令和1(行ウ)174 懲戒処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年5月27日 大阪地方裁判所
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判決文本文21,385 文字)

令和3年5月27日判決言渡令和元年(行ウ)第174号懲戒処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求処分行政庁が令和元年6日6日付けで原告に対してした税理士業務の禁止の処分を取り消す。 第2 事案の概要税理士である原告は,東京都新宿区に本店を置く株式会社A(以下「A」という。)の平成25年4月から平成26年3月までの事業年度(以下「平成26年3月期」という。)の法人税の申告に当たり,Aの関与税理士であったB(横浜市に事務所を置く税理士。以下「B税理士」という。)からAの所得金額を圧縮 することの相談を受け,Aの代表取締役であった亡C(平成▲年▲月▲日死亡。 以下「亡C」という。)がAに対する貸付金債権のうち4億1300万円について生前に債権放棄していたにもかかわらず,亡Cの死後に債権放棄額を3億円に減額する旨の債権放棄通知書を作成しAの債務免除益を1億1300万円減少させることによって,その相談に応じたが,その行為は税理士法36条,45条1 項の規定に該当するとして,処分行政庁から,令和元年6月6日付けで,税理士業務の禁止の処分(以下「本件処分」という。)を受けた。 本件は,原告が,原告の行為は税理士法36条が禁止する脱税に関する「相談」に当たらないから本件処分は違法であるなどと主張して,被告を相手に,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め (1) 税理士法の定めア脱税相談等の禁止税理士法36条は,税理士は,不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行 税相談等の禁止税理士法36条は,税理士は,不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為をしてはならない旨 規定する。 イ懲戒の種類税理士法44条(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)は,税理士に対する懲戒処分は,次の3種とする旨規定する。 1号戒告 2号 1年以内の税理士業務の停止3号税理士業務の禁止ウ脱税相談等をした場合の懲戒税理士法45条1項(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)は,財務大臣は,税理士が,故意に,真正の事実に反して税務 代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は同法36条の規定に違反する行為をしたときは,1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる旨規定する。 (2) 平成20年財務省告示第104号(平成27年財務省告示第35号による改正前のもの〔乙8〕。以下「本件告示」という。)の定め ア量定の判断要素及び範囲本件告示Ⅰ(総則)第1は,税理士に対する懲戒処分の量定の判断に当たっては,本件告示Ⅱ(量定の考え方)に定める違反行為ごとの量定の考え方を基本としつつ,以下の点を総合的に勘案し,決定する旨規定する。 ① 行為の性質,態様,効果等 ② 税理士の行為の前後の態度 ③ 懲戒処分の処分歴④ 選択する処分が他の税理士及び社会に与える影響⑤ その他個別事情イ税理士に対する量定本件告示Ⅱ(量定の考え方)第1の1項は,税理士が税理士法45条1 項の規定に該当する行為をしたときの量定の判断要素及び量定の範囲は,次の区分に応じ,それぞれ次に掲げるところによる旨規定す 定本件告示Ⅱ(量定の考え方)第1の1項は,税理士が税理士法45条1 項の規定に該当する行為をしたときの量定の判断要素及び量定の範囲は,次の区分に応じ,それぞれ次に掲げるところによる旨規定する。 1号故意に,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は税理士法36条の規定に違反する行為をしたとき。 税理士の責任を問い得る不正所得金額等(国税通則法68条に規定 する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し,又は仮装したところの事実に基づく所得金額,課税価格その他これらに類するものをいう。以下同じ。)に応じて,6月以上1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止(2号略) 2 前提事実当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,次のとおりである。 (1) 当事者等ア原告 原告は,平成▲年▲月に,日本税理士会連合会の税理士名簿に登録を受けた税理士であり,平成26年当時,大阪市に事務所を置いていた(乙3)。 イ AAは,室内装飾用織物の卸及び設計,施工等を目的とする株式会社であり,昭和52年4月26日に設立され,東京都新宿区に本店を置いている (資本金の額4800万円)。Aの代表取締役は,平成17年3月16日 以後,亡Cが務めていたが,亡Cが平成▲年▲月▲日に死亡したため,同月26日以後は亡Cの子であるD(以下「D」という。)がAの代表取締役を務めている。(甲2,乙4の1・2)ウ B税理士B税理士は,平成26年当時,横浜市に事務所を置き,Aの関与税理士 であった(乙1)。 (2) 第1債権放棄通知書のデータファイルの作成等ア相続対策の受任原告は,平成 税理士B税理士は,平成26年当時,横浜市に事務所を置き,Aの関与税理士 であった(乙1)。 (2) 第1債権放棄通知書のデータファイルの作成等ア相続対策の受任原告は,平成26年1月,Dから,亡Cの余命が僅かであるとして,相続対策の依頼を受け,これを引き受けた(乙1)。 イ第1債権放棄通知書のデータファイルの作成原告は,亡Cが,Aを含む亡Cが実質的に経営する会社(以下「亡C経営会社」という。)に対する多額の貸付金債権を有していたことから,相続財産となるべき貸付金債権を減らすこととして,平成26年2月3日,Aの平成25年3月末現在の繰越欠損金の額が約4億1300万円であっ たことから,亡CがAに対する貸付金債権のうち4億1300万円について債務免除する旨の平成26年1月30日付けの債権放棄通知書(以下「第1債権放棄通知書」という。)のデータファイルを作成し,同年2月6日,同データファイルを印刷したものをDに交付した。 Dは,その頃,入院中の亡Cに対し,第1債権放棄通知書に押印するよ う依頼し,亡Cからこれらの押印を受けた。(乙1)。 (3) 亡Cの死亡亡Cは,平成▲年▲月▲日に死亡した。原告は,同日,Dから,亡Cが死亡したことの連絡を受けた。(乙1)。 (4) 第2債権放棄通知書のデータファイルの作成等 ア B税理士からの申入れ 原告は,平成26年4月9日,亡Cの相続に係る相続税の申告に関するDらとの打合せの際に,B税理士から,電話で,「Aの平成26年3月期において8000万円の利益が発生してしまうことが判明し,亡CのAに対する4億1300万円の貸付金債権の債務免除によってAに課税所得が生じてしまうが,これが生じないようにしてほしい。」旨言われ,これに 8000万円の利益が発生してしまうことが判明し,亡CのAに対する4億1300万円の貸付金債権の債務免除によってAに課税所得が生じてしまうが,これが生じないようにしてほしい。」旨言われ,これに 応じることとした。(乙1)イ第2債権放棄通知書のデータファイルの作成原告は,平成26年6月4日,亡CがAに対する貸付金債権のうち3億円について債務免除する旨の同年1月30日付けの債権放棄通知書(以下「第2債権放棄通知書」という。)のデータファイルを作成し,同年6月 12日,同データファイルを印刷したものをDに交付した上,第1債権放棄通知書を破棄するよう伝えた(乙1)。 ウ亡Cに係る相続税申告原告は,押印のある第2債権放棄通知書の写しを確認することなく,亡Cの相続に係るD及び亡Cの妻の相続税の申告書を作成し,平成26年1 2月11日,これを麻布税務署長に提出した。 (5) Aの法人税の申告及び更正処分等ア Aの法人税の申告Aは,平成26年5月28日,平成26年3月期の所得金額は0円であり,法人税額は0円(還付金額9020円)であるとして,平成26年3 月期の法人税の申告書を四谷税務署長に提出した。上記申告書に添付された損益計算書の「特別利益」の項には,「債務免除益」の額として3億円が記載されていた。また,上記申告書の税理士署名押印欄には,B税理士の氏名が記載されていた。(乙5)イ Aの法人税の更正処分に至る経緯等 東京国税局は,平成28年頃,亡Cに係る相続税申告について,税務調 査を実施した。東京国税局の調査担当者は,その頃,原告に対し,亡Cに係る相続税申告の内容について説明を求めた。上記税務調査の結果を踏まえて,亡Cの相続人らは,上記相続税申告に係る修正申告書を提出し, 査を実施した。東京国税局の調査担当者は,その頃,原告に対し,亡Cに係る相続税申告の内容について説明を求めた。上記税務調査の結果を踏まえて,亡Cの相続人らは,上記相続税申告に係る修正申告書を提出し,その後,重加算税が賦課決定された。 大阪国税局の担当者は,平成30年4月16日,大阪国税局において, 税理士法55条に基づき,原告に質問し,原告から回答を受けた(乙1)。 ウ Aの法人税の更正処分等四谷税務署長は,Aに対し,平成30年9月28日付けで,Aの平成26年3月期の法人税額等に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。これにより,Aが平成26年3月期に納付すべき法人税額は2071 万1500円に更正された。 上記各処分に係る通知書には,更正処分の理由として,要旨次のとおり記載されていた。 すなわち,Aは,亡Cが生前に債務免除した金額は4億1300万円であるにもかかわらず,亡Cが死亡した平成▲年▲月▲日より後の日付であ る同年6月4日に,3億円の債権放棄通知書が同年1月30日付けで作成されたかのように装い,債務免除益を過少に計上したものと認められるため,亡Cが債務免除した金額4億1300万円から平成26年3月期の申告で計上した債務免除益3億円を差し引いた金額1億1300万円を債務免除益として同期の所得金額に加算した旨記載されていた。(乙6) (6) 本件処分等ア本件処分処分行政庁は,令和元年6月6日,原告に対して本件処分をし,その頃,原告にこれを通知した。 本件処分に係る通知書には,処分理由として,要旨次のとおり記載され ていた。 すなわち,原告は,Aの平成26年3月期の法人税の申告に当たり,Aの関与税理士(B税理士)から,Aの所得金額を圧縮することの相談を受け,A 由として,要旨次のとおり記載され ていた。 すなわち,原告は,Aの平成26年3月期の法人税の申告に当たり,Aの関与税理士(B税理士)から,Aの所得金額を圧縮することの相談を受け,Aの所得金額を圧縮するため,亡CがAに対して有する貸付金債権のうち4億1300万円について債権放棄していたにもかかわらず,債務免除額を3億円に減額した債権放棄通知書を作成しAの債務免除益1億13 00万円を減少させることによって,その相談に応じたというものである旨記載されていた。(甲1)イ B税理士に対する税理士業務の禁止の処分処分行政庁は,令和2年1月17日付けでB税理士に対して税理士業務の禁止の処分をした(乙2の1・2)。 (7) 本件訴えの提起原告は,令和元年11月29日,本件訴えを提起した。 3 争点(1) 原告の行為が税理士法36条,45条1項の規定に該当するか否か,具体的には,原告の行為が「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免 れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為」に該当するか否か(2) 本件処分が,考慮すべき事情を考慮せず,過度に重い処分を課すものとして,比例原則に反し,処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用があるか否か 4 争点についての当事者の主張(1) 争点1(原告の行為が「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為」に該当するか否か)について(被告の主張) ア税理士法36条の「相談に応じ」に該当すること 税理士法36条の「相談に応じ」とは,税の逋脱の具体的方法等 その他これらに類似する行為」に該当するか否か)について(被告の主張) ア税理士法36条の「相談に応じ」に該当すること 税理士法36条の「相談に応じ」とは,税の逋脱の具体的方法等について相談相手となり,肯定的な回答をすることをいうものと解される。 これを本件についてみると,原告は,亡Cの死亡後の平成26年4月9日に,Dと面接した際,B税理士から平成26年3月期のAの法人税の申告において課税所得が発生しないようにしてほしい旨の依頼を受けたこと に対し,亡CのAに対する債務免除額4億1300万円を減額することを提案し,債務免除額を3億円とすることをDに持ち掛け,そうしてもらいたい旨の返答を受け,その後,亡Cの債務免除額を3億円とする虚偽の債権放棄通知書(第2債権放棄通知書)を同年1月30日付けで作成した。 以上のとおり,原告は,債務免除額を3億円に減額することをDに提案 してその承諾を受け,債務免除額を3億円とする虚偽の第2債権放棄通知書を作成しており,原告の行為は,税の逋脱の具体的方法等について相談相手となり,肯定的な回答をしたものとして,税理士法36条が禁止する「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ…ることにつき,…相談に応じ」たものといえる。 イ税理士法36条の「指示をし」に該当すること税理士法36条の「指示をし」とは,適正な納税義務の実現を回避させ,又は税の逋脱を図るための具体的な方法を教示することをいうものと解される。 原告の行為は,税の逋脱を図るための具体的な方法を教示するものとし て,税理士法36条が禁止する「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ…ることにつき,指示をし」たものといえる。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,B税理士から指示を とし て,税理士法36条が禁止する「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ…ることにつき,指示をし」たものといえる。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,B税理士から指示を受け,これを断り切れずに指示に応じたものであり,積極的にAの法人税の逋脱に関与したものではない旨主 張する。 しかし,上記ア及びイのとおり,原告が積極的に税の逋脱に関与したことは,税理士法36条の「相談に応じ」及び「指示をし」に該当するための要件ではない。 (イ) 原告は,関与税理士以外の他の税理士が,当該関与税理士から脱税に関する相談を受けることが,税理士法36条の「相談に応じ」に該当 することはあり得ない旨主張し,また,同条の「相談に応じ」に該当するのは,納税義務を負う依頼者から実在する事案について脱税に関する相談を受ける場合に限られる旨主張する。 しかし,上記アのとおり,納税義務を負う依頼者からの相談に応じる場合のみならず,他の税理士からの脱税に関する相談に応じることも, 同条の「相談に応じ」に含まれることは明らかである。 (ウ) 原告は,亡Cに係る相続税の調査及びAに対する法人税の調査の経緯からすると,原告が税理士としての責任を問われることはないから,本件処分は違法である旨主張する。 しかし,亡Cに係る相続税の申告内容は,本件処分の理由として掲げ られておらず,本件処分の適法性に係る判断に影響しないのであるから,亡Cに係る相続税の調査の経過を根拠として,原告が税理士としての責任を問われることはないとの上記主張は失当である。また,Aに対する法人税の調査の経過により本件処分の理由となった事実が変動するものではないから,同調査の経過を根拠とする上記主張も理由がない。 (原告の主張)ア税理士 張は失当である。また,Aに対する法人税の調査の経過により本件処分の理由となった事実が変動するものではないから,同調査の経過を根拠とする上記主張も理由がない。 (原告の主張)ア税理士は,納税義務者の信頼に応え,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという使命を負っているところ(税理士法1条参照),同法36条は税理士が上記の使命を果たすために設けられた規定であること,税理士が他の税理士から脱税に関する相談を受けたとしても, 当該他の税理士の判断のもとで税務申告書類の作成が行われるものであり, 相談を受けたこと自体によって納税義務の適正な実現は阻害されないことからすれば,同条が禁止する「相談に応じ」とは,納税義務を負う依頼者から実在する事案について脱税に関する相談を受けることと解すべきであり,税理士が他の税理士からの相談に応じることは,これに当たらないというべきである。 本件においては,原告は,亡CのAに対する債務免除額4億1300万円を減額するようにとのB税理士からの指示に従ったにすぎないものであり,納税義務を負う依頼者から実在する事案について脱税に関する相談を受けたものではないから,原告の行為は,税理士法36条の「相談に応じ」には該当しない。 イまた,原告は,B税理士から,Aに課税所得が発生しないようにするために亡Cがした債務免除の額を減らしてAの繰越欠損金を残してほしいと指示されたのであって,「相談」を受けていない。 ウさらに,原告は,東京国税局及びDの受任税理士(税理士法人)から,相続税の修正申告を行うよう指示されたが,その際,東京国税局から,亡 CのAに対する債務免除額については,亡Cの死後に変更された3億円のままとして修正申告をするよう指示された。このよう から,相続税の修正申告を行うよう指示されたが,その際,東京国税局から,亡 CのAに対する債務免除額については,亡Cの死後に変更された3億円のままとして修正申告をするよう指示された。このように,東京国税局は,亡CのAに対する債務免除額を3億円とすることについて承認したものである。 また,Aの法人税の逋脱についての税務調査において,四谷税務署の担 当者は,原告に対して,「E先生は,お構いなしです」と原告は責任を問われない旨の発言をしていた。それにもかかわらず,Aが四谷税務署から法人税の追徴の更正処分を受けた後,原告は,突如として,何ら税務上の契約関係もないAの法人税の申告について,懲戒処分を受ける可能性を知らされた。 このような税務調査の経緯からしても,原告は,亡Cに係る相続税の申 告についても,Aの法人税の申告についても,税理士としての責任を問われるべきではないから,本件処分は違法である。 (2) 争点2(本件処分が,考慮すべき事情を考慮せず,過度に重い処分を課すものとして,比例原則に反し,処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用があるか否か)について (原告の主張)本件処分は税理士業務の禁止の処分であり,税理士に対する懲戒処分の中で最も重い処分である。原告の知る限り,税理士法36条に違反する行為に対して,税理士業務の禁止の懲戒処分がされた例はない。 仮に原告の行為が税理士法36条に違反するとしても,原告が相談を受け た相手は税理士であるB税理士であって,第一次的には,相談を持ち掛けたB税理士自身が専門家としての判断を行っており,原告は従属的な立場にあったのであるから,一般の納税義務者から脱税に関する相談を受ける場合と比較して,納税義務の適正な実現が阻害される程度は低いというべき 税理士自身が専門家としての判断を行っており,原告は従属的な立場にあったのであるから,一般の納税義務者から脱税に関する相談を受ける場合と比較して,納税義務の適正な実現が阻害される程度は低いというべきである。 また,Aの法人税の申告は,Aの税務代理を受任していたB税理士が自己 の判断と責任において行ったことであるから,原告が責任を問われ得る不正所得金額等はない。 (被告の主張)税理士法36条に違反する行為をした場合の税理士に対する懲戒処分の量定の判断要素及び範囲については,本件告示により定められており,当該定 めは合理性を有するものである。 本件においては,原告の責任を問い得る不正所得金額等は,1億1300万円(亡CのAに対する債務免除額4億1300万円と第2債権放棄通知書に原告が記載した虚偽の債務免除額3億円との差額)と極めて高額である。 これに加え,原告の行為の性質及び態様は,租税に関する法令に規定された 納税義務の適正な実現を図ることを使命とする税理士である原告が,不正に 国税の賦課を免れることにつき,指示をし,相談に応じた上で,内容が虚偽であり,かつ,既に死亡している者を名義人とする第2債権放棄通知書を作成したというものであり,それ自体,税理士の使命に反する悪質な行為である。さらに,原告の指示に基づき,Aが1億3000万円もの多額の所得金額を圧縮し,平成26年3月期の法人税の申告をした結果,Aは法人税額2 071万1500円もの多額の納税を免れているのであり,上記行為の効果は重大である。そして,原告の行為が,申告納税制度の理念に違反し,税理士の使命に反する悪質かつ重大な行為であることに鑑みれば,他の税理士による同種の行為を防止するとともに,社会における税理士全体に対する信用を保護する観点からも, が,申告納税制度の理念に違反し,税理士の使命に反する悪質かつ重大な行為であることに鑑みれば,他の税理士による同種の行為を防止するとともに,社会における税理士全体に対する信用を保護する観点からも,原告に対しては厳重な処分が選択されるべきである。 以上によれば,本件において処分行政庁が原告に対して税理士業務の禁止の処分(本件処分)をしたことは,本件告示に照らし,相当性が認められ,本件処分をした処分行政庁に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(なお,原告は,大阪国税局の担当者が原告に質問を行った際に作成された質問応答記録書〔乙1。以下「本件記録書」という。〕は,違法収集証拠であって証拠能力を欠く旨主張する。しかし,後記2で説示するとおり,本件 記録書の証拠能力を否定すべきであるということはできない。)。 (1) 原告原告は,昭和59年に公認会計士名簿に登録を受け,昭和61年に公認会計士として開業し,平成元年に税理士としても開業した後,平成19年に大阪市内に税理士法人を設立してその代表社員に就任し,以後,大阪市内で税 理士として開業している(乙1)。 (2) 原告と亡Cとの関係原告は,平成12年頃,Aが東京国税局の査察調査を受けた際に納付計画等のアドバイスをしたことをきっかけに,亡Cと知り合ったが,それ以後,亡Cとの関わりはなかった(乙1)。 (3) Dからの相続対策の依頼 原告は,平成26年1月28日,Dから,電話で,「父(亡C)が末期がんであり,相続対策をしてもらえないか。」などと相談を受けた。原告は,同月29日,Dから,原告の事務所(大阪市内)において,「父 原告は,平成26年1月28日,Dから,電話で,「父(亡C)が末期がんであり,相続対策をしてもらえないか。」などと相談を受けた。原告は,同月29日,Dから,原告の事務所(大阪市内)において,「父(亡C)が余命2~3週間で,法人や個人の関与税理士であるB税理士に相談したが,相続税の申告書は作成できないと断られたので,以前お世話になったE税理 士にお願いしたい。」などと依頼され,これを引き受けることとした。(乙1)(4) 相続対策の方針原告は,以前にAに関与した際に,亡CがAを含む亡C経営会社に対する多額の貸付金債権を有していることを認識していたため,これを減らすこと を相続対策の軸の1つにしようと考えた。 そこで,原告は,平成26年1月29日,DからB税理士に依頼してもらい,B税理士から,亡CのAを含む亡C経営会社に対する各貸付金債権の額を記載した書面をファクシミリで受領した。これにより,原告は,亡CのAに対する貸付金債権の額が10億7886万2047円であること等を確認 した。また,原告は,同日頃,B税理士に電話し,Aの平成25年3月末現在の繰越欠損金の額が約4億1300万円であることを確認した。原告は,同月31日,B税理士から,Aは労働組合との関係で赤字決算にするという指示があった旨を記載した書面をファクシミリで受領した。(甲3,乙1)(5) 第1債権放棄通知書のデータファイルの作成等 ア第1債権放棄通知書のデータファイルの作成 原告は,検討の結果,亡Cの亡C経営会社に対する貸付金債権の一部について債務免除をすることとして(Aに対する貸付金債権については,Aの平成25年3月末現在の繰越欠損金の額の範囲で債務免除をすることとして),平成26年2月3日,原告の事務所のパソコンで,亡 一部について債務免除をすることとして(Aに対する貸付金債権については,Aの平成25年3月末現在の繰越欠損金の額の範囲で債務免除をすることとして),平成26年2月3日,原告の事務所のパソコンで,亡Cの亡C経営会社(4社)に対する貸付金債権の一部を債務免除する旨の債権放棄通 知書のデータファイルを作成し,Aに対する貸付金については,4億1300万円について債務免除する旨の債権放棄通知書(第1債権放棄通知書)のデータファイルを作成した(乙1)。 イ第1債権放棄通知書の交付等原告は,平成26年2月6日,Dに対し,Dの自宅において,上記アの 第1債権放棄通知書を含む各債権放棄通知書のデータファイルを印刷したものを交付し,亡Cに確認してもらってこれらに押印してもらうよう伝えた。 Dは,その頃,入院中の亡Cに対し,上記各債権放棄通知書に押印するよう依頼し,亡Cからこれらの押印を受けた。(乙1) (6) 亡Cの死亡亡Cは,平成▲年▲月▲日に死亡した。原告は,同日,Dから,亡Cが死亡したことの連絡を受けた。 (7) 第2債権放棄通知書のデータファイルの作成等ア B税理士からの申入れ 原告は,平成26年4月9日,亡Cの相続に係る相続税の申告のために必要な事項を聞き取る必要があったため,Dが代表取締役を務める会社(東京都内)において,D,亡Cの妻及び同人の弟の3人と打合せをした。打合せの際に,Dは,B税理士に電話をしたところ,B税理士は,原告に対し,①平成26年3月期において,Aに8000万円程度の利益が生じる ことが判明したため,亡CのAに対する4億1300万円の貸付金債権の 債務免除によって,Aに課税所得が生じてしまう旨,②Aに納税するための資金はないし,組合対策のため課税所得を生じさ ことが判明したため,亡CのAに対する4億1300万円の貸付金債権の 債務免除によって,Aに課税所得が生じてしまう旨,②Aに納税するための資金はないし,組合対策のため課税所得を生じさせないよう亡Cから指示を受けていたため,Aに課税所得が生じないようにしてほしい旨を依頼した。原告は,B税理士の話をDに伝えた上,Dに,B税理士がいう8000万円程度の利益は概算額であるので,念のため1億円ほどの利益が生 じるとみて,亡CのAに対する債務免除額を3億円に変更することを提案した。これに対し,Dは,そのとおりにしてもらいたい旨返答した。また,原告は,B税理士にもその旨を話したところ,B税理士はこれを了解した。 (乙1)イ第2債権放棄通知書のデータファイルの作成 原告は,平成26年6月4日,原告の事務所のパソコンで,亡CのAに対する貸付金債権のうち3億円を同年1月30日付けで債務免除する旨の債権放棄通知書(第2債権放棄通知書)のデータファイルを作成した。原告は,同年6月12日,Dに対し,Dが代表取締役を務める会社(東京都)において,第2債権放棄通知書のデータファイルを印刷したものを交付す るとともに,第1債権放棄通知書を破棄するよう伝えた。その際,Dは,第2債権放棄通知書に責任を持って押印すると述べた。 その後,原告は,Dと相続税の申告書作成の打合せで顔を合わせる都度,押印のある第2債権放棄通知書の写しを送るよう依頼したが,Dからは,保管場所が分からないので待ってほしいとの返答を受けるのみで,相続税 の申告書の作成期限が迫っても写しの送付を受けられなかった。そのため,原告は,押印のある第2債権放棄通知書の写しを確認することなく,亡Cの相続に係るD及び亡Cの妻の相続税の申告書を作成し,平成26年12 書の作成期限が迫っても写しの送付を受けられなかった。そのため,原告は,押印のある第2債権放棄通知書の写しを確認することなく,亡Cの相続に係るD及び亡Cの妻の相続税の申告書を作成し,平成26年12月11日,これを麻布税務署長に提出した。 ウ亡Cに係る相続税申告 原告は,平成27年1月,Dに対し,押印のある第2債権放棄通知書を 送付するよう再度依頼するとともに,参考として第2債権放棄通知書を再送したところ,Dから,亡C名義の印影が顕出された第2債権放棄通知書の写しの送付を受けた。(乙1)(8) Aの法人税の申告及び更正処分等ア Aの法人税の申告 Aは,平成26年5月28日,平成26年3月期の所得金額は0円であり,法人税額は0円(還付金額9020円)であるとして,平成26年3月期の法人税の申告書を四谷税務署長に提出した。上記申告書に添付された損益計算書の「特別利益」の項には,「債務免除益」の額として3億円が記載されていた。(乙5) イ Aの法人税の更正処分に至る経緯等東京国税局は,平成28年頃,亡Cに係る相続税申告について,税務調査を実施した。東京国税局の調査担当者は,その頃,原告に対し,亡Cに係る相続税申告の内容について説明を求めた。上記税務調査の結果を踏まえて,亡Cの相続人らは,上記相続税申告に係る修正申告書を提出し,そ の後,重加算税が賦課決定された。 大阪国税局の担当者は,平成30年4月16日,大阪国税局において,税理士法55条に基づき,原告に質問し,原告から回答を受けた(乙1)。 ウ Aの法人税の更正処分等その後,Aは,四谷税務署から,平成30年9月28日付けで,平成2 6年3月期の法人税額等に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分を受け,Aが平成 乙1)。 ウ Aの法人税の更正処分等その後,Aは,四谷税務署から,平成30年9月28日付けで,平成2 6年3月期の法人税額等に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分を受け,Aが平成26年3月期に納付すべき法人税額は2071万1500円に更正された(乙6)。 2 事実認定の補足説明(本件記録書の証拠能力について)原告は,平成30年4月16日,税理士法55条1項,57条1項に基づく 質問を受け,応答の要旨が記録された本件記録書に署名押印をしたが,署名押 印を拒絶できることを知らず,むしろ,大阪国税局の担当者の説明により,署名押印が義務であると考えて署名押印をしたものであるから,本件記録書は違法収集証拠として証拠能力を欠く旨主張する。 そこで検討すると,民事訴訟法は,自由心証主義を採用し(同法247条),一般に証拠能力を制限する規定を設けていないから,違法収集証拠であっても, それだけで直ちに証拠能力が否定されることはないが,違法性の程度,証拠価値,訴訟の性質等の事情を総合勘案して,当該証拠を採用することが訴訟上の信義則(同法2条)に反するといえるような場合には,当該証拠の証拠能力が例外的に否定されるものと解される。 そして,質問応答記録書は,国税庁の調査関係事務において必要がある場合 に,質問検査等の一環として,調査担当者が納税義務者等に対し質問し,それに対し納税義務者等から回答を受けた事項のうち,課税要件の充足性を確認する上で重要と認められる事項について,その事実関係の正確性を期するため,その要旨を調査担当者と納税義務者等との間の質問応答形式等で作成する行政文書である(甲10)。その上で,本件記録書は,その末尾に原告の署名押印が され,これに続いて,「以上のとおり,質問応答の要旨を記録し 査担当者と納税義務者等との間の質問応答形式等で作成する行政文書である(甲10)。その上で,本件記録書は,その末尾に原告の署名押印が され,これに続いて,「以上のとおり,質問応答の要旨を記録して,回答者に対し読み上げ,かつ,閲読させたところ,回答者は誤りのないことを確認し,署名押印した上,各頁に確認印を押印した。」と記載されているところ,原告に対する質問・検査を担当した大阪国税局の担当者が,原告に対して本件記録書への署名押印を強要したり,署名押印が義務であると誤信させる説明をしたりし たことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は理由がない(このことは,本件記録書の記載内容や原告の知識・経験等に照らしても,変わるものではない。なお,本件記録書の記載内容からは,原告が,平成30年4月16日当時反省の態度を示していれば寛大な処置がされると期待していたことや,Aの法人税の逋脱に関して責任を問われることはないと考えていたことがうか がわれるものの,これらのことは,原告の当時の主観的な認識・願望にすぎず, 本件記録書が違法収集証拠であることを基礎付ける事情とはいえない。)。そうすると,本件記録書が違法収集証拠として証拠能力を欠くということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 3 争点1(原告の行為が,「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免 れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為」に該当するか否か)について(1) 「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,…相談に応じ,」について税理士法は,税理士が,不正に国税若しくは地方税の賦課若し 1) 「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,…相談に応じ,」について税理士法は,税理士が,不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を 免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為をすることを禁止し(同法36条),税理士が同条に違反する行為をしたときは,財務大臣は,1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる旨定めるほか(同法45条1項),刑事罰として,3年以下の懲役又は200万円以下の罰金 を定めている(同法58条)。これは,税理士が,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念に沿って,納税義務者の信頼に応え,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする立場にあることから(同法1条参照),税理士が不正に租税の賦課・徴収を免れることにつき相談に応じる等の上記税理士の使命に 反する行為に及ぶことを禁止した上,これに違反した者は税理士として不適格であるとして,1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分という重い懲戒処分又は刑事罰をもって臨むものとする趣旨であると解される。そうであるところ,税理士が,不正に租税の賦課・徴収を免れ,又は不正に租税の還付を受けるための一般的な方法についての相談相手となるにと どまらず,そのための具体的な方法についての相談相手となり,これに対し て肯定的な回答をすることは,上記の税理士の使命に反する行為であるというべきであり,当該税理士は税理士として不適格であるといえる。そうすると,不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地 ことは,上記の税理士の使命に反する行為であるというべきであり,当該税理士は税理士として不適格であるといえる。そうすると,不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けるための具体的方法についての相談相手となり,肯定的な回答をすることは,税理士法36条が禁止する「不正に国税若しく は地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,…相談に応じ」に当たると解される。 (2) 本件について上記認定事実によれば,①原告は,Dの依頼を受けて亡Cの相続対策を引き受けて,その一環として,第1債権放棄通知書のデータファイルを作成し てその印刷したものをDに交付し,亡Cにその内容を確認させて押印させたのであるから,これにより亡CのAに対する貸付金債権のうち4億1300万円について債務免除の法的効果が生じていたにもかかわらず,②亡Cの死後,B税理士から,Aは納税するための資金がないので,課税所得が生じないようにしてほしいと依頼を受けたことに対し,亡CのAに対する債務免除 の額を3億円に変更することを提案したというのである。原告の上記②の行為は,Aが法人税の納税義務を免れるための相談を受けたのに対し,亡CがAに対して生前にしていた債務免除額を減額させ,Aの債務免除益を減額させることを装い,Aが法人税の納税義務を免れることを提案したものといえる。そうすると,原告は,Aが法人税の賦課を免れる具体的方法についての 相談相手となり,肯定的な回答をしたといえる。 したがって,原告の上記②の行為は,税理士法36条の「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,…相談に応じ」に当たる。 (3) 原告 したがって,原告の上記②の行為は,税理士法36条の「不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,…相談に応じ」に当たる。 (3) 原告の主張について ア原告は,①税理士が他の税理士から脱税に関する相談を受けたとしても, 当該他の税理士の判断のもとで税務申告書類の作成が行われるものであり,相談を受けたこと自体によって納税義務の適正な実現は阻害されないこと等からすれば,税理士法36条が禁止する脱税に関する「相談」とは,納税義務を負う依頼者から実在する事案について脱税に関する相談を受けることと解すべきである,②原告は,B税理士から,Aに課税所得が発生し ないようにするために亡Cがした債務免除の金額を減らして繰越欠損金を残してほしいと指示されたのであって,税理士法36条にいう「相談」を受けたものではない旨主張する。 しかし,上記①については,税理士法36条は,その文理上,「相談」の相手方について特に限定を設けていない上,税理士が直接の依頼者では ない者や他の税理士から脱税に関する相談を受ける場合であっても,相談の内容が一般的なものにとどまらず,同条が禁止する相談に至った場合,すなわち,税の逋脱の具体的方法について相談相手となり,肯定的な回答をする行為に至った場合には,当該行為は上記の税理士の使命に反する行為であり,当該税理士は税理士として不適格であるというべきである。こ れらのことからすると,同条は「相談」の相手方を納税義務を負う依頼者に限定していると解することはできないし,また,同条の「相談」の相手方には他の税理士を含まないと解することはできない。(なお,Aの法人税の申告についての関与税理士であったB税理士としては,Aの平成26年3月期におけ することはできないし,また,同条の「相談」の相手方には他の税理士を含まないと解することはできない。(なお,Aの法人税の申告についての関与税理士であったB税理士としては,Aの平成26年3月期における法人税の納税義務を免れるためには,亡Cの相続に係る 相続税の申告内容とAの法人税の申告内容とが矛盾しないように,相続税の申告に関与していた原告の協力を得る必要があったのであるから,原告がAの平成26年3月期の法人税の逋脱に寄与した程度は小さくない。したがって,相談の相手方が税理士であるB税理士であったからといって,原告の行為によって納税義務の適正な実現が阻害されるおそれがなかった ということはできない。) また,上記②については,上記(2)で認定・説示したとおり,原告の行為は,B税理士から相談を受けて,Aの債務免除益の減額を装う具体的方法を提案したというものであるから,B税理士から指示を受けてこれに従ったとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,税務調査の経緯に関し,東京国税局が,亡CのAに対する債務免除額を3億円とすることについて承認し,また,四谷税務署の担当者が,原告は責任は問われない旨の発言をしていた旨主張する。 しかし,これらの事実は,原告がB税理士からの相談に応じた後の事情であるから,原告の行為が税理士法36条の「相談に応じ」に該当すると の上記判断を左右するものではない上,これらの事実を認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上のとおり,原告の行為は,税理士法36条が禁止する「不正に国税若 しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ…ることにつき,指示をし」たものといえる。 ことができない。 (4) 小括以上のとおり,原告の行為は,税理士法36条が禁止する「不正に国税若 しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ…ることにつき,指示をし」たものといえる。 4 争点2(本件処分が,考慮すべき事情を考慮せず,過度に重い処分を課すものとして,比例原則に反し,処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用があるか否か)について (1) 判断枠組み税理士法は,税理士に対する懲戒処分は,戒告,1年以内の税理士業務の停止及び税理士業務の禁止の3種とすると定め(同法44条),税理士が,同法36条の規定に違反する行為をしたときは,財務大臣は,1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができるとして(同 法45条),幅のある処分を定めている。しかし,同法は,税理士について 懲戒事由がある場合において,懲戒処分をすべきか否か,懲戒処分をするとしてどのような処分を選択すべきかについて基準を定めていない。このことを踏まえると,上記の点についての判断は,当該行為の性質,態様,結果,影響等のほか,当該税理士の上記行為の前後の態度,懲戒処分の処分歴,選択する処分が他の税理士及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮してさ れるべきものであり,この判断は,懲戒権者である財務大臣の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当である。したがって,財務大臣の合理的な裁量権の行使としての懲戒処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に限り,違法となるものというべきである。 ところで,税理士に対する懲戒処分の量定の判断要素及び範囲については,本件告示が定められているところ(前記関係法令等の定め(2)),本件告示は,税理士が税 法となるものというべきである。 ところで,税理士に対する懲戒処分の量定の判断要素及び範囲については,本件告示が定められているところ(前記関係法令等の定め(2)),本件告示は,税理士が税理士法36条の規定に違反する行為をしたときについては,①税理士の責任を問い得る不正所得金額等に応じて,6月以上1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止を基本としつつ,②㋐行為の性質,態様, 効果等,㋑税理士の行為の前後の態度,㋒懲戒処分の処分歴,㋓選択する処分が他の税理士及び社会に与える影響,㋔その他個別事情を総合的に勘案し,決定する旨規定する。税理士に対する懲戒処分に関する判断に当たって考慮されるべき要素は上記のとおりであることに照らせば,本件告示の上記の考え方は,合理性を有するものというべきである。 (2) 本件についてこれを本件についてみると,次のとおりであるということができる。 ア税理士の責任を問い得る不正所得金額等(上記(1)の考慮要素①)(ア) 上記3(2)で認定したとおり,原告は,亡CのAに対する貸付金債権のうち4億1300万円について債務免除の法的効果が生じていたにも かかわらず,亡Cの死後,B税理士から,Aは納税するための資金がな いので課税所得が生じないようにしてほしい旨の依頼を受けたことに対し,亡CのAに対する債務免除の額を3億円に変更することを提案した。 そして,前記前提事実(4)イ,(5)ア・ウのとおり,Aは,平成26年3月期の法人税の申告において,第2債権放棄通知書に記載された金額どおり,Aの債務免除益(亡CのAに対する貸付金債権の放棄額)を3億 円として申告することにより,所得金額を1億1300万円不正に圧縮して申告し,その後,更正処分を受けた。そうすると,Aの平成26 おり,Aの債務免除益(亡CのAに対する貸付金債権の放棄額)を3億 円として申告することにより,所得金額を1億1300万円不正に圧縮して申告し,その後,更正処分を受けた。そうすると,Aの平成26年3月期の法人税の申告において,原告の責任を問い得る不正所得金額等は1億1300万円というべきであって,極めて多額であるといえる。 (イ) 原告は,Aの平成26年3月期の法人税の申告は,Aの税務代理を 受任していたB税理士が自己の判断と責任において行ったことであるから,原告がAの法人税の逋脱について責任を問われ得る不正所得金額等はない旨主張する。 しかし,上記3(3)アで説示したとおり,税理士法36条の「相談」の相手方には他の税理士を含まないと解することはできないところ,原告 は同条が禁止する脱税に関する「相談に応じ」たものであるし,原告の提案どおりにAは所得金額を不正に圧縮したのであるから,原告がAの法人税の逋脱について責任を問われ得る不正所得金額等はないということはできない。そして,本件について,原告の責任を問い得る不正所得金額等は,Aが不正に圧縮した所得金額である1億1300万円である というべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ行為の性質,態様,効果等(上記(1)の考慮要素②㋐)原告の行為は,税理士である原告が,Aの法人税の申告に関してAに課税所得が出ないようにしてほしいとのB税理士からの依頼に応じ,亡Cの Aに対する債務免除額を亡Cの死後に減額して債務免除益の減額を装うと いう具体的方法を提案したというものであって,それ自体が悪質な行為である上,当該行為に関連して原告がデータファイルを作成した第2債権放棄通知書は,亡Cが既に死亡していることを原告が認識した上で いう具体的方法を提案したというものであって,それ自体が悪質な行為である上,当該行為に関連して原告がデータファイルを作成した第2債権放棄通知書は,亡Cが既に死亡していることを原告が認識した上で死者である亡Cの名義を冒用したものであるから,原告の行為は,納税義務の適正な実現を図るという税理士の使命に反する悪質性の高い行為であるといえ る。 また,上記認定事実(8)のとおり,原告の行為によりAが免れた法人税額は2071万1500円と多額であるから,原告の行為は,重大な効果を及ぼしたものであるといえる。 ウ選択する処分が他の税理士及び社会に与える影響(上記(1)の考慮要素② ㋓)上記イのとおり,原告の行為が税理士の使命に反する悪質かつ重大な行為であることに鑑みれば,他の税理士による同種の行為を防止するとともに社会における税理士に対する信用を保護する観点からも,原告に対しては厳重な処分が選択されるべきであるといえる。 エその他個別事情(上記(1)の考慮要素②㋔)原告は,税理士業務の禁止の処分は税理士に対する懲戒処分の中で最も重い処分であるところ,原告の知る限り,税理士法36条に違反する行為に対して税理士業務の禁止の処分がされた例はなく,本件で,原告が相談を受けた相手が税理士であるB税理士であり,原告は従属的な立場にあっ たから,一般の納税義務者から脱税に関する相談を受ける場合と比較して,納税義務の適正な実現が阻害される程度は低い旨主張する。 しかし,上記3(2)で認定したとおり,原告は,B税理士からの相談に応じて,亡CのAに対する債務免除額を減額し,Aの債務免除益を減額することを装うことを自ら提案したのであるから,原告は従属的な立場にあっ たということはできず,むしろ,上記3(3)アで説示し 応じて,亡CのAに対する債務免除額を減額し,Aの債務免除益を減額することを装うことを自ら提案したのであるから,原告は従属的な立場にあっ たということはできず,むしろ,上記3(3)アで説示したとおり,原告がA の平成26年3月期の法人税の逋脱に寄与した程度は小さくないといえるから,原告の行為によって納税義務の適正な実現が阻害される程度は低かったなどということはできない。なお,前記前提事実(6)イのとおり,B税理士に対しては税理士業務の禁止の処分がされているところ,原告の行為の性質・態様の悪質さ,その効果の重大さ等は上記のとおりであるから, 原告に対して税理士業務の禁止の処分をすることが,B税理士に対してした処分と均衡を失するということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 オ総合勘案以上のとおり,原告の責任を問い得る不正所得金額等は極めて多額であ り,原告の行為の性質・態様は悪質であって,その効果も重大であることに加え,他の税理士及び社会に与える影響も勘案すれば,原告に対しては厳重な処分が選択されるべきである。そうすると,原告には懲戒処分歴がないという事情(上記(1)の考慮事情②㋒)を考慮したとしても,処分行政庁が原告に対して税理士業務の禁止の処分をしたことが,社会観念上著し く妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 (3) 小括以上のとおり,本件処分が,考慮すべき事情を考慮せず,過度に重い処分を課すものとして,比例原則に反し,処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し, 又はその濫用がある,ということはできない。 5 まとめ以上によれば,本件処分は適法である。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄 処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し、又はその濫用がある、ということはできない。 5 まとめ以上によれば、本件処分は適法である。 第4 結論よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官山田慎悟 裁判官宮端謙一は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官山地修

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