【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、大阪高等検察庁検察官検事米田之雄提出の控訴趣意書(京都 地方検察庁検事正代理次席検事山田四郎作成名義)
主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、大阪高等検察庁検察官検事米田之雄提出の控訴趣意書(京都地方検察庁検事正代理次席検事山田四郎作成名義)大阪高等検察庁検察官検事片岡平太作成の控訴趣意書訂正申立書、控訴趣意の補充書、各記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人能勢克男作成の答弁書記載のとおりであるから、これを引用する。 第一、 本件事案の概要本件公訴事実は、被告人はA(昭和四〇年四月九日Bと婚姻、妻の氏を称しB姓となり、同四一年一月二四日死亡、以下便宜Aという)と共謀の上、内乱を実行させる目的で、昭和二七年九月六日頃から同月一〇日までの間京都市a区b町c番地A方外二個所においてC外五名に対し、(一、昭和二七年九月六日頃右A方でCに一〇〇部、二、同日同所においてDに五〇部、三、同日同所においてEに三〇部、四、同月九日頃同市a区dF会事務所において同会責任者Gに一〇〇部、同月一〇日同区国鉄山陰線e駅前路上においてH及びIに各一部)、J党K委員会発行の「L」復刊第二号名義を以てした次のような内容の文書、即ち第一面に「民族解放国民政府をつくれ」「J党の新綱領は当面する日本の革命は平和的に出来ないことを示している。全国民はメーデーはじめあらゆる闘いの中でこのことを身を以て理解しはじめている」第二面及び第三面に「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」と題し、「売国的なM政府はアメリカ帝国主義者のこの野望に同意し、占領制度を延長するための日米安全保障条約を結び、警察や予備隊、海上保安庁の新しい軍隊を強めている。彼等はこれによつて日本軍国主義を再建すると共に、警察や軍隊の周囲に消防団、鉄道公安官、刑務官等やガード、職制、反動的暴力団等を結集し、国民にフアシヨ的な体制 、海上保安庁の新しい軍隊を強めている。彼等はこれによつて日本軍国主義を再建すると共に、警察や軍隊の周囲に消防団、鉄道公安官、刑務官等やガード、職制、反動的暴力団等を結集し、国民にフアシヨ的な体制を押しつけているのである。この侵略的な武装力と一切の暴力組織がM政府と占領制度に反対する国民を弾圧し、戦争によつて利益を得る日本の総ての反動勢力を守つている。従つて平和的な方法だけでは戦争に反対し国民の平和と生活を守る闘いを推し進めることはできない。われわれが軍事組織を作り武装し行動する以外にない。われわれの軍事組織はこの根本原則に従つて敵の部隊や売国奴達を襲撃し、それを打破つたり、軍事基地や軍事工場や、軍需品倉庫、武器、施設、車輌等をおそい、破壊したり、爆発させたりするのである。 われわれり軍事科学は武器をつくることや、それを保存したり、使用したりすること等の技術的な問題から、地形や条件に応じて味方を配置し、力を充分に発揮する作戦や、全革命戦争の見透しと戦術など日本の革命戦争に必要な一切のものを含んでいるのである。軍事組織の目的は日本の国民を現在の奴隷的状態から救い、人間らしい自由と生活を闘いとることにある。このために国民の武装した力によつて現在の反動制度を撤廃し、民族解放民主制度を確立するのである。同盟者と協同して新しい国民の政権をつくる為にも進んで統一戦線の結成に努力し、地方や全国の統一戦線に積極的に参加しなければならない。それ故にこそ軍事組織が大衆闘争と結合して敵の武装力を地域的にくつがえすならば、それが直ちに国民の権力を地域的に打ち立てる力となるのである。」第四面以下に「N隊の組織と戦術」と題し、「大衆の持つている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹槍や簡単につくることの出来る武器も使用出来る。従つてまず最初は手当り次第可能 となるのである。」第四面以下に「N隊の組織と戦術」と題し、「大衆の持つている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹槍や簡単につくることの出来る武器も使用出来る。従つてまず最初は手当り次第可能なもので武装することである。特に敵を襲撃するために必要な輸送用のパンク針、手榴弾、爆破装置等の簡単なものは直ちに製作することが必要である。この遊撃戦術と戦略の関係については既に(われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない)に述べられている」等の論説を掲載して内乱の正当性及び必要性を主張した文書合計二八二部を交付してこれを頒布したものである。 というのであつて、検察官は右の行為は破壊活動防止法第三八条第二項第二号刑法第六〇条に該当すると主張している。 原判決は、右公訴事実に対し、被告人及びAは何れもJ党員であつて、Aは昭和二六年頃まで、被告人はその頃から、京都市a区f細胞の責任者となり、同党K委員会等上部機関からA方に送付せられた新聞パンフレット等については両名協力して配布発売していたのであるが、被告人及びAは共謀の上J党K委員会の指令により昭和二七年九月六日頃A方において上部機関からレポ(連絡者)を通じて送付せられたJ党K委員会発行名義の同委員会の機関紙であるL復刊第二号二〇〇部中一〇〇部をCに、五〇部をDに、三〇部をEに、それぞれ同人等及び同人等を介して他へ販売する目的で交付し、同月一〇日午前八時頃国鉄山陰線e駅前道路においてJ党機関紙O等と共に右L復刊第二号を販売中折柄出勤の途上にあつた京都府警察吏員HにO一部と共に右L復刊第二号一部を代金一五円で、同警察吏員Iに右L復刊第二号一部を代金一〇円で売渡した外、被告人は単独で同月九日同市a区dF会事務所において同会長Gに同人及び同人を介して同会員に販売する目的で被告人が同日J党K委 代金一五円で、同警察吏員Iに右L復刊第二号一部を代金一〇円で売渡した外、被告人は単独で同月九日同市a区dF会事務所において同会長Gに同人及び同人を介して同会員に販売する目的で被告人が同日J党K委員会選挙事務所で同党員Pの承認を得て入手した前同様のL復刊第二号一〇〇部を交付して、これを頒布した事実を認定した上、右文書の内容が内乱罪実行の正当性と必要性を主張するものであることならびに右頒布の事実は認められるが被告人及びAが主観的且つ客観的に内乱を実行させることを直接の目的としてこれを頒布したとは認められないし、たとえ右両名が内乱を実行させる目的を以て本件文書を頒布したとしても本件犯行当時客観的情勢に鑑み公共の安全を確保するために本件文書の頒布を禁止することが必要であつたとは認められないから、結局本件については破壊活動防止法(以下単に破防法と略称する)第三八条第二項第二号の犯罪の証明がないとして無罪の言渡をしたものである。 これに対し検察官は、控訴趣意において、原判決は、破防法第二条及び本件に対する罰則たる同法第三八条第二項第二号の解釈を誤り、かつ本件犯行当時の客観的情勢に対する判断及び被告人の内乱罪実行の目的の存否に関する認定において、重大な事実の誤認を犯したものであつて、これらの誤は判決に影響を及ぼすことが明らかである、と主張している。 第二、 検察官の論旨に対する判断。 (一) 控訴趣意第一点の所論の要旨は、原判決は破防法第二条の解釈を誤り、その誤は判決に影響を及ぼすこと明らかである、というのであつて、その理由とするところは次のとおりである。 破防法第二条は同法の拡張解釈による濫用を禁止するために設けられたもので、本件罰則の合理的な内容に重大な制限を加えようとするものではなかつたのであつて、むしろ破防法全体の法意としては、本件罰 る。 破防法第二条は同法の拡張解釈による濫用を禁止するために設けられたもので、本件罰則の合理的な内容に重大な制限を加えようとするものではなかつたのであつて、むしろ破防法全体の法意としては、本件罰則の内容を以つて同法第二条にいう「公共の安全を確保するために必要な最少限度」の規定としているものと解されるのみならず、右最少限度とは、本件罰則の規定の趣旨から論理的必然の帰結として導き出される結論を禁止又は制約する趣旨を含むものではなく、又右罰則の規定自体から当然には導き出されないような重大な制限をみだりに設定することを要求している趣旨でもないことは明白である。そして同法第一条に「暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定の補整」が「公共の安全の確保に寄与することを目的とする」ものであることが明記されており、本件罰則が右補整の一部であることから見ても、同法第二条にいう「公共の安全」が本件罰則の保護法益であることは容易に首肯されるところである。ところで本件犯罪と本件罰則の保護法益との関係から見た法律的構成は、本件犯罪は多数人に対して内乱罪実行の正当性又は必要性につき理解共鳴を求める行為てあつて、その性質上宣伝行為なる類型に属し、多数人の間に内乱罪実行の意識的基盤を醸成しようとするものに外ならず、本件犯罪は右のような準備的活動の一環たる典型的宣伝行為を犯罪として規定したものに外ならず、右のような宣伝行為が内乱罪実行に強い影響を与えるものであることにかんがみ、法はその行為自体に「公共の安全」を侵害する危険性が存在することを以て足るとしている。換言すれば、本件犯罪は文書頒布行為の結果として被頒布者が文書の内容を理解共鳴したこともさらに客観的な事態として公共の安全に対する具体的危険が発生することをも必要とせず、法益に対する関係ではいわゆる抽象的危険犯と解すべき 文書頒布行為の結果として被頒布者が文書の内容を理解共鳴したこともさらに客観的な事態として公共の安全に対する具体的危険が発生することをも必要とせず、法益に対する関係ではいわゆる抽象的危険犯と解すべきである。然るに原判決は、この点を看過し、「公共の安全の確保のために必要な最少限度」なるものが、内乱罪実行という重大事態発生のみを防止する趣旨であるかの如く誤解し、なんら合理的根拠がないのにかかわらず、同法第二条を以て、アメリカ合衆国最高裁判所のQ、R両判事の説くいわゆる「明白かつ現在の危険」の法則に従つて同法を適用することとその趣旨に変りがないとして、本件罰則の解釈適用に対してもみだりに右法則を適用し、内乱発生の切迫した客観的状勢が存在することを本件犯罪の成立要件とし、本件犯罪の概念とは全く別個のいわゆる情況犯の特異な類型を創造したもので明らかに同法第二条の解釈を誤つたものであり、又本件犯罪行為たるやまさに言論の自由の濫用であつてこれを犯罪行為として禁止することは日本国憲法全体の趣旨特に同法第一二条の趣旨に合致するものであり、右法条の解釈としても「明白かつ現在の危険」の存在を本件罰則適用に対する憲法上の要件なりとする合理的根拠はこれを発見することができない。原判決の見解は、地方公務員法違反被告事件に対する昭和二七年八月二九日附の最高裁判所第二小法廷判決及び食糧緊急措置令違反被告事件に対する同二四年五月一八日附大法廷判決の趣旨にも背反している。というのである。 次いで控訴趣意第二点の所論の要旨は、原判決は破防法第三八条第二項第二号の解釈を誤まり、その誤は判決に影響を及ぼすこと明らかである、というのであつて、その理由とするところは次のとおりである。原判決は「L復刊第二号は検察官の主張するとおり内乱罪実行の正当性および必要性を主張する文書であると 誤は判決に影響を及ぼすこと明らかである、というのであつて、その理由とするところは次のとおりである。原判決は「L復刊第二号は検察官の主張するとおり内乱罪実行の正当性および必要性を主張する文書であると観なければならないが、破防法第三八条第二項第二号の犯罪が成立するためには、内乱罪実行の正当性又は必要性を主張する文書であることを認識してこれを頒布することだけでは足りず、内乱罪を実行させることを目的としてその文書を頒布した事実が認められなければならない。それ故集団暴動行為があつてもこれに因り直接に朝憲紊乱の事態を惹起することを目的とするのでなく、これを縁由として新たに発生する他の暴動により朝憲を紊乱する事態の現出を期するような場合は、これを以つて朝憲を紊乱することを目的として集団暴動を行つたと称することはできない」と論じ、昭和一〇年一〇月二四日付大審院判例(いわゆる五、一五事件)を引用したのであるところ、原判決の右見解が果していかなる趣旨であるか必ずしも明らかでないが、これを付度すれば、内乱罪を実行させるのではなく、内乱罪以外の特定の行為例えば騒擾罪を実行させこれを縁由として内乱罪を実行させることを目的とする場合は内乱罪を実行させる目的に該当しないとするものの如くにも解せられる。 然しながら右の騒擾罪が内乱罪を実行させるための単なる縁由ではなく、内乱罪を実行させることを窮極の目的とし、この目的を達するため、内乱罪の実行え因果的に発展すべき当然の段階又は過程として、騒擾罪その他の行為を実行させることを企図とする場合には、本件罰則の「内乱罪を実行させる目的」に該当することは当然である。然るに原判決の見解が、かかる場合においても内乱罪を実行させる目的に該当しないと解するのであれば、原判決は内乱罪が成立する場合における「朝憲を紊乱する目的」と本件罰 的」に該当することは当然である。然るに原判決の見解が、かかる場合においても内乱罪を実行させる目的に該当しないと解するのであれば、原判決は内乱罪が成立する場合における「朝憲を紊乱する目的」と本件罰則の「内乱罪を実行させる目的」とが法律上の性質を異にするものであるのに、漫然これを混同した誤解を犯したものといわなければならない。 仮に原判決の見解を拡張して、当面直ちに内乱罪の実行に着手させることを目的とするのでなく、内乱罪実行のための準備をさせ、その準備が整つたとき、内乱罪の実行に着手させることを目的とする場合さえも、内乱罪を実行させる目的に該当しないとする見解であるとすれば、目的達成のため準備を行うことが、その目的を否定するという非常識な結論に到達せざるを得ない。 更に原判決の見解を延長して、当面直ちに内乱罪の実行に着手させることを目的とした場合にのみ、内乱罪を実行させる目的に該当するものとする見解であるとすれば、ここに「直接」とは、時間的な切迫性とか直近性を意味することとなるわけであつて、かかる見解は既述のいわゆる明白かつ現在の危険の原則におけると同様、本件罰則の解釈から当然には導き出せないような特殊な要件を不当に附加しようとするものであり、本件罰則の解釈を誤つたものであることは明らかである。一部の論者は、破防法制定が国会において審議された過程において、政府提出法案に規定された本件罰則が内乱罪等の「実現を容易ならしめるため」とあつたのが、「内乱罪を実行させる目的を以て」と修正されたことを取上げ、「実行させる目的」とは行為者自身が積極的直接的に実現を意図することを要する、と説くが、右修正は第三者の内乱罪実行を幇助する目的(受働的)を第三者をして内乱罪そのものを積極的に実行させようとする目的(主動的)に改めることに在つたものと解すべき に実現を意図することを要する、と説くが、右修正は第三者の内乱罪実行を幇助する目的(受働的)を第三者をして内乱罪そのものを積極的に実行させようとする目的(主動的)に改めることに在つたものと解すべきであるから、右修正を根拠として、本件罰則の内乱罪を実行させる目的が直接的なものでなければならないとする理由は全く存在しない。 原判決はまた、本件罰則の内乱罪を実行させる目的が「主観的に且つ客観的に認められることが必要である。明白かつ現在の危険の法則をS長官(アメリカ合衆国最高裁判所)の説いた趣旨に変更し、内乱発生の客観的情勢の切迫していると否とを問わず、破防法第三八条第二項第二号を適用することは、公共の安全を確保するために必要な最少限度を超えて適用することに外ならない」と述べているが、仮にその見解が、内乱罪を実行させる目的が行為者の主観的要素として客観的に認定される以外に、右目的が行為者と離れて客観的な事実として別個に認められることを要するものとするのであれば、それはもはや行為者の目的ではないのであつて、全く不合理な見解であるし、またもし原判決の見解が、行為者の内乱罪を実行させる目的が認められるためには、その目的の内容たる内乱罪の実行ということが客観的に認められなければならないとするにあるとしても、既に客観的事実として内乱罪の実行が存在することを要するというが如き見解は甚だ非常識である。更に原判決の見解が、客観的に内乱発生の切迫した客観的情勢が存在している場合にのみ、行為者に内乱罪を実行させる目的があることが認められるとする趣旨であるならば、そのような見解は、本件罰則の内乱罪を実行させる目的の法律上の性質を理解しないものであり、本件罰則の解釈に、破防法が全く予想していないような極端な制限を不当に設定するものと言わざるを得ない。 因みに本件罰 な見解は、本件罰則の内乱罪を実行させる目的の法律上の性質を理解しないものであり、本件罰則の解釈に、破防法が全く予想していないような極端な制限を不当に設定するものと言わざるを得ない。 因みに本件罰則の内乱罪を実行させる目的の内容は、右の文書頒布等の行為に因つて生じたものを原因又は基盤として、更に第三者の内乱罪実行という別段の行為が新たに行われることを要し、これによつて始めて達成されるものと考えられ、この点において内乱罪の朝憲紊乱の目的が暴動という客観的行為のみによつて自ら達成され、別段の行為を必要としない場合とは異るのであつて、本件犯罪は、目的罪のうち目的の内容たるべき事実が行為者自身または第三者が故意の対象たる外部的事実を手段または原因として別個の新たな行為をなすことによつて充足せられるという類型に属する目的罪であるから、本件罰則にいう目的と客観行為との関連は、客観的行為が目的の内容たる表象事実を達成するための第三者の新たな行為の原因または基盤として考えられているという意味の主観的な関連であるといわなければならない。また本件犯罪の目的については、行為者が目的の内容として表象した事実が客観的に見て全く児戯に類したり荒唐無稽で実行不可能なものと解される場合にはその表象事実は内乱罪に該当しないと判断されるべきであるが、そのような場合でない限りは、本件犯罪における目的は、行為者が文書の頒布等の行為をなすことによつて生じたものを原因又は基盤として、第三者が内乱罪を実行することを意図することであつて、内乱罪の実行は行為者にとつては窮極の目的ではあるが、本件犯罪においてはそれはあくまでも主観的な目的たるに止まり、客観的な事実として現実化されるものではない。本件犯罪の文書頒布等の行為によつて生ずるものは、内乱罪の実行そのものではなく、その原因または 件犯罪においてはそれはあくまでも主観的な目的たるに止まり、客観的な事実として現実化されるものではない。本件犯罪の文書頒布等の行為によつて生ずるものは、内乱罪の実行そのものではなく、その原因または基盤なのであつて、右のような原因または基盤が生ずるということは、内乱罪実行の機運が醸成されることであり、内乱罪実行ということが文書頒布等の行為の結果とされてもいないし、内乱罪実行の具体的な危険性が発生することも必要とされていないのであつて、本件犯罪の目的の内容は、近い将来わが国内全域または相当広汎な地域にわたつて相当多数の人をして内乱罪を実行させることを意図するを以つて足り、しかも右意図たるやこれを本件犯罪の故意及び客観的行為との関連において考察すれば、行為者において積極的に本件犯罪の文書頒布等の行為を行い多数人の間に内乱罪実行の機運を醸成させることにより、内乱罪の目的達成に関する成功の公算又は確率を増大させ、できるだけ早い時期に内乱罪を実行させようとするものであると解される。 されば、原判決の、本件犯罪は主観的かつ客観的に内乱罪を実行させることを直接の目的として、文書頒布等の行為をした場合にのみ成立するという見解は、本件犯罪の目的の法律上の性質を誤解し、本件罰則の解釈を誤つたものといわざるを得ない。 というのである。 そこで検討すると、控訴趣意第一点と同第二点とはきわめて密接な関連を有し表裏一体を成すものと思料されるので、これを綜合して考察することとする。 <要旨>破防法第三八条第二項第二号の罪は、その文書頒布による表現行為が被頒布者に対し国家の政治的基本組織</要旨>を暴動により覆滅しようとする重大犯罪である内乱罪の正当性、必要性への理解、共感を求め内乱発生の意識的基盤を作らうとする行為であるから、それ自体概念的抽象的には公共の危険を の政治的基本組織</要旨>を暴動により覆滅しようとする重大犯罪である内乱罪の正当性、必要性への理解、共感を求め内乱発生の意識的基盤を作らうとする行為であるから、それ自体概念的抽象的には公共の危険を発生させるおそれがあり、従つてその行為には形式的違法性があり具体的危険の発生を要しないいわゆる抽象的危険犯であると解すべきことは検察官所論のとおりである。然し後記において説示するところであるが、その行為のなされた当時において、その意図する危険発生の可能性、蓋然性の存在を必要とするものと解すべきである。 政治上の言論、表現の自由は民主主義政治の根幹を成すものであつて、この自由を制限しうるのは真に必要止むを得ない場合に限り、且その制限が認められる場合及び限度はできる限り厳密に解釈されなければならない。このことは日本国憲法の全体的解釈から当然に導き出される原理であり、従つて表現行為に対し刑事責任を問うことを法律により定める場合及びその解釈適用においては、その要件をできる限り厳密にすべきことは当然である。 破防法が国会審議の過程において付加挿入された第二条において同法を「公共の安全の確保のために必要な最少限度においてのみ適用すべき」旨特殊の立言を用いたのは、表現の自由が公共の福祉による制限に服するという憲法の解釈から当然に導き出される原理を単に注意的訓示的に表明したものと解すべきではなく、破防法の解釈適用に当つては、右の趣旨に則り、「公共の安全の確保の限度」を厳密に考察すべき旨を規定したものと解すべきである。 内乱罪実行の正当性、必要性を主張した表現行為の中には、現在の国家組織や政治体制の誤謬を指摘し、その改革を主張する様な純理論的なものもある反面、単に現在の政府を顛覆せんとするに過ぎぬ行動主義の議論もあり、又その行為の行われた客観的な社会的情勢 中には、現在の国家組織や政治体制の誤謬を指摘し、その改革を主張する様な純理論的なものもある反面、単に現在の政府を顛覆せんとするに過ぎぬ行動主義の議論もあり、又その行為の行われた客観的な社会的情勢の如何によつては、その様な主張を許すことにより内乱状態を発生せしめる虞の極めて高い場合もあると共に、その危険の少ない場合もあるわけである。そして議論の内容が純理論的である程、又社会情勢が平静であればある程、この様な主張は議論によつてその虚偽と誤謬を指摘し、教育や説得によつてその行為による害悪を避止する時間的余裕があるものと謂うべきであり、このような場合には相対立する主義、見解を唱導しようとする双方の論説をより一層自由活発にし、国民の良識による批判にその価値判断を委ねるべきである。内乱によつて顛覆しようと主張されている政治的基本組織や、それによつて樹立されている政府が、合憲法的な政権の授受交替を伴ひつつも、国民多数の人心の帰趨に副い、その支持を得ている場合には、これを内乱によつて非憲法的に顛覆しようとする言論は国民多数の支持を獲得することができないはずである。もし合憲法的な政治的基本組織や政府を内乱によつて顛覆しようとする言論が国民の大多数の支持を得るような場合は、その憲法やそれに基く政治的基本組織、政府等は歴史の進歩、時代の推移、内政及び国際政治両面からの要請に順応することができなくなつたものであつて既存の合憲法的体制やそれに基く実力を以てしては究極的には右のような言論を封殺することはできず、やがては既存の憲法制定権力そのものが土崩瓦解の止むなきに至るであろう。言論を処罰することによつて沈黙を強制すべき場合は、その言論が国民の大多数の支持を得ていないのにかかわらずその言論の内容たる政治的意図を実現しようと企図する徒党が内乱を計画しその計画が実 るであろう。言論を処罰することによつて沈黙を強制すべき場合は、その言論が国民の大多数の支持を得ていないのにかかわらずその言論の内容たる政治的意図を実現しようと企図する徒党が内乱を計画しその計画が実行の可能性をはらんでいる様な緊急状態の存する場合に限るべきである。即ち処罰による沈黙の強制は、言論による指導、説得、教育に委ねる余裕のないほどに社会的条件が切迫している場合、即ち(社会情勢が混乱しいわゆる一触即発の状態にある様な場合には勿論許さるべきであろうが、然らざるときは)前記の様な国民多数の意思に背馳して少数者による内乱罪実行の機運が熟している場合にのみ、許容しうるものと解すべきである。即ち国民の総意に基かない少数者による内乱罪実行の企図があり、それらの徒党が合憲法的治安維持機構にある程度の打撃を与えるに足る軍事的装備を備え、少くとも一地方において国権を排除し安寧秩序を紊乱し得る可能性をもつた内乱実行計画を有し、その企図が時期的にも具体的、近接的なものであることが、破防法第三八条第二項第二号による表現行為抑制を合憲法的国家法秩序の精神、目的に合致せしめ、同条違反の表現行為に実質的違法性を帯有させ、これを可罰的行為たらしめるものというべく、同法第二条にいう「公共の安全確保のために必要な最少限度においてのみ適用すべき」とはまさに右のような客観的社会的条件の具備する場合においてのみ同法を適用する趣旨を宣明したものといわなければならない。 原判決は本件頒布行為について「L復刊第二号は検察官の主張するとおり内乱罪実行の正当性及び必要性を主張する文書であると観なければならないが、破防法第三八条第二項第二号の犯罪が成立するためには内乱罪実行の正当性又は必要性を主張する文書であることを認識してこれを頒布することだけでは足りない。内乱罪を実行させること と観なければならないが、破防法第三八条第二項第二号の犯罪が成立するためには内乱罪実行の正当性又は必要性を主張する文書であることを認識してこれを頒布することだけでは足りない。内乱罪を実行させることを目的としてその文書を頒布した事実が認められなければならない。それ故集団暴動行為があつてもこれに因り直接に朝憲紊乱の事態を惹起することを目的とするのではなく、これを縁由として新に発生する他の暴動に因り朝憲を紊乱する事態の現出を期すような場合はこれを以て朝憲を紊乱することを目的として集団暴動を行つたと称することはできない」「被告人両名が内乱を実行させる目的を以て本件文書を頒布した事実が認められるためには先ずJ党が内乱罪を実行させることを企図し同党K委員会がその目的を以て本件文書を発行し被告人等にこれを頒布させた事実が認められなければならない。被告人等が内乱罪実行の正当性、必要性を主張した文書を頒布した事実だけで直ちに被告人等が内乱罪を実行させる目的を以てこれを頒布したと推断することは適当ではない」「被告人等が共謀若しくは単独で昭和二七年九月上旬J党K委員会の命を受け同委員会発行に係る内乱罪実行の正当性と必要性を主張したL復刊第二号を頒布した事実は認められるが、主観的且つ客観的に内乱を実行させることを直接の目的としてこれを頒布した事実が認められない。仮令被告人等が内乱を実行させる目的を以て本件文書を頒布したとしても本件犯行当時客観的情勢に鑑み公共の安全を確保するために本件文書の頒布を禁止することが必要であつたと認められない」等と説示しているが、右各説示によつて原判決が検察官所論のように本件頒布行為が抽象的危険犯であることを否定して、これを具体的危険犯であると解しその犯罪成立の要件としての具体的危険の不発性を説明したものと即断することはできず、むし よつて原判決が検察官所論のように本件頒布行為が抽象的危険犯であることを否定して、これを具体的危険犯であると解しその犯罪成立の要件としての具体的危険の不発性を説明したものと即断することはできず、むしろ本件行為が違法行為として処罰されるためには前記の様な緊急状態の存することを必要とするとの本件犯罪の構成要件及び可罰性賦与の要件について説示したものと考えられる。 更に原判決は、国家社会の利益(公共の福祉)を保護するために言論の自由に制限を加えることが不当となるか否かを判定する基準として、いわゆる「明白かつ現在の危険」の原則を引用して次ぎのように説示している。 即ち「破防法第三十八条に関する限り憲法に違反する条章であるとは言えない。 しかし同法第二条にこの法律は国民の基本的人権に重大な関係を有するから公共の安全を確信するために必要な最少限度において適用すべきであつて苟もこれを拡張するようなことがあつてはならないと明記しているのは当然である。それはQ、R、両判事の所謂明白且つ現在の危険の法則に従つて本法を適用することとその趣旨に変りはない。而して本件文書頒布以前からこれと同趣旨の文書が頒布せられていたのに拘らず、国民の前に虚偽と誤謬を暴露し明白且つ現在の危険が認められなかつたことは前述のとおりである。」「明白且つ現在の危険の法則をS長官の説いた趣旨に変更し、内乱発生の客観的情勢の切迫していると否とを問わず破防法第三八条第二項第二号を適用することは公共の安全を確保するために必要な最少限度を超えて適用することに外ならない」としている。いわゆる「明白かつ現在の危険」の原則は、アメリカ合衆国において唱えられた当初はその基準として第一、言論そのものが実質的害悪と直接に結びついているものであること、第二、言論の述べられる場合の状況が、その言論によつて実質的 危険」の原則は、アメリカ合衆国において唱えられた当初はその基準として第一、言論そのものが実質的害悪と直接に結びついているものであること、第二、言論の述べられる場合の状況が、その言論によつて実質的害悪を生ぜしめる明白かつ現在の危険をはらむものであること。第三、実質的害悪は連邦議会が憲法によつて与えられている立法権でそれを防止しうる事項でなければならない、との三点を指摘し、以上の三点から、憲法上の保護を受ける言論とその保護を受け得ない言論とを区別しようとしたものであるが、その後この原則は主唱する各人により多少その見解を異にし、かつ変貌を遂げたもののようであり、また右原則に対しては絶えず批判と反対が存在しているように思われる。 ところでわが国の裁判権に服する領域で行われた表現行為が、日本国憲法によつて保障される表現の自由の保護の下に置き得るものであるか否かを判定する基準としては、少なくとも表現行為(たとえ表現の自由の濫用にあたる場合でも)の処罪による抑制については、前説示の如く、立法においても、その解釈適用においても、厳格な制限の枠内においてのみ許容しうるものと解するのである(もつともわいせつ物頒布等公共の福祉に反すること明らかな行為及び公益の目的に出でない名誉毀損の言論や殺人の教唆等明らかに個人の法益を侵害する行為等の抑制については別論である。)から、表現の当否はさておき、結論としては原判決の説くところと同旨に帰し、従つて原判決がその所説を裏付けるために「明白かつ現在の危険」の原則を挙示したことを以て破防法第二条の解釈を誤つたものとする非難は当らないものと言わなければならない。 因みに検察官の引用する判例のうち、昭和二四年五月一八日付の食糧緊急措置令第一一条に関する最高裁判所大法廷判決は「国民が政府の政策を批判し、その失政を攻撃する らないものと言わなければならない。 因みに検察官の引用する判例のうち、昭和二四年五月一八日付の食糧緊急措置令第一一条に関する最高裁判所大法廷判決は「国民が政府の政策を批判し、その失政を攻撃することは、その方法が公安を害せざる限り、言論その他一切の表現の自由に属するであろう。しかしながら、現今における貧困なる食糧事情の下に国家が国民全体の主要食糧を確保するために制定した食糧管理法所期の目的の遂行を期するために定められたる同法の規定に基く命令による主要食糧の政府に対する売渡に関し、これを為さざることを煽動するが如きは、所論のように、政府の政策を批判し、その失政を攻撃するに止まるものではなく、国民として負担する法律上の重要な義務の不履行を慫慂し、公共の福祉を害するものである。されば、かかる所為は、新憲法の保障する言論の自由の限界を逸脱し、社会生活において道義的に責むべきものであるから、これを犯罪として処罰する法規は新憲法第二一条の条規に反するものではない」と説示し、「現今における貧困なる食糧事情」なる客観的社会的基盤を問題とし、この様な情勢下では右行為の意図したことが実現可能であるとの考え方を基調としており、また昭和二七年八月二九日付の地方公務員法第六一条第四号に関する最高裁判所第二小法廷の判決は「被告人が室蘭市警察吏に配布した『全室蘭の警察幹部諸君に訴う』なる文書によれば、同文書の内容が、地方警察吏に対して怠業的行為を慫慂するものであることは明らかであり、地方警察吏が怠業を行うことは法の禁ずるところであつて、かかる行為を慫慂するがごときことは、憲法の保障する言論の自由の範囲を逸脱するものであることは前示大法廷の判例の趣旨に徴して明瞭であるといわなければならない。尤もかかる慫慂によつても、怠業的行為の起る危険が全くないような場合には犯罪 憲法の保障する言論の自由の範囲を逸脱するものであることは前示大法廷の判例の趣旨に徴して明瞭であるといわなければならない。尤もかかる慫慂によつても、怠業的行為の起る危険が全くないような場合には犯罪を構成しないといわなければならないが、前記文書によれば警察職員中警備、情報、捜査特務等の特高活動をするもの等に対しては、『これらの一人一人を人民の敵として記憶し、来るべき日において最も峻烈なる人民の処罪を課するであらう』なる脅迫的文言を弄せる箇所等にかんがみるときは、本件被告人の所為のごとき必ずしもその危険性なしとすることはできない」と判示し、その言論の意図するところが実現不可能の状況ではないことを認定しており、単に行為の抽象的危険性のみを可罰性の根拠としているのでないことがうかがわれ、孰れも当裁判所の前記説明と相容れない見解を採つているものとは解しがたい。 なお検察官は、本件罰則たる破防法第三八条第二項第二号の内容が即ち同法第二条にいう「公共の安全の確保のために必要な最少限度」を成すものであり、右罰則が同法第一条にいう「暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定の補正」の一部であり、この補整が「公共の安全の確保に寄与することを目的とする」ものであつて同法第二条にいう「公共の安全」が右罰則の保護法益であるから、右最少限度とは、本件罰則の規定の趣旨から論理的必然の帰結として導き出される結論を禁止又は制約する趣旨を含むものではなく、また右罰則の規定自体から当然には導き出されないような重大な制限をみだりに設定することを要求している趣旨でもない、というのであるが、なるほど右第三八条第二項第二号の罰則によつて保護しようとする法益は、国家の政治的基本組織及びそれに基く施政の下における公共の安全である、といい得るであろうけれども、もし所論のように右罰則の内容が「 なるほど右第三八条第二項第二号の罰則によつて保護しようとする法益は、国家の政治的基本組織及びそれに基く施政の下における公共の安全である、といい得るであろうけれども、もし所論のように右罰則の内容が「公共の安全を確保するために必要な最小限度」と同義語であるとすれば、破防法が右罰則たる同法第三八条の外にことさら第二条の規定を設けてそれに掲げるような立言をすることはきわめて不自然であるというの外はない。又同法案の国会における審議の経過に徴しても、右第三八条による表現行為の処罰や同法の他の規定による団体規制が、わが国の戦前及び戦時下における治安立法(治安維持法、治安警察法、国家総動員法、国防保安法等)及び言論規制法(新聞紙法、出版法等)運用の実状及び経験にかんがみ、濫用される恐れなしとせぬこと、及びこれらの処罰や規制が日本国憲法の保障する表現の自由にてい触する危険性が大きいことを顧慮して、即ち破防法の発動適用を安易に許容することが却つて公共の福祉に反する結果を招来するおそれがあることに留意した上、右第二条が設けられたものと解すべきである。従つて同条は、政治的基本組織やそれに基く合憲法的政府及び施策と、それによつて支えられている公共の安全に、重大かつ近接した危険を及ぼすおそれがある場合に限り、右安全を確保するに必要な限度においてのみ、罰則や規制措置を発動適用しうるものとする趣旨で設けられたものと解するのを相当とする。 次いで破防法第三八条第二項第二号にいう「内乱罪を実行させる目的」の解釈に関する原判決の説示に対する検察官の論旨につき考察すると、原判決は破防法第三八条第二項第二号にいう「内乱罪を実行させる目的」について検察官が前記控訴趣意第二点において指摘したような説示をしているのであるが、従来わが国の裁判所は内乱罪の成否の認定については数少ない 防法第三八条第二項第二号にいう「内乱罪を実行させる目的」について検察官が前記控訴趣意第二点において指摘したような説示をしているのであるが、従来わが国の裁判所は内乱罪の成否の認定については数少ない判例においてではあるがきわめて慎重な態度を保持しており、(朝鮮高等法院特別刑事部の大正九年三月二二日附決定及びいわゆる五、一五事件に関する大審院の前記昭和一〇年一〇月二四日附判決参照)原判決も右大審院判決の見解に従つて内乱罪の成否を決すべきであるという解釈をしているものと思料されるところ、直接に朝憲紊乱の事態を惹起することを目的としない行為はたとえその行為を機運として新たに発生することあるべき他の行動により朝憲紊乱の事態を現出することを予想したものであつても内乱罪の成立を肯定し得ないとの見解が誤であるとは考えられない。ところで原判決が五、一五事件に関する右大審院判決を引用した趣旨は必ずしも明らかではないが、内乱罪以外の特定の行為たとえば騒擾罪その他の治安撹乱行為を実行させこれを縁由として内乱罪を実行させることを窮極の目的とし、この目的を達するため内乱罪の実行え発展すべき跳躍台的な前段階的過程を現出するため右のような治安撹乱行為を実行させることを企図し、或いは内乱罪実行のための準備をさせた場合には、直接に朝憲紊乱のためにする暴動を実行させる目的がなくても、内乱罪を実行させる目的があるものとしてそれ自体違法性を帯びるものと解すべきであるから、もし原判決の右大審院判決引用の趣旨がこれに反するものであるならば、その点は妥当を欠くといわなければならない。 然しながら前説示のような破防法第二条の趣旨に徴すると、同法第三八条第二項第二号の罪は、行為者においてたとえ内乱の罪を実行させる意図を以てしたとしても、客観的に内乱罪の実行され得べき可能性ないし蓋然性 しながら前説示のような破防法第二条の趣旨に徴すると、同法第三八条第二項第二号の罪は、行為者においてたとえ内乱の罪を実行させる意図を以てしたとしても、客観的に内乱罪の実行され得べき可能性ないし蓋然性がない限り、右第二条にいう「公共の安全確保のために必要な最少限度」の枠内に包含されるものということはできないから、内乱罪を実行させる目的を以てする文書頒布行為に実質的違法性即ち可罰性を賦与するためには、行為者において単に内乱罪を実行させる主観的意図を有していただけでは足りず、これと共に客観的な社会的基盤において内乱罪の実行され得べき素地や条件が熟しており、行為者においてこれを認識してその行為に出でた場合にのみ、可罰的評価を受けるにふさわしい主観的違法要素としての「内乱の罪を実行させる目的」があるものといわなければならない。原判決が「被告人等が内乱罪実行の正当性と必要性を主張したL復刊第二号を頒布した事実は認められるが主観的且つ客観的に内乱を実行させることを直接の目的としてこれを頒布した事実が認められない」と説示したのは、本件行為により内乱にまで発展する様な客観的基盤の存在及びその認識に支えられた被告人の主観的違法要素との併存、換言すれば両者の結合を認めることができないという趣旨を述べたものと想像される。従つて仮りに「内乱罪を実行させる目的」なる概念に関する原判決の見解が先きに指摘した点において妥当を欠くとしても、右のような客観的基盤に支えられた主観的違法要素を必要とするものとした点において右罰則を正当に理解したものというべく、原判決が破防法第三八条第二項第二号の解釈を誤つたとする検察官の論旨は失当である。 なお原判決が、本件罰則の内乱罪を実行させる目的が主観的にかつ客観的に認められることが必要である、と述べ、内乱発生の客観的情勢の切迫してい 二項第二号の解釈を誤つたとする検察官の論旨は失当である。 なお原判決が、本件罰則の内乱罪を実行させる目的が主観的にかつ客観的に認められることが必要である、と述べ、内乱発生の客観的情勢の切迫していると否とを問わず右罰則を適用することは公共の安全を確保するために必要な最少限度を超えて適用することに外ならないと附陳した趣旨は、行為者の主観的違法要素に可罰性を賦与するための要件として客観的な社会的基盤が必要であることを示したものと解されるから、原判決が検察官所論のように行為者と離れて観察した客観的事実を行為者の目的の要件としたわけではなく、また目的認定の要件として現実に内乱罪実行という事実の存在を必要とすると説いたものでもないし、本件罰則の解釈に破防法の全く予想しないような極端な制限を不当に設定したものでもない。これらの諸点に関する論旨は採用しがたい。 (二) 控訴趣意第三点の所論の要旨は、原判決の本件犯行当時の客観的情勢に関する判断及び被告人及びAの内乱罪実行の目的に関する認定は重大な事実の誤認を犯したものであつて、この誤認は判決に影響を及ぼすこと明らかである、というのであつて、その理由とするところは次のとおりである。 原判決は、本件文書はJ党K委員会発行の機関紙で内乱罪実行の正当性、必要性を主張した文書であり、被告人及び共犯者Aは何れもJ党員で、本件文書によつて表明された同党のいわゆる「民族解放民主革命」(同党が日本国憲法を否認し、労働者階級等の武装蜂起によつて日本領土の一部を占拠し、国会を通ぜずに国会制度や内閣制度等日本国憲法の定めた政治的基本組織を改変して、新しい政府をつくることを究極の目的とした武力革命方式)を達成するためには速かに軍事組織をつくり武装の準備と行動を開始しなければならず、現在(一九五二年一月)は防禦戦の段階にあ 基本組織を改変して、新しい政府をつくることを究極の目的とした武力革命方式)を達成するためには速かに軍事組織をつくり武装の準備と行動を開始しなければならず、現在(一九五二年一月)は防禦戦の段階にあるから遊撃戦術によつて軍事行動を発展させ最後の闘争形態においては労働者と農民のバルチザン部隊の総反抗とこれと結合した労働者階級の武装蜂起によつて敵(同党のいわゆる反動的M政府)の支配を地域的に麻痺させ敵の権力を打ち倒さなければならないし、このような武力方式によつて革命を実現することは正当であり、かつ必要である、との主張及び本件文書が右のような内容の文書であることを了知又は推知してそれぞれ本件文書を頒布した事実を認めながら、被告人及びAが内乱罪実行の正当性、必要性を主張した文書を頒布した事実だけで、直ちに被告人等が内乱罪を実行させる目的を以てこれを頒布したと推認することは適当でないとし、被告人等が右目的を以て本件文書を頒布した事実が認められるためには先ずJ党が内乱罪を実行させることを企図し同党K委員会がその目的を以て本件文書を発行し被告人等にこれを頒布させた事実が認められなければならないという前提に立つて、同党の戦後における活動方針、新綱領採用の経過、新綱領によつて採用された革命の性質(戦略)と軍事方針及び新綱領発表前後における同党の活動状況を各種の証拠によつて綜合考察をした上、「同党が昭和二五年(一九五〇年)一月コミンフォルムのいわゆる国際批判を容れ、戦後日本の占領下において従前採用していた平和革命方式を一擲して軍事方針に転換し軍事組織と軍事行動の拡大強化を図り、昭和二六年一二月頃から同二七年八月上旬頃までの間同党及びその同調者と観られる日本の労働者学生等若しくはそれらが暴力を以て日本の国内政治に干渉し日本の独立を侵害することを顧みないT隊と 強化を図り、昭和二六年一二月頃から同二七年八月上旬頃までの間同党及びその同調者と観られる日本の労働者学生等若しくはそれらが暴力を以て日本の国内政治に干渉し日本の独立を侵害することを顧みないT隊と提携して、過激な行動、就中火焔瓶事件のような基本的人権と公共の福祉を無視した暴力事件を計画実行し、或は支配機構に対する反抗闘争と観られる暴力事件を各地に惹起した外に、同党軍事委員会やT隊のいわゆる地下組織と暗躍が有力新聞によつて報導せられ、戦後に発展しつつあつた平和な民主主義社会に一沫の不安を漂わせていた」との事実を認定しながら、一転して、同党の軍事方針に基いて結成せられた軍事組織が全国的に強固な網の目を編成する程度に拡大していたとは認めがたいし、昭和二七年(一、九五二年)一月前後頃は客観的には軍事組織と武装を以て直ちに国家権力を地域的に麻痺状態に陥れ革命に導くことは困難な情勢であつたので、当時の軍事活動は戦略的には防禦戦の段階にあるとして遊撃戦術を以つて権力に対する反抗闘争を企図し労働者、学生等を煽動して権力機関資本家の支配機構、在日米軍後方部隊等に対する実力行使を散発的に行つたが、それ自体若しくはそれらが相呼応して労働者、農民その他一般国民大衆の感情と理性を喚起しひいて革命に導入するおそれのあつた客観的情勢を推認することはできない、と判断している。 なるほどかかる情勢が目前に武装革命を勃発させる切迫した情勢にまで至らなかつたことは、原判決指摘のとおりであるが然しながらかかる険悪な情勢が同党の武装革命達成のため軍事方針によつて現出されたことは、原判決もこれを認めるところであつて、この事実は本件文書の内容たる武装革命達成のための構想が、単なる構想に止まらず、同党員及び同調者等によつて、実践されつつあつたことを十分に推認させるのであつて、かか 決もこれを認めるところであつて、この事実は本件文書の内容たる武装革命達成のための構想が、単なる構想に止まらず、同党員及び同調者等によつて、実践されつつあつたことを十分に推認させるのであつて、かかる事実に徴しても、同党の内乱を実行させる意図が単なる主観的な恐怖を与えるものではなく、既に確実化され、各種の悪質重大な犯罪行為が敢行されて、公共の安全を侵害しつつあつたことを、認めざるを得ない。然るに原判決は、右の情勢が武装革命勃発の前夜の如き切迫した情勢に至らなかつたことを理由として、「本件犯行当時客観的情勢に鑑み公共の安全を確保するために本件文書の頒布を禁止することが必要であつたとは認められない」と判断しているのであるが、このような判断を以てすれば、右のような情勢下において更に本件文書が広く一般大衆に頒布され、これがため情勢がいよいよ悪化したとしても、公共の安全は少しも侵害されないことになるのであるから、原判決の判断がいかに誤つたものであるかは多言を要しない。 そして原判決は「本件犯行後(昭和二七年八月上旬以後)の情勢」と題し、本件犯行後三個年にわたつて激しく変転したわが国内外の情勢を、わずかな断片的証拠によつて判断し、先ず「昭和二七年八月以後においても、J党が埼玉県下等において、依然として軍事組織の拡大強化に努めていた事実が認められるが、同月以後本件文書頒布前後を通じ、前記のような暴力事件は全国的に続発せずその退潮期に入り、社会不安が次第に解消しつつあつた事実が認められる」と認定し、次いで「同年一〇月一日施行の衆議院議員選挙において、国民の厳正な審判により、J党の議員候補者が全員落選し、翌二八年四月施行の衆議院議員選挙においても、J党がわずかに一議席を獲得したに過ぎなかつたことは周知の事実である」と指摘し、前記一〇月選挙に際し、「下級 な審判により、J党の議員候補者が全員落選し、翌二八年四月施行の衆議院議員選挙においても、J党がわずかに一議席を獲得したに過ぎなかつたことは周知の事実である」と指摘し、前記一〇月選挙に際し、「下級党員が敢えて上部機関に対して上申書や意見書を提出して、反省を促さざるを得なかつた明白な極左冒険主義の誤謬乃至虚偽について党中央委員は総選挙の結果を手を拱いて傍観するわけにいかなかつた。同年一〇月頃直ちに第二二回中央委員会を開いて善後策を講じたがいわゆる自己批判を公表したのはそれから三年後であつた」と認定している。 然しながら、原判決の右の如き認定は、適法に証拠調した証拠の価値をことさら看過し、恣意的に導き出した誤れる認定で事実誤認も甚しい。原判決のいわゆる前記「退潮」なるものも、本件当時その直前までに行われた暴力事犯が表面漸く沈静し始めたというに過ぎず、今後の予断を許さぬ情勢にあつたにかかわらず、原判決は表面の現象のみに囚われ、適法に証拠調を施行した「武装問題の成果と欠陥について」(検乙第一一四号)「Y組織活動を強化せよ」(検乙第一一五号)、「N隊統一司令部の任務について」(中核第二二号)(検乙第一一六号)等の記載によつて明白な、本件犯行後におけるJ党の軍事行動の発展や武装革命方針が従前よりも深く国民大衆の中に浸透し、かつN隊もますます拡大強化されて行つたこと等を看過しているのである。 また原判決は前記のように第二二回中央委員会の善後策なるものが、恰も明白な極左冒険主義の誤謬乃至虚偽について行われ、従来の武装革命方針と軍事行動を放棄したかの如く解し、その証拠として証人Uの供述を挙げているが、右供述は措信し得ないもので、これを唯一の証拠とした右認定は誤りであり、また原判決は六全協におけるJ党の自己批判について説示し、右自己批判を本件犯罪後の客 、その証拠として証人Uの供述を挙げているが、右供述は措信し得ないもので、これを唯一の証拠とした右認定は誤りであり、また原判決は六全協におけるJ党の自己批判について説示し、右自己批判を本件犯罪後の客観情勢として認定し、しかもこれを本件犯罪行為の危険性を判断する資料としたことが明らかであるが、本件犯罪行為の公共の安全に対する危険性を、行為後数年間にわたる客観的情勢の変化を基礎として判断することが誤つたものであることは多言を要しない。なお原判決は朝鮮戦争の発生事情と経過について説示した上、J党の軍事方針が専ら北鮮軍や共産軍のため戦況や休戦交渉を有利に導くために行われたものであるかの如き推測を下しているが、このような推論は極端な独断に基くものである。 以上要するに本件当時J党が内乱罪を実行させる目的を有し、同党K委員会もまた内乱罪を実行させる目的を以て本件文書を発行し、被告人等にこれを頒布させた事実及び被告人及びAがその指示により内乱罪を実行させる目的を以て本件文書を頒布した事実が充分認定できたのにかかわらず、原判決が、本件当時の客観的情勢にかんがみJ党同党K委員会及び被告人等が内乱罪を実行させ目的を有していた事実が認められない、としたのは重大な事実誤認を犯したものである。 更に原判決は「仮令被告人等が内乱を実行させる目的を以て本件文書を頒布したとしても本件犯行当時客観的情勢にかんがみ公共の安全を確保するために本件文書の頒布を禁止することが必要であつたと認められない。」と述べているが、本件文書は、J党という多数の訓練された党員を擁し厳格な統制と規律の下に活動する全国的な政治団体の活動方針を示したものであり、しかもその活動方針は同党がいわゆる新綱領に掲げる目的達成のため武装革命方式を採ることを原則的に標暮雨榜したに止まるものではなく、当面の の下に活動する全国的な政治団体の活動方針を示したものであり、しかもその活動方針は同党がいわゆる新綱領に掲げる目的達成のため武装革命方式を採ることを原則的に標暮雨榜したに止まるものではなく、当面の情勢が革命的情勢であること即ち革命が近い情勢であると判断していることを戦術的な用語で明白に表明しているのであつて、同党はここに武装革命達成のための具体的な武装の準備と行動を開始すべき時期到れりとの確信の下に、広汎かつ大規模な武装闘争の構想を明らかにすると共に、これを実現すべき行動の準則又は指針を示したものと認められ、本件文書が公共の安全に対し実質的な脅威をもたらすものであることはこれを否定し得ないところであり、本件文書の内容の一部である「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」と題する論文が、同党の昭和二六年一〇月の五全協において採択されたいわゆる軍事方針であり、また本件文書の内容の一部である「N隊の組織と戦術」と題する論文が、昭和二七年一月同党によつて発表されたものであるから、本件文書即ちL復刊第二号が同党K委員会発行の機関紙であり被告人及びAが同委員会の指令により本件文書を頒布したことは原判決認定のとおりである以上、同党においては、武装闘争を大衆的規模に拡大させることを企図し、これがためこれらの軍事論文を直接大衆の間に持込むことを同党の下部組織に強く指示していたものであり、同党K委員会がその機関紙にこれらの軍事論文を掲載発行したことも右の指示によるものと認められ、従つて被告人及びAが同委員会の指令により本件文書を頒布した行為は同党の活動の一環として行われたというだけではなく、同党の軍事行動として行われたことは明白である。従つて被告人等が近い将来わが国全域又は相当広汎な地域にわたつて相当多数の人をして内乱罪を実行させる目的を以つ 動の一環として行われたというだけではなく、同党の軍事行動として行われたことは明白である。従つて被告人等が近い将来わが国全域又は相当広汎な地域にわたつて相当多数の人をして内乱罪を実行させる目的を以つて本件文書を頒布したものであり、かつ本件文書は専ら武装革命という目的を達成する準備的な行動として武装闘争を唱導しているのであるから武装革命達成という目的が間接的であると考える余地は全くなく、本件当時の相当深刻な社会不安がただよい、治安上険悪であつた客観的情勢の下において、本件犯罪行為が一般大衆の間に、いよいよ内乱実行を正当視し必要視する意識を喚起醸成させることにより、内乱実行の機運を激成して、内乱を発生させる危険性を有すると共に、各種の悪質重大な犯罪行為を誘発させる危険性を有し、これがため公共の安全を著しく危殆ならしめるものがあつた事実が確認されるのであつて、本件犯罪行為こそ公共の安全確保のため、本件罰則を適用してこれを禁止すべき必要があつたものである。 というのである。 そこで先ず本件文書頒布当時及びその前后における客観的情勢について考察するに、本件記録を精査し原裁判所及び当裁判所が取調べた全証拠を検討しても、この点に関する原判決の認定に誤があるとは考えられない。即ち昭和二六年一二月頃から同二七年八月上旬頃までの間においていわゆる五全協(昭和二六年一〇月にJ党が開催した第五回全国協議会の略称)において、昭和二五年一月のコミンフォルムの国際批判を容れて採択された新綱領の軍事方針に刺激されたJ党員及びその同調者と見られる労働者学生等の一部尖鋭分子が、わが国内の数個所において騒擾若しくは集団的暴力事件(原判決が「新綱領発表前后におけるJ党の活動状況」と題して1乃至17に摘記した事件等)を散発的に惹起したけれども、全国的には、国民一般の心理には わが国内の数個所において騒擾若しくは集団的暴力事件(原判決が「新綱領発表前后におけるJ党の活動状況」と題して1乃至17に摘記した事件等)を散発的に惹起したけれども、全国的には、国民一般の心理にはこれら諸事件の報道によつて一抹の不安はただよいながらも、右過激な方針や行動には同調することなく概ね平静を保ち、国民の多数は合憲法的な体制による統治を支持していたことは明らかであり、又J党員やその同調者等の一部尖鋭分子が準備した装備は、その攻撃力、破壊力の点から見て、警察、警察予備隊、海上保安庁等の治安維持機構の有していた装備、編制や、在日駐留米軍(昭和二七年四月二八日条約第六号同日発効の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第一条によれば、日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸海空軍は、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる、と規定されている)の保持していた軍事力と比較すると著しく懸絶して劣弱なものであり、かつ戦闘員の組織、経済的基礎等の強固さにおいても彼我の実力が甚しく相違し、たとえ内乱を企図しても到底その実現が不可能であつて、たかだか散発的局部的な襲撃や騒乱を試みうるに過ぎなかつたと思料されることは公知の事実である。従つて原判決が本件当時の情勢について革命に導入するおそれのあつた客観的情勢を推認することができないと結論したのは相当であるといわなければならない。 なるほど検察官所論のように、各種の集団的、騒乱的暴力事件が、J党の武装革命達成を窮極の目的とする軍事方針に刺激されて、同党員及びその同調者等によつて実践され若干の不 あるといわなければならない。 なるほど検察官所論のように、各種の集団的、騒乱的暴力事件が、J党の武装革命達成を窮極の目的とする軍事方針に刺激されて、同党員及びその同調者等によつて実践され若干の不安感を惹起していた社会的情勢が現出したことは認められるけれども、未だ本件文書頒布行為を可罰的なものとするに足るほどの客観的情勢が具備したとはいい得ないから、原判決が「本件犯行当時客観的情勢にかんがみ公共の安全を確保するために本件文書の頒布を禁止することが必要てあつたと認められない」と判断したことが誤であるとはいい得ない。 また原判決が本件頒布行為後の情勢について次第に社会不安が解消したと認定しかつJ党が衆議院議員選挙において国民の支持を失つたことは周知の事実であると指摘して、このことを本件行為当時の社会的情勢及び行為の危険性認定の一資料としたことは社会情勢の動態的考察方法として許容さるべきであつて、事実認定の方法を誤つたものとはいえないし、またもし検察官所論のように本件行為後J党が従前の軍事方針を全く放棄したものでないとしても、同党が国民多数の支持を失つたことに変りはなく、本件行為当時の客観的情勢についての原判決の認定を左右するに足りない。 もつとも原判決が「J党の軍事方針が専ら朝鮮戦争における北鮮軍や共産軍のため戦況や休戦交渉を有利に導くために国連軍の主力であるアメリカ軍の後方基地日本を不安に陥れ日本国民の反戦反米気分を昂揚しアメリカの軍需輸送を妨害するために反抗闘争を推進し暴力事件を惹起させたのではなかろうか」と推測したことが仮に独断であつたとしても、そのことは判決に影響を及ぼすような事実誤認ということはできない。 そこで先きに見たような客観的情勢及びJ党員及びその同調者中直接行動に出ようとする一部尖鋭分子と、治安維持機構の現実の力関 しても、そのことは判決に影響を及ぼすような事実誤認ということはできない。 そこで先きに見たような客観的情勢及びJ党員及びその同調者中直接行動に出ようとする一部尖鋭分子と、治安維持機構の現実の力関係における彼我の格差から考えると、同党及びその下部機構である同党K委員会ならびにその指揮下に在つた被告人及びAが、武装革命の実現が近いと判断して当面直ちに内乱を実行させる目的を有したものとは到底考えられないが、本件文書の内容及び同党が採択唱導した前記軍事方針にかんがみると、被告人及び人住が右文書の内容及び右軍事方針を諒解認識してこれを頒布した以上、少なくとも国民大衆の間に内乱罪実行の精神的素地、意識的基盤を醸成する目的を有したものと解すべく、従つて形式的には内乱罪を実行させる目的で本件文書を頒布したものといわなければならないが、その主観的違法要素が前説示のように内乱罪実行の可能性、蓋然性を帯有する客観的な社会的条件に支えられておらず、これとの結び付きを欠くという点において可罰性を賦与することができないというべきであるから、原判決が「J党が直接革命乃至は内乱を実行させる意図を以て軍事活動を推進させたとは到底考えられない」とし、また、「被告人等が主観的且つ客観的に内乱を実行させることを直接の目的としてこれを頒布した事実が認められない」と判断したのは、前説示のような理由により、行為の可罰性を主眼として述べたものであると考えられ、検察官所論のような重大なる事実誤認を犯したものということはできない。また本件罰則を適用して本件頒布行為を処罰することが公共の安全確保のため必要な最少限度として要請されるべきであるとする検察官の所論が採用できないことはJ党及び被告人等の目的の性質、内容ならびに客観的情勢の評価に関する以上の説示ならびに控訴趣意第一、二点につい 保のため必要な最少限度として要請されるべきであるとする検察官の所論が採用できないことはJ党及び被告人等の目的の性質、内容ならびに客観的情勢の評価に関する以上の説示ならびに控訴趣意第一、二点について説示したところにより自ら明らかである。 以上要するに、原判決には所論のような判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りや事実の誤認はないから、本件控訴は理由がなく、刑事訴訟法第三九六条によりこれを棄却することとして主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官田中勇雄裁判官三木良雄裁判官木本繁)
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