平成23年8月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第10984号特許権侵害差止等請求反訴事件口頭弁論終結日平成23年6月6日判決反訴原告株式会社エルフ同訴訟代理人弁護士滝口耕司同訴訟代理人弁理士山内康伸同補佐人弁理士中井博 反訴被告株式会社フレスコーヴォ同訴訟代理人弁護士中村真一同訴訟復代理人弁護士本田幸充同補佐人弁理士嶋宣之同渡辺伸一 主文 1 反訴原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,反訴原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 反訴被告は,別紙物件目録記載の地盤改良機を製造し,使用し,譲渡し,又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。 2 反訴被告は,別紙物件目録記載の地盤改良機,その半製品及びその製造用金型を廃棄せよ。 3 反訴被告は,別紙イ号方法目録記載の地盤改良工法により,地盤改良工事をしてはならない。 4 反訴被告は,別紙ロ号方法目録記載の地盤改良工法により,地盤改良工事をしてはならない。 5 反訴被告は,反訴原告に対し,金1900万円及びこれに対する平成22年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「地盤改良機」とする特許第4478187号の特許(以下,「本件特許権1」という。),発明の名称を「地盤改良工法」とする特許第2783525号の特許(以下,「本件特許権2」という。)を有する反訴原告(以下「原告」という。)が,反訴被告(以下「被告」という。 本件特許権1」という。),発明の名称を「地盤改良工法」とする特許第2783525号の特許(以下,「本件特許権2」という。)を有する反訴原告(以下「原告」という。)が,反訴被告(以下「被告」という。)に対し,別紙物件目録記載の地盤改良機(以下「被告物件」という。)の製造,使用等が本件特許権1を侵害していると主張して,特許法100条1項に基づき被告物件の製造,使用等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき被告物件の廃棄等を求め,また,別紙イ号,ロ号方法目録記載の地盤改良工法(以下,併せて「被告方法」という。)の使用が本件特許権2を侵害すると主張して,特許法100条1項に基づき被告方法による地盤改良工事の差止めを求め,本件特許権1,2の特許権侵害の不法行為に基づき1900万円(本件特許権1につき280万円,本件特許権2につき1470万円,弁護士費用相当額150万円)及びこれに対する不法行為の日の後である平成22年3月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実以下の各事実は,当事者間に争いがないか,又は掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる。 (1) 当事者ア原告原告は,建築物の企画設計,地盤改良工事の設計,施工等を業とする株式会社である。 イ被告被告は,地盤改良工事の設計,施工等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権原告は,下記ア,イの特許権を有している。 ア本件特許権1(ア) 原告は,本件特許権1を有している(乙1,2。以下,下記の特許請求の範囲に係る発明を「本件発明1」,同発明の各請求項に係る発明を「本件発明1-1」等という。また,本件発明1に係る特許を「本件特許1」 原告は,本件特許権1を有している(乙1,2。以下,下記の特許請求の範囲に係る発明を「本件発明1」,同発明の各請求項に係る発明を「本件発明1-1」等という。また,本件発明1に係る特許を「本件特許1」,本件特許1に係る明細書を「本件明細書1」という。)。 特許番号特許第4478187号発明の名称地盤改良機出願日平成20年5月13日登録日平成22年3月19日特許請求の範囲【請求項1】(本件発明1-1)「下部走行体と,該下部走行体に旋回自在に搭載した上部旋回体と,該上部旋回体に起伏自在に枢支されたブームと,該ブームの先端に揺動自在に枢支されたアームと,該アームの先端に掘削動作可能に枢支されたバケットとを備えた掘削機と,前記バケットに取付けられた,固化材液を吐出する固化材液吐出ノズルと,前記バケットに取付けられた,前記固化材液と土とを混練りする撹拌翼を備えたミキサーと,前記ブームの鉛直線に対する角度を検出するブーム角検出器と,前記アームの鉛直線に対する角度を検出するアーム角検出器と,前記バケットの鉛直線に対する角度を検出するバケット角検出器からなる位置検出器と,前記バケットに取付けられた,電気比抵抗を検出する電気比抵抗センサと,前記ブームの長さと前記アームの長さと前記バケットの長さおよび前記位置検出器の検出角度に基づいて前記バケットの先端位置を演算して該バケット先端位置の移動軌跡を演算すると共に前記移動軌跡上の電気比抵抗を求めるコントローラと,該コントローラで求められたバケット先端位置の移動軌跡と電気比抵抗を表示するモニターとを備えており,前記モニターが,施工中の地盤の縦断面における深さの線と幅寸法の線でマトリクス状に区切られた ラと,該コントローラで求められたバケット先端位置の移動軌跡と電気比抵抗を表示するモニターとを備えており,前記モニターが,施工中の地盤の縦断面における深さの線と幅寸法の線でマトリクス状に区切られたマス目で示すマス目表示部を有しており,前記マス目表示部に前記バケット先端位置の移動軌跡および該移動軌跡上における電気比抵抗を表示するものであることを特徴とする地盤改良機。」【請求項2】(本件発明1-2)「前記撹拌翼の回転速度を検出する回転速度計と,回転トルクを検出する回転トルク計とを備えており,前記モニターが前記回転速度,前記回転トルク,および前記回転速度から求められた前記撹拌翼の羽根切り積算数を表示するものであることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。」【請求項3】(本件発明1-3)「前記固化材液の吐出量を検出する流量計とを備えており,前記モニターが前記吐出量を表示するものであることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。」(イ) 本件発明1-1ないし1-3は,次の構成要件に分説することができる。 ① 本件発明1-1A 下部走行体と,該下部走行体に旋回自在に搭載した上部旋回体と,該上部旋回体に起伏自在に枢支されたブームと,該ブームの先端に揺動自在に枢支されたアームと,該アームの先端に掘削動作可能に枢支されたバケットとを備えた掘削機と,B 前記バケットに取付けられた,固化材液を吐出する固化材液吐出ノズルと,C 前記バケットに取付けられた,前記固化材液と土とを混練りする撹拌翼を備えたミキサーと,D 前記ブームの鉛直線に対する角度を検出するブーム角検出器と,前記アームの鉛直線に対する角度を検出するアーム角検出器と,前記バケットの鉛直線に対する角度を検出するバケット角検出器からなる位置検出器と 前記ブームの鉛直線に対する角度を検出するブーム角検出器と,前記アームの鉛直線に対する角度を検出するアーム角検出器と,前記バケットの鉛直線に対する角度を検出するバケット角検出器からなる位置検出器と,E 前記バケットに取付けられた,電気比抵抗を検出する電気比抵抗センサと,F 前記ブームの長さと前記アームの長さと前記バケットの長さおよび前記位置検出器の検出角度に基づいて前記バケットの先端位置を演算して該バケット先端位置の移動軌跡を演算すると共に前記移動軌跡上の電気比抵抗を求めるコントローラと,G 該コントローラで求められたバケット先端位置の移動軌跡と電気比抵抗を表示するモニターとを備えており,H 前記モニターが,施工中の地盤の縦断面における深さの線と幅寸法の線でマトリクス状に区切られたマス目で示すマス目表示部を有しており,前記マス目表示部に前記バケット先端位置の移動軌跡および該移動軌跡上における電気比抵抗を表示するものであるI ことを特徴とする地盤改良機。 ② 本件発明1-2J 前記撹拌翼の回転速度を検出する回転速度計と,回転トルクを検出する回転トルク計とを備えており,前記モニターが前記回転速度,前記回転トルク,および前記回転速度から求められた前記撹拌翼の羽根切り積算数を表示するものであるK ことを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。 ③ 本件発明1-3L 前記固化材液の吐出量を検出する流量計とを備えており,前記モニターが前記吐出量を表示するものであるM ことを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。 イ本件特許権2(ア) 原告は,本件特許権2を有している(甲1,2。以下,下記の特許請求の範囲に係る発明を「本件発明2」といい,同発明の各請求項に係る発明を「本件発明2-1」等という。また 本件特許権2(ア) 原告は,本件特許権2を有している(甲1,2。以下,下記の特許請求の範囲に係る発明を「本件発明2」といい,同発明の各請求項に係る発明を「本件発明2-1」等という。また,本件発明2に係る特許を「本件特許2」といい,本件特許2に係る明細書を「本件明細書2」という。)。 特許番号特許第2783525号発明の名称地盤改良工法出願日平成7年12月21日登録日平成10年5月22日特許請求の範囲【請求項1】(本件発明2-1)「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,該空所(2)内に先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する際に,該水(W)の量を前記土壌(S)中に含まれる含水量に応じて増減させ,それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,ことを特徴とする地盤改良工法。」【請求項2】(本件発明2-2)「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,該空所(2)内に先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する際に,該水(W)の量を空所(2)内に湧き出た地下水量に応じて増減させ,それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,ことを特徴とする地盤改良工法 ,それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,ことを特徴とする地盤改良工法。」(イ) 本件発明2-1,2-2は,次の構成要件に分説することができる。 ① 本件発明2-1A 建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,B1 該空所(2)内に先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する際に,該水(W)の量を前記土壌(S)中に含まれる含水量に応じて増減させ,C それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,D ことを特徴とする地盤改良工法。 ② 本件発明2-2A 建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,B2 該空所(2)内に先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する際に,該水(W)の量を空所(2)内に湧き出た地下水量に応じて増減させ,C それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,D ことを特徴とする地盤改良工法。 (ウ) なお,本件特許権2の出願経過においては,平成9年6月30日に出願公開された後(甲21),平成9年10月20日付けの拒絶理由通知が発送され(甲3),同年12月11日,原告は手 法。 (ウ) なお,本件特許権2の出願経過においては,平成9年6月30日に出願公開された後(甲21),平成9年10月20日付けの拒絶理由通知が発送され(甲3),同年12月11日,原告は手続補正書及び意見書を提出している(甲4)。 (3) 被告の行為被告は,業として被告物件を製造,販売し,また被告方法を使用して地盤改良工事を行っている(甲5の2)。 なお,被告方法には,別紙イ号方法目録記載の縦穴を掘った上でそれを埋め戻す工程を有する工法(以下「イ号方法」という。)と,このような工程を有しない別紙ロ号方法目録記載の工法(以下「ロ号方法」という。)がある(甲5の2)。 2 争点(1) 被告物件は本件発明1-1ないし1-3の技術的範囲に属するか(争点1)(2) イ号方法は本件発明2-1,2-2の技術的範囲に属するか(争点2)(3) ロ号方法は本件発明2-1,2-2の技術的範囲に属するか(争点3)(4) 原告の損害(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告物件は本件発明1-1ないし1-3の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 被告物件の構成ア被告物件の構成は,別紙物件目録「3 被疑侵害品の説明」記載のとおりであり,本件発明1-1ないし1-3の各構成要件(ただし,構成要件I,K,Mを除く。)に対応させて分説すると次のとおりとなる(なお,各符号の説明及び図面については,別紙物件目録参照。)。 a 図1に示す改良機Zは,下部走行体1と,下部走行体1に旋回自在に搭載した上部旋回体2と,上部旋回体2に起伏自在に枢支されたブーム3と,ブーム3の先端に揺動自在に枢支されたアーム5と,アーム5の先端に掘削動作可能に枢支されたバケット と,下部走行体1に旋回自在に搭載した上部旋回体2と,上部旋回体2に起伏自在に枢支されたブーム3と,ブーム3の先端に揺動自在に枢支されたアーム5と,アーム5の先端に掘削動作可能に枢支されたバケット7とを備えたバックホウをベースマシンとしている。 b 固化材液吐出ノズルはバケット7に取付けておらず,ホース31で掘削溝に導入する。 c バケット7は,固化材液と土とを混練りする撹拌翼11を備えている。 d 位置検出器として,ブームの鉛直線に対する角度を検出するブーム傾斜計①と,アームの鉛直線に対する角度を検出するアーム傾斜計①と,バケットの鉛直線に対する角度を検出するバケット傾斜計①の3つの検出器を備えている。傾斜計①,①,①はいずれもブームやアーム,バケットの側壁に取付けられている。 e 図2に示すように,バケット7には,電気比抵抗を検出する電気比抵抗センサ②が取付けられている。 f ブーム3の長さとアーム5の長さとバケット7の長さ及び傾斜計①,①,①の検出角度に基づいてバケット7の先端位置を演算してバケット先端位置の移動軌跡を演算すると共に移動軌跡上の電気比抵抗を求める情報処理装置を備えている。 g 情報処理装置で求められたバケット先端位置の移動軌跡と電気比抵抗を表示するモニター40を備えている。 h 図3に示すように,モニター40は,施工中の地盤の縦断面における深さの線と幅寸法の線でマトリクス状に区切られたマス目で示すマス目表示部45を有しており,マス目表示部45にバケット先端位置の移動軌跡及び移動軌跡上における電気比抵抗を表示するものである。 j 図3に示すように,モニター40が撹拌翼11の攪拌混合回数を表示する。 攪拌混合回数は,土と固化材液の攪拌混合具合の指標となるものである。このため,撹拌翼11の回転速度を検出する るものである。 j 図3に示すように,モニター40が撹拌翼11の攪拌混合回数を表示する。 攪拌混合回数は,土と固化材液の攪拌混合具合の指標となるものである。このため,撹拌翼11の回転速度を検出する回転計③を備えている。 l 固化材液の吐出量を検出する流量計⑤を備えており,図3に示すモニター40が吐出量を表示する。 イ被告は,上記構成jにつき,被告物件が回転トルク計を備えていることを否認する。しかし,被告物件では,モニター40で撹拌混合回数を表示させているところ,撹拌混合回数を得るためには,回転計で検出した撹拌翼の積算回転数から,トルクがかかっていない空転数を除外する必要があり,そのためには回転トルク計を備えることが必須であるから,被告物件が回転計を備えていることは技術的に明らかである。 ウまた,被告は,上記構成lにつき,被告物件が流量計を備えていることを否認するが,流量計なくして適量の固化材を供給することは不可能であるから,被告物件が流量計を備えていることは明らかである。 (2) 本件発明1-1の構成要件充足性ア文言侵害(ア) 構成要件A,CないしHについて被告物件は,上記構成a,cないしhが,それぞれ構成要件A,CないしHを充足する。 (イ) 構成要件Bについてa 構成要件Bは「前記バケットに取付けられた,固化材液を吐出する固化材液吐出ノズル」を要素とするところ,被告物件では,固化材液は,バケットとは別のホースによって掘削溝に導入されており,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられていない。 しかしながら,被告物件を使用した場合であっても,最終的に掘削した土のあるところに固化材液を導入する点では本件発明1-1と同一である。 また,地盤改良は掘削した土と固化材液を混 ない。 しかしながら,被告物件を使用した場合であっても,最終的に掘削した土のあるところに固化材液を導入する点では本件発明1-1と同一である。 また,地盤改良は掘削した土と固化材液を混合することによって得られることからすれば,固化材液を導入するルートの違いは格別の技術的差異をもたらすものではない。さらに,ホースで固化材液を導入する技術は,古くから使われている公知技術でもあり(特開平10-37179号公報(乙6)参照),被告物件は,構成要件の一部を公知技術で代替したものにすぎないといえる。 したがって,被告物件は,構成要件Bを実質的に充足する。 b 被告は,被告方法で用いる地盤改良機に本件発明1のノズルを使用すると,目詰まりが起こるとの主張をするが,バケットには固い土壌を掘削するために爪又はブレードが付けられていることから,固い土壌が直接ノズルの供給口をふさいでしまい,固化材液が供給できなくなるという事態などは生じようがない。 イ均等侵害仮に,被告物件が構成要件Bの文言を充足しないとしても,次のとおり,均等侵害が成立する。 (ア) 第1要件(非本質的部分性)本件発明1の「発明が解決しようとする課題」は,地盤改良工事の施工管理をオペレータの勘に頼ることなく客観的かつ正確に行うことにあり(本件明細書1(乙2)段落【0008】参照),同課題に対応する作用効果は,バケット先端位置移動軌跡がモニター上で監視でき,かつモニター画面上で処理進捗状況が客観的に確認できる点にある。 これらの課題と作用効果に直接貢献する構成要件は,コントローラやモニターであることは明らかであることから,本件発明1-1の本質的部分は,これらの構成要件であるというべきである。 構成要件Bの固化材液吐 らの課題と作用効果に直接貢献する構成要件は,コントローラやモニターであることは明らかであることから,本件発明1-1の本質的部分は,これらの構成要件であるというべきである。 構成要件Bの固化材液吐出ノズルは,上記課題ないし作用効果に関連するものではなく,本件発明1-1の本質的部分に係るものではない。 (イ) 第2要件(置換可能性)構成要件Bの固化材液吐出ノズルは固化材液を導入する機能を有するところ,被告物件のホースも同じ機能を有するのであって,同一の作用効果を奏することは明らかである。 (ウ) 第3要件(置換容易性)特開平10-37179号公報(乙6)には,ホースで改良材(固化材液)を導入する技術が開示されており,固化材液の導入について,構成要件Bの固化材液吐出ノズルの代わりにホースを用いることは,当業者にとって容易に想到することができたものである。 (エ) 第4要件(公知技術から容易推考ではないこと)本件発明1は進歩性を有しているところ,被告物件は,本件発明1と実質的に同一の構成であることから,本件発明1の特許出願時点において,公知技術から容易に推考できたものとはいえない。 (オ) 第5要件(意識的除外等の特段の事情がないこと)構成要件Bは,本件発明1の特許審査過程における手続補正により減縮されたものではなく,被告物件の構成は,特許審査過程において意識的に除外されたものではない。 ウ小括以上のとおり,被告物件は,構成要件AないしHを充足し,それゆえ構成要件Iも充足することから,本件発明1-1の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明1-2の構成要件充足性被告物件は,上記(1)イのとおり,回転トルク計を備えていることか 充足し,それゆえ構成要件Iも充足することから,本件発明1-1の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明1-2の構成要件充足性被告物件は,上記(1)イのとおり,回転トルク計を備えていることから,構成要件Jを充足する。 また,被告物件は,上記(2)のとおり本件発明1-1の構成要件を充足し,それゆえ構成要件Kも充足することから,本件発明1-2の技術的範囲に属する。 (4) 本件発明1-3の構成要件充足性被告物件は,上記(1)ウのとおり,流量計を備えていることから,構成要件Lを充足する。 また,被告物件は,上記(2)のとおり本件発明1-1の構成要件を充足し,それゆえ構成要件Mも充足することから,本件発明1-3の技術的範囲に属する。 【被告の主張】(1) 被告物件の構成ア被告物件が,上記【原告の主張】(1)アの被告物件の構成のうち,aないしhの構成を備えていることは認め,j,lの構成を備えていることは否認する。 イ上記【原告の主張】(1)アの被告物件の構成jについて,被告物件は,回転トルク計を備える必要がなく,これを備えていない。 ウ上記【原告の主張】(1)アの被告物件の構成lについて,被告物件は,固化材液をプラントからホースを介して直接導くため,流量計を備えていない。 (2) 本件発明1-1の構成要件充足性ア文言侵害(ア) 被告物件が,構成要件A,CないしH を充足することは認める。 (イ) 構成要件Bについてa 構成要件Bは,「バケットに取り付けられた固化材液を吐出する固化材液吐出ノズル」を必須の構成要素としている。 これに対し,被告物件は,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられておらず,固化材液は,当該バックホウとは別に設けられたプラントに接続されたホース 材液吐出ノズル」を必須の構成要素としている。 これに対し,被告物件は,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられておらず,固化材液は,当該バックホウとは別に設けられたプラントに接続されたホースにより,直接掘削溝内に導入されることとされている。 よって,被告物件は,構成要件Bの文言を充足しない。 b なお,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられているか否かは,工法の差にも影響する重要な差異である。 すなわち,本件明細書1(乙2)図4の工法では,掘削機で支持層に達するまでの穴をあらかじめ形成するため,地盤改良機で掬い上げる土は一度掘り起こした,ある程度柔らかくなった土であり,固化材液吐出ノズルから吐出される固化材液の吐出圧で吹き飛ばすことができ,目詰まりはほとんど起こらない。 これに対し,被告物件を用いた地盤改良工法は,基礎底までの土砂と固化材液相当分の土砂とを余剰土として排土し,それによりできた穴にプラントから直接導いたホースを使って必要な固化材液を全量流し込み,その上で,固化材液の下方の土を撹拌翼で掘り起こしながら,その土と固化材液を撹拌混合するものであるところ,このような工法の実施に当たって固化材液吐出ノズルを設けた場合には,土を掘り起こしながら固化材液と土とを撹拌混合するときに,掘り起こしていない固い土壌のために固化材液吐出ノズルの吐出口が押さえ付けられてしまい,固化材液を吐出できなくなるか,吐出できたとしても単位時間当たりの吐出量が少なくなってしまう。 c また,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられているか否かは,地盤改良工法の効果上も大きな差異を生じる。 すなわち,固化材液吐出ノズルを設けると,ノズルの開口径は必然的に制限されてしまうのに対し,被告物件においては, り付けられているか否かは,地盤改良工法の効果上も大きな差異を生じる。 すなわち,固化材液吐出ノズルを設けると,ノズルの開口径は必然的に制限されてしまうのに対し,被告物件においては,穴の大きさなどの目的に応じてホースの開口径を自由に選択することができ,大きな穴の場合に開口径の大きなホースを選択すれば,単位時間当たりの固化材液供給流量も多くでき,その分作業効率を上げることができる。 イ均等侵害被告物件は,均等侵害の要件の第1ないし第4要件を備えていない。 (ア) 第1要件本件明細書1(乙2)の【発明の効果】欄には「改良すべき地盤内の土塊をバケットで粉砕し,かつ撹拌翼で撹拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出すると,土と固化材液とを混練りすることができる。このようにバケットを使うので,ブロック状に地盤改良ができ,しかも流動化した状態で地盤改良ができるので,締め固めが不要になり施工効率がよくなる。」と記載されている。 かかる記載からすれば,撹拌翼で撹拌しつつ固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出することは,本件発明1-1の本質的部分に相当するものといえるが,被告物件は,この構成を備えていない。 (イ) 第2要件バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられているか否かは,上記アのとおり,作用効果に大きな差異をもたらす。 よって,被告物件は,本件発明1-1と同一の作用効果を奏するとはいえない。 (ウ) 第3要件バケットに取り付けられた固化材液吐出ノズルから固化材液を導入するのと,プラントからホースで直接固化材液を導入するのとでは,発想がまったく異なるとともに,発明の効果も大きく異なるのであって,置換が容易想到とはいえない。 化材液吐出ノズルから固化材液を導入するのと,プラントからホースで直接固化材液を導入するのとでは,発想がまったく異なるとともに,発明の効果も大きく異なるのであって,置換が容易想到とはいえない。 (エ) 第4要件被告物件は,本件特許1の出願時において公知技術である。 (3) 本件発明1-2の構成要件充足性被告物件は,上記(2)のとおり本件発明1-1の構成要件を充足せず,それゆえ構成要件Kも充足しないし,上記(1)イのとおり,回転トルク計を備えていないから,構成要件Jを充足しない。 (4) 本件発明1-3の構成要件充足性被告物件は,上記(2)のとおり本件発明1-1の構成要件を充足せず,それゆえ構成要件Mも充足しないし,上記(1)ウのとおり,流量計を備えていないから,構成要件Lを充足しない。 2 争点2(イ号方法は本件発明2-1,2-2の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) イ号方法の構成アイ号方法の構成は,別紙イ号方法目録「2 イ号被疑侵害工法の説明」記載のとおりであり,本件発明2-1及び2-2の各構成要件(ただし,構成要件Dを除く。)に対応させて分説すると次のとおりとなる(なお,各符号の説明については,別紙イ号方法目録参照。)。 a (空所形成工程)建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積でかつ一定深さの上部空所(11)を形成する。 a1(縦穴形成工程)該上部空所(11)にさらに支持層まで到達する所定深さの溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して支持層の確認を行う。 a2(埋め戻し工程)溝あるいは縦穴(12)を形成した際に生じる掘削土S を用いて前記溝あるいは縦穴(12)を埋め戻す。 b (固化材等投入工程) )を部分的に形成して支持層の確認を行う。 a2(埋め戻し工程)溝あるいは縦穴(12)を形成した際に生じる掘削土S を用いて前記溝あるいは縦穴(12)を埋め戻す。 b (固化材等投入工程)前記上部空所(11)に所定量の固化材(M)と混練水(W)を投入する。なお,混練水(W)の水量を調整する。 c (撹拌工程)埋め戻された溝あるいは縦穴(12)を含む前記所定開口面積の領域内で,攪拌混合機のバケット(20)を用いて,排土することなく,掘削を行いつつ,前記所定開口面積内の領域内で,掘削した土壌と前記投入された固化材(M)と混練水(W)との攪拌を行い,スラリーを生成する。 (固化工程)前記スラリーを固化させると改良体が完成し,地盤改良工法が終る。 イ被告は,イ号方法には混練水の水量を調整する工程はないと主張するが(上記構成b参照),イ号方法においても,混練水の水量を調整しているはずである。 (2) 本件発明2-1の構成要件充足性ア構成要件Aについて(ア) 構成要件Aは,最終的に地盤改良体(地中に土とセメント又はセメント系固化材を混ぜて固化させて強度を高めた構造物)となる「空所」が形成される旨を特定しているにすぎないのであって,掘削の仕方や手順を特定したものではなく,「空所」を形成する手順における最初の工程を特定したものではない。本件明細書1(甲2)には「空所は基礎の設置位置ごとに四角形状に形成してもよいし,あるいは連続壁状に形成してもよい」「空所の大きさとして,開口面積はかなりの広さまで自由であり深さは6m程度まで掘削することが可能であり」(段落【0010】参照)として,空所形成の自由度の高さを示す記載があり,上記解釈と符合する。 イ号方法では,上部空所(11)を形成する空所形成 は6m程度まで掘削することが可能であり」(段落【0010】参照)として,空所形成の自由度の高さを示す記載があり,上記解釈と符合する。 イ号方法では,上部空所(11)を形成する空所形成工程aと上部空所(11)の下方を掘削する撹拌工程cの両工程によって,地盤改良体に相当する空間を掘削しており,結局は地盤改良体の全体に相当する空所を形成している(なお,地盤改良体を作るためには,途中の工程がいかなるものであれ,最終的には,改良体に相応する穴を地中に掘り,空所を形成しなければならない。)。 したがって,イ号方法は,構成要件Aを充足する。 (イ) なお,イ号方法は,縦穴形成工程a1及び埋め戻し工程a2を有するが,かかる工程を有することによって,構成要件Aの充足性が否定されることにはならない。 仮に,縦穴形成工程及び埋め戻し工程が,まったく別の技術的思想によるものであれば,本件発明2-1の構成要件Aを充足しないとの判断の余地もあるが,上記各工程について技術的思想の変更は認められず,それどころか,上記各工程の技術的有意性自体が乏しい。 すなわち,縦穴形成工程の目的,効果は支持層を目視で確認したり接触して確認したりすることとされているが,その結果,同一施工場所で地層が変化していたり,掘削した先に腐植土が現れたりしたときには,イ号方法においても地盤改良体の底面全体を掘り下げないと,有効に使える支持層を確認することができず,このように地盤改良体の底面全体を掘り下げるのであれば,その方法は本件発明2の構成要件Aと全く変わらないものとなる。したがって,縦穴による確認は,地盤改良工法の本質を変えるものではない。 また,埋め戻し工程については,縦穴が十分に小さい場合には,わざわざ埋め戻す意義は見いだせず,また,縦穴が十分に大きい場合には たがって,縦穴による確認は,地盤改良工法の本質を変えるものではない。 また,埋め戻し工程については,縦穴が十分に小さい場合には,わざわざ埋め戻す意義は見いだせず,また,縦穴が十分に大きい場合には,縦穴は地盤改良体部分の全体に近づくことになってその意義を失うことから,技術的意義はないに等しい。 イ構成要件B1について(ア) 構成要件B1では,該空所内に土壌(S),固化材(C),水(W)を投入するとされているが,その投入の仕方や手順について特定されておらず,投入方法は自由に選択できるものである。 このことは,本件明細書2(甲2)の段落【0011】の「空所内に固化材と水とを所定割合づつ投入して,それらの材料を該空所内で混合・攪拌して固化材混入スラリーを生成した後,該固化材混入スラリーの量に見合う量だけ空所内に土壌を投入し,空所内において土壌と固化材混入スラリーを混合・攪拌して固化材・土壌混合スラリーを生成するようにしてもよい。」との記載,同【0030】の「他の実施形態では,空所2内において,掘削・排土した土壌Sと固化材Cと水Wとを同時に混合・攪拌して固化材・土壌混合スラリーSCを生成することもできる。」との記載によって裏付けられている。 イ号方法では,固化材と水は固化材等投入工程bで投入し,これを撹拌工程cで土壌と撹拌しているが,この手順で投入,撹拌することについても,構成要件B1の解釈に含まれる。 (イ) また,構成要件B1では,投入する水分量を土壌に含まれる含水量に応じて増減させるとされているところ,このような水分量の調整は,自然地盤や天候に対処するものとして特定されたものである。 イ号方法では,固化材等投入工程bにおいて,固化材(C)と混練水(W)を上部空所(11)に入れる ろ,このような水分量の調整は,自然地盤や天候に対処するものとして特定されたものである。 イ号方法では,固化材等投入工程bにおいて,固化材(C)と混練水(W)を上部空所(11)に入れることになるが,その後も水分量調整は不可避的に行われるはずである。 すなわち,①自然地盤は,その種類,地層構成において複雑であり,同じ地層でもその上部と下部では含水比が当然異なる。このため,イ号方法において,上部空所(11)に所定量の固化材(C)と混練水(W)を投入したとしても,その水量は下部の地層の水分量を考慮していないため,スラリーの生成に不足することがある。また,地盤中には,地下水脈が複雑に走っており,そのため,掘削した部分から水が出てくるか否か,あるいは出てきた場合の水量については,実際に掘削してみなければまったく分からない(乙7)。 そこで,水分量調整が行われる必要がある。 また,②イ号方法の実施中に,降雨や干天による水分蒸発が生じた場合には,それに伴う水分量の調整が必然的なものとなる。コンクリート構造物の強度は,セメントと水分の配合割合によって一義的に決定されるところ,建築物の重量を支える地盤改良体が十分な強度を有していなければならないことは当然であるから,水分割合が適正値に保たれるように,厳密に管理計算しなければならないことは当然である。 なお,被告は,当該土壌をサンプリングして含水量をあらかじめ計測しておけば,その後に当該土壌の含水量が大きく変化することはなく,追加水分量の調整は必要ないと主張するが,土壌のサンプリングで含水量を計測することは不可能であり,現実に成立しえない事態を前提とした主張で失当であることは明らかである。 したがって,イ号方法においても,①自然地盤に不可避な土壌の含水量の自然変動 水量を計測することは不可能であり,現実に成立しえない事態を前提とした主張で失当であることは明らかである。 したがって,イ号方法においても,①自然地盤に不可避な土壌の含水量の自然変動や②天候に伴う含水量の変動に応じた水分量の増減は実行しているはずであり,イ号方法は,構成要件B1を充足する。 ウ構成要件Cについて(ア) 攪拌工程について構成要件Cにおける「該空所(2)」は,地盤改良体の大きさに相当する開口面積と深さを有しており,その内部で混合・撹拌してスラリーを生成している。 イ号方法においても,攪拌工程cにおいて,最初の工程aで形成した上部空所(11)の下方部分を掘削しつつ,土壌と固化材と水を攪拌してスラリーを生成する。そして,このときの上部空所(11)の下方部分の掘削作業は,地盤改良体の大きさに相当する空間内での作業となるから,構成要件Cにおける「該空所(2)」内の攪拌に相当する。 (イ) 固化工程についてまた,イ号方法の固化工程cは,スラリーを固化させる点で,構成要件Cと一致する。 エ小括以上のとおり,イ号方法は,構成要件AないしCを充足し,それゆえ構成要件Dも充足することから,本件発明2-1の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明2-2の構成要件充足性ア構成要件B2について改良対象地盤は軟弱地盤であり,かつ自然地盤である以上,地層内からの湧水は避けられず,また,掘削作業中,撹拌バケットが砂礫層の上を移動すると陰圧が生じ,撹拌中の改良体の中に余剰な地下水が混入することも避けられない。 このような掘削中に発生する湧水による水分量の増加は,あらかじめ予測しておくことはできず,このため,土壌の水分量から混練水の量を計算していたとしても, 水が混入することも避けられない。 このような掘削中に発生する湧水による水分量の増加は,あらかじめ予測しておくことはできず,このため,土壌の水分量から混練水の量を計算していたとしても,その後の混練水量の増減調整は必然的に要求されることになる。 したがって,イ号方法においても,自然現象として対応せざるを得ない湧水量に応じた水分量の増減は実行しているはずであり,イ号方法は,構成要件B2を充足する。 イ構成要件A,Cについてイ号方法が,構成要件A,Cを充足することは,上記(2)ア,ウのとおりである。 ウ小括以上のとおり,イ号方法は,構成要件AないしCを充足し,それゆえ構成要件Dも充足することから,本件発明2-2の技術的範囲に属する。 【被告の主張】(1) イ号方法の構成イ号方法が,上記【原告の主張】(1)アのイ号方法の構成のbのうち「混練水(W)の水量を調整する」工程を備えていることは否認し,その余は認める。 イ号方法には,混練水の水量を調整する工程はない。 (2) 本件発明2-1の構成要件充足性ア構成要件Aについて構成要件Aの「空所(2)」は「開口面積と深さは地盤改良体の大きさに相当する」空所である。 これに対して,被告方法(イ号方法,ロ号方法)における空所は,余剰土として排除される腐植土であり,開口面積は地盤改良体と一致するが,深さにおいては地盤改良体の大きさに相当しない。 イ構成要件B1について(ア) 原告の,本件特許2の出願経過における意見書(甲4)には「拒絶理由通知書には,…『予め空所内に水があれば,その量を引いて水を投入することは当然である』と指摘されていますが,…空所内の湧き水が多い場合に固化材の量を増加させることはあっても, (甲4)には「拒絶理由通知書には,…『予め空所内に水があれば,その量を引いて水を投入することは当然である』と指摘されていますが,…空所内の湧き水が多い場合に固化材の量を増加させることはあっても,追加水量を調整することによって『調整含水比を所定値に調整する』という方法は全く行われていません。」と記載されている。 したがって,構成要件B1における追加水量の調整は,湧き水対策としてされるものである。 (イ) 被告方法(イ号方法,ロ号方法)では,現場の土をあらかじめサンプリングし,サンプリングした土の水分量を現場とは異なる施設において計測すると共に,その計測値に基づいて水分量をあらかじめ決定しており,追加水量の調整は一切行われていない。 すなわち,被告方法では,基礎底に相当する深さまでしか掘削しないため,基礎底よりも深い地盤改良必要部分は,土が掘削されないで残された状態が維持されている。このように土が残っている部分は,そこに地下水が湧き出てくることはなく,また,基礎底よりも深い地盤改良必要部分を掘り起こして,その土とセメントを混練したときにも,その土やセメントが取り除かれるわけではないので,やはり水が湧き出したりしない。特に,セメントは水よりも比重が大きいので,水が湧き出してセメントを押し上げてしまうようなこともないので,湧き水の心配は全くない。このため,被告方法では,サンプリングによって計測した計測値に基づいて水分量をあらかじめ決定しており,決定した水分量を事後的に変更することは一切ない。 ウ構成要件Cについて構成要件Cにおける「調整含水比を所定値に調整した」とは,上記イのとおり,追加水分量を調整した値であると解釈できる。 これに対して,被告方法(イ号方法,ロ号方法)では,上記イのとおり追加水分量 構成要件Cにおける「調整含水比を所定値に調整した」とは,上記イのとおり,追加水分量を調整した値であると解釈できる。 これに対して,被告方法(イ号方法,ロ号方法)では,上記イのとおり追加水分量を一切調整していない。 (3) 本件発明2-2の構成要件充足性ア構成要件B2について構成要件Bにおける追加水量の調整も,構成要件B1の場合(上記(2)イ(ア))と同様に追加水分量を調整することである。 これに対して,被告方法(イ号方法,ロ号方法)では,追加水量の調整は一切行われていない(上記(2)イ(イ)参照)。 イ構成要件A,Cについてイ号方法が,構成要件A,Cを充足しないことは,上記(2)ア,ウのとおりである。 3 争点3(ロ号方法は本件発明2-1,2-2の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) ロ号方法の構成アロ号方法の構成は,別紙ロ号方法目録「2 ロ号被疑侵害工法の説明」記載のとおりであり,本件発明2-1及び2-2の各構成要件(ただし,構成要件Dを除く。)に対応させて分説すると次のとおりとなる(なお,各符号の説明については,別紙ロ号方法目録参照。)。 a (空所形成工程)改良範囲内をのり面を設けながら所定量の排土を行い,上部空所(11)を形成する。 b (固化材等投入工程)A-TYPE またはB-TYPE で上部空所(11)に固化材料を投入後,掘削機のバケットで固化材料を攪拌し,固化材液を作製する。 なお,混練水の水量を調整する。 ・ A-TYPE敷地に余裕ありかつ大規模工事で採用するタイプで,セメントミルクプラントでプレミックスした固化材料を,余剰土を排土した部分に投入する方法・ B-TYPE狭隘敷地や小規模工事で採用するタイプで,固化 余裕ありかつ大規模工事で採用するタイプで,セメントミルクプラントでプレミックスした固化材料を,余剰土を排土した部分に投入する方法・ B-TYPE狭隘敷地や小規模工事で採用するタイプで,固化材と混練水を別々に,余剰土を排土した部分に直接投入する方法c (撹拌工程)ミキシングバケットにより,全体が均質になるまで改良体全体を上下前後に攪拌混合する。 (固化工程)前記スラリーを固化させると改良体が完成し,地盤改良工法が終る。 イ被告は,ロ号方法には混練水の水量を調整する工程はないと主張するが(上記構成b参照),ロ号方法においても,混練水の水量を調整しているはずである。 (2) 本件発明2-1の構成要件充足性ア構成要件Aについて(ア) 構成要件Aについて,掘削の仕方や手順を特定したものではなく,「空所」を形成する手順における最初の工程を特定したものではないことは,上記2【原告の主張】(2)ア(ア)のとおりである。 ロ号方法においても,上部空所(11)を形成する空所形成工程aと上部空所(11)の下方を掘削する攪拌工程cの両工程によって,地盤改良体に相当する空間を掘削しており,結局は地盤改良体全体に相当する空所を形成している。 したがって,ロ号方法は,構成要件Aを充足する。 (イ) なお,ロ号方法は,空所形成工程aでのり面を設けているが,のり面の形成は付加的な要件である上,構成要件Aにおける空所形成は自由度の高いものであることから,これによって,構成要件Aの充足性が否定されることにはならない。 イ構成要件B1について(ア) 構成要件B1について,投入の仕方や手順について特定されておらず,投入方法は自由に選択できることは,上記2【原告の主張】(2)イ(ア)のとおりである。 構成要件B1について(ア) 構成要件B1について,投入の仕方や手順について特定されておらず,投入方法は自由に選択できることは,上記2【原告の主張】(2)イ(ア)のとおりである。 ロ号方法では,固化材等投入工程bにおいて,A-TYPE とB-TYPE の別はあるものの,要するに固化材料を投入し攪拌工程cで土壌と攪拌しているのであって,このような固化材と水の投入と土壌との攪拌の2段階に分けた手順についても,構成要件B1に含まれる。 (イ) また,構成要件B1について,水分量の調整が,自然地盤や天候に対処するものとして特定されたものであることは,上記2【原告の主張】(2)イ(イ)のとおりである。 ロ号方法においても,①自然地盤に不可避的な土壌の含水量の自然変動や②天候に伴う含水量の変動に応じた水分量の増減は実行しているはずであり,イ号方法は,構成要件B1を充足する。 ウ構成要件Cについて(ア) 攪拌工程について構成要件Cにおける「該空所(2)」は,地盤改良体の大きさに相当する開口面積と深さを有しており,その内部で混合・攪拌してスラリーを生成していることは,上記【原告の主張】(2)ウ(ア)のとおりである。 ロ号方法においては,攪拌工程cにおいて,最初の工程aで形成した上部空所(11)の下方部分を掘削しつつ,土壌と固化材と水を攪拌してスラリーを生成する。そして,このときの上部空所(11)の下方部分の掘削作業は,地盤改良体の大きさに相当する空間内での作業となるから,構成要件Cにおける「該空所(2)」内の攪拌に相当する。 (イ) 固化工程についてまた,ロ号方法の固化工程cは,スラリーを固化させる点で,構成要件Cと一致する。 エ小括 Cにおける「該空所(2)」内の攪拌に相当する。 (イ) 固化工程についてまた,ロ号方法の固化工程cは,スラリーを固化させる点で,構成要件Cと一致する。 エ小括以上のとおり,ロ号方法は,構成要件AないしCを充足し,それゆえ構成要件Dも充足することから,本件発明2-1の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明2-2の構成要件充足性ア構成要件B2についてロ号方法においても,自然現象として対応せざるを得ない湧水量に応じた水分量の増減は実行しているはずであり,ロ号方法は,構成要件B2を充足する。 イ構成要件A,Cについてロ号方法が,構成要件A,Cを充足することは,上記(2)ア,ウのとおりである。 ウ小括以上のとおり,ロ号方法は,構成要件AないしCを充足し,それゆえ構成要件Dも充足することから,本件発明2-2の技術的範囲に属する。 【被告の主張】(1) ロ号方法の構成ロ号方法が,上記【原告の主張】(1)アのロ号方法の構成のaのうち「のり面を設け」る工程,同構成のbのうち「混練水(W)の水量を調整する」工程を備えていることは否認し,その余は認める。 ロ号方法では,必ずのり面を設けるわけではなく,また,混練水の水量を調整する工程はない。 (2) 本件発明2-1の構成要件充足性ロ号方法が,構成要件A,B1,Cを充足しないことは,上記2【被告の主張】(2)アないしウのとおりである。 (3) 本件発明2-2の構成要件充足性ロ号方法が,構成要件A,B2,Cを充足しないことは,上記2【被告の主張】(3)アないしウのとおりである。 4 争点4(原告の損害)について【原告の主張】 要件充足性ロ号方法が,構成要件A,B2,Cを充足しないことは,上記2【被告の主張】(3)アないしウのとおりである。 4 争点4(原告の損害)について【原告の主張】(1) 原告は,本件発明1及び2を実施して事業を営んでいるところ,被告は,遅くとも平成21年10月1日以降,被告方法を用いて施工することによって本件発明2を実施し,平成22年3月19日以降,被告物件を使用することによって本件発明1を実施した。 被告は,これらによって年間2億8000万円の売上げを上げているところ,その利益率は,被告物件(本件発明1)につき3%,被告方法(本件発明2)につき7%であるから,被告は,本件発明1の実施により280万円,本件発明2の実施により1470万円の利益をそれぞれ受けている。 したがって,被告の本件特許権1,2の侵害行為により原告が受けた損害の額は,上記同額の合計1750万円と推定される(特許法102条2項)。 (2) また,弁護士費用につき,被告の不法行為と相当因果関係にある損害額は,150万円である。 (3) よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づき合計1900万円の損害賠償請求権を有する。 【被告の主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告物件は本件発明1-1ないし1-3の技術的範囲に属するか)について被告物件が本件発明1-1の構成要件A,CないしHを充足することは当事者間に争いがない。 そこで,まず本件発明1-1につき,被告物件が構成要件Bを充足するか否かについて検討する。 (1) 文言侵害の成否ア本件発明1-1の構成要件Bは,「前記バケットに取付けられた,固化材液を吐出する固化材液吐出ノズルと,」である。 同構成要件の「前記バ について検討する。 (1) 文言侵害の成否ア本件発明1-1の構成要件Bは,「前記バケットに取付けられた,固化材液を吐出する固化材液吐出ノズルと,」である。 同構成要件の「前記バケット」は,構成要件Aの「下部走行体と,該下部走行体に旋回自在に搭載した上部旋回体と,該上部旋回体に起伏自在に枢支されたブームと,該ブームの先端に揺動自在に枢支されたアームと,該アームの先端に掘削動作可能に枢支されたバケットとを備えた掘削機」との記載を受けていることから,これは,掘削機の揺動自在に枢支されたアームの先端に掘削動作可能に枢支されたバケットを指すものと解され,構成要件Bは,当該バケットに固化材液を吐出する固化材液吐出ノズルを取り付けられていることを要件とすることは明らかである。 イしかるに,被告物件のこれに該当する構成は,構成bのとおりであり,「固化材液吐出ノズルはバケット7に取付けておらず,ホース31で掘削溝に導入する。」とされており(当事者間に争いがない。),掘削機の揺動自在に枢支されたアームの先端に掘削動作可能に枢支されたバケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられていない。 したがって,被告物件は,構成要件Bを充足するとはいえないというべきである。 (2) 均等侵害の成否ア原告は,被告物件が構成要件Bを充足しないとしても,被告物件は,本件特許権1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明1-1の技術的範囲に属すると解すべき旨を主張する。 イ特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,②当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであ 等と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,②当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③このように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④対象製品が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないのであれば,対象製品は当該特許権の特許請求の範囲に記載された構成と均等であり,当該特許発明の技術的範囲に属するということができる(最高裁第三小法廷平成10年2月24日判決・民集52巻1号113頁参照)。 ウそこで,構成要件Bが文言上充足しないとしても均等侵害といえるかについて,上記要件を踏まえて検討する。 (ア) 本件明細書1には,以下のとおりの記載がある。 a 段落【0001】(【技術分野】)「本発明は,地盤改良機に関する。さらに詳しくは,セメント系固化材液を土中に混入攪拌して軟弱地盤を改良し,構築物の基礎に適した改良地盤を得るための地盤改良機に関する。」b 段落【0004】(【背景技術】)「そこで,改良地盤をブロック状に築造し,流動化した状態で地盤改良できる技術として,特許文献1(注:特許第3298054号)の従来技術が提案された。」「この従来技術は,バックホウのバケットを改良したもので,バケットに撹拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを取付けたものである。この技術で地盤改良する際は,地盤の改良区画を掘削し 術が提案された。」「この従来技術は,バックホウのバケットを改良したもので,バケットに撹拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを取付けたものである。この技術で地盤改良する際は,地盤の改良区画を掘削したあと液状固化材を土中に噴出させ,バケットと内蔵の攪拌翼とで土と液状固化材を混練りする。これにより,土を流動化した状態で地盤改良するので,締め固め工程を要せずブロック状の築造も可能となる。」c 段落【0005】(【背景技術】)「しかしながら,この従来技術では,バケットで撹拌した土と固化材液の混練りの程度や改良区画を予定どおりに地中の隅々まで地盤改良が出来たかどうかは,土中の目視が不可能なことからバックホウを操作するオペレータが勘で判断していたので,地盤改良に不充分な部分が生じていた。」d 段落【0006】(【背景技術】)「一方,地盤改良の効果を確認する一般的な技術は存在し,これには特許文献2(注:特開平7-102551号)および特許文献3(注:特開2001-241031)が存在する。文献2は地盤改良工事の後で電気比抵抗を検出するものであり,文献3は地盤改良工事施工中に電気比抵抗を検出しようとするものである。また,文献2,3の電気比抵抗検出方法は,いわゆるゾンデを地中に打ち込むものである。したがって,バケットで掘削撹拌している施工中に電気比抵抗を同時検出できるものではないので,施工管理にはやはり時間と手間がかかるものである。」e 段落【0008】(【発明が解決しようとする課題】)「本発明は上記事情に鑑み,地盤改良工事の施工管理がオペレータの勘に頼ることなく客観的かつ正確に行える地盤改良機を提供することを目的とする。」f 段落【0010】(【発明の効果】)「第1発 は上記事情に鑑み,地盤改良工事の施工管理がオペレータの勘に頼ることなく客観的かつ正確に行える地盤改良機を提供することを目的とする。」f 段落【0010】(【発明の効果】)「第1発明によれば,つぎの効果を奏する。」「a)改良すべき地盤内の土塊をバケットで粉砕し,かつ撹拌翼で撹拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出すると,土と固化材液とを混練りすることができる。 このようにバケットを使うのでブロック状に地盤改良ができ,しかも流動化した状態で地盤改良ができるので,締め固めが不要になり施工効率がよくなる。」「b)バケットで撹拌混練りした跡のバケット先端位置移動軌跡は位置検出器で検出しモニター上で把握でき,同時にバケット内のミキサーで土と固化材液と混練りされた改良地盤内の電気比抵抗もモニター上で常時監視できる。よって目視できない土中でありながら,改良予定の地盤内の隅々まで混練りができ,かつ固化材液の過不足も生じないようにできる。このため施工途中で地盤検査する必要もなく,施工後に地盤検査する必要もないので,地盤改良工事を効率よく行え時間短縮ができる。」「c)モニターの表示画面で改良すべき地盤の縦断面を示すマス目画面にバケット先端位置の移動軌跡および電気比抵抗を表示することにより,バケット先端位置の移動軌跡により土の撹拌および固化材液との混練り領域が表示でき,土中断面の全ての面の処理進捗状況が客観的に確認できる。よって,オペレータの勘に頼ることなく地盤改良を確実に遂行できる。」(イ) 上記各記載によれば,本件発明1-1の技術分野である地盤改良機については,改良地盤をブロック状に築造し,流動化した状態で地盤改良をするためにはバケットに撹拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを取付けるという従来技術(段落【0004】 技術分野である地盤改良機については,改良地盤をブロック状に築造し,流動化した状態で地盤改良をするためにはバケットに撹拌翼と液状固化材を噴出する噴出ロッドを取付けるという従来技術(段落【0004】)があるが,その従来技術では,土中の目視が不可能であるため混練りの程度や改良範囲をオペレータが勘で判断することとなり,地盤改良に不充分な部分が生じていたという問題点(段落【0005】)があり,一方,地盤改良の効果を確認するためには電気比抵抗検出方法という従来技術があるが,その従来技術では,バケットで掘削攪拌している施工中に電気比抵抗を同時検出できないため施工管理に時間と手間がかかるという問題点(段落【0006】)があったものと認められる。 そして,これらの問題点を克服して,地盤改良工事の施工管理をオペレータの勘に頼ることなく客観的かつ正確に行える地盤改良機を提供するという課題(段落【0008】)を解決するために,本件発明1-1は,解決手法として,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りしながら,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視できる構成を採用したものであり,そして,このような解決手法を採用したことにより,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付ける構成による施工効率を維持しつつ,さらに施工途中又は施工後の地盤検査を要しないため,効率よい地盤改良工事が行えるとともに,地盤改良工事の処理進捗状況が客観的に確認できるため,地盤改良を確実に遂行できるという作用効果を奏するものである(段落【0010】)と認められる。 (ウ) しかしながら,被告物件においては,固化材液はプラントから直接ホースで掘削溝に導入するものとされており,バケットに きるという作用効果を奏するものである(段落【0010】)と認められる。 (ウ) しかしながら,被告物件においては,固化材液はプラントから直接ホースで掘削溝に導入するものとされており,バケットに固化材液吐出ノズルが取り付けられていないため,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りすると同時に,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視できるわけではないから,上記本件発明1-1と同一の作用効果を奏するものとは認められず,この点において被告物件は,均等侵害の第2要件(上記イ②)を充足するものとはいえない。 また,土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出して土と固化材液とを混練りすると同時に,バケットの先端位置移動軌跡や改良地盤内の電気比抵抗をモニター上で把握ないし監視するという部分は,上記検討した本件発明1-1の解決すべき課題及びその解決手法によれば,本件発明1-1の本質的部分に係る特徴であるということができるから,この点についての相違点は,本件発明1-1の本質的部分に係る相違点というべきであって,均等侵害の第1要件(上記イ①)も充足するものとはいえない。 したがって,以上のとおり,被告物件は,本件特許1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるとの原告の主張は採用できない。 エ原告は,均等侵害の第2要件について,被告物件のホースは,固化材液吐出ノズルと同じく固化材液を導入する機能を有するものであるから,被告物件は,本件発明1-1と同一の作用効果を奏する旨主張する。 しかしながら,固化材液導入ノズルの機能は固化材液を導入するにとどまらず,改良すべき地盤内の土塊をバケットで粉 有するものであるから,被告物件は,本件発明1-1と同一の作用効果を奏する旨主張する。 しかしながら,固化材液導入ノズルの機能は固化材液を導入するにとどまらず,改良すべき地盤内の土塊をバケットで粉砕し,かつ攪拌翼で攪拌しながら固化材液吐出ノズルから固化材液を吐出することにより,土と固化材液を混練りするものであるから,被告物件のホースと同一の機能ということはできず,また,この相違点は土と固化材液とを混練りすることができる点や,モニター上での監視により隅々まで混練りができ,固化材液の過不足も生じないようにできる点といった施工効率(本件明細書1段落【0010】【発明の効果】)参照)に影響することは明らかであるから,本件発明1-1と同一の作用効果を奏するとは認められない。 また,原告は,均等侵害の第1要件について,本件発明1-1の課題である地盤改良工事の施工管理をオペレータの勘に頼ることなく,客観的かつ正確に行うための解決手法は,上記解決手法にいうコントローラやモニターであって,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付けることは,同課題の解決に関連するものではないため,その点に係る相違点は本件発明1-1の本質的部分に係るものでない旨主張する。 しかしながら,上記(ア)fの本件明細書1の「【発明の効果】」欄の記載(段落【0010】)によれば,上記課題にいう地盤改良工事の施工管理を客観的かつ正確に行うという趣旨には,施工管理の効率を上げることが含まれていると解され,その作用効果を奏するについてはバケットに固化材液吐出ノズルを取り付けるという構成も寄与していると認められるから,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付けることが,本件発明1-1の課題に関連しないということはできず,原告の主張には理由がない。 (3) 小括ア以上に検討した いると認められるから,バケットに固化材液吐出ノズルを取り付けることが,本件発明1-1の課題に関連しないということはできず,原告の主張には理由がない。 (3) 小括ア以上に検討したとおり,被告物件は,本件発明1-1の技術的範囲に属するとは認められない。 イまた,本件発明1-2は,本件発明1-1の構成を取る地盤改良機に構成要件Jを付加した発明であり,本件発明1-3は,本件発明1-1の構成を取る地盤改良機に構成要件Lを付加した発明であり,いずれもその発明の本質的部分は本件発明1-1と共通であるから,被告物件が本件発明1-2及び同1-3の技術的範囲に属すると認められないことは,被告物件による本件発明1-1の文言侵害及び均等侵害を検討したところと同じである。 2 争点2,3(被告方法は本件発明2-1,2-2の技術的範囲に属するか)について被告方法(イ号方法,ロ号方法)については,その構成について争いがあるが,その点をさておき,まず被告方法(イ号方法,ロ号方法)が,本件発明2の構成要件Aを充足するか否かについて検討する。 (1) 特許請求の範囲の記載本件発明2の構成要件Aは,「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,」というものである。 同構成要件の「空所」は,構成要件B1(B2も同じ)においては,「先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する」対象として,また構成要件Cにおいては,構成要件B1(B2も同じ)において投入された材料が,「混合・攪拌して,…固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる」部位として記載されている。 (2) 本件明細 B2も同じ)において投入された材料が,「混合・攪拌して,…固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる」部位として記載されている。 (2) 本件明細書2の記載本件明細書2(甲2)には,以下の記載が認められる。 ア段落【0010】(【課題を解決するための手段】)「…例えば,空所の大きさとして,開口面積はかなりの広さまで自由であり深さは6m程度まで掘削することが可能であり,その容積内に十分な保持力の改良体を構築することができる。又,空所の深さが深い場合には,例えば0.5~1mの深さづつ数回に分けて固化材・土壌混合スラリーの生成作業を行うことができる。」イ段落【0011】(【課題を解決するための手段】)「又,本願発明では,空所内において固化材・土壌混合スラリーを生成する際に,まず空所内に固化材と水とを所定割合づつ投入して,それらの材料を該空所内で混合・撹拌して固化材混入スラリーを生成した後,該固化材混入スラリーの量に見合う量だけ空所内に土壌を投入し,空所内において土壌と固化材混入スラリーを混合・撹拌して固化材・土壌混合スラリーを生成するようにしてもよい。」ウ段落【0012】(【課題を解決するための手段】)「又,本願発明では,空所内に注入する水の量を,投入される土壌中の含水量を勘案して調整することができる。即ち,投入される土壌中の含水量は,天候(例えば降雨の後)等の条件によって異なり,該土壌中の含水量分だけ追加する水の量を減少させるように調整するとよい。」エ段落【0020】(【発明の実施の形態】)「空所形成作業では,図1に示すように,建造物の基礎が構築される位置の土壌を掘削機10を使用して掘削・排土し,その掘削した土壌Sを空所 。」エ段落【0020】(【発明の実施の形態】)「空所形成作業では,図1に示すように,建造物の基礎が構築される位置の土壌を掘削機10を使用して掘削・排土し,その掘削した土壌Sを空所2の近くに盛土しておく。このように,予め空所2を形成すると,該空所底部の支持地盤の状態を目視あるいは接触等によって直接確認することができる。…」(3) 検討以上に基づいて検討するに,構成要件Aの「空所」が,「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して」形成されたものであることは,同構成要件の文言自体から明らかであるところ,加えて,構成要件B,Cの記載に照らせば,「該空所」は,掘削・排土した土壌,固化材,水を投入した上で,混合・撹拌し,生成された固化材・土壌混合スラリーを固化させる対象ないし部位であるというのであるから,「該空所」は,開口面積及び深さにおいて,地盤改良体の大きさに相当するものであると解される。 なお,この点,本件明細書2では,「空所の深さが深い場合には,例えば0.5~1mの深さづつ数回に分けて固化材・土壌混合スラリーの生成作業を行うことができる」(段落【0010】)とされているところ,このように空所内で固化材・土壌混合スラリーの生成作業を段階的に行う際には,空所内の底面から上方に向かって行う必要があるため,「空所」は支持層までの深さが確保されていることが前提となることが明らかである。また,同明細書では「予め空所2を形成すると,該空所底部の支持地盤の状態を目視あるいは接触等によって直接確認することができる」(段落【0020】)とされているところ,このように,空所形成により,支持地盤の状態を目視あるいは接触等によって直接確認することができるためには,当該支持地盤の深さまで掘削・排土されていること きる」(段落【0020】)とされているところ,このように,空所形成により,支持地盤の状態を目視あるいは接触等によって直接確認することができるためには,当該支持地盤の深さまで掘削・排土されていることが前提となることも明らかである。 したがって,構成要件Aの「空所」は,建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して形成されたもので,開口面積及び深さにおいて,地盤改良体の大きさに相当するものであると解するのが相当である。 (4) 被告方法との対比アイ号方法との対比イ号方法は,「建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定の開口面積でかつ一定深さの上部空所(11)を形成」(構成a)するが,その後,「該上部空所(11)にさらに支持層まで到達する所定深さの溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して支持層の確認を行」(構成a1)った上で,当該「溝あるいは縦穴(12)を埋め戻」(構成a2)し,さらに,「所定開口面積の領域内で,撹拌混合機のバケット(20)を用いて,排土することなく,掘削を行いつつ,前記所定開口面積内の領域内で,掘削した土壌と前記投入された固化材(M)と混練水(W)との撹拌を行い,スラリーを生成」(構成c)し,「前記スラリーを固化させると改良体が完成する」(構成c)というものである(甲5の2)。 すなわち,イ号方法における「上部空所(11)」は,形成された後に,更なる掘削が予定されているため,支持層までの深さを有するものではなく(それゆえ「上部空所」と定義されているものと解される。),構成要件Aの「空所」には該当しない。また,イ号方法の地盤改良体の大きさに相当する部分をみても,当該部分のうち「上部空所」が形成された後に掘削された土壌については,そのまま固化材及び混練水との攪拌 構成要件Aの「空所」には該当しない。また,イ号方法の地盤改良体の大きさに相当する部分をみても,当該部分のうち「上部空所」が形成された後に掘削された土壌については,そのまま固化材及び混練水との攪拌がされるのであって,一度も排土することが予定されていない。そうすると,当該土壌の部分について,構成要件Aの「空所」に該当するとはいえないことは明らかである。 よって,イ号方法は,構成要件Aを充足するものとはいえない。 なお,原告は,イ号方法では,上部空所(11)を形成する空所形成工程aと上部空所(11)の下方を掘削する攪拌工程cの両工程によって,地盤改良体の全体に相当する空所を形成しているから,構成要件Aを充足する旨主張する。 しかしながら,構成要件Aにいう「空所」が,排土により,文字通り一度は空所を形成するものであることは上記(3)で検討したとおりであるところ,イ号方法においては,上部空所(11)の下方は,掘削はされるものの排土はされず,そのため,本件明細書2に記載されている固化材・土壌混合スラリーの生成作業を数回に分けて行うこと(段落【0010】参照)もできないのであるから,上部空所(11)及びその下方を含めて,構成要件Aの「空所」に該当するということはできず,原告の上記主張は採用できない。 イロ号方法との対比ロ号方法は,「改良範囲内をのり面を設けながら所定量の排土を行い,上部空所(11)を形成」(構成a)し,その後,「上部空所(11)に固化材料を投入後,掘削機のバケットで固化材料を攪拌し,固化材液を作製」(構成b)し,「ミキシングバケットにより,全体が均質になるまで改良体全体を上下前後に攪拌混合」(構成c)し,「前記スラリーを固化させると改良体が完成する」(構成c)というものである(甲5の2)。 上 ミキシングバケットにより,全体が均質になるまで改良体全体を上下前後に攪拌混合」(構成c)し,「前記スラリーを固化させると改良体が完成する」(構成c)というものである(甲5の2)。 上記記載のうち,必ずのり面を設けるかについては争いがあるところであるが,いずれにせよ,ロ号方法における「上部空所(11)」についても,形成された後に更なる掘削が予定されていることは明らかであり,支持層までの深さを有するものではないから,上記アで検討したとおり,構成要件Aの「空所」に該当するものとはいえない。 また,ロ号方法における地盤改良体の大きさに相当する部分をみても,当該部分のうち「上部空所」が形成された後に掘削された土壌については,そのまま固化材及び混練水との攪拌がされるのであって,一度も排土することが予定されていないから,この観点からも,当該土壌の部分について,構成要件Aの「空所」に該当するとはいえないことは明らかである。 よって,ロ号方法も,構成要件Aを充足するものとはいえない。 なお,原告は,ロ号方法についても,イ号方法同様,上部空所(11)を形成する空所形成工程aと上部空所(11)の下方を掘削する攪拌工程cの両工程によって,地盤改良体の全体に相当する空所を形成しているから,構成要件Aを充足する旨主張するが,この主張が採用できないことは上記のとおりである。 (5) 小括以上に検討したとおり,被告方法(イ号方法,ロ号方法)は,いずれも本件発明2の技術的範囲に属するとはいえない。 第5 結語以上によれば,原告の請求は理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英 主文 由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官達野ゆき 裁判官網田圭亮
▼ クリックして全文を表示