平成23(ワ)38969 債務不存在確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年2月28日 東京地方裁判所
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判決文本文91,759 文字)

平成25年2月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第38969号債務不存在確認請求事件口頭弁論終結日平成24年12月18日判決東京都新宿区<以下略>原告アップルジャパン株式会社訴訟承継人AppleJapan合同会社訴訟代理人弁護士長沢幸男同矢倉千栄同永井秀人同金子晋輔訴訟復代理人弁護士稲瀬雄一同石原尚子同蔵 原 慎一朗同片山英二同北原潤一同岡本尚美訴訟代理人弁理士大塚康徳補佐人弁理士大塚康弘同坂田恭弘大韓民国京畿道水原市<以下略>被告三星電子株式会社訴訟代理人弁護士大野聖二同三村量一同田中昌利同市橋智峰 同井上義隆同小林英了同井上 聡同逵本憲祐同岡田紘明同飯塚暁夫訴訟代理人弁理士鈴木 守補佐人弁理士大谷 寛主文 1 被告が,原告による別紙物件目録記載の各製品 紘明同飯塚暁夫訴訟代理人弁理士鈴木 守補佐人弁理士大谷 寛主文 1 被告が,原告による別紙物件目録記載の各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,特許第4642898号の特許権侵害に基づく原告に対する損害賠償請求権を有しないことを確認する。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,原告による別紙物件目録記載の各製品(以下「本件各製品」と総称し,同目録1記載の製品を「本件製品1」,同目録2記載の製品を「本件製品2」などという。)の生産,譲渡,輸入等の行為は,被告が有する発明の名称を「移動通信システムにおける予め設定された長さインジケータを用いてパケットデータを送受信する方法及び装置」とする特許第46 42898号の特許権(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の侵害行為に当たらないなどと主張し,被告が原告の上記行為に係る本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,パーソナル・コンピュータ,コンピュータ関連機器のハードウェア及びソフトウェア,コンピュータに関連する付属機器の販売等を目的とする合同会社である。 なお,原告は,平成23年10月30日に,米国法人のアップルインコーポレイテッド(以 関連機器のハードウェア及びソフトウェア,コンピュータに関連する付属機器の販売等を目的とする合同会社である。 なお,原告は,平成23年10月30日に,米国法人のアップルインコーポレイテッド(以下「アップル社」という。)の子会社であるアップルジャパン株式会社を吸収合併し,本件訴訟における同社の地位を承継した(以下においては,上記吸収合併前のアップルジャパン株式会社についても「原告」という。)。 イ被告は,電子電気機械器具,通信機械器具及び関連機器とその部品の製作,販売等を目的とする韓国法人である。 (2) 被告の特許権ア被告(特許登録原簿上の名称「サムスンエレクトロニクスカンパニーリミテッド」)は,平成18年5月4日,本件特許に係る国際特許出願(国際出願番号・PCT/KR2006/001699,優先日・平成17年5月4日,優先権主張国・韓国,日本における出願番号・特願2008-507565号。以下「本件出願」という。)をし,平成22年12月10日,本件特許権の設定登録を受けた(甲1の1,2)。 イ本件特許の特許請求の範囲は,請求項1ないし14から成り,その請 求項1及び8の記載は,次のとおりである(以下,請求項8に係る発明を「本件発明1」,請求項1に係る発明を「本件発明2」といい,本件発明1及び2を併せて「本件各発明」という。)。 「【請求項1】 移動通信システムにおけるデータを送信する方法であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PD まれるか否かを判定する段階と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割し,各PDUのデータフィールドが前記複数のセグメントのうち一つのセグメントを含む複数のPDUを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,前記PDUを受信器に伝送する段階と,を有することを特徴とするデータ送信方法。」「【請求項8】 移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否 かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部と,を含むことを特徴をするデータ送信装置。」ウ本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。 (ア) 本件発明1(請求項8)A 移動通信システムにおけるデータを送信する装置であって,B 上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なく とも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,C 一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッ まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なく とも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,C 一連番号(SN)フィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に含む少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,D 前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部と,E 前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,設定するLI挿入部と,F ここで,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,G 前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部と,H を含むことを特徴をするデータ送信装置。 (イ) 本件発明2(請求項1)I 移動通信システムにおけるデータを送信する方法であって,J 上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と, K 前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む U)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と, K 前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,ヘッダーとデータフィールドを含む前記PDUを構成する段階と,ここで,前記ヘッダーは,一連番号(SN)フィールドと,前記PDUが分割,連結,またはパディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを指示する1ビットフィールドと,を含み,L 前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割し,各PDUのデータフィールドが前記複数のセグメントのうち一つのセグメントを含む複数のPDUを構成する段階と,ここで,前記各PDUのヘッダーは,SNフィールド,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示す1ビットフィールド,そして前記少なくとも一つのLIフィールドを含み,M 前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含むと,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され,N 前記PDUを受信器に伝送する段階と,O を有することを特徴とするデータ送信方法。 (3) 原告の行為等ア原告は,アップル社が製造した本件各製品を輸入し,販売している。 イ(ア) 本件各製品は,本件発明1の構成要件A及びHを充足する。 (イ) 本件各製品におけるデータ送信方法は,本件発明2の構成要件I及びOを充足する。 ウ本件各製品は,第3世代移動通信システムないし第3世代携帯電話システム(3G)(ThirdGeneration)の普及促進と付随する仕様の世界標準化を目的とする民間団 I及びOを充足する。 ウ本件各製品は,第3世代移動通信システムないし第3世代携帯電話システム(3G)(ThirdGeneration)の普及促進と付随する仕様の世界標準化を目的とする民間団体である3GPP(ThirdGeneration PartnershipProject)が策定した通信規格であるUMTS規格(UniversalMobileTelecommunicationsSystem)に準拠した製品である(乙1ないし5。以下,3GPPが定める通信規格を「3GPP規格」という。)。 UMTS規格は,日本では,W-CDMA方式(広帯域符号分割多元接続方式)と称されている。 (4) 本件特許に関するFRAND宣言ア 3GPPを結成した標準化団体の一つであるETSI(EuropeanTelecommunicationsStandardsInstitute)(欧州電気通信標準化機構)は,知的財産権(IPR)の取扱いに関する方針として「IPRポリシー」(IntellectualPropertyRightsPolicy)を定めている。 IPRポリシーには,次のような規定がある(甲12。原文英語)。 「3 方針の目的3.1 ETSIは,総会が提議した,ヨーロッパの通信セクターの技術的な目的に最も資する解決策に基づく規格および技術仕様を作成することを目的としている。この目的を推進するため,ETSIのIPRについての方針は,ETSIおよび会員,ETSI規格および技術仕様を適用するその他の,規格の準備および採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。この目的を達成するに当たり,ETSIのIPRについ よび採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。この目的を達成するに当たり,ETSIのIPRについての方針では,通信分野での一般利用の標準化の必要性と,IPRの所有者の権利との間のバランスを取ることが求められる。 3.2 IPRの所有者は,ETSIの会員またはその関連会社,第三者であるかによらず,規格および技術仕様の実装で,IPR の使用につき適切かつ公平に扱われるものとする。」「4 IPRの開示4.1 …各会員は,自らが参加する規格または技術仕様の開発の間は特に,ETSIに必須IPRについて適時に知らせるため合理的に取り組むものとする。特に,規格または技術仕様の技術提案を行う会員は,善意をもって,提案が採択された場合に必須となる可能性のあるその会員のIPRについてETSIの注意を喚起するものとする。 4.3 上記の第4.1項に従っての義務は,ETSIにこの特許ファミリーの構成要素について適時に知らされた場合には,すべての既存および将来のその特許ファミリーの構成要素につき満たされたとみなされる。…」「6 ライセンスの可用性6.1 特定の規格または技術仕様に関連する必須IPRがETSIに知らされた場合,ETSIの事務局長は,少なくとも以下の範囲で,当該のIPRにおける取消不能なライセンス(irrevocablelicences)を公正,合理的かつ非差別的な条件(fair,reasonableandnon-discriminatorytermsandconditions)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3か月以内に保証することを,所有者にただちに求めるものとする。 ・製造で使用するべ riminatorytermsandconditions)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3か月以内に保証することを,所有者にただちに求めるものとする。 ・製造で使用するべく,ライセンシー自身の設計で,カスタマイズした部品およびサブシステムを製造または過去から引き続き製造する権利を含む,製造。 ・上記で製造した機器の販売または賃貸,処分。 ・機器の修理または使用,動作,および ・方法の使用。 上記の保証は,ライセンスの相互供与に同意することを求めるという条件に従い行われる場合がある。…6.2 特許ファミリーの指定された構成要素に関する,第6.1項に従っての保証は,保証が行われた時点で指定したIPRを除外する旨を明示する書面がある場合を除き,その特許ファミリーのすべての既存および将来の必須IPRに適用されるものとする。当該の除外の範囲は,明示的に指定されたIPRに限定されるものとする。 6.3 要請されたIPRの所有者の保証が許諾されない場合,委員会の委員長は,適切な場合,ETSI事務局と協議の上,問題が解決するまで,委員会が規格または技術仕様についての作業を停止すべきかどうかについて判断し,および/または関連の規格または技術仕様の承認を行うものとする。」「12 このポリシーは,フランス法に準拠する。」「15 定義 6 IPRに適用される「必須」とは,(商業的ではなく)技術的な理由で,標準化の時点で一般に利用可能な通常の技術慣行および最新技術を考慮し,IPRに抵触せずに規格に準拠する機器または方法を製造または販売,賃貸,処分,修理,使用または動作できないことを意味する。疑義を回避するため,規格が技術的な解決策でのみ実行可能で,すべてがIPRに抵触する例外的な場合で,当該のすべ または方法を製造または販売,賃貸,処分,修理,使用または動作できないことを意味する。疑義を回避するため,規格が技術的な解決策でのみ実行可能で,すべてがIPRに抵触する例外的な場合で,当該のすべてのIPRは必須とみなされるものとする。 7 「IPR」とは,商標以外の知的財産権の適用を含む,法律により参照された知的財産権を意味するものとする。疑義を回避するため,体裁に関連する権利または機密情報,企業秘密,同様のもの は,IPRの定義から除外される。 9 「会員」とは,ETSIの会員または賛助会員を意味するものとする。会員の参照は,文脈が許す場合には常に,その会員およびその関連会社と解釈されるものとする。 13 「特許ファミリー」とは,優先順位の高い文書それ自体を含む,一般に1つ以上の優先順位のあるすべての文書を意味するものとする。疑義を回避するため,「文書」は特許および実用新案,その応用を表す。」イ(ア) ETSIの会員である被告は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格としてETSIが推進しているW-CDMA技術に関し,被告の保有する必須IPRライセンスを,ETSIのIPRポリシー6.1項に従って,「公正,合理的かつ非差別的な条件」(fair,reasonableandnon-discriminatorytermsandconditions)(以下「FRAND条件」という。)で許諾する用意がある旨の誓約(宣言)をした(甲5)。 (イ) 被告は,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,ETSIのIPRポリシー4.1項に従って,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号(PCT/KR2006/001699)等に係るIPRが,UMTS規格 Iに対し,ETSIのIPRポリシー4.1項に従って,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号(PCT/KR2006/001699)等に係るIPRが,UMTS規格(TS 25.322等)に関連して必須IPRであるか,又はそうなる可能性が高い旨を知らせるとともに,ETSIのIPRポリシー6.1項に準拠する条件(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(以下「本件FRAND宣言」という。)をした(甲13)。 (5) 本件訴訟に至る経緯等ア被告は,平成23年4月21日,原告による本件各製品の生産,譲 渡,輸入等の行為が本件各発明に係る本件特許権の直接侵害又は間接侵害(特許法101条4号,5号)を構成する旨主張して,特許法102条に基づく差止請求権を被保全権利として,原告に対し,本件各製品の生産,譲渡,輸入等の差止め等を求める仮処分命令の申立て(東京地方裁判所平成23年(ヨ)第22027号事件。以下「本件仮処分の申立て」という。)をした。 イ原告は,平成23年9月16日,本件訴訟を提起した。 その後,被告は,平成24年9月24日,本件仮処分の申立てのうち,本件製品1及び3を対象とする部分を取り下げた。 3 争点本件の争点は,①本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否(争点1),②本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)の成否(争点2),③特許法104条の3第1項の規定による本件各発明に係る本件特許権の権利行使の制限の成否(争点3),④本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無(争点4),⑤被告の本件FRAND宣言に基づくアップル社と被告間の本件特許権のライセンス契約の成否(争点5),⑥被告による本件特許権に基づく損害賠 点3),④本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無(争点4),⑤被告の本件FRAND宣言に基づくアップル社と被告間の本件特許権のライセンス契約の成否(争点5),⑥被告による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使の権利濫用の成否(争点6)である。 なお,本件口頭弁論終結時点において,被告は原告が賠償すべき被告の損害額に関する主張を留保していたため,この点に関する具体的な主張はない。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否)について(1) 被告の主張ア本件各製品の構成(ア) 本件各製品は,3GPP規格であるUMTS規格(W-CDMA 方式)に準拠したものであるから,3GPPが2006年(平成18年)9月に策定した3GPP規格の技術仕様書「3GPPTS5.322 V6.9.0」(甲1の3,乙6。以下「本件技術仕様書V6.9.0」という。)記載の構成を備えている。 そして,本件技術仕様書V6.9.0の「4.2.1.2 アンアクナリッジドモード(UM)RLCエンティティ」,「4.2.1. 2.1 送信UMRLCエンティティ」,「9.2.1.3 UMDPDU」,「9.2.2.5 エクステンションビット(E)」及び「9.2.2.8 長さインジケータ(LI)」(以下,それぞれを「4.2.1.2項」,「4.2.1.2.1項」などという。)によれば,本件各製品は,いずれも,次のとおりの構成を有している(以下,各構成を「構成a」,「構成b」などという。)。 a 本件各製品は,移動通信システムにおいてデータを送信する装置である。 b 本件各製品は,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能 製品は,移動通信システムにおいてデータを送信する装置である。 b 本件各製品は,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能なスペースより大きい場合には適当なサイズのPDUに分割するための伝送バッファを有している(別紙1の1及び2記載の4.2.1.2項及び4.2.1.2.1項参照)。 c 本件各製品は,一連番号(SN)フィールドとEビットフィールドを有するUMDヘッダと,長さインジケータ(LI)とを含むRLCヘッダをデータに対して付加するヘッダ付加部を有する(別紙1の3記載の9.2.1.3項参照)。 d ヘッダ付加部は,PDUに含まれるのが分割,連結,パディングされていない完全なSDUの場合には完全なSDUが含まれることを示す「0」を設定し,PDUに含まれるのが完全なSDUでない 場合にはEビットに長さインジケータが存在することを示す「1」を設定する(別紙1の4記載の9.2.2.5項参照)。 e ヘッダ付加部は,SDUが一つのPDUに含まれない場合に,少なくとも一つのPDUのEビットフィールド以後にLIフィールドを挿入する(別紙1の5(1)記載の9.2.2.8項参照)。 f ヘッダ付加部は,PDUのデータフィールドがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含む場合,LIフィールドは,PDUがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含むことを示す予め定められた値(「111 1110」又は「111 1111 111110」)を設定する(別紙1の5(2)記載の9.2.2.8項参照)。 g 本件各製品は,ヘッダ付加部から受信される少なくとも一つのPDUを受信側のエンティティに伝送する送信部を有して 11110」)を設定する(別紙1の5(2)記載の9.2.2.8項参照)。 g 本件各製品は,ヘッダ付加部から受信される少なくとも一つのPDUを受信側のエンティティに伝送する送信部を有している。 h 本件各製品は,データを送信することができる装置である。 (イ)a カナダ法人のチップワークス社による実機テスト(以下「本件実機テスト」という。)の報告書(乙13)は,本件製品2及び4が,本件技術仕様書V6.9.0の「AlternativeE-bit解釈」(代替的Eビット解釈)に基づく機能(9.2.2.5項及び9. 2.2.8項)を実装していることを示している。このことは,電気通信大学A教授作成の鑑定意見書(乙14)からも裏付けられる。 (a) 本件実機テストに「基地局エミュレータ」として用いた機器は,ドイツ法人のローデ・シュワルツ社製の無線機テスタ「CMW500 universalradiocommunicationtester」(以下「CMW500」という。)である。CMW500は,W-CDMA 方式に対応したもので,実際のネットワークと同様の通信環境を実現することができる機器である(乙14の10頁,乙41)。 CMW500は,GCF (GlobalCertificationForum) 及びPTCRB (PCSTypeCertificationReviewBoard) といった国際的な機関による認証を受けている。 テスト1「PDUサイズ:488ビット,SDUサイズ:480ビット」は,「PDUが分割,連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のデータサイズの組合せである。なお,PDUサイズがSDUサイズより8ビットだけ大きくなっているのは,SDUをPDUに変換する際に8ビットのP ,連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のデータサイズの組合せである。なお,PDUサイズがSDUサイズより8ビットだけ大きくなっているのは,SDUをPDUに変換する際に8ビットのPDUヘッダ(一連番号(SN)の7ビット+Eビットの1ビット)が付加されることを考慮したためである(乙14の10頁)。 テスト2「PDUサイズ:80ビット,SDUサイズ:480ビット」は,最初と最後を除いたPDU(例えば,2番目のPDU)が「中間セグメント」に該当するデータサイズの組合せであり,この中間セグメントとしてのPDUをモニタするものである(乙14の11頁)。 (b) 本件実機テストの結果は,次のとおりである。 ① PDUがSDUを完全に含む場合(テスト1)には,一連番号(SN)に続くEビットが「0」となり,長さインジケータを含まないPDUが出力されている(乙13の図12,14)。 ② PDUがSDUの中間セグメントを含む場合(テスト2)には,一連番号(SN)に続くEビットが「1」となり,長さインジケータとして所定値(1111110)を含むPDUが出力されている(乙13の図13,15)。 (c) 9.2.2.5項には,代替的Eビット解釈として,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」である場合,Eビットを「0」とし,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」である場合,Eビットを「1」とすることが,9.2.2.8項には,代替的Eビット解釈が設定され,かつ,PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,7ビットの長さインジケータが用いられるときは,値「11110」を持つ長さインジケータを用いることが記載されている。 本件実機テストの結果におけるEビットの値及び長さインジケ トを含む場合,7ビットの長さインジケータが用いられるときは,値「11110」を持つ長さインジケータを用いることが記載されている。 本件実機テストの結果におけるEビットの値及び長さインジケータの値(前記(b))は,本件技術仕様書V6.9.0の代替的Eビット解釈に基づく機能と整合しており,本件製品2及び4が上記機能を実装していることを示すものといえる。 b この点に関し原告は,本件実機テストの結果の「Interpretation」 の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されており,「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」と表示されていないから,本件実機テストでは,代替的Eビット解釈ではなく,本件技術仕様書V6. 9.0の9.2.2.5項記載の「NormalE-bit解釈」(通常Eビット解釈)(別紙1の4参照)が用いられているなどと主張する。 しかしながら,代替的Eビット解釈において,Eビットに「0」が設定される場合,次に続くビット列が「データ」(ただし,「完全なSDU」の「データ」である。)であることには相違がないから,「Interpretation 」 の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されていることは本件実機テストに代替的Eビット解釈が使用されていることと相反するものではない。 また,被告が通常Eビット解釈に従った場合(CMW500の設定画面の「altE_bitinterpretation」のチェックボックス(乙13の図11)にチェックを入れない場合)についての比較テストの結果を確認したところ,チェックを入れた場合と入れない場合とでは,PDUヘッダの構成が異なっており,しかも,チェックを入れない場合には通 の図11)にチェックを入れない場合)についての比較テストの結果を確認したところ,チェックを入れた場合と入れない場合とでは,PDUヘッダの構成が異なっており,しかも,チェックを入れない場合には通常Eビット解釈に従ったPDUヘッダが出力されていた(乙55の35頁ないし38頁)。かかる比較テストの結果は,本件実機テストにおいて,通常Eビット解釈ではなく,代替的Eビット解釈が用いられていることを明確に示すものである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ構成要件B及びDの充足(ア) 本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項記載の代替的Eビット解釈は,以下に述べるとおり,本件発明1の構成要件B及びDの内容を開示したものである。 本件発明1は,「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定し」(構成要件B),「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」(構成要件D)する構成を備えている。 構成要件Dの文言,本件特許に係る明細書(甲1の2。以下,図面を含めて「本件明細書」という。)の段落【0022】及び図5Aによれば,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合,すなわち,「SDUのサイズがPDUのペイロードのサイズに完全に一致する場合」を意味する ものであり,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれない。 そして,9.2.2.5項には,「代替的Eビット解釈」とし ものであり,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれない。 そして,9.2.2.5項には,「代替的Eビット解釈」として,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」である場合,すなわち,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)場合は,Eビットを「0」とし,そうでない場合は,Eビットを「1」とすることが記載されており(別紙1の4参照),上記記載は,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)か否かの判定を行い,その判定結果に従ってEビットを上記のように設定することを規定するものといえるから,構成要件Bの「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否か」を「判定」する構成及び構成要件Dの「前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する構成を開示している。なお,4.2. 1.2.1項(別紙1の2参照)と9.2.2.5項との関係は,4.2.1.2.1項は,Eビットのタイプによらず,SDUがPDUよりも大きいか否かを判定するという包括的な記載にとどまり,代替的Eビット解釈が使用される場合の具体的な比較のやり方は,9. 2.2.5項に記載されていると合理的に理解することができる。 (イ) 以上を前提とすると,本件各製品の構成b及びdは,構成要件B及びDをそれぞれ充足する。 ウ構成要件C,EないしGの充足本件各製品の構成cは構成要件Cを,構成eは構成要件Eを,構成fは構成要件Fを,構成gは構成要件Gをそれぞれ充足する。 エまとめ(ア) 以上のとおり,本件各製品は,本件発明1の構成要件BないしG を充足し,また,本件各製品が構成要件A及びHを充足することは,前記争いのない事実 それぞれ充足する。 エまとめ(ア) 以上のとおり,本件各製品は,本件発明1の構成要件BないしG を充足し,また,本件各製品が構成要件A及びHを充足することは,前記争いのない事実等(3)イ(ア)のとおりである。 したがって,本件各製品は,本件発明1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 (イ) これに対し原告は,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を現実のネットワーク上で実行していることを立証する必要があるところ,代替的Eビット解釈は,通常Eビット解釈のオプション的なものであり,通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定していることについての立証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属さない旨主張する。 しかしながら,本件各製品は,本件発明1の構成要件を全て充足し,代替的Eビット解釈を実施する構成を備えている以上,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであり,現実のネットワーク上で通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定しているかどうかは本件発明1の技術的範囲の属否とは無関係である。 したがって,原告の上記主張は失当である。 (2) 原告の主張ア本件各製品の構成について(ア) 本件各製品におけるUMTS規格に関連する処理は,本件各製品に実装されたベースバンドチップ(チップセット)によって行われている。上記チップセットは,アップル社がインテル社(IntelCorporation)製のチップセットを●(省略)●を通じて購入し,実装したものである。 本件製品1及び3には,インテル社製のベースバンドチップ●(省 略)●が搭載されていると Corporation)製のチップセットを●(省略)●を通じて購入し,実装したものである。 本件製品1及び3には,インテル社製のベースバンドチップ●(省 略)●が搭載されているところ,●(省略)●が準拠している3GPP規格は,本件出願の優先日前に公開された「リリース5」と呼ばれるバージョンであり,代替的Eビット解釈は含まれていないから,本件製品1及び3が被告主張の構成bないしgを有することは争う。 また,本件製品2及び4が被告主張の構成bないしgを有することは不知である。 (イ)a 被告主張の本件実機テストの報告書(乙13)は,本件製品2及び4が代替的Eビット解釈に基づく機能を実装していることを基礎付けるものではない。 すなわち,本件実機テストは,基地局のように振る舞うエミュレータに携帯端末を接続し,テスト端末からエミュレータに送信されるデータを解析するためのソフトウェアを用いてテストを行っているにすぎないものであり,このような現実のネットワークとは異なる単なるテスト環境において実施したテストの結果によって,本件各製品が現実のネットワークにおいて代替的Eビット解釈に基づく機能を実行できることを示すものではない。 b また,本件実機テストの報告書(乙13)には,次のような不備又は問題点があり,本件製品2及び4が代替的Eビット解釈に基づく機能を実装していることを基礎付けるものではない。 (a) 乙13の図12及び図14のテストログ(テスト1)においては,「Byte」欄の「68」の2列目の行において,Eビットが「0」に設定されるとともに,「Interpretation」欄に「nextoctet: data」(訳文「次のオクテット:データ」)と記載されている。このように「次のフィールド」が「データ」と記載され に設定されるとともに,「Interpretation」欄に「nextoctet: data」(訳文「次のオクテット:データ」)と記載されている。このように「次のフィールド」が「データ」と記載されていることからすると,本件実機テストは,代替的Eビット解釈ではなく,通常Eビット解釈が使用されている場合(本件技術仕 様書V6.9.0の9.2.2.5項の「通常Eビット解釈」のビット「0」の場合)であると考えるのが素直である。 また,乙13の図12及び図14のテストログに示されているビット列は,テスト製品から出力されたデータの一部でしかないため,PDUが分割,連結,パディングされていない一つの完全なSDUを含んでいるのか,別のものを含んでいるのか定かでないから,そもそも図12及び図14のテストログを根拠として,テストに用いた製品が代替的Eビット解釈を使用しているとの結論を導くことはできない。 なお,乙13の図11の「altE_bitinterpretation」のチェックボックスにチェックが入っていることと,テスト製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されるかどうかとは無関係である。 (b) 乙13の図13及び図15のテストログ(テスト2)における「1111110」という値が設定された長さインジケータが,中間セグメントを含むインジケータにだけ設定されることを裏付ける証拠がない以上,上記値が中間セグメントを含むPDUの存在を示していると結論付けることはできない。 また,乙13の図13及び図15も,図12及び図14と同様に,テスト製品から出力されたSDUの表示部分を表示するにとどまり,SDUの他のセグメントがどのような状態になっているか明らかにされていない。 したがって,図13及び図15は,テスト製品が代替的 に,テスト製品から出力されたSDUの表示部分を表示するにとどまり,SDUの他のセグメントがどのような状態になっているか明らかにされていない。 したがって,図13及び図15は,テスト製品が代替的Eビット解釈を実装していることを基礎付けるものとはいえない。 イ構成要件B及びDの非充足本件発明1の構成要件B及びDは,以下のとおり,本件技術仕様書V 6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,仮に被告が主張するように本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成を備えているとしても,本件各製品が構成要件B及びDを充足するとはいえない。 (ア) 構成要件Bについて構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」との記載と構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示す」との記載を総合すると,構成要件Bにおける「前記SDUが一つのPDUに含まれる」とは,「SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)」ことを意味すると解すべきである。 このように本件発明1は,構成要件Bにおいて,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式を採用している。 他方で,本件技術仕様書V6.9.0の4.2.1.2.1項の「RLCSDUがUMDPDUの利用可能なスペースの長さより大きい場合」に「RLCSDUを適当なサイズのUMDPDUに分割する。」との記載によれば,4.2.1.2.1項記載の判定方式は,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定する方式であって,SDUが一つのPDU .1項記載の判定方式は,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定する方式であって,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式とは異なるものである。 また,被告主張の本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項の記載は,Eビットに設定される「0」又は「1」という値をそれぞれどのように解釈すべきかについて規定しているにすぎず,判定方式 については何ら述べていない。 したがって,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成bを備えていることをもって,本件各製品が構成要件Bを充足するとはいえない。 (イ) 構成要件Dについて構成要件Dにいう「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,①パディングが生じている場合(すなわち,SDUがパディングとともにPDUに格納される場合),②連結が生じている場合(すなわち,SDUが一つ又は複数の他のSDUと連結され,PDUに格納される場合),③分割,連結及びパディングのいずれも生じていない場合(すなわち,SDUのサイズがPDUのペイロードのサイズに完全に一致する場合)を全て対象とするものであるから,構成要件Dを充足するというためには,上記①又は②の場合であっても,「PDUが分割,連結又はパディングなしにSDUを完全に含むことを示すように1ビットフィールドが設定」されなければならない。 他方で,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈においては,上記③の場合にのみ,PDUが完全なSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定されるのであるから,構成要件Dと本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成dとでは,PDUが分割,連結又はパディ 記③の場合にのみ,PDUが完全なSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定されるのであるから,構成要件Dと本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成dとでは,PDUが分割,連結又はパディングされていないSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定される条件が異なるとともに,PDUが連結又はパディングの生じているSDUを含む場合の1ビットフィールドの設定方法が異なっている。 したがって,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した構成dを備えていることをもって,本件各製品が構成要件Dを充足するとはいえない。 ウ本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できることの立証がないこと本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できることを立証する必要があり,そのためには,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す必要があるというべきである。 すなわち,代替的Eビット解釈は,本件各製品それ自体が単独で実行できるものではなく,いかなる携帯端末も,代替的Eビット解釈を使用するようネットワークから指示されない限り,基地局へのデータ送信に際し,デフォルトの「通常Eビット解釈」を実行するのであり,その場合には,本件発明1の構成要件D及びFが規定する内容に従ってEビットや長さインジケータが設定されることはないのであるから,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行するには,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していなければならない。 しかるところ,本件においては,ネットワーク通信事業者が代替的E ての機能を実行するには,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していなければならない。 しかるところ,本件においては,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す証拠は存在せず,本件各製品が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できるものといえないから,本件各製品は本件発明1の技術的範囲に属さない。 エまとめ以上のとおり,本件各製品は,本件発明1の構成要件を充足せず,また,本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を実行できるものといえないから,本件1発明の技術的範囲に属さない。 2 争点2(本件発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について (1) 被告の主張ア本件各製品におけるデータ送信方法の構成前記1(1)アの本件各製品の構成によれば,本件各製品におけるデータ送信方法(以下「本件方法」という。)は,次のとおりの構成を有している(以下,各構成を「構成i」,「構成j」などという。)。 i 本件方法は,移動通信システムにおいてデータを送信する。 j 本件方法は,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する。 kSDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれる場合に,ヘッダとデータを含むPDUを構成する。ここで,ヘッダには,一連番号フィールドと,PDUに含まれるのが分割,連結,パディングされていない完全なSDUを含むことを示す値「0」が設定されるEビットフィールドとを含む。 lSDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能なスペースより大きい場合には,適当なサイズのPDUに分割する SDUを含むことを示す値「0」が設定されるEビットフィールドとを含む。 lSDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)の利用可能なスペースより大きい場合には,適当なサイズのPDUに分割する。ここで,ヘッダには,一連番号フィールドと,PDUに含まれるのが完全なSDUでない場合に,長さインジケータが存在することを示す値「1」が設定されるEビットフィールドと,長さインジケータとを含む。 mPDUのデータフィールドがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含む場合,LIフィールドは,PDUがSDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメントを含むことを示す予め定められた値(「111 1110」又は「111 1111 1111 1110」)が設定される。 n 本件方法は,PDUを受信側のエンティティに伝送する。 o 本件方法は,データを送信する。 イ本件方法が本件発明2の技術的範囲に属すること(ア) 本件方法の構成jないしnは,本件発明2の構成要件JないしNをそれぞれ充足する。 この点に関し,原告は,本件発明2の構成要件J及びLは,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,本件方法が構成要件J及びLを充足するとはいえない旨主張するが,前記1(1)イで構成要件B及びDについて述べたのと同様の理由により,構成要件J及びLは,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈の内容を開示したものであるから,原告の上記主張は理由がない。 (イ) 以上のとおり,本件方法は,本件発明2の構成要件JないしNを充足し,また,本件方法が構成要件I及びOを充足することは,前記争いのない事実等(3)イ(イ)のとおりである。 したがって,本件方法は,本件発明2の構 本件方法は,本件発明2の構成要件JないしNを充足し,また,本件方法が構成要件I及びOを充足することは,前記争いのない事実等(3)イ(イ)のとおりである。 したがって,本件方法は,本件発明2の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 ウ間接侵害の成立(ア) 特許法101条4号の間接侵害特許発明に係る方法の使用に用いる物に,当該特許発明を実施しない使用方法自体が存する場合であっても,当該特許発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,当該特許発明を実施する機能は全く使用しないという使用形態が,その物の経済的,商業的又は実用的な使用形態として認められない限り,その物を製造,販売等することによって侵害行為が誘発される蓋然性が極めて高いことに変わりはないというべきであるから,「その方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に当たると解するのが相当である(知的財産高等裁判所 平成23年6月23日判決参照)。 そして,本件各製品において本件発明2を実施する機能を全く使用しないということは,その経済的,商業的又は実用的な使用形態としておよそ想定することができないことから,本件各製品は,本件発明2の「その方法の使用にのみ用いる物」に当たるものといえる。 そうすると,原告が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号)を構成するというべきである。 (イ) 特許法101条5号の間接侵害本件発明2は,「従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式を使用する場合に,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点」(本件明細書の段落【0012】)を解決課題とし,「パケットサービスを支援する移動通信 使用する場合に,不必要なLIフィールドの使用によって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点」(本件明細書の段落【0012】)を解決課題とし,「パケットサービスを支援する移動通信システムで,無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット(RLCPDU)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置を提供すること」(段落【0013】)等を発明の目的とし,「限定された無線伝送リソースを効率的に使用する」等の効果を有する(段落【0018】)ものである。本件各製品は,本件発明2の使用に用いる物であって,本件発明2の上記課題の解決に不可欠なものである。 また,原告は,被告による本件仮処分の申立てを受けたことにより,本件発明2が特許発明であること及び本件各製品が本件発明2の実施に用いられていることについて知ったものといえる。 そうすると,原告が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条5号)を構成するというべきである。 エまとめ以上のとおりであるから,原告が本件各製品を輸入し,販売する行為は,本件発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)を構成する。 (2) 原告の主張ア本件方法が本件発明2の技術的範囲に属さないこと(ア) 前記1(2)アで述べたのと同様の理由により,本件各製品はいずれも代替的Eビット解釈に基づく機能を実装しているといえないから,本件方法は,被告主張の構成jないしnを有しない。 また,本件発明2の構成要件J及びLは,前記1(2)イで述べたのと同様の理由により,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,本件方法が構成要件J及びLを充足するとはいえない。 し 明2の構成要件J及びLは,前記1(2)イで述べたのと同様の理由により,本件技術仕様書V6.9.0記載の構成と異なる構成のものであるから,本件方法が構成要件J及びLを充足するとはいえない。 したがって,本件方法が構成要件JないしNを充足するものといえないから,本件方法は,本件発明2の技術的範囲に属さない。 (イ) また,前記1(2)ウのとおり,ネットワーク通信事業者が代替的Eビット解釈を使用できるようにネットワークを構成していることを示す証拠は存せず,本件各製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されていることの立証はないから,本件方法は,本件発明2の技術的範囲に属さない。 イ間接侵害の不成立(ア) 特許法101条4号又は5号の間接侵害の成立には,少なくとも発明が第三者により直接実施されていることを要すると解すべきであるところ,第三者が本件発明2を直接実施していることについての主張立証はない。 (イ) 本件各製品において実際に代替的Eビット解釈が使用されている ことの立証はなく,また,本件各製品には,本件発明2を実施しない機能のみを使用する使用形態が存在し,その使用形態は経済的,商業的又は実用的な使用形態であるから,本件各製品は,本件発明2の「その方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に当たらない。 (ウ) 3GPP規格に準拠した実際の通信において,SDUのサイズがPDUのサイズに一致する割合はあまりに低く,本件発明2の効果を奏する場面は非常に限られているから,本件各製品は,本件発明2による「課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条5号)に当たらない。 ウまとめ以上のとおりであるから,原告が本件各製品を輸入し,販売する行為が本件発明2に係る本件特許権の間接侵害を構成するとの被告の主 決に不可欠なもの」(特許法101条5号)に当たらない。 ウまとめ以上のとおりであるから,原告が本件各製品を輸入し,販売する行為が本件発明2に係る本件特許権の間接侵害を構成するとの被告の主張は,理由がない。 3 争点3(特許法104条の3第1項の規定による権利行使の制限の成否)について(1) 原告の主張本件各発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,被告は,原告に対し,本件特許権を行使することができない。 ア無効理由1(甲3による新規性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3(特開2004-179917号公報)に記載された発明と実質的に同一であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 甲3の記載事項甲3の段落【0001】,【0003】,【0004】,【0008】,【0009】,【0013】,【0025】,【0026】,【0028】,【0029】,【0031】,図2,3,8及び9によれば,甲3には,本件各発明の構成要件が全て開示されている。 (イ) 被告の主張について被告は,甲3には,構成要件D(K),F(M)の開示がない旨主張するが,以下のとおり,理由がない。 a 構成要件D(K)について(a) 甲3の段落【0008】に,図3のPDU50について,「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載がある。この「ビット55a」は,「拡張子ビット(extensionbit)」であり( 全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載がある。この「ビット55a」は,「拡張子ビット(extensionbit)」であり(段落【0008】),1ビットのバイナリデータ(「0」か「1」)である(図3)。 このように拡張子ビット(Eビット)が「0」に設定され得るため,甲3には,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」する設定部があることが開示されているといえる。 (b) SDUには様々なサイズがあるため,一つのSDUが三つ以上のセグメントに分割される場合も不可避的に起こり得るのであり,その場合,中間セグメント(最初のセグメントでも最後のセグメントでもないセグメント)を含むPDUが当然生じるのであるから,甲3に接した当業者であれば,甲3に,中間セグメント を含むPDUが開示されていることを明確に理解できる。そして,PDUが中間セグメントを含む場合には,Eビットが「0」に設定される「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合」(段落【0008】)に該当しないことからすると,中間セグメントを含むEビットの値は,「1」に設定するほかない。 また,甲3の「代替PDU」の一例である「パディングPDU」(段落【0026】,【0031】,図8及び9等)は,パディングPDUの前後のPDUを結合する役割を果たすため,「中間セグメントを含むPDU」に対応する。 そうすると,甲3には,構成要件D(K)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも する役割を果たすため,「中間セグメントを含むPDU」に対応する。 そうすると,甲3には,構成要件D(K)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」があることが開示されているといえる。 b 構成要件F(M)について甲3は,中間セグメントを含むPDUに対応する「パディングPDU」について,LIフィールドが「特別コードを設定し,全て1である。…残りのPDU…が未定義の部分を埋めるだけで,無視しても構わない情報を保持している」ことを開示し(段落【0026】),また,特別なLIを含むパディングPDUの数値として,図8において,予め定められた値「111111111111111」(15桁)の長さインジケータ(LI)156aを,図9において,予め定められた値「1111111」(7桁)の長さインジケータ(LI)156bを開示している。 したがって,甲3には,構成要件F(M)の「前記PDUの前記 データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ることが開示されているといえる。 (ウ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3に記載された発明と同一のものであって,新規性が欠如している。 イ無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如①)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発 とする進歩性欠如①)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が,構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」を設定する構成を有するかどうか明らかでない点で相違し,その余の構成は一致する。 (イ) 相違点の容易想到性①甲3には,「1種類のデータからなる同じ長さを有するデータを完全に含む2種類のPDUを区別するために長さインジケータに予め定義された値を設定する」という技術思想が開示されていること(段落【0008】,【0026】,図8及び9等),②技術的な観点からみても,2種類のPDUを区別するために,長さインジケータを予 め定義された値に設定するという方法は,当業者にとって,最も現実的でかつ簡明な方法であり,当然に選択されるべきものであったこと(甲39の段落【0007】等)などからすると,当業者は,甲3と技術常識に基づいて,前記(ア)の相違点に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (ウ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3に記載された発明と技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 ウ無効理由3(甲3を主引 る。 (ウ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3に記載された発明と技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 ウ無効理由3(甲3を主引例とする進歩性欠如②)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3及び甲4(3GPPのワーキンググループの議事録「L2OptimizationforVoIP(R2-050969)」)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 相違点の容易想到性本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点は,前記イ(ア)のとおりである。 そして,甲4には,2種類のPDU(同じ長さを持ち,全体として1種類となるデータを含むもの。)を識別できないという問題(具体的には,一つのSDUを完全に含むPDUと中間セグメントを含むPDUとを区別することができないという問題)が生じること,長さインジケータに予め定められた特定の値を設定することによって上記問題を解決するという技術思想が開示されていること(図2及び3等)などからすると,当業者は,甲3及び甲4に基づいて,上記相違点に 係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (イ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 エ無効理由4(甲3を主引例とする進歩性欠如③)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3及び甲39(特表2002-527945号公報 歩性が欠如している。 エ無効理由4(甲3を主引例とする進歩性欠如③)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲3及び甲39(特表2002-527945号公報)に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲3に記載された発明との一致点及び相違点本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が,①構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定し,前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成を有するかどうか明らかでない点(以下「相違点①」という。),②構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値」を設定する構成を有するかどうか明らかでない点(以下「相違点②」という。)で相違し,その余の構成は一致 する。 (イ) 甲39の記載事項甲39には,①データを受信する側において,分割されたデータを正しく組み立てるために長さインジケータを使用する必要があること(【要約】),②PDUに含まれるSDUが当該PDUにおいて終了するか,それとも次のPDUに続い 受信する側において,分割されたデータを正しく組み立てるために長さインジケータを使用する必要があること(【要約】),②PDUに含まれるSDUが当該PDUにおいて終了するか,それとも次のPDUに続いているのかを区別するために,SDUの中間セグメントを含むPDUに長さインジケータが挿入され,そこに予め定義された値が設定されること(【要約】,段落【0006】,【0010】,【0019】)が開示されている。 また,本件出願の出願経過において発せられた平成22年3月30日付け拒絶理由通知書(甲44)は,甲39には,長さインジケータに予め定義された値を設定することによって,SDUに関する「特殊な情報」を示し,「上記特殊な情報は,…下位層PDUのヘッダにおいて,ペイロードユニットのどの1つ又はそれ以上がセグメント長さ情報を含むかを指示する(本願の「中間セグメントが存在することを示す値に設定され」に相当)点が記載されている」と述べている。これに対し被告は,平成22年10月6日付け意見書において,上記拒絶理由通知書で述べられていた点を争わなかったのであるから,甲39が長さインジケータを用いて中間セグメントの存在を示すことを開示していることを被告も認めていたものといえる。 (ウ) 相違点の容易想到性a 相違点①について①本件出願の優先日前に,一つのSDUを完全に含むPDUとSDUの中間セグメントを含むPDUとを区別する必要があることは,当業者に十分に認識されていたこと,②甲39によれば,SDUの中間セグメントを含むPDUに長さインジケータ が挿入されるため,当該PDUのEビットは,長さインジケータが存在することを示すように設定されること(前記(イ))に照らすならば,甲3に甲39を組み合わせることにより,一つのSDUが完全に が挿入されるため,当該PDUのEビットは,長さインジケータが存在することを示すように設定されること(前記(イ))に照らすならば,甲3に甲39を組み合わせることにより,一つのSDUが完全にPDUに含まれるかどうか,又はPDUがSDUの中間セグメントを含み,長さインジケータが存在するかどうかを示すために1ビットフィールドを設定すること(相違点①に係る本件各発明の構成)は,当業者であれば,容易に想到することができたものといえる。 b 相違点②について前記(イ)のとおり,甲39には,相違点②に係る本件各発明の構成が開示されている。 そうすると,当業者は,甲3及び甲39に基づいて,相違点②に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 (エ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲3及び甲39に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 オ無効理由5(甲1の4を主引例とする進歩性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1の4(3GPP規格の技術仕様書「3GPPTS5.322 V6.3.0」。以下「本件技術仕様書V6.3.0」という。)に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件各発明と甲1の4に記載された発明との一致点及び相違点 甲1の4には,本件技術仕様書V6.3.0記載の「通常Eビット解釈」が開示されている。 そして,本件各発明と甲1の4に記載された発明とは,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」が,①PDUが分割,連結又は 4には,本件技術仕様書V6.3.0記載の「通常Eビット解釈」が開示されている。 そして,本件各発明と甲1の4に記載された発明とは,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」が,①PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合,長さインジケータが出現しない点(以下「相違点1」という。),②PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,長さインジケータが挿入され,それに中間セグメントの存在を示す特別な値が設定される点(以下「相違点2」という。)で相違し,その余の構成は一致する。 (イ) 本件出願の優先日前の技術常識以下の点は,本件出願の優先日前の技術常識であった。 a 固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(甲1の2,42,91)b 受信したデータがデータパケットのデータフィールドを完全に充填する場合(一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する場合)に,ヘッダーサイズを減らすことができること(甲3の段落【0008】の「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」との記載,甲40)cPDUのデータフィールドに長さインジケータを用いて中間セグメントが含まれることを示すこと(甲39の段落【0019】,甲43)(ウ) 相違点の容易想到性aPDUヘッダーの最初のEビットに0を設定し,長さインジケータを省略することによって,PDUヘッダーのデータ量を減少させ ることができること,そのようにしてPDUヘッダーのデータ量を減少させることのできるPDUは4種類(①SDUの最初セグメントを含むPDU,②SDUの中間セグメントを含むPDU,③PDUのデ ることができること,そのようにしてPDUヘッダーのデータ量を減少させることのできるPDUは4種類(①SDUの最初セグメントを含むPDU,②SDUの中間セグメントを含むPDU,③PDUのデータフィールドのサイズと一致する,SDUの最後セグメントを含むPDU,④PDUのデータフィールドのサイズと一致する,一つのSDUを含むPDU)しか存在しないことは,当業者のよく知るところであり,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」は,上記②及び③の2種類のPDUについて,Eビットに0を設定し,長さインジケータを省略することを選択している。 甲1の4記載の「通常Eビット解釈」が,SDUの中間セグメントを含むPDUの長さインジケータ(上記②)を省略したのは,多くのアプリケーションでは,PDUデータフィールドよりも大きいサイズのSDUが頻繁に発生し,その当然の帰結として,SDUの中間セグメントを含むPDUも頻繁に発生することになることから,そのようなPDUのヘッダーサイズを小さくすれば,トータルでのオーバーヘッドを減少させ,データ伝送をより効率的に行うことが可能となるためであり,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータを省略する方が,完全に一致するSDUを含むPDUの長さインジケータを省略するよりもヘッダーのデータ量を節約できると認識していたことを強く示唆するものである。同時に,長さインジケータを省略することのできるPDUの種類が上記のとおり限られていることからすると,3GPPは,PDUデータフィールドに完全に一致するSDUの発生頻度が高い場合には,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させることができると認識していたこともうかがわれる。 一方,構成要件D( は,そのようなSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させることができると認識していたこともうかがわれる。 一方,構成要件D(K)の「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」(以下「構成要件D(a)」という。)は,長さインジケータを省略するPDUについて上記④の1種類を選択したものであり,これは,本件出願の優先日前に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること(前記(イ)a)が当業者によく知られていたからである。 このように甲1の4記載の「通常Eビット解釈」と構成要件D(a)は,データ伝送の効率を向上させるために,発生頻度の高いSDUを含むPDUの長さインジケータを省略することにより,データ伝送のオーバーヘッドを減少させるという技術思想が共通する。 b(a) 構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(K)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定」(以下「構成要件D(b)」という。)の構成が自動的かつ必然的に導き出される。 すなわち,Eビットは0か1という値しかとり得ない以上,構成要件D(a)の構成を採用し,PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合,当該PDUの最初のEビットを0に設定することを選択すると,それ以外の種類のデータを含むPDUの最初のEビットは,必ず1に設定されることになるから 連結又はパディングされていないPDUを含む場合,当該PDUの最初のEビットを0に設定することを選択すると,それ以外の種類のデータを含むPDUの最初のEビットは,必ず1に設定されることになるから,PDUがSDUの中間セグメントを含む場合,当該PDUの最初のEビットは,「少なくとも一つの長さインジケータ(L I)フィールドが存在することを示すように」,1に設定されることとなる。 (b) また,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成とともに,構成要件F(M)の「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」の構成が自動的かつ必然的に導き出される。 すなわち,一つのSDUを完全に含むPDUにおいて,最初のEビットを0に設定し,長さインジケータを省略する以上は,中間セグメントを含むPDUにおいては,必ず最初のEビットを1に設定し,長さインジケータを挿入しなければならず,その長さインジケータには,PDUのどこでSDUが終了するかを示す値か,PDUデータフィールドに格納されたデータの種類を示す予め定められた値のいずれかが設定される。そして,SDUが中間セグメントにおいて終了することがない以上,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータには,PDUデータフィールドに格納されたデータの種類(つまり,中間セグメント)を示す予め定められた値に設定する構成(構成要件F(M)の構成)を採用するほかない。 c そして,本件出願の優先日前に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させ る構成(構成要件F(M)の構成)を採用するほかない。 c そして,本件出願の優先日前に,固定ビットレートの音声コーデックを使用するVoIPアプリケーションが,同じサイズのSDUを頻繁に発生させること,一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する場合に,ヘッダーサイズを減らすことができること,PDUのデータフィールドに長さインジケータを用いて中間 セグメントが含まれることを示すことが,いずれも技術常識であったこと(前記(イ))からすると,一つのSDUがPDUのデータフィールドを完全に充填する頻度が高い,特定のVoIPアプリケーションに関し,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」において,上記技術常識を適用して,中間セグメントを含むPDUの代わりに,一つのSDUを完全に含むPDUのヘッダーから長さインジケータを省略するという設計変更を行うことは,当業者にとっては極めて容易であり,しかも,そのような設計変更を行った場合,中間セグメントを含むPDUに予め定められた値の長さインジケータを挿入することは自動的かつ必然的に導き出されるのであるから,当業者は,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」と技術常識に基づいて,相違点1(構成要件D(a))及び相違点2(構成要件D(b)及びF(M))に係る本件各発明の構成を容易に想到することができたものといえる。 d これに対し被告は,中間セグメントを含むPDUに長さインジケータを付加するとオーバーヘッドが増加することになるから,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」に構成要件F(M)の構成を適用することには阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,たとえ中間セグメントを含むPDUに関してはオーバーヘッドが増加することになるとしても,一つのSDUを完全に含むPDUについてはヘッダーサイ することには阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,たとえ中間セグメントを含むPDUに関してはオーバーヘッドが増加することになるとしても,一つのSDUを完全に含むPDUについてはヘッダーサイズを減少させることができ,特定のVoIPアプリケーションが使用される場面においてはオーバーヘッドが小さくなるのであるから,甲1の4記載の「通常Eビット解釈」に構成要件F(M)の構成を適用することに阻害要因はない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 (エ) 小括以上によれば,本件各発明は,甲1の4に記載された発明と技術常識に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 (2) 被告の主張ア無効理由1に対し(ア) 甲3には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がない点で,甲3に記載された発明と本件各発明は相違する。 a 原告が指摘する甲3の図3についての「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する場合,ビット55aは0で,LIは出現しないことを表示する。」(段落【0008】)との説明は,段落【0006】に「図3はAMデータPDU50の簡略図で,3GPPTS25.322 V3.8.0.規範に掲載されている。」との記載があるとおり,代替的Eビット解釈が3GPP規格に採用される前の3GPP規格の技術仕様書である「3GPPTS 25.322 V3.8.0」(乙7。以下「本件技術仕様書V3.8.0」という。)について説明したものであって,その記載内容は,現在の3GPP規格でいう通常Eビット解釈のものである。しかるところ,通常Eビット解釈には,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合について は,現在の3GPP規格でいう通常Eビット解釈のものである。しかるところ,通常Eビット解釈には,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合について全く記載がない。 また,段落【0008】の上記記載を字義通りに解釈しても,「僅か一つのSDUが,完全にPDU50のデータ領域58を充填する」という表現は,SDUとPDUのサイズが一致する場合のみならず,SDUの方がサイズが大きく,分割された最初のセグメントや中間セグメントがPDUを充填する場合にも,これに該当し, 構成要件D(K)の「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合のみを意味するものではない。 したがって,甲3は,構成要件D(K)を開示するものではない。 b 前記aのとおり,甲3においては,中間セグメントがPDUを充填する場合にも,「ビット55aは0で,LIは出現しない」に該当するので,「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定され」ること(構成要件F(M))もない。 また,「パディングPDU」は,「実際のSDUデータを備えず,SDUデータが不測のデータ中断の発生により破棄される時にだけ用いられる」もので,SDUを充填したものではなく(甲3の段落【0026】),SDUとは全く無関係であり,SDUとの関係を観念することも,中間セグメントを観念することも不可能であるから,中間セグメントを含むPDUに対応するものではない。しかも,「パディングPDU」である限り,「拡張子ビット155a」は常に の関係を観念することも,中間セグメントを観念することも不可能であるから,中間セグメントを含むPDUに対応するものではない。しかも,「パディングPDU」である限り,「拡張子ビット155a」は常に1に設定され,中間セグメントかどうかによって拡張子ビット155aの値が変更されるものではないから,「パディングPDU」は,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUとを区別する技術ではない。 したがって,甲3は,構成要件F(M)を開示するものではない。 (イ) 以上によれば,原告主張の無効理由1は理由がない。 イ無効理由2に対し(ア) 前記ア(ア)aのとおり,甲3には構成要件D(K)の開示がないから,本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違する。 (イ) 甲3に記載された従来技術は,本件技術仕様書V3.8.0の内容であり,それ自体が規格として成立しているから,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUを区別できないという課題は存在しない。 また,2種類のPDUを区別するために,長さインジケータを予め定義された値に設定することが,技術的な観点から,当然の選択であったとはいえない。 したがって,当業者が甲3と技術常識に基づいて構成要件F(M)の構成を容易に想到することができたものとはいえない。 (ウ) 以上によれば,原告主張の無効理由2は理由がない。 ウ無効理由3に対し(ア) 前記イ(ア)及び(イ)のとおり,本件各発明と甲3に記載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違し,また,甲3に記載された従来技術には,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUを区別できない 載された発明とは,甲3に記載された発明が構成要件D(K)の構成を有しない点においても相違し,また,甲3に記載された従来技術には,完全なSDUを含むPDUと中間セグメントを含むPDUを区別できないという課題は存在しない。 (イ) 甲4に記載された発明は,PDUどうしを区別できないという問題ではなく,「前のRLCPDUを失った場合,SDU全体が受信されたかどうかが分からない。」(訳文3頁最終行)という課題を解決するための方策であって,甲3に記載された発明とは課題が異なる。 しかも,甲4に記載された内容は,「LIの予約値のうち一つを使 用:この場合,追加LIは,一番目のRLCSDUが完全に含まれるRLCPDUに含まれなければならない。その結果,12.2kbpsペイロードのうち3%に相当する部分がオーバーヘッドとなる。」(訳文5頁1行~3行)というもので,SDUが完全に含まれる場合に,長さインジケータの予約値を用いるという本件発明1と正反対の技術であり,また,甲4には,中間セグメントに長さインジケータの予約値を用いることは記載されていない。 したがって,当業者が甲3及び甲4に基づいて構成要件F(M)の構成を容易に想到することができたものとはいえない。 (ウ) 以上によれば,原告主張の無効理由3は理由がない。 エ無効理由4に対し(ア) 甲39には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がない。 a もっとも,甲39には,「PDUの第1PDUに,そのPDUのSDUが次のRLCPDUに続いていることを指示する所定値を有する長さ指示子が与えられてもよい。」(段落【0019】)との記載があるが,上記記載は,SDUが次のPDUに続いていること(最後のセグメントでないこと)を示すものではあっても,最初のセ 所定値を有する長さ指示子が与えられてもよい。」(段落【0019】)との記載があるが,上記記載は,SDUが次のPDUに続いていること(最後のセグメントでないこと)を示すものではあっても,最初のセグメントでないことを示すものではないから,(最初のセグメントでも最後のセグメントでもない)中間セグメントであることを示すものではなく,上記記載をもって,甲39に構成要件Fが開示されているとはいえない。 この点に関し原告は,本件特許の出願経過において,被告が,平成22年10月6日付け意見書において,同年3月30日付け拒絶理由通知書(甲44)で甲39について述べられていた点を争わなかったのであるから,甲39が長さインジケータを用いて中間セグ メントを示すことを被告も認めていた旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,甲39には,中間セグメントについての開示はなく,また,審査官が拒絶の理由を発見しなかった「請求項2の要素」(甲44)に基づき早期の権利化を図ることも,何ら不自然なことではないから,出願経過において意見書で明示的に争わなかったからといって甲39が長さインジケータを用いて中間セグメントを示すことを被告が認めていたことにはならない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 b また,甲39においては,段落【0019】の「SDUが現在PDUの終わりに終了する場合には,PDUの終わりを正確に指す長さ指示子の値によりそれが示される。」との記載があるとおり,PDUが完全なSDUを含む場合には,長さ指示子(長さインジケータ)が用いられることは明らかであり,甲39には,構成要件D(K)とは逆のことが記載されている。 (イ) 上記のとおり,甲39には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がなく,また,甲3と甲39と いられることは明らかであり,甲39には,構成要件D(K)とは逆のことが記載されている。 (イ) 上記のとおり,甲39には,本件各発明の構成要件D(K),F(M)の開示がなく,また,甲3と甲39とを組み合わせる動機付けは何ら存在しないから,本件各発明は,甲3及び甲39に基づき当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって,原告主張の無効理由4は理由がない。 オ無効理由5に対し(ア)a 本件出願の優先日前において,実際の通信環境において,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致する割合が大きいことは,当業者には知られていなかったから(甲42等は,原告主張の裏付けにはならない。),完全なSDUを含むPDUにおいてヘッダーの情報を減らそうという動機付けは全くなかった。 また,甲1の4記載の通常Eビット解釈においては,ヘッダーに含まれる長さインジケータは,SDUの最終オクテットがPDUの最終オクテットに一致する場合には,予め定められた値を設定することとされており(訳文9頁の表には,「直前のRLCPDUは,RLCSDUの最終セグメントで過不足なく満たされ,直前のRLCPDUにはRLCSDUの終端を示す「長さインジケータ」が存在しない」場合には,長さインジケータに「0000000」というビット列を用いることが記載されている。),必要なものであったから,SDUのサイズとPDUのサイズとが完全に一致する場合にも,長さインジケータを省略することは想定されていなかった。実際の通信環境において,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致するというような状況が相当頻繁に起こり,かつ,そのことを当業者が認識しなければ,既にリリースされた規格を変更してまで,長さインジケータを省略しようということには想 ズがPDUのサイズと完全に一致するというような状況が相当頻繁に起こり,かつ,そのことを当業者が認識しなければ,既にリリースされた規格を変更してまで,長さインジケータを省略しようということには想到し得ない。 b 甲1の4記載の通常Eビット解釈におけるLIは,SDUを連結,パディングしたときに,どこまでが一つのSDUであるかを示す必要があることから,「PDU内で終了する各RLCSDUの最終オクテットを示す」もの(訳文4頁「9.2.2.8」)として定義されたことにより,SDUの最終オクテットが存在しない中間セグメントにおいてはLIが出現しないだけであり,通常Eビット解釈において,頻繁に発生する中間セグメントを含むPDUにおいて,LIを省略しようという技術思想があったとはいえない。 c 原告は,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成及び構成要件F(M)の構成が自動的かつ必然的に導き出される旨主張するが,以下のとおり,失当である。 (a) シーケンス番号に続く1ビットフィールドについて,甲1の4においては,「後続のオクテットが「長さインジケータ」及びEビットであるか否かを示す」(訳文4頁「9.2.2.5」)という意味を有し,これを「Eビット」と呼んでいるのに対し,原告の主張においては,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致(構成要件D(a))するか否かを示す意味を有し,これを“Eビット”と呼んでおり,甲1の4記載の「Eビット」と意味合いが全く異なる。 原告は,構成要件D(a)の構成を採用し,PDUが分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合(SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致する場合),当該PDUの最初のEビットを「0」に設定することを選択すると,それ以外の種類のデー が分割,連結又はパディングされていないPDUを含む場合(SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致する場合),当該PDUの最初のEビットを「0」に設定することを選択すると,それ以外の種類のデータを含むPDUの場合には,PDUがSDUの中間セグメントの場合も含め,最初のEビットは「1」に設定せざるを得ないので,構成要件D(a)の構成を採用した場合,構成要件D(b)の構成が必然的に導き出され,さらには,中間セグメントを含むPDUの長さインジケータは,中間セグメントを示す予め定められた値に設定する構成要件F(M)の構成が必然的に導き出される旨主張する。 しかしながら,中間セグメントを含むPDUのEビットが「1」であるなら,完全なSDUを含むPDUのEビットは「0」であるから,両者を区別するという目的を達しているし,また,原告の主張は,構成要件D(a)を採用したことにより構成要件D(b)が必然であるという段階では,シーケンス番号に続く1ビットフィールドは,SDUのサイズがPDUのサイズと完全に一致するか否かを示すという新しい意味を持った“Eビット” であることを前提とし,構成要件D(b)から構成要件F(M)が必然であるという段階では,シーケンス番号に続く1ビットフィールドは,甲1の4記載の従来の「Eビット」であることを前提とするものであって,失当である。 さらに,仮に完全なSDUを含むPDUから,長さインジケータを省略し,シーケンス番号に続く1ビットフィールドを完全なSDUを含むことを示すビット(“Eビット”)として用い,「0」によって完全なSDUを含むことを示すことができたとしても,中間セグメントにおいては,完全なSDUを含まないから,シーケンス番号に続く1ビットフィールドが「1」となるだけであり,中間セグメ 「0」によって完全なSDUを含むことを示すことができたとしても,中間セグメントにおいては,完全なSDUを含まないから,シーケンス番号に続く1ビットフィールドが「1」となるだけであり,中間セグメントに長さインジケータを挿入する構成にはならない。 このように構成要件D(a)を採用することが必然的かつ自動的に構成要件D(b)及びF(M)の採用につながることにはならない。 (b) また,仮に原告が主張するように構成要件D(a)を採用することが必然的かつ自動的に構成要件D(b)及びF(M)の採用につながるとすれば,構成要件D(a)を採用する段階において,構成要件D(b)及びF(M)をも採用した構成(代替的Eビット解釈)について検討することになるが,「代替的Eビット解釈を使うとトータルでオーバーヘッドが増加」すること(甲124),原告も代替的Eビット解釈は非効率で実装される可能性は極めて低いと主張していることからすれば,構成要件D(a)を採用することについて強い阻害要因があったといわざるを得ない。 (イ) 以上によれば,当業者が甲1の4記載の通常Eビット解釈と技術常識に基づいて,相違点1及び2に係る本件各発明の構成を容易に想 到することができたものとはいえない。 したがって,原告主張の無効理由5は理由がない。 4 争点4(本件各製品に係る本件特許権の消尽の有無)について(1) 原告の主張ア被告のインテル社に対するライセンス許諾(ア) 前記1(2)ア(ア)のとおり,本件各製品におけるUMTS規格に関連する処理は,本件各製品に実装されたベースバンドチップ(チップセット)(以下,本件各製品に実装されているベースバンドチップを「本件ベースバンドチップ」という。)によって行われている。 仮に本件各製品が本件各発明 各製品に実装されたベースバンドチップ(チップセット)(以下,本件各製品に実装されているベースバンドチップを「本件ベースバンドチップ」という。)によって行われている。 仮に本件各製品が本件各発明を実施しているとすれば,本件各発明の本質的な工程は,本件各製品の一部品である本件ベースバンドチップにより実施されているといえるから,本件ベースバンドチップは,本件発明1に係る本件特許権の間接侵害品に当たる。 本件ベースバンドチップは,アップル社が米国においてインテル社製のチップセットを●(省略)●購入し,実装したものである。 この点に関し,被告は,インテル社製の本件ベースバンドチップのアップル社に対する販売は,IMC社(旧インフィニオン社)が行っている旨主張するが,そのような事実は存在しない。 (イ) インテル社と被告は,●(省略)●特許クロスライセンス契約(甲20の1。以下「被告とインテル社間のライセンス契約」という。)を締結した。 被告は,被告とインテル社間のライセンス契約において,被告の保有する特許のうち,●(省略)●特許権(本件特許権を含む。)に関し,インテル社に対し,●(省略)●ライセンスを許諾した。 被告とインテル社間のライセンス契約により許諾される権利の範囲には,●(省略)● したがって,インテル社が●(省略)●アップル社に本件ベースバンドチップを販売することは,被告とインテル社間のライセンス契約に基づくライセンス許諾の範囲内である。 イ本件各発明に係る本件特許権の消尽最高裁判所平成9年7月1日第三小法廷判決(民集51巻6号2299頁参照。以下「BBS事件最高裁判決」という。)は,「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては,特許権者は,…譲受 第三小法廷判決(民集51巻6号2299頁参照。以下「BBS事件最高裁判決」という。)は,「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては,特許権者は,…譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては,…当該製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。」と判示した。 BBS事件最高裁判決にいう「特許権者と同視し得る者」から実施権者を除外すべき理由はないから,「特許権者と同視し得る者」にはインテル社などのライセンシーも含まれると解すべきであり,また,譲渡対象物が部品であったとしても,最終製品に関する物の発明に係る特許権の間接侵害品に当たるのであれば,当該部品を譲り受けた譲受人及びその後の転得者において当該部品を用いて最終製品に関する物の発明に係る特許権を実施することができることを前提とするものというべきであるから,当該部品は,BBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当すると解すべきである。 また,物の発明と実質的に同一の技術内容に係る方法の発明に係る特許権についても,当該方法の発明に関して特許権者が「特許発明の公開の代償を確保する機会」が保障されていたという事情が存在する限り,方法の発明に係る特許権に基づく権利行使も許されないと解すべきである。 そして,物の発明である本件発明1に係る特許権について,インテル 社製の本件ベースバンドチップが間接侵害品として「特許製品」に当たり,被告がインテル社に本件ベースバンドチップの販売のライセンスをした際に,被告に「特許発明の公開の代償を確保する機会」が保障されていたことから,被告がインテル社の下流顧客に対して本件発明1に係る本件特許権の権利行使をすることは許されず,また,本 のライセンスをした際に,被告に「特許発明の公開の代償を確保する機会」が保障されていたことから,被告がインテル社の下流顧客に対して本件発明1に係る本件特許権の権利行使をすることは許されず,また,本件発明2は,本件発明1と実質的に同一の技術内容に係る方法の発明であり,本件発明1に係る本件特許権の権利行使が許されない以上,本件発明2に係る本件特許権の権利行使も許されないというべきである。 したがって,被告から本件特許のライセンスを許諾されたインテル社が米国において本件ベースバンドチップを●(省略)●アップル社に販売したことによって,本件ベースバンドチップに関し本件各発明に係る本件特許権が消尽したというべきである。 ウまとめ以上によれば,被告は,原告に対し,本件ベースバンドチップを実装した本件各製品について本件特許権を行使することができない。 (2) 被告の主張原告は,本件ベースバンドチップに関し本件各発明に係る本件特許権が消尽した旨を主張するが,以下のとおり理由がない。 ア被告とインテル社間のライセンス契約●(省略)●●(省略)●本件特許権について無権限者にすぎないインテル社を通じてアップル社が本件ベースバンドチップの譲渡を受けたことをもって,本件各発明に係る本件特許権が消尽する余地はない。 イライセンス契約の許諾対象製品に非該当被告とインテル社間のライセンス契約(甲20の1)には,●(省略)●しかるところ,本件ベースバンドチップは,インテル社ではなくIM C社(旧インフィニオン社)によって開発され,製造されたもの(正確には,●(省略)●であるから,本件ライセンス契約の●(省略)●に該当しない。 ウ国際消尽の要件の非充足BBS事件最高裁判決は,譲渡人が目的物である特許製品につい され,製造されたもの(正確には,●(省略)●であるから,本件ライセンス契約の●(省略)●に該当しない。 ウ国際消尽の要件の非充足BBS事件最高裁判決は,譲渡人が目的物である特許製品について有する全ての権利に,我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)が含まれていることを国際消尽成立のための前提としているというべきであるから,BBS事件最高裁判決にいう「我が国の特許権者と同視し得る者」とは,目的物である特許製品を我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)を有している者を意味することは明白である。 しかるところ,インテル社は,そもそも,目的物である特許製品(携帯電話機,タブレット型コンピュータ)について,我が国に輸入する権利(及び,我が国において使用し,譲渡する権利)を有するものでないから,インテル社が「我が国の特許権者と同視し得る者」に該当しない。 また,インテル社からアップル社が譲渡を受けた本件ベースバンドチップは,本件各発明の「データ送信装置」ないし「データ送信方法」ではない以上,BBS事件最高裁判決にいう「特許製品」に該当しない。 さらに,インテル社自身が,●(省略)●本件ベースバンドチップが携帯電話機等に組み込まれることを被告が予想しても,被告がインテル社から「データ送信装置」,「データ送信方法」に関する本件各発明の公開の代償を得られるものではないから,被告に上記代償を確保する機会が保障されていたものといえないことは明らかであるし,また,本件ベースバンドチップが特許製品である本件各製品全体の価格に占める部品単価の割合は僅少であり,このような一部のみの利得機会をもって全 部の利得機会を得たと評価することもできない。 エまとめ以上のとおり,アッ である本件各製品全体の価格に占める部品単価の割合は僅少であり,このような一部のみの利得機会をもって全 部の利得機会を得たと評価することもできない。 エまとめ以上のとおり,アップル社がインテル社から本件各製品の一部品である本件ベースバンドチップを譲り受けたからといって,本件各発明に係る本件特許権が消尽するものではないから,被告が本件各製品について本件特許権を行使することができないとの原告の主張は,その前提を欠き,理由がない。 5 争点5(本件FRAND宣言に基づく本件特許権のライセンス契約の成否)について(1) 原告の主張ア本件FRAND宣言に関する準拠法(ア) 被告は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格に必須である被告保有の特許をFRAND条件(ETSIのIPRポリシー6.1項所定の公正,合理的かつ非差別的な条件)で許諾する用意がある旨の誓約(宣言)をし,さらに,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号等を明示した上で,UMTS規格に必須である被告保有の特許をFRAND条件で取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をした。 FRAND条件による規格必須特許のライセンス宣言は,ETSIの会員のみならず,非会員をも含むあらゆる者を対象とするものであるから(「IPRについてのETSIの指針」(甲16)),アップル社及び原告も,本件FRAND宣言の対象となり得る。 (イ) 本件FRAND宣言及びIPRポリシーの準拠法は,フランス法であるから(甲13,IPRポリシー12項),本件FRAND宣言 の効力,本件FRAND宣言に基づくライセンス契約の成 (イ) 本件FRAND宣言及びIPRポリシーの準拠法は,フランス法であるから(甲13,IPRポリシー12項),本件FRAND宣言 の効力,本件FRAND宣言に基づくライセンス契約の成立要件等については,フランス法が適用される。 イ被告とアップル社間のライセンス契約の成立(ア) 被告がETSIに対して行った本件FRAND宣言は,フランス法において法的拘束力のある申込みであると考えるのに必要な要素(許諾対象特許,許諾される権利内容等)が全て含まれているから,「ある当事者が当該規格を実装することで承諾される,実際のライセンスの申出」を構成する。そして,フランス法上,承諾は,行為又は合意の履行によってされるから,アップル社が本件各製品に本件特許に係るUMTS規格を実装したことにより,被告の上記ライセンスの申出(申込み)に対する黙示の承諾をし,これによりアップル社と被告との間で,本件特許権についてライセンス契約が成立したといえる。 (イ)a 被告の本件FRAND宣言において特定のライセンス料率が定まっていないことは,ライセンス契約の成立を妨げるものではない。 フランス法上,売買契約に関しては,特定の金額が定まっていることがその成立の要素となっているのに対し,ライセンス契約は,売買契約とは異なる特殊な契約に位置付けられ,当事者が契約を締結する上で,ライセンス料の合意があることが必須要件とされていない。また,フランス法上,裁判所がFRAND条件のライセンス料率を決定することが可能である。 b フランス法においては,ライセンスを構成する行為は,書面により締結されるべきであり,書面がない場合には,無効になると規定されているが(知的財産法L.613-8条5項),一方で,書面に対して義務を負う当事者の署名があれば,当該書面 を構成する行為は,書面により締結されるべきであり,書面がない場合には,無効になると規定されているが(知的財産法L.613-8条5項),一方で,書面に対して義務を負う当事者の署名があれば,当該書面は,法的拘束 力を有することとされている。 この点,被告の本件FRAND宣言は,被告の署名のある書面によってされているから,書面性の要件が充たされており,アップル社の署名がないことは,書面性の要件とは関係がない。また,フランス法上,ライセンス契約の書面性の要件は,「ライセンシーの特定の利益を守る目的」で課されたことから,書面の欠如を理由として契約の無効を主張できるのは,書面の欠如により保護されるべき当事者(ライセンシー)のみであり,本件において,被告は無効主張をする資格を有しない。 ウまとめ以上のとおり,被告がETSIに対して行った本件FRAND宣言がFRAND条件による本件特許権のライセンス契約の申込みに,アップル社が本件各製品に本件特許に係るUMTS規格を実装したことが上記申込みに対する黙示の承諾に当たり,被告とアップル社間で本件特許権についてFRAND条件によるライセンス契約が成立したから,被告は,アップル社の子会社である原告に対し,本件特許権を行使することができない。 (2) 被告の主張ア契約の申込みの不存在契約の成立により,当事者は当該契約を履行すべき法的義務を負うものであるから,申込みは,承諾によって直ちに契約を成立させ得る程度に具体的であることを要する。 しかるところ,被告の本件FRAND宣言には,対価(実施料率),期間及び地理的範囲といった契約の要素というべき重要事項の一切が含まれておらず,当事者が負うべき具体的義務が何ら特定されていないから,これがライセンス契約の申込みに該当する には,対価(実施料率),期間及び地理的範囲といった契約の要素というべき重要事項の一切が含まれておらず,当事者が負うべき具体的義務が何ら特定されていないから,これがライセンス契約の申込みに該当することはない。 この点,フランス法においても,ライセンス契約が成立するためには,契約の重要な要素(例えば,対価,対象特許,地域,期間)を明確にした申込み及びそれに合致した承諾が必要であると解されており,本件においては,それらを明確にした申込みはないから,ライセンス契約が成立する余地はない。なお,フランスの最高裁判所(破棄院)の判決において,ロイヤルティ(対価)がライセンス契約の必須要素であるか否かを取り扱ったものはない。 イ承諾の不存在(ア) 前記アのとおり,そもそも被告から本件特許権のライセンス契約の申込みがされた事実が存在しないのであるから,これに対するアップル社の承諾が存在することはない。 (イ) これに対し原告は,アップル社が本件各製品を製造するに当たってUMTS規格を実装したことによって上記申込みに対する黙示の承諾がされた旨を主張する。 しかしながら,原告は規格の実装により意思の合致が認められる理由を述べていない。また,仮に原告の主張が肯定されるならば,特許技術の利用者は,単に規格を実装する行為をとるだけで,承諾を権利者に表明することなく,しかも対価を支払うことなく,当該特許技術を利用できることとなるが,そのような帰結が非常識であることは明らかである。 したがって,原告の上記主張は失当である。 ウ書面性の要件の欠如(ア) 仮にライセンスの成否についてフランス法を準拠法とする原告の主張を前提としても,フランス法においては,特許ライセンス契約は書面によらなければならないとされており,本件特許について 件の欠如(ア) 仮にライセンスの成否についてフランス法を準拠法とする原告の主張を前提としても,フランス法においては,特許ライセンス契約は書面によらなければならないとされており,本件特許について,被告とアップル社との間のライセンス契約に関する書面は存在しないから,原告主張のライセンス契約は成立していない。 (イ) これに対し,原告は,被告の本件FRAND宣言には,義務者である被告の署名があるので,特許ライセンス契約の成立に必要な書面性の要件を充足する旨を主張する。 しかしながら,①本件FRAND宣言には,ライセンス契約の目的,対価,期間及び地理的範囲といった契約の内容を表すのに必要な条項が含まれていないこと,②本件FRAND宣言に原告の署名が付されていない以上,双方当事者の意思が合致したか否かが不明確であること,③本件FRAND宣言は,相互にライセンス契約を受けることが前提とされており,他方当事者であるライセンシーも義務者になるのであるから,他方当事者であるアップル社の署名を不要とすることができないことからすると,原告主張の被告とアップル社間のライセンス契約は書面性の要件を充たしていない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 エまとめ以上のとおり,本件FRAND宣言に基づいて被告とアップル社間で本件特許権についてライセンス契約が成立したとの原告の主張は,理由がない。 6 争点6(権利濫用の成否)について(1) 原告の主張以下の諸事情に鑑みれば,被告が原告に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり,許されない。 ア本件特許の適時開示義務違反ETSIのIPRポリシー4.1項は,ETSIの会員が,開発済み又は開発中の標準規格に必 求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり,許されない。 ア本件特許の適時開示義務違反ETSIのIPRポリシー4.1項は,ETSIの会員が,開発済み又は開発中の標準規格に必須となり得る知的財産権を保有する場合,これをETSIに適時に開示することを義務付けている。この趣旨は,標 準策定の参加者が標準規格を構成する特許の存在を秘匿すると,標準化のワーキンググループが当該特許の代わりの技術を標準規格に採用することを検討したり,当該特許を標準規格から外す旨の決定を行ったりする機会が奪われると同時に,標準規格を実装する者や,標準化団体が代替的技術を選択する機会も奪われることになるので,ETSIの会員にその保有する標準規格に必須となり得る知的財産権の適時開示義務を負わせたものである。 被告は,本件出願の優先日の属する月である2005年(平成17年)5月,被告が特許を取得しようとしていた技術を含む変更要請書を作成し,これを3GPPのワーキンググループに提示し,その後本件特許に係る標準規格が決まってから,約2年経過後の2007年(平成19年)8月に至るまで本件特許の存在をETSIに開示しなかった。 このように被告は,意図的にIPRポリシー4.1項の適時開示義務に違反したものである。 イ本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であることアップル社は,2011年(平成23年)4月,米国において,被告に対し,標準規格と関係のないアップル社保有の特許権等を侵害したとして,その侵害行為の差止請求訴訟を提起した。 被告は,同月,アップル社の上記提訴に対する報復的な対抗措置として,原告に対し,被告がUMTS規格の必須特許であるとの宣言(以下,この宣言に係る特許を「必須宣言特許」という。)をした本件特許権に基づき は,同月,アップル社の上記提訴に対する報復的な対抗措置として,原告に対し,被告がUMTS規格の必須特許であるとの宣言(以下,この宣言に係る特許を「必須宣言特許」という。)をした本件特許権に基づき本件各製品の販売等の差止めを求める本件仮処分の申立てなどをした。 ウ本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反及び誠実交渉義務違反(ア) 「IPRについてのETSIの指針」1.4項(甲16)は,第 三者は,ETSI規格の利用者として,IPRポリシー6.1項に基づき,規格に関し,FRAND条件でライセンスが許諾される権利を有することを定めている(訳文2頁,3頁の表の右欄)。 アップル社及び原告は,被告の本件FRAND宣言によって,必須宣言特許のライセンスを受ける権利を有するから,被告は,必須宣言特許である本件特許権についてライセンス契約を締結する義務(ライセンス契約締結義務)を負うというべきである。また,被告は,少なくとも,必須宣言特許のライセンスに関し誠実に交渉すべき義務(誠実交渉義務)を負うというべきである。 しかながら,被告は,以下に述べるとおり,ライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反している。 a 前記イのとおり,被告がアップル社の提訴に対する報復的な対抗措置として本件仮処分の申立てを行ったことは,必須宣言特許のライセンスに関する被告のライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反する行為である。 被告の本件仮処分の申立ての意図は,アップル社及び原告に対し,FRAND宣言でのライセンスを許諾する意思はなく,必須特許宣言をした本件特許権に基づく差止請求権を行使して原告及びアップル社を脅かすことにより,アップル社が提訴した事件を牽制し,有利に進めようとしているにすぎない。 b アップル社が, はなく,必須特許宣言をした本件特許権に基づく差止請求権を行使して原告及びアップル社を脅かすことにより,アップル社が提訴した事件を牽制し,有利に進めようとしているにすぎない。 b アップル社が,本件特許のライセンスに係る具体的なFRAND条件でのライセンス料率の開示を被告に求めたところ,被告は,アップル社の開示要求から約4か月半が経過した後の2011年(平成23年)7月25日,アップル社に対し,「●(省略)●%のライセンス料率」という条件を提示●(省略)●した。また,被告は,他のライセンシーに対して実際にどの程度のライセンス料率で 支払を求めているかについての情報の開示を拒絶した。 被告の上記行為は,実質的には,FRAND条件で本件特許権をアップル社及び原告にライセンスすることを拒絶するものであるといえる。 すなわち,①被告は,自らは約4か月半もの期間を検討に費やしながら,アップル社に対しては,●(省略)●②被告がアップル社に対して提示した条件がFRAND条件(公正,合理的かつ非差別的な条件)といえるかどうかについては,被告と第三者との間の本件特許のライセンス料率がアップル社に対して開示されなければ,アップル社において判断することができないところ,被告は,秘密保持義務に違反しない限られた範囲でアップル社に開示することが可能であるのに,第三者との間の秘密保持契約を理由として,アップル社に対し,ライセンス料率を全く明らかにしていないこと,③被告は,これまで,UMTS規格を実装した者がその規格の必須特許と宣言された特許全てに関して支払うべきライセンス料率は,合計で「約5%」であるという立場を何度となく示しており,被告以外の会社も同様の上限に賛同しているにもかかわらず,わずか一つの本件特許について,●(省略)●% てに関して支払うべきライセンス料率は,合計で「約5%」であるという立場を何度となく示しており,被告以外の会社も同様の上限に賛同しているにもかかわらず,わずか一つの本件特許について,●(省略)●%のライセンス料率」という不当に高額なライセンス料を提示していること(UMTS規格の必須特許であると宣言されている特許ファミリー1889のうち,被告が保有している特許ファミリーはその5.45%に当たる103であることからすると,被告が保有する必須宣言特許全てに対する合理的なライセンス料率は,0.273%(5%×5.45%)にしかならない。)に鑑みると,被告がアップル社に提示した上記条件が,FRAND条件に当たらず,それからかけ離れた条件であることは明らかであり,被告は,実質的には,FRAND条件で本件特 許権をアップル社及び原告にライセンスすることを拒絶しているものといえる。 c アップル社は,2012年(平成24年)3月4日,被告に対し,署名入りのライセンス契約書案を送付し,本件特許権に関するライセンスの申出(甲65の1,2)をした。アップル社の上記申出は,FRAND条件でのライセンス契約締結の目的に限り,●(省略)●を前提としたものであり,裁判所が本件特許権の有効性及び抵触性を認めた場合に限るなどの条件付きのライセンスの申出ではない。 しかし,被告は,アップル社の上記申出について,代案も示さずに拒絶した。 d その後も,アップル社は,被告との間で,FRAND条件に関するライセンス交渉を全世界的に継続しようと試みている。 アップル社は,2012年(平成24年)9月1日及び7日,アップル社及び被告が保有する携帯通信端末に関する必須宣言特許のポートフォリオ全体について,クロスライセンスを締結するというライセンスの申出 アップル社は,2012年(平成24年)9月1日及び7日,アップル社及び被告が保有する携帯通信端末に関する必須宣言特許のポートフォリオ全体について,クロスライセンスを締結するというライセンスの申出を行った(甲109,110)。アップル社は,上記申出において,ベースバンドチップのうち,3GPP規格に関する機能に寄与する部分の価格につき●(省略)●%のロイヤルティを支払うこと,ベースバンドチップの価格をロイヤルティ算定の基礎として,アップル社の特許ポートフォリオに関して●(省略)●%のロイヤルティとすることを提案した。 しかし,被告は,未だにアップル社の上記申出に対して回答をしていない。 e 以上のとおり,アップル社は,被告に対し,ロイヤルティの算定根拠を詳細に説明した上で,これまで,繰り返し確定的なライセン スの申出を行ってきたにもかかわらず,被告は,従前の申出を未だに維持し,当該申出に係るロイヤルティの算定根拠も,アップル社の申出に対する代案も示すことなく,一方で,必須宣言特許である本件特許権に基づいて差止めを求める本件仮処分の申立てを維持し,アップル社に対して,必須宣言特許に基づく差止仮処分命令の脅威を背景として圧力をかけている。 このような被告の一連の行為は,特許発明に係る技術が標準規格に組み込まれることによりその技術に内在する価値を大幅に超える力,つまり,標準規格の実装者から不当に高いロイヤルティや非必須知的財産権のクロスライセンスを取得する力を特許権者に与えかねないという,いわゆる「ホールドアップ状況」(標準規格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用できなくなる状況)の策出行為に当たるものである。 したがって,被告は,必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締 格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用できなくなる状況)の策出行為に当たるものである。 したがって,被告は,必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反していることは明らかである。 (イ) この点に関し,被告は,アップル社がFRAND条件による「確定的なライセンスの申出」を行っていないから,被告に誠実交渉義務が発生していない旨主張する。 しかしながら,ETSIのIPRポリシー,被告の本件FRAND宣言及びその準拠法であるフランス法のいずれにおいても,必須宣言特許権者が誠実交渉義務を負う条件として,UMTS規格の実施希望者に対して,「確定的なライセンスの申出」を行うことを求める規定は存しない。「確定的なライセンスの申出」は,ライセンス契約成立の要件ではなく,また,特許権者の誠実交渉義務発生の要件でもない。 日本法においても,「確定的なライセンスの申出」を要求する根拠は存しない。仮に日本法において被告の誠実交渉義務の発生要件としてアップル社又は原告の「確定的なライセンスの申出」が必要であるとしても,前記(ア)のとおり,アップル社は,被告に対し,FRAND条件でのライセンス契約締結の限りで,本件特許権の有効性及び抵触性を争わないとの意思を示し,「確定的なライセンスの申出」を行っている。 さらに,仮にライセンス希望者がFRAND条件でのライセンスの申出を行うに際し特許の有効性や抵触性を争う権利を放棄しなければならないとすれば,必須宣言特許権者は,後に当該特許が必須でなかったことや,当該特許の有効性や抵触性が認められないことが判明したとしても,ライセンシーからその点を指摘されることから免れることができるようになり,しかも,ライセンシーから特許 当該特許が必須でなかったことや,当該特許の有効性や抵触性が認められないことが判明したとしても,ライセンシーからその点を指摘されることから免れることができるようになり,しかも,ライセンシーから特許の有効性や抵触性を争われることを免れるという利益を得るために,本来は必須特許ではないものについて,必須特許であるという過剰な宣言を助長しかねないこととなり,妥当でない。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 エ独占禁止法違反被告の一連の行為は,「ホールドアップ状況」を策出するものであって(前記ウ(ア)e),標準規格を広く普及させることを目的とする3GPPの趣旨に真っ向から反対するものであるとともに,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)の不公正な取引方法に関する規定(2条9項2号,一般指定2項ないし4項,14項等)のいずれかに該当する可能性が高く,独占禁止法違反にもなり得るものである。 オまとめ 以上のとおり,被告が意図的に本件特許について適時開示義務に違反したこと,被告の本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であること,被告が本件FRAND宣言に基づく必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反して「ホールドアップ状況」を策出していること,かかる被告の一連の行為が独占禁止法に違反することなどの諸事情に鑑みれば,被告が原告に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 (2) 被告の主張原告が被告による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利濫用に当たることを基礎付ける事情として挙げる諸点は,以下に述べるとおり,前提となる事実が存在しないか,そもそも権利濫用を基 告の主張原告が被告による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利濫用に当たることを基礎付ける事情として挙げる諸点は,以下に述べるとおり,前提となる事実が存在しないか,そもそも権利濫用を基礎付ける事情に当たらない。 ア IPRポリシーの適時開示義務違反の主張に対し(ア) 原告が適時開示義務違反の根拠とするETSIのIPRポリシー4.1項(甲12)は,自らの特許権等を開示するために合理的な努力を求めているが,当該規定はETSIの会員に対してETSIとの関係を規定するものであり,第三者との関係を規定するものではなく,その違反に対する制裁は何ら想定されていない。 加えて,そもそも,ETSIとの関係での手続義務違反があることが,本件特許権の行使が権利濫用になることを基礎付ける事情になるべくもない。 (イ) 原告は,被告のETSIに対する本件特許の開示が,本件出願の優先日から起算して約2年後であったことをもって,被告に適時開示義務違反がある旨主張する。 しかしながら,必須特許宣言は,会社において,特許の抽出,規格 に必須であることの精査を行い,適正な社内手続を経て行われるものであり,相応の労力と期間を要するとともに,会社としての決定と行為を要するものであることはいうまでもなく,それゆえに,一般的に,ETSIの会員における特許の開示に要する期間として1年から2年の期間が必要となっている。 したがって,被告のETSIに対する本件特許の開示が本件出願の優先日から起算して約2年後であったことは,通常の実務の水準に沿うものであって,被告において適時開示のための合理的な努力をしていたというべきであるから,適時開示義務違反が問題となることはない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ本件仮処分の申立てが であって,被告において適時開示のための合理的な努力をしていたというべきであるから,適時開示義務違反が問題となることはない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置等であるとの主張に対し原告は,被告の本件仮処分の申立てが,アップル社が被告に対して米国において差止請求を行った後に申し立てられたことをもって,報復的な対抗措置であり,アップル社が申し立てた事件を牽制し,有利に進めようとするものである旨主張する。 しかしながら,アップル社が被告に対して米国で差止請求を行った事件は,本件とは別個の事件であるし,被告が本件特許権の侵害行為の差止請求をする権利を有することの裏返しとして,原告が当該侵害行為の差止請求を受けることは法が当然に予定しているのであり,被告による権利行使がアップル社からの権利行使に遅れたことをもって「報復的な対抗措置」,「アップル社が申し立てた事件の牽制」等との非難を受けるいわれはない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ウ本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反及び誠実交渉義務違反の主張に対し (ア) ライセンス契約締結義務の不存在ETSIに対するFRAND宣言によって生じる義務は,ライセンスを受けることを希望する者との間で,その申出を受けて,IPRポリシー6.1項所定のFRAND条件でライセンスを行うという基本原則に従って,誠実に交渉,協議する義務(誠実交渉義務)にほかならず,FRAND宣言が原告が主張するようなライセンス契約を締結する義務(ライセンス契約締結義務)を被告が負うことの根拠となるものではない。 また,FRAND宣言がライセンス契約締結義務を負うことの根拠となるとする原告の主張は,「IPRについての 約を締結する義務(ライセンス契約締結義務)を被告が負うことの根拠となるものではない。 また,FRAND宣言がライセンス契約締結義務を負うことの根拠となるとする原告の主張は,「IPRについてのETSIの指針」(甲16)に「具体的なライセンス条件及び交渉は企業間の商業上の問題であり,ETSI内で対処されるものではない」(4.1項)との規定があるように,ETSIが個々のライセンス契約の交渉に関与しない方針であることと矛盾する。 したがって,被告に本件FRAND宣言に基づくライセンス契約締結義務違反があるとの原告の主張は,その前提を欠くものとして,理由がない。 (イ) 誠実交渉義務の不発生aFRAND宣言によりその宣言をした者に課せられる義務の内容については各国の公共政策に直接的に関わる問題であるため日本独自の観点から判断し得るものである。そして,日本法の観点からは,誠実交渉義務が生じるのは,ライセンス対象特許の有効性を争うことなく,真にライセンスを受けることを希望する「確定的なライセンスの申出」が必要であると解すべきである。 しかるところ,原告は,アップル社が被告に対し,2012年(平成24年)3月4日,同年9月1日及び7日にFRAND条件 による「確定的なライセンスの申出」を行った旨主張するが,いずれも理由がない。 (a) 原告主張の2012年(平成24年)3月4日の申出は,被告の特許の抵触性と有効性を争うものであるから,そもそも「確定的なライセンスの申出」に該当しない。 また,上記申出の内容は,「●(省略)●%」という不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申出の外形を形式的に策出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,上記申出が「確定 )●%」という不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申出の外形を形式的に策出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,上記申出が「確定的なライセンスの申出」に該当することはあり得ない。 (b) 原告主張の2012年(平成24年)9月1日及び7日の申出(甲109,110)は,●(省略)●提案している点で(訳文3頁),依然として被告の特許の抵触性と有効性を争うことを留保するものであるから,「確定的なライセンスの申出」とはいえない。また,アップル社は,●(省略)●特許消尽の主張が特許権侵害の主張に対する抗弁であることに鑑みれば,かかる要求を行うこと自体,依然として特許の抵触性を争っているに等しいから,やはり「確定的なライセンスの申出」とはいえない。 (c) 以上のとおり,原告主張のアップル社の申出は,真にライセンスを希望する確定的な申出とはいえないから,被告にはそもそも誠実交渉義務が生じていない。 b この点に関連して,原告は,他のライセンシーに対するライセンス条件について,秘密保持義務に違反しない範囲でアップル社に開示することは可能であるのに,被告がライセンス条件を開示しないことを非難する旨の主張をしている。 しかしながら,本件FRAND宣言により被告に課される義務 は,確定的なライセンス申出を行う者に対して誠実に交渉,協議する義務であって,他社へのライセンス条件を開示する義務は存在しない。また,アップル社は確定的なライセンスの申出を行っておらず,そもそも,被告は原告に対して何ら義務を負っていないというべきであるから,原告の上記主張は失当である。 (ウ) 誠実交渉義務違反の不存在a 被告は,終始一貫して,アップル社に対して両者の間で誠実に交渉するこ は原告に対して何ら義務を負っていないというべきであるから,原告の上記主張は失当である。 (ウ) 誠実交渉義務違反の不存在a 被告は,終始一貫して,アップル社に対して両者の間で誠実に交渉することを求めており,誠実交渉義務に違反していない。 すなわち,被告は,2012年(平成24年)4月18日付け回答書(乙42)において,アップル社に対しFRAND条件でのライセンスの用意があることを伝え,アップル社が真剣な提案を行うことを促している。また,被告は,2012年(平成24年)9月7日付け書簡(甲111)において,●(省略)●を提案するなど,終始一貫して,アップル社に対して両者の間で誠実に交渉することを求めている。 むしろ,これまでに被告の誠実な交渉姿勢に応えてこなかったのは,アップル社自身である。 b 原告は,FRAND宣言がされている特許については,5%というロイヤルティ上限を特許ポートフォリオ全体に対する割合で除するという計算方法が採られるべきであるなどと主張する。 しかし,ロイヤルティ上限が5%であるとする根拠はどこにもなく,原告の上記主張は理由がない。 c また,原告は,被告がアップル社に対してFRAND条件でのライセンスの提示を行っておらず,また代案を示すことなく,原告に対して差止請求を行っており,かかる行為はアップル社及び原告に対するFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為である旨主張 する。 しかしながら,そもそもアップル社が「確定的なライセンスの申出」を行っていないことは前述したとおりであるから,被告の行為がFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為であるとの原告の主張は,その前提を欠き失当である。 d 以上のとおり,被告が誠実交渉義務に違反するとの原告の主張は,理由がない。 エ独 被告の行為がFRAND条件でのライセンスを拒絶する行為であるとの原告の主張は,その前提を欠き失当である。 d 以上のとおり,被告が誠実交渉義務に違反するとの原告の主張は,理由がない。 エ独占禁止法違反の主張に対し原告は,被告の一連の行為が独占禁止法所定の不公正な取引方法に該当し,同法に違反する旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,被告に適時開示義務違反があること,被告が報復目的の対抗措置として本件仮処分の申立てを行っていることなどを根拠とするものであるが,その前提において誤りがあるから,失当である。 オまとめ以上のとおり,被告の本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利濫用に当たるとの原告の主張は,前提となる事実が存在しないか,そもそも権利濫用を基礎付ける事情に当たらないから,理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件各製品についての本件発明1の技術的範囲の属否)について(1) 本件各製品の構成について被告は,本件発明1が3GPP規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代替的Eビット解釈」(AlternativeE-bit解釈)を具現化したものであり,同技術仕様書に準拠した本件各製品は,本件発明1の技術的範囲に属する旨主張する。 そこで,まず,本件各製品が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製 品といえるかどうかについて判断する。 ア本件製品1及び3について本件製品1及び3が3GPPが策定した通信規格の標準規格(3GPP規格)であるUMTS規格に準拠した製品であることは争いがない。 UMTS規格としてリリースされた規格には各種のバージョンがあり,被告主張の代替的Eビット解釈は,本件出願の優先日後に公開された「3GPPTS25.322 V6.4.0」( ことは争いがない。 UMTS規格としてリリースされた規格には各種のバージョンがあり,被告主張の代替的Eビット解釈は,本件出願の優先日後に公開された「3GPPTS25.322 V6.4.0」(以下「本件技術仕様書V6.4.0」という。)以降のバージョンの技術仕様書において採用されたものである(甲2,87,弁論の全趣旨)。 しかるところ,本件証拠上,本件製品1及び3において代替的Eビット解釈に基づく機能が実装されていることを認めるに足りない。かえって,本件製品1及び3に実装されたUMTS規格に関連する処理を行うベースバンドチップは,インテル社製の●(省略)●であること,上記べースバンドチップは,本件出願の優先日前に公開された3GPP規格「リリース5」に係るバージョンに準拠したものであり,代替的Eビット解釈に基づく機能を有していないことがうかがわれる(甲82ないし85)。 したがって,本件製品1及び3が本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であるとの被告の主張は,理由がない。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件製品1及び3が本件発明1の技術的範囲に属するとの被告の主張も理由がない。 イ本件製品2及び4について(ア) 代替的Eビット解釈本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項,9.2.2.8項及び9.2.2.8.1項(別紙1参照)には,①伝送モードが非確認モードのPDU(UMDPDU)の最初のオクテットに含まれ るEビット(拡張ビット)について,「通常Eビット解釈」又は「代替的Eビット解釈」が上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて選択的に適用されること,②「代替的Eビット解釈」の下では,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連 ット解釈」が上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて選択的に適用されること,②「代替的Eビット解釈」の下では,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを,「1」の場合は,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」であることを示すこと,③「長さインジケータ」は,最初のオクテットに含まれるEビットが「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを示していなければ,PDUの中のそれぞれのSDU(RLCSDU)が終わる最後のオクテットを示すものとして用いられること,④「代替的Eビット解釈」が設定され,かつ,PDU(RLCPDU)がSDUのセグメントを含むが,SDUの最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合には,「長さインジケータ」は,「111 1110」の値を持つ7ビットの長さインジケータ又は「111 1111 1111 1110」の値を持つ15ビットの長さインジケータが用いられることが記載されている。 (イ) 本件実機テストa 証拠(乙13,14,41)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) カナダ法人のチップワークス社が本件製品2及び4について,「基地局エミュレータ」として,CMW500を用いたテスト(本件実機テスト)を行った。 CMW500は,W-CDMA方式に対応している。 (b) 本件実機テストのテスト1は,「PDUサイズ:488ビット,SDUサイズ:480ビット」の設定で,「PDUが分割, 連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のテストであり,テスト2は,「PDUサイズ:80ビット,SDUサイズ:480ビット」の設定で,最初と最後を除いた「中間セ が分割, 連結,パディングされていない完全なSDUを含む場合」のテストであり,テスト2は,「PDUサイズ:80ビット,SDUサイズ:480ビット」の設定で,最初と最後を除いた「中間セグメント」としてのPDU(例えば,2番目のPDU)をモニタするテストである。 (c) 本件実機テストの結果は,次のとおりである。 ① テスト1の場合には,一連番号(SN)に続くEビットが「0」となり,長さインジケータを含まないPDUが出力されている(乙13の図12,14)。 ② テスト2の場合には,一連番号(SN)に続くEビットが「1」となり,長さインジケータとして所定値(1111110)を含むPDUが出力されている(乙13の図13,15)。 b 前記aの本件実機テストの結果が示すEビットの値及び長さインジケータの値は,前記(ア)の代替的Eビット解釈を採用した場合の値と整合しており(テスト1は前記(ア)②及び③と,テスト2は前記(ア)②及び④とそれぞれ整合する。),本件製品2及び4は,代替的Eビット解釈の機能を実装していることが認められる。 c これに対し原告は,本件実機テストの結果の「Interpretation」の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されており,「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」と表示されていないから,本件実機テストでは,代替的Eビット解釈ではなく,通常Eビット解釈が用いられているなどと主張する。 しかしながら,代替的Eビット解釈において,Eビットに「0」が設定される場合,次のフィールドのビット列が「分割,連結,パ ディングされていない完全なSDU」を構成するSDUの「データ」を示すものであることからすると,「Interpretation 設定される場合,次のフィールドのビット列が「分割,連結,パ ディングされていない完全なSDU」を構成するSDUの「データ」を示すものであることからすると,「Interpretation」 の欄に「次のオクテット:データ(「nextoctet: data」)」と表示されていることは本件実機テストにおいて代替的Eビット解釈が使用されていることと相反するものではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ウ小括以上によれば,本件製品2及び4は,本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であり,代替的Eビット解釈に基づく機能を実施する構成を備えていることが認められる。 (2) 本件発明1の技術的意義ア本件明細書の記載事項(ア) 本件明細書(甲1の2)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(この記載中に引用する図面については,別紙本件明細書図面参照)。 a 「【技術分野】本発明はパケットサービスを支援する移動通信システムに関するもので,特に無線リンク上のプロトコルデータユニット(ProtocolDataUnit:以下,“PDU”とする)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置に関するものである。」(段落【0001】)b 「【背景技術】…ヨーロッパ式移動通信システムであるGSM(GlobalSystemforMobilecommunications)とGPRS(GeneralPacketRadioServices)に基づいて広帯域符号分割多重接続(CodeDivisionMultipleAccess:以下,“CDMA”とする)を使用する第3世代の移動通信システムであるUMTS(UniversalMobileTelecommunicati DivisionMultipleAccess:以下,“CDMA”とする)を使用する第3世代の移動通信システムであるUMTS(UniversalMobileTelecommunicationService)システムは,移動電話加入者又はコン ピュータユーザーが全世界のどこにいてもパケットベースのテキスト,デジタル化された音声,ビデオ,及びマルチメディアデータを2Mbps以上の高速で伝送できるサービスを提供する。このUMTSシステムは,インターネットプロトコル(InternetProtocol:以下,“IP”とする)のようなパケットプロトコルを用いるパケット交換アクセス方式の概念を導入している。上記のUMTS通信システムに対する標準化を担当する3GPP(3rdGenerationPartnershipProject)で音声サービスについて,インターネットプロトコルを用いて音声パケットを支援するVoIP(Voiceover IP)通信が論議されている。VoIPは,音声コーデック(CODEC)から発生した音声フレームをIP/UDP(UserDatagramProtocol)/RTP(Real-timeTransportProtocol)パケットの形態で伝送する通信技術である。このVoIP,パケットネットワークを通じる音声サービスの提供を容易にする。」(段落【0002】),「図1は,VoIPを支援する通常の移動通信システムの構成を示す。」(段落【0003】)」,「一般に,RLC階層は,動作方式によりUM(UnacknowledgedMode),AM(AcknowledgedMode),TM(TransparentMode)に分けられる。VoIPは,上記RLCUMで動作する。送信器において,R nacknowledgedMode),AM(AcknowledgedMode),TM(TransparentMode)に分けられる。VoIPは,上記RLCUMで動作する。送信器において,RLCUM階層は,上位階層から受信されたRLCサービスデータユニット(ServiceDataUnit:以下,“RLCSDU”とする)を無線チャンネルを通じて伝送するのに適合したサイズに分割し,連結し,或いはパディングする。RLCUM階層は,分割/連結/パディング(segmentation/concatenation/padding)情報とシーケンス番号(SN)を上記結果値に挿入して無線チャンネルを通じて伝送に適合したRLCPDU(ProtocolDataUnit)を構成し,このLCP PDU(判決注・「RLCPDU」の誤記)を下位階層に伝送する。…上位階層から受信されたRLCSDUを無線チャンネルを通じて伝送するために適合したサイズに処理する動作は,“RLCフレーミング(framing)”と称する。」(段落【0004】),「図2Cは,従来技術により,送信器のRLC階層でRLCSDUをフレーミングしてRLCPDUを構成する動作を示す。…送信器のRLC階層は,上位階層から任意のサイズ,例えば100バイトIPパケットのRLCSDU225を受信する。無線チャンネルを通じて伝送可能なデータのサイズが40バイトである場合に,RLC階層は,RLCSDU225を3個のRLCPDU230,235,240に分割する。このとき,それぞれのRLCPDUは,40バイトである。また,各RLCPDUは,RLCヘッダー245を含む。RLCヘッダー245は,シーケンス番号(SequenceNumber:以下,“SN”とする ,それぞれのRLCPDUは,40バイトである。また,各RLCPDUは,RLCヘッダー245を含む。RLCヘッダー245は,シーケンス番号(SequenceNumber:以下,“SN”とする)250と,Eフィールド255と,長さインジケータ(LengthIndicator:以下,“LI”とする)フィールド260とEフィールド265の少なくとも複数の対とから構成される。LIフィールド260は,分割により含まれる。SNフィールド250は,RLCPDUごとに1ずつ単調に増加する7ビットのSNを示す。このSNは,RLCPDU230,235,240の順序を示す。Eフィールド255は,次のフィールド(followingfield)がデータフィールドであるか否か或いはLIフィールドとEフィールドの対であるか否かを示し,1ビットのサイズを有する。LIフィールド260は,RLCのフレーミングに基づいて7ビット又は15ビットのサイズを有する。 RLCPDUに含まれるRLCSDU225のセグメントが,RLCPDUのデータフィールド270に位置することを示す。す なわち,LIフィールド260は,RLCPDUのデータフィールド270で,RLCSDU225の開始及び終了を示す。LIフィールド260は,パディングしたか否かを示すことができる。 LIフィールド260が示す値はバイト単位で設定され,RLCヘッダーからRLCSDUが終了する地点までのバイト数を意味する。」(段落【0007】)c 「上記のように,LIフィールドを用いてRLCSDUの最後のバイトの位置を示す従来の方式は,一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割し,或いは複数のRLCSDUを一つのRLCPDUに連結する場合に効率的である。しかしながら, CSDUの最後のバイトの位置を示す従来の方式は,一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割し,或いは複数のRLCSDUを一つのRLCPDUに連結する場合に効率的である。しかしながら,通常にVoIPパケットの特性において,一つの完全なRLCSDUが一つのRLCPDUのみに対応し,分割/連結/パディングなしに頻繁に発生する。…このようにRLCPDUのサイズが,最も頻繁に発生するRLCSDUのサイズに基づいて定義されると,大多数のRLCSDUは分割/連結/パディングを経ることなく,RLCPDUにフレーミングされる。この場合に,従来のフレーミング方式は非効率的である。」(段落【0011】),「…言い換えれば,VoIP通信では,大部分RLCSDUを分割又は連結せず,一つのRLCSDUは一つのRLCPDUで構成する。 それにも拘わらず,既存のRLCフレーミング動作は,RLCPDUに少なくとも2個のLIフィールド,すなわちRLCSDUの開始を示すLIフィールドと,RLCSDUの終了を示すLIフィールドが常に要求される。必要によって,データフィールドのパディング可否を示すLIフィールドも追加で挿入される。したがって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式を使用する場合に,不必要なLIフィールドの使用によって限定さ れた無線リソースが非効率的に使用されるという問題点が発生した。」(段落【0012】)d 「【発明が解決しようとする課題】…上記の従来技術による問題点を解決するために,本発明の目的は,パケットサービスを支援する移動通信システムで,無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット(RLCPDU)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置を提供す 目的は,パケットサービスを支援する移動通信システムで,無線リンク制御階層のプロトコルデータユニット(RLCPDU)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する方法及び装置を提供することにある。」(段落【0013】)e 「【課題を解決するための手段】 上記のような本発明の目的を達成するために,本発明は,移動通信システムにおける予め定められた長さインジケータ(LI)を用いてデータを送信する方法であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否かを判定する段階と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記SDUを伝送可能なPDUのサイズにより複数のセグメントに分割する段階と,一連番号(SN)フィールドと,LIフィールドが存在することを示す少なくとも一つの1ビットフィールドと,前記LIフィールドとをヘッダー内に有し,前記セグメントをデータフィールド内に有する複数のPDUを構成する段階と,ここで前記SDUの中間セグメントをデータフィールド内に含むPDUの前記LIフィールドは,前記中間セグメントが存在することを示す値に設定され,前記PDUを受信器に伝送する段階とを有することを特徴とする。」(段落【0014】),「本発明は,移動通信システムにおける予め定められた長さインジケータ(LI)を用いてデータを送信する装置であって,上位階層からサービスデータユニット(SDU)を受信し,前記SDUが一つのプロトコルデータユ ニット(PDU)に含まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,SNフィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つ まれるか否かを判定し,前記SDUを伝送可能なPDUサイズによって少なくとも一つのセグメントに再構成するための伝送バッファと,SNフィールドと1ビットフィールドをヘッダーに含み,前記少なくとも一つのセグメントをデータフィールド内に有する少なくとも一つのPDUを構成するヘッダー挿入部と,前記少なくとも一つのPDUの1ビットフィールドを,以後のLIフィールドの存在有無のうち少なくとも一つを示す値に設定する1ビットフィールド設定部と,前記SDUが一つのPDUに含まれない場合に,前記少なくとも一つのPDUの前記1ビットフィールド以後にLIフィールドを挿入し,前記SDUの中間セグメントをデータフィールド内に含むPDUのLIフィールドを,前記中間セグメントを含むことを示す値に設定するLI挿入部と,前記LI挿入部から受信される少なくとも一つのPDUを受信部に伝送する送信部とを含むことを特徴をする。」(段落【0016】)f 「【発明の効果】本発明は,RLCPDUのデータフィールドに完全なRLCSDUが存在することを示す1ビットの情報によって,このRLCSDUの開始/終了/パディングを示すための追加情報の挿入を不要にすることによって,限定された無線伝送リソースを効率的に使用する効果を有する。また,本発明は,上記のようにRLCSDUの中間セグメントのみを含むRLCPDUに,予め定められたLIの新たな値に設定されたLIフィールドを含むことによって,RLCSDUの分割動作が可能になる効果を有する。」(段落【0018】)g 「…本発明の望ましい実施形態によりRLC階層は,2つのフレーミング方式を使用する。第1の方式は,最も頻繁に使用されるサイズを有するRLCSDUが,LIフィールドを使用せずにRL CPDUにフレーミン 実施形態によりRLC階層は,2つのフレーミング方式を使用する。第1の方式は,最も頻繁に使用されるサイズを有するRLCSDUが,LIフィールドを使用せずにRL CPDUにフレーミングを遂行することである。第2の方式は,他のサイズのRLCSDUに対してLIフィールドを使用してRLCPDUにフレーミングを遂行することである。…第1のEフィールドを,他のEフィールドと区別するために“Fフィールド”と称する。」(段落【0020】)h 「図4は,本発明の望ましい実施形態によるRLCPDUの構造を示す。」(段落【0021】),「図5Aは,本発明の望ましい実施形態により,RLCSDUが分割/連結/パディングを経ることなく,RLCPDUに対応する場合にRLCPDUの構成を示す。図5Aを参照すると,送信器(すなわち,送信器のRLC階層)は,一つの完全なRLCSDUを分割/連結/パディングせずに,一つのRLCPDUにフレーミングが可能である場合に,Fフィールドを‘0’に設定し,RLCPDUのデータフィールドに完全なRLCSDUを挿入する。」(段落【0022】),「図5Bは,本発明の望ましい実施形態により,RLCが分割/連結/パディングを通じてRLCPDUにフレーミングされる場合に,RLCPDUの構造を示す。図5Bを参照すると,送信器はRLCをフレーミングするために分割/連結/パディングを遂行することが必要である場合に,Fフィールドを‘1’に設定し,分割/連結/パディングに必要なLIフィールドとパディングを含んでRLCPUDを構成する。…既存の第1のEフィールドをFフィールドとして用いるためには,下記のような問題点を解決すべきである。通常,RLCPDUがRLCSDUのセグメント(segment)であ LCPUDを構成する。…既存の第1のEフィールドをFフィールドとして用いるためには,下記のような問題点を解決すべきである。通常,RLCPDUがRLCSDUのセグメント(segment)であり,RLCPDUにRLCSDUの開始も終了も含まない場合に,RLCPDUにはLIフィールドが存在しなかった。図5Aでは,RLCSDUが分割/連結/パディングを経ることなく, 一つのRLCPDUにフレーミングされる場合に,LIフィールドを使用しない。RLCPDUが一つの完全なRLCSDUを含まず,かつRLCSDUの開始又は終了を含まないことを示す必要がある。」(段落【0023】)i 「図6Aは,従来のRLCフレーミング技術により,一つのRLCSDUが複数のRLCPDUに分割される状況を示す。…RLCSDUの開始や終了を含まないRLCPDU615にLIフィールドを挿入しないと,受信器は,RLCPDU615のデータフィールドに含まれたセグメントが,一つの完全なRLCSDUを構成するか,或いは以前及び以後のRLCPDUのセグメントと結合して一つのRLCSDUを構成するか判定できない。したがって,後述する本発明の望ましい実施形態では,RLCSDUの開始や終了が含まれないRLCPDU(以下,“中間(intermediate)PDU'とする)を示すために,予め定められたLIの新たな値を定義する。例えば‘1111 110’を予め定められたLIの新たな値として定義する。予め定められたLIの新たな値が挿入されたRLCPDUは,中間RLCPDUとして認識される。」(段落【0024】),「図6Bは,本発明の望ましい実施形態により,予め定められたLIを用いて一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割す CPDUは,中間RLCPDUとして認識される。」(段落【0024】),「図6Bは,本発明の望ましい実施形態により,予め定められたLIを用いて一つのRLCSDUを複数のRLCPDUに分割する状況を示す。図6Bを参照すると,一つのRLCSDU625がSN‘x’,‘x+1’,‘x+2’である3個のRLCPDU630,635,640に分割される。すると,第1のRLCPDU630にはFフィールドが‘1’に設定され,予め定められたLI値‘1111 100’が第1のRLCPDU630に挿入され,このRLCPDU630のデータフィールドの第1のバイトがRLCSDU625の第1 のバイトに対応することを示す。第2のRLCPDU635にはRLCSDU625の開始も終了も含まれずに中間部分のみを含んでいるため,Fフィールドが‘0’に設定され,予め定められたLI値‘1111 110’が第2のRLCPDU635に挿入されて前記RLCPDU635が中間RLCPDUであることを示す。第3のRLCPDU640には,RLCSDU625の終了,例えばデータフィールドの35番目のバイトまでであることを示すLI値‘0100 011’が含まれる。」(段落【0025】)(イ) 本件発明1の特許請求の範囲(請求項8)の文言と本件明細書の「発明の詳細な説明」の前記(ア)の記載事項(各図面を含む。)を総合すれば,本件明細書には,①パケットサービスを支援する移動通信システム(無線データパケット通信システム)において,音声コーデックから発生した音声フレームをインターネットプロトコルを用いて音声パケットの形態で伝送する通信技術であるVoIPを提供するに当たって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式(上位階層から受 生した音声フレームをインターネットプロトコルを用いて音声パケットの形態で伝送する通信技術であるVoIPを提供するに当たって,従来技術によるVoIP通信方式でRLCフレーミング方式(上位階層から受信されたRLCSDUを無線チャンネルを通じて伝送するために適合したサイズに処理する動作)を使用する場合,大部分のRLCSDUが,分割又は連結せず,一つのRLCSDUは一つのRLCPDUで構成されるにもかかわらず,既存のRLCフレーミング動作では,少なくともRLCSDUの開始を示すLI(長さインジケータ)フィールドとその終了を示すLIフィールドが常に要求されるといったように,不必要なLIフィールドが挿入され,それによって限定された無線リソースが非効率的に使用されるという問題点が発生すること,②本件発明1の目的は,従来技術による上記問題点を解決するために,RLCPDU(無線リンク制御階層 のプロトコルデータユニット)のヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する装置を提供することにあること,③本件発明1は,上記目的を達成するための手段として,「一つの完全なRLCSDUを分割/連結/パディングせずに,一つのRLCPDUにフレーミングが可能である場合」に,そのことをRLCPDUのデータフィールドに1ビット情報で示す構成(構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」の構成)を採用することによって,そのRLCSDUの分割/連結/パディングを示すための追加情報の挿入(「LIフィールド」の使用)を不要とし,RLCPDUが「RLCSDUの開始や終了が含まれない,RLC 採用することによって,そのRLCSDUの分割/連結/パディングを示すための追加情報の挿入(「LIフィールド」の使用)を不要とし,RLCPDUが「RLCSDUの開始や終了が含まれない,RLCSDUの中間セグメントのみ」を含む場合に,そのことを予め定められたLIの新たな値に設定されたLIフィールドで示す構成(構成要件Dの「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成及び構成要件Fの「前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」される構成)を採用することによって,RLCSDUの分割動作を可能とし,これによりヘッダーサイズを減少させて無線リソースを効率的に使用する効果を奏することが開示されているものと認められる。 イ本件発明1と代替的Eビット解釈との関係(ア) 本件発明1の構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれ る場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」の構成及びその効果(前記ア(イ)③)は,代替的Eビット解釈において,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを示し,長さインジケータが用いられないこと(前記(1)イ(ア)②及び③)を規定し,また,構成要件Dの「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さイ 示し,長さインジケータが用いられないこと(前記(1)イ(ア)②及び③)を規定し,また,構成要件Dの「前記PDUの前記データフィールドが前記SDUの中間セグメントを含む場合,少なくとも一つの長さインジケータ(LI)フィールドが存在することを示すように前記1ビットフィールドを設定する1ビットフィールド設定部」の構成及び構成要件Fの「前記LIフィールドは前記PDUが前記SDUの最初のセグメントでも最後のセグメントでもない中間セグメントを含むことを示す予め定められた値に設定」される構成は,代替的Eビット解釈において,PDU(RLCPDU)がSDUのセグメントを含むが,SDUの最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合には,「長さインジケータ」は,「111 1110」の値を持つ7ビットの長さインジケータ又は「111 1111 1111 1110」の値を持つ15ビットの長さインジケータが用いられること(前記(1)イ(ア)④)を規定したものであると認められる。 したがって,本件発明1は,代替的Eビット解釈を具現化した発明であるというべきである。 (イ)a これに対し原告は,本件発明1の構成要件Bの「前記SDUが一つのPDUに含まれるか否かを判定」とは,「SDUが一つのPDUに完全に含まれるかどうか(一致するかどうか)」を判定することを意味するのに対し,本件技術仕様書V6.9.0の4.2. 1.2.1項の「RLCSDUがUMDPDUの利用可能なスペースの長さより大きい場合」に「RLCSDUを適当なサイズのUMDPDUに分割する。」との記載は,4.2.1.2.1項記載の判定方式が,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定 分割する。」との記載は,4.2.1.2.1項記載の判定方式が,SDUの分割が必要か否かを決定することを目的とし,SDUがPDUの利用可能な領域よりも大きいか否か(SDUとPDUの大小関係)を判定する方式を意味するものであり,SDUが一つのPDUに完全に含まれる(一致する)か否かを判定する方式とは異なるものであるから,本件技術仕様書V6. 9.0には,構成要件Bの開示がない旨主張する。 しかしながら,本件技術仕様書V6.9.0の9.2.2.5項には,「代替的Eビット解釈」の下において,最初のオクテットに含まれるEビットが「0」の場合は,「次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU」であることを,「1」の場合は,「次のフィールドは,長さインジケータとEビット」であることを示すこと(前記1(1)イ(ア)②)が記載されており,上記記載は,SDUがPDUに完全に含まれる(一致する)か否か(「分割,連結,パディングされていない完全なSDU」か否か)の判定を行うことを前提に,その判定結果に従ってEビットを上記のように設定することを規定するものといえるから,構成要件Bの「SDUが一つのプロトコルデータユニット(PDU)に含まれるか否か」を「判定」する構成を開示するものというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 b また,原告は,構成要件Dにいう「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,①パディングが生じている場合,②連結が生じている場合,③分割,連結及びパディングのいずれも生じていない場合を全て対象とするものであるから,構成要件Dを充足すると いうためには,上記①又は②の場合であっても,「PDUが分割,連結又はパディングなしにSDUを完全に含むことを示すように1ビットフィールドが するものであるから,構成要件Dを充足すると いうためには,上記①又は②の場合であっても,「PDUが分割,連結又はパディングなしにSDUを完全に含むことを示すように1ビットフィールドが設定」されなければならないのに対し,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈においては,上記③の場合にのみ,PDUが完全なSDUを含むことを示すように1ビットフィールドが設定されるのであるから,構成要件Dの構成は,本件技術仕様書V6.9.0記載の代替的Eビット解釈とは異なる旨主張する。 しかしながら,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合に,前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含むことを示すように前記1ビットフィールドを設定」との文言,本件明細書の段落【0022】及び図5Aによれば,構成要件Dの「前記SDUが一つのPDUに含まれる場合」とは,「前記PDUが分割,連結,パディングなしに前記データフィールドに前記SDUを完全に含む」場合(上記③の場合)のみを意味し,SDUが連結されてPDUに格納されている場合やSDUがパディングとともにPDUに格納されている場合は,これに含まれないと解すべきであるから,原告の主張は,その前提を欠くものとして,採用することができない。 (3) 本件製品2及び4についての本件発明1の技術的範囲の属否についてア本件製品2及び4が本件発明1の構成要件A及びHを充足することは,前記争いのない事実等(3)イ(ア)のとおりである。 そして,本件製品2及び4が,本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であり,代替的Eビット解釈に基づく機能を実施する構成を備えていること(前記(1)ウ),本件発明1が代替的Eビット解釈を具現化した発明であること(前 び4が,本件技術仕様書V6.9.0に準拠した製品であり,代替的Eビット解釈に基づく機能を実施する構成を備えていること(前記(1)ウ),本件発明1が代替的Eビット解釈を具現化した発明であること(前記(2)イ(ア))によれば,本件製品2及び4 は,本件発明1の構成要件BないしGを充足するものと認められる。 以上によれば,本件製品2及び4は,本件発明1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 イ(ア) これに対し原告は,本件技術仕様書V6.9.0に構成要件B及びDの開示がないことを理由に,本件製品2及び4が構成要件B及びDを充足しない旨主張する。 しかしながら,前記(2)イ(イ)で述べたとおり,原告の主張は,その前提を欠くものであるから,理由がない。 (イ) また,原告は,本件製品2及び4が本件発明1の技術的範囲に属するというためには,本件製品2及び4が本件発明1の構成要件に記載された全ての機能を現実のネットワーク上で実行していることを立証する必要があるが,代替的Eビット解釈は,通常Eビット解釈のオプション的なものであり,通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定していることについての立証がないから,本件各製品が本件発明1の技術的範囲に属さない旨主張する。 しかしながら,本件製品2及び4は,本件発明1の構成要件を全て充足し,代替的Eビット解釈を実施する構成を備えている以上,本件発明1の技術的範囲に属するものと認められ,現実のネットワーク上で通信事業者が代替的Eビット解釈を使用するようにネットワークを設定しているかどうかは本件発明1の技術的範囲の属否に影響を及ぼすものではないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) まとめア以上の ットワークを設定しているかどうかは本件発明1の技術的範囲の属否に影響を及ぼすものではないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) まとめア以上のとおり,本件製品1及び3は,本件発明1の技術的範囲に属さないが,本件製品2及び4は,その技術的範囲に属する。そして,本件発明2は,本件発明1の送信装置におけるデータの送信方法の発明であ り,両発明の構成は共通すること(争いがない。)によれば,本件製品1及び3におけるデータ送信方法の構成は,本件発明2の技術的範囲に属さないが,本件製品2及び4におけるデータ送信方法の構成は,その技術的範囲に属するものと認められる。 イ前記アによれば,原告による本件製品1及び3の輸入,販売等は,本件特許権の侵害行為に当たらないというべきである。 2 争点6(権利濫用の成否)について次に,本件事案の内容等に鑑み,被告による本件製品2及び4についての本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利の濫用に当たる旨の原告の抗弁の成否について判断することとする。 (1) 前提事実前記争いのない事実と証拠(甲5,6,12,13,27ないし29,32ないし37,65,85ないし87,109ないし111,乙36,42,53(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア ETSIのIPRポリシー(ア) 第2世代移動通信システム(2G)は,欧州外においては国ごとに規格が異なるばかりか,一つの国の中ですら規格が異なっており,普遍的な運用互換性がなかった。また,米国,日本,欧州は,それぞれ互換性のない規格に従ったシステムを運用していた。そのような状況の中,従来の音声サービスだけでなく,データサービス及びマルチ おり,普遍的な運用互換性がなかった。また,米国,日本,欧州は,それぞれ互換性のない規格に従ったシステムを運用していた。そのような状況の中,従来の音声サービスだけでなく,データサービス及びマルチメディアサービスを提供する第3世代移動通信システム(3G)の普及促進と付随する仕様の標準化を目的として,ETSI(欧州電気通信標準化機構)などの世界の標準化団体が結集し,1998年(平成10年)に3GPPという名称の標準化団体を結成した。 (イ) ETSIは,知的財産権(IPR)の取扱いに関する方針とし て,IPRポリシーを定めている。 一般に,技術の標準化を進めることによって,製品間の互換性を確保し,製造・調達のコストを削減し,また,研究開発の効率化や他社との提携機会の拡大等の効果が見込まれ,さらには,エンドユーザーにとっても,製品・サービスの利便性の向上,製品価格やサービス料金の低減につながるといった意義があると考えられるが,他方で,企業は,知的財産権に基づいて技術の実施を独占することで,競合他社による当該技術の実施を禁止し,自社の売上げの増加を図っているところ,ある特定の知的財産権が標準化された技術の規格に必須とされた場合,当該知的財産権を保有する企業が,その標準規格を使用して製品化を図る他の企業に対し,当該知的財産権の実施を禁止すると脅しつつ,法外な実施料やその他の理不尽なライセンス条件を要求して,これに強制的に同意させるという状況が策出されるおそれがあり,また,他の企業は,当該知的財産権の実施許諾を得られない結果,既に標準規格の適用のために行った投資(開発投資・設備投資)が無駄になるおそれがあり,ひいては,技術の標準化による普及が著しく阻害される可能性があることを踏まえて,通信分野における技術の標準化の必要性と 準規格の適用のために行った投資(開発投資・設備投資)が無駄になるおそれがあり,ひいては,技術の標準化による普及が著しく阻害される可能性があることを踏まえて,通信分野における技術の標準化の必要性と知的財産権の保有者の権利との間のバランスをとることが要請されている。 ETSIのIPRポリシーは,このような要請に応えることを目的とするものである(3.1項の「方針の目的」参照)。 (ウ) ETSIのIPRポリシーには,次のような規定がある。 aIPRポリシー4.1項は,各会員は,自らが参加する規格技術仕様の開発の間は特に,ETSIに必須IPRについて適時に知らせるため合理的に取り組むものとし,特に,規格又は技術仕様の技術提案を行う会員は,善意をもって,提案が採択された場合に必須 となる可能性のあるその会員のIPRについてETSIの注意を喚起する旨を規定し,4.3項は,4.1項の義務は,ETSIにこの特許ファミリーの構成要素について適時に知らされた場合には,全ての既存及び将来のその特許ファミリーの構成要素につき満たされたとみなされる旨を規定する。 bIPRポリシー6.1項は,特定の規格又は技術仕様に関連する必須IPRがETSIに知らされた場合,ETSIの事務局長は,少なくとも製造(製造で使用するべく,ライセンシー自身の設計で,カスタマイズした部品及びサブシステムを製造又は過去から引き続き製造する権利を含む。),製造した機器の販売,賃貸,処分,修理又は使用,動作及び方法の使用の範囲で,当該IPRにおける取消不能なライセンスを「公正,合理的かつ非差別的な条件」(FRAND条件)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3か月以内に保証することを,当該IPRの所有者に直ちに求めるものとする旨,上記保証は,ライセンスの 公正,合理的かつ非差別的な条件」(FRAND条件)で許諾する用意があることを書面で取消不能な形で3か月以内に保証することを,当該IPRの所有者に直ちに求めるものとする旨,上記保証は,ライセンスの相互供与に同意することを求めるという条件に従い行われる場合がある旨を規定し,6.2項は,6.1項の保証は,保証が行われた時点で指定したIPRを除外する旨を明示する書面がある場合を除き,その特許ファミリーの全ての既存及び将来の必須IPRに適用されるものとする旨を規定し,6.3項は,要請されたIPRの所有者の保証が許諾されない場合,委員会の委員長は,適切な場合,ETSI事務局と協議の上,問題が解決するまで,委員会が規格又は技術仕様についての作業を停止すべきかどうかについて判断し,「および/または」関連の規格または技術仕様の承認を行う旨を規定する。 cIPRポリシー15項6は,IPRに適用される「必須」とは,(商業的ではなく)技術的な理由で,標準化の時点で一般に利用可 能な通常の技術慣行および最新技術を考慮し,IPRに抵触せずに規格に準拠する機器又は方法を製造又は販売,賃貸,処分,修理,使用または動作できないことを意味する旨を規定する。 dIPRポリシー12項は,IPRポリシーはフランス法に準拠する旨を規定する。 (エ) IPRポリシーを補足する「IPRについてのETSIの指針」(甲16)には,次のような規定がある。 aIPRについてのETSIの指針1.1項は,「本指針の主な特徴は,次のように簡略化できる」と規定する。 「・会員は,ライセンスの許諾を拒否する権利を含む,自らが保有するIPRを保持しその利益を得る権利を完全に有する。 ・ETSIは,ETSIの技術的な目的に最も資する解決策に基づく規格および技術仕様を作成す は,ライセンスの許諾を拒否する権利を含む,自らが保有するIPRを保持しその利益を得る権利を完全に有する。 ・ETSIは,ETSIの技術的な目的に最も資する解決策に基づく規格および技術仕様を作成することを目的としている。 ・この目的を達成するに当たり,ETSIのIPRについての方針では,通信分野での一般利用の標準化の必要性と,IPRの所有者の権利との間のバランスを取ることが求められる。 ・IPRについての方針は,規格の準備および採用,適用への投資が,規格または技術仕様についての必須IPRを使用できない結果無駄になる可能性があるというリスクを軽減するためのものである。 ・よって,規格作成過程の可能な限り早期に,必須IPRの存在を知っていることが,特にライセンスが公正,合理的かつ非差別的な(FRAND)条件を利用できない場合に必要である。」bIPRについてのETSIの指針1.4項は,ETSIのIPRについての方針は,機関としてのETSI及びその会員,事務局の 権利及び義務を定義するものであり,ETSIの非会員にも,方針の下で特定の権利はあるが,法的な義務は有さない旨を規定し,同項に掲げる「表」中には,次のような記載がある。 「会員の権利」「・自らのIPRを規格に含めることを拒否すること(8.1項及び8.2項)。 ・規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること(6.1項)。」「会員の義務」「・ETSIに,自らのIPR及び他者の必須IPRについて知らせる(4.1項)。 ・必須IPRの所有者は,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許諾することを保証することが求められる(6.1項)。」「第三者の権利」「・第三者には,必須IPRの所有者として,又はETSI規格若しく 有者は,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許諾することを保証することが求められる(6.1項)。」「第三者の権利」「・第三者には,必須IPRの所有者として,又はETSI規格若しくは文書のユーザーとして,ETSIのIPRについての方針の下で,次の特定の権利を有する。 ○少なくとも製造及び販売,賃貸,修理,使用,動作するため,規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること(6.1項)。」イ本件FRAND宣言に至るまでの経緯(ア) ETSIの会員である被告は,1998年(平成10年)12月14日,ETSIに対し,UMTS規格としてETSIが推進しているW-CDMA技術に関し,被告の保有する必須IPRライセンスを,ETSIのIPRポリシー6.1項に従って,「公正,合理的か つ非差別的な条件」(FRAND条件)で許諾する用意がある旨の宣言(甲5)をした。 (イ) 被告は,2005年(平成17年)5月4日,韓国において,本件出願の優先権主張の基礎となる特許出願(優先権主張番号10-2005-0037774)をした。 (ウ) 被告は,2005年(平成17年)5月9日から13日にかけて,3GPPのワーキンググループに対し,その当時の規格を記載した本件技術仕様書V6.3.0について,「RLCUMでの動作時に任意で使用される「代替的Eビット解釈」の導入」及び「RLCPDUがRLCSDUの最初のオクテットでも最後のオクテットでもない場合に「長さインジケータ」に設定する新たな所定値の導入」を要請する旨の変更リクエスト(甲85)を提出した。 その後,上記変更リクエストが採用され,同年6月に発行された3GPP規格の本件技術仕様書V6.4.0(甲87)の「拡張ビット(Eビット)」の項( 要請する旨の変更リクエスト(甲85)を提出した。 その後,上記変更リクエストが採用され,同年6月に発行された3GPP規格の本件技術仕様書V6.4.0(甲87)の「拡張ビット(Eビット)」の項(9.2.2.5項)において,従来からある通常Eビット解釈のオプション規格としての代替的Eビット解釈(非確認モード(UM)でデータを伝送する場合に,シーケンス番号(SN)に続くEビットについて,上位レイヤーのコンフィギュレーションが代替的Eビット解釈を使用することを選択した場合にのみ使用される規格)が記載され,代替的Eビット解釈は,標準規格の一つとされた。 (エ) 被告は,平成18年5月4日,本件出願をした。その後,被告は,平成22年12月10日,本件特許権の設定登録を受けた。 (オ) 被告は,2007年(平成19年)8月7日,ETSIに対し,「IPRの情報についての声明及びライセンスの宣言」と題する書面(甲13)を提出することにより,ETSIのIPRポリシー4.1 項に従って,本件出願の優先権主張の基礎となる韓国出願の出願番号,本件出願の国際出願番号(PCT/KR2006/001699)等に係るIPRが,UMTS規格(TS 25.322等)に関連した必須IPRであるか,又はそうなる可能性が高い旨を知らせるとともに,そのIPRが引き続き必須である範囲で,規格に関し,IPRポリシー6.1項に準拠する条件(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をした。 上記書面には,この保証は,ライセンスを求める者がIPRポリシー6.1項に従い,規格に関し,相互にライセンスを供与することの条件に従い行われる旨,本件FRANDの構成,有効性及び実行は,フランス法に準拠する旨の記載がある。 センスを求める者がIPRポリシー6.1項に従い,規格に関し,相互にライセンスを供与することの条件に従い行われる旨,本件FRANDの構成,有効性及び実行は,フランス法に準拠する旨の記載がある。 ウ本件FRAND宣言後の経緯等(ア) アップル社は,2011年(平成23年)4月,米国において,被告に対し,被告が「iPhone」及び「iPad」に関するアップル社の知的財産権を侵害したと主張して侵害訴訟を提起した。 なお,アップル社主張の知的財産権は,標準規格に必須とされるものではない。 (イ) 前記(ア)のアップル社による米国での訴訟提起の後,被告は,平成23年4月21日,原告による本件各製品の生産,譲渡,輸入等の行為が本件各発明に係る本件特許権の直接侵害又は間接侵害(特許法101条4号,5号)を構成する旨主張して,特許法102条に基づく差止請求権を被保全権利として,原告に対し,本件各製品の生産,譲渡,輸入等の差止め等を求める仮処分命令の申立て(本件仮処分の申立て)をした。 なお,その後,被告は,平成24年9月24日,本件仮処分の申立 てのうち,本件製品1及び3を対象とする部分を取り下げた。 (ウ)a アップル社は,2011年(平成23年)4月29日付け書簡(甲6の1)で,被告に対し,●(省略)●等を明らかにするよう要請した。 b 被告は,2011年(平成23年)5月13日付け書簡(甲6の3)で,アップル社に対し,アップル社が求めるライセンスの条件(対象特許の特定,期間,アップル社が保有する必須特許のクロスライセンスの可能性等)を明らかにすること及び今後の交渉について双方機密扱いで行うよう要請し,さらに,同年6月3日付け書簡(甲6の6)で,被告は,FRAND条件でアップル社にライセンスを提供する用意があるが の可能性等)を明らかにすること及び今後の交渉について双方機密扱いで行うよう要請し,さらに,同年6月3日付け書簡(甲6の6)で,被告は,FRAND条件でアップル社にライセンスを提供する用意があるが,当該ライセンスの条件を規定する前に,機密保持契約を締結することを求める旨を述べた。 アップル社は,同月22日付け書簡(甲32)で,被告に対し,●(省略)●旨を述べた。 これらの経緯を踏まえて,アップル社と被告は,同年7月20日付けで秘密保持契約(以下「アップル社と被告間の秘密保持契約」という。)(甲33)を締結した。 (エ) 被告は,2011年(平成23年)7月25日付け書簡(甲29)で,アップル社に対し,FRAND条件に従って,UMTS規格に必須の被告の保有する特許(出願中のものを含む。)の全世界的かつ非独占的なライセンスを,関連する「●(省略)●%の料率」でライセンス供与する用意ができていることを提示(以下「被告の本件ライセンス提示」という。)し,●(省略)●旨を伝えた。 これに対し,アップル社は,同年8月18日付け書簡(甲34の4)で,被告に対し,●(省略)●との意見を述べるとともに,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社に おいて判断することができるようにするために,アップル社と被告間の秘密保持契約に基づいて,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報を開示するよう要請した。 アップル社の上記意見は,①UMTS規格に不可欠とされる特許のあらゆる所有者が全体として要求できるロイヤルティ料率の合計には上限があると考えられており,被告も別の訴訟において,そのようなロイヤルティ料率 ル社の上記意見は,①UMTS規格に不可欠とされる特許のあらゆる所有者が全体として要求できるロイヤルティ料率の合計には上限があると考えられており,被告も別の訴訟において,そのようなロイヤルティ料率の合計が「約5%」であるべきだと主張しているところ,全世界においてUMTS規格に不可欠と宣言された1889の特許ファミリーのうち,被告が保有しているものがその5.5%に当たる103にすぎないこと(2009年に「FairfieldResourcesInternational」が実施した調査結果)に鑑みると,被告がアップル社に対して要求できるロイヤルティ料率は,高くても0.275%(5%×5.5%)と捉えるべきである,②被告がUMTS規格に不可欠と宣言する特許は移動体通信チップの機能性にのみ関連するものであるから,当該部品の価格あるいは少なくとも通信装置の業界平均価格を基準とすべきであるところ,被告提示のライセンス料率は,●(省略)●を基準とし,その料率に係る数値も上記①の数値をはるかに上回る点で,法外に高いなどというものである。 (オ) 原告は,平成23年9月16日,本件訴訟を提起した。 (カ)a 被告は,2012年(平成24年)1月31日付け書簡(乙36)で,アップル社に対し,●(省略)●などの意見を述べた上で,被告の本件ライセンス提示がアップル社にとって不本意な内容であるならば,アップル社において,真摯な対案を提示するよう要請をした。 b アップル社は,2012年(平成24年)3月4日付け書簡(甲65の1)で,被告に対し,自社が行ったUMTS規格に必須であると被告が主張する日本における三つの特許(特許第4642898号(本件特許),特許第4299270号及び特許第4291328号)に関する分析結果を反映したライセン 社が行ったUMTS規格に必須であると被告が主張する日本における三つの特許(特許第4642898号(本件特許),特許第4299270号及び特許第4291328号)に関する分析結果を反映したライセンス条件を提案するものとして,ライセンス契約書案を添付して,ライセンス契約の申出をした。その概要は,同契約書案(甲65の2)記載のとおり,●(省略)●%をロイヤルティとして支払うという内容のものである。 これを受けて,被告は,同年4月18日付け書簡(乙42)で,アップル社に対し,アップル社の上記ライセンス契約の申出について,●(省略)●ロイヤルティ料率●(省略)●%という金銭的条件が低額であり不合理であること,●(省略)●などを理由に,FRAND条件に基づくライセンス契約の申出に当たらないなどと意見を述べた。 (キ)a アップル社は,2012年(平成24年)9月1日付け書簡(甲109)で,被告に対し,2G,3G及び4G(LTE)に対応する携帯機器標準規格必須特許全体を対象として,クロスライセンスの提案を含むFRAND条件に基づくライセンス許諾の枠組みを提案する用意がある旨を表明した。 b 被告は,2012年(平成24年)9月7日付け書簡(甲111)で,アップル社に対し,アップル社の同月1日付け書簡(甲109)は,●(省略)●などの意見を述べた上で,●(省略)●を提案した。 c アップル社は,2012年(平成24年)9月7日付け書簡(甲110)で,被告に対し,ロイヤルティ料率を算定するに当たって のアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,全てのフィーチャーフォン,スマートフォン及び携帯型タブレットに関する両当事者間の1台当たりのロイヤルティの構成として,携帯機器標準規格必須特許全体のロイヤルティを1台当たり● 基準等を示した上で,全てのフィーチャーフォン,スマートフォン及び携帯型タブレットに関する両当事者間の1台当たりのロイヤルティの構成として,携帯機器標準規格必須特許全体のロイヤルティを1台当たり●(省略)●ドルを上限とすべきであるとの前提に立ち,被告がアップル社に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル),アップル社が被告に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル)とするライセンス案を提示した。 アップル社の上記書簡(甲110)には,①ロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考えとして,「●(省略)●」(訳文1頁33行~2頁4行,3頁1行~8行,20行~21行),②「●(省略)●」(訳文4頁28行~39行)などの記載がある。 エ本件特許の位置付け本件特許は,UMTS規格の本件技術仕様書V6.9.0記載の「代替的Eビット解釈」に準拠した製品の製造,販売等及び方法の使用をするのに避けることのできない必須特許である。 (2) 準拠法について本件は,日本法人である原告が,韓国法人である被告に対し,原告による本件各製品の輸入,販売等について被告が本件特許権侵害に基づく原告に対する損害賠償請求権を有しないことの確認を求める訴訟であり,渉外的要素を含むものであるから,準拠法を決定する必要がある。 本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権は,その法律関係の性質が不法行為であると解されるから,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)17条によってその準拠法が定められることになる。 そして,本件における「加害行為の結果が発生した地の法」(通則法17条)は,本件各製品の輸入,販売が行われた地が日本国内であること,我が国の特許 その準拠法が定められることになる。 そして,本件における「加害行為の結果が発生した地の法」(通則法17条)は,本件各製品の輸入,販売が行われた地が日本国内であること,我が国の特許法の保護を受ける本件特許権の侵害に係る損害が問題とされていることからすると,日本の法律と解すべきであるから,本件には,日本法が適用される。 以上を前提に,被告による本件特許権に基づく損害賠償請求権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて判断することとする。 (3) 権利濫用の成否について原告は,被告が意図的に本件特許について適時開示義務に違反したこと,被告の本件仮処分の申立てが報復的な対抗措置であること,被告が本件FRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許である本件特許権についてのライセンス契約締結義務及び誠実交渉義務に違反し,いわゆる「ホールドアップ状況」(標準規格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用できなくなる状況)を策出していること,かかる被告の一連の行為が独占禁止法に違反することなどの諸事情に鑑みれば,被告が原告に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されない旨主張する。 ア(ア) 我が国の民法には,契約締結準備段階における当事者の義務について明示した規定はないが,契約交渉に入った者同士の間では,一定の場合には,重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当である。 ところで,前記前提事実によれば,①3GPPを結成した標準化団体であるETSI(欧州電気通信標準化機構)の会員である被告は,平成19年8月7日,甲13の書面で,ETSIに対し,本件出願の国際出願番号等に係るIPR(知的財産権)がUMTS Pを結成した標準化団体であるETSI(欧州電気通信標準化機構)の会員である被告は,平成19年8月7日,甲13の書面で,ETSIに対し,本件出願の国際出願番号等に係るIPR(知的財産権)がUMTS規格(3GPP規格)に必須であること,この必須IPRについて,ETSIのI PRポリシー6.1項に準拠するFRAND条件(公正,合理的かつ非差別的な条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(本件FRAND宣言)をしたこと,②IPRについてのETSIの指針1.4項は,会員の義務として,「必須IPRの所有者は,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許諾することを保証することが求められること」(IPRポリシー6.1項),会員の権利として,「規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること」(IPRポリシー6.1項),第三者の権利として,「少なくとも製造及び販売,賃貸,修理,使用,動作するため,規格に関し,公正,合理的かつ非差別的な条件でライセンスが許諾されること」(IPRポリシー6.1項)を定めていることが認められる。 上記①及び②と弁論の全趣旨を総合すると,被告は,ETSIのIPRポリシー6.1項,IPRについてのETSIの指針1.4項の規定により,本件FRAND宣言でUMTS規格に必須であると宣言した本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを希望する申出があった場合には,その申出をした者が会員又は第三者であるかを問わず,当該UMTS規格の利用に関し,当該者との間でFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けた交渉を誠実に行うべき義務を負うものと解される。 そうすると,被告が本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを希望する具体的な申出を受けた場合には,被告 件でのライセンス契約の締結に向けた交渉を誠実に行うべき義務を負うものと解される。 そうすると,被告が本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを希望する具体的な申出を受けた場合には,被告とその申出をした者との間で,FRAND条件でのライセンス契約に係る契約締結準備段階に入ったものというべきであるから,両者は,上記ライセンス契約の締結に向けて,重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当である。 そして,遅くとも,アップル社が,平成24年3月4日付け書簡(甲65の1)で被告に対し,被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許に関するFRAND条件でのライセンス契約の申出をした時点(前記(1)ウ(カ)b)で,アップル社から被告に対するFRAND条件によるライセンスを希望する具体的な申出がされたものと認められ,アップル社と被告は,契約締結準備段階に入り,上記信義則上の義務を負うに至ったものというべきである。 (イ) この点に関し,被告は,①日本法の観点からは,FRAND宣言により誠実交渉義務が生じるのは,ライセンス対象特許の有効性を争うことなく,真にライセンスを受けることを希望する「確定的なライセンスの申出」が必要であると解すべきである,②アップル社の被告に対する平成24年3月4日の申出は,被告の本件特許の抵触性と有効性を争うものであるから,そもそも「確定的なライセンスの申出」に該当しないし,③また,アップル社の上記申出の内容は,「●(省略)●%」という不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申出の外形を形式的に策出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,この点において 略)●%」という不合理に低額なライセンス料率を提示するものであって,交渉が成立しないことを知った上で,申出の外形を形式的に策出しただけの真にライセンスを受ける意思のないものであり,この点においても,上記申出が「確定的なライセンスの申出」に該当しないとして,被告には,本件FRAND宣言に基づく誠実交渉義務が発生していない旨主張する。 しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。 a 上記①及び②についてFRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許についてのFRAND条件によるライセンスを希望する申出は,許諾対象特許の有効性を留保するものであったとしても,その申出の内容が許諾対象特 許が有効であることを前提とする具体的なものであり,FRAND条件によるライセンスを受けようとする意思が明確であるときは,上記申出により,FRAND宣言をした者と上記申出をした者との間で,前記(ア)の信義則上の義務が発生するというべきである。 しかるところ,アップル社の平成24年3月4日付け申出(甲65の1)は,許諾対象特許を本件特許を含む三つの日本国特許に特定し,ライセンス料率等の詳細なライセンス条件を記載したライセンス契約書案(甲65の2)を添付した具体的なものであり,その記載内容に照らし,アップル社におけるFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思が明確であることが認められる。もっとも,上記契約書案の「●(省略)●」には,「●(省略)●」(訳文2頁2行~4行)との記載があり,アップル社の上記申出は,許諾対象特許とされた本件特許の有効性を留保するものといえる。しかし,上記条項の記載内容自体は格別不合理なものではない上,被告がアップル社の子会社である原告に対し本件特許権に基づく本件各製品の輸入,譲渡等の差止めを求 本件特許の有効性を留保するものといえる。しかし,上記条項の記載内容自体は格別不合理なものではない上,被告がアップル社の子会社である原告に対し本件特許権に基づく本件各製品の輸入,譲渡等の差止めを求める本件仮処分の申立てをし,原告がその防御として本件特許の有効性等を争っていること,同仮処分命令申立事件はアップル社の上記申出があった当時も係属中であったこと(弁論の全趣旨)を踏まえると,アップル社が上記申出において本件特許の有効性を留保しているからといって,直ちにアップル社においてFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思がないということはできない。 したがって,被告の主張①及び②は,理由がない。 b 上記③についてアップル社が平成24年3月4日付け申出において提示したライセンス料率(ロイヤルティ料率)は日本国における●(省略)●% というものであるが,そのライセンス料率の数値のみからFRAND条件に適合しない不合理に低額なものであり,アップル社においてFRAND条件によるライセンスを受けようとする意思がないものと断ずることはできないし(前記前提事実に照らすと,上記ライセンス料率は,アップル社が平成23年8月18日付け書簡(甲34の4)で示した全世界におけるUMTS規格に不可欠と宣言された特許ファミリーのうち,被告が保有しているものの割合(前記(1)ウ(エ))を踏まえたものであることがうかがわれる。),アップル社において上記ライセンス料率以外の条件でライセンス契約を締結する意思が全くなかったとまで認めることはできない。 したがって,被告の主張③は,理由がない。 イそこで,被告において前記ア(ア)の信義則上の義務違反があったかどうかについて検討する。 前記前提事実と弁論の全趣旨によれば,①被告は, ない。 したがって,被告の主張③は,理由がない。 イそこで,被告において前記ア(ア)の信義則上の義務違反があったかどうかについて検討する。 前記前提事実と弁論の全趣旨によれば,①被告は,平成23年7月20日付けで秘密保持契約(アップル社と被告間の秘密保持契約)を締結した後,同月25日付け書簡(甲29)で,アップル社に対し,FRAND条件に従って,UMTS規格に必須の被告の保有する特許(出願中のものを含む。)の全世界的かつ非独占的なライセンスを,関連する「●(省略)●%の料率」でライセンス供与する用意ができていることを提示(被告の本件ライセンス提示)し,●(省略)●,その際,被告は,上記ライセンス条件の「●(省略)●%の料率」の算定根拠を示さなかったこと,②アップル社は,同年8月18日付け書簡(甲34の4)で,被告に対し,被告の本件ライセンス提示について,全世界においてUMTS規格に不可欠と宣言された1889の特許ファミリーのうち,被告が保有しているものがその5.5%に当たる103にすぎないこと(「FairfieldResourcesInternational」が実施した調査結果) からすると,被告がアップル社に対して要求できるロイヤルティ料率は,高くても0.275%(5%×5.5%)と捉えるべきであることなどを理由に,被告の本件ライセンス提示に係るライセンス料率が法外な高さであり,FRAND条件に従ったものでないとの意見を述べるとともに,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社において判断することができるようにするために,アップル社と被告間の秘密保持契約に基づいて,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必須 断することができるようにするために,アップル社と被告間の秘密保持契約に基づいて,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報を開示するよう要請したこと,③被告は,平成24年1月31日付け書簡(乙36)で,アップル社に対し,●(省略)●被告の本件ライセンス提示がアップル社にとって不本意な内容であるならば,アップル社において,真摯な対案を提示するよう要請をしたが,その際,被告は,被告の本件ライセンス提示に係るライセンス料率(ロイヤルティ料率)の算定根拠を示さなかったこと,④アップル社は,平成24年3月4日付け書簡(甲65の1)で,被告に対し,被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許について,●(省略)●%をロイヤルティとして支払う旨のFRAND条件でのライセンス契約の申出をしたこと,⑤被告は,同年4月18日付け書簡(乙42)で,アップル社に対し,アップル社の上記④の申出は,日本における三つの特許の個々につきロイヤルティ料率●(省略)●%という金銭的条件が低額であり不合理であること,●(省略)●などを理由に,FRAND条件に基づくライセンスの申出に当たらないなどと意見を述べたこと,⑥アップル社は,同年9月1日付け書簡(甲109)で,被告に対し,2G,3G及び4G(LTE)に対応する携帯機器標準規格必須特許全体を対象として,クロスライセンスの提案を含むFRAND条件に基づくライ センス許諾の枠組みを提案する用意がある旨を表明し,さらに,同月7日付け書簡(甲110)で,被告に対し,ロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,全てのフィーチャーフ みを提案する用意がある旨を表明し,さらに,同月7日付け書簡(甲110)で,被告に対し,ロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,全てのフィーチャーフォン,スマートフォン及び携帯型タブレットに関する両当事者間の1台当たりのロイヤルティの構成として,携帯機器標準規格必須特許全体のロイヤルティを1台当たり●(省略)●ドルを上限とすべきであるとの前提に立ち,被告がアップル社に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル),アップル社が被告に請求できるロイヤルティ料率をその●(省略)●%(1台当たり●(省略)●ドル)とするライセンス案を提示したこと,⑦一方,被告は,同月7日付け書簡(甲111)で,アップル社に対し,上記⑥のアップル社の同月1日付け書簡は,●(省略)●を提案したことが認められる。 これらの認定事実に加えて,本件証拠上,アップル社が平成24年9月7日付け書簡で提示したライセンス案について,被告がいかなる対応をしたのか不明であることを総合すると,①アップル社と被告間の本件特許権についてのライセンス交渉の過程において,被告は,平成23年7月25日付け書簡で,アップル社に対し,本件FRAND条件に従ったライセンス条件として,UMTS規格に必須の被告の保有する特許(出願中のものを含む。)の全世界的かつ非独占的なライセンスについて「●(省略)●%の料率」の提示(被告の本件ライセンス提示)をしたものの,その際には,上記ライセンス条件の算定根拠を示すことがなかった上,その後,アップル社から,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社において判断することができるようにするために,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支 の後,アップル社から,被告の本件ライセンス提示がFRAND条件に従ったものとアップル社において判断することができるようにするために,被告がアップル社に支払うことを求めるロイヤルティ料率を他社も支払っているかの確認を含む情報,被告と他社との間の必 須特許のライセンス契約に関する情報を開示するよう要請があったにもかかわらず,平成24年9月7日に至っても上記ライセンス条件の算定根拠を示すことはなかったこと,②その間,被告は,アップル社が同年3月4日付け書簡で被告がUMTS規格に必須であると宣言した本件特許を含む日本における三つの特許について,●(省略)●%をロイヤルティとして支払う旨のFRAND条件でのライセンス契約の申出をし,さらには,同年9月7日付け書簡でロイヤルティ料率を算定するに当たってのアップル社の基本的な考え,算定基準等を示した上で,クロスライセンスを含む具体的なライセンス案を提示しているにもかかわらず,アップル社が被告の本件ライセンス提示を不本意とするならば,アップル社において具体的な提案をするよう要請するのみで,アップル社が提示したライセンス条件に対する具体的な対案を示していないことが認められる。 上記①及び②に鑑みると,被告は,アップル社の再三の要請にもかかわらず,アップル社において被告の本件ライセンス提示又は自社のライセンス提案がFRAND条件に従ったものかどうかを判断するのに必要な情報(被告と他社との間の必須特許のライセンス契約に関する情報等)を提供することなく,アップル社が提示したライセンス条件について具体的な対案を示すことがなかったものと認められるから,被告は,UMTS規格に必須であると宣言した本件特許に関するFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けて,重要な情報をアップル社に提供し, て具体的な対案を示すことがなかったものと認められるから,被告は,UMTS規格に必須であると宣言した本件特許に関するFRAND条件でのライセンス契約の締結に向けて,重要な情報をアップル社に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務に違反したものと認めるのが相当である。 これに反する被告の主張は,採用することができない。 ウ以上のとおり,被告が,原告の親会社であるアップル社に対し,本件FRAND宣言に基づく標準規格必須宣言特許である本件特許権につい てのFRAND条件でのライセンス契約の締結準備段階における重要な情報を相手方に提供し,誠実に交渉を行うべき信義則上の義務に違反していること,かかる状況において,被告は,本件口頭弁論終結日現在,本件製品2及び4について,本件特許権に基づく輸入,譲渡等の差止めを求める本件仮処分の申立てを維持していること,被告のETSIに対する本件特許の開示(本件出願の国際出願番号の開示)が,被告の3GPP規格の変更リクエストに基づいて本件特許に係る技術(代替的Eビット解釈)が標準規格に採用されてから,約2年を経過していたこと,その他アップル社と被告間の本件特許権についてのライセンス交渉経過において現れた諸事情を総合すると,被告が,上記信義則上の義務を尽くすことなく,原告に対し,本件製品2及び4について本件特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。 3 結論以上によれば,原告の請求は,理由があるから,認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官高橋 彩 裁判官上田真史 (別紙) 決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官高橋 彩 裁判官上田真史 (別紙) 物件目録 1 「iPhone 3GS」 2 「iPhone 4」 3 「iPadWi-Fi+3Gモデル」 4 「iPad 2 Wi-Fi+3Gモデル」 (別紙1)3GPPTS25.322 V6.9.0(抜粋) 1 「4.2.1.2 Unacknowledgedmode (UM) RLCentitiesFigure 4.3 belowshowsthemodeloftwounacknowledgedmodepeerRLCentitieswhenduplicateavoidanceandreorderingisnotconfigured.」 (訳文)「4.2.1.2 アンアクナリッジドモード(UM)RLC エンティティ下記に示す図4.3 は,重複回避及びリオーダリングを有しない2つのアンアクナリッジモード(UM)ピアRLC エンティティを示す。」 TransmittingUMRLCentityTransmissionbufferUM -SAPReceivingUMRLCentityReceptionbufferUM -SAPRadioInterface (Uu )Segmentation &ConcatenationCip M -SAPRadioInterface (Uu )Segmentation &ConcatenationCipheringAddRLCheaderReassemblyDecipheringRemoveRLCheaderDCCH /DTCH – UECCCH /SHCCH /DCCH /DTCH /CTCH /MCCH /MSCH /MTCH – UTRANDCCH /DTCH – UTRANCCCH /SHCCH /DCCH /DTCH /CTCH /MCCH /MSCH /MTCH – UEUE /UTRANUTRAN /UE Figure 4.3a:Modeloftwounacknowledgedmodepeerentitiesconfiguredforusewithduplicateavoidanceandreordering」 2 「4.2.1.2.1 TransmittingUMRLCentityThetransmittingUM-RLCentityreceivesRLCSDUsfromupperlayersthroughtheUM-SAP.ThetransmittingUMRLCentitysegmentstheRLCSDUi LCSDUsfromupperlayersthroughtheUM-SAP.ThetransmittingUMRLCentitysegmentstheRLCSDUintoUMDPDUsofappropriatesize, iftheRLCSDUislargerthanthelengthofavailablespaceintheUMDPDU.」 (訳文)「4.2.1.2.1 送信UMRLC エンティティ送信UM-RLC エンティティは,上位レイヤからUM-SAP を通じてRLCSDUs を受信する。送信UMRLC エンティティは,もしRLCSDU がUMDPDU の利用可能なスペースの長さより大きい場合には,RLCSDU を適当なサイズのUMDPDUs に分割する。」 3 「9.2.1.3 UMDPDUTheUMDPDUisusedtotransferuserdatawhenRLCisoperatinginunacknowledgedmode. Thelengthofthedatapartshallbeamultipleof 8bits. TheUMDPDUheaderconsistsofthefirstoctet, whichcontainsthe"SequenceNumber". TheRLCheaderconsistsofthefirstoctetandalltheoctetsthatcontain "LengthIndicators". 」 (訳文)「9.2.1.3 UMDPDUUMDPDU は,RLC がU dalltheoctetsthatcontain "LengthIndicators". 」 (訳文)「9.2.1.3 UMDPDUUMDPDU は,RLC がUM モードで動作しているときに,ユーザーデータを転送するために用いられる。データパートの長さは,8ビットの倍数である。UMDPDUヘッダは,「一連番号」を含む最初のオクテットで構成される。RLC ヘッダは,最初のオクテットと,「長さインジケータ」を含むすべてのオクテットで構成される。」 Oct1ELengthIndicatorDataPADLastOctetELengthIndicator(Optional) (1)...ESequenceNumber(Optional)(Optional) Figure 9.2: UMDPDU 4 「9.2.2.5 Extensionbit(E)Length:1bit.TheinterpretationofthisbitdependsonRLCmodeandhigherlayerconfiguration:- IntheUMDPDU, the "Extensionbit" inthefirstoctethaseitherthenormalE-bitinterpretationorthealternativeE-bitinterpretationdependingonhigherlayerconfiguration. The "Extensionbit" inalltheotheroctectsalwayshasthenor dingonhigherlayerconfiguration. The "Extensionbit" inalltheotheroctectsalwayshasthenormalE-bitinterpretation.- IntheAMDPDU, the "Extensionbit" alwayshasthenormalE-bitinterpretation. NormalE-bitinterpretation: BitDescription Thenextfieldisdata,piggybackedSTATUSPDUorpadding ThenextfieldisLengthIndicatorandEbit AlternativeE-bitinterpretation:BitDescription ThenextfieldisacompleteSDU,whichisnotsegmented,concatenatedorpadded. ThenextfieldisLengthIndicatorandEbit」(訳文)「9.2.2.5 エクステンションビット(E)長さ:1ビットこのビットの解釈は,RLC のモード及び上位レイヤーのコンフィギュレーションに依存する。 - UMDPDU において,最初のオクテットに含まれる「拡張ビット」は,上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて,通常E ビット解釈又は代替的Eビット解釈のいずれかを有する。他の全てのオクテットに含まれる「拡張ビット」は 初のオクテットに含まれる「拡張ビット」は,上位レイヤーのコンフィギュレーションに応じて,通常E ビット解釈又は代替的Eビット解釈のいずれかを有する。他の全てのオクテットに含まれる「拡張ビット」は,常に通常Eビット解釈を有する。 - AMDPDU において,「拡張ビット」は,常に通常E ビット解釈を有する。 通常E ビット解釈: Bit記述 次のフィールドは,データ,ピギーバック状態のPDU,又はパディング 次のフィールドは,長さインジケータとE ビット 代替的E ビット解釈:Bit記述 次のフィールドは,分割,連結,パディングされていない完全なSDU 次のフィールドは,長さインジケータとE ビット」 5(1) 「9.2.2.8 LengthIndicator (LI)Unlessthe "Extensionbit" indicatesthataUMDPDUcontainsacompleteSDUwhichisnotsegmented, concatenatedorpadded, a "LengthIndicator" isusedtoindicatethelastoctetofeachRLCSDUendingwithinthePDU.」 (訳文)「9.2.2.8 長さインジケータ(LI)「エクステンションビット」が,UMDPDU が分割,連結,パディングのいずれもなされていない完全なSDU を含むことを示していなければ,「長さインジケータ」は,PDU の中のそれぞれのRLCSD エクステンションビット」が,UMDPDU が分割,連結,パディングのいずれもなされていない完全なSDU を含むことを示していなければ,「長さインジケータ」は,PDU の中のそれぞれのRLCSDU が終わる最後のオクテットを示すものとして用いられる。」 (2) 「Inthecasewherethe "alternativeE-bitinterpretation" isconfiguredforUMRLCandanRLCPDUcontainsasegmentofanSDUbutneitherthefirstoctetnorthelastoctetofthisSDU:-ifa 7-bit "LengthIndicator" isused:-the "LengthIndicator" withvalue "111 1110" shallbeused.-ifa 15-bit "LengthIndicator" isused:- the "LengthIndicator" withvalue "111 1111 1111 1110" shallbeused.」 (訳文)「UMRLC のための「代替的Eビット解釈」が設定され,かつ,RLCPDU がSDU のセグメントを含むがSDU の最初のオクテットも最後のオクテットも含まない場合であって,-7ビットの「長さインジケータ」が用いられるときには,値「111 1110」を持つ「長さインジケータ」を用い,-15ビットの「長さインジケータ」が用いられるときには,値「111 1111 11111110」を持つ「長さインジケータ」を用いる。」 」を持つ「長さインジケータ」を用い,-15ビットの「長さインジケータ」が用いられるときには,値「11111111111110」を持つ「長さインジケータ」を用いる。」 (別紙)本件明細書の図面 【図1】 【図2C】 【図3】 【図4】 【図5A】【図5B】 【図6A】 【図6B】

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