主文 1 被告らは、各自、原告に対し、10,100,000円及びこれに対する平成12年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを9分し、その4を原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、各自、原告に対し、18,000,000円及びこれに対する平成12年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、交通事故の死亡被害者の内縁の妻であると主張する原告が、加害車両の運転者に対しては民法709条に基づき、加害車両の保有者に対しては自賠法3条に基づき、被告ら各自に対して損害賠償(一部請求)及びこれに対する不法行為日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。被告らは、死亡被害者には法律上の妻がおり、原告と死亡被害者との関係は法律上保護に値しないなどと主張して、原告の請求を争っている。 1 基礎となる事実(1) 交通事故の発生以下の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。(甲1,争いのない事実)ア日時平成12年5月26日午後2時50分ころイ場所福岡市A区B二丁目C番D号先路上ウ加害車両大型貨物自動車(福岡EゆF)運転者・被告G、保有者・被告Hエ事故態様加害車両が、I町方面からJ方面に向けて進行中、K方面からL一丁目方面に向けて道路を横断中のMに衝突した。 (2) Mの死亡等M(昭和2年2月17日生。当時73歳)は、本件事故により脳挫傷の傷害を受け、平成12年5月27日午前9時48分ころ、九州大学医学部附属病院に に向けて道路を横断中のMに衝突した。 (2) Mの死亡等M(昭和2年2月17日生。当時73歳)は、本件事故により脳挫傷の傷害を受け、平成12年5月27日午前9時48分ころ、九州大学医学部附属病院において、死亡した。 Mの法定相続人は、法律上の妻のN、子のO及びPの3名である。 原告(昭和19年2月11日生)は、Mと10年以上にわたり同居生活を送っている者である。(甲2,原告本人,争いのない事実)(3) 被告Gの過失被告Gは、加害車両を運転して本件事故現場を直進するに際し、歩道上から道路を横断しようとしているMを発見したにもかかわらず、積荷に気を取られ、前方から目を離したため、Mの動静及びその安全を確認しないまま進行し、加害車両の左前部をMに衝突させたものであり、Mの動静及びその安全を確認すべき業務上の注意義務を怠った過失がある。(弁論の全趣旨)(4) 既払額Mの法定相続人らは、被害者請求により、自賠責保険から合計26,646,400円の支払を受けた。また、これとは別に、自賠責保険から、Mの治療費として897,165円が医療機関に支払われた。(乙2,弁論の全趣旨,争いのない事実) 2 争点(1) 損害額(原告の主張)ア原告固有の慰謝料 15,000,000円Mは、Nとの別居後、NやOと一切の交際をせず、別居後10年ほど経過してから、原告と交際を始めた。原告とMは、遅くとも昭和57年から本件事故の発生まで約18年間にわたり同居し、実質的に夫婦の実体を備えた生活をし、対外的にも内縁の夫婦として振る舞ってきた。したがって、原告とMの事実上の夫婦関係は、法的に保護に値する関係であったといえるから、民法711条の類推により、固有の慰謝料請求権を有しており、その金額は15,000,000円を 振る舞ってきた。したがって、原告とMの事実上の夫婦関係は、法的に保護に値する関係であったといえるから、民法711条の類推により、固有の慰謝料請求権を有しており、その金額は15,000,000円を下らない。 イ扶養利益の侵害による損害額 9,062,991円(ア) Mの逸失利益額Mの役員報酬 2,760,000円(ただし、うち960,000円は原告の専従者給与)地代家賃 1,260,000円老齢厚生基礎年金 940,300円2,760,000+1,260,000+940,300≒4,960,000生活費控除率40%、就労可能年数6年4,960,000×(1-0.4)×5.0756=15,104,985(1円未満切捨て。以下1 円未満の端数が出たとき同じ。)(イ) 原告の扶養利益侵害額事故当時、原告はMから扶養を受けており、原告とMの生活状況に照らすと、原告が受けるべき扶養利益はMの逸失利益の5分の3と考えるべきである。 15,104,985×0.6=9,062,991ウ葬儀関係費用 2,000,000円エ弁護士費用 1,000,000円オ合計 27,062,991円(被告らの主張)ア原告固有の慰謝料について原告とMが内縁関係にあったとしても、Mには妻Nがいるのであるから、原告とMとの関係は重婚的内縁関係ということになる。重婚的内縁関係は、反倫理的であるといわざるを得ず、原告には固有の慰謝料は認められるべきではない。仮に、認められるとしても、低額が認められるにすぎない。 イ扶養利益の侵害による損害額について(ア 婚的内縁関係は、反倫理的であるといわざるを得ず、原告には固有の慰謝料は認められるべきではない。仮に、認められるとしても、低額が認められるにすぎない。 イ扶養利益の侵害による損害額について(ア) Mの逸失利益額についてMの役員報酬及び原告の給与の合計2,760,000円のうち、Mの寄与度は最大でも50%であるから、Mの年収は1,380,000円である。 地代家賃は、有限会社M貿易(以下「M貿易」という。)がQに対して支払った賃料であるから、Mの収入とは無関係である。 Mの役員報酬についての逸失利益額(就労可能年数6年)1,380,000×(1-0.4)×5.076=4,202,928年金部分についての逸失利益額(受給可能年数12年)940,000×(1-0.7)×8.863=2,499,3664,202,928+2,499,366=6,702,294したがって、Mの逸失利益額は合計6,702,294円となる。 (イ) 原告の扶養利益侵害額について原告がMから扶養を受けていたという事実は認められない。 ウ葬儀関係費用及び弁護士費用について原告が葬儀費用を立替払したとの点は不知、その余は争う。 (2) 過失相殺(仮定抗弁)(被告らの主張)本件事故状況によればMの過失割合は25%であるから、この過失割合に応じた過失相殺がされるべきである。 (原告の主張)本件事故状況によれば、Mの過失割合は5%である。 (3) 弁済(仮定抗弁)(被告らの主張)M死亡による損害賠償額は、①葬儀費用1,200,000円、②慰謝料22,000,000円、③逸失利益6,702,294円の合計額にMの過失割合25%を勘案して、22,500,000円と算定されるが、前記のとおり、Mの法定相続人らに対して自賠責保険から合計26,646,400円が支払われている 利益6,702,294円の合計額にMの過失割合25%を勘案して、22,500,000円と算定されるが、前記のとおり、Mの法定相続人らに対して自賠責保険から合計26,646,400円が支払われている。 原告の扶養利益の侵害による損害及び固有の慰謝料請求権が認められたとしても、これらの損害はMの損害を前提とするものであり、Mが生命を害されて損害を被ったことにより生ずる損害であるから、Mの逸失利益及び死亡慰謝料が法定相続人に対して賠償された以上、加害者である被告らとの関係では、原告のこれらの損害もてん補されたことになる。法定相続人ではない固有の慰謝料請求権者が存在するため、通常の場合以上に慰謝料を支払わなければならないとすると、加害者の負担は著しく過大となり、不公平で、かつ予見可能性も損なわれる結果となる。 (原告の主張)被告らの主張は争う。 第3 争点に対する判断 1 損害額について(争点(1))(1) 原告固有の慰謝料についてア同棲生活を送っている男女の一方が他の者と法律上の婚姻関係にある場合であっても、法律上の婚姻関係の実質が失われて事実上離婚同様の状態となった後に同棲関係が成立したものであって、同棲関係が社会的かつ対外的にも夫婦と認められて相当の年月が経過しているときには、当該男女間に社会的にも認められた内縁関係が成立しているというべきであり、これを不貞関係と評価することはできないから、その一方が不法行為により死亡した場合には、民法711条の類推により、他方の者に固有の慰謝料請求権が生じると解するのが相当である。 このような重婚的内縁関係にある者に固有の慰謝料請求権を認めた場合には、慰謝料の総額が通常の場合と比較して高額となることがあり得るが、そのような場合には、法律上の婚姻関係が形骸化していることを勘案して、法律上の配偶 縁関係にある者に固有の慰謝料請求権を認めた場合には、慰謝料の総額が通常の場合と比較して高額となることがあり得るが、そのような場合には、法律上の婚姻関係が形骸化していることを勘案して、法律上の配偶者が受領する慰謝料の金額を定めるのが相当であるから、加害者の負担が著しく過大になることはないと考えられる。なお、重婚的な同棲関係が二重、三重にも生じているような場合には、一夫一婦制を基本とする我が国の婚姻制度の下で、当該同棲関係が正当なものとして社会的に是認されないことはいうまでもないから、民法711条を類推することは許されない。 イ証拠(甲4,5,7,8,11,12,15,21,31,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 妻のN及び娘のOと東京の自宅で暮らしていたMは、昭和47年ころ、自宅に両名を残し、実家のある福岡に単身戻った。その後、MとN及びOとの間には、一切行き来がなかった。 原告は、昭和56年7月ころ、貿易関係の仕事を通じて、福岡市Rのマンションで一人暮らしをしていたMと知り合った。原告は、Mの助言を得て、同年11月にM貿易南九州代理店Sの屋号で貿易の仕事を初め、福岡と鹿児島を互いに行き来してMと交際するようになり、昭和57年1月ころ、Mから結婚を申し込まれた。原告は、Mの実母のTやMの姉妹らとも親しく交際するようになり、同年11月ころには、Mが鹿児島に移り、鹿児島市Uのマンションで同居して暮らすようになった。そのころから、原告は、Mの姓を名乗り、Mの妻として振る舞い、Mも原告を妻として周囲に紹介していた。 同年暮れころ、Mの戸籍謄本を偶然見た原告は、Mに妻子がいることを知ってMを問いただし、その後も数回にわたりNとの関係を清算することを求めた。しかし、離婚の際にはNにまとまった金を渡したいと考 同年暮れころ、Mの戸籍謄本を偶然見た原告は、Mに妻子がいることを知ってMを問いただし、その後も数回にわたりNとの関係を清算することを求めた。しかし、離婚の際にはNにまとまった金を渡したいと考えていたMは、金策がつかなかったことから、離婚に向けての具体的な行動を取らなかった。 昭和58年6月ころ、原告とMは、上記Sを法人化してM貿易を設立し、2人で貿易関係の仕事をして生計を立てるようになった。Mは、M貿易の代表者を務めるとともに、同社において貿易の営業等外回りの仕事を担当し、原告は、主に小売り、経理、仕入れを担当していた。 昭和63年ころ原告はガンにかかり、平成元年4月に入院して手術を受けたが、Mは献身的に原告の身の回りの世話を行った。 70歳に達して老齢年金を受給するようになったMは、Nに渡すまとまった金の目処がついたことなどから、平成11年ころから、離婚に向けて動き始め、本件事故に遭遇する約1か月前の平成12年4月下旬ころ、東京でNと話合いをした。原告は、Mから、Nが離婚に応じる意向であると聞かされ、また、そのころ、原告に全財産を残せるように遺言書を作成するつもりであるとも伝えられた。 本件事故後、原告は、Mが搬送された九州大学医学部附属病院に鹿児島から駆けつけたが、意識が回復しないまま、Mは死亡した。 Mの郷里である福岡で行われた葬儀で、原告は喪主を務め、Mの妹を介してNやOに連絡をしたが、何らの返事もなく、Nらは葬儀にも参列しなかった。その後、Mの親友らが発起人となり、同年6月24日に鹿児島で「お別れ会」が開かれたが、そこでも、原告は「M」の名で謝辞を述べた。原告は、Mの49日の法要を執り行った上、遺骨も原告の郷里にある寺院で保管している。なお、Nからの遺骨の引取りなどの申入れはない。 また、原告は、事 が、そこでも、原告は「M」の名で謝辞を述べた。原告は、Mの49日の法要を執り行った上、遺骨も原告の郷里にある寺院で保管している。なお、Nからの遺骨の引取りなどの申入れはない。 また、原告は、事故後、A警察署及び福岡地検において、Mの妻として、遺族感情等に関する事情聴取を受けた。 ウ上記認定事実によれば、Mは、Nらとの別居から約9年が経過した昭和56年に原告と知り合い、昭和57年11月から本件事故により死亡するまでの17年間余りにわたり、原告と同居して実質的に夫婦の実体を備えた生活を送り、対外的にも内縁の夫婦として振る舞っており、原告とMとの間には社会的にも認められた内縁関係が成立していたものと認められるから、原告について民法711条を類推して法の保護を与えるのが相当と考えられる。上記認定事実その他本件に現れた一切の事情を斟酌すると、原告固有の慰謝料の金額は10,000,000円が相当である。 (2) 扶養利益の侵害による損害額についてアまず、Mの逸失利益額について検討する。 上記認定事実及び証拠(甲23,24,原告本人)によれば、Mは、M貿易の代表者を務めるとともに、同社において貿易の営業等を担当しており、事故当時、同社から年間1,800,000円の役員報酬を受けていた事実が認められる。したがって、Mの逸失利益は、この報酬額を基礎として算定するのが相当であり、これと異なる算定方法を採るべきとする原被告ら双方の主張はいずれも採用しない。 地代家賃については、証拠(甲23,24)中の「地代,家賃等の内訳書」にM貿易がQに対して年間1,260,000円を支払った旨の記載があるのみであり、Mに地代家賃収入があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の主張は採用しない。 老齢厚生基礎年金については、証拠(甲25)によれば、事 ,260,000円を支払った旨の記載があるのみであり、Mに地代家賃収入があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の主張は採用しない。 老齢厚生基礎年金については、証拠(甲25)によれば、事故当時、Mが合計940,300円の年金を受給していた事実が認められる。 以上に基づきMの逸失利益の金額を算定する。本件事故当時の73歳男性の平均余命は約12年であり、その約2分の1の6年間は就労可能と考えられるから、Mの死亡後6年間の逸失利益額は、生活費控除率を4割として、(1,800,000+940,300)×(1-0.4)×5.0756=8,345,20079歳以後の6年間は年金収入のみとなり、その逸失利益額は、生活費控除率を7割として、940,300×(1-0.7)×(8.8632-5.0756)=1,068,4448,345,200+1,068,444=9,413,644したがって、Mの逸失利益額は、9,413,644円となる。 イ次に、原告の扶養利益の侵害額について検討する。 前記認定事実及び証拠(甲23,24)によれば、原告は、Mと共に昭和56年ころから共同で貿易関係の事業を行っており、昭和58年にはM貿易を設立し、共同して経営に当たってきたものであって、主に小売り、経理、仕入れを担当し、事故当時、同社から給与として年間960,000円の支給を受けていたことが認められる。 以上のような事情にかんがみれば、事故当時、原告がMから扶養を受けていた事実は認められるものの(原告が支給を受けていた給与のみでは、通常の生活は困難であろう。)、両名の就労状況、生活状況及び年齢差に照らすと、原告がMから扶養を受けられる期間は、Mが就労可能である6年間に限られ、その金額はMの逸失利益中の5分の2と考えるのが相当である 生活は困難であろう。)、両名の就労状況、生活状況及び年齢差に照らすと、原告がMから扶養を受けられる期間は、Mが就労可能である6年間に限られ、その金額はMの逸失利益中の5分の2と考えるのが相当である。 8,345,200×0.4=3,338,080したがって、原告の扶養利益の侵害額は、3,338,080円となる。 (3) 葬儀関係費用について証拠(甲10~12,21,26~30(枝番全部を含む。),原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、Mの郷里である福岡と、原告とMの生活の本拠地である鹿児島の2箇所において葬儀等を行い、1,600,000円以上の支出をした事実が認められる。Mの生活状況等にかんがみれば、本件事故と相当因果関係が認められる損害は、1,500,000円が相当である。 2 過失相殺について(争点(2))証拠(甲3~6)によれば、①本件事故現場は、国道V号線上の交通整理の行われていない交差点内であり、横断歩道は設置されていないこと、②加害車両が進行していた国道V号線は片側2車線で、道路中央部には中央分離帯が設置されており、最高速度が時速50㎞に制限されていたこと、③本件事故現場である交差点は横断歩行者が比較的多く、被告Gもそのことを十分に認識していたこと、④被告Gが加害車両を運転してI町方面からJ方面に向けて時速約50㎞で進行中、約43m前方の進路左側の交差点手前の歩道上に、車道の方向を向いて立っているMがいることに気付いたこと、⑤その時、加害車両の左側の車線を普通乗用自動車が2台ほど加害車両を追い抜いて行ったため、これらの普通乗用自動車の通過直後にMが道路を横断することはないだろうと考えた被告Gは、前方から目を離し、バックミラーを見て積荷の状態を確認したこと、⑥再び前方に視線を向けた被告Gは、加害車両の左側車線上 普通乗用自動車の通過直後にMが道路を横断することはないだろうと考えた被告Gは、前方から目を離し、バックミラーを見て積荷の状態を確認したこと、⑥再び前方に視線を向けた被告Gは、加害車両の左側車線上に走り出て来るMを約15m前方に発見し、制動措置を講じたが、間に合わず、加害車両の左前部をMに衝突させたことがいずれも認められる。 上記認定事実に事故当時のMの年齢を勘案すれば、本件事故に関するM側の過失は、20%と認めるのが相当である。 3 弁済について(争点(3))上記1及び2によれば、被告らが負担すべき損害賠償の総額(弁護士費用を除く。)は、次のとおり、30,248,647円と認めるのが相当である。 ① Mの逸失利益額 9,413,644円② 葬儀関係費用 1,500,000円③ 慰謝料 26,000,000円アうち原告固有の慰謝料 10,000,000円イその他の慰謝料 16,000,000円④ 治療費 897,165円⑤ ①~④の合計 37,810,809円⑥ ⑤×0.8 30,248,647円これらのうち、原告固有の損害項目は②及び③アであり、①、③イ及び④の損害項目は、Mの法定相続人らに帰属するものである。 法定相続人らに帰属する損害項目である①、③イ及び④についての過失相殺後の金額は、次のとおり21,048,647円となる。 (9,413,644+16,000,000+897,165)×0.8=21,048,647前記のとおり、Mの法定相続人らに対しては自賠責保険から合計26,646,400円が支払われているほか、治療費として897,165円が医療機関に支払われている。こ ×0.8=21,048,647前記のとおり、Mの法定相続人らに対しては自賠責保険から合計26,646,400円が支払われているほか、治療費として897,165円が医療機関に支払われている。これらのうち、法定相続人らに支払われた金額についての各相続人ごとの内訳及び損害項目は明らかではないが、法定相続人らの過失相殺後の損害額を大幅に上回る金額が支払われていることから考えて、法定相続人らに帰属する損害項目である①、③イ及び④については、全額が弁済されていると認められる。 そこで、死亡被害者の相続人に死亡被害者の逸失利益相当額の損害賠償が支払われた場合における、死亡被害者の内縁の配偶者が有していた扶養利益喪失相当額の損害賠償請求権の帰趨について検討する。 死亡被害者の逸失利益は同人が死亡しなかったとすれば得べかりし利益であり、死亡被害者の内縁の配偶者の扶養に要する費用は当該利益から支出されるべきものであるから、死亡被害者の相続人が承継した逸失利益相当額の損害賠償請求権と死亡被害者の内縁の配偶者の扶養利益喪失相当額の損害賠償請求権は、扶養利益喪失相当額の範囲で重なり合う関係にあるといえる。このため、加害者は、両者の損害賠償請求権が重なり合う範囲において、いずれか一方に支払った金額の限度で他方に対する関係でも責任を免れ、その後は、死亡被害者の内縁の配偶者と相続人の間において、不当利得あるいは求償の問題として解決すべきことになると解するのが相当である(最判平成5年4月6日・民集47巻6号4505頁参照)。 上記のとおり、Mの法定相続人らに帰属する損害はすべて弁済がされていると認められるから、法定相続人らが承継した逸失利益相当額と全額が重なり合う原告の扶養利益喪失相当額について、被告らは、原告に対する関係でも責任を免れる。したがって、 する損害はすべて弁済がされていると認められるから、法定相続人らが承継した逸失利益相当額と全額が重なり合う原告の扶養利益喪失相当額について、被告らは、原告に対する関係でも責任を免れる。したがって、原告は、扶養利益喪失相当額の損害賠償を被告らに対して求めることができないといわなければならない。 他方で、原告固有の損害項目である上記②及び③アの損害については、法定相続人らに帰属する損害とは法律上別個のものであり、法定相続人らに対する支払により原告に対する関係でも免責される理由は何ら存在しないから、これらについてのてん補を主張する被告らの主張は、採用することができない。 4 まとめ以上によれば、原告が支払を受けるべき損害額は、次のとおりとなる。 (10,000,000+1,500,000)×0.8=9,200,000本件事案の内容等一切の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係がある弁護士費用の額は900,000円と認めるのが相当であるから、原告には、上記金額に弁護士費用の額を加えた10,100,000円の損害賠償請求権がある。 第4 結論よって、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。 鹿児島地方裁判所民事第1部裁判官市原義孝
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