平成15年5月1日宣告平成14年(わ)第1831号殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。 洋出刃包丁1丁(平成15年押第22号の1)を没収する。 理由 (犯罪事実)第1 被告人は,平成14年11月30日午後10時30分ころから同年12月1日午前4時ころまでの間,福岡市a区bc丁目d番e号A方南側空地において,B(当時82歳)に対し,殺意をもって,持っていた刃体の長さ約12.9センチメートルの洋出刃包丁(平成15年押第22号の1)でその左頸部を2回切り付け,その腹部を1回突き刺したが,通行人に発見されて警察官に通報されたため,Bに全治約1か月間を要する腹部刺創,肝刺創及び頸部切創の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 第2 被告人は,上記第1の日時場所において,業務その他正当な理由による場合でないのに,上記第1の洋出刃包丁1丁(平成15年押第22号の1)を携帯した。 (争点に対する判断)第1 争点第1の事実について,被告人は,公判廷において,「被害者の承諾を得たうえで,被害者を切り付けたり突き刺した。」,「携帯電話で,友人に被害者を傷つけたことを話して助けを求めていたので,友人が救急車を呼んでくれているものと思っていた。」などと供述し,弁護人は,被告人の供述に基づき,殺人未遂罪ではなく,同意殺人未遂罪にあたり,さらに,中止未遂である旨主張する。 したがって,本件の争点は,①被害者の承諾の有無②中止未遂の成 た。」などと供述し,弁護人は,被告人の供述に基づき,殺人未遂罪ではなく,同意殺人未遂罪にあたり,さらに,中止未遂である旨主張する。 したがって,本件の争点は,①被害者の承諾の有無②中止未遂の成否にある。 第2 被害者の承諾の有無(争点①) 1 証拠上認められる事実(1) 犯行に至る経緯ア被告人は,平成7年ころから,福岡市f区gでスナックを経営していたが,平成11年春以降,次第に店の売上げが減り,店舗の家賃や運転資金等のために借金をするようになった。その後も,スナックの経営状態は改善せず,被告人は,平成12年ころにも,被告人の実母であるB(大正9年1月7日生。以下「B」という。)を道連れに心中することを考えたこともあったが,友人のCや娘のDに思いとどまるように説得された。 イ Bは,平成13年ころから,痴呆の疑いのある症状が出始め,物がなくなったとか,なくなった物は孫が盗んだなどと言い始め,そのことが原因で,Dなどとの関係は悪くなっていた。Bは,平成14年9月23日ころ,自宅で転倒して大腿部を骨折し,翌24日にE病院に入院したが,同年10月15日ころ,脳梗塞を発症し,同年11月13日,脳梗塞等の治療のため,F病院に転院した。 ウ Bは,脳梗塞が原因で,失語症の状態であり,被告人が話しかけても,首をゆっくり縦に振ったり,横に振ったりして意思表示をする状態であり,F病院の看護師の問いかけに対しても,うなずいたり,首を振ったり,手を振ったりして反応していたが,全く反応しないことも度々あった。もっとも,本件犯行前は,トイレの方を指差して,トイレに連れて行ってほしい旨のジェスチャーをする位になっていた。Bの介護は,被告人が行っていた。 エなお,Bについては,E病院の医師G作成の診療情報提供書に「意識は トイレの方を指差して,トイレに連れて行ってほしい旨のジェスチャーをする位になっていた。Bの介護は,被告人が行っていた。 エなお,Bについては,E病院の医師G作成の診療情報提供書に「意識は比較的清明で,こちらの言うことは理解しておりますが,発語はほとんどありません(運動優位の障害かと思われます)。」という記載が,理学療法士作成のリハビリテーション経過報告書(添書)には「言語に対する理解はある程度あるものの,発語は全くありません。入院前より気ままに生活されていたらしく,病棟でも食事,整容などを進められても拒否される事があるようです。」という記載が,看護師作成の看護添書2頁の意思疎通欄には,「意思疎通/困難有( 言葉を理解できるが発語できない。)」という記載がそれぞれある。また,転院先のF病院の外来診療録には,退院時看護要約として,運動性失語症,軽度の痴呆があり,コミュニケーションが困難であるという点については,「表情の観察,ゆっくり大きな声での声掛けを行っていった。笑顔,うなずきや嫌な時は手で払いのける等の動作があり,それによりコミュニケーションを図っていった。」という看護記録がある。 オところで,平成14年10月以降,スナックの経営状態はかなり悪化し,被告人は,平成14年10月ころの時点で,スナックの運転資金やBの入院費用などの借金の総額が約960万円になり,月々の返済額も42万円ほどになっており,借金の返済に苦しんでいた。そして,同年11月30日までに10月分の店舗の家賃の残額を支払わなければならなかったが,それもできない状態に陥った。 被告人は,借金の返済や家賃の支払いに窮し,家賃を払えなければスナックの営業ができなくなると考えて自殺を決意し,さらに,自分が自殺した後,入院中のBの面倒を見る者は きない状態に陥った。 被告人は,借金の返済や家賃の支払いに窮し,家賃を払えなければスナックの営業ができなくなると考えて自殺を決意し,さらに,自分が自殺した後,入院中のBの面倒を見る者は誰もいないと考えて,Bを道連れに心中しようと決意した。そして,平成14年11月26日ころ,心中のために,本件洋出刃包丁を購入するなどの準備を始め,翌27日にはDや友人に宛てて,遺書を書いて,隠し置いた。 (2) 犯行状況ア被告人は,平成14年11月30日午後3時ころ,F病院に行き,同日午後5時ころ,Bには何も事情を説明しないまま,看護師に対しては散歩に行く旨を告げて,車いすに乗せたBをF病院から連れ出した。 被告人は,F病院から出た道路をh方向に向かって,車いすを押していき,同日午後7時ころ,福岡市a区bc丁目d番e号A方南側空地(以下「本件現場」という。)に到着した。本件現場は,F病院から約2.1キロメートル離れた山中の空地であり,雑草等が密生し,周囲に人家はほとんどなく,付近の道路も昼夜間共に人や車の通行が少ない場所である。しかも,被告人が車いすに乗せたBを連れ込んだ地点は,道路に面した入口から約30.8メートルほど奥であり,最大約1.7メートルの高さの草むらがあり,道路からの視認が特に困難な場所である。そして,平成14年11月30日午後7時ころの福岡市内の気温は摂氏10.8度であったが,徐々に気温は低下していき,翌日午前4時には摂氏7.1度であった。 イ被告人は,平成14年11月30日午後7時20分ころ,本件現場において,Bに対し,一緒に死んでほしい旨を告げて,被告人が経営する店の借金の返済ができないことや被告人が死んだらBの面倒を見る人がいなくなることなど,心中の理由を説明した。これに対し,Bは,被告人の左頬 ,Bに対し,一緒に死んでほしい旨を告げて,被告人が経営する店の借金の返済ができないことや被告人が死んだらBの面倒を見る人がいなくなることなど,心中の理由を説明した。これに対し,Bは,被告人の左頬を平手で一回たたき,続けて,被告人が着ていたコートの袖の部分をつかんで揺さぶった。 被告人は,その後も,Bに対し,一緒に心中することを承諾するよう頼んだが,Bは,その度に,被告人のコートをたたいたり,つかんで揺すったりしてきた。 ウ被告人は,同日午後10時ころに,Bに対し,再度,一緒に死んでほしいと頼むと,Bは,被告人を見ながら首を縦に2回振った。 被告人は,同日午後10時30分ころ,Bの左頸部付近を切り付けたが,Bは,被告人が切り付けた首の左側傷口付近を手でぬぐっては,被告人の着ていたコートの左胸のあたりで手をぬぐう仕草をした。 被告人は,同日午後11時30分ころ,再びBの左頸部付近を切り付けたところ,Bは,1回目と同じように,被告人が切り付けた傷口を手でぬぐい,その手を被告人が着ていたコートでぬぐうという仕草を繰り返した。そして,Bは,顔を上に向けて星を見上げるような動きをしたり,首を左右に振って辺りを見渡すような仕草をした。その後,Bは,自分の腹を何度も手でたたく動作をした。 被告人は,翌12月1日午前4時ころ,Bの腹部を刺して殺害しようと,洋出刃包丁を,Bが着ていたパジャマの鳩尾付近を狙い,突き刺した。 (3) 犯行後の状況被告人は,平成14年12月1日午後零時34分ころと38分ころの2回,自分の携帯電話を使って留守番電話のメッセージを聞き,同日午後零時46分ころ,友人のCに電話をかけて会話をしたが,その際,Cが警察への通報や救急車の手配を頼まれることはなかった。 同日午後3時30分ころ,近 電話を使って留守番電話のメッセージを聞き,同日午後零時46分ころ,友人のCに電話をかけて会話をしたが,その際,Cが警察への通報や救急車の手配を頼まれることはなかった。 同日午後3時30分ころ,近隣の福祉施設の職員らが,被告人らを発見して声をかけたが,被告人は,「大丈夫です。道に迷っています。」などと嘘を付き,近隣の福祉施設への保護を申し出ても,「この場所を離れるわけにはいきません。」と言って,その申し出を拒絶した。 被告人とBは,平成14年12月1日午後3時40分ころ,本件現場で寄り添った状態で倒れているところを,自殺を心配したDからの家出人捜索願により,被告人らを探していた警察官らに発見され,到着した救急隊員により,H病院救急救命センターに搬送された。 2 被害者の承諾能力の有無(1) 検察官の主張検察官は,Bは,失語症,痴呆症の症状が出ていた上,平成14年11月にF病院に転院したころ,「右手を挙げて」と言われても左手を挙げたり,「手を握って」と言われても手を握らなかったりしていたのであり,これらの事情に照らすと,意思疎通を図ることが極めて困難な状況にあったといえ,Bには,物事を理解する能力が減退し,死の意味について慎重に判断すべき能力に欠けていたと主張する。そこで,まず,Bの承諾能力の有無について検討する。 (2) I証言の要旨Bが犯行直前まで入院していたF病院の主治医であったI証人の証言は,以下のとおりである。 Bは,基本的には,脳の障害によって言葉を構成したり,発することができない運動性失語の状態であった。ただ,運動性失語には,言語の理解能力の障害という症状も通常伴い,Bについてもその障害を伴っていた。 簡単な問いかけについては,全く理解がないというわけではなく,短い日常的な言葉はある程度理解し 。ただ,運動性失語には,言語の理解能力の障害という症状も通常伴い,Bについてもその障害を伴っていた。 簡単な問いかけについては,全く理解がないというわけではなく,短い日常的な言葉はある程度理解していた。ただ,証人が最初の診断時に右手を挙げさせたり,手を握らせるという簡単なテストをしたところ,Bが左手を挙げたり,手を握らなかったりしており,言葉の意味が理解できないという部分も見られた。WABのYes-No質問は,20問中16問正答しているが,それだけでは言語理解能力の判定はできない。Bが被告人の「一緒に死のう。」という意味を理解できていたか否かという点については否定はできないけれど,積極的に肯定する根拠もない。 (3) 検討I証言からは明らかではないものの,前記1で認定した事実関係のうち,被告人から心中を持ちかけられた際のBの拒否的なジェスチャー((2)のイ),被告人とBとの間のコミュニケーションの状況((1)のウ),複数の病院の看護師の観察結果や理学療法士の報告((1)のエ)などを総合考慮すれば,本件当時,Bとの意思疎通が極めて困難な状態であり,判断能力が著しく減退した状態であったとまでは認められず,Bには,少なくとも被告人の心中の申し出を拒否できる程度の承諾能力,すなわち,死の意味を理解する能力があったと認定することができる。 (4) 以上より,Bには承諾能力が認められる。 3 任意かつ真意の承諾の有無(1) 弁護人の主張弁護人は,Bは被告人による説得の結果,首を縦に2回振り,被告人による殺害に承諾していたと主張する。 (2) 前記1の証拠上認められる事実によれば,次の事情を指摘することができる。 アそもそも本件犯行は,被告人自身の借金が原因であり,B自身には死を決意する理由は全くな いたと主張する。 (2) 前記1の証拠上認められる事実によれば,次の事情を指摘することができる。 アそもそも本件犯行は,被告人自身の借金が原因であり,B自身には死を決意する理由は全くない。 イ被告人は,平成14年11月30日午後5時ころ,Bには何も事情を説明せず,Bを車いすに乗せたまま,F病院から約2.1キロメートル離れた山中の空地であり,雑草等が密生し,周囲に人家はほとんどなく,付近の道路も昼夜間共に人や車の通行が少ない場所に連れ出している。 ウ被告人は,同日午後7時20分ころ,本件現場において,Bに対し,初めて一緒に死んでほしい旨を告げて,被告人が経営する店の借金の返済ができないことや被告人が死んだらBの面倒を見る人がいなくなることなど,心中の理由を説明したが,Bは,被告人の左頬を平手で一回たたき,続けて,被告人が着ていたコートの袖の部分をつかんで揺するなど,拒否的な態度をとっている。また,被告人は,その後も,Bに対し,一緒に心中することを承諾するよう頼んだが,Bは,その度に,被告人のコートをたたいたり,つかんで揺すったりして,拒否の態度を明らかにしている。 エ被告人は,同日午後10時ころに,Bに対し,再度,一緒に死んでほしいと頼んだところ,Bは,被告人を見ながら首を縦に2回振ったので,心中について承諾を得たと供述するが,そもそも,その時点で,被告人は,当時82歳で介護が必要な状態の車いすのBを,他に助けを呼ぶこともできない,暗く人気のない場所に連れ込んだ上,3時間以上も軟禁している状態であった。 (3) 検討以上の事情を考慮すれば,82歳の要介護の状態にあったBが,最も重要な保護法益である自らの生命を放棄することについて,自由な意思に基づいて,任意かつ真意の承諾があったと認めること 3) 検討以上の事情を考慮すれば,82歳の要介護の状態にあったBが,最も重要な保護法益である自らの生命を放棄することについて,自由な意思に基づいて,任意かつ真意の承諾があったと認めることはできない。 被告人は,Bが首を縦に振ったことや,Bが首を2回にわたって切られた後も腹部をたたいたことをもって,任意かつ真意の承諾があったと供述する。 しかし,そもそもBは,自力で歩行することも声を発することもできず,しかも犯行現場は暗く人通りも少ないところであり,助けを求めたくても求められない状況におかれていた。そのような状況のもと,被告人と2人きりで,3時間あまり,寒く暗い中で唯一Bの面倒を見てくれる被告人から心中を繰り返し求められていたのであるから,Bとしては仕方なく首を2回縦に振る行為に出たと考えるのが自然である。 さらに,Bは腹部を刺される前に,腹をたたく行動に出ているが,上記のようなBの心情からすると,このBの行動をもって任意かつ真意の承諾があったと認定することはできない。 (4) 以上より,Bには,任意かつ真意の承諾があったと認める余地はない。 4 同意殺人未遂罪の錯誤の成否なお,客観的には,被害者の承諾がなく,殺人未遂罪にあたるとしても,被告人が被害者の承諾があったと誤信していた場合には,錯誤により,被告人は,同意殺人未遂罪の限度で責任を負う(刑法38条1項)と考える余地があるので,錯誤の成否について検討する。 前記1の認定事実によれば,被告人は,Bに一緒に死のうと持ちかける前に殺人についての承諾がなかったこと,Bに一緒に死のうと持ちかけた際にBに頬をたたかれたこと,Bを山中の空地に連れ出し,寒く暗い中で3時間あまりにわたってBに執拗に心中を迫ったことなどの事実を認識していたことが の承諾がなかったこと,Bに一緒に死のうと持ちかけた際にBに頬をたたかれたこと,Bを山中の空地に連れ出し,寒く暗い中で3時間あまりにわたってBに執拗に心中を迫ったことなどの事実を認識していたことが認められるのであるから,被告人が,Bの自由な意思に基づく任意かつ真意の承諾があったと誤信していたとは認められない。 したがって,被告人の殺人未遂罪の故意に欠ける余地はない。 5 結論以上のとおり,第1の事実については,被告人に同意殺人未遂罪は成立せず,殺人未遂罪が成立する。 第3 中止未遂の成否(争点②) 1 弁護人は,被告人は,Bの命を助けるため,平成14年12月1日午後零時46分に,友人のCに電話をかけているのであるから,この行為は任意かつ自発的な中止行為にあたると主張する。 しかし,被告人の実行行為により,Bは,腹部刺創・肝刺創・頸部切創の重傷を負っており,すでに生命の危険が生じていた上,被告人は,Cに電話をかけているものの,自ら救急車を呼ぶなどの救助行為には及んでおらず,現実に結果発生を自ら防止したと同視するに足りる中止行為を行ったものではなく,また,Bが一命をとりとめたのは,警察から救急車の要請がなされ,救急救命センターに収容されて手術などの適切な処置を受けたからであって,弁護人が主張する被告人の行為と結果の不発生との間に因果関係も認められない。 2 そうすると,判示第1の殺人未遂罪について中止犯は成立する余地はなく,弁護人の主張を採用することができない。 (法令の適用)罰条第1 刑法203条,199条第2 銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条刑種の選択第1 有期懲役刑を選択第2 懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条により重い第1の罪の刑 9条第2 銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条刑種の選択第1 有期懲役刑を選択第2 懲役刑を選択併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条により重い第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重刑の執行猶予刑法25条1項没収刑法19条1項2号,2項本文(判示第1の殺人未遂の用に供した物で,被告人以外の者に属しない)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 被告人にとって不利な事情本件は,被告人が自らの借金苦から自殺を決意し,脳梗塞等で介護が必要な実母とともに無理心中しようとしたという事案であるが,どのような理由があろうと人の命を奪う危険性のある行為が正当化されるはずもなく,本件犯行に至る経緯及び犯行の動機は短絡的で身勝手と言わざるをえない。 また,被告人は,Bを寒くて暗い人通りの少ない場所まで連れて行った上,抵抗することのできないBに対し,3回にわたり殺傷力の強い洋出刃包丁で攻撃を加え,そのうち腹部の刺創は深さ5センチメートルにも達しており,刺創の向きが上向きであればBは死亡していた可能性があった。さらに,Bは,最後に攻撃を受けてから約12時間もの間,治療を受けることなく,犯行現場から動けなかったのであり,もし,病院に収容されて手術を受けなければ,Bにより重大な結果が発生したとも考えられ,本件犯行の態様は,非常に危険かつ悪質である。 以上からすると,被告人の刑事責任は重い。 2 被告人にとって有利な事情しかし,幸いにして殺人の点は未遂に終わっていること,被告人は,本件犯行後,心中を翻意し,救護行為としては不十分ではあるが,友人に電話で助けを求めていること,Bの介護を一人で背負ってきたこと,被告人は,公判廷にお て殺人の点は未遂に終わっていること,被告人は,本件犯行後,心中を翻意し,救護行為としては不十分ではあるが,友人に電話で助けを求めていること,Bの介護を一人で背負ってきたこと,被告人は,公判廷において,今回,心中を考えたことは間違っていたと気付き,今あるのはBに救われた命であり,借金については法的に整理し,これからの人生を大事に生きていく旨述べていること,被告人にはこれまで前科前歴がなく,本件事案の性質上,Bが病死した現在,再犯の可能性は低いといえること,被告人には被告人の次女や友人など今後の更生を支える人々がいることなど,被告人にとって有利な事情も認められる。 3 結論そこで,これらの事情を総合考慮して,被告人を主文掲記の刑に処した上,その刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。 (求刑懲役4年,洋出刃包丁の没収)平成15年5月1日福岡地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官陶山博生裁判官國井恒志裁判官古賀英武
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