主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の本件各義務付けの訴えをいずれも却下する。 3 被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要(以下、用語及び略語は、特に断らない限り、原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は、都市公園(本件公園)において屋台(本件屋台)を営む屋台営業者の子である被控訴人が、その営業を承継するため、福岡市屋台基本条例(本件条例)7条等に基づき、福岡市長に対して公園占用許可申請(本件公園占用許可申請)を、博多区長に対して公園内行為許可申請(本件公園内行為許可申請) をしたところ、本件各申請についていずれも不許可とする処分(本件各処分)がされたことから、被控訴人が、控訴人に対し、本件各処分の取消しを求めるとともに、本件各申請に基づく各許可処分の義務付けを求めた事案である。 原審は、許可要件(条例施行日生計維持要件)についての本件条例の定め(本件規定)は合憲であるが、被控訴人は同要件を充足しており、各処分行政 庁はその認定判断を誤ったもので、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり違法であるとして、本件各処分を取り消し、控訴人(各処分行政庁)に対し、本件各申請に基づく許可処分をするよう義務付けたところ、これを不服として、控訴人が控訴した。 2 関係法令等、前提事実、本件の主な争点及び争点に関する当事者の主張は、 原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2ないし5のとおりであ るから、これを引用する。ただし、原判決57頁9行目の「ただし」から11行目末尾までを「福岡市公園条例に基づく許可についての市長の権 由」欄の「第2 事案の概要」の2ないし5のとおりであ るから、これを引用する。ただし、原判決57頁9行目の「ただし」から11行目末尾までを「福岡市公園条例に基づく許可についての市長の権限は、福岡市区長事務委任規則2条55号により、区長へ委任されている。」と改める。 第3 当裁判所の判断当裁判所は、被控訴人は本件条例施行日において本件屋台の屋台営業従事者 であったとは認められず、条例施行日生計維持要件を満たさないから、本件各処分はいずれも適法であり、したがって、本件各義務付けの訴えはいずれも訴訟要件を欠く不適法なものであり、本件各取消請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は以下のとおり説示するほか、原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1並びに2の(1)及び(4)ウのとおりであるから、 これを引用する。ただし、原判決30頁11行目の「認定事実によれば、」を削り、同行目の「認定事実オ(ク)」を「前提事実第3の3(8)」と改め、31頁25行目の「認定事実によれば、」を削り、32頁2行目の「得ていたのであり」から4、5行目の「(認定事実エ(ウ))。」までを「得ていたものである(証人A1〔14、15頁〕)。」と改め、6、7行目の「(認定事実ウ (キ))」を削る。 1 被控訴人が、本件条例施行日である平成25年9月1日の時点において、当時a付近で営業していた本件屋台の屋台営業従事者であったとの事実に沿う直接証拠は、陳述書及び人証のみであり、その内容は次のとおりである。 (1) 被控訴人の陳述書(甲56、68)及び原審及び当審での本人尋問におけ る供述(以下、これらを総称するときは「被控訴人供述等」という。)平成23年8月頃、ビジネスホテルでのアルバイトのかたわら、本件屋台で働き始め、 、68)及び原審及び当審での本人尋問におけ る供述(以下、これらを総称するときは「被控訴人供述等」という。)平成23年8月頃、ビジネスホテルでのアルバイトのかたわら、本件屋台で働き始め、平成25年9月の本件条例施行日も働いていた。金曜日、土曜日及び祝日の前日ほか、ゴールデンウィーク、盆正月の大型連休期間に働いており、勤務時間帯は、午後5時ないし8時半頃から夜中2、3時頃までで あった。担当業務は、食器洗い、調理の補助、屋台や食器類の片付け、A1 の娘の子守り等であった、本件屋台での稼働による収入は、日当1万円(手渡し)で、月8万円ないし12万円程度、平均して月10万円程度であった。 平成24年12月14日付けで本件屋台が発行した領収証(甲45-1)は被控訴人が書いたものである。 (2) 原審証人A1の陳述書(甲57)及び証言(以下、これらを総称するとき は「A1証言等」という。)昭和56年に本件屋台を開店した。平成23年8月頃から、被控訴人に本件屋台の手伝いをしてもらうようになったが、被控訴人は仕事の覚えが速く、すぐに開店業務や閉店業務まで任せられるようになり、子守りもしてもらっていた。被控訴人には、給料として1日1万円を手渡ししていたが、週2回 は働いてもらっていたので、平均すると月8万円くらい払っていた。 (3) 原審証人A2の陳述書(甲50)及び証言昭和60年頃から本件屋台に客として通っており、平成24年12月頃も月2回は通っていたが、遅くともその頃には、被控訴人は本件屋台で働いていたと思う。本件屋台がa付近にあった頃も、本件屋台で被控訴人と複数回 会ったことがある。平成25年にも被控訴人を見かけたことがある。 (4) 原審証人A3の陳述書(甲58)及び証言昭和56年頃にA1 本件屋台がa付近にあった頃も、本件屋台で被控訴人と複数回 会ったことがある。平成25年にも被控訴人を見かけたことがある。 (4) 原審証人A3の陳述書(甲58)及び証言昭和56年頃にA1が本件屋台を開店した際、屋台のペンキ塗りを手伝った。その後も本件屋台の仕事を手伝ったり、客として通ったりしていた。被控訴人がいつ頃から本件屋台で働くようになったか、明確には記憶していな いが、平成25年9月1日の時点で働いていたことは間違いない。 (5) 原審証人A4の陳述書(甲51)及び証言平成24年8月頃、a付近の本件屋台を訪れたが、被控訴人とA1が本件屋台の営業をしていた。平成25年1月にも本件屋台を訪れたが、その時も被控訴人はいた。 (6) 原審及び当審証人A5の陳述書(甲59、70)及び証言 平成20年頃から、a付近にあった屋台「B」で働いていたが、本件屋台がa付近にあった平成23年頃から、被控訴人が本件屋台で働くのをみかけるようになった。「B」では、週3日、午後5時前から午前4時頃まで店に出ていたが、被控訴人も、遅くとも午後8時から閉店まで本件屋台で働いていた。 (7) 原審証人A6の陳述書(甲49)及び証言平成23年7月頃から客として本件屋台に通っているが、通い始めて間もなくの頃から、本件屋台で若い男性が働いていた。後にその男性が被控訴人であると知った。被控訴人は、平成30年頃までは、店の奥で仕込み等をしていたのではないかと思う。 (8) その他、C(甲8-2、62)、D(甲8-3)、E(甲8-6)、F(甲15)、G(甲18-2)、H(甲18-3)、I(甲49)、J(甲52)、K(甲53)、L(甲54)、M(甲55)、N(甲60)、O(甲61)及びP(甲63)の各陳述書ないし E(甲8-6)、F(甲15)、G(甲18-2)、H(甲18-3)、I(甲49)、J(甲52)、K(甲53)、L(甲54)、M(甲55)、N(甲60)、O(甲61)及びP(甲63)の各陳述書ないし嘆願書は、いずれも、被控訴人が本件条例施行日において本件屋台で稼働していた旨を述べている(なお、 当審証人A7の陳述書(甲18-4、乙43)も同旨を述べるものであったが、同人は、新たな陳述書(乙42)及び証言において、「陳述書(甲18-4、乙43)の内容は、事実と異なるものとなっている。本件条例施行日の当時、どの屋台で誰が営業していたかは、自分は分からない。」旨を述べて、従前の陳述書の内容を否定した。)。 2(1) そこで検討するに、上記1の各証拠のうち、被控訴人供述等及びA1証言等については、内容それ自体に不自然な点を指摘することができる。 ア被控訴人は、本件条令施行日の当時、本件屋台がa付近にあった時期に、電源をどこから得ていたか、排水をどのように処理していたかを全く説明できない(当審被控訴人本人調書18、19頁)。 イ A1は、確定申告の際、被控訴人に支払った給料を経費として計上しな かった旨証言している(原審証人A1調書2頁)。 (2) また、被控訴人が本件条例施行日において本件屋台の屋台営業従事者であったとの事実については、被控訴人供述等で言及された領収証(甲45-1)を除き、裏付けとなる客観的証拠はない。かえって、同事実が存しないことをうかがわせる事情を以下のとおり指摘することができる。 ア証拠(乙10-3)によれば、A1は、平成25年7月11日、控訴人の職員と面談した際、本件屋台に従業員はいない旨を説明したことが認められる。 イ A1が平成25年10月30日付けで中央区長に提出 証拠(乙10-3)によれば、A1は、平成25年7月11日、控訴人の職員と面談した際、本件屋台に従業員はいない旨を説明したことが認められる。 イ A1が平成25年10月30日付けで中央区長に提出した屋台営業届出書(甲2)では、屋台営業者の欄にA1が記載されるとともに、同人の写 真が貼付され、屋台営業従事者の欄には、当時のA1の妻の名前が記載されるとともに、同人の写真が貼付されているが、被控訴人に関する記載はない。 ウ証拠(乙25、27、28、31、37、38、原審証人A8)によれば、平成25年4月から平成27年3月までの間、控訴人の職員が、屋台 の見回りをした際に、本件屋台で被控訴人が就労しているのを見たことはなかったことが認められる。 エ証拠(乙26、原審証人A9)によれば、被控訴人は、令和2年9月14日、控訴人の職員と本件屋台の営業承継について面談した際、本件屋台条例施行日の頃の稼働状況について、「生計をたてていたかと言われると、 そうではない。」、「年末年始やお盆休みとか、ゴールデンウィークに手伝いのアルバイトのような感じだった。」などと話したことが認められる。 (3) そして、被控訴人が本件条例施行日において本件屋台で稼働していなかったことを述べる証言等として、次のものがある。 ア当審証人A10の陳述書(乙32、46)及び証言では、「平成18年 頃から平成28年4月頃まで、a付近で屋台「Q」の営業をしていた。 「Q」と本件屋台は隣同士で営業していたが、被控訴人が本件屋台で働いているのを見たことは一度もない。」旨が述べられている。 イ当審証人A11の陳述書(乙35)及び証言では、「平成3年から平成27年10月まで、a付近の屋台「R」で従業員として働いていたが、その間、被控訴人 見たことは一度もない。」旨が述べられている。 イ当審証人A11の陳述書(乙35)及び証言では、「平成3年から平成27年10月まで、a付近の屋台「R」で従業員として働いていたが、その間、被控訴人を見たことは一度もない。」旨が述べられている。 ウ S(乙33)、T(乙34)及びU(乙36)の各陳述書では、それぞれ、「本件条例施行日の当時、a付近の屋台で稼働していたが、被控訴人は本件屋台で働いていなかった。」旨が述べられている。 3 上記2で検討したとおりであるから、上記1の各証拠は、内容に不自然な点があり、裏付けに乏しく、反対趣旨の証言等にも照らして、たやすく採用でき ない。他に、被控訴人が本件条例施行日において本件屋台の屋台営業従事者であったとの事実を認めるに足りる証拠はない。 4 以上のとおりであるから、被控訴人が条例施行日生計維持要件を満たしているとはいえない。 そうすると、被控訴人は、本件条例3条9号にいう公園占用等許可、すなわ ち本件に即していえば都市公園法6条1項による公園の占用の許可及び福岡市公園条例4条1項による公園における行為の許可について、本件条例16条、9条1項2号ア(本件規定)に所定の要件を欠くものであるから、本件各処分は、いずれも裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえず、適法である。したがって、本件各処分の取消請求はいずれも理由がなく、棄却すべ きものである。 また、本件各義務付けの訴えは、行訴法3条6項2号の申請型義務付けの訴えであるところ、申請に係る処分がされないことを前提とする同号に基づく訴えは、同法37条の3第1項2号により、当該処分が取り消されるべきものであるか、又は無効若しくは不存在である場合に限り、提起することができると されているところ、本件各処 とする同号に基づく訴えは、同法37条の3第1項2号により、当該処分が取り消されるべきものであるか、又は無効若しくは不存在である場合に限り、提起することができるとされているところ、本件各処分はいずれも適法であるから、訴訟要件を満たさないこととなり、いずれも不適法却下を免れない。 第4 結論 よって、原判決は失当であるから取り消し、被控訴人の本件各義務付けの訴えをいずれも却下し、その余の請求はいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官 岡田健 裁判官 岸本寛成 裁判官 佐藤道恵
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