平成25(ラ)392 面会禁止等仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月7日 名古屋高等裁判所 棄却 岐阜地方裁判所 平成25(ヨ)45
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判決文本文10,909 文字)

- 1 -平成26年2月7日決定名古屋高等裁判所平成25年(ラ)第392号面会禁止等仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件(原審・岐阜地方裁判所平成25年(ヨ)第45号) 主文 1 本件抗告を棄却する。 2 抗告費用は抗告人の負担とする。 理由 第1 抗告の趣旨 1 原決定を取り消す。 2 相手方は,抗告人に対し,自ら又は第三者をして,原決定別紙場所目録記載の場所に侵入したり又は電話したりするなどの方法で面接,連絡し,又はさせてはならない。 第2 事案の概要 1 本件は,抗告人の任意後見人が,抗告人を代理して弁護士に委任して,抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として,相手方に対し,抗告人との面会等を禁止する仮処分命令の申立て(以下「本件仮処分命令申立て」という。)をした事案である。 原審が,本件仮処分命令申立てについて,保全の必要が認められないとの理由で,これを却下したため,抗告人が即時抗告した。 2 抗告人の主張別紙即時抗告申立書,準備書面(4)及び準備書面(5)(ただし,同準備書面中,「11項」とあるのは,いずれも「12項」と訂正する。)のとおり 3 相手方の主張別紙第4準備書面及び第5準備書面のとおり第3 当裁判所の判断 1 本件仮処分命令申立ては,抗告人の任意後見人であるAが,抗告人の代理- 2 -人として抗告人代理人弁護士らに委任して,抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として申し立てた仮処分命令申立てであるが,当裁判所は,抗告人の任意後見人に授与されている代理権限には,抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権は含まれていないため,本件仮処 妨害排除請求権を被保全権利として申し立てた仮処分命令申立てであるが,当裁判所は,抗告人の任意後見人に授与されている代理権限には,抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権は含まれていないため,本件仮処分命令申立ては,代理権限のない者が提起した仮処分命令申立てとして不適法であり,これを却下すべきものと判断する。 その理由は,次の2以下のとおりである。 2 事実関係次のとおり補正するほかは,原決定「理由」の第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原決定の補正)原決定2頁1行目の「任意後見契約を締結した(甲8)。」を,次のとおり改める。 「抗告人を委任者,A及びBを受任者として,抗告人の生活,療養看護及び財産の管理に関する別紙「代理権目録(委任契約)」記載の事務について委任し,代理権を与える旨の契約(以下「本件委任契約」という。)と,抗告人が精神上の病気等により判断能力が不十分となった場合の抗告人の生活,療養看護及び財産に関する事務に関する別紙「代理権目録(任意後見契約)」(以下「本件目録」という。)記載の後見事務をA及びBに委任し,代理権を与える旨の任意後見契約(以下「本件任意後見契約」という。)を,公正証書を作成する方法で締結した(甲8)。」 3 抗告人の任意後見人の代理権限の範囲について(1) Aが抗告人の任意後見人として有する代理権限の範囲が本件目録記載のとおりであることは,上記2で認定したとおりである。 (2) 抗告人は,Aに与えられた代理権には,「不動産,動産等すべての財産の保存,管理,変更及び処分に関する一切の事項」(本件目録1項)及- 3 -び「以上の各事項に関連する一切の事項」(同目録12項)に関する権限が含まれていることから,Aは,抗告人の任意後見人として,抗告人のすべての財産の 関する一切の事項」(本件目録1項)及- 3 -び「以上の各事項に関連する一切の事項」(同目録12項)に関する権限が含まれていることから,Aは,抗告人の任意後見人として,抗告人のすべての財産の保存,管理,変更及び処分に関する一切の権限についての代理権を有するとともに,抗告人の財産を保存,管理すべき権利を有し,義務を負うため,抗告人の財産についての保存,管理等に現実的な危険が存在する場合,Aが抗告人を代理してそのような危険の発生を予防すべき必要性は高いから,Aには,抗告人を代理して,抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権により,相手方に対して抗告人との面会等を禁止することを請求する権限がある旨主張する。 しかし,本件目録1項は,抗告人がその所有する不動産等の財産の管理及び処分をAに授与することを内容とするものであることは,その文言から明らかであるから,本件目録12項と相まって,Aが,これにより,抗告人から,抗告人所有の不動産等の管理処分権限及びそのために必要な法律行為(所有権に基づく妨害排除請求権等の物権的請求権を含む。)の代理権限を授与されているものとはいえるが,本件目録1項及び12項により,抗告人がAに対し,本件仮処分命令申立ての被保全権利とされている抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権のような抗告人の人格的な諸利益に関する非財産的な権利の管理処分権を授与し,又はそのための代理権を授与しているものと解することはできない。 (3) 抗告人は,Aに与えられた代理権には,「日常生活関連取引に関する事項」(本件目録4項),「医療契約や福祉関係施設入所契約に関する一切の事項」(同6項)及び「以上の各事項に関する一切の事項」(同12項)に関する権限が含まれているから,Aは,抗告人の生活及び療養看護に関する事務について代理権を有す 福祉関係施設入所契約に関する一切の事項」(同6項)及び「以上の各事項に関する一切の事項」(同12項)に関する権限が含まれているから,Aは,抗告人の生活及び療養看護に関する事務について代理権を有するとともに,抗告人の身上を配慮すべき責務も負っているところ,抗告人が相手方と面会等することは,抗告人の平穏な生活を害するおそれがあり,Aが抗告人の医療に関する事務を適- 4 -切に行うことが不可能になるから,Aにはそれを差し止めることができる代理権がある旨主張する。 しかし,本件目録4項,6項及び12項は,Aに対し,日常生活関連取引,医療契約や福祉関係施設入所契約に関し,その締結等の法律行為の代理権限を授与する旨の内容であり,これらがAに対し,抗告人の人格的な諸利益に関する非財産的な権利の管理処分権やそのための代理権限を授与しているものと解することはできない。このことは,本件任意後見契約(甲8)が,その1項において,抗告人は,任意後見人に対し,抗告人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務(任意後見契約に関する法律2条1号に規定している事務)をお願いするとしているものの,4条において,「後見事務の範囲」として,本件目録記載の後見事務を委任し,任意後見人にその事務処理のための代理権を与えるとして,委任する事務につき本件目録記載の範囲に限定している上,抗告人の身上看護について,その5条において,「任意後見人は,本件後見事務を行うに当たっては,抗告人の意思を尊重し,かつ,抗告人の身上に配慮するものとし,その事務処理のため,必要に応じて抗告人と面接し,ヘルパーその他日常生活援助者から抗告人の生活状況について報告を求め,主治医その他医療関係者から抗告人の心身の状態について説明を受けることなどにより,抗告人の生活状況及び健康状態の把握に と面接し,ヘルパーその他日常生活援助者から抗告人の生活状況について報告を求め,主治医その他医療関係者から抗告人の心身の状態について説明を受けることなどにより,抗告人の生活状況及び健康状態の把握に努めるものとする。」と定めているにとどまることからも窺えるものというべきである。 (4) なお,抗告人は,本件委任契約では,抗告人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務がA及びBに依頼されており,本件任意後見契約もそれを引き継いでいるから,人格権に基づく妨害排除請求権も,Aの権限として与えられている旨主張する。 しかし,証拠(甲8)によると,本件委任契約においては,任意後見監督人が選任され,効力が生じたときに本件委任契約は終了する旨が明記さ- 5 -れていることが認められるから(3条②),仮に本件委任契約において,人格権に基づく妨害排除請求権の行使も委任されていたとしても,そのことから,本件任意後見契約においても,Aに同様の委任がされているものと解することはできない。 (5) その他,本件任意後見契約によりAに与えられた代理権の内容を精査しても,抗告人の人格権に基づく差止め請求権を行使する代理権がAに授与されていると認めることはできない。 4 抗告人は,抗告人がすでに後見相当の診断を受けており,事理を弁識する能力を欠く状態にあり,意思能力及び訴訟能力がないことから,自ら人格権を行使して侵害行為の排除や予防を請求しうる能力はないし,別途任意後見人にその差止めの代理権を与えたり,直接代理人に委任することもできないから,人格権に基づく妨害排除請求権の行使を任意後見人が代理できないと解することは,被後見人には人格権がないというに等しい旨主張し,また,一般に,後見人に被後見人の一身専属的権利を代理する権限がないと解されているのは 妨害排除請求権の行使を任意後見人が代理できないと解することは,被後見人には人格権がないというに等しい旨主張し,また,一般に,後見人に被後見人の一身専属的権利を代理する権限がないと解されているのは,一身専属的な身分行為等は,本人の意思を極めて重視すべきものであると考えられているのであるが,人格権に基づく妨害排除請求権は,その行使において,身分行為のように本人の意思が尊重されるべきものではないし,人格権が侵害されていれば,それを排除したり予防したりすることを望むのは当然である旨主張する。 (1) しかし,任意後見制度は,本人(任意後見契約の委任者)が,任意契約締結時に契約の締結に必要な判断能力を有している時点において,将来,精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状態となった場合に備えて,自らの意思で自己の後見内容を決するという自己決定の尊重の理念に基づくものであるから,任意後見人の権限の範囲は,本人が締結した任意後見契約の内容によって定まるのであり,その結果として,任意後見人に代理権が授与されない事項が生じることがあったとしても,やむを得な- 6 -いというほかない。 なお,成年後見人は,成年被後見人の生活及び療養看護に関する事務を処理する権限,いわゆる身上監護権を有する(民法858条)から,その有する身上監護権の行使を妨害する者に対し,妨害排除を請求することができると解されるし,また,成年被後見人の介護施設入所契約において,民法858条所定の配慮義務を踏まえた上で,成年被後見人と面会等できる者を制限することができないものではない。したがって,任意後見契約における権限の制約により任意後見人が成年後見人と同様の権限を行使できず,本人の身上監護に支障が生じる場合には,任意後見契約に関する法律10条1項により,成年後見へ はない。したがって,任意後見契約における権限の制約により任意後見人が成年後見人と同様の権限を行使できず,本人の身上監護に支障が生じる場合には,任意後見契約に関する法律10条1項により,成年後見への移行が検討されるべきである。 (2) また,抗告人が子や家族等のうち誰と面会し,何を話し,何を聞くことを望み,また,好み,そのことを実行するか否かなどのことは,極めて個人的で内面的な事柄であり,抗告人の自由な意思決定にまかされるべき人格的な利益又は権利というべきものであるから,他人が抗告人に代わって決定することになじまない性質の事柄というほかない。 したがって,仮に抗告人がその人格権に基づき相手方に対し,面会等の禁止を請求できる権利を有するとしても,同権利は,抗告人自らがこれを行使することを要する権利であって,いわゆる行使上の一審専属的権利であると解される。 そうすると,本件任意後見契約において,抗告人がAに対し,上記権利の行使の代理権限を明示的に授与している場合は格別,そのような場合でない本件においては,Aについて,上記権利行使の代理権授与を肯定することはできない。 そして,上記2の事実及び証拠(甲16,17,20,21,24ないし26)によれば,抗告人は,平成25年2月に入院したC病院では,Bがいつ来院するかをしきりに看護師らに尋ね,家族が面会にくると落ち着- 7 -くということを繰り返し,「私は悪いことをしていないのになんでこんなことされるの」と発言することがあったこと,また,抗告人は,同年4月2日にDに入居した後,相手方が頻繁に夜間に面会したり,宿泊するなどするようになったため,家族への依存が少しずつ強くなり,相手方の夜間面会後,深夜まで興奮して眠れなくなったり,娘であるBを探して他の入居者に迷惑をか 後,相手方が頻繁に夜間に面会したり,宿泊するなどするようになったため,家族への依存が少しずつ強くなり,相手方の夜間面会後,深夜まで興奮して眠れなくなったり,娘であるBを探して他の入居者に迷惑をかけたり,Bと一緒に家に帰りたいと述べるなどのことがあり,相手方の夜間の面会や宿泊がなくなってから,抗告人は夜間に眠りにつく時間が早くなり,平穏な共同生活を送っていることは認められる。このような抗告人の状況からすると,抗告人は,一人で病院あるいは施設に入居することに不安を覚え,相手方を含む家族とのつながりを求めていたものと推認されるから,抗告人が相手方との面会等を嫌悪し,これを拒絶するものとも考えられず,抗告人にとって,相手方との面会等が抗告人の人格権を侵害するものとなっているとまでは認められない。 (3) したがって,抗告人の主張はいずれも採用できない。 5 以上によれば,Aは,抗告人から,本件仮処分命令申立ての被保全権利である抗告人の人格権に基づく妨害排除請求権の代理権を授与されていないから,本件仮処分命令申立ては,代理権限のない者が抗告人の代理人として提起した仮処分命令申立てというほかない(なお,上記2の事実によって認められる抗告人の判断能力からすると,代理権欠缺を追認する余地もない。)。 したがって,本件仮処分命令申立ては不適法として,これを却下すべきである。 よって,原決定は,結論において正当であって,本件抗告は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり決定する。 平成26年2月7日名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官長門栄吉- 8 -裁判官眞鍋美穂子裁判官片山博 第3部裁判長裁判官長門栄吉- 8 -裁判官眞鍋美穂子裁判官片山博仁 (別紙)代理権目録(委任契約) 1 委任者の有する一切の財産の管理,保存,処分に関する事項 2 金融機関,郵便局,証券会社とのすべての取引に関する事項 3 年金その他の定期的な収入の受領,公共料金等定期的な支出を要する費用の支払並びにこれらに関する諸手続等一切の事項 4 生活に必要な送金及び物品の購入等に関する一切の事項 5 保険契約の締結,変更,解除,保険料の支払,保険金の受領等保険契約に関する一切の事項 6 登記の申請,供託の申請,住民票,戸籍謄本抄本,登記事項証明書の請求,税金の申告・納付等行政機関に対する一切の申請,請求,申告,支払等 7 医療契約,入院契約,介護契約,施設入所契約その他の福祉サービス利用契約等,委任者の身上監護に関する一切の契約の締結,変更,解除,費用の支払等一切の事項 (別紙)代理権目録(任意後見契約) 1 不動産,動産等すべての財産の保存,管理,変更及び処分に関する一切の事項 2 金融機関,郵便局,証券会社とのすべての取引に関する一切の事項 3 年金その他の定期的な収入の受領,定期的な支出を要する費用の支払に関する一切の事項 4 生活費の送金,生活に必要な財産の取得,物品の購入その他の日常生活関連- 9 -取引に関する事項 5 保険契約の締結,変更,解除,保険料の支払,保険金の受領等保険契約に関する一切の事項 6 医療契約,入院契約,介護契約その他の福祉サービス契約,福祉関係施設入所契約に関する事項 7 要介護認定の申請及び認 締結,変更,解除,保険料の支払,保険金の受領等保険契約に関する一切の事項 6 医療契約,入院契約,介護契約その他の福祉サービス契約,福祉関係施設入所契約に関する事項 7 要介護認定の申請及び認定に関する承認又は異議申立て 8 登記済権利証,印鑑,印鑑登録カード,住基カード,各種カード,預貯金通帳,株券等有価証券,その他預り証,重要な契約書類その他重要書類の保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する一切の事項 9 登記及び供託の申請,税務申告,各種証明書の請求に関する一切の事項 10 以上の各事項に関する行政機関等への申請,その処分に対する不服申立て,紛争の処理(弁護士に対する民訴法55条2項の特別授権事項の授権を含む訴訟行為の委任,公正証書の作成嘱託を含む。)に関する一切の事項 11 復代理人の選任,事務代行者の指定に関する事項 12 以上の各事項に関連する一切の事項 ○ 別紙の即時抗告申立書,準備書面(4),準備書面(5),第4準備書面及び第5準備書面-添付書略 ○ 「理由」の第3の2で引用した原決定の「理由」第2の1第2 当裁判所の判断 1 本件疎明資料及び審尋の結果によれば,次の各事実を一応認めることができる。 (1) 当事者等ア債権者は,大正a年b月c日生まれの女性である。 債権者は,平成22年9月29日,長女であるB及びその夫であるA- 10 -との間で任意後見契約を締結した(甲8)。平成25年5月9日,債権者の任意後見人Aの任意後見監督人として弁護士であるEを選任する裁判が確定し,同月13日その旨が登記された(甲1)。 Aは,同年6月24日,債権者を代理して,本件債権者代理人弁護士らに対し,本件申立てを委任した。 イ債務者は,債権者の長男であり,歯科医師である。 (2) 日その旨が登記された(甲1)。 Aは,同年6月24日,債権者を代理して,本件債権者代理人弁護士らに対し,本件申立てを委任した。 イ債務者は,債権者の長男であり,歯科医師である。 (2) 本件に至るまでの事実経過(証拠を掲げたものを除き争いなし)ア債権者の夫であるF(以下「亡F」という。)は,平成21年11月24日死亡した。 亡Fは,平成18年5月1日付けで自筆証書遺言を作成しており,その内容は,概ね,亡Fの遺産のうち,亡F名義の預貯金又は有価証券を長女であるBに,債権者名義の預貯金又は有価証券を債権者に,不動産のうち債権者の肩書住所地のマンションの区分所有権を債権者に,G所在の建物(以下「G建物」という。)の1階部分を債務者に,2階部分を債権者とBに相続させるというものであった。 イ平成22年6月1日,亡Fの遺言執行者として弁護士であるHが選任された。 亡Fの遺産の評価額は合計で2億6026万6126円であり,そのうち債権者の相続した遺産(G建物を除く)の評価額合計が1億6117万6598円,Bの相続した遺産(G建物を除く)の評価額合計が9567万9066円であった(甲5)。 ウ債権者及びBは,平成23年9月5日,債務者を相手方として,名古屋家庭裁判所に対し,G建物について遺産分割を求める調停を申し立てた。 エ債務者は,平成24年1月13日,債権者及びBを相手方として,名古屋家庭裁判所に対し,遺留分減殺を求める調停を申し立てた。 - 11 -オ債務者は,平成24年6月15日,債権者及びBを相手方として,名古屋家庭裁判所に対し,寄与分を定める処分を求める審判を申し立てた。 カ上記各調停等のうち,ウ及びオの事件については,平成24年11月27日,債務者 月15日,債権者及びBを相手方として,名古屋家庭裁判所に対し,寄与分を定める処分を求める審判を申し立てた。 カ上記各調停等のうち,ウ及びオの事件については,平成24年11月27日,債務者がG建物を取得するがその建物の評価額について合意していないことを確認する旨の内容の調停が成立したが,その余については合意に至らなかった。 (3) 債権者の介護施設への入所経緯(争いなし)債権者は,平成25年1月18日,肺炎球菌肺炎によりI病院に緊急入院し,同年2月6日,C病院に転院した。債権者は,平成25年4月2日,介護施設D(以下「D」という。)に入所した。 (4) 債権者に関する所見等ア債権者に関する平成24年7月13日の所見(甲23)債権者は,平成24年7月13日,J病院を受診した。同日実施された長谷川式スケールの検査結果は15点であり,MMSE検査の結果は12点であった。 イ債権者に関する平成25年2月の所見(甲9,24)C病院内科の担当医であるK医師は,平成25年2月28日,債権者の成年後見用診断書を作成した。同医師は,同診断書に,診断名として,「肺炎球菌肺炎,腰痛症,廃用症候群」と記載した上,判断能力についての意見として,「自己の財産を管理・処分することができない(後見相当)」の欄にチェックし,その判定の根拠として,「認知機能の低下を認める」と記載した。また,同医師は,診断書附票に,日常生活の状況について「自力で可能」の欄に,他人との意思疎通について「できる」の欄に,見当識障害について「見られるときが多い」の欄に,記憶障害について「程度は重い」の欄に,脳の萎縮または損傷について「部分的に見られる」の欄に,現在の状態の継続状態について「3か月未満」の- 12 -欄にチェックをした上,同月9日に実施さ に,記憶障害について「程度は重い」の欄に,脳の萎縮または損傷について「部分的に見られる」の欄に,現在の状態の継続状態について「3か月未満」の- 12 -欄にチェックをした上,同月9日に実施された長谷川式スケールの検査結果が9点である旨を記載した。 K医師は,平成25年8月29日付けの証明書において,同年2月9日ころの債権者の状態について,身の回りのことを行うことはある程度可能であり,意思疎通,意思表示は可能であるも,廊下を徘徊することが多く,自身の部屋が分からず看護師に部屋まで連れて行ってもらうことが頻回にあったとの所見を示している。 ウ債権者に関する平成25年3月2日の所見(乙1,2,4,6,7)Lクリニック脳神経外科のM医師は,平成25年3月2日,債務者の依頼により債権者を診察したところ,その際の債権者の様子について次のような所見を示した。 ① 債権者の服装は清潔で着こなしは整然としていた。 ② 債権者は,化粧をしており,髪を手入れしていた。 ③ 債権者は,独力で補装具なしで直立して歩行し,歩行に不安定感はなかった。 ④ 債権者は,生年月日,自宅住所,自宅電話番号を正確かつ迅速に回答することができた。 ⑤ 債権者は,書字,読字,時計の時刻読み,物品呼称,指認識を正常に遂行することができた。 また,同日実施された長谷川式スケールの検査結果は23点であり,頭部CT検査の結果,両側硬膜下水腫及び軽度脳萎縮が認められた。 M医師は,これらの所見をもとに,債権者を両側硬膜下水腫,記憶障害と診断した上,同人について,音声や文書による意思疎通は迅速であり,文書の読解も可能で正常な判断能力を有しているが,近接記憶や即時記憶に軽度障害がある状態であり,援助があれば重要な契約や高額な物品の購入・譲渡が遂行可能であるとの判断をし よる意思疎通は迅速であり,文書の読解も可能で正常な判断能力を有しているが,近接記憶や即時記憶に軽度障害がある状態であり,援助があれば重要な契約や高額な物品の購入・譲渡が遂行可能であるとの判断をした。 - 13 -エ債権者に関する平成25年6月8日の所見(乙6,7)M医師が債務者の依頼により平成25年6月8日実施した債権者の長谷川式スケールの検査結果は11点であり,MMSE検査の結果は16点であった。M医師は,債権者を認知症と診断し,その判断能力について,自己の財産を管理・処分することができない程度であるとの所見を示した。 (5) 債務者の行った行為ア債務者は,平成24年4月27日,G建物の敷地である債権者所有のGの各土地について,債権者の死亡を始期とする同日26日付け贈与を原因とする始期付所有権移転仮登記をした。 上記死因贈与契約の締結前に,債権者の登録印の変更手続が行われた(争いなし)。 イ債務者は,平成25年3月15日,名古屋法務局所属公証人NとともにC病院に入院中の債権者を訪問した。その際,債権者が亡F作成の平成18年5月1日付け自筆証書遺言による遺産分割方法の指定が債務者の遺留分を侵害していることを確認し,債権者が債務者に対し,債務者の遺留分の代償として,①O株ファンド3157万9929口(評価額は1455万8347円)及び②P債オープン293万8297口(評価額は322万2430円)の有価証券を譲渡することを内容とする和解契約公正証書及び債務者を債権者の任意後見受任者とすることを内容とする任意後見契約公正証書がそれぞれ作成された(甲5,13,乙3)。 上記和解契約及び任意後見契約締結の前に,債務者の妻を代理人として,債権者の登録印の変更手続が行われた(乙5)。 意後見契約公正証書がそれぞれ作成された(甲5,13,乙3)。 上記和解契約及び任意後見契約締結の前に,債務者の妻を代理人として,債権者の登録印の変更手続が行われた(乙5)。 債務者は,平成25年5月13日,上記①の有価証券を,同月17日上記②の有価証券を払い出した(甲14,15)。 - 14 -ウ債務者は,Dへ債権者の面会に度々訪れた。債務者による面会は,夜間に行われることが多くあり,宿泊を伴う面会を行ったことも複数回あった。 債権者は,同月20日以降,家族への依存傾向が強まり,深夜まで興奮して眠れなかったり,家族を探して他の施設利用者の居室のドアを杖で叩くなどの不穏行動を起こすようになった。 債務者は,同年5月26日,Dの施設長から債権者への面会を控えるよう求められた後の同年6月1日,債権者に面会し,また,同月8日には面会申請をすることなくM医師を債権者と面会させた。債務者の妻は,施設職員に対し,M医師のことを遠い親戚であると述べて虚偽の説明をした。

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