令和4年第2180号閣議決定並びに予算執行差止仮処分命令申立事件決定主文 1 本件各申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は債権者らの負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨及び原因本件仮処分命令の申立ての趣旨及び原因は、別紙2「訂正申立書」(ただし、別紙3「回答書」による補正後のもの)のとおりであり、債権者らは、要するに、内閣総理大臣が、安倍晋三元内閣総理大臣(以下「安倍元首相」という。) の葬儀(以下「本件葬儀」という。)を国葬儀(国葬)の方式で執り行う意向を表明したことに関し、国葬儀の実施には法的根拠がなく、また、憲法19条にも反するなどと主張して、①本件葬儀に係る閣議決定及び予算執行の差止めを命じる仮処分命令を求めるとともに、②上記閣議決定及び予算執行が憲法19条に違反することを確認する旨の仮処分命令を求めているものと解される(以 下、上記①、②をそれぞれ「本件申立て1」、「本件申立て2」といい、これらを併せて「本件各申立て」という。)。 第2 当裁判所の判断 1 本件申立て1について⑴ 本件葬儀に係る閣議決定の差止めに係る申立ての利益の有無 令和4年7月22日、内閣が本件葬儀を国葬儀の方式で執り行う旨の閣議決定をしたことは公知の事実であるから、もはや本件葬儀に係る閣議決定の差止めを求める申立ての利益は存在しない。したがって、本件申立て1のうち閣議決定の差止めを求める部分は、不適法である。 ⑵ 本件葬儀に係る予算執行の差止めについて ア債権者らが、いかなる権利を被保全権利として、本件葬儀に係る予算執 行の差止めを求めているかは判然としないものの、別紙2「訂正申立書」において、安倍元首相を国葬儀に付し「とむらいの儀式に国民を強制的に参加させることは、 被保全権利として、本件葬儀に係る予算執 行の差止めを求めているかは判然としないものの、別紙2「訂正申立書」において、安倍元首相を国葬儀に付し「とむらいの儀式に国民を強制的に参加させることは、思想良心の自由を定めた憲法第19条に違反する」などと記載していることからすれば、債権者らは、本件葬儀が国葬儀の方式で執り行われることによって債権者らの思想及び良心の自由が侵害される との理由により、人格権に基づく妨害予防請求権として、上記予算執行の差止めを求める権利を有する旨主張しているものと解される。 しかしながら、本件葬儀が国葬儀の方式で執り行われるとしても、これにより、個々の国民に対して、安倍元首相に弔意を表すことや喪に服することを強制することになるとは認められず、とむらいの儀式に国民を強制 的に参加させることになるとはいえない。また、本件葬儀を国葬儀の方式で執り行うことが、債権者らに特定の思想等を強制したり、債権者らの思想等に対して直接圧迫、干渉を加えたりするものであるとはいえない。そうすると、本件葬儀が国葬儀の方式で執り行われるに当たり公金が支出されることによって、債権者らの思想等に基づく感情が害されることがあっ たとしても、債権者らの思想及び良心の自由が侵害されるということはできない。 したがって、本件申立て1のうち、人格権に基づき本件葬儀に係る予算執行の差止めを求める部分は、被保全権利の疎明がないから、理由がない。 イまた、仮に、債権者らが、納税者たる国民又は市民一般の地位に基づき、 本件葬儀に係る予算執行の差止めを求めることができる旨を主張しているとすれば、本件申立て1は、「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提 差止めを求めることができる旨を主張しているとすれば、本件申立て1は、「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」として、いわゆる民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)に該当するものである。そして、民衆訴訟は、「法律に定め る場合において、法律に定める者に限り、提起することができる」(同法 42条)ところ、国の予算執行につき、その違法を理由として差止めを命じる仮処分命令を申し立てることができるとする法律の規定は存在しない。 したがって、国民又は市民一般の地位に基づき、本件葬儀に係る予算執行の差止めを求めることはできない。 ウ以上によれば、本件申立て1のうち本件葬儀に係る予算執行の差止めを 求める部分は、理由がないか又は不適法である。 3 本件申立て2について仮処分命令の申立てを含む民事事件において、裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であ って、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。 本件申立て2は、本件葬儀を国葬儀の方式により執り行う旨の閣議決定及びこれに関する予算執行が、抽象的に憲法19条に違反することの確認を求める ものであって、債権者らと債務者との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるとはいえない。したがって、本件申立て2は、「法律上の争訟」に該当せず、不適法である。 4 結語以上によれば、本件各申立ては、その余の点について判断する 務ないし法律関係の存否に関する紛争であるとはいえない。したがって、本件申立て2は、「法律上の争訟」に該当せず、不適法である。 4 結語以上によれば、本件各申立ては、その余の点について判断するまでもなく、 いずれも不適法であるか又は理由がないから、これらを却下することとして、主文のとおり決定する。 令和4年8月2日東京地方裁判所民事第9部裁判長裁判官向井敬二 裁判官渡邉充昭 裁判官 瀬智彦 別紙1「選定者目録」、別紙2「訂正申立書」及び別紙3「回答書」は記載を省略。
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