平成11(ワ)2443 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年1月29日 名古屋地方裁判所
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判決文本文10,079 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,金221万円及びこれに対する平成11年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。 4 この判決第1項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,原告に対し,768万円及びこれに対する平成11年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,原告が被告に対し,被告が設置した回転式立体駐車場の操業を行うことにより発生させる騒音振動が,受忍限度を超えて違法であるとして不法行為の損害賠償請求権,及び調停条項の債務不履行による損害賠償請求権に基づいて,768万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成11年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。 1 前提となる事実当事者間に争いがない事実と,証人Aの証言,被告代表者尋問の結果,及び後記各証拠,並びに弁論の全趣旨により認める。 (1) 原告は,昭和63年2月3日,所有地上に別紙物件目録記載の建物(以下「原告建物」という。)を竣工し,以来,原告建物の1階を店舗,2階・3階をマンション(各3部屋)としてそれぞれ賃貸し,4階を自宅,5階を物置として使用している。原告は,原告建物4階の自宅において,妻A(昭和23年生)及び予備校生の娘と共に居住している。 被告は,遊技場,サウナ風呂等の経営を業とする資本金4800万円の株式会社 ,5階を物置として使用している。原告は,原告建物4階の自宅において,妻A(昭和23年生)及び予備校生の娘と共に居住している。 被告は,遊技場,サウナ風呂等の経営を業とする資本金4800万円の株式会社であり,名古屋市a区bc丁目d番e号でスーパー銭湯「B」(以下「本件スーパー銭湯」という。)を経営している(甲11号証)。 (2) 被告は,昭和63年4月15日,原告建物の南側に隣接して,本件スーパー銭湯の利用客のため回転式立体駐車場(収容台数は1号機が21台,2号機と3号機が各33台の計87台,以下「被告駐車場」という。)を設置し,24時間営業で操業を始めた。被告駐車場を利用している本件スーパー銭湯は,年中無休で,女湯は午前6時から翌日午前3時まで営業し,男湯は24時間営業である。 そのため,原告は,平成元年に被告駐車場の騒音紛争につき,名古屋簡易裁判所へ騒音防止等調停事件を申立て,同年10月11日に調停が成立した(甲1号証,以下「元年調停」という。)。 (3) 原告は,元年調停の成立後も,被告が調停条項を守らず,被告駐車場からの騒音,振動は改善されていないと考え,平成10年9月3日,被告に対し,回転式駐車機2号機の運転を午後9時から翌日午前8時まで停止することや,和解金の支払いなどを求めて再び騒音防止等調停事件を申立てたが,平成11年6月17日に調停不調となった。 (4) 被告はその後の平成11年12月26日,本件スーパー銭湯の建物1階に,スロット遊技場「C」(以下「本件遊技場」という。)を開店し,本件遊技場の利用客にも,被告駐車場の回転式駐車機3号機を利用させるようになった(甲9号証)。本件遊技場は年中無休で,営業時間は午前9時から午後11時である。 2 争点(1) 被告が発生させる騒音振動は,原告の受忍限度を超えて違法か。 (原告の主張) 機を利用させるようになった(甲9号証)。本件遊技場は年中無休で,営業時間は午前9時から午後11時である。 2 争点(1) 被告が発生させる騒音振動は,原告の受忍限度を超えて違法か。 (原告の主張)ア騒音振動の程度騒音規制法,愛知県公害防止条例では,特定施設等の騒音の発生について規制基準を設けており,被告駐車場及び原告建物のある商業地域については,夜間22時から翌朝6時までの騒音の上限値は50デシベルであるところ,本件では,明らかに規制基準を上回る騒音が,毎日,深夜,普段に発生しているのであるから,原告の受忍限度を超えたものであり,違法である。 (被告の主張)ア原告の前記主張は否認する。 イ騒音規制法,愛知県公害防止条例では,名古屋市全域を規制対象地域としているものの,規制対象施設としては,特定施設・発生施設に限定しており,立体駐車場はこれにあたらない。法が特に,特定施設に限定して騒音規制をしていることからすれば,これを特定施設以外にも敷衍されることは許されない。 ウ立体駐車場には,規制値が存在せず,商業地域における特定施設の騒音規制値を超えるからといって,直ちに受忍限度を超えるとは言えない。 (2) 平成元年に成立した調停との関係で,原告の損害賠償請求は許されるか。 (被告の主張)名古屋簡裁の元年調停の調停条項6項は,「申立人(原告)は,相手方(被告)に対し,本件騒音に関し,本調停条項以外に,何らの異議申立及び請求をしないことを相互に確認する。」旨明記している(以下,同条項を「本件調停条項」という。)。したがって,原告は被告に対し,調停後に事情の変更がない限り,損害を請求しえないところ,元年調停前の騒音測定値(甲3号証)と本件訴訟中の騒音測定値(乙2号証)を比較すると,調停前より本件訴訟中の騒音測定値の方が低くなっていて,調 調停後に事情の変更がない限り,損害を請求しえないところ,元年調停前の騒音測定値(甲3号証)と本件訴訟中の騒音測定値(乙2号証)を比較すると,調停前より本件訴訟中の騒音測定値の方が低くなっていて,調停成立時から何らの事情変更もないから,原告は被告に対して,被告駐車場の騒音に基づく損害賠償を請求できない。 元年調停が本件調停条項を明記して成立している以上,原告は被告に対し,成立済みの元年調停条項違反に基づく損害賠償請求ならともかく,不法行為に基づき,賃料減額分の損害や騒音防音対策工事費用について請求し得ない。 (原告の主張)元年調停の条項中に,原告は被告に対し,本調停条項以外に,何らの異議申立及び請求をしないことを確認する旨明記されているとしても,被告は,元年調停における遵守事項である「案内板の掲示」をせず,原告立会の騒音調査もしていない。したがって,このような被告の調停条項不遵守からすれば,被告が原告に対し,本件調停条項により損害を請求し得ないと主張することは民法1条2,3項の信義誠実の原則・権利濫用の禁止から許されない。 また,本件では,騒音の増大による被害の拡大が認められるから,原告は被告に対し,事情変更の法理もしくは元年調停条項の射程外の損害として,当然に不法行為に基づく損害賠償請求ができる。 (3) 原告の損害額(原告の主張)原告は,被告が被告駐車場で発生する騒音振動等により,合計768万円の損害を被った。内訳は次のとおりである。 ア原告建物2,3階の賃貸マンション6戸の賃料減額分 300万円付近相場の1戸当たり月額5万5000円で6戸分の賃料33万円から現実に受領した月額28万円を差し引いた月額5万円の10年分600万円の2分の1である300万円が直接損害である。 イ騒音防音対策工事に要する530万円の内金 円で6戸分の賃料33万円から現実に受領した月額28万円を差し引いた月額5万円の10年分600万円の2分の1である300万円が直接損害である。 イ騒音防音対策工事に要する530万円の内金 318万円ウ慰謝料 150万円本件騒音振動の不法行為により原告が被った精神的損害に基づく慰謝料及び元年調停の条項を被告が全く履行しなかったことにより原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,150万円が相当である。 (被告の主張)原告の前記主張は否認する。 ア原告建物は,商業地域でも最も繁華街に建てられており,これを借り受けて居住する者は,生活環境よりも交通の利便性などを重視しており,多少の騒音によって,賃料に影響を及ぼすものではない。 イ騒音防音対策費用としては215万円で足りる(乙3号証)。 ウ被告は,調停条項のうち「騒音調査」については怠っていたが,その余の点は履行している。被告は,騒音防止のための実質的行為は全て履行しており,形式的な騒音調査を怠ったに過ぎず,これにより原告が精神的苦痛を受けたとは考え難い。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(受忍限度)について(1) 甲1,3,4,8,13,15号証,乙1,2号証,4ないし6号証,8ないし10号証,証人Aの証言,被告代表者尋問の結果,及び後記各証拠,並びに弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア行政上の規制基準騒音規制法27条,振動規制法24条,及び愛知県公害防止条例は,都市計画法による用途地域の区別に従い,騒音及び振動の規制基準値を定めている。 前記各法規は,騒音及び振動の規制基準について,都市計画法上の商業地域では,騒音が50から65デシベル以下,振動が60から 市計画法による用途地域の区別に従い,騒音及び振動の規制基準値を定めている。 前記各法規は,騒音及び振動の規制基準について,都市計画法上の商業地域では,騒音が50から65デシベル以下,振動が60から65デシベル以下と定めている。騒音規制基準はL50の中央値,すなわち,一定時間帯について,そのレベルを超える時間が50パーセントである騒音レベルをいうが,等価騒音レベル(Leq)が騒音値をみる基準になりつつある(乙8号証)。騒音レベルLは一定時間帯の騒音のエネルギーを平均して対数変換した数値であり,デシベルは,音や振動の大きさをレベル表示する場合に用いる単位である。 イ被告駐車場及び原告建物周辺地域(以下,単に「本件地域」という。)は,商業地域に指定されている。 騒音規制法及び愛知県公害防止条例により,本件地域において,著しい騒音,振動を発生する施設を設置する特定工場等を設置する者は,騒音振動の規制基準を遵守すべき義務が課せられているが,商業地域における規制基準値は次のとおりである。なお,騒音規制法2条2項は,規制基準について,発生する騒音の特定工場等の敷地の境界線における大きさの許容限度と規定している。 (ア) 騒音昼間 8時から19時まで 65デシベル朝夕 6時から8時,19時から22時まで 60デシベル夜間 22時から6時まで 50デシベル(イ) 振動昼間 7時から20時まで 65デシベル夜間 20時から7時まで 60デシベルウ騒音規制法,振動規制法,愛知県公害防止条例は,名古屋市全域を規制対象地域としているが,いずれも立体駐車場を規制対象施設として指定していない(乙1号証)。 この点に関し,被告は,立体駐車場は騒音規制 騒音規制法,振動規制法,愛知県公害防止条例は,名古屋市全域を規制対象地域としているが,いずれも立体駐車場を規制対象施設として指定していない(乙1号証)。 この点に関し,被告は,立体駐車場は騒音規制法,振動規制法,愛知県公害防止条例による規制対象施設ではなく,法が特に特定施設に限定して騒音規制をしていることからいえば,規制対象施設ではない被告駐車場に騒音規制は敷衍されず,規制対象施設における騒音規制基準値を超えているからといって直ちに受忍限度を超えるとはいえないと主張する。 しかし,特定施設以外から発生する騒音,振動であっても人体に悪影響を与えることは明らかであるところ,生活環境を保全し,国民の健康の保護に資することを目的とする騒音規制法の趣旨からすれば,規制対象施設以外の施設から発生する騒音の場合であっても,前記法規による騒音規制基準値を受忍限度を超える騒音か否かの判断の重要な要素と考えるべきであるから,被告の主張は採用できない。 エ元年調停前の状況について原告は,被告に対し,被告駐車場を建築する際,昭和63年2月に竣工した原告建物を住宅として使用するので,騒音・振動には十分配慮して建築して欲しい旨要望したところ,被告は,騒音等で迷惑をかけることはない旨回答した。 しかし,同年4月に被告駐車場が完成し操業を始めると,24時間営業のため,原告らは,深夜の騒音及び振動に悩まされることになった。 そこで原告は,名古屋市a保健所に騒音測定の依頼をし,同保健所による同年6月17日の被告駐車場の騒音測定結果(甲3号証)によると,原告建物の3階・4階における窓を開けた状態での13時37分から14時46分までの騒音測定値は,中央値で52デシベルから58デシベルであり,ピーク値で55デシベルから68デシベルであった。そのため,原告は,同保健所の口添えもあ を開けた状態での13時37分から14時46分までの騒音測定値は,中央値で52デシベルから58デシベルであり,ピーク値で55デシベルから68デシベルであった。そのため,原告は,同保健所の口添えもあって,被告と話し合いを続けたが,話し合いによる解決は不調に終わったので,平成元年に名古屋簡裁へ騒音防止等調停事件を申立て,同年10月11日,元年調停が成立した(甲1号証)。 オ元年調停の内容,及びその後の状況について(ア) 元年調停において,被告は原告に対し,回転式駐車機の運転に際し,騒音に注意し,原告に迷惑がかからないよう努力し,解決金30万円を支払うほか,被告駐車場の回転式駐車機2号機の運転を午後10時から翌日午前7時まで原則的に停止すること,及びその趣旨を記載した案内板を現場に掲示する旨,並びに,被告の負担の下,毎年1回,双方立会のうえ,被告駐車場の騒音調査を行う旨約した(甲1号証)。 被告は,前記解決金を支払ったものの,その後,調停で定められた年1回の当事者双方立会の上での騒音調査を実施しなかった。また,元年調停で定められた案内板の掲示につき,本来は午後10時から翌日午前7時までの間は2号機駐車機を利用しないようにする旨掲示しなければならないのに,被告は,午後11時から翌日の午前8時までの間は1号機又は3号機の駐車機を利用するように勧めるという,時間をずらした内容の案内板を掲示していた(甲16号証)。 (イ) 原告は,元年調停の成立後も,被告駐車場からの騒音が減らず,逆に増えていると感じ,原告とその家族は,安眠を妨げられ,生活に支障を生じた。また,午前0時以降も被告駐車場が稼働して騒音等が発生するため,原告建物のマンションの賃借人が不快感を持つので,家賃を相場より低額にせざるを得ない状況が続いた(甲12,13,15号証)。 そこで,原告 ,午前0時以降も被告駐車場が稼働して騒音等が発生するため,原告建物のマンションの賃借人が不快感を持つので,家賃を相場より低額にせざるを得ない状況が続いた(甲12,13,15号証)。 そこで,原告の妻Aが度々被告駐車場の管理担当者に苦情を述べたが,騒音が改善されることはなかったので,原告は,平成10年9月3日,再び調停を申立てたが,平成11年6月17日に調停不調となった。 (ウ) 騒音の程度平成10年8月7日21時58分から同月9日6時27分までの間のa保健所による被告駐車場の駐車機械稼動時の騒音測定結果(甲4号証)によると,原告建物の3階ベランダにおける夜間及び早朝の騒音測定値は,最高値で67ないし64デシベルで,騒音レベル範囲は67ないし55デシベルで,同月9日(日曜)午前0時7分から1時1分の間に7回,午前6時23分から6時27分の間に7回の駐車機械の稼動が推定された。 平成11年7月17日18時から同月18日7時までの財団法人東海技術センターによる被告駐車場の騒音測定結果(甲8号証)によると,原告建物の4階ベランダにおける騒音測定値は,等価騒音レベルで49.6デシベルから55.6デシベルであり,L50(高い方から並べて50パーセントの騒音値で中央値と呼ばれる)で49デシベルから54デシベルであり,L5(高い方から並べて5パーセントの騒音値)で52デシベルから60デシベルであり,22時から6時までの等価騒音レベルは概ね50デシベルを越えていた。 平成12年6月3日18時から同月4日7時までの株式会社愛研による被告駐車場の騒音測定結果(乙2号証)によると,別紙図面№1の位置における騒音測定値は,等価騒音レベルで46.8デシベルから57.0デシベルであり,L50で45デシベルから57デシベルであり,L5で50デシベルから60デシベルであっ )によると,別紙図面№1の位置における騒音測定値は,等価騒音レベルで46.8デシベルから57.0デシベルであり,L50で45デシベルから57デシベルであり,L5で50デシベルから60デシベルであった。別紙図面№2の位置における騒音測定値は,等価騒音レベルで50.7デシベルから58.7デシベルであり,L50で48デシベルから57デシベルであり,L5で54デシベルから62デシベルであり,22時から6時までの等価騒音レベルは概ね50デシベルを越えていた。特に同月3日(土曜)22時40分から同日23時までの20分間に,被告駐車場の駐車機械は11回稼動している。 (エ) 振動の程度原告が主張する被告駐車場からの振動については,規制基準を超えるなどして原告の権利を侵害している事実を認めるに足りる立証はない。 (2) 以上の事実によると,元年調停後も,夜間の騒音は,等価騒音レベルで,被告駐車場及び原告建物の所在する商業地域の夜間の騒音規制値である50デシベルを軒並み超えており,深夜においても最高値は60デシベルのこともあり,一般人が耐え難く感じる騒音を発生させていると認められる。 元年調停において,被告駐車場の2号機の午後10時から午前7時までの操業を原則的に止めることを合意されているが,このことから原告建物で居住する原告にとって夜間における被告駐車場の騒音が重大な関心事であったことは明白である。 この点につき,被告は,代表者尋問において,被告が元年調停条項を遵守し,原則として2号機の夜間操業は禁止しており,元年調停前の騒音測定値より本件訴訟中の騒音測定値の方が低くなっていて,被告駐車場の騒音は原告の受忍限度を超えない旨主張し,乙4ないし6,9号証を提出する。しかし,甲8号証及び乙2号証の騒音測定結果によると,午後10時以降においても騒音測定値の低下は が低くなっていて,被告駐車場の騒音は原告の受忍限度を超えない旨主張し,乙4ないし6,9号証を提出する。しかし,甲8号証及び乙2号証の騒音測定結果によると,午後10時以降においても騒音測定値の低下は認められないことからすれば,2号機を原則として操業しなかったとは認められず,むしろ夜間においては,一般人が耐え難く感じる騒音を恒常的に発生させているから,被告の主張は採用できない。 したがって,恒常的に商業地域における夜間の規制基準値を超える騒音を発生させていること,元年調停後においても,騒音被害が何ら軽減されなかったことからすれば,被告が被告駐車場から発生させた騒音は原告の受忍限度を超えた違法なものであり,かつ,前記侵害行為は,元年調停後から現在まで及んでいると推認できる。そうすると,被告は原告に対し,被告駐車場から発生する騒音被害について,不法行為に基づく損害賠償責任がある。 また,被告は,当事者双方立会のうえでの年1回の騒音調査を全く実施していないこと,元年調停条項とは時間をずらした案内板の掲示を一時期していたこと,被告駐車場2号機の午後10時から翌日午前7時における原則的な操業停止をしているとは認められないことからすれば,被告は原告に対し,元年調停条項の債務不履行に基づく損害賠償責任がある。 ただし,被告駐車場からの振動については,原告の受忍限度を超え,原告の権利を違法に侵害したとの事実の立証はない。 2 争点(2)について原告と被告は,元年調停において,本件調停条項として,「申立人(原告)は,相手方(被告)に対し,本件騒音に関し,本調停条項以外に,何らの異議申立及び請求をしないことを相互に確認する」旨合意している。 しかし,前示のとおり,被告は,元年調停において,原告に対し,被告駐車場の回転式駐車機の運転に際し,騒音に注意し,原告に迷惑 に,何らの異議申立及び請求をしないことを相互に確認する」旨合意している。 しかし,前示のとおり,被告は,元年調停において,原告に対し,被告駐車場の回転式駐車機の運転に際し,騒音に注意し,原告に迷惑がかからないよう努力し,2号機の運転を午後10時から午前7時まで原則的に停止し,その趣旨を記載した案内板を現場に掲示する旨,及び,被告の負担の下,毎年1回,双方立会のうえ,被告駐車場の騒音調査を行う旨約したにも拘わらず,元年調停成立後も,騒音測定結果によれば,午後10時以降において騒音測定値の低下は認められず,むしろ夜間においては,一般人が耐え難く感じる騒音を恒常的に発生させていて,当事者立会の上での年1回の騒音調査を実施せず,元年調停条項とは異なる内容の案内板を掲示して,2号機を稼働させていたなど,元年調停条項を誠実に遵守していたとは認められない。 そうすると,営利を目的として夜間にも被告駐車場を稼働させている被告が,本件調停条項に基づき原告の不法行為の損害賠償請求を排斥することは,民法1条2,3項の信義誠実の原則,権利濫用の禁止から,許されない。 3 争点(3)(損害)について(1) 賃料の減額による損害甲12,13,15号証,及び弁論の全趣旨によると,原告は,原告建物の2,3階の賃貸マンション6戸の賃料が,被告駐車場からの騒音の影響で月額5万円減少した事実が認められる。 しかし,原告は,元年調停において,被告から解決金30万円を受領し,原告建物のマンションの賃借人からの苦情は,原告において責任をもって解決し,本調停条項以外に請求しないことを確認していることや,原告建物は,商業地域の繁華街に建てられていて,これを借り受けて居住する者は,生活環境よりも交通の利便性などを重視していると認められることからすると,賃料減額分の損害としては,前記5万 ていることや,原告建物は,商業地域の繁華街に建てられていて,これを借り受けて居住する者は,生活環境よりも交通の利便性などを重視していると認められることからすると,賃料減額分の損害としては,前記5万円の1年分の60万円が相当である。 (2) 騒音対策工事費用原告は,騒音防音対策工事として530万円を要すると主張して,甲2,14号証を提出するが,実際には同対策工事を実施していない。他方,乙3,7号証によると,騒音対策費用としては215万円で足りると認められる。 その他,原告が被告と元年調停を成立させ,本件調停条項を作成している経緯を考慮すると,原告が被告に対し,騒音対策工事費用の損害として請求できるのは,前記215万円の4割である86万円が相当と認める。 (3) 慰謝料以上によると,原告が,元年調停成立後の被告駐車場からの騒音及び被告の元年調停条項違反により被った精神的損害に対する慰謝料としては,夜間の騒音が,行政上の規制基準値を恒常的に超えていたこと,原告の被害感情,2度の調停に至る経緯,被告が騒音調査を全くしなかったこと,午後10時を過ぎても2号機の操業が原則として停止されていたとは認められないこと,その他一切の事情を考慮すると,75万円をもって相当と認める。 4 結論よって,原告の被告に対する本訴請求は,前記損害合計221万円及びこれに対する訴状送達日の翌日であることが記録上明らかな平成11年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条を,仮執行宣言について同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判官水谷正俊 担について民事訴訟法64条を,仮執行宣言について同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判官水谷正俊

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