平成31(ネ)1616 損害賠償,報酬等反訴請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月21日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 平成25(ワ)31378
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判決文本文83,916 文字)

- 1 - 主文 1 IBMの控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 本訴事件における野村HD及び野村証券の請求を棄却する。 ⑵ 反訴事件に基づき,野村HDは,IBMに対し,1億1224万5000円及びこれに対する平成24年10月1日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ⑶ 反訴事件におけるIBMのその余の請求を棄却する。 2 野村HD及び野村証券の控訴を棄却する。 3 訴訟の総費用は,これを10分し,その1をIBMの負担とし,その1を野村証券の負担とし,その余を野村HDの負担とする。 4 この判決の第1項⑵は,仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の申立て 1 野村HD及び野村証券(以下「野村HDら」という。)⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ IBMは,野村HDに対し,損害賠償金34億3533万0570円及びこれに対する平成25年6月13日から支払済みまで商事法定利率(本件に適用されるもの。以下同じ。)年6%の割合による遅延損害金を支払え。 ⑶ IBMは,野村証券に対し,損害賠償金1億8157万8159円及びこれに対する平成24年11月2日から支払済みまで民事法定利率(本件に適用されるもの。以下同じ。)年5%の割合による遅延損害金を支払え。 ⑷ IBMの反訴事件における請求を棄却する。 2 IBM⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 本訴事件における野村HDらの請求をいずれも棄却する。 ⑶ 野村HDは,IBMに対し,報酬金3億9049万5000円及びうち1- 2 -億1224万5000円に対する平成24年10月1日から,うち9030万円に対する同年11月1日から,うち1億0605万円に対する同月10日から,うち6300万円に対する同 円及びうち1- 2 -億1224万5000円に対する平成24年10月1日から,うち9030万円に対する同年11月1日から,うち1億0605万円に対する同月10日から,うち6300万円に対する同年12月1日から,うち1890万円に対する同月31日から,各支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金を支払え。 ⑷ 野村HDらは,IBMに対し,連帯して報酬金又は損害賠償金1億7253万4759円及びこれに対する平成26年4月19日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金を支払え。 第2 事案の概要 1 略語の使用について本判決においては,本判決別紙1の各号に掲げる略語を,当該各号に定める意味を有するものとして使用する。 2 事案の概要及び訴訟の経過⑴ IBMは,野村HDとの間で,野村証券(野村HDの完全子会社)のSMAFW業務のためのコンピュータシステムについて,パッケージソフト(WM)を利用した開発業務支援等の委託を受ける内容の,開発段階ごとの複数の契約(原判決別紙1の1記載の契約・本件各個別契約)を締結した。本件開発業務は,平成25年1月4日のシステム稼働開始を目標として,平成22年後半から平成24年後半まで継続されたが,目標時期における稼働開始実現にリスクがあると判断されたことから,平成24年8月下旬に一時中断され,同年11月に野村HDが開発を断念した。 本訴事件において,野村HDはIBMに本件各個別契約の債務不履行があったと主張し,野村HDらはIBMに本件開発業務に関する不法行為があったと主張して,IBMに対して総額約36億円の損害賠償を請求する。 反訴事件において,IBMは,野村HDに対して本件個別契約13から15までの未払報酬の支払を請求し,野村HDらに対して個別の合意(本 たと主張して,IBMに対して総額約36億円の損害賠償を請求する。 反訴事件において,IBMは,野村HDに対して本件個別契約13から15までの未払報酬の支払を請求し,野村HDらに対して個別の合意(本件各- 3 -個別契約に含まれないもの)や商法512条などを根拠に契約書に記載のない作業報酬を請求する。反訴事件におけるIBMの請求総額は,約5億6000万円である。 ⑵ 野村HDとIBM間の本件各個別契約は,開発の段階ごとの複数の多段階契約である。その内容は,主に当該開発段階の業務支援を野村HDがIBMに委託するものである。IBMが各開発段階の作業を遂行する債務のほかに,システムを最終的に完成させる債務を負うかどうかが,一つの争点である。 また,パッケージソフト(WM)を利用したシステム開発であるのに,パッケージの標準装備機能で本件システムの機能の大部分をまかなう開発とならず,カスタマイズ量が想定外に増加して,本件開発業務が遅延し,成果物のテスト結果が不良であったことが,野村HDによる本件開発業務断念の誘因となっている。このことについてIBMに債務不履行責任や不法行為責任が発生するかどうかが,一つの争点である。 その他にも,次の第3以下に記載のとおり,多数の争点がある。 ⑶ 原判決は,不法行為の成立は否定したが,本件各個別契約の一部(本件個別契約13から15まで)がIBMの帰責事由により履行不能になったと判断した。その結果,本訴事件のうち野村HDの請求を16億2078万円の限度で認容し,野村HDのその余の請求及び野村証券の全部の請求を棄却した。また,反訴事件におけるIBMの請求の全部を棄却した。当事者の全員が,各敗訴部分の全部(ただし,附帯請求棄却部分の一部を除く。)を不服として控訴したのが本件である。 第3 本訴事件における野村 た。また,反訴事件におけるIBMの請求の全部を棄却した。当事者の全員が,各敗訴部分の全部(ただし,附帯請求棄却部分の一部を除く。)を不服として控訴したのが本件である。 第3 本訴事件における野村HDらの主張 1 本件各個別契約の履行不能等(野村HDの主張)IBMは,本件開発業務において,成果物(プログラム等)の納入遅延を繰り返し,成果物の品質も甚しく不良で,納入後のテスト結果も劣悪であった。 そのため,野村証券は,平成24年8月下旬に本件システムの平成25年1月- 4 -4日の稼働開始を断念した上,代替プラン(コンティンジェンシープラン)を発動させざるを得なかった。その後,野村証券は,IBMに対して,具体的な課題を挙げて見直し案の検討を求めたが,IBMが適切な対応をしなかったため,本件開発業務の中止通告に至った。 IBMは,本件システム導入の提案が野村HDに採用された際の合意又は本件各個別契約に基づく債務として,合理的な費用・スコープ・期間で本件システムを完成させるべき債務を負う。しかしながら,IBMはプロジェクト・マネジメントを怠り,本件開発業務は,遅くとも野村証券が本件開発業務中止の通告をした平成24年11月2日までに,①技術的観点から一定期間内に本件システムの品質を金融システムに求められるレベルにまで改善することができない状況となり,②野村HDらとIBMとの間の信頼関係が崩壊して共同して本件開発業務を完遂することのできない状態となり,③本件開発業務の続行のために野村HDらによる多額の追加費用負担をIBMが求め,④現行システムの保守期限(平成25年9月)までに確実に本件システムを稼働開始することが困難となったから,野村HDらが本件開発業務中止の判断をしたことには合理性があり,本件システムは,社会通念上,客観的に完成 ムの保守期限(平成25年9月)までに確実に本件システムを稼働開始することが困難となったから,野村HDらが本件開発業務中止の判断をしたことには合理性があり,本件システムは,社会通念上,客観的に完成不能となったものというべきであり,さらに⑤平成25年1月15日にIBM自身が本件システム開発を続行しないと明言したことからも,本件各個別契約は,既履行・未履行を問わず全部履行不能(又は不完全履行)となり,IBMは野村HDに対し債務不履行責任を負うというべきである。 2 本件各個別契約の履行遅滞等(野村HDの当審における追加主張)⑴ 本件個別契約13に基づく下記の債務が下記の約定期限までに履行されず,履行遅滞に陥っており,野村HDは平成24年8月24日迄に計画見直しを指示することにより履行の催告をした。 ア債務の内容プログラム(ソースコード,実行モジュール)の納入履行期限平成24年3月31日- 5 -イ債務の内容サブシステム内連結テスト(ITa )履行期限平成24年3月31日⑵ 本件個別契約15に基づく下記の債務が下記の約定期限までに履行されず,履行遅滞に陥って,野村HDは平成24年8月24日迄に計画見直しを指示することにより履行の催告をした。 債務の内容顧客Webのサブシステム内連結テスト(ITa )履行期限平成24年6月30日⑶ 本件個別契約14に基づく下記の債務が下記の約定期限までに履行されず,履行遅滞に陥った。野村HDは,その頃,IBMから計画見直しの説明を受けるなどすることにより履行の催告をした。また,全体総合テストの実施期間(平成24年10月4日まで)は変更不能であったから,同日をもって本件個別契約14は履行不能となった。 債務 説明を受けるなどすることにより履行の催告をした。また,全体総合テストの実施期間(平成24年10月4日まで)は変更不能であったから,同日をもって本件個別契約14は履行不能となった。 債務の内容全体総合テスト履行期限平成24年10月4日⑷ 本件個別契約6(WMのライセンス契約)に基づく下記の債務が下記の約定期限までに履行されず,履行遅滞及び履行不能に陥った。 債務の内容カスタマイズが完了したWMを野村HDらに利用許諾して,その従業員らが本件システムを利用できるようにすること履行期限平成25年1月4日⑸ 仮に⑴から⑷までの債務の履行について確定期限の定めがない場合には,期限の定めのない債務となり,民法412条3項により履行の請求を受けた時から遅滞の責めを負う。野村証券のA1経営役が平成24年8月24日にIBMに対して本件システム開発計画の見直しを指示したことは,債務の履行を促す催告に当たり,IBMは,同日から履行遅滞の責任を負う。 ⑹ 野村HD(代理人野村証券)は,平成25年1月29日,IBMに対して本件各個別契約を解除する旨の意思表示をした。 - 6 - 3 不法行為(野村HDらの主張)⑴ ベンダであるIBMは,野村HDのみならずユーザである野村證券に対しても,次の不法行為法上の注意義務を負う。 ① 高度の専門的知識と経験に基づき適切にシステム開発を遂行し,合理的な費用・スコープ・期間で本件システムを完成させる注意義務② 情報を集約・分析し,野村HDらに必要な説明を行い,野村HDらの了解を得ながら,必要とされる修正・調整等を行い,本件システムの完成に向けてプロジェクト・マネジメントを行う注意義務⑵ IBMは,本件開発業務において,①IBM及びテメノス社の要 い,野村HDらの了解を得ながら,必要とされる修正・調整等を行い,本件システムの完成に向けてプロジェクト・マネジメントを行う注意義務⑵ IBMは,本件開発業務において,①IBM及びテメノス社の要員のWM及び証券業務についての知識不足,②引継ぎに不備のある頻繁な要員の交代,③杜撰な進捗管理,④不正確・不十分な設計書及び⑤杜撰な品質管理から,適切なプロジェクト・マネジメントを行わず,本件開発業務を頓挫させたから,不法行為責任を負う。 4 野村HDの損害下記金額合計34億3533万0570円がIBMの債務不履行又は不法行為と相当因果関係のある野村HDの損害額である。平成25年6月13日以降の商事法定利率による遅延損害金も請求する。 ⑴ 本件各個別契約に基づきIBMに支払済みの報酬額全額(消費税込み・本件システムの完成が不能である以上,契約の既履行分も損害となる。)25億2545万9229円⑵ IBM以外のベンダに支払済みの報酬額(消費税込み・本件開発業務のためにIBM以外のベンダと締結した原判決別紙1の2に記載の契約に基づき支払ったもの) 1億2506万3167円⑶ 野村総研に支払った報酬額(消費税込み・コンティンジェンシープランの発動に伴う原判決別紙1の3に記載の契約に基づき支払ったもの)4億7229万円- 7 -⑷ 本件個別契約7,10及び12に基づき買い受けた機械の処分費用21万5395円(甲146)⑸ 弁護士費用(⑴から⑷までの合計31億2302万7791円の1割)3億1230万2770円 5 野村証券の損害下記合計1億8157万8159円が,IBMの不法行為と相当因果関係のある野村証券の損害額である。平成24年11月2日(本件開発業務中止通告の日)以降の民事法 2770円 5 野村証券の損害下記合計1億8157万8159円が,IBMの不法行為と相当因果関係のある野村証券の損害額である。平成24年11月2日(本件開発業務中止通告の日)以降の民事法定利率による遅延損害金も請求する。 ⑴ 本件開発業務のために支出したプロジェクトルームの賃借費用2107万1054円⑵ 本件開発業務のために支出した人件費 1億4400万円⑶ 弁護士費用 1650万7105円⑴及び⑵の合計額1億6507万1054円の1割 6 IBMの主張(後記第4の4・5)について⑴ 責任制限条項は,何らの交渉もないまま定められた野村HDらに一方的に不利な内容のものであるから,信義則に反し無効である。少なくともIBMに重過失のある本件については,適用できない。また,第三者との契約に基づく野村HDの支払費用に相当する損害についても,適用できない。 ⑵ 過失相殺の主張は争う。 第4 本訴事件におけるIBM(IBM)の主張 1 債務不履行の主張について⑴ 野村HDらの債務不履行の主張は争う。 ⑵ 本件各個別契約が全部履行不能になったことは否認する(本件個別契約14の未履行部分の一部が野村HDらの帰責事由により履行不能となったにとどまる。)。 ⑶ 本件個別契約13及び15について,契約書(甲1の12の1,1の14- 8 -の1)記載の各「別紙A2.1 成果物」に記載された納入予定日は,合意により変更されて期限の定めのない債務となり,履行の催告がなく,履行遅滞に陥っていない。 本件個別契約14には,IBMの債務についての履行期限の定めがない。 野村証券が本件開発業務中止の通告をした平成24年11月2日までの間においては,IBMは現実に本件個別契約14に基づく債務の履 。 本件個別契約14には,IBMの債務についての履行期限の定めがない。 野村証券が本件開発業務中止の通告をした平成24年11月2日までの間においては,IBMは現実に本件個別契約14に基づく債務の履行を行った。 同日以降は,IBMによる債務の履行を野村HDが拒否(受領遅滞)している。いずれにせよ,本件個別契約14につき,履行遅滞の責任を負わない。 野村HDが主張する本件個別契約6に基づくIBMの債務(本件システム完成後のWMの使用許諾)は否認する。IBMの債務の内容は,WMの生産的使用開始前の段階における,本件開発業務遂行に必要な当初ライセンスの付与であり,平成23年6月27日までに履行を完了した(乙264)。 ⑷ 本件各個別契約は,本件システムの開発段階ごとの多段階契約の形式をとっている。本件各個別契約においては,本件システムの完成に向けての各開発段階におけるサービス提供と成果物の納入等をIBMの債務とするが,本件システムの完成それ自体をIBMの債務とすることは合意されていない。 本件個別契約14を除く本件各個別契約は,履行が完了している。履行が完了した契約上の債務は,遡って履行不能とはなり得ない。本件個別契約14は,野村HDらの帰責事由(本件開発業務の中止決定)により,未履行部分が履行不能となったもので,IBMは賠償責任を負わない。 そもそも,IBMが本件システムを完成させる債務を負う旨の合意は存在せず,平成25年1月4日をそのような債務の履行期限とする合意も存在しない。平成25年1月4日の稼働開始の実現は,契約上の債務ではなく,ビジネス上の目標であったにとどまる。平成24年8月下旬の時点においては,本件開発業務は遅延してテストの合格水準に届かない部分が残り,ビジネス上の目標である平成25年1月4日稼働開始を実現するにはリスクが存 上の目標であったにとどまる。平成24年8月下旬の時点においては,本件開発業務は遅延してテストの合格水準に届かない部分が残り,ビジネス上の目標である平成25年1月4日稼働開始を実現するにはリスクが存在し- 9 -た。しかしながら,本件システムの品質を改善させて,ビジネス上の目標よりも遅れて本件システムを完成・稼働開始させることは可能であった。したがって,履行遅滞や履行不能はあり得ない。IBMが多段階契約における各債務の債務不履行(履行不能・不完全履行・履行遅滞)の責任を負う余地はない。契約当事者間の信頼関係が破壊されていたとすれば,その原因は野村HDらにある。野村HDは,WMを採用するか否かの意思決定を遅延し,社内調整ができず,投資顧問部がIT戦略部の方針に反してシステムの仕様決定の段階において現行業務に固執したため工数増大を招き,システムの仕様が決定された後の下流工程においても新要件の追加・変更要求を繰り返して仕様の大幅変更を招き,本件開発業務を遅延させた上で,一方的に本件開発業務を中止した。よって,野村HDらの債務不履行の主張は,失当である。 2 野村HDらの不法行為の主張は争う。IBMは,本件開発業務の各段階において,遅延等のリスクに対処するために,プロジェクト・マネジメントを適切に実行していた。本件開発業務が遅延したのは,野村HDらが,上流工程の仕様決定段階で工数削減の努力を怠り,仕様決定後の下流工程に至っても新要件の追加・変更要求を繰り返して,仕様変更や作業の手戻りが生じたためである。 IBMが不法行為責任を負ういわれはない。 3 野村HDら主張の損害の発生は争う。ただし,本件各個別契約に基づき報酬合計25億2545万9229円を受領済みであることは認める。 4 責任制限条項(抗弁)本件各個別契約の一部には,「お客 野村HDら主張の損害の発生は争う。ただし,本件各個別契約に基づき報酬合計25億2545万9229円を受領済みであることは認める。 4 責任制限条項(抗弁)本件各個別契約の一部には,「お客様がIBMの責に帰すべき事由に基づいて救済を求めるすべての場合において,IBMの損害賠償責任は(中略)損害発生の直接原因となった当該『サービス』の料金相当額(中略)を限度とする(本件個別契約1~5,8,9,14及び17)。」とか,「IBMの損害賠償責任は(中略)損害発生の直接原因となった当該『別紙所定の作業』に対する受領済みの代金相当額を限度額とする(本件個別契約13及び15)。」と- 10 -いう責任制限条項がある。野村HDらは,損害発生の直接原因となった「サービス」又は「当該別紙所定の作業」について主張立証しないから,その損害賠償請求は失当である。 5 過失相殺(抗弁)仮にIBMに賠償責任があるとしても,損害の発生には,前記1及び2の野村HDらの怠慢が大きく寄与しているから,過失相殺を行うべきである。 第5 反訴事件におけるIBMの主張 1 本件個別契約13から15までに基づく未払報酬請求⑴ 野村HDとIBMは,以下の各契約を締結した。 ア本件個別契約13作業範囲:基本設計,開発及びサブシステム内連結テスト成果物:基本設計書,単体テスト結果報告書,サブシステム内連結テスト計画書,サブシステム内連結テスト結果報告書及びプログラム報酬額:8億0800万円(消費税別)支払方法及びその変更合意は本判決別紙2記載のとおり。 野村HDは,平成24年9月30日支払期日の1490万円(消費税別)を支払わない。 イ本件個別契約15作業範囲:基本設計,開発及びサブシステム内連結テスト成果物:単体テスト結果報告,サブシス 村HDは,平成24年9月30日支払期日の1490万円(消費税別)を支払わない。 イ本件個別契約15作業範囲:基本設計,開発及びサブシステム内連結テスト成果物:単体テスト結果報告,サブシステム内連結テスト計画書及びサブシステム内連結テスト結果報告報酬額:6150万円(消費税別)支払方法及びその変更合意は本判決別紙3記載のとおり。 野村HDは,平成24年9月30日支払期日の600万円(消費税別)を支払わない。 ウ本件個別契約14- 11 -サービス内容:運用準備支援,テスト準備支援,テストの実施支援,データ移行(システム切替)準備支援,データ移行実施(テスト,リハーサル,本番)支援及びプロジェクト管理サービス期間:平成24年4月1日~平成25年1月4日報酬額:6億9500万円(消費税別)支払期日:①平成24年5月から同年10月まで各月末日限り各8600万円②平成24年11月30日及び同年12月30日限り各6000万円③平成25年1月末日限り5900万円(いずれも消費税別)野村HDは,平成24年7月末日までの支払期日の分を支払ったが,同年8月末日支払期限以降の分を支払わない。 ⑵ IBMによる債務の履行ア IBMは,本件個別契約13及び15の全工程を終了し,その債務の全部を履行した。 イ IBMは,本件個別契約14について,平成24年4月1日から同年11月9日までその履行をした。同日以降は,野村HDらに履行を拒まれて,履行することができなかったので,民法536条2項により,IBMは未履行業務に対する報酬請求権を失わない。 ⑶ 請求金額(未払報酬金額及び遅延損害金)ア本件個別契約13の未払い報酬金額は,1564万5000円(14,900,000×1.05)である。 本件個別契約15の る報酬請求権を失わない。 ⑶ 請求金額(未払報酬金額及び遅延損害金)ア本件個別契約13の未払い報酬金額は,1564万5000円(14,900,000×1.05)である。 本件個別契約15の未払い報酬金額は,630万円(6,000,000×1.05)である。 約定期限の翌日(平成24年10月1日)以降の商事法定利率による遅延損害金の支払も求める。 イ本件個別契約14の未払い報酬金額は,下記のとおりである。 - 12 -既履行分平成24年8月分及び9月分各 9030万円(86,000,000×1.05)同年10月分 6300万円(60,000,000×1.05)同年11月分(11月9日までの分)1890万円(60,000,000×1.05×9/30)弁済期(翌月末日,11月分は12月30日)の翌日以降の商事法定利率による遅延損害金の支払も求める。 未履行分(民法536条2項による請求)平成24年11月分(11月10日以降の分)4410万円(60,000,000×1.05×21/30)同年12月分(平成25年1月4日までの分を含む。)6195万円(59,000,000×1.05)平成24年11月10日(履行不能となった日の翌日)以降の商事法定利率による遅延損害金の支払も求める。 2 本件各個別契約に基づかない追加作業についての報酬請求⑴ ストーリーボード修正及び単体テストア IBMは,平成23年8月末までに終える予定であったストーリーボードの作成・修正作業を,同年9月以降も継続して行った。 IBMは,スケジュールの遅延を取り戻すため,本件個別契約13及び15においてテメノス社が実施することが予定されていた納品前の製品の単体テストについて,テメノ を,同年9月以降も継続して行った。 IBMは,スケジュールの遅延を取り戻すため,本件個別契約13及び15においてテメノス社が実施することが予定されていた納品前の製品の単体テストについて,テメノス社に代わってこれと同レベルのテストを実施し,出荷基準に達するまで障害を洗い出すなどの作業を行った。 イこれらの作業の相当報酬額は,合計1億2773万2348円である。 平成26年4月19日(反訴状送達日の翌日)以降の商事法定利率による遅延損害金も,併せて請求する。 - 13 -⑵ 契約外の追加カスタマイズ作業等ア IBMは,契約外の作業として,WM以外の帳票やコントラクト・ワークフロー等の追加開発の作業を行うとともに,本件個別契約13及び15において予定されていなかったWMの追加のカスタマイズ作業を行った。 イこれらの作業の相当報酬額は,合計3895万5000円である。⑴と同様の遅延損害金も併せて請求する。 ⑶ 本件開発業務の中止に伴う作業ア IBMは,平成24年11月10日から同月23日までの間,本件開発業務の中止を受けて,「千手」と呼ばれるサーバ管理のためのソフトウェアを停止するなどの作業を行った。 イこの作業の相当報酬額は,合計584万7411円である。⑴と同様の遅延損害金も併せて請求する。 ⑷ ⑴から⑶までの請求の法的根拠ア当事者間の合意野村HDらは,前記⑴から⑶までの追加作業が,本件各個別契約の範囲外の作業であり,IBMがこれらの作業を行っていることを認識しつつ,その作業を行わせた。そうすると,これらの追加作業につき相当額の報酬を支払う旨の合意が成立したとみるべきである。 イ商法512条前記⑴から⑶までの追加作業は,商人であるIBMが,その営業の範囲内で,野村HDらのために行ったもので 加作業につき相当額の報酬を支払う旨の合意が成立したとみるべきである。 イ商法512条前記⑴から⑶までの追加作業は,商人であるIBMが,その営業の範囲内で,野村HDらのために行ったものである。よって,IBMは,商法512条に基づいて,野村HDらに対し,報酬を請求することができる。 ウ債務不履行(野村HDに対する請求原因)野村HDは,本件各個別契約に基づいて,ユーザとして,適時適切な意思決定を行い,野村HDら内部の社内調整を行い,課題に対する対応を検討するなどのプロジェクト・マネジメントを行うべき義務を負っていた。 - 14 -しかし,野村HDは,WMを採用するか否かの意思決定を遅延し,社内調整ができず投資顧問部がIT戦略部の方針に反してシステム仕様決定の段階において現行業務に固執したため工数増大を招き,システム仕様が決定された後の下流工程においても新要件の追加・変更要求を繰り返して本件開発業務を遅延させ,一方的に本件開発業務を中止した。このような野村HDのプロジェクト・マネジメント義務の不履行により,前記⑴から⑶までの追加作業をIBMが実施せざるを得なくなったから,IBM主張の相当報酬額と同額の損害を被った。 第6 反訴事件における野村HDらの主張 1 本件個別契約13~15に基づく未払報酬請求について⑴ 本件個別契約13~15の締結に係るIBMの主張事実は認める。 ⑵ 本件個別契約13~15のIBMによる債務の履行は否認する。 ア本件個別契約13及び15についてサブシステム内連結テストは完了しておらず,総合テストは開始されていない(総合テスト環境を利用したIBMの内部テストが行われていたにすぎない。)から,履行は完了していない。 イ本件個別契約14について総合テストは開始されておらず, 総合テストは開始されていない(総合テスト環境を利用したIBMの内部テストが行われていたにすぎない。)から,履行は完了していない。 イ本件個別契約14について総合テストは開始されておらず,総合テスト環境を利用したIBMの内部テストでは大量のバグが噴出していたから,本件個別契約14について債務の本旨に従った履行があったとはいえない。 2 本件各個別契約に基づかない追加作業についての報酬請求について⑴ 第5の2の⑴から⑶までの各アの作業をIBMが行ったことは認める。 ⑵ 第5の2の⑴から⑶までの各イの相当報酬額及び同⑷の請求の根拠に関する主張は,いずれも争う。第5の2の⑴から⑶までの各アの作業はIBMの帰責事由によって生じたものである。野村HDに債務不履行はなく,IBM主張の合意は存在せず,IBMが野村HDらの事務を行ったとはいえないか- 15 -ら商法512条に基づく請求権もない。 理由 第1 当裁判所が認定した事実証拠(甲1から12まで,14から54まで,56,61から72まで,74から85まで,88から91まで,95から103まで,105から126まで,131から137まで,140,141,155から159まで,161から164まで,166から168まで,173から192まで,197,198,乙1から24まで,41から61まで,67から75まで,77から85まで,87から106まで,115から123まで,125,126,128,129,131,132,135から148まで,153から185まで,195から222まで,224から228まで,230から245まで,258から261まで,264から273まで,原審証人A2,同A3,同A4,同B,同C,同D)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を 5から222まで,224から228まで,230から245まで,258から261まで,264から273まで,原審証人A2,同A3,同A4,同B,同C,同D)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認定することができる。 1 IBMの無償提案活動及び机上のFit&Gap分析⑴ 野村証券におけるSTAR導入とリテールITプロジェクト野村証券は,バックオフィス業務の基幹システムとして長年機能拡大を続けてきたCUSTOMについて,保守管理の手間と維持管理費用の増加の問題に悩まされていた。野村証券は,この問題を解決するため,野村総研が開発したSTARをバックオフィス業務の新たな基幹システムとして導入し,2年程度かけて順次STARをCUSTOMと置き換え,最初のSTARのCUSTOMとの置き換えと同時に個人向け商品用の情報システムも一新してスリム化するというプロジェクト(リテールITプロジェクト)を企画していた。野村証券のIT戦略部は,システム開発の野村総研への依存度を減らすマルチベンダ化も意図していた。 IBMの社員の中には,Bなど,野村証券のオフィスに席を置いて野村証- 16 -券のシステム関係の企画策定支援を行う者がいた。そのため,IBMは,野村証券のITシステムの更新予定,更新計画の内容を推測することができた。 IBM以外のシステム開発企業の一部にも,同様の企業があった。BなどIBMの社員は,CUSTOMからSTARへの置き換えやリテールITプロジェクトにつながる野村証券の動きを察知し,システムのスリム化によるランニングコスト削減が重要であることやA5IT戦略部長が野村総研依存体質からの脱却の意向を有していることも把握していた。IBMは,CUSTOMの後継となる予定の基幹システムであるSTAR本体の開発・改良 ングコスト削減が重要であることやA5IT戦略部長が野村総研依存体質からの脱却の意向を有していることも把握していた。IBMは,CUSTOMの後継となる予定の基幹システムであるSTAR本体の開発・改良やコーポレート業務に関する大規模なシステム開発に食い込むことは難しいと考えた。IBMは,リテールITプロジェクトに着目し,STARのサブシステムとなるべき顧客対応部門(リテール関係業務)の中小規模のシステム開発に一部食い込むことを目指すこととした(乙145)。 平成22年7月,野村HDらは,リテールITプロジェクトを正式に立ち上げた。リテールITプロジェクトの骨子は,基幹システムについてCUSTOMからSTARへの置き換えの順次開始,STARのサブシステムとなるべき顧客対応部門のITシステムについてスリム化再構築,CUSTOMからSTARへの最初の置き換え時におけるSTARのサブシステム(顧客対応部門のITシステム)のSTARとの連携稼働開始,スリム化等によるランニングコスト削減,維持コストの削減及び業務の効率化であった。野村証券の資料には,平成22年の年間システム関係費用が約690億円で,これはその5年前のほぼ2倍に当たり,5年間でシステム関係の費用が急増したこと,コスト削減が重要であることの記載があった。システム関係費用急増の原因の一つとして,野村総研が開発したSMAFWの現行システムが掲げられていた。SMAFWは,野村証券が,平成22年の5年前(平成17年)に,金融庁から投資一任業務の認可を受けて開始したものであった(甲5,乙145)。 - 17 -⑵ SMAFWへの着目とパッケージソフト(WM)の紹介IBMは,平成22年4月頃,顧客対応部門の業務の一部であるSMAFW(投資一任口座サービス)向けの情報システ 。 - 17 -⑵ SMAFWへの着目とパッケージソフト(WM)の紹介IBMは,平成22年4月頃,顧客対応部門の業務の一部であるSMAFW(投資一任口座サービス)向けの情報システム(現行システム)の更新の受注にねらいの一つを定めた。当時存在したSMAFW(個人向けの投資一任口座サービス商品)用の情報システム(現行システム)は,野村総研が開発した個人向け商品用の情報システムの一つであった。野村総研が開発したこの現行システムは,ランニングコスト(保守及び維持に係る経費)が非常に高いことから,STARのサブシステムとなるべき新システムの開発が検討されていた。なお,SMAFWの現行システム及び本件システムは,顧客と野村証券の間の資金移動についての資金決済機能や野村証券が投資一任業者として顧客のために行う有価証券の売買の決済機能を有するものではなく,別のシステムがこれらの決済機能を担っていた。SMAFWの現行システム及び本件システムは,投資一任業務におけるファンドマネージャー業務を担当する野村証券の社員が使用するもので,資産運用状況の把握,投資方針の決定,注文管理,徴収すべき手数料額の算定,顧客向けの報告資料の作成などをシステム内で行うものであった。 IBMは,平成22年4月頃,野村証券に対して,海外企業であるテメノス社が開発したパッケージソフトであるWMを用いたシステム開発の営業をかけ,資料(乙144)を用いて説明会を催した。当時のIBMは,野村証券のSMAFWの実際の業務の詳細(フィーの計算及び徴収の詳細複雑なルールを含む。)を知らず,具体的な業務内容を踏まえた説明を行うことはできなかった。そのため,説明は一般的な内容にとどまった。説明内容は,WMの標準機能,標準機能で賄えない部分の一般的な対応(カスタマイズ等) む。)を知らず,具体的な業務内容を踏まえた説明を行うことはできなかった。そのため,説明は一般的な内容にとどまった。説明内容は,WMの標準機能,標準機能で賄えない部分の一般的な対応(カスタマイズ等),日本語化が可能なこと,開発期間はカスタマイズがなければ10か月であり,カスタマイズの規模が大きくなればなるほど開発期間も長くなること,導入後の運用保守や障害対応も海外企業であるテメノス社が対応することなどで- 18 -あった。SMAFW業務におけるフィーの計算及び徴収のルールが詳細複雑で,フィー業務の全部をそのままシステム化すると,要件定義や設計開発が厄介かつ膨大な仕事となり,ランニングコストも高くなる可能性があることは,当時のIBMは知る由もなく,資料にも記載がなかった(乙144)。 ⑶ IBMの無償提案活動と机上のFit&Gap分析IBMは,平成22年8月30日頃,野村証券に対して,新たな説明資料(甲103)を用いて,パッケージソフトであるWMを用いたSMAFWの新システム開発の説明を行った。同年4月の説明資料(乙144)との主要な相違は,標準画面を用いた画面イメージ資料が削除され,当時のIBMが理解したSMAFWの業務の外形に基づきWMの標準機能で実現できる主要機能(①投資提案書作成~投資方針策定,②注文管理・一括注文,③ポートフォリオ管理・パフォーマンス測定,④顧客レポート,⑤顧客管理)の説明が入った点である。WMの標準機能には,フィー関係はあまり盛り込まれていなかったため,当時のIBMにもフィー関係がギャップ項目となること自体は,容易に判明した。しかし,IBMは,フィーの計算徴収に詳細複雑なルールがあって,全部システム化すると非常に長い開発期間を要することになることを知らず,フィー関係業務については主要な関心を払っ 体は,容易に判明した。しかし,IBMは,フィーの計算徴収に詳細複雑なルールがあって,全部システム化すると非常に長い開発期間を要することになることを知らず,フィー関係業務については主要な関心を払っていなかった。開発期間は,カスタマイズがなければ10か月であり,カスタマイズの規模が大きくなればなるほど開発期間も長くなることの説明は,同年4月の説明資料(乙144)と同様であった。 野村証券においては,SMAFW業務は投資顧問部の担当であった。投資顧問部内においては,SMAFWのフィー計算徴収業務につき,その業務知識やルール(詳細複雑なフィー徴収の要件や計算手法を含む。)が特定の1名の社員(Fee担)に属人的に独占されていた。野村証券の他の社員全員にとっては,フィー徴収の業務内容がブラックボックス化していて,Fee担に聞かなければ把握できないという実態にあった。IBMの社員は,本件- 19 -開発業務が本格化する前(平成23年4月に概要設計フェーズに入る前)は,このような実態を知らなかった。本件開発業務が本格化した後においては,IBMの社員がFee担以外の野村証券の社員にフィーの計算徴収業務に関する質問をしても,回答が得られないのが常であった。このようなフィー計算徴収業務のFee担への属人化,ブラックボックス化は,フィー計算徴収の要件や計算手法が詳細複雑であることやFee担の言動が他罰的,攻撃的であること(野村HDらの証拠説明書の表現によれば「辛辣」であること)とあいまって,本件開発業務の隘路となっていった。 その後の平成22年9月後半から10月前半まで,野村証券とIBMとの間で,パッケージソフトであるWMを用いたSMAFWの新システム開発の適否について協議が行われた。協議の内容は,机上のFit&Gap分析であり,投資顧問 後半から10月前半まで,野村証券とIBMとの間で,パッケージソフトであるWMを用いたSMAFWの新システム開発の適否について協議が行われた。協議の内容は,机上のFit&Gap分析であり,投資顧問部からのヒアリングにより業務要件の整理と不足機能の洗い出しを行い,その結果が整理確認された。この段階では,机上の概要レベルでの整理,洗い出しが行われたにとどまる。同年10月13日には無償でWMのデモセッションが実施されたが,野村証券側に操作機会はなく,カナダからテメノス社のデモ担当がリモートで実施した。同月15日のIBMによる中間報告(乙148)の要旨は,机上の概要レベルでの検討結果として,ほとんどの業務要件は実現可能であるが,当時のIBMにもギャップが明らかな4項目(フィー全般,スリーブ管理,CRF自動発注,フィナンシャルプランニング)及び野村証券が懸念を残す3項目(一括大量処理,顧客レポートの柔軟性,増減額時の運用資産額の把握)が残るというものであった。 協議は継続することとし,同年10月末までに開発総費用の概算見積もりやIBMの次の提案を行う予定とされた。 フィーについての検討結果は,本判決別紙4(乙148の18頁)のとおりであって,定性的にWMの標準機能では賄えないことは判明した。しかし,フィー関係の詳細複雑な業務要件のボリュームの存在がこの段階で野村証券- 20 -からIBMに情報提供された形跡や,このような詳細複雑な業務要件のボリュームの存在にもかかわらず開発期間内に開発可能かどうかについて検討を加えた形跡はない。なお,前記中間報告資料(乙148の12頁)においては,フィー管理(固定報酬計算管理・実績報酬管理)の機能は野村総研が開発したSMAFWの現行システムには存在しておらず,新たにシステム化対象として追加される機能とし 資料(乙148の12頁)においては,フィー管理(固定報酬計算管理・実績報酬管理)の機能は野村総研が開発したSMAFWの現行システムには存在しておらず,新たにシステム化対象として追加される機能として表示されている。この2年後の平成24年に作成された資料であるが,野村総研が開発したSMAFWの現行システム(CUSTOM接続)をSTARに接続して暫定使用するという内容のコンティンジェンシープラン(本件システム開発がうまくいかない場合の代替プラン)においては,現行システムのうち「4 残高取引管理」の「4.9フィー徴収確認」は現在未使用で影響がないためコンティンジェンシープランにおいて特段対応せず,「6 フィー徴収」はコンティンジェンシープランでは対応せず業務運用で対応するため,口座からのフィーの自動引落しは行えないと記載されている(甲82)。 2 導入前機能検証(PoC),「要件定義書」策定とWM導入決定⑴ IBMの有償提案活動の開始IBMは,平成22年10月29日付け提案書(甲7)を用いて,WMを用いたSMAFWの新システム開発の提案を行った。投資額の適正化,パッケージソフト(WM)による低コストかつ短期間での開発,運用保守体制のレベル維持を,基本目的・方針とした。平成25年1月のCUSTOMからSTARへの最初の置換開始と同時にSMAFWの新システムをSTARのサブシステムとして稼働開始することをビジネス上の目標とし,平成23年4月までを計画フェーズ(企画及び実質的な要件定義等),同年10月までを実行フェーズ(開発・プログラム納品等),平成24年3月までをテストフェーズ,平成24年4月以降をSTARとの並行稼働テスト及び本番移行期間と予定した。また,机上のFit&Gap分析(無償)では足りないた- 21 -め,有償 納品等),平成24年3月までをテストフェーズ,平成24年4月以降をSTARとの並行稼働テスト及び本番移行期間と予定した。また,机上のFit&Gap分析(無償)では足りないた- 21 -め,有償の実機検証として,計画フェーズ(企画及び実質的な要件定義等)に入る前に2か月程度のPoC(導入前機能検証・ProofofConcept)を行うことも提案された。ギャップ項目等については,平成22年10月15日の中間報告(乙148)と同程度の指摘がされた。フィーのギャップは,項目としては指摘があるが,フィーの計算徴収に詳細複雑なルールがあること(後に,深刻なギャップの存在及び工数著増や手戻り頻発に伴うスケジュール遅延の原因として問題となる。)は,IBMの担当者は知らず,野村証券側でも投資顧問部の特定の1名の従業員(Fee担)以外は知らなかった。 開発総費用の概算見積り金額は17億7900万円,稼働後の運用保守(海外企業であるテメノス社が行う。)の費用の概算見積り金額は月額2820万円とされた。フィー計算徴収の詳細複雑なルールの存在を知らないままフィー全般をシステム化しようとしたこと及びフィー計算徴収の詳細複雑なルールの具体的な内容をFee担1名しか知らないことは,後に,WMの標準機能に合わせた開発というパッケージソフトによる開発の利点を打ち消す原因となった。 平成22年10月29日付けの前記の提案書(甲7)には,注記として,次の事項も記載されていた。 ① 見積金額での契約締結や最終的なプロジェクトの遂行を約束するものではない。 ② 今後は各フェーズ(計画,実行,テスト及びSTARとの並行稼働テスト)ごとに分けて別途見積の上契約する。 ③ IBM所定の契約書を使用する。 提案書②の記載は,開発の開始からシステムの完成及び稼働 各フェーズ(計画,実行,テスト及びSTARとの並行稼働テスト)ごとに分けて別途見積の上契約する。 ③ IBM所定の契約書を使用する。 提案書②の記載は,開発の開始からシステムの完成及び稼働開始までを一本の契約とせずに,開発の進展に応じていくつかの進捗段階ごとの別々の契約とする趣旨である。将来締結されるべき各契約は,システム開発の各段階における野村証券の開発作業(要件定義,プログラムの製作,テスト等)の- 22 -支援等をIBMの債務の内容とするが,本件システムの最終的な完成及び稼働開始は,各契約においてIBMが実現(履行)すべき債務の内容とはならないという趣旨である。 ⑵ PoC(導入前機能検証)野村HDとIBMは,PoCの実施のため,平成22年11月12日頃本件個別契約1(PoC実施の「事前準備」をIBMに委託するもの)を報酬額税別800万円と定めて締結し,同月29日頃本件個別契約2(PoCの「実機検証」をIBMに委託するもの)を報酬額税別800万円と定めて締結した。契約書の作成については,いずれも,IBM所定の契約書が使用された(甲1の1・2)。 本件個別契約1の契約書(甲1の1)の表題は「IBM支援サービス契約書」であり,IBMの債務の内容として「情報システム開発(野村HDの責任において完成)に関する支援サービスとして,SMAFWの導入前機能検証(事前準備フェーズ)の支援等を行い,サービスの終了日又はサービス期間の終了日(平成22年12月3日)のいずれか早い日にサービスの提供を終了する準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)」と記載され,IBMの受領する報酬として確定料金800万円(消費税別)と記載されている。本件個別契約2の契約書(甲1の2)には,「(事前準備フェーズ)」を「(実行 成を目的とした請負契約ではない)」と記載され,IBMの受領する報酬として確定料金800万円(消費税別)と記載されている。本件個別契約2の契約書(甲1の2)には,「(事前準備フェーズ)」を「(実行フェーズ)」と改め,サービス期間の終了日を「平成22年12月24日」と改めるほかは,本件個別契約1の契約書(甲1の1)と同趣旨の記載がある。 実機検証は,投資顧問部と合意したデータ及びシナリオを用いて実行された。10月13日実施の無償のデモセッションのシナリオが野村証券の業務と合わない,適合性が評価できない,機能の詳細を知りたいなどの投資顧問部の意見を考慮したためである。IBMからは,E,F,GらがPoCを担当し,Hも事前準備段階に参加した。本件個別契約1に基づき平成22年1- 23 -1月に事前準備作業が実行され,シナリオ,データ及び分析ポイント等が合意された(フィーや源泉徴収額はWM外部での計算を前提に任意の値が設定された)。本件個別契約2に基づき,平成22年12月に実機検証が実行された。投資顧問部のFee担は,同月14日から17日までに行われた検証実行セッションの半分以上に出席したが,フィー計算徴収業務の詳細複雑さが原因で,カスタマイズの規模の著増,ひいては開発期間の長期化をもたらし,平成25年1月のSTARとの同時稼働開始を困難にする大きなリスクがあることを,指摘しなかった(乙1,115,116,168,173から175まで)。 IBMのB,I,Hは, 平成22年12月29日,IT戦略部幹部(A5部長,A6課長,A3課長)に対して,PoCの結果報告と今後の進め方の提案( パッケージを前提とした要件検討・制約の整理) を行った。投資顧問部は同席していなかった。IBMの結果報告では,検討の継続が必要な項目は残るものの,パ して,PoCの結果報告と今後の進め方の提案( パッケージを前提とした要件検討・制約の整理) を行った。投資顧問部は同席していなかった。IBMの結果報告では,検討の継続が必要な項目は残るものの,パッケージソフトであるWMを用いたSMAFWの新システム開発と平成25年1月のSTARとの同時稼働の開始は可能とされた。合意により設定された分析ポイントのうち,要求機能の存在を確認した項目が31,要求機能は存在するが実証できなかった項目が1,要求機能の不存在を確認した項目が20,要求機能の存在が未確認の項目が2であった。不存在確認項目20のうち,代替案を提案する項目が3,カスタマイズを検討する項目が17(うちカスタマイズレベル中が3,レベル小が14)であった。 A5IT戦略部長は,パッケージソフト利用に伴う簡素で安価なシステム開発を期待して,IBMのBらに対して,要旨「投資顧問部は要件定義を支援するという認識では困る,要件定義を行うのはあくまでも投資顧問部であることを認識させる必要がある,IBMが野村証券に常駐すると同化して現行を是としたシステム像になるきらいがある,上から落として業務要件を変える必要がある,野村はパッケージ機能に合わせた要件定義の経験が少ないの- 24 -で教えてほしい。リテールITプロジェクト全体の要件定義が2月末までずれたので,本件も同様のスケジュールとなる。」などと発言した(甲8,乙1,54)。同日(平成22年12月29日)の段階では,後に大きなギャップが判明するフィー計算徴収業務の詳細複雑さの問題は,IBMの担当者は知らず,野村証券においても投資顧問部の特定の従業員(Fee担)以外は知らなかった。また,リバランスのうち四半期リバランスを実施することは,話題にものぼっていなかった。 ⑶ 要件定義書と題する文書の作成 野村証券においても投資顧問部の特定の従業員(Fee担)以外は知らなかった。また,リバランスのうち四半期リバランスを実施することは,話題にものぼっていなかった。 ⑶ 要件定義書と題する文書の作成野村証券社内のシステム開発に関する管理基準によれば,標準工程は「企画,概要設計,基本設計,詳細設計,テスト(4段階),移行切替リリース」の9工程に分かれ,本件開発業務のような1億円以上の案件は,一番最初の「企画」段階において「要件定義書」と題する文書を策定の上所定の会議体の承認を受け,次の「概要設計」段階においてその前の企画段階で承認を受けた「要件定義書」と題する文書に基づく業務要件,機能要件等の「要件定義」を行うものとされていた。また,「要件定義書」と題する文書に記載すべき必須項目は「①案件名,②案件内容,③期待される効果及びその測定方法,④開発範囲,⑤リスクとその対策,⑥開発体制(形態,委託予定ベンダ等),⑦想定費用,⑧想定開発期間,⑨関連案件」と定められていた。野村証券社内の管理基準によれば,システム開発に関して世間一般で要件定義と言われるものの大半は「概要設計」段階で実施され,その前の「企画」段階で策定される「要件定義書」と題する文書は,単なる企画書のようなものであって,世間一般で言われる要件定義とは異なる(甲84,85)。 野村HDとIBMは,「要件定義書」と題する文書の策定と本件開発業務についての野村証券社内の正式承認獲得のため,平成23年1月17日頃本件個別契約3を,報酬額税別3920万円と定めて,IBM所定の契約書を用いて締結した(甲1の3)。「要件定義書」と題する文書策定作業の一部- 25 -(投資顧問部担当者(Fee担を含む。)との業務フロー定義及びFit&Gap分析)は,同月11日から開始されていた。本件 て締結した(甲1の3)。「要件定義書」と題する文書策定作業の一部- 25 -(投資顧問部担当者(Fee担を含む。)との業務フロー定義及びFit&Gap分析)は,同月11日から開始されていた。本件個別契約3の契約書(甲1の3)には,確定料金(3920万円・消費税別),サービス期間終了日(平成23年2月28日)及び支援サービスの内容(要件定義フェーズ,SMAFW業務においてWMを前提とした業務フロー定義,Gap分析作業,要件の整理,課題の洗い出しの支援を行う)のほかは,本件個別契約1の契約書(甲1の1)と同趣旨の記載がある。 IBMの作成した要件定義フェーズの説明資料(乙2)には,野村証券のリテールITプロジェクトの目的(スリム化,コスト削減及び業務の効率化)を意識して,プロジェクト方針として「極力パッケージ標準機能の中での業務の成立,業務改革を意識した業務の棚卸」などの記載,ポイントとして「既存の業務モデルに固執せず新たな業務モデルを構築する。業務・システムの両面から改善・代替策の提案及び検討を行う。GAP=追加開発ではなく,パッケージ標準機能の中で業務を成立させることを念頭に置く。」などの記載があり,業務フロー定義,Fit&Gap分析及び所要の追加開発の概算見積などの作業を経て,同年2月下旬までに「要件定義書」と題する文書の策定を完成させることを目標としていた。IBM側は,プロジェクトオーナーがB,プロジェクトマネージャーがJ,基幹業務チームにはH(PoCも担当),C及びKが配属された。 要件定義書と題する文書の作成の過程において実施されたFit&Gap分析は,野村証券社内における前記のような「要件定義書」と題する文書の性格から,精度の粗いものであった。IBMの担当者(C,K)は,投資顧問部担当者(Fee担を含む。)からヒアリ れたFit&Gap分析は,野村証券社内における前記のような「要件定義書」と題する文書の性格から,精度の粗いものであった。IBMの担当者(C,K)は,投資顧問部担当者(Fee担を含む。)からヒアリングを実施し(乙176から178までなど),業務要件リストを作成して,WMで実現可能か,実現見込みの低い業務要件をどうするか(WMのカスタマイズ,外付け開発,その他)について,テメノス社担当者や投資顧問部担当者と検討を続けた(乙169- 26 -など)。 同年2月9日には,IT戦略部のA3課長からIBMのBに対して,次の指示があった(乙3)。 ① 要件定義書は,通常はユーザー部門(投資顧問部)が作成するが,今回はIT戦略部が作成する。IBMは,野村証券フォーマットを使用して,要件定義書の一部の下書きを書いてほしい。 ② 同年3月支出案は,早く持ってきてほしい。期末・年度末で処理が厳しく,また要件定義書が承認されないと次の支出の稟議が回せない。 平成23年2月25日に「要件定義書」と題する文書(甲74)が策定された。本件システム開発の概算費用総額は19億3000万円とされた(乙4)。スケジュールは,平成25年1月のSTARと同時の稼働開始をビジネス上の目標とし,平成23年4月と5月を概要設計フェーズ,同年6月から12月までを基本設計・詳細設計・開発フェーズ(プログラムの製作,完成,納品まで),平成24年の丸1年間をテストフェーズとするものであった。WMの本邦導入実績がないことから,テスト期間を十分にとるなど余裕のあるスケジュールとして,予測困難なリスクにも対処可能としていた。プロジェクト方針として,SMAFWの現行のサービス内容をWMのパッケージ機能を中心としたものに変更し,契約上変更不可能な点等につき必要最小限のカスタマイズを行うこ なリスクにも対処可能としていた。プロジェクト方針として,SMAFWの現行のサービス内容をWMのパッケージ機能を中心としたものに変更し,契約上変更不可能な点等につき必要最小限のカスタマイズを行うこととされた。新業務フロー,Fit&Gap分析の結果及びカスタマイズ対応の概要,保守運用体制(海外企業であるテメノス社が担当する。)並びにリスクと対応方法も記載された。 ⑷ WMを用いた本件開発業務の野村証券社内における正式承認平成23年3月4日までに,野村証券社内で,前記の「要件定義書」と題する文書及びWMを用いて本件開発業務を行うことについて正式な承認があった。これにより,本件開発業務の本格的な遂行が開始されることになった(乙70)。 - 27 -⑸ 年度末の事務継続(概要設計立ち上げフェーズ)野村HDとIBMは,「要件定義書」と題する文書策定後の概要設計(本格的な要件定義作業)の立ち上げのために,平成23年3月3日頃,本件個別契約4を,報酬額980万円(消費税別),契約期間を同月末日までと定めて,IBM所定の契約書を用いて締結した(甲1の4,乙5)。本来は,「要件定義書」と題する文書の策定を受けて,本件個別契約5~7のようなライセンス契約を含み報酬額を約9億円程度とする概要設計(本格的な要件定義作業)の契約をすべきところであった。しかし,野村証券の社内取扱いにより,3月末の期末・年度末をまたいで巨額の契約をすることが困難であったため,役員報告と稟議が不要な1000万円未満の小規模な契約としたものである(甲85)。 本件個別契約4におけるIBMの受託業務の内容は,周辺システムとの連携や保守スキームの検討及びテメノス社での研修受講によるスキルアップであり,WMの概要設計作業の開始は含まれていなかった。実 本件個別契約4におけるIBMの受託業務の内容は,周辺システムとの連携や保守スキームの検討及びテメノス社での研修受講によるスキルアップであり,WMの概要設計作業の開始は含まれていなかった。実際に,IBMのL,C及びKらは,カナダのトロント所在のテメノス社でWMの研修を受けた。研修においては,ストーリーボードの機能(要件の理解を確かめる。カスタマイズの内容を確認する。)及びユーザからストーリーボードについてサインを取得しないと開発フェーズに入れないこと,すなわち,プログラムの製作のためのスペック(仕様書)の作成作業などに入れないことを習得した。 3 概要設計及び作業量の予期せぬ増加⑴ 概要設計フェーズの開始野村HDとIBMは,概要設計(本格的な要件定義作業)を行うために,平成23年4月4日頃本件個別契約5を,報酬額税別1億7370万円と定めて締結した(甲1の5,甲9)。本件個別契約5の契約書(甲1の5)には,確定料金(1億7370万円・消費税別),サービス期間終了日(平成- 28 -23年6月30日)及び支援サービスの内容(WM概要設計,帳票外付け概要設計,インターフェース概要設計,移行計画作成の支援)のほかは,本件個別契約1の契約書(甲1の1)と同趣旨の記載がある。また,同じ頃,本件システム完成前の段階の本件開発業務においてWMを使用するためのWMのライセンス契約として本件個別契約6(報酬額税別6億3000万円)を締結し,開発機器の購入と初年度保守料のための契約として本件個別契約7(報酬額税別8746万8546円)を締結した(甲1の6・7)。いずれも,IBM所定の契約書が用いられた。 概要設計段階において業務内容の確認が詳細なレベルに及ぶことにより,カスタマイズ量もある程度増加するのが通常であり, )を締結した(甲1の6・7)。いずれも,IBM所定の契約書が用いられた。 概要設計段階において業務内容の確認が詳細なレベルに及ぶことにより,カスタマイズ量もある程度増加するのが通常であり,このことはIBMも予想していた。しかしながら,後に明らかになるように工数が2倍近くまで増加してしまうこと,これに伴い工数の増加が全体スケジュールに影響する程度に及んでしまうことは,想定していなかった。そのようなことは,通常は起こらないことであるからであった。 IBMの提案のスケジュールの概要は,平成25年1月のSTARと同時の稼働開始をビジネス上の目標として,平成23年6月までを概要設計フェーズ(要件定義等),平成24年3月までを基本設計・詳細設計・開発・連結テストフェーズ(プログラム納品は平成23年12月末まで),平成24年4月以降をSTARとの総合テスト及び移行リハーサル期間と予定した。 概要設計フェーズの期間については,IBMは2か月(平成23年4月及び5月)を考えていたが,野村証券側からリテールITプロジェクト全体のスケジュールとのバランスを考慮して3か月(平成23年4月から6月まで)という希望が出たので,野村証券側の希望を入れて3か月となった。 概要設計フェーズの主要な内容は,平成23年2月までに作成した業務一覧及び業務フローをもとに,WMを前提とした業務機能の詳細化とカスタマイズの内容確定を行い,帳票・外付けについても概要設計を行うというもの- 29 -であった(甲9,116)。IBM側のプロジェクト責任者はB,プロジェクト管理者はM及びJ,全体調整リーダーがH,WMチームはリーダーがL,その下にK,Cら及びテメノス社担当者とされた。 ⑵ 新機能の追加の請求(四半期リバランス)野村証券は,平成23年4月以降 はM及びJ,全体調整リーダーがH,WMチームはリーダーがL,その下にK,Cら及びテメノス社担当者とされた。 ⑵ 新機能の追加の請求(四半期リバランス)野村証券は,平成23年4月以降の概要設計段階になって,CR(ChangeRequest ・変更要求)により,「要件定義書」と題する文書に記載のない新業務要件として四半期リバランスを要求し,スリム化の基本方針に反してシステム更新の目玉の一つにしようとした。リバランスとは,時の経過による価格変動に伴いポートフォリオ(株式(国内・海外),債券(同)などの資産配分比率。比率は時価評価ベースで算出する。)が目標範囲から外れた場合に,目標の範囲内になるように比率を調整することである。「要件定義書」と題する文書におけるリバランスはFW全口座につき年1回であったが,CR(変更要求)により,年4回(四半期に1回)とされた。四半期リバランスの業務要件への追加により,本件開発業務の工数が非常に増大した(甲161,乙158,172,179,180,195)。四半期ごとに行うリバランスがフィー徴収や契約変更などの他のイベントと重なった場合の要件は,非常に複雑となり(乙179,180),本件開発業務遅延の一因となった。その後,概要設計終了後の平成23年9月12日に,契約履歴には四半期リバランスも履歴として掲載するとか,WMのトップページから見えている提案書には四半期リバランスのために作成された提案書を表示しないなどのスリム化の基本方針に反するCR(変更要求)があり,概要設計終了後のプログラム製作過程においても工数増大の原因となった。 ⑶ 概要設計フェーズの進行概要設計フェーズは,IBM及びテメノス社の担当者において,投資顧問部担当者からSMAFWの現行業務のヒアリング(IT戦略部 いても工数増大の原因となった。 ⑶ 概要設計フェーズの進行概要設計フェーズは,IBM及びテメノス社の担当者において,投資顧問部担当者からSMAFWの現行業務のヒアリング(IT戦略部担当者は当初不参加)を行い,現行業務の標準機能対応が可能か不可能(カスタマイズ等- 30 -対応)か分類することを軸に行われた。ヒアリングに伴いカスタマイズ量がある程度増大することは,システム開発においては通常のことであった。その理由は,ユーザーが新たな業務要件を希望することや業務要件を詳細に確認していく過程において新たなギャップが発見されることなどは,通常は避けられないからであった。IBMとしては,このような通常程度のカスタマイズの増大があっても,当初スケジュールの維持は可能と見込んでいた。 他方,IBMが,概要設計フェーズの冒頭から,SMAFWの全業務について,WMの標準機能で対応可能な形態への業務変更を検討していくことは,困難であった。IBMは,野村証券の業務に詳しくないからであった。また,概要設計フェーズにおけるカスタマイズ量の増大が,PoCや「要件定義書」と題する文書策定の過程において想定されていた程度の増大にとどまるのであれば,平成25年1月の稼働開始は可能であったとみられるから,このような対応もやむを得ない一面があった。 平成23年4月28日の定例報告会議においては,Fee担が作業状況について心配しており,今後,現行業務のヒアリング結果を踏まえて新業務の検討をテメノス社と実施していくと思うが,新業務の設計で取りこぼしが発生しないかがFee担の懸念点であるとの報告があった。フィーの計算及び徴収のルールの詳細複雑さについては,報告されていない。IBMのJは,今は概要設計フェーズであり,詳細業務仕様は詳細設計フェ が発生しないかがFee担の懸念点であるとの報告があった。フィーの計算及び徴収のルールの詳細複雑さについては,報告されていない。IBMのJは,今は概要設計フェーズであり,詳細業務仕様は詳細設計フェーズで詰めていくが,取りこぼしが発生しないように新業務の検討を実施し,検討内容を可視化できるようにしたいと回答した(乙72)。平成23年4月28日の定例報告会議においては,IBMが本件開発業務のうち移行やインターフェースの開発のために,野村総研製作の現行システムに関することを知りたくなった際,IBMと野村総研が直接接触することがあるが,これによりハレーションが生じる可能性があることも指摘された(乙72)。 ⑷ 想定外の工数増の判明とIBMの対応- 31 -ヒアリングと分類を続けていくにつれて,平成23年5月には,投資顧問部の希望に沿って現行業務を踏襲し,WMの標準機能の使用に消極的なままであるとすれば,カスタマイズが必要となる部分の工数が,それまでの想定よりも著しく増大することが,IBMに判明していった。この情報は,速やかに野村証券と共有された。IBMは,要件を詳細に詰めていく過程で発見された新たなギャップについて,野村証券に対して対応の検討を求めた(乙154の6など)。しかしながら,投資顧問部の意向は,現行踏襲となるのが通常であった。この頃には,野村証券内部で,投資顧問部とIT戦略部のコミュニケーションが希薄であり,投資顧問部とIT戦略部が一緒に議論に参加する必要性も指摘されていた(甲11)。カスタマイズ量の増大は,想定を大きく上回る著しさで,本件開発計画の成功不成功に及ぼす影響が看過できないレベルとなる見通しとなった。標準機能でまかなえない開発必要数の増加分(機能数による。)は,「要件定義書」と題する文書の策定時と比べて る著しさで,本件開発計画の成功不成功に及ぼす影響が看過できないレベルとなる見通しとなった。標準機能でまかなえない開発必要数の増加分(機能数による。)は,「要件定義書」と題する文書の策定時と比べて,約2倍にまで増加していた。IBMは,速やかに,カスタマイズ量に看過できない増大が生じていることを野村証券に報告した。 IBMは,平成23年6月17日,概要設計フェーズ状況報告の資料(甲10)を用いて,野村証券に対し,カスタマイズ量の増大とその対策案の報告を行った。その内容は,標準機能でまかなえない開発必要数が,WMなどテメノス社担当部分においても,外付け機能などIBM担当部分においても,「要件定義書」と題する文書を策定した段階における予想を大幅に増加していること,これに伴い開発費用も大幅に増加する見込みであること,現行の業務プロセスをベースに作業開始せざるを得なかったことが原因であるので,7月から予定されていた基本設計フェーズの前半で,「パッケージをベースとしたあるべき業務プロセス」(①共通化,②代替手段,③自動化しない,④やめる(直投)などの対応策)を検討することを提案した。 なお,投資顧問部作成名義の平成23年6月22日付け「WealthManager- 32 -導入プロジェクトの現状」と題する文書(甲13)が,その頃IBMに送付された事実を認めるに足りる証拠はない。また,同月30日にIBMのHが投資顧問部担当者と同年7月以降の進め方の打合せをしたメモ(甲160・野村証券の各種懸念が記載されている。)が証拠として提出されているが,そのような打合せがあったことを認めるに足りる証拠はない。 4 IBMによる工数減の取り組みと野村証券の協力不十分による失敗⑴ 概要設計最適化フェーズ(平成23年7月)の開始 が,そのような打合せがあったことを認めるに足りる証拠はない。 4 IBMによる工数減の取り組みと野村証券の協力不十分による失敗⑴ 概要設計最適化フェーズ(平成23年7月)の開始野村HDとIBMは,平成23年7月の1か月間に概要設計最適化フェーズを実施するため,平成23年7月1日頃,本件個別契約8(甲1の8)を,報酬額税別5600万円と定めて,IBM所定の契約書を用いて締結した。 本件個別契約8の契約書(甲1の8)には,確定料金(5600万円・消費税別),サービス期間終了日(平成23年7月31日)及び支援サービスの内容(あるべき業務プロセスの検討と業務要件の再レビュー,あるべき業務プロセスの作成,SMA/FWの共通化,直投の対応検討,必要インターフェースの精査,移行計画,基本設計の準備作業の支援)のほかは,本件個別契約1の契約書(甲1の1)と同趣旨の記載がある。 IBMは,次のとおり提案した。すなわち,「7月から開始が予定されていた設計開発フェーズに直ちに入らずに概要設計最適化フェーズを設けると,設計開発が遅延し,テスト期間の不足も懸念される。しかし,カスタマイズ等の工数が増加したままだと,設計開発に長期間を要し,開発費用も膨れ上がり,プロジェクトのビジネス上の成功にも影響を及ぼすので,工数削減を行うことが必要である。概要設計最適化フェーズの趣旨は,パッケージベースのあるべき業務プロセス構築による工数削減,類似したプロセスの統廃合,ビジネスボリュームや利用頻度を勘案したシステム化対象範囲の絞り込み(直投のシステム化からの除外などを念頭においたもの),承認プロセスや月次処理,年次処理の簡易化にある。7月前半にIBMがあるべき姿の業務- 33 -プロセスたたき台を作成し,野村証券,テメノス社を交えて,業務プロセ らの除外などを念頭においたもの),承認プロセスや月次処理,年次処理の簡易化にある。7月前半にIBMがあるべき姿の業務- 33 -プロセスたたき台を作成し,野村証券,テメノス社を交えて,業務プロセス検討,工数削減を行い,7月後半に概要設計書を作成する。」と提案した。 投資顧問部のA7部長及びIT戦略部のA5部長は,IBMの提案の趣旨を理解し,直ちに設計開発フェーズに入らずに,平成23年7月に概要設計最適化フェーズを実施することに賛同した。この時点で,ビジネス上の目標である平成25年1月のSTARと同時の稼働開始までのスケジュールは,プログラム納品時期の平成23年12月末日から平成24年1月末日への1箇月後ろ倒し,同年1月から2月までにサブシステム内連結テスト(ITa) 及びサブシステム間連結テスト(ITb) を開始,同年4月頃にSTARとの総合テスト開始というものであった(乙6)。 IBMは,概要設計最適化フェーズ開始時に,プロジェクト責任者をBからNに代えた。Nは,パッケージ・ソフトウェア導入による開発の経験に富む人材であり,WMの標準機能の活用による野村証券の業務の変容の実現及びカスタマイズ量減少の実現が期待されていた。WM開発担当チームのリーダーには,Oが就任した。概要設計フェーズまで本件開発業務に携わってきたH,L,C及びKはアドバイザーに就任した。 平成23年7月4日のミーティング(甲14)で,7月前半の2週間の作業の目的がカスタマイズ量の削減と野村証券の懸念事項の解消の2点とされ,カスタマイズ量の削減目標が合計851人日とされた。7月5日以降の約2週間,IBMとテメノス社の担当者は,投資顧問部の担当者と協議して削減案を検討した。 ⑵ 概要設計最適化フェーズの難航平成23年7月前半に開始され 1人日とされた。7月5日以降の約2週間,IBMとテメノス社の担当者は,投資顧問部の担当者と協議して削減案を検討した。 ⑵ 概要設計最適化フェーズの難航平成23年7月前半に開始されたカスタマイズ量の削減作業は,難航した。 総口座数がわずか14口座にとどまる直投(超富裕層向けの口座)の手作業化(システム化からの除外)による工数削減案についてすら,投資顧問部の担当者の猛反対にあって,実現できなかった。SMAとFWの契約更新手続- 34 -を共通化することによる工数削減についても,同様に,投資顧問部の担当者の猛反対にあって,実現できなかった。 平成23年7月8日の協議(乙56)においては,工数の更なる増加を懸念していたA5IT戦略部長から「今後大きな工数追加が判明する可能性はないと認識してよいか」という発言があった。同席していたFee担は,いまだフィー徴収業務の詳細複雑な内容の全体像をヒアリングの機会にIBMに伝えていなかったため,IT戦略部長から指摘のあった大きな工数追加が今後も生じる可能性を認識していた。しかし,Fee担は,IT戦略部長の前記発言があったにもかかわらず,前記発言に対しては沈黙を貫いた。その結果,必要な情報(大きな工数追加がフィー関係業務において続出すること)がIT戦略部長及びIBMの担当者に伝わらず,本件開発作業の円滑な進行が妨げられる原因となった。 この協議の際,発生頻度の低い業務要件(株式分割情報の取込み)の入力手作業化によるカスタマイズ量の削減提案がIBMからあった。機能削減により,システムの維持管理コストの低減にも資する提案であった。しかし,Fee担は,手作業化リスクやオペレーション時間短縮を理由に,IBMの提案を拒否した。同席していたA5IT戦略部長及びA7投資顧問部長は, テムの維持管理コストの低減にも資する提案であった。しかし,Fee担は,手作業化リスクやオペレーション時間短縮を理由に,IBMの提案を拒否した。同席していたA5IT戦略部長及びA7投資顧問部長は,Fee担の反対を黙認した。 同月12日の協議(乙57,乙203)では,簿価損益計算の情報取得源について,WM標準機能(バックオフィスからの取得)に合わせる提案がIBMからあった。バックオフィス(本件ではSTAR)から簿価損益計算の情報を取得することは欧米標準であり,WM標準機能も欧米標準と同一であった。A5IT戦略部長は「STARを簿価損益計算の情報源とすることは思想として正しい。」と発言した。しかし,日本のビジネス慣行(バックオフィスからの情報は,簿価の算出方法が個別元本か移動平均か,損益情報について税を考慮するかどうかなどの点において,SMAFWには使えない。)- 35 -は,欧米標準とは異なっており,WM標準機能を使うという提案は採用されず,工数の削減は実現しなかった。 7月前半終了時の同月15日の協議(甲89の1・2)におけるIBMからの報告内容は,工数の削減目標(合計851人日)からは318人日を削減し,その他の削減できた項目と合わせて合計706人日を削減したが,概要設計最適化フェーズに入ってから新たに判明したカスタマイズの作業工数が合計681人日に及んだため,差し引き25人日の削減(工数の総数が1891人日)にとどまるというものであった。直投(契約数わずか14件)のシステム化廃止(237人日削減見込)の提案は投資顧問部が全面的に拒絶したほか,企画や提案の趣旨で記載された「直投の削減余地△164人日」とか「SMA直投の新規募集の中止」というIBM作成資料の内容(甲89の2の5~6頁)についても削除を求めるほどで が全面的に拒絶したほか,企画や提案の趣旨で記載された「直投の削減余地△164人日」とか「SMA直投の新規募集の中止」というIBM作成資料の内容(甲89の2の5~6頁)についても削除を求めるほどであった。 概要設計フェーズ終了後の概要設計最適化フェーズに入ってから新たに681人日もの工数増加が判明した原因には,CRF発注機能(30人日)のようにIBM側の作業漏れによるものもあったが,野村証券からの新たな要件の小出し,後出し(四半期リバランスなど)から派生したものが多かった。 同月19日以降の7月後半2週間の作業は,1891人日から1581人日まで310人日の工数を減らすとの目標を立て,同時に概要設計書の作成・更新及びレビュー,帳票のレビュー等を行うこととなった。工数310人日分の削減の検討対象項目は,新たに増加した工数681人日分を中心に,四半期リバランス,輪切り売却,法人顧客の売却制限,契約期末の定額払出,源泉あり/なしの変更,運用開始前入金及びパフォーマンス計算ロジックの各項目とされた。 IBMは,概要設計書を作成・更新し(甲19,124,161,乙78,158),帳票類(提案書・運用報告書など)のサンプル(甲125,甲126)やWM画面の視覚化資料(乙181から184まで,乙204)を作- 36 -成し,投資顧問部に提供した。 平成23年7月27日のIBMと投資顧問部との協議(野村証券側の出席者はFee担のみ)では,Fee担が新たな業務要件(源泉プールの資金ショートが発生している口座一覧が確認できる機能)を追加した上,「今後もIBM側に伝えきれていない要件が見つかる可能性がある」と発言した。なお,Fee担は,その後も,他罰的かつ攻撃的な(野村HDらの証拠説明書の表現によれば「極めて辛辣な」)苦情を述 加した上,「今後もIBM側に伝えきれていない要件が見つかる可能性がある」と発言した。なお,Fee担は,その後も,他罰的かつ攻撃的な(野村HDらの証拠説明書の表現によれば「極めて辛辣な」)苦情を述べることを繰り返した(甲98,188,189,199)。また,Fee担は,同日「源泉プールへの資金移動取引をフィー徴収計算日など他のイベントと重ならないようにする」,「増額金額に対するフィー計算期間初日は変更適用日(常に営業日),他の計算期間初日は変更適用日ではなく月初日(休祝日を問わない)」,「契約変更に伴う案件が全て約定していないタイミングで全解約が発生する場合の最終精算金額の算出」など,概要設計フェーズ(平成23年6月まで)のヒアリングの機会にIBMに説明しておくことができた要件を,この段階で新たに持ち出し,本件開発業務の秩序だった計画的進行を妨げた。計画的進行の妨げとなるようなCR(変更要求)は,概要設計最適化フェーズ終了後の平成23年8月以降も,さらにはプログラムをいったん完成させてサブシステム間連結テストを開始すべき時期である平成24年に入ってからも,フィー徴収分野を中心として,Fee担から行われた。時機に後れた多数のCR(変更要求)は,プログラム製作作業時間確保の不十分と,これに伴う納品の遅れや品質確保の不十分,ひいてはテスト開始の遅れやテスト結果不良の主要な原因の一つとなった。Fee担においてパッケージベースのあるべき業務プロセスを検討した形跡もなく,Fee担の要求した新たな業務要件は,基本的に現行業務を踏襲するものであった(乙58,156)。 ⑶ 最適化フェーズの失敗とその原因概要設計最適化フェーズは,工数削減の観点からは所期の目的の一部しか- 37 -達成できず,半ば失敗に終わった。パッケージ開発に通じたN ,156)。 ⑶ 最適化フェーズの失敗とその原因概要設計最適化フェーズは,工数削減の観点からは所期の目的の一部しか- 37 -達成できず,半ば失敗に終わった。パッケージ開発に通じたNは,野村証券の現行業務をパッケージに合わせた業務に変更するために,投資顧問部担当者らの現行業務維持の牙城を突破しようと試みたが,投資顧問部のFee担らの頑強な抵抗と妨害の前に,目的を達成することができなかった。 投資顧問部の担当者は,IT戦略部が重視する野村証券のシステム全体の効率化や機能削減による維持管理費の縮小には思いが及ばず,また,自分の庭先(担当業務)をきれいにすることだけを考えて,現行業務を変更する思い切った決断を避けて通り,工数削減が難航した。IBMは,平成23年7月29日,資料(乙201)を用いて,野村証券に概要設計最適化フェーズの結果を報告した。カスタマイズ量の削減は19%程度にとどまり,今後の開発業務の速やかな進行の懸念材料となった。なお,野村証券から指摘されていた他の懸念事項は,かなりの部分が解消できたと評価された。 IBMは,概要設計最適化フェーズ終了の段階で,工数増に至ったギャップ分析を行った(乙73)。当初想定からの相違点として,手数料計算などにおける国際標準(WM)と日本標準( 野村標準) との相違,野村証券がパッケージ機能前提の業務機能から現行機能最優先となりIBMの工数削減提案にもかかわらず修正項目が増加したこと,バックエンド(STAR)の機能役割の相違などが取り上げられた。 ⑷ ストーリーボード概要設計終了段階の作成物として,概要設計書のほかに,ストーリーボードがある。ストーリーボードは,WMの概要設計書のうちカスタマイズを行う部分を抽出した英語の文書で,パッケージソフトで ド概要設計終了段階の作成物として,概要設計書のほかに,ストーリーボードがある。ストーリーボードは,WMの概要設計書のうちカスタマイズを行う部分を抽出した英語の文書で,パッケージソフトであるWMの製作者であるテメノス社にとっては,本件システムの設計図の役割を果たすものである。 ストーリーボードが野村証券のレビューを経て確定しないと,テメノス社はプログラムの製作作業に入ることができず,プログラムの納品も遅れることになり,これらのことは投資顧問部にも説明されていた。ところが,後に,- 38 -ストーリーボードの確定遅延や,野村証券からのCR(変更要求)に伴い一旦確定したストーリーボードの再修正(手戻り)を余儀なくされることが,平成23年9月以降,ひいては平成24年(当初の予定ではプログラムの納品後のサブシステム間連結テストの実施が予定されていた。)に入っても続いたことが原因で,プログラムの製作作業に時間的な余裕がなくなり,プログラムの納品遅延や,納品されたプログラムの品質確保上の問題を引き起こすことになった。 ストーリーボードは,平成23年7月から8月にかけてIBMが作成した概要設計最適化フェーズ及び基本設計準備フェーズの説明資料にも,記載があった(乙6・11頁,乙7・3~5頁)。基本設計準備フェーズの説明資料(乙7)においては,基本設計準備フェーズ(平成23年8月)において野村証券が実行すべき作業内容として,「ストーリーボードのレビューを行うことにより,テメノス社が正しく要件を理解したことを確認します」と明記され,野村証券の担当者にもそのように説明されていた。 テメノス社は,概要設計フェーズ開始後1か月が経過した平成23年5月以降,順次ストーリーボードの作成に着手していた。概要設計フェーズ終了間際の同年6 の担当者にもそのように説明されていた。 テメノス社は,概要設計フェーズ開始後1か月が経過した平成23年5月以降,順次ストーリーボードの作成に着手していた。概要設計フェーズ終了間際の同年6月29日には,IBMから野村証券のIT戦略部担当者に,同日時点のドラフト版(概要設計フェーズ終了時点のカスタマイズの状況を内容とし,同年7月に実施された概要設計最適化フェーズにおける大量の変更内容は,反映されていない。)のストーリーボード13本が送付され,そのまま「テメノス社作成のストーリーボード(=WMの要件定義書)」として,投資顧問部の担当者(Fee担を含む。)に対しても送付されていた(乙215,216)。 同年7月4日には,IBMによる投資顧問部担当者に対するストーリーボード説明会が実施され,上記のストーリーボードのレビュー作業の意義についても説明があった。その結果,野村証券担当者も,ストーリーボードは,- 39 -業務要件リストとセットで最終的な概要設計になるものであり,テメノス社が要件をきちんと理解して正しくカスタマイズするのか確認できる唯一の資料として重要なものと認識した(甲183,199)。なお,同年6月下旬に野村証券に送付されたドラフト版の前記ストーリーボードは,その後の概要設計最適化フェーズにおいて内容的に大幅な変更を余儀なくされることが予想されていたため,野村証券において本格的なレビュー作業が直ちに開始されたわけではなかった。実際に,同年7月の概要設計最適化フェーズの実施により非常に多数のカスタマイズ内容の追加変更が生じ,テメノス社は同月以降もストーリーボードの修正作業を行い,修正されたストーリーボードが順次野村証券に送付された。後記の基本設計準備フェーズに入った同年8月中旬以降は,IBMから野村証券に対して じ,テメノス社は同月以降もストーリーボードの修正作業を行い,修正されたストーリーボードが順次野村証券に送付された。後記の基本設計準備フェーズに入った同年8月中旬以降は,IBMから野村証券に対して,ストーリーボードレビュー作業を本格化させることが要請された。しかしながら,野村証券におけるストーリーボードのレビュー作業は,全体として遅れ気味となっていた。投資顧問部長は,同年8月末ころには,「ストーリーボードの遅れている分の影響度の部分がとても不安です。」と述べていた(甲162,183,184,乙89,157,217,230,238,239)。 ⑸ 基本設計準備フェーズ(平成23年8月)の開始野村HDとIBMは,平成23年8月の1か月間に基本設計準備フェーズを実施するため,平成23年8月4日頃,本件個別契約9(甲1の9)を,報酬額税別7075万円と定めて,IBM所定の契約書を用いて締結した。 本件個別契約9の契約書(甲1の9)には,確定料金(7075万円・消費税別),サービス期間終了日(平成23年8月31日)及び支援サービスの内容(WM,外部開発機能,インターフェース機能,各種帳票,データ移行及びシステム基盤にかかわる基本設計の準備並びに開発環境構築の準備支援)のほかは,本件個別契約1の契約書(甲1の1)と同趣旨の記載がある。 概要設計最適化フェーズが終了した同年7月末においても概要設計の積み- 40 -残しがあり,ストーリーボードの作成とレビューが間に合わず,直ちに全面的には設計開発フェーズに入れなかった。そのため,基本設計準備のステージが設けられた。その概要は,8月前半は概要設計の積み残しの継続課題の検討を中心に行い,後半は,前記のとおり,テメノス社が作成更新したストーリーボード(ドラフト版又は最終版)を,I 設計準備のステージが設けられた。その概要は,8月前半は概要設計の積み残しの継続課題の検討を中心に行い,後半は,前記のとおり,テメノス社が作成更新したストーリーボード(ドラフト版又は最終版)を,IBMがチェックし,野村証券がレビューすることとされた。ストーリーボードのレビューにより,テメノス社がプログラム製作作業に入るための前提作業を完遂することが予定されていた。なお,IBMにおいて,外付け機能やインターフェースの設計開発等も引き続き行うこととされた。プロジェクト責任者は前月の7月に就任したNが続投し,7月にアドバイザーとなったK及びCはOをチームリーダーとするWMチームに復帰したが,Hはアドバイザーのままであり,Lはプロジェクト体制図(甲152)に名前が載らなくなった。この時点における開発スケジュールは,平成25年1月のSTARとの同時稼働開始をビジネス上の目標とし,プログラム製作作業を平成24年1月末日までに終えて,同月末日までのプログラム納品及びテスト開始を目指すことを始めとして,1か月前の概要設計最適化フェーズのものと同様であった。 ⑹ 基本設計準備フェーズの難航8月前半に行われた概要設計の積み残しの継続課題の作業においては,投資顧問部のFee担は,フィー徴収分野を中心に,新たに多数の業務要件追加の要求を行い,概要設計が一応の終了をみるまでに8月下旬までを要し,ストーリーボードの作成・更新・レビュー作業も,これに伴い遅延した。また,フィー計算の詳細,複雑な内容は,Fee担しか知らず,投資顧問部所属の他の野村証券社員にとっても,ブラックボックスであった。その結果,Fee担がフィーの計算徴収業務についてWMパッケージ標準機能に合わせるなどの業務の簡素化を拒絶すれば,投資顧問部長やIT戦略部長も口出しできず,黙認 とっても,ブラックボックスであった。その結果,Fee担がフィーの計算徴収業務についてWMパッケージ標準機能に合わせるなどの業務の簡素化を拒絶すれば,投資顧問部長やIT戦略部長も口出しできず,黙認するほかはないという実態にあった。現行業務を前提とするフ- 41 -ィー計算は,夥しい数の場合分けを要する詳細,複雑なもので,システム化する場合にはプログラム工数を著しく増加させ,本件システム開発の遅延と維持管理コストの増大を招くものであった(甲95,乙219)。 Fee担には,業務ボリュームや発生頻度を考慮して一部の業務の入力手作業化その他の業務の単純化を試み,開発工数の削減や完成後の維持管理コスト低減を実現しようとする姿勢は,みられなかった。本来はプログラムの納品を受けてサブシステム間連結テストを開始すべき時期である平成24年に入ってからも,Fee担からフィー徴収分野を中心に本格的な業務要件追加の要求があり,プログラム製作期間が十分に確保できず,プログラム納品やテスト開始が遅延する要因となった。 テメノス社は,ストーリーボードの作成更新作業を行い,IBMとテメノス社との共有サーバ上での質疑応答による修正作業が行われた(乙230)。 IBMのチェックを経たものは野村証券にも送付されたが,CR(変更要求)の多発などが原因で作業が遅延し,8月までに野村証券のレビューとサインオフを終えたものはなかった(甲162,乙154の11・12)。IBMによる周辺機能(外付け機能やインターフェイス等)の設計開発等は,引き続き行われた(甲15・24頁,乙154の11・12)。 IBMは,工数著増という事態を受けて,平成25年1月のSTARとの同時稼働開始が可能かどうかを,改めて慎重に検討することとした。IBMは,平成23年8月,本件 ,乙154の11・12)。 IBMは,工数著増という事態を受けて,平成25年1月のSTARとの同時稼働開始が可能かどうかを,改めて慎重に検討することとした。IBMは,平成23年8月,本件システム開発の担当部署とは独立した内部監査部署において,それまでに判明した増加工数を前提に,スケジュール(平成25年1月にSTARと同時に稼働開始)が妥当かどうかを検証したところ,スケジュール達成可能な体制が構築できていると判断された(乙207,222,228)。また,その後も,作業工程を細かなタスクに分解した上でそれぞれのタスクの達成状況を確認するなどして,プロジェクトの進捗管理を実行していた(乙79,83,89,96,227)。 - 42 -平成23年8月30日の会議(乙59,野村証券からは投資顧問部長及びIT戦略部長が出席)において,IBMは,同月中の活動報告を行った。野村証券によるストーリーボードのレビュー完了の遅延につき,IBM(O)から9月9日のレビュー完了予定が遅延するとテスト完了期日の遅延可能性が生じるとの指摘があった。これを受けて,投資顧問部長から,ストーリーボードの9月9日の完成期日は厳守しなければならないとの発言があった。 投資顧問部のFee担以外の一部の社員からは,一部の業務につきWM標準仕様に変更するとか,重複イベントの整理完了という,工数減少やシステムのスリム化に向けての前向きな発言もあった。また,投資顧問部長は,直投(237人日)をシステム化から全面的に外すことは否定しつつ,直投について「手作業で対応できる部分があれば提案してほしい。工数減少の努力はしている。」と発言し,工数減少の必要性には理解を示していた。しかし,投資顧問部のFee担からは,更なる要件複雑化と工数著増を予感させる発言(正確な残高時価 があれば提案してほしい。工数減少の努力はしている。」と発言し,工数減少の必要性には理解を示していた。しかし,投資顧問部のFee担からは,更なる要件複雑化と工数著増を予感させる発言(正確な残高時価評価を重要視している)があった。 5 プログラムの製作開始とその後のCR(変更要求)⑴ 本件個別契約13の締結と基本設計フェーズの開始野村HDとIBMは,平成23年9月9日,代金を8億0800万円(消費税別)と定めて,IBM所定の契約書を用いて本件個別契約13を締結した(甲1の12,15)。その内容は,後記Drop1部分の基本設計,プログラムの製作納品並びにIBM単独で実施可能なテスト(単体テスト及びサブシステム内連結テスト)の実施であった。STARの他のサブシステムとの共同作業が必要となるサブシステム間連結テスト及びSTARとの総合テストの実施支援は,含まれていない。また,後記Drop2部分の基本設計,プログラムの製作納品等は,本件個別契約13の対象外とされた(Drop2部分のプログラム製作納品については,平成24年3月に締結された本件個別契約15の対象となった。後記Drop3部分のプログラム製作納- 43 -品については契約の締結がない。)。本件個別契約13の契約書(甲1の12)の表題は「IBMシステム・インテグレーション契約書」であり,IBMの債務の内容として「野村HDのシステム(本件システムのうちWMカスタマイズ,帳票,ワークフロー機能,外付ツール,外部インターフェース,データ移行ツール)の構築(基本設計・開発・サブシステム内連結テスト)を請け負い,成果物を基本設計書,テスト計画書及び結果報告書並びにプログラム(ソースコード,実行モジュール)とし,成果物最終納入目標日を平成24年3月31日とし,プログラムはIBM ム内連結テスト)を請け負い,成果物を基本設計書,テスト計画書及び結果報告書並びにプログラム(ソースコード,実行モジュール)とし,成果物最終納入目標日を平成24年3月31日とし,プログラムはIBMによるサブシステム内連結テストの野村HDによる確認をもって請負完了とする」と記載され,IBMの受領する報酬として確定金額8億0800万円(消費税別・支払計画及び後の合意による変更後の支払計画は本判決別紙2記載のとおり)と記載されている。また,野村HDとIBMは,設計開発フェーズにおける作業(機械・ハードウェアの購入等)のため,平成23年後半に,IBM所定の契約書を用いて,本件個別契約10から12までを締結した(消費税別代金合計1億2570万円余り)。 IBMは,平成23年8月30日頃,野村証券に対して,新たな説明資料(甲15)を用いて,基本設計の開始からプログラムの完成納品,単体テスト,サブシステム内連結テストまで(サブシステム間連結テスト及びSTARとの総合テストの手前)の作業方針の説明を行った。 IBM提案のスケジュールの概要は,平成25年1月のSTARと同時の稼働開始をビジネス上の目標とし,平成24年4月以降をSTARとの総合テスト期間に当てるが,開発工数の大幅削減の失敗を原因として,プログラムの大半の出荷納品目標時期を,平成24年1月から同年3月に後ろ倒しするものであった(甲15の19頁)。なお,本件開発業務の当初のプログラムの納品目標時期は,平成23年12月末日であった。具体的には,平成23年7月(概要設計最適化フェーズ開始時)に平成24年1月末日に後ろ倒- 44 -しすることが決定されていた納品目標時期の多くを,さらに平成24年3月に後ろ倒しする(ただし,外部インターフェースに対応すべき部分は平成24年1月 開始時)に平成24年1月末日に後ろ倒- 44 -しすることが決定されていた納品目標時期の多くを,さらに平成24年3月に後ろ倒しする(ただし,外部インターフェースに対応すべき部分は平成24年1月出荷納品目標を維持し,逆にSTARとの総合テストに間に合わなくてもよい顧客Web及びNPM(口座数一桁のSMA直投対応)は,同年3月よりも更に遅れる(別途相談)ものとする。)ことが提案された。平成24年3月までのプログラム納品目標分(同年1月納品目標維持分を含む。)がDrop1と呼ばれ,出荷納品目標が同年3月よりも更に遅れる分(別途相談分)がDrop2と呼ばれた。STARとの総合テストが開始される平成24年3月までに,プログラムのうちSTARとの総合テストに必要な部分(Drop1相当分)を,単体テスト及びサブシステム内連結テストを終えて完成納品し,サブシステム間連結テスト及びSTARとの総合テストに遅れずに参加できるようにすることを,ビジネス上の目標とした。また,出荷納品目標を平成24年3月よりも更に後ろ倒しする部分(Drop2・STARとの総合テストに間に合わなくてもよい部分)を新たに作る理由は,Drop1のうち平成24年1月納品目標維持分は,開発期間(5か月以下)が通常(ストーリーボード確定から6か月間)よりも短いため,同年1月納品目標維持分に人材を集中的に投入する必要があるためであった。 ストーリーボードのサインオフが平成23年9月9日までに完了すること(同日以降,テメノス社がスペック(詳細設計書・仕様書)の作成などのプログラム製作作業を開始できること)がスケジュールの前提であり,サインオフ遅延の場合はスケジュールが変更となることや新たな案件の発生,想定を上回る工数増加が生じた場合は別途相談となることが,資料(甲15)に明記 業を開始できること)がスケジュールの前提であり,サインオフ遅延の場合はスケジュールが変更となることや新たな案件の発生,想定を上回る工数増加が生じた場合は別途相談となることが,資料(甲15)に明記されていた。 開発態勢強化のために,ステコミが設置された。ステコミは,毎月(当初予定は隔月)開催の全体責任者(重役級)レベルの重要意思決定会議で,野村証券からは全体責任者(執行役員,経営役)のほか投資顧問部長,IT戦- 45 -略部長,A4次長等が,IBMからは全体責任者(P常務)のほかN(プロジェクト責任者)が出席することとされた。そのほか,毎週開催の課題共有ボードミーティング(当初名称はチームミーティング。チームリーダーが出席)が,野村証券とIBMの間で設置された。また,同年9月6日に,L(既に開発体制図には名がない。)が本件プロジェクトから退くことが,IBMから野村証券に伝達された。野村証券では,頻繁なメンバーの交代に不快感を示す向きもあった(甲75,76)。 ストーリーボードのサインオフ期限が迫る中で,同年9月2日から同月8日まで,投資顧問部の各担当課とIBMとの間で,ストーリーボードレビューの打合せが実施された。野村証券側の作業の遅れも原因となり,積み残しの課題が多数残った(乙159から163まで)。その後の9月中も,野村証券社内の摺り合わせの遅れなどが原因で,積み残しの課題の解消には時間がかかった(乙8,74)。 ストーリーボードのサインオフ期限の日である同年9月9日に開催された野村証券とIBMの打合せにおいて,Fee担が,それまでのIBMに対する自己の担当業務の情報提供の遅れや,それに伴う要件確定の作業の遅延を棚に上げて「欧米ではサインは軽いものではない。どの内容に対してどの紙に署名させようとして て,Fee担が,それまでのIBMに対する自己の担当業務の情報提供の遅れや,それに伴う要件確定の作業の遅延を棚に上げて「欧米ではサインは軽いものではない。どの内容に対してどの紙に署名させようとしているのか。このような状態で署名はできない。今日の今日でこんな話になること自体が非常識である。」と,辛辣な他罰的,攻撃的発言をした。Nは「テメノスの手が空いてしまうので,今日サインオフできるものだけでも進めたい。」「通常,パッケージ系のものは,要件定義書に対して合意をいただくことになっている。依頼をした署名は,法的なものではなく裁判の証拠になるものではない。今回は署名無しにする代わり,ストーリーボードのどのバージョンの何が記述不十分かのリストを確認日と共に作成する」と回答し,この回答に沿って作業が進行した(甲98)。 ⑵ CR(変更要求)とストーリーボードレビュー遅延- 46 -平成23年9月に入っても,遅延の原因(工数増加,レビュー済みのストーリーボードの再変更にまで遡る手戻り)となるCR(変更要求・新たな要件の追加要求)が野村証券からあった。主要な追加要求の1つは,フィー関係であり,マーケットバリュー,フィー計算対象金額など様々な点について,詳細かつ複雑な追加要求があった。カスタマイズが増加すれば開発期間も大幅に増加する旨がPoCの段階で告知されていたことからすると,PoCや「要件定義書」と題する文書策定段階のFit&Gap分析において,Fee担からフィー関係のギャップが大きいため平成25年1月の稼働開始に間に合うのかについての質問がなかったのかが不思議なくらいであった。主要な追加要求のもう1つは,四半期リバランス(平成23年5月頃の概要設計段階で新業務要件として追加されたもの)の結果を契約履歴の欄に登載するというもので 問がなかったのかが不思議なくらいであった。主要な追加要求のもう1つは,四半期リバランス(平成23年5月頃の概要設計段階で新業務要件として追加されたもの)の結果を契約履歴の欄に登載するというものであった(乙185)。 平成23年9月27日には,「9月まとめと10月進め方」と題するIBM作成資料(甲99)をもとに,報告が行われた。報告によれば,ストーリーボード16個中3個がレビュー未了で,レビュー済みの13個の中にも手戻り(その後のCR(変更要求)に伴う書き換え)が生じているストーリーボードが多く存在していた。この段階においても,野村証券から多くのCR(変更要求)が出た。顧客Web上の四半期リバランス履歴掲載(乙185)やSMA法人顧客の期末リバランス抑制などであった。多くのCR(変更要求)が,平成24年3月までのDrop1のプログラムの納品や平成25年1月のSTARと同時の稼働実現に対するリスク要因となるため,CR(変更要求)の管理プロセスの在り方が議論された。IBMからは,今後発生するCR(変更要求)のリリースタイミングを平成25年1月以降とする(現在の要件をもとに平成25年1月に稼働開始する。)という意見も出た(甲99・17頁)。 野村証券からのCR(変更要求)は終わらず,平成23年10月以降も続- 47 -いていった(乙60,75,208,218など参照)。そうした中でデータ移行などの作業は,着々と進められていた(乙146,147)。 野村証券のストーリーボードレビューは遅延した。16個中15個は,いったんは平成23年9月中にレビューを終えたが,その後の野村証券からのCR(変更要求)により,必然的にストーリーボードの書き換えが生じるため,手戻り(書き換え後のストーリーボードの再度のレビュー)が続いた は平成23年9月中にレビューを終えたが,その後の野村証券からのCR(変更要求)により,必然的にストーリーボードの書き換えが生じるため,手戻り(書き換え後のストーリーボードの再度のレビュー)が続いた。 野村証券からのCR(変更要求)が原因で,平成23年10月下旬になっても,テメノス社におけるプログラム作成作業は,7個(顧客Webを含む。)のストーリーボードに関する部分が未着手,3個のストーリーボードに関する部分が最終コメント待ちの状態で作業が中断しており,作業が進行中であるのは6個のストーリーボードに関する部分にとどまっていた(乙60)。 この状態は,ボードミーティングにおいて,野村証券とも情報共有されていた。総合テストに影響のない1個(顧客Web)のストーリーボードは,野村証券側における要件の確定が遅延し,平成23年9月以降の要件の増大もあり,同年12月にようやくレビュー作業が終わった。ストーリーボードのレビュー遅延は,プログラムの製作作業遅延の一因となった(甲100,乙60,75,126,153の1・18)。 野村証券のA4次長は,平成23年10月14日のボードミーティングの頃から,本件プロジェクトに本格的に関与し始めた。A4次長は,同日のボードミーティングに参加して,ストーリーボードレビューの5週間の遅延(乙154の15)を認識したが,それだけでは説明できない遅れ(WMの日本語化作業の完了予定が平成24年秋であるなど)もあり,深刻な遅れの兆候にショックを受けたことを指摘した(甲16)。 平成23年10月20日に,野村証券からフィー計算機能追加のCR(変更要求)があった。そのため,フィー対象金額計算処理機能がWM(カスタマイズ・テメノス社作業担当)からフィー計算システム(外付け・IBM作- 48 -業担当)に移動 らフィー計算機能追加のCR(変更要求)があった。そのため,フィー対象金額計算処理機能がWM(カスタマイズ・テメノス社作業担当)からフィー計算システム(外付け・IBM作- 48 -業担当)に移動した(甲96,乙60,75,218)。結果的に,フィー計算システム(外付け)は計算処理に,WMはデータ送信に,それぞれ特化させることになった。その理由は,野村証券のフィー対象金額計算式が,WMが前提とするグローバルスタンダードの計算式と大きく異なること,WMと外付けのフィー計算システムの役割を明確に分けた方が障害発生時の切り分けなどが容易にできること,システム開発としてもシンプルになることが判明したからである(乙218,証人C57頁,64~65頁)。 また,平成23年11月後半に新たに生じた野村証券からのCR(変更要求)として,「増額時の源泉プールの売買ロジック変更」がある。これは,ストーリーボードサインオフ後に判明し,新たに要求された機能であった。 そのほか,「口座単位の全直投案件取消ファイル作成」も新たに要求されたが,最終的には入力手作業化が選択されて,システム開発の対象外となった(甲175から177まで,乙208)。 平成23年10月20日開催の第3回課題共有ボードミーティング(甲100,105)では,遅延していた3本のストーリーボードのうち,コントラクトメンテナンスサポート(四半期リバランス等が原因で遅延)が条件付きのサインオフに至ったこと,その余の2本(レポート&ビューサポート及び顧客Web)は依然サインオフに至っていないことが報告された。また,野村証券のレビューに従い書き換えるべきストーリーボードについて,テメノス社内で野村証券資料とテメノス社内部資料が混在した状態で作業が行われたため,正しく書き換えられていない とが報告された。また,野村証券のレビューに従い書き換えるべきストーリーボードについて,テメノス社内で野村証券資料とテメノス社内部資料が混在した状態で作業が行われたため,正しく書き換えられていないことが判明し,対応策と再発防止策が講じられた(甲100,105)。 平成23年10月27日開催の第4回課題共有ボードミーティング(乙60の1・2)では,ストーリーボードのうち,レポート&ビューサポートは進捗したが,顧客Webは残作業が多く,画面デザインがWM標準から大幅に変更になる場合には,工数が大幅に増え,スケジュールに大きな影響を与- 49 -える可能性があることも報告された。 平成23年11月4日開催の第5回課題共有ボードミーティング(甲29,乙153の2)では,ストーリーボード2本がサインオフ未了で,同月11日を目標とすることが確認された。Appway(ワークフローの開発)に関して,複数人が同一画面に同時にアクセスできず,投資顧問部の仕事の支障になることが報告された(証人C65~66頁)。また,WM導入チームのIBM側リーダーがOからQに変更され,OはWMコンフィギュレーション担当となることが報告され,野村証券から不安が表明された。 平成23年11月11日開催の第6回課題共有ボードミーティング(甲96)では,同日をサインオフ目標とするストーリーボードのうち顧客Webが間に合わないこと,顧客Webは同月22日をサインオフの期限とすることが確認された。また,同月29日に,テメノス社もテレビ会議等で参加するステアリングコミッティーミーティングを開催することが合意された。 平成23年11月21日開催の第7回課題共有ボードミーティング(甲101,乙154の18)では,新たに前記「増額時の源泉プールの売買ロジ コミッティーミーティングを開催することが合意された。 平成23年11月21日開催の第7回課題共有ボードミーティング(甲101,乙154の18)では,新たに前記「増額時の源泉プールの売買ロジック変更」などのCR(変更要求・乙208参照・ストーリーボードのうちモデル&リバランス)が発生したこと,ストーリーボードのうち顧客Webは,作業優先度が低い(納品目標時期が遅い)ことや,テメノス社が平成24年1月納品目標が維持された部分に注力しているために,遅れていることが報告された。 6 開発・納品の遅れと総合テスト参加まで⑴ 平成23年終盤における納品目標時期のさらなる変更テメノス社は,IBMに対して,プログラムの納品時期について,更に後ろ倒ししたいという申し出をした。これに対して,IBMは,テメノス社に対して,約束した期限の厳守を求めていた(甲16,105)。 平成23年11月29日に,テメノス社も参加して第1回ステコミが開催- 50 -された(甲17,乙139)。本件開発業務の当初の予定では,平成23年末までにプログラム製作と単体テストを終えて納品し,平成24年2月までにサブシステム内連結テスト及びサブシステム間連結テストを終えて,同年3月以降は他のシステムと合同してSTARとの総合テストを開始する予定であったが,主要部分の納品が同年3月(STARとの総合テストに影響しない部分は同年6月)となり,テスト予定も遅れることにより,ビジネス上の目標(平成25年1月稼働開始)が達成できないリスクと対応案が共有された(甲17の9~12頁)。プログラムの納品時期については,Drop1(顧客Web以外であって,サブシステム間連結テストに影響する部分)を同年3月9日に(Drop1のサブシステム内連結テストの完了目標は同 17の9~12頁)。プログラムの納品時期については,Drop1(顧客Web以外であって,サブシステム間連結テストに影響する部分)を同年3月9日に(Drop1のサブシステム内連結テストの完了目標は同月30日),Drop2(主に顧客Web・STARとの総合テストに影響しない部分)を同年6月15日(Drop2のサブシステム内連結テストの完了目標は同月29日)と合意された。更に,テストへの参加の必要性が乏しいもの(管理機能の日本語化など)は,Drop2から分けてDrop3とし,プログラムの納品時期を平成24年9月末(稼働開始目標の3箇月前,甲17の10頁)に延期する旨変更された。なお,Drop3部分のプログラム構築(製作)契約が締結された事実を認めるに足りる証拠はない(甲17,乙139)。 平成23年12月8日開催の課題共有ボードミーティング(乙75)において,野村証券のレビュー未了であった最後のストーリーボード(顧客Web)のレビューが同月5日に一応終了したことが確認された。しかしながら,セキュリティ対応,ヘルプ機能及び未払金等の表示ルールは未確定なままの見切り発車であった(乙75の6頁)。 Drop2部分の契約ワークフロー(ContractWorkflow )については,WM本体ではなくWM標準装備のソフトウェアであるAppwayを用いてIBMが外付け開発することとされていたが,Appwayの機能不足(複- 51 -数人が同一画面に同時にアクセスできない。)が,平成23年11月4日に課題として判明していた(乙75の8頁)。この問題については,年末のステコミで,Appwayを用いずに外付け開発することが合意され,平成24年6月中に完成目標とされた(甲22の4・11頁,甲97の1頁)。 ⑵ 新たなCR(変更要求)の凍結 については,年末のステコミで,Appwayを用いずに外付け開発することが合意され,平成24年6月中に完成目標とされた(甲22の4・11頁,甲97の1頁)。 ⑵ 新たなCR(変更要求)の凍結平成23年12月22日に,テメノス社も電話会議で参加して,第2回ステコミが開催された。テメノス社からは,野村証券のCR(変更要求)が続いていることについて,プログラムの納品やテストのスケジュールに影響が出るという懸念が示された(乙140の2頁)。IBMからは,平成24年1月1日以降を業務仕様追加を凍結する期間とすることも提案された(甲22の15頁)。CR(変更要求)があると,ストーリーボードの変更,スペック(仕様書)の作成,詳細設計,プログラムの製作,テストの作業に手戻りが生じ,タイトなスケジュールを守れなくなる可能性が高くなるからである。野村証券からは,不具合なのか新たなCR(変更要求)なのかの判断が難しいという意見も出た。しかし,「全部不具合であって,新たなCR(変更要求)は一つもない。」という意見は出なかった。その結果,より実務レベルで協議できるボードミーティングで判断することになった(甲175から177まで,乙140)。 平成23年12月28日に開かれた第11回課題共有ボードミーティングで,IBMから野村証券に対して,新たなCR(変更要求)の凍結を要請した(乙258)。その結果,その後1か月余りは,新たなCR(変更要求)は出なかった。しかしながら,後記⑶のとおり,平成24年2月9日頃に,野村証券からフィー関係で新たな機能追加を求めるCR(変更要求)があり,凍結要請は破られた(平成24年2月2日開催の第15回課題共有ボードミーティングまでの会議資料には,新たな変更要求は記載されていない。甲97,106,乙153の4 加を求めるCR(変更要求)があり,凍結要請は破られた(平成24年2月2日開催の第15回課題共有ボードミーティングまでの会議資料には,新たな変更要求は記載されていない。甲97,106,乙153の4から8まで参照)。フィー関係については,もと- 52 -もと,平成23年9月から11月までの段階で既に複雑な条件が細部に付された詳細なCR(変更要求)が出されており,その対応に伴う要件確定の遅れが原因で,プログラム作成作業が遅れていた。 平成24年1月26日に,一部の者は電話会議により参加して,第3回ステコミが開催された。Drop1のうちフィー関係が,要件確定が遅れたため遅延しており,新たなDrop1の納品目標時期(平成23年12月末日から平成24年3月9日に後ろ倒しされていた。)にすら間に合わない可能性が指摘された(甲23,107)。 同年2月9日開催の第16回課題共有ボードミーティングでは,Drop1の納品目標について,同年3月9日から更に5週間遅れの4月第2週納品目標という案も示されていた(甲108,乙153の9)。同年2月9日開催の臨時ステコミ(甲24)では,WM開発の中心人物であるRがテメノス社を退社すること,同年6月のDrop2納品まではRの労力の50%を本件システム開発のために費やすことが確認された。 ⑶ 平成24年2月の新たなCR(変更要求)投資顧問部のFee担は,前記臨時ステコミ及びボードミーティング(平成24年2月9日)の直前頃に,フィー関係の新機能追加を内容とするCR(変更要求・成功報酬算出のための基準価額を手動で再計算する機能)を求めた(甲30,108,乙153の9から16まで,259,260,261)。ストーリーボードの変更にまで遡るという手戻りが発生するもので,大幅な遅延の原因 ための基準価額を手動で再計算する機能)を求めた(甲30,108,乙153の9から16まで,259,260,261)。ストーリーボードの変更にまで遡るという手戻りが発生するもので,大幅な遅延の原因となり,平成25年1月の稼働開始のリスクとなることは必至であった。Fee担からのCR(変更要求)に対応するために,テメノス社の担当者がカナダから異例の来日をして,平成24年2月20日前後に2日間の集中討議を実行した。このCR(変更要求)に伴う新たなストーリーボードのレビューを終えて,プログラム製作の設計図の確定をするのに,平成24年3月23日までの期間を要した(甲25,乙153の16の7- 53 -頁)。設計図が確定した平成24年3月23日というのは,Drop1のプログラム納品目標の変更後の日である同年3月9日や,Drop1のプログラム(フィー以外の部分)の実際のIBMへの納品日である3月16日よりも,更に後の日であった。このCR(変更要求)が,Drop1のフィー部分の納品目標の4月への後ろ倒しという新たな遅延の原因となるとともに,プログラム製作に十分な作業時間が確保できない主要な原因の一つとなった。 その後も,CR(変更要求)は,平成24年8月下旬のSTARとの全体統合テストの中止(本件システムの平成25年1月の稼働開始の断念)の決定があるまで五月雨式に続き,開発作業の遅延の原因となった(乙50,51,104,153の17から31まで,242)。 なお,野村HDらは,平成24年2月の新たなCR(変更要求)の発生原因がIBM又はテメノス社にある(①ストーリーボードからスペックに落とす際のズレ,②ストーリーボードの書換え)かの主張をする。しかしながら,Fee担は,概要設計時に要件を全部伝えきれていない可能性を自認しているのであって, ある(①ストーリーボードからスペックに落とす際のズレ,②ストーリーボードの書換え)かの主張をする。しかしながら,Fee担は,概要設計時に要件を全部伝えきれていない可能性を自認しているのであって,野村証券からの要件の伝達漏れである蓋然性が非常に高く,野村HDらの主張を採用するには無理があるというほかはない。 ⑷ 納品目標時期のさらなる延期とDrop1.0の納品平成24年2月16日開催の第17回課題共有ボードミーティング(甲25,30)で,Drop1(サブシステム間連結テスト・STARとの総合テストに影響する部分)の一部(フィー関係を中心とする部分)の納品目標を同年3月9日から同年4月15日に再延期する旨の提案がテメノス社からあった。前記⑶のとおり,同年2月上旬(ミーティングの約1週間前)に,Fee担から新機能(成功報酬算出のための基準価額を手動で再計算する機能)の追加を求めるCR(変更要求)があり,ストーリーボードの修正にまで遡る大幅な手戻りが必至となったからであった。A4次長は,Drop1のうちフィー関係部分の納品目標を4月に後ろ倒しすることは容認せざるを- 54 -得なかったが,全体スケジュールへの影響が提示されないと同年3月9日納品目標分(Drop1のうちフィー関係以外の部分)だけで次のテストフェーズに入ってよいのか判断できないとの意見を述べ,この日は結論が保留された。この間,同年2月20日頃にカナダから来日したテメノス社担当者と野村証券担当者との集中討議が実施され,同月23日開催の第4回ステコミ(乙141,261)では,Drop1のうちフィー関係を中心とする部分の納品目標を同年4月15日に再延期することが承認された。その理由は,平成24年2月に入ってからの前記のCR(変更要求)などに起因するスペック及びプロ は,Drop1のうちフィー関係を中心とする部分の納品目標を同年4月15日に再延期することが承認された。その理由は,平成24年2月に入ってからの前記のCR(変更要求)などに起因するスペック及びプログラム作成作業の手戻りが原因で遅延が発生し,プログラム納品が3月9日に間に合わないことである。3月9日納品分(Drop1.0と称する。)は,Models&Rebalancing, OrderManagement, ContractMaintenanceであり,4月15日納品分(Drop1.1と称する。)は,フィー, NPM, CorporateAction, AverageCostとされた。 この頃,A4次長は,開発作業の遅れに危機感を抱き,IBMに対し,設計の不安要素を業務・システムの両面から除去するためプロジェクト内の状況可視化を進めるべきこと,延期の原因は投資顧問部にあるもののDrop1のうちフィー関係部分の納品目標が延期されたことによるマスタースケジュールやテスト計画の再構成の必要性,テスト推進強化などを内容とする改善措置の申し出をした(甲27,31,乙11)。 分割納品予定に変更されたDrop1(サブシステム間連結テスト・STARとの総合テストに影響する部分)のうち第1陣であるDrop1.0(Models&Rebalancing, OrderManagement, ContractMaintenance)は,目標(3月9日)より遅れて平成24年3月16日にIBMに納品された。しかし,テメノス社において製作作業期間が十分に取れなかったことなどから,IBMの受入テス- 55 -トに合格せず,同年4月5日に再納品することになった(甲26)。 平成24年3月22日に,テメノス社の大半は電話会議により参加して,第 れなかったことなどから,IBMの受入テス- 55 -トに合格せず,同年4月5日に再納品することになった(甲26)。 平成24年3月22日に,テメノス社の大半は電話会議により参加して,第5回ステコミが開催された(乙142,209)。この時点では,同年2月のフィー関係のCR(変更要求)について,CR(変更要求)後の新しいストーリーボードのレビューが終了していなかった(翌日の同年3月23日頃に終了。乙214,231)。ステコミでは,主に,Fee担のCR(変更要求)によりDrop1が分割納品になったことや全体の開発スケジュールが遅れていることによる,テストの品質や進捗への影響が議論された。 ⑸ 本件個別契約15の締結平成24年3月2日には,Drop2部分の全部及びDrop1のうち本件個別契約13の締結以降に新たに追加された機能の部分の開発・プログラム製作のための本件個別契約15が,IBM所定の契約書を用いて締結された(甲1の14,乙117)。Drop2部分は,STARとの総合テストに間に合わなくてもよいとされる顧客Webなどを中心とする部分である。 対価は,6150万円(消費税別)とされた。プログラムの一部(追加機能を付加するCR(変更要求)があったDrop1対応分)を平成24年6月末までにSTARとの総合テストに参加できる状態にまで完成させること,Drop2部分(STARとの総合テストに間に合わなくてもよいとされる顧客Webなどの部分)も同じ頃までに完成させることを,ビジネス上の目標とした。本件個別契約15の契約書(甲1の14)の表題は「IBMシステム・インテグレーション契約書」であり,IBMの債務の内容として「野村HDのシステム(本件システムのうちWM顧客Web及びWMコア追加機能)の構築(基本設計・開発・サブシス )の表題は「IBMシステム・インテグレーション契約書」であり,IBMの債務の内容として「野村HDのシステム(本件システムのうちWM顧客Web及びWMコア追加機能)の構築(基本設計・開発・サブシステム内連結テスト)を請け負い,成果物をテスト計画書及び結果報告書とし,成果物最終納入予定日を平成24年6月30日とし,納入をもって請負完了とする」と記載され,IBMの受領する報酬として確定金額6150万円(消費税別・支払計画及び合意によ- 56 -る変更後の支払計画は本判決別紙3記載のとおり)と記載されている。 ⑹ 本件個別契約14の締結Drop1の納品が見込まれ,サブシステム間連結テストやSTARとの総合テストの開始が目前となったので,平成24年3月26日には,テスト(サブシステム間連結テストITb,総合テスト,ユーザ受入テスト),データ移行の実施・支援のための本件個別契約14が,IBM所定の契約書を用いて締結された(甲1の13,32,乙10)。代金合計は6億9500万円(消費税別)とされた。平成24年4月以降可能なものから順次,所要のテストやデータ移行を実施して,平成25年1月に本件システムをSTARや他のフロントITシステムと同時に稼働開始することを,ビジネス上の目標とするものであった。本件個別契約14の契約書(甲1の13)の表題は「IBM支援サービス契約書」であり,IBMの債務の内容として「情報システム開発(野村HDの責任において完成)に関する支援サービスとして,運用準備支援,テスト準備支援,テスト実施支援,データ移行準備及び実施の支援等を行い,『240.6人月の提供終了』又はサービス期間の終了(平成25年1月4日)のいずれか早い日にサービスの提供を終了する準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)」と記 び実施の支援等を行い,『240.6人月の提供終了』又はサービス期間の終了(平成25年1月4日)のいずれか早い日にサービスの提供を終了する準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)」と記載され,IBMの受領する報酬として確定料金6億9500万円(消費税別・支払計画は本判決事実欄第5の1⑴ウに記載のとおり)と記載されている。 ⑺ Drop1.1の納品の遅れDrop1のうち,Fee担のCR(変更要求)の影響を受けて納品目標を後ろ倒ししたDrop1.1(フィー, NPM, CorporateAction, AverageCost)は,後ろ倒しした納品目標(平成24年4月15日)よりも更に遅延が発生した。当初は,納品目標が平成24年4月30日に延期の見込みとされ(甲26),その後一部( フィー関係) は同月20日又は26日に,残部の最終納品は同年5月11日に延期する見込- 57 -みとされた(甲26,33)。実際には,5月11日の納品直前にショーストッパーが見つかり,問題点の解消に追われた。 野村証券のA4次長は,平成24年4月頃の段階で,現行システムを開発した野村総研が本件システム開発は「もうダメ」と盛んに触れ回っていること,本件システム開発が頓挫した場合に他のIBMと野村証券との契約も継続困難となり,野村証券のマルチベンダー化方針(脱野村総研)が大きなダメージを受けることを憂慮していた。A4次長は,テスト実施計画案(甲31)を作成してIBMに渡したのに,活用されておらず,実効性ある計画がないこと,Drop1の納品延期に伴う本件システム開発の新たなマスタースケジュールが策定されていないことなど,ビジネス上の目標時期(平成25年1月)までに本件システム開発を完了して稼働させることに危機感を抱いていた(甲 納品延期に伴う本件システム開発の新たなマスタースケジュールが策定されていないことなど,ビジネス上の目標時期(平成25年1月)までに本件システム開発を完了して稼働させることに危機感を抱いていた(甲35)。しかし,A4は,自らのこのような懸念を,IBMの担当者ら(Dら)には伝えていなかった。 IBMは,平成24年4月17日,プロジェクトの一時停止又はテストの一時停止(平成25年1月の稼働開始に間に合わないリスクが高まることになるもの)も選択肢に入れた全体スケジュールの見直し案(甲33)を,野村証券側に提出したこともあった。A4次長は,この段階では,IBMの希望案(プロジェクト継続・全体スケジュール1か月遅延を了承)を受け入れた。 平成24年5月9日に第6回ステコミが開催された(甲34,乙210)。 同月11日にIBMに納品目標のDrop1.1について,納品前にIBMが実施したテストで3件のショーストッパー(showstopper) が発見され,納品基準を満たさず納品できなくなったことが報告された。また,Drop2の納品見込時期を平成24年6月15日から,一部(Drop1の追加機能部分( 顧客Web以外) でSTARとの総合テストに間に合わせる必要があるもの)は同月29日に,残部( 顧客Web) は同年7月27日に,延期か- 58 -つ分割納品する旨の提案が,IBM側からあった。協議の結果,第6回ステコミにおける決定内容は,Drop1.1は,同年5月11日に一応の納品があったことにはするが(甲42・3頁),ショーストッパーの内容と対応及び影響分析の報告等を速やかに行うこと,Drop2.1 (Drop1の追加機能部分)の納品を同年6月29日よりも前倒しすること(6月29日納品では同年7月からのSTARとの全体総合テスト実 と対応及び影響分析の報告等を速やかに行うこと,Drop2.1 (Drop1の追加機能部分)の納品を同年6月29日よりも前倒しすること(6月29日納品では同年7月からのSTARとの全体総合テスト実施に影響するため),納品スケジュールを反映した本件プロジェクト全体スケジュールの見直しを行うこととされた。 IBMは,平成24年5月25日,プロジェクトプラン見直しの説明資料を野村証券に提出した。平成25年1月の稼働開始と,そのために平成24年7月にSTARとの全体総合テストに参加することをビジネス上の目標とし,開発・テスト要員の増強(テスト支援契約である本件個別契約13から15までの見直し及び報酬増額が必要),テメノス社からWMの設計仕様の公開を受けること(パッケージベースの開発では「異例の対応」であった。)などが提案されている(甲36,79)。 ⑻ Drop2.1の納品Drop2.1(Drop1の追加機能部分でSTARとの総合テストに間に合わせる必要があるもの)の納品は平成24年6月29日に延期されずに,目標の同月15日に納品された(甲38,39)。なお,Drop2. 2は,後記のとおり,同年7月27日に出荷基準を満たして納品された。 この間の平成24年6月15日には,野村証券内部で,SMAFWシステムが平成25年1月にIBMと共同開発中の本件システムへの切替ができない場合を想定したコンティンジェンシープランに係る要件定義書(甲82・野村総研作成の現行SMAシステム(CUSTOMと接続中)をSTAR移行後導入される関連システムと接続することを基本的な内容とするもの)が作成された。本件システム開発が,平成25年1月のSTARの稼働開始に- 59 -間に合わないリスクが,稼働開始予定の半年前の時点で,無視で る関連システムと接続することを基本的な内容とするもの)が作成された。本件システム開発が,平成25年1月のSTARの稼働開始に- 59 -間に合わないリスクが,稼働開始予定の半年前の時点で,無視できない大きさになっていたことがうかがわれる。 平成24年6月19日に,一部の者は電話会議により参加して,第7回ステコミが開催された(甲37,乙143)。未解決のショーストッパーが,まだ3件残っているなど,STARとの全体総合テストへの参加に障害があることが報告された。A4次長から,Drop2.1が出荷基準( バグの残存状況) を満たして出荷したのか疑問があることが指摘された( 甲39,乙143)。第7回ステコミにおいては,ショーストッパーであるかどうかにかかわらずTPRの解消に努め,平成25年1月稼働開始というビジネス上の目標実現のために,総合テストへの参加実現を早期に目指すことが確認された。 平成24年6月28日に臨時ステコミが開催された。その際のTPR関係のNの説明にIBMの責任を緩和するかの時系列の偽りがあるとA4次長が不信感を抱いた。その結果,Nが更迭され,B及びDがNの後任となった(甲78,114)。 ⑼ 総合テストへのプレ参加と正式参加リテールITプロジェクト全体では,新たに導入されるSTARも含めた全体総合テストが,平成24年7月には既に開始されていた。本件システムには未解決の大きな問題が多数あったため,本件システムが全体として正式に全体総合テストに参加することはできない状態にあった。しかしながら,本件システムの一部に限定すれば参加に支障がないため,平成24年7月2日から,本件システムの一部が全体総合テストにプレ参加していた。プレ参加部分においても,ショーストッパーやTPRの発生はあったが, 本件システムの一部に限定すれば参加に支障がないため,平成24年7月2日から,本件システムの一部が全体総合テストにプレ参加していた。プレ参加部分においても,ショーストッパーやTPRの発生はあったが,比較的簡単に修正できるものばかりで,プレ参加自体は,継続することができていた(乙240・13頁,甲63,174)。 また,平成24年7月中は,プレ参加以外の部分においても,WMのDr- 60 -op1等のショーストッパーの解消の目途が立つなど,課題である大きな問題点の解消がある程度まで進み,Drop2.2(顧客Web)も,延期された期限である同月27日に出荷基準を満たして納品された(乙101,102,240)。 平成24年7月26日に,第8回ステコミが開催され,このまま順調にいけば,同年8月6日に,STARとの全体総合テストへの本件システム全体の正式な参加が実現できる見込みであることが確認された(乙101,240)。同年8月6日には,大きな懸案であった問題点(運用開始前日MV案件作成)も,全体総合テストへの参加に差支えない程度にまで解決された(乙103)。 平成24年8月9日に第9回ステコミが開催された(乙15,16)。納入目標が経過したWMのプログラムの全部(未だ契約が締結されていないDrop3を除く。)が納品基準を満たして納品されたことが確認され,同年6月15日時点で判明していた主要な問題点(ショーストッパー)がおおむね解消されたことなどから,本件システムの総合テストへの参加が承認された。A4次長からは,IBM及びテメノス社の連携が改善したとの発言があった。IBM及びテメノス社側の出席者からは,総合テストで出る今後の問題への対応が重要であり両社連携して即時対応する体制を維持していくとの決意表明がされた。 テメノス社の連携が改善したとの発言があった。IBM及びテメノス社側の出席者からは,総合テストで出る今後の問題への対応が重要であり両社連携して即時対応する体制を維持していくとの決意表明がされた。 7 総合テスト参加から開発中止・契約解除の意思表示まで⑴ IBMによる平成25年1月稼働開始についてのリスク報告平成24年8月のSTARとの総合テストへの正式参加後,同月中に順次実施されたテストの結果は,予想よりも悪く,多数のTPRその他の不具合が出た(甲63,141)。リテールITプロジェクトの中で,本件システムと他社開発のサブシステムのテスト進捗状況を比較すると,本件システムは,テスト進捗率が低いにもかかわらず,障害発生率が何倍も高いという状- 61 -態にあった(甲83)。本件システムにおいて新たに判明したTPRには,短期間に解決困難なものもあり,トラブルの収束は容易でないとみられた。 野村証券のA8(野村総研出身者で,STAR導入・フロントITプロジェクト全体のプロジェクトマネージャー)及びA9(野村総研出身者で,STAR導入・フロントITプロジェクト全体の全体統括役)は,平成24年8月20日頃,IBMに対して,平成25年1月4日の稼働開始が問題なく可能であるかどうかについて,現状報告を求めた。これを受けて,IBMは,社内で検討を行った。その検討結果は,平成24年8月23日時点で,本件システムのWM本体のTPRの障害収束完了時期が同年10月16日と予測され,平成25年1月稼働開始のために達成すべき平成24年9月末及び10月末の各マイルストーン(中間目標)を達成できないリスクが下記のとおり大きく,その結果,テスト終了後の移行リハーサル等に必要な期間が十分に確保できないことも考慮すると,平成25年1月の稼働開 び10月末の各マイルストーン(中間目標)を達成できないリスクが下記のとおり大きく,その結果,テスト終了後の移行リハーサル等に必要な期間が十分に確保できないことも考慮すると,平成25年1月の稼働開始について,スケジュール及び品質の点にリスクがあるというものであった(甲42)。 ① 平成24年9月末目標 WM受入完了(TPRクローズ含む)8月23日時点での評価 TPRクローズ予定が10月16日② 平成24年10月末目標全体総合テスト完了障害残High5未満,Middle10未満,Low20未満8月23日時点での評価 10月末時点で全体総合テスト未了テスト残数見込が249ケース(872ケース中623ケースしか完了しない見込)IBMのP常務は,翌日の平成24年8月24日(金曜日)に,前記検討に基づき平成25年1月の稼働開始にはスケジュール及び品質の点にリスクがあると判断したこと及び本件システム開発自体は断念せずビジネス上の目- 62 -標に遅れても継続したい旨を,野村証券のA8及びA9に伝えた。野村証券のA8及びA9は,IBMのP常務に対し,本件システム開発が実行不可能になったこと及び開発自体を断念することを明言するように,強く示唆した。 しかしながら,P常務は,この野村証券のA8及びA9からの強い示唆に応じることを拒否した。野村証券は,IBMが平成25年1月の稼働開始を断念したものと受け取った(甲43)。 平成24年8月24日(金曜日)の深夜のIBM社内メール(乙17)には,野村証券社内には,一方ではA1経営役がIBMによる本件システム開発を続けたがっていることを示唆してIBMによる代替プランの検討を提案する者がおり,他方ではSMAFWの現行システ ル(乙17)には,野村証券社内には,一方ではA1経営役がIBMによる本件システム開発を続けたがっていることを示唆してIBMによる代替プランの検討を提案する者がおり,他方ではSMAFWの現行システム(CUSTOMと接続中)を製作運用管理してきた野村総研の味方をする利害関係者たちもいること,野村総研の側に立つ者らの影響力が大きいことを指摘して,用心を勧める記載がある。野村総研が担当してきたSMAFWのシステムをIBMにパッケージベースで新たに開発させることについて,個々の経営陣や部署ごとに思惑が異なり,野村証券社内が一枚岩ではないことをうかがわせる。 他方で,平成24年8月24日から同月27日までの間に,「投信の時価評価額の小数点以下の取扱」について,投資顧問部のFee担からIBM担当者に「小数点未満四捨五入で確定した」という連絡があり,これを受けてIBM担当者がIT戦略部もこの結論でよいのか確認の趣旨のメールをIT戦略部に送ったところ,A4次長が,投資顧問部からIT戦略部に回答すべきであり話の流れがおかしいと指摘する一幕もあった(乙104)。 ⑵ 野村証券による平成25年1月稼働開始断念と総合テスト中止IBMからの平成24年8月24日(金)のリスク報告を受けて,野村証券は,同月27日(月),本件システムについては,平成25年1月の稼働開始を断念し,STARとの総合テストも一時中止すること,CUSTOMと接続して稼働中の野村総研が開発した現行システムを平成25年1月以降- 63 -暫定的にSTARと接続し直して運用することとし,そのための作業を野村総研に委託することを決定した(甲111)。この決定は,本件システム開発遅延対応を目的として平成24年6月に作成されていたコンティンジェンシープラン(甲82参照・一般 こととし,そのための作業を野村総研に委託することを決定した(甲111)。この決定は,本件システム開発遅延対応を目的として平成24年6月に作成されていたコンティンジェンシープラン(甲82参照・一般にはシステム障害発生時の金融サービスの顧客への深刻な影響や信用不安の発生防止を目的とする代替策を意味する。)によるものであった(甲111)。この決定は,直ちにIBMに通知された。 その際,A1経営役は,IBMのDに対して,本件システム開発の見直しプランの作成を指示した。本件システムの開発に関しては,システム完成をIBMの債務とする約定や,稼働開始の履行期限を定めた約定は存在しなかった。平成25年1月稼働開始というのは,ビジネス上の目標であって,これに遅れることは,ビジネス上の不名誉ではあっても,履行遅滞責任やこれに伴う法定の又は約定に基づく解除原因を構成するものではなかった。そこで,今後,どのようなスケジュールで本件システムの開発を継続するのか(又は断念するのか)が,当面の解決すべき課題となった。 ⑶ 遅延問題検討会と課題の送付IBMは,平成24年8月27日にコンティンジェンシープラン発動の通知を受けた際に,A1経営役からIBMのDに見直しプランの作成指示があったことを受けて,同月29日(水),ビジネス上の目標である稼働開始時期の延期を前提とする複数の再スケジュール表(平成25年のゴールデンウィーク前後に稼働開始することを前提に,そのスケジュール感を記載したもの)を作成し,投資顧問部担当者に送付した。しかし,短期間の検討による練度の低いプランで,問題点の分析検討にも乏しく,野村証券のA1経営役には受け入れられなかった(乙19,241,242,244)。 平成24年9月3日(月)及び同月6日(木)の2回,野村証券とIBM いプランで,問題点の分析検討にも乏しく,野村証券のA1経営役には受け入れられなかった(乙19,241,242,244)。 平成24年9月3日(月)及び同月6日(木)の2回,野村証券とIBMの担当者による遅延問題検討会が開催された。 IBMは,リカバリープランとして,A4版本文別表合わせて5枚の資料- 64 -(甲45・それまでの野村証券からの指摘も踏まえて,遅延の原因分析と対策を記載したもの)を作成して野村証券に提出した。当該資料には,原因(野村証券の業務やWM機能の理解不足,要件確定不十分,チームとして機能せず等)と対策案(要員増強,管理強化,テスト品質向上,テメノス社社員常駐等)が一通り羅列されており,9月3日(月)の遅延問題検討会では,当該資料をもとに討議が行われた。討議においては,野村証券側から,責任の所在不明確,提出資料に全体レビューを施した形跡がない,プロジェクト管理やコミュニケーションがまずい,業務スキルを備えた人材の不足,パッケージ適用かカスタム開発かが不明確,IBM内での情報共有及びテメノス社との連携も不十分で稼働後の保守も心配などの指摘があった(甲46,乙243)。9月6日(木)の遅延問題検討会でも,同様であった。9月6日の遅延問題検討会の結果を受けて,IBMは,翌7日,より本格的な見直しプランを作成することを前提に,その「中間報告」を記載した資料(甲47)を作成して,野村証券に提出した。中間報告(甲47)は,後に提出予定の見直しプラン(甲51)の9月7日時点における項目,骨子及び一部(問題分析)の要旨を記載したものであった。 ⑷ 課題23項目とその位置づけA4次長は,その頃,本件システム開発に携わった野村証券の現場社員からのヒアリングを続けており,ヒアリングをもとに対策を確認 旨を記載したものであった。 ⑷ 課題23項目とその位置づけA4次長は,その頃,本件システム開発に携わった野村証券の現場社員からのヒアリングを続けており,ヒアリングをもとに対策を確認したいプロジェクト課題23項目(甲48,その内容は原判決別紙9の1記載のとおり)の一覧を作成して,平成24年9月7日(金)の夕方にD宛にメール送信して,課題23項目に対する対策の確認を求めた(甲48,68)。しかし,見直しプランの作成とは別に,課題23項目のフォーマットの空欄(原判決別紙9の1参照)に項目ごとの回答を記載することは,明示的にも黙示的にも求められていなかった。課題23項目は,社員ごとのヒアリング内容をそのまま課題内容の各項目として羅列したもの(いわゆるホチキス留めをした- 65 -だけのもの)のように見え,全体レビューを施して整理した形跡がみえない。 したがって,通常のビジネスマンから見ると,課題23項目(原判決別紙9の1)を渡されただけでは,これが組織としての野村証券からのIBMに対する正式の回答要求であって,かつ,フォーマットの空欄への回答記載を最優先の対応事項として要求されたものにはみえなかった。A4次長は,その後も,野村証券の「SMAFWのチームメンバーから気になる事項を収集」したとして,同月11日(火)の午後にD宛に追加の確認懸念事項(内容は証拠上不明)を添付ファイルにしてメール送信した(甲69)。Dはこれらに対する中間報告(内容は証拠上不明)を同月13日(木)に行ったが,これに満足できなかったA4次長は同日の午後にD宛に中間報告の内容に対するコメント(内容は証拠上不明)を添付ファイルにしてメール送信した(甲70,71)。 ⑸ IBMによる見直しプランの送付と野村証券の評価IBMは,平成24年9月1 間報告の内容に対するコメント(内容は証拠上不明)を添付ファイルにしてメール送信した(甲70,71)。 ⑸ IBMによる見直しプランの送付と野村証券の評価IBMは,平成24年9月18日,リカバリープランとして,見直しプランを記載した資料(甲51)を作成し,野村証券に提出した。見直しプラン(甲51)は全55頁のパワーポイント資料で,その記述スタイルは,A4次長から送付されたプロジェクト課題23項目(原判決別紙9の1)のフォーマットの空欄を利用したり,課題23項目の各項目に対応する形式ではなかった。しかしながら,IBMとしては,実質的には課題23項目に対する対応も盛り込んだつもりでいた。見直しプラン(甲51)は,課題の原因分析と対策,残作業の数値化とスケジュール等への反映,稼働開始に当たってのデータ移行や稼働後の保守体制を含むもので,チーム管理強化など一通りの対策が記述されていた。IBMは,同月28日には,データ移行やリバランスの発生などを考慮した新たな稼働開始日の決定等に関する資料(甲163,乙138)を作成して,野村証券に提出した。この資料も,プロジェクト課題23項目(原判決別紙9の1)には,対応していなかった。野村証券- 66 -は,IBM作成のこれらの資料に対して,課題23項目のフォーマットを利用して項目ごとに回答したものを提出するように指示したことはなかった。 A4次長は,平成24年9月28日,本件開発業務のIBMのプロジェクト総括に新たに就任する予定のS(見直しプランによればプロジェクト遂行責任者としてP常務と同格の地位に就く予定。甲51の35~38頁参照)に対して,同月7日にIBM担当者に送付したプロジェクト課題23項目及びこれに対するIBMの検討が進んでいない状況を示した資料(原判決別紙9の2 務と同格の地位に就く予定。甲51の35~38頁参照)に対して,同月7日にIBM担当者に送付したプロジェクト課題23項目及びこれに対するIBMの検討が進んでいない状況を示した資料(原判決別紙9の2)をメールで送付した。なお,新参のS以外のIBMの担当者には送付されていないし,Sに対しても課題23項目(甲48)のフォーマットの空欄に項目別に回答を記入することが野村証券からの組織としての必須の要求であるとは述べていない(甲72,155)。 IBMは,平成24年10月4日,リカバリープランとして,新見直しプランを記載した資料(甲49,80)を作成して,野村証券に提出した。新見直しプラン(甲49,80)は,旧見直しプラン(同年9月18日付け・甲51)に磨きをかけたパワーポイント資料で,要員を増強し,プロジェクト管理やテスト管理を強化し,WMの仕様開示の範囲について標準仕様から野村証券向けカスタマイズ仕様にまでさらに異例の拡大を行い,稼働後の保守体制プランを充実させる内容を含むものであった。ただし,A4次長から送付されたプロジェクト課題23項目(原判決別紙9の1)の各課題項目への対策を記述するスタイルではなかった。その後の同年10月8日,IBMのP常務は,野村証券のA1経営役にメールを送信し,新たに本件プロジェクトに参画して内容を精査したS及びIBMの品質管理責任者から新見直しプランを説明する機会の設定を求めた(乙20)。 野村証券は,新見直しプラン(甲49,80)について,平成24年9月7日に送付したプロジェクト課題23項目に新たな課題3項目(リリース迄のコスト,リリース後のコスト,IBMとテメノス社との具体的な管理・障- 67 -害対応体制)を加えた課題26項目に対応できているかどうかという観点から評価を加え,ほとんど 課題3項目(リリース迄のコスト,リリース後のコスト,IBMとテメノス社との具体的な管理・障- 67 -害対応体制)を加えた課題26項目に対応できているかどうかという観点から評価を加え,ほとんどの項目で対応ができていないか不十分であるという社内評価をした(甲50・原判決別紙9の3参照)。しかしながら,この社内評価の結果をIBMに伝えたことを認めるに足りる証拠はなく,社内評価を実施した時期を的確に認めるに足りる証拠もない。なお,26項目が記載された資料は,プロジェクト課題23項目に記載がある項目については,項目相互間の記載順序が大幅に入れ替わっており,元々の課題23項目が,野村証券内の全体レビューを経ずにいわゆるホチキス留めをしただけでIBMに送付されたものであることがうかがわれる。課題23項目が記載された資料(甲48)がIBMに送付された事実は証明されているが,課題26項目が記載された資料がIBMに送付された事実を認めるに足りる証拠はない。 IBMは,平成24年10月15日,リカバリープランとして,見直しプランの最終報告を記載したパワーポイント資料(甲52)を作成して,野村証券に提出した。最終報告(甲52)は,新見直しプラン(甲49,80・同月4日付け)でシステム化範囲に含まれていなかった直投等をシステム化範囲に含めるなどの変更を加えたものであった。また,開発費用として,野村HDに対して6億円以上の追加費用負担を求めるものであった。野村証券は,最終報告(甲52・同月15日付け)について,課題26項目(IBMに送付された事実の証明はない。)に対応できているかどうかという観点から社内評価を加え,新見直しプラン(甲49,80)からほとんど改善がないという社内評価をした(甲53・原判決別紙9の4参照)。しかしながら,この社内評価 ない。)に対応できているかどうかという観点から社内評価を加え,新見直しプラン(甲49,80)からほとんど改善がないという社内評価をした(甲53・原判決別紙9の4参照)。しかしながら,この社内評価をIBMに伝達したことを認めるに足りる証拠はなく,社内評価を実施した時期を的確に認めるに足りる証拠もない。さらに,この社内評価が,本件開発プロジェクトが履行不能であることを基礎付けるような評価であるといえることを認めるに足りる証拠もない。 ⑹ IBM及びテメノス社における本件開発業務の一部の遂行- 68 -IBM及びテメノス社は,平成24年8月27日の野村証券によるコンティンジェンシープランの発動及び本件システムの総合テスト参加中止決定後も,本件個別契約14に基づき,テスト以外の本件システム開発業務を継続して実行していた。具体的には,既に発生していたプログラムの不具合(TPR)の解消(総合テストに参加できないため,解消の確認のためのテストはサブシステム内連結テストまでしかできない。),ウォークスルー,見直しプランを前提とした作業計画の整備など,総合テスト以外の開発業務を実行していた(乙154の40・41)。 ⑺ 本件開発業務中止通告及び契約の解除通知野村証券担当者は,平成24年11月2日の会議において,IBM担当者に対し,口頭で,本件開発業務を中止することを通告した。中止の理由は,稼働開始の前後における現行システムから本件システムへのデータ移行及び稼働後の本件システムの運用保守についてのリスクであるとされた。課題23項目や課題26項目に記載のその余の事項や,野村証券のフォーマットを用いた項目ごとの回答がないことは,中止の理由とはされなかった。 その後,野村証券とIBMの最高幹部間や役員間において交渉が行われた 題26項目に記載のその余の事項や,野村証券のフォーマットを用いた項目ごとの回答がないことは,中止の理由とはされなかった。 その後,野村証券とIBMの最高幹部間や役員間において交渉が行われたが,野村証券の開発業務中止の意思は変わらないまま推移した。 IBMのP常務は,平成24年12月10日付け書簡(乙22)を野村証券のA1経営役に送付し,IBMとしては本件開発業務を続行したいこと,野村証券の決定内容(IBMの最終見直しプランに懸念があり,本件開発業務を取りやめる。)は,IBMにとっては受け入れられないこと,野村証券の決定内容が変わらない場合にはIBMとしては契約や法令に従って対応するほかないことを伝えた。 野村証券は,STARを用いたバックオフィス業務の新基幹システム及び本件システムを除くリテールITプロジェクトの各システムについて,総合テストを終えて,予定通り平成25年1月4日に稼働を開始した(甲173,- 69 -弁論の全趣旨)。 IBMのP常務は,平成25年1月15日頃,口頭で,野村証券のA1経営役に対し,平成24年12月10日付け書簡(乙22)がIBMの最終決定であり,それ以外の再提案はしない旨を述べた(甲54,乙22)。 平成25年1月29日,野村証券は,IBMに対して,本件開発業務に関する一切の契約を解除する旨の文書による通知を行った。この解除通知は,双方において,野村証券が野村HDを代理して意思表示したものと認識された(甲54)。 第2 本訴事件についての当裁判所の判断 1 本件システムの完成義務について⑴ 前記認定事実によれば,本件各個別契約においては,本件システムを完成して稼働させることや,その履行期限を平成25年1月4日とすることは,IBMの債務の内容として合意されていなか 成義務について⑴ 前記認定事実によれば,本件各個別契約においては,本件システムを完成して稼働させることや,その履行期限を平成25年1月4日とすることは,IBMの債務の内容として合意されていなかったものというべきである。 ⑵ 前記認定事実によれば,本件開発業務や本件各個別契約の締結が,平成25年1月4日に本件システムをSTARのサブシステムの一つとしてSTARと同時に稼働開始することをビジネス上の目標として行われたことは,容易に推認することができる。また,このビジネス上の目標を達成することは契約当事者双方にとって大きな実績と信用となり,逆に目標不達成は不名誉なことであるばかりか信用の低下につながるものであって,双方が目標達成に向けて真剣に努力を続けていたことも,同様に推認することができる。 しかしながら,ビジネス上の目標が重要であるからといって,ビジネス上の目標がそのまま契約上の債務として合意されるとは限らない。ビジネス上の目標をそのまま契約上の債務とすることに合意した後に,目標の実現が予定日より遅れたり,目標の実現が不可能になったりした場合には,履行遅滞や履行不能による損害賠償の問題が生じてしまう。そこで,目標の実現可能性やその確実さの度合い,逆に予定日に遅れるリスクや実現不能となるリス- 70 -クの度合いに応じて,様々な対応をとることになる。ビジネス上の最終目標の実現に無視できないリスクがある場合には,ビジネス上の最終目標の実現を契約上の債務としないことも,リスク回避の一つの方法である。ビジネス上の最終目標の実現を契約上の債務とする場合においても,債務不履行のペナルティを合理的な内容のものに制限(縮減)することも,リスク低減の一つの方法である。ビジネス上の最終目標が実現できなかった場合のリスク分担に関する定めについて協議 る場合においても,債務不履行のペナルティを合理的な内容のものに制限(縮減)することも,リスク低減の一つの方法である。ビジネス上の最終目標が実現できなかった場合のリスク分担に関する定めについて協議がされた結果,合意に至らなかった場合には,契約の締結に至らず,他の契約相手を探すか,ビジネス上の目標の実現を断念することになる。 ⑶ 前記認定事実によれば,最初の個別契約(平成22年11月12日頃締結の本件個別契約1)の締結前にIBMが野村HDらに示した同年10月29日付け提案書(甲7)には,最終的なプロジェクトの遂行を約束するものではなく,フェーズごとに分けて別途見積の上IBM所定の契約書を使用して契約する旨が明記されていた。 本件各個別契約は,下記⑷のとおり,提案書(甲7)の記載に沿って,IBM所定の契約書を使用してフェーズごとに契約を締結し,契約書には「当該フェーズの作業内容の実施の支援」をIBMに準委任することまたはプログラム(サブシステム間連結テスト及びSTARとの総合テストに入る前の段階,すなわちサブシステム内連結テスト終了の段階のプログラムで,営業稼働に耐える完成度は求められていない。)を製作して納入することなどをIBMの債務の内容と記載した。他方,本件各個別契約の契約書には,本件システムを完成して稼働させることや,その履行期限を平成25年1月4日とすることは,IBMの債務の内容としては記載されたことはない。 ⑷ 準委任契約についてみると,前記認定のとおり,本件個別契約14の契約書(甲1の13)の表題は「IBM支援サービス契約書」であり,IBMの債務の内容として「情報システム開発(野村HDの責任において完成)に関- 71 -する支援サービスとして,運用準備支援,テスト準備支援,テスト実施支援,データ移行準備及び実施の支援 あり,IBMの債務の内容として「情報システム開発(野村HDの責任において完成)に関- 71 -する支援サービスとして,運用準備支援,テスト準備支援,テスト実施支援,データ移行準備及び実施の支援等を行い,『240.6人月の提供終了』又はサービス期間の終了(平成25年1月4日)のいずれか早い日にサービスの提供を終了する準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)」と記載され,IBMの受領する報酬として確定料金6億9500万円(消費税別)と記載されている。また,本件個別契約1から5まで(PoCから概要設計まで),8(概要設計最適化),9(基本設計準備)の契約書(甲1の1から9まで。ただし,1の6・7を除く。)の表題も「IBM支援サービス契約書」であり,IBMの債務の内容として「情報システム開発(野村HDの責任において完成)に関する支援サービスとして,各フェーズで予定された支援業務を行い,サービス終了日又はサービス期間終了日のいずれか早い日にサービスの提供を終了する準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)」と記載され,IBMの受領する報酬として前記認定の確定料金額(消費税別)が記載されている。 プログラム構築(製作)契約についてみると,前記認定のとおり,本件個別契約13の契約書(甲1の12)の表題は「IBMシステム・インテグレーション契約書」であり,IBMの債務の内容として「野村HDのシステム(本件システムのうちWMカスタマイズ,帳票,ワークフロー機能,外付ツール,外部インターフェース,データ移行ツール)の構築(基本設計・開発・サブシステム内連結テスト)を請け負い,成果物を基本設計書,テスト計画書及び結果報告書並びにプログラム(ソースコード,実行モジュール)とし,成果物最終納入予定日を平成24年3月31日とし,プロ 発・サブシステム内連結テスト)を請け負い,成果物を基本設計書,テスト計画書及び結果報告書並びにプログラム(ソースコード,実行モジュール)とし,成果物最終納入予定日を平成24年3月31日とし,プログラムはIBMによるサブシステム内連結テストの野村HDによる確認をもって請負完了とする」と記載され,IBMの受領する報酬として確定金額8億0800万円(消費税別)と記載されている。また,本件個別契約15の契約書(甲1の14)の表題は「IBMシステム・インテグレーション契約書」であり,- 72 -IBMの債務の内容として「野村HDのシステム(本件システムのうちWM顧客Web及びWMコア追加機能)の構築(基本設計・開発・サブシステム内連結テスト)を請け負い,成果物をテスト計画書及び結果報告書とし,成果物最終納入予定日を平成24年6月30日とし,納入をもって請負完了とする」と記載され,IBMの受領する報酬として確定金額6150万円(消費税別)と記載されている。 以上によれば,本件システムを最終的に完成させることや,本件システムを平成25年1月4日にSTARのサブシステムの一つとしてSTARと同時に稼働開始させることが,契約当事者双方のビジネス上の目標であったという事実は認定できるものの,これらが契約上のIBMの債務として合意されたという事実を認定するには,無理がある。ましてや,本件各個別契約の締結に先立ち,IBMがWMを利用した本件システムの導入を提案して採用されたことをもって,IBMと野村HDの間に本件システムを完成させる合意がされたという事実を認定するには,無理があるというほかはない。他に,IBMが本件システムを完成させる債務を負っていたという事実を認めるに足りる証拠はない。 2 本件各個別契約の履行不能の主張について⑴ 履行が完 認定するには,無理があるというほかはない。他に,IBMが本件システムを完成させる債務を負っていたという事実を認めるに足りる証拠はない。 2 本件各個別契約の履行不能の主張について⑴ 履行が完了したことが明らかな本件各個別契約について前記認定事実及び前掲各証拠によれば,本件各個別契約は,1⑶のとおり,当該フェーズにおける作業内容の実施支援(準委任),プログラム(サブシステム間連結テスト実施前の段階の仕掛品)の製作,作業に必要な物の引渡し(売買等)などをIBMの債務の内容とし,少なくとも本件個別契約6及び13から15までを除くものは,当該フェーズの終了により履行が完了したことが明らかである。したがって,本件個別契約6及び13から15までを除く本件各個別契約についての履行不能の主張は,理由がない。本件個別契約6及び13から15までについての履行不能の主張についても,⑵以下- 73 -に説示するとおり,理由がない。 ⑵ 本件個別契約6の債務の内容及び履行不能について本件個別契約6(WMのライセンス契約)が完成後の本件システムを野村HDらが使用するためのWMのライセンス契約であることや,IBMが平成25年1月4日までにカスタマイズが完了したWMを野村HDらに利用許諾して,その従業員らが完成後の本件システムを利用できるようにする債務を本件個別契約6に基づいて負ったことを認めるに足りる証拠はない。かえって,本件個別契約6の契約書(甲1の6)によれば,本件個別契約6は,本件システム完成前の本件システム開発の段階において必要な当初ライセンスを野村HDに付与する契約にすぎないことが明らかである。そして,前掲証拠によれば,野村HDは本件システム開発に必要なWMの提供を受けたという事実を認定することができる。 て必要な当初ライセンスを野村HDに付与する契約にすぎないことが明らかである。そして,前掲証拠によれば,野村HDは本件システム開発に必要なWMの提供を受けたという事実を認定することができる。 本件個別契約6が本件システム完成後のWMライセンス付与契約でもあることの根拠として野村HDらが指摘する契約書上の記載(認定クライアントユーザの最大数3万・契約書の別表Aの2)は,ライセンスの生産的使用が開始された後の年次ライセンスに関する記述にすぎない。前掲各証拠によれば,野村HDはこの年次ライセンス料金(支払義務は生産的使用開始時又は平成25年1月1日に生じる。契約書の別表Aの7)を支払っていないものと認められる。そうすると,本件個別契約6は,IBMの主張のとおり,本件システム完成前の開発段階においてWMのライセンスを野村HDに付与する契約にとどまるとみるのが自然である。年次ライセンスに関する記述があることをもって,年次ライセンス料金の支払予定もないのに,完成後の本件システムを利用できるようにする債務を負うことを推認するには,無理があるというほかはないところである。 以上によれば,本件個別契約6は,履行を完了しており,履行不能の主張は理由がない。 - 74 -⑶ 本件個別契約13及び15の債務の内容及び履行不能について前記認定事実によれば,本件個別契約13及び15は,本件システムを構築して,基本設計書,テスト計画書及び結果報告書並びにプログラムの仕掛品(ソースコード,実行モジュール)を製作納品し,サブシステム内連結テストを終了する段階(STARなど他のシステムとの総合テスト等に入ることができる段階)にまで進めることをIBMの債務の内容とする請負兼準委任契約であるということができる。成果物最終納入予定日は,契 ストを終了する段階(STARなど他のシステムとの総合テスト等に入ることができる段階)にまで進めることをIBMの債務の内容とする請負兼準委任契約であるということができる。成果物最終納入予定日は,契約締結当初は本件個別契約13が平成24年3月31日,本件個別契約15が平成24年6月30日とされていた。これらの予定日は,履行期限(遅れると債務不履行責任を負うもの)ではなかったと認定するのが相当であるが,仮に履行期限であったとしても,双方の合意により履行が猶予され,納入予定日が延期されたものと推認される(報酬支払計画における最終支払日が平成24年9月30日迄延期されたことから,納入予定日も合意により同年8月末日頃まで延期されたものと推認される。)。そして,本件個別契約13及び15所定のプログラムの仕掛品(ソースコード,実行モジュール)の全部(Drop2の顧客Web部分も含む。)が遅くとも平成24年7月27日までに製作納品され,平成24年8月9日の第9回ステコミにおいてプログラムの全部が納品基準を満たして納品されたことが確認され,かつ,本件システムの総合テストへの参加が承認されたという前記認定事実によれば,本件個別契約13及び15に基づきIBMが負う債務は,その履行を終えたという事実を推認することができる。 総合テスト参加中止の判断があった後の平成24年9月及び10月の時期にIBMがサブシステム内連結テストを行っていたこと(乙154の40・41)は,前記認定を妨げるものではない。この時期のIBMは,平成24年8月までのテストの実施により発生したTPRの修正作業を行っていたが,修正作業が成功したかどうかの検証作業としては,単体テスト及びサブシス- 75 -テム内連結テスト(IBMが単独で行うことができるもの)までしか行うことがで 生したTPRの修正作業を行っていたが,修正作業が成功したかどうかの検証作業としては,単体テスト及びサブシス- 75 -テム内連結テスト(IBMが単独で行うことができるもの)までしか行うことができず,サブシステム間連結テストを実行することは野村証券による総合テスト参加中止決定が原因で不可能であったものとみられる。プログラムの仕掛品の全部は,納品基準を満たすと双方に判断された上で平成24年7月27日までに納品されたのであるから,その後のテスト等において問題が発見されたことに伴う修正作業の中でサブシステム内連結テストを行ったからといって,納品基準を満たすと双方に判断された上で平成24年7月27日までに納品されたという履行完了の事実が覆されるものではない。 以上によれば,本件個別契約13及び15に基づきIBMが負う債務は,履行が完了したものというべきであるから,野村HDの履行不能の主張は理由がない。 ⑷ 本件個別契約14の債務の内容及び履行不能について前記認定事実によれば,本件個別契約14は,STARとの総合テスト及びデータ移行等の準備及び実施の支援を行う準委任契約(仕事の完成を目的とした請負契約ではない)であり,「240.6人月」の提供終了又はサービス期間の終了(平成25年1月4日)のいずれか早い日にサービスの提供を終了するものとされている。そうすると,IBMは,総合テストを経て本件システムをバグのない状態に仕上げ,データ移行を終えるなどして平成25年1月4日に本件システムをSTARと同時に稼働開始する債務を本件個別契約14に基づいて負うものではない。IBMは,受任者として,本件システムの平成25年1月4日稼働開始を目標として誠実にサービスを提供すべき善管注意義務を負うにとどまる。したがって,IBMが本件システ 約14に基づいて負うものではない。IBMは,受任者として,本件システムの平成25年1月4日稼働開始を目標として誠実にサービスを提供すべき善管注意義務を負うにとどまる。したがって,IBMが本件システムを完成させる義務を負うことを前提とする本件個別契約14の履行不能の主張は,理由がない。 ⑸ 品質不良,信頼関係崩壊等を理由とする履行不能の主張についてア野村HDらは,平成24年11月2日(本件開発業務中止の通告をした- 76 -時点)までに,①技術的観点から一定期間内に本件システムの品質を金融システムに必要なレベルに改善できない状況となり,②当事者間の信頼関係が崩壊して本件開発業務の共同遂行ができない状態となり,③多額の本件開発業務の追加費用を野村HDが負担することをIBMが求め,④現行システムの保守期限(平成25年9月)までの本件システムの確実な稼働開始が困難となり,⑤平成25年1月15日にIBM自身が本件システム開発を続行しないと明言したことから,野村HDらによる本件開発業務中止の決断には合理性があり,本件システムは社会通念上客観的に完成不能となり,本件各個別契約は,既履行,未履行を問わず,IBMの帰責事由により全部履行不能になったと主張する。 イ平成24年11月2日の時点において,本件システムの品質を合理的な期間内に金融システムに必要なレベルに改善することが不可能になったことを認めるに足りる証拠はない。デロイトトーマツ意見書(乙86,134)には相応の論拠があり,改善が可能であったという事実を認定することができる。キャップジェミニ意見書,T意見書及びU意見書(甲142,145,149から151まで,153,154,195)は,一つの予想を述べるものではあるが,デロイトトーマツ意見書の論拠を崩すまでには至っていないと ェミニ意見書,T意見書及びU意見書(甲142,145,149から151まで,153,154,195)は,一つの予想を述べるものではあるが,デロイトトーマツ意見書の論拠を崩すまでには至っていないというほかはない。 本件システムが前記の時点において改善を要する点を多数抱えていたことは前記認定のとおりであるが,双方にその原因があり,特に下流工程の基本設計フェーズに入った後も,さらには当初はテスト期間と想定されていた平成24年に入ってからもCR(変更要求)を繰り返して,工数の著しい増大とテメノス社の作業の手戻りと遅れを繰り返し誘発し,テメノス社からプログラム製作作業の十分な時間的余裕を奪った野村証券側に,より大きな原因があることが,明らかである。そうすると,仮に百歩譲って前記の時点で履行不能であると評価することが可能であるとしても,その- 77 -帰責事由の多くは野村HDらの側に多々あるのであって,IBMの帰責事由と評価することは困難であるというほかはない。 ウ平成24年11月2日の時点において当事者間の信頼関係が崩壊していたことを認めるに足りる証拠はない。野村HDらが,一方的にIBMを嫌忌していたにとどまる。しかも,同日の時点においてビジネスがうまくいかないことの主たる原因が野村HDらの側に多々あることは,前記認定事実から明らかである。STAR及び本件システム以外のSTARのサブシステムがビジネス上の目標を達成して予定通り平成25年1月に稼働開始したことからすれば,ビジネス上の目標不達成となった唯一のシステムである本件システム(SMAFW)の担当者らが,野村グループの中で非難の目にさらされていたことは容易に推認することができ,社内説明用のスケープゴートとして,IBMを必要以上に悪者扱いして,ビジネスパートナーとして信頼するに FW)の担当者らが,野村グループの中で非難の目にさらされていたことは容易に推認することができ,社内説明用のスケープゴートとして,IBMを必要以上に悪者扱いして,ビジネスパートナーとして信頼するに値しないと社内説明していた可能性は,高いものとみられる。いずれにせよ,信頼関係の点は,野村HDらが主張する履行不能を根拠付けるものとはいえない。 エ IBMが本件開発業務の続行のために6億円以上もの追加費用負担を野村HDに求めたこと(甲52)は,IBMが野村HDとの有償契約(本件各個別契約)を締結する前の平成22年10月29日付け提案書(甲7)に当初見積金額での契約締結を約束するものではなく,各フェーズごとに分けて別途見積の上契約するとの記載があること,追加の開発期間が必要になった原因は双方にあった(野村HDら側により大きな原因があった)ことからすれば,追加費用負担要求の事実をIBMの帰責事由による本件システム開発の履行不能を根拠付ける事実とするには無理がある。 オ現行システムの保守期限が平成25年9月までであったことを,IBMの帰責事由による本件システム開発の履行不能を根拠づける事実とするには,無理がある。追加の開発期間が必要になった原因は双方にあった(野- 78 -村HDら側により大きな原因があった)こと,平成25年9月までに本件システムを完成できる可能性が十分にあること(乙86,134),保守期限の変更が不可能であることの証明もないこと(仮に保守期限の変更に費用が必要であるとしても,主に野村HDら側の原因で生じた費用となるから,当該費用は野村HDが負担すべきである。)を考慮すると,現行システムの保守期限をIBMの帰責事由による本件システム開発の履行不能を根拠付ける事実とするには無理がある。 カ P常務などのIBMの担当者が平成 は野村HDが負担すべきである。)を考慮すると,現行システムの保守期限をIBMの帰責事由による本件システム開発の履行不能を根拠付ける事実とするには無理がある。 カ P常務などのIBMの担当者が平成25年1月15日に本件システム開発を続行しないと述べた事実を認めるに足りる証拠はない。前記認定のとおり,IBMのP常務は,IBMは最終見直しプランに沿って本件システム開発業務の続行を目指しているが,野村HD側が本件システム開発を取りやめるのであれば,契約及び法令に従って対応すると述べたにすぎない。 したがって,IBMの担当者が本件システム開発を続行しないと述べたことを前提に,IBMの帰責事由による履行不能をいう野村HDらの主張を採用するには無理がある。 キ本件開発業務の節目において,IBMの担当者から,その時々の問題点の発生原因がIBM側にあるかの発言や文書記載がされることがある(甲11,47,49,51,52)。IBMは報酬を受領する側,野村HDは報酬を支払う側であるから,IBMがプロジェクトの続行を希望して,低姿勢な態度に終始して,自己の問題点は指摘するが,野村HD側に問題があってもこれをあまり指摘しない言動に出るのは,自然なことである。 このようなIBMの言動を,それのみで直ちにIBMの帰責事由の根拠と評価することは,不適当である。 3 本件各個別契約の履行遅滞等(野村HDの当審における追加主張)について判断する。 ⑴ 本件個別契約13及び15について- 79 -前記認定事実によれば,本件個別契約13及び15に基づくIBMの債務は,納入目標の合意による変更を経て,変更後の目標までに全部履行されたことが明らかである。なお,目標が契約上の履行期限を定める合意であったかどうかも,疑問である。したがって,IBMが野村HDら 債務は,納入目標の合意による変更を経て,変更後の目標までに全部履行されたことが明らかである。なお,目標が契約上の履行期限を定める合意であったかどうかも,疑問である。したがって,IBMが野村HDら主張の履行遅滞の責任を負うことはない。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 ⑵ 本件個別契約14について全体総合テストを平成24年10月4日までに終えることがIBMの債務として合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,IBMが野村HDら主張の履行遅滞の責任を負うことはない。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 ⑶ 本件個別契約6についてカスタマイズが完了したWMの利用許諾をして野村HDらの従業員が本件システムを利用できるようにすることがIBMの債務として合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。その履行期限を平成25年1月4日とする合意があったことを認めるに足りる証拠もない。したがって,IBMが野村HDら主張の債務不履行責任を負うことはない。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 ⑷ ⑴から⑶までの説示によれば,これらが期限の定めのない債務になったことを論拠とする野村HDらの債務不履行責任の主張は,その前提を欠くものとして採用することができない。 ⑸ 前記認定事実によっても,IBMに不完全履行があったということはできず,他に不完全履行の事実があったことを認めるに足りる証拠はない。前掲証拠によれば,IBMには,野村HDらが主張する債務不履行(履行遅滞,履行不能,不完全履行)はなかったという事実を認定することができる。 4 不法行為の主張について⑴ 契約当事者間である野村HDとIBMの間において,契約の履行そのもの- 80 -に関して債務不履行責任のほかに不法 なかったという事実を認定することができる。 4 不法行為の主張について⑴ 契約当事者間である野村HDとIBMの間において,契約の履行そのもの- 80 -に関して債務不履行責任のほかに不法行為責任を負うというのは例外的な特段の事情がある場合に限られるというべきである。また,野村証券は,契約当事者である野村HDの完全子会社であるから,同様に,IBMの野村HDに対する契約の履行そのものに関して野村証券に対して不法行為責任を負うというのも,例外的な特段の事情がある場合に限られるというべきである。 ⑵ 野村HDらは,IBMが高度の専門的知識と経験に基づき適切にシステム開発を遂行し,合理的な費用・スコープ・期間で本件システムを完成させる注意義務を負うと主張する。債務不履行責任を負わないIBMが,野村HDら主張の注意義務に基づく不法行為責任を負うというためには,特段の事情が必要である。しかしながら,特段の事情があることを基礎付ける事実関係を認めるに足りる証拠はない。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 ⑶ 野村HDらは,IBMが情報を集約・分析し,野村HDらに必要な説明を行い,野村HDらの了解を得ながら,必要とされる修正・調整等を行い,本件システムの完成に向けてプロジェクト・マネジメントを行う注意義務を負うと主張する。債務不履行責任を負わないIBMが,野村HDら主張の注意義務に基づく不法行為責任を負うというためには,特段の事情が必要である。 しかしながら,特段の事情があることを基礎付ける事実関係を認めるに足りる証拠はない。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 また,前記認定事実によれば,IBMは,工数の著しい増加に対応して概要設計最適化フェーズを設けて工数削減の努力を行い,工数に応じた人員が確保できているか,作業量 張を採用するには,無理がある。 また,前記認定事実によれば,IBMは,工数の著しい増加に対応して概要設計最適化フェーズを設けて工数削減の努力を行い,工数に応じた人員が確保できているか,作業量が適正かなどの事項の点検を,基本設計フェーズの開始時期その他の適切な時期に行い,基本設計フェーズに入った後の野村証券からの度重なるCR(変更要求)に対してもその凍結を求めたりするなど,可能な限度でプロジェクト・マネジメントを行っていたが,野村HDらが基本設計フェーズに入った後もCR(変更要求)を繰り返すなど適切に対- 81 -応してくれないことが原因で,基本設計フェーズの冒頭に立てた計画が崩壊して平成25年1月の稼働開始が困難になったものというべきである。野村HDらの主張を採用するには,無理がある。 ⑷ 野村HDらは,IBMに①WM及び証券業務の知識不足,②要員の頻繁な交代,③杜撰な進捗管理,④不正確・不十分な設計書及び⑤杜撰な品質管理などの注意義務違反があったと主張する。しかしながら,不法行為法上の注意義務違反を構成するほどの①知識不足及び②要員の頻繁な交代があったことを認めるに足りる証拠はない。③進捗管理については,IBMが相応のプロジェクト・マネジメントを実行していたことは前記⑶のとおりである。④設計書及び⑤品質管理の杜撰さについては,不法行為法上の注意義務違反を構成するほどのものがあったことを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,前記認定事実によれば野村証券からの度重なるCR(変更要求)により十分な設計書作成期間やプログラム製作期間をテメノス社が確保できなかったことが遅延の原因である可能性が高いものとみられる。 ⑸ 他に,不法行為の主張を基礎付ける事実関係を認めるに足りる証拠はない。 不法行為に基づく請求は,理由がないことに帰する ノス社が確保できなかったことが遅延の原因である可能性が高いものとみられる。 ⑸ 他に,不法行為の主張を基礎付ける事実関係を認めるに足りる証拠はない。 不法行為に基づく請求は,理由がないことに帰する。 5 本訴事件についての結論以上によれば,損害やIBMの抗弁(責任制限条項・過失相殺)について判断するまでもなく,本訴事件における野村HDらの請求は,全部理由がないことに帰する。よって,本訴事件については,原判決中のIBM敗訴部分を全部取り消して,同部分についての野村HDの請求を全部棄却すべきである。 第3 反訴事件についての当裁判所の判断 1 本件個別契約13に基づく報酬請求について前記認定事実によれば,IBMは,平成24年7月27日までに納品基準を満たして成果物を納品するなど本件個別契約13に基づく債務を全部履行し,債務不履行(履行遅滞・不完全履行)もなかったものというべきである。そう- 82 -すると,IBMは,野村HDに対して,報酬の全額を請求することができるから,平成24年9月30日を支払期限とする未払報酬1564万5000円(14,900,000×1.05)及びこれに対する約定期限の翌日(平成24年10月1日)以降の商事法定利率による遅延損害金の支払を求めるIBMの請求は,全部理由がある。よって,これを全部棄却した原判決を取り消して,認容すべきである。 2 本件個別契約15に基づく報酬請求について前記認定事実によれば,IBMは,平成24年7月27日までに納品基準を満たして成果物を納品するなど本件個別契約15に基づく債務を全部履行し,債務不履行(履行遅滞・不完全履行)もなかったものというべきである。そうすると,IBMは,野村HDに対して,報酬の全額を請求することができるから,平成24年9月30日を支払期限とする未払 部履行し,債務不履行(履行遅滞・不完全履行)もなかったものというべきである。そうすると,IBMは,野村HDに対して,報酬の全額を請求することができるから,平成24年9月30日を支払期限とする未払報酬630万円(6,000,000×1.05) 及びこれに対する約定期限の翌日(平成24年10月1日)以降の商事法定利率による遅延損害金の支払を求めるIBMの請求は,全部理由がある。 よって,これを全部棄却した原判決を取り消して,認容すべきである。 3 本件個別契約14に基づく報酬請求について⑴ 前記認定事実によれば,本件個別契約14は,野村証券が平成24年8月27日に本件システムのSTARとの総合テストを中止して,平成25年1月稼働開始を断念したことにより,IBMの債務のうち,総合テストの実施支援などについては履行することができなくなったものである。他方,データ移行準備支援など,履行可能な部分も残っていた。その意味で,本件個別契約14は,平成24年8月27日にIBMの債務の一部が履行不能となったものである。また,野村証券が同年11月2日に本件開発業務中止をIBMに通告したことにより,本件個別契約14に基づくIBMの債務は全部履行不能となったものである。そして,IBMとしては,本件開発業務が遅延していたことから,予定より遅れて本件システムを稼働開始するつもりでは- 83 -あったものの,STARとの総合テストをとりあえず中止すること及び平成25年1月の稼働開始を断念すること自体は,やむを得ないものとして容認していたものと評価すべきである。 ところで,本件個別契約14の報酬体系(総額を確定料金6億9500万円(消費税別)とし,240.6人月の提供終了又は平成25年1月4日のいずれか早い日にサービスの提供を終了する)は,平成25年1月稼 ところで,本件個別契約14の報酬体系(総額を確定料金6億9500万円(消費税別)とし,240.6人月の提供終了又は平成25年1月4日のいずれか早い日にサービスの提供を終了する)は,平成25年1月稼働開始を前提とするものである。そうすると,本件個別契約14自体は,平成25年1月稼働開始を前提とする支援作業を行う契約であることになる。そして,IBMがSTARとの総合テスト中止及び平成25年1月稼働開始断念自体を容認したことにより,平成25年1月4日までに行うことのできる作業の総量も客観的に減少したことから,本件個別契約14の報酬体系については,IBMが履行した分だけを支払う出来高払い制に変更する旨の黙示の合意があったものと推認するのが相当である。そうすると,IBMの請求のうち民法536条2項を根拠にする部分は全部理由がなく,それ以外の部分は認定された出来高に相当する部分を認容すべきである。 ⑵ 平成24年8月分以降についてのIBMが履行した出来高を検討する。 ア前記認定事実によれば,平成24年8月分(報酬額9030万円・弁済期9月末日)については,一部に未履行分(同年8月27日以降のテスト実施支援分)があるほかは,おおむね履行されたことが明らかである。 イ平成24年9月分以降については,テスト実施支援の履行が全くなく,データ移行準備支援などその余の分は相応の量が一部履行されたが,その分量を的確に認定するに足りる証拠はないものといわざるをえない。 ウそうすると,「平成24年8月分の一部未履行分相当額及びこれに対する数か月分の遅延損害金相当額」が,平成24年9月1日から11月2日までの出来高に見合う額と認定する(結論として,8月分全額と同額を認容し,9月分以降の金額に見合う分は認容しない。)のが,立証困難な場- 84 -合の控え 額」が,平成24年9月1日から11月2日までの出来高に見合う額と認定する(結論として,8月分全額と同額を認容し,9月分以降の金額に見合う分は認容しない。)のが,立証困難な場- 84 -合の控え目な算定として,衡平にかなうものというべきである。 ⑶ 以上によれば,IBMの請求は,野村HDに対して,平成24年9月30日を支払期限とする8月分報酬の全額と同額の9030万円(86,000,000×1.05) 及びこれに対する約定期限の翌日(平成24年10月1日)以降の商事法定利率による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。よって,これを全部棄却した原判決を取り消して,前記の限度で一部認容すべきである。 4 ストーリーボード修正及び単体テストについての報酬請求について⑴ IBMは,平成23年8月までの予定期間を過ぎて同年9月以降も実施したストーリーボードの作成・修正作業,テメノス社に代わって実施した納品前のプログラムの単体テスト作業の費用の支払を請求する。各作業をIBMが行ったことは,当事者間に争いがない。 ⑵ IBMと野村HDらの間でこれらの作業の費用支払合意があったことを認めるに足りる証拠はない。よって,支払合意に基づく請求は理由がない。 ⑶ ストーリーボードの作成・修正作業は,本件個別契約13に基づいて平成23年9月以降に実施すべきIBMの作業(基本設計書作成やプログラムの製作)に含まれるものとみるのが,無理のないところである。そうすると,IBMが野村HDらのために行ったものということはできない。 また,テメノス社に代わって実施した納品前のプログラムの単体テストは,テメノス社のために行ったものであって,IBMが野村HDらのために行ったものということはできない。 したがって,商法512条に基づく請求 メノス社に代わって実施した納品前のプログラムの単体テストは,テメノス社のために行ったものであって,IBMが野村HDらのために行ったものということはできない。 したがって,商法512条に基づく請求は理由がない。 ⑷ 野村HDの債務不履行によりIBMが前記作業を実施せざるを得なくなったという事実関係を的確に認めるに足りる証拠はない。したがって,野村HDの債務不履行に基づく請求は理由がない。 ⑸ 以上によれば,IBMの請求を棄却した原判決の判断は正当である。 - 85 - 5 契約外の追加カスタマイズ作業等についての報酬請求について⑴ IBMは,契約外の作業として,WM以外の帳票やコントラクト・ワークフロー等の追加開発の作業を行うとともに,本件個別契約13及び15において予定されていなかったWMの追加のカスタマイズ作業を行ったとして,これらの費用の支払を請求する。各作業をIBMが行ったことは,当事者間に争いがない。 ⑵ IBMと野村HDらの間でこれらの作業の費用支払合意があったことについては,証拠(乙50,67から69まで)によれば,ある程度まで詰めた報酬額の協議が実施されたことが認められるが,最終的に合意が形成されたことを認めるに足りる証拠はない。本件個別契約15において,本件個別契約13ではまかないきれないDrop1の製作作業の一部について,契約書を作成して有償の契約が締結されたこととの対比においても,未だ協議中で最終合意を記載した契約書の作成のないものについては,合意の形成を認定するには無理がある。よって,支払合意に基づく請求は理由がない。 ⑶ WM以外の帳票やコントラクト・ワークフロー等の追加開発及びWMの追加のカスタマイズ作業は,IBMが野村HDらのために行ったものである。 ここで問題となるのは,当該作業が本件個 は理由がない。 ⑶ WM以外の帳票やコントラクト・ワークフロー等の追加開発及びWMの追加のカスタマイズ作業は,IBMが野村HDらのために行ったものである。 ここで問題となるのは,当該作業が本件個別契約13又は15に基づいて行う作業に含まれる(本件個別契約13又は15の報酬合意に含まれる。)のかどうかである。しかし,本件全証拠をもってしても,本件個別契約13又は15に基づいて行う作業に含まれないことを認めるに足りず,本件個別契約13又は15の報酬合意に含まれるとみるのが自然である。したがって,商法512条に基づく請求は理由がない。 ⑷ 野村HDの債務不履行によりIBMが前記作業を実施せざるを得なくなったという事実関係を的確に認めるに足りる証拠はない。したがって,野村HDの債務不履行に基づく請求は理由がない。 ⑸ 以上によれば,IBMの請求を棄却した原判決の判断は正当である。 - 86 - 6 本件開発業務の中止に伴うソフトウェア停止等の作業について⑴ IBMは,契約外の作業として,本件開発業務の中止を受けて,平成24年11月10日から同月23日までの間,「千手」と呼ばれるサーバ管理のためのソフトウェアを停止する作業を行ったとして,この費用の支払を請求する。この作業をIBMが行ったことは,当事者間に争いがない。 ⑵ IBMと野村HDらの間でこれらの作業の費用支払合意があったことを認めるに足りる証拠はない。よって,支払合意に基づく請求は理由がない。 ⑶ 本件全証拠をもってしても,ソフトウェアを停止する作業が,IBMが野村HDらのために行ったものであることを認めるに足りない。したがって,商法512条に基づく請求は理由がない。 ⑷ 野村HDの債務不履行によりIBMが前記作業を実施せざるを得なくなったという事実関係を的確に認め に行ったものであることを認めるに足りない。したがって,商法512条に基づく請求は理由がない。 ⑷ 野村HDの債務不履行によりIBMが前記作業を実施せざるを得なくなったという事実関係を的確に認めるに足りる証拠はない。したがって,野村HDの債務不履行に基づく請求は理由がない。 ⑸ 以上によれば,IBMの請求を棄却した原判決の判断は正当である。 第4 結論以上の趣旨に従い,IBMの控訴に基づき原判決を一部変更して,本訴事件における野村HDらの請求を全部棄却し,反訴事件におけるIBMの請求を一部認容,一部棄却すべきである。また,野村HDらの控訴は,全部棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官野山 宏 - 87 -裁判官原 克也 裁判官土屋毅 - 88 -別紙1(欧文・アルファベット順) 1 CUSTOM……野村証券のバックオフィス業務の従前の基幹情報システムの名称 2 Fee担………野村証券の投資顧問部内でSMAFWのフィー計算徴収の要件・ルール・計算手法等の知識を属人的に独占していた特定の1名の社員のこと 3 FW………「FundWrap 」の略。「ファンドラップ」と呼ばれ,投資一任運用サービスの一種で,投資一任業者が,顧客のリスク許容度や投資目的に合わせて,金融機関の専門家のアドバイスをもとに異なるタイプの複数の投資信託を選び,これらを組み合わせて運用す と呼ばれ,投資一任運用サービスの一種で,投資一任業者が,顧客のリスク許容度や投資目的に合わせて,金融機関の専門家のアドバイスをもとに異なるタイプの複数の投資信託を選び,これらを組み合わせて運用するサービス 4 IBM………日本アイ・ビー・エム株式会社 5 IT戦略部………野村証券の国内IT戦略部。IT部門の一部を担当する。 6 PoC………「ProofofConcept」の略。導入前機能検証という意味。 7 SMA………「SeparatelyManagedAccount 」の略であり,資産運用のアドバイスや株式・債券・投資信託の売買注文等を一括して提供する資産運用サービス 8 SMAFW………野村証券が提供する投資一任運用サービスであり,SMA及びFWを総称したもの 9 STAR………野村総研が著作権を有する「THESTAR」を利用して製作導入する野村証券のバックオフィス業務の新たな基幹情報システムの名称 10 TPR………「TestProblemReport 」の略。テストで発見された問題点のこと。ショーストッパーに当たるものも当たらないものも含む。 11 WM………「WealthManagerTMSoftware (ウェルス・マネージャ・ソフトウ- 89 -ェア)」と称するテメノス社が開発したパッケージ・ソフトウェア (和文・50音順) 12 現行システム………野村総研が開発した既存の野村証券のSMAFW業務用のコンピュータシステム 13 サブシステム間連結テスト………本件システム(STARのサブシステムである。)のプログラムの野村証券への納品後に,STARの他のサブシステム(他社開発のもの)と合同して行うテストで,IBMが単独で実施することはできない。 14 サブシステム内連結テスト………本 である。)のプログラムの野村証券への納品後に,STARの他のサブシステム(他社開発のもの)と合同して行うテストで,IBMが単独で実施することはできない。 14 サブシステム内連結テスト………本件システムのプログラムのテメノス社からIBMへの出荷時(野村証券への納品直前の段階)に,当該プログラムについて行うテストで,IBM単独で実施することができる。 15 ショーストッパー………ショー(テスト)が中断されるほどの大問題。直らない限り正常業務ができないという緊急性の高い障害。 16 ステコミ………ステアリングコミッティーミーティング 17 ストーリーボード………WMの概要設計書のうちカスタマイズを行う部分を抽出した英語の文書。テメノス社にとって,仕様書(設計図)の役割を果たす。 18 総合テスト(全体総合テスト)………STAR及び各サブシステムが合同して行う最終段階のテスト 19 テメノス社………オランダ法人であるTemenos(NL)B.V. のこと。コンピュータ・システムの開発,運用,管理,搬入及び保守サービス等を業とし,パッケージ・ソフトウェアであるWMの著作権を有する。なお,WMの著作権を有するのは,本件開発業務の開始当初はオデッセイ社で,その後テメノス社になった。本判決では,便宜,オデッセイ社とテメノス社- 90 -を区別せずにテメノス社という。 20 投資顧問部………野村証券の投資顧問事業部。SMAFWの事業を担当する。 21 野村HD………野村ホールディングス株式会社 22 野村HDら………野村ホールディングス株式会社及び野村證券株式会社 23 野村証券………野村證券株式会社 24 野村総研………株式会社野村総合研究所。野村HDらの関係会社である。 25 本件開発業務………パッケージ・ソフトウェアであるWMを用 び野村證券株式会社 23 野村証券………野村證券株式会社 24 野村総研………株式会社野村総合研究所。野村HDらの関係会社である。 25 本件開発業務………パッケージ・ソフトウェアであるWMを用いて行う野村証券のSMAFW業務用のコンピュータシステムの開発業務。ベンダであるIBMとWMの著作権を有するテメノス社が,野村証券を直接間接に支援する。 26 本件各個別契約………原判決別紙1「契約一覧」中「1 ウェルス・マネージャ導入にかかる被告との契約」と題する表記載の契約全部の総称 27 「本件個別契約」の次に算用数字を記載した表現(本件個別契約1など)………原判決別紙1「契約一覧」中「1 ウェルス・マネージャ導入にかかる被告との契約」と題する表記載のそれぞれの契約を同表記載の番号により表現したもの 28 本件システム………本件開発業務により開発予定の野村証券のSMAFW業務用のコンピュータシステムのこと。STARのサブシステムである。 29 リテールITプロジェクト………野村証券の基幹情報システムを2年程度かけて順次CUSTOMからSTARに置き換えるに当たり,最初の置き換えのタイミング(平成25年1月目標)において,STARの稼働開始と同時に,個人向け商品用の情報システムもスリム化最構築して一新した上で稼働開始するというプロジェクトのこと - 91 -別紙2本件個別契約13 当初支払計画(消費税別)平成23年10月31日 1億2500万円平成23年11月30日 1億2810万円平成23年12月31日 1億2500万円平成24年 1月31日 1億2500万円平成24年 2月29日 1億2500万円平成24年 3月31日 平成23年12月31日 1億2500万円平成24年 1月31日 1億2500万円平成24年 2月29日 1億2500万円平成24年 3月31日 1億2500万円平成24年 4月30日 5490万円 本件個別契約13 平成24年3月変更支払計画(消費税別)平成24年 2月29日までは当初支払計画と同一平成24年 4月30日 4500万円平成24年 5月31日 4500万円平成24年 6月30日 4500万円平成24年 7月31日 4490万円 本件個別契約13 平成24年7月変更支払計画(消費税別)平成24年 6月30日までは3月変更支払計画と同一平成24年 7月31日 1500万円平成24年 8月31日 1500万円平成24年 9月30日 1490万円 - 92 -別紙3 本件個別契約15 当初支払計画(消費税別)平成24年5月31日 2150万円平成24年6月30日 2000万円平成24年7月31日 2000万円 本件個別契約15 平成24年7月変更支払計画(消費税別)平成24年 6月30日までは当初支払計画と同一平成24年 7月31日 700万円平成24年 8月31日 700万円平成24年 9月30日 600万円 700万円平成24年9月30日600万円

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