主文 1 別紙物件目録記載1ないし4の各土地について,建築基準法42条2項の規定に基づく被告の指定処分がいずれも存在しないことを確認する。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,その居住する建築物の敷地の隣地に建築物が建築されるに当たり,両土地の北側で接する別紙物件目録記載1,2の各土地からなる道(以下「本件北側道」という。)と,同隣地の西側で接する同目録記載3,4の各土地からなる道(以下「本件西側道」という。)について,建築基準法(以下「法」という。)の施行日である昭和25年11月23日の時点(以下「基準時」という。)において,法42条2項に該当する道はなかったと主張して,被告が告示をもって包括して指定する方式(以下「包括指定方式」という。)をとってした同項の規定に基づく指定処分(以下「本件指定」という。)がいずれも存在しないことの確認を求めた事案である。 1 争いのない事実及び証拠(文末に掲記のもの)により容易に認定できる事実(以下「争いのない事実等」という。)(1) 原告は,A所有の甲府市α2361番1,5,7の各土地(以下「A所有土地」という。)上の建築物に家族と共に居住し,文房具の小売業及び個人指導の学習塾を営んでいる。 A所有土地の東側は,幅員12メートルの県道(武田通り)に接し,その西側は,B所有の甲府市α2361番3の土地(以下「B所有土地」という。)に接し,両土地の北側は,本件北側道に接し,B所有土地の西側は,本件西側道に接している。本件北側道及び本件西側道は,いずれも私道であり,舗装されているが,その幅員は4メートルに満たない。 近隣の住宅及びその敷地の位置関係は,別紙図面1,2のとおりである。 (甲2の1ないし4,3,14,22 側道及び本件西側道は,いずれも私道であり,舗装されているが,その幅員は4メートルに満たない。 近隣の住宅及びその敷地の位置関係は,別紙図面1,2のとおりである。 (甲2の1ないし4,3,14,22,乙5,6の1・2)(2) 山梨県知事は,昭和25年12月18日,山梨県告示第299号により,法42条2項の規定により,甲府市その他の市町村の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を同項の道に指定し,昭和35年9月19日,山梨県告示第196号により,同項の規定により,甲府市その他の市町村の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を同項の道に指定し,同法の規定により都市計面区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道の指定(昭和25年12月山梨県告示第299号等)を廃止した。 甲府市は,昭和55年2月29日,山梨県知事と法4条3項の規定による協議を行い,同条2項の規定により,同年4月1日,建築主事を置いた。 特定行政庁となった被告は,同日,甲府市告示第50号(以下「本件告示」という。)により,法42条2項の規定により,甲府市の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を同項の道に指定した(本件指定)。(甲8の1・2,9,乙1)(3) Cは,甲府市建築主事に対し,平成9年10月23日,B所有土地上に建築する建築物(以下「本件建築物」という。)につき,法6条1項の規定による確認(以下「建築確認」という。)を申請して,その確認を受けた。(甲5の1)(4) 原告は,平成10年1月23日,甲府市建築審査会に対し,前記甲府市建築主事のCに対する建築確認の取消しを求めて審査請求を行い,建築確認の執行停止を申し立て,同年2月27日,その裁決を経ないまま,上記建築確認の取消を求めて建築確認 府市建築審査会に対し,前記甲府市建築主事のCに対する建築確認の取消しを求めて審査請求を行い,建築確認の執行停止を申し立て,同年2月27日,その裁決を経ないまま,上記建築確認の取消を求めて建築確認処分取消請求訴訟を提起し(当庁平成10年(行ウ)第4号事件),執行停止を申し立てたところ(当庁平成10年(行ク)第1号事件),平成11年3月19日,その申立ては認められたが,同年8月2日,抗告審(東京高等裁判所平成11年(行ス)第8号事件)において原決定が取り消されて申立てが却下され,同年9月1日,その許可抗告申立事件(平成11年(行ハ)第10号)において,同決定に対する抗告は許可されなかったため,原告の申立てを却下する決定が確定した。 (甲1の1・2・5・8,乙2)(5) Cは,平成11年10月6日,床面積の変更等を内容とする計画の変更申請書に係る確認を受け,同月18日,検査済証の交付を受けた。 (乙3,4) 2 争点(1)本件指定の処分性(被告の本案前の主張)ア本件指定には処分性はない。 本件指定は,包括的に一括して,幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を法42条2項の道(以下「2項道路」という。)とすると定めたに止まり,2項道路の要件を具備するために必要な一般的基準の定立を目的にしたにすぎず,講学上のいわゆる一般処分に当たるもので,本件北側道,本件西側道などの特定の土地について個別具体的に指定したものではなく,特定の土地に2項道路としての負担を課することを具体的に確定する処分としての性質を有するものではない。 イ本件指定によっては,具体的にどの道路が2項道路に当たるかは不明であり,告示自体によって,直ちに建築制限等の私権の制限が生じるものではない。すなわち,包括指定方式により2項道路の指定がされた場合には,同指定が当該道路部 具体的にどの道路が2項道路に当たるかは不明であり,告示自体によって,直ちに建築制限等の私権の制限が生じるものではない。すなわち,包括指定方式により2項道路の指定がされた場合には,同指定が当該道路部分に適用があるかについては,個別具体的に法及び告示に規定されている要件が備わっているかどうかを検討・確認することが必要であるが,現実には,これは同指定後に,道路内建築制限違反に対する建築物除却措置命令や建築確認等の手続の中でされることになるのであり,その結果,建築物除却措置命令等の行政処分を通じて初めて同指定が現実的に個人に対する権利義務に影響を及ぼすか否かが判然とするものである。 原告は,本件北側道に関し,道路内建築制限違反による建築物除却措置命令などの具体的な行政処分がなされたときにその処分を争うことができるのであるから,それ以前に本件告示のように不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定めるにすぎない処分を争わせるべき必要性はない。 (原告の反論)ア被告の主張は争う。 一般処分であっても,それが個人の権利ないし法律上の利益に直接具体的な影響を及ぼす場合には,抗告訴訟の対象となる。本件指定により,基準時において,どの道が2項道路であるかが特定され,建築主は,その道路に接する敷地の上に建築物を建築することができ,2項道路の敷地所有者は,一般通行を受忍しなければならず,道路内建築制限などの制約が生じ,近隣住民は,その建築物に火災等が発生した場合,その道路が狭あいであるため消火活動に支障をきたし,延焼により,その生命,身体,財産に被害が生ずるおそれがあるなどの不利益を受けるなど,個人の権利ないし法律上の利益に直接具体的な影響を及ぼすことになる。 本件指定が存在しないのに存在するものと取り扱われれば,原告は,本件北側道に関し,A所有土地 それがあるなどの不利益を受けるなど,個人の権利ないし法律上の利益に直接具体的な影響を及ぼすことになる。 本件指定が存在しないのに存在するものと取り扱われれば,原告は,本件北側道に関し,A所有土地が武田通りによって接道要件を満たしているにもかかわらず,将来,その一部(26平方メートル余り)を無償で提供することを余儀なくされる。しかも,甲府市建築主事が,本件北側道及び本件西側道について本件指定が存在することを前提に本件建築物の建築確認,計画変更確認及び検査済証の交付を行ったことからすると,原告が,本件北側道に関して道路内建築制限違反による建築物除却措置命令などの行政処分を受けることが予想されるが,そのような具体的行政処分がなされるまで本件指定を争うことができないとすれば,A所有土地は,本件北側道が2項道路でないことが明確になるまで法的に不安定な状況に置かれることになる上,本件建築物に火災等が発生した場合,本件北側道及び本件西側道が狭あいであるため,消火活動に支障がある結果,原告の居住する建築物に延焼し,原告の生命,身体及び財産に被害が生ずるおそれがある。 イ包括指定方式により2項道路の指定がなされた湯合,特定の道路が2項道路に指定されたのかどうか必ずしも明瞭でないのは,時の経過によるものであって,指定が包括的であるからではない。包括指定方式によっては具体的にどの道路が2項道路に当たるかは不明であるとするならば,本件告示による指定は無効というほかないことになる。 また,その指定が特定の道路部分に適用があるか否かの検討・確認が,道路内建築制限違反に対する建築物除却措置命令や建築確認等の手続の中でされて初めて同指定が現実的に個人に対する権利義務ないし法律上の利益に影響を及ぼすか否かが判然とするとすれば,2項道路の指定権者を特定行政庁とした 反に対する建築物除却措置命令や建築確認等の手続の中でされて初めて同指定が現実的に個人に対する権利義務ないし法律上の利益に影響を及ぼすか否かが判然とするとすれば,2項道路の指定権者を特定行政庁とした法の趣旨に反する。 (2) 本件西側道について本件指定の不存在確認を求める原告適格の有無(被告の本案前の主張)本件西側道とA所有土地との間にはB所有土地が存在しており,本件西側道とA所有土地との距離は約16メートル離れており,本件西側道が2項道路に指定されても原告は何らの現実的・具体的拘束を受けない。 したがって,原告は,本件西側道に関して,その指定の存否を争う訴えの利益はない。 (原告の反論)被告の主張は争う。 前記のとおり,本件指定が存在しないのに存在するものと取り扱われれば,原告は,接道要件を満たさない違法な本件建築物に火災等が発生した場合,本件北側道及び本件西側道が狭あいであるため,消火活動に支障がある結果,原告の居住する建築物に延焼し,原告の生命,身体及び財産に被害が生ずるおそれがあるが,これは,本件北側道のみならず本件西側道についてもいえることであり,本件西側道と原告の敷地との間が離れていることは問題にならない。 (3) 本件北側道及び本件西側道について本件指定は存在するかどうか。 (被告の主張)本件北側道について,本件指定が存在するためには,基準時において,①幅員4メートル未満1.8メートル以上の道が存在すること,②既存建築物が立ち並んでいることという要件を具備していたことが必要であるが,時が経過するに従い,その判断は困難となるため,過去に,建築確認申請等の審査に当たり,本件北側道が2項道路であると判断された事実が重要な判断資料となる。 本件北側道の南側には,原告居住建築物,北側には,D,E,F,G,H,I,Jらの建 ため,過去に,建築確認申請等の審査に当たり,本件北側道が2項道路であると判断された事実が重要な判断資料となる。 本件北側道の南側には,原告居住建築物,北側には,D,E,F,G,H,I,Jらの建築物が立ち並んでいるが,これらの建築物は,原告及びDの建築物を除くと,一帯の地形上,本件北側道が2項道路であることを前提に建築確認を受けたことがうかがわれ,既に取り毀されたGの建築物(昭和35年建築),Iの建築物(昭和38年建築)及びHの建築物(昭和40年建築)も同様である(なお,山梨県における許認可申請関係の書類保存年限は3年である上,法による台帳整備が義務付けられるまでは事実上整備されていたにすぎず,甲府市は,昭和55年に山梨県から昭和46年以降の台帳の写しを引き継いだが,それ以前の台帳は山梨県にも存在しない。)。原告も,昭和58年,本件北側道が2項道路であることを前提に建築確認を申請した。 このように,昭和35年から本件紛争が発生した平成10年まで,本件北側道が2項道路であることを前提に建築確認がなされた事実が多数あること,現に多数の建築物が立ち並んでいること,近隣住民は,本件北側道が2項道路であることを前提として,何ら紛争なく使用してきたことに照らすと,本件北側道について本件指定が存在することは明らかである(なお,本件西側道についての被告の主張は必ずしも明確でないが,本件北側道に関する主張と同様の理由から本件指定が存在すると主張する趣旨と解される。)。 (原告の主張)ア被告の主張は争う。 本件北側道について,本件指定が存在するためには,基準時において,①既存建築物が立ち並んでいたこと,②一般交通の用に供せられていたこと,③幅員4メートル未満の道であることという法42条2項の要件を全て具備していたことが必要である。 しかし,本件 準時において,①既存建築物が立ち並んでいたこと,②一般交通の用に供せられていたこと,③幅員4メートル未満の道であることという法42条2項の要件を全て具備していたことが必要である。 しかし,本件北側道のうち別紙物件目録記載1の土地部分は,昭和34年ころ,分筆され,道として築造されたもので,基準時において,水田であった。また,本件北側道のうち同目録記載2の土地の部分は,基準時において,道はあったが,この道にのみ接する建築物はなかった。さらに,本件西側道の同目録記載3,4の各土地は,いずれも,昭和39年ころ分筆され,道として築造されたもので,基準時において,水田及び畑であった。 このように,本件北側道及び本件西側道は,基準時において,上記要件を具備していなかった。 イ被告がその主張の根拠とする一帯の地形や,多数の建築物が立ち並び,かつ,長年にわたって道路として近隣住民により使用されてきた事実は,本件建築物について建築確認がなされた時点を前提としているが,これは,被告が,特定の道路が2項道路に指定されているかを実際に判断する場合に,基準時を無視し,現況で判断する取扱いをしていることを示しているものであって,このような取扱いは,時が経過したからといって許されるものではない。 被告は,原告及びDの建築物を除く近隣住民の建築物は,本件北側道を2項道路として建築確認を受けた旨を主張するが,Gに対し確認通知があった昭和35年の時点において,その確認通知書に添付されていた配置図には,本件北側道の南側から北へ4メートルの位置で境界線が記載され,敷地面積が土地面積と一致し,道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地が控除されていないことから,本件北側道が2項道路であることを前提としていなかった。 また,被告は,近隣住民は,本件北側道が2項道路 地面積と一致し,道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地が控除されていないことから,本件北側道が2項道路であることを前提としていなかった。 また,被告は,近隣住民は,本件北側道が2項道路であることを前提に何ら紛争なく使用してきたと主張するが,本件建築物の建築に当たって,近隣住民と建築主との間で紛争が発生したのは,本件北側道が,基準時において,一般交通の用に供せられていなかったからである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について前記争いのない事実等によれば,本件指定は,特定人に向けて個別具体的に対象道路を特定して指定したものではなく,本件告示により,法42条2項の要件に該当し,かつ,甲府市の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を包括的に2項道路に指定する方式(包括指定方式)をとったことが認められる。 ところで,2項道路の指定がなされた場合,建築物又は敷地を造成するための擁壁は,道路内に,又は道路に突き出して建築し,又は築造してはならず(法44条1項),特定行政庁が,私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限することができる(法45条)など,建築基準法上種々の制約が生じる。なお,指定の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築,修繕もしくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がある場合,その所有者に直ちにそのような建築基準法上の制約は及ばないが(法3条2項),将来,これらの既存の建築物等について増改築などが行われる場合には,その制約が及ぶことになる(同条3項)。 しかるところ,本件指定は,不特定多数の者に対して向けられたものであるとはいえ,基準時以後,甲府市の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道で法42条2項の要件を具備する土地の所有者等に対しては,前記のような建築 の者に対して向けられたものであるとはいえ,基準時以後,甲府市の都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道で法42条2項の要件を具備する土地の所有者等に対しては,前記のような建築基準法上の制約を課す限度において,一定の法状態の変動を生じさせるものであることは否定できず,このような場合,その法状態の変動が一般的抽象的なものであるとしても,本件指定自体を抗告訴訟の対象としてその存否を争わなければ他に適切な救済の途が閉ざされることになるなどの特段の事情がある場合には,本件指定を抗告訴訟の対象となる行政処分であると解するのが相当である。 これを本件についてみると,前記争いのない事実等のとおり,原告は,Cに対する本件建築物についての建築確認処分の取消訴訟を提起し,その中で,本件北側道及び本件西側道について本件指定が存在しないことを主張しているが,本件建築物の工事が完了すれば,当該建築確認処分を取り消す訴えの利益を欠くことになり,実際上からいっても,ほかにこれを争う適切な争訟形態も見出しがたいことに照らすと,前記特段の事情があるといえ,本件指定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。 したがって,本件告示が2項道路の要件を具備するために必要な一般的基準の定立を目的にしたものであることを理由に本件指定の処分性を一律に否定する被告の主張は採用できない。 2 争点(2)について本件は,無効等確認の訴え(行政事件訴訟法3条4項)であるが,その原告適格について規定する同法36条の「法律上の利益を有する者」とは,取消訴訟の原告適格について規定する同法9条のそれと同義に解するのが相当であるところ,同条の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害される 告適格について規定する同法9条のそれと同義に解するのが相当であるところ,同条の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 そこで検討するに,法第3章の規定における「道路」は,建築物の敷地を利用することについて,防火,避難,衛生,安全,通行等に支障を生ずることのないよう,原則として,その幅員は4メートル以上あることが要求されるが(法42条1項本文),法施行時に,幅員が4メートル未満の道のみに接する建築物の敷地も多数存在しており,これらの道を直ちに幅員4メートルに拡幅しなければならないとすると,このような既存の建築物を除却又は移転するか,法42条1項5号の道路位置指定を受けるなどするほかないことになるため,法は,基準時の前から存在した幅員4メートル未満の道であっても,特定行政庁が指定するものは,その中心線から左右それぞれ2メートルの線を境界とする「道路」とみなすこととし(法42条2項),将来,既存建築物について増改築な 在した幅員4メートル未満の道であっても,特定行政庁が指定するものは,その中心線から左右それぞれ2メートルの線を境界とする「道路」とみなすこととし(法42条2項),将来,既存建築物について増改築などが行われる場合に法44条の規定を適用することとして(法3条3項),既存建築物の権利者の権利利益との調整を図ったものということができる。そして,幅員が4メートルに満たない道で,法42条2項の要件に該当しないにもかかわらず該当するものであると取り扱われ,それを前提に法43条1項の接道義務を充足するものとして建築物が建築され,その建築物に火災が発生した場合における被害は,当該建築物の類焼により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域の住民に直接的に及ぶことが予想される。 以上に照らすと,これらの規定は,防火,避難,衛生,安全,通行等に支障のない秩序ある健全な市街地を形成するという一般的公益の保護を図るにとどめず,接道義務を充足しない建築物に火災が発生した場合に当該建築物の類焼により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域の住民の生命,身体等の安全を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当である。 これを本件についてみると,前記争いのない事実等及び前掲各証拠によれば,原告は,本件建築物の敷地に隣接するA所有土地上の建築物に家族と共に居住し,文房具の小売業及び個人指導の学習塾を営んでおり,本件建築物と原告の居住する建築物は,水路及びブロック塀を挟んで数メートルの距離にあることが認められ,以上に照らすと,原告は,本件建築物に火災が生じた場合,その類焼による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住しているというべきである。 したがって,原告は,本件北側道及び本件西側道について本件指定が存在しな 本件建築物に火災が生じた場合,その類焼による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住しているというべきである。 したがって,原告は,本件北側道及び本件西側道について本件指定が存在しないことの確認を求めるにつき法律上の利益を有するものと認められる(なお,行政事件訴訟法36条によれば,処分の不存在確認の訴えは,当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り,提起することができるところ,前記1で説示したとおり,本件指定に起因する紛争を解決するための争訟形態として,本件訴えより直截的で適切な争訟形態は見出しがたい。)。 以上より,被告の主張は採用できない。 3 争点(3)について(1) 前記争いのない事実等並びに証拠(甲2ないし7,10ないし12,14,22,乙3ないし8(甲2,5,6,12,乙6ないし8の枝番は省略))及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 ア基準時当時,甲府市β(昭和42年9月に甲府市αに町区域及びその名称が変更される前のもの。以下の土地は地番のみにより「2362番4土地」などという。)内において,2362番4土地(地目・田)(別紙物件目録記載2)の所有者は,Kであり(なお,同人は,昭和25年2月10日,同土地を,自作農創設特別措置法に基づく政府売渡により取得したものである。),2361番1土地(地目・田)(後に2361番1,6,7の各土地に分筆される前のもの。以下分筆前の土地を「旧2361番1土地」などという。)及び2361番5土地(地目・田)の所有者は,L所有であり,旧2360番1土地(地目・田)の所有者はMであり,2361番3土地(地目・宅地)の所有者はNであり,旧2362番1土地(地目・田)の所有者はOであった。 ま 地目・田)の所有者は,L所有であり,旧2360番1土地(地目・田)の所有者はMであり,2361番3土地(地目・宅地)の所有者はNであり,旧2362番1土地(地目・田)の所有者はOであった。 また,旧2342番2土地の所有者はPであり,旧2343番土地の所有者は,Qであった。 イ 2361番5土地について,昭和26年8月27日,旧2361番1土地について,昭和35年5月26日,地目が田から宅地にそれぞれ変更され,Aは,昭和41年11月4日,Lの死亡によりこれらの土地の所有権を相続により取得した。 旧2361番1土地から,昭和49年2月15日に2361番6土地が,昭和58年4月12日に2361番7土地が,それぞれ分筆され,原告は,同土地上に原告方を新築するにあたり,同月19日,建築確認を受けた。 ウ Kは,昭和33年3月28日,Mの死亡により,その財産を相続により取得し,昭和34年5月27日,旧2360番1土地から2360番2土地(別紙物件目録記載1),2360番3土地を分筆した。 Kは,昭和35年3月30日,2360番3土地の地目を田から宅地に変更した上,同年5月3日,Gに対し,同土地を売却した。 エ Nは,Rに対し,昭和33年12月1日,2361番3土地(宅地)を売却した。その後,同土地は,昭和34年7月24日,Sに,昭和51年5月13日,Bに,それぞれ売却された。 Cは,同土地(B所有土地)上に本件建築物を建築するに当たり,平成9年11月25日,建築確認を,平成11年10月6日,計画の変更につき確認を,同月18日,検査済証の交付をそれぞれ受けた。 オ旧2362番1土地について,昭和34年10月2日,地目が田から宅地に変更され,昭和41年9月16日,同土地から2362番7土地が分筆された。現在の2362番1土地の所有権は,O,T れ受けた。 オ旧2362番1土地について,昭和34年10月2日,地目が田から宅地に変更され,昭和41年9月16日,同土地から2362番7土地が分筆された。現在の2362番1土地の所有権は,O,Tを経て,昭和47年7月17日,Dが相続により取得したものである。 カ Gは,昭和35年7月29日,2360番3土地上に居宅を新築するため建築確認を受け,同年11月に新築し,昭和43年3月10日,同居宅を増築した。 Fは,昭和61年3月24日,建築確認を受け,2360番3土地上に居宅を新築した。 キ Iは,昭和38年9月20日,2360番6土地上に居宅を建築し,平成5年3月30日,同居宅は取り毀され,同年4月13日,Uが同土地上の建築物新築に当たり,建築確認を受けた。 ク 2342番4土地(地目・宅地)(別紙物件目録記載4)は,昭和39年8月20日,旧2342番2土地から分筆され,その所有権は,昭和45年11月3日,遺贈によりPからVに移転した。 ケ 2343番2土地(地目・田)(別紙物件目録記載3)は,昭和39年9月1日,旧2343番土地から分筆され,Qが所有している。 コ Hは,昭和40年3月10日,2360番1土地上に居宅を新築し,平成3年8月20日,同居宅を取り毀し,居宅を新築した。 (2) ところで,基準時において,甲府市βは,都市計画指定地域に指定されていたことが弁論の全趣旨により認められるところ,本件北側道及び本件西側道について本件指定が存在するといえるためには,基準時において,本件北側道及び本件西側道が,いずれも法42条2項に該当する現に建築物が立ち並んでいる道であり,かつ,その幅員が4メートル未満1.8メートル以上であったことの主張立証が必要であり,また,建築物が立ち並んでいるといえるためには,少なくとも,当該道のみによって接道 築物が立ち並んでいる道であり,かつ,その幅員が4メートル未満1.8メートル以上であったことの主張立証が必要であり,また,建築物が立ち並んでいるといえるためには,少なくとも,当該道のみによって接道義務を充足する建築物が2戸以上存在することの主張立証が必要である。 この点,被告は,Gが建築物を建築した昭和35年から本件紛争が発生した平成10年まで,本件北側道につき,2項道路としての指定が存在すると判断された事実が多数例存在すること,現に多数の建築物が立ち並んでいること,近隣住民は,2項道路であることを前提に本件北側道を何ら紛争なく使用してきたことなどから,本件北側道及び本件西側道につき2項道路としての指定が存在すると主張する。 しかしながら,前記認定事実によれば,基準時において,地目が宅地であったのは,N所有の2361番3土地以外に見当たらず,それ以外の本件北側道に接する土地の地目は田であったこと,その後,時を経て,他の土地について地目が田から宅地に変更されたものや,その土地上に建築物が新築されたものが出現したことが認められ,また,台帳等の記録の保存体制が影響しているとはいえ,本件北側道の近隣の建築物の建築確認の際,本件北側道が2項道路として扱われたのか証拠上必ずしも明らかではないことからすると,現況の地形や過去の建築確認が積み重ねられた事実から,基準時における道の存在を推認することは無理がある。かえって,昭和33年12月2日撮影の航空写真(甲10)及び昭和34年5月測図の地図(甲11)をみると,昭和34年当時,本件北側道が現存する辺りには石堤が設置され,道の存在が認められるのは,県道(武田通り)に接する敷地の境界付近にとどまること,本件北側道に接する敷地には3戸の建築物があるが,うち2戸の建築物の敷地は県道(武田通り)に接していた 堤が設置され,道の存在が認められるのは,県道(武田通り)に接する敷地の境界付近にとどまること,本件北側道に接する敷地には3戸の建築物があるが,うち2戸の建築物の敷地は県道(武田通り)に接していたこと,本件西側道は道として利用されていたことがうかがえるものの,本件西側道に接する敷地にある建築物のうち,本件西側道によらなければ公道に出ることができない建築物は,2361番3土地上の建築物が1戸あったにすぎないことが認められ,以上認定事実に照らすと,基準時において,本件北側道や本件西側道に何らかの道があったとしても,法42条2項にいう現に建築物が立ち並んでいる道であったことを認めることはできない。 したがって,被告の主張は採用できない。 4 よって,原告の請求は理由があるから認容する。 甲府地方裁判所第1民事部裁判長裁判官矢崎正彦裁判官萩本修裁判官有冨正剛
▼ クリックして全文を表示