平成29(行ウ)42 航空機運航差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月20日 横浜地方裁判所
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判決文本文115,488 文字)

主文 1 別紙2(死亡原告目録)記載の原告らを除く原告らの本件各訴えのうち次の部分を却下する。 ⑴ アメリカ合衆国軍隊の航空機に関する差止請求に係る部分⑵ 一定の航空機騒音を被ることのない権利の確認請求に係る部分 ⑶ 別紙3(転居原告目録)記載の原告らによる、自衛隊の使用する航空機に関する差止請求に係る部分 2 別紙2(死亡原告目録)記載の原告らを除く原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 本件訴訟のうち別紙2(死亡原告目録)記載の原告らの請求に関する 部分は、同別紙記載の死亡日に、同原告らの死亡により終了した。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1章請求及び事案の概要第1 請求 1 防衛大臣は、厚木飛行場において、自衛隊の使用する航空機(以下「自衛隊機」という。)について、次に掲げる運航をさせてはならない。 ⑴ 毎日午後8時から翌日午前8時までの間の運航⑵ 訓練のための運航⑶ 原告らの居住地におけるそれまでの1年間の航空機騒音(自衛隊機、アメ リカ合衆国(以下「米国」という。)軍隊(以下「米軍」という。)の航空機(以下「米軍機」という。)その他の航空機によるものを含む。)が、被告が防衛施設について用いている算定方式(以下「施設庁方式」という。)によるWECPNLの値(以下「W値」といい、具体的なW値を表す場合には「75W」などということがある。)で75を超えることとなる当該自衛隊 機の運航 2 防衛大臣は、厚木飛行場において、米軍機について、次に掲げる運航のための使用をさせてはならない。 ⑴ 毎日午後8時から翌日午前8時までの間の運航⑵ 米軍の専用する施設及び区域への出入りのため以外の運航⑶ 原告らの居住地におけるそれまでの1年間の航空 運航のための使用をさせてはならない。 ⑴ 毎日午後8時から翌日午前8時までの間の運航⑵ 米軍の専用する施設及び区域への出入りのため以外の運航⑶ 原告らの居住地におけるそれまでの1年間の航空機騒音(自衛隊機、米軍 機その他の航空機によるものを含む。)が、施設庁方式によるW値で75を超えることとなる当該米軍機の運航 3 原告らが被告に対し、厚木飛行場に関する被告の施策により施設庁方式によるW値が原告らの居住地において75を超えることとなる航空機騒音を被ることのない権利を有することを確認する。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、海上自衛隊及びアメリカ合衆国海軍(以下「米海軍」という。)が使用する厚木海軍飛行場(以下では、通称名である「厚木基地」ということがある。)の周辺地域である神奈川県大和市、同綾瀬市、同相模原市、同座間市、 同藤沢市、同海老名市、同茅ヶ崎市及び東京都町田市に居住している又は居住していた原告らが、厚木基地を離着陸する航空機の騒音等に関し、以下の各請求をする事案である。これらの請求は単純併合である。 ⑴ 原告ら1371名(第1、第2、第3事件の原告合計数)が、厚木基地を離着陸する航空機の発する騒音により身体的被害及び睡眠妨害、生活妨害等 の精神的被害を受けているとして、自衛隊機の運航に関する権限を有する防衛大臣の属する被告に対し、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の4に基づき、同法3条7項所定の差止めの訴えとして、厚木基地の一部に被告が設置した海上自衛隊の飛行場(以下「厚木飛行場」という。)における自衛隊機の一定の態様による運航の差止め(以下、この訴えを「本件 自衛隊機差止めの訴え」という。)及び米軍機の一定の態様による運航のために、厚木飛行場を使用させるこ 飛行場」という。)における自衛隊機の一定の態様による運航の差止め(以下、この訴えを「本件 自衛隊機差止めの訴え」という。)及び米軍機の一定の態様による運航のために、厚木飛行場を使用させることの差止め(以下、この訴えを「本件米軍機差止めの訴え」といい、本件自衛隊機差止めの訴えと併せて「本件差止めの訴え」という。)を求めるもの(請求の趣旨第1項及び第2項)。 ⑵ 原告ら1371名が、厚木飛行場を設置し、管理している被告に対し、行訴法に規定する公法上の法律関係に関する確認の訴え(実質的当事者訴訟) として、厚木飛行場に関する被告の施策により施設庁方式によるW値が原告らの居住地において75を超えることとなる航空機騒音を被ることのない権利を有することの確認を求めるもの(請求の趣旨第3項。以下「本件確認の訴え」という。)。 2 関連事件 厚木基地の周辺住民は、昭和51年以降4次にわたり、厚木基地を離着陸する航空機による騒音等の被害を受けているとして、被告に対し損害賠償等を求める訴えを提起してきた(以下、これらの訴訟を総称して「厚木基地騒音訴訟」という。)。原告らを含む厚木基地の周辺住民は、平成29年8月4日、厚木飛行場の使用による一定の騒音の到達禁止や損害賠償等を求める民事訴訟を提 起し、同年12月1日、平成30年5月1日にそれぞれ追加提訴をしており(以下、これらの訴えを「5次民事訴訟」という。)、5次民事訴訟は、本件とともに当裁判所において並行して審理され、判決も同日に言い渡される。 第2章前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠(枝番が付されていないものは枝番全てを含む趣旨である。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認 められる事実)等第1 関係法令等の定め別紙4(関係法令等の定め)のと 後掲各証拠(枝番が付されていないものは枝番全てを含む趣旨である。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認 められる事実)等第1 関係法令等の定め別紙4(関係法令等の定め)のとおり。 第2 厚木基地について 1 厚木基地の現況 ⑴ 厚木基地の施設等厚木基地は、神奈川県大和市及び同綾瀬市に位置し、その面積は約505万6000㎡である。その主な施設として、長さ2438m、幅45m、オーバーラン南北各304mの滑走路、延長6764m、幅22mの誘導路、面積約15万2680㎡のエプロン(駐機場)、格納庫施設、管制塔施設等がある。 厚木基地は、現在、以下の3つの部分から構成されている(このようになった経緯は、2で後述する。)。 ① 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」 (昭和35年条約第7号。以下「日米地位協定」という。)2条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供されていたが、使用転換され、海上自衛隊が管轄管理する施設及び区域であり、米軍が同条4項(b)に基づき一定の期間を限って使用を許される施設及び区域(別紙5(厚木基地図面)の赤斜線部分。263万9157㎡の土地及びその 上の建物等。「厚木飛行場区域」という。)② 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供されているものの、同条4項(a)に基づき、海上自衛隊の臨時的使用が認められた施設及び区域(別紙5(厚木基地図面)の黄色部分。117万8779㎡の土地及びその上の建物等。以下「日米共同使用区域」とい う。)③ 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に 区域(別紙5(厚木基地図面)の黄色部分。117万8779㎡の土地及びその上の建物等。以下「日米共同使用区域」とい う。)③ 同条1項(a)に基づき、米国の使用する施設及び区域として米国に提供され、米軍が使用する施設及び区域(別紙5(厚木基地図面)の青色部分(①及び②以外の部分)。以下「米軍専用区域」という。) なお、厚木飛行場区域には、滑走路及び管制塔施設が含まれており、ここに厚木飛行場が設置されている。(争いのない事実、乙A1、弁論の全趣旨)⑵ 自衛隊機及び米軍機の厚木基地の利用状況等厚木基地の構造及び地理的な条件から、厚木基地を離着陸する航空機は、自衛隊機及び米軍機のいずれも、風向きによって厚木基地の北側又は南側を通って離着陸するところ、離着陸の際の旋回のほか、訓練飛行のための旋回 時に、その周辺住宅地の上空を飛行する(争いのない事実)。 2 設置及び管理、基地の利用状況の経緯⑴ 設置及び管理の経緯ア昭和46年6月の日米合同委員会まで厚木基地は、昭和16年頃から旧海軍省により航空基地として使用され ていたが、太平洋戦争後の昭和20年9月2日に米国陸軍に接収され、昭和25年12月からは、米海軍が管理及び運用する航空基地として使用された。 厚木基地は、昭和27年4月28日以降は、同日に発効した「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」(昭和27年条約第6号)及び「日 本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定」(以下「日米行政協定」という。)2条1項に基づき、昭和35年6月23日以降は、同日に発効した日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年条約第6号。以下「日米安保条約」という。)及び日米地位協定2条1項(a)に基づき、 き、昭和35年6月23日以降は、同日に発効した日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年条約第6号。以下「日米安保条約」という。)及び日米地位協定2条1項(a)に基づき、米軍の使用する施設及び区域として 米国に提供されることとなった。そして、昭和27年4月28日以降、米国に対して提供される厚木基地の施設及び区域の決定並びにその返還を求める具体的手続については、日米行政協定ないし日米地位協定の実施に関する日本政府と米国政府との協議機関として設けられた日米合同委員会の協議を経て行われることとなった(日米行政協定2条1項、26条、日米 地位協定2条1項(a)、25条)。(争いのない事実、甲A1の1~3・5・6、60、乙A6、96の2、弁論の全趣旨)イ昭和46年6月の日米合同委員会以後日米合同委員会において、昭和46年6月30日、政府間協定が締結され、厚木基地の一部について、海上自衛隊との共同使用及び使用転換が決定され、同年7月6日に告示され(昭和46年防衛施設庁告示第7号。甲 A14)、厚木基地は、前記1⑴の①ないし③の厚木飛行場区域、日米共同使用区域、米軍専用区域の各部分により構成されることとなった。 そして、防衛庁長官は、自衛隊法107条5項に基づく「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理の基準に関する訓令」(昭和33年防衛庁訓令第105号)2条に基づき、厚木飛行場区域に自衛隊の飛行場施設(厚木 飛行場)を設置した。 これにより、海上自衛隊第4航空群が、千葉県下総基地より厚木基地に移駐し、同群の長が厚木飛行場を管理することとなり、昭和46年7月1日以降、海上自衛隊厚木航空基地分遣隊(現在は厚木航空基地隊)が航空交通管制業務のうち飛行場管制業務及び着陸誘導管制業務を行うこ に移駐し、同群の長が厚木飛行場を管理することとなり、昭和46年7月1日以降、海上自衛隊厚木航空基地分遣隊(現在は厚木航空基地隊)が航空交通管制業務のうち飛行場管制業務及び着陸誘導管制業務を行うことと なった。(争いのない事実、甲A12、14、乙A9の1、弁論の全趣旨)⑵ 米軍の利用状況厚木基地は、昭和25年12月から、米海軍が管理及び運用する航空基地として使用されるようになり、米海軍第7艦隊その他の部隊から飛来する航空機の整備、修理、補給等の後方支援業務、同艦隊所属の航空母艦艦載機の 操縦士の飛行訓練を行う基地として使用されるようになった。そして、昭和48年10月には、米海軍第7艦隊の空母ミッドウェイが横須賀を事実上の母港として初めて入港し、その後、空母インディペンデンス、キティホーク、ジョージ・ワシントン、ロナルド・レーガンが横須賀を母港とし、これらの空母の艦載機が厚木基地に飛来して着艦訓練(FieldCarrierLanding Practice。以下「FCLP」という。)等を行うようになった。昭和57年2月からは、厚木基地において、空母艦載機のFCLPのうち夜間に実施するもの(NightLandingPractice。以下「NLP」という。)を実施するようになった。なお、FCLPは、滑走路の一部を空母の甲板に見立てて、通常より狭い飛行場の場周経路を旋回しながら何度もタッチアンドゴー(航空機の離着陸訓練の一つであり、滑走路へ進入降下し、着陸し、地上滑走した後、 再びエンジン出力を上げて離陸するという一連の操作を繰り返すこと。)を行うものである。 厚木基地には、米海軍の厚木航空施設司令部及び第5空母航空団等が配置され、上記の各空母が横須賀に入港している間、その艦載機の拠点として使用されてい 一連の操作を繰り返すこと。)を行うものである。 厚木基地には、米海軍の厚木航空施設司令部及び第5空母航空団等が配置され、上記の各空母が横須賀に入港している間、その艦載機の拠点として使用されていたが、後記第3・4⑴イ(ウ)のとおり、平成29年8月から米 海軍の第5空母航空団所属の固定翼機の岩国飛行場への移駐が開始され、平成30年3月30日に完了した。 また、平成26年7月からはオスプレイが厚木基地に飛来するようになった。オスプレイは、固定翼機と回転翼機の両方の機能を持つ航空機であり、離着陸は回転翼を用いて垂直に行い、移動時には固定翼機として高速飛行を 行う。(争いのない事実、甲A1の1~3・5・6、60、62の3、乙A24、96の2、111、弁論の全趣旨)⑶ 自衛隊の利用状況海上自衛隊は、前記⑴イのとおり、昭和46年7月1日以降、厚木飛行場の管理に当たっており、厚木飛行場には、海上自衛隊の航空集団司令部が置 かれるとともに、隷下の第4航空群、第51航空隊、第61航空隊及び航空管制隊等が置かれている。第4航空群は、日本の周辺海域における対潜航空活動を中心として、災害派遣等の民生協力活動等も行い、第51航空隊は、航空機の運用についての調査、研究、試験、教育等を、第61航空隊は、人員及び貨物の輸送業務を、航空管制隊は、海上自衛隊の航空機運航に必要な 航空情報の通報、飛行計画の申請及び承認に関する連絡事務等をそれぞれ行っている。厚木飛行場には、P-1(哨戒機。ジェット機)、P-3C(哨戒機。プロペラ機)、SH-60J(哨戒機。ヘリコプター)、SH-60K(哨戒機。ヘリコプター)、USH-60K(多用途機。ヘリコプター)、UP-1、UP-3C(多用途機。プロペラ機)、C-130R(輸送機。プロペラ機) -60J(哨戒機。ヘリコプター)、SH-60K(哨戒機。ヘリコプター)、USH-60K(多用途機。ヘリコプター)、UP-1、UP-3C(多用途機。プロペラ機)、C-130R(輸送機。プロペラ機)及びLC-90(連絡機。プロペラ機)等が配備されている。(争いのな い事実、甲A1の1~3・6、60、乙A96の2、97、弁論の全趣旨) 3 厚木基地における騒音問題厚木基地は、昭和25年12月に米海軍が管理運用するようになってから、米海軍第7艦隊の後方支援業務等を行ってきたが、昭和30年代には滑走路の延長、かさ上げ等の整備・拡大がされ、ジェット戦闘機等が配備されるように なった。 大和市議会において、昭和35年8月に爆音対策委員会(のちの基地対策委員会)が設置され、神奈川県、同大和市及び同綾瀬町(当時)が国などに対して騒音軽減の要請を行ったり、同年9月には周辺住民が厚木基地爆音防止期成同盟を結成して被害救済を求めるなどしており、遅くともこの頃までには厚木 基地周辺における航空機騒音が社会問題化していた。 そして、前記2⑵のとおり、昭和48年10月に米海軍の空母艦載機が飛来するようになってからは、厚木基地が市街地に位置することもあって、同基地を離着陸する航空機による騒音が特に問題となっていった。さらに、昭和57年2月にNLPが実施されるようになると、夜間の騒音が激化し、問題が深刻 化した。 厚木基地周辺は、都市化が進んでおり、被告が住宅防音工事の対象としている第一種区域内には、小田急小田原線、小田急江ノ島線、相鉄本線、東急田園都市線、JR横浜線、JR東海道線、横浜市営地下鉄線の7路線17駅が存在し、東名高速道路、国道1号、166号、134号、246号、467号とい った幹線道路が走り、学校、保育園、幼稚園 急田園都市線、JR横浜線、JR東海道線、横浜市営地下鉄線の7路線17駅が存在し、東名高速道路、国道1号、166号、134号、246号、467号とい った幹線道路が走り、学校、保育園、幼稚園といった教育施設や病院、介護施設が多数存在する。(争いのない事実、甲A1の1~3・6、乙A25)第3 航空機騒音について 1 評価方法⑴ 音及び騒音に関する一般的説明(争いのない事実、甲C1の1~4・14、55、56、乙A116、乙C31、32、34、弁論の全趣旨) ア音の大きさを決めるのは、音の物理的側面である強弱(音波の振幅の程度)が基本であり、音の強弱は、音波によって空気中に生ずる大気圧の変化である音圧(単位はマイクロパスカル)によって決まる。人間が聞くことのできる音圧の幅が非常に広く、また、人間の音の大きさの感覚は、音圧の対数に対応することから、音圧の対数を用いた尺度である音圧レベル をdB(デシベル)という単位を用いて表している(音圧が10倍になると音圧レベルは20dB大きくなる関係にある。)。もっとも、音圧が等しく物理的に同じ強さの音であっても、音の高さ(周波数)が異なれば、人間には異なった大きさの音に聞こえ、概ね4000Hzまでは音圧レベルが同じ場合には周波数が小さいほど音が小さく聞こえる。そこで、騒音の 測定においては、音圧を計測する際に人間の耳の感度に近くなるように周波数に応じた補正をすることにより、音の大きさのレベル(騒音レベル)を測定する方法が用いられている。周波数ごとの補正の相違により複数の特性があるところ、通常用いられているものはA特性であり、単位としてはdB(A)と表記されるが、単にdBとされることも多い。本判決にお いても、単にdBと表記する場合にはdB(A)を意味する。 イ あるところ、通常用いられているものはA特性であり、単位としてはdB(A)と表記されるが、単にdBとされることも多い。本判決にお いても、単にdBと表記する場合にはdB(A)を意味する。 イ一般に人が聞くことができる音の周波数範囲は、20Hzから2万Hzとされており、これを「可聴域」、この範囲の音を「可聴音」といい、環境省では、周波数が20Hzからおよそ100Hzまでの低い周波数の音と、音としては通常聞こえない20Hz以下の空気振動をまとめて「低周波音」 と呼んでいる。そして、20Hz以下の低周波音に対する人の感度に近くなるような周波数に応じた補正をするものとしてG特性があり、dB(G)と表記される。周波数の比が2である二つの音の対数周波数間隔をオクターブ、これらの二つの音の間の周波数帯域をオクターブバンドといい、これを3分の1に分割したものを1/3オクターブバンドという。これらは、通常、上下の音の周波数の中心の周波数帯で表される。 ウ騒音とは、「望ましくない音、例えば、音声、音楽などの聴取を妨害したり、生活に障害、苦痛を与えたりする音」と定義されることがあり、同じ音でも受け止める者によって騒音になったりならなかったりする、人間の感覚が織り込まれた概念であるため、物理的な基準のみに基づいてある音が騒音か否かを判断することはできない。そこで、騒音の評価においては、 主観量との対応がよい物理量による評価が必要であるが、例えば、一定の期間内に発生した音のうちの最大の音圧レベルであるLAmaxを尺度とする場合や一定の期間内に曝露された変動騒音の総エネルギー量を時間で平均(音圧レベルの一定な定常騒音に置き換えた場合の音圧レベルに変換)した等価騒音レベルLAeq,T(Tには「24h」や「8h」など総エ ネルギ 内に曝露された変動騒音の総エネルギー量を時間で平均(音圧レベルの一定な定常騒音に置き換えた場合の音圧レベルに変換)した等価騒音レベルLAeq,T(Tには「24h」や「8h」など総エ ネルギー量を平均する時間が記載されることがある。)を尺度とする場合などがある。LAeq,Tのうち、特に日中の等価騒音レベルについてLday、夜間についてLnightなどと表現されることもある。 ⑵ 航空機騒音に関する各評価方法・評価尺度航空機騒音は、広い周波数帯の雑音に周期的な音が重なった間欠的な音で あるなどの特性があり、航空機騒音にさらされる者の感じる特有のうるささを加味する観点から、種々の評価方法が考案されており、本件訴訟に関連するものとして以下のものがある(争いのない事実、甲A47の1、57、61、甲C1の1~5・17、47、55、乙A20、113、118、127、128、弁論の全趣旨)。 ア WECPNLWECPNLは「WeightedEquivalentContinuousPerceivedNoiseLevel」(加重等価継続感覚騒音レベル)のことであり、国際連合の専門機関の一つである国際民間航空機関(InternationalCivilAviationOrganization。以下「ICAO」という。)によって昭和46年に提案さ れた航空機騒音に特化した評価指標である。騒音に対して感じるやかましさを基礎に音の大きさのレベルを示すPNL(PerceivedNoiseLevel。感覚騒音レベル。A特性とは異なる感覚尺度である。)に継続時間補正及び純音補正を加えて求めた航空機1機ごとのEPNL(EffectivePerceivedNoiseLevel。実効感覚騒音レベル)をもとに1日当たりの は異なる感覚尺度である。)に継続時間補正及び純音補正を加えて求めた航空機1機ごとのEPNL(EffectivePerceivedNoiseLevel。実効感覚騒音レベル)をもとに1日当たりの全機の騒音を累 積し、これに騒音発生時間帯により5dB又は10dBを加える重み付けを行った上で、1日当たりの総騒音量の時間平均を求めるものである。 (ア)環境基準方式ICAOの提案したW値の算定方法は複雑なものであるが、日本においては、昭和48年中央公害対策審議会の答申に基づいて「航空機騒音 に係る環境基準について」(乙A20。平成19年環境省告示第114号による改正前のもの。以下「昭和48年環境基準」という。また、同改正後の環境基準を「現行環境基準」といい、これらを併せて「環境基準」ということがある。)が策定され、航空機騒音の評価尺度としてその算定方法を簡略化した方法(以下「環境基準方式」という。)が採用さ れた。 環境基準方式においては、原則として連続7日間航空機騒音の測定を行い、暗騒音より10dB以上大きい航空機騒音のピークレベル(dB。 ある指定された時間内に生じる最大の瞬時レベル)及び航空機の機数を記録し、これらをもとに年間のW値を求めるが、主に、①ジェット機か ら発生する騒音のEPNLは、一般的な騒音計により測定される騒音レベル(A特性)に13を加えるものに近似するので、騒音計の測定結果に13を加えたもので代替する点、②離着陸において最大値から10dB低いレベルを超える騒音の継続時間を一律に20秒とする点、③夕方及び夜間の補正において、5dB又は10dB加算するのではなくそれぞれ機数を3倍又は10倍する点、④特異音補正を省略する点で、IC AOの提案したW値の算定方法と異なる。その具体的な計 、③夕方及び夜間の補正において、5dB又は10dB加算するのではなくそれぞれ機数を3倍又は10倍する点、④特異音補正を省略する点で、IC AOの提案したW値の算定方法と異なる。その具体的な計算式は、次のとおりである。 WECPNL=dB(A)+10㏒10N-27 ここでいうdB(A)は、1日の全てのピークレベルをパワー平均したもの(1日当たりの航空機騒音について、1機ごとに対数であるdB(A)を一旦エネルギー量に戻し、全機分のエネルギー量を合算してから、1機当たりのエネルギー量に平均し、再び対数化することによって算出したもの)である。また、Nは、飛行機数(騒音発生回数)である が、環境基準方式においては、飛行機数(騒音発生回数)の重み付けとして、午後7時から午後10時までの時間帯は、昼間の時間帯(午前7時から午後7時まで)の3倍、午前0時から午前7時まで及び午後10時から午後12時までの時間帯は昼間の時間帯の10倍に加重される。 1機ごとのピークレベルと継続時間に大きな差がなく、年間を通して 1日当たりの飛行回数がほとんど一定の場合は、環境基準方式によってもICAO提案の方法によるW値とほぼ一致するとされている。 (イ)施設庁方式防衛施設庁(現防衛省)は、防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号により廃止。以下「旧周辺整備法」という。現 在の防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(以下「生活環境整備法」という。))所定の住宅防音工事等の各対策の対象区域を定めるために、旧周辺整備法施行規則(現在の生活環境整備法施行規則)において、環境基準方式を修正したW値の計算方法である施設庁方式を採用した。 自衛隊等の利用する防衛施設である空港においては、民間空港と比べ 辺整備法施行規則(現在の生活環境整備法施行規則)において、環境基準方式を修正したW値の計算方法である施設庁方式を採用した。 自衛隊等の利用する防衛施設である空港においては、民間空港と比べ て機種、飛行回数や経路が複雑であり、騒音のピークレベルと継続時間の変化が大きく、環境基準方式によってW値を求めてもICAO提案の方法による値と大きく異なる。その結果、環境基準方式によるW値が同じだとしても、防衛施設である空港の周辺住民による航空機騒音に対する反応は、民間空港の周辺住民のそれとは異なる場合がある。そこで、 民間空港と防衛施設である空港との間で、W値が同じであれば同じ住民反応が示されるといえるようにするために、施設庁方式によるW値の算定方法が考案された。 施設庁方式は、環境基準方式と比べて、次の点が異なっており、一般に環境基準方式よりも施設庁方式の方が、W値が3ないし5高くなると されている。 なお、以後、本判決で記載するW値については、特段の記載のない場合は、施設庁方式によるW値を示す。 ① 最近1年間の、飛行しない日も含めた1日の総飛行回数の少ない方 からの累積度数曲線を求め、累積度数90%に相当する値をその防衛施設における1日の標準総飛行回数とすること。 ② 継続時間補正について、最大値から10dB低いレベルを超える騒音の継続時間を一律に20秒とするのではなく、実際の継続時間をもとに補正するなどすること。 ③ 着陸音補正として、ジェット機の着陸音に2dBを加えること。 イ Lden(時間帯補正等価騒音レベル)Ldenという騒音評価尺度は、一定の時間内に変動する騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した等価騒音レベルLAeqについて、昼間(午前7時から午後7時まで)、夕方(午後 正等価騒音レベル)Ldenという騒音評価尺度は、一定の時間内に変動する騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した等価騒音レベルLAeqについて、昼間(午前7時から午後7時まで)、夕方(午後7時から午後10時まで)、 夜間(午前0時から午前7時まで及び午後10時から午後12時まで)の時間帯別に重み付けをして求めた1日の等価騒音レベルであり、単位はdBである。WECPNLと同様に、夕方の騒音には5dB、夜間の騒音には10dBをそれぞれ加える形で、時間帯による重み付けをしている。なお、Ldenにおいては、WECPNLと異なり離着陸時に伴って生じる 飛行騒音だけではなく、航空機が誘導路上を移動する際に発生する騒音などの地上騒音も評価の対象となるが、これがLdenの騒音評価全体に与える影響は非常に小さい。 等価騒音レベルを基本とした評価指標には、ほかに、Ldn(Ldenとは異なり夕方の時間帯の重み付けをしないもの)、LAeq,24h(時 間帯の重み付けをしないもの)などがある。 以下、本判決では、Ldenの値を「Lden57dB」などと表記することがある。 ウ 72%HA72%HAとは、社会音響調査(社会調査)における質問において「地 域騒音のうるささの強さ尺度目盛りの下端から72%以上、あるいは上端から28%以内と定義される高度のうるささ」の反応率であり、特定の騒音曝露に対する住民反応の程度を表す指標である。 社会音響調査は、騒音による心理的影響を評価するための手法であり、近時はICBEN(InternationalCommissiononBiologicalEffect ofNoise)によって国際的に標準化された「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはうるさいと感じたり onalCommissiononBiologicalEffect ofNoise)によって国際的に標準化された「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはうるさいと感じたりすることがありますか」といった質問を用いて、対象とする騒音について居住者が感じている「うるささ」(アノイアンス)の程度を質問すると同時に、回答者宅での対象音の騒音レベルを測定する調査を、広範囲の地域で実施する。この質問に対して、7段階の尺度であれば最上位及び次順位を回答した者、5段階の尺度 であれば最上位を回答した全ての者及び次順位を回答した者のうちの4割の者が、当該対象音について「高度のうるささ」であると反応したことになる。そのような者が全体の30%いれば、72%HA30%となる。 2 環境基準等 ⑴ 昭和48年環境基準環境基準は、騒音に係る環境上の条件について、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められているものである(環境基本法16条1項)。 昭和48年環境基準は、当時の公害対策基本法9条1項に基づき、飛行 場周辺の環境基準について、専ら住居の用に供される地域(地域類型Ⅰ)においてW値(環境基準方式。以下本項で同様。)70以下、その他の地域(地域類型Ⅱ)においてW値75以下とした。 厚木基地は、昭和48年環境基準の第一種空港に相当するものとして扱われ、環境基準の達成期間を「10年をこえる期間内に可及的速やかに」とし つつ、中間的な改善目標として、①5年以内にW値を85未満とすること又はW値85以上の地域において屋内でW値65以下とすること、②10年以内にW値を75未満とすること又はW値75以上の地域において屋内でW値60以下とすることを達成しつつ、段階的に環境基準 すること又はW値85以上の地域において屋内でW値65以下とすること、②10年以内にW値を75未満とすること又はW値75以上の地域において屋内でW値60以下とすることを達成しつつ、段階的に環境基準が達成されるようにするものとされている。平成5年に環境基本法が公布、施行されたことに伴っ て公害対策基本法は廃止されたが、昭和48年環境基準は、環境基本法16条1項に基づく環境基準とみなすこととされた。 (争いのない事実、乙A20、21、69)⑵ 現行環境基準昭和48年環境基準は、平成19年環境省告示114号により改正され、平成25年4月1日から現行環境基準が施行された。その主な改正内容は次 のとおりである。 ① 評価指標をWECPNLに代えてLdenに変更すること。 ② 地域類型Ⅰ(専ら住居の用に供される地域)の基準値をLden57dB以下、地域類型Ⅱ(それ以外の地域)の基準値をLden62dB以下 とすること。 ③ 中間的な改善目標につき、従前85WとされていたものをLden70dB、65WとされていたものをLden50dB、75WとされていたものをLden62dB、60WとされていたものをLden47dBにそれぞれ変更すること。 上記②及び③については、従来のW値をLden値に近似的に置き換えたもので、基準を実質的に変更するものではない。従来のW値で評価した騒音と同じ大きさの騒音をLdenで評価した場合の値との関係は、以下のとおりであるが、Ldenの値は推定値であるため、一定の範囲内でばらつきが 生じ得るものである。これによれば、W値が高くなるほどLdenの値との差が広がるが、これは、WECPNLにおいては実際の騒音の継続時間ではなく、全ての騒音の継続時間を20秒と仮定している が 生じ得るものである。これによれば、W値が高くなるほどLdenの値との差が広がるが、これは、WECPNLにおいては実際の騒音の継続時間ではなく、全ての騒音の継続時間を20秒と仮定しているところ、飛行騒音の継続時間はおおむねW値が70から80までの地域では20秒に近いのに対し、これよりも高騒音域になると継続時間が短くなる傾向にあることに起因する。 W値Ldenの値(dB) また、昭和48年環境基準においては、飛行時間帯別の重み付けについては、夕方及び夜間の飛行機数(騒音発生回数)をそれぞれ3倍、10倍にしていたところ、現行環境基準においては、それぞれ5dB、10dBを加算することとなっているが、補正の結果はほぼ同様である。 評価指標がWECPNLからLdenに変更された背景には、騒音測定機器の技術的進歩に伴って高度な測定を簡易に行うことが可能となったことが挙げられる。すなわち、WECPNLにおいては、騒音の最大値と、仮定した騒音の継続時間(20秒)から近似的に騒音の曝露量を推計するのに対し、Lden(等価騒音レベルLAeqも同様)においては、実際に連続的に測 定された騒音値と実継続時間をもとに積分演算により騒音の曝露量を計算することから、より高度で正確な測定が可能となったことである。そのほかにも、国際的にLden又はこれに類似した評価指標が主流となっていたこと、WECPNLが航空機騒音に特化した指標である一方で、等価騒音レベルを基本とした評価指標であれば各種騒音との相互比較が可能であることも挙げ られる。(争いのない事実、甲A61、乙A16、17、113、弁論の全趣旨) 3 厚木飛行場周辺に で、等価騒音レベルを基本とした評価指標であれば各種騒音との相互比較が可能であることも挙げ られる。(争いのない事実、甲A61、乙A16、17、113、弁論の全趣旨) 3 厚木飛行場周辺における騒音コンターの作成及び区域指定等⑴ 現在の区域指定に至るまで被告は、後記4⑵のとおり、厚木基地周辺地域において複数の周辺対策事業を実施しているが、そのうち、生活環境整備法(同法制定前は、旧周辺整備法)に基づく周辺対策事業等に関し、その対象区域等を指定してきた。 これらの指定に当たっては、厚木基地周辺の航空機騒音の各測定点における測定結果をもとに施設庁方式によりW値を算定し、その値に基づいて、W 値が70又は75以上となる地域について5Wごとに同一のW値を結んだ線を騒音コンターとした上で、騒音コンター上の分類、道路や河川の位置等が考慮されている。 現在の指定区域等の指定に至るまでの主な経緯は、次のとおりである。 昭和54年9月5日(同年防衛施設庁告示第18号)第一種区域(85W以上)の指定昭和56年10月31日(同年防衛施設庁告示第19号)第一種区域の拡大(80W以上)に伴って80W以上の地域の指定第二種区域(90W以上)の指定昭和59年5月31日(同年防衛施設庁告示第9号)第一種区域の拡大(75W以上)に伴って75W以上の地域の指定新たな第二種区域(90W以上)及び第三種区域(95W以上)の指定昭和61年9月10日(同年防衛施設庁告示第9号)新たな第一種区域(75W)の指定 また、被告は、昭和63年7月、第一種区域中、後記4⑵イの第Ⅰ工法による防音工事の対象地域であるW値が80以上となる地域と、第Ⅰ工法を簡略化した第Ⅱ工法による防音工事の対象地域であるW 定 また、被告は、昭和63年7月、第一種区域中、後記4⑵イの第Ⅰ工法による防音工事の対象地域であるW値が80以上となる地域と、第Ⅰ工法を簡略化した第Ⅱ工法による防音工事の対象地域であるW値が80未満となる地域を分ける工法区分線を定めた。(争いのない事実、乙A127) ⑵ 本件告示コンター図被告は、平成15年度から平成16年度にかけて実施した81箇所の航空機騒音度調査の結果及び予測手法に基づく予測結果を用いて各地点で施設庁方式により算定したW値に基づいて、75Wから95Wまでの騒音コンターを設定し、これを示した騒音コンター図(別紙6(平成16年度騒音コン ター図)。以下「平成16年度騒音コンター図」という。)を作成した。同別紙上の黒実線が75Wから95Wまでの各騒音コンターである。これを踏まえ、被告は、平成18年1月17日、騒音コンターと重なる住宅の所在状況を勘案し、騒音コンターに沿って存在する街区、道路、河川等の位置に即した最小限の修正を加えて、前記⑴の区域指定を改定し、これを告示した(平 成18年防衛施設庁告示第1号)。また、被告は、同月31日、住宅防音工事の一種である外郭防音工事の対象地域であるW値が85以上となる地域とそれ以外の地域とを画する工法区分線を定めるとともに、前記⑴の第Ⅰ工法と第Ⅱ工法との工法区分線を見直した。これ以後、新たな区域指定等はされていない。 これらの結果、厚木基地周辺については、平成18年1月末日時点において、以下のとおり、W値の大きさに従って地域を区分する線が引かれたことになる。 ① 75W以上の第一種区域とそれ以外を区分する線 ② 80Wの第Ⅰ工法と第Ⅱ工法との工法区分線③ 85Wの外郭防音工事に係る工法区分線④ 90W以上の第二種区域とそ になる。 ① 75W以上の第一種区域とそれ以外を区分する線 ② 80Wの第Ⅰ工法と第Ⅱ工法との工法区分線③ 85Wの外郭防音工事に係る工法区分線④ 90W以上の第二種区域とそれ以外を区分する線⑤ 95W以上の第三種区域とそれ以外を区分する線 これらの線により第一種区域等の範囲を示したものが別紙7(本件告示コンター図)であり、以下、同図面を「本件告示コンター図」という。同別紙上の赤、青、緑、黄、薄緑の各実線が上記①ないし⑤の各線である。 本判決では、本件告示コンター図などにおける5Wごとの線で区分された各区域について、例えば、75W以上80W未満の区域は「75Wの区域」、80W以上85W未満の区域は「80Wの区域」などといい、75W以上の 区域全体(すなわち第一種区域全体)を表す場合には特に「75W以上の区域」などという。特段の記載がない場合には、本件告示コンター図による区分を意味する。 なお、前記2⑵の環境基準の改正を受けて、区域指定に係る騒音の評価指標としてLdenが採用され、第一種区域はLden62dB以上、第二種 区域はLden73dB以上、第三種区域はLden76dB以上とされた(平成25年防衛省令第5号による生活環境整備法施行規則の改正)が、Ldenを評価指標とする区域指定は、同改正の施行日である平成25年4月1日以後の生活環境整備法による新たな区域指定の時から適用することとされた。厚木基地について、同日以後、生活環境整備法による新たな区域指 定はなく、現在においてもW値を基にした本件告示コンター図による区域指定等がされている。 (争いのない事実、乙A126、128、乙B17、19、21、弁論の全趣旨) 4 厚木基地における騒音問題への対応状況⑴ 音源対策等 にした本件告示コンター図による区域指定等がされている。 (争いのない事実、乙A126、128、乙B17、19、21、弁論の全趣旨) 4 厚木基地における騒音問題への対応状況⑴ 音源対策等 ア自衛隊厚木飛行場において、第4航空群所属の自衛隊機による騒音に関し、次のような自主規制がされている(乙A32、33)。 (ア)厚木飛行場規則(平成19年第4航空群達第2号)による規制① 訓練飛行(タッチアンドゴー、ローアプローチ)及び地上試運転の 規制時間は、原則として次の表のとおりとする。 区分曜日規制時間訓練飛行全ての航空機日曜日終日月曜日~土曜日午後10時~午前6時地上試運転ジェット機日曜日終日月曜日~土曜日午後6時~午前8時ジェット機以外日曜日終日月曜日~土曜日午後10時~午前6時 ② 場周経路内における連続離着陸訓練機数及び連続離着陸訓練回数は制限する。 ③ 厚木管制圏内での編隊飛行は、原則として実施しないものとする。 ④ 飛行場及びその周辺空域における既定の飛行経路の高度よりも低い高度での飛行は、任務及び訓練上必要な場合を除き行わないものとする。 ⑤ 離陸時のアフターバーナーの使用は、運航上必要な場合に限る。ただし、この場合、飛行場の境界線又は安全な高度及び速度に達したと きは、使用を中止するものとする。 ⑥ 着艦訓練(FCLP)は、許可しない。 (イ)厚木航空基地における航空機騒音の軽減に関する規制措置について(平成28年4空群運第329号。以下「規制措置通知」という。)による規制 ① 同一時間に離着陸機が集中しないよう、曜日及び時間帯(午前9時から午後1時まで(午 に関する規制措置について(平成28年4空群運第329号。以下「規制措置通知」という。)による規制 ① 同一時間に離着陸機が集中しないよう、曜日及び時間帯(午前9時から午後1時まで(午前)、午後1時から午後5時まで(午後)、午後5時から午後9時30分まで(夜間)の3つ)別で、航空隊(飛行隊)ごとに離着陸訓練時間を定めている。 ② 場周経路内の同時機数について、昼間は、固定翼機のみの場合は3機以内、回転翼機のみの場合は4機以内、両者が混在する場合はそれぞれ2機以内とし、夜間は、いずれかのみの場合はそれぞれ2機以内、両者が混在する場合はそれぞれ1機とする。 ③ 連続離着陸訓練は、固定翼機については、昼間4回、夜間3回以内 とし、更に訓練を実施する場合は、一度場周経路を離脱し、10分以上経過後に再度進入することとし、回転翼機については、昼間4回、夜間3回以内とし、更に訓練を実施する場合は、B1又は各ヘリパッドで10分以上のホバリング等を実施する。 ④ 厚木管制圏内では、編隊飛行は実施しない。 イ米軍(ア)日米合同委員会による合意日米合同委員会は、昭和38年9月19日、厚木基地周辺の米軍の活動に伴う騒音について合意し、昭和44年11月20日、同合意について一部改正した(以下、この合意を「騒音規制合意」という。)。同改正後の合 意内容のうち、主なものは次のとおりである。(乙A31)① 午後10時から午前6時までの間、厚木基地における全ての活動(飛行及びグランド・ラン・アップ)は、運用上の必要に応じ、及び米軍の態勢を保持する上に緊要と認められる場合を除き、禁止する。 ② 訓練飛行は、日曜日には最小限にとどめる。 ③ アフターバーナー装備の航空機を操作する操縦士は全て、厚木基地 に応じ、及び米軍の態勢を保持する上に緊要と認められる場合を除き、禁止する。 ② 訓練飛行は、日曜日には最小限にとどめる。 ③ アフターバーナー装備の航空機を操作する操縦士は全て、厚木基地空域内においてできるだけ速やかに離陸・上昇することが要求される。 アフターバーナーは、安全飛行状態を持続するために継続して使用しなければならない場合又は運用上の必要による場合を除き、飛行場の境界線に達する前に使用を停止しなければならない。 ④ 離陸及び着陸の間を除き、航空機は、人口稠密地域の上空を低空で飛行しない。 ⑤ 航空機は、運用上の必要がなければ、低空で、高音を発する飛行を行ったり、あるいは、他人に迷惑を及ぼすような方法で操縦しない。 ⑥ 航空機は、厚木海軍飛行場周辺の空域において曲技飛行及び空中戦闘訓練を実施しない。ただし、年間定期行事として計画された曲技飛行 のデモンストレーションは、その限りではない。 ⑦ 空母着艦訓練及び反射鏡利用による着艦訓練のための航空機は、場周経路にあっては2機に制限される。また、これらの訓練の巡航速度は、1マッハ以下にとどめる。さらに、これらの訓練のための航空機は、特定のタイプの訓練を必要とする場合を除き、平均海面上1600ft 以下で飛行しない。特殊の訓練は、訓練の必要に見合った必要最小限度にとどめるものとし、かつ、そのパターンは、平均海面800ft以下は通らない。 ⑧ 運用能力又は態勢が損なわれる場合を除き、ジェットエンジンは、午後6時から午前8時までの間、試運転されない。 ⑨ ジェットエンジンテストの実施に当たり、厚木海軍飛行場は、実行可能なできるだけ早い時期に効果的な消音器を装備し、それを騒音減衰のために使用する。エンジンテストを行うためには、ジェットエ ⑨ ジェットエンジンテストの実施に当たり、厚木海軍飛行場は、実行可能なできるだけ早い時期に効果的な消音器を装備し、それを騒音減衰のために使用する。エンジンテストを行うためには、ジェットエンジンテストセル地区が使用される。テストセルに適合しないジェット機エンジンがテストされなければならないような場合はこの限りではない が、そのような状況下においては、騒音の持続時間とレベルを最小限に保つよう最大の注意が払われるものとする。 (イ)NLPの硫黄島での実施厚木基地においては、昭和57年2月からNLPが行われていたが、被告は、平成元年から硫黄島に米海軍空母艦載機の暫定的なNLP訓練 施設の建設に着手し、平成5年3月に同施設が完成し、同年9月頃から、同施設においてNLPが行われるようになり、同年以降、NLPの通告日数が減少した(争いのない事実、甲A1)。 (ウ)空母艦載機の岩国飛行場への移駐被告は、平成18年5月1日、在日米軍再編に関する「再編実施のための日米のロードマップ」を発表し、厚木基地に所属する米海軍第5空 母航空団を岩国飛行場に移駐(以下「岩国移駐」という。)することとした。米海軍は、平成29年8月から岩国移駐を開始し、平成30年3月30日にこれを完了させた。移駐したのは、早期警戒機E-2D(5機)、戦闘攻撃機FA-18の4部隊(計約48機)、電子戦機EA-18G(約6機)、輸送機C-2(約2機)の各部隊とされている。(乙A92、9 3、108、110、乙D1~4、弁論の全趣旨)。 ⑵ 周辺対策被告は、当初は行政措置として、昭和41年以降は旧周辺整備法に基づき周辺対策を実施してきた。 そして、昭和49年に成立した生活環境整備法は、自衛隊又は日米安保条 約に基づ 周辺対策被告は、当初は行政措置として、昭和41年以降は旧周辺整備法に基づき周辺対策を実施してきた。 そして、昭和49年に成立した生活環境整備法は、自衛隊又は日米安保条 約に基づき日本にある米軍の行為又は防衛施設(自衛隊の施設又は日米地位協定2条1項の施設及び区域)の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため、防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的として(同法1 条)、種々の措置について定めている。 被告が同法に基づき実施している厚木基地周辺地域における周辺対策事業の主なものは次のとおりである。(乙A19、弁論の全趣旨)ア学校、病院等における騒音防止工事に対する助成(同法3条2項)自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施等により生ずる音響で 著しいものの防止・軽減のために地方公共団体等が行う学校、病院等の防音工事に対して助成を行うものである。 イ住宅防音工事の助成(同法4条)自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施等により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛大臣が指定する防衛施設の周辺の区域である第一種区域に所在する個人の住宅について、防衛省の定めた住宅防 音工事標準仕方書により行う防音工事に対して助成をするもので、助成額は、原則、工事費の全額(一定の上限がある。)である。 対象は、同条によれば、第一種区域の指定の際に現に所在する住宅であるところ、前記3⑴のとおり、第一種区域の指定基準が段階的に緩やかにされてきており(85Wから80W、75W)、また、第一種区域等の指定 が新たに指定された範囲のみを指定する方 在する住宅であるところ、前記3⑴のとおり、第一種区域の指定基準が段階的に緩やかにされてきており(85Wから80W、75W)、また、第一種区域等の指定 が新たに指定された範囲のみを指定する方法でされていることとの関係で、同時期に建てられた建物であっても、75Wの区域の建物は助成対象であっても、85Wの区域の建物は助成対象外となってしまうことがあるが、このような場合には、被告は予算措置として助成を行うなどして不利益が生じないようにしている。 住宅防音工事には、80W以上の区域に対して行う計画防音量を25dB以上とする第Ⅰ工法と、75Wの区域に対して行う計画防音量を20dB以上とする第Ⅱ工法がある。なお、住宅防音工事においては、計画防音量に達する防音効果を上げるためには、室内を密閉する必要があることから、防音工事済みの居室の環境を保持するために有効な換気設備及び冷暖 房設備を設置している。 ウ移転等の補償(同法5条1項)及び土地の買入れ(同条2項)第一種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が特に著しいと認めて防衛大臣が指定する区域である第二種区域(90W以上の区域)にその指定の際現に所在する建物等の所 有者が、当該建物等を同区域外に移転し、又は除却するときに、当該建物等の所有者に対し、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償し、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときに、当該土地の買入れ等をするもの(以下「移転措置」という。)であり、周辺住民の生活環境の整備を図り、併せて厚木基地の安全確保に資することを目的とするものである。 移転措置の補償を受けるか否かは、対象区域に居住する者の選択に委ねられている。補償を受けない場合に 活環境の整備を図り、併せて厚木基地の安全確保に資することを目的とするものである。 移転措置の補償を受けるか否かは、対象区域に居住する者の選択に委ねられている。補償を受けない場合においても、同法4条に基づく住宅防音工事の助成を受けることができる。建物等の移転補償には、建物の移転費又は除却費、工作物・動産の移転費、仮住居等の使用に要する費用、営業休止等の補償費等が含まれ、移転に伴う土地の買入れは、建物等の移転、 除却に係る宅地及びその他の関連土地を対象としている。 なお、付随するものとして、移転先地において多数の移転者がいるなどにより、公共施設の整備が必要となった場合の地方公共団体等への助成(同法5条3項)、買い入れた土地を地方公共団体が広場等の用に供する場合に無償で使用させること(同法7条)も定められている。 エ緑地帯の整備(同法6条)第二種区域のうち航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が新たに発生することを防止し、併せてその周辺における生活環境の改善に資する必要があると認めて防衛大臣が指定する区域である第三種区域(95Wの区域)に所在する土地で、移転措置により買 い入れた土地について、緑地帯その他の緩衝地帯として整備されるように必要な措置を採るものである。 第4 厚木基地における騒音訴訟の経緯厚木基地の周辺住民は、昭和51年以降4次にわたり、厚木基地を離着陸する航空機による騒音等の被害を受けているとして、被告に対し、厚木基地騒音 訴訟を提起してきた。各訴訟における請求と判決の概要は次のとおりである。 (甲A1の1・2・6、弁論の全趣旨) 1 1次訴訟厚木基地の周辺住民92名は、昭和51年9月8日、被告に対し、厚木基地における航空機の離着 各訴訟における請求と判決の概要は次のとおりである。 (甲A1の1・2・6、弁論の全趣旨) 1 1次訴訟厚木基地の周辺住民92名は、昭和51年9月8日、被告に対し、厚木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。同裁判 所は、昭和57年10月20日、各差止め及び将来の損害の賠償請求に係る訴えを却下し、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1056号26頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、昭和61年4月9日、各差止め及び将来の損害の賠償請求に係る訴えを却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求を いずれも棄却する判決を言い渡した(判例時報1192号1頁)。 周辺住民が上告し、最高裁判所は平成5年2月25日、過去の損害の賠償請求に係る部分について原判決を破棄し、東京高等裁判所に差し戻した(最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁。以下「厚木基地1次最判」という。)。 差戻審である東京高等裁判所は、平成7年12月26日、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡し、この判決は確定した(判例時報1555号9頁)。 2 2次訴訟厚木基地の周辺住民161名は、昭和59年10月22日、被告に対し、厚 木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。 同裁判所は、平成4年12月21日、将来の損害の賠償請求及び米軍機の差止めに係る訴えを不適法として却下し、自衛隊機の差止請求を棄却する一方、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1448号4 12月21日、将来の損害の賠償請求及び米軍機の差止めに係る訴えを不適法として却下し、自衛隊機の差止請求を棄却する一方、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1448号4 2頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成11年7月23日、自衛隊機の差止請求については訴えを不適法として却下し、将来の損害の賠償請求及び米軍機の差止めに係る訴えについては原判決と同様に却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求については、その請求を一部認容する判決を言い渡し、この判決は確定した(訟務月報47巻3号381頁)。 3 3次訴訟厚木基地の周辺住民2823名は、平成9年12月8日、被告に対し、過去及び将来の損害の賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に提起した。その後の追加提訴があり、原告となった周辺住民の総数は5000名を超えた。同裁判所は、平成14年10月16日、将来の損害の賠償請求に係る訴えを不適法とし て却下し、周辺住民4935名について、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決を言い渡した(判例時報1815号3頁)。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成18年7月13日、将来の損害の賠償請求については訴えを却下すべきものとし、過去の損害の賠償請求については、その請求を一部認容する判決(公刊物未登載)を言い渡し、この判決は確 定した。 4 4次訴訟厚木基地の周辺住民6130名は、平成19年12月17日、厚木基地における航空機の離着陸等及び一定以上の航空機騒音の到達の差止め並びに過去及び将来の損害の賠償を求める民事訴訟(以下、同訴訟の控訴審及び上告審を 含めて「4次民事訴訟」という。)を横浜地方裁判所に提起した。その後の追加提訴があり、原告となった周辺住民の総数は69 及び将来の損害の賠償を求める民事訴訟(以下、同訴訟の控訴審及び上告審を 含めて「4次民事訴訟」という。)を横浜地方裁判所に提起した。その後の追加提訴があり、原告となった周辺住民の総数は6993名となった。また、厚木基地の周辺住民58名は、厚木基地における所定の自衛隊機の運航及び米軍に対する所定の厚木飛行場区域の使用許可の差止めを求める行政訴訟(以下、同訴訟の控訴審及び上告審を含めて「4次行政訴訟」という。)を横浜地方裁 判所に提起した。その後追加提訴があり、4次行政訴訟の原告となった周辺住民は67名となった。同裁判所は、平成26年5月21日、民事訴訟については、将来の損害の賠償請求に係る部分及び自衛隊機についての差止等を求める部分を不適法として却下し、米軍機についての差止等を求める請求を主張自体失当として棄却し、過去の損害の賠償請求を一部認容する判決(判例時報2277号123頁)を、行政訴訟については、米軍機についての差止等を求める 部分を不適法として却下し、自衛隊機に係る差止請求については、午後10時から午前6時までの運航に関し、やむを得ないと認める場合を除いて請求を認容する判決(判例時報2277号38頁)を言い渡した。 双方が控訴し、東京高等裁判所は、平成27年7月30日、民事訴訟については、自衛隊機についての差止等を求める部分を却下すべきもの、米軍機につ いての差止等を棄却すべきものとし、損害賠償請求につき過去分だけでなく将来分のうち平成28年末までの分について一部認容する判決(判例時報2277号84頁)を、行政訴訟については、米軍機についての差止等を求める部分を不適法として却下すべきものとし、自衛隊機に係る差止請求については、同年末までの午後10時から午前6時までの運航に関し、やむを得ない事由 )を、行政訴訟については、米軍機についての差止等を求める部分を不適法として却下すべきものとし、自衛隊機に係る差止請求については、同年末までの午後10時から午前6時までの運航に関し、やむを得ない事由に基 づく場合を除いて請求を認容する判決(判例時報2277号13頁)を言い渡した。 これに対し、民事訴訟及び行政訴訟のそれぞれにつき、周辺住民らが上告及び上告受理申立てを、被告が上告受理申立てをした。最高裁判所は、民事訴訟については、被告の上告受理申立ての理由中一部を排除してこれを受理した 上、平成28年12月8日、周辺住民らの損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないとして、将来の損害の賠償請求については訴えを却下すべきものとした(最高裁平成27年(受)第2309号同28年12月8日第一小法廷判決・集民254号35頁)。また、最高裁判所は、行政訴訟 については、双方の上告受理申立てを受理した上、同日、自衛隊機に係る差止請求について、周辺住民に行訴法37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるが、厚木基地における自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、同条第5項所定の行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるとはいえないとして、同請求に係る部分について原判決を破棄し、周辺住民らの当該請求を 棄却した(最高裁平成27年(行ヒ)第512号、513号同28年12月8日第一小法廷判決・民集70巻8号1833頁。以下「厚木基地4次行訴最判」という。)。 第3章争点及び争点に関する当事者の主張第1 争点 1 差止請求に係る争点⑴ 米軍機運航に関 日第一小法廷判決・民集70巻8号1833頁。以下「厚木基地4次行訴最判」という。)。 第3章争点及び争点に関する当事者の主張第1 争点 1 差止請求に係る争点⑴ 米軍機運航に関する行政処分の有無(争点1)⑵ 重大な損害の有無(争点2)⑶ 航空機運航の違法性(争点3) 2 確認の訴えに係る争点 確認の訴えの利益の有無(争点4)第2 争点1(米軍機運航に関する行政処分の有無)について 1 原告らの主張厚木飛行場については日本に管理権があり、米国に管理権を認める日米合意は存在しない。日米地位協定2条4項(b)についての政府統一見解等によれ ば、厚木飛行場については、防衛大臣が、米軍に対し、米軍の専用する施設、区域への出入りの都度、その使用を認める権限を有している。厚木飛行場は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律」に基づき米軍に提供されているところ、国 以外の者による国有財産の使用は、慣習法上の権利がない限り、何らかの法律行為又は行政処分を経て初めて可能になるのであるから、米軍は、防衛大臣による使用の承認がなければ厚木飛行場を使用することができず、米軍機の運航をすることができない。また、自衛隊法107条5項は、防衛施設である飛行場の設置管理者として防衛大臣に飛行場を使用する全ての航空機による障害を防止するための規制権限を認めており、これには米軍機の運航に対する規制権 限も含まれるといえるから、自らが設置管理する厚木飛行場における防衛大臣の管理権限は、米軍機にも及ぶといえる。 そして、日米地位協定2条4項(b)に基づく米軍の厚木飛行場の一時使用に 規制権 限も含まれるといえるから、自らが設置管理する厚木飛行場における防衛大臣の管理権限は、米軍機にも及ぶといえる。 そして、日米地位協定2条4項(b)に基づく米軍の厚木飛行場の一時使用については、①条約上の合意に基づくものと考え、防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の供用が飛行場周辺の住民に対する米軍機の運航に必然的に伴う 騒音等の受忍を義務付ける事実行為としての処分に当たると捉える考え方と、②条約・法令に基づく個別の管理権行使に基づくものと考え、防衛大臣の米軍に対する厚木飛行場の使用承認自体を行政処分と捉える考え方の2通りがあり得る。 前者であれば、防衛大臣が米軍による使用の都度又は包括的に使用許諾の意 思表示を行うところ、このような許諾は、米軍機運航の性質上必然的に騒音等の発生を伴い、その影響は飛行場周辺に広く及ぶことが不可避であり、その使用に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付けるものといえ、「行政庁の処分その他の公権力の行使」に該当するといえる。 後者であれば、防衛大臣による使用の許否によって、米軍による厚木飛行場 使用の可否が決せられるものであるから、米軍の権利義務の範囲を画するものとして「行政庁の処分その他の公権力の行使」に該当するといえる。 2 被告の主張⑴ 日米地位協定2条4項(b)を根拠とする主張について厚木飛行場区域が被告に返還された昭和46年7月1日以降も、厚木基地 は、その全体が日米安保条約及び日米地位協定に基づき、我が国の安全並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するという駐留目的を達成するために米軍の使用が認められており、日米両国間では、米軍が駐留目的遂行のために厚木基地全体を使用することができるという基本的な法律関係が維持されている び安全の維持に寄与するという駐留目的を達成するために米軍の使用が認められており、日米両国間では、米軍が駐留目的遂行のために厚木基地全体を使用することができるという基本的な法律関係が維持されている。そのため、防衛大臣は、米軍機の運航活動に当たっては、このような法律関係の枠内において、日米安保条約6条が定める米軍の駐留 目的に資するように厚木飛行場区域の管理権限を行使しなければならないのであり、海上自衛隊が行う管理の内容は、航空機の運航が安全かつ円滑に行われるように飛行場を物理的に管理したり、航空交通管制をしたりする程度のものにすぎない。 また、米軍機の保有及び運航権限は、全て米軍の専権に属し、上記基本的 な法律関係の存在を前提に、米軍は、その駐留目的を達成するためにその判断と責任に基づいて、厚木飛行場において航空機を保有し、運航活動を行うことができる。 このように、被告が、行政処分に該当する行為として、米軍に対し、米軍専用区域への出入りの都度使用を認めることや、上記駐留目的達成のための 米軍機の運航活動等を制限することはおよそ想定されていない。 したがって、被告は、駐留目的達成のための使用の限りにおいて、米軍機の運航そのものを制限する権限を有しておらず、厚木飛行場における米軍機の運航に関し、使用の都度承認を与えるなどの行為を行っていないから、原告らのいう「防衛大臣による使用の承認」という行政行為は存在せず、差止 めの対象となるべき行政処分はない。 ⑵ 自衛隊法107条5項を根拠とする主張について自衛隊法107条5項は、防衛大臣が、自衛隊機の安全性及び運航、自衛隊機に乗り組んで運航に従事する者の技能並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する各基準を定めるとともに、その他航 07条5項は、防衛大臣が、自衛隊機の安全性及び運航、自衛隊機に乗り組んで運航に従事する者の技能並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する各基準を定めるとともに、その他航 空機による災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない旨を定めている。同項は、同条1項及び4項が航空法を適用除外としたことを受けて、特に自衛隊機について規律したものであることは明らかで、「航空機」に自衛隊機以外の航空機が含まれると解することは到底不可能である。 したがって、防衛大臣は、同条5項により米軍機の運航に対する規制権限 を有することにはならないから、同項を根拠として、防衛大臣に、米軍機に対する、航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るための規制を行う権限があるとする原告らの主張には理由がない。 ⑶ 米軍機の運航に必然的に伴う騒音等の受忍を周辺住民に義務付ける事実行為として、防衛大臣が米軍に厚木飛行場の使用を認める行為が処分に当たる とする原告らの主張には理由がないことそもそも防衛大臣による使用の承認なる行政行為は存在しない以上、日米地位協定2条4項(b)又は自衛隊法107条5項を根拠として、厚木飛行場の周辺の住民に対する事実行為としての公権力の行使を観念することはできない。 また、自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使に処分性が認められるのは、単に飛行場の周辺住民に騒音等の影響が及ぶことのみを根拠とするものではない。自衛隊法、航空機の使用及び搭乗に関する訓令(乙A5。昭和36年防衛庁訓令第2号。以下「航空機使用訓令」という。)等の規定によれば、自衛隊機の運航は、自衛隊の隊務を統括する権限(自衛隊法8条)を有 する防衛大臣からの段階的な職務命令に基づき、個 和36年防衛庁訓令第2号。以下「航空機使用訓令」という。)等の規定によれば、自衛隊機の運航は、自衛隊の隊務を統括する権限(自衛隊法8条)を有 する防衛大臣からの段階的な職務命令に基づき、個々の航空機搭乗員が自衛隊機を操縦して行われるものということができる。したがって、自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限行使は、対内的には段階的な職務命令として発出され、対外的にはこれらの命令に基づく航空機等の乗員による自衛隊機の運航という事実行為を通じて行われるという仕組み等を前提に処分性が認めら れると解される。これに対し、防衛大臣は、米軍機の運航に関する権限を行使する地位にはなく、自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使とは前提が全く異なるし、前記のとおり、同法107条5項は、あくまで自衛隊機の規律について定めたものであるから、上記の仕組み等には当たらない。 したがって、米軍機の運航に必然的に伴う騒音等の受忍を周辺住民が義務付けられているとしても、これをもって防衛大臣が米軍に厚木飛行場の使用 を認めることが公権力の行使であるということはできない。 ⑷ 小括以上のとおり、本件米軍機差止めの訴えは、防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の使用承認という行われる余地のない行政行為の差止めを求めるものであるから不適法である。 第3 争点2(重大な損害の有無)について 1 原告らの主張⑴ 軍用基地周辺住民による騒音被害を理由とする差止訴訟においては一般に「重大な損害を生ずるおそれ」が認められること厚木基地4次行訴最判は、厚木基地周辺住民が自衛隊機及び米軍機の航空 機騒音によって反復継続的に損害を被っており、これが蓄積していくことを理由に「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を肯定しており、軍用基地周辺住民に 、厚木基地周辺住民が自衛隊機及び米軍機の航空 機騒音によって反復継続的に損害を被っており、これが蓄積していくことを理由に「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を肯定しており、軍用基地周辺住民による騒音被害を理由とする差止訴訟において同要件が肯定されるべきことは、既に判例上決着している。 ⑵ 本件の具体的事情からも「重大な損害を生ずるおそれ」が認められること 厚木基地4次行訴最判の判断枠組みに沿って本件について検討しても、「重大な損害を生ずるおそれ」の要件が認められる。 すなわち、同要件における第一次的な判断要素は損害の回復の困難性であり、事後的な救済が容易か否かで類型的に判断されるべきところ、航空機が基地を離着陸するたびに騒音が発生し、その被害もそれに応じてその都度発 生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれがあるという実態があれば、定型的に同要件が肯定されるといえる。他方で、処分の公共性や公益性は、本来同要件において考慮されるべきではなく、考慮されるとしても重視されるべきではない。 原告らは、第一種区域内に居住しているところ、原告らに生じる航空機騒音による損害は次のとおりであり、同要件が認められる。 ア軍用機騒音の特質性等(ア)軍用機のうるささ騒音の不快感に関連する諸要素として、一般に、騒音のレベル(音量)、ピッチ(音の高さ)、時間的変動(レベルや周波数の変動、立ち上がりの傾斜、繰り返し等)、音の非局在性(音源の位置)、不必要な騒音か否か、 地域性、公共性、利害関係、被害者・加害者の立場の互換性、被害者の数などが挙げられる。また、騒音が断続的であれば、そのこと自体によってアノイアンス(騒音による不快感)が高められ、ピークレベルの騒音持続時間が長くな 利害関係、被害者・加害者の立場の互換性、被害者の数などが挙げられる。また、騒音が断続的であれば、そのこと自体によってアノイアンス(騒音による不快感)が高められ、ピークレベルの騒音持続時間が長くなくとも、騒音の最大値が大きいほど人間に与える影響は甚大になる。 航空機騒音の特徴として、①音量が極めて大きく、特にジェット機ではその最大レベルが人間の可聴限界である130dBに達すること、②特に、ジェット機において着陸時に生じる騒音には高周波成分を含む金属音の純音成分が含まれ不快感を増大させること、③騒音の発生が間欠的であり、持続時間は短くても一度の騒音で生じた心理的動揺等は残存 すること、④騒音レベルや周波数構成が絶えず変動するとともに、音の立ち上がりが急激であり、不快感を増幅させること、⑤音源が上空にあって絶えず移動し、騒音の範囲が広大で家屋構造による遮音が難しいことなどが挙げられ、騒音のうるささの要素を全て兼ね備えており、航空機騒音は他の騒音源と比べて、その「うるささ」は著しいといえる。 さらに、軍用機騒音については、民間機とは異なり低騒音化が進まず、音量に20dB以上の違いがあることや、高周波音を多く含み、音量や周波数の変動も大きいこと、飛行コースの非局在性、騒音発生の不規則性、夜間・深夜の飛行があること、飛行機種の多様性、基地の周辺住民にとって不必要な騒音であること、低周波音が大きいこと、軍用機に事故が多いことなどの要素も相まって、民間航空機の騒音と比べても特に うるささは顕著である。 (イ)低周波音W値の算定においては、低い周波数の音が小さく評価されるから、航空機騒音に高レベルの低周波音が含まれていてもその影響がほとんど反映されない。しかし、低周波音には、家屋の防音効果が及びにくい、屋 の算定においては、低い周波数の音が小さく評価されるから、航空機騒音に高レベルの低周波音が含まれていてもその影響がほとんど反映されない。しかし、低周波音には、家屋の防音効果が及びにくい、屋 内で共鳴しやすい、距離減衰しにくいなどの、中・高周波音とは異なる特殊な性質がある。また、環境省による調査等では、低周波音が圧迫感・振動感を伴う心理的影響、頭痛、耳鳴り、吐き気などの生理的影響、入眠障害や早期覚醒などの睡眠への影響や、建具のがたつき等の物的影響を生じさせることが指摘されている。さらに、世界保健機関(以下「W HO」という。)は、低周波音に関し、騒音に低周波音が含まれる場合は、不快感においてより強い住民反応が報告されること、低周波音が含まれない場合よりも低い環境騒音のガイドライン値が適用されるべきであること、低周波成分が卓越している場合はA特性による評価は不適切であることなどを指摘している。 したがって、航空機騒音の被害の総体を把握するためには、低周波音による心身等への影響を考慮する必要がある。 イ軍用機騒音等による被害原告らは、航空機騒音により、会話妨害等の聴取妨害、仕事・趣味の妨害、イライラ感・不快感(アノイアンス)の惹起等の日常生活における被 害、睡眠妨害、耳鳴り、高血圧及び虚血性心疾患等を含む健康被害を被っており、子どもについては、大人と比較して更に重大な損害を受け、あるいはそのリスクにさらされている。このほかに、原告らは、航空機事故の危険や、聴取妨害による交通事故の危険にもさらされている。 上記のうち、健康被害及び事故の危険に日常的にさらされていることは、原告らの生命・身体権(憲法13条)に対する侵害である。実際に健康被 害を生ずるに至っていなくても、健康被害に対する不安は 。 上記のうち、健康被害及び事故の危険に日常的にさらされていることは、原告らの生命・身体権(憲法13条)に対する侵害である。実際に健康被 害を生ずるに至っていなくても、健康被害に対する不安は全ての原告に共通して認められ、睡眠妨害は、健康被害を高めるリスクを増加させるほか、仕事や私生活上の様々な活動を停滞させ、あるいはその危険性を高めている。また、聴取妨害、作業妨害、イライラ感・不快感(アノイアンス)の惹起等の被害は、日常的に生じ、かつ、長期間継続して日常生活全般に及 んでいるから、原告らは、人格的存在として生存する権利である人格権(同条)を侵害されているといえ、この人格権には、健康上の危険にさらされることなく平穏かつ安全に生活する権利である平穏生活権も含まれる。 原告らの被っている具体的な被害は次のとおりである。 (ア)健康被害 航空機騒音が、騒音に曝露される人に対し、健康影響を含め、看過しえない悪影響を及ぼすものであることは、WHOによるガイドラインが存在するなど国際的に確立した知見である。 すなわち、環境騒音により、高血圧、心臓血管系疾患、子どもの認知能力の低下、聴力損失と耳鳴、低体重児の出生等が生じると指摘されて いるほか、騒音による精神的ストレスにさらされ続けることで、身体面の疾患に至り、自律神経、内分泌、免疫システムのバランスを失わせ、様々な病気を招くことなどが指摘されている。また、騒音による高度の睡眠妨害によって、睡眠障害に至ることもある。 現に、原告らの中にも高血圧症、虚血性心疾患、不眠症等を発症した 者がいる。 (イ)睡眠妨害原告らは、深夜・早朝の騒音により、入眠を妨げられ、睡眠の途中や早朝に覚醒させられるなど睡眠を妨害され、翌日の 圧症、虚血性心疾患、不眠症等を発症した 者がいる。 (イ)睡眠妨害原告らは、深夜・早朝の騒音により、入眠を妨げられ、睡眠の途中や早朝に覚醒させられるなど睡眠を妨害され、翌日の不眠感や疲労感等を訴えている。また、昼間は夜間よりも大きく多数の騒音が発生するが、交代勤務や夜間勤務等のために夜間以外の時間帯に就寝しなければな らない原告らも多数いる。 睡眠が心身の健康を保つうえで極めて重要であることはいうまでもなく、睡眠妨害は健康に影響を及ぼすと同時に、高頻度の睡眠妨害はそれ自体が疾患になり得、自律神経系等への悪影響を生じさせ、健康障害を引き起こすのであり、睡眠妨害は深刻な被害である。 (ウ)アノイアンス(不快感)アノイアンスとは、音に関わる不快感の総称であり、騒音影響に特有の概念であって、生活妨害も含めて騒音による直接的、間接的影響の総体がもたらす迷惑感、邪魔感、煩わしさであるとも指摘される。アノイアンスは、騒音源の情報を含む騒音の特性だけではなく、音以外の社会 的、心理的、経済的な要因の影響も受ける。WHOは、高度な不快感(アノイアンス)を生じることも健康影響として位置付けている。 原告らは、騒音そのものからアノイアンスを生じさせられると同時に、会話等の聴取、仕事、趣味などを妨害され、体調への影響を感じさせられるなど、日常生活を妨害させられることにイライラや不安を覚え、健 康や航空機事故の不安等を掻き立てられ、これらによってアノイアンスを生じさせられてもいる。 (エ)生活妨害原告らは、航空機騒音により、家族等との会話を妨害されたり、電話での会話を中断させられたり、テレビ・ラジオの視聴等を妨害されたり、 休息を妨げられたりして、平穏な生活を著 活妨害原告らは、航空機騒音により、家族等との会話を妨害されたり、電話での会話を中断させられたり、テレビ・ラジオの視聴等を妨害されたり、 休息を妨げられたりして、平穏な生活を著しく妨害されている。 (オ)知的作業の妨害原告らは、趣味、宗教活動、仕事、集中する必要のある作業等の知的作業を妨害されている。これらの活動は、人の自己実現等に関わり、これを制限されることによる精神的苦痛は甚大である。 (カ)子どもの発育等に関する被害 子どもは、騒音の影響を受けやすい高感受性群であるだけでなく、成長・発達の途上にあり、騒音曝露により発達に影響を受け、その影響が将来にわたって及ぶことからすれば、その被害は不可逆的である。低体重児出生と騒音との関係が明らかにされているほか、騒音によって睡眠妨害、注意力や集中力の低下と学習妨害も引き起こされている。 そして、これらの被害は、子育てをする親の不安としても顕在化しているといえる。 このように、原告らは、その年齢にかかわらず、子どもの頃から騒音にさらされることにより成長、発達を妨害されるなどし、親としても子どもの養育を妨害されるという被害を受けている。 (キ)墜落事故等、交通事故の危険昭和27年4月から平成26年1月までの集計で、神奈川県内で発生した軍用機の墜落・不時着、軍用機からの落下物等の事故は242件にも及び、厚木基地周辺では、軍用機が住宅地に墜落して住民に多数の死傷者を発生させる事故が何度も発生し、不時着や落下物の事故も後を絶 たない。これらの事故を目撃したり、新聞報道等により知ったりした周辺住民らは、事故自体に対する恐怖を抱くとともに、上空を飛行する軍用機に対する現実的で具体的な危険を実感して 物の事故も後を絶 たない。これらの事故を目撃したり、新聞報道等により知ったりした周辺住民らは、事故自体に対する恐怖を抱くとともに、上空を飛行する軍用機に対する現実的で具体的な危険を実感して、より強い精神的苦痛を抱えている。 軍用機の事故発生率は、10万飛行時間当たり24.53であり、民 間機の約200倍である。また、平成26年7月以降、頻繁に厚木基地に飛来するオスプレイについては、その構造上の欠陥等に起因して、重大事故の発生率が極めて高いことに加え、厚木基地は神奈川県内で有数の人口密集地にあり、トラブル発生時に市街地への被害を避けることが困難な状況であることも踏まえれば、厚木基地周辺においては航空機墜落等の危険性は抽象的なものにとどまらず現実の具体的な危険性を有 するものであるといえる。 軍用機による墜落その他の事故の頻発、その事故率の高さは、民間機と比べて突出しており、軍用機騒音のうるささやアノイアンスを高めている点で騒音に内在する特質であると同時に、単なるうるささの問題にとどまらない危険性として、独自の侵害行為性を有する。 また、航空機騒音は、その大きさや音質から、車のエンジン音、クラクション、遮断機の警報等をかき消すため、原告らは、航空機騒音によって常に交通事故の危険にさらされている。 (ク)低周波音による被害プロペラ機やヘリコプターからは高レベルの低周波音が生じている。 高レベルの低周波音は、人に心理的影響、生理的影響を及ぼすところ、これらの被害を訴える原告は、75W以上の区域全般に及んでいる。 そして、低周波音については、騒音とは異なり、規制基準、環境基準のいずれも定められていないものの、例えば、環境省は、「低周波音問題対応の手引書」(甲C17、乙C33。以下「 及んでいる。 そして、低周波音については、騒音とは異なり、規制基準、環境基準のいずれも定められていないものの、例えば、環境省は、「低周波音問題対応の手引書」(甲C17、乙C33。以下「低周波音手引書」という。 平成16年6月公表。)において、低周波音に係る物的苦情及び心身に係る苦情について、低周波音が原因か否かを判断するための、物的苦情に関する参照値と心身に係る苦情に関する参照値(以下、併せて「参照値」という。)を設定しているほか、中村俊一らによる「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」における「気になる-気にならない曲線」 の評価値、「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値が提唱されており、これらは航空機騒音を発生源とする場合にも評価指標となり得る。 (ケ)振動・排気ガス厚木基地周辺を飛行する航空機は、原告らの居住する家屋上空に飛来するとき、強い振動を引き起こす。また、航空機の飛行やエンジンテスト等により、厚木基地周辺地域には大量の排気ガスがまき散らされてお り、飛行経路直下においては、洗濯物の汚損などの被害も生じている。 これらの振動や排気ガスによる被害も、看過することができない。 ウ騒音等の状況(ア)騒音の測定結果等厚木基地周辺の各自治体及び神奈川県が設置している17か所の測定 地点(別紙8(自治体騒音測定点))における測定結果によれば、北1km、北2km、南500m、上土棚(県)の4地点における騒音の状況は、岩国移駐の前後にかかわりなく、土日、夜間(午後7時から午後10時まで)、早朝(午前0時から午前6時まで)・深夜(午後10時から午後12時まで)の時間帯を含め、1年間で測定された70dB以上の 騒音のうち最も高いdBが記録された騒音レベル(最高音)、 0時まで)、早朝(午前0時から午前6時まで)・深夜(午後10時から午後12時まで)の時間帯を含め、1年間で測定された70dB以上の 騒音のうち最も高いdBが記録された騒音レベル(最高音)、1年間で測定された70dB以上の騒音の測定回数、1年間で70dB以上の騒音が最も多く測定された日における当該騒音の測定回数及び1年間で測定された70dB以上の騒音の測定回数の1日当たりの平均について、それぞれ4次行政訴訟の審理対象期間である平成18年から平成25年ま での騒音状況と比較して、同程度の水準にあるといえる。 具体的には、最高音は、年間、土日、夜間を通じて、いずれの期間についても顕著な変化はなく、岩国移駐後も120dBに達する騒音が発生し、夜間の最高音も広い範囲で110dB又は100dBに達している。また、平成18年から平成25年までをみると、全体の70dB以 上の騒音測定回数は2割から3割程度変動しており、日曜日や早朝・深夜に限定するとさらに変動幅が大きくなるため、特定の地点や時間帯で短期的に騒音の減少が認められたとしても、その状態が継続するとは限らないことが分かる。現に深夜の測定回数は、令和3年以降増加傾向がみられる。 平成18年から平成25年までと比較可能のデータは上記4地点に限 られるが、厚木基地周辺で生じる航空機騒音の原因の大部分は、離着陸する航空機によるものであるから、各W値の区域に応じたレベルの差があるにしても、上記4地点で認められる上記の傾向は、他の13地点にも妥当する。 なお、これらの騒音は、すべて70dB以上、かつ、5秒以上継続し た騒音だけが測定されたものである。地方自治体による測定によれば、岩国移駐後に騒音の回数が約32%減少しているのに対して、管制の回数の減少率が約16.5% 70dB以上、かつ、5秒以上継続し た騒音だけが測定されたものである。地方自治体による測定によれば、岩国移駐後に騒音の回数が約32%減少しているのに対して、管制の回数の減少率が約16.5%にとどまっていること、原告らの測定によれば60dB台の騒音が相当数確認できることなどからすれば、70dB未満又は5秒未満の騒音も多数発生していることが明らかである。 (イ)低周波音の測定結果等原告らが低周波音を測定したところ、参照値、「気になる-気にならない曲線」及び「圧迫感・振動感の閾値曲線」の各評価値を大きく超える値が測定されている。このように厚木基地周辺の住民は、第一種区域に相当する広い範囲で、オスプレイを含むヘリコプター、プロペラ機によ って、環境省が設定した参照値等をはるかに超える高いレベルの低周波音に曝露されており、低周波音特有の被害を訴える原告らが75W以上の区域全域に存在していることも踏まえれば、これによる独自の影響と被害も明らかであるから、騒音とは別異の侵害行為として位置付けられるべきである。 したがって、原告ら厚木基地周辺住民は、等しく航空機騒音に含まれる高レベルの低周波音に曝露されることにより、上記低周波音特有の被害を受けているというべきである。 (ウ)岩国移駐後について騒音の物理的エネルギー量が同じでも騒音源によって住民反応は異なるところ、高度の不快感反応の訴え率である72%HAという評価尺 度を用いることにより、物理的エネルギー量だけではない騒音影響を把握し、異なる音源同士を比較することが可能である。 航空機騒音は、道路、鉄道などの他の交通騒音に比べて住民反応が大きく、道路騒音、在来鉄道騒音、新幹線鉄道騒音の規制は、概ね72%HAが約30%の水準で実施されている 士を比較することが可能である。 航空機騒音は、道路、鉄道などの他の交通騒音に比べて住民反応が大きく、道路騒音、在来鉄道騒音、新幹線鉄道騒音の規制は、概ね72%HAが約30%の水準で実施されているのに対し、民間機騒音について の第一種区域の指定は、72%HAが43%の水準に、軍用機騒音についての第一種区域の指定は、72%HAが67%の水準にそれぞれ相当する。 このように航空機騒音、とりわけ軍用機騒音については、他の交通騒音に比して規制が極めて緩いものとなっている。しかし、軍用飛行場周 辺に居住する住民のみが他の市民よりも過酷な環境を甘受しなければならない理由はなく、厚木基地周辺においても、72%HAが約30%となるような騒音のレベルをもって、航空機騒音に起因する障害が著しいと認められるべきである。 自動測定箇所における騒音の測定結果や被告が本件のために測定し た結果から厚木基地周辺の各地点のLden値を実測又は推計し、72%HAが30%以上となる区域(Lden47dB以上)を線引きすると、平成30年度においては、別紙9(72%HA30%図)の黒実線のとおりとなり、本件告示コンター図の第一種区域にほぼ相当する区域になる。 したがって、岩国移駐後も本件告示コンター図上の第一種区域における航空機騒音による障害は著しいというべきである。 エ事後的な回復になじまず、また、反復継続する行為により被害が蓄積されること前記イで示したこれらの損害は、ひとたび実害が生じてしまえば事後的な取消訴訟等によっては損害の原状回復を図ることが現実的に不可能な 性質のものであるし、金銭その他の代替物をもってそれを補填することで足りるとは到底考えられない。 また、原告らは、極めて長期間にわたり反復継続された航空機騒音とい 図ることが現実的に不可能な 性質のものであるし、金銭その他の代替物をもってそれを補填することで足りるとは到底考えられない。 また、原告らは、極めて長期間にわたり反復継続された航空機騒音という侵害行為により、その被害は身体及び精神に日々蓄積され、今後も騒音が続く限りその蓄積は続くのであって、これは、原告らの被害をより甚大 にし、事後的な回復を更に困難なものとするものである。 オ事後的な取消訴訟を想定し得ないこと防衛大臣による自衛隊機の運航処分は、自衛隊機の1回ごとの飛行をもって完結するから、このような性質を有する処分について、個々の航空機の運航について取消訴訟を提起することは事実上不可能であり、原告らの 被害を未然に防止する手段は差止訴訟しかあり得ない。 カ小括以上のとおり、本件についても原告らには「重大な損害を生ずるおそれ」が認められる。 2 被告の主張 ⑴ 「重大な損害を生ずるおそれ」の意義「重大な損害を生ずるおそれ」が認められるには、行政が第一次的判断権を行使する前の時点で司法が判断と措置を行うだけの十分な必要性が認められ、そのような事前の救済が司法の権能の面からみても無理のないものであることを要すると解される。本件自衛隊機差止めの訴えについては、原告ら の受ける損害が事後の損害賠償等によっては回復困難な性質及び程度のものか否かという点に加え、厚木飛行場の自衛隊機の運航という処分の内容・性質に照らし、その公共性・公益性の程度が十分に勘案されなければならない。 ⑵ 原告らが被るおそれのある損害の性質及び程度ア航空機騒音の特殊性航空機騒音は、音源である航空機が高速度で移動するものであることか ら、常時又は頻繁に発生するものではなく、1回当たりの発生持続時 それのある損害の性質及び程度ア航空機騒音の特殊性航空機騒音は、音源である航空機が高速度で移動するものであることか ら、常時又は頻繁に発生するものではなく、1回当たりの発生持続時間が短く、一過性のもので間欠的である。また、騒音がピークレベル値を示すのは瞬時にすぎないため、仮にある航空機の発する騒音により飛行場周辺住民の生活に何らかの影響があるとしても、その影響は短時間の後には消失し、生活上の平穏は直ちに回復する。また、厚木基地のような防衛施設 としての飛行場については、民間機が使用する飛行場とは異なり、航空機が比較的多く飛行する日もあればほとんど飛行しない日もあり、騒音が1年中発生していることはあり得ない。さらに、屋内においては、建物の遮音効果により騒音の影響は相当程度緩和される。 イ原告らは身体的、精神的反復継続的被害を招来するほどの航空機騒音に 曝露されていないこと原告らは、原告らが本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住している事実をもって、75W以上に相当する航空機騒音に曝露しており、「重大な損害を生ずるおそれ」があると主張する。 しかし、被告の行った各種音源対策、米軍に対する騒音軽減の申入れな どの結果、原告らが航空機騒音の状況の根拠とする本件告示コンター図の前提となる騒音の測定を行った平成15年度及び平成16年度と比較すると、騒音状況は大きく改善しており、特に岩国移駐後である平成30年4月以降は、相当改善されている。また、多額の費用をかけて精力的に実施してきた住宅防音工事の助成等の周辺対策によっても、航空機騒音によ る生活妨害の程度は、少なくとも相当程度まで軽減されている。 すなわち、令和元年度及び令和2年度に実施した騒音状況の調査に基づいて作成された厚木基地周辺 の周辺対策によっても、航空機騒音によ る生活妨害の程度は、少なくとも相当程度まで軽減されている。 すなわち、令和元年度及び令和2年度に実施した騒音状況の調査に基づいて作成された厚木基地周辺地域における5WごとのW値の分布を示す図面(別紙10(令和2年度分布図)。以下「令和2年度分布図」という。)によれば、岩国移駐後には、75W以上の区域が、本件告示コンター図における75W以上の区域や平成16年度騒音コンター図における75W 以上の区域よりも厚木基地に相当近い位置まで縮小し、90W以上の区域が厚木基地内に収まるなど、第一種区域に相当する程度の航空機騒音が生じている範囲は著しく小さくなり、航空機騒音が著しく低減している。 また、国が設置している自動測定装置14箇所においても、移駐の開始により、1箇所を除いてW値(環境基準方式)が減少しており、移駐完了 後は、全ての地点のW値(環境基準方式)がさらに減少し、騒音発生回数についても移駐開始後の平成29年度から令和4年度まで、移駐開始前の年度である平成28年度の騒音発生回数を一度も上回ったことがない。さらに、厚木基地周辺自治体も岩国移駐完了後の騒音低減を認めている。 以上のとおり、本件告示コンター図はその作成から10年以上が経過し、 もはや原告らが実際に曝露されている騒音の立証方法とはなり得ず、これをもって口頭弁論終結時の実勢騒音は認定できず、むしろ、令和2年度分布図によれば、原告らに身体的、精神的反復継続的被害を招来するほどの航空機騒音が発生していないことは明らかである。 ウ騒音被害の不存在 以下のとおり、原告らの主張立証によっても、航空機騒音によって、原告らに重大な被害が生じているとはいえない。 また、厚木基地周辺の実際の騒音の程度や住宅防音 ウ騒音被害の不存在 以下のとおり、原告らの主張立証によっても、航空機騒音によって、原告らに重大な被害が生じているとはいえない。 また、厚木基地周辺の実際の騒音の程度や住宅防音工事による減音効果なども考慮すれば、原告らが何らかの生活妨害を被っているとしても、相当程度まで軽減されているというべきである。 (ア)騒音被害これまで実施された国内外における国際的な調査・研究によれば、航空機騒音を受けることにより、肉体的、精神的に直接的かつ深刻な影響を受けることを示すものはなく、むしろそのような影響を及ぼすことは一般的に否定されている。そのため、これらの被害については個別具体的な立証を要するが、原告らは、身体的被害、生活妨害、精神的被害そ の他の被害のいずれについても具体的な主張立証をしない。 特に、睡眠妨害については、航空機騒音との関連性が現時点の科学的知見から明確でなく、個人差が極めて顕著な主観的なものであり、他の要因によっても生じるものである。また、原告らが睡眠をとる時間帯に日々、何dBの騒音にどのくらいの頻度で曝露されているかを捨象して、 一定のW値の騒音曝露の事実のみをもって睡眠妨害を認めることは明らかな誤りである。 また、原告らの主張する生活妨害について、一般的に航空機騒音が各種の生活妨害、不快感等の日常生活に望ましくない影響を与える可能性があることは否定できないが、本件で問題とされるのは一般的な影響で はなく、具体的な被害としての航空機騒音の内容・程度である。そして、航空機の離着陸に際してある程度の騒音が生じることは避けられず、厚木飛行場の供用による社会的効用が多大であること、被告は住宅防音工事等の対策によって被害の軽減に努めていることからすれば、ある程度の航空機騒音につい 際してある程度の騒音が生じることは避けられず、厚木飛行場の供用による社会的効用が多大であること、被告は住宅防音工事等の対策によって被害の軽減に努めていることからすれば、ある程度の航空機騒音については受忍限度を超えないものといわざるを得ない。 そうすると、騒音による生活妨害等の被害が一般通常人の社会生活上耐え難いものと認められるような重大かつ深刻な程度に至ったときに、初めて違法と判断するに足りる程度の被害があったといえ、それは、騒音レベルが相当程度に高い場合に限られるべきである。 さらに、原告らは上記生活妨害等を受けていることを前提に、これら に伴う精神的苦痛を受けていると主張する。しかし、そもそもうるささは、騒音被害として述べられているものに対する人間の主観的な反応であって、個人差が顕著なものであること、航空機騒音と人の精神症状との間に明確な関係性は認められないとの調査研究結果があることによれば、法による保護に値する利益の被害といえるかは慎重な検討を要する。 航空機騒音による精神的損害は、各原告の個別の主張立証なしに認める ことはできない。しかし、原告らは、各原告の個別の精神的被害について十分な主張立証をしない。 このほか、原告らは、各ガイドラインに照らして航空機騒音による生活妨害、アノイアンス、睡眠妨害等の被害を主張する。しかし、これらのガイドラインは、騒音による健康影響を防ぐために、健康影響を生じ る可能性がある一定の値を示したものにすぎず、同水準の騒音を受けた者が同様の健康影響を受けることを示すものではないし、被害の発生を推認させる基準になるものでもない。 (イ)振動・排気ガスこれまでの調査結果などからすれば、航空機による振動によって家屋 等に被害を生じさせるとは考えられておらず、 被害の発生を推認させる基準になるものでもない。 (イ)振動・排気ガスこれまでの調査結果などからすれば、航空機による振動によって家屋 等に被害を生じさせるとは考えられておらず、原告らも振動による具体的な被害等について主張立証していない。また、航空機の離着陸は単発的、間欠的であり、一定の時間間隔があること、航空機の排気ガスは大容量噴気で排ガス中の汚染物質の成分濃度が薄く、拡散率が高いことからすれば、大気汚染を起こすとはいい難い。 したがって、航空機による振動や排気ガスが基地周辺住民の健康及び生活環境等に特段の影響を及ぼすとはいえないから、航空機の騒音とは別に振動及び排気ガスが原告らに対する侵害行為となることはない。 (ウ)墜落事故等の危険そもそも航空機の墜落事故は極めてまれにしか発生せず、厚木基地は、 航空法の基準を満たし、航空管制に関する設備等も十分に具備され、米軍においても自ら安全性の確保に努めているのであるから、原告らの主張する航空機墜落の危険は抽象的なものにすぎない。そして、このような最善の措置がとられているにもかかわらず発生するような希少性の高い事故という抽象的な危険性に対する危惧感や不安感があることをもって、違法な権利利益の侵害が存するとは到底認められない。 (エ)低周波音原告らが高レベルの低周波音に曝露していたとはいえない。 すなわち、低周波音については家屋による防音効果、距離減衰等についても考慮する必要があるほか、その被害の認定においては、低周波音苦情の分類に応じた知見を考慮する必要があり、一般住環境にも低周波 音が存在するなど、苦情の存在から直ちに具体的な被害の存在が認められたり、その原因が航空機による低周波音にあると認められたりするもので に応じた知見を考慮する必要があり、一般住環境にも低周波 音が存在するなど、苦情の存在から直ちに具体的な被害の存在が認められたり、その原因が航空機による低周波音にあると認められたりするものではない。 また、短時間のみ曝露する航空機騒音に含まれる低周波音については、現時点において十分な調査研究が行われているわけではなく、その評価 方法も定まっていない。そして、原告らの主張する被害は、主張の根拠が明確でなく、これが厚木基地における航空機から発生する低周波音に起因するものと認めるに足る証拠はない。 ⑶ 公共性ないし公益性等ア厚木基地の重要性 厚木基地は、日本周辺のいずれの海域にも迅速に進出することができる位置にあり、海上からの侵攻に対する防衛を主たる任務とする海上自衛隊にとって、関東地方において最も重要な飛行場である。このような観点から、厚木基地には、海上自衛隊航空集団司令部及び隷下の第4航空群等が配置されている。 第4航空群は、主に、周辺海域における警戒監視・情報収集として対潜航空活動等を行っているほか、災害派遣等の民生協力活動、防災活動における地方自治体との連携、国際貢献及びこれらに必要な教育訓練を行っており、これらの活動には、固定翼哨戒機をはじめとする各航空機の運航が欠かせない。また、自衛隊において航空機を安全かつ効率的に飛行させ、その任務を遂行するために常日頃からの飛行訓練が必要不可欠であるこ とは明らかである。 イ周辺住民が厚木基地の設置により利益を受けていること自衛隊の活動範囲には厚木基地周辺地域も含まれているから、災害派遣等により周辺住民が利益を受けていることは明白である。そして、外部からの攻撃や災害等には平素から備える必要があるため、周辺住民らが 自衛隊の活動範囲には厚木基地周辺地域も含まれているから、災害派遣等により周辺住民が利益を受けていることは明白である。そして、外部からの攻撃や災害等には平素から備える必要があるため、周辺住民らが受け ている上記利益は日常的なものである。 また、厚木基地の所属部隊等は、基地周辺地域の市民生活において、社会貢献活動等を行っており、このような観点からも周辺住民らは厚木基地の設置により利益を受けているといえる。 ウ小括 以上のとおり、厚木基地は、航空基地として最適の立地に所在し、我が国の防衛拠点を成す重要な基地である。国の存立、平和と安全を保持し、原告らを含む国民の生命、身体、財産等を保護する上で、有事はもとより平時においても、有事の際の効果的な防衛活動に備えることは必要不可欠である。厚木基地における自衛隊機の運航処分は、その内容及び性質にお いて極めて高度の公共性・公益性が認められる。 ⑷ まとめ以上のとおり、原告らが航空機騒音により受ける生活妨害の程度を踏まえると、そのような損害は、厚木基地における航空機の運航を事前に差し止めなければ、原告らに回復困難な損害であるとまではいえない。また、厚木基 地における自衛隊機の運航処分は、その内容及び性質において、極めて高度の公共性・公益性が認められるから、重大な損害を生ずるおそれがあるとは認められない。 第4 争点3(航空機運航の違法性)について 1 原告らの主張⑴ 防衛大臣の処分が羈束処分であると解した場合 防衛大臣は、自衛隊機の運航に関する権限及び米軍機に対する厚木飛行場の使用承認・供用に際し、航空法1条及び自衛隊法107条5項により、周辺住民に対する障害発生防止義務を課せられている。 また、公共用飛行場周辺における航空機騒 関する権限及び米軍機に対する厚木飛行場の使用承認・供用に際し、航空法1条及び自衛隊法107条5項により、周辺住民に対する障害発生防止義務を課せられている。 また、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律は、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止、 航空機の離着陸の頻繁な実施により生ずる損失の補償その他必要な措置について定めることにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的として(同法1条)、航空機の騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するために必要があると認めるときは、経路又は時間その他飛行場及びその周辺における航空機の航行の方法を指定することができる旨を定めてい る(同法3条)。これは、厚木飛行場における自衛隊機の運航に直接適用されるものではないが、同法の示す障害発生防止手段は自衛隊機の運航においても有効であり、同法の趣旨は及ぶといえる。したがって、防衛大臣は、厚木基地周辺において、同法所定の措置その他航空機騒音による障害を防止・軽減するための適切な措置を講じる義務を負う。 防衛大臣による自衛隊機の運航又は米軍機に対する厚木飛行場の使用承認は、これらの義務に違反した状態で、自衛隊機を運航させ、あるいは米軍機に対して厚木飛行場を使用させてはならないという点で羈束処分である。 そして、被告は、以下のとおり、これらの義務に違反して自衛隊機を運航させ、米軍機に対して厚木飛行場を使用させようとしているのであるから、 違法であり、行訴法37条の4第5項前段の要件を満たす。 ア自衛隊機について(ア)夜間、深夜・早朝の運航の違法性夜間、深夜・早朝は、人の生命、健康の維持に不可欠な睡眠を取る時間であるとともに、人が1日の活動によ 5項前段の要件を満たす。 ア自衛隊機について(ア)夜間、深夜・早朝の運航の違法性夜間、深夜・早朝は、人の生命、健康の維持に不可欠な睡眠を取る時間であるとともに、人が1日の活動による心身の疲れを癒やす時間であり、その静ひつの必要性はいうまでもない。この時間帯における航空機 騒音は、原告らに睡眠妨害をもたらし、健康被害の大きな原因となり得るし、その他にもイライラ、恐怖や不安などの精神的苦痛が甚だしく、とりわけ深刻である。 平成30年にWHO欧州事務局が公表した「欧州地域向けの環境騒音ガイドライン」(甲C49。以下「平成30年ガイドライン」という。) では、航空機騒音について、住民の高度の睡眠妨害の反応率が3%となる曝露量としての夜間のガイドラインはLnight40dBとされている。 また、8時間の睡眠を確保するにあたり、90%の住民の睡眠を保護するには午後9時から翌午前8時まで、10歳以上の子供の入眠を保護 するには午後8時からの騒音を制限する必要があること、一般騒音・道路騒音の環境基準や騒音規制法に基づく工場騒音等の規制等の趣旨からすれば、少なくとも午後8時から翌午前8時までの時間帯の航空機騒音等の到達禁止が必要不可欠である。 そして、航空機騒音により睡眠が妨害されると、健康への影響が生じ るところ、WHOの「環境騒音のガイドライン実務的抄録」(甲C10。 以下「WHOガイドライン」という。)では、屋外の最大騒音レベル60dBが睡眠妨害の閾値とされているところ、厚木基地周辺では岩国移駐前後を通じて、70dBを超える騒音が深夜・早朝において頻繁に発生している。また、神奈川県では午後10時の時点で2割の住民が就眠し ていることに鑑みれば、睡眠妨害の有無を検討する際には、午 駐前後を通じて、70dBを超える騒音が深夜・早朝において頻繁に発生している。また、神奈川県では午後10時の時点で2割の住民が就眠し ていることに鑑みれば、睡眠妨害の有無を検討する際には、午後7時から午後10時までの夜間騒音発生回数も問題とすべきところ、岩国移駐後である平成30年4月以降も70dBを超える騒音が年間1000回程度以上発生している。 以上からすれば、夜間、深夜・早朝の騒音は睡眠妨害を生じさせるもので障害発生防止義務に違反するものといえる。 (イ)訓練のための運航の違法性原告らが被る被害の程度は、防衛出動等の緊急事態への対応を目的とする運航であろうと訓練のための運航であろうと変わりはない。訓練のための運航については、国の安全保障に対する危険や脅威が迫っているという事情はなく、その必要性や緊急性の程度は、緊急事態への対応を 目的とする運航と比較して格段に低い。むしろ、訓練のための運航の際には、しばしば低空飛行が行わるが、低空での飛行は大きな騒音を地上に到達させ、墜落等の事故発生の危険も高まる。人口密集地に位置している厚木基地において、そのような運航をする必要性は乏しい。 したがって、防衛大臣が厚木飛行場において、その必要性が乏しい訓 練目的で自衛隊機を運航させることが障害発生防止義務に違反することは明らかである。 (ウ)75Wを超えることとなる運航の違法性現在までの各地の軍用航空基地に関する判決は、初期のものを除いて、75Wを損害賠償上の違法基準とし、厚木基地についても、既に4度の 司法判断により75W以上の区域に居住する住民に対する騒音が国家賠償法(以下「国賠法」という。)上の違法性を有するとされており、被告は直ちにこの違法性を解消するための措置を講 も、既に4度の 司法判断により75W以上の区域に居住する住民に対する騒音が国家賠償法(以下「国賠法」という。)上の違法性を有するとされており、被告は直ちにこの違法性を解消するための措置を講じるべきであったにもかかわらず、その後も違法行為を継続させている。このような中で被告が優先して達成すべき最重要の行政目的は、司法より命じられた厚木飛行 場の使用又は供用における違法状態の解消である。したがって、75W以上となる航空機騒音を継続するという防衛大臣の判断は、上記行政目的との関係で原告らの被る被害が不相応に大きいもので、障害発生防止義務に違反するといえる。 なお、原告らは、施設庁方式では、現在においては、軍用航空機のうるささと住民反応を的確に評価できないと主張しているが、現状、厚木 基地について適用されているのは施設庁方式であり、これまで蓄積されてきた過去の各地の裁判例の違法基準もこれを用いてきたことを踏まえ、現時点における航空機騒音の差止めの基準値としては、これを用いることが最小限度の住民の保護として必要かつ適当である。 イ米軍機について (ア)目的外使用の承認の違法性厚木飛行場については、使用転換の際、米軍の専用する施設、区域への出入りのため及びそれに関連したその他の運航上の必要性を満たすときに、米軍にその使用が認められることとなったのであるから、防衛大臣は、米軍に対し、米軍の専用する施設及び区域への出入りのためにの み厚木飛行場の一時使用をさせることができる権限を有している。そうであるにもかかわらず、現在の運用は、米軍専用区域への出入りか否かを問うことなく、厚木飛行場の滑走路を使用させており、これが日米地位協定2条4項(b)に反する違法なものであることは明らかである。 であるにもかかわらず、現在の運用は、米軍専用区域への出入りか否かを問うことなく、厚木飛行場の滑走路を使用させており、これが日米地位協定2条4項(b)に反する違法なものであることは明らかである。 (イ)障害発生防止義務に反した使用承認の違法性 米軍の専用する施設及び区域への出入りのための使用であっても、防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の使用承認・供用が無制約に許されるわけではない。すなわち、防衛大臣の負う障害発生防止義務には一定の態様、程度で米軍に厚木飛行場を使用させない義務が含まれる。 そして、前記ア(ア)及び同(ウ)のとおり、夜間、深夜・早朝の米 軍機の運航及び75Wを超えることとなる当該米軍機の運航については、これらの離着陸等のための厚木飛行場の使用を承認し、これを供用する行為は、防衛大臣の障害発生防止義務に違反するものである。 ⑵ 裁量処分であると解した場合ア総論仮に、防衛大臣による自衛隊機の運航に関する権限及び米軍機に対する 厚木飛行場の使用承認・供用が裁量処分であるとしても、その裁量は限定される。すなわち、原告らの被害は、その生命、身体、健康及び平穏な生活等に関わる最も尊重されるべき基本的人権(憲法13条後段)そのもので優越的なものであるから、司法による慎重な審査が要求される。防衛大臣の処分について、政策的、専門技術的判断を要するとしても、それ自体 が広範な裁量を認めることの根拠になるものではない。 このように、本件においては、原告らの優越的な法益に対する受忍限度を超えた被害の許容性が問題になること、専門技術的で多様な諸利益の調整が必要となることに照らせば、防衛大臣の処分についての司法審査に当たっては、裁量処分に至る判断過程に焦点を当ててその合理性を審査する、 いわ 性が問題になること、専門技術的で多様な諸利益の調整が必要となることに照らせば、防衛大臣の処分についての司法審査に当たっては、裁量処分に至る判断過程に焦点を当ててその合理性を審査する、 いわゆる判断過程審査が採用されるべきであり、具体的には、基礎とされた重要な事実に誤認がある等により重要な事実の基礎を欠くこととなるかどうか、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるかどうかによって裁量の逸 脱・濫用があるか否かが判断されるべきである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同18年11月2日第一小法廷判決・民集60巻9号3249頁参照)。 なお、原告らは、個々の運航行為の防衛大臣の判断過程を審査することを求めているのではなく、周辺住民に対する受忍限度を超える騒音被害を 解消・防止するための計画や方針を定め、どのように運用しているかといった自衛隊機運航の統括・管理の在り方の審査を求めているから、本件においても判断過程審査を行うことは可能である。 そして、以下のとおり、原告らが差止めを求める各運航は、原告らに必要のない受忍を強いるものであることは明らかで、自衛隊機の運航処分は、その裁量を逸脱・濫用するもので違法である。 イ航空機騒音に係る基準が存在しないか不合理であること行政庁に裁量基準を定める義務がある場合には、裁量基準を定めることなしに裁量処分を行えば、それだけで裁量権の逸脱・濫用の理由となる。 また、行政庁が裁量基準を定め、それに従って裁量処分がされた場合でも、裁量基準に不合理な点があればそれに従ってされた裁量処分も違法とな る。 自衛隊法107条5項によれば、防 なる。 また、行政庁が裁量基準を定め、それに従って裁量処分がされた場合でも、裁量基準に不合理な点があればそれに従ってされた裁量処分も違法とな る。 自衛隊法107条5項によれば、防衛大臣には航空機の運航に関する基準を定め、航空機による災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講ずることが求められている。そして、同基準には、航空機騒音による基地周辺住民の被害防止のための基準も含まれると解され、航空機に よる災害防止に必要な措置等を含め、防衛大臣が自衛隊機の運航処分を行うに際しては、これらの基準に従う義務がある。 防衛大臣が同項に基づいて自衛隊機の運航に関する基準として定めたものとして、航空機の運航に関する訓令、航空機の運航に関する達、厚木飛行場規則及び規制措置通知が挙げられ、厚木飛行場規則及び規制措置通知 には、一応、基地周辺住民の騒音被害に配慮したとみられる規定が存在するが、これらは、いずれも基地周辺住民の騒音被害を防止するには実効性が極めて不十分であり、実質的にみて基準制定の法的義務を果たしていないというべきであるし、少なくとも裁量基準としての合理性が欠如している。 すなわち、これらの規制は、飛行の時間に関する制限については、訓練飛行及び地上試運転のみを対象としており、連続離着陸訓練機数及び連続離着陸訓練回数の制限については、具体的な制限内容が規定されておらず、実質的には規制がされていないのに等しいものであるなど、騒音による障害の防止にとって極めて不十分であり、これに従って自衛隊機の運航が行われても騒音被害は決して解消されることはない。現に、これらの規制が あるにもかかわらず、これまで厚木基地周辺住民への受忍限度を超える違法な航空機騒音が継続しており、これらの 自衛隊機の運航が行われても騒音被害は決して解消されることはない。現に、これらの規制が あるにもかかわらず、これまで厚木基地周辺住民への受忍限度を超える違法な航空機騒音が継続しており、これらの規制の実効性がないことは明らかである。 したがって、実質的には騒音防止の基準制定義務は果たされていないか、少なくとも不合理な内容の裁量基準しか策定されていないから、これに基 づいてされる防衛大臣の自衛隊機の運航処分には裁量権の逸脱・濫用がある。 ウ自衛隊機の運航処分の判断過程の不合理性(ア)被侵害利益の過小評価等厚木基地については、過去4度にわたる確定判決において、40年以 上にわたる航空機騒音が周辺住民に受忍限度を超える違法な侵害行為であることが繰り返し示されており、防衛大臣は、自衛隊機の運航処分を行うに際しては、基地周辺住民への騒音被害防止を何よりも優先して考慮しなければならない。しかし、実際の自衛隊機の運航においては、現時点においてもなお規制・対策を強化することなく、基地周辺住民に受 忍限度を超える騒音被害を及ぼし続けており、この現状をみれば、防衛大臣が騒音被害の防止を考慮していないか、少なくとも軽視していることは明らかで、騒音等による被害の事実に対する評価が明らかに合理性を欠き、また、判断過程において考慮すべき事情を考慮しないものというほかなく、この点において裁量権の逸脱・濫用が認められる。 (イ)自主規制や周辺対策等の騒音対策措置の過大評価被告による騒音対策措置は、その措置をとってもなお現存する深刻な被害の中に取り込まれており、再び独立してこれを取り上げて被害の深刻さと比較考量することは、論理矛盾である。したがって、これを裁量判断の考慮要素とすることは、不当な他事考慮で てもなお現存する深刻な被害の中に取り込まれており、再び独立してこれを取り上げて被害の深刻さと比較考量することは、論理矛盾である。したがって、これを裁量判断の考慮要素とすることは、不当な他事考慮であり、裁量権の逸脱・濫用があると評価すべきである。 また、騒音対策措置にもかかわらず、国賠法上違法とされる騒音被害の改善には至っていないのであるから、これを相応なものと積極的に評価することは、少なくとも、事実に対する評価の明らかな合理性の欠如にほかならず、また不当な過大考慮であり、裁量権の逸脱・濫用があると評価すべきである。 (ウ)自衛隊機運航の公共性・公益性の過大評価厚木基地周辺住民が被っている被害は憲法上の人格権・人格的利益そのものにかかわるから、その侵害が許されるのは、それを上回る憲法上の要請が認められる場合に限られ、それは、例えば他国軍から攻撃を現に受けているかその危険が極めて切迫しているなど、厚木飛行場におけ る自衛隊機の運航ができないことで多数の国民の生命や身体に対する具体的かつ現実的な被害が予想される場合などであり、単に、自衛隊機の運航が我が国の防衛や公共の秩序の維持に関わっているという抽象的な必要や理由だけでは、その侵害は許されない。また、国防等に関する公共的な利益は国民全体が享受するものであるところ、そのための負担を 厚木基地周辺住民だけが負わなければならない理由もない。 厚木基地については、その騒音状況について、過去4度にわたる司法の違法判断に拘わらず、防衛大臣は、受忍限度を超える騒音被害を強いる自衛隊機の運航処分を続けてきたのであるから、上記の抽象的理由や必要性が基地周辺住民の被害を防止する重要性や必要性を上回るという 判断をしていると考えるほかなく 忍限度を超える騒音被害を強いる自衛隊機の運航処分を続けてきたのであるから、上記の抽象的理由や必要性が基地周辺住民の被害を防止する重要性や必要性を上回るという 判断をしていると考えるほかなく、自衛隊機の抽象的な任務を過大評価している判断過程には明確な不合理性が認められ、その裁量権の逸脱・濫用があるというべきである。 また、そもそも抗告訴訟において、行政処分の違法性を判断するに際して改めて公益性や公共性を考慮することは想定されていない。 そして、前記⑴アのとおり、厚木基地において夜間飛行をする必要性・ 重要性は認められず、住宅密集地に所在する厚木飛行場で自衛隊機が訓練飛行をする必要性・重要性も認められない。また、75Wを超えることとなる航空機騒音は、環境基準やWHOガイドライン等の許容限度を超え、各地の航空基地騒音訴訟においても国賠法上違法とされる水準のものであり、このような騒音を発生させる航空機の運航に公共性・公益 性を認めることはできないし、少なくとも住民らに生じる深刻な騒音被害に優先させるべき程度の高度の公共性・公益性が認められないのは明らかである。 (エ)被告が主張を尽くさない場合には裁量権の逸脱・濫用があると認定すべきこと 公権力の行使には法的な根拠が必要であり、行政庁は、事前にその法的根拠を検討した上で当該行為をすべきであり、しかも国民に対して自己の行為についての説明責任を負っているのであるから(行政機関の保有する情報の公開に関する法律1条参照)、本来、抗告訴訟においては、当該行為を行った経緯、行為の内容及びその法的根拠について具体的に 主張すべき訴訟上の義務がある。 そして、本件のように国民の自由権的基本権にかかわる行政処分の適法性につい は、当該行為を行った経緯、行為の内容及びその法的根拠について具体的に 主張すべき訴訟上の義務がある。 そして、本件のように国民の自由権的基本権にかかわる行政処分の適法性については被告に主張立証責任があると解すべきで、仮に、被告が上記の説明責任を果たさない場合には、裁量権の逸脱・濫用がないことを基礎付ける事実はないものと扱い、裁量権の逸脱・濫用があると認定 されるべきである。仮に、裁量権の逸脱・濫用に係る主張立証責任が原告らにあるとしても、被告が主張立証を尽くさない場合には、過去4度にわたる確定判決において国賠法上違法と認定された騒音被害が現時点でも継続しているのであるから、事実上の推定により、裁量権の逸脱・濫用があると認定されるべきである。 2 被告の主張 ⑴ 防衛大臣には広範な裁量があることア自衛隊法には、いかなる要件で自衛隊機を運航すべきかという点について定めた明文の規定はないが、自衛隊機の運航は、特に主たる任務である国の防衛(自衛隊法3条)を確実、かつ、効果的に遂行するため、防衛政策全般にわたる判断の下に行われるものということができ、防衛大臣は、 同法8条により自衛隊機の運航を統括する権限を有していることを根拠に、航空機使用訓令を定め、航空機使用者と航空機を使用できる場合とを具体的に規定し、自衛隊の任務に応じて必要かつ合理的な使用を認めている。 自衛隊の任務遂行のため、自衛隊機に関しては一般の航空機と異なる特 殊の性能、運航及び利用の態様等が要求されることから、自衛隊機の運航については、同法107条1項、4項により、航空機の航行の安全又は航空機の航行に起因する障害の防止を図るための航空法の規定の適用が大幅に除外されている。防衛大臣には、自衛隊法107条5項によって 航については、同法107条1項、4項により、航空機の航行の安全又は航空機の航行に起因する障害の防止を図るための航空法の規定の適用が大幅に除外されている。防衛大臣には、自衛隊法107条5項によって、自衛隊機の運航の特殊性に応じて、その航行の安全及び航行に起因する障害の 防止を図るための規制を行う権限が与えられており、自衛隊機の安全性及び運航に関する基準、自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する基準等を定め、その他航空機による災害を防止し、公共の安全を確保するために必要な措置を講ずべきものとされている(厚木基地1次最判)。 したがって、防衛大臣は、所定の目的のため「航空機を使用する必要があるとき」又は「航空機を使用する必要がある場合」(航空機使用訓令3条)という要件を満たすか否かを判断する際に、騒音等による周辺住民への影響にも配慮して自衛隊機の運航を規制すべきか否かの判断を求められるところ、その判断は、自衛隊機の運航の必要性、すなわち、自衛隊機の運航の公共性、公益性の程度と、それによって害される被害の内容及び程度 を総合的に考察してされるべきである。 このような判断を伴う自衛隊機の運航は、任務や行動の性質上、事前に具体的な要件又は基準を定めることに適さず、国内外の情勢に応じた極めて高度の政治的判断が求められるほか、防衛戦略上の専門技術的判断も求められる。また、自衛隊の任務を円滑かつ適切に遂行するためには、日常 的にそのための教育訓練を行う必要があるが、これについても、予算や人員等の制約に加え、国際情勢などに応じて臨機応変に行う必要があり、いつ、どの程度の訓練を行うべきかを一律に決めることは困難であり、高度の政治的判断が求められるほか、防衛戦略上の専門技術的判断も求められる。 国際情勢などに応じて臨機応変に行う必要があり、いつ、どの程度の訓練を行うべきかを一律に決めることは困難であり、高度の政治的判断が求められるほか、防衛戦略上の専門技術的判断も求められる。 これらの自衛隊法の規定や自衛隊機の運航に関する特殊性を踏まえると、同法107条5項に基づく自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、防衛大臣の広範な裁量に委ねられているというべきであり、羈束処分であるとする原告らの主張には理由がない。 イそして、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使については、防 衛大臣に広範な裁量が認められていることに照らせば、自衛隊が設置する飛行場において継続してきた自衛隊機の運航やそれによる騒音被害等に係る事実関係を踏まえた上で、当該飛行場における自衛隊機の運航の目的等に照らした公共性や公益性の有無及び程度、上記の自衛隊機の運航による騒音により周辺住民に生ずる被害の性質及び程度、当該被害を軽減するた めの措置の有無や内容等を総合考慮して、同権限の行使が防衛大臣の裁量権の行使としてされることを前提として、それが社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法になるというべきである(厚木基地4次行訴最判)。 ⑵ 騒音の発生回数や騒音の程度の実状、裁量の逸脱、濫用の不存在 厚木基地4次行訴最判は、その事実審の口頭弁論終結時である平成27年当時の事実関係を前提として、裁量権の逸脱、濫用はないと判断したが、同最判で考慮された諸般の事情は、現在に至るまで変わらないか、むしろ改善している。 すなわち、厚木基地を離着陸する自衛隊機による諸活動は、我が国の安全 に寄与するもので、公共性、公益性を有し、自衛隊機の運航が極めて高度な 現在に至るまで変わらないか、むしろ改善している。 すなわち、厚木基地を離着陸する自衛隊機による諸活動は、我が国の安全 に寄与するもので、公共性、公益性を有し、自衛隊機の運航が極めて高度な政治的、専門的及び技術的な判断に基づくもので緊急の必要性が高く、重要性を否定できないものであり、これらの諸活動は昼夜問わず認められるものであること、訓練についても、極めて高度な政治的、専門的及び技術的な判断が必要であることに変わりはない。また、被告は、生活環境整備法等に基 づく周辺対策事業に多額の費用を支出しており、これを今後も継続する予定であり、室内における騒音が軽減される防音工事実施済みの住宅は今後も増加することが見込まれる。さらに、海上自衛隊は、平成27年以降も自主規制を続け、毎日午後10時から翌日午前6時までの時間帯については、全ての自衛隊機につき、訓練飛行も地上試運転も行わないこととしており、当該 時間帯における自衛隊機の離着陸回数は、平成25年度及び平成26年度と同程度に抑えられている。加えて、自衛隊機の運航の違法性を判断するに当たって米軍機の運航により発生する騒音等の影響を考慮することは相当ではないが、そのことを措くとしても、日米合同委員会において、米軍の航空機騒音の規制に関し、午後10時から午前6時までの時間帯において、厚木 基地における全ての活動を禁止する等諸種の措置を設ける合意をするなど、被告は米軍機の騒音軽減にも可能な限り努めており、岩国移駐によって厚木基地の供用によって生じる航空機騒音は、平成27年当時と比較して相当程度軽減されてもいる。 以上からすれば、防衛大臣の権限の行使が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められず、裁量権の逸脱又は濫用はない。 ⑶ 本件の具体的事情につ して相当程度軽減されてもいる。 以上からすれば、防衛大臣の権限の行使が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められず、裁量権の逸脱又は濫用はない。 ⑶ 本件の具体的事情についてア航空機騒音によって原告らが被るおそれのある損害の性質及び程度前記第3・2⑵のとおり、①航空機騒音は、常時又は頻繁に発生するものではなく、1回当たりの発生持続時間が短く、一過性のもので間欠的であり、騒音が1年中発生していることはあり得ないなどの特徴があり、② 原告らは身体的、精神的反復継続的被害を招来するほどの航空機騒音に曝露されておらず、③原告らに航空機騒音によって重大な被害が生じているとはいえない。 イ公共性ないし公益性等前記第3・2⑶のとおり、厚木基地は海上自衛隊にとって関東地方にお ける最も重要な飛行場であり、厚木基地を利用した自衛隊の任務遂行は、我が国の安全確保に極めて大きい意義を有しており、自衛隊の活動範囲には厚木基地周辺地域も含まれているから、周辺住民らは厚木基地の設置により利益を受けているといえるのであり、厚木基地における自衛隊機運航処分は、その内容及び性質において極めて高度の公共性・公益性が認めら れる。 ウ被害軽減措置被告は、以下のとおり、厚木飛行場の存続によってもたらされる公益の重大性と厚木飛行場を維持するために影響を受ける住民の生活上の利益との調和を図るため、航空機騒音の軽減に向けた種々の対策をしており、こ れは、防衛大臣の権限行使の裁量権の逸脱又は濫用の有無の判断において、十分に斟酌されるべきである。 (ア)FCLPの実施場所の移転及び低騒音機の導入等被告は、NLPを含むFCLPによる騒音の軽減を図るため、FCLPの実施場所が移転 有無の判断において、十分に斟酌されるべきである。 (ア)FCLPの実施場所の移転及び低騒音機の導入等被告は、NLPを含むFCLPによる騒音の軽減を図るため、FCLPの実施場所が移転されるよう米国に対し、硫黄島の使用を含むあらゆる暫定措置の検討を申し入れ、平成元年から硫黄島を暫定的に使用する ことについて米側の基本的了解を得て、平成5年3月末に、硫黄島に必要な施設を完成させた。同年9月以降は、天候不良等のやむをえない事情がない限り、米軍はFCLPを硫黄島で実施するようになった。これにより、最近10年間で厚木基地においてFCLPが実施されたのは、平成24年の3日間のみであり、空母艦載機の移駐が完了した平成30 年以降は一度も実施されていない。 また、被告は、海上自衛隊第3航空隊に配備されていたP-3C哨戒機について、平成25年3月以降、民間航空機に対する規制であるICAO騒音基準値もクリアする、より静寂性と安全性に優れたP-1哨戒機に順次更新し、厚木基地内の3か所に自衛隊機及び米軍機の消音装置 を設置するなどして、航空機騒音の静粛化を図った。 さらに、被告は、騒音規制合意による規制及び自衛隊の自主規制によって、運航時間帯の規制、離着陸の方法、滑走路の使い方、飛行経路、航空交通管制の方法等を変更し、累次にわたって米軍に対して騒音軽減に努めるよう申入れをしたりしている。 (イ)岩国移駐被告は、深刻化する厚木基地の騒音問題について、米軍の抑止力を維持しつつ、騒音等の地元の負担を軽減するため、米国政府と検討を重ね、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場へ移駐することを計画した。移駐は、平成29年8月に開始し、平成30年3月30日 に約60機の固定翼機 を軽減するため、米国政府と検討を重ね、厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場へ移駐することを計画した。移駐は、平成29年8月に開始し、平成30年3月30日 に約60機の固定翼機の移駐が完了した。この結果、移駐開始後から騒音が大きく低減し、移駐完了後は更に騒音が低減した。 したがって、岩国移駐に関して被告が努力した経緯や騒音の低減を考慮すると、少なくとも岩国移駐開始以降は、騒音発生に係る違法性は認められない。 (ウ)周辺対策等 被告は、厚木基地の存続によってもたらされる公益の重大性とこれを維持するために影響を受ける住民の生活上の利益との調和を図るために種々の周辺対策等を実施しており、これにより、周辺住民への不利益ないし影響は、既に相当程度防止又は軽減されている。 移転措置は、航空機騒音の影響を抜本的に解決する手段であり、十分 に考慮されるべきである。 住宅防音工事は、25dB以上又は20dB以上の計画防音量を目標とした住宅防音仕方書に従った図面どおりに施工されたことが担保されており、計画防音量を達成し、75W以上の区域において屋内で60W以下に維持することが望ましいとされる行政上の理想値である環境基準 を達成するよう実施されているといえる。そして、被告は、令和4年度までに、住宅防音工事を延べ35万5089世帯に実施しているのであるから、違法性の判断において、被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等に関する事情として考慮されるべきである。 その他の防音工事として、被告は、学校等、病院等に対する防音工事 助成及び民生安定に係る施設の防音工事助成をしており、それぞれ十分な防音効果が生じているといえるから、これも違法性の判断において考慮されるべきである。 被告は 校等、病院等に対する防音工事 助成及び民生安定に係る施設の防音工事助成をしており、それぞれ十分な防音効果が生じているといえるから、これも違法性の判断において考慮されるべきである。 被告は、騒音対策以外にも生活環境に及ぼす影響を緩和することを目的とした助成措置を行うなどし、厚木飛行場周辺地域の住民は利益を得 ている。これらは、直接的に騒音値を低下させるものではないが、騒音による精神的不快感を解消又は軽減させるものであるため、適切に考慮されるべきである。 エまとめ以上のとおり、厚木基地4次行訴最判が前提とした諸般の事情は、被告の努力によって、その後さらに改善されたことが明らかであるから、厚木 基地における自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使について、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 第5 争点4(確認の訴えの利益の有無)について 1 原告らの主張本件確認の訴えは、自衛隊機の運航及び米軍機のための施設供用という個別 一定の処分の違法性の判断を求める差止めの訴えとは異なって、当事者訴訟としての確認の訴えとして、被告による厚木飛行場の管理運営によって、一定限度以上の航空機騒音にさらされて、生命・身体や平穏な生活等を侵害されることのない周辺住民の国に対する基本的人権としての憲法13条に基づく人格権の確認を求めるものである。 被告は、過去4度の確定判決によって、厚木飛行場の管理運営上の瑕疵が指摘され、当該瑕疵の解消・予防を図って違法な人格権侵害を防止すべき立場に置かれているというべきで、本件確認の訴えは、このような継続する違法な権利侵害状態を将来に向けて抜本的に解消するため、被告による厚木飛行場の管理運営が瑕疵ある状態にならないよう、すなわち、航空機騒音が75Wを超え で、本件確認の訴えは、このような継続する違法な権利侵害状態を将来に向けて抜本的に解消するため、被告による厚木飛行場の管理運営が瑕疵ある状態にならないよう、すなわち、航空機騒音が75Wを超え ないよう、被告が可能な様々な施策をとるべきことを求めるものである。 このように、原告らは、自衛隊機及び米軍機の運航だけを対象としているのではなく、広く原告らの人格権に対する侵害を除去する方法を求めているから、厚木飛行場の管理運営上の瑕疵を生じさせている被告の個々の行為を問題とする請求形式よりも、確認対象の選択として適切である。 また、紛争の抜本的な解決の観点において、多岐にわたる被告の個々の行為についての給付請求よりも適切かつ必要な請求方式であり、方法の選択としても適切である。原告らの人格権侵害を速やかに解消するためには自衛隊機及び米軍機の運航の制限以外にも被告は施策を講じなければならず(自衛隊法107条5項参照)、差止請求のほかにその施策を求める本件確認の訴えが有効・適切であり、他に適切な方法は見出し難い。 さらに、既に厚木飛行場の管理運営に瑕疵がある旨の判決が4度にわたり確定しているから紛争の成熟性もある。 したがって、本件確認の訴えには確認の利益が認められる。 2 被告の主張⑴ 本件自衛隊機確認の訴えが抗告訴訟中心主義に反すること 行訴法においては、公法上の法律関係に関する争いであっても、公権力の行使によって形成される法律関係に関するものは抗告訴訟によるべきことが予定されている。 本件確認の訴えのうち、自衛隊機に関する部分(以下「本件自衛隊機確認の訴え」という。)は、実質的に、被告が、原告らに対し、一定程度を超える 航空機騒音を発生させないような施策を講ずる義務を負うことの確認を求め ち、自衛隊機に関する部分(以下「本件自衛隊機確認の訴え」という。)は、実質的に、被告が、原告らに対し、一定程度を超える 航空機騒音を発生させないような施策を講ずる義務を負うことの確認を求めるものであり、結局のところ、防衛大臣に、当該騒音を発生することとなるような自衛隊機の運航の差止めを求めるものに他ならない。 そうすると、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付ける公権力の行使に 当たるから、本件確認の訴えは、その差止めを求める抗告訴訟によるべきであって、確認対象が適切でなく、確認の利益を欠く。 ⑵ 本件米軍機確認の訴えは確認対象が適切でないこと本件確認の訴えのうち、米軍機に関する部分(以下「本件米軍機確認の訴え」という。)は、実質的に、被告が、原告らに対し、一定程度を超える航空 機騒音を発生させないような施策を講ずる義務を負うことの確認を求めるものであるところ、被告は、米軍による厚木飛行場の使用及び米軍機の運航を制約する権限を有していないから、そのような権限を有していない被告と原告らとの間で、米軍機の運航に関する義務の存在を確認することは紛争解決のための確認対象が適切とはいえず、確認の利益を欠くというべきである。 ⑶ 原告らの主張を前提としても本件確認の訴えは紛争解決の手段として適切 でないこと原告らは、本件確認訴えについて、自衛隊機の運航と米軍機のための飛行場施設の使用の承認の2つに還元されるものではなく、厚木飛行場の営造物としての管理運営及びこれを支える施策実行にかかる国の行為全体が問題となると主張する。 しかし、本件における原告らと被告との間の具体的紛争は、厚木基地で運航される自衛隊機又は米軍機から発生する騒音によ 運営及びこれを支える施策実行にかかる国の行為全体が問題となると主張する。 しかし、本件における原告らと被告との間の具体的紛争は、厚木基地で運航される自衛隊機又は米軍機から発生する騒音による権利侵害の有無、程度であるところ、航空機の運航に伴って騒音が発生することは不可避で、原告らの主張する権利が確認されても、自衛隊機等の運航がなくなるわけでもなく、何ら実効的な紛争解決には至らない。この紛争の予防的解決のためには、 騒音の発生源である自衛隊機又は米軍機の運航差止めの可否を検討するのが最も実効的である。したがって、本件確認の訴えは、紛争解決手段として有効、適切とはいえず、確認の利益を認めることはできない。 第4章当裁判所の判断第1 認定事実 前記前提事実等並びに掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 1 原告らの居住関係原告らのうち、別紙3(転居原告目録)記載の原告ら(以下「転居原告ら」という。)を除く原告らは、いずれも本件告示コンター図上の75W以上の区域 内に居住し、転居原告らは、同区域外に居住している(弁論の全趣旨)。 2 騒音被害に関する国際的なガイドライン等⑴ WHOガイドラインWHOが平成7年までの知見に基づいて公表したWHOガイドラインでは、騒音による健康影響や特定の環境におけるガイドライン値等について、以下の点が指摘されている(甲A7、甲C10、50、51、弁論の全趣旨)。 ア評価指標等についてLAeqは連続音に適している。航空機騒音や鉄道騒音のように、一つ一つが明確に区別できる音がある場合には、LAeq,Tだけでなく、A特性音圧レベルの最大値(LAmax)や単発騒音曝露レベル(LAE)のような個々の発生騒音の指標も用いるべきである 音のように、一つ一つが明確に区別できる音がある場合には、LAeq,Tだけでなく、A特性音圧レベルの最大値(LAmax)や単発騒音曝露レベル(LAE)のような個々の発生騒音の指標も用いるべきである。 現在実務的には、ほとんどの騒音で等エネルギー原理(複合音の影響は、それらの騒音のエネルギーの和と関係があるという原理)が成立し、LAeq,Tと騒音影響の対応は概ね良いという考え方が一般的だが、発生回数の少ない音の場合や、睡眠妨害やその他の生活妨害の評価にはA特性音圧レベルの最大値(LAmax)がより適している。LAeqについて夜 間の重み付けをする場合があるが、これは夜間に不快感の感受性が増大することを反映するためのものであり、これにより住民の睡眠を保護するものではない。 LAeq,T以外の騒音評価指標を使用する明確な理由がない場合、事実上連続音とみなせる騒音の評価にはLAeq,Tの使用が望ましい。発 生回数が少ない散発的な騒音が問題となる場所では、LAeq,Tに加えて、LAmaxやLAEの使用が望ましい。 騒音対策や騒音規制を行う際は、住民の中の高感受性群(特定の疾患や高血圧などの健康問題を有する人、入院患者や自宅療養中の人、乳児、小児、高齢者など)に着目すべきである。 各国政府は、長期的な達成目標として本ガイドライン値を採用すべきである。 イ騒音による健康への影響騒音の特異的健康影響として、会話聴取妨害、聴力障害、睡眠妨害、読解能力の習得への影響、アノイアンス、社会的行動への影響等が挙げられており、それぞれの内容は、以下のとおりである。 (ア)聴力障害環境騒音のLAeq,24hが70dB以下であれば生涯にわたって曝露されても大多数の人には聴力障害は生じないと期待される。聴 ており、それぞれの内容は、以下のとおりである。 (ア)聴力障害環境騒音のLAeq,24hが70dB以下であれば生涯にわたって曝露されても大多数の人には聴力障害は生じないと期待される。聴力保護の観点からすれば、衝撃音のピーク音圧は、成人に対して140dB、小児に対して120dB以下にとどめることが絶対的に必要である。 (イ)会話妨害正常な聴力を有する人が複雑な内容(学校での会話、電話の声など)を正確に理解するためには、信号-雑音(SN)比(例えば、会話音と妨害音のレベル差)は少なくとも15dBは必要であり、通常、話者が1m離れて会話する場合は50dB程度であるため、暗騒音を35dB 以下にとどめるべきである。 (ウ)睡眠妨害睡眠妨害は、環境騒音の主要な影響のひとつである。騒音により、睡眠中に生じる一次影響として、入眠困難、覚醒や睡眠深度の変化、血圧・心拍数等の上昇、血管収縮、呼吸の変化、不整脈、体動の増加などがあ り、騒音曝露を受けた翌朝又はその後の数日間に現れる二次影響として、不眠感、疲労感、憂うつ、作業能率の低下がある。騒音のレベルそれ自体よりも、暗騒音とのレベル差が反応確率に関与し、騒音によって覚醒する確率は、一晩当たりの騒音発生回数の増加とともに高くなる。 LAeqで30dB程度の騒音から測定可能な睡眠影響が現れるため、 快適な睡眠のためには、夜間の連続的な暗騒音のLAeqは30dB以下に留めるべき(低周波音が多く含まれている騒音に対してはより低いレベルが求められる。)で、暗騒音のレベルが低い場合、可能な限り、LAmaxが45dBを超えるような騒音を制限すべきである。高感受性群の人のためにはさらに低い値が望ましい。通常の就寝時間帯の騒音対策は、入眠を確保する上で効果的であると考 が低い場合、可能な限り、LAmaxが45dBを超えるような騒音を制限すべきである。高感受性群の人のためにはさらに低い値が望ましい。通常の就寝時間帯の騒音対策は、入眠を確保する上で効果的であると考えられている。 間欠音による睡眠妨害は、最大騒音レベルとともに増加し、たとえ全体的な等価騒音レベルがかなり低くても、高い最大騒音レベルが少しでも発生すれば睡眠に影響が生じる。そのため、睡眠妨害を防ぐためには、環境騒音のガイドラインは、等価騒音レベルだけでなく、最大騒音レベルや騒音の発生回数によっても定められるべきである。 低周波騒音の場合には、低い音圧レベルでも休息や睡眠を妨害する可能性がある。 (エ)生理的機能への影響騒音が空港等の近傍の住民に対して生理的機能に急性的・慢性的な影響を及ぼしている可能性がある。長期曝露により高感受性群が高血圧や 虚血性心疾患などの永続的な影響を発現することになると考えられる。 心循環器系への影響は、LAeq,24hが65~70dB(A)の航空機騒音の長期曝露地域においても明らかにされている。騒音と高血圧や心疾患の発症率との関連は必ずしも強いものではないが、高血圧よりも虚血性心疾患の方が騒音との関連がいくぶん強いとされている。騒音 に曝露されている人員の多さに鑑みると、わずかなリスク上昇であっても重大である。 (オ)作業・学習への影響主に労働者や小児に対して、騒音が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。特に影響を受けるのは、読解力、集中 力、問題を解く力、記憶力などであり、騒音によって集中力が賦活されて単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが、複雑な作業の場合、認知作業の成績は大幅に低下する。騒音への曝露は、曝露終了後の成績にも悪影響が生じ 、記憶力などであり、騒音によって集中力が賦活されて単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが、複雑な作業の場合、認知作業の成績は大幅に低下する。騒音への曝露は、曝露終了後の成績にも悪影響が生じると考えられ、慢性的に航空機騒音に曝露されている空港周辺の学校の生徒は、詳細な読解力、難問に取り組む際の持続力等が標準よりも低く、航空機騒音に順応しようと試みるなど相当の代償を 払っていることを認識する必要がある。 (カ)行動への影響、不快感(アノイアンス)騒音は、不快感だけでなく、社会的影響を及ぼすとともに行動へも影響を及ぼすが、これらの影響は、複合的、潜在的、かつ間接的であるため、多くの非聴覚的要因の交互作用の結果として生じると考えられる。 環境騒音に対する不快感は質問紙調査や生活妨害の程度を調査することにより評価できる。しかし、同じ曝露量であっても、別の交通騒音等では不快感の程度が異なることを認識する必要がある。これは、不快感は、騒音の特性(騒音源の情報も含む。)だけでなく、音以外の社会的、心理的、経済的な要因の影響も受けるからである。騒音曝露量と不快感との 関連については、個人レベルよりも集団レベルにおいてより高い相関関係が得られる。騒音に振動を伴う場合や低周波音が含まれる場合、衝撃音が含まれる場合にはより強い住民反応が報告される。 騒音を不快に感じるかどうかは、音圧レベルや周波数統制及びこれらの時間変動といった騒音の物理的特性によって決まる。昼間はLAeq が55dB未満なら高度に不快と感じる人は少なく、50dB未満なら少し不快と感じる人はほとんどいない。夕方と夜間の騒音レベルは昼間より5~10dB低い値に留めるべきである。低周波音を含む騒音についてはさらに低いガイドライン値が望まれる。間欠 く、50dB未満なら少し不快と感じる人はほとんどいない。夕方と夜間の騒音レベルは昼間より5~10dB低い値に留めるべきである。低周波音を含む騒音についてはさらに低いガイドライン値が望まれる。間欠音については最大騒音レベルと発生回数の両方を考慮に入れる必要がある。 ウ環境騒音についてのガイドライン値WHOガイドラインは、これらの知見に基づき、特定の環境と重要な健康影響ごとにガイドライン値を設定している。このうち居住地域一般に関わるものは次のとおりである。この表のガイドライン値は、対応する「重要な健康影響」が生ずる最低のレベルであるとされる。 なお、低周波音を多く含む騒音の場合は、さらに低い値が必要であり、 低周波成分が卓越している場合、A特性による評価は不適切である。騒音に低周波音が多く含まれていると健康影響が憎悪する可能性がある。 LAeqの値は、その時間区分、すなわち昼間と夕方であればその時間帯の合計16時間における等価騒音レベルを、夜間であればその時間帯8時間における等価騒音レベルを示す。また、LAmaxfastの値は、 夜間における最大の騒音レベル(fastの動特性)を示す。なお、窓を開けた状態での睡眠妨害については、窓を開けた場合の屋外から屋内への騒音レベルの減衰を15dBと仮定して定められたものである。 環境条件重要な健康影響LAeq(dB)時間区分(時間)LAmaxfast(dB)居住地域(屋外) 高度に不快(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) --居住地域(屋内) 会話妨害(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) -寝室(屋内)睡眠妨害(夜間) 寝室(屋外)窓を開け --居住地域(屋内) 会話妨害(昼間と夕方)少し不快(昼間と夕方) -寝室(屋内)睡眠妨害(夜間) 寝室(屋外)窓を開けた状態での睡眠妨害 ⑵ 「欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)」WHOの欧州地域事務局は、WHOガイドラインが公表された後の研究成果を踏まえ、平成21年に「欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)」(甲C11。以下「夜間騒音ガイドライン」という。)を公表した。その主な内容は次のとおりである。(甲C11、48)ア睡眠時間帯について平成18年の調査結果によれば、成人が床についている平均時間は約7. 5時間で実際の平均睡眠時間はこれよりも若干短い。24時間の中で8時間の睡眠時間帯を確保することは、睡眠保護のための最低限度の選択である。国ごとに結果は異なるものの、調査結果によれば、固定された8時間では約50%の住民の睡眠しか保護できず、80%の住民の睡眠を確保するには10時間の睡眠時間帯が必要である。 イ夜間騒音曝露と健康影響に関する知見について①睡眠は生物学的に必要であり、睡眠の妨害は健康に係わる様々な悪影響と関連している。②睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることに関する十分な知見(夜間騒音曝露と健康影響との因果関係が既に確立されているもの、偶然の一致、バイアス、歪みなどが十分に排除されていると考え られる研究において、その関係を確認しうるもの、騒音が健康影響をもたらす生物学的妥当性も十分に確立されているものをいう。)がある。心拍数の増大、脳幹の反応、睡眠深度の変化、覚醒反応である。③夜間騒音曝露が、自己申告による睡眠妨害、(環境要因による)不眠症の原因となること 学的妥当性も十分に確立されているものをいう。)がある。心拍数の増大、脳幹の反応、睡眠深度の変化、覚醒反応である。③夜間騒音曝露が、自己申告による睡眠妨害、(環境要因による)不眠症の原因となることを示す十分な知見がある。④騒音による睡眠妨害は、それ自体が健康問題 (環境要因による不眠症)であるとみなされるが、健康及び生活満足度にさらなる悪影響を引き起こす、⑤睡眠妨害が、疲労、事故、作業能力の低下を引き起こすという限定的な知見(騒音と健康影響の関連性は直接的には観測されていないが、因果関係を支持するに足る優れた既存の知見があるもの、間接的な知見は豊富に存在し、それらは、健康に悪影響を及ぼす 生理学的変化の中間的影響と騒音曝露とを結びつけているものをいう。)がある。⑥夜間騒音が、ホルモンレベルの変化や心臓血管系疾患、うつ、その他の精神的疾患といった臨床症状を引き起こすという限定的な知見がある。 ウ健康影響の閾値等Lnight,outsideが30dB未満では、夜間騒音により睡 眠中に体動の頻度が少し上昇することを除けば、睡眠への影響は生じない。 30dB以上40dB未満では、体動、覚醒反応、自己申告による睡眠妨害、脳幹の反応など睡眠に対して多くの影響が生じ、特に高感受性群は影響を受けやすい。影響の程度は音源の特性と騒音発生回数に依存するが、最悪の場合でも影響はそれほど大きくないと考えられ、健康に悪影響を及 ぼす生物学的な十分な知見は見当たらない。 40dB以上55dB未満では、健康への悪影響が認められ、多くの住民は夜間の騒音に適応するために生活を変更しなければならなくなり、高感受性群はより重度に影響を受ける。 55dBを超えると高頻度で健康影響が生じ、相当数の住民が高度の不 快感を訴え、 くの住民は夜間の騒音に適応するために生活を変更しなければならなくなり、高感受性群はより重度に影響を受ける。 55dBを超えると高頻度で健康影響が生じ、相当数の住民が高度の不 快感を訴え、睡眠妨害を受け、循環器系疾患のリスクが上昇するという知見がある。 エガイドライン値の提案以上を踏まえて、夜間騒音ガイドライン値として、Lnight,outside40dBを、また、暫定目標値(実現可能性に基づいた中間目 標で、健康影響に基づいた値ではなく、高感受性群は保護されない水準)として、同55dBを提案している。なお、大多数の人々が少し窓を開けて眠りたいと考えていることを考慮して、家屋による遮音量として21dBを見込んだ値となっている。 ⑶ 環境騒音による疾病負荷 WHO欧州事務局は、平成23年、政策立案者が環境騒音の健康影響を定量化するための一助とし、環境騒音の健康リスク評価の方法に関する指針等を提示することを目的として、「環境騒音による疾病負荷」を公表した。 同文書では、WHOが健康を、単に病気とか虚弱でないというだけではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態にあると定義していることを受けて、アノイアンスについて、環境騒音による高度のアノイアンスは環 境性健康負荷のひとつとみなすべきであるとし、高度に不快(highlyannoyed)とする割合が、アノイアンスの住民反応率としてもっとも広範に用いられている指標であるとしている。(甲C12)⑷ 平成30年ガイドラインWHO欧州事務局は、最新の環境騒音曝露についての公衆衛生上の勧告値 を示すため、平成30年ガイドラインを公表した。 このガイドラインの主な目的は、人の健康を道路、鉄道及び航空の交通騒音、風車騒 O欧州事務局は、最新の環境騒音曝露についての公衆衛生上の勧告値 を示すため、平成30年ガイドラインを公表した。 このガイドラインの主な目的は、人の健康を道路、鉄道及び航空の交通騒音、風車騒音、レジャー騒音などの様々な音源から生じる環境騒音曝露から守るための勧告値を示すことにあり、音源別にそれぞれ勧告が策定され、強い勧告か条件付きの勧告として評価されている。 そして、平成30年ガイドラインでは、Ldenと高度のアノイアンスの反応率(%HA)との関係、夜間等価騒音レベル(Lnight)と高度の睡眠妨害の反応率との関係が音源別に示され、これらの曝露反応関係を基にガイドライン値が決定されているが、レジャー騒音を除いて、72%HA10%となる曝露量(Lden)を1日のガイドライン値、高度の睡眠妨害の 反応率が3%となる曝露量を夜間のガイドライン値としている。 航空機騒音については、Lden45dB以上の騒音は健康への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告し、特に夜間については、Lnight40dB以上の騒音は睡眠への悪影響に関連するとして、これ未満にするよう強く勧告している。(甲A47の1、48、49、57、甲C4 9、58) 3 騒音被害に関する一般的な知見⑴ 航空機騒音の特徴ア音のうるささについて音のうるささの物理的な要素として、音のレベル、音の高さ、音の時間的変動、音の局在性が挙げられる。そして、広帯域騒音よりも純音成分を 含む場合、より高い音の場合、騒音の強さや周波数構成が絶えず変化する場合、騒音源が局在する場合、その発生が不規則である場合、その発生を事前に予測することが不可能な場合の方がそれぞれそうでない場合と比べて不快感が増すといわれている。(甲C1の1、3、4、7 変化する場合、騒音源が局在する場合、その発生が不規則である場合、その発生を事前に予測することが不可能な場合の方がそれぞれそうでない場合と比べて不快感が増すといわれている。(甲C1の1、3、4、7)イ防衛施設である飛行場の周辺における航空機騒音の特徴 軍用機を含む航空機の騒音は、他の騒音との比較において、発生が間欠的で、発生持続時間は1機のみであれば数十秒程度であるが、その音量が極めて大きく、特にジェット機について高周波成分を含む金属性の音質を有し、時に衝撃的であり、発生場所が上空で騒音の及ぶ範囲が広大で、家屋構造による遮音が難しい、気象条件による飛行方向や音の伝搬特性の変 化により地上で聞こえる騒音の性状やレベルが大きく変化するなどの特徴がある。そのため、飛行場から同一の距離であっても、騒音の程度は全く異なるし、同一の場所であっても、気象条件その他によって、騒音の程度には日によって大きなばらつきがある。 また、軍用機は、民間機と異なって、その特殊性から、離着陸する航空 機の飛行経路や飛行予定が原則として公表されず、飛行経路等も一定しないことから、原告らを含む周辺住民がこれをあらかじめ予測することは困難である。 さらに、自衛隊の航空機については自衛隊法107条1項により、米軍機については「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条 約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」2項により、それぞれ航空機の騒音の基準に適合した有効な耐空証明を受ける義務(航空法11条)をはじめとする航空法の一部の適用が除外されているなど、民間機との比較において、飛行性能等が重視されるなど 2項により、それぞれ航空機の騒音の基準に適合した有効な耐空証明を受ける義務(航空法11条)をはじめとする航空法の一部の適用が除外されているなど、民間機との比較において、飛行性能等が重視されるなどして、低騒音化が進みにくいといった 特徴がある。 このほか、ジェット機が離陸する場合、ジェット機を地上で高出力で試運転する場合などにおいて、高速で流れるジェット流が原因となって超低周波音を発生することがある。(甲C5、16、59、弁論の全趣旨)⑵ 低周波音について ア低周波音とA特性W値の基礎となるA特性による騒音レベルは、人の耳の感度に合わせて補正されるところ、人の耳には概ね4000Hzまでは周波数が小さいほど音が小さく聞こえるから、およそ100Hz以下の低周波音は、A特性では相対的に小さく評価される(前記前提事実等第3・1⑴)。 イ低周波音と評価指標低周波音については、環境基準やガイドラインは存在しない。一般環境で観測されるような低周波音の領域(周波数範囲と音圧レベル)では、人間に対する生理的な影響は明確には認めることができないが、影響がないと言い切ることもできず、低周波音による影響や評価指標に関する科学的 な知見が確立しているとはいい難い状況にある(甲C17、乙A117、乙C33、弁論の全趣旨)。 ウ低周波音とその影響低周波音は、高い周波数の音と比べて地表面吸収及び空気吸収が極めて小さく、長距離伝搬の場合、高い周波数の音の方が減衰が大きく、伝搬距 離が長くなるにしたがって低周波側の成分が卓越するのが一般的である。 そのため、音は直接的に感知されないが、建具のがたつきで間接的に低周波音の存在が感知されることもある。 低周波音の心理的影響としては、圧迫感や不快感があり、人間の感覚受 卓越するのが一般的である。 そのため、音は直接的に感知されないが、建具のがたつきで間接的に低周波音の存在が感知されることもある。 低周波音の心理的影響としては、圧迫感や不快感があり、人間の感覚受容器を通じて大脳辺縁系、自律神経系等を媒介して生理反応を引き起こすことがあるとされるが、低周波音が病的な影響を引き起こす可能性は少な いとされる。 低周波音の苦情として、気分のいらいら、胸や腹の圧迫感といった心理的影響、頭痛、耳鳴り、吐き気といった生理的影響、睡眠影響、家具の振動等の物的影響があるが、人体に関する苦情は低周波音との因果関係がはっきりしない場合もある。 G特性音圧レベルで平均の人では約100dBを超えると超低周波音を感じ、120dBを超えると強く感じる。浅い眠りの場合10Hzで100dB、20Hzで95dBあたりから影響が現れ始めるところ、これはG特性音圧レベルではそれぞれ100dB、104dBであるとされている。揺れやすい建具ではおよそ5Hzで70dB、10Hzで73dB、 20Hzで80dBあたりからがたつき始めるとされている。(甲C14、15、17、乙C31、33)エ低周波音に関する各種参考値低周波音手引書は、ある時間連続的に固定された音源から発生する低周波音について苦情が発生した場合に、苦情内容の把握・測定を行い、低周 波音問題対応の評価指針に基づき評価することにより、低周波音問題の解決に至る道筋を示すものであり、1/3オクターブバンドで測定された音圧レベルと比較して、当該苦情が低周波音に起因するか否かのひとつの判断要素とするための参照値を設定した。 また、中村俊一らによる「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研 究」において、24名の被験者に対して特定の試験音を聞かせ、音 因するか否かのひとつの判断要素とするための参照値を設定した。 また、中村俊一らによる「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研 究」において、24名の被験者に対して特定の試験音を聞かせ、音が出ているか分かるか、音が気になるか、不快な感じがするか、音による圧迫感があるか、音による振動感があるかといった5つの項目に対して、それぞれ「(全く)ない」、「ある」、「大いにある」といった3段階の回答をさせる実験を行い、周波数ごとに被験者の50%が「判らない/全く気にならない/しない/全くない」と回答する音圧レベルの推定値を結んだ曲線とし て、「気になる-気にならない曲線」が示されている。 さらに、同論文において、中村らは、28名の被験者に対し、特定の試験音を聴かせ、「わからない」、「わかる」、「気になる」、「やかましい」、「圧迫感がある」、「振動感がある」、「痛みを感じる」、「音のにごりがある」との選択肢の中から、最も優位と判断される項目を一つ選択して回答すると いう実験を行い、周波数及び音圧レベルごとに「わかる」「気になる」「圧迫感・振動感がある」「やかましい」「痛みを感じる」という項目の中で最も得票のあった項目を分析し、このうち「圧迫感・振動感がある」という項目の領域を区画する曲線として「圧迫感・振動感の閾値曲線」が示されている。 これらの参照値及び各曲線の評価値の1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル(dB)は次表のとおりである。(甲C17、19、乙C33、弁論の全趣旨) 4 周辺住民に生じている具体的な被害の例(甲E7のや4175、8のふ107、9のや3465、10のや3107、11のや2174、12のさ222、 6.3 12.5 31.5 生じている具体的な被害の例(甲E7のや4175、8のふ107、9のや3465、10のや3107、11のや2174、12のさ222、 6.3 12.5 31.5 物的苦情に関する参照値 --心身に係る苦情に関する参照値--- 気になる-気にならない曲線の評価値--- 71.5 59.553.5 圧迫感・振動感の閾値曲線の評価値 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)13のあ241、14のや748、甲行1~8号証、弁論の全趣旨)⑴ 睡眠妨害原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くが、夜遅い時間帯に航空機の音が気になってイライラするなどして寝付きが悪くなったり、入眠後であっても、航空機の音が響いて途中で覚醒 するなどして、睡眠時間が不足したり、十分な質の睡眠がとれないことをしばしば経験しており、航空機騒音による入眠障害や中途覚醒の被害を訴えている。翌日の眠気や疲労感、集中力不足、日常的な疲れやすさなどを感じる者も多く、そのような状態で仕事等に臨むことに不安を覚える者も多い。 また、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する 周辺住民の中には、夜勤等のため、日中に睡眠を確保する必要があるにもかかわらず、日中の航空機騒音により、睡眠を妨害されている者もいる。 ⑵ 生活妨害ア聴取妨害原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に 中に睡眠を確保する必要があるにもかかわらず、日中の航空機騒音により、睡眠を妨害されている者もいる。 ⑵ 生活妨害ア聴取妨害原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺 住民のほとんどが、対面や電話での会話中などに、航空機騒音により相手の声などがかき消され、あるいは不明瞭にしか聞き取れず、聞き返したり、航空機が過ぎ去るのを待つこと、会話自体の終了を余儀なくされるなどし、円滑なコミュニケーションを妨害されている。また、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどが、テ レビやラジオの視聴中、音楽鑑賞中に、航空機騒音によりその音の聴取を妨害されるなどして、音量を上げたり、聴取を断念するなどの対応等を余儀なくされ、情報収集や余暇の機会等を妨害されている。 イ精神的作業の妨害原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺 住民のほとんどが、仕事、学習や読書などの趣味の活動中に、航空機騒音にさらされることで集中力をそがれたり、中断を余儀なくされるなどして、これらの活動を妨害されている。 ⑶ その他の精神的苦痛アアノイアンス騒音の心理的影響については「うるさい」、「やかましい」と表現されて きたが、騒音被害の深刻さを表す形容詞としての適切さが疑問視され、生活妨害も含めた騒音による直接的、間接的影響の総体がもたらす迷惑感、煩わしさ、いら立ち、悩みといった比較的深刻な被害感を包含した、「アノイアンス」という概念が騒音被害を評価するために用いられるようになった。最近の我が国の社会調査においても、「どの程度うるさいですか」とい う質問に代えて「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはうる 概念が騒音被害を評価するために用いられるようになった。最近の我が国の社会調査においても、「どの程度うるさいですか」とい う質問に代えて「騒音によって悩まされたり、邪魔されたり、あるいはうるさいと感じたりすることがありますか」という国際的に標準化された質問様式が採用されるようになっている。(甲C47、58)原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどが、航空機騒音にさらされること自体や、騒音により睡 眠や各種の活動等が妨害されることに対して、いら立ちや不快感を募らせ、また、ストレスを感じている。 イ健康被害等に対する不安原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くが、航空機騒音により自ら又は家族等の健康に悪影響が生じ ていないか不安に考え、あるいは、病気の発症又は悪化について航空機騒音が原因ではないかとの懸念を有している。航空機騒音によるストレスを原因とする体調悪化を懸念する者も多い。 また、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のうち、少なくない者が、学齢期の子らの授業や自宅学習等が 航空機騒音により妨害されたり、未就学児が航空機騒音におびえる様子を目にするなどし、これにより子どもの成育に悪影響が出ることについて不安を覚えている。 ウ航空機事故に対する不安原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くの者が、厚木基地周辺を飛行する航空機の墜落や不時着、航空 機からの落下物等の事故の報道等を見聞きして、これらの事故により自己の生命・身体・財産に危害が及ぶことに対する不安を感じている。その中には、低空飛行する航空機を間近で見 機の墜落や不時着、航空 機からの落下物等の事故の報道等を見聞きして、これらの事故により自己の生命・身体・財産に危害が及ぶことに対する不安を感じている。その中には、低空飛行する航空機を間近で見たり、又は、航空機騒音を間近で感じることによってその不安を感じる者が多い。 エ交通事故に対する不安 原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くの者が航空機騒音により、自動車等の走行音や警報音等が聞こえないという状況を体験しており、航空機騒音によりこれらの音がかき消されたり、航空機騒音に気を取られることで、交通事故の危険が高まるのではないかという不安を抱いている。 ⑷ 圧迫感等原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の中には、ヘリコプターなどの航空機の飛行に伴って、振動感や圧迫感を感じている者がいる。 5 騒音の状況等 ⑴ 被告測定データの推移(乙B5、6)被告は、別紙11(被告騒音測定点)1枚目のとおり、厚木基地周辺の23か所に航空機騒音自動測定装置を設置し、継続的に航空機騒音を測定している(なお、これらの測定点のおおよその位置は、同別紙2枚目の図面の番号(同別紙1枚目の「No.」の列記載の番号と対応している。)のとおり。 ただし、No.11は、同別紙1枚目の「No.11-2」の「中村自治会館」の位置である。)。 これらの測定結果のうち、第一種区域内の測定地点における平成15年度から平成19年度及び平成24年度から令和4年度までのW値(環境基準方式)を集計したものが別紙12(被告騒音測定結果)である。 ⑵ 自治体騒音測定データの推移 ア厚木基地の周辺自治体は、別紙8(自治体騒音測定点)のとおり、厚木基地周 までのW値(環境基準方式)を集計したものが別紙12(被告騒音測定結果)である。 ⑵ 自治体騒音測定データの推移 ア厚木基地の周辺自治体は、別紙8(自治体騒音測定点)のとおり、厚木基地周辺に年間を通して24時間連続稼働する自動記録騒音計を設置し、70dB以上かつ5秒以上の継続音について、継続的に最高音(LAmax。以下同じ。)、測定回数等を測定している(なお、これらの測定点のおおよその位置は、同別紙2枚目の図面の番号(同別紙1枚目の「B号証」 の列記載の番号と対応している。)のとおり。以下、自治体の騒音データの測定点については、「B号証」の列の番号を用いて「No.1の地点」などという。)。これらの測定点は、本件告示コンター図においては、別紙8の1枚目の「コンター」欄記載の区域に位置しており、令和2年度分布図上も75W以上の区域となっているのは、No.1~4、6、7の6地点で ある。 これらの測定結果のうち、平成26年1月から令和4年12月まで、各月に測定された最高音及び70dB以上の騒音測定回数、1日当たりで騒音が測定された回数のうち最高のもの及び1日当たりの平均測定回数並びに土曜日、日曜日、夜間(午後7時から午後10時まで)及び深夜(午 前0時から午前6時まで及び午後10時から午後12時まで)についての最高音、騒音測定回数及び当該曜日又は時間帯における1日当たりで騒音が測定された回数のうち最高のものを集計したものが、別紙13(騒音集計表)である(なお、データの根拠が証拠上ないものには×印を付してある。)。また、平成15年以降の年間の騒音の測定回数の推移についてまと めたものが、別紙14(騒音測定回数推移)である。(甲A47の6の2・14、甲B1~18、弁論の全趣旨)イ厚木基地の周辺自 、平成15年以降の年間の騒音の測定回数の推移についてまと めたものが、別紙14(騒音測定回数推移)である。(甲A47の6の2・14、甲B1~18、弁論の全趣旨)イ厚木基地の周辺自治体が設置する航空機騒音自動観測装置のうち、平成15年度以降の年間W値(環境基準方式)又はLden値の比較が可能な富士見台小学校及び滝の沢小学校を測定地点とするW値(環境基準方式)又はLden値の推移は次のとおりである。 なお、平成25年度よりも前は、W値(環境基準方式)が実測値であるが、平成25年度以降は、環境基準の改正により、評価指標がLden値とされているため、Lden値が実測値である。前記前提事実等第3・2⑵のとおり、W値(環境基準方式)とLdenの推計値との差が、W値(環境基準方式)が70~75のときは13、80のときは14であり、W値 (環境基準方式)が高くなるほど差が大きくなることから、ここでは比較のため、Lden値が62以下であれば13を、62よりも大きければ14をそれぞれ近似的に加えたものをW値(環境基準方式)欄に記載している。(乙B7の5、36) 富士見台小学校滝の沢小学校Lden値W値(環境基準方式)Lden値W値(環境基準方式)平成15年度77.866.2平成16年度78.065.4平成26年度62.676.654.767.7平成27年度62.176.154.367.3平成28年度62.576.553.566.5平成29年度62.376.352.365.3平成30年度49.762.742.055.0令和元年度48.761.741.854.8令和2年度 平成29年度62.376.352.365.3平成30年度49.762.742.055.0令和元年度48.761.741.854.8令和2年度46.559.538.651.6令和3年度47.960.941.254.2令和4年度44.457.438.151.1 ウ厚木基地の周辺自治体が第一種区域内に設置した自動記録騒音計のデータのうち、証拠上、岩国移駐前後を通じて年間のW値(環境基準方式)又はLden値が判明するもののデータを平成26年度以降について集計すると、別紙15(自治体測定W値等推移)のとおりである。なお、計測 地点によって、W値(環境基準方式)である場合とLden値である場合など、評価指標が異なっている。(乙B7の5の2、7の6、25の2・3・6、31、33、36)⑶ 原告らによる低周波音の測定結果ア 4次訴訟における測定結果(甲C24の3、弁論の全趣旨) 原告らから委託を受けた日東紡音響エンジニアリング株式会社(現・日本音響エンジニアリング株式会社。以下、商号変更の前後を通じて「日本音響」という。)は、平成27年1月8日午前10時05分から午後3時45分までの間に、90Wの区域に位置する、厚木基地の滑走路オーバーランの北端から北に約1.4kmの緑の広場44号(神奈川県大和市上草柳 8-438-1)及び滑走路の南端から南南東に約300mの同市福田349所在の広場において、低周波音を含む航空機騒音(音圧レベル、G特性音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、全ての航空機 含む航空機騒音(音圧レベル、G特性音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、全ての航空機において、特定の周波数帯で低周波音手引書に おける心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる-気にならない曲線」の評価値を超える値が測定され、特に31.5Hz~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、高い周波数帯ほど、参照値及び評価値を大きく超える値が測定された。 145回の測定のうち、G特性音圧レベルが100dBを超える値は3回測定された。 イ周辺住民の住居内外での測定結果(甲C23、弁論の全趣旨) 原告らから委託を受けた日本音響は、令和元年12月18日に厚木基地の西端から西に約100mで75Wの区域に位置する木造2階建ての住居の屋内外、令和2年1月15日に滑走路北端から北に約1.9kmで90Wの区域に位置する木造2階建ての住居の屋内外、同年2月5日に滑走路北端から西に約500mで85Wの区域に位置する木造2階建ての住 居の屋内外で、それぞれ低周波音を含む航空機騒音(最大騒音レベル、G特性音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、飛来した延べ40機の航空機全てについて、特定の周波数帯で低周波音手引書における心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる -気にならない曲線」の評価値を超える値が測定され、特に31.5Hz~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、また、ほとんど全てのプロペラ機及びヘリコプターで、16Hz以上の一部の周波数帯で「圧迫感・振 値が測定され、特に31.5Hz~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、また、ほとんど全てのプロペラ機及びヘリコプターで、16Hz以上の一部の周波数帯で「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値を超える値が測定され、とりわけP-3C(プロペラ機)では同評価値を大きく超 える値が測定された。 ウ現地進行協議期日における測定結果(甲A50、56、乙B25の1、弁論の全趣旨)原告らから委託を受けた日本音響は、現地進行協議期日を実施した令和4年3月10日及び令和5年5月11日、厚木基地の滑走路オーバーラン の南端から南に約150mで95Wの区域に位置する大和ゆとりの森(神奈川県大和市福田字九ノ区4110)、前記緑の広場44号、厚木基地の滑走路北端から北北東に約500mで95Wの区域に位置するふれあいの森草柳広場(同市下草柳552。ただし、令和5年5月11日のみ実施)、厚木基地の西側約200mで80Wの区域に位置するさくら公園(神奈川県綾瀬市蓼川1丁目26。ただし、令和4年3月10日のみ実施)におい て、低周波音を含む航空機騒音(最大騒音レベル、G特性音圧レベル、1/3オクターブバンド中心周波数ごとの音圧レベル)を測定した(ただし、測定場所によって測定した時間帯は異なる。)。 その結果、全ての航空機について、特定の周波数帯で低周波音手引書における心身に係る苦情に関する参照値及び「気になる-気にならない曲線」 の評価値を超える値が測定され、特に31.5~80Hzの周波数帯でこれらの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、高い周波数帯ほど、参照値及び評価値を大きく超える値が測定された。また、ヘリコプターについては、16~20Hzの周波数帯において、低周波音手引書における らの参照値及び評価値を超える値が多く測定され、高い周波数帯ほど、参照値及び評価値を大きく超える値が測定された。また、ヘリコプターについては、16~20Hzの周波数帯において、低周波音手引書における物的苦情に関する参照値を超える値が多く測定された。さらに、40~5 0Hzの周波数帯において、「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値を超える値も複数測定された。 276回の測定のうち、G特性音圧レベルが100dBを超える値は29回測定され、いずれもヘリコプター又はジェット機(FA-18)であった。 ⑷ 厚木飛行場における第4航空群の夜間飛行実績厚木飛行場において、第4航空群所属の自衛隊機の午後10時から翌午前6時までの飛行実績(離着陸それぞれを1回と計上したもの)は、平成25年度は83回、平成26年度は53回、平成27年度は69回、平成28年度は70回、平成29年度は104回、平成30年度は55回であった(乙 A15)。 ⑸ その他の公表値等ア自治体による公表値等神奈川県は、厚木基地の滑走路の北端から約1kmの測定地点(別紙8(自治体騒音測定点)の「No.1」の測定地点)における、100dB以上の5秒以上継続する騒音の測定回数について、次のように公表してい る。 年間(年度)の測定回数は、平成26年度から平成28年度までは各年度2000~2400回程度だったが、平成30年度から令和4年度は各年度30回~100回程度であった。 また、県内11か所に設置している騒音計の各地点における平成28年 4月から令和4年9月までのLden値の推移を移駐前後で比較(ただし、移駐が平成29年8月から平成30年3月にかけて実施されたことから平成29年度は全期間を比較対象から除いている。) 28年 4月から令和4年9月までのLden値の推移を移駐前後で比較(ただし、移駐が平成29年8月から平成30年3月にかけて実施されたことから平成29年度は全期間を比較対象から除いている。)すると、各地点で10から15dBほど減少している。(乙B13の2)イ苦情件数 航空機騒音に関する電話やメール等で寄せられた苦情件数は、平成25年度から平成29年度までは4000件以上で推移していたが、平成30年度以降令和4年度までは1000件前後にとどまっている(乙B14)。 ウ管制実績(甲A54)各年度における厚木飛行場における管制実績は次のとおりである。ただ し、軍用機のデータには米軍機以外も含まれ、令和4年度のデータは、令和4年4月から9月までの集計値である。 年度自衛隊機(回)軍用機(回)合計(回)平成25年度181751856936744平成26年度180071949037497平成27年度176491852636175平成28年度182372103239269平成29年度152921733132623平成30年度178021469432496平成31年度160701380829878令和2年度140981546929567令和3年度150481686931917令和4年度7688873516423 エ米海軍の空母の寄港状況米海軍の空母は、平成26年以降、11月下旬頃から翌年5月中旬頃までを中心に、毎年概ね180日か210日間、横須賀海軍施設に寄港しており、平成29年及び平成30年も同様である。また、令和元年以 米海軍の空母は、平成26年以降、11月下旬頃から翌年5月中旬頃までを中心に、毎年概ね180日か210日間、横須賀海軍施設に寄港しており、平成29年及び平成30年も同様である。また、令和元年以降も概 ね11月頃から翌年5月中旬頃まで横須賀海軍施設に寄港している。 (乙B4、13の2) 6 厚木基地周辺における航空機事故⑴ 国際航空運送協会(IATA)によると、民間機の平成31(令和元)年の100万フライト当たりの事故発生率は1.13である。これに対し、米 海軍・海兵隊が運用するヘリコプターを含む航空機の平成29会計年度(平成28年10月から平成29年9月)の事故率(10万飛行時間当たりの事故の件数)は24.53であり、このうち、クラスA(政府及び政府所有財産への被害総額が200万ドル以上(令和元年10月以降は250万ドル以上に変更)、国防省所属航空機の損壊、あるいは、死亡又は全身不随に至る傷 害若しくは職業に起因する病気等を引き起こした事故)に当たる事故率は1. 77だった。また、オスプレイの10万飛行時間当たりのクラスAに当たる事故率は、米海兵隊MV-22では令和4年9月末時点で2.27であり、米空軍CV-22では令和2会計年度で6.58だった。(甲A55)⑵ 神奈川県内で昭和27年4月から平成26年1月までに発生した米軍機又は自衛隊機の墜落、不時着、部品の落下等の事故は、242件であり、うち63件が墜落事故である。特に、昭和33年、同35年、同36年、同39年、同40年及び同52年には、それぞれ乗員又は周辺住民が死亡する墜落 事故が発生している。同年を最後に民間人に死者が出る事故は発生していないが、平成20年以降も、厚木基地周辺において、不時着や落下物の事故等がしばしば発生し、周辺住民の は周辺住民が死亡する墜落 事故が発生している。同年を最後に民間人に死者が出る事故は発生していないが、平成20年以降も、厚木基地周辺において、不時着や落下物の事故等がしばしば発生し、周辺住民の物的損害が生じている。(甲A1の1・2・5・6、甲D2、14、15、28、35、39、52、59、73、79、82、107、122、124、140、146、164、170、194、 208、212、259、294、332、333) 7 令和2年度分布図被告は、岩国移駐の完了により厚木基地周辺の航空機騒音について、具体的にどの程度の範囲でどの程度低減しているのかを把握するため、騒音測定などの調査を公益財団法人防衛基盤整備協会に業務委託し、同協会は、令和元年度 及び令和2年度に騒音状況の調査を行い、その結果を図で示した令和2年度分布図を作成した。この調査及び令和2年度分布図の作成に当たっては、本件告示コンター図作成時の騒音状況との比較を容易にするため、可能な限り平成15年度及び平成16年度に実施した騒音度調査における調査方法及び施設庁方式によるW値の算定方法を踏襲することとし、騒音の測定地点の数や測定方法、 W値の評価方法を同じくした。具体的には、岩国移駐後に厚木基地で主に運用されている海上自衛隊のP-1、P-3C、C-130、SH-60及びLC-90を設定し、米軍機のFA-18、FA-18E/F、E-2C及びC-40については、平成15年度及び平成16年度に実施した騒音度調査の基礎データをそのまま使用し、自衛隊機については、海上自衛隊厚木基地に確認し て機種、飛行方向、飛行態様ごとの飛行経路を設定し、米軍機については平成16年度に実施した騒音度調査において設定された飛行経路をそのまま使用し、1日の標準飛行回数 海上自衛隊厚木基地に確認し て機種、飛行方向、飛行態様ごとの飛行経路を設定し、米軍機については平成16年度に実施した騒音度調査において設定された飛行経路をそのまま使用し、1日の標準飛行回数は、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの1年間の管制記録を基に決定するなどした。そして、このように測定されたデータを基に、滑走路の中心を基準に設定した等間隔(250m)の格子点において、最大騒音レベル、航空機騒音の継続時間及び1日の標準飛行回数を踏ま えてW値を算出し、75W以上を示す点について、5Wごとに同一の点を線で結ぶメッシュ法を用いてコンター図を作成した。 また、騒音評価等の学識経験を有する者で構成される検討委員会を設置し、同委員会の意見を受けながらこれらの調査及び令和2年度分布図の作成を行った。 令和2年度分布図は別紙10(令和2年度分布図)のとおりであり、75Wないし95Wの各区域の分布は同別紙の黒実線のとおりである。(甲行9、乙B15、18、20~23、弁論の全趣旨) 8 被告による騒音への対応⑴ 岩国移駐 ア移駐に至る経緯被告は、米国との間で在日米軍再編に関する協議を進め、平成18年5月1日、再編案を最終的に取りまとめた「再編実施のための日米のロードマップ」を発表し、米海軍第5空母航空団を厚木飛行場から岩国飛行場へ移駐することとした。この移駐は、FA-18、EA-6B(EA-18 Gに換装)、E-2C(E-2Dに換装)及びC-2航空機から構成されること、必要な施設が完成し、訓練空域及び岩国レーダー進入管制空域の調整が行われた後、平成26年までに完了することとされた。その後、岩国飛行場の施設整備の全体の工程の見直しを踏まえ、平成25年10月3日の日米安全保障協議委員会「2+ 及び岩国レーダー進入管制空域の調整が行われた後、平成26年までに完了することとされた。その後、岩国飛行場の施設整備の全体の工程の見直しを踏まえ、平成25年10月3日の日米安全保障協議委員会「2+2」において、岩国移駐が平成29年頃 までに完了することを認識した旨を共同発表した。 そして、平成29年8月9日、E-2Dの1部隊を皮切りに、岩国飛行場への移駐が開始し、その後、同年11月にFA-18の2部隊及びEA-18Gの1部隊、同年12月にC-2の1部隊の移駐が順次実施され、最終的にFA-18の残余部隊の移駐により、平成30年3月30日に移駐が完了した。(乙A92、93、108、109、弁論の全趣旨) イ移駐に要した経費等被告は、移駐先の岩国飛行場において、空母艦載機のための駐機場、整備格納庫、第5空母航空団等の施設をそれぞれ整備するとともに、移駐に伴う軍人、軍属及びこれらの家族の住宅の建設のために岩国飛行場近傍の不動産を購入し、家族住宅や学校施設等を整備するなどした。 これらの移駐等に要した経費の平成18年度から平成30年度までの予算額は、契約ベースで約5520億円であり、平成18年度から平成28年度までの支出済歳出額で約3981億9298万7000円であった。 (乙A111、112)⑵ 防音工事の実施状況 被告は、住宅防音工事について、昭和50年度から令和4年度までの間に、延べ35万5089世帯に対して、合計9049億3395万0310円を助成した。 また、被告は、昭和29年度から令和4年度までの間、学校、幼稚園及び保育所並びに病院、老人ホーム等の防音工事について、合計627施設に対 し、合計826億5165万9926円を助成した。(乙A18の2)⑶ 移転措置被 年度までの間、学校、幼稚園及び保育所並びに病院、老人ホーム等の防音工事について、合計627施設に対 し、合計826億5165万9926円を助成した。(乙A18の2)⑶ 移転措置被告は、厚木基地周辺地域において、生活環境整備法制定前である昭和35年度の予算措置をもって、厚木基地に近接し、航空機の運航上好ましくなく、また、航空機の離着陸等の頻繁な実施に伴う航空機騒音等の影響によっ て居住等の環境として適切でないと思われる区域に建物等を所有する者について、移転措置の実施を開始した。 移転措置の令和4年度までの補助金交付実績は、移転戸数が576戸で移転補償額計89億8891万8372円、買入土地面積が合計82万7433㎡で買入額計147億3152万2730円である。(乙A18の2、弁論の全趣旨) ⑷ 被告によるその他の対策等ア NLPを含むFCLPの移転FCLPは、米海軍の空母ミッドウェイが横須賀海軍施設に入港した昭和48年10月頃から、三沢及び岩国両飛行場において開始されたが、昭和57年2月16日より、厚木基地においてNLPを含めたFCLPが実 施されるようになった。 厚木基地周辺は都市化が進んでいたところ、昭和61年に米海軍の空母艦載機が騒音レベルの高いFA-18へ変更されたこともあり、周辺住民や関係地方公共団体等からの苦情や訓練中止要請が著しく増えた。 そこで、被告は、昭和63年4月、米国に対し、三宅島に代替施設が設 置されるまでの間、硫黄島の使用を含むあらゆる暫定措置を検討するよう申入れ、平成元年1月、硫黄島を暫定的に使用することについて、米国と基本合意をした。 その後、平成3年8月、硫黄島においてはじめてのFCLPが行われ、平成5年3月末に硫黄島にFCLPに 討するよう申入れ、平成元年1月、硫黄島を暫定的に使用することについて、米国と基本合意をした。 その後、平成3年8月、硫黄島においてはじめてのFCLPが行われ、平成5年3月末に硫黄島にFCLPに必要な施設を完成させ、同年9月以 降は、硫黄島において本格的にFCLPが行われるようになった。その結果、硫黄島における天候不良時の代替として使用される以外には、原則として厚木基地においてFCLPは行われないこととなった。また、「再編実施のための日米のロードマップ」においては、恒常的なFCLP施設について検討を行うための日米二国間の枠組みを設け、恒常的な施設を平成2 1年7月又はその後のできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。 平成3年以降のNLPの訓練の状況の推移は次のとおりである。 平成3年から平成5年までは、年間30日前後、回数にして年間1550回から1760回のNLPが厚木基地において実施されていたが、平成6年から平成19年までは、年間概ね数日程度で多くとも11日、回数に して年間概ね200回から450回程度で、多くとも620回であった。 平成20年以降は、平成24年に3日間計100回実施されたことを除いて、厚木基地においてNLPが実施されることはなく、硫黄島において概ね1000回以上のNLPが実施されていた。なお、平成19年頃におけるNLPが硫黄島で実施された割合は、概ね95%である。 また、FCLPについては、平成23年度から令和3年度までの間、平成24年5月に3日間、平成29年9月に4日間それぞれ実施された以外には、厚木基地においては実施されていない。これらのFCLPの実施の際には、滑走路北約1kmの住宅地で70dB以上かつ5秒以上継続する騒音がFCLP実施時間帯に、平成24年5月には れ実施された以外には、厚木基地においては実施されていない。これらのFCLPの実施の際には、滑走路北約1kmの住宅地で70dB以上かつ5秒以上継続する騒音がFCLP実施時間帯に、平成24年5月には合計549回、平成2 9年9月には合計728回それぞれ測定されている。(乙A24、25、108、乙B27、28、弁論の全趣旨)イ P-1哨戒機の導入被告は、平成25年3月から、固定翼哨戒機P-3Cの後継機としてICAOの騒音基準値を満たすよう低騒音化設計されたとされるP-1の 配備を開始した(乙A2、26、28、30、乙B3、弁論の全趣旨)。 ウ消音装置の設置被告は、厚木基地における航空機の騒音対策として、消音装置を設置し、稼働させている。自衛隊機については、昭和50年11月に、エンジンに不具合が生じた場合の試運転を実施する建物に建物外へ漏れる音を減じ る消音機を設置している。 また、米軍機に関しては、エンジンテストの際の騒音防止のため、昭和55年度から昭和57年度にかけて機体用の消音装置を1 基、平成9年度から平成12年度にかけてエンジン用の消音装置を1基、それぞれ整備した。(弁論の全趣旨) 9 厚木基地の自衛隊の使用する飛行場としての役割等 厚木基地は、固定翼哨戒機がオホーツク海、日本海、東シナ海など我が国周辺のいずれの方面の海域にも進出できる位置にある。 厚木基地を離着陸する自衛隊機の大部分は、第4航空群所属のものである。 そして、厚木基地所属の第4航空群は、周辺海域の防衛や海上交通の安全確保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施し得るよう、平素から、哨戒機等に よって洋上における情報収集・警戒監視を周辺海域で広域にわたり実施するとともに、即時に各種事 防衛や海上交通の安全確保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施し得るよう、平素から、哨戒機等に よって洋上における情報収集・警戒監視を周辺海域で広域にわたり実施するとともに、即時に各種事態に対応できるような態勢を維持している。 また、厚木基地は、東日本大震災や平成28年熊本地震の際に物資等の輸送の経由地として利用されたほか、第4航空群において行方不明の船舶等の捜索、患者の輸送、救助活動等を多数行うなど、災害派遣をはじめとした民生協力活 動も担っている。(乙A73、74、76、79~82、94、95、97~99、弁論の全趣旨)第2 死亡した原告らの訴えについて弁論の全趣旨によれば、別紙2(死亡原告目録)記載の原告ら(以下「死亡原告ら」といい、以下で特段の断りなく「原告ら」という場合、死亡原告らを 除く原告らを指す。)は、同別紙記載の死亡日にそれぞれ死亡したことが認められる。本件差止めの訴えは、居住地における被害の存在を理由に被告に対し差止めを求める抗告訴訟として提起されたものであり、また、本件確認の訴えは、居住地における一定の権利の確認を求める当事者訴訟として提起されたものであるから、死亡原告らのこれらの訴えはこれを承継する余地がなく当然に終了 するものと解すべきである。したがって、死亡原告らの本件差止めの訴え及び本件確認の訴えは、いずれについても、その死亡による訴訟の終了を宣言する。 第3 争点1(米軍機運航に関する行政処分の有無)について 1 認定事実本争点に関して証拠により認定できる事実等は次のとおりである。 ⑴ 被告は、昭和46年6月24日、日米合同委員会の下部組織である施設特 別委員会において、厚木飛行場区域の使用転換に関し、厚木飛行場区域「は、米側航空機の米軍専用区域 等は次のとおりである。 ⑴ 被告は、昭和46年6月24日、日米合同委員会の下部組織である施設特 別委員会において、厚木飛行場区域の使用転換に関し、厚木飛行場区域「は、米側航空機の米軍専用区域への出入りのため、及びその他の運航上の必要のために使用される」こと、日米地位協定の関連ある規定は、米軍機が厚木飛行場区域を使用する期間適用されることなどを米国と合意し、同月25日、この合意は、日米合同委員会において了承された。 内閣は、同月29日、厚木飛行場区域について、海上自衛隊の管轄管理する施設として、米軍に対しては日米地位協定2条4項(b)の規定の適用のある施設及び区域として一時使用を認める旨を閣議決定した。なお、同閣議決定においては、この使用について、米側航空機による米軍専用区域への出入のため及びそれに関連したその他の運航上の必要を満たすために使用さ れるものとされていた。 そして、被告及び米国は、同月30日、政府間協定を締結して、厚木飛行場区域を使用転換する旨の合意(以下「使用転換合意」という。)をし、同年7月1日、厚木飛行場区域は我が国に返還され、被告が設置・管理する厚木飛行場となった。(甲A8の3、12~14、乙A4) ⑵ 当時の防衛庁長官は、昭和46年2月27日、衆議院予算委員会において、日米地位協定2条4項(b)の解釈について、「一定の期間を限って使用すべき施設・区域」とは、米軍の恒常的な使用が認められる通常の施設・区域(同条1項(a))及び日本側が臨時的に使用できる施設・区域(同条4項(a))とは異なり、日本側のものではあるが、米軍の使用が認められ、その使用す る期間が何らかの形で限定されるものをいうとした上で、実情に即すると①年間何日以内など日数を限定して使 (同条4項(a))とは異なり、日本側のものではあるが、米軍の使用が認められ、その使用す る期間が何らかの形で限定されるものをいうとした上で、実情に即すると①年間何日以内など日数を限定して使用を認めるもの、②日本側と調整の上、その都度期間を区切って使用を認めるもの、③米軍の専用する施設・区域への出入りの都度使用を認めるもの、④その他これらに準じて何らかの形で使用期間が限定されるものが一応挙げられるという政府見解を示していた。 また、当時の外務省アメリカ局長は、昭和48年10月9日の衆議院内閣 委員会において、厚木基地の滑走路の使用について、米軍の専用する施設、区域への出入りの都度使用を認めるものという形態に属する日米地位協定2条4項(b)の共同使用形態をとっている旨を答弁した。 (争いのない事実、甲A8の1・2) 2 判断 ⑴ア原告らは、米軍は、防衛大臣による使用の承認がなければ厚木飛行場を使用できず、米軍機を運航できないとした上で、①防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の供用が米軍機の運航に必然的に伴う騒音等の受忍を周辺住民に義務付ける事実行為として、又は②防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の使用承認自体が「行政庁の処分その他の公権力の行使に当 たる行為」(以下、単に「処分」ということがある。)に該当すると主張する。 しかし、前記1⑴のとおり、被告は、使用転換合意により、米国との間で、厚木飛行場について、米軍機の米軍専用区域への出入りのため及びその他の運航上の必要のために使用されることを合意しており、厚木飛行場 に係る被告と米国との法律関係は日米安保条約及び日米地位協定2条4項(b)に基づくものである。したがって、被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、米軍 おり、厚木飛行場 に係る被告と米国との法律関係は日米安保条約及び日米地位協定2条4項(b)に基づくものである。したがって、被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、米軍の厚木飛行場の管理運営の権限を制約し、その活動を制限することはできない。(厚木基地1次最判、最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・集民 167号359頁)そして、使用転換合意のほかに日米の条約ないしこれに基づく国内法令において、米軍による厚木飛行場の使用について別途防衛大臣による許諾を要することや、被告が一方的に米国との間の上記合意の内容を変更したり、米国の権利の得喪を生じさせたりし得ることの根拠となる規定は存在しない。 したがって、厚木飛行場に関し、被告と米国との間において、被告が米国に対してその使用を許可するといった処分は予定されておらず、防衛大臣による厚木飛行場の使用許諾という処分が存在するとはいえない。 イまた、周辺住民が米軍機の運航に必然的に伴う騒音等に曝露されることとなるとしても、これが被告の何らかの行政行為に起因するものではない 以上、防衛大臣による米軍に対する厚木飛行場の供用行為が存在するとして、これを捉えて処分であると評価することもできない。 ウよって、原告らの主張する処分は存在せず、本件米軍機差止めの訴えは、存在しない処分の差止めを求めるものとして不適法であり、却下を免れない。 ⑵ 原告らは、防衛大臣には、①米軍がその専用する施設・区域への出入り及びそれに関連した使用以外の目的のために厚木飛行場を使用する場合、②同目的の場合であっても米軍による使用が国民の基本的人権を侵害するような結果を生じる場合等には、米国に対して米軍による使用を許さないことができ した使用以外の目的のために厚木飛行場を使用する場合、②同目的の場合であっても米軍による使用が国民の基本的人権を侵害するような結果を生じる場合等には、米国に対して米軍による使用を許さないことができる権限があるとして、使用の承認なるものが存在すると主張する。 しかし、前記1⑴のとおり、被告は、使用転換合意において、厚木飛行場区域について、米側航空機の米軍専用区域への出入り及びその他の運航上の必要のための使用を了承しているところ、日本政府の閣議決定や国会における答弁の内容によってその使用許諾の範囲が限定される理由はなく、出入りのため及び「それに関連した使用」のみを許しているとする原告らの主張は 前提を欠く。仮に、前記1⑴の閣議決定における解釈に従ったとしても、日米安保条約に基づく米軍の駐留目的が我が国や極東の安全維持など広範囲に及ぶものであることも踏まえれば、米軍の駐留目的に沿って用いられる米軍専用区域の使用に関連していれば、広く「米軍専用区域への出入」「に関連したその他の運航上の必要を満たす」ものというべきである。そうすると、米軍がその駐留目的に沿った運航上の必要から厚木飛行場を使用しようとする 場合に、防衛大臣がその是非を検討して、場合によっては米軍による使用を拒否し得るということは、日米両政府において全く想定されていないと解される。 また、日米地位協定2条4項(b)についての前記1⑵の政府見解を前提としても、米軍に「出入のつど使用を認める」のは、同項(b)が一定の期 間を限って米軍の使用を認めるものであることに起因して、その使用が認められる期間の限定方法として、出入りの都度という限定をしたにとどまり、必然的に防衛大臣が米軍機による厚木飛行場使用の都度、個別にその使用の許否を実質的に判断したり、その裁量的判 して、その使用が認められる期間の限定方法として、出入りの都度という限定をしたにとどまり、必然的に防衛大臣が米軍機による厚木飛行場使用の都度、個別にその使用の許否を実質的に判断したり、その裁量的判断で米軍の使用を拒絶し得ることまでを意味しているとは考え難い。むしろ、前記のとおり、厚木飛行場につ いて、米軍の駐留目的に沿う使用が広く認められているといえることからすれば、防衛大臣が個別的に使用の許否の判断をすることは予定されていないというべきである。 さらに、使用転換合意によって米軍の厚木飛行場の使用が許されている場面であっても、防衛大臣が米軍の厚木飛行場の使用を不許可とできるような 条約ないし条約に基づく国内法令はない。この点、原告らは、自衛隊法107条5項を挙げるが、同項は、防衛大臣に、航空機による災害を防止し、公共の安全を確保するための必要な措置を講ずる義務を課したものであり、防衛大臣が同項に基づいて、自衛隊機の運航を統括し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有するとしても、 そのために執り得る措置は、自衛隊法その他の法令等により防衛大臣に与えられた権限の範囲内にとどまるというべきであり、本来的にその運航権限を持たない米軍機について、専ら防衛大臣の責任を定めた国内法上の同項の規定のみを根拠として、条約に基づいて厚木飛行場の使用を認められている米軍との関係で、防衛大臣が、その使用を制約し又は活動を制限する権限を付与されたと解することはできない。 そうすると、防衛大臣がその権限に基づいて米軍機の使用を制限することはおよそ想定されておらず、そのような措置を執ることはできないといわざるを得ない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 第4 本件自衛隊 に基づいて米軍機の使用を制限することはおよそ想定されておらず、そのような措置を執ることはできないといわざるを得ない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 第4 本件自衛隊機差止めの訴えに係る訴訟要件 本件自衛隊機差止めの訴えは、行訴法3条7項、37条の4に規定する差止めの訴えであるから、その訴訟要件について、以下において順次検討する。 1 本件における行政処分及びその一定性⑴ 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるもの とされ(自衛隊法3条1項)、そのほか、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動等であって、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施するものを行うことを任務とする(同条2項)。そして、自衛隊法第6章は、自衛隊の行動として、防衛出動(76条)、国民保護等派遣(77条の4)、 命令及び要請による治安出動(78条、81条)、海上における警備行動(82条)、海賊対処行動(82条の2)、災害派遣(83条)、領空侵犯に対する措置(84条)、在外邦人等の保護措置(84条の3)、後方支援活動(84条の5)等を規定する。 防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括する権限を有するところ(同法8条)、こ のような防衛大臣の権限には、自衛隊機の運航を統括する権限も含まれ、防衛大臣は、航空機使用訓令により、自衛隊機の具体的な運航の権限を航空機使用者に与え、航空機使用者は、自衛隊法第6章の規定により行動を命ぜられた場合において、航空機を使用する必要があるときなどに、所属の航空機を使用することができる(同訓令3条)。そして、自衛 を航空機使用者に与え、航空機使用者は、自衛隊法第6章の規定により行動を命ぜられた場合において、航空機を使用する必要があるときなどに、所属の航空機を使用することができる(同訓令3条)。そして、自衛隊機の運航に関しては、その任務の特殊性により、一般の航空機と異なる特殊の性能、運航及び利用 の態様等が要求されることから、航空機の航行の安全又は航空機の航行に起因する障害の防止を図るための航空法の規定の適用が大幅に除外されており(同法107条1項、4項)、防衛大臣は、自衛隊が使用する航空機の安全性及び運航に関する基準、その航空機に乗り組んで運航に従事する者の技能に関する基準並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理 に関する基準を定め、その他航空機による災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない(同条5項)とされている。このことから、同法は、自衛隊機の運航について、防衛大臣に対し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るための規制を行う権限を付与するとともに義務を課しているということができる。 ところで、自衛隊機の運航は、その性質上必然的に騒音等の発生を伴うものであり、防衛大臣は、自衛隊機の運航に必然的に伴う騒音等による周辺住民への影響にも配慮して自衛隊機の運航を規制し、統括すべきものであるが、このような影響は自衛隊の飛行場の周辺に広く及ぶことが不可避であるから、防衛大臣の自衛隊機の運航に係る権限の行使は、自衛隊機の運航に必然的に 伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付けることとなるので、これら周辺住民との関係において、自衛隊機の運航という事実行為が公権力の行使に当たる行為ということになる(厚木基地1次最判参照)。 自衛隊機の運航は、自衛隊機の運航を統括する ることとなるので、これら周辺住民との関係において、自衛隊機の運航という事実行為が公権力の行使に当たる行為ということになる(厚木基地1次最判参照)。 自衛隊機の運航は、自衛隊機の運航を統括する権限を有する防衛大臣からの段階的な職務命令に基づき、個々の航空機搭乗員が自衛隊機を操縦して行 うものであるから、対外的には、これらの命令に基づく航空機搭乗員による自衛隊機の運航という事実行為を通じて行われるものであり、防衛大臣の権限の行使としてその命令に基づいて行われる自衛隊機の運航という事実行為に処分性があるということができる(以下、防衛大臣の命令に基づいて行われる自衛隊機の運航を「自衛隊機運航処分」という。)。 そして、周辺住民が騒音等の受忍を義務付けられるのは、厚木飛行場にお ける日常的な自衛隊機等の離着陸による騒音等によるものであることによれば、差止めの対象となる自衛隊機運航処分を把握することは容易であるから、処分の一定性についても欠けるところはないというべきである。 2 原告適格原告らは、防衛大臣において自衛隊機の運航の差止めを命ずることを求め るにつき法律上の利益を有することが必要である(同法37条の4第3項)。 前記のとおり、自衛隊機運航処分には、自衛隊機の運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付ける点で行政処分性が認められるところ、原告適格が差止めの訴えを利用し得る資格に関する要件であることにも鑑みれば、自衛隊機の運航により一定以上の騒音等の受忍を義務付けられる ことにより人格権等の権利を侵害されるおそれのある周辺住民は、その運航の差止めについて法律上の利益を有するというべきである。 ⑵ 前記前提事実等第1及び同第3・4⑵イのとおり、生活環境整備法及びその関連法令は、防衛施設周辺 侵害されるおそれのある周辺住民は、その運航の差止めについて法律上の利益を有するというべきである。 ⑵ 前記前提事実等第1及び同第3・4⑵イのとおり、生活環境整備法及びその関連法令は、防衛施設周辺については、第一種区域を75WないしLden62dBという水準をもって定め、住宅防音工事を行う最低の基準とし、 その他の空港周辺についても同様の基準が設定されているなど、航空機騒音に関する法令はいずれも、75WないしLden62dBをもって、航空機の騒音が著しいとして、被告が政策措置を講ずべき最低限の水準としている。 また、現行環境基準は、航空機騒音に係る環境基準を地域類型Ⅰ(専ら住居の用に供される地域)についてLden57dB、地域類型Ⅱ(それ以外 の地域)についてLden62dBと定め、全ての地域において少なくともLden62dB以下という基準が保たれなければならないとしている。 そして、前記第1・2⑴ウ及び同⑷のとおり、WHOガイドラインや平成30年ガイドラインが設定するガイドライン値にてらしても、75Wは、相当に高い水準の騒音であるということができる。 これらの事情を勘案すると、本件告示コンター図上の75W以上の区域に 居住する者は、厚木飛行場を離着陸する自衛隊機に関する自衛隊機運航処分に起因する航空機の騒音によって社会生活上受忍すべき限度を超える程度の騒音を受け、その受忍を義務付けられることにより、人格権等の権利を侵害されるおそれがある者というべきであり、本件自衛隊機差止めの訴えの原告適格を有すると解される。 ⑶ したがって、転居原告らを除く原告ら(以下で特段の断りなく単に「原告ら」というときは転居原告らを除く原告らを指す。)は、本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住しているから、本件自衛隊機差止め したがって、転居原告らを除く原告ら(以下で特段の断りなく単に「原告ら」というときは転居原告らを除く原告らを指す。)は、本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住しているから、本件自衛隊機差止めの訴えの原告適格を有する。 他方、転居原告らは、本件告示コンター図上の75W以上の区域外に居住 しているから、本件自衛隊機差止めの訴えの原告適格を有さず、転居原告らの本件自衛隊機差止めの訴えは却下すべきである。 なお、前記第1・5⑴の被告の設置する航空機騒音自動測定装置の測定データなどにみられるように、岩国移駐により、厚木飛行場周辺における騒音の状況には変化がみられるところである。しかし、前記のとおり、航空機騒 音に関する法令はいずれも75Wをもって被告が政策措置を講ずべき最低限の水準としているのであって、岩国移駐後においても、その点に変更はなく、前記前提事実等第3・3⑵のとおり、第一種区域の範囲に変更があったわけでもない。また、岩国移駐後に騒音の状況に変化があったとしても、航空機の運航に伴う騒音等の状況は、その時々の国際情勢や我が国の防衛力の整備 状況等に応じて常に変動する可能性があるものである。そうすると、岩国移駐後の騒音状況の変化は、人格権等の権利を侵害される「おそれ」の有無を基準とする本件自衛隊機差止めの訴えの原告適格についての判断を左右するものではない。 第5 争点2(重大な損害の有無)について 1 判断枠組み 行訴法37条の4第1項に規定する、処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分 あると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困 難なものであることを要すると解するのが相当である(最高裁平成23年(行ツ)第177号、第178号、同年(行ヒ)第182号同24年2月9日第一小法廷判決・民集66巻2号183頁参照)。また、重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案すべきである(同条2項)。 そして、原告らに「重大な損害を生ずるおそれ」があるか否かを検討する際には、前記第4・2⑶で説示した、原告らが人格権等の権利を侵害されるおそれがあるか否かの検討と同様、未だ被告が第一種区域の範囲を変更していないことなどに鑑みれば、岩国移駐後においても、本件告示コンター図上の75W以上の区域においては、75W以上の騒音が生じるおそれがあること、すなわ ち岩国移駐前と同程度の騒音が生じるおそれがあることを前提とすべきである。 2 損害の性質及び程度まず、原告らに生ずるおそれのある損害について検討する。 原告らは、航空機騒音等に起因する被害として多様な被害を主張するところ、前記第1・2⑴で示したWHOガイドラインを参考に①聴力障害や生理的機能 への影響等の身体的被害、②睡眠妨害、③聴取妨害等の生活妨害、④その他の精神的苦痛に分類し、それぞれについて検討する。 ⑴ 身体的被害ア原告らは、高血圧症、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、不眠症等を発症し、持病が悪化するなど、航空機騒音により身体的被 精神的苦痛に分類し、それぞれについて検討する。 ⑴ 身体的被害ア原告らは、高血圧症、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、不眠症等を発症し、持病が悪化するなど、航空機騒音により身体的被害が発生していると主張し、これに沿う陳述書及び5次民事訴訟における原告らの本人尋 問調書を提出するとともに、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民53名について、これらの疾病にかかる診断書を提出する。 航空機騒音を理由として疾病が発症し、又は持病が悪化したといえるためには、医学的知見に基づいて、航空機騒音との間に因果関係が存在する ことが認められる必要がある。そして、これら原告らの主張する身体的被害については、個別性が高く、その発症に至る機序は、個々人の生活条件や身体的条件等に大きく左右されると考えられるため、個別的な立証を要するというべきである。 しかし、原告らの提出する陳述書や5次民事訴訟における本人尋問調書 のみでは、因果関係を認めるに足りる医学的根拠があるということはできない。また、原告らから提出された診断書は、上記の因果関係について触れないか、その存在について不明とするか、因果関係がある可能性を指摘するにとどまるものがほとんどであるほか、因果関係を肯定する趣旨の記載があっても、漠然としており、その医学的根拠が示されているとはいい 難い。したがって、航空機騒音によって身体的被害が発生しているとする原告らの主張を採用することはできない。 イもっとも、前記第1・2⑴イ(エ)のとおり、WHOガイドラインによれば、騒音の長期曝露により高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永続的影響を発現すると考えられていて、心循環器系への影響が明らかにさ れているのであるから、航空機騒音によ Oガイドラインによれば、騒音の長期曝露により高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永続的影響を発現すると考えられていて、心循環器系への影響が明らかにさ れているのであるから、航空機騒音によって身体的被害が生じ得ることは医学的に根拠のないこととはいえない。 したがって、陳述書や5次民事訴訟における本人尋問において身体的被害について言及する原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民は、航空機騒音にさらされ続けることによる健康への影響に対して強い不安を覚えているのであって、それには相応の根拠 があるから、これらの不安感を航空機騒音に起因する精神的苦痛の一環として捉えることは妨げられるべきではない。 ウ原告らは、原告らがガイドライン値を超える騒音に曝露されていることから、航空機騒音と身体的被害の因果関係が認められるべきであると主張する。しかし、前記第1・2⑴ウのとおり、ガイドライン値は、対応する 健康影響が生じる最低レベルとしての騒音限度をもとに設定されたものであり、このレベル以上の騒音に曝露されれば、通常は当該影響が生じることが医学的に認められているものではない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 また、原告らは、因果関係の根拠として、騒音の影響に関する論文等を 提出するが、前記アで説示したとおり、その発症に至る機序は、個々人の生活条件や身体的条件等に大きく左右されると考えられ、一般的に関連性が認められるからといって、個別立証が不要ということはできない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 ⑵ 睡眠妨害 前記第1・4⑴のとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のうち、多くの者が航空機騒音により、寝つ 張は採用することができない。 ⑵ 睡眠妨害 前記第1・4⑴のとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のうち、多くの者が航空機騒音により、寝つきの悪さ、中途覚醒、翌日の眠気や疲労感等の睡眠への悪影響を訴えているが、その内容は、同2⑴イ(ウ)及び⑵イのとおり、WHOガイドライン及び夜間騒音ガイドラインで指摘されている騒音により生じる一次影響及び二次 影響等と一致している。 前記第1・2⑴ウ及び⑵のとおり、WHOガイドラインでは、睡眠妨害に関するガイドライン値として、屋外における夜間の等価騒音レベルについて45dB、屋外における最大の騒音レベルについて60dBが設定され、また、暗騒音のレベルが低い場合、可能な限りLAmaxが45dBを超える騒音を制限すべきであるとされている。さらに、夜間騒音ガイドラインでは、 睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることに関する十分な知見があり、心拍数の増大、脳幹の反応、睡眠深度の変化及び覚醒反応といった悪影響があることが指摘されるとともに、夜間騒音のガイドライン値として、家屋による遮音量21dBを見込んで、Lnight,outside40dBを提案している。 これらの指標はW値やLden値とは異なるから、前記第1・5で認定した厚木飛行場周辺における騒音の大きさと単純に比較することはできない。 しかし、前記第1・5⑵アのとおり、自治体騒音測定データによれば、70dB以上かつ5秒以上継続する騒音が、岩国移駐前は、午後7時から午後10時までの夜間においては、少ない年、地点でも年間250回近く測定さ れ、ほとんどの年、地点では年間500回から1000回以上測定され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、年及び地点に 時までの夜間においては、少ない年、地点でも年間250回近く測定さ れ、ほとんどの年、地点では年間500回から1000回以上測定され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、年及び地点によっては、年間を通じて数回にとどまっているが、多くの年、地点で年間十数回以上が測定されている。また、岩国移駐後は、令和2年分布図上も75W以上の区域にあるNo.1~4、6、7の6地点についてみると、午後7時から午後1 0時までの夜間においては、少ない年、地点でも年間800回近く測定され、多くの年、地点では年間1000回以上測定され、午後10時から翌午前6時までの深夜においては、少ない年、地点でも年間20回程度測定され、多くの年、地点で年間30回から50回程度以上が測定されている。 この点、前記第1・2⑵アのとおり、夜間騒音ガイドラインが、8時間の 睡眠時間帯を確保することが必要であり、固定された8時間では約50%の住民の睡眠しか保護できず、80%の住民の睡眠を確保するには10時間の睡眠時間帯が必要であるとしていることも踏まえれば、確保すべき睡眠時間帯といえる午後10時から翌午前6時までの前後の時間を含めて、岩国移駐前後を通じ、70dB以上の最高音が75W以上の区域全般に相当数発生しているというべきである。 そして、前記のとおり、WHOガイドラインにおいて、60dBが睡眠妨害に関するガイドライン値とされ、LAmax45dBを超える騒音を可能な限り制限することが望ましいとされているが、70dBという騒音レベルは、これらを大きく超えるものである。 以上によれば、原告らは、睡眠妨害が生じる程度の航空機騒音にさらされ るおそれがあるというべきである。なお、前記第1・4⑴のとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上 ものである。 以上によれば、原告らは、睡眠妨害が生じる程度の航空機騒音にさらされ るおそれがあるというべきである。なお、前記第1・4⑴のとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の中には、夜勤等のために日中に就寝する必要のある者がいるが、日中の方が夜間よりも騒音の発生が多数であることからすれば、これらの周辺住民に生じる睡眠妨害の程度は更に大きいというべきである。 そして、前記第1・2⑵イのとおり、夜間騒音ガイドラインにおいて、睡眠は生物学的に必要であり、睡眠妨害が健康に係わる様々な悪影響と関連していること、睡眠中の騒音が生物学的に影響を与えることについての十分な知見があること、夜間騒音曝露が、不眠症の原因となることを示す十分な知見があること、騒音による睡眠妨害が健康及び生活満足度にさらなる悪影響 を引き起こすことなどを指摘していることを踏まえれば、騒音に起因する睡眠妨害は、人にとって不可欠な休息である睡眠それ自体に対する悪影響を及ぼすにとどまらず、健康及び生活の質に対する悪影響や健康に対する不安を引き起こすものであり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くが受けるおそれのある睡眠妨害の被害の程 度は深刻なものというべきである。 ⑶ 生活妨害ア聴取妨害前記第1・4⑵アのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどの者が、航空機騒音によって会話の声や、テレビなどの音声がかき消されるなどの聴取妨害を受けてい る。 確かに、航空機騒音は間欠的であり、その継続時間は、必ずしも長くなく、一過性のものであるため、聴取妨害についても時間にすれば短時間の影響であることが多い されるなどの聴取妨害を受けてい る。 確かに、航空機騒音は間欠的であり、その継続時間は、必ずしも長くなく、一過性のものであるため、聴取妨害についても時間にすれば短時間の影響であることが多いと考えられる。 しかしながら、聴取が妨害される対象やその内容によっては、その聴取 を逸したことにより、後に聞き返したりすることが無意味であったり、聞き返すことが状況的に困難になることも想定され、支障が生じ得るし、円滑なコミュニケーションがとれなくなること自体による不利益も想定できる。また、軍用機の騒音は、事前にその発生を予期することが難しいから、突然聴取を妨害されることによる精神的負担も大きいといえる。さら に、ヘリコプターによる騒音など、騒音が一定時間継続する場合や、航空機が連続して飛来した際などには、その妨害の程度も大きくなり、それに伴う精神的負担も大きくなるといえる。 したがって、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどが受けるおそれのある聴取妨害の被害は決 して小さいものとはいえない。 イ精神的作業の妨害前記第1・4⑵イのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどの者が、仕事や学習、読書等の趣味の活動中に、航空機騒音によって、その集中力をそがれたりするな どして、これらの精神的作業を妨害されている。 精神的作業の妨害の程度は、前記アと同様、時間にすれば短時間の影響であることが多いと考えられる。 しかしながら、特に集中することが求められる精神的作業においては、集中力が一度途切れると、再度集中するために相当な労力を要し、集中できないことでミスが発生するおそれが大きくなるなど、その精神的負担は がら、特に集中することが求められる精神的作業においては、集中力が一度途切れると、再度集中するために相当な労力を要し、集中できないことでミスが発生するおそれが大きくなるなど、その精神的負担は 大きいといえる。また、軍用機騒音は、事前にその発生を予期することが難しいから、突然作業を妨害されることによる精神的負担も大きいといえる。さらに、騒音が一定時間継続したり、たびたび騒音が発生したりすれば、作業の妨害の程度が大きくなり、精神的負担が大きくなるだけでなく、そのような作業を行う意欲すら失われる可能性もあるといえる。 したがって、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどが受けている精神的作業の妨害に関する被害は決して小さいものとはいえない。 ⑷ その他の精神的苦痛アアノイアンス 前記第1・4⑶アのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のほとんどの者が航空機騒音によりいら立ちや不快感を感じている。 このようなアノイアンスについては、前記第1・2⑴イのとおり、WHOガイドラインがアノイアンスを騒音の特異的健康影響に掲げているこ とも踏まえれば、単なる主観的な感情にとどまらず、比較的深刻な被害感であり、れっきとした精神的苦痛を生じさせるものであるといえ、その被害も小さいものとはいい難い。 イ健康被害等に対する不安前記第1・4⑶イのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75 W以上の区域に居住する周辺住民の多くの者が航空機騒音により、自身の健康に悪影響が生じることに対する不安感を抱いている。 前記⑴で説示したとおり、航空機騒音にさらされ続けることによる健康への影響に対する不安感は航空機 る周辺住民の多くの者が航空機騒音により、自身の健康に悪影響が生じることに対する不安感を抱いている。 前記⑴で説示したとおり、航空機騒音にさらされ続けることによる健康への影響に対する不安感は航空機騒音に起因する精神的苦痛の一環として捉えることができる。 75Wという水準は、前記前提事実等第3・2のとおり、現行環境基準 において、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましいとされる基準値に匹敵するレベルの騒音曝露量であるから、75W以上の騒音にさらされている周辺住民については、将来的に健康影響が生じるとの懸念を生じ、それ自体に精神的苦痛を感じるのも理由があるというべきである。 また、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の中に子供の発育等に対する不安を抱いている者も少なからず認められる。前記第1・2⑴アのとおり、乳児や小児は、高感受性群に含まれ、航空機騒音に対する反応が一般に高いと認められ、また、子供は義務教育を受けるなど精神的作業である学習の機会が多く、その学習の充 実度が発育に影響し得る。これらによれば、周囲の大人が子供について航空機騒音により心身に影響を受けるなどして健全に発育できないのではないかという不安感を覚えることにも相応の根拠があるというべきである。したがって、周囲の子供の発育に関する不安も航空機騒音に起因する精神的苦痛のひとつであるというべきである。 以上のとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民の多くが受けている健康被害や子供の発育等に対する不安感に関する被害は決して小さいものとはいえない。 ウ航空機事故に対する不安前記第1・4⑶ウのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75 健康被害や子供の発育等に対する不安感に関する被害は決して小さいものとはいえない。 ウ航空機事故に対する不安前記第1・4⑶ウのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75 W以上の区域に居住する周辺住民の多くの者が、厚木基地周辺を飛行する航空機の墜落や不時着、航空機からの落下物により自己等の生命・身体・財産に危害が及ぶことに対する不安感を抱いている。 前記第1・6⑵のとおり、神奈川県内では、昭和27年4月から平成26年1月までに軍用機に関わる事故が多数発生し、墜落事故も63件発生していて、そのうち乗員や周辺住民が死亡する事故も複数回発生しており、 近時においても部品の落下等の事故が発生している。また、同⑴のとおり、軍用機については、民間機と比べて、事故の発生率が極めて高く、クラスAといわれる重大事故の発生率については、オスプレイも含めて軍用機は高い(なお、IATAによる民間機の事故率は、100万フライト当たりであるのに対し、米海軍等の事故率は10万飛行時間当たりであるが、民 間機の1フライト当たりの飛行時間を極端に短く0.1時間であると仮定して双方の分母を揃えても、軍用機の事故率が極めて高いことは明らかである。)。 そして、これらの事故については、各種報道機関等によって報道されており、原告ら厚木基地周辺住民はこれをよく知り得る立場にある。また、 実際に過去に事故が多数発生し、かつ、現在も軍用機が頻繁に離着陸する厚木基地周辺に居住する住民らは、他の地域に居住する住民らと比べて航空機事故に巻き込まれる危険性が高いというべきである。 このような立場にある原告らを含む厚木基地周辺住民が、航空機事故の不安を感じるのはもっともであり、これを単なる抽象的な不安であると 空機事故に巻き込まれる危険性が高いというべきである。 このような立場にある原告らを含む厚木基地周辺住民が、航空機事故の不安を感じるのはもっともであり、これを単なる抽象的な不安であると評 価することはできない。そして、この不安は、間近に軍用機を見たり、あるいはその騒音を聞いたりすることにより、事故の危険を感じさせ、過去の事故を想起させられることで掻き立てられる性質のものであるといえるから、航空機騒音に関連する精神的苦痛のひとつとして評価すべきである。 部品の落下等の事故を含め、ひとたび軍用機事故に巻き込まれれば、自身の生命・身体・財産に重大な危害が及ぶことは明らかであるから、このような航空機事故に対する不安に係る原告らの被害は小さいものとはいい難い。 エ交通事故に対する不安前記第1・4⑶エのとおり、原告らを含む本件告示コンター図上の75 W以上の区域に居住する周辺住民の多くの者が航空機騒音により、自動車等の走行音や警報音等が聞こえなくなることで、交通事故の危険が高まるのではないかという不安感を抱いている。 前記第1・5⑵のとおり、岩国移駐後においても、多くの地点で100dB以上、地点によっては110dB以上の航空機の最高音が発生するこ ともあることからすれば、実際に航空機騒音により、警報音や周囲の自動車の走行音等の聴取が妨げられるとの不安にも合理的な根拠があるというべきであり、航空機騒音に関連する精神的苦痛のひとつとして評価すべきである。 ⑸ 低周波音による被害について ア原告らは、原告らを含む周辺住民の多くが低周波音特有の被害を訴えているところ、各低周波音の測定結果によれば、参照値、「気になる-気にならない曲線」や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の各評 ア原告らは、原告らを含む周辺住民の多くが低周波音特有の被害を訴えているところ、各低周波音の測定結果によれば、参照値、「気になる-気にならない曲線」や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の各評価値を超える高レベルの低周波音が測定されていることから、原告らは高レベルの低周波音にさらされていることによる被害を受けていると主張する。 イ前記第1・5⑶のとおり、原告らの行った低周波音の各測定結果によれば、厚木基地を離着陸する航空機から、上記の参照値や各評価値を超える低周波音が発生していることは明らかである。 もっとも、原告らの行った低周波音の測定をみると、4次行政訴訟の事実審の口頭弁論終結日を含む平成27年以降における測定実施日は6日 で、測定地点は8か所に限られ、そのうち、1日しか測定していない測定地点は6か所である。このように、低周波音の測定は、回数や測定地点が限定的なものであり、この測定結果から、厚木基地周辺の本件告示コンター図上の75W以上の区域において、広くこれらの測定結果と同様の低周波音に曝露されているということは困難である。 ウこの点を措いても、確かに、前記第1・4⑷のとおり、原告らを含む本 件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民のうち一定の者が、ヘリコプターなどの航空機の飛行に伴って、振動感や圧迫感を感じているところ、同3⑵ウのとおり、これらは、低周波音の苦情として、一般に挙げられているものではある。しかし、同イのとおり、低周波音による人間に対する生理的な影響の有無については、その評価指標を含めて 科学的な知見が定まっている状況にはない。 また、同エのとおり、低周波音手引書は、苦情が発生した際に、参照値と測定値を比較することで当該苦情が低周波音に起因するか否かのひ 評価指標を含めて 科学的な知見が定まっている状況にはない。 また、同エのとおり、低周波音手引書は、苦情が発生した際に、参照値と測定値を比較することで当該苦情が低周波音に起因するか否かのひとつの判断要素としようとするものであるが、参照値は、低周波音についての環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとし て定められたものではない上、航空機を含む交通機関等の移動音源からの低周波音苦情には適用しないものとされているほか、大部分の被験者が許容できる音圧レベルとして設定されたものである(甲C17、25、乙C33)。そうすると、そもそも航空機騒音のような移動する発生源について、上記参照値を用いることは適切ではない上、これを超える低周波音が測定 されているとしても、直ちに原告らの訴える被害が低周波音に起因するものと評価できるともいい難い。 さらに、「気になる-気にならない曲線」の評価値や「圧迫感・振動感の閾値曲線」の評価値は、被験者に対して固定発生源からの試験音を聞かせた実験の結果に基づく分析として学術的価値があることは否定できない としても、低周波音を原因とする心身への影響について、その機序や低周波音の程度との関係を航空機騒音のような移動する発生源を含めて一般的に解明した基準として確立、定着したものであるとまではいえない。これらの評価値を用いて低周波音に関わる問題が解決された事例があったとしても、上記判断を左右するものとはいえない。 エさらに、前記イで説示したとおり、厚木飛行場周辺での低周波音の測定 結果は限定的なものである。そして、前記第1・3⑵ウのとおり、低周波音は高い周波数の音と比べて地表面吸収及び空気吸収が極めて小さいことを考慮しても、陳述書で低周波音による被害を受けていると訴える 結果は限定的なものである。そして、前記第1・3⑵ウのとおり、低周波音は高い周波数の音と比べて地表面吸収及び空気吸収が極めて小さいことを考慮しても、陳述書で低周波音による被害を受けていると訴える原告らが実際にどの程度の低周波音に曝露されているかが立証されているとはいえず、参照値及び評価値と比較するなどして、当該原告らの訴える被 害が低周波音に起因するか否かを判断することはできず、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民全体(あるいは特定の区域に分類された周辺住民)が広く低周波音による被害を受けていると評価することはできない。 その他、低周波音に係る規制の基準やガイドライン値等が定められる状 況にもないことも考慮すると、上記の参照値や評価値との比較をもって、厚木基地周辺において、広く低周波音による被害が発生しているということはできず、低周波音による被害を特に取り上げて検討することはできない。 オもっとも、前記第1・2⑴アのとおり、WHOガイドラインにおいては、 低周波音が含まれる騒音の場合には、より強い住民反応が報告され、より低いレベルのガイドライン値が望ましいことや、低周波騒音の場合には低い音圧レベルでも睡眠を妨害する可能性があることなどが指摘されているところ、前記イのとおり、厚木基地を離着陸する航空機からは高いレベルの低周波音が発せられているといえるなど、厚木基地の周辺住民に低周 波音による生理的な影響がないとも言い切れない状況にある。また、原告らによる測定結果によれば、少なくとも測定点付近においては、相当量の低周波音が生じているところ、他の航空機騒音とは異なる圧迫感や振動感といった独特の被害を訴える原告らがいる。これらの事情も考慮すれば、原告らが低周波音に起因 少なくとも測定点付近においては、相当量の低周波音が生じているところ、他の航空機騒音とは異なる圧迫感や振動感といった独特の被害を訴える原告らがいる。これらの事情も考慮すれば、原告らが低周波音に起因すると主張する被害についても、広い意味では航空機騒音に起因するものということができるから、航空機騒音により現れ る被害の一環として考慮すべきであるといえる。 ⑹ 振動・排気ガスの被害について原告らは、航空機による家屋の振動、排気ガスによる洗濯物の汚損等の被害を受けている旨を主張する。 しかしながら、原告らの主張によっても、いかなる範囲の原告らに具体的 にどのような被害が生じているかは不明である。 そうすると、厚木基地を離着陸する航空機による被害として、振動や排気ガスの影響を広く周辺住民が受けているとは認めることができず、原告らの受ける損害としてこれを考慮することはできない。 ⑺ 小括 以上で認めた被害は、厚木基地を離着陸する航空機から発せられる騒音に起因するものであるということができ、原告らそれぞれの生活状況や身体状況等に応じて様々な現れ方をするものであるが、生活環境整備法に基づく第一種区域の指定を受けた区域である本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する原告らに共通するものであると認められる。 したがって、原告らは、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する不安といった精神的苦痛を反復継続的に受けているということができ、これらの被害の内容に照らして、その程度は軽視し難いというべきである。原告らは、日常的にこれらの被害を受けることで、各種被害が相互に関連して有機的に 結びついて、その生活の質を全体として損なわれて の被害の内容に照らして、その程度は軽視し難いというべきである。原告らは、日常的にこれらの被害を受けることで、各種被害が相互に関連して有機的に 結びついて、その生活の質を全体として損なわれているというべきであり、そのことは、睡眠を含めた人として当然に享受すべき平穏な生活を害されている点で、健康又は生活環境に関わる重要な法的利益に対する侵害であり、その性質上、事後的な金銭賠償のみによって、損害が填補され、回復できるものでないことは明らかである。 また、これらの被害の原因となる航空機騒音は、厚木基地において内外の 情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生し、これらの被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであって、そのような観点からも、これらの被害は、事後的にその違法性を争う取消訴訟等による救済になじまない性質のものであることは明らかである。 ⑻ 被告の主張について被告は、航空機騒音が人の身体又は精神面に影響を及ぼすことは一般的に否定されていると主張して、関連する証拠(乙C1~24)を提出するが、いずれも上記の平成7年までの知見に基づくWHOガイドラインよりも前の文献であるか、同ガイドラインに示された知見と必ずしも矛盾しな いものがほとんどであり、上記で認定した知見を否定するものとまではいえない。 3 処分の内容及び性質前記前提事実等第2・2⑶及び前記第1・9のとおり、厚木基地所属の第4航空群は、我が国の周辺海域における対潜航空活動を中心として、災害派遣等 の民生協力活動等を行い、第51航空隊は、航空機の運用についての調査、研究、試験、教育等を、第61航空隊は、人員及び貨物の輸送業務を、航空管制隊は、海上自 潜航空活動を中心として、災害派遣等 の民生協力活動等を行い、第51航空隊は、航空機の運用についての調査、研究、試験、教育等を、第61航空隊は、人員及び貨物の輸送業務を、航空管制隊は、海上自衛隊の航空機運航に必要な航空情報の通報、飛行計画の申請及び承認に関する連絡事務等をそれぞれ行い、周辺海域の防衛や海上交通の安全確保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施することができるようにしてい る。 そして、自衛隊法に規定された自衛隊の行動である防衛出動(76条)、国民保護等派遣(77条の4)、命令及び要請による治安出動(78条、81条)、海上における警備行動(82条)、海賊対処行動(82条の2)、災害派遣(83条)、領空侵犯に対する措置(84条)、在外邦人等の保護措置(84条の3)、後方支援活動(84条の5)等は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保 つ任務を負う自衛隊の根幹をなすものであり、国民の生命、身体、財産等の保護の観点からも極めて重要なものである。これらの行動は、航空機の運航によることで、広範囲、かつ、迅速に行うことができ、その実効性を上げることができる性質のものであり、その遂行が適時に行われることがその目的達成のために不可欠であるから、これに係る防衛大臣の運航統括権限が制限されること の影響は大きいといわなければならない。 また、平時における活動や訓練も有事に備えて必要なものであるところ、有事の場合と同様の緊急性が認められるということはできないとしても、有事を想定して様々な時間や状況のもとに訓練を行う必要はあり、航空機を運航する時間帯を制限することの影響は軽視できない。 4 重大な損害を生ずるおそれの有無前記2で説示したとおり、自衛隊機運航処分によって本件告示コンター図上の75W以上 、航空機を運航する時間帯を制限することの影響は軽視できない。 4 重大な損害を生ずるおそれの有無前記2で説示したとおり、自衛隊機運航処分によって本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する原告らに生ずるおそれのある損害は、事後的な救済になじまない性質のものであることは明らかであり、その程度は軽視し難いものであるから、前記3で説示した厚木基地における自衛隊機の運航の内容、 性質等を踏まえても、重大な損害を生ずるおそれがあるというべきである。 なお、厚木基地周辺の航空機騒音について、米軍機による影響が主たるものであったとしても、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い以上、米軍機による影響の有無及び程度が、自衛隊機運航処分によって重大な損害を生ずるおそれがあるか否かを左右するものと はいえない。 第6 争点3(航空機運航の違法性)について 1 判断基準⑴ 前記第4・1⑴で説示したとおり、自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとされ(自衛隊法3条1項)、そのほか、我が 国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動等であって、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施するものを行うことを任務とし(同条2項)、そのために、防衛出動をはじめとする各種の行動(同法76条ないし84条の5)をすることができ、これらの行動に必要な情報の収集、隊員の教 育訓練も自衛隊の行動に含まれる(防衛省設置法4条1項4号、9号参照)。 防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括する権限(自衛隊法8条)の一環として、自衛隊機 これらの行動に必要な情報の収集、隊員の教 育訓練も自衛隊の行動に含まれる(防衛省設置法4条1項4号、9号参照)。 防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括する権限(自衛隊法8条)の一環として、自衛隊機の運航を統括する権限を有するとともに、自衛隊機の運航に必然的に伴う騒音を含めた航空機による災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じる義務を負っている(同法107条5項)。同法上、防衛大 臣がどのような要件の下に自衛隊機の運航に係る職務命令を発するかについての規定は存在しない。 また、防衛大臣は、自衛隊機の具体的な運航の権限を、航空機使用訓令2条6号に定める航空機使用者に与えるとともに、同訓令3条において、航空機使用者が所属の航空機を使用することができる場合として、自衛隊法第6 章(同法76条から86条まで)の規定により自衛隊が行動する場合などにおいて「航空機を使用する必要があるとき」又は「航空機を使用する必要がある場合」と定めるが、同訓令等において具体的な基準は定められていない。 このような自衛隊法等の定めによれば、防衛大臣は、我が国の防衛や公共の秩序の維持等の自衛隊に課せられた任務を確実かつ効果的に遂行するため、 自衛隊機の運航に係る権限を行使するものと認められるところ、その権限の行使に当たっては、我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護に関わる内外の情勢、自衛隊機の運航の目的及び必要性の程度、同運航により周辺住民にもたらされる騒音による被害の性質及び程度等の諸般の事情を総合考慮してなされるべき高度の政策的、専門技術的な判断を要することが明らかであるから、上記の権限の行使は、防衛大臣の広範な裁量に委ねられ ているものというべきである。 そうすると、自衛隊が設置する飛行場における自衛隊機の運航 的、専門技術的な判断を要することが明らかであるから、上記の権限の行使は、防衛大臣の広範な裁量に委ねられ ているものというべきである。 そうすると、自衛隊が設置する飛行場における自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、行訴法37条の4第5項の差止めの要件である、行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるか否かについては、同権限の行使が、上記のような防 衛大臣の裁量権の行使としてされることを前提として、それが社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かという観点から審査を行うのが相当であり、その検討に当たっては、当該飛行場において継続してきた自衛隊機の運航やそれによる騒音被害等に係る事実関係を踏まえた上で、当該飛行場における自衛隊機の運航の目的等に照らした公共性や公益性の有無 及び程度、上記の自衛隊機の運航による騒音により周辺住民に生ずる被害の性質及び程度、当該被害を軽減するための措置の有無や内容等を総合考慮すべきである(厚木基地4次行訴最判)。 ⑵ア原告らは、自衛隊機運航処分が羈束処分であり、防衛大臣には、厚木基地周辺において、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止 等に関する法律所定の経路又は時間その他航行の方法の指定の措置その他航空機騒音による障害を防止・軽減するための適切な措置を講じる義務があり、これらの義務に違反して自衛隊機を運航させてはならないとし、夜間・早朝の運航、訓練のための運航及び75Wを超えることとなる運航が同義務に違反するものであると主張する。 しかし、前記⑴で説示したとおり、自衛隊機運航処分に係る防衛大臣の権限行使は、諸般の事情を総合考慮してなされるべき高度の政策的、専門技術的な判断を要するもの 違反するものであると主張する。 しかし、前記⑴で説示したとおり、自衛隊機運航処分に係る防衛大臣の権限行使は、諸般の事情を総合考慮してなされるべき高度の政策的、専門技術的な判断を要するものであり、運航の必要性や緊急性の程度によって、自衛隊機の運航の規制の在り方は一様ではなく、また、災害防止等の措置の在り方も一義的に明らかになるものでもないから、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限が、騒音等による周辺住民の障害防止の観点から羈束 的に制限されているということはできず、原告らの上記主張を採用することができない。 イ原告らは、自衛隊機運航処分に裁量が認められるとしても、原告らの被害が基本的人権そのものに対する侵害であり、優越的であるから、その裁量は限定されるべきであり、いわゆる判断過程審査による慎重な審査が求 められる旨を主張する。 しかし、裁量処分に対する司法審査に当たっては、法が処分を行政庁の裁量に委ねるものとした趣旨、目的、範囲は一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法とされる場合もそれぞれ異なると解されることから、被侵害利益の性質のみから裁量の 広狭が判断されるべきものではなく、自衛隊機運航処分により侵害される原告らの権利利益の性質をもって、裁量が限定されるということはできない。 また、前記⑴で説示したとおり、自衛隊機運航処分に係る防衛大臣の権限行使は、諸般の事情を総合考慮してされる高度の政策的、専門技術的な 判断を要するものであるところ、その考慮すべき諸般の事情のうち、特に我が国の平和と安全や国民の生命、身体、財産等の保護に関わる内外の情勢やこれに関連する自衛隊機の運航の必要性の程度等については、時々刻々と変化し、事前に想定することが極めて困難なものであ うち、特に我が国の平和と安全や国民の生命、身体、財産等の保護に関わる内外の情勢やこれに関連する自衛隊機の運航の必要性の程度等については、時々刻々と変化し、事前に想定することが極めて困難なものであるから、その性質上、自衛隊機運航処分について事前に判断過程を審査することは困難 である。また、以上によれば、一定の運航目的や事情等の基準をもって自衛隊機の運航を規制することにも困難があるといわざるを得ない。例えば、一定のW値を超える騒音を生じることとなる自衛隊機の運航を一切規制しようとすれば、特定の種類の航空機の運航が困難になるなど、緊急を要する防衛出動の場合等に不相当な事態が生じ得るし、訓練目的の夜間の運航を規制しようとしても、内外の情勢等の諸事情によっては緊急に夜間の 訓練をする必要な場合も想定されることから、やはり不相当な場合が生じ得る。このように、自衛隊機運航処分に係る判断は、その考慮すべき諸般の事情に変動性及び予測困難性があり、予め一定の基準を設け、それに従って判断することが困難な性質のものであるというべきである。 そうすると、自衛隊機運航処分の差止めの訴えにおける違法性の判断に おいては、考慮すべき事情を事前に想定することが極めて困難であるという自衛隊機運航処分に係る判断の性質に照らして、原告らが主張するような、基礎とされた重要な事実に誤認がある等により重要な事実の基礎を欠くこととなるかどうか、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容 が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるかどうかを判断することは、適当ではないといわざるを得ない。このことは、原告らが防衛大臣による自衛隊機運航の統括・管理の在り方の審査を求めているとしてもこ に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるかどうかを判断することは、適当ではないといわざるを得ない。このことは、原告らが防衛大臣による自衛隊機運航の統括・管理の在り方の審査を求めているとしてもこれに左右されるものではない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 2 公共性や公益性の有無及び程度前記第5・3で説示したとおり、厚木基地所属の第4航空群は、我が国の周辺海域における対潜航空活動を中心として、災害派遣等の民生協力活動等を行い、第51航空隊は、航空機の運用についての調査、研究、試験、教育等を、第61航空隊は、人員及び貨物の輸送業務を、航空管制隊は、海上自衛隊の航 空機運航に必要な航空情報の通報、飛行計画の申請及び承認に関する連絡事務等をそれぞれ行っている。これらの部隊の行動により、周辺海域の防衛や海上交通の安全確保、各国等との安全保障協力等を機動的に実施することができるようにしているのであるから、厚木基地における自衛隊機の運航は、我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしているものというべきであり、厚木基地における自衛隊機の運航には、 高度の公共性、公益性があるものと認められる。 また、訓練のための自衛隊機の運航についても、その時々の内外の情勢に応じて自衛隊の任務を確実かつ効果的に遂行するためには、平素からの訓練が必要不可欠なものというべきであって、直ちに公共性、公益性が低いということはできない。 3 周辺住民に生ずる被害の性質及び程度前記第5・2で説示したとおり、厚木基地周辺住民に生じる被害の性質及びその程度は、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する 前記第5・2で説示したとおり、厚木基地周辺住民に生じる被害の性質及びその程度は、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害を含む生活妨害、アノイアンスや健康被害、航空機事故、交通事故に対する不安といった精神的苦痛を反復継続的に受けているというもので、健康又は生活環境に関わる重要な法 的利益に対する侵害であり、その程度は軽視し難いものである。 4 被害を軽減するための措置の有無や内容等前記前提事実等第3・4⑴アのとおり、第4航空群については、①毎日午後10時から翌午前6時までの時間帯の訓練飛行及び地上試運転の原則不実施、②場周経路内における連続離着陸訓練機数及び連続離着陸訓練回数の制限、③ 厚木管制圏内での編隊飛行の原則不実施、④既定の飛行経路の高度以下の飛行について、任務及び訓練上必要な場合を除いて不実施、⑤FCLPの不実施、⑥航空隊別の離着陸訓練時間の設定などの自主規制を設けている。これは、訓練等自体を禁止するものではなく、自衛隊機による夜間の騒音の発生や訓練のための運航の回数等を制限するものであるから、主に訓練のための運航時の騒 音の発生が軽減されるようにするものである。前記第1・5⑷のとおり、厚木飛行場における第4航空群所属の自衛隊機の午後10時から翌午前6時までの飛行実績は、平成25年度から平成30年度までで、50回程度から100回程度で推移しており、自主規制にかかわらず上記の時間帯における自衛隊機の運航は相当回数認められ、結局のところ、このような自主規制により運航の回数が制限されているものであるとしても、十分な実効性があると評価すること は困難である。 また、前記第1・8⑵及び⑶のとおり、被告は、住宅防音工事について、昭和50年度から令和4年度までの間に、延べ35万5089世帯に対して ても、十分な実効性があると評価すること は困難である。 また、前記第1・8⑵及び⑶のとおり、被告は、住宅防音工事について、昭和50年度から令和4年度までの間に、延べ35万5089世帯に対して、合計9049億3395万0310円を助成し、昭和29年度から令和4年度までの間、学校、幼稚園及び保育所並びに病院、老人ホーム等の防音工事につい て、合計627施設に対し、合計826億5165万9926円を助成したほか、令和4年度までに、576戸の移転建物に対し、計89億8891万8372円の補償、合計82万7433㎡の買入土地に対し、計147億3152万2730円の買入れをして移転措置を行った。もっとも、防音工事については、防音効果には限りがある上、所定の計画防音量を達成するには開口部を閉 め切る必要があるなどの弊害があり、移転措置についても、対象区域が限定されており、移転それ自体に伴う負担があるなどの弊害もあり、実効性には限界があるといわざるを得ない。 このほか、前記第1・8⑴のとおり、被告は、岩国移駐に関し、平成18年度から平成28年度までで約3981億9298万7000円を支出している ところ、前記第1・5⑴のとおり、被告の設置する航空機騒音自動測定装置の測定データにおけるW値は、岩国移駐前である平成29年度まではほぼ横ばいである一方、平成30年度以降は、それ以前と比べて6~16程度W値が低下している。また、同⑵及び⑸のとおり、厚木基地の周辺自治体の設置する騒音計におけるW値(環境基準方式)やLden値の推移をみても、平成30年度 以降はそれ以前と比べて10程度低下しているほか、100dB以上のものも含めて、平成30年度以降は70dB以上かつ5秒以上の継続音の測定回数がそれ以前と比べて大きく減少している。航 30年度 以降はそれ以前と比べて10程度低下しているほか、100dB以上のものも含めて、平成30年度以降は70dB以上かつ5秒以上の継続音の測定回数がそれ以前と比べて大きく減少している。航空機騒音に関する苦情件数が平成30年度以降それまでの半数以下にとどまっていることも、苦情につながるような特に大きな騒音が相対的に減少したことを示すものであるといえる。そして、このような騒音の減少の結果、前記第1・7のとおり、岩国移駐後は本件告示 コンター図と比べて、令和2年度分布図上の75W以上の区域の範囲は相当狭まったといえる。このように、被告は、岩国移駐により主に移駐に係る米軍機による騒音の発生を抑制することで、75W以上の騒音に曝露される地域を相当程度縮減させるとともに、75W以上の区域においても、岩国移駐前よりも周辺住民らに対する騒音曝露を一定程度緩和させたといえる。 以上のとおり、被告は、原告らを含む本件告示コンター図上の75W以上の区域に居住する周辺住民に生ずる前記3の被害を軽減するために種々の措置を講じてきており、これらには、実効性の観点からは疑問があり、結果としては不十分といわざるを得ないものも少なくないが、岩国移駐については、米海軍の空母艦載機の移駐により、厚木基地周辺の騒音を相当程度軽減させる効果が あったということができる。 なお、原告らは、令和2年度分布図について、そのもととなった報告書(乙B22)に一部誤りがあったにもかかわらず、それを騒音評価等の学識経験を有する者で構成される検討委員会が見落としていたこと、環境基準方式と施設庁方式の違いについての基本的な理解を欠いていることなどを指摘して、騒音 調査と結果の信用性が疑わしく、これらに信用性が認められないと主張する。 しかし、同報告書の誤りに と、環境基準方式と施設庁方式の違いについての基本的な理解を欠いていることなどを指摘して、騒音 調査と結果の信用性が疑わしく、これらに信用性が認められないと主張する。 しかし、同報告書の誤りについてはその後訂正がされている(乙B18、22)上、同検討委員会の検討対象には上記誤りに係る個々のデータの確認が含まれていない(乙B18)以上、同検討委員会の検討が不十分ということはできず、4次民事訴訟における証人尋問において、証人Aも本件告示コンター図を作成 した時と同じやり方が継承されている旨を証言する(甲行9)など、調査等の方法に問題があったとはいえない。また、原告らが環境基準方式と施設庁方式の違いについての基本的な理解を欠いているとする同報告書の部分は、W値の予測計算のプロセスの妥当性を検証する部分にすぎず(乙B18)、調査の結果に直接影響を及ぼす部分ではなく、証人Aがそのプロセスについて特段問題視していない(甲行9)ことからすれば、同報告書の信用性を左右するものとは いえず、令和2年度分布図が信用できないということはできない。 5 総合的考察前記前提事実等第2・2及び3のとおり、厚木基地周辺における騒音問題は、遅くとも昭和35年頃から、主として米海軍の戦闘機によって社会問題化していったものであるところ、自衛隊機の運航は、昭和46年7月頃から継続して きたものである。原告らは、このように長年にわたって航空機騒音による被害を受けてきたものであり、その被害は、軽視できるものではない。 これに対し、厚木基地における自衛隊機の運航は、我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしており、高度の公共性、公益性があるものと認められる。また、周辺住民に生ずる被害 を軽 る自衛隊機の運航は、我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしており、高度の公共性、公益性があるものと認められる。また、周辺住民に生ずる被害 を軽減するため、自衛隊機の運航に係る自主規制や周辺対策事業の実施などの対策措置が講じられている。これらには結果としては実効性の観点から疑問があるものの、自衛隊機の運航の必要性の程度は時々刻々と変化するものである以上、訓練以外の飛行等の多くが自主規制の対象とならず、自主規制においても例外が広く許容される余地があったり、その他の軽減措置が自衛隊機の運航 に関わらない防音工事や移転措置等に留まるとしてもやむを得ない側面もある。 また、自衛隊機の運航とは直接の関連はないが、原告らの被害の発生に大きく寄与していると考えられる米海軍の空母艦載機の岩国移駐が完了しており、これは、騒音を相当程度軽減するものと評価することができる。 これらの事情を総合考慮すれば、原告らの上記被害の程度を踏まえても、夜 間の自衛隊機の運航、訓練のための自衛隊機の運航及び一定の騒音量を超えることとなる自衛隊機の運航が将来にわたって行われることが、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえない。 したがって、厚木基地における、夜間の自衛隊機の運航、訓練のための自衛隊機の運航及び一定の騒音量を超えることとなる自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められる ときに当たるということはできない。 第7 争点4(確認の訴えの利益の有無)について本件確認の訴えについて、原告らは、被告による厚木飛行場の管理運営によって、一定限度以上の航空機騒音にさらされることのない権利としての人格権の確認を求めるものであり、被告が広く原告ら 無)について本件確認の訴えについて、原告らは、被告による厚木飛行場の管理運営によって、一定限度以上の航空機騒音にさらされることのない権利としての人格権の確認を求めるものであり、被告が広く原告らの人格権に対する侵害を除去す る方法を採るべきことの確認を求めるもので、自衛隊機及び米軍機の運航だけを対象とするものではなく、確認の利益が認められると主張する。 しかし、航空機が空中を飛行して騒音を発生させる以上、例えば厚木基地自体に防音設備を設けたとしても、飛行中の騒音を軽減させることはできないのであり、自衛隊機及び米軍機の運航に関わらない方策により、原告らの主張す る、原告らがその居住地において75Wを超えることとなる航空機騒音を被ることのない権利に対する侵害を防止する方法としては、騒音源となり得る厚木飛行場を離着陸する可能性のある全ての航空機の静粛化を進めるしかないことは明らかである。 そして、前記第1・3⑴イのとおり、騒音の基準に適合した有効な耐空証明 を受ける義務等が免除されるなど、自衛隊機については自衛隊に求められる任務を遂行するために必要な性能が優先され、騒音量の大きいものがあることを自衛隊法も認めていることなどからして、現時点で航空機自体の静粛化でこれを実現する手段はおよそ想定できず、また、被告が米軍機の静粛化に関する方策をとりえないことは明らかである。 そうすると、結局のところ、原告らの本件確認の訴えは、その実質において、自衛隊機の運航及び米軍機の厚木飛行場の使用を問題とし、その一部を差し止めることを目的とするものにほかならないというべきである。 したがって、本件確認の訴えのうち、本件自衛隊機確認の訴えは、その実質において、防衛大臣に、75Wを超えることとなる騒音を発生させる自衛隊機の運航の差 的とするものにほかならないというべきである。 したがって、本件確認の訴えのうち、本件自衛隊機確認の訴えは、その実質において、防衛大臣に、75Wを超えることとなる騒音を発生させる自衛隊機の運航の差止めを求めるものにほかならず、前記第4・1で説示したとおり、 自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付ける公権力の行使に当たり、その差止めを求める抗告訴訟によるべきであるといえる。 また、本件確認の訴えのうち、本件米軍機確認の訴えは、前記第3・2で説示したとおり、防衛大臣が、米軍に対し、米軍による厚木飛行場の使用等を許 可するといった行為は予定されておらず、このほか被告にこれを制約する権限はないから、そのような権限を有していない被告と原告らとの間で、米軍機の運航に関する義務の存在を確認することは無意味である。 以上のとおり、本件確認の訴えは、紛争解決のための確認対象が適切とはいえず、確認の利益を欠くといわざるを得ないから、却下を免れない。 第5章結論よって、原告らの請求に対する当裁判所の判断は次のとおりであるから、それぞれ主文のとおり判決する。 1 死亡原告らを除く原告らの訴えのうち、本件米軍機差止めの訴え及び本件確認の訴えは不適法であるからこれらをいずれも却下することとする。 2 転居原告らによる本件自衛隊機差止めの訴えは不適法であるから、これを却下することとする。 3 死亡原告らを除く原告らの請求のうち、本件自衛隊機差止めの訴えに係る請求には理由がないからこれを棄却することとする。 4 本件訴訟のうち、死亡原告らの請求に係る部分については、死亡原告らの死 亡により当然に終了した。 横浜地方裁判所第1民事部 求には理由がないからこれを棄却することとする。 4 本件訴訟のうち、死亡原告らの請求に係る部分については、死亡原告らの死 亡により当然に終了した。 横浜地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官岡田伸太 裁判官向井敬二 裁判官野田 翼 略語一覧表略語説明等4次行政訴訟平成19年12月17日に提起された第4次の厚木基地騒音訴訟のうちの行政訴訟4次民事訴訟平成19年12月17日に提起された第4次の厚木基地騒音訴訟のうちの民事訴訟5次民事訴訟平成29年8月4日提起の厚木基地の使用による一定の騒音の到達禁止等や損害賠償等を求める民事訴訟75W以上の区域75W以上の区域全体75Wの区域75W以上80W未満の区域FCLP空母艦載機の着艦訓練(FieldCarrierLandingPractice)ICAO国際民間航空機関(InternationalCivilAviationOrganization)NLPFCLPのうち夜間に実施するもの(NightLandingPractice)WHO世界保健機関WHOガイドライン環境騒音のガイドライン実務的抄録W値WECPNLの値厚木基地厚木海軍飛行場の通称名厚木基地騒音訴訟厚木基地周辺住民が昭和51年以降4次にわた 世界保健機関WHOガイドライン環境騒音のガイドライン実務的抄録W値WECPNLの値厚木基地厚木海軍飛行場の通称名厚木基地騒音訴訟厚木基地周辺住民が昭和51年以降4次にわたり、厚木基地に離着陸する航空機による騒音等の被害を理由に被告に対して損害賠償等を求めて提訴してきた訴訟の総称厚木基地1次最判最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁厚木基地4次行訴最判最高裁平成27年(行ヒ)第512号、513号同28年12月8日第一小法廷判決・民集70巻8号1833頁厚木飛行場厚木基地の一部に被告が設置した海上自衛隊の飛行場厚木飛行場区域別紙5(厚木基地図面)の赤斜線部分。263万9157㎡の土地及びその上の建物等移転措置生活環境整備法5条1項、2項に基づく、第二種区域にその指定の際現に所在する建物等の所有者が当該建物等を同区域外に移転し、又は除却するときに、当該建物等の所有者に対し、当該移転又は除却により通常生ずべき損失を補償し、第二種区域に所在する土地の所有者が当該土地の買入れを申し出るときに、当該土地の買入れ等をするもの岩国移駐厚木基地に所属する米海軍第5空母航空団を岩国飛行場へ移駐すること環境基準昭和48年環境基準及び現行環境基準の総称環境基準方式ICAO提案のW値の算定方式を修正した、環境基準におけるW値の算定方式規制措置通知厚木航空基地における航空機騒音の軽減に関する規制措置について行訴法行政事件訴訟法現行環境基準平成19年環境省告示第114号による改正後の「航空機騒音に係る環境基準について」航空機使用訓令航空機の使用及び搭乗に関する訓令(昭和36年防衛庁訓令第2号)国 法現行環境基準平成19年環境省告示第114号による改正後の「航空機騒音に係る環境基準について」航空機使用訓令航空機の使用及び搭乗に関する訓令(昭和36年防衛庁訓令第2号)国賠法国家賠償法参照値低周波音手引書における物的苦情に関する参照値と心身に係る苦情に関する参照値自衛隊機自衛隊の使用する航空機自衛隊機運航処分防衛大臣の命令に基づいて行われる自衛隊機の運航処分施設庁方式環境基準方式を修正した、被告が防衛施設について用いているW値の算定方式死亡原告ら別紙2(死亡原告目録)記載の原告ら使用転換合意昭和46年6月30日の厚木飛行場区域を使用転換する合意昭和48年環境基準平成19年環境省告示第114号による改正前の「航空機騒音に係る環境基準について」生活環境整備法防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律騒音規制合意昭和38年9月19日の日米合同委員会における厚木基地周辺の米軍の活動に伴う騒音についての合意(昭和44年の改正を含む)低周波音手引書低周波音問題対応の手引書転居原告ら別紙3(転居原告目録)記載の原告ら日米安保条約日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約日米共同使用区域別紙5(厚木基地図面)の黄色部分。117万8779㎡の土地及びその上の建物等日米行政協定日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定日米地位協定日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定米海軍アメリカ合衆国海軍米軍アメリカ合衆国軍隊米軍機米軍の使用する航空機/米国軍隊の航空機米軍専用区域別紙5(厚木 区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定米海軍アメリカ合衆国海軍米軍アメリカ合衆国軍隊米軍機米軍の使用する航空機/米国軍隊の航空機米軍専用区域別紙5(厚木基地図面)の青色部分米国アメリカ合衆国平成16年度騒音コ平成15年度から平成16年度にかけて実施した調査等に基づいンター図て作成された騒音コンターを示した図面平成30年ガイドライン平成30年にWHO欧州事務局が公表した「欧州地域向けの環境騒音ガイドライン」本件確認の訴え請求の趣旨第3項の訴え本件告示コンター図平成18年告示等に基づき、平成18年1月末時点で第一種区域等の範囲が示された図面本件差止めの訴え本件自衛隊機差止めの訴え及び本件米軍機差止めの訴えの総称本件自衛隊機確認の訴え本件確認の訴えのうち自衛隊機に係る部分本件自衛隊機差止めの訴え請求の趣旨第1項の訴え本件米軍機確認の訴え本件確認の訴えのうち米軍機に係る部分本件米軍機差止めの訴え請求の趣旨第2項の訴え夜間騒音ガイドライン欧州夜間騒音ガイドライン(実務的概要)令和2年度分布図令和元年度及び令和2年度に実施した騒音状況の調査に基づいて作成された厚木基地周辺地域における5WごとのW値の分布を示す図面以上

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