昭和46(ネ)2354 建物収去、土地明渡請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和48年3月28日 東京高等裁判所
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判決文本文12,471 文字)

主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は、控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、原判決添付別紙目録二記載の建物を収去して、同目録一記載の土地を明け渡し、かつ、昭和四三年八月二四日から右明渡し済みに至るまで一か月金一、九六〇円の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、なお本訴のうち金五万八、三三五円の支払を求める請求にかかる部分を取り下げる、と述べた。被控訴人は控訴棄却の判決を求め、右訴の取下げに同意すると述べた。当事者双方の事実上の陳述及び証拠の関係は、控訴人において、甲第六、第七号証を提出し、当審における証人Aの証言及び控訴人の本人尋問の結果を援用し、後記乙第一六号証の成立を認めると述べ、被控訴人において、乙第一六号証を提出し、当審における被控訴人の本人尋問の結果を援用し、前記甲号各証の成立を認める、と述べたほかは、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。理由 一、 控訴人主張の請求原因一、記載の事実、及び被控訴人が昭和四一年三月一日から同年九月一四日までの地代合計一万二、六七四円(以下単に本件地代ともいう。)の支払をしていないことは、当事者間に争いがない。二、 ところで被控訴人は、本件土地の地代の支払方法は昭和三一年頃に六か月分ないし一二か月分を一括して支払うこと及び控訴人において被控訴人方に赴いてこれを取り立てることと改められたところ、控訴人は一、記載の間に、本件地代を取り立てに来なかつたから、被控訴人は本件地代の不払について遅滞の責を負ういわれはない、と抗争するので、まず地代の支払方法の変更の有無について判断する。被控訴人の全立 一、記載の間に、本件地代を取り立てに来なかつたから、被控訴人は本件地代の不払について遅滞の責を負ういわれはない、と抗争するので、まず地代の支払方法の変更の有無について判断する。 ことと改められたところ、控訴人は一、記載の間に、本件地代を取り立てに来なかつたから、被控訴人は本件地代の不払について遅滞の責を負ういわれはない、と抗争するので、まず地代の支払方法の変更の有無について判断する。被控訴人の全立 一、記載の間に、本件地代を取り立てに来なかつたから、被控訴人は本件地代の不払について遅滞の責を負ういわれはない、と抗争するので、まず地代の支払方法の変更の有無について判断する。被控訴人の全立証によつても、本件土地の地代の支払方法について、被控訴人主張の頃控訴人と被控訴人との間に、これを被控訴人の主張のように改める旨の合意(明示若しくは黙示の合意)がなされたことを認めることはできない。なるほど、いずれも成立に争いのない乙第一、第二号証、同第三号証の一ないし三、同第四号証の一、二、同第五ないし第七号証、同第八、第九号証の各一、二、同第一一号証の一、二に、当審証人Aの証言、原審及び当審における控訴人及び被控訴人の各本人尋問の結果(但し、右証言及び各本人尋問の結果のうち後記措信しない部分を除く。)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、(イ)被控訴人は当初前記認定の約定のとおり、地代を一か月分ずつ控訴人方に持参して支払つていたところ、昭和三一年頃から六か月分をまとめて一括して支払うようになり、これが昭和三五年一二月頃まで続いたが、その間において、被控訴人が持参しないときは控訴人ないしその妻において被控訴人方に赴いて支払を受けたことがあること、(ロ)昭和三八年三月二一日控訴人は被控訴人方において、昭和三六年一月分から昭和三八年二月分までの地代を一括して支払を受けたこと、(ハ)昭和三八年三月頃から昭和三九年六月頃までの間においては、地代はほぼ二か月分をまとめて(時には一か月分のこともある。)支払われたが、前記(イ)と同様被控訴人が持参しないときは控訴人ないしその妻が被控訴人方に赴いて支払を受けたことがあること、(ニ)昭和四〇年六月中被控訴人は控訴人から地代の取立て等について委任を受けた訴外渡辺不動産に対し、昭和三九年七月分から昭和四〇年六月分まで いしその妻が被控訴人方に赴いて支払を受けたことがあること、(ニ)昭和四〇年六月中被控訴人は控訴人から地代の取立て等について委任を受けた訴外渡辺不動産に対し、昭和三九年七月分から昭和四〇年六月分までの地代を一括して被控訴人方で支払つたこと及び(ホ)昭和四〇年七月から昭和四一年二月までの間は一か月分ずつ地代が支払われたが、前記(イ)、(ハ)と同様被控訴人ないしその妻において被控訴人方に赴いて支払を受けたことがあることが認められ、前示証言及び各本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分はいずれも措信せず、他にこれに反する証拠はない。 けた訴外渡辺不動産に対し、昭和三九年七月分から昭和四〇年六月分までの地代を一括して被控訴人方で支払つたこと及び(ホ)昭和四〇年七月から昭和四一年二月までの間は一か月分ずつ地代が支払われたが、前記(イ)、(ハ)と同様被控訴人ないしその妻において被控訴人方に赴いて支払を受けたことがあることが認められ、前示証言及び各本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分はいずれも措信せず、他にこれに反する証拠はない。以上認定の事実によると、本件土地の地代は相当長期にわたつて何か月分かをまとめて一括して支払われたことがあり、また控訴人(ないしその妻)が被控訴人方に赴いて地代の支払を受けることもしばしばであつたことが明らかである。しかし、前示証人きんの証言及び控訴人本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨によると、控訴人又はその委任した代理人である渡辺不動産が、前記(ロ)及び(ニ)のように被控訴人から一括して地代の支払を受けたのは、それに先立つて地代の値上げについて被控訴人との間に紛議があり、その間被控訴人は地代を払わないでいたが、前記各日に、控訴人又は渡辺不動産が被控訴人方に赴いて交渉した結果、被控訴人がようやく納得し、未払分を一時に支払つたことによるものであること、控訴人やその妻が前記(イ)、(ハ)、(ホ)のように被控訴人方に赴いて地代の支払いを受けたのは、被控訴人がとかく地代が高いとか、本件土地の坪数が足りないとか苦情を言つてすなおに地代を持参しないので、控訴人らが被控訴人が高令であり、控訴人方まで歩いて三〇分以上もかかることをも考えて止をえずしたものであること、及び、被控訴人の近隣の控訴人の他の借地人も前記(イ)の頃から六か月 を持参しないので、控訴人らが被控訴人が高令であり、控訴人方まで歩いて三〇分以上もかかることをも考えて止をえずしたものであること、及び、被控訴人の近隣の控訴人の他の借地人も前記(イ)の頃から六か月分をまとめて一括して控訴人方に持参して支払うのを常としていたので、被控訴人についても右(イ)のとおりこれにならつたこともあるが、それは専ら同人の利便を配慮してそのように取り扱つたものにすぎず、被控訴人自らがその後この便法によらなくなつたこと前記(ハ)、(ホ)のとおりであることが認められ、前示被控訴人本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する証拠はない。 (イ)の頃から六か月分をまとめて一括して控訴人方に持参して支払うのを常としていたので、被控訴人についても右(イ)のとおりこれにならつたこともあるが、それは専ら同人の利便を配慮してそのように取り扱つたものにすぎず、被控訴人自らがその後この便法によらなくなつたこと前記(ハ)、(ホ)のとおりであることが認められ、前示被控訴人本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する証拠はない。被控訴人が地代を何か月分かまとめて一括して支払つたり、控訴人が被控訴人方に赴いて地代の支払いを受けたのは右認定のような事情によるものであるとすると、前記(イ)ないし(ホ)のような事実があるからといつて、それだけでは、地代の支払方法を被控訴人が主張するとおりに変更する明示の合意はもとより、黙示の合意があつたものと認めることも困難である。その他、被控訴人の前記主張を認めるに足りる証拠はない。従つて、被控訴人主張の抗弁は採用できず、他に特段の主張のない以上、被控訴人は本件地代の不払について遅滞の責を免れない。三、 控訴人は、被控訴人に対し、昭和四三年八月一九日付翌二〇日到達の書面で、前記未払の地代を書面到達後三日内に支払うべく、その支払がないときは本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたにかかわらず、その支払がなかつたので賃貸借契約は昭和四三年八月二三日を以て解除されたと主張する。成立に争いのない甲第二号証の一、二及び前示控訴人本人尋問の結果によると、控訴人は昭和四三年八月一九日被控訴人に対し、同日付内容証明郵便(甲第二号証の一)を発し、右は同月二〇日被控訴人に到達 る。成立に争いのない甲第二号証の一、二及び前示控訴人本人尋問の結果によると、控訴人は昭和四三年八月一九日被控訴人に対し、同日付内容証明郵便(甲第二号証の一)を発し、右は同月二〇日被控訴人に到達したことが認められ、前示被控訴人本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する証拠はない。ところで、前示甲第二号証の一によると、右書面には、昭和四一年三月分から同年九月一四日までの地代合計一万二、六七四円を書面到達後三日内に持参支払われたい旨(前段)及び本件土地の賃貸借は昭和四一年九月一四日限り期間満了により終了し、被控訴人から更新の申出でもないので、昭和四一年九月一四日限り土地賃貸借契約を解除するから、三〇日以内に建物を収去して土地を明渡すよう通知する旨(後段)が記載されていることが認められる。 示甲第二号証の一によると、右書面には、昭和四一年三月分から同年九月一四日までの地代合計一万二、六七四円を書面到達後三日内に持参支払われたい旨(前段)及び本件土地の賃貸借は昭和四一年九月一四日限り期間満了により終了し、被控訴人から更新の申出でもないので、昭和四一年九月一四日限り土地賃貸借契約を解除するから、三〇日以内に建物を収去して土地を明渡すよう通知する旨(後段)が記載されていることが認められる。右前段部分は、昭和四一年九月一四日(後段に掲記の期間満了の日)までの未払地代を書面到達後三日内に支払うよう催告する趣旨であることは明らかである。そうして後段部分は、本件賃貸借契約が期間の満了により昭和四一年九月一五日以降はすでに終了して存在しないことを明示するとともに、期間の満了による契約終了を理由として書面到達後三〇日内に建物を収去して土地を明け渡すべきことを求める趣旨と解されるのであるが、右前段部分と後段部分とを通読してみても、催告にかかる未払賃料を催告期間内に支払わないときは、これを条件として賃貸借契約を解除する旨の文意を読みとることは困難である。もつとも、後段部分には「昭和四一年九月一四日限り土地賃貸借契約を解除するから」との文言があるが、前後の関連から考えて、その趣旨は、「昭和四一年九月一四日限り、土地賃貸借契約は期間の満了により解除となつているから(すなわち終了しているから)」との意に解さざるをえない。従つて、右書 文言があるが、前後の関連から考えて、その趣旨は、「昭和四一年九月一四日限り、土地賃貸借契約は期間の満了により解除となつているから(すなわち終了しているから)」との意に解さざるをえない。従つて、右書面により控訴人主張のような条件付契約解除の意思表示がなされたことを前提とする控訴人の主張は採用の限りでない。四、 つぎに控訴人は、前記昭和四三年八月一九日付の書面による催告を前提として、あらためて昭和四四年一一月二〇日到達の書面で被控訴人に対し、賃貸借契約を解除する旨意思表示をしたので、これにより賃貸借契約は終了したと主張する。(一) まず、右解除の意思表示がなされるまでの経過を、証拠に基づき考察してみると、成立に争いのない甲第四、第五号証の各一、二、前記控訴人、被控訴人各本人尋問の結果及び本件口頭弁論の全趣旨を総合して、次の事実を認めることができる。右各本人尋問の結果中この認定に反する部分は信用するに足りず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。 除する旨意思表示をしたので、これにより賃貸借契約は終了したと主張する。(一) まず、右解除の意思表示がなされるまでの経過を、証拠に基づき考察してみると、成立に争いのない甲第四、第五号証の各一、二、前記控訴人、被控訴人各本人尋問の結果及び本件口頭弁論の全趣旨を総合して、次の事実を認めることができる。右各本人尋問の結果中この認定に反する部分は信用するに足りず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。1、 昭和四一年二月頃までの被控訴人の地代の支払状況は、前記二、において認定したとおりである。そこで認定したとおり、その時期における地代の支払状況も、必ずしも、正常なものといいうるものではなかつたのであるが、それにもかかわらず、その頃までは、ともかく、結局において、地代が滞りなく支払われ、いわば、「曲りなり」にも賃貸借契約における賃貸人と賃借人相互の信頼関係が維持され、賃貸借契約の解除という事態に立ち至らなかつたのは、次のような事情によるものと認められる。すなわち、被控訴人は現在七四才の一人身の無職の老女であるが、長年専売公社に勤めていたので、年金と若干の貯蓄があり、地代の支払いに困るようなことはないのであるが、何分にも無学のうえ強情な性格であるため、控訴人からの地代の値上げの要求に の無職の老女であるが、長年専売公社に勤めていたので、年金と若干の貯蓄があり、地代の支払いに困るようなことはないのであるが、何分にも無学のうえ強情な性格であるため、控訴人からの地代の値上げの要求に対してはとかく不服をのべてすなおに応ぜず、また日常も地代の額に不満をとなえていたのに対し、一方控訴人は特定郵便局長の職にあり、かつ本件土地のほか各所に貸地を所有して比較的裕福であるところから、ついつい老令の被控訴人の強情さに負けてしまい、被控訴人が地代の値上げに不服を唱えて支払いをしないときは、これが解決するまでの間は敢えて強力に支払いを求めることもせず、また被控訴人の地代の支払いが滞れば、便宜同人方に赴いて支払いを受けていた。また被控訴人は右のような財産状態であるから、争いが解決したり控訴人が出向いたりすれば滞つていた地代をまとめて支払うのであるが、その際にも控訴人は被控訴人に対し、とくに向後は同様のことを繰り返さないようにとか、地代は本来持参払いなのであるから取り立てをまつて払うのは筋違いであるとかいつて、警告ないし咎めだてをすることもなかつた。 た被控訴人の地代の支払いが滞れば、便宜同人方に赴いて支払いを受けていた。また被控訴人は右のような財産状態であるから、争いが解決したり控訴人が出向いたりすれば滞つていた地代をまとめて支払うのであるが、その際にも控訴人は被控訴人に対し、とくに向後は同様のことを繰り返さないようにとか、地代は本来持参払いなのであるから取り立てをまつて払うのは筋違いであるとかいつて、警告ないし咎めだてをすることもなかつた。このように、控訴人にとつて被控訴人は「手こずる」借地人ではあつたが、しかし話合いがついて一応被控訴人の不満が解消すれば確実に地代の支払いがなされていたところがら、控訴人も被控訴人がなんとか理由をかまえて円滑に地代の支払をしなくても、他日の解決を期して、即座には地代の不払を咎めることをせず、被控訴人もまたこれを当然のことのように期待するというような状態の下で、昭和四一年二月頃までは、ともかく、結局において、地代が滞りなく支払われ賃貸人と賃借人相互間の信頼関係がつなぎとめられていた。2、 昭和四一年三月頃、また地代値上の問題が生じ、被控訴人がすなおにこれを納めようとしなかつたところがら控訴人は、同 地代が滞りなく支払われ賃貸人と賃借人相互間の信頼関係がつなぎとめられていた。2、 昭和四一年三月頃、また地代値上の問題が生じ、被控訴人がすなおにこれを納めようとしなかつたところがら控訴人は、同年五月一七日翌一八日到達の書面で、「土地賃貸借契約が昭和四一年九月一四日限り終了する」旨を通知(この通知は、あらかじめ更新を拒絶する趣旨を含むものと認められる。)し、その頃から、期間満了と同時に賃貸借契約を終了させようと考えるようになつた。そのようなわけで、控訴人は、同年五月中に一回地代の請求をしただけで、その後は、一度も地代の請求をせず、また従前のように便宜被控訴人方に赴いて地代の取立てをすることもしなくなつた。被控訴人も、控訴人が請求もせず取立てにも来なかつたところから、その支払いをしないままに打ち過ぎ、かようにして昭和四一年九月一四日当時、同年三月分から同日まで地代合計一万二、六七四円が未払となつていた。3、 昭和四一年九月一五日以降控訴人は、期間の満了により賃貸借契約は終了したとの態度をとり、爾後控訴人は地代の請求もせず取立てにも行かず、被控訴人も地代の支払をしないという状態が続いていたところ、控訴人は、前示昭和四三年八月一九日付の書面で昭和四一年三月分以降同年九月一四日までの延滞地代を書面到達後三日以内に支払うよう催告したのであつたが、この書面は、前述のように、右のように催告する一方で、賃貸借契約がすでに昭和四一年九月一四日限り終了しているので土地の明渡しを求める旨の意思を表明したものであつた。 地代の請求もせず取立てにも行かず、被控訴人も地代の支払をしないという状態が続いていたところ、控訴人は、前示昭和四三年八月一九日付の書面で昭和四一年三月分以降同年九月一四日までの延滞地代を書面到達後三日以内に支払うよう催告したのであつたが、この書面は、前述のように、右のように催告する一方で、賃貸借契約がすでに昭和四一年九月一四日限り終了しているので土地の明渡しを求める旨の意思を表明したものであつた。4、 その後控訴人は、昭和四四年一一月四日本訴を提起し、その請求の原因として、昭和四三年八月一九日付の書面は、催告期間内に催告にかかる延滞地代を支払わないときはこれを条件として賃貸借契約を解除する旨の条件付契約解除の意思表示を含むもので 本訴を提起し、その請求の原因として、昭和四三年八月一九日付の書面は、催告期間内に催告にかかる延滞地代を支払わないときはこれを条件として賃貸借契約を解除する旨の条件付契約解除の意思表示を含むものであり、催告期間内に被控訴人が延滞地代を支払わなかつたので、賃貸借契約は、同年八月二三日を以て解除されたと主張した。5、 しかし、控訴人は、右書面が契約解除の意思表示を含むとすることについては疑念もあつたところがら、念のため、昭和四四年一一月一九日付翌二〇日到達の書面で、あらためて、前示昭和四三年八月一九日付書面による催告に基づき賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。昭和四四年一一月一九日付翌二〇日到達の書面による契約解除の意思表示がなされるまでの経過事情は以上のとおりである。なお、控訴人が本訴提起以後、賃貸借契約は解除により終了したと主張するに至つたのは、期間の満了による賃貸借契約の更新を暗に前提とした上でのことと解されるが、控訴人が本訴提起の時までは終始、賃貸借契約は期間の満了により終了しているとの態度をとつていたことは右述のとおりである。<要旨>(二) そこで、以上の経過を経てなされた昭和四四年一一月一九日付翌二〇日到達の書面による契約解除の意思</要旨>表示の効力について考えてみるに、当裁判所は、次に述べるような諸点から考えて、右解除の意思表示はその効力を生ずるに由しがないものと考える。(1) 被控訴人が昭和四一年三月分以降同年九月一四日までの地代を長期にわたつて遅滞していたことは、もとより、ほめらるべきことではないが、この程度の期間、額の延滞は、従来とてもなかつたわけではなく、その都度前記(一)で述べたようなやり方で、結局は、解消されて来ていたのに、右期間の延滞分に限つて、そのようなことが行なわれず、遂に契約解除という事 除の意思表示はその効力を生ずるに由しがないものと考える。(1) 被控訴人が昭和四一年三月分以降同年九月一四日までの地代を長期にわたつて遅滞していたことは、もとより、ほめらるべきことではないが、この程度の期間、額の延滞は、従来とてもなかつたわけではなく、その都度前記(一)で述べたようなやり方で、結局は、解消されて来ていたのに、右期間の延滞分に限つて、そのようなことが行なわれず、遂に契約解除という事 期間、額の延滞は、従来とてもなかつたわけではなく、その都度前記(一)で述べたようなやり方で、結局は、解消されて来ていたのに、右期間の延滞分に限つて、そのようなことが行なわれず、遂に契約解除という事態にまで発展したのは、(イ)控訴人が昭和四一年五月頃からすでに期間満了を待つて賃貸借契約を終了させようと考えていたため、その頃から、ことさらに(しかも地代の支払方法につき従前と異なる態度を以て臨むことにつきとくに警告するようなことはなんらしないで)地代の請求もせず従来のように地代の取立てに赴くこともしなくなつたことと、(ロ)控訴人が昭和四一年九月一五日以降は賃貸借契約がすでに終了しているとの態度をとつていたこと(後述のように、控訴人は、本来、賃貸借契約の更新を認めざるをえない立場にあつたのにかえつて、これを否定する態度をとつていたこと)とに、その原因の一半があつたものというべきであり、その点で、控訴人の側にも、賃貸人としての誠実さにおいて非難さるべき点がなかつたとはいいえないものと認められる。(2) 民法第五四一条は、履行遅滞にある債務者に対し相当の期間を定めて履行の催告(いわゆる最後通告)をすることにより一応債務者に反省の機会を与えた上で、それでもなお債務者が与えられた機会を利用せず、催告期間内に債務の履行しない場合に初めて契約の解除を許す趣旨と解される。ところが、本件においては、控訴人は、前示昭和四三年八月一九日付書面で賃貸借期間満了前の延滞地代の支払を催告する一方、同じ書面で、賃貸借契約はすでに昭和四一年九月一四日限り満了しているので土地の明渡しを求める旨の意思を表明し、その後、終始賃貸借契約が終了しているとの態度をとつていたわけであるから、被控訴人としては、催告にかかる延滞地代を支払つても、控訴人が賃貸借契約の存続を容認する態度に 明渡しを求める旨の意思を表明し、その後、終始賃貸借契約が終了しているとの態度をとつていたわけであるから、被控訴人としては、催告にかかる延滞地代を支払つても、控訴人が賃貸借契約の存続を容認する態度に出ることは到底期待できないと考えること(すなわち初めから反省の機会を閉されたに等しい状況の下で履行の催告を受けたもりと考えること)が無理もないと認められるような事情にあつたものというべきである。 る態度に 明渡しを求める旨の意思を表明し、その後、終始賃貸借契約が終了しているとの態度をとつていたわけであるから、被控訴人としては、催告にかかる延滞地代を支払つても、控訴人が賃貸借契約の存続を容認する態度に出ることは到底期待できないと考えること(すなわち初めから反省の機会を閉されたに等しい状況の下で履行の催告を受けたもりと考えること)が無理もないと認められるような事情にあつたものというべきである。してみると、控訴人としては、被控訴人に対し一旦賃貸借契約の更新・存続を是認する態度を明らかにするとともにそれまでの延滞賃料につきあらためて相当の期間を定めて催告を発した上で契約解除の意思表示をするとか、若しくは少くとも、右の態度を明らかにした後相当の期間を経て契約解除の意思表示をするなどの方法をとることは格別、このような措置をなんらとらないで、右昭和四三年八月一九日付書面による催告を前提として直ちに契約解除の措置をとることは、民法第五四一条の精神にもそわず、また賃貸人としての信義に戻る所為といわねばならない。(3) 本件賃貸借契約の解除が被控訴人の生活に極めて重大な打撃を与えることが明らかであるのにひきかえ、控訴人にとつては、本件土地を取り戻しても自らこれを使用する必要があるとは思われず、他に賃貸借契約の更新を拒むべき正当の事由があることについてはなんらの主張立証もないので、控訴人は、本来、賃貸借契約の更新を拒みえない立場にあつたものと認められる。以上(1)(2)(3)の諸点を総合して考えれば、控訴人が昭和四三年八月一九日付書面による催告を前提として昭和四四年一一月一九日付翌二〇日到達の書面により契約解除の意思表示をしたことは、期間の満了による賃貸借契約の更新を認めた上で、その支払がないため、延滞地代の支払いについて誠意をもつて被控訴人に反省を 四四年一一月一九日付翌二〇日到達の書面により契約解除の意思表示をしたことは、期間の満了による賃貸借契約の更新を認めた上で、その支払がないため、延滞地代の支払いについて誠意をもつて被控訴人に反省を促した上で、やむをえず契約解除の挙に出たというよりは、むしろ、賃貸借契約が期間の満了によりすでに終了しているとの、自己の誤つた主張、態度を、なんとか正当化そうとして、形式的に民法第五四一条の手続を履践したに過ぎないものというべきであつて、その実質においては、民法第五四一条の精神にもそわず、賃貸借契約における当事者間の信義則に戻る所為と認めざるをえない。 代の支払いについて誠意をもつて被控訴人に反省を促した上で、やむをえず契約解除の挙に出たというよりは、むしろ、賃貸借契約が期間の満了によりすでに終了しているとの、自己の誤つた主張、態度を、なんとか正当化そうとして、形式的に民法第五四一条の手続を履践したに過ぎないものというべきであつて、その実質においては、民法第五四一条の精神にもそわず、賃貸借契約における当事者間の信義則に戻る所為と認めざるをえない。従つて右契約解除の意思表示は、その効力を生ずるに由しがないものというべきである。五、 最後に、控訴人は、被控訴人の背信行為を理由として昭和四五年七月二三日午後一時の原審口頭弁論期日において、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたので、これにより賃貸借契約は終了したと主張する。被控訴人が本訴提起後である昭和四四年一一月二四日に至つて、初めて、昭和四一年三月分以降昭和四四年一一月分までの地代を弁済供託したことは当事者間に争いのないところである。しかし、被控訴人が昭和四一年九月一五日以降の賃料を支払わないでいたことは、控訴人において本件賃貸借契約が同日以降終了しているとの態度をとつていたことによるものと認められるので、このことを差し置いて、被控訴人がこの間の地代を支払わないでいたことを一方的に背信行為として非難することのできないことはいうまでもない。被控訴人が昭和四一年三月分以降同年九月一四日までの地代を支払わないでいたことも、前記四、(二)(1)において述べたところにかんがみれば、被控訴人がこの間の地代を支払わないでいたことをもつて、催告を要しないで賃貸借契約を解除できるとするほどの背信行為 代を支払わないでいたことも、前記四、(二)(1)において述べたところにかんがみれば、被控訴人がこの間の地代を支払わないでいたことをもつて、催告を要しないで賃貸借契約を解除できるとするほどの背信行為と目することは相当でない。さらに、昭和四一年二月以前の地代の支払状況も、必ずしも正常なものでなかつたことも前記二、において認定したとおりであるが、すでに述べたように、右の時期における地代は、ともかく滞りなく支払われ、同月頃までは、いわば、「曲りなり」にも賃貸借契約における相互の信頼関係が維持されていたことにかんがみれば、今さら、右二月以前の地代の支払状況を背信行為として取り上げることは相当とは思われない。 ことは相当でない。さらに、昭和四一年二月以前の地代の支払状況も、必ずしも正常なものでなかつたことも前記二、において認定したとおりであるが、すでに述べたように、右の時期における地代は、ともかく滞りなく支払われ、同月頃までは、いわば、「曲りなり」にも賃貸借契約における相互の信頼関係が維持されていたことにかんがみれば、今さら、右二月以前の地代の支払状況を背信行為として取り上げることは相当とは思われない。その他に被控訴人に催告を要しないで賃貸借契約を解除できるとするほどの重大な背信行為があつたことを認めるに足る証拠はない。従つて、背信行為を理由とする賃貸借契約解除の意思表示も、その効力を生ずるに由しがないものというべきである。なお、成立に争いのない甲第一号証によると、本件賃貸借契約書には、控訴人主張のとおり、被控訴人において地代の支払を一回でも怠つたときは催告を要しないで契約を解除することができる旨の特約条項の記載があることは明らかであるが、前記二、で認定した事実にかんがみれば、控訴人、被控訴人ともに右特約条項を遵守する意思がなく右条項はいわゆる例文に過ぎないものと認められるので、この条項を根拠に控訴人の前記契約解除の意思表示を有効とすることのできないことはいうまでもない。六、 以上のとおりであるから、賃貸借契約が解除により終了したことを原因とする控訴人の請求はすべて理由がなく、これと同旨の原判決は正当というべきである。(なお、控訴人は当審において本訴請求のうち未払地代の請求に関する部分を取り下げたので、右請求については判断をしない。する控訴人の請求はすべて理由がなく、これと同旨の原判決は正当というべきである。(なお、控訴人は当審において本訴請求のうち未払地代の請求に関する部分を取り下げたので、右請求については判断をしない。)従つて、本件控訴は理由がないから民訴法第三八四条によりこれを棄却し、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官白石健三裁判官岡松行雄裁判官川上泉)

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