平成18(行コ)313 租税債務不存在確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第554号)

裁判年月日・裁判所
平成19年6月28日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文14,028 文字)

- 1 -主文 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判(控訴人)主文同旨(被控訴人ら)本件控訴を棄却する。 第2事案の概要本件は,贈与税の連帯納付義務に基づく徴収として預金債権の差押え,取立てを受けた被控訴人らが,控訴人に対し,上記各取立てはいずれも法律上の原因を欠くと主張し,取立てに係る各不当利得金(被控訴人aに対し843万0158円,被控訴人bに対し295万3351円,被控訴人cに対し311万1490円,被控訴人dに対し311万1490円)及びこれらに対する各訴え変更申立書送達の日の翌日(平成18年8月17日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,被控訴人らの請求を全部認容したので,これを不服として控訴人が控訴した。 関係法令の定め(1)贈与税の成立時期等国税通則法は,贈与税の納税義務は,「贈与による財産の取得の時」に成立すると定め(同法15条2項5号),相続税法(平成15年法律8号による改正前のもの。以下同じ)は,「贈与に因り財産を取得」した個人で,当該財産を取得した時において,相続税法の施行地に住所を有するものは贈与- 2 -税を納める義務があり(同法1条の2第1号),「贈与に因り財産を取得」した者が,同法の施行地に住所を有する者である場合においては,その者については,その年中において贈与により取得した財産の価額の合計額をもって贈与税の課税価格とすると定めている(同法21条の2第1項)。 (2)贈与税の連帯納付義務相続税法34条4項は,「財産を贈与した者は,当該贈与に因り財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額に 税の課税価格とすると定めている(同法21条の2第1項)。 (2)贈与税の連帯納付義務相続税法34条4項は,「財産を贈与した者は,当該贈与に因り財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額に当該財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額に相当する贈与税について,当該財産の価額に相当する金額を限度として,連帯納付の責めに任ずる。」と規定している。 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)贈与の対象とされた土地の来歴と関係者の相続関係ア別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は,亡e(以下「e」という。)が,大正元年にfから買い受けた。 イeは,大正▲年▲月▲日に死亡し,eの長男である亡g(以下「g」という。)が,家督相続により本件土地の所有権を取得した。 ウgは,平成▲年▲月▲日に死亡し,その妻である被控訴人a並びにその子である被控訴人c,同b(以下「被控訴人b」という。)及び同d(以下「被控訴人d」という。)が,相続によりgの権利義務を承継した。 エ他方,eの二男である亡h(以下「h」という。)は,平成▲年▲月▲日に死亡し,その子であるiが,相続によりhの権利義務を承継した。 (2)本件土地に関する合意書の存在平成11年3月23日,被控訴人らとiとの間で,双方とも弁護士を代理人として,下記の内容の合意書(以下「本件合意書」という。)を作成した(甲8)。 - 3 -アiと被控訴人らとは,大正▲年▲月▲日,家督相続により,本件土地の所有権がeからgへ移転されたことを確認する。 イ被控訴人らはiに対してg,h間の昭和45年になされた本件土地の贈与契約が有効であることを確認し,本件土地がhの相続人であるiの所有 より,本件土地の所有権がeからgへ移転されたことを確認する。 イ被控訴人らはiに対してg,h間の昭和45年になされた本件土地の贈与契約が有効であることを確認し,本件土地がhの相続人であるiの所有であることを認める。 ウiは,被控訴人らに対し,本件解決金として金500万円の支払義務のあることを認め,これを平成11年3月23日に支払う。 エ前項の支払が完了した場合には,被控訴人らはiに対し,速やかにアの家督相続及びイの贈与を原因とする各所有権移転登記手続をする。 (3)本件土地についての登記関係ア本件土地については,大正9年9月4日受付で,同年同月1日売買を原因とするfからeへの所有権移転登記がされている(甲5)。 イまた,本件土地については,平成11年4月1日受付で,①大正▲年▲月▲日家督相続を原因とするgに対する所有権移転登記,②昭和45年月日不詳贈与を原因とするhに対する所有権移転登記,③平成▲年▲月▲日相続を原因とするiに対する所有権移転登記が,それぞれされている(甲1)。 ウ平成12年4月20日,本件土地につき,iからjに対し,同月19日売買を原因とする所有権移転登記がされている(甲1)。 (4)贈与税の申告アiは,平成12年3月15日,所轄の広島北税務署長に対し,平成11年分贈与税の申告書に,贈与者を「g相続人a外」とし,本件土地を取得した年月日を平成11年4月1日,課税される財産の価額を3571万2000円,贈与税額1716万7200円と記載して,贈与税の申告(以下「本件贈与税の申告」という。)をした(乙2)。 イなお,iは,平成12年6月4日に住所を変更し,その結果,本件贈与- 4 -税の申告や徴収を所轄する税務署長は,広島北税務署長から広島西税務署長に変更された。 (5)租税の徴収と預金債権の差押え なお,iは,平成12年6月4日に住所を変更し,その結果,本件贈与- 4 -税の申告や徴収を所轄する税務署長は,広島北税務署長から広島西税務署長に変更された。 (5)租税の徴収と預金債権の差押え,取立てア被控訴人a及び被控訴人bの預金債権からの取立て広島西税務署長は,本件土地の贈与を理由に贈与者が連帯して納付すべき贈与税の徴収として,平成17年5月11日,国税徴収法62条の規定に基づき,被控訴人a及び被控訴人bの各定期預金の払戻請求権を差し押さえた上,平成18年5月11日,下記の各「取立額」(本件土地の贈与に基づき連帯して納付すべき贈与税(本税)の計算額から延滞税の免除相当額を控除した金額)を取り立てるとともに,国税通則法63条5項の規定に基づき,下記の各「延滞税の免除相当額」のとおり各延滞税の免除手続を行った。 (ア)被控訴人aの預金の取立額843万0158円連帯して納付すべき贈与税(本税)の計算額934万3282円延滞税の免除相当額91万3124円(イ)被控訴人bの預金の取立額295万3351円連帯して納付すべき贈与税(本税)の計算額311万1490円延滞税の免除相当額15万8139円イ被控訴人c及び被控訴人dの預金債権からの取立て広島西税務署長は,本件土地の贈与を理由に贈与者が連帯して納付すべき贈与税の徴収として,平成18年5月11日,国税徴収法62条の規定に基づいて,被控訴人c及び同dの各普通預金の払戻請求権を差し押さえた上,同日,それぞれ311万1490円を取り立てた(この取立てによる徴収を上記被控訴人a及び被控訴人bからの取立てによる徴収と併せて「本件徴収」という。)。 争点 - 5 -(1)連帯納付義務を理由とする本件徴収についての法律上の原因の有無(具体的には,iが,平成11年中に a及び被控訴人bからの取立てによる徴収と併せて「本件徴収」という。)。 争点 - 5 -(1)連帯納付義務を理由とする本件徴収についての法律上の原因の有無(具体的には,iが,平成11年中に,被控訴人らからの贈与により本件土地を取得したもので,被控訴人らが本件申告に係る納税義務について相続税法34条4項の「贈与をした者」に該当するかどうか。)(被控訴人らの主張)本件贈与税の申告は,贈与による本件土地の取得の時期を平成11年4月とするものであるが,本件土地は,昭和45年にgからhに贈与され,その履行がされているから,iが平成11年4月に贈与により本件土地を取得したということはあり得ない。したがって,被控訴人らは,本件贈与税の申告に係る納税義務について,相続税法34条4項の「贈与をした者」には該当せず,連帯納付義務を負わない。 (控訴人の主張)本件土地は,平成11年3月に締結された本件合意書により,被控訴人らからiに対し500万円の負担付きで贈与されたものであり,被控訴人らは,本件贈与税の申告に係る納税義務について,相続税法34条4項の「贈与をした者」に該当し,連帯納付義務を負う。 (2)贈与税の連帯納付義務を規定した相続税法34条4項は,それ自体又は本件に適用する限りにおいて,憲法29条に違反するかどうか。 (被控訴人らの主張)相続税法34条4項は,贈与によって何らの経済的利益を得ない贈与者に対し,その私有財産から贈与により拠出した以外に負担を強い,財産を没収するもので,国家の租税徴収確保を容易にすることのみを目的とした不合理な規定であるから,個人の財産権を保障した憲法29条に違反する。 仮に法令自体違憲でないとしても,相続税法34条4項は,合理性のない規定であるから,同規定に基づく課税が許されるのは,贈与者と受贈者が主観的 であるから,個人の財産権を保障した憲法29条に違反する。 仮に法令自体違憲でないとしても,相続税法34条4項は,合理性のない規定であるから,同規定に基づく課税が許されるのは,贈与者と受贈者が主観的に共謀して相続税回避を目的としてした行為に限られると解すべ- 6 -きところ,本件においては,被控訴人らには相続税回避の主観的意図が全くないから,被控訴人らに対しこれを適用することは憲法29条に違反する。 (控訴人の主張)国民の租税負担を定めるについては,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかであるから,租税法の定立については,国家財政・社会経済・国民所得・国民生活等の実態について正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかない。したがって,租税法については,その立法目的が正当なもので,その具体的な規定内容が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,当該立法は憲法29条に違反するものではないというべきである。 ところで,贈与税の納税義務者を受贈者だけに限定した場合には,受贈者がもともと財産がない場合や受贈者が当該取得した財産を他に処分して無資力者となった場合等には,贈与税の満足を得られなくなり,贈与税の満足が得られなければ贈与形式による相続税の回避防止という補完税の目的も達成できず,ひいては税負坦の公平が保てないおそれがある。そこで,贈与税の徴収確保のために,受贈者を本来の納税義務者としつつも,贈与者を連帯納付義務者とし,特別の法定責任を課すこととしたことは,立法の目的として不合理なものということはできない。 そして,贈与者の連帯納付義務は,当該贈与財産の価額が当該贈与税の課税価格に算 贈与者を連帯納付義務者とし,特別の法定責任を課すこととしたことは,立法の目的として不合理なものということはできない。 そして,贈与者の連帯納付義務は,当該贈与財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した額として政令に定める贈与税に限定され,かつ贈与財産の価額相当額を限度とするもので,相続税法34条4項の規定内容が立法目的との関連で著しく合理性を欠くものということもできない。 - 7 -また,相続税法34条4項は,贈与税の満足を得られなくなる場合に備えて設けられたものであって,贈与者及び受贈者において相続税回避を目的に行われたか否かにかかわらず,贈与者に連帯納付義務を負わせることを定めているものであり,租税回避行為に対する懲罰的規定とは認められない。そこで,当事者に相続税回避の意図がなかったとしても,その適用を妨げるものではないから,適用違憲をいう被控訴人らの主張は理由がない。 第3争点に対する当裁判所の判断 争点(1)(連帯納付義務を理由とする本件徴収についての法律上の原因の有無(具体的には,iが,平成11年中に,被控訴人らからの贈与により本件土地を取得したもので,被控訴人らが本件申告に係る納税義務について相続税法34条4項の「贈与をした者」に該当するかどうか。))について(1)前記前提事実,証拠(適宜掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件土地は,eが大正元年にfから買い受けた。eが本件土地を買い受けた後本件土地上の建物には,eとその妻k一家が居住していたが,長男のgは旧制中学卒業後,単身渡米した(甲6の1及び2,甲11,被控訴人a本人)。 eは,大正▲年▲月▲日に死亡し,gが長男として家督相続により本件土地の所有権を取得したが,l家の家業である乾 ,長男のgは旧制中学卒業後,単身渡米した(甲6の1及び2,甲11,被控訴人a本人)。 eは,大正▲年▲月▲日に死亡し,gが長男として家督相続により本件土地の所有権を取得したが,l家の家業である乾物問屋の営業については,hが継承した。hは,戦前から本件土地上の建物で,kと同居しており,昭和▲年にkが死亡した後も,hは本件土地上の建物に居住していた。hは,本件土地について,地代,賃料等をgに支払った形跡はないが,本件土地に係る固定資産税等は自ら支払っていた(以上につき,甲11,被控訴人a)。 一方,gは,米国の大学を卒業してm社に勤務した。その後,昭和8年- 8 -に日本に帰国し,昭和12年10月に被控訴人aと婚姻したが,以後横浜市内に住み,昭和22年にはn有限会社(現o株式会社)を設立して同社の経営に当たり,広島で生活することはなかった(甲11,被控訴人a)。 イhは,昭和42年5月30日,本件土地及びp所有名義の隣接土地上に木造セメント瓦葺2階建の建物(以下「本件新建物」ということがある。)を建築し,昭和43年2月6日付けで,所有者をhとする所有権保存登記をした(甲7)。 なお,本件隣接土地については,h死亡後の平成9年12月26日,共有名義人であるr及びqからiに対し,昭和45年月日不詳売買を原因とする共有者持分全部移転登記がされた(甲9)。 ウgは,平成▲年▲月▲日に死亡し,その妻である被控訴人a並びにその子である被控訴人c,被控訴人b及び被控訴人dが相続によりgの権利義務を承継した。 他方,hは,平成▲年▲月▲日に死亡し,その子であるiが,相続によりhの権利義務を承継した。 エiは,平成11年に,本件隣接土地とともに,本件土地及び本件新建物を売却することとし,被控訴人らに対し,当時eの所有名義のままであった本件土地につ あるiが,相続によりhの権利義務を承継した。 エiは,平成11年に,本件隣接土地とともに,本件土地及び本件新建物を売却することとし,被控訴人らに対し,当時eの所有名義のままであった本件土地について,iの名義にするよう被控訴人らに協力を求めた。しかし,被控訴人らが容易に応じなかったことから,双方が弁護士を代理人に立てて交渉を行い,その結果,平成11年3月23日,iと被控訴人ら間で,双方が上記弁護士を代理人として,本件合意書が締結された。 そして,同日,iから被控訴人らに対し,本件合意書に基づく解決金として合計500万円が支払われた。また,平成11年4月1日付けで,本件土地につき,大正▲年▲月▲日家督相続を原因とするeからgに対する所有権移転登記,昭和45年月日不詳贈与を原因とするgからhに対する所有権移転登記,平成▲年▲月▲日相続を原因とするhからiに対する所- 9 -有権移転登記が経由された(甲1,8,12,13)。 オiは,平成12年3月15日,所轄の広島北税務署長に対し,平成11年分贈与税の申告書に,贈与者を「g相続人a外」とし,本件土地を取得した年月日を平成11年4月1日,課税される財産の価額を3571万2000円,贈与税額1716万7200円と記載して,贈与税の申告をした(乙2)。 (2)被控訴人らは,本件土地については,既に昭和45年にgからhに贈与され,これに基づく履行(簡易の引渡しによる。)がされていると主張するので,検討する。 ア前記(1)認定の事実によれば,gは大正▲年▲月▲日に家督相続により本件土地の所有権を取得したが,広島でeが行っていた家業である乾物問屋についてはhが継承し,hは戦前から本件土地上の建物でkと同居し,昭和▲年にkが死亡した後も同所において自分の妻子と同居して生活していたこと,hは,昭 したが,広島でeが行っていた家業である乾物問屋についてはhが継承し,hは戦前から本件土地上の建物でkと同居し,昭和▲年にkが死亡した後も同所において自分の妻子と同居して生活していたこと,hは,昭和42年5月30日,本件土地及び本件隣接土地上に木造セメント瓦葺2階建の建物(本件新建物)を建築し,昭和43年2月6日付けで所有者をhとする所有権保存登記をしたこと,hはこれまでgやその相続人である被控訴人らに対して本件土地の地代を支払うことがなく,一方,本件土地の固定資産税等の公租公課を自ら支払っていたことが明らかである。 イ本件土地について,gからhに対し贈与がされた旨を証する契約書等の書面は存在していないが,この点に関し,被控訴人aは,昭和45年ころ,hがgの自宅を訪れ,本件土地に隣接した土地を購入する資金の援助を求めるとともに,本件土地を贈与するよう申し入れ,gにおいてこれを承諾した旨供述する。 しかし,被控訴人aの供述内容については,hが本件隣接土地購入のためにいつ,いくら出費し,gがどの程度援助したのか等具体的な事実は全- 10 -く明らかでない。また,hが,昭和45年頃,それまで建物の敷地として使用してきた本件土地の贈与を受けるため横浜のgの自宅をわざわざ訪ねその同意を得たというなら,hとしては,土地の権利保全のため贈与契約書を作成するとか,登記の状況を確認しh名義とするためgの協力を求める等の何らかの具体的な行動に出て然るべきであったと考えられるが,昭和45年頃にhとgとの間にそのような具体的な行動がとられた形跡はない。しかも,証拠(甲9,乙26)によれば,本件隣接土地の元所有者であるpの相続人の一人であるr作成名義の手紙には,「以前,hの代理人と名乗る人から,本件隣接土地の購入代金はすでに支払済みなのに所有権移転の手 証拠(甲9,乙26)によれば,本件隣接土地の元所有者であるpの相続人の一人であるr作成名義の手紙には,「以前,hの代理人と名乗る人から,本件隣接土地の購入代金はすでに支払済みなのに所有権移転の手続が完了前に死亡(S▲.▲.▲日)なので,この度是非われら兄妹の承諾を得て移転の手続きを完了したいと申入れがあり,これに応じた」旨の記載があり,これによれば,hは,遅くとも昭和▲年▲月▲日にpが死亡したころまでに,同人から本件隣接土地を購入し,代金を支払っていたことが窺え,被控訴人aの供述は,この事実と齟齬するものである。 これらのことに加え,被控訴人らがiから本件土地の所有名義移転の協力依頼を受けたのに対し,容易にこれに応じず,弁護士まで立てて交渉をした結果,500万円という比較的多額の解決金の支払を受けることを条件に漸く所有名義の移転に応じているなどの経緯も併せて考慮すれば,被控訴人aの上記供述はそれ自体客観性に欠け,これをもってg,h間に昭和45年頃に本件土地の贈与があったことの根拠とすることは相当でない。 ウ被控訴人らは,gからhに本件土地の贈与が行われたことを裏付ける事情として,①gは,昭和45年頃は不動産管理会社も経営し,横浜市内に土地を複数所有し,その売却による収入も得るようになって,かなり資金的な余裕があり,一方,広島に生活する母kの面倒をもっぱらh一家がみてきたことから,gはhに恩義を感じており,本件土地を贈与する動機は十分あったこと,②gは,平成3年3月19日付けで遺言公正証書を作成- 11 -したところ,上記遺言書には,目的財産として,土地15筆及び建物4棟(所在は,広島,松本,横浜)が記載されている一方,本件土地の記載はされておらず(甲10,乙4ないし23),gは,平成▲年▲月▲日死亡したが,その相続税の申告書にも 産として,土地15筆及び建物4棟(所在は,広島,松本,横浜)が記載されている一方,本件土地の記載はされておらず(甲10,乙4ないし23),gは,平成▲年▲月▲日死亡したが,その相続税の申告書にも本件土地の記載はなかったこと等を挙げる。 確かに,上記②のような事情からすれば,gは,遺言公正証書作成時において,本件土地を自己所有の財産として認識していなかったのではないかという見方もできる。しかし,本件土地の登記名義は平成11年4月1日までe名義のままであったのであり,gが本件土地を家督相続したことを認識している以上,hに対し贈与の意思表示をしただけで,所有権移転登記を経由しないまま,本件土地が自己所有の財産でなくなったと認識したとは考えにくい。すなわち,gが本件土地を家督相続した後,これをhに贈与したものとすれば,hに対する所有権の移転登記手続を経なければ,自らが死亡した後に相続人である被控訴人らとhとの間で紛争を生じる可能性があるから,遺言公正証書を作成して自己の遺産をめぐる紛争の予防を意図したと思われるgの慎重な性格を考慮すれば,生前にhへの所有権移転登記手続を了するか,そうでなくとも少なくとも将来円滑にその手続が行われるよう配慮して遺憾なきを期するのが通常であると考えられるが,gにおいてそのような配慮をした形跡は窺われない。もともとgは,戦前,旧制中学卒業後渡米し,帰国後はもっぱら横浜で生活し,弟のhがeの家業を継いで本件土地上の建物に居住して乾物問屋を営んでいたことから,gが本件土地は広島のl家の財産のひとつとしてhが承継したと思い込んでいたとしても不自然ではなく,仮に,gが本件土地を自己所有の財産であると認識していなかったとすれば,むしろそのことが原因であると考える方が合理的である。 また,gは,本件土地を自己所有の財産と んでいたとしても不自然ではなく,仮に,gが本件土地を自己所有の財産であると認識していなかったとすれば,むしろそのことが原因であると考える方が合理的である。 また,gは,本件土地を自己所有の財産として認識していたが,弟のh- 12 -がeの家業を継いで本件土地上の建物に居住して乾物問屋を営むなど,本件土地を長年にわたり使用してきていることを考慮し,その使用状態が今後も継続していくことを念頭にあえてこれを上記遺言の対象からはずし,現状維持を図ったものと解釈することもあながち不合理とはいえない。 さらに,上記①点は,gがhに本件土地を贈与してもおかしくない事情があったというにとどまり,gがhに本件贈与をしたことを積極的に基礎づけるものではない。 エ結局のところ,本件土地をgが家督相続をした後,gがhに対し贈与等により本件土地を譲渡したことを認めるに足りる的確な証拠はなく,上記認定の経過からすれば,hは,本件土地について,gから明示ないし黙示の無償使用の許諾を受けて,これを使用し,また,本件新建物の建築後は,gから無償使用の許諾を受けて,これを使用してきたものと認めるのが相当である。 (3)hがgから昭和45年に本件土地の贈与を受けたとの被控訴人ら主張の事実が認められないことは前示のとおりであるところ,前記(1)の認定によれば,iは,平成11年に,本件隣接土地とともに本件土地及び本件新建物を売却することとし,被控訴人らに対し,当時eの所有名義のままであった本件土地について,iの名義にするよう被控訴人らに協力を求めたこと,これに対し,被控訴人らは容易に応じず,本件土地の所有名義の移転について双方が弁護士を代理人に立てて交渉を行ったこと,その結果,平成11年3月23日,iと被控訴人ら間で,本件合意書が締結されたことが認められる。 本件合意 は容易に応じず,本件土地の所有名義の移転について双方が弁護士を代理人に立てて交渉を行ったこと,その結果,平成11年3月23日,iと被控訴人ら間で,本件合意書が締結されたことが認められる。 本件合意書の内容は,被控訴人らが,解決金500万円の支払を受けることを条件に,g,h間で昭和45年に本件土地の贈与契約が有効にされたことを当事者双方が確認し,その履行を約するというものであるが,昭和45年に本件土地の贈与契約が成立したとは認められないから,贈与時期に関する確認条項は客観的な裏付けのないiの思いを便宜的に本件土地の贈与の時- 13 -期として記載したにすぎないと解するほかなく,本件合意書の実質は,hがeの家業を継ぎ,長年にわたり家族とともに本件土地で生活してきたこと等の従前の経緯を考慮して,被控訴人らがhの承継者であるiに対し,500万円の負担付きで本件土地を贈与する趣旨のものと認めるのが相当である。 (4)iは,平成12年3月15日,所轄の広島北税務署長に対し,平成11年分贈与税の申告書に,本件土地を取得した年月日を平成11年4月1日として,本件贈与税の申告をし,本件土地についてhに対する贈与税の納税義務が確定していることは,前提事実のとおりであり,上記申告に係る贈与は上記(3)に認定の被控訴人らからiに対する贈与と同一のものと認められるから,本件申告に係る納税義務について,被控訴人らは相続税法34条4項の「贈与した者」に該当し,連帯納付義務を負うというべきである。 したがって,連帯納付義務を理由とする本件徴収についての法律上の原因がないとする被控訴人らの主張は採用できない。 争点(2)(贈与税の連帯納付義務を規定した相続税法34条4項は,それ自体又は本件に適用する限りにおいて,憲法29条に違反するかどうか。)について(1) する被控訴人らの主張は採用できない。 争点(2)(贈与税の連帯納付義務を規定した相続税法34条4項は,それ自体又は本件に適用する限りにおいて,憲法29条に違反するかどうか。)について(1)被控訴人らは,相続税法34条4項は,贈与によって何らの経済的利益を得ない贈与者に対し,その私有財産から贈与により拠出した以外に負担を強い,財産を没収するもので,国家の租税徴収確保を容易にすることのみを目的とした不合理な規定であるから,個人の財産権を保障した憲法29条に違反する旨主張するとともに,仮に法令自体違憲でないとしても,相続税法34条4項を相続税回避の主観的意図が全くない被控訴人らに適用することは憲法29条や84条に違反する旨主張する。 (2)しかしながら,国民の租税負担を定めるについては,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らか- 14 -であり,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかはなく,裁判所は,基本的にその裁量的判断を尊重せざるを得ない(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決,民集39巻2号247頁参照)。 したがって,租税法について,その立法目的が正当なもので,その具体的な規定内容が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,当該立法は憲法29条に違反するものではないというべきである。 これを本件についてみるに,もともと贈与税は相続税の補完税としての性質を持つといわれる(すなわち,もし,贈与税が存在せず相続税しか課されないとすれば,生前に親族等へ贈与して相続財産を減殺することにより,相続と同 いてみるに,もともと贈与税は相続税の補完税としての性質を持つといわれる(すなわち,もし,贈与税が存在せず相続税しか課されないとすれば,生前に親族等へ贈与して相続財産を減殺することにより,相続と同様の効果を生じさせながら,相続税の負担を容易に回避することが可能となる。)。そして,法律で定められた租税は財政需要ないし公的欲求の充足を目的とするものであり,高度の公益性を有するから,その徴収は確実かつ能率的に行われなければならず,また,そのようにして租税収入を確保できなければ,財政上の需要をまかなう上で支障を来すばかりでなく,ひいては租税負担の公平の原則にも反することになる。贈与税の場合についていえば,贈与税の納税義務者を受贈者だけに限定した場合には,受贈者がもともと財産がない場合や受贈者が当該取得した財産を他に処分して無資力者となった場合等には,贈与税の満足を得られなくなり,贈与税の満足が得られなければ贈与形式による相続税の回避防止という補完税の目的も達成できず,ひいては税負坦の公平が保てないおそれがある。そこで,贈与税の徴収確保のために,受贈者を本来の納税者とする一方,本来の納税義務と密接な関係がある第三者にその租税債務の履行義務を負担させるという連帯納付義務を設け,特別の法定責任を課すことは,それなりの必要性,合理性がないということはできない。 - 15 -弁論の全趣旨によれば,もともと昭和22年に贈与税が創設された当時は,贈与は,いわば遺産の前渡しであり,担税力を前渡しの遺産に求めるべきとの考えから,贈与者に本来の納税義務を負わせ,受贈者には贈与により受けた利益の価額を限度として連帯納付義務を負わせていた。その後昭和25年の税制改正により,相続税が被相続人の遺産額を課税標準とする従前の遺産税方式から相続人の取得した遺産の価額を課 には贈与により受けた利益の価額を限度として連帯納付義務を負わせていた。その後昭和25年の税制改正により,相続税が被相続人の遺産額を課税標準とする従前の遺産税方式から相続人の取得した遺産の価額を課税標準とする「遺産取得税方式」に変更され,これに伴い,贈与税の納税義務も贈与により財産を取得した者が負うこととなったが,贈与税の徴収確保の必要から贈与者についてその贈与財産の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務が定められ,現在に至っていることが認められる。 このような贈与税の性格や立法の沿革に照らすと,贈与税について受贈者を本来の納税義務者としつつも,租税確保の必要から贈与者を連帯納付義務者とし,特別の法定責任を課すこととしたことは,立法の目的として不合理なものということはできない。 そして,贈与者の連帯納付義務は,当該贈与財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した額として政令に定める贈与税に限定され,かつ贈与財産の価額相当額を限度とするもので,相続税法34条4項の規定内容が立法目的との関連で著しく合理性を欠くものということもできない(なお,贈与者が本来の贈与税の納税義務を負担する受贈者に代わって贈与税を支払ったときは,贈与者は受贈者に求償できると解せられる。)。 (3)また,相続税法34条4項は,贈与税の満足を得られなくなる場合に備えて設けられたものであって,贈与者及び受贈者において相続税回避を目的に行われたか否かにかかわらず,贈与者に連帯納付義務を負わせることを定めているものであり,租税回避行為に対する懲罰的規定とは認められない。そこで,本件において,当事者に相続税回避の意図がなかったとしても,その- 16 -適用を妨げるものではなく,本件にこれを適用したとしても,これをもって憲法 為に対する懲罰的規定とは認められない。そこで,本件において,当事者に相続税回避の意図がなかったとしても,その- 16 -適用を妨げるものではなく,本件にこれを適用したとしても,これをもって憲法29条,84条等に違反するということもできない。そうすると,適用違憲をいう被控訴人らの主張も採用することはできない。 本件訴訟の経過にかんがみ付言する。 本件記録によれば,被控訴人らは,原審において,本件土地はhが昭和45年に贈与により取得したものであるから,本件土地の贈与に基づく贈与税の徴収権は時効によって消滅した旨主張したことが認められる。しかし,本件徴収は,平成11年4月に本件土地の贈与があったことを前提とする本件贈与税の申告により確定した納税義務について,被控訴人らが連帯納付義務を負うとしてされたものであるから,本件徴収に法律上の原因があるかどうかは,平成11年に本件土地の贈与があったか否かで決まることであり,平成11年3月に贈与があったと認めるべきことは既に説示したとおりである。 なお,仮に,昭和45年にhが本件土地の贈与を受けたものとすれば,平成11年にiが被控訴人らから本件土地の贈与を受けることはあり得ないから,その贈与に係る贈与税の課税権・徴収権が時効により消滅したかどうかを論ずるまでもなく,被控訴人らは贈与税の連帯納付義務を負うことはないのである。 いずれにしても,被控訴人らの上記主張については判断の限りでない。 結論 以上の次第で,被控訴人らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却するのが相当である。そこで,これと異なる原判決を取り消し,被控訴人らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官青柳馨- 17 -裁判官豊田建夫裁判官長久保守夫 を取り消し,被控訴人らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官青柳馨- 17 -裁判官豊田建夫裁判官長久保守夫

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