平成23(ワ)34450 相応の対価請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月14日 東京地方裁判所
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平成26年2月14日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第34450号相応の対価請求事件口頭弁論終結日平成25年12月9日判決名古屋市<以下略>原告 X同訴訟代理人弁護士滝澤昌雄愛知県豊田市<以下略>被告トヨタ自動車株式会社同訴訟代理人弁護士田中昌利同上田一郎同逵本憲祐同清水 亘 主文 1 被告は,原告に対し,2702万5000円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求(主位的請求)被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (予備的請求その1)被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (予備的請求その2)被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,原告と被告は,平成12年5月頃,原告の構築した物流システムに関する理論を被告がコンピュータ上で物流支援システムと みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,原告と被告は,平成12年5月頃,原告の構築した物流システムに関する理論を被告がコンピュータ上で物流支援システムとして具現化することにつき原告が承認すること,及び被告の外部防御のため,上記理論を原告が特許出願することに対し,被告が相応の対価を支払うことを合意し,さらに,平成19年2月2日,上記合意を再確認したにもかかわらず,被告が上記相応の対価を支払わないと主張して,主位的には,上記合意に基づく請求として,予備的には,債務不履行に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として,5億円(合意に基づく請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求については,上記理論をコンピュータ上で具現化することを認めたことの対価18億6020万円の一部である3億円,特許出願の対価9億3010万円の一部である1億円,原告が上記理論の研究・構築に要した実費5514万2208円及び特許出願に要した実費・労務費5304万7880円の合計額である1億0819万0088円の一部である1億円の合計額。不当利得返還請求については,上記理論をコンピュータ上で具現化することを認めたことの対価18億6020万円の一部である5億円)(附帯請求として,上記合意に基づく支払期限である平成19年2月2日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等 ア(ア) 原告は,昭和49年に被告に入社し,平成19年8月に被告を定年退職したが,その後も引き続き再雇用され,平成23年7月31日まで,被告の名古屋オフィスにおいて勤務していた者である。 (イ) 原告は,被 和49年に被告に入社し,平成19年8月に被告を定年退職したが,その後も引き続き再雇用され,平成23年7月31日まで,被告の名古屋オフィスにおいて勤務していた者である。 (イ) 原告は,被告入社後,平成4年までは部品部(平成9年にアフターマーケット部,平成13年1月にアフターマーケット営業部,平成19年1月に国内部品用品部,平成23年に国内部品部に順次改称された。 以下,改称の前後を通じて「アフマ部」という。)に,平成5年から平成8年までは車両部に,同年以降はアフマ部供給管理室に所属していた。 イ被告は自動車の製造,販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告による研究ア原告は,平成5年4月,名古屋市立大学大学院に入学し,被告における勤務時間外に授業を受け,物流に関し研究活動を行うようになった。 イ原告は,平成10年3月に上記大学院を修了するに当たり,「販売物流施設の最適立地」と題する修士論文(甲8)(以下「本件論文」という。)を作成した。 (3) 被告におけるプロジェクトの推移等ア被告は,平成10年8月頃,アフマ部において,トヨタ部品東京共販株式会社(以下「東京共販」という。)の業績改善を目的として,物流効率化プロジェクト等から成る「東京プロジェクト」(以下,上記「東京プロジェクト」のうち,物流効率化プロジェクトに係る部分を「本件プロジェクト」という。)を開始し,物流改善をサポートするためのシステム(後に,「AdvancedLogisticsInnovationSystem & Engineering」から「@LISeシステム」との名称が付されたもの。以下「本件システム」という。)の開発に着手した(甲56,乙10)。 イ本件プロジェクトは,被告,東京共販及び富士 Engineering」から「@LISeシステム」との名称が付されたもの。以下「本件システム」という。)の開発に着手した(甲56,乙10)。 イ本件プロジェクトは,被告,東京共販及び富士通株式会社(以下「富士通」という。)の従業員によって進められ,原告は,システムインテグレ ーターとして,本件プロジェクトに関与した(甲17,乙10)。 ウ本件システムのソフトウェアの要件書(甲10の1ないし5)は平成13年3月21日に完成し,上記要件書に基づく本件システムのソフトウェアは平成14年3月頃に完成した。 被告は,その頃,被告の共販会社らに対し,本件システムの概要について説明を行い,その後,東京共販を含む7共販会社において,本件システムのソフトウェアを適用して物流改善のためのシミュレーションが行われた(甲45の1ないし5,46の1ないし3,47の1・2,48,49の1・2,50の1ないし3,51,56)。 (4) 原告による特許出願等原告は,平成15年から平成22年にかけて,別紙特許権目録記載のとおり,合計7件の発明について特許出願を行い,いずれも登録査定を受けた(以下,同目録記載の特許権を併せて「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許出願を「本件特許出願」という。)(甲1ないし7,12ないし14)。 (5) 被告による一時金支払の申出被告は,平成19年2月2日,原告に対し,一時金として250万円を支払うことを提示した。 2 争点(1) 合意に基づく対価請求(主位的請求)の成否ア合意に基づく対価請求権の成否イ 「相応の対価」の額(2) 債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求①)の成否ア債務不履行に基づく損害賠償請求権の成否イ ア合意に基づく対価請求権の成否イ 「相応の対価」の額(2) 債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求①)の成否ア債務不履行に基づく損害賠償請求権の成否イ損害額(3) 不当利得返還請求(予備的請求②)の成否 ア不当利得返還請求権の成否イ利得額(4) 遅延損害金の起算日第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)ア(合意に基づく対価請求権の成否)(原告の主張)(1) X理論の完成,その内容等ア原告は,平成10年1月頃に名古屋市立大学に提出した本件論文を基礎として,平成10年8月頃までに,物流システムに関する理論(以下「X理論」ということがある。)を構築・完成させた。 イ X理論は,以下の4つの基本構成を有する。 (ア) 物流施設立地制御理論顧客サービスL/T(リード・タイム〔顧客との合意に基づく商品毎の配送所要時間〕)基準と顧客分布を基に,最適物流施設立地(位置・数)を決定する制御理論。従前の多段階物流(商品が本社から支社へ,支社から営業所へ,営業所から顧客へと階層的に配送され,支社から営業所を飛び越えて直接顧客に配送されることはないという配送の流れ)に固執することなく,本社や支社から商品を配送することもあり得るとの考え(飛び越え理論)に立った上で,顧客との合意に基づき,商品毎に配送許容時間(T時間)を決め,上記配送許容時間と顧客分布に基づき,全ての顧客をカバーできるように物流施設の立地を決めるというもの。 具体的には,物流施設jから顧客iまでの配送所要時間を,顧客との合意に基づく商品毎の配送許容時間であるT時間(サービスL/T基準)以内に収めるべく,物流施設jが担当すべき顧客を,物流施設jを中 具体的には,物流施設jから顧客iまでの配送所要時間を,顧客との合意に基づく商品毎の配送許容時間であるT時間(サービスL/T基準)以内に収めるべく,物流施設jが担当すべき顧客を,物流施設jを中心とする時間円(配送許容時間Tに基づき半径を設定したもの)の範 囲内に位置する顧客と決め,顧客の全てがいずれかの時間円内に位置し,かつ,時間円の総数ができるだけ少なくなるように時間円を顧客分布地域に配置し,上記時間円の各中心を,物流施設の位置とする。なお,上記のように,サービスL/T基準と顧客分布に基づき物流施設の立地を決めるためには,物流施設から顧客までの距離を長さではなく時間で捉えた時間地図が必要となるので,このような時間地図も,併せて原告が発想し,創造した。 これにより,物流におけるサービスとコストとの関係に内在するトレード・オフの関係を解決しつつ,物流施設の総数を抑制し,総コストを低減させることが可能となるとともに,最適化された物流施設を,距離マップ及び時間マップ上に表示することが可能となる。 (イ) 配送制御理論顧客分布及び顧客サービスL/T基準を基に,最適物流施設から当該顧客までの最適配送コース(最短時間かつ最少配送回数のコース)を決定する制御理論。顧客との合意に基づき,商品毎の配送許容時間であるT時間を決めた上で,上記T時間及び当該物流施設が担当する顧客の分布に基づき,最少の配送回数で配送を完了できるよう,配送コースを決めるというもの。 具体的には,物流施設jが担当する顧客iを,配送許容時間T時間以内に位置する者に限定した上で,顧客を順にたどり,最後に立ち寄るべき配送先に至るまでの所要時間が,配送許容時間T内で,かつ,これに近い時間になるよう,また,最後に立ち寄るべき配送先で積み荷が空になる に位置する者に限定した上で,顧客を順にたどり,最後に立ち寄るべき配送先に至るまでの所要時間が,配送許容時間T内で,かつ,これに近い時間になるよう,また,最後に立ち寄るべき配送先で積み荷が空になるよう,さらに,時間円の中の顧客にもれや重複がないよう,配送コースを設定する。 これにより,配送コース・ダイヤ見直しを論理的かつリアルタイムで行うことが可能となり,顧客サービスの向上と物流コスト改善を両立す ることが可能となる。 (ウ) 物流コスト制御理論会社の決算情報から物流費の配分方式を確立し,物流原単位コスト(商品1個当たりの物流コスト=ミクロコスト)を算出等する制御理論。 現決算方式の書類・帳票類には物流費という項目はなく,物流コストを的確に算出することが難しかったことから,物流コスト算出のための出発点となる,物流施設別,商品別,作業工程(入庫,保管,出庫,配送)別の物流コストである「物流原単位コスト」という概念を創造したもの。 上記「物流原単位コスト」は,企業の決算情報(損益計算書,貸借対照表)の項目の中で,物流に関連する項目を決め,当該項目の費用について,物流施設別に人員・トラック台数を配分し,さらに,物流施設の商品別・作業工程別に作業時間データを配分することにより求められる。 これにより,各物流施設における商品別・作業工程別の物流コストを明確な数値により把握し,その優劣を比較することができ,改善すべき項目を明確にすることができる。 (エ) 物流ネットワーク制御理論上記(ウ)の物流コスト制御理論で得た商品1個当たりの物流コスト(ミクロコスト)を用いて,物流ネットワーク上における商品の流れ(流通=商流,物流〔入庫,保管,出庫,配送〕)のシミュレーションを行うことにより,改善前 スト制御理論で得た商品1個当たりの物流コスト(ミクロコスト)を用いて,物流ネットワーク上における商品の流れ(流通=商流,物流〔入庫,保管,出庫,配送〕)のシミュレーションを行うことにより,改善前と改善後の全物流コスト(マクロコスト)を算出するもの。 具体的には,ある物流施設の費用,作業工程の費用,商品の費用を求め,これらを,それぞれ,変更後の対応する費用と比較することになる。 これにより,改善された物流モデルが論理的に優れており,かつ,顧客サービスと物流コストの削減が飛躍的に向上することを立証すること ができる。 ウ X理論は,以上の4つの構成を基本として,物流施設立地制御理論(上記イ(ア)),配送制御理論(上記イ(イ))により,物流施設及び配送を定量化・論理化・最適化し,更にこれらを前提として,物流コスト制御理論(上記イ(ウ))により,ミクロコストを創出した上で,物流業務について社会的・経営的制約がある中で,実際に物流ネットワーク上を流れる商品が最適ネットワーク・最適物流工程を流れるようシミュレーションを行い,そのマクロコストを算出・比較することで(上記イ(エ)),最適物流戦略・最適経営判断に資することを目的とするものである。 (2) 本件合意の成立ア被告は,平成8年頃から,流通・物流を含めた抜本的構造改革に取り組んでいたところ,原告は,平成10年6月頃,被告側からの依頼に基づき,本件プロジェクト関係者に対し「K東京物流コストの削減アプローチ‐物流ネットワークの解析による‐」と題する資料(甲11の1ないし10)を配布してX理論の説明を行い,さらに,同年7月21日にも打合せにおいて資料(甲11の11ないし15)を配布して説明を行った(以下,甲11の1ないし15を併せて「本件説明資料」という。) いし10)を配布してX理論の説明を行い,さらに,同年7月21日にも打合せにおいて資料(甲11の11ないし15)を配布して説明を行った(以下,甲11の1ないし15を併せて「本件説明資料」という。)。 原告は,同年8月頃,被告共販店室室長・Oから,本件プロジェクトへの参加及びX理論の本件プロジェクトへの利用を正式に依頼され,これを受け入れた。 イ原告は,本件プロジェクトのリーダーとして,X理論をコンピュータ上で具現化するための物流支援システムである本件システムのプログラムの作成に携わり,平成11年3月30日頃,被告取締役らにX理論の概要について説明を行った。 ウ被告は,平成11年頃,本件システムにおいて利用されているX理論が職務発明に該当する可能性はないとの理解の下,原告に対し,同理論につ いて特許を受ける権利の譲渡を提案したが,原告はこれを拒絶した。そこで,被告は,平成12年4月14日,①X理論をコンピュータ上で具現化することについて原告から承認を受け,②外部防御のため,本件システムについて原告がその名義で特許出願を行うことを要請し,③これらについて原告に相応の対価を支払うことを決定し,同年5月頃,被告アフマ部部長であったQ(以下「Q」という。)は,原告に対し,上記①ないし③について伝え,もって相応の対価の支払及び相応の対応を約し,原告はこれを受け入れた。 これにより,原告と被告との間に,原告が①X理論を本件システムにおいてコンピュータ上で具現化することについて承認し,②本件システムについて原告が特許出願を行うという債務を履行し,③被告がこれについて相応の対価を支払うことを内容とする合意が成立したものである(以下「本件合意」という。)。なお,ここでいう相応の対価とは,X理論のコンピュータ上での具現化を認め う債務を履行し,③被告がこれについて相応の対価を支払うことを内容とする合意が成立したものである(以下「本件合意」という。)。なお,ここでいう相応の対価とは,X理論のコンピュータ上での具現化を認めることの対価及び外部防御のために特許出願を行うことの対価という意味である。 エ被告アフマ部部長であったRは,平成16年4月27日,原告に対し,本件合意を尊重する必要がある旨述べ,また,同年5月18日頃,被告がX理論を使っている以上,対価支払の必要があること及び本件システムの成り立ち等について整理が必要であること等を表明し(上記表明に基づき,平成17年4月19日に原告が作成し,被告アフマ部の確認を受けた文書が甲29の1〔その後改訂されたものが甲29の2・3〕である。),さらに,平成16年5月28日,上記R及び被告アフマ部総括室室長(V)は,本件合意を尊重する必要がある旨の発言をして,本件合意の存在及び内容について確認をした。加えて,被告は,知的財産部及びアフマ部において本件合意の扱いについて検討した上,平成19年2月2日,原告に対し,本件合意の対価として,極めて低額ではあるものの250万円の支払 を提案しているのであって,これにより,本件合意の存在及び内容について再確認の合意をしている。 オ以上によれば,原告と被告との間に,本件合意が成立していることは明らかである。 カ被告の主張に対する反論(ア) 被告は,X理論は本件プロジェクト開始後に原告,被告従業員及び富士通従業員の共同で完成されたものであると主張するが,否認する。 X理論は,平成10年8月までに,原告が単独で完成させたものであり,被告や東京共販,富士通の従業員らと共同で完成させたものではない。 平成10年8月までにX理論が完成していたことは,原告が平成10 X理論は,平成10年8月までに,原告が単独で完成させたものであり,被告や東京共販,富士通の従業員らと共同で完成させたものではない。 平成10年8月までにX理論が完成していたことは,原告が平成10年6月及び7月に本件プロジェクト関係者に対しX理論の説明を行った際に使用した本件説明資料(甲11の1ないし15)にX理論の要点・骨子が記載されていること,同年8月10日付けの被告アフマ部・Uから原告へのメール(甲16)で,X理論の説明を受けた所感が述べられていること,同年8月17日付け「Tプロジェクトについての再確認」と題する文書(甲17)において,「当PrjはXSL個人の知的所有を出発・核としており」との記載があること,被告アフマ部が,平成10年8月から同年12月の被告知財部との打合せにおいて,原告が平成10年8月の本件プロジェクト開始以前にX理論を完成させたことや,被告の依頼により本件プロジェクトが上記理論を利用することになったことを繰り返し説明していること(甲18の1ないし4),平成11年1月に,被告アフマ部が,本件システムのうち知的財産性が認められると評価される事項(合計14件)を整理しており,そのうち大部分(合計11件)につき,原告の100%業務発明又は業務寄りの発明であると評価していること(甲19),平成12年3月13日に,原告,被告及び富士通で協議した結果,本件システムに対する原告のノウハウ比率 が71%と評価されていること(甲21の2),平成16年5月18日付けの上記Uから原告へのメールに「Xさんの知的財産を使わせていただき,トヨタで大きな効果を生み,また,その状況や結果を踏まえて,Xさんが更に研究を深めると言う良いサイクルを期待しておりました。」との記載があることから明らかである。 (イ) また,被告は,「X だき,トヨタで大きな効果を生み,また,その状況や結果を踏まえて,Xさんが更に研究を深めると言う良いサイクルを期待しておりました。」との記載があることから明らかである。 (イ) また,被告は,「X理論」は乙7ないし9の記載内容と実質的に同一又は極めて類似していると主張するが,被告が「甲11から読み取れる理論」として整理する内容(被告の主張における【a】ないし【g】)は,原告の主張するX理論とは全く異なるものである。 すなわち,本件説明資料(甲11の1ないし15)は,課題を解決するための具体的構成について説明するためのものであり,例えば,本件説明資料による説明後に作成された書面(甲17)に,「ミクロ物流コスト」の記載があることからも明らかなとおり,物流ネットワークシステムにおける物流コスト分析の手法等を記載し,説明したものである。 被告の主張は,甲11から読み取れるX理論の重要部分を無視又は意図的に欠落させ,乙7ないし9に符合させるために一部を曲解したものにすぎない。 これに対し,乙7ないし9には,解決すべき課題が漠然と記載されているのみであり,課題解決のための具体的構成は全く記載されていない。 また,乙7ないし9は,立地・配送・コストが混然と論じられており,物流ネットワーク上でのコスト把握についても何ら論じられていない。 (ウ) さらに,被告は,本件特許出願は被告の依頼に基づくものではないとも主張するが,本件特許出願が被告の外部防御のため,その依頼に基づきなされたものであることは,被告が,当初,原告から特許を受ける権利の譲渡を受けて特許出願することを検討していたこと(甲18の4,19,20,22),平成12年4月14日付け議事録(甲28)に, 特許化申請は個人として行う旨の記載があること,被告アフマ部の公式見解を示 特許出願することを検討していたこと(甲18の4,19,20,22),平成12年4月14日付け議事録(甲28)に, 特許化申請は個人として行う旨の記載があること,被告アフマ部の公式見解を示す書類(甲27の3,29の1ないし3)に,原告に特許取得を依頼した旨の記載があること,本件特許出願の内容が,本件システムの要件書(甲10の1ないし3)の内容に沿うものであることから明らかである。 (3) 原告が本件合意に基づく債務を履行したことア原告は,平成13年6月,X理論をコンピュータ上で実現するために必要となる機能を説明した書面である要件書(甲10の1ないし3)を作成し,平成14年3月,本件要件書を基に本件システムを完成させ,本件システムは,その後,東京共販ほか6共販店に導入された。 本件システムは,X理論をコンピュータ上で具現化したものであり,基本的にX理論と同義である。 イ原告は,本件合意後,予定していた学会での発表を見合わせるとともに,特許出願の準備作業に着手し,前記前提事実(4)のとおり,平成15年以降,被告における就業時間以外の時間を利用して順次特許出願を行った。 上記特許出願は,本件システムのうち,最も重要と考えられる部分を特許請求の範囲に記載し,かつ,本件システムの内容を上記特許出願に係る明細書において説明したものである。 (4) 本件合意に基づく相応の対価請求ア確かに,本件合意においては,「相応の対価」を支払う旨の合意が成立しているのみで,具体的な金額の合意がされているものではない。しかし,水戸地裁土浦支判平成15年4月10日(判例時報1857号120頁)及びその控訴審である東京高判平成16年9月29日(判例時報1887号99頁)は,従業員である原告が,被告に入社する以前に実用新案登録出願をした 判平成15年4月10日(判例時報1857号120頁)及びその控訴審である東京高判平成16年9月29日(判例時報1887号99頁)は,従業員である原告が,被告に入社する以前に実用新案登録出願をした自由考案につき,被告に対し実施許諾をし,更にその後,権利の一部を会社に譲渡したとして,その対価を請求した事案において,従業 員と会社との間で,上記権利の一部譲渡等の黙示の合意(本件無名契約)の成立を認めた上で,上記譲渡等により会社側の受けた利益額,本件考案の寄与の程度,本件無名契約締結の経緯その他諸般の事情を総合考慮して,社会通念上相当と認められる額を対価額とすることが当事者の合理的意思にかなうと判断している。 イ上記裁判例に示された法理に照らし,本件においても,本件合意に至る経緯,本件合意の内容,本件システムの導入により被告が受けるべき利益,その他諸般の事情を総合考慮して,社会通念上,相応と認められる額を対価とするのが当事者の合理的意思にかなうものというべきである。なお,本件合意は,特許利用料という観点ではなく,単純に,X理論の利用という観点での対価支払を約したものであり,被告もこれを前提とした言動をとってきているのであるから,特許利用料という観点で対価を算定するのは相当ではない。 本件において,被告は,本件合意の存在を前提に,平成19年2月2日に,金額の具体的な提案まで行っているのであるから,これにより,本件合意の内容が確認されているものということができ(「本件再確認の合意」),この点からも,原告が,相応の対価請求をすることができることが明らかである。 ウしたがって,原告は,本件合意の履行請求として,被告に対し,相応の対価の支払請求をすることができる。 (被告の主張)(1) 原告の主張は,事実についてはその一部 きることが明らかである。 ウしたがって,原告は,本件合意の履行請求として,被告に対し,相応の対価の支払請求をすることができる。 (被告の主張)(1) 原告の主張は,事実についてはその一部を否認し,法的主張は争う。 (2) 「X理論」の内容についてア原告は,「X理論」は平成10年8月頃までに完成したものであると主張し,その内容は争点(1)アに関する原告の主張(1)イのとおりであると主張するが,否認する。 イ 「X理論」の内容は,その完成時期であるとされる平成10年8月頃までに作成された資料である甲8,11の1ないし15,16及び17から判断されるべきであるところ,本件説明資料(甲11の1ないし15)から読み取れる理論は,以下の内容のものにとどまる。 「【a】物流コストと,(顧客へ提供できる)サービスはトレード・オフの関係にあることから,「物流戦略」としては,物流コストとサービスのバランスをとることを目的とする。 そして,【b】サービスに関して,「顧客サービス目標」として,「受注~着荷L/T(注文を受けてから顧客の手に渡るまでの時間)を設定する。 その上で,物流改善案の具体的手段として,【c】「顧客分布」を基に,「営業所」の配置を検討するとともに,「営業所」にどのような機能を持たせるかを検討し,それを基に【d】顧客への配送計画を策定する。 さらに,【e】「本社・営業所別」に,「入庫~保管~出庫~配送」の「工程別」に発生するコストを算出し,【f】上記【c】及び【d】に基づき決定された営業所の配置・機能及び顧客の分布から導かれる「商品の流れ」に基づき,コストを算出する。 そして,【g】物流改善案の具体的手段である上記【c】及び【d】を適宜調整することで得られる各物流改善案について物流コストを算出し び顧客の分布から導かれる「商品の流れ」に基づき,コストを算出する。 そして,【g】物流改善案の具体的手段である上記【c】及び【d】を適宜調整することで得られる各物流改善案について物流コストを算出し,「顧客サービス目標」が満たされる条件下で物流コストが最も低くなる物流改善策を探る。」上記内容を超えて,原告が争点(1)アに関する原告の主張(1)イで主張するような内容の理論を本件説明資料から読み取ることはできない。 ウ原告が,争点(1)アに関する原告の主張(1)イで主張する「X理論」は,原告が「X理論」の完成時期であると主張する平成10年8月より後に作 成された本件システムに関する資料(本件システムのソフトウェアの要件書等)に基づくものであるが,本件システムのソフトウェアは,本件プロジェクトにおいて,原告を含む被告従業員,東京共販従業員及び富士通従業員によって作り上げられたものであり,原告が平成10年8月までに完成させたものに当たらない。 エしたがって,原告が平成10年8月までに完成させたという「X理論」の内容は,上記アの限度にとどまるものであるところ,上記理論は,原告が本件論文で引用している文献(乙7ないし9)に記載されている内容と実質的に同一であり,原告が独自に考え出したものに当たらない。 すなわち,乙8の79頁の「図表3-1 物流計画業務の関連」において記載されている内容は次のとおりである。 まず,【A】「物流戦略」は,「顧客サービスと物流費のバランスをはかる」ことが出発点であるとした上で,【B】「物流目標」を設定する。 そして,【C】「目標物流リードタイムを達成するための在庫拠点と配送拠点を明確にする」ために,「物流拠点計画」を策定する。次に,【D】「工場からの補充と配送を考慮して車両の運用計画を明確にする」 。 そして,【C】「目標物流リードタイムを達成するための在庫拠点と配送拠点を明確にする」ために,「物流拠点計画」を策定する。次に,【D】「工場からの補充と配送を考慮して車両の運用計画を明確にする」ために,「配車計画」を策定する。また,【E】「保管費」,「運送費」及び「荷役費」を算出する。そして,【F】「保管費」,「運送費」,「荷役費」(及び梱包費)を合計することで,「合計物流費」を算出し,合計物流費を利用して,「物流計画の評価」を行う。また,「物流計画の評価」から「物流拠点計画」へ処理のループを示す矢印が引かれていることから,【G】物流計画の内容として【C】「物流拠点計画」,【D】「配車計画」を適宜調整してシミュレーションすることにより,設定した「物流目標」が満たされている条件下で,最もコストの低い物流計画を策定する。 上記【A】ないし【G】の内容は,前記イでみた「X理論」の内容である【a】ないし【g】の内容と実質的に同一であることが明らかである。 (3) 「本件合意」が成立していないことア被告アフマ部・共販室は,平成10年頃,低収益であった共販店の物流改善のための方策について,当時,同部供給管理室に所属していた原告に相談を持ち掛けたところ,原告は,積極的に物流改善のための施策の立案等に参画する様子を見せた。原告は,このような経緯により,本件プロジェクトに参加することになったものであり,被告の懇願により本件プロジェクトに参加したものではない。また,本件プロジェクトにおいて,原告が取得した知見(職務外での研究成果)を利用することは当然の前提となっていたものであり,被告がその利用を原告に懇願し,承認を受けたものでもない。 イ被告は,平成10年から平成11年にかけて,本件プロジェクトにおける検討内容につい することは当然の前提となっていたものであり,被告がその利用を原告に懇願し,承認を受けたものでもない。 イ被告は,平成10年から平成11年にかけて,本件プロジェクトにおける検討内容についての特許出願の必要性について検討し,上記検討内容に,いわゆる業務発明(従業者の職務範囲には属さないが,使用者の業務範囲に属する発明)に該当する発明が含まれる可能性があったことから,原告に対し,上記発明が業務発明であれば,被告名義で特許出願を行うためには原告から特許を受ける権利の譲渡を受ける必要がある旨説明し,大学教授から特許を受ける権利の譲渡を受ける場合と同じ条件での権利譲渡を提案したが,原告はこれを受諾しなかった。なお,上記譲渡条件を提案した趣旨は,当該発明につき,職務発明であるかどうかを明確にせず,かつ,職務発明ではない形で処理するのであれば,それが条件の上限であるという趣旨にすぎない。 ウ上記のとおり,原告が,特許を受ける権利の譲渡を拒絶し,自ら特許出願する意向を示したことから,被告は,平成12年4月12日に,被告アフマ部及び知財部で会議を行い,被告知財部から,当該発明につき原告名義で特許出願をすることは選択肢の一つであることや,当該発明につき被告による実施を確保するためには原告から確認を取っておくことが望まし いこと,及び特許が成立した際には当該特許の有効性について検討した上で,支払うべき実施料が存在すればこれを支払うことになることなどにつき見解が示された。このような経緯から明らかなとおり,被告は,本件システム関連の特許出願の必要性を強く認識していたものではなく,原告が自ら出願したいのでればそれを否定する意向はないという程度の認識であった。 エ平成12年5月頃,Qが,原告に対し,原告が被告における職務外で 願の必要性を強く認識していたものではなく,原告が自ら出願したいのでればそれを否定する意向はないという程度の認識であった。 エ平成12年5月頃,Qが,原告に対し,原告が被告における職務外での研究成果に関して将来特許権を取得し,かつ,当該特許に係る発明すなわち原告の職務外での研究成果を被告が本件システムの一部として利用するのであれば,いくばくかの金員を支払う旨話した事実は認めるが,Qが「相応の対価」との言葉を使用したか否かは不知であり,相応の対応をする旨約束したことは否認する。Qがこのような発言をした趣旨は,被告従業員がその職務外でなした発明について特許権を取得した場合であって,当該特許発明を被告が利用するときには,当該従業員に対して実施の状況を勘案した対価を支払うのが当然であろうとの一般的認識を前提に,原告が職務外でなした発明について特許権を取得し,被告が当該特許発明を利用して利益を上げることになれば,必要に応じて,被告は原告に対し当該特許発明の利用料を支払うことになるだろうという,特許制度上当然のことを述べ,上記特許利用料により,原告が出願費用を少しでも回収できればよいとか,出願費用の足しになればいい,というQの気持ちを伝えようとしたものにすぎない。 オその後,平成13年6月に本件システムのソフトウェアにつき要件書が作成され,平成14年3月頃に本件システムのソフトウェアが完成したものであるが,これらの要件書及びソフトウェアは,原告のみならず被告従業員,本件システム開発のため被告へ出向中であった東京共販従業員及び富士通従業員らの協力により作成されたものであり,原告のみにより,又 は原告の主導によって作成されたものではない。これは,本件システム開発のために多くの人員が関与し,その完成まで相応の年月が費やされ 業員らの協力により作成されたものであり,原告のみにより,又 は原告の主導によって作成されたものではない。これは,本件システム開発のために多くの人員が関与し,その完成まで相応の年月が費やされたことや,本件システム開発に,物流支援用ソフトウェアを有していた富士通の従業員が関与し,その知見を提供していたことからも明らかである。 カ平成16年頃,被告アフマ部部長(R)は,原告又はUに対し,本件システムに関する経緯を整理する必要がある旨話し,平成17年頃,被告知財部は,本件システムに関する発明が職務発明に該当する可能性及び先使用(特許法79条)の可能性を検討したことはあるが,被告従業員が,これに加えて,原告に対し,本件合意を尊重する必要がある等の発言をした事実は否認する。 キ被告は,平成19年2月2日に,原告名義の特許及び特許出願(当時は合計5件)を対象に,非独占的通常実施権の設定許諾を求め,その対価として,一時金250万円を支払う旨の提案を行った。これは,上記特許出願の職務発明該当性等について論じることなく,原告との間の問題を解決するためになされた提案にすぎない。 ク原告は,被告の上記提案を拒絶し,平成20年3月31日付けで,被告代表取締役社長宛ての「ご通知」と題する書面(乙2)を送付したが,上記書面には,本件合意及びこれを基礎付けると原告が主張する事実について何ら言及されていなかった。 ケ以上の経緯に照らせば,原告と被告との間に,原告の主張するような内容の「本件合意」が成立した事実がないことは明らかである。そもそも,原告が取得した知見(職務外での研究成果)を本件プロジェクトにおいて活用することは,本件プロジェクト開始当時から当然の前提となっていたものであるから,X理論の利用を原告が承諾すること る。そもそも,原告が取得した知見(職務外での研究成果)を本件プロジェクトにおいて活用することは,本件プロジェクト開始当時から当然の前提となっていたものであるから,X理論の利用を原告が承諾することを,平成12年5月の時点で改めて合意する必要はない。また,原告は,Qに対し,本件特許出願は自己実現のためであるから金はいらない旨を話していたものであり, 本件特許出願が被告の依頼によるものではないことは明らかである。なお,Qは,被告のアフマ部部長にすぎず,職務分掌上,被告が原告に対し金銭債務を負うような合意をする権限を有しない上,Qの発言の趣旨は上記エのとおりであるから,Qの発言を,被告が何らかの新たな債務を負担する性質の意思表示とみることはできない。 仮にQの発言が何らかの意思表示であると解されたとしても,原告の主張する意思内容とQの発言の趣旨は完全に食い違っているのであって,意思表示の合致はそもそも存在しない。 (4) 本件合意に基づく相応の対価請求について前記(3)のとおり,本件において,原告の主張するような内容の「本件合意」は成立していないから,原告が,被告に対し,本件合意に基づき相応の対価請求をすることはできない。 2 争点(1)イ(「相応の対価」の額)(原告の主張)(1) 本件合意に基づき,原告は,相応の対価を請求することができるところ,本件合意に至る経緯,本件合意の内容その他諸般の事情を考慮すれば,「相応の対価」とは,①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価,②X理論を研究・構築するのに要した実費,③本件システムに関し特許出願をしたことの対価,④上記特許出願に要する実費から構成されるものと解すべきである。 (2) ①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価について た実費,③本件システムに関し特許出願をしたことの対価,④上記特許出願に要する実費から構成されるものと解すべきである。 (2) ①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価についてア X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価を算定するためには,X理論の本質的価値を算出することを要するところ,上記本質的価値を算出するためには,まず,X理論を具現化したものである本件システムの本質的価値を算出するのが相当である。 イ本件システムの価値について 本件システムは,物流コストの概念を明確化し,シミュレーションを繰り返し行って従前の物流コストとシミュレーションによって得られた物流コストを比較することにより,物流コストの最適化・最小化の実現というレベルの経営判断を可能とするものであるから,従前の物流コストとシミュレーションによって得られた物流コストとの差(「物流コスト削減効果」)から本件システムの本質的価値を算定することは極めて合理的である。そして,本件システムは,被告傘下の全共販店に導入される計画であったから,本件システムによる物流コスト削減効果は,本件システム導入により全共販店において見込まれる物流コスト削減効果によって検討されるべきである。被告が250万円の額を提示する基礎となった算定方法は,本件システムの第三者への販売実績,すなわち売上げがないことを根拠に開発費を基礎に算出したものであり,不誠実かつアンフェアである。また,本件システムに対する原告の寄与率を3分の1としていることにも合理的根拠はない。 被告アフマ部が平成12年3月13日付けで行った物流コスト削減効果の試算(既に本件システムのパイロットモデルを導入済みであった東京共販における物流費用削減額・削減見込み額を基に,全共販店にお 被告アフマ部が平成12年3月13日付けで行った物流コスト削減効果の試算(既に本件システムのパイロットモデルを導入済みであった東京共販における物流費用削減額・削減見込み額を基に,全共販店において本件システムを導入し5年間実行した場合の物流費用削減額を試算したもの。 甲21の2)によれば,上記削減額は,次のとおり,単年度当たり104億8000万円と算出されている。 (ア) 物流施設立地制御システムa 施設費の削減 33.1億円時間概念による顧客分布,サービス戦略(商品別L/T目標の設定)により,全共販店の物流施設273か所のうち,3分の2である199か所を削減することが可能である。したがって,総施設費88. 9億円÷199/273=64.8億円を削減できるところ,これを 5年かけて順次導入した場合の5年平均削減額は38.9億円となり,物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,施設費削減効果は33.1億円/年となる。 b 物流コストの削減 22.1億円「A-TOP(トヨタ自動車物流システム)将来構想効果」として,東京共販において,物流施設の集約により,大物外装につき7%,その他につき18%(合計3億9080万円)のコスト削減が可能である。したがって,全共販店においても,東京共販における上記削減額3億9080万円を東京共販の受注割合0.09で除した金額である43.4億円を削減可能であるところ,これを5年かけて順次導入した場合の5年平均削減額は26.0億円/年となり,更に物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,削減額は22.1億円となる。 (イ) 配送制御システムa 営業所トラック台数の削減 6.7億円配送基準(顧客配送先選定・サービス 分析の貢献効果である15%を控除すると,削減額は22.1億円となる。 (イ) 配送制御システムa 営業所トラック台数の削減 6.7億円配送基準(顧客配送先選定・サービスL/T)の設定によって,配送顧客・回数削減が可能となり,営業所トラック台数を3分の1に削減することが可能である。したがって,全国共販店営業所の有するトラック台数(600台と推定される。)の3分の1である200台(1台当たりの傭車コスト660万円/年×200台=13.2億円)を削減できるところ,これを5年かけて順次導入した場合の5年平均の物流コスト削減額は7.9億円となり,物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,配送制御システムによるコスト削減効果は6.7億円/年となる。 b 配送ダイヤ見直し工数の削減 0.2億円配送シミュレーションによれば,配送ダイヤ(工数)を,6日/週 を1日/週に削減可能である。したがって,現在の配送ダイヤ205か月(6日×273拠点×3コース)を5年で34か月(1日×273拠点×3コース)まで削減でき,これにより,人件費(464万5000円/月)を0.2億円(464万5000円×〔205-34か月〕=0.2億円)削減可能である。上記配送ダイヤ見直しは直ちに全部実行可能であるから,85%を乗じる必要はない。 (ウ) 物流コスト分析 15.7億円上記(ア)(物流施設立地制御システム),上記(イ)(配送制御システム)及び下記(エ)(物流ネットワーク制御システム)における各削減効果のうち,それぞれ15%は物流コスト分析によるシステム貢献効果として算定すべきところ,その合計額は15.7億円となる。 (エ) 物流ネットワーク制御システムa 本部(各共販店本社 効果のうち,それぞれ15%は物流コスト分析によるシステム貢献効果として算定すべきところ,その合計額は15.7億円となる。 (エ) 物流ネットワーク制御システムa 本部(各共販店本社)トラック台数の削減 4.4億円物流ネットワーク図により,本部・営業所間の配送効率を実現し,大動脈物流,夜間配送により,全国共販店本部トラック台数を3分の1に削減することが可能である。したがって,全国共販店本部の有するトラック台数(400台と推定される。)の3分の1である130台(1台当たりの傭車コスト660万円/年×130台=8.58億円/年)を削減できるところ,これを5年かけて順次導入した場合の5年平均の物流コスト削減額は5.2億円となり,物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,物流ネットワーク制御システムによるコスト削減効果は4.4億円となる。 b 物流コストの削減 22.6億円「A-TOP(トヨタ自動車物流システム)将来構想効果」として,東京共販において,共販店本部・営業所間の多段階入・出庫・保管の回避による集約効果により,大物外装につき26%,その他につき1 6%(合計4億0010万円)のコスト削減が可能である。したがって,全共販店においても,年間物流(入荷~出庫)コスト259億円(東京共販における物流(入庫~出庫)コスト23.3億円〔甲46の2〕を東京共販の受注割合9%で除した額)のうち,東京共販における上記削減額4億010万円に対応する額である44.4億円を削減可能であるところ,これを5年かけて順次導入した場合の5年平均物流コスト削減額は26.6億円/年となり,更に物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,削減額は22.6億円となる。 ウ上記104億8000万 を5年かけて順次導入した場合の5年平均物流コスト削減額は26.6億円/年となり,更に物流コスト分析の貢献効果である15%を控除すると,削減額は22.6億円となる。 ウ上記104億8000万円は期待値であるので,原告は,その半額である52億4000万円を単年度当たりのコスト削減効果として主張する。 上記数字が合理的であることは,平成15年頃以降,本件システムを導入した7共販店におけるシミュレーション結果(甲45の1,46の1)が合計10億8100万円であり,これを全共販店(34店)に適用した場合,52億5057万円となって,上記数値(52億4000万円)とほぼ一致することからも裏付けられる。 エ被告は,上記のとおり,物流コスト削減効果の算出に当たり,5年間の効果を平均して計算を行っている上,被告は,導入効果に対し一定額の対価を発明者に支払う実績報奨制度を有するのであるから,5年間のコスト削減効果である262億円(52億4000万円×5年間)を@LISeシステムの価値と評価することは合理性を有する。 オ本件システムに対する原告の寄与率は71%と算出されるから,262億円に71%を乗じた186億0200万円がX理論の本質的価値であり,原告は,これに10%を乗じた18億6020万円を,X理論の具現化を原告が認めたことの対価として主張する。 (3) ②X理論を研究・構築するのに要した実費についてア原告は,被告における就業時間外に,被告の支援なくX理論を研究・構 築したものであるから,「相応の対価」の中に,上記研究・構築に要した費用が含まれることは当然である。 イ原告は平成元年から研究を開始し,少なくとも平成15年までの15年間にわたり研究を行ってきたものであるところ,下記(4)の特許出願のための労 ・構築に要した費用が含まれることは当然である。 イ原告は平成元年から研究を開始し,少なくとも平成15年までの15年間にわたり研究を行ってきたものであるところ,下記(4)の特許出願のための労務に従事した期間(平成13年から平成22年)との重複期間を除くと,研究に従事した期間は12年間となる。 原告は,上記期間において,月当たり66時間(平日1日当たり1時間,休日1日当たり5時間,1月当たりの平日21日,休日9日として計算)研究に従事したものであるところ,大学教授の平均年収は1114万円(平成22年厚生労働省調査)であるから,原告の時間当たりの対価は5802円(1114万円÷12か月÷8時間×20日)となる。 したがって,原告がX理論の研究・構築に要した費用は,下記計算式のとおり5514万2208円となる。 5802円×66時間×144か月(12年間)=5514万2208円(4) ③本件システムに関し特許出願をしたことの実費について原告は,前記前提事実(4)のとおり,本件特許出願を行ったものであるところ,前記(2)カの186億0200円に5%を乗じた金額である9億3010万円が,上記特許出願を行ったことの対価に当たる。 (5) ④上記特許出願に要する実費についてア原告は,平成25年10月までに,弁理士費用として551万9340円,特許出願維持費用として239万8800円(合計791万8140円)を支出した(甲53の1ないし35,54の1ないし15)。 イ原告は,平成13年から平成22年までの10年間にわたり,被告における就業時間外に,本件特許出願のための弁理士との打合せ等に従事してきた。前記(3)イと同じく,原告が上記業務に従事した時間を月当たり66時間,時間当たり単価を5802円とみた 間にわたり,被告における就業時間外に,本件特許出願のための弁理士との打合せ等に従事してきた。前記(3)イと同じく,原告が上記業務に従事した時間を月当たり66時間,時間当たり単価を5802円とみた場合,原告の本件特許出願に 対する労務費は,下記計算式のとおり4595万1840円となる。 5802円×66時間×120か月(10年)=4595万1840円(6) 本件合意に基づく相応の対価の額は,上記(2)ないし(5)でみた①ないし④の金額の合計額であるところ,原告は,主位的請求において,上記合計額のうち,①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価18億6020円のうち3億円,③本件システムに関し特許出願をしたことの対価9億3010万円のうち1億円,②X理論を研究・構築するのに要した実費5514万2208円,④上記特許出願に要する実費791万8140円及び特許出願に対する労務費4595万1840円の合計額1億0901万2188円のうち1億円,の合計額である5億円を請求する。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告が,本件合意に基づく「相応の対価」に含まれると主張する項目(原告の主張(1)①ないし④)のうち,②X理論を研究・構築するのに要した実費については,ライセンサーが,実施料のほかに,開発委託契約ではないにもかかわらず当該発明の開発費を「実費」として上乗せ請求するような主張であって,全く根拠がない。原告は,被告において,本件システムに関する業務等の多忙を理由に(すなわち物流に関する研究に関連して)超過勤務申請を行っているのであり,そうでありながら,同研究を「就業時間外に」行ったと主張するのは自己矛盾であって,許されない。また,原告が自らの意思で行った特許出願の 物流に関する研究に関連して)超過勤務申請を行っているのであり,そうでありながら,同研究を「就業時間外に」行ったと主張するのは自己矛盾であって,許されない。また,原告が自らの意思で行った特許出願の費用(上記③)や労務費(上記④)を「相応の対価」に含めることにも何ら根拠がない。 (3) ①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価について ア原告は,本件システムの価値及びX理論の寄与から対価額を求めているが,次のとおり,本件システム及びX理論の価値は,原告の主張するような大きいものではない。 イそもそも,X理論に独自性がなく,価値に乏しいことは争点(1)アに関する被告の主張(2)のとおりである。 また,原告は本件システムの価値をシミュレーションの効果額から導いているが,その根拠とする資料(甲21の2)は被告社内の正式文書であるとはいい難く,証拠価値に乏しい。上記資料は,被告の全共販店で本件システムによるシミュレーションを実施することを前提にしたものであるが,実際に本件システムを導入したのは全国34共販店のうち7店にすぎないから,上記資料は,期待される効果額を基に試算を積み重ねたものにすぎず,現実の効果額を示したものではない。さらに,原告が本件システムによるシミュレーションの効果として主張する内容は,シミュレーションの前提となるアイデアから導かれたものであり,その大半は,本件システムの開発以前から被告や共販店に存在していたものである(乙11,12)。加えて,本件システムによるシミュレーションの結果から好ましいとされた施策であっても,現実の会社経営又は運用において直ちに実施することが難しいものがあり,また,上記シミュレーション結果どおりの効果が実際に共販店に利益として生じるものでもなかった から好ましいとされた施策であっても,現実の会社経営又は運用において直ちに実施することが難しいものがあり,また,上記シミュレーション結果どおりの効果が実際に共販店に利益として生じるものでもなかった。なお,東京共販において経営合理化に最も効果があったのは,本件システムではなく,人件費削減であった(乙11)。 以上によれば,本件システムによるシミュレーションの効果額は,本件システムという計算機を用いることにより,配送ルートを手計算で決定する手間が省けるという程度の極めて小さいものであり,上記効果に対するX理論の寄与も小さいものにすぎない。 ウ以上によれば,X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの 対価に関する原告の主張には根拠がない。 3 争点(2)ア(債務不履行に基づく損害賠償請求権の成否)(原告の主張)(1) 仮に,本件合意が対価の具体性を欠くことを理由として,本件合意に基づく対価請求ができない場合であっても,原告は,次のとおり,被告に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として,相応の対価相当額の支払を求めることができる。 (2) 本件合意から派生する付随義務としての誠実協議・交渉義務原告は,争点(1)アにおいて主張したとおり,本件合意により定められた義務をいずれも履行しているところ,これは,原告が,被告からの強い要請に応じ,かつ,相応の対価を支払う旨の被告の言を信じたことによるものである。加えて,被告は,日本の製造業を代表する大企業であり,原告が,雇用契約継続中に,被告と対等な立場で本件合意の具体化のための協議・交渉を提案することは不可能な状況であった。これらを考慮すれば,被告は,信義則及び社会的公正の見地から,本件合意を遵守し,その内容を具体化すべく,原告との間で誠実に協議・ 合意の具体化のための協議・交渉を提案することは不可能な状況であった。これらを考慮すれば,被告は,信義則及び社会的公正の見地から,本件合意を遵守し,その内容を具体化すべく,原告との間で誠実に協議・交渉を継続すべき義務を負うものというべきである。 (3) 被告が上記誠実協議・交渉義務を尽くしていないことア本件合意に基づく相応の対価とは,原告がX理論の具現化を認めることの対価,原告の研究に要した実費,原告が特許出願をしたことの対価,特許出願等に要する実費からなる4要素を総合考慮し,社会通念上相応と認められる範囲の金額であり,被告は,上記誠実協議・交渉義務に基づく,上記範囲内の金額を提示すべき義務を負う。 しかるに,被告は,上記範囲内から著しくかけ離れた金額である250万円の提示しかしていないのであるから,被告は,上記義務を履行していない。 イまた,被告は,本件合意を否定する趣旨の言動を取ってはならず,かつ,原告の意見を十分に聴取し,原告の求めに応じ,対価算定のための資料や根拠の開示に速やかに応じなければならないのであって,被告が過去の言動と相反する言動に及び,又は原告の信頼を裏切る行為があれば,当然に本件誠実協議・交渉義務違反となるというべきである。 しかるに,被告は,原告の定年再雇用時に再雇用契約の更新を拒絶する姿勢をみせ,平成14年から平成16年頃,原告の勤務が深夜に及ぶ高負荷状況となっていたにもかかわらずこれを適時に改めず,さらに,平成16年4月27日には,原告を本件システムの担当から外そうとするなど,本件合意に基づく相応の対応をしてこなかった。また,被告は,平成17年に先使用を理由として被告の対価支払義務を否定する発言をするなど,本件合意を覆す言動を繰り返した。また,被告は,平成19年2月2日に対価の 基づく相応の対応をしてこなかった。また,被告は,平成17年に先使用を理由として被告の対価支払義務を否定する発言をするなど,本件合意を覆す言動を繰り返した。また,被告は,平成19年2月2日に対価の具体的提案をするに際し,原告の意見を十分に聴取せず,かつ,その根拠を明らかにしなかった。 加えて,被告は,自ら強く要請して原告を本件システムの開発に従事させ,特許出願をさせたにもかかわらず,平成12年には,対価を決める際には原告出願特許の有効性を否定することを画策し,実際に平成20年11月25日には,原告出願特許に無効理由がある可能性がある旨の主張を展開するに至った。 (4) したがって,被告には,上記誠実協議・交渉義務違反の債務不履行があり,被告は,上記債務不履行に基づき,原告に対し損害を賠償すべき義務を負う。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 争点(1)アに関する被告の主張のとおり,本件合意が存在しない以上,被告が,本件合意に基づき付随義務を負うこともない。Qによる,いくばくか の金員を支払う旨の発言は,広い意味での原告の功労に報いるという趣旨のものであり,これにより何らかの付随義務が発生するようなものではない。 (3) 原告が,付随義務違反に当たると主張する行為は,いずれも正当な理由のあるものであり,被告につき,何らかの義務違反を構成するものではない。 4 争点(2)イ(損害額)(原告の主張)(1) 原告は,被告が誠実に本件合意に基づく義務を履行していれば,相応の対価の支払を得られたはずであるにもかかわらず,被告の債務不履行により,上記相応の対価の支払を受けることができなかった。したがって,原告は,債務不履行に基づく損害賠償請求において,合意に基づく対価請求と同様に,①X理論のコンピュー かかわらず,被告の債務不履行により,上記相応の対価の支払を受けることができなかった。したがって,原告は,債務不履行に基づく損害賠償請求において,合意に基づく対価請求と同様に,①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価,②X理論を研究・構築するのに要した実費,③本件システムに関し特許出願をしたことの対価,④上記特許出願に要する実費の合計額を請求することができる。 (2) 原告は,債務不履行に基づく損害賠償請求として,上記①ないし④の合計額のうち,①X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価18億6020円のうち3億円,③本件システムに関し特許出願をしたことの対価9億3010万円のうち1億円,②X理論を研究・構築するのに要した実費5514万2208円,④上記特許出願に要する実費791万8140円及び特許出願に対する労務費4595万1840円の合計額1億0901万2188円のうち1億円,の合計5億円を請求する。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 金銭債務の不履行に基づく損害賠償は,民法419条により遅延損害金 と定められているから,本件合意に基づく相応の対価支払義務の不履行による損害賠償金として,「相応の対価」と同額の支払を請求する原告の主張は,主張自体失当である。また,誠実交渉義務等の付随義務違反によって,本来債務の履行によって得られるべき対価と同額の損害が発生するとの点についても根拠がない。 5 争点(3)ア(不当利得返還請求権の成否)(原告の主張)仮に本件合意の存在又は効力が認められない場合,被告は,対価を支払うことなくX理論をコンピュータ上で具現化し,これにより利益を得ているのであるから,原告は,上記利得の返還を求めることができる。 (被告 本件合意の存在又は効力が認められない場合,被告は,対価を支払うことなくX理論をコンピュータ上で具現化し,これにより利益を得ているのであるから,原告は,上記利得の返還を求めることができる。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 争点(1)アに関する被告の主張のとおり,本件システムは,原告が独力で完成させた理論を具現化したものではないから,不当利得返還請求が成立する余地はない。そもそも,本件合意の成立が認められない場合,被告が相応の対価を原告に支払うべき根拠が失われるのであるから,相応の対価が原告の損失又は被告の利得となる根拠がない。 6 争点(3)イ(利得額)(原告の主張)(1) 被告は,X理論をコンピュータ上で具現化し,その対価相当額の利得を得ており,原告は同額の損失を受けているのであるから,原告は,不当利得返還請求において,X理論をコンピュータ上で具現化することを認めたことの対価を,原告の不当利得として返還請求することができる。 (2) 原告は,不当利得返還請求において,上記X理論のコンピュータ上における具現化を認めたことの対価18億6020円のうち5億円を請求する。 (被告の主張) 原告の主張は争う。 7 争点(4)(遅延損害金の起算日)(原告の主張)(1) 被告は平成18年まで本件合意の具体化のための協議・交渉を提案してきたことがなく,平成19年2月2日に初めて原告に対し具体的金額(250万円)を提示したものであるから,原被告間で本件合意の具体化のための協議・交渉が開始された日は同日ということができる。 そうすると,原告と被告との間に,本件合意に基づく相応の対価の支払期限を同日とする黙示の合意が成立しているものというべきである。 (2) したがっ 始された日は同日ということができる。 そうすると,原告と被告との間に,本件合意に基づく相応の対価の支払期限を同日とする黙示の合意が成立しているものというべきである。 (2) したがって,主位的請求,予備的請求①及び②のいずれについても,遅延損害金の起算日は平成19年2月2日となる。 (被告の主張)原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(合意に基づく対価請求権の成否)(1) 前記前提事実に加え,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,争点(1)アに関し,以下の事実が認められる。 ア被告は,平成10年頃から,アフマ部において,東京共販の業績改善のため,物流システムの改善を検討していたところ,前記前提事実(1)ア(イ)及び(2)のとおり,当時,被告アフマ部供給管理室に所属していた原告が,物流に関し個人的に研究活動を行い,本件論文を作成するなどしていたことから,原告に依頼して,その研究内容等について説明を受けることとした(甲11の1ないし15,56,原告本人)。 イ原告は,平成10年6月頃,被告アフマ部関係者に対し,「K東京物流コストの削減アプローチ-物流ネットワークの解析による-」と題する資料(甲11の1ないし10)を用いて説明を行い,さらに,同年7月頃, 「Pre打合(第1回)」と題する資料(甲11の11ないし15)を用いて打合せを行った(甲11の1ないし15,甲56,原告本人)。 ウ上記説明及び打合せの結果,被告アフマ部は,東京共販の物流システム改善のために本件論文等を利用し,東京共販の物流効率化をサポートするためのシステム(本件システム)の開発を行うこととし,前記前提事実(3)のとおり,平成10年8月頃,本件プロジェクトを 物流システム改善のために本件論文等を利用し,東京共販の物流効率化をサポートするためのシステム(本件システム)の開発を行うこととし,前記前提事実(3)のとおり,平成10年8月頃,本件プロジェクトを開始するに至った(甲56,乙10)。なお,前記前提事実(3)イのとおり,本件プロジェクトは被告従業員,東京共販従業員及び富士通従業員で構成され,原告がシステムインテグレーターとして関与するものであった。 エ被告アフマ部従業員・Uは,同年8月10日,原告に対し,「時間マップ・最適立地・コスト分析は明らかに「立派なノウハウ」と考マるマ。しかもトヨタノウハウというよりXさんノウハウであり,Xさん抜きでTプロジェクト(行く行くのTASS)は成り立たない。」,「特許・学会の話について,一度レクチャーして下さい。…今回の構想がうまく行ったとして,学会での発表等,Xさんはまずどうしたいのか,富士通が何をする可能性があるのか,留意すべき点は何なのか」等と記載したメールを送信した(甲16)。また,被告アフマ部共販店室スタッフリーダー・Wは,同月17日付けで,「Tプロジェクトについての再確認」と題する書面(甲17)を作成し,同書面中に,「Ⅱ 知的所有について/当PrjはXSL個人の知的所有を出発・核としており,当然「保護」「尊重」されるべきである。/Ⅲ 懸案事項/(1)知的所有の切り分け」等と記載した(甲17)。 オ被告知財部と被告アフマ部は,同年12月18日,「物流ネットワーク制御システムの特許申請方法」を議題とする打合せを行い,被告アフマ部からは,本件システムが個人の私的論文から出発したものであり,これをシステム化するものであること,システム化のための理論・推進方法は上 記論文に基づいていること,上記論文は原告が業務とは 部からは,本件システムが個人の私的論文から出発したものであり,これをシステム化するものであること,システム化のための理論・推進方法は上 記論文に基づいていること,上記論文は原告が業務とは無関係に行った研究の成果であることなどが示され,本件システムに関する特許出願等の扱いにつき,知財部に対し伺いがなされた(甲18の1・2)。これに対し,被告知財部は,本件システムの出発点である本件論文の中にある特許内容は業務発明(従業者の職務範囲に属しないことから職務発明には該当しないが,使用者の業務範囲に属する発明を指すものとして,被告知財部で用いられていたもの〔甲18の3,証人Q〕。以下,そのような意味で「業務発明」の語を使用する。),本件システムの中にある特許内容は職務発明と扱う旨の見解を示し,被告知財部と被告アフマ部は,本件システムに関し,業務発明部分(本件論文)と職務発明部分(本件システム)が切り分けられたという認識を共有した。その上で,被告知財部と被告アフマ部は,本件システムに関し,業務発明に該当する部分と,職務発明に該当する部分を明確に切り分ける作業を行うこと,職務発明については被告の規定により,業務発明については知財部が条件を提示して原告と話し合いを行うことにより,被告が譲渡を受け特許出願を行う予定とすること,富士通の関与による部分についてもまとめる作業を行うことなどを確認した(甲18の3・4)。なお,上記打合せは,原告も同席して行われたものであった(甲18の4)。 カ被告アフマ部は,上記打合せを受けて,本件システムについて分析を行い,平成11年1月14日,知財部との打合せにおいて,本件システムに関し知的財産性の認められる技術合計14件のうち,原告の100%業務発明に該当するものは7件,100%職務発明に該当するも 分析を行い,平成11年1月14日,知財部との打合せにおいて,本件システムに関し知的財産性の認められる技術合計14件のうち,原告の100%業務発明に該当するものは7件,100%職務発明に該当するものは1件,その中間に該当するもの(業務寄り)は4件,富士通の発明に該当するものは2件であるとの見解を示し,本件システムの骨格が本件論文に立脚していること及び本件論文は被告アフマ部が使用依頼をしたものであることから,職務発明での処理は難しい旨の意見を表明した。これを受けて,被告 知財部は,原告から,業務発明を含めた全発明につき譲渡を受ける前提で特許申請作業を急ぐこととした(以上につき甲19)。 キ原告と被告知財部,被告アフマ部は,同年2月15日,打合せを行い,知財部は,譲渡条件が決まらないと次のステップ(特許申請処理)に進めないとして,原告に対し,その発明の譲渡条件として,被告の大学教授との発明規定に合わせた提案(出願費用は被告が負担し,発明実施の対価は被告については無償とする。譲渡の対価は,通常出願1件につき20万円,重要出願1件につき40万円とし,契約成立時に支払う。)をしたが(甲22),原告は上記対価による譲渡を拒絶した(甲56,原告本人)。 ク原告は,平成10年頃から,平成11年3月27日に開催される日本物流学会中部支部会において研究成果を発表することを予定していたが,上記のとおり,原告の研究成果の提供に基づき本件プロジェクトが進行し,本件システムに関し特許出願を行うことの検討が行われている状況であったことから,上記学会における発表により特許申請に影響が及ぶことを避けるため,同年3月8日,上記学会における発表内容を,特許申請予定部分を除いた序論及び実体調査モデルのみにとどめる旨の社外発表決裁書を被告取締役宛 学会における発表により特許申請に影響が及ぶことを避けるため,同年3月8日,上記学会における発表内容を,特許申請予定部分を除いた序論及び実体調査モデルのみにとどめる旨の社外発表決裁書を被告取締役宛てに提出し,承認する旨の決裁を得た(甲15の1・2,25,56)。 ケ(ア) 被告知財部と被告アフマ部は,平成12年3月14日,本件システムの特許化について打合せを行った。同打合せにおいて,被告アフマ部は,業務発明により得た知的財産(ノウハウ)を生かし本件システム開発を行ってきたことを前提として挙げた上で,本件システムに関し特許化すべき項目(大項目として物流ネットワーク制御システム,物流コスト分析,配送制御システム,物流施設立地制御システム),当該項目における原告,被告,富士通のノウハウの比率(原告の比率は上記大項目順に93.1%,65.3%,57.5%,63.0%とされてい る。)及び期待される効果を一覧表にしたもの(甲21の2)を示し,原告が,利用者側からの効果の評価とそれに見合う対価を求めていることを示した。 (イ) これに対し,被告知財部(特許室)は,特許申請の方法としては①被告が譲渡を受け被告が出願,②被告と個人(原告)が共同出願,③個人(原告)が出願の3通りが考えられるが,共同出願(上記②)は前例がなく,その必要性もないため考えられないこと,被告出願による特許化(上記①)のためには被告が原告から特許を受ける権利の譲渡を受けることが前提となるが,業務発明・職務発明のいずれの場合であっても,譲渡については現規定を適用する以外なく,新たな規定を設定する理由は考えられないこと,本件システムの効果を実施前に評価することはできず,被告アフマ部から示された期待効果等の一覧表(上記(ア))は現段階では意味をもたないこと,職務 外なく,新たな規定を設定する理由は考えられないこと,本件システムの効果を実施前に評価することはできず,被告アフマ部から示された期待効果等の一覧表(上記(ア))は現段階では意味をもたないこと,職務発明の場合には,導入による効果に対し5年間一定の対価を発明者に対し支払う実績報奨制度があるが,業務発明の場合には,被告の規定上,譲渡条件が効果も含めた一時払い額となっているので,本件システムの効果を譲渡対価に反映することができず,現規定(大学教授の発明について,通常出願につき20万円/円,重要出願につき40万円/円)以外の対応はできないこと,本件を業務発明として取り扱うことは,昨年,知財部室長までは了解済みであり,部長への報告も済んでいる事柄であるが,特許化申請の中で,同様のケースを職務発明として扱っている例は多数あること等の見解を示した。 (ウ) これにより,知財部とアフマ部との間で,新たな譲渡条件の提示はできず,原告からの特許を受ける権利の譲渡につき進展が期待できないことが確認され,被告アフマ部は,譲渡条件が決まらないと特許化処理ができず,システム開発も不可となる旨の懸念を示し,被告知財部は,本件システムの開発自体は被告による特許出願なしでも被告アフマ部の 裁量により可能だが,実施前に決着する必要がある旨の見解を示した。 (エ) 上記打合せでは,さらに,本件システムについて特許化するか否か,また,ライセンス料の取り扱い(ライセンス料が発生するか否か,その場合の特許申請との関係,ライセンス料の決定方法〔効果評価の仕方〕,ライセンス料の配分方法,ライセンス契約方法等)等についても検討がされ,まず,本件システムの特許化については,譲渡条件が成立してから判定を行うが,特許化のためには,ロイヤリティ収入があること又は他社けん制の必要が 分方法,ライセンス契約方法等)等についても検討がされ,まず,本件システムの特許化については,譲渡条件が成立してから判定を行うが,特許化のためには,ロイヤリティ収入があること又は他社けん制の必要があることが必要であり,被告のみ(共販店内のみ)の活用であれば特許化は不要であるが,富士通に市販化の意思があれば特許化が必要となること等が確認された。また,ライセンス料(ロイヤリティ)に関しては,特許と別にノウハウに対するロイヤリティは設定せず,ロイヤリティは特許を受ける権利の譲渡対価に含めての一括払いとしたい旨の考えが示された(上記(ア)ないし(エ)につき甲20,21の1・2)。 コ上記打合せを踏まえ,被告アフマ部と被告知財部は,同年4月12日に再度打合せを行い,被告アフマ部から,本件システムにつき原告個人が特許出願を行うことについて問題はないか,原告個人と被告との間で契約を交わす必要があるかについて問い合わせがされた。被告知財部は,これに対し,原告個人が特許出願を行うことは出願の選択肢の一つであり問題はないこと,被告における実施を確保できるよう,原告個人から実施を拒否しない旨の確認を取っておくことが望ましく,契約書(覚書)等を交わしておく方法でもよいが議事録等で記録に残す程度でもよいこと,覚書を交わすのであれば,実施料は別途協議の上決定する旨表現すること(無償使用では問題があるのでは?)との見解が示された。また,被告知財部からは,上記実施料は特許の有効性を検討した上で決めることになり,その際に特許の有効性を否定する活動を行わざるを得ないとの見解が示され,被 告アフマ部から,その場合原告個人の感情を損なわないよう十分に留意願いたい旨の意見が表明された(甲28)。 サ上記打合せ結果を受けて,同年5月頃,被告アフマ部の当時の部長 解が示され,被 告アフマ部から,その場合原告個人の感情を損なわないよう十分に留意願いたい旨の意見が表明された(甲28)。 サ上記打合せ結果を受けて,同年5月頃,被告アフマ部の当時の部長であったQは,原告に対し,本件システムにつき,原告が個人として特許出願を行うことを前提として,本件システムを被告が開発・実施することについて承認を求めるとともに,これに対し相応の対価を支払う旨の発言をし,原告はこれを了承した(上記発言の具体的内容及びその法的効果については後記(2)で検討する。)(甲56,乙10,証人Q,原告本人)。 シ本件システムのソフトウェアの要件書が平成13年3月21日に,上記要件書に基づく本件システムのソフトウェアが平成14年3月頃に完成したことは,前記前提事実(3)ウのとおりである。 ス原告は,平成16年4月27日,被告アフマ部部長・Rから,同年6月から本件システムの担当から外す旨の通知を受けたことから,本件システムに関する過去の経緯・約束が実行されていない旨を述べた。これに対し,上記Rは,個人に帰属する知的財産を使う以上,払うべきものは払わなければならない,従前の経緯について整理が必要である旨の見解を表明し(甲33の1,34),同部・Uは,上記見解に関し,前段はQ部長と同じ,後段はアフマ部部長として妥当な判断との評価を原告に伝達した(甲34)。原告は,これを受けて,平成17年4月頃までにかけて,本件に関する経緯をまとめた書面(甲29の1)を作成し,上記書面は,同年6月頃までにかけて2度にわたり改訂された(甲29の2・3)。 セ被告知財部は,平成17年11月頃,被告は本件システムについて先使用による通常実施権を有するから費用負担は生じない旨の見解を示し,原告は,これに対し,先使用の要件を満たさない旨及びア ・3)。 セ被告知財部は,平成17年11月頃,被告は本件システムについて先使用による通常実施権を有するから費用負担は生じない旨の見解を示し,原告は,これに対し,先使用の要件を満たさない旨及びアフマ部Q部長から相応の対価・対応の確約を得ている旨などを反論した(甲33の5,35)。同年12月20日,原告,被告アフマ部及び被告知財部は打合せを 行い,従前の経緯についての各自の認識を確認し,被告知財部からは,原告の出願に係る発明が職務発明であるか否かについては事実を調査して明確にすべきであるが,平成12年4月12日打合せの議事録(上記ケ)の内容は尊重すべきである旨の見解が示された(甲26の2・3)。 ソ前提事実(5)のとおり,被告(知財部)は,平成19年2月2日,原告に対し,本件特許発明の利用の対価として一時金250万円の提案を行った。 タ原告は,平成20年3月31日,代理人弁護士から被告に宛てて通知書(乙2)を発出し,上記ソの申し入れに係る対価額の算出根拠が不明であること等から,上記申し入れを受け入れることができない旨を述べた上で,本件特許発明の実施許諾契約の締結のためであるとして,上記対価額の算出資料及び具体的算出根拠の開示を求めた(乙2)。 チこれを受けて,被告は,同年6月30日付けで,原告に対し,上記250万円は,本件システムの開発費(富士通に対し支払った開発関連費用)1億2776万5500円に,本件特許発明の寄与率として3分の1を乗じ,さらに実施料率5%を乗じて算出したものである旨を,富士通から被告に送られたメール等を添えて送付した(甲40)。 ツ原告は,同年10月10日付け通知書(乙3)において,開発費ではなく物流コスト削減効果を基に実施許諾料を算定すべきであると主張し,平成17年から平成20年までの累 を添えて送付した(甲40)。 ツ原告は,同年10月10日付け通知書(乙3)において,開発費ではなく物流コスト削減効果を基に実施許諾料を算定すべきであると主張し,平成17年から平成20年までの累積的な物流コスト削減効果は合計15億6000万円であるから,これに5%を乗じた金額である7800万円を本件特許権の実施許諾料の一つの目安と考えることもできる旨を通知した(乙3)。 テ被告は原告に対し協議の場を設けることを提案したが(乙4),原告は,平成20年11月10日付けで,本件特許権の実施許諾料として8億8400万円を請求する旨を通知し(甲41の1),被告は,これに対し,本 件特許権に無効理由が存在する可能性があること等を述べ,協議の場を設けることを更に提案した(乙5)。 ト原告は,平成23年10月24日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 (2) 本件において,原告は,合意に基づく対価請求の根拠として,被告が,平成12年5月頃,被告アフマ部部長Qを通じて,原告に対し,①原告がX理論を被告のコンピュータ上で具現することについて承認し,②外部防御のため原告がその名義で特許を出願すること,③被告が上記①,②に対し相応の対価を支払うことを提案し,原告がこれを受け入れたことを主張する。 被告も,Qが,上記の頃に,原告に対し,原告が被告における職務外での研究成果に関して将来特許権を取得し,かつ,当該特許に係る発明を本件システムの一部として利用するのであれば,いくばくかの金員を支払う旨を話したことは認めているが,前記(1)サのQの発言の趣旨について,Qが,原告から,その研究成果について個人で特許出願をしたいという意向を聞いたことから,原告が特許権を取得した場合であって,被告が上記特許権を利用して利益を上げた場合 )サのQの発言の趣旨について,Qが,原告から,その研究成果について個人で特許出願をしたいという意向を聞いたことから,原告が特許権を取得した場合であって,被告が上記特許権を利用して利益を上げた場合には,必要に応じて特許利用料を支払うことになるだろうという特許制度上当然のことを述べ,特許利用料により原告が出願費用を少しでも回収できればよいというQの気持を個人的に伝えたものにすぎないと主張する。その主張の趣旨は,Qの発言は,知財部と被告アフマ部との間の前記(1)ケ,コ等の打合せを踏まえた組織的なものではなく,また,被告から原告による特許出願を依頼したり,「相応の対価」との表現をしたりするなどの法的な合意とみられるような表現を用いたものでもないとするところにあるものと解される。 そこで,Qの発言の趣旨及びその発言内容について検討することが必要となる。しかし,その発言の趣旨及び発言内容を検討するに当たっては,その前提として,①原告がX理論と称するものの成立時期とその知的財産として の価値,②X理論と本件システムとの関係を検討する必要があるから,以下においては,まず,上記①,②の点を検討し,その上で,Qの発言の趣旨及び発言内容について検討する。 ア 「X理論」の成立時期と知的財産としての価値原告は,原告のいうX理論は,本件論文を基礎として,平成10年8月頃までに完成させた物流理論であると主張するので,検討する。 (ア) 本件論文の内容a 本件論文は,「物流施設立地の条件」を明確にし,「販売物流施設の最適立地」を探ることを目的とするものであり(甲8・5頁),物流施設立地の諸研究について概観した上で(第1章),実態調査に基づき事例研究を行い(第2章),「物流施設立地の条件」の組み立てを行って(第3章),その条 ことを目的とするものであり(甲8・5頁),物流施設立地の諸研究について概観した上で(第1章),実態調査に基づき事例研究を行い(第2章),「物流施設立地の条件」の組み立てを行って(第3章),その条件を,「分散型モデル」,「集約型モデル」,「中間型モデル」の3類型において検証し,「集約型モデル」が最適モデルであることについて論じた(第4章)ものである。 b 具体的にみると,第1章は,従前の諸研究の内容を概観し,その問題点として,顧客分布把握と物流施設立地による顧客サービス目標の実現について言及している研究がほとんどないことなどを示したものである(甲8・17頁)。また,第2章は,「P社」モデルの考察を行うことで,物流施設立地を検討する場合,物流施設は顧客サービス目標が達成できる範囲内で可能な限り物流拠点化するより配送拠点化する方がコスト面で有利であること,物流コストの80%を入庫・出庫・配送作業費が占めることから,物流施設立地検討を行う上では,多段階の物流作業を回避するプランを策定することが重要であることを結論として示したものである(甲8・35頁)。 第3章は,第1・2章の検討結果に加え,顧客サービスと物流コストのバランスを図るためには顧客サービス目標の設定と物流コストの 把握が必要であるとの見解(甲8・37頁)を踏まえて,物流施設立地検討のための条件として6項目を挙げたものであり(甲8・40頁~43頁),第4章は,その具体的検証及び意味付けをしたものである(甲8・44頁~)。 c 第4章について更に具体的にみると,第4章は,第3章でみた条件を各モデルにおいて検証するためには,まず,各モデルにおける物流作業及び物流コストの定量的把握が必要であるとして,その方法を示し,これによって定量的に把握された物流作業回数及び物流コ 3章でみた条件を各モデルにおいて検証するためには,まず,各モデルにおける物流作業及び物流コストの定量的把握が必要であるとして,その方法を示し,これによって定量的に把握された物流作業回数及び物流コストを用いて,各モデルの検証を行っている。このうち,分散型モデルにおいては,顧客へのサービス目標時間(4時間)を前提として,配送車30分で行ける距離を30分距離メッシュ(時間距離)とし,4メッシュに営業所を設けるものとしている(甲8・p47)。上記検証の結果,「集約型モデル」においては,営業所併設型の物流施設を非在庫化,配送拠点化することにより,入庫・保管・出庫作業の回数を減らし,これらの作業に有するコストを抑えることができることや,本部センターの活用(直送を行うなど)により,多段階の物流作業を回避し,物流コストを抑えることができることが示されており,結論として,集約型モデルの方が物流作業・コスト面において有利であることが示されている。 d 第4章の結論部分の記載(甲8・77頁)からは,本件論文が,顧客サービス目標の評価(目標の設定及び顧客分布の把握により行う。)及び物流コストの定量的把握を行った上で,物流コスト抑制のために集約型モデルを採用(物流施設の可能な限りの配送拠点化,多段階物流の廃止)することで,一定の(当該顧客について設定される)顧客サービス水準を保ちながら,物流コスト抑制を達成できる物流施設立地を提言しようとするものであることをうかがうことができ る。 (イ) 本件説明資料(甲11の1ないし15)の内容a 本件説明資料(甲11の1ないし15)は,前記のとおり,関係者に対し研究概要を説明するために作成された資料であることから,断片的かつ簡潔な記載によるものであり,これらの記載のみから何らかの具体的理論を読み取 料(甲11の1ないし15)は,前記のとおり,関係者に対し研究概要を説明するために作成された資料であることから,断片的かつ簡潔な記載によるものであり,これらの記載のみから何らかの具体的理論を読み取ることは困難である。しかし,甲11の1の「Ⅰ 目的」欄に,「物流コストとサービスはトレード・オフの関係」等の表記とともに図が示されている。その図中のグラフにおいては,縦軸をコストとし横軸にサービスとして,現状と「ねらう点」を対比的に示しており,「ねらう点」のサービスは現状からは微減であるのに対し,コストは大幅に低減されている図とされている。このことからは,コストとサービスは相反する関係にあるが,サービス水準を微減させつつコストを大きく下げられる点が「ねらう点」であることを読み取ることができる(甲56によれば,ここにいうサービスの微減とは,顧客との合意の範囲内でオーバーサービスを止めるということであり,サービスの低下という意味ではない。以下,原告の主張する意味でのサービスの低減を「サービスの合理的低減」と表記する。)。また,コストとサービスの関係を示した上記グラフと「物流立地戦略」が「サークル的な相関」との表示でつながれていることに加え,本件論文が,物流立地に応じた物流コストの定量的把握について触れていること(上記(ア)c)も考慮すれば,甲11の1は,顧客サービス及び物流コストを定量的に把握することができることを前提に,これを改善の前後で比較することを示したものであり,上記比較によって,「ねらう点」を達成しようとするものであるとみることができる。 b 甲11の2及び10の記載に,上記(ア)でみた本件論文の内容を加 味して見ると,甲11の2及び10は,顧客サービス目標の設定(受注~着荷リードタイムの設定)を行い,さらに,顧客分布を b 甲11の2及び10の記載に,上記(ア)でみた本件論文の内容を加 味して見ると,甲11の2及び10は,顧客サービス目標の設定(受注~着荷リードタイムの設定)を行い,さらに,顧客分布を把握した上で,これらを基に,営業所の配置・顧客への配送を検討し,また,物流コストを分析する必要性があることが記載されているとみることができる。また,このうち,物流コストの分析については,本社・営業所別に,また,作業工程(入庫,保管,出庫,配送)別に,さらには工程内で,物流コストを分析する必要性があること及びその定量的把握の方法が示されているものとみることができる(甲11の2の物流ネットワークシステムの欄内の上部には,サービス内容を考慮した上での物流コストの定量的把握をした結果としての物流コストの例〔入庫15,保管20,出庫30,配送35〕が示されており,同欄の右下部には,上記コストの算出が,顧客,物流拠点,本部センターでの作業・費用の合計によって算出されることが示されている。)。 c 甲11の12ないし14からは,抜本的コスト削減,施設の統廃合等を目的として,現状の把握の必要性とその手法,サービスの合理的低減を前提とするサービス戦略の見直し・多段階物流の回避等の手法の実施が提言されたことをうかがうことができる。そして,配送に関しては,配送L/T基準のほか,配送コース設定基準として,一周にかかる時間,配送軒数,荷重が挙げられている(甲11の14)。また,物流ネットワーク制御については,物流ネットワーク,商品の流れ・物流コストの多頻度のシミュレーションによりシステム化をサポートすることが示されている(甲11の12)。 (ウ) 「X理論」の成立時期以上によれば,本件論文の内容と本件説明資料の内容は照応しており,本件説 ョンによりシステム化をサポートすることが示されている(甲11の12)。 (ウ) 「X理論」の成立時期以上によれば,本件論文の内容と本件説明資料の内容は照応しており,本件説明資料による説明が終了し,本件プロジェクトが開始された平成12年8月頃には,上記(ア)及び(イ)の内容の理論(以下,上記(ア)及 び(イ)の内容をもつ理論を単に「X理論」という。)が完成していたものと認めるのが相当である。 (エ) X理論の知的財産としての価値被告は,原告がX理論と主張する内容は,原告が本件論文で引用している文献(乙7~9)に記載されている内容と実質的同一であると主張し,その知的財産としての価値を否定する。そこで,上記(ア)及び(イ)の内容のX理論が,乙7ないし9の内容と実質的に同一といえるかについて検討する。 a 乙7ないし9の内容乙7ないし9(いずれも唐澤豊・今野哲平著「物流情報システムの設計」からの抜粋である。)をみると,これらの文献には「顧客サービスは競争原理によりサービスレベルが設定され,そのサービスレベルを達成するためにいかに最少の物流費でまかなうことができるか考えるのが物流戦略である。」との記載があるなど(乙8・77頁),サービス水準は一定のものであることが前提とされていることがうかがわれ(乙7・83頁,乙9・204頁),コスト削減のためにサービスを合理的に低減させることを許容することについては言及がない。 そのため,乙7ないし9には,物流費に関して各拠点における運送費・保管費・荷役費の把握を要する旨の記載(乙7・85頁),商品別に又は地域別に物流費を把握することが必要である旨の記載や(乙8・80頁),輸送・配送手段の選択について,手段毎の物流費を算出しコンピュータ上でコス 費の把握を要する旨の記載(乙7・85頁),商品別に又は地域別に物流費を把握することが必要である旨の記載や(乙8・80頁),輸送・配送手段の選択について,手段毎の物流費を算出しコンピュータ上でコストの試算を行うことが,物流コスト低減のための対策についてシステムとして考えられる旨の記載(乙9・202頁)はみられるが,サービス内容を考慮した上での上記計算の具体的手法や,上記コストを営業所毎に定量的に比較検証すること,集約型モデルの採用により,上記コストを削減できることが定量的に説明 可能であることなどが記載されている箇所は見当たらない(例えば,乙7・85頁では,「物流費に関しては,各拠点における運送費・保管費・荷役費の把握をしなければならない。」としながらも,それに続けて「これらの費用は物流量と比例関係にある。」としている。)。 以上によれば,本件論文及び本件説明資料から読み取ることのできるX理論の内容のうち,物流コストを下げるために,サービスを,許容できる範囲において合理的に低減させることや,上記サービスの合理的低減によるコスト削減効果を,変更の前後について定量的に比較検証すること,上記定量的計算のための具体的手法(営業所毎に発生する個別のコストの明確化),上記コスト削減は,集約型モデルの採用(多段階物流の排除,営業所の配送拠点化)によって達成可能であることなどは,乙7ないし9にも開示されていない独自のものということができる。 b 被告の対応被告アフマ部は,本件プロジェクトの開始当初から,本件システムに含まれ得る技術的事項の特許化について検討の必要性を認識していたものとみられるのであって,被告アフマ部と被告知財部は,打合せを複数回にわたり行って,本件システムに含まれ得る技術的事項のうち,発明性のある部分はどの部分 の特許化について検討の必要性を認識していたものとみられるのであって,被告アフマ部と被告知財部は,打合せを複数回にわたり行って,本件システムに含まれ得る技術的事項のうち,発明性のある部分はどの部分か,当該部分につき特許を受ける権利が,誰に帰属するものであるかという点について具体的に検討し(前記(1)オ,カ),さらに,平成11年1月には,本件システムに関し,原告から特許を受ける権利の譲渡を受けなければ,被告による特許出願を行うことができないとの認識を共有した上で,原告から全発明につき特許を受ける権利の譲渡を受けることを前提に,その条件等について検討を進めていた(前記(1)カ)。 c 以上によれば,原告が本件プロジェクトの開始に当たり提供した知 見(X理論)に知的財産性がないものとは認められない。 イ X理論と本件システムとの関係(ア) X理論の内容は,前記アの(ア)及び(イ)のとおりであり,本件システムの対比のために,その内容を具体的に述べれば,①物流施設の最適立地を実現するためには,多段階物流を排除した集約型モデルが適切であり(前記(2)ア(ア)a,d),顧客へのサービス目標時間(4時間)を前提として,メッシュを用いた時間距離の考え方を示している(前記(2)ア(ア)c)。②配送に関しては,配送L/T基準のほか,配送コース設定基準として,一周にかかる時間,配送軒数,荷重が挙げられている(前記(2)ア(イ)c)。③物流コストの分析については,本社・営業所別に,また,作業工程(入庫,保管,出庫,配送)別に,さらには工程内で,物流コストを分析する必要性があること及びその定量的把握の方法が示されている(甲11の2の物流ネットワークシステムの欄内の上部には,サービス内容を考慮した上での物流コストの定量的把握をした結果としての物流 トを分析する必要性があること及びその定量的把握の方法が示されている(甲11の2の物流ネットワークシステムの欄内の上部には,サービス内容を考慮した上での物流コストの定量的把握をした結果としての物流コストの例〔入庫15,保管20,出庫30,配送35〕が示されており,同欄の右下部には,上記コストの算出が,顧客,物流拠点,本部センターでの作業・費用の合計によって算出されることが示されている。)(前記(2)ア(イ)b),④物流ネットワーク制御については,物流ネットワーク,商品の流れ・物流コストの多頻度のシミュレーションによりシステム化をサポートすることが示されている(前記(2)ア(イ)c)。 (イ) 次に,本件システムの内容は,次のとおりである(甲10の1ないし5,36,37)。 ① 物流施設立地制御システム顧客分布・顧客サービスL/T基準を基に,最適物流施設立地(位置・数)を決定し,配送制御(最適配送)・物流ネットワーク制御 (多段階物流の排除)を実現できるとするもの。具体的には,顧客との合意により,商品別に顧客サービスL/T基準を設定し,メッシュ上に物流施設の候補となる交点を求め,上記物流施設候補と顧客との間の距離・所要時間を求めた上で,最適立地円(全ての顧客を網羅した,指定顧客サービスL/T基準で最小値となる円の候補点位置)を作成し,距離マップ・時間マップ上に表示するというものである。なお,実現のために,上記物流施設候補から,候補地にならない所を削除したり,現状施設等一部の施設を前提とした残候補地のみを検索したり,一部地域内での最適候補地を検索したりすることも可能である。 ② 配送制御システム顧客分布・顧客サービスL/T基準を基に,最適配送コース・ダイヤを作成し,かつ,パフォーマンスメジャー(配送評価 ,一部地域内での最適候補地を検索したりすることも可能である。 ② 配送制御システム顧客分布・顧客サービスL/T基準を基に,最適配送コース・ダイヤを作成し,かつ,パフォーマンスメジャー(配送評価基準)を新設し,現状・改善後のコスト評価を行うことにより,最小コスト化を実現できるとするもの。具体的には,トラック条件(トラック車格・単価・契約形態),シミュレーション範囲,顧客受け取り時間を各指定した上で,顧客分布を基にした配送コースを決定し,複数のコースを組み合わせて最小(時間・距離)となる順路(コース)を決定して,トラック組み合わせ・配送コース・配送評価を表示するというものである。なお,トラックの積載率や配送時間に余裕がある場合にはトラック車格・顧客納品時間を変更し,また,シミュレーションダイヤを基に実走行を行った結果,移動時間が違う場合には,速度を修正することにより,配送の最適化を図ることができる。 ③ 物流コスト制御システム決算情報(P/L・B/S)から物流費の配分方式を確立し,物流原単位コスト(商品1個当たりコスト〔ミクロコスト〕)を算出することができるというもの。具体的には,P/L・B/S情報,物流施 設毎の人員・トラック台数を入力し,さらに,現場実測により,商品別に入庫・保管・出庫の作業時間を計り入力した上で,物流コスト・作業工程別物流コスト・物流原単位コスト(ミクロコスト)を順次算出して,改善前ミクロコストと改善後ミクロコストの対比表を表示するというものである。なお,改善後ミクロコストは,①物流施設立地制御システム,②配送制御システム及び④物流ネットワーク制御システムの各結果(新ミクロコスト情報)を反映して算出する。 ④ 物流ネットワーク制御システムミクロコストを基に,商品の流れを繰り 制御システム,②配送制御システム及び④物流ネットワーク制御システムの各結果(新ミクロコスト情報)を反映して算出する。 ④ 物流ネットワーク制御システムミクロコストを基に,商品の流れを繰り返しシミュレーションし,改善前・改善後の全体コスト変化を算出し,最適物流を実現することができるというもの。具体的には,地図上の現物流施設から商品別にネットワーク(物の流れ)と作業工程を指定し,さらに,地図上の新物流施設から商品別に改編後のネットワーク(物の流れ)と作業工程を指定して,指定されたネットワークに基づき,物流施設・商品別に商品流れ図を表示し,また,物流施設別コスト・全社コストを算出し,物流ネットワーク戦略を表示するというものである。 (ウ) 上記(ア)と(イ)を対比すれば,本件システムは,X理論と比較して,細部に至るまでより具体化され,かつ,必要な機能が付加されたものであって,この点においてX理論に相当の変容が加えられているというべきであるものの,X理論において示されている点のうち,他の文献にみられない独自のものとみられる点(前記(2)ア(エ)a)が,①物流立地制御システム,②配送制御システム,③物流コスト制御システム,④物流ネットワーク制御システムのそれぞれの骨格において反映されているものであって,本件システムがX理論を一つの出発点としていることは否定できないものというべきである。 そして,本件システムの開発経緯をみても,被告は,前記(1)のとお り,本件プロジェクト開始当初から,本件システムが原告の研究成果を利用するものとなることを前提として,原告に帰属する発明部分につき,譲渡条件等の検討を進めてきたものである。このほか,X理論が成立した頃に本件プロジェクトが開始されたという関係をも考慮すると,本件システムは,原 なることを前提として,原告に帰属する発明部分につき,譲渡条件等の検討を進めてきたものである。このほか,X理論が成立した頃に本件プロジェクトが開始されたという関係をも考慮すると,本件システムは,原告の主張するX理論を一つの出発点として,これを取り込みつつ,実用化に当たり必要となる機能,内容等を補充するなどして完成に至ったものというべきであり,被告が主張するように,本件システムのソフトウェアが,原告を含む被告従業員,東京共販従業員及び富士通従業員らによって作り上げられたものであり,X理論とは無関係であるとみることはできない。 ウ Qの発言の趣旨(ア) 前記(2)ア(エ)bの事実に加え,Qの着任時である平成12年1月時点では,平成11年2月に,原告に対し,1件当たり20万円又は40万円という譲渡条件の提案をしたものの拒絶され,新たな譲渡条件の提案を検討している状況にあった(前記(1)キ)。 また,原告においては,上記のとおり,本件システムに含まれる技術的事項につき特許化の検討が進められていたことから,特許申請に差し障りが生じないよう,平成11年3月27日に予定していた学会発表の内容を修正するとともに(前記(1)ク),被告アフマ部と知財部との打合せの一部に参加するなどして(前記(1)オ),被告が,本件システムに係る発明について原告から特許を受ける権利の譲渡を受けることを具体的に検討していることを認識している状況にあったものであって,1件当たり20万円又は40万円の対価による譲渡の提案(前記(1)キ)は拒絶したものの,その発明につき特許を受ける権利を被告に譲渡すること自体を拒絶したものではなく,むしろ,平成12年3月14日の打合せにおいて示されているとおり(前記(1)ケ),特許を受ける権利を 被告に譲渡することを前提に を受ける権利を被告に譲渡すること自体を拒絶したものではなく,むしろ,平成12年3月14日の打合せにおいて示されているとおり(前記(1)ケ),特許を受ける権利を 被告に譲渡することを前提に,本件システムの効果に見合った譲渡対価を求めている状況にあったものとみることができる。 (イ) 以上の被告と原告の本件システムに係る特許出願についての検討の経緯等に照らせば,原告が,これらの経緯とは無関係に,Qに対し,本件システムに関し,原告個人で特許出願する意向がある旨を伝えることは考え難いというべきである。また,Qは,原告個人による特許出願の可否についてアフマ部のUを通じて知財部に確認したというにもかかわらず(証人Q),本件プロジェクトに当初から関与し,従前の知財部との打合せにも同席していたUが,上記(ア)でみた従前の経緯や,特許を受ける権利の譲渡についての検討状況等についてQに何ら伝えることなく,知財部への問い合わせ結果として,個人での特許出願に問題がない旨のみをQに伝達したということも考え難い。 (ウ) むしろ,被告アフマ部が,Qの着任後である平成12年3月14日に,原告が本件システムの効果に見合う対価を求めていることを踏まえ,本件システムにより期待される物流コスト削減効果等についての一覧表(甲21の2)まで準備して,特許を受ける権利の譲渡条件について知財部との間で検討を行ったものの(前記(1)ケ(ア),(イ)),新たな譲渡条件の提示がなく(前記(1)ケ(ウ)),原告から特許を受ける権利の譲渡を受けることが困難な状況に至り,本件システムの開発が頓挫することについて懸念を表明している状態にあったこと(前記(1)ケ(ウ))や,同年4月12日の知財部との打合せにおいて,原告個人が特許出願を行うのであれば,原告から当該特許発明の実施を拒 開発が頓挫することについて懸念を表明している状態にあったこと(前記(1)ケ(ウ))や,同年4月12日の知財部との打合せにおいて,原告個人が特許出願を行うのであれば,原告から当該特許発明の実施を拒否しない旨の確認を取っておくことが望ましい旨の見解を知財部から示された状況にあったこと(前記(1)コ)に照らせば,被告アフマ部は,本件システムの完成後にその利用が妨げられることのないよう,原告に対し,原告が将来取得することのあり得る特許権について,予め実施許諾する旨の確認を 原告から取っておくべき立場におかれていたものとみられるのであり,Qが,被告アフマ部の部長として,原告にそのような確認を行うことは,十分に考えられるものというべきである。 加えて,被告アフマ部において,物流関係の理論に通じている人物は原告のほかにおらず(証人Q),本件システムを完成させるためには,原告が,引き続きその知識や研究成果等を本件プロジェクトにおいて提供し続けることが不可欠であったとみられること,Qの着任時において,本件プロジェクトを成功させることは,被告アフマ部における重要課題であったとされること(証人Q)も考慮すれば,Qが,原告の知識や研究成果等を今後とも本件システム開発に利用することについて改めて了承を受けておき,また,原告が,上記研究成果に関し将来特許権を取得し,これが本件システムに関連することとなった場合に備えて,上記特許権の利用につき予め原告から許諾を受けておくことで,本件システムの開発及び利用が滞りなく行われることを確保したいと考え,原告に対し,前記(1)サでみたような発言をするということは,自然かつ合理的なことというべきである。 エ Qの発言における表現の内容(ア) 前記ウ(ア)でみたとおり,原告は,特許を受ける権利の譲渡につき, 前記(1)サでみたような発言をするということは,自然かつ合理的なことというべきである。 エ Qの発言における表現の内容(ア) 前記ウ(ア)でみたとおり,原告は,特許を受ける権利の譲渡につき,1件につき20万円又は40万円という譲渡条件に応じず,本件システムの効果に応じた対価の支払を求めていたものであるから,上記のとおり,Qが,原告に対しその研究成果等の利用や本件プロジェクトへの協力等を求めるに際し,その対価について言及があったとみるのは自然な流れであるというべきである。そして,被告知財部とアフマ部との打合せにおいて,「覚書を交わすのであれば,実施料は別途協議の上決定する旨表現する」,「無償使用では問題があるのでは」との文言があること(前記(1)コ),1件につき20万円又は40万円という譲渡対価を 拒絶していた原告が,Qの発言に対し異議を述べていないこと(原告本人,弁論の全趣旨),原告が,平成16年頃から,Qから相応の対価を支払う旨の確約を得た旨主張し続けていること(甲27の3,29の1ないし3),被告アフマ部・Uが,個人に帰属する知的財産を使う以上,支払うべきものは払わなければならないとの同部R部長の見解に関し,Qと同じ見解である旨のコメントを加えていること(前記(1)ス)を併せて考慮すれば,Qは,前記(1)サの発言に当たり,原告に対し,相応の対価を支払う旨の法的な意味をもつ発言をしたものと認められる。 (イ) 以上によれば,Qの発言内容は前記(1)サのとおりであると認められ,これはQが被告の組織の一員として発言した,法的な意味をもつ発言であると解されるのであって,これに反する被告の主張は採用することができない。 オ他方,原告は,Qは,前記(1)サの発言に際し,原告に対し,原告個人で特許出願を行うよう依頼したもの 味をもつ発言であると解されるのであって,これに反する被告の主張は採用することができない。 オ他方,原告は,Qは,前記(1)サの発言に際し,原告に対し,原告個人で特許出願を行うよう依頼したものであり,上記特許出願の対価を含めたものとして「相応の対価」との発言をしたものである旨主張する。 (ア) 前記ウ(ア)でみたとおり,被告アフマ部は,本件プロジェクト開始後間もない時期から,本件システムに含まれる技術的事項につき特許を受ける権利の譲渡を受けることについて被告知財部との間で協議を重ねてきたものであって,本件システムにつき被告が特許出願を行うことを積極的に検討していたものとみられるものの,その後,Qの前記(1)サの発言に先立つ被告アフマ部と知財部との打合せ時(前記(1)コ)においては,原告が特許出願を行うことが前提とされていたことがうかがわれるのであるから,被告が原告から特許を受ける権利の譲渡を受けることが困難であるとの結論に達した時点(前記(1)ケ(ウ))より後の段階で,原告と被告との間で,原告が特許出願を行う旨の話がされたことがうかがわれる。もっとも,被告は,原告から特許を受ける権利の譲渡を 受けることについて検討を進めてきたものではあるが,平成12年3月14日時点の打合せにおいては,実際に本件システムについて特許化するかどうかの判定は,富士通の動向等を考慮した上で,特許を受ける権利の譲渡を受けた後に行うとの結論に達していたのであって(前記(1)ケ(エ)),被告が,当時,本件システムについて特許化することが必須であるとまで認識していたものとは解し難い。 (イ) 他方,前記前提事実(4)でみたとおり,原告が特許出願を行ったのは平成15年以降のことであるところ,平成12年5月時点で特許出願について具体的な依頼が 識していたものとは解し難い。 (イ) 他方,前記前提事実(4)でみたとおり,原告が特許出願を行ったのは平成15年以降のことであるところ,平成12年5月時点で特許出願について具体的な依頼があったというにもかかわらず,その出願が依頼から約3年後となることについて,合理的な理由を直ちに見出し難い。 また,本件特許出願が被告の外部防御を目的として,その依頼と費用負担の下でなされるべきものであるとすれば,本件特許出願に係る特許請求の範囲の記載や明細書の記載内容,その登録査定の有無,登録内容,要した費用等につき,被告に相談や報告がされてしかるべきであるにもかかわらず,原告がこれらの点について被告に相談又は報告したことはないものと認められる(原告本人)。 (ウ) そうすると,原告と被告との間で,本件システムに関する特許出願を原告が行う旨の話がされたことがあったとしても,これを,特許出願費用を被告が負担することを前提として,本件特許出願を原告に積極的に依頼する趣旨のものであったとみることはできず,また,そのような趣旨の発言が,Qから原告に対しされた事実を認めることもできないというべきである。 (エ) したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。 (3)ア以上によれば,Qの発言による本件合意には,特許出願費用を被告が負担することは含まれていなかったものと解されるところ,前記(2)ウ(ウ)でみた被告内部での検討内容に照らせば,上記発言には,原告が将来 取得することのあり得る特許権の被告による実施について,原告からの権利行使を防止するという趣旨が含まれるものと認められる。 イしかし,上記発言の時点において,原告が行う特許出願の具体的内容やその予定時期は決まっていなかったものであるから て,原告からの権利行使を防止するという趣旨が含まれるものと認められる。 イしかし,上記発言の時点において,原告が行う特許出願の具体的内容やその予定時期は決まっていなかったものであるから,Qの上記発言を,将来原告が取得することのあり得る特許権に係る発明についての実施許諾を予約する趣旨を表示したものとみるのは相当ではない。むしろ,前記のとおり,被告アフマ部において,本件プロジェクトの成功のためには原告からその研究成果等の提供を継続して受けることが不可欠であると認識されていたことがうかがわれることを考慮すれば,Qの上記発言は,上記特許権に係る発明を含めた原告の研究成果に係る知的財産全般について,その特許登録の成否にかかわらず,上記時点においてその使用の包括的な許諾を申し入れる趣旨を表示するものであったとみるのが相当である。これは,被告知財部が,アフマ部との打合せにおいて,「ロイヤリティは特許の譲渡対価に含めて一括支払との考え方をとりたい。ノウハウに関するロイヤリティは特許とは別に設定しない」と述べ(前記(1)ケ(エ)),特許発明とノウハウを区別して認識した上で,ノウハウ部分についても対価を支払う必要があり得ることを認識していることとも整合するものというべきである。 相応の対価を支払う旨のQの発言は,このような包括的許諾に対し,これに見合った対価を支払うことを表示するものであったと認めるのが相当である。 ウ原告は,このような被告の意思表示に対し,これを承諾したものと認められるから(甲56,原告本人),原告と被告との間には,原告が,その研究成果に係る知的財産全般(将来原告が特許権を取得した場合には,当該特許権に係る発明を含む。)について,その使用を包括的に許諾し,被告が上記許諾につき相応の対価を支払う旨の合意が成立したもの その研究成果に係る知的財産全般(将来原告が特許権を取得した場合には,当該特許権に係る発明を含む。)について,その使用を包括的に許諾し,被告が上記許諾につき相応の対価を支払う旨の合意が成立したものと認めら れる。 (4)ア以上のとおり,原告と被告との間には,前記(3)でみたとおりの合意が成立しているものと認められる。 イなお,上記合意の時点において,上記対価に関し,当事者間に具体的な金額についての合意はなく,また,その額の算定の具体的方法につき,共通認識があったものとも認められない。しかし,上記合意の内容に照らせば,上記対価は,原告の提供した研究成果等に含まれる知的財産についての使用許諾料としての性質を有するものと解されるのであって,当事者間において,上記使用許諾料として社会通念上相当と認められる金額をその対価とすることが念頭に置かれていたものとみるのが相当であり,そのような金額を支払うことにつき,当事者間に合意が成立したとみることが,当事者の合理的意思に合致するものというべきである。 ウ原告は,これに加えて,「X理論」の研究・構築に要した費用,一般的な特許出願・維持費用のほか原告が特許取得のために費やした労務費についても,上記「相応の対価」に含んで支払う旨の合意が成立していると主張するが,被告から原告に対し特許出願を行うについて積極的な依頼があったとまでは認められないことは前述のとおりである上,前記(1)サでみたQの発言の内容や,本件合意に至る経緯に照らしても,原被告間に,知的財産の使用許諾料としての金員のほかに,上記原告が主張する費用を支払う旨の合意があったものとは認められない。 (5) 以上によれば,原告は,被告に対し,上記合意に基づき,原告の提供した研究成果等の知的財産(将来原告 しての金員のほかに,上記原告が主張する費用を支払う旨の合意があったものとは認められない。 (5) 以上によれば,原告は,被告に対し,上記合意に基づき,原告の提供した研究成果等の知的財産(将来原告が特許権を取得した場合には,当該特許権に係る発明を含む。)についての使用許諾料として社会的に相当と認められる金額を請求することができる。 2 争点(1)イ(「相応の対価」の額)(1)ア争点(1)アに関する当裁判所の判断でみたとおり,原告は,被告との間 の合意に基づき,被告に対し,その知的財産の使用許諾料として,社会的に相当と認められる額を請求することができるところ,原告は,上記額を,被告が平成12年3月13日付けで行った物流費用削減額の試算結果を基礎として算出すべきと主張する。 イしかし,上記合意は,将来原告が取得すべき特許権の使用を許諾する趣旨を含む上(前記1(3)イ),原告は,本件合意の後,平成16年4月27日までの間,本件合意に基づく対価の請求をしていないのであるから,原告と被告が,本件合意時において,上記物流費用削減額の試算結果に基づいた対価額を直ちに確定し,支払を行う意思であったとは考え難い。 むしろ,本件合意が「相応の対価」という文言を用いてされたものであることや,原告が,「相応の対価」に加えて「相応の対応」も約束された旨主張していること,被告アフマ部が,被告知財部との打合せにおいて,本件システムの期待効果等の一覧表(甲21の2)を示したのに対し,被告知財部が,本件システムの効果を実施前に評価することはできず,上記一覧表は現時点では意味をもたない旨のコメントをしていること(前記1(1)ケ(イ))に照らせば,原告と被告は,上記合意時において,同時点において存在する資料を基にして直ちに対価額を算定し,その 上記一覧表は現時点では意味をもたない旨のコメントをしていること(前記1(1)ケ(イ))に照らせば,原告と被告は,上記合意時において,同時点において存在する資料を基にして直ちに対価額を算定し,その支払を行うことを予定していたものではなく,本件システムの完成を待った上で,完成後の本件システムの内容や,同システムにおいて原告の提供した知見が実際に利用されている程度,本件システムのソフトウェアの頒布・利用状況,その導入効果,原告が取得した特許権の内容・数等を勘案し,さらに,被告における原告の今後の処遇等との兼ね合いも考慮して,相当と認められる金額を上記「相応の対価」として,支払を行うことを念頭に置いていたものとみるのが相当というべきである。 ウしたがって,対価額の算定に当たっては,これらの事情を考慮して検討するのが相当であるところ,考慮すべき事情として,証拠(各認定事実の 末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件システムは,①物流施設立地制御システム,②配送制御システム,③物流コスト制御システム,④物流ネットワーク制御システムから構成されるものであるところ,その具体的内容は前記1(2)イ(イ)でみたとおりである。 (イ) 本件システムは,被告の共販会社ら(共販会社33社及び沖縄トヨタ自動車株式会社・部品共販部)における事業の基幹システムであるTASのオプションとすることを前提に開発が進められたものであり,TASのデータを用いてシミュレーションを行うことが可能なものであった(弁論の全趣旨)。 (ウ) 被告の共販店のうち,東京,茨城,千葉,神奈川,栃木,北海道及び山口の7共販店は,平成17年頃までにかけて,本件システムの利用登録を行い,本件システムを利用したシミュレーション 。 (ウ) 被告の共販店のうち,東京,茨城,千葉,神奈川,栃木,北海道及び山口の7共販店は,平成17年頃までにかけて,本件システムの利用登録を行い,本件システムを利用したシミュレーション及びこれを基にした物流改善の方策等の検討を実施した。 上記シミュレーション及び検討は,被告アフマ部が,各共販店からの委託に基づくコンサルティング業務として,各共販店とともに行ったものであり,被告アフマ部は,平成17年1月18日,上記検討に係る物流改善の方策等及びこれによるコスト削減見込み額をまとめた。その結果等は次のとおりである(以上につき甲45の1ないし5,46の1ないし3,47の1・2,48,49の1・2,50の1ないし3,51,56)。 a 東京共販(甲45の1・3,46の2)本件システムを利用して東京本部の廃止に伴う他県(千葉,埼玉,神奈川,山梨)本部からの物流の可否の検証,現状のトラックコスト(台数/距離)と新立地で配送した場合のトラックコストとの比較,全体的コストの比較を行い,上記結果を踏まえて,①販売店配送を3 回/日から2回/日に減らし,かつ,本部から販売店への直接配送(夜間早朝1回)を導入する,②販売店からの緊急便(2回/日)を導入する,③24時間物流を実現する,④外装配送基準を明確化する,⑤受注締時間を延長し,早期納品を実現する,⑥高速道路使用を実施する,⑦共販店営業所在庫・販売店在庫を充実する等の取組みを順次実施することにより,年間3.5億円のコスト削減が見込まれるとした。 b 茨城共販(甲45の1・4,51)本件システムを利用して配送ダイヤを順次見直し,さらに,営業所出入庫業務の本部への集約化,本部商管作業時間の見直し(3交代制の導入,メーカ b 茨城共販(甲45の1・4,51)本件システムを利用して配送ダイヤを順次見直し,さらに,営業所出入庫業務の本部への集約化,本部商管作業時間の見直し(3交代制の導入,メーカーフォロー品作業開始時間の早朝化等により早期配送を実現),最終受注締め時間の延長等の取組みを導入することにより,年間8000万円のコスト削減が見込まれるとした。 c 千葉共販(甲45の1,48)本件システムを用いたシミュレーション結果を踏まえ,2か所の物流施設(柏・松戸)を1施設(新柏)に統合することにより,年間3000万円のコスト削減が見込まれるとした。 d 神奈川共販(甲45の1,49の1・2)本件システムを利用して配送体系の再構築案3種類について評価・検討を行い,本部便を3便/日から2便/日へ変更する,鶴見営業所と山と営業所を統合する,受注締め切り時間帯を延長する等の取組みを導入することにより,年間4000万円のコスト削減が見込まれるとした。 e 山口共販(甲45の1)本件システムを利用したシミュレーション結果を踏まえ,販売店への本部直送により,年間1000万円のコスト削減が見込まれるとし た。 f 北海道共販(甲45の1・5,50の1・2)本件システムを利用したシミュレーション結果を踏まえ,苫小牧本部の一本化,物流施設立地の再編成,受注締時間の延長,1日当たり3便体制から2便体制への変更,本部から顧客への直送の実施,早期納品・支社ターミナル化,外販配送・営業活動の見直しにより,年間30%(18億7000万円×30%=5億6100万円)の削減が目標とされるとした。 g 栃木共販(甲45の1・5 ,早期納品・支社ターミナル化,外販配送・営業活動の見直しにより,年間30%(18億7000万円×30%=5億6100万円)の削減が目標とされるとした。 g 栃木共販(甲45の1・5,50の1・3)本件システムを利用して物流施設の立地及び配送につきシミュレーションを実施し,宇都宮営業所については統廃合が可能であるものの当面は現状維持とし,配送につき,販売店への本部直送,受注締め時間の延長を実施することにより,年間1000万円のコスト削減が見込まれるとした。 (エ) 上記共販店らは,上記検討に係る方策を順次実行したが,茨城共販において,上記方策に基づき,いったん勝田営業所を廃止したものの,平成19年にその営業を再開するなど,実行が確保できなかった施策も存在した(乙11)。 (オ) 前記(ウ)の7共販店以外の共販店においては,本件システムを用いたシミュレーションは実施されず,被告は,平成19年3月,富士通との間で締結していた本件システムの維持契約を更新しないことを決定した(乙11)。 エ以上のとおり,東京,茨城,千葉,神奈川,栃木,北海道及び山口の7共販店においては,本件システムを利用したシミュレーション結果に基づき,物流改善の方策等につき検討した結果,前記ウ(ウ)aないしgのとおり,上記方策の実行により,1年当たり1000万円ないし5億6100 万円のコスト削減が見込まれるとの結果が導かれたものであるところ,本件システムを用いてシミュレーションを行った結果,被告が利益を得ているものと認められるのであれば,被告の得た上記利益を算定の基礎として,これに,原告の提供した知的財産の使用料率として相当と認められる料率を乗じた金額を,前記「相応の対価」の額とするのが相当である。 るものと認められるのであれば,被告の得た上記利益を算定の基礎として,これに,原告の提供した知的財産の使用料率として相当と認められる料率を乗じた金額を,前記「相応の対価」の額とするのが相当である。 そこで以下において,本件システムを用いたシミュレーションにより被告が得た利益のうち,「相応の対価」の算定の基礎とすべき範囲(下記オ)と,原告の提供した知的財産の使用料率として相当と認められる料率(下記カ)について,順次検討する。 オ本件システムを用いたシミュレーションにより被告が得た利益のうち,「相応の対価」算定の基礎とすべき範囲について(ア) 前記ウ(ウ)aないしgのとおり,前記7共販店においては,本件システムを利用したシミュレーション結果に基づき提案された方策を実行することにより,1年当たり1000万円から5億6100万円(合計10億8100万円)のコスト削減が見込まれるとされたものであるところ,本件システムが,各共販店における事業の基幹システムであるTASのデータを用いてシミュレーションを行うものであって(前記ウ(イ)),上記シミュレーションが,各共販店の実情に基づいて行われたものであり,上記シミュレーション結果に基づき提言された方策は,各共販店における実現可能性を考慮したものとみられることも考慮すれば,上記コスト削減見込額は,相応の実現可能性を含むものであったと認められる。 しかし他方で,前記共販店の中には,上記方策に基づき,いったん廃止した営業所を復活させるなどしたものもあるというのであって(前記ウ(エ)),本件システムを使用したシミュレーションに基づき提案された方策の中には,実際に実施されるに至らなかったものも存在すること がうかがわれるものということができる。加えて,実際に上記方策を実現した場合に ムを使用したシミュレーションに基づき提案された方策の中には,実際に実施されるに至らなかったものも存在すること がうかがわれるものということができる。加えて,実際に上記方策を実現した場合に,予測どおりのコスト削減効果が得られたことは立証されていないのであるから,前記コスト削減見込額の全部が,実際に上記共販店によって達成されたとみることはできない。 そうすると,これらの事情を踏まえれば,上記コスト削減見込額のうち,実際に実現されたものとみることができる部分(被告が実際に得た利益とみることができる部分)は,その半分程度にとどまるものとみるのが相当である。また,被告の発明規定において,導入による効果に対し5年間一定の対価を支払う旨の実績報奨制度が存在するとされること(弁論の全趣旨)を考慮すれば,本件においても,被告が5年間において得た利益(5年分のコスト削減額)を,「相応の対価」の算定の基礎とするのが相当である。 (イ) 前記共販店におけるコスト削減見込額の合計額(前記ウ(ウ)aないしgの合計額)は10億8100万円であるところ,これに2分の1を乗じ,5年分のコスト削減額を算出すると,その額は27億0250万円となり,同額が,「相応の対価」の算定の基礎とすべき金額(原告の提供した知的財産の使用料率を乗じるべき金額)となる。 (ウ) この点に関し,原告は,本件システムは被告の共販店全店において導入可能なものであったから,原告の得るべき対価額を計算するに当たっては,実際に本件システムを利用した7店舗におけるコスト削減額ではなく,全共販店において見込まれるコスト削減額を基礎とするべきである旨主張する。しかし,上記7共販店以外の共販店らは,本件システムを実際に利用したものではない上,本件システムは,既にその維持契約を解消されてい 店において見込まれるコスト削減額を基礎とするべきである旨主張する。しかし,上記7共販店以外の共販店らは,本件システムを実際に利用したものではない上,本件システムは,既にその維持契約を解消されているものであって(前記ウ(オ)),今後,上記7共販店以外の共販店が本件システムを利用してコスト削減を達成する可能性も存在しない。そうすると,全共販店において本件システムによってコス ト削減が達成されると仮定した上で,上記コスト削減見込額を対価額算定の基礎とすることは相当ではないというべきであって,この点に関する原告の主張は採用できない。 カ原告の提供した知的財産の使用料率について本件システムは,サービスL/T基準を指定してシミュレーションを繰り返し行い,コスト比較を行うことができるというものであり(前記(1)ウ(ア)),その内容に照らし,前記1(2)ア(エ)でみたとおり,原告の提供した知見のうち,従来の文献(乙7ないし9)にみられない点が反映されているとみることのできるものである。しかし,前記1(2)イ(ウ)でみたとおり,本件システムは,原告の提供した知見(X理論)をその出発点の一つとし,上記理論をその骨格において反映しているものではあるものの,上記知見を具体化するに当たり,上記知見に相当の変容を加えたものであって,本件システムの基礎となる理論面において,原告が寄与した割合が,被告アフマ部において71%と評価されているものである(甲21の2)ことを考慮しても,本件システムを全体としてみた場合において,原告の貢献した割合を,それほど大きなものとみることはできない。 加えて,上記コスト削減は,本件システムを用いたシミュレーションのみによって達成されたものではなく,上記シミュレーション結果を踏まえた上で,適切な方策を検討するこ 大きなものとみることはできない。 加えて,上記コスト削減は,本件システムを用いたシミュレーションのみによって達成されたものではなく,上記シミュレーション結果を踏まえた上で,適切な方策を検討することによって達成されたものであると認められる。これは,本件システムによるシミュレーションの結果,廃止が適切であるとの結果が出た物流施設についても,営業上の必要性があるとの判断から廃止を見送るとの結論となり,方策としてその廃止を提案するに至らなかったものがあること(前記ウ(ウ)g)からも明らかである。 また,本件システムは,原告の提供した知見を,コンピュータ上で動作させることができるよう,コンピュータにもたせるべき機能を検討・構築し,プログラミングしたものであって,その検討・構築及びプログラミン グのために,原告のほか,被告,東京共販及び富士通の従業員が関与し(前記前提事実(3)イ),その要件書の完成まで約2年8か月,ソフトウェアの完成まで約3年8か月を要したものである(前記前提事実(3)ウ)。 したがって,本件システムの全体の運用及びそれによる利益の増加という実際面も含めて検討すると,原告の提供した知見が寄与した割合を,大きいものとみることはできないというべきである。 他方,原告が合計7件の特許権を取得していること(前記前提事実(4)),原告は平成23年7月31日まで被告の名古屋オフィスにおいて勤務していたものであるが(前記前提事実(1)ア(ア)),原告が,本件システム開発に関与したことにより,被告において特段に有利な処遇を受けた等の事実も見当たらないことも総合的に考慮すれば,原告の提供した知的財産の使用料率としては,1パーセントが相当である。 キしたがって,本件システムを用いたシミュレーションにより,被告が5年間において得た利 見当たらないことも総合的に考慮すれば,原告の提供した知的財産の使用料率としては,1パーセントが相当である。 キしたがって,本件システムを用いたシミュレーションにより,被告が5年間において得た利益(前記5年分のコスト削減効果である27億0250万円)に,原告が提供した知的財産の使用料率である1パーセントを乗じた額である2702万5000円が,原告の提供した知的財産の使用許諾料の額(「相応の対価」の額)として相当であると認められる。 クしたがって,原告は,被告に対し,原告と被告との間の合意に基づき,2702万5000円の支払を求めることができる。 (2) 原告は,予備的請求として,債務不履行に基づく損害賠償又は不当利得返還を請求するが,上記請求について認められ得る金額は,主位的請求について認められる上記金額(2702万5000円)を超えるものではないと認められる。 3 争点(4)(遅延損害金の起算日)原告と被告との間に,合意に基づく対価の支払時期の定めはされていなかったものと認められる。しかし,原告が,平成16年以降,被告に対し,上記合 意の履行を求めたのに対し(前記1(1)ス,セ),被告は,平成19年2月2日,250万円の支払を提示しているのであり,また,被告は,その直後の同年3月には,富士通との間で締結していた本件システムの維持契約を更新しないことを決定したというのであるから,遅くとも250万円の支払を提示した平成19年2月2日時点においては,相当対価算定のため諸事情を考慮し得たものであって,同時点においては,上記合意に基づく対価の支払時期が到来しており,かつ,原告及び被告において,上記のとおり,合意に基づく対価の支払時期が到来していることを認識していたものと認められる。 したがって,原告は,被告に対し, に基づく対価の支払時期が到来しており,かつ,原告及び被告において,上記のとおり,合意に基づく対価の支払時期が到来していることを認識していたものと認められる。 したがって,原告は,被告に対し,争点(1)イの当裁判所の判断に係る対価額(2702万5000円)に対し,上記支払時期の後の日である平成19年2月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 4 以上によれば,原告の請求は,被告に対し,2702万5000円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,上記限度でこれを認容すべきこととなる。 第5 結論したがって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき (別紙)特許権目録 1 特許番号特許第3644954号発明の名称移動所要時間演算装置及びプログラム出願日平成15年12月15日出願番号特願2003-416451登録日平成17年2月10日 2 特許番号特許第4219372号発明の名称単位費用演算装置及びプログラム出願日平成18年3月29日出願番号特願2006-92005優先権主張番号特願2006-79627優先日平成18年3月22日登録日平成20年11月21日 3 特許番号特許第4233361号発明の名称配送拠 番号特願2006-79627優先日平成18年3月22日登録日平成20年11月21日 3 特許番号特許第4233361号発明の名称配送拠点立地決定装置,決定方法,及びプログラム出願日平成15年3月10日出願番号特願2003-62808登録日平成20年12月19日 4 特許番号特許第4721678号発明の名称配送経路作成装置及びプログラム出願日平成16年9月10日 出願番号特願2004-264752登録日平成23年4月15日 5 特許番号特許第4954588号発明の名称物流費用演算装置及びプログラム出願日平成18年4月5日出願番号特願2006-104145登録日平成24年3月23日 6 特許番号特許第4969033号発明の名称配送可否分析装置,順路連結装置出願日平成16年9月21日出願番号特願2004-274245登録日平成24年4月13日 7 特許番号特許第5079067号発明の名称配送所属決定装置,及び,プログラム出願日平成22年11月1日出願番号特願2010-245508分割の表示特願2004-264752の分割原出願日平成16年9月10日登録日平成24年9月7日 10日登録日平成24年9月7日

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