれを益金に計上しなかつたのであるから、Aに対する寄付金として処理するのが相当であるとして、その損金不算入額を一六八万七、九三四円と算定したうえで、これを益金に計上し、昭和四四年八月二六日付で、原告の本件係争事業年度における法人税は、課税標準欠損四万九、一七七円、税額零が正当であるとして、右の限度において本件更正処分を維持し、その余の部分を取り消す旨の裁決をした。そして、原告が被告主張のような経緯によつてその主張に係る各建物の所有権を喪失し、その喪失時における建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失として損金に計上したことは認める。しかし、原告は、右各建物の所有権喪失による損失の回復請求権―被告らのいうAに対する不当利得返還請求権-を放棄した事実はなく、ただ、該損失の回復手段としては、被告主張の不当利得返還請求権のほか、国は、Aに対する国税債権の徴収権がすでに時効により消滅していたにもかかわらず、その国税を徴収するためAに代位して右各建物の所有権移転登記手続をなし、これによつて原告が前叙のごとく右各建物の所有権を喪失したのであり、また、仮りに時効が完成していなくても、Aの国に対して提起した右国税債権の一部取消しの訴えが将来同人の勝訴となつた場合においても、国の該所為は不法行為となつて、原告は国に対して損害賠償請求権を有することとなり、そのいずれの権利を行使するか、また、幾何の金額を請求するかは、本件係争事業年度においては確定しておらず、これらの点の確定をまつて当該請求権を確定時の属する事業年度の益金として計上することは、税務会計上是認されているところである。したがつて、原告が前記各建物の所有権喪失による損失の回復請求権を本件係争事業 の点の確定をまつて当該請求権を確定時の属する事業年度の益金として計上することは、税務会計上是認されているところである。したがつて、原告が前記各建物の所有権喪失による損失の回復請求権を本件係争事業年度の益金に計上しなかつたことから、右請求権相当額の寄付金支出を認定したことは、違法であるというべきである。なお、前叙のごとく、寄付金の支出を認定したのは原告東京国税局長であるから、その認定の違法を攻撃することは、まさに、本件裁決固有の瑕疵を主張するにほかならないものというべく、また、本件裁決は、課税標準を損失四万九、一七七円、税額を零とするものではあるが、前叙のごとく、原告が前記損失に対する回復請求権を放棄したことを前提としてなされたものであるから、それが取り消されない限り、原告が将来前記損失に対する回復利益を得たとしても、これを営業外収益として益金に計上することが許されないばかりでなく、青色申告書提出の承認を受けている原告にあつては、法人税法五七条一項により繰越欠損金額の損金算入が認められているのであるから、原告の確定申告に係る課税標準の欠損を原告に不利に変更した本件裁決の取消しを求める訴えは、行訴法一〇条二項の規定に違背しないばかりでなく、訴えの利益の点においても欠けるところはないものというべきである。 としても、これを営業外収益として益金に計上することが許されないばかりでなく、青色申告書提出の承認を受けている原告にあつては、法人税法五七条一項により繰越欠損金額の損金算入が認められているのであるから、原告の確定申告に係る課税標準の欠損を原告に不利に変更した本件裁決の取消しを求める訴えは、行訴法一〇条二項の規定に違背しないばかりでなく、訴えの利益の点においても欠けるところはないものというべきである。第三被告らの答弁原告主張の請求原因事実はすべて認めるが、その法律上の主張は争う。原告会社の出資社員であつたAは、昭和三一年一一月一九日その所有に係る東京都台東区<以下略>(旧表示同区<以下略>)所在の店舗併用住宅二棟を当時原告会社の代表取締役であつたBに、Bは、即日これを原告にと順次売却し、所有権移転登記は、中間登記を省略してAから直接原告に対してなされたが、その後において、AとBとの間の売買は、Aが国税の徴収を免かれる目的でなされた であつたBに、Bは、即日これを原告にと順次売却し、所有権移転登記は、中間登記を省略してAから直接原告に対してなされたが、その後において、AとBとの間の売買は、Aが国税の徴収を免かれる目的でなされた詐害行為であつて、転得者たる原告は国との関係においてAに対し右各建物の所有権移転登記手続をなすべき旨の確定判決があり、昭和四一年一〇月一三日国がAに代位して右の所有権移転登記手続を了したため、Aは、法律上の原因なくして、少くとも、右各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円相当の利益を受け、反面原告は、同額の損失を被つたので、民法七〇三条の規定により、Aに対して右と同額の不当利得返還請求権を有するに至つた。ところが、原告は、本件係争事業年度の法人税の計算において、昭和四一年一〇月一三日付で右各建物の所有権を喪失したことにより、その建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えて右金額相当の損金を計上したが、かかる行為は、原告が右不当利得返還請求権を放棄し、Aに対して法人税法三七条五項にいう同額の経済的利益を無償贈与した寄付金の支出を意味することとなる。そこで、被告東京国税局長は原告の本件更正処分に対する審査請求において、原処分庁が前記一六九万七、九三四円をAに対する仮払金としたことは誤りであつて、同人に対する寄付金の支出と認定するのが正当であるとの理由で、法人税法三七条の規定に則り寄付金の損金算入限度額の計算をして、一六八万七九三四円を損金不算入額と認め、結局、課税標準欠損四万九、一七七円の限度において本件更正処分を維持し、右の限度を超える部分を取り消したのである。 長は原告の本件更正処分に対する審査請求において、原処分庁が前記一六九万七、九三四円をAに対する仮払金としたことは誤りであつて、同人に対する寄付金の支出と認定するのが正当であるとの理由で、法人税法三七条の規定に則り寄付金の損金算入限度額の計算をして、一六八万七九三四円を損金不算入額と認め、結局、課税標準欠損四万九、一七七円の限度において本件更正処分を維持し、右の限度を超える部分を取り消したのである。仮りに、原告主張のごとく原告が右不当利得返還請求権を放棄したことにならないとすれば、本件係争事業年度においては該債権一六九万七、九三四円の計上もれがあることになり える部分を取り消したのである。仮りに、原告主張のごとく原告が右不当利得返還請求権を放棄したことにならないとすれば、本件係争事業年度においては該債権一六九万七、九三四円の計上もれがあることになり、課税標準は、欠損三万九、一七七円という原告に不利な結果となるので、原告の右主張は、本件更正処分の適法な取消原因とはなり得ないものというべきである。なお、原告は、本件更正処分の取消しのほかに、本件審査裁決の棄却部分の取消しを求めているが、審査裁決は、もとより申立人に対して新たな義務を課するものではなく、また、裁決の理由は、たとえそれが処分の理由と異なるとしても、処分の結論を維持するものである限り、その違法が裁決固有の暇疵に該当しないことは明らかであるから、本件裁決の取消しを求める訴えは行訴法一〇条二項に違背するものとして棄却されるべきである。第四証拠関係(省略)○ 理由原告主張の経緯によつて本件更正処分および審査裁決がなされたことは、当事者間に争いがない。そこで、先ず、更正処分取消しの請求について判断する。原告がさきにAの所有していた東京都台東区千束四丁目七〇九番所在の店舗併用住宅二棟をその買受人たるBより転買し、所有権移転登記を了していたが、AとBとの間の売買がAの国税債務の徴収を免かれるためになされた詐害行為であつて、原告は国との関係においてAに対し右各建物の所有権移転登記手続をなすべき旨の判決が確定し、昭和四一年一〇月一三日国がAに代位して右の所有権移転登記手続を了したこと、当時における右各建物の帳簿価額が合計一六九万七、九三四円であつたことは、いずれも原告の認めて争わないところである。されば、原告は、右判決の執行によつて前記各建物の所有権を喪失すると同時に、Aに対して少なくとも、右各建物の帳簿価額相当の不当利得返還請求権を取 いてAに対し右各建物の所有権移転登記手続をなすべき旨の判決が確定し、昭和四一年一〇月一三日国がAに代位して右の所有権移転登記手続を了したこと、当時における右各建物の帳簿価額が合計一六九万七、九三四円であつたことは、いずれも原告の認めて争わないところである。されば、原告は、右判決の執行によつて前記各建物の所有権を喪失すると同時に、Aに対して少なくとも、右各建物の帳簿価額相当の不当利得返還請求権を取 たことは、いずれも原告の認めて争わないところである。されば、原告は、右判決の執行によつて前記各建物の所有権を喪失すると同時に、Aに対して少なくとも、右各建物の帳簿価額相当の不当利得返還請求権を取得したものというべきである。したがつて、原告がその自認するごとく右各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えてその金額相当の損金を計上したことは、貸倒れ等特段の事情について主張・立証のない本件にあつては、右不当利得返還請求権を放棄したものというべく、右の放棄は、税法上Aに対する寄付金の支出か、その他のいわゆる隠れたる利益処分に該当するところ、被告東京国税局長がこれを寄付金の支出と認めたことは、寄付金の支出にあつては損金算入が認められていて納税者に有利であることに徴し、相当であるというべきである。原告は、前記各建物の所有権喪失による損失の回復請求権を本件係争事業年度の益金に計上しなかつたのは、該損失回復手段としては被告ら主張のごときAに対する不当利得返還請求権のほか、国に対する損害賠償請求権等があつて、本件係争事業年度においては、そのいずれの権利を行使するか、また、幾何の金額を請求するかが確定していなかつたことによるのであるから、右の不当利得返還請求権を益金に計上しなかつたことから直ちに同請求権を放棄したものと認めることは許されない旨主張する。しかし、少なくとも、原告がAに対して一六九万七、九三四円の不当利得返還請求権を有していたことは、原告の自認するところであるばかりでなく、被告が右の不当利得返還請求権を放棄したものと認めたのは、原告の主張するように、単に該請求権を益金に計上しなかつたことによるのではなくして、前叙のごとく、前記各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えて該金額相当の損金を計上したこと 原告の主張するように、単に該請求権を益金に計上しなかつたことによるのではなくして、前叙のごとく、前記各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えて該金額相当の損金を計上したことによるものであるから、原告の主張は、到底採用に由ないものというべきである。 るのではなくして、前叙のごとく、前記各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えて該金額相当の損金を計上したこと 原告の主張するように、単に該請求権を益金に計上しなかつたことによるのではなくして、前叙のごとく、前記各建物の帳簿価額合計一六九万七、九三四円を雑損失勘定に振り替えて該金額相当の損金を計上したことによるものであるから、原告の主張は、到底採用に由ないものというべきである。次に、審査裁決取消しの請求について判断する。原告は、前叙のごとく、寄付金の支出を認定したのは被告東京国税局長であるから、その認定の違法を理由として、本件審査裁決のうち原告の審査請求を棄却した部分の取消しを求める、という。しかし、行訴法一〇条二項にいう「審査請求を棄却した裁決」のなかには、もとより審査請求の一部棄却裁決も含まれ、また、審査請求の一部棄却裁決は、その限度において、処分を変更し、爾後、処分はその変更された形においてのみ存続しうるにすぎないので、裁決の理由が原処分庁において処分の理由としたところと異なる場合であつても、本訴請求のごとく、処分を維持した裁決の実体的違法を理由として裁決の取消しを求めることは、同条項にいう「処分の違法を理由として」裁決の取消しを求めることに帰着し、同条項に違背するものといわなければならない。よつて、原告の本訴請求は、いずれも、その理由がないこと明らかであるので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判官渡部吉隆横山長竹田穣)
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