令和6(わ)27 詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月26日 盛岡地方裁判所
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判決文本文7,015 文字)

令和7年3月26日宣告詐欺被告事件 主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中280日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 地域の観光資源に関する調査分析、研究、企画及び開発等を目的とする株式会社Aの代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、農林水産省から令和2年度品目横断的販売促進緊急対策事業の実施主体として選定された株式会社Bから、同事業に係る事業の実施計画の承認等を受けていたところ、同社から同事業に係る補助金をだまし取ろうと考え、令和3年3月22日頃、東京都港区(以下略)同社C局に対し、真実は、株式会社D等から和牛等を調達した事実はないのに、同社等から和牛等合計3918万6800円分を調達し、旅舘営業等を目的とする株式会社Eにおいて宿泊客に提供するなどしたように装い、その旨記載した内容虚偽の同事業の実施結果報告書及び前記D名義の見積書、納品書等を電子送信するなどして同局担当者らに同報告書どおりに事業が実施された旨誤信させ、同年4月7日頃、同局に同補助金の金額を2044万3000円と確定させ、よって、同月23日、株式会社F銀行G支店に開設された前記A名義の普通預金口座に現金2044万3000円を振込入金させ(令和6年7月18日付け追起訴状記載の公訴事実第1)、第2 前記Eの代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、 1 新型コロナウイルス感染症の影響で需要先が消失した生産者等の支援や、販路を失った国産農林水産物等の販路の多様化や開拓、流通構造の改革等を目的とする農林水産省所管の補助事業を利用して、同省から同事業の実施主体とし て選定された前記Bから、補助金名目で現金をだまし取 った国産農林水産物等の販路の多様化や開拓、流通構造の改革等を目的とする農林水産省所管の補助事業を利用して、同省から同事業の実施主体とし て選定された前記Bから、補助金名目で現金をだまし取ろうと考え、 令和3年4月7日頃から同年6月24日頃までの間、真実は、有限会社Hが鹿肉等を取り扱っていた事実及び同社における鹿肉等の販売単価が低下した事実はなく、補助金を受給する要件を充足していない上、同社から鹿肉等を調達する意思もないのに、これらがあるように装い、前記C局に対し、前記Hの取り扱う鹿肉等の販売単価が低下しているため、同社から鹿肉等を調達し、前記Eにおいて宿泊客に提供することなどを記載した補助金交付申請額を699万3000円とする内容虚偽の令和2年度国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業に係る事業実施計画の承認申請書等を電子送信するなどし、同月29日、同局担当者らをして同事業の実施計画の承認及び同額の補助金交付を決定させた上、同年8月17日から同年9月28日頃までの間、同局に対し、真実は、前記Hから鹿肉等を調達した事実はないのに、同社から鹿肉等合計958万6000円分を調達し、前記Eにおいて宿泊客に提供するなどしたように装い、その旨記載した内容虚偽の同事業の実施結果報告書及び前記H名義の見積書、納品書等を電子送信するなどして前記担当者らに同報告書どおりに事業が実施された旨誤信させ、同月30日頃、同局に同補助金の金額を699万3000円と確定させ、よって、同年10月29日、I銀行株式会社J支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金699万3000円を振込入金させ(令和6年7月18日付け追起訴状記載の公訴事実第2)、 令和3年6月22日頃から同年8月5日頃までの間、真実は、前記Hが岩手県産黒毛和牛を取り扱っ に現金699万3000円を振込入金させ(令和6年7月18日付け追起訴状記載の公訴事実第2)、 令和3年6月22日頃から同年8月5日頃までの間、真実は、前記Hが岩手県産黒毛和牛を取り扱っていた事実及び同社における岩手県産黒毛和牛の販売量が低下した事実はなく、補助金を受給する要件を充足していない上、同社から岩手県産黒毛和牛を調達する意思もないのに、これらがあるように装い、前記C局に対し、前記Hの取り扱う岩手県産黒毛和牛の販売量が低下しているため、同社から岩手県産黒毛和牛を調達し、前記Eにおいて宿泊客 に提供することなどを記載した補助金交付申請額を4087万5000円とする内容虚偽の令和2年度国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業に係る事業実施計画の承認申請書等を電子送信するなどし、同月11日、同局担当者らをして同事業の実施計画の承認及び同額の補助金交付を決定させた上、同年10月26日頃から同年11月7日頃までの間、同局に対し、真実は、前記Hから岩手県産黒毛和牛を調達した事実はないのに、同社から岩手県産黒毛和牛合計7700万円分を調達し、前記Eにおいて宿泊客に提供するなどしたように装い、その旨記載した内容虚偽の同事業の実施結果報告書及び前記H名義の見積書、納品書等を電子送信するなどして前記担当者らに同報告書どおりに事業が実施された旨誤信させ、同月10日、同局に同補助金の金額を4087万5000円と確定させ、よって、同年12月8日、I銀行株式会社J支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金4087万5000円を振込入金させ(令和6年3月29日付け追起訴状記載の公訴事実第1、同年4月3日付け訴因変更請求書記載の第1事実)、 2 新型コロナウイルス感染症の影響で需要先が消失した生産者等の支援や、販路を失った国産農林 (令和6年3月29日付け追起訴状記載の公訴事実第1、同年4月3日付け訴因変更請求書記載の第1事実)、 2 新型コロナウイルス感染症の影響で需要先が消失した生産者等の支援や、販路を失った国産農林水産物等の販路の多様化や開拓、流通構造の改革等を目的とする農林水産省所管の補助事業を利用して、同省から同事業の実施主体として選定された前記Bから、補助金名目で現金をだまし取ろうと考え、豆腐、油揚、納豆及び蒟蒻の製造、販売等を目的とする前記Hの取締役として同社の業務全般を統括していたKと共謀の上(別表1番号1については、更に温泉旅館等を目的とする株式会社Lの取締役として同社の業務全般を統括していたMと共謀の上)、別表(略)1記載のとおり、令和4年2月3日頃から同年10月26日までの間、4回にわたり、真実は、前記Hが岩手県産黒毛和牛等を取り扱っていた事実及び同社における岩手県産黒毛和牛等の販売量が低下した事実はなく、補助金を受給する要件を充足していない上、同社から岩手県産黒毛和牛等を調達する意思もないのに、これらがあるように装い、前記C局に対し、 前記Hの取り扱う岩手県産黒毛和牛等の販売量が低下しているため、同社から岩手県産黒毛和牛等を調達し、前記Eにおいて宿泊客に提供することなどを記載した補助金交付申請額を合計8615万2000円とする内容虚偽の令和3年度国産農林水産物等販路新規開拓緊急対策事業に係る事業実施計画の承認申請書等を電子送信するなどし、同年5月31日から同年10月26日までの間、同局担当者らをして同事業の実施計画の承認及び同額の補助金交付を決定させた上、同年7月23日頃から令和5年2月24日までの間、同局に対し、真実は、前記Hから岩手県産黒毛和牛等を調達した事実はないのに、同社から岩手県産黒毛和牛等合計1億6715万57 助金交付を決定させた上、同年7月23日頃から令和5年2月24日までの間、同局に対し、真実は、前記Hから岩手県産黒毛和牛等を調達した事実はないのに、同社から岩手県産黒毛和牛等合計1億6715万575円分を調達し、前記Eにおいて宿泊客に提供するなどしたように装い(別表1番号1については、更に前記Lに対して販売したように装い)、その旨記載した内容虚偽の同事業の実施結果報告書及び前記H名義の見積書、納品書等を電子送信するなどして前記担当者らに同報告書どおりに事業が実施された旨誤信させ、同月3日から同月24日までの間、同局に同補助金の金額を合計8243万円と確定させ、よって、同月9日から同年3月3日までの間、株式会社F銀行G支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金合計8243万円を振込入金させ(令和6年2月20日付け起訴状記載の公訴事実、同年3月29日付け追起訴状記載の公訴事実第2、同年4月3日付け訴因変更請求書記載の第2事実、同年5月30日付け追起訴状記載の公訴事実第1及び第2)、 3 国土交通省観光庁から令和2年度第3次補正予算訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業の補助事業者として選定された株式会社Nから、同事業に関し、前記E等を補助対象事業者とする観光拠点再生計画の採択等を受けていたところ、前記Nから、同事業に係る補助金をだまし取ろうと考え、別表2(略)記載のとおり、令和4年2月19日頃から令和5年2月10日頃までの間、6回にわたり、東京都港区(以下略)同社O営業部に対し、真実は、株式会社Pほか2社が前記Eの客室 空調設備工事等を施工した事実はないのに、前記Pほか2社が同設備工事等を施工し、工事代金合計2億3778万4007円を要したように装い、その旨記載した内容虚 会社Pほか2社が前記Eの客室 空調設備工事等を施工した事実はないのに、前記Pほか2社が同設備工事等を施工し、工事代金合計2億3778万4007円を要したように装い、その旨記載した内容虚偽の既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業補助金補助対象事業完了実績報告書等を電子送信するなどして(別表2番号1ないし4)、又は、既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業補助金確定検査費目積算書等を電子送信するなどして補助事業完了実績報告を行い(別表2番号5、番号6)、同営業部担当者らに同報告書又は同報告どおりに事業が実施された旨誤信させ、令和4年3月25日から令和5年3月15日までの間、同営業部に同補助金の金額を合計1億1889万円と確定させ、令和4年3月27日から令和5年3月22日までの間、同営業部に対し、同額の支払を請求し、よって、令和4年3月29日から令和5年3月27日までの間、株式会社F銀行G支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金合計1億1889万円を振込入金させ(令和6年7月31日付け追起訴状記載の各公訴事実、同年10月18日付け追起訴状記載の各公訴事実、同年11月12日付け訴因変更請求書記載の事実)、 4 国土交通省観光庁から訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業の補助事業者として選定された前記Bから、同事業に関し、前記E等を補助対象事業者とする地域計画の採択等を受けていたところ、前記Bから同事業に係る補助金をだまし取ろうと考え、別表3(略)記載のとおり、令和5年3月6日頃、4回にわたり、前記C局及びQ局が運営する同事業事務局に対し、真実は、前記E所有の旧Rアパート廃屋撤去工事等代金が合計7900万円であるのに、合計1億7100万円を要したように装い(別表3番号 頃、4回にわたり、前記C局及びQ局が運営する同事業事務局に対し、真実は、前記E所有の旧Rアパート廃屋撤去工事等代金が合計7900万円であるのに、合計1億7100万円を要したように装い(別表3番号1、番号2、番号4)、又は、真実は、前記Eの依頼により有限会社Sが旧T廃屋撤去工事を施工した事実はないのに、前記Eの依頼により前記Sが同工事を施工し、工事代金1500万円を要したように装い(別表3番号3)、その旨記載した内容虚偽の補助事業完了実績報告等を電子送信するなどして同事務局担当者らに同報告どおりに事業が実施さ れた旨誤信させ、同月9日から同月15日までの間、同事務局に同補助金の金額を合計1億5550万円と確定させ、同月10日から同月16日までの間、同事務局に対し、同額の支払を請求し、よって、同月16日から同月24日までの間、株式会社F銀行G支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金合計1億5550万円を振込入金させ(令和6年11月12日付け追起訴状記載の各公訴事実)、もっていずれも人を欺いて財物を交付させたものである。 (量刑の理由)農林水産省では、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、外食、インバウンド等の需要先が消失した生産者等に必要な支援を行うため、販売量等が減少した国産農林水産物を生産者等から調達する事業者に対し、その調達費等の経費の一部を補助する補助事業を実施していた。また、観光庁では、新型コロナウイルス感染症の影響により危機的状況にある観光地を再生させ、さらに、ポストコロナの反転攻勢につなげるため、観光地再生に向けて実施される施設改修・廃屋の撤去等の事業に要する経費の一部を支援する補助事業を実施していた。被告人は、前記補助事業を利用して、現金をだまし取ろうなどと考え、その経営する温泉旅館の取引先から岩 に向けて実施される施設改修・廃屋の撤去等の事業に要する経費の一部を支援する補助事業を実施していた。被告人は、前記補助事業を利用して、現金をだまし取ろうなどと考え、その経営する温泉旅館の取引先から岩手県産黒毛和牛等の国産農林水産物を調達した事実がないのに、内容虚偽の見積書や納品書等を作成したり、あたかも代金を支払ったかのように見せかけるために取引先の銀行口座に現金を振り込んだり、調達した岩手県産黒毛和牛等を同温泉旅館の宿泊客に提供するキャンペーンを実施する旨の内容虚偽の広告を作成したりして、前記取引先から岩手県産黒毛和牛等を調達する取引があったかのように装った。また、同温泉旅館の宴会場の改修工事や社員寮の解体工事等を行った際、実際の施工業者とは異なる別の施工業者名義の内容虚偽の請求書等を作成したり、工事代金額を水増しした内容虚偽の請求書等を作成したりするなどした。そして、それらの資料を基にして、前記補助事業に係る補助金の交付を申請し、担当者らを欺き、補助金として現金の振込入金を受けて、これをだまし取ったものである。 このように、本件は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により窮地に陥った生産者や観光地を支援するための補助事業を悪用した利欲性の高い狡猾な犯行である。その手口も、複数の取引先関係者らを利用するなどしながら、取引や事業の実体が全くないのに、内容虚偽の資料や書類を作成したり、現金を振り込んだりして、実際に取引や事業を実施したかのように装ったり、内容虚偽の資料や書類を作成して補助金額を水増ししたりするなど、誠に巧妙なものである。被告人は、令和3年3月頃から令和5年3月頃までの約2年間に、17回にわたって同様の犯行を繰り返しており、被害額は合計4億2500万円余りに上っているのであって、犯行の結果は重大である。 被告 。被告人は、令和3年3月頃から令和5年3月頃までの約2年間に、17回にわたって同様の犯行を繰り返しており、被害額は合計4億2500万円余りに上っているのであって、犯行の結果は重大である。 被告人は、父の死去に伴い、若くして同温泉旅館の経営を引き継いだ。その当時、同温泉旅館は多額の負債を抱え、経営状態も芳しいものではなかったが、被告人の経営手腕により、その経営状態は上向きつつあった。ところが、同温泉旅館の前に架かる橋梁の工事が遅延し、同温泉旅館にとって重要な収入源となる団体客の受入れが困難な期間が長引いた。そこに新型コロナウイルス感染症の感染拡大による宿泊客の大幅な減少が追い打ちをかけ、同温泉旅館の経営は危機的状況に陥った。被告人は、そのような窮地を脱するために、あるいは、手元の資金を温存するために、本件各犯行に及んだというのである。このように、公共工事の遅延やコロナ禍という不測の事態が本件の一因となったことは否定し難い。しかしながら、コロナ禍については、本件補助事業を始めとして、窮地に陥った事業者を支援するためのさまざまな制度が設けられていたのであるから、それらを適正に利用してそのような窮状をしのぐことが求められていたというべきである。被害金額が多額に上ることなどの本件事案の悪質性に照らすと、前記のような不測の事態を被告人に対する責任非難を弱める事情として考慮するにしても、限度があるといわなければならない。 以上によれば、被告人が事実を認め、反省の態度を示していること、共犯者の一人が、約5000万円の被害弁償をしていることなどの事情を考慮しても、被告人の本件刑事責任は重大というべきであって、主文掲記の刑はやむを得ない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑・懲役8年)令和7年3月26日 主文 ても、被告人の本件刑事責任は重大というべきであって、主文掲記の刑はやむを得ない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑・懲役8年)令和7年3月26日盛岡地方裁判所刑事部 裁判官中島真一郎

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