令和2年6月18日判決言渡し同日原本交付裁判所書記官平成2424852号騒音差止等請求事件口頭弁論の終結の日令和2年2月6日判決主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,別紙1物件目録記載1の土地を使用し,又は第三者をして同土地 を使用させて,同土地と同目録記載2の土地との境界線上において,午前8時から午後7時までの間,45デシベルを超える騒音を到達させてはならない。 2 被告らは,原告甲1及び同甲2各自に対し,連帯して,360万円及び平成23年6月10日から前項の騒音が到達しなくなる日まで1箇月10万円の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告甲3に対し,連帯して,108万円及び平成23年6月10日から第1項の騒音が到達しなくなる日まで1箇月3万円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要被告株式会社日本保育サービス(以下「被告日本保育」という。)は,別紙 1物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び本件土地上の建物(以下「本件建物」という。)において,これらを所有する被告乙と賃貸借契約を締結して,認可保育所(以下「本件保育園」という。)を開設,運営している。また,原告らは,本件土地に隣接する上記目録記載2の土地(以下「原告土地」という。)上の建物(以下「原告建物」という。)に居住している (以上につき,下記1⑴参照。)。 本件は,原告らが,本件保育園からの騒音によって平穏に生活を送る権利が侵害されていると主張して,被告らに対し,人格権に基づき,本件土地について,原告土地との境界 下記1⑴参照。)。 本件は,原告らが,本件保育園からの騒音によって平穏に生活を送る権利が侵害されていると主張して,被告らに対し,人格権に基づき,本件土地について,原告土地との境界線上に45デシベルを超える騒音を到達させる使用をし,又は使用をさせることの差止めを求めるとともに,不法行為に基づき,原告甲1及び同甲2について,それぞれ,東京都公害審査会への調停申請の受理前3 年間の分として360万円及び同申請の受理日の翌日である平成23年6月10日から上記差止めがされるまでの分として1箇月10万円の割合による損害金(慰謝料)の連帯支払を,原告甲3について,上記申請受理前3年間の分として108万円及び上記平成23年6月10日から上記差止めがされるまでの分として1箇月3万円の割合による損害金(慰謝料)の連帯支払を求める事案 である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記した証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告らは,平成10年11月頃から,原告土地上に建築された2階建て の原告建物に居住する者である。なお,原告甲1と原告甲3は夫婦であり,原告甲2はその子である。 イ被告日本保育は,平成19年4月1日以降本件保育園(開設時の名称「認可保育園丙1」。平成22年4月1日に「認可保育園丙2」に改称。)を開設,運営する株式会社である。 ウ被告乙は,本件保育園の園舎である本件建物及びその敷地(本件保育園の園庭(以下「本件園庭」という。)を含む。)である本件土地の所有者である。本件建物は,鉄骨造合金メッキ鋼板ぶき2階建てで,登記上の床面積が,1階326.31㎡,2階322.20㎡である。 エ被告乙は,本件保育園開設のため,本件建物に係る賃貸借契 地の所有者である。本件建物は,鉄骨造合金メッキ鋼板ぶき2階建てで,登記上の床面積が,1階326.31㎡,2階322.20㎡である。 エ被告乙は,本件保育園開設のため,本件建物に係る賃貸借契約を被告日 本保育と締結し,被告日本保育は,平成19年4月1日,本件保育園の運 営を開始した。 ⑵ 位置関係等ア本件土地は,別紙2の1「配置図」において「隣地境界線」及び「道路境界線」と表記された線で囲まれた範囲の形状であり,本件建物は,同別紙の「既存建物」と表記された斜線部分に設置されている。また,本件園 庭は,上記別紙の「園庭」と表記された部分,すなわち本件土地の南側部分に設置されており,本件園庭の東側部分には,別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」に「砂場」と表記された部分に砂場(以下「本件砂場」という。)が設置されている。 本件土地と原告土地とは,本件土地の東側境界線のうち南側部分(別紙 2の1で「隣地境界線11.313」と記載されている部分)で約11. 3mにわたり接している(以下,両土地が接する境界線を「本件境界線」という。)。 イ原告建物の間取りの略図は,別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」のとおりであり,1階には,リビングダイニングキッチン(1 3畳相当)(以下「1階リビング」という。),6畳間等が,2階には,北西側と北東側に6畳間が1部屋ずつ(以下,北西側6畳間を「2階西側6畳間」,北東側6畳間を「2階東側6畳間」という。),南側に8畳間等がある。 (甲4) ⑶ 本件保育園から生じる騒音の測定ア原告らは,平成23年5月31日頃,東京都公害審査会に対し,本件保育園の騒音に係る被害についての紛争につき,調停を申請し,同年6月9 (甲4) ⑶ 本件保育園から生じる騒音の測定ア原告らは,平成23年5月31日頃,東京都公害審査会に対し,本件保育園の騒音に係る被害についての紛争につき,調停を申請し,同年6月9日付けで受理された(同審査会同年(調)第2号事件。以下「本件調停」という。)。 本件調停において,練馬区環境まちづくり事業本部環境部環境課は,平 成23年12月21日,本件園庭で遊ぶ子どもの声等につき,本件境界線付近における高さ1.5m地点,同4.7m地点及び2階西側6畳間の3箇所で騒音(単純な「音」の意味を含む。以下同じ。)の測定(以下「本件審査会測定」という。)をした。 (甲9,54,66,乙1,原告甲2本人) イ本件訴訟において,被告日本保育は,原告建物において聞こえる,本件保育園から出る音についての検証を申請し,当裁判所はこれを採用した。 また,当裁判所は,原告ら及び被告日本保育の申出を受け,本件園庭における園児の遊び声の騒音測定に係る鑑定の嘱託をした。そして,平成28年9月14日及び同年10月28日に上記嘱託に基づく鑑定(以下,「本 件鑑定」といい,これについての鑑定書を「本件鑑定書」という。)が,同日に上記検証(以下「本件検証」という。)が実施された。本件鑑定においては,同年9月14日に園児の声の事前測定調査及び録音収録(以下「本件事前測定」という。)が行われ,同年10月28日に,同日の園児の声の測定調査(以下「本件本測定」という。)の他,本件事前測定によ る音源を使用した測定調査(以下「本件事前測定再現調査」という。)及び原告らが提供した音源を使用した測定調査(以下,「原告ら提供音源再現調査」といい,本件事前測定再現調査と併せて「本件再現調査」という。)が実施された。 ウ以上 前測定再現調査」という。)及び原告らが提供した音源を使用した測定調査(以下,「原告ら提供音源再現調査」といい,本件事前測定再現調査と併せて「本件再現調査」という。)が実施された。 ウ以上の他,原告らは,自ら購入した騒音計により,本件保育園から生じ る騒音を原告建物内で測定している(後記第3の1⑸参照)。上記イで原告らが提供した音源は,この測定に係る音源である。 ⑷ 騒音一般に関する用語ア時間率騒音レベル(percentilelevel)騒音レベルが,対象とする時間範囲のN%の時間にわたってあるレベル 値を超えている場合,そのレベルをN%時間率騒音レベルという。単位は デシベル(dB)であり,「LAN」又は「LN」と表記される(ただし,本判決では,便宜上,「LAN」又は「LN」と表記する。)。なお,騒音レベルとは,A特性音圧レベルともいい,A特性とは,人間の感覚が音の周波数により感度が異なることなどを考慮して決められ,騒音計に用いられている周波数補正特性(回路)の一つである。また,騒音計に用いら れている特性には音圧実効値を求めるための時間重み付け特性(動特性)もあり,F特性(速い動特性)とS特性(遅い動特性)がある。 50%時間率騒音レベル(LA50)を中央値ともいい,時間率騒音レベルで90%レンジ上端値は5%時間率騒音レベル(LA5)と,90%レンジ下端値は95%時間率騒音レベル(LA95)となる。LA5は, 騒音の大きさに着目し,最大値に近い近似値を評価することに適している。 (乙28,29,本件鑑定の結果)イ等価騒音レベル等価騒音レベル(equivalentcontinuousA-weightedsoundpressurelevel)と (乙28,29,本件鑑定の結果)イ等価騒音レベル等価騒音レベル(equivalentcontinuousA-weightedsoundpressurelevel)とは, 騒音レベルが時間と共に不規則かつ大幅に変化している場合に,ある時間内で変動する騒音レベルのエネルギーに着目して,時間平均値を表したものである。単位はデシベル(dB)であり,一般的には,「LAeq」又は「Leq」と表記される(ただし,本判決では,便宜上,「LAeq」又は「Leq」と表記する。)。 アノイアンス(人に感じられる感覚的なうるささ)との対応にも優れている,あるいは,騒音の大きさ,騒がしさ,うるささなど心理的,情緒的影響との対応が,騒音の種類によらず良好であるとされ,その評価量は,エネルギーの原理に基づき理論的で,一元的に測定・評価すれば複合騒音や日常生活における騒音暴露評価にも対応できることから,統一的総合評 価に利用されている。 (甲131,乙28,29,本件鑑定の結果)ウ騒音測定結果に関する評価(本件鑑定の結果)(ア) LA5の測定値の評価については,日本建築学会に係る分類(本件鑑定書10頁。以下「本件評価尺度(LA5)」という。)によれば,「うるささ」と「聞こえ方」を主な評価要因として言葉で想定できるよ うにされており,騒音レベルごとに外部騒音(道路騒音などの不規則変動音)については次のとおり整理されている。なお,この分類においては,道路騒音などの不規則変動音の外部騒音について,室内の暗騒音を30デシベルと想定している。 25デシベル通常では聞こえない 30デシベルほとんど聞こえない35デシベル非常に小さく聞こえる40デシベル小さく聞こえる 室内の暗騒音を30デシベルと想定している。 25デシベル通常では聞こえない 30デシベルほとんど聞こえない35デシベル非常に小さく聞こえる40デシベル小さく聞こえる45デシベル聞こえるがほとんど気にならない50デシベル多少大きく聞こえる 55デシベル大きく聞こえ少しうるさい60デシベルかなり大きく聞こえややうるさい65デシベル非常に大きく聞こえうるさい70デシベルかなりうるさい75デシベル非常にうるさい (イ) LAeq(等価騒音レベル)については,日本建築学会に係る分類(本件鑑定書13頁。以下「本件評価尺度(LAeq)」という。)によれば,「会話妨害」と「うるささ感」につき,次のとおり整理されている。 a 会話妨害(いずれも会話距離1m) 35デシベル前後日常の会話が了解度100%となる 45デシベル前後日常の会話がおおむね可能である65デシベル前後大きな声を出せば内容が分かるb うるささ感33デシベル程度から40デシベル程度まで気にならない40デシベル程度から47デシベル程度まで余り気にならない 47デシベル程度から57デシベル程度まで少しうるさい57デシベル程度以上うるさい⑸ 関係法令等ア都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成12年東京都条例第215号。以下「環境確保条例」という。)(甲1,100,125, 乙5,20,21,32)(ア) 環境確保条例は,「現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的」(1条)とするものであるところ,その136条は,「何人も(中略)別表第13に掲げる規制基準(規制 保条例は,「現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保することを目的」(1条)とするものであるところ,その136条は,「何人も(中略)別表第13に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては,人の健康又は生活環 境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超える(中略)騒音(中略)の発生をさせてはならない。」と規定している。そして,知事は,同条の規定に違反することにより,周辺の生活環境に支障を及ぼしていると認めるときは,その違反行為をしている者に対し,生活環境に及ぼす支障を解消するために必要な限度において,必要な措置をとることを勧告す ることができ(環境確保条例138条),また,上記規定に違反する行為をしている者が上記勧告に従わないときは,その者に対し,上記必要な限度において,必要な措置を命ずることができるとされている(環境確保条例139条1項)。 環境確保条例136条に基づく別表第13は,「日常生活等に適用す る規制基準」を騒音及び振動について定めており,騒音については,区 域を4つに区分し,各区分ごとに,時間の区分及び音源の存する敷地と隣地との境界線における音量が定められている。本件土地及び原告土地が含まれる第一種低層住居専用地域は,第一種区域とされ,規制基準(以下「本件規制基準」という。)は,午前6時から午前8時までが40デシベル,午前8時から午後7時までが45デシベル,午後7時から 午後11時まで及び午後11時から翌日午前6時までがいずれも40デシベルとされている。 別表第13の騒音に係る本件規制基準は,従前,保育所,公園等から発せられる子どもの声にも適用されるものと解されていたが,平成27年3月の改正(同年4月1日施行。以下「平成27年改正」という。) 表第13の騒音に係る本件規制基準は,従前,保育所,公園等から発せられる子どもの声にも適用されるものと解されていたが,平成27年3月の改正(同年4月1日施行。以下「平成27年改正」という。) により,本件規制基準の適用について,「保育所その他の規則で定める場所において,子供(6歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者をいう。以下この表において同じ。)及び子供と共にいる保育者並びにそれらの者と共に遊び,保育等の活動に参加する者が発する次に掲げる音(以下「子供の声等」という。)については,この規制基準 は,適用しない。」との定めが付加され,「次に掲げる音」として,①声,② 足音,拍手の音その他の動作に伴う音,③ 玩具,遊具,スポーツ用具その他これらに類するものの使用に伴う音及び④ 音響機器等の使用に伴う音が定められた。 (イ) 本件規制基準においては,騒音の測定方法について,工場及び指定 作業所の騒音に係る測定方法の例によるとされているところ,環境確保条例68条2項は,工場又は指定作業所に関する規制基準として別表第7を設けている。そして,別表第7の騒音に係る表には,次のとおり,騒音の測定方法が規定されている。 a 騒音の測定は,計量法71条に規定する条件に合格した騒音計を用 いて行うものとする。この場合において,周波数補正回路はA特性を, 動特性は速い動特性(FAST)を用いることとする。 b 騒音の測定方法は,日本産業規格(旧日本工業規格)Z8731(乙28参照。以下「本件JIS規格」という。)に定める騒音レベル測定方法により,騒音の大きさの値は,次に定めるところによる。 ・騒音計の指示値が変動せず,又は変動が少ない場合は,その指示 値とする。 ・騒音計の指示 規格」という。)に定める騒音レベル測定方法により,騒音の大きさの値は,次に定めるところによる。 ・騒音計の指示値が変動せず,又は変動が少ない場合は,その指示 値とする。 ・騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し,その指示値の最大値がおおむね一定の場合は,その変動ごとの指示値の最大値の平均値とする。 ・騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合は,指示値の9 0%レンジの上端の数値とする。 ・騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し,その指示値の最大値が一定でない場合は,その変動ごとの指示値の最大値の90%レンジの上端の数値とする。 (ウ) 東京都は,上記(ア)の平成27年改正の趣旨等を対外的に説明する文 書において,この改正によって,本件規制基準の適用が除外される子供の声等は,環境確保条例136条括弧書きの「規制基準を定めていないもの」に該当することになり,子供の声等が同条の規定に違反しているか否かは,数値規制を適用するのではなく,人の健康や生活環境に障害を及ぼす,すなわち受忍限度を超える障害を及ぼすおそれのある程度を 超えているか否かによって判断されることとなる旨説明している。そして,受忍限度を超えているか否かの判断に当たっては,単に音の大きさだけによるのではなく,音の種類や発生頻度,影響の程度,音を発生させる行為の公益上の必要性,所在地の地域環境,関係者同士でされた話合いやコミュニケーションの程度や内容,原因者が講じた防止措置の有 無や内容等を十分に調査した上で,総合的に考察するとしている。 また,平成27年改正について,環境確保条例を施行する各区市の担当者の参考資料として東京都の担当部局が作成した「『子供の声等』に係る環境確保条例第136条の運用Q&A集[Ver.2 。 また,平成27年改正について,環境確保条例を施行する各区市の担当者の参考資料として東京都の担当部局が作成した「『子供の声等』に係る環境確保条例第136条の運用Q&A集[Ver.2015/03/31]」においては,受忍限度の判断に当たって,具体的にはどのような事情をどのように考察すればよいかという問いに対し,考慮すべき 事情の例を挙げる中で,子供の声等の場合,本件規制基準は直接適用されないが,一つの目安となる旨を回答として記載している。 イ環境基本法等環境基本法16条1項は,「政府は,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し, 及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」と規定するところ,同項に基づき,「騒音に係る環境基準について」(平成10年9月30日環境庁告示第64号)が定められた(制定後改正があるが,本件保育園開設当時以降実質的な改正はない。以下,上記当時にこの告示が定める基準を「環境基準」という。)。環境基準は, 要旨次のとおりの内容である。 (ア) 環境基準は,地域(ただし,所定の道路に面する地域を除く。)の類型及び時間の区分ごとに次の基準値のとおりとする。なお,時間の区分は,昼間を午前6時から午後10時までの間とし,夜間を午後10時から翌日の午前6時までの間とする。 地域の類型基準値昼間夜間AA50デシベル以下40デシベル以下A及びB55デシベル以下45デシベル以下C60デシベル以下50デシベル以下(イ) 上記(ア)の基準値は,次の方法により評価した場合における値とする。 a 評価は,個別の住居等が影響を受ける騒音レベ 5デシベル以下C60デシベル以下50デシベル以下(イ) 上記(ア)の基準値は,次の方法により評価した場合における値とする。 a 評価は,個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本とし,住居等の用に供される建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって評価するものとする。この場合において屋内へ透過する騒音に係る基準については,建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルから当該建物の防音性能値を差し引いて評価す るものとする。 b 騒音の評価手法は,等価騒音レベルによるものとし,時間の区分ごとの全時間を通じた等価騒音レベルによって評価することを原則とする。 c 評価の時期は,騒音が1年間を通じて平均的な状況を呈する日を選 定するものとする。 d 騒音の測定は,計量法71条の条件に合格した騒音計を用いて行うものとする。この場合において,周波数補正回路はA特性を用いることとする。 e 騒音の測定に関する方法は,原則として本件JIS規格による。た だし,時間の区分ごとに全時間を通じて連続して測定した場合と比べて統計的に十分な精度を確保し得る範囲内で,騒音レベルの変動等の条件に応じて,実測時間を短縮することができる。当該建物による反射の影響が無視できない場合にはこれを避け得る位置で測定し,これが困難な場合には実測値を補正するなど適切な措置を行うこととする。 また,必要な実測時間が確保できない場合等においては,測定に代えて道路交通量等の条件から騒音レベルを推計する方法によることができる。 (ウ) 本件土地及び原告土地を含む地域は,「一般地域」のうち昼間が55デシベル以下,夜間が45デシベル以下が基準値となる地域とされて いる。 ウ環境 ことができる。 (ウ) 本件土地及び原告土地を含む地域は,「一般地域」のうち昼間が55デシベル以下,夜間が45デシベル以下が基準値となる地域とされて いる。 ウ環境基準に係る評価マニュアル(乙29)環境省は,平成27年10月,一般地域における環境基準の達成状況を評価する方法及びそのための騒音の把握方法を示すことを目的とし,「騒音に係る環境基準の評価マニュアル一般地域編」を作成した。騒音問題に対処する場合等においてもこのマニュアルに準じた方法で行うことが望 ましいとされている。 上記マニュアルには,騒音等の測定方法等について,要旨,次のような記載がある。 (ア) 測定項目測定項目は,昼間(午前6時から午後10時)と夜間(午後10時か ら翌午前6時)の等価騒音レベル(LAeq)とする。また,騒音レベルの分布特性を把握するため,時間率騒音レベル(LA5,LA10,LA50,LA90,LA95)も測定することが望ましい。 (イ) 騒音の測定時期及び時間騒音の測定は,1年を代表すると思われる日を選び行う。観測時間に 区分して間欠的に測定を行う場合の実測時間(実際に騒音を測定する時間)は,原則として10分間以上とする。 (ウ) 測定機器等騒音計は,計量法71条の条件に適合したものを使用する。 また,風雑音の影響を低減するために,騒音計のマイクロホンには必 ずウインドスクリーン(スポンジ状のキャップ。風防)を装着する。ウインドスクリーンを付けることによって,風速5m/s程度までは影響を少なくすることができる。 (エ) 騒音測定方法等マイクロホンは,地域の広域的・全体的な騒音状況を把握する目的か ら,塀,建物等による局地的な遮蔽又は反射の影響を避け 度までは影響を少なくすることができる。 (エ) 騒音測定方法等マイクロホンは,地域の広域的・全体的な騒音状況を把握する目的か ら,塀,建物等による局地的な遮蔽又は反射の影響を避け得る位置に設 置する。その高さは,地域内の住居等の生活面の平均的な高さとする(通常地上1.2mとなると考えられる。)。 騒音計の動特性(時間重み付け特性)はF特性(速い動特性,FAST)とする。 エ本件JIS規格(乙28) (ア) 環境基準において,騒音の測定に関する原則的な方法とされた本件JIS規格には,次のような記載がある。 環境騒音の測定に関する一般的な方法として,測定点の設定は,特に指定がない限り,次による。 a 屋外における測定 反射の影響を無視できる程度に小さくすることが必要な場合には,可能な限り,地面以外の反射物から3.5m以上離れた位置で測定する。測定点の高さは,特に指定がない限り,地上1.2~1.5mとする。それ以外の測定点の高さは,目的に応じて個々に定めるものとする。 b 建物の周囲における測定建物に対する騒音の影響の程度を調べる場合には,特に指定がない限り,対象とする建物の騒音の影響を受けている外壁面から1~2m離れ,建物の床レベルから1.2~1.5mの高さで測定する。 c 建物の内部における測定 特に指定がない限り,壁その他の反射面から1m以上離れ,騒音の影響を受けている窓などの開口部から約1.5m離れた位置で,床上1.2~1.5mの高さで測定する。 (イ) なお,本件JIS規格の附属書1(「適正な土地利用のための音響データの収集」)には,長期平均等価騒音レベルを求める際の測定に当 たり使用するマイクロホンの位置について, る。 (イ) なお,本件JIS規格の附属書1(「適正な土地利用のための音響データの収集」)には,長期平均等価騒音レベルを求める際の測定に当 たり使用するマイクロホンの位置について,建物の外壁から1~2m離 れた場所で測定を行う場合,建物の反射の影響が含まれるとし,一般的な騒音の場合には反射によるレベルの増大は最大3デシベル程度である旨の記載がある。 2 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 本件保育園から生じる騒音が原告らの受忍限度を超えているか否か (原告らの主張)ア騒音訴訟において侵害行為の違法性が認められるためには,当該侵害行為が社会生活上受忍すべきであると考えられる範囲を超えているか否かで決すべきであるとされている。具体的には,「侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要 性の内容と程度等を比較検討するほか,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及び内容,効果等の事情を考慮し,これらを総合的に考察して」決すべきものとされている。また,「被害者の生活状況や四囲の状況,騒音発生の開始と被害者の居住開始の先後関係」も極めて重要である。 原告らは,本件保育園が開設される10年近く前から原告建物に居住し,静かな環境で生活していた。 しかし,平成19年4月に本件保育園の運営が開始されて以降,本件建物及び本件園庭を使用する本件保育園の園児の声などが原告建物に到達するようになった。 そして,以下のとおり,本件保育園が生じさせている騒音は,原告らが社会生活上受忍すべきであると考えられる範囲を逸脱している。その結果,原告らは,憲法に由来する非常に重要な権利である,原告 そして,以下のとおり,本件保育園が生じさせている騒音は,原告らが社会生活上受忍すべきであると考えられる範囲を逸脱している。その結果,原告らは,憲法に由来する非常に重要な権利である,原告らが平穏に生活する権利を侵害されている。 イ開設に係る被告らの対応等 (ア) 本件保育園開設当時から,幼稚園については,文部科学省により幼 稚園施設整備指針が定められており,施設が周辺地域に及ぼす騒音等の影響について,事前に地域住民等と十分協議することが重要であるとされていた。また,環境確保条例の平成27年改正後,都内の様々な自治体の認可保育所の設置業者募集要項において,応募の前に近隣住民への説明が済んでいることが応募の要件とされており,保育所においても, 近隣の居住環境の保全に配慮することは,既に一般化している。 しかし,本件保育園については,本件建物の建設工事を開始する前日の平成18年11月16日になって初めて説明会(以下「第1回説明会」という。)が開かれた。説明会の翌日から工事を始めるというのは,細かい変更はともかく,大きな変更は全く想定していなかったことを表し ており,その姿勢は,原告らを含む近隣住民への配慮が全くなかったことを端的に示している。原告らを含む近隣住民は,第1回説明会において,本件建物と本件園庭の設置場所に係る計画内容を知り,被告らに対し,その計画では,園庭遊びによって多大な騒音が発生し,近隣住民に影響が出るだけでなく,園児も不憫であるとして,園舎の北側に園庭を 設置するよう被告らに申し入れたが,被告らはこれを無視した。被告らは,計画を変更しなかった理由についてるる主張するが,提訴後7年以上が経過した時点においても,本件園庭を園舎の南側に設置したそもそもの経緯や理由の説明が 申し入れたが,被告らはこれを無視した。被告らは,計画を変更しなかった理由についてるる主張するが,提訴後7年以上が経過した時点においても,本件園庭を園舎の南側に設置したそもそもの経緯や理由の説明が何らされておらず,そのことからすれば,本件園庭を園舎の南側に設置しなければならなかった根拠はないというほか ない。 このように,被告らは,あえて本件園庭を園舎の南側に設置し,その騒音によって近隣住民の居住環境を悪化させたのである。このような対応は,環境確保条例改正後の保育所設置の基準から考えても,住宅街に設置される保育所のあるべき姿とは大きくかい離したものである。 被告らは,説明会を複数回開催した旨も主張するが,第1回説明会の 時点で計画が変更できなかったのであれば,それ以降いくら説明会が開催されても協議する余地はなかったものであるから,かかる複数回の説明会の意味はない。なお,原告甲1を含む近隣住民は,第1回説明会の前に被告日本保育の担当者からの訪問を受け,具体的な計画内容を示されずに,本件土地に保育所が建設される予定であることを聞き,これに 賛同の意思を示した。このことからも分かるとおり,そもそも原告らは,保育所の建設自体に反対したわけではない。 (イ) また,被告日本保育は,本件保育園運営開始直前の平成19年3月に,当初の図面にはなかった本件砂場を原告建物のすぐ近くに設置することを一方的に決めた。原告らは,砂場には園児が集まるため,その場 所には設置しないよう申し入れたが,被告日本保育は,「砂場で遊ぶ園児は静かなので,砂場は緩衝地帯である。」旨述べ,本件砂場の設置を強行した。その結果,本件砂場付近に園児らが集まり大騒ぎし(甲6),騒音の大きな発生源となった。 被告日本保育は,本 園児は静かなので,砂場は緩衝地帯である。」旨述べ,本件砂場の設置を強行した。その結果,本件砂場付近に園児らが集まり大騒ぎし(甲6),騒音の大きな発生源となった。 被告日本保育は,本件境界線付近等に防音壁を設置したが,効果がな いことは設置前から分かっており,原告らを含む近隣住民が希望したわけでもなく,近隣住民への配慮とはいえない。また,被告日本保育は,騒音問題について,「運営で何とかする。」と述べながら,近隣対応の窓口を本件保育園ではなく本社に指定するなど,問題解決の姿勢が全くなく,むしろ近隣住民を軽視している。 (ウ) 原告らは,本件規制基準の基準値を超えれば,どんな子どもの声でも騒音として苦痛に感じるとは思っていない。もちろん,本件保育園からの騒音が上記基準値を大きく超えることが受忍限度を考える上での一つの要素であると考えるが,本件保育園が建てられた経緯,第1回説明会以来の被告日本保育の態度などの要素も合わさって,本件保育園から の音は苦痛な騒音となっているのである。 ウ本件規制基準の基準値を上回る騒音であること本件保育園から発生する騒音が受忍限度を超えるものかどうかを判断するに当たっては,環境確保条例の本件規制基準が一つの要素となる。環境確保条例は,本件訴訟の係属中に改正され(平成27年改正),保育所などから発生する子供の声等には本件規制基準は適用されないものとされた が,東京都自体が,上記子供の声等については改正後も本件規制基準が一つの目安になることを認めているのであって,平成27年改正は,上記子供の声等が受忍限度内か否かを判断するに当たって意味を持たない。 また,環境基準は,等価騒音レベルを用いて判断がされることとなっているが,行政上の政策目標 であって,平成27年改正は,上記子供の声等が受忍限度内か否かを判断するに当たって意味を持たない。 また,環境基準は,等価騒音レベルを用いて判断がされることとなっているが,行政上の政策目標である。一方,本件規制基準は,東京都が具体 的に公害等の発生源を規制する基準であり,所在地の環境騒音の程度等を考慮し,原因者が発する騒音が環境騒音と同レベルであることを考慮しているため,元々静かな地域であるほど,原因者が発する騒音も小さくあるべきということになる。仮に,受忍限度を判断する際に等価騒音レベルを用いる環境基準を考慮すると,元々静かな地域であるほど,原因者は大き な騒音を発生させて良いという矛盾が生じる。このような矛盾が生じる環境基準を当てはめて考えるべきではなく,発生源である被告らが守るべき基準は本件規制基準である。 そして,本件保育園から原告建物に到達する騒音は,次のとおり,本件規制基準をはるかに上回るものである。 (ア) 環境確保条例が規制しているのは,敷地境界の値であるから,本件保育園から原告建物に到達する騒音として考慮すべきは,本件境界線上における音の大きさである。しかし,原告らによる測定の負担もあり,原告らは,原告建物において本件境界線に近い場所であると考えられる2階西側6畳間の窓辺(以下「2階西側窓近傍」という。)を騒音の測 定場所とした。そして,環境確保条例に規定されているのと同様の設定 をしたデジタル騒音計を使用し,そのデータを騒音計の附属ソフトを用いてパソコンに取り込むか,又は計測時に騒音計とパソコンを接続し,附属ソフトを用いてパソコンにデータを落とし,これらテキスト形式のファイルをグラフ又は表にした(以下,原告らが測定したデータを「原告ら測定データ」という。)。なお,騒 時に騒音計とパソコンを接続し,附属ソフトを用いてパソコンにデータを落とし,これらテキスト形式のファイルをグラフ又は表にした(以下,原告らが測定したデータを「原告ら測定データ」という。)。なお,騒音計には,本件審査会測定が行 われた頃の一時期以外は風防を付けていた。 また,ある特定の騒音の程度を判断する際に,その場の全ての音のエネルギーを平均した値である等価騒音レベルを用いることは,上述のとおり,周りが静かであるほど大きな音を出して良いという矛盾が生じるため,適当ではない。本来,音は,その最大値が聴く人に苦痛を与える のであるから,最大値がどの程度なのかが重要になるが,最大値のみをみると,一瞬でも大きな音を出すことが許されなくなってしまう。そのため,騒音値の目安をおくとすれば,本件規制基準において,不規則かつ大幅に変動する騒音の大きさの値につき,時間率騒音レベル90%レンジ上端値(LA5)と定められているのと同様に,LA5を用いるの が適当である。仮に,等価騒音レベルを参考にするとしても,園児が園庭遊びをしていない時間の値を含めて等価騒音レベルを計算すべきではない。 さらに,本件規制基準で規制されているのは敷地境界における値である上,原告らが騒音のために窓を閉めることを強いられること自体が原 告らの生活に支障を来していることに他ならないのであるから,窓を閉めた状態の室内での音の大きさを受忍限度の判断において考慮すべきであるとはいえない。 (イ) 原告ら測定データによれば,園児が通常の園庭遊びをすると,原告建物に到達する騒音(LA5)は,70デシベルを何度も超え,時には 80デシベルを超えることもある。等価騒音レベルをみても,60デシ ベルを超えることが多い。騒音は,10デシベ 原告建物に到達する騒音(LA5)は,70デシベルを何度も超え,時には 80デシベルを超えることもある。等価騒音レベルをみても,60デシ ベルを超えることが多い。騒音は,10デシベル大きくなるごとに知覚的には2倍になるとされているから,仮に59.8デシベル(本件審査会測定における2階西側6畳間のLA5の最大値)であったとしても,本件規制基準と比べて約2.8倍もの騒音となり,65.7デシベル(本件審査会測定における本件境界線上4.7mのLA5の最大値)で あれば約4.2倍,75デシベルであれば8倍の騒音となることになる。 なお,本件審査会測定自体は,通常とは異なる状況下で実施されたため,園児の園庭遊びが通常とは異なっていたから,その測定データのみを取り上げ,それが本件保育園から発生する騒音の全てを正確に表していると論じることは不適当であるが,それでも,本件審査会測定の結果,本 件境界線付近の騒音(LA5)は,園児が本件園庭にいる間,64.8デシベルから67.4デシベルと本件規制基準を超えていた。 一方,本件鑑定については,本件事前測定時及び本件本測定時に,特別静かな園庭遊びがされていたから,本件本測定や本件事前測定再現調査で確認された騒音レベルが小さいからといって,本件保育園から発生 する騒音の全てが小さかったとはいえない。むしろ,本件鑑定に際し原告らが提供したNo.1からNo.3までの音源(以下,各音源を本件鑑定中の番号に応じて,「No.1音源」の例により略称し,No.1音源からNo.3音源までを併せて「原告ら提供音源」という。)の収録時における園庭遊びが通常の本件保育園から発生する騒音を表すこと ができているというべきである。そして,原告ら提供音源再現調査における再生音量は,2階西側窓近傍の ら提供音源」という。)の収録時における園庭遊びが通常の本件保育園から発生する騒音を表すこと ができているというべきである。そして,原告ら提供音源再現調査における再生音量は,2階西側窓近傍の値で調整すべきであったのに,本件境界線付近で調整したことから,実際よりも小さく再現された上に,原告建物から4.8mしか離れていない位置にスピーカーが設置されるなどしたことからも,小さな音になったにもかかわらず,測定結果は,窓 を開けた際の窓近傍の騒音値において,「非常に大きく聞こえうるさい」 と評価されており,LA5が本件規制基準である45デシベルを21デシベルも超えていることは注目に値する(ただし,本件鑑定においては,音源ファイルよりも小さく再生されたとの理由からNo.3音源による測定値のみが参考値とされているが,2階西側窓近傍の計測値との比較によれば,原告ら提供音源はいずれも小さく再生されていたことが判明 するから,原告ら提供音源による測定値をいずれも参考値とすべきである。)。 (ウ) 被告らは,原告ら測定データには信用性がない旨主張するが,いずれも机上の空論を列挙しただけの意味のないものである。 かえって,本件審査会測定がされた平成23年12月21日の原告ら 測定データは,本件審査会測定におけるデータとの誤差がほとんどなく,波形が相似していた上に,最大騒音レベルを除く値は,原告らの測定データの方が小さかった(ただし,本件審査会測定におけるデータのみを取り上げ,それが本件保育園から発生する騒音の全てを正確に評価していると論じることが不適当であることは,上記(イ)のとおりである。)。 また,本件検証時における原告ら測定データの計測値は,原告らの騒音計と並べて設置された鑑定業者の騒音計による計測値との差が いると論じることが不適当であることは,上記(イ)のとおりである。)。 また,本件検証時における原告ら測定データの計測値は,原告らの騒音計と並べて設置された鑑定業者の騒音計による計測値との差がほとんどなく,総体的に鑑定業者の測定値より小さかった。原告らは,常に同様の方法で測定していたのであるから,原告ら測定データは,騒音値を過大評価するものではなく,十分信用性を有する。 なお,本件鑑定において,窓辺での計測は値が不安定である旨が指摘されているが,実際の本件鑑定の測定値によれば2階西側窓近傍の測定値が不安定であるという傾向はない。 したがって,原告ら測定データは,本件保育園から日常的に発生する騒音の実態を知る上で十分参考になる。 (エ) 騒音の発生時間が1日当たり1~2時間程度で,かつ,その発生が 午前中に限られていたとしても,決して短い時間ではない。また,本件保育園では,午前中一杯が園庭の使用時間になっていることからすれば,原告らは,結局のところ,午前中一杯にわたり,園児が園庭遊びをいつ始めるか分からない状態に置かれ,騒音の被害を受け得ることになるのであり,その間は常に不安にさいなまれることになるのであって,原告 らが被る損害は甚大である。 エ本件園庭の使用状況等(ア) 被告らは,園庭遊びの必要性について主張するが,そもそも,法令上,園庭で遊ばなくても,公園などで遊ぶことで代替することが認められている。実際,被告日本保育の運用する保育所の中には,園庭が設置 されていない保育所もあるし,本件保育園においても,園庭を使用しなかった期間が約2年間あり,同期間中も支障なく本件保育園の運営がされていたのである。かえって,近時は,園児らを外遊びのために保育所外に散歩に連れていくことが,当該 件保育園においても,園庭を使用しなかった期間が約2年間あり,同期間中も支障なく本件保育園の運営がされていたのである。かえって,近時は,園児らを外遊びのために保育所外に散歩に連れていくことが,当該保育所に対する高い評価につながってさえいる。本件保育園では,運営開始直後に,近隣住民に「お散歩M AP」(甲39)を配布し,園外にも遊びに行くという説明をして,実際に出掛けており,園外での外遊びは可能である。園外に出るのが危険というのであれば,専用のバスを用意しそのバスで移動するなどの工夫も可能である。 さらに,どうしても園庭遊びが必要なのであれば,本件土地の北側に 隣接し駐車場となっている被告乙所有地に園庭を設置すればよかったのであり,原告らや近隣住民がそのように計画を変更するよう第1回説明会時から申し入れてきたことは,上記イのとおりである。それにもかかわらず,被告らは,計画変更による負担を負いたくないためにこれを行わず,運営開始後も園庭の移設をしようとしないのであるから,近隣住 民に負担を強いることはあってはならない。実際に,近隣の住居環境の 保全に配慮した保育所の運営は,既に一般化しているといえる。 (イ) 被告日本保育は,本件園庭の位置を変えることはせず,運用により騒音が生じないようにする旨説明してきたが,本件保育園においては,平成19年4月1日から平成23年3月31日まで園長をしていた丁の証言や被告日本保育の主張とは異なり,運営開始当時から,近隣住民へ の配慮を一切せずに本件園庭の使用がされていた。 すなわち,本件保育園の保育士は,日常的に園児を静かにさせることなく,むしろ,あえて園児が大騒ぎをするような遊びを行わせ,プール遊びの際には保育士自らが大声を出したり,ホースで園児に水を掛けることで なわち,本件保育園の保育士は,日常的に園児を静かにさせることなく,むしろ,あえて園児が大騒ぎをするような遊びを行わせ,プール遊びの際には保育士自らが大声を出したり,ホースで園児に水を掛けることで,更に園児を興奮させ,騒がせていた。保育士が園児に静かにす るよう声をかけることもあったが,そのときも,本気で静かにさせようとはしていなかったし,しばしば,近隣にも聞こえるような大声で注意して騒音を増大させていた。プール遊びや水遊びの際に園児の声に配慮をしなかった結果,園児が絶え間なく奇声を上げ,等価騒音レベルでも70デシベルを超えるほどの騒音が出ていた時期もあった。現在は,テ ントの中でプール遊びをしているが,平成30年時点では,テントの東側(原告建物側)にある開口部を全開にして使用していたため,原告建物に騒音が筒抜けとなっていた。 本件園庭の使用が一時的にほぼなくなった際には,騒音がなくなったが,平成23年4月頃に本件園庭の使用が再開されてからは,被告日本 保育は,東京都公害審査会や本件訴訟における原告らの発言に対応するかのように,意図的に本件園庭の使用方法を変えて,騒音を増大させたり減少させたりしていた。また,プール遊びにおける騒音は,プールの設置位置によって変動するところ,平成25年7月31日の現地進行協議期日や同月19日のプール遊び時には,それ以前に比べて原告建物か ら遠い位置にプールが設置されていたため,騒音が通常より静かであっ たが,プール遊びそのものが静かになったものではない。 (ウ) 被告日本保育は,平成20年3月4日の説明会では,園庭遊びは1クラス30分以内にするとしていた(甲20の4頁及び甲67)。また,被告日本保育が運営する別の保育所では,園児の園庭の使用時間を午後の30分に限 保育は,平成20年3月4日の説明会では,園庭遊びは1クラス30分以内にするとしていた(甲20の4頁及び甲67)。また,被告日本保育が運営する別の保育所では,園児の園庭の使用時間を午後の30分に限定するなどの配慮をすることができている。しかし,本件 保育園においては,例えば平成23年7月には,本件園庭を1日当たり平均1時間31分も使用しており,1クラスが30分以上遊ぶことも頻繁にあった。そもそも,1クラス当たりの使用時間が30分以内に限られたとしても,4クラスが本件園庭を使用すれば,2時間にわたり園庭遊びがされることになるのであって,1クラスが連続して2時間遊ぶこ とと騒音の発生という点からすれば何ら変わりがない。 (エ) さらに,園庭遊び以外にも,本件建物内における園児の活動による騒音も発生している。本件建物内で園児が活動中に,その東側や南側の窓が開いていることが何度もあり,特に東側の窓が開けられた状態であると,原告建物に本件建物内で発生した騒音が届きやすくなる。本件建 物内でリトミックや歌を歌っている時にこれらの窓が開けられたことで,原告建物に60デシベルを超える騒音が到達したこともあった。 (オ) 本件検証後,更に本件訴訟における和解協議中に行われた平成30年11月19日の説明会後は,プール遊び時を除き,幼児クラスが本件園庭をほぼ使用しなくなり,一定の静かさが保たれているが,被告日本 保育は,この状態を継続することを約束してはいない。このような被告日本保育の対応に加え,上記(ア)から(エ)までの本件保育園による本件園庭の使用実態からすれば,原告らは,現在のところ園庭遊びが減少しているとしても,いつ本件園庭における園庭遊びが再開され,甚大な騒音被害を被ることになるかについて多大な不安があり,その不安が現実 件園庭の使用実態からすれば,原告らは,現在のところ園庭遊びが減少しているとしても,いつ本件園庭における園庭遊びが再開され,甚大な騒音被害を被ることになるかについて多大な不安があり,その不安が現実化 する危険は大きい。 オその他の事情(ア) 被告日本保育は,本件保育園が高度の公共性を有することを主張するところ,原告らも保育所の公共性については認めるところである。しかし,本件で原告らの権利を侵害しているのは,子どもたちではなく,被告らである。すなわち,被告らが,自らの営利目的のために,園庭の 設置場所を園舎の北側に変更することなく,バスなどで広い公園に行くなどの手段も取らず,本件園庭で子どもたちを遊ばせているのである。 このような被告らの侵害行為に,公共性は全くない。また,公共性や必要性が高い施設であるからといって,近隣住民に騒音被害を生じさせてよいというものではない。 (イ) 被告日本保育は,本件保育園のための駐車スペースを1台分しか確保しなかった結果,不都合を生じさせる(甲19)など,自らの金銭的利益を優先し,近隣の環境を顧みない不誠実な姿勢がうかがえる。 (ウ) 被告日本保育は,本件保育園によって生じる騒音について,不満を述べている近隣住民は減ったないし少数派であるかのような主張をする が,これは誤りである。本件保育園に接する住宅は,元々4棟しかなく(甲2),そのうちの一つはアパートで,その住民は,いざとなれば簡単に引っ越すことができ,アパートの持ち主は遠方に住んでいる。同持ち主は,本件保育園の騒音問題について,他の近隣住民に一任しているから,結局,本件保育園に接する住宅の所有者全てが,上記騒音問題に 苦情を呈しているのである。 (被告日本保育の主張)ア 主は,本件保育園の騒音問題について,他の近隣住民に一任しているから,結局,本件保育園に接する住宅の所有者全てが,上記騒音問題に 苦情を呈しているのである。 (被告日本保育の主張)ア本件保育園から原告建物に到達する音の大きさは,以下のとおり,原告らが社会通念上受忍すべき範囲を超えていない。 イ音の大きさ (ア) 受忍限度の判断に最も重要な要素は,「侵害行為の程度,被侵害利 益の性質と内容」に対応する音の大きさである。 この点,原告らは,環境確保条例に基づき,本件境界線上の騒音レベル値によって音の大きさを判断すべきである旨主張しているが,そもそも,受忍限度の判断に際しては,原告らが日常生活を送る場である原告建物内における騒音レベルを用いるべきであることは明らかである。さ らに,平成27年改正後の環境確保条例においては,本件保育園のような場所における保育活動中の子供の声等は,その数値規制から外れることになっている。 (イ) また,本件において音の大きさの判断に用いるべき資料は,中立的な第三者の専門家によって行われ,測定基準を満たした測定であること が担保されている本件審査会測定の結果及び本件鑑定のみであるべきである。原告らは,原告ら測定データを証拠として提出しているが,次に述べるとおり,原告ら測定データには信用性がない。 a 騒音測定については,測定に用いる機器,時間,測定方法,環境条件などについて基準が定められているところ,原告らの測定方法は, これらを満たしているという客観的担保もなく,むしろ,これらに反し,建物の外壁に密着した窓枠上で測定が行われており,ウインドスクリーン(風防)の設置もないといった問題点がある。 b 本件鑑定によれば,原告ら提供音源再現調査に 的担保もなく,むしろ,これらに反し,建物の外壁に密着した窓枠上で測定が行われており,ウインドスクリーン(風防)の設置もないといった問題点がある。 b 本件鑑定によれば,原告ら提供音源再現調査において,No.1音源に実際に録音されていた音量を更に5デシベル上昇させて測定した 場合に初めて,原告ら測定データに近い値になっていたことからすれば,原告ら測定データには,少なくとも実際の音より5デシベル大きく測定される誤差がある。そもそも,本件再現調査においては,音源が5デシベル程度大きめに再現されていたことを併せて考えると,原告ら測定データについては,実際より10デシベル程度大きく測定さ れた値になっていることになる。 原告らは,原告ら提供音源再現調査においては,むしろ実際より音が小さく再生されていた旨主張するが,根拠がない。 c 提出された原告ら測定データが測定された日数は,本件園庭が使用された日数に比べて非常に少ないものであるから,原告らが,恣意的に騒音が大きく測定されたデータを選んで提出している可能性を否定 できず,少なくとも本件園庭の一般的な使用状況に伴い発生する騒音を代表する測定データであるとはいえない。 (ウ) さらに,等価騒音レベルは,睡眠影響やアノイアンスとの対応に優れているとされており,本件では,原告らが原告建物において感じている音の感覚的なうるささが受忍限度に影響していると考えられる。本件 鑑定においても,室内騒音の評価について等価騒音レベルを評価しているし,保育所その他の施設からの音に関する多くの裁判例において,等価騒音レベルが考慮要素とされている。そうすると,音の大きさの判断においては,考慮すべきことに争いがないLA5(5%時間率騒音レベルないし90%レンジ上端値 からの音に関する多くの裁判例において,等価騒音レベルが考慮要素とされている。そうすると,音の大きさの判断においては,考慮すべきことに争いがないLA5(5%時間率騒音レベルないし90%レンジ上端値)のみならず,LAeq(等価騒音レベル) を考慮すべきである。 なお,環境省が作成している評価マニュアル(乙29)によれば,環境基準では,騒音レベルは,基準時間帯(昼間(午前6時から午後10時),夜間(午後10時から午前6時))の等価騒音レベルを測定し,求める値は,ある特定の1時間値や時間帯内の最大値ではなく,基準時 間帯を通じたエネルギー平均が原則となるとされているのであるから,園児が園庭遊びをしていない時間の値を含めて等価騒音レベルを考慮すべきでないなどとする原告らの主張は誤りである。 (エ) そして,LA5については本件評価尺度(LA5)を,LAeq(等価騒音レベル)では本件評価尺度(LAeq)(以下,これらの評 価尺度を併せて「本件各評価尺度」という。)を評価において用いるべ きである。 (オ) 以上を前提に,本件鑑定における測定結果について検討すると,測定位置として不適切な2階西側窓近傍に限り,「大きく聞こえ,少しうるさい」及び「少しうるさい」と評価される程度になることもあったが,それ以外では,「小さく聞こえる」及び「気にならない」又は「通常で は聞こえない」及び「気にならない」程度の騒音レベルであった。 また,上記(イ)bのとおり,原告ら提供音源再現調査においては,音源がやや大きめに再現されており,原告らの録音時には,より小さな音であったことが考えられる。加えて,本件鑑定において,No.1音源は,室外からスピーカーで再生する音源としては適当とはいえないとさ れ,No に再現されており,原告らの録音時には,より小さな音であったことが考えられる。加えて,本件鑑定において,No.1音源は,室外からスピーカーで再生する音源としては適当とはいえないとさ れ,No.4音源からNo.6音源までに係る本件事前測定時の実測値と本件事前測定再現調査の測定値とのかい離も大きいことからすれば,本件再現調査で得られる測定値は,実際の騒音よりも過大であったとの前提で評価すべきである。 この点をおいても,測定位置として不適切な2階西側窓近傍において, 窓を開放した場合,本件各評価尺度において「非常に大きく聞こえうるさい」及び「うるさい」に該当するが,窓から1m離れれば,「多少大きく聞こえる」及び「少しうるさい」に該当すると評価される程度の騒音レベルにとどまるし,他の部屋においては,本件各評価尺度において「非常に小さく聞こえる」及び「気にならない」と評価されるものであ る。さらに,窓の開放の程度を減らした場合,窓から1m離れた場所でも,「聞こえるがほとんど気にならない」及び「あまり気にならない」と更に騒音レベルが減少する。 本件事前測定再現調査でも,最も測定結果が大きい場合で,「かなり大きく聞こえややうるさい」及び「うるさい」と「少しうるさい」の境 界に該当する評価となるが,窓から1m離れれば,「小さく聞こえる」 及び「あまり気にならない」と評価されるにとどまり,他の部屋では,本件各評価尺度において「通常では聞こえない」及び「気にならない」と評価されるにとどまる。 以上からすれば,本件再現調査の結果は,窓を開けた状態の2階西側窓近傍ではうるさいと評価され得る騒音レベルがある可能性もあるが, そのような大きさの音が聞こえるのは当該地点に限られるし,そもそも,同地点は測定位置として不適 結果は,窓を開けた状態の2階西側窓近傍ではうるさいと評価され得る騒音レベルがある可能性もあるが, そのような大きさの音が聞こえるのは当該地点に限られるし,そもそも,同地点は測定位置として不適切である。 (カ) 本件審査会測定の結果について検討すると,窓を開けた場合の2階西側6畳間室内で,本件各評価尺度において「大きく聞こえ少しうるさい」及び「少しうるさい」と評価される騒音レベルが認められるものの, 窓を閉めた場合や,それ以外の部屋では,本件各評価尺度において「小さく聞こえる」及び「あまり気にならない」と評価される騒音レベルにとどまる。これは,本件鑑定における測定結果と同様の内容であり,本件保育園の園庭遊びにおける音の状況が両測定の間で特に変わっていないことを示す。 なお,園児が屋内にいる間の測定結果は,窓を開けた場合の2階西側6畳間室内でも,本件各評価尺度において「小さく聞こえる」及び「あまり気にならない」と評価される騒音レベルにとどまっている。 ウ本件園庭の使用状況(ア) 被告日本保育は,本件保育園の近隣住民に配慮するため,運営開始 当初より本件園庭の使用時間を平日及び土曜日の午前9時45分から午前11時30分までの間に限定するとともに,1回当たりの園庭遊びを長くとも45分にとどめるようにして,園庭遊びを一般的な保育園と比較してかなり制限していた。平成23年6月以降の具体的な園庭使用状況は,別紙3「本件園庭使用状況表」のとおりであり,プール遊びのあ る7,8月を除いて頻度は高くなく,園庭遊びを全く行わない月も少な くなかった。また,1日当たりの平均使用時間もその大半が30分から40分程度であり,比較的声の大きい2歳児以上の園庭遊びの時間はそのうち半分にとどまる。したが 遊びを全く行わない月も少な くなかった。また,1日当たりの平均使用時間もその大半が30分から40分程度であり,比較的声の大きい2歳児以上の園庭遊びの時間はそのうち半分にとどまる。したがって,本件園庭から出る音の時間の長さ,頻度はかなり限られたものであった。 (イ) 本件保育園では,運営開始当初から,園庭遊びの方法を工夫したり, 運動会を本件保育園の向かいに位置する中学校の校庭を借りて行ったり,様々な配慮ないし工夫をしていた。 平成21年5月23日から平成23年4月13日までの間においては,園庭の利用を控えても代替方法により園を正常に運営できるか実験的に試みるため,本件園庭の使用を一時的に休止した。結局,園庭遊びを行 わないことは困難であったので,その後本件園庭の使用を再開したが,平成31年4月以降は,本件訴訟における和解協議の状況を踏まえ,先行して和解成立時に予定されていた配慮を実施することとした。すなわち,夏のプール遊びを除いて,本件園庭での遊びを中止し,本件園庭の西側寄りの場所に畑やプランター等を設置して他の遊びよりも静かに活 動することが期待できる栽培活動を実施したり,一度に園庭に出る園児の数を最大12名までに制限したりしている。この措置は,和解が成立しなかった現在においても継続している。 さらに,プール遊びについても,平成27年から,幼児用プールを防音テントで覆うことで防音効果を高めた上で実施した結果,園児の声が 小さく聞こえるようになっている(乙26)。 エ被告らの対応被告日本保育は,平成18年頃から,被告乙と本件保育園の開設に向けた協議を行い(丙1),同年11月13日,本件保育園を平成19年4月1日に開設することを前提として,建物賃貸借予約契約を締結した。この 段階で 平成18年頃から,被告乙と本件保育園の開設に向けた協議を行い(丙1),同年11月13日,本件保育園を平成19年4月1日に開設することを前提として,建物賃貸借予約契約を締結した。この 段階で開園の予定が具体的になったことから,速やかに近隣住民への説明 会を行うこととし,3日後の同月16日,第1回説明会を開催した。また,被告日本保育の当時の取締役と被告乙は,これに先立つ同月9日,近隣住民の自宅を訪問し,本件保育園開設のための挨拶回りをした。 そして,被告日本保育は,第1回説明会での近隣住民との質疑応答の内容や,その後本件保育園開園までに行った計9回の説明会における近隣住 民との対話の内容を踏まえ,ごみ置き場の設置場所,本件建物の屋根・外観等の色,本件園庭に植える樹木の種類等を計画段階から変更する,防音壁を設置するなどの具体的対応を行った。原告らは,第1回説明会が本件建物着工の前日であったことを問題とするが,第1回説明会が着工の前日になったのは,被告乙との上記建物賃貸借予約契約の締結が平成18年1 1月13日に完了するまで説明会を開催できなかったからにすぎず,故意に開催を遅らせたものではない。被告日本保育は,本件保育園開設までの間に計10回説明会を開催しており,原告らを含めた近隣住民に配慮している。 さらに,被告日本保育は,本件保育園開設後も,計5回説明会を開催す るとともに,原告らを含む近隣住民から本件保育園,被告日本保育東京支社ないし練馬区役所に電話があった際は,その内容を職員に周知し,共有するなどして,常に配慮していた。加えて,原告らに対しては,被告日本保育の負担で原告建物に二重サッシを付けることを提案することなどもしていた。 オその他の事情乳幼児にとって,成長過程において遊 に配慮していた。加えて,原告らに対しては,被告日本保育の負担で原告建物に二重サッシを付けることを提案することなどもしていた。 オその他の事情乳幼児にとって,成長過程において遊びは欠かすことができず,子どもを園庭等の屋外において活動させることは,重要な保育の内容となっている。また,環境確保条例が,乳幼児が楽しく身体を動かし声を出して適切な成長をする環境を確保する必要がある一方,子どもの声を含め騒音に悩 まされる者もいることから,子どもの声に関する規制について,単に音の 大きさによる規制から,周辺の生活環境に障害を及ぼしているかどうかを判断する規制へと見直すべきと考えられたために,平成27年改正がされたことや,その改正において,児童福祉法や児童福祉関連の法令が考慮されていることからしても,保育所における子どもの声について,他の騒音と同視して同様の数値規制に服させることが望ましくないとの考慮があっ たことは明らかであり,保育所における子どもの声について,児童福祉の観点から高度な公共性が認められることは明らかである。加えて,本件保育園が開設されたことをもって本件保育園が所在する練馬区の待機児童問題の解消に寄与しているという具体的な公共性もある。 また,本件保育園の園庭から原告建物に届く音は,全般的に子どもが遊 んでいることから出る声だと考えられるところ,機械音や交通騒音といった一般的に不快感を感じるだろう音と比較すれば,これを不快な音と受け止めない者もいるだろうと思われるから,一般的な騒音とは性質が異なると考えられる。 そもそも,原告建物の周囲には,中学校や公園があり,元々ある程度の 児童や中学生の声や運動・楽器の音などが頻繁に聞こえるような環境であったから,本件保育園が開設される前 なると考えられる。 そもそも,原告建物の周囲には,中学校や公園があり,元々ある程度の 児童や中学生の声や運動・楽器の音などが頻繁に聞こえるような環境であったから,本件保育園が開設される前から,ある程度の音が恒常的に生じていたというべきである。 ⑵ 被告日本保育に対する差止め請求の可否(原告らの主張) 現時点で園庭の使用時間が午前中に限られていても,原告らが受ける被害は大きく,さらに,今後午後に園庭遊びをする可能性も否定できず,その場合には,被害が拡大する。そして,これまでの経緯から考えれば,差止めが認められなければ,本件園庭の使用が再開され,再び甚大な騒音が発生することは明らかである。 したがって,原告らの被告日本保育に対する差止め請求は,認められるべ きである。 (被告日本保育の主張)差止め請求は,相手方の行為を将来にわたり制限するものであり,損害賠償請求に比して相手方の権利を制約する度合いが高いから,より高度の必要性が認められなければならない。そもそも,原告らの受忍限度を超える騒音 が原告建物に到達していないが,その点をおいたとしても,上記⑴の被告日本保育の主張ウのとおり,口頭弁論終結時点において,被告日本保育は,本件園庭をプール遊びを除いて栽培活動に限定して使用し,園庭に出る人数も12名を上限としている上に,園庭の使用頻度も相当減少しているのであり,今後も原告らの受忍限度を超える騒音が原告建物に到達する危険性がないこ とは明らかである。したがって,差止めの必要性は認められない。 ⑶ 原告らの損害の額(原告らの主張)原告らは,本件保育園から生じる騒音のために,原告建物で平穏に生活することができない状態に陥った。そして,原告甲3が仕事を辞めた以降は, 原 。 ⑶ 原告らの損害の額(原告らの主張)原告らは,本件保育園から生じる騒音のために,原告建物で平穏に生活することができない状態に陥った。そして,原告甲3が仕事を辞めた以降は, 原告ら全員が原告建物で過ごすことが多くなった。本来であれば,日当たりの良い原告建物の2階に,原告らが各自の部屋を持って生活することができるはずであったのに,本件保育園からの騒音のために,2階西側6畳間を使用することができず,原告甲1は1階リビングでの生活を強いられている。 また,庭仕事中や洗面所等においても,非常に大きな騒音にさらされている。 そして,騒音にさらされている時が最も重い被害を受けるものの,本件保育園の開設から長期にわたって強い騒音にさらされた結果,騒音にさらされていない間も,騒音がいつ生じるかわからないという強いストレスの中,生活を余儀なくされている。 このように,騒音の持続時間が長くて2時間程度だとしても,自分の家を 自由に有効に使えないことを考えると,その被害は非常に大きいのであって, これによる損害の額は,本件保育園開設時から継続して午前中を原告建物で過ごすのを基本としている原告甲1及び原告甲2については1箇月10万円が相当であり,退職時までは基本的に午前中は外出していた原告甲3については1箇月3万円が相当である。そして,本件調停の申請が受理された平成23年6月9日の時点で,原告らが上記被害を受けるようになってから既に 3年を経過していたから,この3年分については確定額として請求をする。 (被告日本保育の主張)ア仮に原告らの権利が侵害されていたとしても,原告らの請求する損害額は高額である。すなわち,本件保育園では,平成21年5月23日から平成23年4月13日までの間は園庭遊びをしていない 育の主張)ア仮に原告らの権利が侵害されていたとしても,原告らの請求する損害額は高額である。すなわち,本件保育園では,平成21年5月23日から平成23年4月13日までの間は園庭遊びをしていないから,この期間は損 害が生じていない。 イまた,原告甲1は,午前中外出していたり,原告建物においてくつろぐ場所が1階リビングであると供述していることから,園庭遊びの音が聞こえないか聞こえにくい1階リビングで過ごすことが少なくないことが認められる。原告甲2も,午前中外出することがあり,また,普段は原告甲2 自身の部屋である2階東側6畳間にいることが多いと供述しており,園庭遊びの音が聞こえないか聞こえにくい2階東側6畳間にいたことが少なくないと認められる。したがって,原告甲1及び原告甲2は,常に,本件保育園から発生する音が一番大きく聞こえる2階西側6畳間に所在していたわけではなく,このような生活実態からすれば,損害が生じているとはい えない。 ウ原告甲3については,原告ら自身が,直接騒音を受ける被害はほとんど受けていないと認めていることなどから,損害が存在しないことは明らかである。 (被告乙の主張) 否認ないし争う。 ⑷ 被告乙による人格権侵害の有無(原告らの主張)本件保育園から発生する騒音は,建物の建て方によって生じた問題であり,本件建物が騒音を発生しやすいように建てられたという点に欠陥がある。保育所として使用することを前提に被告乙が建築申請等をしたのであるから, 近隣住民に騒音等の迷惑をかけないよう,設計・計画すべきであった被告乙が,本件訴訟と無関係であるとはいえない。 また,被告乙は,本件保育園が経営されることによって賃料という利益を得ている。 (被告乙の主張) の迷惑をかけないよう,設計・計画すべきであった被告乙が,本件訴訟と無関係であるとはいえない。 また,被告乙は,本件保育園が経営されることによって賃料という利益を得ている。 (被告乙の主張) 本件保育園からの騒音が原告らの受忍限度を超える旨の主張は,否認ないし争う。 そもそも,被告乙は,被告日本保育から本件保育園の開設の話を持ち掛けられ,自身の所有する本件土地上に,被告日本保育の提案に従った構造で本件建物を建築し,これらを本件保育園のために被告日本保育に賃貸している にすぎず,本件保育園に係る計画や運営には関与していない。 このように,被告乙が,本件建物の建築及びその賃貸によって,本件保育園の園児に歓声等を発せさせているわけではなく,園児による歓声等を制御し得る立場にもないから,被告乙が原告らに対する人格権侵害の加害者とはなり得ないのであって,原告らに対する人格権侵害に基づく差止め及び損害 賠償の責任を負うことはない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の前提事実のほか,後掲証拠(枝番のある証拠につき,全ての枝番を含むときには枝番の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,次 の事実が認められる。 ⑴ 原告らの居住環境等ア原告土地及び本件土地の在る地域は,第一種低層住居専用地域に指定されている。 原告建物の間取りは,おおむね,別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」に記載のとおりであり,原告建物内の居室で本件園庭側に 窓があるのは,2階西側6畳間のみである。なお,原告建物の窓には,建築当初から,遮音性に優れたペアガラスが使用されている。 原告甲1は,平成28年7月7日時点で77歳であり,平成21年3月頃,変形性膝関節症のため手術を受 畳間のみである。なお,原告建物の窓には,建築当初から,遮音性に優れたペアガラスが使用されている。 原告甲1は,平成28年7月7日時点で77歳であり,平成21年3月頃,変形性膝関節症のため手術を受け,その後,平成26年頃にかけて,腰椎骨折等複数回骨折するなどして手術を受けた。原告甲1は,手術後の リハビリのため,多いときには1週間に4回程度,平成28年頃には2週間に1回程度の頻度で,リハビリに通っていた。原告甲1は,上記リハビリ等のため,午前中外出することもあったが,原告建物において過ごす際には,理由はともかく,1階リビングでくつろぐことが多い。入浴は,転倒の危険を回避するために,午前中に1階にある浴室で行っている。 原告甲2(平成28年7月7日時点で42歳)は,月に10日程度派遣社員として午後1時から午後7時まで就労するなどしている。原告甲2は,本件保育園の午前中の様子を確認する必要もあるとして,午前中はなるべく原告建物で過ごすようにしている。原告甲2は,2階東側6畳間を自分の部屋としている。 原告甲3は,平成22,3年頃に退職するまでは,平日の日中に原告建物で過ごすことはほぼなく,上記退職後,平日の日中を含めて原告建物で過ごすことが多くなった。 (甲4,79,80,103,原告甲1本人,原告甲2本人)イ原告建物の東側は別の住宅と隣接しており,南側は,通路(私道)を挟 む形で別の住宅と接している。また,原告建物の北西側には,戊児童遊園 (以下「本件公園」という。)があり,本件公園の敷地の南側及び西側が,本件土地と接している(別紙2の1参照)。 本件保育園の開設前から,本件公園には,近隣の認証保育所である「己1」(旧「己2」。0歳児から2歳児までを対象とする保育所。)の園児が10名程で 西側が,本件土地と接している(別紙2の1参照)。 本件保育園の開設前から,本件公園には,近隣の認証保育所である「己1」(旧「己2」。0歳児から2歳児までを対象とする保育所。)の園児が10名程で遊びに訪れ,本件保育園の開設後も,週に三,四日程度,長 いときは1時間くらい滞在することもあった。 原告らは,その頻度,人数,時間などから,上記園児が発する騒音は余り大きなものとは感じていなかった。 (甲2,79,163,乙33から35まで,本件検証の結果,原告甲1本人,原告甲2本人) ウ本件保育園の西側には,幅員約4mの道路(区道)を挟んで庚中学校(以下「本件中学校」という。)がある。 本件中学校からは,校庭で授業を受ける生徒らの声や,吹奏楽器の音を含む部活動に伴う音が,ほぼ毎日原告建物に聞こえている状況である。しかし,原告らは,これらの音について,原告建物入居以降一貫して,余り 大きな騒音だとは感じていない。 (甲2,103,104,163,乙33,証人丁,原告甲1本人,原告甲2本人)エ原告建物と本件保育園の位置関係及び本件園庭との距離関係は,おおむね,別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」のとおりであり, 本件境界線(本件園庭の最東端)と原告建物との間の距離は,1mに満たない。 また,本件土地の北側には,被告乙が所有する土地があり,本件建物完成時点以降現在まで,本件園庭以上の面積の駐車場となっている。 (甲2,3,80,丙1,本件検証の結果) ⑵ 本件保育園の開設に至る経緯及び本件保育園の概要 ア本件土地は,本件建物が建築される前は,特段の構造物がなく,駐車場として利用されていたところ,被告日本保育の担当者は,平成18年頃,被告乙に対し,本件土地上で本件 本件保育園の概要 ア本件土地は,本件建物が建築される前は,特段の構造物がなく,駐車場として利用されていたところ,被告日本保育の担当者は,平成18年頃,被告乙に対し,本件土地上で本件保育園を開設する計画を打診し,被告乙は,相応の収益が上がることを見込み,これに応じることとした。被告乙は,その後,被告日本保育の担当者と協議し,その結果,本件土地につい て建物所有目的の賃貸借契約を締結するのではなく,被告乙が本件土地上に被告日本保育の提案に係る本件建物を建築し,本件建物(本件園庭部分を含む。)を被告日本保育に賃貸して,被告日本保育が本件保育園を運営することとなった。また,本件保育園開設のために必要な行政手続や設備の設置は,被告日本保育が行うこととなった。 (甲27,丙1)イ被告日本保育は,平成18年9月頃までには,本件保育園の開設計画について,練馬区の担当部署に相談をしていた。また,本件建物の建築確認申請は同年10月下旬頃にされ,同年11月13日には,被告らの間で,本件建物の完成を見越して,本件建物に係る建物賃貸借予約契約が締結さ れた。 こうした状況の中で,被告日本保育は,本件土地の近隣住民に対し,平成18年11月6日付けの文書で,本件保育園の平成19年4月の開設を目指し,本件土地上に本件建物を設置することを計画・協議しているとして,平成18年11月16日に第1回説明会を開催する旨の案内をした。 また,被告日本保育の当時の取締役と被告乙は,平成18年11月9日,原告建物を含む本件土地の近隣住民宅を訪問するなどして,本件土地に本件保育園が開設される予定である旨を説明する挨拶回りをした。この際,原告甲1は,本件建物の具体的な建築場所等を知らされなかったこともあり,従前駐車場となっていた 民宅を訪問するなどして,本件土地に本件保育園が開設される予定である旨を説明する挨拶回りをした。この際,原告甲1は,本件建物の具体的な建築場所等を知らされなかったこともあり,従前駐車場となっていた本件土地に本件保育園が開設されることにつ いて,防犯に資するのではないかなどと賛同する趣旨の発言をした。 (甲7,12,133,原告甲1本人)ウ平成18年11月16日,練馬区の担当者らも出席して,第1回説明会が開催された。被告日本保育は,この時初めて,工事の日程,計画,本件保育園の規模等を近隣住民に対して説明するとともに,近隣住民からの質疑に応答した。原告らのうち第1回説明会に参加したのは,原告甲1のみ であった。 第1回説明会で配布された資料には,建築工事につき,平成18年11月20日着工,平成19年3月20日完成と,本件保育園の定員につき,120名(うち2歳児から5歳児までの幼児クラスは,各クラス21名ないし23名の計89名)と記載され,本件建物は本件土地の北側部分に建 築し,本件土地の南側部分を園庭とする旨の記載もあった。 原告甲1を含む住民側出席者からは,上記資料どおりに園庭が設置されると,園児による騒音被害が生じるとして,園庭を本件土地の北側に設置するよう計画の変更が申し入れられたが,被告日本保育は,これを受け入れず,第1回説明会の翌日の平成18年11月17日,本件土地に資材が 運び込まれるなどして本件建物の建築工事が開始された。なお,第1回説明会では,本件土地の南西角に設置される予定であったごみ置き場の設置場所変更,防音壁設置の可否等についての質問ないし要望も出され,ごみ置き場については,要望に基づき設置場所が変更された。 (甲7,27,79,80,原告甲2本人) エそ き場の設置場所変更,防音壁設置の可否等についての質問ないし要望も出され,ごみ置き場については,要望に基づき設置場所が変更された。 (甲7,27,79,80,原告甲2本人) エその後,被告日本保育は,いずれも練馬区の担当者の立会いの下,原告らを含む近隣住民に対する説明会を,平成19年4月1日の本件保育園開設までに9回開催した。 これらの説明会ないしその間のやり取りの中で,原告らを含む近隣住民は,一貫して,本件園庭を園舎の北側に設置するよう求めていたが,被告 日本保育がこれに応じることはなかった。そうした中,練馬区は,平成1 9年2月8日,上記近隣住民に対し,「音の問題についての対応について」と題する文書(甲57)を提示した。この文書には,被告日本保育と協議した現在考えられる対応案として,① 近隣住居1階への音についての配慮として高さおおむね3mの防音壁を設置する,② 本件建物2階からの音についての対応としてベランダの柵の一部を壁に変更する,③ 近隣住 居2階への音についての配慮として,上記②の他,上記①の防音壁の上部に角度をつけ,その設置場所を敷地境界から22.5cm離すとする旨の記載がある。そして,同月12日の説明会で,上記防音壁の構造が具体的に示された。 (甲16,57) オ原告らを含む近隣住民は,平成19年2月14日,練馬区の担当者に対し,本来,本件園庭を本件建物の北側に移すべきであり,防音壁の設置は希望するものではないとしつつ,練馬区及び被告日本保育が防音壁設置を進めようとしているとして,その仕様についての意見を記載した文書を交付した。結局,被告日本保育は,同年3月,本件境界線及び本件土地の南 側の境界線に沿って,約3mの高さの防音壁を設置した。このうち本件境界線に として,その仕様についての意見を記載した文書を交付した。結局,被告日本保育は,同年3月,本件境界線及び本件土地の南 側の境界線に沿って,約3mの高さの防音壁を設置した。このうち本件境界線に沿って設置された防音壁は,上部約2mが透明パネルとなっている全体が直立構造のもので,原告建物西側にある1階部分の窓は,全て防音壁上端とほぼ同じか低い位置となっているが,原告建物西側にある2階部分の窓及び階段途中にある窓は,上記上端より高い位置となっている。 また,被告日本保育は,平成19年3月10日の説明会において,本件境界線から1m程度西側の本件園庭に,南北4m,東西3mの砂場を設置することにした旨説明した。原告らが,砂場には園児が集まって騒音が大きくなるとして,原告建物の直下といえる位置に砂場を設置することに抗議すると,被告日本保育は,砂場はむしろ園児が静かに遊ぶことが想定さ れ,砂場の設置は,原告建物への騒音を減少させるための緩衝地帯とする 趣旨である旨の説明をした。 なお,本件建物2階ベランダの柵については,原告らを含む近隣住民は全体を壁とするよう求めていたが,被告日本保育は,掃き出し窓部分のみを壁とし,その余は柵として施工した。 (甲3,16,17,20,27,28,57~59,乙6) カ本件建物は,平成19年3月中に完成し,同月,東京都による保育所開設に係る認可もされ,同年4月1日から本件保育園の運営が開始された。 本件建物は,鉄骨造合金メッキ鋼板ぶき2階建てで,登記上の床面積は,1階326.31㎡,2階322.20㎡である。また,本件園庭の面積は約323㎡であり,その北東端付近の別紙2の2「園庭内と隣接家屋及 び,測定点位置図」に「砂場」と記載された部分に本件砂場が設置されて .31㎡,2階322.20㎡である。また,本件園庭の面積は約323㎡であり,その北東端付近の別紙2の2「園庭内と隣接家屋及 び,測定点位置図」に「砂場」と記載された部分に本件砂場が設置されている。本件保育園の開園時間は,午前7時から午後8時30分まで,休園日は日曜祝日及び年末年始である。 本件保育園は,0歳児クラスから5歳児クラスまでの5クラスに分かれ,定員は,0歳児クラスが12名,1歳児クラスが23名,その余のクラス が各24名(合計131名)であり,実際にも,開設後の1年程度を除き,3歳児から5歳児までのクラスには1クラス当たり20名前後の園児が所属している。 (甲15,20,27,乙4)⑶ 本件保育園開設後の経緯 ア平成19年4月19日,被告日本保育は,原告らを含む近隣住民に対し,「一日の保育の流れと近隣への配慮について」と題する文書(甲155)を配布した。この中では,午前9時30分から午前11時30分までの時間帯につき,午前のカリキュラムとして,園庭遊び,園外保育,体操教室,リトミック等をして過ごすものとし,一日を通して最も活動的な時間帯で, 度を越えた奇声やむやみやたらな叫び声などには職員が敏感に反応し,注 意喚起しあえる状況を作っていくようにすることなどが,午後4時から午後4時30分までの時間帯につき,リトミック,体操,行事の練習等を行うものとし,「園庭に出る場合は面積的にも安全面から考えても,全園児が一斉にという状況は困難です。」といったことなどが,それぞれ記載されている。 この頃,本件園庭の使用時間はまちまちで,30分程度のこともあれば,1時間半程度のこともあり,また,午後4時頃から使用されることもあった。さらに,本件土地と本件公園との境界に設置されたフ この頃,本件園庭の使用時間はまちまちで,30分程度のこともあれば,1時間半程度のこともあり,また,午後4時頃から使用されることもあった。さらに,本件土地と本件公園との境界に設置されたフェンスの本件砂場付近にある非常口を使って,園児が本件公園に赴き,そこで遊ぶこともあった。さらに,平成19年5月に入り気温が上がると,本件建物内で園 児が騒いでいるのに本件建物の窓が開いたままのこともあった。 原告らを含む近隣住民は,このような状況の下で本件保育園から聞こえる騒音について,被告日本保育から,本件保育園に直接苦情を伝えることは控えるよう求められていたことなどから,被告日本保育の東京支社や練馬区の担当者に苦情を伝えたり,練馬区が被告日本保育に対応を改めるよ う指導することを練馬区議会に陳情したりしていた。もっとも,原告甲2は,平成19年4月ないし5月頃は,日によっては,本件園庭が使用されていても耐えられる程度の騒音にとどまっていると感じることがあった。 (甲63,73,74,154,155,156の6,甲157)イ原告甲2は,平成19年6月までには,本件保育園からの騒音を測定し ようと騒音計を購入し,独自に測定を行うようになっており,65デシベルを超える騒音が頻繁に生じているものと認識していた。同年7月にはプール遊びが始まり,騒音は一層激しさを増し,原告ら測定データにおいては,ある程度継続的に70デシベルを超えたり,瞬間的に80デシベルを超えることが散見されたりした。もっとも,そのような激しい騒音が生じ るのは,午前9時30分頃から午前11時30分頃までの間に間欠的にで あり,その間,LA5で55デシベルを下回る時間帯もあった。なお,プールは,本件砂場付近に設置されることもあったが,基本 るのは,午前9時30分頃から午前11時30分頃までの間に間欠的にで あり,その間,LA5で55デシベルを下回る時間帯もあった。なお,プールは,本件砂場付近に設置されることもあったが,基本的には,それよりもやや西側に設置された。 (甲6,47,78,161,証人丁,原告甲2本人)ウ原告らは,上記イのような状況を受け,被告日本保育に対し,繰り返し 苦情の申出をしていたが,被告日本保育は,できるだけの対応はしていると認識し,両者の主張は平行線をたどって,事態は特に改善しなかった。 そうした中,被告日本保育は,平成19年10月9日,原告らを含む近隣住民に対し,「ご回答」と題する文書(甲30)を配布し,この中で,本件保育園への直接の連絡,苦情等はしないよう求める旨などの他,「音に ついて」との標題の下,次のとおり記載した。 「標題の件に付きましては,開園する以前より近隣住民の皆様と度々話合いの場を持たせて頂き,極力その中でのご要望に沿って施設の計画を変更してきました。4月の開園からは,園行事等の行動計画策定時や日常の保育活動においても,園長や園スタッフをはじめ本部職員に至るまで,皆 様の感に触れぬよう細心の配慮を心掛けて計画,運用を行っています。さらに開園後,主に甲様から度重なる連絡を頂戴した際も,現場にはその都度個別に指導,対応いたしました。いただいたご意見は現場で迅速に対応させるべく,担当不在の場合も対処すべき手段を本部職員に周知徹底しています。当社としましては,現在の施設設備においても運営面においても 既に最大限考慮した対策を講じております。今後も近隣の皆様に配慮したこの体制は継続維持させ,ご要望があれば現地へ迅速に反映できるようにいたします。よって,上記以外の対応は致しかねますので,ご理解の程 既に最大限考慮した対策を講じております。今後も近隣の皆様に配慮したこの体制は継続維持させ,ご要望があれば現地へ迅速に反映できるようにいたします。よって,上記以外の対応は致しかねますので,ご理解の程よろしくお願い致します。」上記文書を受け,原告らを含む近隣住民は,練馬区の担当者を通して被 告日本保育に対策の具体的内容等を問い合わせたが,被告日本保育からの 再回答はなかった。 (甲30,62,86)エその後も,本件保育園からの騒音がひどいと感じる原告らを含む近隣住民と,できるだけの対策はしているとする被告日本保育との間の溝は埋まらない状態が続いた。平成20年に入った頃までには,本件園庭の使用は, 午前中のみ,1クラス30分以内で運用するようにされていたが,1クラスの使用時間が30分を超えることもあった。また,本件建物の南側の窓については,午睡,掃除等換気が必要な場合には開けるものの,園児が本件建物内で活動する際には閉めるようにしており,窓が閉められていれば,原告らを含む近隣住民も,本件建物内の音が気になることはなかった。も っとも,窓が開けられたまま本件建物内で園児が活動することもないわけではなかった。 他方,本件保育園の開設後も,原告らを含む近隣住民に対する説明会ないし話合いは,練馬区の担当者も出席して,断続的に開かれていたところ,上記開設前の説明会から通算して14回目の平成20年3月4日の説明会 ないし話合い(以下「第14回説明会」という。)には,当時の被告日本保育の親会社の代表取締役で筆頭株主であった辛及び本件保育園の園長(丁)が初めて出席した。第14回説明会は,3時間近くにわたり行われ,冒頭,この1年間,本件保育園が行ってきた対応についての説明がされたほか,辛から,高さ7mの防音 主であった辛及び本件保育園の園長(丁)が初めて出席した。第14回説明会は,3時間近くにわたり行われ,冒頭,この1年間,本件保育園が行ってきた対応についての説明がされたほか,辛から,高さ7mの防音壁設置の検討や引き続き話合いをする旨の 発言もあったが,原告らを含む近隣住民は,本件規制基準に言及しつつ被告日本保育による対策の具体的な結果を明確にすることを求め,話合いは基本的に平行線のままであった。それでも,同月18日にもう一度協議の場をもつことは決められた。 原告らを含む近隣住民は,第14回説明会における被告日本保育の対応 が誠実さを欠くとして,平成20年3月7日,保育所の認可・運営を所管 する練馬区議会健康福祉委員会に書面(甲33)で報告をした。これに対し,被告日本保育は,同月18日の協議の場で,原告らを含む近隣住民に対し,第14回説明会の内容について上記委員会に報告したことにつき,双方の合意を無視し反故にしたような内容の文書の送付で全く遺憾である,住民側に歩み寄ろうとする姿勢がなく,問題解決に向けた意思を否定する ような今回の行為に強く抗議するなどとする,親会社と連名の「抗議文」(甲14)を交付した。これを契機に,被告日本保育と近隣住民との協議は中断した。 (甲14,20,31~33,67,83,156の7,甲160)オ原告らは,平成20年10月以降,壬弁護士を代理人として,被告日本 保育と交渉に向けた協議ないしやり取りをしていたが,最終的に,平成21年5月21日,同弁護士が,被告日本保育及びその親会社の代理人である戎正晴弁護士(以下「戎弁護士」という。)に,公的手続(訴訟提起又は東京都公害審査会への調停申請)をとる旨伝えた。そして,原告らは,上記公的手続を,河津良亮弁護士(以下「河津弁護 会社の代理人である戎正晴弁護士(以下「戎弁護士」という。)に,公的手続(訴訟提起又は東京都公害審査会への調停申請)をとる旨伝えた。そして,原告らは,上記公的手続を,河津良亮弁護士(以下「河津弁護士」という。)に委任 した。 ところが,平成21年5月23日以降,本件保育園では本件園庭を使用することがなくなった。そのため,河津弁護士は,同年7月28日,戎弁護士に対し,本件保育園が本件園庭を使用しないと書面で約束できるのであれば,東京都公害審査会に調停申請する必要もないので,被告日本保育 にその旨打診されたい旨の文書(甲8)を送付した。これを受け,再度,原告らと被告日本保育との間で代理人弁護士を通じたやり取りが行われ,戎弁護士は,平成22年1月頃,河津弁護士に対し,本件園庭を利用する時間を限ること及び原告建物に二重サッシを付けることを提案した。これに対し,河津弁護士は,同年2月15日,原告らとしては,本件規制基準 が定める規制値を原則として超えないように約束してほしいだけで,その 点を約束してもらえれば,本件園庭の使用時間を制限したり,原告建物に二重サッシを付けたりする必要はない旨の回答をした。 結局,原告らと被告日本保育との間では何らかの合意が成立することはないまま推移したことから,河津弁護士は,平成23年3月下旬頃,戎弁護士に,東京都公害審査会に調停を申請する旨伝えた。 (甲8,34~36,38,40,41,64,66,乙3,証人丁)カ原告らは,平成23年5月31日頃,東京都公害審査会に本件調停を申請した。これに先立つ同年4月14日,本件保育園では本件園庭の使用を再開した。そして,同年12月21日,本件審査会測定が行われた。 本件審査会測定は,午前10時10分から午前11時50分 停を申請した。これに先立つ同年4月14日,本件保育園では本件園庭の使用を再開した。そして,同年12月21日,本件審査会測定が行われた。 本件審査会測定は,午前10時10分から午前11時50分までの間実 施され,測定場所は,本件境界線付近の高さ1.5m地点,同4.7m地点及び2階西側6畳間内であり,その結果は,別紙4「本件審査会測定結果」に記載のとおりである。 また,本件調停においては,被告日本保育から,「認可保育園丙2における近隣への配慮事項」と題する文書(乙9。以下「本件配慮事項書」と いう。)が提出された。これには,室内活動につき,本件建物内に園児がいるときは,南側及び東側の窓を開けない,換気のための窓開けは園児が部屋にいないときに行うなどと,戸外活動の散歩につき,平成22年7月以降は本件公園は使用していない,散歩からの帰り,本件保育園が近付いたら,子どもたちに声を抑えるような声掛けや配慮をしているなどと,園 庭遊び及びプール遊びにつき,園庭に出るのは必ず1クラスずつとする,時間は午前9時45分から午前11時30分までの間とする,近隣から苦情があった際は,職員全員に周知するようにし,全体で音を出さないように配慮する,水遊びで子どもが興奮し注意してもおさまらない場合は,予定より早めにプール遊びを切り上げるなどとの記載がある。 これに対し,原告らは,既に行われていることが約束されても騒音の軽 減は見込まれず,むしろ本件配慮事項書の内容の和解をすれば,騒音の悪化につながり得るとして,今後有意義な話合いを続けられると原告らが考える提案内容の例示を列挙する文書(甲50)を提出した。この例示には,一度に園庭に出る人数や園庭使用時間の更なる制限,本件園庭の原告建物近接部分を,園庭遊びに利用 義な話合いを続けられると原告らが考える提案内容の例示を列挙する文書(甲50)を提出した。この例示には,一度に園庭に出る人数や園庭使用時間の更なる制限,本件園庭の原告建物近接部分を,園庭遊びに利用しない緩衝地帯とし,同地帯に園児が入らな いよう防音効果のあるフェンスを設けることの他,「園の計画段階からどのように園を設置したために近隣から騒音に関する苦情を受ける結果となったのかを,園の全職員に説明し理解させる。(新しい職員が着任した際には,必ずその都度説明する。これを説明しなければ,職員がなぜ園庭の利用を制限されるのかなど問題が分からず,配慮が足りなくなるおそれが あるからである。)」,「今後,入園する園児の保護者には,近隣に接するように園庭を設置したために園庭遊びができないことを入園前に説明し理解を得る。(園庭遊びをするクラスを毎年1クラスずつ減らしていき,5年で園庭遊びをするクラスをなくす。)」との記載がある。 しかし,被告日本保育は,本件配慮事項書の枠内での調停条項でなけれ ば受入れが困難であるとし,原告らは,それでは何も約束されないに等しく,実質的に騒音が軽減されることが全く保証されないと受け止めた。結局,本件調停は,平成24年8月1日の第6回調停期日において,成立見込みがないとして不調に終わった。 (甲50,54,65,乙1,9,11,原告甲2本人) キ平成23年6月以降の本件園庭の使用状況は,おおむね,別紙3「本件園庭使用状況表」のとおりであり,本件保育園開設後間もない時期に比べ一定程度使用日数,使用時間等が減少している。 平成25年10月までの具体的な使用状況の概要は,次のとおりである。 すなわち,平成23年中は,本件園庭を1月当たり9日から17日使用し, 1日当たりの平均使用時 用時間等が減少している。 平成25年10月までの具体的な使用状況の概要は,次のとおりである。 すなわち,平成23年中は,本件園庭を1月当たり9日から17日使用し, 1日当たりの平均使用時間は,プール遊びのあった7月が約91分,8月 が約73分で,その余の月も45分から64分程度であったが,平成24年になると,1月当たりの使用日数は10日に満たない月が半数となり,1日当たりの平均使用時間も,プール遊びのあった7月(約73分)及び8月(約85分)を除くと,最長約46分で,30分台のことが多かった。 さらに,平成25年1月から10月までは,プール遊びのあった7月(使 用日数10日,1日平均使用時間約67分)及び8月(同12日,同約94分)を除くと,1月当たりの園庭使用日数はほぼ10日未満,1日当たりの平均使用時間は,最長約44分で,20分台が3回であった。また,基本的にはクラスごとに園庭を使用していたところ,7月及び8月は常に3~5歳児クラスの合計使用時間が0~2歳児クラスの合計使用時間を上 回っていたが,その余の月は,同等又は2歳児以下のクラスの合計使用時間の方が多いことも少なからずあった。なお,プールについては,平成20年までは,原告建物に近い位置に設置されたり,2つ並べて2クラス同時に遊ばせたりすることもあったが,遅くとも平成25年には,本件園庭の西側道路寄りに設置されるようになった。 (甲6の1,甲69,77,78,156の4,甲161,乙10,12,19,証人丁,原告甲2本人)ク平成25年11月から平成27年12月までの本件園庭の使用は,原則として園庭使用計画(乙27)に沿って行われ,1月当たり平均16.4日,1日当たりの平均使用時間は,計算上約24分である。なお,3歳児 11月から平成27年12月までの本件園庭の使用は,原則として園庭使用計画(乙27)に沿って行われ,1月当たり平均16.4日,1日当たりの平均使用時間は,計算上約24分である。なお,3歳児 クラス以上のクラスの使用時間は,その6割程度である。 また,被告日本保育は,平成27年から,プール遊びに使用するプールに,軟質遮音シート(1000Hzの周波数帯域で15.4デシベル程度の遮音性があるものと同等のもの。)を使用したテント(以下「本件テント」という。)を設置するようにした。本件テントが適切に使用されれば, 原告建物に到達するプール遊び中の騒音が低減されることは,原告らも実 感している。 (乙22~27,原告甲2)ケ平成28年1月から平成30年8月までの本件園庭の使用状況は,1月当たりの使用日数が15日を超えた月はなく,1日当たりの平均使用時間が1時間を超えているのは,プール遊びをする夏季に限られ(平成28年 8月の1時間16分,平成29年7月の1時間41分,同年8月の1時間22分,平成30年8月の1時間12分),それ以外の月では,30分前後にとどまることがほとんどであった。なお,平成30年8月のプール遊びの際,本件テントの東側の開口部を開放した状態としていたことが数回あった。 平成30年9月から平成31年3月までは,1月当たりの園庭使用日数は9日以下となり,特に3歳児以上のクラスは,平成30年9月及び11月を除き,本件園庭を使用しなかった。そして,平成31年4月以降は,夏季のプール遊びを除き,園庭使用を栽培活動に限定している。このため,原告らは,現状が継続するのであれば,本件保育園からの騒音は受忍限度 を超えるものではないと認識している。 (甲171,乙36,37)⑷ き,園庭使用を栽培活動に限定している。このため,原告らは,現状が継続するのであれば,本件保育園からの騒音は受忍限度 を超えるものではないと認識している。 (甲171,乙36,37)⑷ 本件鑑定の概要及び結果(本件検証の結果,本件鑑定の結果)ア本件鑑定においては,次のとおり,騒音測定と騒音周波数特性分析が実施された。 (ア) 騒音測定測定方法は,本件JIS規格に準拠する。本件園庭における外遊びを1,2時間連続して測定し,後日,各測定点に取り付けたマイクロホンからの信号を基にしたデータから,等価騒音レベル(LAeq),時間率騒音レベルの中央値(LA50),90%レンジ上・下端値(LA5, LA95),最大値(LAmax)等を算出した。 (イ) 騒音周波数特性分析上記(ア)の騒音測定と同時に騒音計に入力された信号を録音し,後日再生して周波数分析器を用いて周波数特性の分析を行うことにより,園児の特徴的な周波数成分及びその成分の大きさの時刻変動とうるささの関係を把握した。 イ本件鑑定においては,園児らの外遊びに伴い発生する,騒音レベル(A特性音圧レベル)が大きく変動する変動騒音を対象としていることなどから,LA5とLAeqの評価量を採用した。いずれの評価量も,測定時間帯を一定間隔に分割してそれぞれの時間帯の評価量の最大値を採用した。 そして,当該評価量について,下記カのとおり,本件各評価尺度に基づ いて評価した。 ウ本件事前測定の概要及び結果は,次のとおりである。 (ア) 測定日時平成28年9月14日午前9時30分頃から午前11時30分頃まで(イ) 測定項目 本件園庭内の外遊びの園児の遊び声の騒音測定及び録音収録(ウ) 測定位 時平成28年9月14日午前9時30分頃から午前11時30分頃まで(イ) 測定項目 本件園庭内の外遊びの園児の遊び声の騒音測定及び録音収録(ウ) 測定位置測定点① 本件境界線上の遮音壁上部(高さ4.7mの地点)(別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」に「測定点隣地境界線上」と記載されている黒丸地点) 測定点② 本件園庭内(南側防音壁の西側寄りで高さ1.82mの地点)(上記別紙に「測定点園庭内」と記載されている黒丸地点)(エ) 園児の外遊びの状況本件境界線から8.32m付近に,立入り制限区画テープ(別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」の「立入り制限区画テープ」 と記載された部分)が設けられ,このテープよりも本件境界線側には園 児が入らないようになっていた。当日の園児の遊びの時間は,0歳児クラスが午前9時55分から午前10時15分まで,1歳児クラスが午前10時22分から43分まで,3歳児クラスが午前11時10分から28分までであった。0歳児クラスは測定点②より多少道路側の位置で,1歳児クラスは本件境界線から11.1m程離れた場所にある小屋玩具 付近で,3歳児クラスは本件園庭西側道路寄りの広範囲の位置で,それぞれ遊んでいた。 (オ) 測定結果外遊びのない時間帯の外部騒音(以下「環境騒音」という。)(午前9時50分から5分間)は,LAeqが50デシベル,LA5が55デ シベルであった。 測定点①について,測定時間を5分間とするLAeq及びLA5の測定結果の最大値は,次のとおり(いずれも単位はデシベル)であり,特に1歳児クラスの外遊びによる環境騒音への影響が大きかった。なお,園児が外遊びをし いて,測定時間を5分間とするLAeq及びLA5の測定結果の最大値は,次のとおり(いずれも単位はデシベル)であり,特に1歳児クラスの外遊びによる環境騒音への影響が大きかった。なお,園児が外遊びをしていないときに上空を飛行機が通過した際の測定点① における騒音レベル(測定時間1分間)は,LAeqが62デシベル,LA5が69デシベルであった。 LAeq LA50歳児クラス 54 561歳児クラス 57 64 3歳児クラス 54 58測定点①の騒音レベルの時間変動図(1分間ごとの測定値の変動状況を示す図。以下同じ。)でみても,0歳児及び3歳児の各クラスの外遊びによる明らかな影響は認められないが,1歳児クラスの外遊びについては,その影響が明らかにみられた。 園児の声の周波数特性については,250Hz~2kHzの中高音域 の音の成分が卓越していると認められた(本件鑑定書26頁「図3-6-1 隣地境界線上の分析結果」参照)。 エ本件本測定の概要及び測定結果は,次のとおりである。 (ア) 測定日時平成28年10月28日午前9時30分頃から午前11時頃まで (イ) 測定項目本件園庭内の外遊びの園児の遊び声の騒音測定及び録音収録(ウ) 測定点測定点①及び同②は上記ウ(ウ)と同じ測定点③ 2階西側窓近傍窓枠上(窓開)(別紙2の2「園庭内と隣 接家屋及び,測定点位置図」の「2階平面略図」に「窓近傍」と記載されている黒丸地点)測定点④ 2階西側6畳間の中央部(高さ1.2m)(窓開/窓閉)(上記別紙の「2階平面略図」の2階西側6畳間に「中央」と記載されている黒丸地点) 測定点⑤ 2階東側6畳間の中央部( 点)測定点④ 2階西側6畳間の中央部(高さ1.2m)(窓開/窓閉)(上記別紙の「2階平面略図」の2階西側6畳間に「中央」と記載されている黒丸地点) 測定点⑤ 2階東側6畳間の中央部(高さ1.2m)(窓開/窓閉)(上記別紙の「2階平面略図」の2階東側6畳間に「中央」と記載されている黒丸地点)測定点⑥ 1階リビング中央部(高さ1.2m)(窓開/窓閉)(上記別紙の「1階平面略図」の「リビング」と記載されている部分にある 黒丸地点)(エ) 園児の外遊びの状況本件事前測定時と同様に,本件境界線から8.32m付近に立入り制限区画テープが設けられ,このテープよりも本件境界線側には園児が入らないようになっていた。そして,4歳児クラスの園児22名が,午前 9時47分から58分まで測定点②付近で,3歳児クラスの園児19名 が午前10時21分から40分まで本件園庭西側道路寄りを広範囲にわたって,それぞれ遊んでいた。 (オ) 測定結果環境騒音(午前9時58分からの5分間)は,LAeqが52デシベル,LA5が55デシベルであった。 LAeq及びLA5の測定結果は,別紙5「本件本測定結果」記載のとおりである。なお,立会い関係者の会話や移動の影響が大きく,園児の遊び声の単独音源に対する総音量抽出ができなかったものには数値の記載がなく,測定点③は,窓枠の上であるため,窓開放時の数値のみを使用する。測定点⑥においては,室内に設置してある掛け時計の秒針の 可動音が際立ち,園児らの遊び声が埋没していた。上記測定結果のとおり,環境騒音に対しては,3歳児クラスの外遊びにより,測定点①において,LAeqで最大5デシベル,LA5で最大6デシベルの上昇が見られた。 測定点①の騒音レベルの時間変 ていた。上記測定結果のとおり,環境騒音に対しては,3歳児クラスの外遊びにより,測定点①において,LAeqで最大5デシベル,LA5で最大6デシベルの上昇が見られた。 測定点①の騒音レベルの時間変動図については,4歳児及び3歳児の 両クラスとも顕著な変化はなかった。 園児の声の周波数特性については,本件事前測定時と同様,250Hz~2kHzの中高音域の音の成分が卓越していると認められた(本件鑑定書26頁「図3-6-2 隣地境界線上及び,隣接家屋西側6畳中央の分析結果」参照)。 オ本件再現調査の概要及び測定結果は次のとおりである。 (ア) 測定日時平成28年10月28日午前11時頃から午後1時頃まで(イ) 測定項目本件事前測定時の収録音源及び原告ら提供音源をスピーカーを用いて 再生し,関係者が当該再生音を本件園庭内及び原告建物内で聴取確認す るとともに,騒音計を介して録音収録する。 (ウ) 測定点測定点①から同⑥までは上記エ(ウ)と同じ(エ) 再現方法再現音源用のスピーカー(以下「再現スピーカー」という。)は,本 件境界線から4.7m離れた地点(別紙2の2「園庭内と隣接家屋及び,測定点位置図」の「再生音源用スピーカー」と記載されている箇所)の高さ1.8mの場所に設置された。 原告ら提供音源のうち,No.1音源は平成28年4月1日に,No. 2音源は平成27年1月9日に,No.3音源は同年11月5日に,そ れぞれ2階西側窓近傍において録音されたデータである。原告ら提供音源については,本件事前測定時に収録した音源と異なり,収録時の音量の数値的目安がないため,まず,原告ら提供音源に係る動画ファイル(甲82の1,甲97)上の騒音計に表示されている騒 ある。原告ら提供音源については,本件事前測定時に収録した音源と異なり,収録時の音量の数値的目安がないため,まず,原告ら提供音源に係る動画ファイル(甲82の1,甲97)上の騒音計に表示されている騒音レベルを全て読み取り,得られた数値データから,原告建物の外壁面相当の騒音レベ ルを算出した。次に,当該騒音レベルを再現するため,あらかじめ,任意の校正信号を与え,1m近傍における騒音レベルを測定し,その測定値が上記外壁面相当の騒音レベルと合致するように調整していき,音量設定を確定した。この際,窓枠直近は騒音計測位置としては不安定なため,測定点①において上記騒音レベルとなるように再現スピーカーの音 量を調整した。 No.4音源は本件事前測定時の0歳児クラスの,No.5音源は同1歳児クラスの,No.6音源は同3歳児クラスの,いずれも外遊び時に測定点①で収録したデータである。本件事前測定においては,校正信号を用いて基準となる音量が録音記録されていたため,上記の3音源を 再生する際には,校正信号に基づき音量を調整して再現した。ただし, 再現スピーカーのある場所は,測定点①のある本件境界線から4.7m離れているため,測定点①の騒音レベルにより音量を調整すると,距離減衰の影響の他に,拡散音場(場外の大きな空間)における吸音効果等による信号の減衰が考えられることから,距離減衰で減衰した音量よりも若干大きなボリュームで出力することになり,結果として,再生音源 が若干大きく観測されることになると想定された。 (オ) 結果原告ら提供音源及び本件事前測定時の収録音源の再現性については,No.3音源を除いて,原告ら提供音源に係る算出測定値ないし本件事前測定時の測定値と比較し,いずれも2から6デシベル程度上昇して測 原告ら提供音源及び本件事前測定時の収録音源の再現性については,No.3音源を除いて,原告ら提供音源に係る算出測定値ないし本件事前測定時の測定値と比較し,いずれも2から6デシベル程度上昇して測 定される形で再現されている(本件鑑定書24頁「表3-5 再生音源使用時(二部)の再現性確認の為の騒音測定結果」参照)。No.3音源による再現は,レベル設定操作ミスが想定され,その測定値は評価上除外するものの,その余の原告ら提供音源の音量については,若干大き目ではあるものの,ほぼこの程度であったであろうという音量に近似し て再現でき,本件事前測定時の収録音源も,少し大きめではあるが再現できたと評価できる。 カ騒音の評価結果(ア) 外部騒音について本件評価尺度(LA5)を用いて評価する。 本件事前測定及び本件本測定の結果では,園児の外遊びの騒音は,「大きく聞こえ少しうるさい」から「かなり大きく聞こえややうるさい」程度の騒音のイメージになる。原告ら提供音源再現調査の結果では,「かなりうるさい」から「非常にうるさい」程度の騒音のイメージになる。本件事前測定再現調査の結果では,「かなり大きく聞こえややうる さい」から「非常に大きく聞こえうるさい」程度の騒音のイメージにな る。 (イ) 室内騒音について本件評価尺度(LAeq)を用いて評価する。 2階西側6畳間については,窓閉塞時における騒音の評価は,「気にならない」・「日常会話了解度100%」であり,窓を13cm開放し た場合における騒音の評価は,「気にならない」・「日常会話了解度100%」であるか(本件事前測定再現調査),「あまり気にならない」・「日常会話了解度100%」(No.1音源及びNo.2音源による調査)である。窓を3 の評価は,「気にならない」・「日常会話了解度100%」であるか(本件事前測定再現調査),「あまり気にならない」・「日常会話了解度100%」(No.1音源及びNo.2音源による調査)である。窓を30cm開放した場合は,13cm開放した場合と比べて騒音評価ランクが1ランク上昇する傾向にあった(窓の開口 面積が2倍以上になると3デシベル以上騒音レベルが大きくなる。)。 2階西側窓近傍については,窓を13cm開放した場合の評価が,「うるさい」・「日常会話が概ね可能」(No.1音源及びNo.2音源による調査)又は「少しうるさい」及び「日常会話が概ね可能」(本件事前測定再現調査)である。窓を30cm開放した場合の評価は,窓 を13cm開放した場合と変わらなかった。 2階東側6畳間については,窓の開閉の有無にかかわらず,いずれの調査でも「気にならない」・「日常会話了解度100%」である。このため,2階東側6畳間は,2階西側6畳間の窓開閉による影響を受けないものと判断される。 ⑸ 原告ら測定データ原告ら(具体的には原告甲2)は,本件保育園の運営開始後遅くとも平成19年6月までには,購入したデジタル騒音計(型番:DT-8852)により,本件保育園からの騒音を測定するようになった。原告らは,本件規制基準を前提に,本件境界線上での騒音レベルを測定したいと考えたが,現実 的に困難であったため,上記騒音計を2階西側窓近傍の窓枠の上に置いて, 窓を開放した状態で測定をした。上記騒音計は,騒音計の国際規格に適合したもので,風防が同梱されており,原告らは,原則として風防を付けた状態で測定をした。原告ら測定データの一部のLAeq及びLA5は,別紙6「原告ら測定データ抜粋」記載のとおりである。もっとも,同別紙記載の騒 で,風防が同梱されており,原告らは,原則として風防を付けた状態で測定をした。原告ら測定データの一部のLAeq及びLA5は,別紙6「原告ら測定データ抜粋」記載のとおりである。もっとも,同別紙記載の騒音レベルは,いずれも,本件園庭で園児が遊ぶなどして騒音レベルが上がっ た時間帯のみを対象に測定したものである。 原告らは,本件審査会測定時,本件審査会測定と並行して,上記騒音計(ただし,このときは風防を付けていなかった。)を2階西側窓近傍に設置し,騒音レベルを測定した。これによる測定結果のうち園児が本件園庭にいる間に2階西側6畳間の窓を開放して測定した部分の騒音レベルをグラフ化 したものと,本件審査会測定における同部分の本件境界線上(高さ4.7m)で測定された騒音レベルをグラフ化したものを重ねると,その波形はおおむね一致するが,5デシベル前後ずれることもあり,数値としては,全体的に1から2デシベル程度,原告ら測定データの値の方が小さく測定されていた。 原告らは,本件本測定時及び本件再現調査時にも,2階西側窓近傍(測定 点③)において同様に騒音レベルを測定した。その結果と本件本測定及び本件再現調査における測定点③との結果を比べると,LAeq及びLA5の値は,原告ら測定データの値の方が小さい傾向にあったが,その差は,おおむね,0から2デシベル程度であった。 (甲6,11,42,43,45,47,55,61,75,76,82,9 0,91,96,106,135,138,144,156,167,乙1,12,19,36,本件鑑定の結果,原告甲2本人) 2 争点⑴について⑴アある施設の設置・運営に伴う騒音による被害が,第三者に対する関係において,違法な権利侵害ないし利益侵害になるかどうかは,侵害行為の態 様,侵 ,原告甲2本人) 2 争点⑴について⑴アある施設の設置・運営に伴う騒音による被害が,第三者に対する関係において,違法な権利侵害ないし利益侵害になるかどうかは,侵害行為の態 様,侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,当該施設の所在地の地域環境, 侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の諸般の事情を総合的に考察して,被害が一般社会生活上受忍すべき程度を超えるものかどうかによって決すべきである(最高裁判所平成元年(オ)第1682号平成6年3月24日第一小法廷判決・裁判集民事172号99頁等参照)。そして, 環境確保条例のような公法上の規制や,環境基準のような行政上の政策目標ないし指針は,騒音の受忍限度が私法上問題となっている本件に直接適用されるものではないが,前記第2の1の前提事実⑸ア(ア)や同イのような環境確保条例ないし環境基準の目的や趣旨からすれば,上記受忍限度を検討するに当たっては,これらを参考にすべきものといえる。 イこの点,原告らは,環境基準は飽くまで行政上の政策目標であるし,仮に,受忍限度を判断する際に等価騒音レベルで騒音を評価する環境基準を考慮すると,元々静かな地域であるほど,原因者は大きな騒音を発生させて良いという矛盾が生じるなどとして,本件において被告らが守るべき基準は本件規制基準である旨主張する。 しかし,上記アのとおり,ある施設からの騒音が一般社会生活上受忍すべき程度を超えるものかどうかを検討するに当たっては,権利ないし利益(以下「権利等」という。)の侵害の程度のみならず,諸般の事情を総合的に考察すべきものであることからすれば,「生活環境を保全し,人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基 ,権利ないし利益(以下「権利等」という。)の侵害の程度のみならず,諸般の事情を総合的に考察すべきものであることからすれば,「生活環境を保全し,人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準」(環境基準前文) として定められた環境基準による評価を排除する理由はない。また,騒音によって生じる権利等の侵害の程度は,当該騒音の音源による騒音レベルの程度のみならず,環境騒音を加えた騒音が被侵害者に与える影響の程度が問題になるのであるから,特定の騒音があっても,環境騒音が静ひつであることにより,結果的に被侵害者が暴露した騒音の総量が小さくなり, 被侵害者に対して大きな影響を与えなかったのであれば,その事情も加味 した上で,権利等の侵害の程度を評価するのが相当である。 さらに,等価騒音レベルは,上記前提事実⑷イ認定のとおり,アノイアンス(人に感じられる感覚的なうるささ)との対応にも優れている,あるいは,騒音の大きさ,騒がしさ,うるささなど心理的,情緒的影響との対応が,騒音の種類によらず良好であるとされ,その評価量は,エネルギー の原理に基づき理論的で,一元的に測定・評価すれば複合騒音や日常生活における騒音暴露評価にも対応できることから,統一的総合評価に利用されているというのであり,このことからしても,本件において等価騒音レベルによる評価も考慮するのが相当といえる。もとより,等価騒音レベルないし環境基準によってのみ権利等の侵害の程度を評価すべきものではな く,LA5ないし本件規制基準も,平成27年改正の趣旨も踏まえつつ参考にして評価をすべきであるといえる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。なお,原告らは,仮に等価騒音レベルを参考にするとしても,園児が園庭遊びをしていない時間の値を含 つつ参考にして評価をすべきであるといえる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。なお,原告らは,仮に等価騒音レベルを参考にするとしても,園児が園庭遊びをしていない時間の値を含めて等価騒音レベルを計算すべきではない旨も主張す る。しかし,他の時間帯と異なる特定の騒音状態の時間帯のみを評価の対象にすることは,騒音レベルが時間と共に不規則かつ大幅に変化している場合の時間平均値を算出する等価騒音レベルの意義(上記前提事実⑷イ)に沿わないもので,環境基準においても,昼間又は夜間の区分ごとに全時間を測定対象とすることを原則としていること(同⑸イ(イ)b)からも, 原告らの上記主張は採用することができない。 ウまた,原告らは,環境確保条例が規制しているのは敷地境界の値であるから,本件においても,本件境界線上における音の大きさが問題である旨主張する。 しかし,環境確保条例の平成27年改正により,保育所から発する子供 の声等に本件規制基準が適用されない旨が定められたことをおくとしても, 騒音の私法上の受忍限度を検討する上では,当該騒音が被侵害者に及ぼす影響が問題になるのであって,原告建物に居住している原告らが本件保育園からの騒音の影響をどの程度受けているのかを検討することが最も重要であるというべきである。 したがって,本件境界線上での騒音レベルよりもむしろ原告建物内の騒 音レベルを重視するべきであるといえるとともに,当事者間に争いのない保育所の公共性,公益性も含めた諸般の事情を考慮して,騒音レベルの評価をすべきである。 ⑵ 上記⑴を前提として,本件保育園から発生する騒音が原告らの受忍限度を超えているかどうかを検討する。 ア上記1⑴認定のとおり,原告土地及び本件土地は,第一種 の評価をすべきである。 ⑵ 上記⑴を前提として,本件保育園から発生する騒音が原告らの受忍限度を超えているかどうかを検討する。 ア上記1⑴認定のとおり,原告土地及び本件土地は,第一種低層住居専用地域に指定された地域に在り,原告建物の東側及び南側には住宅があるが,原告建物の北西側には本件公園があり,西側には本件土地及び幅員約4mの道路を挟んで本件中学校があって,本件保育園の開設前から,子どもや中学生の声等が原告建物に届く環境にあったものである。また,上記1⑶ カ及び⑷認定の本件審査会測定の結果並びに本件鑑定の結果によれば,本件境界線上における平日午前中の環境騒音(園児が外遊びをしていない時間帯の騒音)の騒音レベルは,LAeqで50デシベル前後,LA5で50から55デシベル前後(測定時間は1分間程度又は5分間)であると認められるから,本件保育園における園庭遊びの有無にかかわらず,本件境 界線上における日中の騒音レベルは,元々本件規制基準の基準値を上回る傾向にあったものと認められる(なお,証拠(甲54,本件検証の結果,本件鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によれば,本件審査会測定及び本件鑑定における環境騒音測定時において,本件建物内の園児の声等は影響を与えていないと認められる。)。しかも,午後になって本件中学校から吹奏 楽器の音を含む部活動の音が聞こえるようになれば,上記騒音レベルは更 に上昇することが考えられる。 イ上記1⑶カ認定の本件審査会測定によれば,園児が本件園庭で遊んでいる際の原告建物の2階西側6畳間内の騒音レベルについては,窓を開放している場合(測定時間4分)には,LAeqで54.6デシベル,LA5で59.8デシベルであり,本件各評価尺度に当てはめると,「少しうる さい」(本件評価 畳間内の騒音レベルについては,窓を開放している場合(測定時間4分)には,LAeqで54.6デシベル,LA5で59.8デシベルであり,本件各評価尺度に当てはめると,「少しうる さい」(本件評価尺度(LAeq))及び「かなり大きく聞こえややうるさい」(本件評価尺度(LA5))程度となるが,窓を閉塞した場合(同2分弱)には,LAeqで36.7デシベル,LA5で40.9デシベルであり,本件各評価尺度では,「気にならない」及び「小さく聞こえる」程度となる。そして,いずれの場合も,本件境界線上(高さ4.7m)の 騒音レベルは,LAeqが60デシベル強,LA5が65デシベル程度であったから,2階西側6畳間の騒音レベルは,LAeq,LA5とも,本件境界線上の騒音レベルより,窓を開放した状態で6デシベル程度,窓を閉塞した状態では25デシベル近く減衰したことが認められる。 また,上記1⑷エ認定の本件本測定の結果によれば,本件境界線上(高 さ4.7m)でLAeqが57デシベル程度,LA5が60デシベル程度の騒音レベルの音が,2階西側6畳間中央の測定点④では,窓開放時でLAeqが37デシベル,LA5が41デシベル,窓閉塞時でLAeqが30デシベル,LA5が34デシベルであったもので(いずれも測定時間は5分間),本件境界線上の騒音レベルが,LAeq,LA5とも,2階西 側6畳間中央においては,窓開放時であっても20デシベル程度,窓閉塞時には27デシベル程度減衰したものである。そして,窓開放時の測定の際,2階西側窓近傍に相当する測定点③で測定された騒音レベル(測定時間5分間)は,LAeqが52デシベル,LA5が57デシベルであって,同測定点から測定点④までの騒音レベルの減衰の程度は,LAeq,LA 5とも15デシベル程度であった れた騒音レベル(測定時間5分間)は,LAeqが52デシベル,LA5が57デシベルであって,同測定点から測定点④までの騒音レベルの減衰の程度は,LAeq,LA 5とも15デシベル程度であった。 ウところで,原告らは,本件保育園からの騒音が受忍限度を超えることを基礎付ける事情の一つとして,原告ら測定データの存在を挙げる。このデータの信用性について被告日本保育は問題とするが,上記1⑸認定の,原告ら測定データと本件審査会測定,本件本測定及び本件再現調査の各結果との比較に照らし,一定の信用性はあるものと認められる。 そして,原告ら測定データを抜粋した別紙6によれば,本件保育園開設後2年程度の間は,LAeqで65デシベル(本件評価尺度(LAeq)で,会話妨害が「大きな声を出せば内容が分かる」,うるささ感が「うるさい」),LA5で70デシベル(本件評価尺度(LA5)で「かなりうるさい」)程度以上の騒音レベルが測定されたことが散見されている。そ の後,測定される数値は減少傾向となっており,平成25年以降では,上記のような騒音レベルとなったのは,平成27年1月23日の1日のみであるものの,LAeqで60デシベル程度,LA5で65デシベル程度の騒音レベルは一定程度測定されている。しかし,上記イの認定事実も踏まえれば,2階西側窓近傍でLAeqが60デシベル程度,LA5が65デ シベル程度の騒音であっても,窓を閉塞すれば,2階西側6畳間中央付近では,少なくとも,LAeqで40デシベル程度,LA5で45デシベル程度まで騒音レベルは低下するものと推認され,窓を開放していても,騒音レベルは,本件審査会測定の結果に従えば5デシベル程度,本件本測定の結果に従えば15デシベル程度,2階西側6畳間中央付近では低下する 音レベルは低下するものと推認され,窓を開放していても,騒音レベルは,本件審査会測定の結果に従えば5デシベル程度,本件本測定の結果に従えば15デシベル程度,2階西側6畳間中央付近では低下する と見込まれる。なお,2階東側6畳間や1階リビングは,本件園庭との距離等に照らし,2階西側6畳間より騒音レベルが低くなることは明らかであり,現に本件鑑定の結果においてもそのような測定結果となっているのであるから,基本的に,2階西側6畳間の騒音レベルを問題とすれば足りるといえる。 エ原告ら測定データは,その値自体に一定の信用性はあるとしても,本件 保育園からの騒音が激しい時間帯に測定時間を限定して算出された数値であり,測定時間を延長すれば,基本的にその値は小さくなるものと見込まれる。そして,上記1⑶認定のとおり,本件保育園では,原告らを含む近隣住民からの苦情も踏まえ,本件園庭の使用方法を含め,本件保育園から出る音を抑えるために種々の取組みをしており,平成23年の時点では, 本件配慮事項書(乙9)を作成し,その中で,園庭遊びは必ず1クラスずつとし,時間は午前9時45分から午前11時30分までの間と定め,平成27年11月以降は,園庭使用計画(乙27)に沿って園庭遊びが行われたものであるところ,これらの定めや計画に反する園庭の使用がされたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,本件園庭の実際の使用状況 は上記1⑶キからケまで認定のとおりであり,プール遊びのある7月及び8月には,1日当たりの平均使用時間が90分ないし100分程度になることもあったが,それ以外の月の同使用時間は,同年10月までは45分程度から60分程度,同年11月以降は30分程度以下にとどまっており,月間使用日数も15日前後以下であって,しかも,2階西 度になることもあったが,それ以外の月の同使用時間は,同年10月までは45分程度から60分程度,同年11月以降は30分程度以下にとどまっており,月間使用日数も15日前後以下であって,しかも,2階西側窓近傍でLA eqが60デシベル程度,LA5が65デシベル程度とみられ得る騒音が生じていたのは,こうした本件園庭使用時の更に一部である。 オ上記1⑸エ認定のとおり,本件本測定においては,2階西側6畳間中央の測定点④の騒音レベルが,窓開放時でもLAeqで41デシベル,LA5で37デシベルとなったものである。しかし,証拠(甲143,144, 156,本件検証の結果)によれば,本件本測定時の園庭遊びの状況は,必ずしも本件保育園における一般的なものではなかったことがうかがわれ,本件本測定の結果から,直ちに,本件保育園からの騒音が受忍限度を超えるものとはいえないと判断することはできない。 なお,本件再現調査については,原告らは再生音が小さく再生されてい た旨主張し,被告日本保育は再生音が大きく測定されていた旨主張すると ころ,そもそも,本件再現調査は,再生音源による再生音を本件訴訟の関係者が確認するという側面もあり,飽くまで再現調査であったことからすれば,必ずしも,本件事前測定や原告ら提供音源を測定した際の騒音レベルを正確に測定できるものではないというべきである。したがって,本件再現調査における測定結果は,本件における受忍限度の判断においてその まま採用することはできない。 カ原告らは,本件保育園開設に係る被告らの対応にも問題があったとし,そのことも合わさって,本件保育園からの音が苦痛な騒音となっている旨主張する。 確かに,第1回説明会が本件建物建築工事開始の前日に行われたことに ついて,原告ら の対応にも問題があったとし,そのことも合わさって,本件保育園からの音が苦痛な騒音となっている旨主張する。 確かに,第1回説明会が本件建物建築工事開始の前日に行われたことに ついて,原告らが納得し難い感情を抱くことは理解し得る。上記1⑵ア及びイ認定の事実からすると,被告日本保育は,遅くとも本件建物の建築確認申請がされた頃の平成18年10月中には,本件保育園の開設について相当に計画を具体化していたものと推認されるが,そこまで計画が具体化する前であっても,説明会を開催する余地がなかったとは認め難く,少な くとも,被告乙との建物賃貸借予約契約が締結されるまでは説明会は開催できなかった旨の被告日本保育の主張は,容易に採用し難い。 しかし,平成18年当時,保育園の開設に当たり,計画が具体化する前から近隣住民に対する説明会を開催しなければならないという運用が一般化していたことや,そのような慣行が存在したことを認めるに足りる証拠 はなく,もとより,そのような法的規制や行政指導が存在したことを認めるに足りる証拠もない。また,原告らは,本件園庭を本件建物の南側に設置したことにもこだわるが,仮に園庭を園舎の北側に設置すれば,園庭の日当たりが現状(甲51参照)より悪化するものと認められ,さらに,本件土地内で園庭の位置と園舎の位置とを入れ替えるような計画とした場合, 園舎の日当たりも,南側等に隣接する建物の影響で,現状より悪化するこ とになる。近隣住民に対する騒音の影響という観点からは,原告らの主張するとおり,園舎の北側に園庭を設置した方が問題は少なかったとは考えられるが,日当たりは建物完成後に改善を図ることは困難である一方,騒音については園の運用によって対処し得る余地があるといえ,被告日本保育がそのような前提で本件保 設置した方が問題は少なかったとは考えられるが,日当たりは建物完成後に改善を図ることは困難である一方,騒音については園の運用によって対処し得る余地があるといえ,被告日本保育がそのような前提で本件保育園に係る計画を立てたことが,不合理であ り得べからざる発想であったと認めることはできない。 原告らは,本件砂場について,被告日本保育が当初説明していた「緩衝地帯」にはなり得ないとし,その証拠として,本件砂場付近で園児が大騒ぎをしている場面を撮影したという動画(甲6)を提出し,この点の被告日本保育の対応も問題とするが,上記動画を見ると,園児が大騒ぎをして いるのは,本件砂場付近で砂遊びとは無関係にコオロギやバッタを見つけたためであり,本件砂場で砂遊びをしている園児は,むしろ静かに砂遊びを続けていると認められる。また,その余の本件砂場で園児が遊ぶ様子が写った写真(甲26,95,105)を見ても,園児が上記動画のような大騒ぎをしている雰囲気はうかがえない。本件砂場が設置されたことによ って園児が集まりやすくなり,集まった園児が何かのきっかけで興奮して大騒ぎをすることは考えられるものの,砂遊び自体は静かな遊び方であるとして,本件砂場が「緩衝地帯」になるとした発想も,当然に否定することはできないというべきである。 もっとも,上記1⑶認定の事実によれば,本件保育園開設から2年程度 の被告日本保育ないし本件保育園の対応は,原告らを含む近隣住民との意思疎通が円滑に進まなかった面はあるにせよ,同近隣住民に対し,騒音問題の改善に対する取組みの真剣さを疑わせるようなところもあったといわざるを得ない。しかし,平成21年5月から約2年間,本件園庭の使用を行わないようにしたことを始め,その後の対応は,本件保育園から出る音 の騒音レベル 真剣さを疑わせるようなところもあったといわざるを得ない。しかし,平成21年5月から約2年間,本件園庭の使用を行わないようにしたことを始め,その後の対応は,本件保育園から出る音 の騒音レベルが抑制されるように試行錯誤を重ねたと評価し得るものであ る。そして,現に騒音レベルが抑制されるようになっているのは,上記ウ及びエで説示したとおりであり,現状が継続するのであれば,原告らにおいても,本件保育園からの騒音が受忍限度を超えるものではないと認識していることは,上記1⑶ケ認定のとおりである。 ⑶ 上記⑵の諸事情その他上記1認定の事実を総合考慮すると,本件保育園か ら生じる騒音については,本件保育園の開設以降,一般社会生活上受忍すべき程度を超えているものと認めることはできないというべきである。したがって,上記騒音が,原告らに対する関係において,違法な権利等の侵害に当たるとはいえない(今後,本件保育園から生じる騒音の程度その他の事情の変更があれば,異なる判断となることがあり得るが,そのような事情の変更 があるまでは,上記騒音が受忍限度を超えるものとはいえない。)。 第4 結論以上の次第で,原告らの被告日本保育に対する請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。また,原告らの被告乙に対する請求は,本件保育園から生じる騒音が違法な権利等の侵害に当たることを前提と するものであるから,同様にいずれも理由がない。 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部 裁判長裁判官伊藤正晴 裁 東京地方裁判所民事第14部 裁判長裁判官 伊藤正晴 裁判官 小島清二 裁判官 菅原光祥
▼ クリックして全文を表示