【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理 由 検察官の上告趣意のうち、第一の判例違反をいう点の所論昭和一三年三月七日大 審院
主 文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理 由 検察官の上告趣意のうち、第一の判例違反をいう点の所論昭和一三年三月七日大 審院判決は、禁止漁具による採捕に関するもので、水産資源保護法二五条の採捕の 意義が問題となつている本件とは事案を異にし、本件に適切ではないから、右判例 違反の主張は、同第二の法令違反の主張とともに、刑訴法四〇五条の上告理由にあ たらない。 判例違反をいう点のその余の所論各判例は、控訴裁判所たる高等裁判所の判例で あるが、その示している法律判断については、未だ当裁判所の判例がない(昭和二 八年七月三一日第二小法廷判決、刑集七巻七号一六六六頁、および昭和二九年三月 四日第一小法廷決定、刑集八巻三号二二八頁は、有毒物又は爆発物を使用して水産 動植物を採捕することを禁止した昭和二六年法律第三一三号による改正前の漁業法 七〇条、六八条、六九条に関するもので、所論高等裁判所の各判例とは事案を異に するものである。)ので、所論の高等裁判所の判例についてみると、所論各判例は、 水産資源保護法二五条にいう「採捕」の意義に関し、いずれも、採捕行為を指称す る旨判示しているものであり、原判決は、論旨のように、これら高等裁判所の各判 例と相反する判断をしているものであるから、所論判例違反の主張は、その限度に おいて、刑訴法四〇五条三号の上告適法の理由にあたるものである。 水産資源保護法は、元来、「水産資源の保護培養を図り、且つ、その効果を将来 にわたつて維持することにより、漁業の発展に寄与すること」を目的とするもので あり、同法第二章第三節にさく河魚類の保護培養の項を設け、同法二〇条は、さく 河魚類のうち、さけおよびますの増殖を図るため、人工ふ化放流につき定め、‘同 - 1 - 法二二条ないし二四条に とするもので あり、同法第二章第三節にさく河魚類の保護培養の項を設け、同法二〇条は、さく 河魚類のうち、さけおよびますの増殖を図るため、人工ふ化放流につき定め、‘同 - 1 - 法二二条ないし二四条には、さく河魚類の通路を保護する規定を置き、さけおよび ますをして内水面を無事さく上させ、自然の産卵繁殖をはかるほか、人工ふ化放流 によるさけおよびますの増殖を国の事業としており、同法二五条は、再生産を確保 することなくさけを捕えることによる水産資源の枯渇を防止するため、同条但書の 免許又は許可に基づいて採捕する場合を除き、内水面における、さく河魚類のうち さけの採捕を禁止している。 さけがさく河するのは、産卵を目的とし、産卵に適するまでに成長したさけが、 その生れた河川に回帰するものであるが、さく河にあたり、さけは群をなして、や ゝ密度の高い状態で上流に向つて移動し、自然の産卵適合場所あるいは人工ふ化用 の親鮭捕獲装置設置場所に近づくにつれ、更に密度を増すもので、さけの密度の高 い場所では、本件被告人の所為(親鮭捕獲用建網設置場所から約二八〇〇米下流で の所為)のように、俗にひつかけ針と称する仕掛けをつけたつり竿を使用し、おも りの遠心力によつてひつかけ針を河中に投げ込み手許に引き寄せる方法でも、さけ を捕獲することが充分可能となりうる。ひつかけ針で捕獲された場合、さけの再生 産が不可能になることは当然であるが、ひつかけ針の投げ込み、引き寄せが、さけ を脅し、傷つける可能性のあることは容易に推認しうるところであり、さけの捕獲 に至らない場合でも、ひつかけ針の投げ込み、引き寄せの所為により、さけの再生 産が阻害される弊害がないとはいえないのであるから、水産資源保護法二五条にい う「採捕」というのは、現実の捕獲のみに限らず、さけを捕獲する目的でした俗に いうひつかけ針を使用する採 為により、さけの再生 産が阻害される弊害がないとはいえないのであるから、水産資源保護法二五条にい う「採捕」というのは、現実の捕獲のみに限らず、さけを捕獲する目的でした俗に いうひつかけ針を使用する採捕行為をも含むものと解釈することが、同法二五条の 立法趣旨に合致するものといわなければならない。 しかるに、原判決は、同法二五条にいう採捕の意義を、広く採捕行為であると拡 張解釈すべき格別の必要性や相当性を認めることができないと判示し、本件被告人 の所為を同法二五条の採捕にあたらないとし、同法三七条四号の罪の成立を否定し - 2 - て、被告人を無罪とした本件第一審判決を是認している。 してみれば、原判決は、同法二五条、三七条四号の解釈適用を誤り、所論高等裁 判所の各判例と相反する判断をしているものであり、本件原判決を維持するのは相 当ではないから、所論判例違反の論旨は、この限度において理由がある。 よつて刑訴法四一〇条一項本文、四一三条本文により、裁判官全員一致の意見で、 主文のとおり判決する。 検察官臼井滋夫 公判出席 昭和四六年一一月一六日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 松 本 正 雄 裁判官 田 中 二 郎 裁判官 下 村 三 郎 裁判官 関 根 小 郷 - 3 -
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