令和5(わ)289 傷害致死、傷害

裁判年月日・裁判所
令和6年9月27日 高知地方裁判所
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判決文本文4,377 文字)

令和5年(わ)第289号、同第273号傷害致死、傷害被告事件 主文 被告人A及び被告人Cをそれぞれ懲役8年に、被告人Bを懲役8年6月に処する。 被告人3名に対し、未決勾留日数中各220日を、それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人3名は、共同で薬物リキッドを販売していたところ、令和5年9月25日午後6時30分過ぎ頃、その購入を申し込んできたF及び同人の友人であるGが、その代金を支払うことなく商品である薬物リキッドを持ち逃げしたことから、F及びGに対してその制裁のために暴行を加えようと考え、分離前の相被告人D(以下「D」という。)及び同E(以下「E」という。)と共謀の上、第1 令和5年9月26日午後8時30分頃から同日午後9時頃までの間に、高知市(住所省略)南西約150メートル先路上において、G(当時21歳)に対し、その顔面等を拳で多数回殴り、足で多数回蹴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療約4週間を要する鼻骨骨折、頭部・顔面・四肢打撲傷及び頸椎捻挫の傷害を負わせ(同年10月18日付け起訴状公訴事実)、第2 令和5年9月26日午後9時30分頃から同月27日午前1時頃までの間に、同所において、F(当時22歳)に対し、その顔面等を拳と掌で多数回殴り、足で多数回蹴り、その臀部を安全靴を履いた足で1回蹴るなどの暴行を加え、同人に頭部打撲傷、外傷性くも膜下出血、鼻骨骨折、多量鼻出血等の傷害を負わせ、よって、その頃、同所において、同人を前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた(同年11月8日付け起訴状公訴事実)。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人3名が、いずれも他の共犯者2名と共謀の上、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせた傷害の事案(判示第 り死亡させた(同年11月8日付け起訴状公訴事実)。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人3名が、いずれも他の共犯者2名と共謀の上、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせた傷害の事案(判示第1)と、その直後に、 別の被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせ、外傷性ショックにより死亡させた傷害致死の事案(判示第2)である。 2 そこで、本件の量刑判断の中心となる重い判示第2の傷害致死の事案について、共犯として関与し、動機が集団リンチであり、被害者の遺族と示談等をしておらず、被告人に見るべき前科がない事案を同種事案として犯情を検討し、更に判示第1の傷害の事案の犯情や各被告人の個別の犯情及び一般情状を検討して被告人3名に対する量刑を決める。 3 まず、判示第2の傷害致死の事案について見ると、被告人らは、共犯者であるDに対して被害者であるFの捜索を依頼し、Dの知人を通じてFを呼び出した上、同人を人気のない犯行現場に連れ出すなど、一定の計画を立てた上で犯行に臨んでいる。犯行態様は、無抵抗のFに対し、複数名で取り囲んだ上、その頭部や顔面等の重要な部位を数十回にわたって殴る蹴るなどして一方的に暴行を加えているもので、強度かつ執拗である。 かかる犯行は、本件各犯行の被害者であるF及びGが被告人3名の薬物リキッドを持ち逃げしたことが発端となってはいるが、これについて制裁を加えるため集団で暴行を加えるというのは余りに社会規範から外れた暴力的な発想であって、動機や経緯に酌むべき点を見出すことはできない。 被害者であるFは、前記のとおり他に人気のない場所で激しい暴行を受けて重傷を負い、適切な救命活動もなされないまま22歳という若さで命を失ったものであり、同人が受けた肉体的・精神的苦痛が大きいことは明らかであって、その無念は察するに余 気のない場所で激しい暴行を受けて重傷を負い、適切な救命活動もなされないまま22歳という若さで命を失ったものであり、同人が受けた肉体的・精神的苦痛が大きいことは明らかであって、その無念は察するに余りある。被害結果は取り返しのつかない重大なものであり、愛する家族を奪われたその遺族らが厳重処罰を望むのは当然である。 加えて、被告人らは、判示第2の犯行後、被告人Aが単独で犯行に及んだと偽装することを合意し、被告人Aのみを犯行現場に残して立ち去った後、犯行時に着用していた衣服を処分するなどの証拠隠滅行為を行っており、犯行後の事情も芳しくない。 もっとも、集団リンチによる傷害致死の事案は、複数の共犯者が関与するもので、被害者に対して一方的に激しい暴行が加えられるのが通常であり、同種事案に、判示第2の犯行で使用された安全靴や竹の棒に比べて危険性が高い刃物や火気等の凶器を危険な用法で使用した事案や、長期間にわたり常習的に同一の被害者に激しい暴行を加えた事案など犯行態様が本件より苛烈なものが相当数存在することを踏まえれば、同種事案の中における判示第2の犯行の犯情は中程度に属するといえる。 4 判示第1の犯行も、判示第2の犯行の直前にこれと同様の動機・経緯で敢行したもので、同様に無抵抗のGに対して激しい暴行を一方的に加えており、同人が負った傷害の程度も比較的重いから、軽く見ることはできない。 5 次に、各被告人個別の犯情及び一般情状について検討する。 ⑴ 被告人Bは、本件各犯行の前日又は当日には、Dに被害者らの所在捜索を依頼したり、共同で制裁を加えることをEと話し合ったりするなどして薬物リキッドの販売には直接関係していないDとEを犯行に関与させたり、犯行場所として複数の候補地を選定して他の被告人らに示したりしており、また、犯行の で制裁を加えることをEと話し合ったりするなどして薬物リキッドの販売には直接関係していないDとEを犯行に関与させたり、犯行場所として複数の候補地を選定して他の被告人らに示したりしており、また、犯行の際に着用する目出し帽等を用意するなど、本件各犯行を準備するに当たって被告人Aや被告人Cよりも主体的かつ積極的に行動している。また、被告人Bは、判示第2の犯行においてはFに対して顔面を右拳で強く3回殴ったり竹の棒で頭部を殴打したりするなどの暴行を加え、判示第1の犯行においてもGに対して足を複数回蹴るなどの暴行を加えており、本件各犯行で果たした役割は、被告人3名よりも優位な立場で本件各犯行を主導したDや、被害者らに対して相当に激しい暴行を加えたEに比べれば軽いものの、被告人A及び被告人Cに比べれば重い。また、被告人Bは、本件各犯行と種類は異なるものの、大麻取締法違反の罪で令和3年5月に懲役6月(執行猶予3年)に処せられ、その執行猶予期間中であったにもかかわらず本件各犯行に及んでおり、社会規範を軽視する態度が認められる。 一方、被告人Bについては、本件各犯行を認め、その被害者又は遺族に対する謝罪文を作成したり、被害弁償金として判示第2の犯行について合計100万円、判示第1の犯行について40万円をそれぞれ準備するなどして反省の気持ちを示していること、両親が更生を見守る旨の陳述書を作成したこと、まだ若年であることなどが有利な事情として認められる。 ⑵ 被告人Aは、Dの指示を受けて暴行に使用するペットボトルを用意し、安全靴に履き替えるなどの準備をした上で本件各犯行に臨んでいるほか、判示第2の犯行においてはFを複数回殴って同人の顔に拳を当てたり、安全靴を履いた足で同人の臀部を蹴ったりし、判示第1の犯行においてもGの腕を取って共犯者の 準備をした上で本件各犯行に臨んでいるほか、判示第2の犯行においてはFを複数回殴って同人の顔に拳を当てたり、安全靴を履いた足で同人の臀部を蹴ったりし、判示第1の犯行においてもGの腕を取って共犯者の暴行を助けるなど、相応に積極的に本件各犯行に加わっている。もっとも、本件各犯行における被告人Aの役割は、DやEよりは軽く、被告人Bよりもやや軽い。 一方、被告人Aについては、本件各犯行を認め、Fの遺族に対し謝罪文を作成するなどして反省の態度を示していること、母親が出所後の監督に尽力する旨の陳述書を作成していること、若年で前科がないことなどが有利な事情として認められる。なお、被告人Aの弁護人が指摘するように、被告人Aは、判示第2の犯行に際してFに対する救命措置をとっているところ、その手法の適切さ等には疑問があるものの、同人の死を回避したいという思いを行動に移したという限度では有利な事情とみることができる。 ⑶ 被告人Cは、本件各犯行に当たって被害者らを呼び出すことには関与しておらず、特段の準備行為をしたこともうかがわれないなど、当初は積極的に本件各犯行を行おうとした様子はないものの、判示第2の犯行ではFの体を倒したり、ズボンとパンツを膝まで下ろし、足や臀部を複数回蹴ったりし、判示第1の犯行でもGの下半身を複数回蹴るなど、いずれもそれなりの暴行を加えており、本件各犯行で果たした役割は軽いものではない。もっとも、被告人Cは、Dの意向に反した行動をとり難いと考えてこれらの暴行に及んでおり、以上で 検討した被告人Cの本件各犯行への関与の態様に照らせば、本件各犯行におけるその役割は、被告人Aと比べて同等ないしやや軽い。 また、被告人Cについては、本件各犯行を認め、判示第2の犯行について被害弁償金として合計100万円を準備し、被害者遺族に対す ば、本件各犯行におけるその役割は、被告人Aと比べて同等ないしやや軽い。 また、被告人Cについては、本件各犯行を認め、判示第2の犯行について被害弁償金として合計100万円を準備し、被害者遺族に対する謝罪文を作成するなどして反省の態度を示していること、母親が被告人Cのために陳述書を作成したこと、若年で前科がないことなどが有利な事情として認められる。 6 以上で検討したところを基に、被告人3名の量刑を検討する。同種事案の量刑傾向を見ると、概ね懲役4年から12年までの範囲に分布し、中間値は懲役8年である。前記のとおり、本件の犯情は同種事案の中では中程度に属するものといえ、判示第2の犯行の直前に敢行された判示第1の事案の犯情や、各被告人の個別の犯情及び一般情状を考慮すれば、被告人3名に対し、それぞれ主文の刑をもって臨むのが相当である。 (求刑:被告人3名についていずれも懲役12年、被害者参加人の科刑意見:被告人3名についていずれも懲役15年)(被告人Aの弁護人の科刑意見:寛大な判決)(被告人Bの弁護人の科刑意見:寛大な判決)(被告人Cの弁護人の科刑意見:懲役8年)令和6年9月27日高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官稲田康史 裁判官大友真紀子 裁判官徳舛純一

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