平成11(ワ)1460 保険金請求

裁判年月日・裁判所
平成13年11月15日 仙台地方裁判所
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判決文本文10,558 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告a保険株式会社は、原告に対し、4118万6364円及びこれに対する平成11年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告b保険株式会社は、原告に対し、3000万円及びこれに対する平成11年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が、被告らに対し、後記の3口の火災保険契約に基づき、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)及びその中にあった家財道具の火災による損害について、火災保険金の支払を求めたものである。 1 争いのない事実(1) 原告は、昭和63年本件建物を新築して、以後、改築や増築をすることなく、原告の妻であるcとともに、本件建物に居住してきた。 (2) 平成9年、原告は、被告a保険株式会社との間で、次のようなd公庫特約火災保険契約を締結した。 ア保険の目的本件建物イ保険金額  2000万円ウ保険期間同年3月24日から平成31年3月24日16時まで(3) 平成10年3月27日、原告は、被告b保険株式会社との間で、次のような住宅総合保険契約を締結した。 ア保険の目的本件建物に収容されている家財イ保険金額  3000万円ウ保険期間同日午後4時から平成11年3月27日午後4時まで1年間(4) 平成10年、原告は、被告a保険株式会社との間で、次のようなd公庫特約火災保険契約を締結した。 ア保険の目的本件建物イ保険金額  3000万円 年間(4) 平成10年、原告は、被告a保険株式会社との間で、次のようなd公庫特約火災保険契約を締結した。 ア保険の目的本件建物イ保険金額  3000万円ウ保険期間同年4月8日から平成15年4月8日16時まで(5) 平成11年3月3日午後5時28分頃、本件建物内から出火した(以下これによる火災を「本件火災」という。)。 本件建物1階和室(8畳-以下「本件和室」という。)北側にある仏壇(以下「本件仏壇」という。)は、両開閉扉2枚のうち、向かって左側の扉は煤けた状態で残存しているが、右側の扉は焼損して落下し、湯茶碗・線香壺等は原形を保ちながら黒く煤け、枕経板は裏面が強く焼燬して炭化し、本件仏壇が収められた場所の長押・縦枠が焼損した。 本件和室のうち、納戸に通じる出入口(以下「本件出入口」という。)がある北側の焼けが強く、本件出入口付近には畳・床板の焼け抜けがある。 本件和室の北側にある納戸は、東側納戸・通路・西側納戸の三つの部分に分かれ、本件出入口付近の通路に強い焼けが見分されるが、その他は弱い。 本件和室の本件出入口付近には多数の衣類を下げたパイプハンガーが置かれていた。 (6) 本件火災があった平成11年3月3日における原告の行動は次のようなものである。 午前9時45分頃自宅を出て、午前10時頃会社に到着し、午前11時頃e動物病院に電話し、午前11時45分頃会社を出て、午後零時頃自宅に到着し、焼きそばを作って食べた後、犬を連れてe動物病院に向かい、午後零時40分頃e動物病院に到着し、午後1時頃会社に到着し、午後2時頃東北大歯学部に通院して、自動車のタイヤがパンクしたので、会社に電話してfを呼び、タイヤを持ってきてもらって修理し、午後4時 、午後零時40分頃e動物病院に到着し、午後1時頃会社に到着し、午後2時頃東北大歯学部に通院して、自動車のタイヤがパンクしたので、会社に電話してfを呼び、タイヤを持ってきてもらって修理し、午後4時頃自宅を出たが、その前に本件仏壇のローソクに点火し、午後4時20分頃会社に到着し、午後5時45分頃本件火災の発生を知り、午後6時10分頃自宅に到着した。 (7) 原告は、昭和58年5月gと婚姻したが、その後、cと同棲して、同年11月gと離婚し、昭和59年7月cと再婚した。 cは、平成5年2月、原告を相手方として、離婚、3000万円の財産分与及び2000万円の慰藉料を求める家事調停を申し立て、本件建物とその敷地に離婚給付による請求権を被保全権利とする仮差押をしたが、その後、上記調停は取り下げられた。 (8) 原告は、本件建物とその敷地338.57平方メートルを所有しているが、本件火災が発生した当時、上記不動産には被担保債権の総額が6880万円(5口)の抵当権ないし根抵当権が設定されていた。 2 争点(1) 本件火災が原告の作為によって発生したものか否かア被告らの主張(ア)出火個所の不自然性及び出火原因に関する原告の説明の不自然性本件火災では本件仏壇とそこから離れた本件出入口付近がそれぞれ独立した出火個所として認められ、このように独立した出火個所が少なくとも2個所存在しているのは、作為的な火災であることを示している。 なお、仙台市r消防署の火災原因判定書(以下「本件判定書」という。)では、パイプハンガーが倒れるなどして下に散乱していた衣類に本件仏壇から落下したローソクの火が移って延焼していったという可能性を指摘するとともに、本件出入口付近にあったプラスチック製ハンガーの束が燃焼してそ イプハンガーが倒れるなどして下に散乱していた衣類に本件仏壇から落下したローソクの火が移って延焼していったという可能性を指摘するとともに、本件出入口付近にあったプラスチック製ハンガーの束が燃焼してその火力がスタイロ畳や床板を燃焼させたという可能性を指摘しているが、高所から落下するローソクの残炎率は極めて低いし、パイプハンガーの衣類が本件仏壇の前に落ちる可能性も低いのであり、また、本件仏壇から落下したローソクの火が延焼した後本件出入口付近で改めて独立に燃焼したと考えるのは無理な飛躍があり不自然である。 また、原告は、出火原因につき、当初は、ローソクの火と本件仏壇の左側面が接近しすぎたので本件仏壇の左側から火が広がった旨や本件出入口の一番強く焼けた場所にはセントラルクリーナーの配管と配線があり漏電の可能性がある旨の説明をしていたのに、消防署の実験でローソクが本件仏壇の側面に着火しないことが明らかになり漏電の可能性も否定されると、パイプハンガーが衣類の重みで転倒して本件仏壇の枕経板に衝突してローソクが落下したと説明を変遷させている上、説明内容に不合理な点がある。 (イ) 原告の経済的逼迫本件火災発生当時、原告は、個人として約5000万円の負債を抱えていたほか、原告が経営する有限会社h(現在の株式会社i-以下「訴外会社」という。)にも約9800万円の負債があって、それらの返済に苦慮していたはずである。 (ウ) 原告とcの夫婦関係原告は、もともと女性関係が多かった上、訴外jと不貞関係を生じたことやcに対する暴力が原因で、平成5年2月、cから、離婚等を求める家事調停を申し立てられるとともに、本件建物及びその敷地に離婚給付による請求権を被保全権利とする仮差押をされた。 上記家事調停は原告 する暴力が原因で、平成5年2月、cから、離婚等を求める家事調停を申し立てられるとともに、本件建物及びその敷地に離婚給付による請求権を被保全権利とする仮差押をされた。 上記家事調停は原告がcに500万円支払うことで取り下げられたが、原告と上記訴外人との不貞関係は継続して、原告とcは、寝室が1階と2階に分かれ、食事も別々にとることが多く、家庭内別居の状態であった。 (エ) 以上を総合すると、本件火災は、原告が負債の返済に充てるための金銭を得る目的やcとの夫婦関係を清算する目的をもって故意に発生させたもので、保険約款の免責事由に該当するから、被告らは、火災保険金の支払義務を負わない。 イ原告の主張(ア) 出火個所及び出火原因本件判定書は、本件仏壇と本件出入口付近の連続した範囲が出火個所であるとしているのであって、出火個所が2個所であるとしているものではない。 すなわち、本件判定書によれば、パイプハンガーが本件仏壇の方に倒れてそれにかけてあった衣類が本件仏壇の前に落ち、ペットサークルにかけてあった衣類も本件仏壇前に落ちて、それらの衣類に本件仏壇から落下したローソクの火が移り、その火が衣類の上を延焼していって本件出入口付近のパイプハンガーの下に置かれていたプラスチック製ハンガーの束を燃焼させ、それで溶融したプラスチック製ハンガーの束が強い燃焼力を有する構造材で出来ているスタイロ畳やその下の床板を燃焼させた可能性が考えられるのである。なお、本件仏壇からローソクが落下したのは倒れたパイプハンガーが本件仏壇の枕経板に当たったためである可能性がある。 被告らは、原告の説明が不合理であるとか変遷していると主張するが、そもそも、原告は、出火個所や出火原因を知らないのに、被告らからそれらを執拗に聞か 経板に当たったためである可能性がある。 被告らは、原告の説明が不合理であるとか変遷していると主張するが、そもそも、原告は、出火個所や出火原因を知らないのに、被告らからそれらを執拗に聞かれるので、警察官や消防署員から聞かされた話や推測によって説明せざるを得なかっただけであって、虚偽の話をしたわけではない。 (イ) 原告の経済的状況原告や訴外会社は、被告らが主張するほど多額の負債を抱えていたわけではない上、債務の支払は順調であって、経済的に逼迫しているわけではない。 そもそも、原告は、放火によって火災保険金を得たとしても、何の利得も得られないばかりか、それ以上の損害を受ける可能性が高かった。すなわち、本件建物を目的とした火災保険金は、その請求権にd公庫のために質権が設定されていて、d公庫に入金されるものであり、仮にその中から原告に戻される剰余金が出たとしても、それは本件建物の根抵当権者により物上代位で差し押さえられてしまう。また、家財道具を目的とした保険金であるが、原告は、上記保険金である3000万円をはるかに超える損害を受けているのであり、そのことは被告らも認識しているはずである。 (ウ) 原告とcの離婚騒動は、本件火災が発生する6年前のことである上、短期間で解決しており、本件火災との因果関係があるはずがない。 原告は、jとの間に被告らが主張するような関係はなく、cとは円満な夫婦関係にある。 (エ) 原告が故意に本件火災を発生させたという事実は被告らに立証責任があるところ、被告らは、本件火災について原告の放火以外の原因による可能性がないことについて立証できていない。 (2) 本件火災が原告の重過失によって発生したか否かア被告らの主張仮に本件火災が は、本件火災について原告の放火以外の原因による可能性がないことについて立証できていない。 (2) 本件火災が原告の重過失によって発生したか否かア被告らの主張仮に本件火災が原告の作為によるものでなかったとしても、原告は、本件火災の当日、本件仏壇の向かって右側の側板から約2センチメートルしか離れていない位置にあるローソク立てに、そのローソク立ての大きさに比して大き過ぎるためそのローソク立てに立てると倒れやすく不安定な状態になるローソクを立てて、それに火を灯したまま本件建物から外出した。 その結果、ローソクが倒れて本件仏壇から落下し、散乱していた衣類にローソクの火が着火して本件火災が発生したと考えられる。 したがって、本件火災は原告の重大な過失により発生したもので、保険約款の免責事由に該当するから、被告らは、火災保険金の支払義務を負わない。 イ原告の主張原告が本件火災の当日火を灯したローソクは以前からローソク立てに立てて使用されていたものでその大きさがローソク立ての大きさに比して大きすぎて倒れやすく不安定だったということはない。 しかるに、本件火災はパイプハンガーが倒れるという予想外の出来事が発生してローソクが落下したために発生したのである。 そして、保険約款における免責事由としての重過失とは、故意に準じるような著しい注意欠如があった場合を指すと解されるのであるから、本件における原告にはそのような重過失は認められない。 第3 争点に対する判断 1 前記争いのない事実及び証拠(原告本人、証人k及び同l、甲4、甲9の2、3、5、6、8及び9、甲12及び13の各1から3、甲21、甲33の1及び3、甲34から36の各1、乙1から3、乙6から10、乙13、乙20の2)によ 拠(原告本人、証人k及び同l、甲4、甲9の2、3、5、6、8及び9、甲12及び13の各1から3、甲21、甲33の1及び3、甲34から36の各1、乙1から3、乙6から10、乙13、乙20の2)によれば、次の事実が認められる。 (1) 原告は、被告a保険株式会社との間で前記第2の1の(2)及び(4)のような、被告b保険株式会社との間で前記第2の1の(3)のような、各火災保険契約を締結した。 これらの火災保険契約では、いずれも保険会社は保険契約者の故意または重大な過失による火災事故の損害については火災保険金を支払わない旨の免責約款が定められた。 (2) 本件火災が発生した平成11年3月当時、本件建物及びその敷地には、原告の債務ないし原告が経営する訴外会社の債務を担保するため、5口の抵当権ないし根抵当権が設定されていたが、その内容は次のとおりである。 ア 1番抵当権抵当権者  d公庫債務者原告債権額  1213万4905円(同月31日現在)イ 2番抵当権抵当権者  m保険株式会社債務者原告債権額  1058万3944円(同日現在)ウ 3番根抵当権根抵当権者  n公庫債務者訴外会社債権額  672万円(同日現在)エ 4番根抵当権根抵当権者  o株式会社債務者原告債権額  1500万円(同日現在)オ 5番根抵当権根抵当権者  p協会債務者訴外会社極度額  500万円同日現在、訴外会社は、上記ウ及 500万円(同日現在)オ 5番根抵当権根抵当権者  p協会債務者訴外会社極度額  500万円同日現在、訴外会社は、上記ウ及びオの債務のほか、q信用金庫に対して3266万4000円の借入金債務を負担していた。 (3) 同月3日、原告は、午前9時45分頃自宅である本件建物を出て訴外会社に出社したが、午後零時頃本件建物に帰宅して食事をし、その後e動物病院に行くなどして、午後4時頃一旦自宅に寄ってから訴外会社に戻った。 同日午後5時28分頃本件建物内の本件和室北側付近から出火して本件火災が発生し、その結果本件建物が半焼して、午後6時35分頃鎮火した。 本件火災が発生した当時、本件建物の開口部は全て施錠されており、本件建物内は無人であった。 (4) 本件和室は、スタイロ畳が張られた8畳間(ただし、西側に2畳ほどの板の間がある。)で、北側中央付近に幅約76センチメートルの本件出入口があり、その西側に幅30センチメートル程度の壁があり、その壁の西側に本件仏壇が収められている幅約60センチメートルの場所がある。 本件出入口の東側は幅約177センチメートルの壁となっていて、その壁の中に本件出入口の襖が収まるようになっている。 本件出入口から本件和室を出た場所はスタイロ畳が張られた通路となっており、この通路を挟んで東西の両側が納戸になっている。 本件仏壇が収められている場所は、幅が約60センチメートル、高さが約196.5センチメートル、奥行きが少なくとも約41.5センチメートルであり、西側の納戸に食い込んで作られている。 本件仏壇は、高さが約81センチメートル(内側において約71センチメートル)、幅が約58センチメートル(内側におい くとも約41.5センチメートルであり、西側の納戸に食い込んで作られている。 本件仏壇は、高さが約81センチメートル(内側において約71センチメートル)、幅が約58センチメートル(内側において約52.5センチメートル)、奥行きが約41.5センチメートル(内側において約39センチメートル)で、観音開きの扉がついており、下部から幅が約52センチメートルで厚さが2センチメートル程度の引出式の枕経板が前方に約32センチメートル引き出されて、その上に打鐘や線香壺等が置かれていた。 本件仏壇は7段の引出がある高さ約105.5センチメートルのタンスの上に置かれていた。 (5) 本件火災による焼燬状態は、次のようなものであった。 ア本件仏壇は、向かって右側の扉が焼け落ち、向かって右の側面の手前側が、高さ約32センチメートルから上の個所で焼燬して炭化したり焼失している(以下この焼失部分を「本件焼失部分」という。)。 イ本件仏壇の枕経板は、裏面が強く焼燬して炭化し、向かって右側に焼け抜けた部分がある。 ウ本件仏壇が収められた場所の向かって右側の縦枠は、下から約15センチメートルまでの部分を除くその余の部分が焼燬して炭化しており、本件焼失部分に近接している個所がとりわけ強く炭化している。 エ本件仏壇の下に置かれたタンスは、表面が焼けており、上5段目までの引出の右側の取っ手が焼損している。 オ本件仏壇が収められた場所の前から本件出入口にかけて、焼けて炭化した衣類が散乱し、パイプハンガーが倒れていた。 カ本件出入口付近には別紙図面のように顕著に焼燬してスタイロ畳と床が焼け抜けた場所があり、そのうち、本件和室の焼け抜け部分は、東側のもの(以下「A穴」という。)が約30センチメートル×約14センチメートル 出入口付近には別紙図面のように顕著に焼燬してスタイロ畳と床が焼け抜けた場所があり、そのうち、本件和室の焼け抜け部分は、東側のもの(以下「A穴」という。)が約30センチメートル×約14センチメートルの、西側のもの(以下「B穴」という。)が約23センチメートル×約26センチメートルの、通路の焼け抜け部分(以下「C穴」という。)は約40センチメートル×約42センチメートルの、東側の納戸の焼け抜け部分(以下「D穴」という。)(なお、ここにもスタイロ畳が張られていた。)は約20センチメートル×約20センチメートルの、各大きさであり、四つの焼け抜けのうちC穴の焼燬が最も著しい。 なお、D穴の付近にはセントラルクリーナーの設備があったが、それが漏電した形跡はなかった。 キ B穴とC穴との間には襖の敷居があるが、その敷居は東側約36センチメートルの部分が約2.8センチメートルないし約0.6センチメートルの深さまで炭化して焼け細っている。 クこの敷居の上には襖がその幅の約半分程度引き出され、襖のその余の部分は壁の中に収められていたが、引き出されていた部分は焼失している。 ケ本件出入口の東側の縦枠は下から約70センチメートルまでの部分が約1.1センチメートルないし約0.4センチメートルの深さまで焼けて炭化しているが、そのうち襖を挟んだ北側部分(C穴の側)のほうが南側部分よりも焼け方が強い。 コ A穴、B穴、C穴及びD穴の付近の床下にある根太、大引、根がらみ及び床束は、激しく焼燬して炭化し、焼け細っている部分がある。 (6) 火を灯した長さ21センチメートル・太さ1.5センチメートルのローソクをベニヤ板に炎が当たるようにして立てかけておく実験をしたところ、ローソクはしだいに短くなり、ベニヤ板は炎が当たった部分が炭化して 火を灯した長さ21センチメートル・太さ1.5センチメートルのローソクをベニヤ板に炎が当たるようにして立てかけておく実験をしたところ、ローソクはしだいに短くなり、ベニヤ板は炎が当たった部分が炭化して小さな穴が空いたものの、60分経過しても延焼していくことはなかった。 2 検討前記事実関係に基づき、本件火災が原告の作為によって発生したものか否かについて検討する。 (1) 本件仏壇等の焼燬について本件仏壇の向かって右の側面の手前側が高さ約32センチメートルから上の個所で焼燬して炭化したり本件焼失部分において焼失していること、本件仏壇が収められた場所の向かって右側の縦枠のうち本件焼失部分に近接している個所が強く炭化していること、本件焼失部分に他から延焼してきた形跡がないことを総合すると、本件仏壇の本件焼失部分あたりに火元が存在したことが推定できるところ、前記1の認定事実(6)に照らすと、少なくとも本件仏壇内に置かれていたローソクの火が失火して本件火災が発生したとは考え難い。 すなわち、火を灯した長さ21センチメートル・太さ1.5センチメートルのローソクをベニヤ板に炎が当たるようにして立てかけておいてもローソクの火が延焼していく可能性がないにもかかわらず本件仏壇の本件焼失部分が焼燬したというのは、本件焼失部分にローソクの火よりも強い火力が当たったかあるいは本件焼失部分の一定個所に一定時間何らか火力が集中していたことを示しているのであるから、ローソクの火による単純な失火が原因で本件焼失部分が焼燬したと考えることはできないからである。 そうすると、本件仏壇等の焼燬状態は本件火災の発生が作為的なものであることを示しているというべきである。 (2) 本件出入口付近の焼燬についてア本件火災では、本件仏壇の ある。 そうすると、本件仏壇等の焼燬状態は本件火災の発生が作為的なものであることを示しているというべきである。 (2) 本件出入口付近の焼燬についてア本件火災では、本件仏壇のほか、前記1の認定事実(5)のカ、キ、ケ及びコのとおり本件出入口付近が顕著に焼燬しており、ここに独立した火元が存在したことが推定できるところ、本件出入口付近について火災の原因として考えられるような要素が見当たらないことに照らすと、本件では、本件出入口付近においても作為的な着火が行われたことが窺われる。 なお、本件仏壇の火が壁あるいは天井を伝わって本件出入口に延焼したとは認められない。 イもっとも、甲第9号証の3(本件判定書)では、本件和室でパイプハンガーが倒れるなどして下に散乱していた衣類に本件仏壇から落下したローソクの火が移って延焼していったという可能性と、本件出入口付近にあったプラスチック製ハンガーの束が燃焼してその火力がスタイロ畳や床板を燃焼させたという可能性を指摘しており、これに従えば、本件和室において、本件仏壇のローソクの火が衣類に着火し、それが延焼して本件出入口付近にあったプラスチック製ハンガーの束を燃焼させた結果、本件出入口付近が激しく焼燬したという推論が成り立ち得る。 しかしながら、プラスチック製ハンガーの束を入れた二つのビニール袋をパイプハンガーの下に置いていたという証人cの証言によれば、それらが置かれていたのは本件和室の中のA穴やB穴のあたりになるはずであるから、上記推論からすれば本件和室にあるA穴やB穴の方が通路にあるC穴よりも激しく焼燬していなければならないのに、実際には、C穴の方がA穴やB穴に比して明らかに激しく焼燬しており、前記1の認定事実(5)のケのとおり本件出入口の東側の縦枠がA穴やB 方が通路にあるC穴よりも激しく焼燬していなければならないのに、実際には、C穴の方がA穴やB穴に比して明らかに激しく焼燬しており、前記1の認定事実(5)のケのとおり本件出入口の東側の縦枠がA穴やB穴の側ではなくC穴の側において強く焼燬しているのも通路にあるC穴側に激しい焼燬があったことを裏付けていることに鑑みると、本件仏壇のローソクの火が衣類に着火して本件和室に置かれていたプラスチック製ハンガーの束に延焼していったという上記推論は採用できないものである。 なお、前記1の認定事実(5)のクのとおり本件出入口には襖がその幅の約半分程度引き出されていたことに照らせば、本件火災発生前はB穴部分とC穴部分との間は襖で遮られていたはずであるから、本件和室のパイプハンガーが倒れた際にその下に置かれていたプラスチック製ハンガーの束が本件和室から通路にあるC穴の上に移動したということは考えられない。 (3) 総括前記(1)及び(2)によれば、本件火災では本件仏壇の本件焼失部分と本件出入口付近の2個所がそれぞれ独立した火元として存在していることが認められ、これは本件火災が失火によって発生したものではないことを表している。 のみならず、前記(1)及び(2)で検討したとおり、本件焼失部分と本件出入口付近のそれぞれの火元を個別に取り上げて検討してみても、いずれも失火ではなく作為的に着火されたことが窺われるのであるから、本件火災の発生は、失火によるものと考えることはできず、作為的になされたものであると認められる。 そして、本件火災が発生する直前からその数時間前の間において原告以外の人物が本件建物の中にいたことを認めるに足りる証拠がないことをも併せて考えると、本件火災は原告の作為によって発生したものであると推定できる。 生する直前からその数時間前の間において原告以外の人物が本件建物の中にいたことを認めるに足りる証拠がないことをも併せて考えると、本件火災は原告の作為によって発生したものであると推定できる。 したがって、本件火災は保険契約者である原告の故意によるものとして保険約款の免責事由に該当するから、被告らは、本件火災による損害につき火災保険金の支払義務を負わないものである。 第4 結論以上のとおりであるから、本件請求はいずれも理由がない。 仙台地方裁判所第一民事部裁判官鈴木陽一・物件目録所在仙台市r区s○番地○同市r区t町△×番地○家屋番号 ○番○の△種類居宅構造木造セメント瓦葺2階建床面積 1 階 98㎡54 2 階 73㎡07

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